(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098557
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】フレイルを予防及び/又は改善するためのプロトコルを支援するための支援システム、支援方法、支援装置及び支援コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/048 20130101AFI20230703BHJP
【FI】
G06F3/048
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096022
(22)【出願日】2022-06-14
(31)【優先権主張番号】P 2021214877
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業 A-STEPトライアウトタイプ「アート・文化財を起点に高齢者の社会的活動を支援するVRフレイル予防プログラムの開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】509349141
【氏名又は名称】京都府公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 恵太郎
(72)【発明者】
【氏名】成本 迅
【テーマコード(参考)】
5E555
【Fターム(参考)】
5E555AA27
5E555AA74
5E555AA76
5E555BA02
5E555BA04
5E555BB02
5E555BB04
5E555BC04
5E555BE17
5E555CA41
5E555DA21
5E555DB32
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】
フレイルを予防及び/又は改善するためのプロトコルを支援することを課題とする。
【解決手段】
フレイルを予防及び/又は改善するためのプロトコルを支援するための支援システムであって、前記プロトコルは、日本文化的所産が存在する施設へ、前記プロトコルへの参加を希望する希望者がネットワークを介して仮想現実空間において訪問する仮想現実訪問を含み、前記日本文化的所産は鑑賞用デジタルコンテンツとしてネットワークを介して前記希望者に閲覧され、前記日本文化的所産について説明を行う説明者が使用する説明者端末と、前記希望者が使用する希望者端末と、を備える支援システムによって、説明者と希望者のやりとりを対話式で行うことにより課題を解決する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレイルを予防及び/又は改善するためのプロトコルを支援するための支援システムであって、
前記プロトコルは、日本文化的所産が存在する施設へ、前記プロトコルへの参加を希望する希望者がネットワークを介して仮想現実空間において訪問する仮想現実訪問を含み、 前記日本文化的所産は鑑賞用デジタルコンテンツとしてネットワークを介して前記希望者に閲覧され、
前記日本文化的所産について説明を行う説明者が使用する説明者端末と、
前記希望者が使用する希望者端末と、
を備え、
前記希望者と前記説明者は、共に前記仮想現実訪問の所定のツアーに参加し、
前記説明端末は、前記仮想現実訪問の所定のツアーが実行されている間、
前記説明者を示す説明者キャラクターの表示;前記鑑賞用デジタルコンテンツの表示;前記説明者が行う前記説明の表示及び/又は音声での出力、前記希望者を示す希望者キャラクターの表示;前記希望者が前記希望者端末から前記鑑賞用デジタルコンテンツ及び/又は前記説明について入力した入力情報を表示及び/又は音声による出力を行い、
前記説明者が前記説明者端末に入力した、前記入力情報に対応する回答情報を前記希望者端末に表示情報及び/又は音声情報として送信し、
前記希望者端末は、前記仮想現実訪問が実行されている間、
前記説明者キャラクターの表示;前記鑑賞用デジタルコンテンツの表示;前記説明の表示及び/又は音声での出力;前記説明者端末への前記入力情報の送信;前記回答情報の表示及び/又は音声での出力を行い、
前記仮想現実訪問が実行されている間、前記説明、前記入力情報の提示、及び前記回答情報の提示は、前記希望者と前記説明者との対話形式で行われる、
前記支援システム。
【請求項2】
前記希望者端末は、仮想現実装置と通信可能に接続され、
前記希望者端末は、さらに前記希望者の足踏みを検知するセンサを備える足踏み検知装置と通信可能に接続され、
前記希望者端末は、前記足踏み検知装置からの出力を希望者の動的情報として取得し、前記動的情報を前記ネットワークに出力し、
前記説明者端末は、前記動的情報に応じて、前記施設内の情景を表す仮想現実空間の情景映像が変化する出力情報を生成し、前記出力情報を前記ネットワークに出力し、
前記希望者端末は、前記出力情報を前記仮想現実装置に出力する、
請求項1に記載の支援システム。
【請求項3】
前記フレイルを予防及び/又は改善するためのプロトコルは、希望者の社会的な孤立を防ぐためのものである、請求項1に記載の支援システム。
【請求項4】
前記日本文化的所産は、仏教又は神道に関する、請求項1又は2に記載の支援システム。
【請求項5】
前記希望者は複数である、請求項1~3のいずれか一項に記載の支援システム。
【請求項6】
前記希望者キャラクターは、仮想キャラクターで表示される、請求項1~5のいずれか一項に記載の支援システム。
【請求項7】
前記説明者は、前記日本文化的所産が仏教に関するものであるとき僧侶であり、前記日本文化的所産が神道に関するものであるとき神主である、請求項4に記載の支援システム。
【請求項8】
コンピュータで実施される、フレイルを予防及び/又は改善するためのプロトコルを支援するための支援方法であって、
前記プロトコルは、日本文化的所産が存在する施設へ、前記プロトコルへの参加を希望する希望者がネットワークを介して仮想現実空間において訪問する仮想現実訪問を含み、 前記日本文化的所産は鑑賞用デジタルコンテンツとしてネットワークを介して前記希望者に閲覧され、
前記希望者と前記日本文化的所産について説明を行う説明者は、共に前記仮想現実訪問の所定のツアーに参加し、
前記説明者によって操作される説明者端末は、前記仮想現実訪問の所定のツアーが実行されている間、
前記説明者を示す説明者キャラクターの表示;前記鑑賞用デジタルコンテンツの表示;前記説明者が行う前記説明の表示及び/又は音声での出力、前記希望者を示す希望者キャラクターの表示;前記希望者が前記希望者端末から前記鑑賞用デジタルコンテンツ及び/又は前記説明について入力した入力情報を表示及び/又は音声による出力を行い、
前記説明者が前記説明者端末に入力した、前記入力情報に対応する回答情報を前記希望者端末に表示情報及び/又は音声情報として送信し、
前記希望者端末は、前記仮想現実訪問が実行されている間、
前記説明者キャラクターの表示;前記鑑賞用デジタルコンテンツの表示;前記説明の表示及び/又は音声での出力;前記説明者端末への前記入力情報の送信;前記回答情報の表示及び/又は音声での出力を行い、
前記仮想現実訪問が実行されている間、前記説明、前記入力情報の提示、及び前記回答情報の提示は、前記希望者と前記説明者との対話形式で行われる、
支援方法。
【請求項9】
前記説明者端末は、
前記希望者が装着した仮想現実装置と、前記希望者の足踏みを検知するセンサを備える足踏み検知装置からの出力を希望者の動的情報として前記希望者端末からネットワークを介して取得し、
前記動的情報に応じて、前記施設内の情景を表す仮想現実空間の情景映像が変化する出力情報を生成し、前記希望者端末に送信し、
前記希望者端末は、受信した前記出力情報を前記仮想現実装置に表示する、
請求項8に記載の支援方法。
【請求項10】
コンピュータで実施される、フレイルを予防及び/又は改善するためのプロトコルを支援するための支援プログラムであって、
前記プロトコルは、日本文化的所産が存在する施設へ、前記プロトコルへの参加を希望する希望者がネットワークを介して仮想現実空間において訪問する仮想現実訪問を含み、 前記日本文化的所産は鑑賞用デジタルコンテンツとしてネットワークを介して前記希望者に閲覧され、
前記希望者と前記日本文化的所産について説明を行う説明者は、共に前記仮想現実訪問の所定のツアーに参加し、
前記支援プログラムは、前記仮想現実訪問の所定のツアーが実行されている間、前記説明者によって操作される説明者端末に、
前記説明者を示す説明者キャラクターの表示と、前記鑑賞用デジタルコンテンツの表示と、前記説明者が行う前記説明の表示及び/又は音声による出力を行うステップと、
前記希望者を示す希望者キャラクターの表示と、前記希望者が前記希望者端末から前記鑑賞用デジタルコンテンツ及び/又は前記説明について入力した入力情報を表示及び/又は音声により出力するステップと、
前記説明者が前記説明者端末に入力した、前記入力情報に対応する回答情報を前記希望者端末に表示情報及び/又は音声情報として送信するステップ、
とを実行させ、
前記希望者によって操作される希望者端末は、前記仮想現実訪問が実行されている間、前記支援プログラムが実行する各ステップに対応し、
前記希望者を示す希望者キャラクターの表示、前記説明者端末への前記入力情報の送信、前記希望者が前記希望者端末から前記鑑賞用デジタルコンテンツ及び/又は前記説明について入力した入力情報を表示及び/又は音声により出力し、
前記仮想現実訪問が実行されている間、前記説明、前記入力情報の提示、及び前記回答情報の提示は、前記希望者と前記説明者との対話形式で行われる、
前記支援プログラム。
【請求項11】
前記希望者が装着した仮想現実装置と、前記希望者の足踏みを検知するセンサを備える足踏み検知装置からの出力を希望者の動的情報として取得するステップと、
前記動的情報に応じて、前記施設内の情景を表す仮想現実空間の情景映像が変化する出力情報を生成するステップと、
前記出力情報を前記希望者端末に受信させるために出力するステップと、
をさらに備える、請求項10に記載の支援プログラム。
【請求項12】
フレイルを予防及び/又は改善するためのプロトコルを支援するための支援装置であって、
前記プロトコルは、日本文化的所産が存在する施設へ、前記プロトコルへの参加を希望する希望者がネットワークを介して仮想現実空間において訪問する仮想現実訪問を含み、 前記日本文化的所産は鑑賞用デジタルコンテンツとしてネットワークを介して前記希望者に閲覧され、
前記希望者と前記日本文化的所産について説明を行う説明者は、共に前記仮想現実訪問の所定のツアーに参加し、
前記支援装置は制御装置を備え、前記制御装置は、前記仮想現実訪問の所定のツアーが実行されている間、前記説明者によって操作される説明者端末に、
前記説明者を示す説明者キャラクターの表示;前記鑑賞用デジタルコンテンツの表示;前記説明者が行う前記説明の表示及び/又は音声での出力、前記希望者を示す希望者キャラクターの表示;前記希望者が前記希望者端末から前記鑑賞用デジタルコンテンツ及び/又は前記説明について入力した入力情報を表示及び/又は音声による出力を行い、
前記説明者が前記説明者端末に入力した、前記入力情報に対応する回答情報を前記希望者端末に表示情報及び/又は音声情報として送信し、
前記希望者端末は、前記仮想現実訪問が実行されている間、
前記説明者キャラクターの表示;前記鑑賞用デジタルコンテンツの表示;前記説明の表示及び/又は音声での出力;前記説明者端末への前記入力情報の送信;前記回答情報の表示及び/又は音声での出力を行い、
前記仮想現実訪問が実行されている間、前記説明、前記入力情報の提示、及び前記回答情報の提示は、前記希望者と前記説明者との対話形式で行われる、
前記支援装置。
【請求項13】
前記制御装置は、さらに、
前記希望者が装着した仮想現実装置と、前記希望者の足踏みを検知するセンサを備える足踏み検知装置からの出力を希望者の動的情報として取得し、
前記動的情報に応じて、前記施設内の情景を表す仮想現実空間の情景映像が変化する出力情報を生成し、
前記出力情報を前記希望者端末に受信させるために出力する、
請求項12に記載の支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書には、フレイルを予防及び/又は改善するためのプロトコルを支援するための支援システム、支援方法、支援装置及び支援コンピュータプログラムが開示される。
【背景技術】
【0002】
長引く、コロナ禍で高齢者は自宅に引きこもり、運動不足になると筋力量が低下し「サルコペニア」に、さらに食が細くなることで「栄養不足」になり、このままでは要介護の可能性が高い状態(フレイル)になる可能性が高い。フレイルになると、免疫力低下によりコロナ感染リスクも高まってしまうといった負のスパイラルに陥いる可能性がある。
一方、コロナ禍で一定数の人が集まることが自粛される中、ネットワークを利用したオンラインツアー等も開催され、新たなビジネスとなっている。
【0003】
また、仮想現実(バーチャルリアリティ:VR)のように仮想空間を現実のように体験させる技術や、拡大現実(オーグメンテッド・リアリティ:AR)のように人が知覚する現実環境をコンピュータに拡張する技術が開発されゲーム等に応用されている。
特許文献1には、使用者の動きを検出し、当該動きを仮想空間内に反映させる装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者らが、京都市において疾患啓発シンポジウムに参加した65歳以上の高齢者を対象に「高齢者の動悸を伴う心房細動とうつ状態の関連性調査」(2019-2020年)と題した大規模横断研究を行った(計1533名の調査研究)ところ、23.2%に高齢者うつ(うつ状態も含む)が確認された。新型コロナ感染症の流行で自宅にこもりがちになり、運動や人との接触機会が減少している昨今の状況は、高齢者のフレイルをさらに加速させる可能性が高い。本発明は、「新しい生活様式」に則った方法で、高齢者の身体活動や社会的活動をサポートし、楽しみや生きがいにもつながるフレイルを予防及び/又は改善するためのプロトコルを支援するための支援システム、支援方法、支援装置及び支援コンピュータプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、以下の実施形態を含む。
【0007】
本発明のある実施形態は、フレイルを予防及び/又は改善するためのプロトコルを支援するための支援システムに関する。前記支援システムにおいて、前記プロトコルは、日本文化的所産が存在する施設へ、前記プロトコルへの参加を希望する希望者がネットワークを介して仮想現実空間において訪問する仮想現実訪問を含み、前記日本文化的所産は鑑賞用デジタルコンテンツとしてネットワークを介して前記希望者に閲覧される。前記支援システムは、前記日本文化的所産について説明を行う説明者が使用する説明者端末と、前記希望者が使用する希望者端末と、を備える。前記希望者と前記説明者は、共に前記仮想現実訪問の所定のツアーに参加する。
前記説明端末は、前記仮想現実訪問の所定のツアーが実行されている間、前記説明者を示す説明者キャラクターの表示;前記鑑賞用デジタルコンテンツの表示;前記説明者が行う前記説明の表示及び/又は音声での出力、前記希望者を示す希望者キャラクターの表示;前記希望者が前記希望者端末から前記鑑賞用デジタルコンテンツ及び/又は前記説明について入力した入力情報を表示及び/又は音声による出力を行い、前記説明者が前記説明者端末に入力した、前記入力情報に対応する回答情報を前記希望者端末に表示情報及び/又は音声情報として送信する。
前記希望者端末は、前記仮想現実訪問が実行されている間、前記説明者キャラクターの表示;前記鑑賞用デジタルコンテンツの表示;前記説明の表示及び/又は音声での出力;前記説明者端末への前記入力情報の送信;前記回答情報の表示及び/又は音声での出力を行いう。
前記仮想現実訪問が実行されている間、前記説明、前記入力情報の提示、及び前記回答情報の提示は、前記希望者と前記説明者との対話形式で行われる。
【0008】
好ましくは、前記希望者端末は、仮想現実装置と通信可能に接続され、前記希望者端末は、さらに前記希望者の足踏みを検知するセンサを備える足踏み検知装置と通信可能に接続され、前記希望者端末制御装置は、前記足踏み検知装置からの出力を希望者の動的情報として取得し、前記動的情報を前記ネットワークに出力する。前記説明者端末制御装置は、前記動的情報に応じて、前記施設内の情景を表す仮想現実空間の情景映像が変化する出力情報を生成し、前記出力情報を前記ネットワークに出力する。また、前記前記希望者端末制御装置は、前記出力情報を前記仮想現実装置に出力させる。
【0009】
好ましくは、前記フレイルを予防及び/又は改善するためのプロトコルは、希望者の社会的な孤立を防ぐためのものである。
【0010】
好ましくは、前記日本文化的所産は、仏教又は神道に関する。より好ましくは、前記説明者は、前記日本文化的所産が仏教に関するものであるとき僧侶であり、前記日本文化的所産が神道に関するものであるとき神主である。
好ましくは、前記希望者は複数である。
【0011】
好ましくは、前記希望者キャラクターは、仮想キャラクターで表示される。
【0012】
本発明のある実施形態は、コンピュータで実施される、フレイルを予防及び/又は改善するためのプロトコルを支援するための支援方法に関する。前記説明者を示す説明者キャラクターの表示;前記鑑賞用デジタルコンテンツの表示;前記説明者が行う前記説明の表示及び/又は音声での出力、前記希望者を示す希望者キャラクターの表示;前記希望者が前記希望者端末から前記鑑賞用デジタルコンテンツ及び/又は前記説明について入力した入力情報を表示及び/又は音声による出力を行い、前記説明者が前記説明者端末に入力した、前記入力情報に対応する回答情報を前記希望者端末に表示情報及び/又は音声情報として送信する。
前記希望者端末は、前記仮想現実訪問が実行されている間、前記説明者キャラクターの表示;前記鑑賞用デジタルコンテンツの表示;前記説明の表示及び/又は音声での出力;前記説明者端末への前記入力情報の送信;前記回答情報の表示及び/又は音声での出力を行い、前記仮想現実訪問が実行されている間、前記説明、前記入力情報の提示、及び前記回答情報の提示は、前記希望者と前記説明者との対話形式で行われる。
【0013】
好ましくは、前記説明者端末は、前記希望者が装着した仮想現実装置と、前記希望者の足踏みを検知するセンサを備える足踏み検知装置からの出力を希望者の動的情報として前記希望者端末からネットワークを介して取得し、前記動的情報に応じて、前記施設内の情景を表す仮想現実空間の情景映像が変化する出力情報を生成し、前記希望者端末に送信する。前記希望者端末は、受信した前記出力情報を前記仮想現実装置に表示する。
【0014】
本発明のある実施形態は、コンピュータに実行させたときに、フレイルを予防及び/又は改善するためのプロトコルを支援するための支援プログラムに関する。前記プロトコルは、日本文化的所産が存在する施設へ、前記プロトコルへの参加を希望する希望者がネットワークを介して仮想現実空間において訪問する仮想現実訪問を含み、前記日本文化的所産は鑑賞用デジタルコンテンツとしてネットワークを介して前記希望者に閲覧され、前記希望者と前記日本文化的所産について説明を行う説明者は、共に前記仮想現実訪問の所定のツアーに参加する。前記支援プログラムは、コンピュータに、前記仮想現実訪問の所定のツアーが実行されている間、前記説明者によって操作される説明者端末に、前記説明者を示す説明者キャラクターの表示と、前記鑑賞用デジタルコンテンツの表示と、前記説明者が行う前記説明の表示及び/又は音声による出力を行うステップと、前記希望者を示す希望者キャラクターの表示と、前記希望者が前記希望者端末から前記鑑賞用デジタルコンテンツ及び/又は前記説明について入力した入力情報を表示及び/又は音声により出力するステップと、前記説明者が前記説明者端末に入力した、前記入力情報に対応する回答情報を前記希望者端末に表示情報及び/又は音声情報として送信するステップ、とを実行させる。前記希望者によって操作される希望者端末は、前記仮想現実訪問が実行されている間、前記支援プログラムが実行する各ステップに対応し、前記希望者を示す希望者キャラクターの表示、前記説明者端末への前記入力情報の送信、前記希望者が前記希望者端末から前記鑑賞用デジタルコンテンツ及び/又は前記説明について入力した入力情報を表示及び/又は音声により出力する。前記仮想現実訪問が実行されている間、前記説明、前記入力情報の提示、及び前記回答情報の提示は、前記希望者と前記説明者との対話形式で行われる。
【0015】
好ましくは、前記支援プログラムは、前記希望者が装着した仮想現実装置と、前記希望者の足踏みを検知するセンサを備える足踏み検知装置からの出力を希望者の動的情報として取得するステップと、前記動的情報に応じて、前記施設内の情景を表す仮想現実空間の情景映像が変化する出力情報を生成するステップと、前記出力情報を前記希望者端末に受信させるために出力するステップと、をさらに備える。
【0016】
本発明のある実施形態は、フレイルを予防及び/又は改善するためのプロトコルを支援するための支援装置に関する。前記説明者を示す説明者キャラクターの表示;前記鑑賞用デジタルコンテンツの表示;前記説明者が行う前記説明の表示及び/又は音声での出力、前記希望者を示す希望者キャラクターの表示;前記希望者が前記希望者端末から前記鑑賞用デジタルコンテンツ及び/又は前記説明について入力した入力情報を表示及び/又は音声による出力を行い、前記説明者が前記説明者端末に入力した、前記入力情報に対応する回答情報を前記希望者端末に表示情報及び/又は音声情報として送信する。前記希望者端末は、前記仮想現実訪問が実行されている間、前記説明者キャラクターの表示;前記鑑賞用デジタルコンテンツの表示;前記説明の表示及び/又は音声での出力;前記説明者端末への前記入力情報の送信;前記回答情報の表示及び/又は音声での出力を行う。前記仮想現実訪問が実行されている間、前記説明、前記入力情報の提示、及び前記回答情報の提示は、前記希望者と前記説明者との対話形式で行われる。
【0017】
好ましくは、前記制御装置は、さらに、前記希望者が装着した仮想現実装置と、前記希望者の足踏みを検知するセンサを備える足踏み検知装置からの出力を希望者の動的情報として取得し、前記動的情報に応じて、前記施設内の情景を表す仮想現実空間の情景映像が変化する出力情報を生成し、前記出力情報を前記希望者端末に送信する。
【発明の効果】
【0018】
フレイルを予防及び/又は改善するためのプロトコルを支援することができる。また、フレイルを予防及び/又は改善するためのプロトコルを支援することにより、希望者の精神機能の向上だけでなく、高齢者の生きがいや楽しみの創出や社会的孤立を解消することができる。さらには、フレイルを予防及び/又は改善するためのプロトコルを支援することで、コロナ禍で訪問者が減少した日本文化的所産の所有者へインバウンドも期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】説明者端末10のハードウエア構成の概要を示す。
【
図3】希望者端末20のハードウエア構成の概要を示す。
【
図7】説明者端末50のハードウエア構成の概要を示す。
【
図8】希望者端末60のハードウエア構成の概要を示す。
【
図9】参加者が体験したプロトコルの概要を示す。(a)は、体験のスケジュールを示す。(b)は参加者の背景を示す。
【
図10】各セッションの時間配分の妥当性に関する評価結果を示す。
【
図12】仮想現実空間の臨場感に関する評価結果を示す。
【
図13】リッカート尺度を用いた、本発明のプロトコルに対する評価結果を示す。(a)は、本プロトコル終了後に参加者に対して行ったアンケートの内容を示す。(b)は、アンケート内容をまとめた評価スケールを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
1.フレイルを予防及び/又は改善するためのプロトコル
フレイルは、高齢者において認められる老年症候群の1つである。フレイルは、環境因子に対する脆弱性が高まった状態であると言われている。フレイルには、身体的、精神心理的、社会的な要因があるとされている。また、フレイルは、要介護状態を来す前の前段階と考えられている。
【0021】
日本厚生労働省は、フレイルを予防及び/又は改善するためには、栄養、身体活動、社会参加の3つが重要であるとしている。本明細書において、フレイルを予防及び/又は改善するためのプロトコル(以下、単に「プロトコル」ともいう)は、特に身体活動、社会参加を支援することを目的としている。好ましくは、プロトコルは、高齢者の社会的な孤立を防ぐことを目的として、対象者に適用される。前記プロトコルは、回復を支援するための計画の意味での「プログラム」を意図するが、本明細書では、コンピュータプログラムと区別するため、「プロトコル」と称する。
ここで、高齢者とは、65歳以上、好ましくは70歳以上の者を意図する。
【0022】
「予防」とは、健常な方がフレイルにならないようにすること、フレイルを来しそうな者がフレイルにならないようにすること、フレイルである者の状態の増悪を防ぐことを含み得る。また、フレイルは、疾患には分類されないため、本明細書では、行動や気持ちが外向的になることを「改善」と位置づける。
【0023】
フレイルを評価する基準として、Friedらの提唱したthe Cardiovascular Health. Study:CHS基準がある。
CHS基準、身体的フレイルの定義として、
1)体重減少(6か月で2-3kg以上の体重減少)
2)疲労感(ここ2週間わけもなく疲れた感じがする)
3)活動量低下(軽い運動・体操をしていない、及び定期的な運動・スポーツをしていない)
4)緩慢さ(歩行速度低下:通常歩行速度<1m/秒以)
5)虚弱(握力低下:男性<28 kg、女性<18 kg)
の5項目を基準として、3つ以上に当てはまる場合はフレイルとして診断し、1つまたは2つ該当する場合はフレイル前段階としている。
また、日本では、厚生労働省が介護予防のために作成した25項目の質問票をJ-CHS基準として、フレイルの評価に採用している。
フレイルが改善しているか否かは、これらの評価に基づいて判定してもよい。例えば、これらのチェック項目において、該当する項目が減っていれば「改善」と評価することができ、該当する項目が減っていなければ「改善していない」と評価することができる。
【0024】
2.支援システム1000
2-1.支援システムの構成
図1を用いて、本発明の第1の実施形態である支援システム1000について説明する。支援は、日本文化的所産Aが存在する施設へ、前記プロトコルへの参加を希望する希望者V1がネットワーク99を介して仮想現実空間において訪問する仮想現実訪問を含む。日本文化的所産Aは鑑賞用デジタルコンテンツDAとしてネットワーク99を介して希望者V1に閲覧される。
【0025】
支援システム1000は、日本文化的所産Aについて説明を行う説明者H1が使用する説明者端末10と、前記希望者V1が使用する希望者端末20を備える。説明者端末10と希望者端末20は、ネットワークを介して通信可能に接続されている。ネットワーク99は無線であることが好ましい。希望者V1と説明者H1は、仮想現実訪問が実行されている間、共に前記仮想現実訪問に参加する。この間希望者V1と説明者H1は、互いにネットワーク99と各端末を介して、テキストの送受信、音声や音の送受信や、互いの映像のやりとりを行う。すなわち、仮想現実訪問が実行されている間の希望者V1と説明者H1のやりとりは、対話形式となる。
【0026】
ここで、特に希望者V1の中には、聴力が低下している者が存在する可能性もあるため、希望者V1と説明者H1のやりとりは、音声だけでなくテキスト入力でも行えることが好ましい。
【0027】
本明細書において、日本文化的所産Aには、日本で創作又は創造された文化的所産を含む。したがって、日本文化的所産Aには、日本国内に現存する文化的所産の他、海外に存在するもの、若しくは原物は現存しないものの静止画や映像で残るものも含み得る。文化的所産には、絵画、彫刻、工芸品、書跡、典籍、古文書、建築物、園庭等の有形文化財のほか、茶道、華道、衣紋道、能楽、文楽、歌舞伎、武道、舞踏、音楽等の無形文化財を含み得る。文化的所産は、歴史上または芸術上価値の高いものであることが好ましい。
【0028】
日本文化的所産Aは、仏教又は神道に関するものであることが好ましい。日本文化的所産Aが、仏教に関するものである時、宗派は特に限定されない。仏教は臨済宗、曹洞宗、黄檗宗等の禅宗であることが特に好ましい。仏教が禅宗の場合、所定のツアーにマインドフルネスのトレーニングコースや、瞑想の時間を含んでいてもよい。
説明者は、日本文化的所産Aが仏教に関するものであるとき僧侶であり、日本文化的所産Aが神道に関するものであるとき神主であることが好ましい。
鑑賞用デジタルコンテンツDAは、デジタル化されたコンテンツであって、視覚的なものだけでなく、聴覚、触覚で知覚するものを含む。
1つのツアーに参加する希望者は、1名であってもよいが、複数人であってもよい。 また、1つのツアーに参加する説明者も、1名であってもよいが、複数人であってもよい。さらに、複数の説明者が交代で1名ずつ説明を行ってもよい。
【0029】
仮想現実訪問は、1又は複数種のツアーを含み得る。例えば、1つのツアーは、所要時間が15分から60分程度である。この間に、1又は複数箇所の日本文化的所産Aが存在する施設を訪問することができる。また、1つの施設内において、1又は複数の日本文化的所産Aを鑑賞することができる。また、1つのツアーにおいて、休憩時間等を設けてもよい。
【0030】
2-2.説明者端末10
図2を用いて、説明者端末10のハードウエア構成について説明する。説明者端末10は、説明者端末制御装置100(以下、単に制御装置100と呼ぶ)、説明者端末音声装置111(以下、単に音声装置111と呼ぶ)、説明者端末入出力装置112(以下、単に入出力装置112と呼ぶ)、説明者端末カメラ113(以下、単にカメラ113と呼ぶ)を備える。
【0031】
制御装置100は、説明者端末CPU101(以下、単にCPU101と呼ぶ)、説明者端末メモリ102(以下、単にメモリ102と呼ぶ)、説明者端末ROM103(以下、単にROM103と呼ぶ)、説明者端末記憶装置104(以下、単に記憶装置104と呼ぶ)説明者端末インタフェース105(以下、単にI/F105と呼ぶ)を備える。記憶装置104は、オペレーティングシステム(OS)1041と、支援プログラム1042を備える。オペレーティングシステム(OS)1041と、支援プログラム1042は協働して端末を説明者端末10として機能させる。また、説明者端末10は支援装置10でもある。
【0032】
音声装置111は、マイクとスピーカーの機能を備える。音声装置111は、説明者H1が行う音声説明やツアー中の周囲の音を取得し、希望者端末20から送信された音声や音を出力する。
【0033】
入出力装置112は、タッチパネルであり、モニタ、キーボード、マウスの機能を備える。入出力装置112は、説明者H1が文字入力を行う際に使用される。また、鑑賞用デジタルコンテンツDAを提示する。
【0034】
カメラ113は、静止画及び動画の撮像が可能である。例えば、説明者H1の画像又は映像や、日本文化的所産Aや映像を希望者端末に送信する際の撮像に使用される。
説明者端末10内の各構成はバス109によって互いにデータ通信可能に接続されている。
【0035】
2-3.希望者端末20
図3を用いて、希望者端末20のハードウエア構成について説明する。希望者端末20は、希望者端末制御装置200(以下、単に制御装置200と呼ぶ)、希望者端末音声装置211(以下、単に音声装置211と呼ぶ)、希望者端末入出力装置212(以下、単に入出力装置212と呼ぶ)、希望者端末カメラ213(以下、単にカメラ213と呼ぶ)を備える。
【0036】
制御装置200は、希望者端末CPU201(以下、単にCPU201と呼ぶ)、希望者端末メモリ202(以下、単にメモリ202と呼ぶ)、希望者端末ROM203(以下、単にROM203と呼ぶ)、希望者端末記憶装置204(以下、単に記憶装置204と呼ぶ)希望者端末インタフェース205(以下、単にI/F205と呼ぶ)を備える。記憶装置204は、オペレーティングシステム2041と、ブラウザソフト2042を備える。オペレーティングシステム2041と、ブラウザソフト2042は協働して端末を規模応射端末として機能させる。
【0037】
音声装置211は、マイクとスピーカーの機能を備える。音声装置211は、説明者端末10が送信した、音声説明やツアー中の周囲の音を出力し、希望者V1の音声や希望者V1の周囲の音を取得する。
【0038】
入出力装置212は、タッチパネルであり、モニタ、キーボード、マウスの機能を備える。入出力装置212は、希望者V1が文字入力を行う際に使用される。また、鑑賞用デジタルコンテンツDAを提示する。
カメラ213は、静止画及び動画の撮像が可能である。例えば、カメラ213は、希望者V1の画像又は映像を説明者端末10に送信する際の像に使用される。
希望者端末20内の各構成はバス209によって互いにデータ通信可能に接続されている。
【0039】
2-4.システム1000の処理の流れ
図4及び
図5を参照して、システム1000の処理の流れを示す。
図4のステップS1において、説明者H1が、入出力装置112を介して、仮想現実訪問の所定のツアーのログイン情報を入力し、これを制御部100が受け付け、所定のツアーを起動する。
【0040】
また、希望者端末20側のステップS51において、希望者V1が、入出力装置212を介して、入力した仮想現実訪問の所定のツアーのログイン情報を制御装置200が受け付け、説明者端末10にネットワーク99を介して送信する。説明者端末10の制御装置100は、ステップS3において、希望者端末20から送信されたログイン情報を受信し取得する。ログイン情報が適正なものであるとき制御装置100は、ステップS5において、希望者端末20からのログインを許可し、所定のツアーに対応する鑑賞用デジタルコンテンツDA、及び説明者を示す説明者キャラクターCH1を表示するための表示情報、ツアーを始める前の挨拶等の音声情報等を含む出力情報を生成する。ネットワーク99を介して希望者端末20への出力情報の送信を開始することにより、所定のツアーが開始される。
【0041】
ステップS53において、希望者端末20の制御装置200は、制御装置100が送信した出力情報を取得し、希望者端末20の入出力装置212、及び/又は音声装置211に出力し、取得した出力情報の内容を希望者に提示する。
【0042】
また、希望者端末20の制御装置200は、ステップS55において、希望者を示す希望者キャラクターVH1を表示するための表示情報、及びツアーを始める前の挨拶等の音声情報を含む出力情報をネットワーク99に出力し、ステップS7において、制御装置100は、前記出力情報を取得し、入出力装置112及び/又は音声装置111に出力し、説明者に前記出力情報の内容を提示する。
説明者端末10の制御装置100は、ステップS9において、説明者が行う説明の出力情報を生成し、生成した出力情報をネットワーク99に出力する。
【0043】
希望者端末20の制御装置200は、S57において、ステップS9において出力された出力情報を取得し、入出力装置212及び/又は音声装置211に出力し、希望者に前記出力情報の内容を提示する。
【0044】
図5に進み、ステップS59において、希望者V1は、説明者が提示する鑑賞用デジタルコンテンツDAや、説明に関するコメントや質問がある場合、これらを入力情報として希望者端末20の入出力装置212及び/又は音声装置211から入力し、制御装置200は入力を受け付け、ネットワーク99に出力する。
【0045】
説明者端末10の制御装置100は、ステップS11において、制御装置200が出力した入力情報を取得し、説明者端末10の入出力装置112及び/又は音声装置111に出力し、説明者に入力情報の内容を提示する。
【0046】
説明者端末10の制御装置100は、ステップS13において、入出力装置112及び/又は音声装置111を介して説明者が入力した、前記鑑賞用デジタルコンテンツDAや、説明に関するコメントや質問等に対応する回答を回答情報をとして受け付け、前記回答情報をネットワーク99に出力する。
【0047】
希望者端末20の制御装置200は、ステップS61において。前記回答情報を取得し、希望者端末20の入出力装置212及び/又は音声装置211から出力し、希望者V1に回答情報の内容を提示する。
【0048】
説明者H1が、ステップS15において、希望者に対して、追加のコメントや質問があるか尋ねるため、説明者端末10の制御装置100は、入出力装置112及び/又は音声装置111から説明者H1が入力する追加入力情報の有無を確認するための情報をネットワーク99に出力する。
【0049】
希望者端末20の制御装置200は、ステップS63において、追加入力情報の有無を確認するための情報を受け付け、これを入出力装置212及び/又は音声装置211から出力し、希望者V1に提示する。希望者が、入出力装置212及び/又は音声装置211から追加のコメントや質問があることを入力した場合(YESの場合)、制御装置200は、S59に戻る。希望者が、入出力装置212及び/又は音声装置211から追加のコメントや質問があることを入力した場合(YESの場合)、制御装置200は、S59に戻る。希望者が、入出力装置212及び/又は音声装置211から追加のコメントや質問がないことを入力した場合(NOの場合)、制御装置200は、その情報を質問完了情報としてネットワーク99に出力する。ここで、追加のコメントや質問があるかないかの入力は、ステップS15において、説明者が入力した確認情報に回答できる限り制限されない。テキスト入力、アイコンのクリック、音声入力であってもよい。
【0050】
ステップS17において、説明者端末10の制御装置100は、希望者端末20からの送信された質問完了情報を取得し、入出力装置112及び/又は音声装置111から質問完了情報を出力し、説明者H1に提示する。続いて、説明者H1が、入出力装置112及び/又は音声装置111から入力するツアー終了の情報を取得し、ツアー終了の情報をネットワークに出力する。
希望者端末20の制御装置200は、ツアー終了の情報を取得した後、これを入出力装置212及び/又は音声装置211から出力して希望者V1に提示する。
【0051】
説明者端末10の制御装置100は、説明者H1によるログアウトの情報を受け付け、ツアーからログアウトする。希望者端末20の制御装置200もまた、希望者V1によるログアウトの情報を受け付け、ツアーからログアウトし、ツアーが終了する。
【0052】
3.支援システム2000
3-1.支援システム2000の構成
図6に示すように支援システム2000の構成は基本的には、支援システム1000の構成と同等であり。説明者端末50と、希望者端末60を備えている。但し、希望者端末60は、希望者C1が装着する仮想現実装置と希望者の足踏みを検知するセンサを備える足踏み検知装置と接続されている。
【0053】
3-2.説明者端末50
図7を用いて、説明者端末50のハードウエア構成について説明する。説明者端末50は、説明者端末制御装置500(以下、単に制御装置500と呼ぶ)、説明者端末音声装置511(以下、単に音声装置511と呼ぶ)、説明者端末入出力装置512(以下、単に入出力装置512と呼ぶ)、説明者端末カメラ513(以下、単にカメラ513と呼ぶ)を備える。
【0054】
制御装置500は、説明者端末CPU501(以下、単にCPU501と呼ぶ)、説明者端末メモリ502(以下、単にメモリ502と呼ぶ)、説明者端末ROM503(以下、単にROM503と呼ぶ)、説明者端末記憶装置504(以下、単に記憶装置504と呼ぶ)説明者端末インタフェース505(以下、単にI/F505と呼ぶ)を備える。記憶装置504は、オペレーティングシステム(OS)5041と、支援プログラム5042と、仮想現実プログラム5043と、情景映像コンテンツ5044を備える。オペレーティングシステム(OS)5041と、支援プログラム5042、仮想現実プログラム5043は協働して端末を説明者端末50として機能させる。また、説明者端末50は支援装置50でもある。
【0055】
音声装置511は、マイクとスピーカーの機能を備える。音声装置511は、説明者H1が行う音声説明やツアー中の周囲の音を取得し、希望者端末60から送信された音声や音を出力する。
【0056】
入出力装置512は、タッチパネルであり、モニタ、キーボード、マウスの機能を備える。入出力装置512は、説明者H1が文字入力を行う際に使用される。また、鑑賞用デジタルコンテンツDAを提示する。
【0057】
カメラ513は、静止画及び動画の撮像が可能である。例えば、説明者H1の画像又は映像や、日本文化的所産Aや映像を希望者端末に送信する際に使用される。
説明者端末60内の各構成はバス609によって互いにデータ通信可能に接続されている。
【0058】
3-3.希望者端末60
図8を用いて、希望者端末60のハードウエア構成について説明する。希望者端末20は、希望者端末制御装置600(以下、単に制御装置600と呼ぶ)、足踏み検知装置611(以下、単に検知装置611と呼ぶ)、仮想現実装置612、希望者端末カメラ613(以下、単にカメラ213と呼ぶ)を備える。
【0059】
制御装置600は、希望者端末CPU601(以下、単にCPU601と呼ぶ)、希望者端末メモリ602(以下、単にメモリ602と呼ぶ)、希望者端末ROM603(以下、単にROM603と呼ぶ)、希望者端末記憶装置604(以下、単に記憶装置604と呼ぶ)希望者端末インタフェース605(以下、単にI/F605と呼ぶ)を備える。記憶装置604は、オペレーティングシステム6041と、ブラウザソフト6042、仮想現実装置制御プログラム6043を備える。オペレーティングシステム6041と、ブラウザソフト6042と、仮想現実装置制御プログラム6043は協働して端末を希望者端末60として機能させる。
【0060】
仮想現実装置612は、音声装置と入出力装置の機能を搭載する。また、装着者の装着部位の動きに合わせて、仮想現実空間の視野を変えることができる。仮想現実装置612は、仮想現実装置制御プログラム6043の制御下で説明者端末50が送信した、音声説明やツアー中の周囲の音を出力し、希望者V1の音声や希望者V1の周囲の音を取得する。仮想現実装置612は、仮想現実装置制御プログラム6043の制御下で鑑賞用デジタルコンテンツDAを提示する。
カメラ613は、静止画及び動画の撮像が可能である。例えば、希望者V1の画像又は映像を説明者端末50に送信する際の像に使用される。
希望者端末60内の各構成はバス609によって互いにデータ通信可能に接続されている。
また、希望者端末60は、仮想現実装置612とは別にテキスト入力を行うための入力装置を備えていてもよい。
【0061】
3-4.支援システム2000の動作
支援システム2000の動作は、基本的には、支援システム1000と同じである。すなわち、本実施形態では、制御装置100が行う処理を制御装置500が行い、制御装置200が行う処理を制御装置600が行う。
【0062】
ただし、
図4のS5において送信される所定のツアーに対応する鑑賞用デジタルコンテンツは、説明者端末50の記憶された日本文化的所産Aを所蔵する施設内の情景を表す仮想現実空間の情景映像コンテンツ5044である。希望者端末60に接続された足踏み検知装置が受信する動的情報は、ネットワークを介して説明者端末50に送信される。説明者端末50の制御装置500は、取得した動的情報に基づいて、情景映像コンテンツ5044の情景を変化させた出力情報を生成する。制御装置500は、生成された出力情報をネットワーク99に出力し、希望者端末60の制御部がこれを取得し、仮想現実装置制御プログラム6043によって、出力情報を仮想現実装置612を介して出力し希望者に提示する。
【0063】
4.変形例
各端末として、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータ等を使用することができる。
【0064】
説明者キャラクターCH1、及び希望者キャラクターCV1は、実際に参加している者の写真や映像であってもよいが、アバター等の仮想キャラクターであってもよい。また複数人の希望者が参加する場合には、それぞれの希望者を異なる仮想キャラクターで表示することが好ましい。仮想キャラクターを説明者キャラクターCH1そして使用する場合、説明者端末10,50の記憶装置104,504又は、希望者端末20,20の記憶装置204,604は、仮想キャラクター生成プログラムを格納し、当該プログラムを使って仮想キャラクターを生成し説明者キャラクターCH1、又は希望者キャラクターCV1として表示する。仮想キャラクター生成プログラムは、公知のプログラムであり、例えば、特許6980946号公報、特許6980150号公報等に記載のプログラムを挙げることができる。
【0065】
足踏み検知装置611の上での希望者の足踏みは、立って行ってもよいが、座位で行ってもよい。また、
図6では、足踏み検知装置611は、パット状となっているが、足踏み検知装置611は、脚部に装着するバンド状の装置であってもよい。バンド状の足踏み検知装置611の場合、センサは、脚部の動きを加速度で検知することができるタイプのものが好ましい。また、パット状の足踏み検知装置611は、より仮想現実空間での動きがスムーズになり、仮想現実空間酔いが予防できる。このため、希望者が仮想現実空間におけるツアーをより楽しめるという効果が期待できる。
仮想現実プログラム5043及び仮想現実装置制御プログラム6043は公知であり、例えば特許文献1等にも記載されている。
【0066】
支援システム2000において、説明者端末50は、音声装置511と入出力装置512を備えているが、希望者端末60と同様に、音声装置511と入出力装置512に替えて仮想現実装置を備えていてもよい。この場合、仮想現実装置が音声装置511と入出力装置512の機能を代替する。
【0067】
さらに、マインドフルネスのトレーニングコースや、瞑想の時間をツアーに組み込む場合、説明者は、
図5に示すステップS17とS19間に、マインドフルネスのトレーニングや瞑想を開始する要求を入出力装置112及び/又は音声装置111に入力し、説明者端末10の制御装置100はこの要求を受け付け、希望者端末20に、マインドフルネスのトレーニングや瞑想を開始する情報を送信する。続いて、希望者端末20の制御装置200は、これを入出力装置212及び/又は音声装置211から出力して希望者V1に提示する。マインドフルネスのトレーニングや瞑想の開始から所定時間(例えば、5分から30分程度)経過後に、説明者は、マインドフルネスのトレーニングや瞑想を終了する要求を入出力装置112及び/又は音声装置111に入力し、説明者端末10の制御装置100はこの要求を受け付け、希望者端末20に、マインドフルネスのトレーニングや瞑想を終了する情報を送信する。これを入出力装置212及び/又は音声装置211から出力して希望者V1に提示する。また、マインドフルネスのトレーニングや瞑想を終了する情報の送信は、マインドフルネスのトレーニングや瞑想の開始から所定時間経過後に、説明者端末10の制御装置100が自動的に希望者端末20に送信してもよい。
【0068】
説明者は、
図4に示すステップS5の前にツアーに関する事前説明を行うための情報を送信する要求を説明者端末に入力してもよい。説明者端末10の制御装置100は、この要求を受け付け、希望者端末20に事前説明の情報を送信する。希望者端末20の制御部200は、この情報を入出力装置212及び/又は音声装置211から出力して希望者V1に提示する。
【0069】
また、接続された足踏み検知装置に動的情報を受信させる足踏みとは別に、希望者に足踏み等の準備運動をさせててもよい。この場合、説明者は、
図4に示すステップS5の前に参加者に準備運動を促すための情報を送信する要求を説明者端末に入力する。説明者端末10の制御装置100は、この要求を受け付け、希望者端末20に準備運動を促す情報を送信する。希望者端末20の制御部200は、この情報を入出力装置212及び/又は音声装置211から出力して希望者V1に提示する。
【0070】
5.効果の検証
図9(a)に示すスケジュールにしたがって、高齢者10名に本発明のプロトコルを実際に体験していただいた。参加者の背景は
図9(b)に示す。スケジュールは、複数のセッションに分かれており、事前説明から瞑想までの全てのセッション時間の合計を50分間とした。参加者には、仮想現実装置(Meta Quest2,Meta社)と足踏み検知装置(加速度センサ:M5StickC Plus,M5Stackテクノロジー社)を装着いただいた。文化財の鑑賞前の足踏み運動は仮想現実装置を装着した状態で5分間とした。実際の文化財の対話型鑑賞は、足踏みをしながら24分間とした。なお、今回の体験は、すべて座位で行った。
図9(b)に示すように、参加者の平均年齢は、80.3歳であり、UCLA孤独感スケール(文献:BMC Womens Health. 2019,Jul 26; 19(1):105)の平均スコアは40.3であり、日本国内でみても、又世界的にみても同性代の平均スコアと同程度であった。また、CHS基準に基づき、参加者のうち8名はフレイルと判定され、2名はプレフレイルと判定された者であった。
【0071】
全てのセッションが終了した後、参加者全員に各セッションの時間の妥当性について尋ねた。結果を
図10に示す。どのセッションについても、概ね妥当であると考えられた。
【0072】
仮想現実装置を装着して仮想現実空間を体験した際に、弊害として、一部の者ではいわゆる「バーチャル酔い」が生じることがある。このため、今回の参加者にもバーチャル酔いが生じたか否かの確認を行った。バーチャル酔いの評価は、文献:R.S. Kennedy, et al. The International Journal of Aviation Psychology, 3(3), pp.203-220, 1993.に記載の方法にしたがって、吐き気(Nausea)、眼球運動(Oculomotor)、方向感覚喪失(Disorientation)、及び総スコア(Total Score)について行った。結果を
図11に示す。今回の体験により、体調不良を来す者はいなかった。
次に、仮想現実空間の臨場感についてIPQ item (http://www.igroup.org/pq/ipq/)を使用して評価した。IPQ itemでは、仮想現実空間におけるGeneral Presence(一般的臨場性)、Spatial Presence(空間的臨場性)、Involvement(没入感)、Experienced Realism(現実感)の5項目について評価した。結果を
図12に示す。全般的に高い臨場感(GP、SP)や没入感(I)が得られていた。一方で、現実感(ER)も高く、これは、実写版のバーチャルリアリティ映像を用いて文化財の対話的鑑賞を行ったためと考えられた。
【0073】
次に、リッカート尺度を用いて、本発明のプロトコルに対する評価を行った。
図13(a)に、本プロトコル終了後に参加者に対して行ったアンケートの内容を示す。
図13(b)は、アンケート内容に対するリッカートの評価スケールを示す。多くの参加者が、今回の体験について有意義であると感じており、前向きな気持ちや楽しい気持ちになれたと回答した。また、次の体験に対する意欲も認められた。さらに、仮想現実空間で訪れたお寺に実際に行ってみたい、もっと人との関わりを楽しみたいと思う者も多く認められた。
【0074】
以上のことから、本発明のプロトコルは、フレイルの予防や改善に有効であることが示された。
【符号の説明】
【0075】
1000,2000 支援システム
10,50 説明者端末
20,60 希望者端末