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特開2023-98474エチレン系樹脂組成物、積層体および包装用フィルム
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  • 特開-エチレン系樹脂組成物、積層体および包装用フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098474
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】エチレン系樹脂組成物、積層体および包装用フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/08 20060101AFI20230703BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20230703BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230703BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20230703BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
C08L23/08
B32B27/32 Z
B32B27/00 H
C08L23/06
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021215264
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】303060664
【氏名又は名称】日本ポリエチレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【弁理士】
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】河村(増村) 千晶
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 好正
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA14
3E086BA15
3E086BB51
3E086CA01
3E086CA27
3E086DA08
4F100AK04B
4F100AK06
4F100AK06B
4F100AK48
4F100AK63
4F100AL06B
4F100AR00C
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA07
4F100EH17
4F100EJ38
4F100GB15
4F100JA06B
4F100JA13B
4F100JL12
4F100JL12C
4F100YY00B
4J002BB03Y
4J002BB051
4J002BB05X
4J002GG02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ヒートシール性および耐熱性に優れ、低温から高温まで幅広い温度範囲で充填可能であり、特に高速充填時も同様に幅広い温度範囲で充填可能な、エチレン系樹脂組成物、それを用いてなる積層体および包装用フィルムを提供する。
【解決手段】エチレン系樹脂組成物(A)からなり、前記エチレン系樹脂組成物(A)が、MFRおよび密度について特性を有する、1種類以上のエチレン・α-オレフィン共重合体であるエチレン系樹脂(B)、ならびにMFRおよび示差走査熱量測定により測定される融点について特性を有する、ラジカル重合法により製造されたエチレン系樹脂(C)を含むことを特徴とするエチレン系樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の特性を有するエチレン系樹脂組成物(A)からなり、前記エチレン系樹脂組成物(A)が、それぞれ下記の特性を有するエチレン系樹脂(B)およびエチレン系樹脂(C)を含むことを特徴とするエチレン系樹脂組成物。
エチレン系樹脂組成物(A):下記の特性(A-1)~(A-3)を同時に満たすエチレン系樹脂組成物
(A-1)MFR(190℃、21.18N荷重)が1~15g/10分
(A-2)密度が0.915~0.940g/cm
(A-3)オルトジクロロベンゼンによる温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線において、下記(i)~(iii)を満たす。
(i)溶出温度が85℃以下と85℃以上に、それぞれピークを少なくとも1つ有する。
(ii)溶出温度が85℃以下の溶出物((a1)+(a2)+(a3))の割合が45~90重量%である。
(iii)溶出温度が85℃以上の溶出物(a4)の割合が10~55重量%である。
(ただし、(a1)、(a2)、(a3)、(a4)の各々の割合の合計は100重量%である。)
エチレン系樹脂(B):下記の特性(B-1)~(B-2)を同時に満たす、1種類以上のエチレン・α-オレフィン共重合体
(B-1)MFR(190℃、21.18N荷重)が1~18g/10分
(B-2)密度が0.910~0.940g/cm
エチレン系樹脂(C):下記の特性(C-1)~(C-2)を同時に満たし、ラジカル重合法により製造されたエチレン系樹脂
(C-1)MFR(190℃、21.18N荷重)が1~15g/10分
(C-2)示差走査熱量測定(DSC)により測定される融点が100℃以下
【請求項2】
前記エチレン系樹脂(C)が、エチレンと極性基を持つモノマーとの共重合体であることを特徴とする、請求項1に記載のエチレン系樹脂組成物。
【請求項3】
前記エチレン系樹脂組成物(A)が、さらに下記(A-3)’の特性を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のエチレン系樹脂組成物。
(A-3)’オルトジクロロベンゼンによる温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線において、下記(iv)~(vii)を満たす。
(iv)溶出温度が55℃以下と55℃~85℃に、それぞれピークを少なくとも1つ有する。
(v)溶出温度が55℃以下の溶出物(a1)の割合が5~30重量%である。
(vi)溶出温度が55℃~70℃の溶出物(a2)の割合が1~30重量%である。
(vii)溶出温度が70~85℃の溶出物(a3)の割合が20~55重量%である。
(ただし、(a1)、(a2)、(a3)、(a4)の各々の割合の合計は100重量%である。)
【請求項4】
前記エチレン系樹脂組成物(A)が、さらに下記(A-3)”の特性を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のエチレン系樹脂組成物。
(A-3)”オルトジクロロベンゼンによる温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線において、下記(viii)~(xi)を満たす。
(viii)溶出温度が55℃以下の溶出物(a1)の割合と溶出温度が55℃~70℃の溶出物(a2)の割合の比の値が1~5である。
(ix)溶出温度が70℃~85℃の溶出物(a3)の割合と溶出温度が55~70℃の溶出物(a2)の割合の比の値が1~5である
(x)溶出温度が70~85℃の溶出物(a3)の割合と溶出温度が55℃以下の溶出物(a1)の割合の比の値が、1~5である
(xi)溶出温度が70℃以下の溶出物((a1)+(a2))の割合と溶出温度が70℃以上の溶出物((a3)+(a4))の割合の比の値が0.2~1.2である。
(ただし、(a1)、(a2)、(a3)、(a4)の各々の割合の合計は100重量%である。)
【請求項5】
前記エチレン系樹脂組成物(A)中に、前記エチレン系樹脂(B)を60~95重量%、前記エチレン系樹脂(C)を5~40重量%、それぞれ含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のエチレン系樹脂組成物。
【請求項6】
エチレン系樹脂組成物(A)からなり、前記エチレン系樹脂組成物(A)が、それぞれ下記の特性を有するエチレン系樹脂(B)を60~95重量%、およびエチレン系樹脂(C)を5~40重量%含むことを特徴とするエチレン系樹脂組成物。
エチレン系樹脂(B):下記の特性(B-1)~(B-2)を同時に満たす、1種類以上のエチレン・α-オレフィン共重合体
(B-1)MFR(190℃、21.18N荷重)が1~18g/10分
(B-2)密度が0.910~0.940g/cm
エチレン系樹脂(C):下記の特性(C-1)~(C-2)を同時に満たし、ラジカル重合法により製造されたエチレン系樹脂
(C-1)MFR(190℃、21.18N荷重)が1~15g/10分
(C-2)示差走査熱量測定(DSC)により測定される融点が100℃以下
【請求項7】
前記エチレン系樹脂組成物(A)が、さらに下記(D-1)~(D-2)の特性を有する高圧法低密度ポリエチレン(D)を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のエチレン系樹脂組成物。
(D-1)MFR(190℃、21.18N荷重)が1~20g/10分
(D-2)密度が0.915~0.930g/cm
【請求項8】
前記エチレン系樹脂組成物(A)中に、前記エチレン系樹脂(B)を60~85重量%、前記エチレン系樹脂(C)を5~25重量%、および前記高圧法低密度ポリエチレン(D)を5~30重量%、それぞれ含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のエチレン系樹脂組成物。
【請求項9】
シーラント層(X)、中間層(Y)および基材層(Z)の少なくとも3層を有し、中間層(Y)が請求項1~8のいずれか一項に記載のエチレン系樹脂組成物を用いてなることを特徴とする積層体。
【請求項10】
シーラント層(X)、中間層(Y)および基材層(Z)の少なくとも3層を有し、シーラント層(X)が請求項1~8のいずれか一項に記載のエチレン系樹脂組成物を用いてなることを特徴とする積層体。
【請求項11】
請求項9または10に記載の積層体を用いた包装用フィルム。
【請求項12】
液体を含む内容物を包装するためのフィルムであることを特徴とする請求項11に記載の包装用フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン系樹脂組成物、積層体および包装用フィルムに関する。詳しくは、ヒートシール性および耐熱性に優れ、内容物を低温から高温まで幅広いシール温度範囲で高速充填することが可能である、エチレン系樹脂組成物、積層体およびそれを用いてなる包装用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体および粘体、ならびに不溶物質として繊維、粉体等の固形状のものを含んだ液体、粘体等の包装には、基材層、中間層、シーラント層を積層させて得られる包装用フィルムが用いられている。該包装用フィルムは、液体、粘体等を充填し、ヒートシールすることで、包装袋として提供される。そのため、該包装用フィルムは、ヒートシール性および包装される内容物に応じた耐熱性が求められる。
【0003】
耐熱性という観点からは、ポリオレフィンを使用する場合、一般に高融点の方が、低融点のものより優れていることが知られている。たとえば、ポリエチレンを例にとると、低密度ポリエチレン(LDPE)よりも高密度ポリエチレン(HDPE)の方が、上記性質に優れている。
しかし、高融点のポリオレフィンからなる包装用フィルムは、その高融点ゆえにヒートシール強さ、低温ヒートシール性等が劣るため、液体、粘体等に対する、より高速の自動充填包装の要求に対しては、シーラント層に対する供給熱量が不十分となり、適正なヒートシールを確実に施すことが困難である。
【0004】
一方、シーラント層に低融点のポリオレフィンを用いた包装用フィルムは、そのシーラント層を厚くすることで、その耐熱性および剛性を得ることができる。
しかし、シーラント層の厚みを厚くすると、少ない供給熱量で適正なヒートシールを施すことが難しくなり、高速の自動充填包装に対処できなくなる。
【0005】
かかる問題を解決する試みは多くなされており、例えば、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとの共重合体と高圧法低密度ポリエチレンとからなる、特定の物性を満たすポリエチレン樹脂組成物を用いた発明(特許文献1、2参照)が開示されているが、いずれも充填可能なシール温度範囲が狭い。
【0006】
また、シーラント層、中間層および基材層の3層を有する積層体からなり、シーラント層および中間層が、それぞれ特定のMFR、密度、温度上昇溶離分別(TREF)特性を満たすポリエチレン樹脂組成物を用いた発明(特許文献3参照)が開示されているが、低温シール性が劣る。
【0007】
さらに、特定の示差走査熱量測定(DSC)特性および温度上昇溶離分別(TREF)特性を満たす押出ラミネート用樹脂組成物を用いた発明(特許文献4参照)が開示されているが、溶出温度が低い低結晶成分に関する規定がなく、低温域におけるシールの制御やシール後の発泡の制御が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007-204628号公報
【特許文献2】特開2015-145091号公報
【特許文献3】特開2016-190450号公報
【特許文献4】特開2019-104770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来技術が抱える上述の問題点に鑑みてなされたものであり、ヒートシール性および耐熱性に優れ、低温から高温まで幅広い温度範囲で充填可能であり、特に高速充填時も同様に幅広い温度範囲で充填可能な、エチレン系樹脂組成物、それを用いてなる積層体および包装用フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の組成および物性を有するエチレン系樹脂組成物からなるエチレン系樹脂組成物、およびエチレン系樹脂組成物を用いた積層体を使用することにより、上記の課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、下記の特性を有するエチレン系樹脂組成物(A)からなり、前記エチレン系樹脂組成物(A)が、それぞれ下記の特性を有するエチレン系樹脂(B)およびエチレン系樹脂(C)を含むことを特徴とする、エチレン系樹脂組成物が提供される。
エチレン系樹脂組成物(A):下記の特性(A-1)~(A-3)を同時に満たすエチレン系樹脂組成物
(A-1)MFR(190℃、21.18N荷重)が1~15g/10分
(A-2)密度が0.915~0.940g/cm
(A-3)オルトジクロロベンゼンによる温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線において、下記(i)~(iii)を満たす。
(i)溶出温度が85℃以下と85℃以上に、それぞれピークを少なくとも1つ有する。
(ii)溶出温度が85℃以下の溶出物((a1)+(a2)+(a3))の割合が45~90重量%である。
(iii)溶出温度が85℃以上の溶出物(a4)の割合が10~55重量%である。
(ただし、(a1)、(a2)、(a3)、(a4)の各々の割合の合計は100重量%である。)
エチレン系樹脂(B):下記の特性(B-1)~(B-2)を同時に満たす、1種類以上のエチレン・α-オレフィン共重合体
(B-1)MFR(190℃、21.18N荷重)が1~18g/10分
(B-2)密度が0.910~0.940g/cm
エチレン系樹脂(C):下記の特性(C-1)~(C-2)を同時に満たす、ラジカル重合法により製造されたエチレン系樹脂
(C-1)MFR(190℃、21.18N荷重)が1~15g/10分
(C-2)示差熱走査熱量計(DSC)により測定される融点が100℃以下
【0012】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記エチレン系樹脂(C)が、エチレンと極性基を持つモノマーとの共重合体であることを特徴とする、エチレン系樹脂組成物が提供される。
【0013】
また、本発明の第3の発明によれば、第1または第2の発明において、前記エチレン系樹脂組成物(A)が、さらに下記(A-3)’の特性を有することを特徴とする、エチレン系樹脂組成物が提供される。
(A-3)’オルトジクロロベンゼンによる温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線において、下記(iv)~(vii)を満たす。
(iv)溶出温度が55℃以下と55℃~85℃に、それぞれピークを少なくとも1つ有する。
(v)溶出温度が55℃以下の溶出物(a1)の割合が5~30重量%である。
(vi)溶出温度が55℃~70℃の溶出物(a2)の割合が1~30重量%である。
(vii)溶出温度が70~85℃の溶出物(a3)の割合が20~55重量%である。
(ただし、(a1)、(a2)、(a3)、(a4)の各々の割合の合計は100重量%である。)
【0014】
また、本発明の第4の発明によれば、第1~第3のいずれかの発明において、前記エチレン系樹脂組成物(A)が、さらに下記(A-3)”の特性を有することを特徴とする、エチレン系樹脂組成物が提供される。
(A-3)”オルトジクロロベンゼンによる温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線において、下記(viii)~(xi)を満たす。
(viii)溶出温度が55℃以下の溶出物(a1)の割合と溶出温度が55℃~70℃の溶出物(a2)の割合の比の値が1~5である。
(ix)溶出温度が70℃~85℃の溶出物(a3)の割合と溶出温度が55~70℃の溶出物(a2)の割合の比の値が1~5である
(x)溶出温度が70~85℃の溶出物(a3)の割合と溶出温度が55℃以下の溶出物(a1)の割合の比の値が、1~5である
(xi)溶出温度が70℃以下の溶出物((a1)+(a2))の割合と溶出温度が70℃以上の溶出物((a3)+(a4))の割合の比の値が0.2~1.2である。
(ただし、(a1)、(a2)、(a3)、(a4)の各々の割合の合計は100重量%である。)
【0015】
また、本発明の第5の発明によれば、第1~第4のいずれかの発明において、前記エチレン系樹脂組成物(A)中に、前記エチレン系樹脂(B)を60~95重量%、前記エチレン系樹脂(C)を5~40重量%、それぞれ含むことを特徴とする、エチレン系樹脂組成物が提供される。
【0016】
また、本発明の第6の発明によれば、エチレン系樹脂組成物(A)からなり、前記エチレン系樹脂組成物(A)が、それぞれ下記の特性を有するエチレン系樹脂(B)を60~95重量%、およびエチレン系樹脂(C)を5~40重量%含むことを特徴とする、エチレン系樹脂組成物が提供される。
エチレン系樹脂(B):下記の特性(B-1)~(B-2)を同時に満たす、1種類以上のエチレン・α-オレフィン共重合体
(B-1)MFR(190℃、21.18N荷重)が1~18g/10分
(B-2)密度が0.910~0.940g/cm
エチレン系樹脂(C):下記の特性(C-1)~(C-2)を同時に満たし、ラジカル重合法により製造されたエチレン系樹脂
(C-1)MFR(190℃、21.18N荷重)が1~15g/10分
(C-2)示差走査熱量測定(DSC)により測定される融点が100℃以下
【0017】
また、本発明の第7の発明によれば、第1~第6のいずれかの発明において、前記エチレン系樹脂組成物(A)が、さらに下記(D-1)~(D-2)の特性を有する高圧法低密度ポリエチレン(D)を含むことを特徴とする、エチレン系樹脂組成物が提供される。
(D-1)MFR(190℃、21.18N荷重)が1~20g/10分
(D-2)密度が0.915~0.930g/cm
【0018】
また、本発明の第8の発明によれば、第1~第7のいずれかの発明において、前記エチレン系樹脂組成物(A)中に、前記エチレン系樹脂(B)を60~85重量%、前記エチレン系樹脂(C)を5~25重量%、および前記高圧法低密度ポリエチレン(D)を5~30重量%、それぞれ含むことを特徴とする、エチレン系樹脂組成物が提供される。
【0019】
また、本発明の第9の発明によれば、シーラント層(X)、中間層(Y)および基材層(Z)の少なくとも3層を有し、中間層(Y)が、第1~第8のいずれかの発明におけるエチレン系樹脂組成物を用いてなることを特徴とする、積層体が提供される。
【0020】
また、本発明の第10の発明によれば、シーラント層(X)、中間層(Y)および基材層(Z)の少なくとも3層を有し、シーラント層(X)が、第1~第8のいずれかの発明におけるエチレン系樹脂組成物を用いてなることを特徴とする、積層体が提供される。
【0021】
また、本発明の第11の発明によれば、第9または第10の発明における積層体を用いた包装用フィルムが提供される。
【0022】
また、本発明の第12の発明によれば、第11の発明において、液体を含む内容物を包装するためのフィルムであることを特徴とする、包装用フィルムが提供される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ヒートシール性および耐熱性に優れ、充填時のポリ溜まりが密度見合いで小さいためカット性が良好であり、高速充填時においても、低温から高温まで幅広い温度範囲で充填可能なエチレン系樹脂組成物、それを用いてなる積層体および包装用フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施例および比較例において使用した、エチレン系樹脂組成物(A)の溶出曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
1.エチレン系樹脂組成物
本発明の1つの態様は、エチレン系樹脂(B)およびエチレン系樹脂(C)を含むエチレン系樹脂組成物(A)からなるエチレン系樹脂組成物である(以下、「本発明のエチレン系樹脂組成物」あるいは「本発明のエチレン系樹脂組成物(A)」とも言う)。以下、本発明のエチレン系樹脂組成物の各構成について項目毎に詳細に説明する。
1-1.エチレン系樹脂(B)
本発明に用いられるエチレン系樹脂(B)は、後述する特性(B-1)~(B-2)を同時に満たす、1種類以上のエチレン・α-オレフィン共重合体である。該エチレン・α-オレフィン共重合体は、ランダム共重合体であることが好ましい。コモノマーとして用いられるα-オレフィンは、好ましくは炭素数3~20、より好ましくは炭素数3~12、さらに好ましくは炭素数3~8のα-オレフィンである。α-オレフィンとして、具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ヘプテン、4-メチル-ペンテン-1、4-メチル-ヘキセン-1、4,4-ジメチルペンテン-1等が挙げられる。エチレン・α-オレフィン共重合体として、具体例としては、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体等が挙げられ、炭素数6以上のα-オレフィンが樹脂強度の観点から好ましい。
【0026】
コモノマーとして用いられるα-オレフィンは1種類でもよく、2種類以上を同時に用いていてもよい。例えば、ターポリマーのようにα-オレフィンを2種類以上用いた多元系共重合体も用いることができる。具体例としては、エチレン・プロピレン・1-ブテン3元共重合体、エチレン・プロピレン・1-ヘキセン3元共重合体等が挙げられ、2種類以上を用いる場合、少なくとも1種類は炭素数6以上のα-オレフィンであることが樹脂強度の観点から好ましい。
【0027】
上記エチレン・α-オレフィン共重合体の製造方法としては、後述する特性の物性を満たすエチレン系樹脂(B)およびエチレン系樹脂組成物(A)が得られれば、特に限定されず、チーグラー触媒、メタロセン触媒などの公知の触媒を用いて製造することができる。中でも、メタロセン触媒により製造されたメタロセン触媒特有の物性を有するエチレン・α-オレフィン共重合体、いわゆるメタロセン触媒系エチレン・α-オレフィン共重合体を用いることが好ましい。
【0028】
メタロセン触媒とは、(1)シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物(以下、「メタロセン化合物」ともいう)と、(2)メタロセン化合物と反応して安定なイオン状態に活性化しうる助触媒と、任意成分として(3)有機アルミニウム化合物と、からなる触媒であり、公知のメタロセン触媒を適宜選択して用いることができる。以下、上記(1)~(3)の各成分について説明する。
【0029】
(1)メタロセン化合物
メタロセン化合物は、特に限定されず公知のものを用いることができ、例えば、特開昭58-19309号、特開昭59-95292号、特開昭59-23011号、特開昭60-35006号、特開昭60-35007号、特開昭60-35008号、特開昭60-35009号、特開昭61-130314号、特開平3-163088号公報等、EP公開420,436、米国特許5,055,438、国際公開WO91/04257、国際公開WO92/07123等に開示されるメタロセン化合物を用いることができる。
具体的には、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(アズレニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、(シクロペンタジエニル)(3,4-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、メチレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、メチレン(シクロペンタジエニル)(3,4-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(3,4-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(3,5-ジメチルペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、メチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(2-メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン1,2-ビス(4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(オクタヒドロフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス[1-(2-メチル-4,5-ベンゾ(インデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1-(2-メチル-4,5-ベンゾインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1-(2-メチル-4H-アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1-(2-メチル-4-(4-クロロフェニル)-4H-アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1-(2-エチル-4-(4-クロロフェニル)-4H-アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1-(2-エチル-4-ナフチル-4H-アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス[1-(2-メチル-4-(4-クロロフェニル)-4H-アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1-(2-メチル-4-(フェニルインデニル))]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1-(2-エチル-4-(フェニルインデニル))]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1-(2-エチル-4-ナフチル-4H-アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリドなどのジルコニウム化合物が例示できる。上記において、ジルコニウムをハフニウムに置き換えた化合物も同様に使用できる。場合によっては、ジルコニウム化合物とハフニウム化合物の混合物を使用することもできる。
メタロセン化合物は、無機または有機化合物の担体に担持して使用してもよい。該担体としては無機または有機化合物の多孔質酸化物が好ましく、具体的には、イオン交換性層状珪酸塩、SiO、Al、MgO、ZrO、TiO、B、CaO、ZnO、BaO、ThO等またはこれらの混合物が挙げられる。
【0030】
(2)助触媒
助触媒としては、有機アルミニウムオキシ化合物(アルミノキサン化合物)、イオン交換性層状珪酸塩、ルイス酸、ホウ素化合物、酸化ランタンなどのランタノイド塩、酸化スズ等が挙げられる。
【0031】
(3)有機アルミニウム化合物
有機アルミニウム化合物としては、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム;ジアルキルアルミニウムハライド;アルキルアルミニウムセスキハライド;アルキルアルミニウムジハライド;アルキルアルミニウムハイドライド、有機アルミニウムアルコキサイド等が挙げられる。
【0032】
重合様式は、触媒成分と各モノマーが効率よく接触するならば、あらゆる様式の方法を採用することができる。具体的には、これらの触媒の存在下でのスラリー法、気相流動床法や溶液法、あるいは圧力が200kg/cm以上、重合温度が100℃以上での高圧バルク重合法等が挙げられる。好ましい製造法としては高圧バルク重合が挙げられる。
【0033】
エチレン・α-オレフィン共重合体は、市販されているものの中から適宜選択することもできる。市販品としては、デュポンダウ社製「アフィニティー」、日本ポリエチレン社製「カーネル」「ハーモレックス」等が挙げられる。
【0034】
次に、エチレン系樹脂(B)が有する特性(B-1)~(B-2)について詳細に説明する。
【0035】
(B-1)メルトフローレート(MFR)
本発明に用いるエチレン系樹脂(B)のメルトフローレート(MFR:190℃、21.18N荷重)は、1~18g/10分であり、好ましくは2~15g/10分、より好ましくは2~12g/10分である。MFRが上記範囲であることにより、押出加工性に優れ、ホットタック性や高温シール時の発泡耐性が良好となる。
ここで、MFRは、JIS-K6922-2:1997附属書(190℃、21.18N荷重)に準拠して測定する値である。
【0036】
(B-2)密度
本発明に用いられるエチレン系樹脂(B)の密度は、0.910~0.940g/cmであり、好ましくは0.916~0.938g/cm、より好ましくは0.924~0.936g/cmである。密度が上記範囲であることにより、剛性、耐熱性およびヒートシール性とのバランスに優れる。
ここで、密度は、JIS-K6922-2:1997附属書(低密度ポリエチレンの場合)に準拠して測定する(測定温度23℃)。
【0037】
エチレン系樹脂(B)に用いられるエチレン・α-オレフィン共重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。例えば、MFRまたは密度を異にする2種類以上のエチレン・α-オレフィン共重合体を併用することにより、エチレン系樹脂(B)およびエチレン系樹脂組成物(A)の物性を所望の範囲に制御することができる。特に、メタロセン触媒を用いて製造されたエチレン・α-オレフィン共重合体は結晶性分布が狭いため、種々のエチレン・α-オレフィン共重合体をブレンドすることにより、後述するTREF物性を容易に所望の範囲に制御することができる。
なお、エチレン・α-オレフィン共重合体は、チタン、ハロゲンを含むいわゆるチーグラー触媒を用いて製造することもできる。物性の異なるエチレン・α-オレフィン共重合体を併用する場合、その方法は、共重合体同士をブレンドしてもよく、多段重合してもよい。また、メタロセン触媒とチーグラー触媒を混合使用することもできる。
【0038】
また、本発明のエチレン系樹脂組成物(A)におけるエチレン系樹脂(B)の含有量は、好ましくは60~95重量%、より好ましくは60~85重量%である。エチレン系樹脂(B)の含有量が下限値以上であると、剛性と耐熱性の観点から好ましく、また、上限値以下であると、耐圧性や加工性に優れるとともに、他の添加成分とブレンドさせる観点から好ましい。
【0039】
1-2.エチレン系樹脂(C)
本発明に用いられるエチレン系樹脂(C)は、後述する特性(C-1)~(C-2)を同時に満たす、ラジカル重合法により製造されたエチレン系樹脂である。エチレン系樹脂(C)は、好ましくはエチレンと極性基を持つモノマーとの共重合体である。コモノマーとして、具体的には、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、無水マレイン酸、メタクリル酸、金属イオン含有メタクリル酸等の酸およびエステル化合物等が挙げられる。その中でも、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル化合物が好適に使用できる。
コモノマーは、1種類でもよく、2種類以上を同時に用いていてもよい。
【0040】
上記エチレン系樹脂(C)の製造方法として、既知のオートクレーブ反応器もしくはチューブラー反応器による高圧ラジカル重合法が用いられる。
【0041】
次に、エチレン系樹脂(C)が有する特性(C-1)~(C-2)について詳細に説明する。
【0042】
(C-1)メルトフローレート(MFR)
本発明に用いるエチレン系樹脂(C)のメルトフローレート(MFR:190℃、21.18N荷重)は、1~15g/10分であり、好ましくは2~12g/10分、より好ましくは2~10g/10分である。MFRが上記範囲であることにより、耐圧性や押出加工性が良好となる。
ここで、MFRは、JIS-K6922-2:1997附属書(190℃、21.18N荷重)に準拠して測定する値である。
【0043】
(C-2)融点
本発明に用いるエチレン系樹脂(C)の融点は、100℃以下であり、好ましくは60℃~100℃であり、より好ましくは70℃~100℃である。融点が上記範囲であることにより、耐熱性および充填性とのバランスに優れる。
ここで、融点は、示差走査熱量測定(DSC)による融解曲線における融解ピークの中で最も大きなピーク温度を示す。
【0044】
エチレン系樹脂(C)として用いられるエチレン系樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。例えば、MFRまたは密度を異にする2種類以上のエチレン系樹脂を併用することにより、エチレン系樹脂(C)およびエチレン系樹脂組成物(A)の物性を所望の範囲に制御することができる。
また、本発明のエチレン系樹脂組成物(A)におけるエチレン系樹脂(C)の含有量は、好ましくは5~40重量%、より好ましくは5~25重量%である。エチレン系樹脂(C)の含有量が下限値以上であると、耐熱性および耐圧性とのバランスの観点から好ましく、また、上限値以下であると、加工性の観点から好ましい。
【0045】
1-3.高圧法低密度ポリエチレン(D)
本発明のエチレン系樹脂組成物(A)は、後述する特性(D-1)~(D-2)を同時に満たす、高圧法低密度ポリエチレン(D)を含むことが好ましい。上記高圧法低密度ポリエチレンは、高圧ラジカル重合法により得ることができ、高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレンとも呼称される。高圧法低密度ポリエチレンは溶融弾性が高く、特に押出ラミネート加工時のネックインの改良に多く用いられる。
【0046】
(D-1)メルトフローレート(MFR)
本発明に用いられる高圧法低密度ポリエチレン(D)のメルトフローレート(MFR:190℃、21.18N荷重)は、1~20g/10分であり、好ましくは1~10g/10分である。MFRが上記範囲であることにより、加工時のネックイン、延展性のバランスが向上する。
ここで、MFRは、JIS-K6922-2:1997附属書(190℃、21.18N荷重)に準拠して測定する値である。
【0047】
(D-2)密度
本発明に用いられる高圧法低密度ポリエチレン(D)の密度は、0.915~0.930g/cmであり、好ましくは0.915~0.925g/cmである。密度が上記範囲であることにより、加工時のネックイン、延展性のバランスが向上する。
ここで、密度は、JIS-K6922-2:1997附属書(低密度ポリエチレンの場合)に準拠して測定する(測定温度23℃)。
【0048】
また、本発明のエチレン系樹脂組成物(A)における高圧法低密度ポリエチレン(D)の含有量は、好ましくは5~30重量%である。高圧法低密度ポリエチレン(D)の含有量が下限値以上であると、ネックインが改善され生産性が向上し、また、上限値以下であると、低温シール性やホットタック性が向上するため好ましい。
【0049】
1-4.エチレン系樹脂組成物(A)
本発明のエチレン系樹脂組成物(A)は、エチレン系樹脂(B)およびエチレン系樹脂(C)を含み、必要に応じてさらに、高圧法低密度ポリエチレン(D)を含む。また、本発明のエチレン系樹脂組成物(A)は、好ましくは後述する特性(A-1)~(A-3)を同時に満たし、必要に応じてさらに、特性(A-3)’、(A-3)”を満たす。
【0050】
(A-1)メルトフローレート(MFR)
本発明に用いるエチレン系樹脂組成物(A)のメルトフローレート(MFR:190℃、21.18N荷重)は、1~15g/10分であり、好ましくは1~12g/10分、より好ましくは1~10g/10分である。MFRが上記範囲であることにより、押出加工性に優れ、ホットタック性や高温シール時の発泡耐性が良好となる。
ここで、MFRは、JIS-K6922-2:1997附属書(190℃、21.18N荷重)に準拠して測定する値である。
【0051】
(A-2)密度
本発明に用いるエチレン系樹脂組成物(A)の密度は、0.915~0.940g/cmであり、好ましくは0.920~0.938g/cm、より好ましくは0.925~0.935g/cmである。密度が上記範囲であることにより、ヒートシール性、耐熱性および耐圧性とのバランスに優れ、剛性が良好となる。
ここで、密度は、JIS-K6922-2:1997附属書(低密度ポリエチレンの場合)に準拠して測定する(測定温度23℃)。
【0052】
(A-3)温度上昇溶離分別(TREF)
本発明に用いるエチレン系樹脂組成物(A)は、特定の結晶性分布を有し、以下の各特性を満たす。
【0053】
当該エチレン系樹脂組成物(A)は、オルトジクロロベンゼンを溶媒とするTREFによって得られる溶出曲線において、(i)溶出温度が85℃以下と85℃以上に、それぞれピークを少なくとも1つ有し、(ii)溶出温度が85℃以下の溶出物((a1)+(a2)+(a3))の割合が45~90重量%であり、(iii)溶出温度が85℃以上の溶出物(a4)の割合が10~55重量%である。(ただし、(a1)、(a2)、(a3)、(a4)の合計は100重量%である。)
ここで、(a1)、(a2)、(a3)は、後述する通り、溶出温度が55℃以下の溶出物(a1)、溶出温度が55℃~70℃以下の溶出物(a2)、溶出温度が70~85℃以下の溶出物(a3)を表す。
【0054】
エチレン系樹脂組成物(A)の溶出曲線は、85℃以下に少なくとも1つのピークを有する。85℃以下のピークの内、最大ピークが存在する位置の温度範囲は、好ましくは30℃~80℃である。また、上記範囲に存在するピークの数としては、1つでもよく、2つ以上でもよい。
【0055】
また、該溶出曲線は、85℃以上に少なくとも1つのピークを有する。85℃以上のピークの内、最大ピークが存在する位置の温度の上限は、好ましくは100℃以下であり、より好ましくは95℃以下である。また、上記範囲に存在するピークの数としては、1つでもよく、2つ以上でもよい。
【0056】
溶出温度が85℃以下の溶出物((a1)+(a2)+(a3))の割合は、エチレン系樹脂組成物(A)全体100重量%に対して45~90重量%、好ましくは45~65重量%である。85℃以下の溶出物((a1)+(a2)+(a3))は低結晶成分および低結晶と高結晶の中間領域の成分であり、((a1)+(a2)+(a3))の含有量が上記範囲であることにより、押出ラミネート加工性に優れる。また、ヒートシール時の結晶化速度が遅くなり、流動性が向上するため、中間層が押しつぶされやすくなり、低温シール性が向上する。
【0057】
溶出温度が85℃以上の溶出物(a4)の割合は、エチレン系樹脂組成物(A)全体100重量%に対して10~55重量%、好ましくは35~55重量%である。85℃以上の溶出物(a4)は高結晶領域の成分であり、(a4)の含有量が上記範囲であることにより、剛性や耐熱性に優れる。また、ヒートシール時の結晶化速度が速くなるためシール外観に優れる。
【0058】
当該エチレン系樹脂組成物(A)は、オルトジクロロベンゼンを溶媒とするTREFによって得られる溶出曲線において、(iv)溶出温度が55℃以下と55℃~85℃に、それぞれピークを少なくとも1つ有し、(v)溶出温度が55℃以下の溶出物(a1)の割合が5~30重量%であり、(vi)溶出温度が55℃~70℃以下の溶出物(a2)の割合が1~30重量%であり、(vii)溶出温度が70~85℃以下の溶出物(a3)の割合が20~55重量%であることが好ましい。(ただし、(a1)、(a2)、(a3)、(a4)の合計は100重量%である。)
【0059】
エチレン系樹脂組成物(A)の溶出曲線は、55℃以下に少なくとも1つのピークを有することが好ましい。55℃以下のピークの内、最大ピークが存在する位置の温度の下限は、好ましくは30℃以上である。また、上記範囲に存在するピークの数としては、1つでもよく、2つ以上でもよい。
【0060】
また、該溶出曲線は、55℃~85℃以下に少なくとも1つのピークを有することが好ましい。55℃~85℃以上のピークの内、最大ピークが存在する位置の温度の上限は、好ましくは80℃以下であり、最大ピークが存在する位置の温度の下限は、好ましくは70℃以上である。また、上記範囲に存在するピークの数としては、1つでもよく、2つ以上でもよい。
【0061】
溶出温度が55℃以下の溶出物(a1)の割合は、エチレン系樹脂組成物(A)全体100重量%に対して、好ましくは5~30重量%、より好ましくは7~25重量%である。55℃以下の溶出物(a1)は低結晶領域の成分であり、該成分の影響でヒートシール時の結晶化速度が遅くなり、流動性が向上するため、中間層が押しつぶされやすくなる。そのため、(a1)の含有量が上記範囲であることにより、低温シール性が向上する。
【0062】
溶出温度が55℃~70℃の溶出物(a2)の割合は、エチレン系樹脂組成物(A)全体100重量%に対して、好ましくは1~30重量%、より好ましくは3~20重量%である。55℃~70℃の溶出物(a2)は低結晶と高結晶の中間領域の内、低結晶領域寄りの成分であり、該成分の影響でヒートシール時に適度な弾性を保持することができる。
【0063】
溶出温度が70℃~85℃の溶出物(a3)の割合は、エチレン系樹脂組成物(A)全体100重量%に対して、好ましくは20~55重量%、より好ましくは20~45重量%である。70℃~85℃の溶出物(a3)は低結晶と高結晶の中間領域の内、高結晶領域寄りの成分であり、該成分の影響でヒートシール時に適度な弾性を保持し、押出ラミネート加工性が良好となる。
【0064】
当該エチレン系樹脂組成物(A)は、オルトジクロロベンゼンを溶媒とするTREFによって得られる溶出曲線において、(viii)溶出温度が55℃以下の溶出物(a1)の割合と溶出温度が55℃~70℃の溶出物(a2)の割合の比の値が1~5であり、(ix)溶出温度が70℃~85℃の溶出物(a3)の割合と溶出温度が55~70℃の溶出物(a2)の割合の比の値が1~5であり、(x)溶出温度が70~85℃の溶出物(a3)の割合と溶出温度が55℃以下の溶出物(a1)の割合の比の値が、1~5であり、(xi)溶出温度が70℃以下の溶出物((a1)+(a2))の割合と溶出温度が70℃以上の溶出物((a3)+(a4))の割合の比の値が0.2~1.2であることがより好ましい。(ただし、(a1)、(a2)、(a3)、(a4)の各々の割合の合計は100重量%である。)
【0065】
溶出温度が55℃以下の溶出物(a1)の割合と溶出温度が55℃~70℃の溶出物(a2)の割合の比の値は、好ましくは1~5、より好ましくは1~4である。(a1)の割合と(a2)の割合の比の値が上記範囲であることにより、低温シール性が良好となる。一方、(a1)の割合と(a2)の割合の比の値が上記範囲より大きいと、剛性や耐熱性が悪化する。また、(a1)の割合と(a2)の割合の比の値が上記範囲より小さいと、低温シール性が悪化する。
【0066】
溶出温度が70℃~85℃の溶出物(a3)の割合と溶出温度が55℃~70℃の溶出物(a2)の割合の比の値は、好ましくは1~5、より好ましくは2.5~5である。(a3)の割合と(a2)の割合の比の値が上記範囲であることにより、ヒートシール時の弾性と剛性のバランスに優れ、かつ、押出ラミネート加工性が良好となる。一方、(a3)の割合と(a2)の割合の比の値が上記範囲より大きいと、低温シール性が悪化する。また、(a3)の割合と(a2)の割合の比の値が上記範囲より小さいと、押出ラミネート加工性が悪化する。
【0067】
溶出温度が70℃~85℃の溶出物(a3)の割合と溶出温度が55℃以下の溶出物(a1)の割合の比の値は、好ましくは1~5、より好ましくは1~4である。(a3)の割合と(a1)の割合の比の値が上記範囲であることにより、ヒートシール時の弾性と結晶化速度のバランスに優れ、かつ、押出ラミネート加工性が良好となる。一方、(a3)の割合と(a1)の割合の比の値が上記範囲より大きいと、低温シール性が悪化する。また、(a3)の割合と(a1)の割合の比の値が上記範囲より小さいと、剛性、耐熱性および押出ラミネート加工性が悪化する。
【0068】
溶出温度が70℃以下の溶出物((a1)+(a2))の割合と溶出温度が70℃以上の溶出物((a3)+(a4))の割合の比の値は、好ましくは0.2~1.2、より好ましくは0.2~0.7である。((a1)+(a2))の割合と((a3)+(a4))の割合の比の値が上記範囲であることにより、ヒートシール性、耐熱性および耐圧性とのバランスに優れ、ホットタック性や高温シール時の発泡耐性が良好となる。一方、((a1)+(a2))の割合と((a3)+(a4))の割合の比の値が上記範囲より大きいと、耐熱性が悪化し、また、シール後退や、シール温度が高温の際に発泡が見られ、シール外観が損なわれる。また、((a1)+(a2))の割合と((a3)+(a4))の割合の比の値が上記範囲より小さいと、低温シール性および耐圧性が悪化する。
【0069】
[TREFの測定方法]
以下に、TREF測定の具体的な方法について説明する。
試料を140℃でオルトジクロロベンゼン(0.5mg/mL BHT入り)に溶解し溶液とする。これを140℃のTREFカラムに導入した後8℃/分の降温速度で100℃まで冷却し、引き続き4℃/分の降温速度で40℃まで冷却し、更に続いて1℃/分の降温速度で-15℃まで冷却し、20分間保持する。その後、溶媒であるオルトジクロロベンゼン(0.5mg/mL BHT入り)を1mL/分の流速でカラムに流し、TREFカラム中で-15℃のオルトジクロロベンゼンに溶解している成分を10分間溶出させ、次に昇温速度100℃/時間にてカラムを140℃までリニアに昇温し、溶出曲線を得る。
【0070】
装置及び測定条件は例えば以下の通りである。
(TREF部)
TREFカラム:4.3mmφ×150mmステンレスカラム
カラム充填材:100μm表面不活性処理ガラスビーズ
加熱方式:アルミヒートブロック
冷却方式:ペルチェ素子(ペルチェ素子の冷却は水冷)
温度分布:±0.5℃
温調器:チノー社製 デジタルプログラム調節計KP1000
(バルブオーブン)
加熱方式:空気浴式オーブン
測定時温度:140℃
温度分布:±1℃
バルブ:6方バルブ、4方バルブ
(試料注入部)
注入方式:ループ注入方式
注入量:ループサイズ 0.1mL
注入口加熱方式:アルミヒートブロック
測定時温度:140℃
(検出部)
検出器:波長固定型赤外検出器 FOXBORO社製 MIRAN 1A
検出波長:3.42μm
高温フローセル:LC-IR用ミクロフローセル、
光路長:1.5mm、窓形状2φ×4mm長丸、合成サファイア窓板
測定時温度:140℃
(ポンプ部)
送液ポンプ:センシュウ科学社製 SSC-3461ポンプ
<測定条件>
溶媒:オルトジクロロベンゼン(0.5mg/mL BHT入り)
試料濃度:5mg/mL
試料注入量:0.1mL
溶媒流速:1mL/分
【0071】
なお、本発明のエチレン系樹脂組成物(A)は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、結晶造核剤、中和剤、金属不活性剤、着色剤、分散剤、スリップ剤、過酸化物、有機又は無機充填剤、蛍光増白剤、顔料等を含むことができる。また、本発明のエチレン系樹脂組成物(A)は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、エチレン系樹脂(B)、エチレン系樹脂(C)および高圧法低密度ポリエチレン(D)以外の樹脂成分を少量含むことができる。
【0072】
2.積層体
本発明の積層体は、シーラント層(X)、中間層(Y)および基材層(Z)の少なくとも3層を有し、中間層(Y)および/またはシーラント層(X)に上述した本発明のエチレン系樹脂組成物を用いてなる。また、この積層体は、好ましくはシーラント層(X)および中間層(Y)が、押出ラミネート法または共押出ラミネート法により、基材層(Z)上に積層される。
【0073】
基材層(Z)としては、紙、アルミニウム箔、セロファン、織布、不織布、高分子重合体などのフィルムが挙げられ、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、ポリ-4-メチルペンテン-1等のオレフィン重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル等のビニル共重合体、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン7、ナイロン10、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ポリメタキシリレンアジパミド等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリカーボネート等のフィルムを挙げることができる。基材層(Z)として用いるフィルムは、1種類を用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。また、該フィルムは、基材の種類によっては延伸加工を行ったものでもよい。延伸加工を行ったフィルムとしては、例えば、一軸、または二軸延伸ポリプロピレンフィルム、延伸ナイロンフィルム、延伸ポリエチエンテレフタレートフィルム、延伸ポリスチレンフィルムなどが挙げられる。さらに、上記フィルム上にポリ塩化ビニリデンやポリビニルアルコールなどをコーティングしたものや、アルミ、アルミナやシリカ、またはアルミナおよびシリカの混合物を蒸着したものを基材層(Z)として用いてもよい。液体や粘体を含む内容物を包装するための包装用フィルムの場合、基材層(Z)は、二軸延伸ナイロンフィルムや二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、またはそれら基材上にシリカやアルミナを蒸着したものを用いることができる。
【0074】
シーラント層(X)または中間層(Y)に上記エチレン系樹脂組成物を使用しない場合、特に限定されず、従来公知のエチレン系樹脂組成物を用いることができ、例えば、エチレン・α-オレフィン共重合体や、エチレン・α-オレフィン共重合体と高圧法低密度ポリエチレンとのブレンド組成物などを用いることができる。
【0075】
通常、積層体を製造する方法としては、例えば、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、押出法、サンドイッチラミネート法、共押出法等が挙げられる。例えば、ドライラミネーション等に使用する包装用フィルムは、カレンダー法、空冷インフレーション法、水冷インフレーション法、Tダイ成形法など任意の方法が挙げられる。また、押出法の場合は、押出ラミネート法、ドライラミネート法、サンドイッチラミネート法、共押出ラミネート法(接着層を設けない共押出、接着層を設ける共押出、接着樹脂を配合する共押出等を含む)等の方法がある。
【0076】
本発明の積層体において、基材層(Z)の少なくとも一方の面に、シーラント層(X)および中間層(Y)を積層する際、押出ラミネート法または共押出ラミネート法が好適に用いられる。これらの方法を用いることにより、積層体の生産性に優れる。
例えば、液体、粘体などを含む内容物を包装するための包装用フィルムを作る方法としては、生産性と品質の観点から、タンデム押出ラミネート法が好適に用いられる。タンデム押出ラミネート法は、2種類の樹脂層を逐次積層する方法であり、例えば、押出ラミネート法にて基材層(Z)上に1層目として中間層(Y)を積層し、さらに2層目としてシーラント層(X)を積層する方法である。
【0077】
積層体において、積層体全体の厚み、各層の厚みや各層の厚み比については特に制限はなく、内容物や用途等に応じて適宜選択することができる。積層体全体の厚みは、例えば、40~120μm、基材層の厚みは10~40μm、シーラント層の厚みは10~40μm程度である。中間層の厚みは20~40μm程度とすることができる。また、積層の際は、基材表面の接着性をよくするために、予め基材層上にコロナ放電処理、オゾン処理、フレーム処理等の表面処理を行うことができる。さらに、接着性増強等のために、予め基材上にアンカーコート剤を塗布してから積層することができる。アンカーコート剤としては、イソシアネート系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系等のものが挙げられる。
【0078】
3.包装用フィルム
本発明の包装用フィルムは、種々の包装材、例えば、食品包装材、医療用包装材、エンジンオイルなどの工業材料包装材等として用いることができる。中でも、液体を含む内容物を包装するためのフィルムとして好適に用いることができる。例えば、液体、繊維および粉体等の固形状の不溶物を含む液体並びに粘体等の流体を内容物として収容するための包装材として用いることができる。
【0079】
液体を含む内容物の包装形態としては、例えば、上記の基材層(X)/中間層(Y)/シーラント層(Z)の順に積層された積層体を用いた包装用フィルムの1片もしくは2片を常法のヒートシール機で、二方シール、三方シールまたは四方シールして袋状としたものである。袋の形状としては、一般的には矩形であるが、任意の形状とすることができる。
【実施例0080】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例において使用した測定方法、評価方法および樹脂材料は、以下の通りである。
【0081】
[測定方法]
(1)MFR:JIS K6922-2:1997付属書(190℃、21.18N荷重)に準拠して行った。
(2)密度:JIS K6922-2:1997付属書(23℃)に準拠して行った。
(3)示差走査熱量測定(DSC):JIS-K7121:2010に準拠して行った。
【0082】
[液体充填評価方法]
(1)液体の充填
液体自動充填包装機(大成ラミック社製)を用いて、次の条件で液体を充填した。
(充填条件)
シール温度:(縦)170℃、(横)120℃~195℃
包装形態:三方シール
袋寸法:幅75mm×縦65mmピッチ
充填物:水(30℃)
充填量:約15g
充填速度:15m/分 (実施例1~5、比較例1~3)
25m/分 (実施例1~4、比較例1~2)
【0083】
(2)充填適性の判定基準
上記の条件で横シール温度を変更して充填を行い、下記の耐圧条件にて、破袋やシール後退、水漏れの有無を評価した。
(耐圧条件)
耐圧試験機(小松製作所社製)にて100kgで1分間荷重をかけ、破袋やシール後退、水漏れの有無を評価した。
(評価基準)
○:横シール外観が良好であり、耐圧評価で破袋やシール後退、水漏れがなく、発泡が見られなかった。
△:横シール外観が良好であるが、耐圧評価で破袋やシール後退、水漏れがあった。
×:耐圧評価でシール後退等が見られなかったが、横シール外観に発泡が見られた。
なお、耐圧試験は充填直後に実施した。
【0084】
[使用樹脂]
P1:エチレン・1-ヘキセン共重合体(メタロセン触媒を用いて製造した線状ポリエチレン(mLLD)、MFR9g/10分、密度0.920g/cm
P2:エチレン・1-ヘキセン共重合体(チーグラー触媒を用いて製造した線状ポリエチレン(ZN-LL)、MFR2g/10分、密度0.936g/cm
P3:エチレン・1-ヘキセン共重合体(メタロセン触媒を用いて製造した線状ポリエチレン(mLLD)、MFR4g/10分、密度0.931g/cm
P4:エチレン・1-ヘキセン共重合体(メタロセン触媒を用いて製造した線状ポリエチレン(mLLD)、MFR4g/10分、密度0.927g/cm
P5:エチレン・1-ヘキセン共重合体(メタロセン触媒を用いて製造した線状ポリエチレン(mLLD)、MFR16g/10分、密度0.911g/cm
P6:エチレン・アクリル酸メチル共重合体(EMA)(MFR3g/10分、融点77℃)
P7:エチレン・アクリル酸メチル共重合体(EMA)(MFR6g/10分、融点90℃)
P8:高圧法低密度ポリエチレン(HPLD)(MFR2g/10分、密度0.919g/cm
P9:高圧法低密度ポリエチレン(HPLD)(MFR4g/10分、密度0.918g/cm
また、エチレン系樹脂組成物として市販の下記製品をそれぞれ使用した。
P10:日本ポリエチレン社製 ハーモレックスNH645A(MFR8g/10分、密度0.913g/cm
P11:日本ポリエチレン社製 ハーモレックスNH646A(MFR9g/10分、密度0.914g/cm
P12:日本ポリエチレン社製 ハーモレックスNH746A(MFR10g/10分、密度0.914g/cm
【0085】
【表1】
【0086】
[実施例1]
エチレン系樹脂(B)としてP1を67重量%、エチレン系樹脂(C)としてP6を18重量%、高圧法低密度ポリエチレン(D)としてP8を15重量%配合した。これをブレンダーにて十分に混合し、40mmφ単軸押出機を用いてエチレン系樹脂組成物(A)のペレットを得た。
押出ラミネート成形機を用い、幅500mm、厚み15μmの二軸延伸ナイロンフィルム(東洋紡社製 ハーデンフィルムN2102)を基材層として、その上に、2液系アンカーコート剤(大日精化社製 セイカダイン2710A、セイカダイン2810C)をボウズロールにて塗工しながら、またラミネート部にてオゾン吹きつけを行いながら、エチレン系樹脂組成物(A)を中間層用樹脂組成物として、引取速度100m/分、被覆厚み25μmで溶融押出しミネート加工を行い、中間層を積層した。押出ラミネート成形機は、口径90mmφの押出機に装着したTダイスから押し出される樹脂の温度が300℃になるように設定し、冷却ロール表面温度25℃、ダイス幅560mmで引取加工速度が100m/分の場合に被覆厚みが25μmになるように押出量を調整した。
さらにこの中間層の上に、同じ押出ラミネート成形機を用いシーラント層材料(日本ポリエチレン社製 カーネルKC460S)を押出樹脂温度280℃、引取速度100m/分、被覆厚み25μmで溶融押出ラミネート加工を実施し、シーラント層を積層した。加工後の積層フィルムを40℃のオーブン内にて48時間のエージングを行った後、幅150mmにスリットすることで評価用の包装用フィルムを得た。評価結果を表2に示す。
【0087】
[実施例2]
下記の方法により得られたエチレン系樹脂組成物(A)を用いた以外は、実施例1と同様に評価用フィルムを作製した。評価結果を表2に示す。
エチレン系樹脂(B)としてP1を90重量%、P2を10重量%配合した。該エチレン系樹脂(B)を68重量%、エチレン系樹脂(C)としてP6を20重量%、高圧法低密度ポリエチレン(D)としてP8を12重量%配合した。これをブレンダーにて十分に混合し、40mmφ単軸押出機を用いてエチレン系樹脂組成物(A)のペレットを得た。
【0088】
[実施例3]
下記の方法により得られたエチレン系樹脂組成物(A)を用いた以外は、実施例1と同様に評価用フィルムを作製した。評価結果を表2に示す。
エチレン系樹脂(B)としてP3を68重量%、エチレン系樹脂(C)としてP6を20重量%、高圧法低密度ポリエチレン(D)としてP8を12重量%配合した。これをブレンダーにて十分に混合し、40mmφ単軸押出機を用いてエチレン系樹脂組成物(A)のペレットを得た。
【0089】
[実施例4]
下記の方法により得られたエチレン系樹脂組成物(A)を用いた以外は、実施例1と同様に評価用フィルムを作製した。評価結果を表2に示す。
エチレン系樹脂(B)としてP4を79重量%、エチレン系樹脂(C)としてP7を9重量%、高圧法低密度ポリエチレン(D)としてP8を12重量%配合した。これをブレンダーにて十分に混合し、40mmφ単軸押出機を用いてエチレン系樹脂組成物(A)のペレットを得た。
【0090】
[実施例5]
下記の方法により得られたエチレン系樹脂組成物(A)を用いた以外は、実施例1と同様に評価用フィルムを作製した。評価結果を表2に示す。
エチレン系樹脂(B)としてP1を19重量%、P2を8重量%、P5を73重量%配合した。該エチレン系樹脂(B)を70重量%、エチレン系樹脂(C)としてP6を20重量%、高圧法低密度ポリエチレン(D)としてP9を10重量%配合した。これをブレンダーにて十分に混合し、40mmφ単軸押出機を用いてエチレン系樹脂組成物(A)のペレットを得た。
【0091】
[比較例1]
エチレン系樹脂組成物(A)としてP10を用いた以外は、実施例1と同様に評価用フィルムを作製した。評価結果を表2に示す。
【0092】
[比較例2]
エチレン系樹脂組成物(A)としてP11を用いた以外は、実施例1と同様に評価用フィルムを作製した。評価結果を表2に示す。
【0093】
[比較例3]
エチレン系樹脂組成物(A)としてP12を用いた以外は、実施例1と同様に評価用フィルムを作製した。評価結果を表2に示す。
【0094】
【表2】
【0095】
[評価結果]
実施例1~5のフィルムは、表2に示されるように、横シール温度が低温から高温まで幅広い温度範囲であり、液体充填性が良好であった。中でも、実施例3は、低結晶性分および高結晶成分をバランスよく含み、特に幅広い充填温度の結果が得られた。
一方、比較例1~3のフィルムは、実施例と比較すると横シール温度の範囲は狭くなり、充填適性に劣る。
図1