IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 立川ブラインド工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-保持ケース及び遮蔽装置 図1
  • 特開-保持ケース及び遮蔽装置 図2
  • 特開-保持ケース及び遮蔽装置 図3
  • 特開-保持ケース及び遮蔽装置 図4
  • 特開-保持ケース及び遮蔽装置 図5
  • 特開-保持ケース及び遮蔽装置 図6
  • 特開-保持ケース及び遮蔽装置 図7
  • 特開-保持ケース及び遮蔽装置 図8
  • 特開-保持ケース及び遮蔽装置 図9
  • 特開-保持ケース及び遮蔽装置 図10
  • 特開-保持ケース及び遮蔽装置 図11
  • 特開-保持ケース及び遮蔽装置 図12
  • 特開-保持ケース及び遮蔽装置 図13
  • 特開-保持ケース及び遮蔽装置 図14
  • 特開-保持ケース及び遮蔽装置 図15
  • 特開-保持ケース及び遮蔽装置 図16
  • 特開-保持ケース及び遮蔽装置 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098548
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】保持ケース及び遮蔽装置
(51)【国際特許分類】
   E06B 9/323 20060101AFI20230703BHJP
【FI】
E06B9/323
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071070
(22)【出願日】2022-04-22
(31)【優先権主張番号】P 2021215103
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000250672
【氏名又は名称】立川ブラインド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】岡村 正
【テーマコード(参考)】
2E043
【Fターム(参考)】
2E043AA02
2E043BC01
2E043CA03
2E043DA01
2E043DB02
(57)【要約】
【課題】2つの速度調整装置を保持することにより、これらの速度調整装置のヘッドボックス内における省スペース化を実現可能な保持ケースを提供する。
【解決手段】本発明によれば、遮蔽装置の第1速度調整装置及び第2速度調整装置をヘッドボックス内で保持する保持ケースであって、前記第1速度調整装置は、前記ヘッドボックスの長手方向に沿って配置された第1駆動軸の回転を許容しつつその回転を制動するものであり、前記第2速度調整装置は、前記第1駆動軸と略平行に配置された第2駆動軸の回転を許容しつつその回転を制動するものであって、前記第1速度調整装置を収容する第1収容部と、前記第2速度調整装置を収容する第2収容部とを備え、前記第1収容部及び前記第2収容部は、前記第1速度調整装置及び前記第2速度調整装置をそれぞれ、前記長手方向と垂直な短手方向に互いにずれた位置であって且つ前記第1速度調整装置及び前記第2速度調整装置の一部同士が前記短手方向に互いに重なる位置に収容するよう構成される、保持ケースが提供される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮蔽装置の第1速度調整装置及び第2速度調整装置をヘッドボックス内で保持する保持ケースであって、
前記第1速度調整装置は、前記ヘッドボックスの長手方向に沿って配置された第1駆動軸の回転を許容しつつその回転を制動するものであり、前記第2速度調整装置は、前記第1駆動軸と略平行に配置された第2駆動軸の回転を許容しつつその回転を制動するものであって、
前記第1速度調整装置を収容する第1収容部と、前記第2速度調整装置を収容する第2収容部とを備え、
前記第1収容部及び前記第2収容部は、前記第1速度調整装置及び前記第2速度調整装置をそれぞれ、前記長手方向と垂直な短手方向に互いにずれた位置であって且つ前記第1速度調整装置及び前記第2速度調整装置の一部同士が前記短手方向に互いに重なる位置に収容するよう構成される、保持ケース。
【請求項2】
請求項1に記載の保持ケースであって、
前記第1収容部は、前記長手方向に沿った第1方向に開口し、
前記第2収容部は、前記第1方向とは反対方向である第2方向に開口している、保持ケース。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の保持ケースであって、
前記第1収容部及び前記第2収容部は、前記第1速度調整装置及び前記第2速度調整装置をそれぞれ、前記第1速度調整装置及び前記第2速度調整装置の一部同士が前記長手方向に互いに重なる位置に収容するよう構成される、保持ケース。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の保持ケースであって、
前記第1速度調整装置は、前記第1駆動軸の回転を増速する第1変速装置を備え、前記第2速度調整装置は、前記第2駆動軸の回転を増速する第2変速装置を備えており、
前記第1収容部及び前記第2収容部は、前記第1速度調整装置及び前記第2速度調整装置をそれぞれ、前記第1変速装置及び前記第2変速装置の一部同士が前記短手方向に互いに重なる位置に収容するよう構成される、保持ケース。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の保持ケースであって、
弾性体から構成され、硬度が70度~90度である、保持ケース。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の保持ケースであって、
前記第1速度調整装置及び前記第2速度調整装置は、それぞれ遠心式の速度調整装置である、保持ケース。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載の保持ケースであって、
前記第1収容部によって形成される第1収容空間と前記第2収容部によって形成される第2収容空間とは連通している、保持ケース。
【請求項8】
請求項2に記載の保持ケースであって、
前記第1収容部は、前記第1速度調整装置の前記第2方向側を覆う第1底壁部を備え、
前記第2収容部は、前記第2速度調整装置の前記第1方向側を覆う第2底壁部を備えており、
前記第1底壁部及び前記第2底壁部にはそれぞれ、通気孔が設けられている、保持ケース。
【請求項9】
第1遮蔽材と、第2遮蔽材と、前記ヘッドボックスと、前記第1駆動軸と、前記第2駆動軸と、前記第1速度調整装置と、前記第2速度調整装置とを備えた遮蔽装置であって、
前記第1遮蔽材は、前記第1駆動軸の回転により開閉し、前記第2遮蔽材は、前記第2駆動軸の回転により開閉するよう構成され、
請求項1又は請求項2に記載の保持ケースをさらに備えた、遮蔽装置。
【請求項10】
請求項9に記載の遮蔽装置であって、
前記第1速度調整装置は、前記第1遮蔽材の付勢方向の移動に対応する前記第1駆動軸の回転を制動し、前記第1遮蔽材の非付勢方向の移動に対応する前記第1駆動軸の回転は制動しないよう構成され、
前記第2速度調整装置は、前記第2遮蔽材の付勢方向の移動に対応する前記第2駆動軸の回転を制動し、前記第2遮蔽材の非付勢方向の移動に対応する回転は制動しないよう構成されており、
前記保持ケースは、前記第1速度調整装置及び前記第2速度調整装置の情報を表示する表示手段を備える、遮蔽装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動軸の回転を制動する速度調整装置を備えた遮蔽装置の保持ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、速度調整装置により駆動軸の回転を許容しつつその制動することで、遮蔽材の付勢方向への動作速度を抑えることの可能な遮蔽装置がある。例えば、特許文献1には、遮蔽材の下降に伴う駆動軸の回転により遠心体と円筒体の間に摩擦を発生させることで、駆動軸の回転を制動する遮蔽装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-106268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、遮蔽装置の中には、上下や前後等に配置される2つの遮蔽材を備え、これら2つの遮蔽材を独立して操作可能なものがある。このような遮蔽装置の場合、各遮蔽材の操作のため、ヘッドボックス内に2つの駆動軸が配置される。しかしながら、このような2つの駆動軸を備えた遮蔽装置において各駆動軸に対してそれぞれ速度調整装置を設けた場合、ヘッドボックス内に大きなスペースが必要となっていた。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、2つの速度調整装置を保持することにより、これらの速度調整装置のヘッドボックス内における省スペース化を実現可能な保持ケースを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)遮蔽装置の第1速度調整装置及び第2速度調整装置をヘッドボックス内で保持する保持ケースであって、前記第1速度調整装置は、前記ヘッドボックスの長手方向に沿って配置された第1駆動軸の回転を許容しつつその回転を制動するものであり、前記第2速度調整装置は、前記第1駆動軸と略平行に配置された第2駆動軸の回転を許容しつつその回転を制動するものであって、前記第1速度調整装置を収容する第1収容部と、前記第2速度調整装置を収容する第2収容部とを備え、前記第1収容部及び前記第2収容部は、前記第1速度調整装置及び前記第2速度調整装置をそれぞれ、前記長手方向と垂直な短手方向に互いにずれた位置であって且つ前記第1速度調整装置及び前記第2速度調整装置の一部同士が前記短手方向に互いに重なる位置に収容するよう構成される、保持ケース。
(2)(1)に記載の保持ケースであって、前記第1収容部は、前記長手方向に沿った第1方向に開口し、前記第2収容部は、前記第1方向とは反対方向である第2方向に開口している、保持ケース。
(3)(1)又は(2)に記載の保持ケースであって、前記第1収容部及び前記第2収容部は、前記第1速度調整装置及び前記第2速度調整装置をそれぞれ、前記第1速度調整装置及び前記第2速度調整装置の一部同士が前記長手方向に互いに重なる位置に収容するよう構成される、保持ケース。
(4)(1)~(3)のいずれかに記載の保持ケースであって、前記第1速度調整装置は、前記第1駆動軸の回転を増速する第1変速装置を備え、前記第2速度調整装置は、前記第2駆動軸の回転を増速する第2変速装置を備えており、前記第1収容部及び前記第2収容部は、前記第1速度調整装置及び前記第2速度調整装置をそれぞれ、前記第1変速装置及び前記第2変速装置の一部同士が前記短手方向に互いに重なる位置に収容するよう構成される、保持ケース。
(5)(1)~(4)のいずれかに記載の保持ケースであって、弾性体から構成され、硬度が70度~90度である、保持ケース。
(6)(1)~(5)のいずれかに記載の保持ケースであって、前記第1速度調整装置及び前記第2速度調整装置は、それぞれ遠心式の速度調整装置である、保持ケース。
(7)(1)~(6)のいずれかに記載の保持ケースであって、前記第1収容部によって形成される第1収容空間と前記第2収容部によって形成される第2収容空間とは連通している、保持ケース。
(8)(2)に記載の保持ケースであって、前記第1収容部は、前記第1速度調整装置の前記第2方向側を覆う第1底壁部を備え、前記第2収容部は、前記第2速度調整装置の前記第1方向側を覆う第2底壁部を備えており、前記第1底壁部及び前記第2底壁部にはそれぞれ、通気孔が設けられている、保持ケース。
(9)第1遮蔽材と、第2遮蔽材と、前記ヘッドボックスと、前記第1駆動軸と、前記第2駆動軸と、前記第1速度調整装置と、前記第2速度調整装置とを備えた遮蔽装置であって、前記第1遮蔽材は、前記第1駆動軸の回転により開閉し、前記第2遮蔽材は、前記第2駆動軸の回転により開閉するよう構成され、(1)~(7)のいずれかに記載の保持ケースをさらに備えた、遮蔽装置。
(10)(9)に記載の遮蔽装置であって、前記第1速度調整装置は、前記第1遮蔽材の付勢方向の移動に対応する前記第1駆動軸の回転を制動し、前記第1遮蔽材の非付勢方向の移動に対応する前記第1駆動軸の回転は制動しないよう構成され、前記第2速度調整装置は、前記第2遮蔽材の付勢方向の移動に対応する前記第2駆動軸の回転を制動し、前記第2遮蔽材の非付勢方向の移動に対応する回転は制動しないよう構成されており、前記保持ケースは、前記第1速度調整装置及び前記第2速度調整装置の情報を表示する表示手段を備える、遮蔽装置。
【0007】
本発明によれば、保持ケースの第1収容部が第1速度調整装置を収容し、第2収容部が第2速度調整装置を収容することにより、2つの速度調整装置が長手方向から見たときにその一部同士が重なる位置に配置されるようになっている。これにより、2つの速度調整装置をヘッドボックス内において近接させた位置で保持することが可能となり、2つの速度調整装置のヘッドボックス内における省スペース化が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態に係るプリーツスクリーン100の概略を示す正面図である。
図2図1のプリーツスクリーン100の概略を示す側面図である。
図3図1のプリーツスクリーン100の概略を示す平面図である。
図4図1のプリーツスクリーン100の前側速度調整装置12A、後側速度調整装置12B及びこれらを保持する保持ケース11の概略を示す斜視図である。
図5】前側速度調整装置12A、後側速度調整装置12B及び保持ケース11の、図4とは異なる方向から見た斜視図である。
図6図4の保持ケース11の斜視図である。
図7図4の保持ケース11の、図6とは異なる方向から見た斜視図である。
図8図4の保持ケース11の平面図である。
図9図4の保持ケース11の側面図である。
図10図4の保持ケース11の、図4及び図5とは異なる方向から見た斜視図である。
図11図11Aは、前側速度調整装置12A、後側速度調整装置12Bを保持ケース11に収容する前の状態を示す説明図であり、図11Bは、前側速度調整装置12A、後側速度調整装置12Bを保持ケース11に収容した状態を示す説明図である。
図12】本発明の第2実施形態に係る保持ケース11の斜視図である。
図13図12の保持ケース11の、図12とは異なる方向から見た斜視図である。
図14図14A及び図14Bは、本発明の第2実施形態に係るプリーツスクリーン100の前側昇降コード3A及び後側昇降コード3Bを垂下させる態様を示す説明図である。
図15】本発明の第2実施形態の変形例に係る保持ケース11の斜視図である。
図16図16Aは、前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bを本発明の変形例に係る保持ケース11に収容する前の状態を示す説明図であり、図16Bは、前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bを保持ケース11に収容した状態を示す説明図である。
図17】本発明の他の変形例に係る保持ケース11を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
【0010】
1.プリーツスクリーン100の構成
図1図3は、本発明の第1実施形態に係る遮蔽装置としてのプリーツスクリーン100の概略を示す正面図、側面図及び平面図である。本実施形態のプリーツスクリーン100は、図2に示すように、第1遮蔽材としての前側スクリーン1Aと第2遮蔽材としての後側スクリーン1Bの前後2つのスクリーンを備えたダブルプリーツスクリーンとして構成される。ここで、本明細書では、図1に示すプリーツスクリーン100の正面図に対して、図の上方及び図の下方を前側スクリーン1A及び後側スクリーン1Bの吊り下げ方向に準じてそれぞれ上方向(又は上側)及び下方向(又は下側)と定義する(図2も参照)。また、図1の正面図に対して、図の左方向及び右方向をプリーツスクリーン100の左側及び右側と定義する(図3も参照)。なお、この方向は、ヘッドボックス2の長手方向とも称される。加えて、図1の正面図に対して、視認する側を前側(又は室内側)、その反対側を後側(又は室外側)とし、前後方向と称するときは、図1の正面図における図示面に対して垂直な方向をいう(図2及び図3も参照)。この方向は、ヘッドボックス2の短手方向とも称される。
【0011】
本実施形態のプリーツスクリーン100は、図2に示すように、前側スクリーン1A及び後側スクリーン1Bと、ヘッドボックス2とを備える。また、プリーツスクリーン100は、図1図3に示すように、前側スクリーン1A及び後側スクリーン1Bを開閉するための開閉手段として、複数の前側昇降コード3A及び後側昇降コード3Bと、複数の前側巻取コーン4A及び後側巻取コーン4Bと、第1駆動軸としての前側駆動軸5A及び第2駆動軸としての後側駆動軸5Bと、操作装置6と、プーリ7と、操作コード8とを備える。さらに、プリーツスクリーン100は、前側駆動軸5A及び後側駆動軸5Bの回転を規制するための構成として、図3に示すように、前側ストッパ装置9A及び後側ストッパ装置9Bと、前側下限リミット装置10A及び後側下限リミット装置10Bと、保持ケース11に保持された第1速度調整装置としての前側速度調整装置12A及び第2速度調整装置としての後側速度調整装置12B(図4参照)と、を備える。以下、各構成について具体的に説明する。
【0012】
前側スクリーン1A及び後側スクリーン1Bは、ヘッドボックス2から吊り下げ支持される。前側スクリーン1Aは、例えば、レース生地等の半透過性の生地をジグザグ状に折り畳み可能としたものであり、後側スクリーン1Bは、例えば、遮光性を備えた生地をジグザグ状に折り畳み可能としたものである。
【0013】
前側スクリーン1Aの後方側の各折り曲げ部分には、後方に延びる溶着部13Aが設けられ、当該溶着部には左右方向において略等間隔に複数の前側昇降コード3Aが挿通されている。また、各前側昇降コード3Aの下端には、前側ボトムレール14Aが取着されている。同様に、後側スクリーン1Bの後方側の各折り曲げ部分には、後方に延びる溶着部13Bが設けられ、当該溶着部13Bには左右方向において略等間隔に複数の後側昇降コード3Bが挿通されている。また、各後側昇降コード3Bの下端には、後側ボトムレール14Bが取着されている。
【0014】
各前側昇降コード3A及び各後側昇降コード3Bの上端部は、ヘッドボックス2の内部で支持部材15に回転可能に支持される前側巻取コーン4A及び後側巻取コーン4Bに巻着されている。すなわち、図3に示すように、各前側昇降コード3A及び各後側昇降コード3Bは、ヘッドボックス2内において各前側昇降コード3A及び各後側昇降コード3Bの上方位置で前後方向に並列する状態で支持部材15に回転可能に支持されている。そして、前側昇降コード3A及び後側昇降コード3Bは、前側巻取コーン4A及び後側巻取コーン4Bの回転に基づいて、螺旋状に巻き取られ、或いは巻戻される。
【0015】
前側巻取コーン4Aには、ヘッドボックス2の長手方向(左右方向)に沿って配置された六角棒状の前側駆動軸5Aが相対回転不能に挿通される。また、後側巻取コーン4Bには、同じくヘッドボックス2の長手方向(左右方向)に沿って配置された六角棒状の後側駆動軸5Bが相対回転不能に挿通されている。そして、前側駆動軸5Aが前側昇降コード3Aの巻取り方向に回転されると、前側巻取コーン4Aに前側昇降コード3Aが巻き取られ、後側駆動軸5Bが後側昇降コード3Bの巻取り方向に回転されると、後側巻取コーン4Bに後側昇降コード3Bが巻き取られる。
【0016】
ヘッドボックス2の一方の端部(図1図3における右側端部)には、前側駆動軸5A及び後側駆動軸5Bを回転駆動するための操作装置6が取着されている。操作装置6の基端側にはプーリ7が回転可能に支持され、プーリ7には無端状の操作コード8(例えば、ボールチェーン)が掛装されて下方へ垂下されている。そして、操作コード8の操作によりプーリ7を回転駆動可能となっている。
【0017】
プーリ7には歯車(図示せず)が一体に形成され、その歯車に伝達歯車(図示せず)が噛み合わされている。従って、プーリ7が回転されると、この伝達歯車が回転する。この伝達歯車の回転は、前側駆動軸5A及び後側駆動軸5Bに対応する一対のクラッチ機構(図示せず)の各入力軸に噛み合わされている。このクラッチ機構は、各入力軸の一方向の回転のみをそれぞれ対応する各出力軸に伝達する公知の機能を備え、伝達する回転方向は互いに逆方向である。そしてクラッチ機構の一方の出力軸に前側駆動軸5Aの端部が嵌着され、他方のクラッチ機構の出力軸に後側駆動軸5Bの端部が嵌着されている。
【0018】
このような構成により、操作コード8を例えば図2に示す矢印X方向に操作すると、前側駆動軸5Aのみが回転されて、前側巻取コーン4Aが前側昇降コード3Aの巻取り方向に回転される。また、操作コード8を図2に示す矢印Y方向に操作すると、後側駆動軸5Bのみが回転されて、後側巻取コーン4Bが後側昇降コード3Bの巻取り方向に回転される。
【0019】
また、前側駆動軸5A及び後側駆動軸5Bは、ヘッドボックス2内に配置された前側ストッパ装置9A及び後側ストッパ装置9Bにそれぞれ挿通されている。これら前側ストッパ装置9A及び後側ストッパ装置9Bは、前側ボトムレール14A若しくは後側ボトムレール14Bの引き上げ操作の後に操作コード8を手放したとき、前側ボトムレール14A及び後側ボトムレール14Bの自重降下を防止する公知の作用をなす。
【0020】
加えて、ヘッドボックス2の他方の端部(図1図3における左側端部)には、前側下限リミット装置10A及び後側下限リミット装置10Bが併設されている。前側下限リミット装置10Aは、前側巻取コーン4Aからの前側昇降コード3Aの最大戻し量を設定して、前側ボトムレール14Aの下限位置を設定する。同様に、後側下限リミット装置10Bは、後側巻取コーン4Bからの後側昇降コード3Bの最大巻戻し量を設定して、後側ボトムレール14Bの下限位置を設定する。
【0021】
さらに、ヘッドボックス2内における前側ストッパ装置9A及び後側ストッパ装置9Bの側方において、前側駆動軸5A及び後側駆動軸5Bは、前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12B(図4及び図5参照)にそれぞれ挿通されている。前側速度調整装置12Aは、前側駆動軸5Aの回転を許容しつつその回転を制動するガバナ装置(ダンパ)であり、後側速度調整装置12Bは、後側駆動軸5Bの回転を許容しつつその回転を制動するガバナ装置(ダンパ)である。
【0022】
本実施形態において、前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bは、例えば、ブレーキドラム内でウェイトを回転させ、その遠心力によりウェイトとブレーキドラムの間に摩擦を発生させることで制動力を発生させる遠心式の速度調整装置である。前側速度調整装置12Aは、図4及び図5に示すように、円筒状の前側本体部16Aと、第1変速装置としての前側変速装置17Aとを備え、後側速度調整装置12Bは、円筒状の後側本体部16Bと、第2変速装置としての後側変速装置17Bとを備えている。前側変速装置17Aは、前側駆動軸5Aの回転を増速して前側本体部16Aのウェイト(ウェイトホルダ、図示せず)に伝達するよう構成されている。同様に、後側変速装置17Bは、後側駆動軸5Bの回転を増速して後側本体部16Bのウェイト(ウェイトホルダ、図示せず)に伝達するよう構成されている。
【0023】
本実施形態において、前側変速装置17A及び後側変速装置17Bは、それぞれ複数の平歯ギアにより構成される。したがって、本実施形態の前側変速装置17A及び後側変速装置17Bは、平歯ギアを内装するため、図4図5及び図11A図11Bにも示すように、その一部が前側変速装置17A及び後側変速装置17Bに挿入される前側駆動軸5A及び後側駆動軸5Bの軸方向(左右方向)とは垂直な方向に突出する構造となっている。以下では、前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bのうち突出しない部分を柱状部18A及び柱状部18Bと呼ぶ。また、前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bのうち前側変速装置17A及び後側変速装置17Bの構成により突出する部分を突出部19A及び突出部19Bと呼ぶ。本実施形態において、前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bの柱状部18A及び柱状部18Bは、突出部19A及び突出部19Bよりも左右方向に長く延在している。
【0024】
このような前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bにより、本実施形態のプリーツスクリーン100では、前側駆動軸5A及び後側駆動軸5Bの回転速度が抑制される。そして、これにより、前側ボトムレール14A及び後側ボトムレール14Bの自重降下時の下降速度が抑制されるようになっている。
【0025】
なお、本実施形態において、前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bは、保持ケース11に保持される。保持ケース11の構成については、後述する。
【0026】
2.プリーツスクリーン100の動作
次に、このように構成されたプリーツスクリーン100の動作を説明する。まず、操作コード8を矢印X方向に引き下げると、前側駆動軸5Aのみが回転されて前側巻取コーン4Aに前側昇降コード3Aが巻き取られ、前側ボトムレール14Aが引き上げられる。そして、前側ボトムレール14Aを所望高さまで引き上げた後、操作コード8を手放すと、前側ストッパ装置9Aの自重降下防止動作により、前側ボトムレール14Aが所望高さに保持される。
【0027】
この状態から、操作コード8を矢印X方向に引いた後に手放すと、前側ストッパ装置9Aの自重降下防止動作が解除され、前側ボトムレール14Aが自重降下する。前側ボトムレール14Aの降下速度は、前側速度調整装置12Aにより抑制(制動)される。
【0028】
一方、操作コード8を矢印Y方向に引き下げると、後側駆動軸5Bのみが回転されて後側巻取コーン4Bに後側昇降コード3Bが巻き取られ、後側ボトムレール14Bが引き上げられる。そして、後側ボトムレール14Bを所望高さまで引き上げた後、操作コード8を手放すと、後側ストッパ装置9Bの自重降下防止動作により、後側ボトムレール14Bが所望高さに保持される。
【0029】
この状態から、操作コード8を矢印Y方向に引いた後に手放すと、後側ストッパ装置9Bの自重降下防止動作が解除され、後側ボトムレール14Bが自重降下する。後側ボトムレール14Bの降下速度は、後側速度調整装置12Bにより抑制(制動)される。
【0030】
3.保持ケース11の構成
次に、図4図11Bを参照して、前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bを保持する保持ケース11の具体的な構成について説明する。
【0031】
保持ケース11は、図4及び図5に示すように、前側速度調整装置12Aを収容する第1収容部としての前側収容部20Aと、後側速度調整装置12Bを収容する第2収容部としての後側収容部20Bとを備える。前側収容部20Aは、前側駆動軸5Aの位置に対応してヘッドボックス2内の前側に配置され、後側収容部20Bは、後側駆動軸5Bの位置に対応してヘッドボックス2内の後側に配置される。また、保持ケース11は、図6及び図7に示すように、ヘッドボックス2に固定するための複数(図示例では、3本)の脚部21を備える。本実施形態において、脚部21は、保持ケース11の下壁部11aの下方においてそれぞれ左右方向に沿って延びている。
【0032】
前側収容部20Aは、図4図7に示すように、ヘッドボックス2の長手方向に沿った第1方向としての右方向に開口し、後側収容部20Bは、ヘッドボックス2の長手方向に沿った第1方向とは反対方向である第2方向としての左方向に開口している。そして、前側収容部20Aの開口により、第1収容空間としての前側収容空間S1が形成され(図4及び図6参照)、後側収容部20Bの開口により、第2収容空間としての後側収容空間S2が形成される(図5及び図7参照)。このような構成により、前側速度調整装置12Aと後側速度調整装置12Bとを保持ケース11に容易に収容し、また、保持ケース11から取り出すことができる。
【0033】
より具体的には、図6図10に示すように、前側収容部20Aは、前側速度調整装置12Aの柱状部18Aを収容する柱状部収容部30Aと、前側速度調整装置12Aの突出部19Aを収容する突出部収容部40Aとから構成される。後側収容部20Bは、後側速度調整装置12Bの柱状部18Bを収容する柱状部収容部30Bと、後側速度調整装置12Bの突出部19Bを収容する突出部収容部40Bとから構成される。また、突出部収容部40Aは、柱状部収容部30Aの後側に配置され、突出部収容部40Bは、柱状部収容部30Bの前側に配置される。したがって、突出部収容部40Aは、前側収容部20Aにおける後側収容部20B側に配置され、突出部収容部40Bは後側収容部20Bにおける前側収容部20A側に配置されることになる。
【0034】
なお、前側収容部20Aと後側収容部20Bの構成は同一であるため、以下の説明では、主に前側収容部20Aの構成を説明する。
【0035】
本実施形態において、柱状部収容部30Aと突出部収容部40Aは、図6図9及び図10に示すように、前後方向に隣接するよう配置され、互いに連続した前側収容空間S1を構成する。柱状部収容部30Aは、図9及び図10に示すように、前側速度調整装置12Aの柱状部18Aの上下方向及び前後方向を囲う側壁部31Aと、側壁部31Aの左端部において柱状部18Aの左側を覆う底壁部32Aとを備える。底壁部32Aには、前側駆動軸5Aを挿通する挿通孔33Aが形成されている(図7も参照)。一方、突出部収容部40Aは、前側速度調整装置12Aの突出部19Aの上下方向及び後方向を囲う側壁部41Aと、側壁部41Aの左端部において突出部19Aの左側を覆う底壁部42Aとを備える。前側速度調整装置12Aが前側収容部20Aに収容される際には、柱状部18Aの左端面が底壁部32Aと当接し、突出部19Aの左端面が底壁部42Aと当接することになる。
【0036】
なお、突出部収容部40Aの底壁部42Aは、前側収容空間S1と後側収容空間S2とを隔てる壁を構成しており、底壁部42Aは、後側収容部20Bの柱状部収容部30Bの底壁部32Bの一部でもある。図9及び図10に示すように、底壁部42A(底壁部32B)には、前側収容部20Aの前側収容空間S1と後側収容部20Bの後側収容空間S2とを連通する連通孔50が形成されている。同様に、後側収容部20Bの突出部収容部40Bの底壁部42Bは、前側収容部20Aの柱状部収容部30Aの底壁部32Aの一部でもある(図8参照)。そして、底壁部32A(底壁部42B)には、前側収容部20Aの前側収容空間S1と後側収容部20Bの後側収容空間S2とを連通する連通孔51が形成されている。
【0037】
加えて、本実施形態においては、図8に示すように、前側収容部20Aの柱状部収容部30Aの底壁部32A(後側収容部20Bの突出部収容部40Bの底壁部42B)が、後側収容部20Bの突出部収容部40Bの底壁部42B(前側収容部20Aの突出部収容部40Aの底壁部42A)よりも左側に設けられている。そして、図10示すように、底壁部32A(底壁部42B)の後端と底壁部42A(底壁部32B)の前端の間にも、前側収容部20Aの前側収容空間S1と後側収容部20Bの後側収容空間S2とを連通する連通路52が形成されている(同図の矢印Pも参照)。
【0038】
また、図9及び図10に示すように、柱状部収容部30Aの側壁部31Aの右端には、前側速度調整装置12Aをスナップフィットにより固定するための係止部22Aが設けられている。
【0039】
以上のような構成により、本実施形態の保持ケース11の前側収容部20A及び後側収容部20Bは、図11A及び図11Bに示すように、前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bをそれぞれ、前後方向に互いにずれた位置であって且つ、前側速度調整装置12Aの一部(特に、突出部収容部40A)と後側速度調整装置12Bの一部(特に、突出部収容部40B)が前後方向に互いに重なる位置に収容することになる。また、前側収容部20A及び後側収容部20Bは、前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bをそれぞれ、その一部同士が左右方向に互いに重なる位置に収容することになる。
【0040】
なお、図11Bに示す前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bが保持ケース11に保持されたときの前後方向の重複幅D1は、なるべく大きくとることが好ましい。ただし、この重複幅D1は、前側速度調整装置12A(特に、突出部収容部40A)と後側駆動軸5B、後側速度調整装置12B(特に、突出部収容部40B)と前側駆動軸5Aがそれぞれ干渉しない大きさに設定される。
【0041】
また、前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bが保持ケース11に保持されたときの左右方向の重複幅D2も、なるべく大きくとることが好ましい。ただし、この重複幅D2は、前側速度調整装置12Aの突出部収容部40Aと後側速度調整装置12Bの柱状部収容部30B、後側速度調整装置12Bの突出部収容部40Bと前側速度調整装置12Aの柱状部収容部30Aがそれぞれ干渉しない大きさに設定される。
【0042】
保持ケース11は、前側収容部20Aと後側収容部20Bとを一体的に設けた弾性体(例えば、硬質ゴム)により構成され、弾性体の硬度は、70度~90度とすることが好ましい。また、弾性体の硬度は、75度~90度とすることがより好ましく、80度~85度とすることがさらに好ましい。弾性体の硬度は、具体的には例えば、70,75,80,85,90度であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。ここで、上記弾性体の硬度は、デュロメータ(スプリング式ゴム硬度計)により測定したJIS K6253のタイプA(ショアA)に準拠する。
【0043】
なお、弾性体の硬度が小さすぎると、保持ケース11にねじれが発生し、固定性が低下する。一方、弾性体の硬度が大きすぎると、前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bの動作時に振動が発生し、振動吸収性が低下することになる。したがって、弾性体の硬度を上記の範囲とすることで、前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bの固定性及び振動吸収性を両立させることが可能となる。
【0044】
4.作用効果
以上、説明した実施形態によれば、以下に示す作用効果を得ることができる。
(1)前側収容部20Aを右方向に開口させ、後側収容部20Bを左方向に開口させることで、前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bを左右異なる方向から収容するよう構成した。また、前側収容部20A及び後側収容部20Bを、前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bが前後方向に互いにずれた位置であって且つ前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bの一部同士が前後方向に互いに重なる位置に収容されるよう構成した(図11B参照)。これにより、前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bの前後方向における設置幅が小さくなり、前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bの振動を抑制しつつ、前後方向の省スペース化が実現されている。
【0045】
特に、本実施形態では、図11Aに示すように、前側収容部20Aの突出部収容部40Aが前側収容部20Aにおける後側収容部20B側に配置され、後側収容部20Bの突出部収容部40Bが後側収容部20Bにおける前側収容部20A側に配置されている。これにより、図11Bに示すように、前側変速装置17Aの一部である前側速度調整装置12Aの突出部19Aと後側変速装置17Bの一部である後側速度調整装置12Bの突出部19Bが前後方向に互いに重なる位置に収容される。したがって、前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bがそれぞれ軸と垂直な方向(前後方向)に突出するような前側変速装置17A及び後側変速装置17Bを備える場合であっても、当該前後方向の設置幅を小さくすることが可能となっている。
【0046】
(2)前側収容部20A及び後側収容部20Bを、前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bの一部同士が左右方向に互いに重なる位置に収容するよう構成した(図11B参照)。これにより、左右方向の設置幅も小さくすることが可能となっている。
【0047】
(3)前側収容部20Aによって形成される前側収容空間S1と後側収容部20Bによって形成される後側収容空間S2とを連通させる連通孔50,51及び連通路52を形成した(図9及び図10参照)。これにより、保持ケース11内における左右方向の通気性を向上させ、前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bの排熱を効果的に行うことが可能となっている。
【0048】
5.第2実施形態
次に、図12図15を用いて、本発明の第2実施形態に係るプリーツスクリーン100及び保持ケース11について説明する。
【0049】
本実施形態のプリーツスクリーン100において、前側速度調整装置12Aは、前側スクリーン1Aの自重による下方向(付勢方向)の移動に対応する前側駆動軸5Aの回転を制動し、前側スクリーン1Aの上方向(非付勢方向)の移動に対応する前側駆動軸5Aの回転は制動しないよう構成される。つまり、前側速度調整装置12Aは、前側スクリーン1Aの自重降下に伴って前側昇降コード3Aが巻戻される際の前側駆動軸5Aの回転のみを制動する。また、後側速度調整装置12Bは、後側スクリーン1Bの自重による下方向(付勢方向)の移動に対応する後側駆動軸5Bの回転を制動し、後側スクリーン1Bの上方向(非付勢方向)の移動に対応する後側駆動軸5Bの回転は制動しないよう構成される。つまり、後側速度調整装置12Bは、後側スクリーン1Bの自重降下に伴って後側昇降コード3Bが巻戻される際の後側駆動軸5Bの回転のみを制動する。
【0050】
このような前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bの構成は、これら前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bがそれぞれワンウェイクラッチを備えることにより実現される。このような前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bの具体的な構成については、従来既知の構成を用いることができるため、その詳細な説明を省略する。
【0051】
また、本実施形態の保持ケース11は、通気孔60A,60Bを備える点と、表示手段としての第1刻印70及び第2刻印71とを備える点で第1実施形態に係る保持ケース11と異なっている。以下、保持ケース11についてのこれらの相違点について説明する。
【0052】
本実施形態の保持ケース11は、図12に示すように、前側収容部20Aにおいて前側速度調整装置12Aの左側を覆う第1底壁部としての底壁部32Aに、複数(図示例では、9個)の通気孔60Aを備えている。本実施形態において、複数の通気孔60Aは、前側駆動軸5Aを挿通する挿通孔33Aに対して同心円状に設けられる。また、各通気孔60Aは、挿通孔33Aよりも小さな径とされる。
【0053】
同様に、保持ケース11は、後側収容部20Bにおいて後側速度調整装置12Bの右側を覆う第2底壁部としての底壁部32Bに、複数(図示例では、9個)の通気孔60Bを備えている。複数の通気孔60Bは、後側駆動軸5Bを挿通する挿通孔33Bに対して同心円状に設けられる。また、各通気孔60Bは、挿通孔33bよりも小さな径の円形とされる。
【0054】
本実施形態の保持ケース11は、右方向に開口する前側収容部20Aにおいて前側速度調整装置12Aの左側を覆う底壁部32Aが通気孔60Aを備えていることで、前側収容部20A内において空気が左右方向に流通しやすい構成となっている。同様に、保持ケース11は、左方向に開口する後側収容部20Bにおいて後側速度調整装置12Bの右側を覆う底壁部32Bが通気孔60Bを備えていることで、後側収容部20B内において空気が左右方向に流通しやすい構成となっている。
【0055】
このような構成により、本実施形態の保持ケース11は、前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bを空気により冷却することが可能となっている。特に、前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bが遠心式の速度調整装置である場合、ウェイトとブレーキドラムの間の摩擦により装置が高温となり、装置自体及び保持ケース11に悪影響を及ぼすおそれがある。この点、本実施形態の保持ケース11であれば、前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bを空冷し、このような悪影響を抑制することが可能となっている。
【0056】
また、本実施形態の保持ケース11は、図13に示すように、その前側収容部20A及び後側収容部20Bの上面を構成する上壁部11bに、第1刻印70及び第2刻印71が設けられている。第1刻印70は、上壁部11bの中央部分に設けられる。第1刻印70は、図13の図示例では、「R」と刻印されている。一方、第2刻印71は、前側収容部20Aの上方及び後側収容部20Bの上方に1つずつ設けられる。第2刻印71は、図13の図示例では、前後方向の中央に向かう矢印となっている。第1刻印70及び第2刻印71は、図示例では保持ケース11の上壁部11bと一体的に成形されているが、第1刻印70及び第2刻印71を上壁部11bに後付けする構成(例えば、シール、印字等)とすることも可能である。
【0057】
ここで、本実施形態のように前側昇降コード3A及び後側昇降コード3Bがそれぞれ前側巻取コーン4A及び後側巻取コーン4Bにより巻取り・巻戻される構成の場合、前側昇降コード3A及び後側昇降コード3Bを巻回する方向は、概ね図14A又は図14Bに示されるいずれかの向きとなる。すなわち、図14Aの場合、前側巻取コーン4Aに巻回された前側昇降コード3A及び後側巻取コーン4Bに巻回された後側昇降コード3Bは、それぞれ前後方向における中央側から垂下される。前側昇降コード3A及び後側昇降コード3Bがそれぞれ中央側から垂下される方式を、便宜上R方式と呼ぶ。
【0058】
図13に示す保持ケース11の第1刻印70は、このR方式に用いられるものであることを示している。また、第2刻印71は、このR方式において前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bが制動する前側駆動軸5A及び後側駆動軸5Bの回転方向を示している。
【0059】
一方、図14Bの場合、前側巻取コーン4Aに巻回された前側昇降コード3Aは前後方向における前側から垂下され、後側巻取コーン4Bに巻回された後側昇降コード3Bは前後方向における後側から垂下される。前側昇降コード3A及び後側昇降コード3Bがそれぞれ前側及び後側から垂下される方式を、便宜上L方式と呼ぶ。図15に示す変形例に係る保持ケース11の第1刻印70は、当該保持ケース11がこのL方式に用いられるものであることを示している。また、図15における第2刻印71は、このL方式において前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bが制動する前側駆動軸5A及び後側駆動軸5Bの回転方向を示している。なお、R方式に用いられる保持ケース11とL方式に用いられる保持ケース11とは、鏡映対称な形状となる。
【0060】
本実施形態の保持ケース11によれば、このような第1刻印70及び第2刻印71を設けることで、前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bを正しい向きに取り付け、前側駆動軸5A及び後側駆動軸5Bを適切に制動させることが可能となる。また、前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bを取り付けた後も、前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bが前側駆動軸5A及び後側駆動軸5Bを制動する方向を確認することが可能となる。
【0061】
なお、前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bの情報(制動方向)を表示する表示手段として、第1刻印70と第2刻印71のうちいずれか一方のみを設けても良い。また、第1刻印70が表示する文字は「R」「L」に限られない。さらに、第1刻印70は、文字でなくても良く、保持ケース11の種類を区別できれば、記号や符号、模様、色、図形等であっても良い。
【0062】
6.変形例
なお、本発明は、以下の態様でも実施可能である。
【0063】
上記実施形態では、前側収容部20A及び後側収容部20Bを、前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bの一部同士が前後方向にも左右方向にも互いに重なる位置に収容するよう構成していた(図11B参照)。しかしながら、前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bの一部同士が前後方向と左右方向のいずれか一方の方向において互いに重なる位置にこれら前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bを収容できればよい。これにより、当該方向における省スペース化を実現することが可能である。
【0064】
上記実施形態では、保持ケース11の前側収容部20Aがヘッドボックス2の長手方向に沿った右方向に開口し、後側収容部20Bが左方向に開口していた。しかしながら、前側収容部20A及び後側収容部20Bの開口する方向はこれに限定されず、どのような方向に開口していても良い。例えば、前側収容部20Aが左方向に開口し、後側収容部20Bが左方向に開口していても良い。また、前側収容部20A及び後側収容部20Bが左右方向以外の方向、例えば、前後方向や上下方向に開口していても良い。加えて、前側収容部20A及び後側収容部20Bの開口方向は、互いに反対の方向である必要はなく、90度ずれた方向に開口していることや、同方向に開口していることも考えられる。ただし、左右方向以外の方向に開口する場合には、保持ケース11の左右方向の壁面には前側駆動軸5A及び後側駆動軸5Bを挿通する挿通孔を別途設ける必要がある。
【0065】
上記実施形態において、プリーツスクリーン100は、前側スクリーン1Aと後側スクリーン1Bの前後2つのスクリーンを備えたダブルプリーツスクリーンとして構成されていた。しかしながら、本発明は、第1遮蔽材としての上部スクリーンと第2遮蔽材としての下部スクリーンの上下2つのスクリーンを備えたプリーツスクリーンにも用いることが可能である。また、本発明は、プリーツスクリーン以外の遮蔽装置、例えば、2組の遮蔽材を自重降下させたり付勢手段によって付勢させたりする構成の横型ブラインド、たくし上げカーテン、ロールスクリーン等に用いることが可能である。このような場合であっても、ヘッドボックス内に配置された2つの駆動軸の回転を許容しつつ、その回転を制動する2つの速度調整装置を省スペースで保持することが可能である。
【0066】
上記実施形態では、保持ケース11は硬質ゴム製とされたが、任意のエラストマ製とすることが可能である。
【0067】
上記実施形態では、前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bはそれぞれ遠心式の速度調整装置であったが、速度調整装置は油圧式の速度調整装置(オイルダンパ)であっても良い。
【0068】
上記実施形態では、保持ケース11をヘッドボックス2に固定するための脚部21は、保持ケース11の下壁部11aの下方において保持ケース11と一体的に成形されていた。しかしながら、脚部21及び下壁部11aに取付部及び被取付部(図示せず)を設けることで、脚部21を着脱可能に構成することも可能である。また、上壁部11bにも被取付部を設けることで、脚部21を下壁部11aと上壁部11bのいずれにも着脱可能に構成することも可能である。特に、第2実施形態のように前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bが前側駆動軸5A及び後側駆動軸5Bの一方向の回転のみを制動する構成の場合、脚部21を下壁部11aと上壁部11bとで付け替え可能とすることで、保持ケース11を上述したR方式(図14A参照)とL方式(図14B参照)とで切り替えて使用することが可能となる。
【0069】
上記第2実施形態では、前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bの情報を表示する表示手段として、前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bの制動方向を表示する第1刻印70及び第2刻印71が設けられていた。しかしながら、これに代えて、あるいはこれに加えて、表示手段として、図16A及び図16Bに示すように、前側収容部20Aの突出部収容部40A及び後側収容部20Bの突出部収容部40Aの上面に窓72を設けることも好適である。図示例において、窓72は突出部収容部40Aを貫通するよう形成されており、前側速度調整装置12Aの前側変速装置17A及び後側速度調整装置12Bの後側変速装置17Bの上面に印字された表示部80が保持ケース11の上方から視認できるようになっている。ここで、表示部80には、前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bのロット番号やウェイトの枚数、製品の略称等の情報、あるいは制動方向(例えば、矢印)等が記載(印字)されている。これにより、前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bを保持ケース11に収容した状態でも、前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bの情報(種類等)を把握することが可能となっている。なお、窓72の位置は、前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bの表示部80の位置に応じて設定される。図示例における前側収容部20Aの突出部収容部40A及び後側収容部20Bの突出部収容部40Aの上面は、平らな面となっており、またユーザが触れにくい位置であるため、表示部80を設ける位置として好適である。
【0070】
上記第2実施形態において、通気孔60A及び通気孔60Bは、円形とされ、底壁部32A及び底壁部32Bに同心円状に複数設けられていた。しかしながら、通気孔60A及び通気孔60Bの配置及び形状は、これに限定されない。例えば、通気孔60A及び通気孔60Bをそれぞれ1つだけ設けたり、通気孔60Bを矩形形状としたりすることも可能である。さらに、底壁部32A及び底壁部32Bをメッシュ状や多孔状として通気孔60A及び通気孔60Bを構成することも可能である。加えて、通気孔60A及び通気孔60Bを、底壁部32A及び底壁部32B以外の位置、例えば下壁部11aや上壁部11bに設けることも可能である。
【0071】
上記第2実施形態において、プリーツスクリーン100(遮蔽装置)は、保持ケース11の前側収容部20A及び後側収容部20Bに前側速度調整装置12Aと後側速度調整装置12Bの2つの速度調整装置を収容して前側駆動軸5Aと後側駆動軸5Bの回転を制動する構成であった。しかしながら、保持ケース11の前側収容部20Aと後側収容部20Bの2つの収容部のうち1つの収容部のみに速度調整装置を収容し、他方の収容部には速度調整装置を収容せずに当該保持ケース11を使用することも可能である。つまり、上記第2実施形態に係る保持ケース11は、1つの遮蔽部材及び1つの速度調整装置のみを備える遮蔽装置にも適用することができる。また、当該保持ケース11をヘッドボックス2内に2つ配置し、それぞれに速度調整装置を1つずつ配置することも可能である。このような場合であっても、通気孔60A及び通気孔60Bを設けることで、前側収容部20A及び後側収容部20B内において空気が駆動軸(図示せず)の長手方向(左右方向)に沿って流通しやすい構成とすることが可能である。また、表示手段(例えば、第2刻印71)を備えることで、収容する速度調整装置の情報(制動方向や種類等)を確認することが可能となる。
【0072】
上記第2実施形態では、保持ケース11は前側収容部20A及び後側収容部20Bを備え、前側速度調整装置12A及び後側速度調整装置12Bの2つの速度調整装置を保持する構成であった。しかしながら、図17に示すように、保持ケース11が1つの収容部20のみを備え、1つの速度調整装置(図示せず)のみを保持する構成とすることも可能である。この場合であっても、例えば1つの収容部20の底壁部32において挿通孔33に対して同心円状に複数の通気孔60を設けることで、収容部20内において空気が駆動軸(図示せず)の長手方向(左右方向)に沿って流通しやすい構成とすることが可能である。また、保持ケース11が1つの収容部20のみを備える場合であっても、表示手段(例えば、第2刻印71)を備えることで、収容する速度調整装置の情報(制動方向や種類等)を確認することが可能となる。
【0073】
上記のように保持ケース11が1つの収容部20のみを備える構成の場合、通気孔に関して以下のような発明が提供される。
【0074】
(付記1)
遮蔽装置の速度調整装置をヘッドボックス内で保持する保持ケースであって、
前記速度調整装置は、前記ヘッドボックスの長手方向に沿って配置された駆動軸の回転を許容しつつその回転を制動するものであって、
前記速度調整装置を収容する収容部を備え、
前記収容部は、前記長手方向に沿った第1方向に開口するとともに、前記速度調整装置の前記第1方向とは反対方向である第2方向を覆う底壁部を備え、
前記底壁部に通気孔が設けられている、保持ケース。
【0075】
また、表示手段に関して以下のような発明が提供される。
【0076】
(付記2)
ヘッドボックスと、駆動軸と、遮蔽材と、速度調整装置とを備えた遮蔽装置であって、
前記駆動軸は、前記ヘッドボックスの長手方向に沿って配置され、
前記遮蔽材は、前記駆動軸の回転により開閉するよう構成され、
前記速度調整装置は、前記駆動軸の回転を許容しつつその回転を制動するものであって、
前記速度調整装置を前記ヘッドボックス内で保持する保持ケースをさらに備え、
前記保持ケースは、前記速度調整装置の情報を表示する表示手段を備える、遮蔽装置。
【符号の説明】
【0077】
1A :前側スクリーン(第1遮蔽材)
1B :後側スクリーン(第2遮蔽材)
2 :ヘッドボックス
3A :前側昇降コード
3B :後側昇降コード
4A :前側巻取コーン
4B :後側巻取コーン
5A :前側駆動軸(第1駆動軸)
5B :後側駆動軸(第2駆動軸)
6 :操作装置
7 :プーリ
8 :操作コード
9A :前側ストッパ装置
9B :後側ストッパ装置
10A :前側下限リミット装置
10B :後側下限リミット装置
11 :保持ケース
11a :下壁部
11b :上壁部
12A :前側速度調整装置(第1速度調整装置)
12B :後側速度調整装置(第2速度調整装置)
13A,13B :溶着部
14A :前側ボトムレール
14B :後側ボトムレール
15 :支持部材
16A :前側本体部
16B :後側本体部
17A :前側変速装置(第1変速装置)
17B :後側変速装置(第2変速装置)
18A,18B :柱状部
19A,19B :突出部
20A :前側収容部(第1収容部)
20B :後側収容部(第2収容部)
21 :脚部
22A :係止部
30A,30B :柱状部収容部
31A :側壁部
32A,32B :底壁部
33A :挿通孔
40A,40B :突出部収容部
41A :側壁部
42A,42B :底壁部
50,51 :連通孔
52 :連通路
60A,60B :通気孔
70 :第1刻印(表示手段)
71 :第2刻印(表示手段)
72 :窓
80 :表示部
100 :プリーツスクリーン(遮蔽装置)
D1,D2 :重複幅
S1 :前側収容空間(第1収容空間)
S2 :後側収容空間(第2収容空間)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17