(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098537
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】コンベア用潤滑剤組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 173/02 20060101AFI20230703BHJP
C10M 133/06 20060101ALI20230703BHJP
C10M 137/04 20060101ALI20230703BHJP
C10M 133/08 20060101ALI20230703BHJP
C10M 129/08 20060101ALI20230703BHJP
C10M 129/06 20060101ALI20230703BHJP
C10M 135/10 20060101ALI20230703BHJP
C10M 145/28 20060101ALI20230703BHJP
C10M 145/26 20060101ALI20230703BHJP
C10M 129/16 20060101ALN20230703BHJP
C10N 30/18 20060101ALN20230703BHJP
C10N 40/32 20060101ALN20230703BHJP
【FI】
C10M173/02
C10M133/06
C10M137/04
C10M133/08
C10M129/08
C10M129/06
C10M135/10
C10M145/28
C10M145/26
C10M129/16
C10N30:18
C10N40:32
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021215604
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】319001710
【氏名又は名称】シーバイエス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】比企 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】松岡 慎治
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BB02C
4H104BB04C
4H104BB41C
4H104BB41Z
4H104BE02C
4H104BE04C
4H104BG06C
4H104BH03C
4H104CB14C
4H104LA09
4H104PA37
(57)【要約】
【課題】 本発明は、容器搬送用の潤滑剤をコンベア上に供給しコンベア稼働時に発生する泡立ちを抑え、特にステンレスコンベアに対しても潤滑性が優れることを特徴とする安全に塩素系酸化物との併用が可能なコンベア用潤滑剤組成物を提供する。
【解決手段】(A)アニオン性界面活性剤、(B)アルキルアミン、(C)アルカリ剤、(D)水を含有し、(A)成分のアニオン界面活性剤と(B)成分のアルキルアミンの質量比が(A):(B)=1:0.07~1.33であり液性がpH7.5以上であることを特徴とする、安全に塩素系酸化物との併用を可能とするコンベア用潤滑剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アニオン性界面活性剤
(B)アルキルアミン
(C)アルカリ剤
(D)水
を含有し、(A)成分のアニオン界面活性剤と(B)成分のアルキルアミンの質量比が(A):(B)=1:0.07~1:1.33であり、アルカリ剤を配合し、液性がpH7.5以上であることを特徴とするコンベア用潤滑剤組成物。
【請求項2】
前記(A)成分が水溶性脂肪酸アルカリ塩または下記一般式(1)で表されるアルキルリン酸エステルのアルカリ塩
(A)下記一般式(1)で表されるアニオン界面活性剤、
【化1】
(ただし一般式(1)のうち、RはC3~C20のアルキル基またはアルケニル基。nは0~4の整数、qは1~4の整数。mは1~2の整数。Mは水素またはアルカリ金属、アミン又はアルカノールアミンであり、EOはエチレンオキサイド、AOはプロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドから選ばれる一種以上である。)請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記(B)成分の脂肪族アルキルアミンが、N-オレイル-1,3-ジアミノプロパン、N-ラウリル-1,3-ジアミノプロパン等からなる請求項1~2に記載のコンベア用潤滑剤組成物。
【請求項4】
前記(C)成分のアルカリ剤は特に限定されず、例えばアルカリ金属水酸化物、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の請求項1~3に記載のコンベア用潤滑剤組成物。
【請求項5】
さらに(E)可溶化剤を使用することを特徴とする請求項1~4に記載のコンベア用潤滑剤組成物。
【請求項6】
(E)成分の可溶化剤が、芳香族スルホン酸(キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸、トルエンスルホン酸等)およびその塩、安息香酸及びその塩、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、イソプレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルポリグリコシド等の群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1~5に記載のコンベア用潤滑剤組成物。
【請求項7】
前記組成物は必要に応じて除菌効果を目的とした塩素系化合物との併用が可能であることを特徴とする請求項1~6に記載のコンベア用潤滑剤組成物
【請求項8】
水およびお湯で50~1000倍に希釈し、コンベア上にスプレーノズルを使用して噴霧、あるいはノズルを使用し連続、または間欠供給し、コンベア表面に潤滑剤組成物を塗布することで容器の搬送移動に用いる請求項1~7のコンベア用潤滑剤組成物。
【請求項9】
塩素系化合物は予め水で濃縮液を準備し、配管内で10~100ppmに調整して使用する。あるいは事前に調整した10~100ppmの塩素系化合物の水溶液を用いて潤滑希釈液を調整して使用する請求項1~8に記載のコンベア用潤滑剤組成物およびその使用方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビンや缶等の各種容器の搬送に使用されるコンベア用潤滑剤の組成物に関し、特に潤滑性に優れ容器搬送用の潤滑剤をコンベア上に供給時に発生する泡の抑泡性に優れることを特徴とする塩素系化合物の添加が可能な潤滑剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
牛乳、ビール、酒、清涼飲料等の食品、薬品、化粧品等をビンや缶に充填する工程では、ビンや缶を搬送する手段として、多数のプレートを搬送方向に無端状に連ねた搬送コンベアが広く利用されている。
【0003】
これら搬送コンベアは通常、自動制御により連続運転され、このため、コンベア上の容器の流れが停止してもコンベアのみがそのまま連続して運転される。この場合、容器とコンベアのプレート表面との間に摩擦が生じて、倒ビンや容器を傷つける等の不都合が生じるので、この摩擦を低下させる必要がある。一方、洗浄機から運ばれてきた容器をそのまま搬送コンベアの流れに乗せるには、コンベアのプレート表面に適当な静摩擦力が要求される。
【0004】
上述の要求を満たす潤滑剤として、従来、ステンレスコンベアや樹脂コンベア等材質問わずに良好な潤滑性を提供する潤滑基剤としては、高級脂肪酸石けんやアルキルリン酸エステルのアルカリ塩を主体とした潤滑剤が使用されている。これらを配合した組成物を水で100~400倍に希釈した水溶液を潤滑剤として搬送コンベアのプレート表面に塗布して使用に供されていた。
【0005】
しかし、これら高級脂肪酸石けんや、アルキルリン酸エステルのアルカリ塩を主体とした潤滑剤組成物は潤滑性には優れているものの、ビンや缶等の搬送時にコンベア表面上に多量の泡が発生する場合があることが知られている。
【0006】
このようにコンベア表面上に泡が発生するとビンや缶に泡が付着する。また、特にビンの場合、空ビンや実ビン検査機でビンの破損状態や洗浄不良、さらには内容量不足等を検査することが通例である。このとき、ビンに泡が付着すると、この泡がビンの破損や汚れ等と上記検査機で誤って検出されてしまう。また、製品によってはボトル底面からわずかな幅に製品ラベルが貼られているものもあり、そのようなボトルを搬送時に潤滑剤の使用により発生した泡がラベルに付着しラベルに損傷を与える場合がある。
【0007】
また、飲食料品を製造・充填等をする製造施設では微生物対策を目的としてカチオン界面活性剤を含有しているものが多く使われているが、長期に使用することでコンベア表面上や配管ノズル或いはドレンパンにいる菌がカチオン界面活性剤に対して耐性を持ってしまう場合があるという欠点もある。
【0008】
このような潤滑剤による問題を解決するために、例えば特許第5248133号公報には、(A)成分として、炭素数10~20炭化水素基を持つ1価の有機ヒドロキシ化合物に酸化エチレン及び酸化プロピレンを付加して生成されるノニオン界面活性剤、(B)成分として水、及び(C)成分として0.03~0.45質量%のオルガノポリシロキサンを含有し、(A)成分のノニオン界面活性剤に含有されるポリオキシアルキレン基の重合度が3~30であり、該ポリオキシアルキレン基中のオキシエチレン基の含有量が50~95モル%であることを特徴とするコンベア用潤滑剤組成物が開示されている。(特許文献1を参照)
【0009】
また、例えば特許第6438316号公報には、(A)成分として、炭素数12~22の脂肪族アルコールに酸化エチレン及び酸化プロピレンを付加して生成されるノニオン界面活性剤、(B)成分として水を含有し、(A)成分のノニオン界面活性剤に含有されるポリオキシアルキレン基の重合度が40~100モルであり、該ポリオキシアルキレン基中のオキシエチレン基の含有量が80~95モル%であることを特徴とするベルトコンベア用潤滑剤組成物が開示されている。(特許文献2を参照)
【0010】
また、特許第6501596号公報には、(A)成分としてグアニジン系除菌剤、(B)成分としてベンズイソチアゾリン系除菌剤、(C)成分としてノニオン界面活性剤、(D)成分として水、及び(E)成分として両性界面活性剤、を含有し、(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)=0.05~400であり、(A)成分と(C)成分の質量比が、(A)/(C)=0.01~20であり、かつ、(A)成分と(E)成分の質量比が、(A)/(E)=0.05~5であり、pH4~pH7であることを特徴とするベルトコンベア用潤滑剤組成物が開示されている。(特許文献3を参照)
【0011】
また、特許第5368085号公報には、(A)アルキルアルコキシル化リン酸エステル(B)アミン酢酸塩(C)アルキルポリグリコシド界面活性剤であるコンベア用潤滑剤組成物が開示されている。(特許文献4を参照)
【先行技術文献】
【0012】
【特許文献1】特許第5248133号公報
【特許文献2】特許第6438316号公報
【特許文献3】特許第6501596号公報
【特許文献4】特許第5368085号公報
【0013】
しかしながら、特許文献1、特許文献2、特許文献3の潤滑剤組成物では、抑泡効果はあるものの、アニオン界面活性剤を含まない為、ステンレスコンベア上での使用、特にビール壜の製造工場におけるガラス壜の搬送には十分な潤滑性が得られないという課題があった。
【0014】
また、特許文献4はアニオン界面活性剤を含むが酸性の潤滑剤であり、高レベルな衛生管理を行い、様々な菌種に対し除菌効果の高い塩素系化合物を潤滑剤希釈液に添加しているような工場では、酸性の潤滑剤は塩素ガスが発生するおそれがあるため安全面の課題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ステンレスコンベアに対して、潤滑性、抑泡性に優れ、塩素系化合物を使用時に塩素ガスを発生させることのないコンベア用潤滑剤組成物およびこの潤滑剤を用いたベルトコンベアの潤滑性付与方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、(A)成分としてアニオン界面活性剤、(B)成分としてアルキルアミン、(C)成分としてアルカリ剤、(D)成分として水を含有し(A)成分に対する(B)成分の質量比を特定の範囲としたコンベア用潤滑剤組成物が、pH7.5以上であることで塩素系化合物の添加が可能であり、潤滑性に優れ、泡立ちが抑制できること発見し本発明を完成するに至った。
【0017】
即ち本発明は、下記の一般式(A)~(D)成分を含有することを特徴とするコンベア用潤滑剤組成物:
[1](A)下記一般式(1)で表されるアニオン界面活性剤、
【化1】
(ただし一般式(1)のうち、RはC3~C20のアルキル基またはアルケニル基。nは0~4の整数、qは1~4の整数。mは1~2の整数。Mは水素またはアルカリ金属であり、AOはプロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドから選ばれる一種以上、EOはエチレンオキサイドである。)及びC12~C18の飽和又は不飽和脂肪酸およびその塩
(B)成分としてアルキルアミン
(C)アルカリ剤
(D)水を含有し、(A)成分と(B)成分の質量比が(A)/(B)=0.07~1.33であり、(C)成分のアルカリ剤を配合し液性がpH7.5以上であることを特徴とするコンベア用潤滑剤組成物。
【0018】
[2]さらに(E)成分として可溶化剤を含有する[1]の潤滑剤組成物。
[3](E)成分の可溶化剤は、アルキルアミンを可溶化でき抑泡効果が得られるものとして、芳香族スルホン酸(キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸、トルエンスルホン酸等)およびその塩、安息香酸及びその塩、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、イソプレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルポリグリコシド等の群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする[1]に記載のコンベア用潤滑剤組成物。
[4]前記組成物は、必要に応じて除菌効果を目的とした塩素系化合物との併用が可能であることを特徴とするコンベア用潤滑剤組成物。
【0019】
[5]上記の潤滑剤組成物を原液で使用してもよいし、水またはお湯を用いて50~1000倍に希釈した潤滑剤をコンベア上部に設けたノズルから噴霧または塗布して容器の搬送移動に用いるコンベア用潤滑剤組成物の使用方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、潤滑剤を供給しコンベアを稼働中に発生する泡に対し抑泡効果があり、潤滑性に優れたコンベア用潤滑剤組成物であり、液性がアルカリであることで潤滑剤希釈液に塩素系化合物を添加して使用することも可能なコンベア用潤滑剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、(A)アニオン界面活性剤、(B)成分としてアルキルアミン(C)アルカリ剤、(D)成分として水を含有し、液性がpH7.5以上であることを特徴とするベルトコンベア用潤滑剤組成物に関する。
【0022】
本発明で用いられる(A)成分のアニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸、アルキルリン酸エステルから成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。
【0023】
(A)成分である脂肪酸およびその塩としては、例えば、C12~C18の飽和又は不飽和脂肪酸およびその塩を挙げることができ、具体的にはトール油脂肪酸、オレイン酸、ヤシ油脂肪酸等があげられる。
【0024】
また(A)成分であるアルキルリン酸エステルおよびその塩としては、下記一般式(1)で表される。
【化1】
(ただし一般式(1)のうち、RはC3~C20のアルキル基またはアルケニル基。nは0~4の整数、qは1~4の整数。mは1(ただし一般式(1)のうち、RはC3~C20のアルキル基またはアルケニル基。nおよびqは1~4の整数。mは1~2の整数。Mは水素またはアルカリ金属であり、AOはプロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドから選ばれる一種以上、EOはエチレンオキサイドである。)
【0025】
(B)成分であるアルキルアミンは、処方性および抑泡性の点から、オレイルプロピレンジアミン、ココナットプロピレンジアミン、タロ-プロピレンジアミン、ラウリルプロピレンジアミン、大豆プロピレンジアミン等の脂肪族アルキルジアミンである。なかでも、N-オレイル-1,3-ジアミノプロパン、N-ラウリル-1,3-ジアミノプロパンの一種以上の使用が好ましい。
【0026】
(A)成分のアニオン界面活性剤と(B)成分のアルキルアミンの抑泡効果の得られる質量比は(A):(B)=1:0.07以上であり、より好ましくは1:0.1以上である。
【0027】
(B)成分の量は、(A):(B)=1:1.33以下の割合で配合することができる。アニオン界面活性剤よりも多く配合しても抑泡効果に変化はなく、可溶化剤の必要量も増えることから、(A):(B)=1:1以下が好ましく、希釈時の安定性の点から1:0.5以下がより好ましい。
【0028】
(C)成分のアルカリ剤の配合量は、(A)成分のアニオン界面活性剤および任意の酸性原料の配合量によりpHが7.5以上になるように配合する。また過剰に配合しても潤滑性、抑泡性に影響は見られないが、使用時における安全面の観点からpH10以下が好ましい。
【0029】
(C)成分のアルカリ剤は特に限定されず、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、エチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、エチルジエタノールアミン等が挙げられる。これらは1種用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、モノエタノールアミン、トリエタノールアミンが好ましい。
【0030】
(D)成分の水は、水道水、軟水、純水、蒸留水、イオン交換水、精製水等が挙げられ、経済性の点から、水道水、軟水、イオン交換水が好ましい。
【0031】
(E)成分の可溶化剤は、(B)成分のアルキルアミンを可溶化させ、さらに安定化させる効果がある。可溶化剤としては、芳香族スルホン酸(キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸、トルエンスルホン酸)およびその塩、安息香酸およびその塩、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、イソプレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリアルキルグリコシド等が挙げられ、なかでも、経済性の点からキシレンスルホン酸およびキシレンスルホン酸ナトリウムが好ましい。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせても良い。可溶化剤は2~20質量%の範囲で配合される。さらにはコストを考慮すると2~15質量%が好ましい。
【0032】
本発明の組成物に添加し使用する塩素系化合物としては、亜塩素酸ナトリウム等の亜塩素酸塩、次亜塩素酸ナトリウム等の過塩素酸塩、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム等の塩素化シアヌル酸塩が挙げられる。中でも経済性の観点から、次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。
【0033】
本発明のコンベア用潤滑剤組成物は任意成分として、必要に応じてさらに除菌剤、消泡剤、キレート剤を含有してもよい。
【0034】
また、本発明のコンベア用潤滑剤組成物は、使用時に所望される効果が失われない範囲において、50~1000倍に水または湯で希釈し潤滑剤希釈液として用いられる。潤滑剤希釈液は、使用時に所望の使用濃度に希釈しても良いし、予め適度な濃度に希釈した溶液を作っておいて、これを使用時にさらに所望の使用濃度になるように希釈してもよい。また、コンベア用潤滑剤組成物の各成分を個別に希釈しておき、使用時に混合してもよい。
【0035】
また、除菌効果を付与する為に、汎用的に使用されている塩素系化合物である次亜塩素系殺菌剤を使用時に有効塩素濃度が10~100ppmになるよう希釈し、使用直前に混合するか、それぞれを同時にコンベア上に添加して使用することもできる。こうして希釈された潤滑剤希釈液はコンベア上に対しておおむね10~200ml/分、好ましくは30~100ml/分の割合でポンプ等を介しノズルから連続的或いは間欠的に噴霧しても刷毛等で塗布してもよい。
【0036】
本発明のコンベア用潤滑剤組成物およびそれを用いた使用方法は、飲料工場およびビール工場などで使用されるコンベアを使用したボトル搬送で用いることができ、特にステンレスコンベア上でガラス壜を搬送する際の潤滑剤として好適に用いることができる。
【実施例0037】
以下、実施例について比較例と併せて説明する。本発明は、これらに限定されるものではない。なお、各表の組成物の数値は、各成分の純分を表したものであり、その単位は質量%である。
【0038】
1.抑泡性
〔試験方法〕
各供試洗浄剤組成物の200倍希釈液を純水で作成し、外径28mmの100
ら泡上面までの容量を比色管の目盛りより測定した。
〔評価基準〕
とし、○および△を実用性のあるものとして判定した。
【0039】
2.潤滑性試験
本発明の潤滑剤組成物の実施例1~22および比較例1~6について、その潤滑性を以下のとおり評価した。なお、実施例1~22、比較例1~6は、50~1000倍に希釈し試験に供した。
【0040】
〔試験方法〕
ステンレスコンベアプレート上に試験用容器を置き、次いで、このコンベアプレート上に本発明の潤滑剤組成物を、それぞれ、12ml/分で供給したときの10分後の摩擦係数(μ)を測定し、各容器の潤滑性を評価した。なお、テストコンベアのコンベア速度は40cm/秒とし、試験用容器は、ビール大壜1本とした。摩擦係数(μ)は以下の算定式より算出した。
摩擦係数(μ)=引張抵抗値(g)/テスト容器の総重量(g)
〔評価基準〕
○:0.13未満
△:0.13以上0.14未満
×:0.14以上
とし、○および△を実用性のあるものとして判定した。
【0041】
3.処方性
〔試験方法〕
各供試洗浄剤組成物100ml のガラス製スクリュー管容器に入れ、常温で一週間静置した後に外観を観察した。
〔評価基準〕
○:透明を保ち安定である
△:沈殿物や分離は見られないが、濁りが生じる
×:沈殿物や分離が生じる。
とし、○を実用性のあるものとして判定した。
【0042】
4.除菌性試験
本発明のコンベア用潤滑剤組成物に関し、後記の表1に示す実施例1~6の処方をイオン交換水で400倍に希釈し、表1中の有効塩素濃度(30ppm~90ppm)になるように事前に準備した所定の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を直前に添加して混合し、試験に供した。また、比較例1~6の処方には、次亜塩素酸ナトリウムを添加せずに試験に供した。
【0043】
〔試験方法〕
懸濁法により、供試潤滑剤組成物の除菌性を試験し、以下の評価基準で判定した。
〔供試菌株〕
緑膿菌(シュードモナス エルギノーザ)初発菌数:7.5×107 cfu/ml
〔接触時間/温度〕10分/20℃
〔使用希釈水〕イオン交換水。
〔評価基準〕
コンベア用潤滑剤組成物と接触後の菌数の減少に基づいて、以下の評価基準にしたがって除菌性を評価した。
○:Logリダクションが5以上の菌数減少
△:Logリダクションが2以上5未満の菌数減少
×:Logリダクションが2未満の菌数減少
とし、高度な除菌管理の為○を実用性のあるものとして判定した。
【0044】
(A)成分
・アニオン界面活性剤1
ポリオキシアルキレン(PO1モル、EO1モル)ラウリルエーテルリン酸
一般式(1)のR=C12、n=1、q=1、m=1、M=水素。
(純分83%以上)
・アニオン界面活性剤2
ポリオキシアルキレン(EO2モル)ラウリルエーテルリン酸
一般式(1)のR=C12、n=0、q=2、m=1、M=水素。
製品名「フォスファノールML220」(東邦化学社製、有効成分85%以上)
・アニオン界面活性剤3
ポリオキシアルキレン(PO2モル、EO2モル)ラウリルエーテルリン酸
一般式(1)のR=C10、n=2、q=2、m=1、M=水素。
(純分83%以上)、試作品
・アニオン界面活性剤4
ポリオキシアルキレン(PO1モル、EO1モル)ラウリルエーテルリン酸
一般式(1)のR=C12-C14、n=1、q=1、m=1、M=水素。
(純分83%以上)、試作品
・アニオン界面活性剤5
ヤシ脂肪酸
製品名「椰子脂肪酸」(ミヨシ油脂社製、有効成分100%)
・アニオン界面活性剤6
トール油脂肪酸
製品名「ハートールFA-1」(ハリマ化成、有効成分100%)
【0045】
(B)成分
・アルキルアミン1
N-ココ-1,3-プロピレンジアミン
製品名「ディノラムC」(CECA社製、有効成分90%以上)
・アルキルアミン2
N-オレイル-1,3-プロピレンジアミン
製品名「ディノラムO」(CECA社製、有効成分90%以上)
【0046】
(C)成分
・モノエタノールアミン
製品名「モノエタノールアミン90」(日本触媒社製、有効成分90%)
・水酸化ナトリウム
製品名「液体苛性ソーダ48%」(トクヤマ社製、有効成分48%)
【0047】
(D)成分
・イオン交換水
【0048】
(E)成分
・可溶化剤1
メタキシレンスルホン酸ナトリウム
製品名「テイカトックスN1140」(テイカ社製、有効成分40%)
・可溶化剤2
クメンスルホン酸ナトリウム
製品名「テイカトックスN5040」(テイカ社製、有効成分40%)
・可溶化剤3
プロピレングリコール
製品名「プロピレングリコール」(AGC社製、有効成分100%)
・可溶化剤4
ヘキシレングリコール
製品名「ヘキシレングリコール」(アルケマ社製、有効成分100%)
・可溶化剤5
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル
製品名「ノニオン HT-510」(日本油脂社製、有効成分100%)
・可溶化剤6
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル
製品名「アデカトールLB-83」(アデカ社製、有効成分100%)
・可溶化剤7
ポリオキシエチレンアルキルエーテル
製品名「HA-9M」(日本触媒社製、有効成分100%)
・可溶化剤8
安息香酸ソーダ
製品名「安息香酸ナトリウム」(伏見製薬社製、有効成分100%)
・可溶化剤9
アルキルポリグリコシド
製品名「AG6202」(ライオン社製、有効成分65%)
【0049】
[任意成分]
・キレート剤:エチレンジアミン四酢酸(有効成分100%)
[検証用]
・酢酸(有効成分50%)
【0050】
【0051】
上記表1~表5の評価結果から、実施例1~22は、いずれも常温時の処方性に優れ、抑泡性、潤滑性の性能面においての効果が得られていることがわかる。また、アルカリであるため、塩素ガスの発生を心配する必要がなく、安全に次亜塩素酸ナトリウムを添加して除菌効果を付与することができる。
【0052】
これに対し比較例1~3は、アニオン界面活性剤の配合が無い場合は、十分な潤滑性能を得られていないことがわかる。比較例4、5は、良好な潤滑性ではあるが、アルキルアミンが不十分であるため抑泡効果は得られないことがわかる。また、比較例6は、可溶化剤を配合していないものは分離してしまい処方が不安定であることが示された。
【0053】
以上の結果より、実施例1~22のコンベア用潤滑剤組成物は、潤滑性と抑泡性に優れ、アルカリであることにより塩素系化合物との併用による除菌効果を提供できる優れたコンベア用潤滑剤であると判断された。