(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098560
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】木毛及び木毛を利用した製品
(51)【国際特許分類】
B27M 3/00 20060101AFI20230703BHJP
【FI】
B27M3/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103078
(22)【出願日】2022-06-27
(31)【優先権主張番号】P 2021578260
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】517391303
【氏名又は名称】高原木材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】石松 真吾
【テーマコード(参考)】
2B250
【Fターム(参考)】
2B250BA07
2B250DA04
2B250EA02
2B250FA07
2B250FA09
(57)【要約】
【課題】木毛単体を数回の転回状態の転巻木毛として単体の集合体を形成して各種用途に応じて集合体の使い方を分別するように構成した木毛及び木毛を利用した製品を提供せんとする。
【解決手段】薄シート状の木片を数回の転巻形状に成形した木毛であって、含水率30%未満の木材を原料とし切削して成形することにより、表面に機能性凹凸部及び機能性小孔部の少なくともいずれか一方を備えたことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄シート状の木片を数回の転巻形状に成形した木毛であって、
含水率30%未満の木材を原料とし切削して成形することにより、
表面に機能性凹凸部及び機能性小孔部の少なくともいずれか一方を備えたことを特徴とする木毛。
【請求項2】
桧や欅や松等の木材から成形した一定肉厚と幅員を有する、少なくとも2転回以上の転巻木毛とし、転巻木毛を多数集合して一定容量の集合体を形成したことを特徴とする請求項1に記載の木毛。
【請求項3】
一定容量の集合体を可撓性袋体中に収納して転巻木毛袋82とし、転巻木毛袋82を緩衝体や断熱体等に利用することを特徴とする請求項1又は2に記載の木毛を利用した製品。
【請求項4】
可撓性袋体は不織布や生地布や合成樹脂等を材料として形成した多孔質袋体としたことを特徴とする請求項3に記載の木毛を利用した製品。
【請求項5】
一定容量の集合体を布製柔軟素材の袋体中又はガラスや紙や樹脂素材の箱状や円筒状や半球状とした硬質容器中に収納して集合体の緩衝性や吸湿性や芳香性を利用することを特徴とする請求項1又は2に記載の木毛を利用した製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来、物品を梱包した際に搬送時や荷積み時等の衝撃を吸収する目的で多様な緩衝体が用いられる。例えば物品と外箱の間に敷き詰める古紙を丸めたものや短冊状に切断したものや、2枚のポリエチレンシートの間に空気を封入しシート面に多数の気泡体を形成したクッション材等がある。
【0002】
かかる緩衝材においては緩衝機能と共に封入する空気を介在して保温断熱機能を併有するものも存在する。
【0003】
しかし、前記した緩衝材は保温や断熱の機能を発揮させることができるものの保温や断熱時に発生してしまった湿気に対して対応できるものは少なかった。
【0004】
例えば、断熱効果の高い緩衝材としてスチレンフォームが存在するが、発生した水分は物品を収納した箱体内部にそのまま残存して経時と共に物品、すなわち緩衝対象物を汚染したり溶解損傷したりする等の好ましくない現象を生起する虞があった。
【0005】
また、スチレンフォームは軽量であるものの嵩張りが大きく使用済みの材料処分の費用が高くなる虞や、外部衝撃を受けることによって細かく崩れて海洋ゴミの発生原因となる虞もあった。
【0006】
前記の緩衝材とは別に従来から木材を原料とした木毛を緩衝材として用いる場合がある。
木毛とはその単体形状が木材を薄膜で数mmの幅員とした薄膜の短冊状に削り形成したものであり、該単体木毛を集合体として緩衝機能を付与させたものである。言い換えると、木毛は、多数の不規則に波打った薄膜糸状様の木片の集合体であり、木材からの削り出しと同時に削り出された木片同士が互いに絡み合ことで、適度な弾力性を有する集合体を形成している。木毛の材料となる木材には、ヒノキやスギやマツ等が利用されている。
【0007】
かかる従来の木毛は、物品を収納した箱体中に充填して使用したり、多数の細短冊長手状の木毛を塊状に丸めて袋内に収納したりすることにより箱体や袋体中での物品に対する緩衝機能を高めて利用されることが多い。
【0008】
また、材料が木材である特徴を利用して自然の風合いで、特定木材の消臭機能と木材特有の香りを利用することができる。また、材料である木材の特徴である吸湿機能を利用することができ、しかも、吸湿した木毛は乾燥して繰り返し使用することができる。
【0009】
しかしながら、木材を薄膜の細短冊長手状に形成した木毛単体では、長手方向の中途で切断されたり、曲げ剛性が低く強い衝撃により折れ曲がったりする虞がある。それによって、木毛単体の集合塊でも緩衝機能が損なわれる虞があった。
【0010】
そこで、木毛単体の幅断面形状を山形や凹凸形状とすることで、長手方向に対する曲げ剛性を高めた技術について開示されている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に記載された木毛単体は、木毛単体を製造する際に使用するカンナ刃の形状を凹凸状となるように刃部と非刃部とを交互に設けることで、木毛単体の幅断面形状を山形や凹凸形状として製造することを可能としている。
【0013】
この幅断面形状を山形や凹凸形状に形成された木毛単体は、従来の薄膜を一定の厚みで薄膜の細幅短冊状に形成した木毛単体に比べ、長手方向に対する曲げ剛性を高めることができる。すなわち商品を収納した箱体内での商品の揺動によって生起する衝撃に対しても十分な緩衝機能を果たすことができる。
【0014】
しかしながら、特許文献1に記載された木毛単体における長手方向に対する曲げ剛性は、従来の薄膜の短冊状木毛と比較して高まるものの、剛性の力学的な機能効果は特筆するほど大きくなったとは云い難い。
【0015】
また、従来の木毛を緩衝材として使用した際の問題点は長手方向に対する曲げ剛性のみではない。その他の問題点としては、従来の木毛及び木毛を利用した製品では材木の切削により木毛単体の形状は薄膜の短冊状としているためこれらの木毛単体を寄せ集めて一定の大きさの塊としても各木毛同士の間の空隙は塊の形成次第で千差万別となる。言い換えると、従来の木毛は、切削と同時に多数の木毛単体が互いに絡まりあった塊を形成することから、一定の大きさ塊における各木毛単体間の空隙が、木毛単体の相互の絡まり度合や塊に対する外力の有無等により大きくなったり小さくなったりする。この木毛塊の密度が高すぎると木毛間の空隙が小さくなって緩衝機能や断熱機能やその他の木毛特有の各種機能を最大限発揮することができなくなる。
【0016】
したがって、従来の木毛では塊を構成する木毛単体の粗密の違いにより各種機能の効果がまちまちとなり一定の基準で恒常的に効果を維持することが困難となる。更には保管し管理する上でも嵩が大きいため煩雑となり搬送にも不便であった。
【0017】
また、木毛単体では緩衝機能は備わっていないため、木毛単体を多数集合させ塊状の木毛塊にする必要がある。そのため大量の木毛単体を用意し使用用途に応じて小分けしようとした際に短冊状の木毛単体同士が絡まり容易に小分けすることが困難な状態であることが多い。すなわち木毛単体同士の絡まりを解いたり引きちぎったりする必要があり作業性が悪くなってしまう虞がある。更に小分けにする際に千切れた木毛単体が木屑となり作業者に清掃等の負担が大きくなる。
【0018】
また、木毛単体あるいは木毛塊は緩衝機能や断熱機能と付随して吸湿機能、消臭機能、芳香機能等の機能を有しているが、木毛塊はその密度を均一にすることが難しく、それらの付随する機能を十分に発揮させるための調節が難しいことも問題として挙げられる。
【0019】
上記の問題点は、特許文献1に記載された技術では解決することができず、木毛を緩衝材として使用する際の障壁となっていた。
【0020】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、木毛単体を数回の転回状態の転巻木毛として単体の集合体を形成して各種用途に応じて集合体の使い方を分別するように構成した木毛及び木毛を利用した製品を提供せんとする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記従来の課題を解決するために、本発明にかかる木毛及び木毛を利用した製品は、(1)薄シート状の木片を数回の転巻形状に成形した木毛であって、含水率30%未満の木材を原料とし切削して成形することにより、表面に機能性凹凸部及び機能性小孔部の少なくともいずれか一方を備えたことを特徴とする。
【0022】
また、本発明にかかる木毛及び木毛を利用した製品は以下の点でも特徴を有する。
(2)ヒノキやスギやマツ等の木材から成形した一定肉厚と幅員を有する、少なくとも2回転以上の転巻木毛とし、転巻木毛を多数集合して一定容量の集合体を形成したこと。
(3)一定容量の集合体を可撓性袋体内に収納して転巻木毛袋とし、転巻木毛袋を緩衝体や断熱体に利用すること。
(4)可撓性袋体は不織布や生地布や合成樹脂等を材料として形成した多孔質袋体としたこと。
(5)一定容量の集合体を布製柔軟素材の袋体中又はガラスや紙や樹脂素材の箱状や円筒状や半球状とした硬質容器中に収納して集合体の緩衝性や吸湿性や芳香性を利用すること。
(6)前記転巻木毛を形成する前記シート状木片に多数の孔部が設けられている。
【発明の効果】
【0023】
本発明の木毛及び木毛を利用した製品によれば、木毛単体を数回の転回状態の転巻木毛としたことで、木毛単体による剛性を高め緩衝機能を付与すると共に、転巻木毛単体の集合体とすることにより大きな緩衝機能を生起することができる。
【0024】
また、含水率30%未満の乾燥木材を切削することで、木毛の表面に傷や窪み、毛羽立ち等の機能性凹凸部を生起させ、木毛の表面積を広くすることができ、木材特有の吸湿機能や消臭機能を高める効果がある。
【0025】
また、含水率30%未満の乾燥木材を切削することで、木毛の表面に裂け目や微細な孔等の機能性小孔部を生起させ、転巻状態の木毛の通気性を良くする効果や柔軟性を高める効果が得られる。
【0026】
また、木毛単体を数回の転回状態の転巻木毛としたことで集合体において一つ一つが粒体として存在することとなり木毛単体同士の絡まりを可及的に防止することができる。しかも、木毛単体同士が絡まりにくいため、各種の用途のために最適な木毛単体の量に調節することが容易となる。更に、木毛を一定量に小分けする作業時に木屑の発生を従来よりも抑えることができる。
【0027】
また、従来の木毛単体では、薄膜の短冊状であるため重なりやすく密着して間隙を十分に形成できない場合がある。そのため、木毛特有の機能、例えば、緩衝機能や断熱機能等が十分に発揮されない虞があった。しかしながら、木毛単体を転回した転巻木毛としたことにより、転巻木毛単体の中心部に間隙が形成されるため緩衝機能や空気流通機能や吸湿機能や芳香機能など木毛特有の機能を十分に発揮することができる。
【0028】
また、複数の転巻木毛を集合体とした際には転巻木毛単体の間に程よく略均一の間隙が形成されその分緩衝機能や断熱機能や吸湿機能等の対空間環境特性が高まる。
【0029】
また、転巻木毛は集合体とした場合に粒体の集合体であるため全体の体積が嵩張りにくくなる効果がある。
【0030】
従来の薄膜短冊状の木毛では、平坦な形状であることから多数の集合体とすることで緩衝材としての機能を有することができる。それに対して、本発明の転巻状とした木毛においては、立体的な形状とし螺旋状の間隙を備え一定の剛性を得ることで、木毛単体であっても緩衝機能を有することができる。
【0031】
また、従来の薄膜短冊状の木毛では、集合体としたときに木毛単体同士の間でまばらな間隙を形成するため、体積が大きくなる傾向にある。それに対して、本発明の木毛は、木毛単体が立体的な粒体形状であることから、集合体としたときに形成される間隙は一定となり従来の薄膜短冊状の木毛に比して体積を小さくすることができる。このとき、集合体の体積は、従来の薄膜短冊状の木毛を集合体としたときよりも小さくなるものの、木毛単体が転巻状に形成されていることで、体積に対する木片の表面積は大きくなることとなる。そのため、木毛特有の調湿機能や消臭機能が同体積で比較した場合に従来の木毛よりも高い効果を発揮することができる。
【0032】
また、木毛単体を数回の転回状態の転巻木毛としたことで、回転数を調節することで、緩衝機能や吸湿機能や消臭機能等の調節が可能となる効果がある。
【0033】
また、本発明の木毛は、木毛単体を数回の転回状態の転巻木毛としたことで、木毛単体での剛性が高まり緩衝機能を生起することで、多数の転巻木毛を集合させ木毛塊として使用した際に、外力の影響を受け集合体形状が変形することを防ぐことができる。
【0034】
また、木毛の材料は木毛の利用目的に適した木材を適宜選択することができ、かつ木毛単体における転回数や集合体に用いる量を調節することで、吸湿機能や消臭機能や芳香機能等使用木材の特徴を最大限に活かすことができると共に緩衝機能や断熱機能を損なうことなく使用することが可能となる。
【0035】
また、一定容量の集合体を可撓性袋体中に収納して転巻木毛袋とし、転巻木毛袋を断熱材に利用することで、転巻木毛単体の一つ一つが螺旋状の中心部に空気を抱くように保持することで、高い保温断熱効果を得ることができる。
【0036】
また、可撓性袋体は不織布や生地布や合成樹脂等を材料として形成した多孔質袋体としたことで、可撓性袋体中の通気性が得られ、湿度の高い環境下で使用した際に袋体に収納した転巻木毛の吸湿機能と相まってカビの発生を抑制する効果がある。
【0037】
また、可撓性袋体は不織布や生地布や合成樹脂等を材料として形成した多孔質袋体としたことで、緩衝材や断熱材等の使用であっても可撓性袋体中に収納した転巻木毛の芳香を活かすことができる。
【0038】
また、可撓性袋体は不織布や生地布や合成樹脂等を材料として形成した多孔質袋体としたことで、木材特有の吸湿効果の妨げにならず、且つ通気性が良くなることで吸収した水分が原因で袋体にカビが発生することを防ぎ清潔に保つことができる。
【0039】
一定容量の転巻形状とした木毛単体を集合体としガラスや紙や樹脂等からなる開口部を設けた箱状や円筒状や半球状の硬質容器中に収納した転巻木毛収納体とし、転巻木毛収納体を芳香剤や吸湿剤等に利用することで、転巻木毛袋としたときに比し、より多くの空気が直接に触れることでより高い芳香機能や吸湿機能や消臭機能を得ることができる。
【0040】
また、本発明の転巻形状とした木毛単体は、従来の薄膜の短冊状とした木毛と異なり、見た目の審美性が高いため、透明な容器等に収納すると、芳香機能や吸湿機能や消臭機能に加え置物としての付加価値を得ることができる。
【0041】
また、本発明の転巻形状とした木毛の材料となる木材を切削するに際して、木材の乾燥度や切削する刃の深さ(切削した木片の厚み)や切削する刃の角度の調節を行い、木材の繊維方向(導管方向)に沿って切削することにより、木毛の形状が転巻状に形成される。そのため木材繊維も転巻状に巻かれ、転巻木毛を外周面から中心部に向かって押圧しても転巻した木材繊維の弾発力が押圧力に抵抗して転巻形状を損壊することなく形状を強固に保持することができる。
【0042】
また、かかる木毛単体の転巻外周面における強度保持機能は、木毛単体を集合させ木毛塊とすることにより、更に高度な緩衝機能を発揮することができる。
【0043】
また、吸湿機能を主とした木毛を利用した製品では、水分を含んだ転巻木毛を乾燥させることで、繰り返し使用することができ、ゴミの発生を最小限に抑制できる。
【0044】
また、木製製品の端材から製造することができ、限りある資源の節約に寄与することができる。更に木材を原料としていることで、土壌で分解が可能であるため、使用しなくなった場合に処理に係るコストが低く、環境への負荷も最小限とすることができる。
【0045】
また、目的とする機能を果たした転巻形状の木毛を土壌に混ぜることで、ごみの処理と同時に植物への肥料として自然に還元することができる。
【0046】
すなわち、資源の節約や廃棄処理にかかる効果は、持続可能な開発目標(SDGs)のうち「産業と技術革新の基盤を作ろう」、「住み続けられるまちづくりを」、「つくる責任つかう責任」、「海の豊かさを守ろう」、「陸の豊かさもまもろう」に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる転巻木毛を示す図であり、(a)は転巻木毛の斜視図、(b)は転巻木毛の正面図、(c)は転巻木毛の平面図、(d)は転巻木毛の側面図をそれぞれ示している。
【
図2】本発明の一実施形態に係る転巻木毛の作成方法のうち木材に切込みをいれる工程を示す説明図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る転巻木毛の作成方法のうち木材表面に溝を形成する工程を示す説明図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る転巻木毛の作成方法のうち木材を切削し転巻木毛を形成する工程を示す説明図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る転巻木毛を形成する際に木片が転巻状態となる原理を説明するための図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る転巻木毛の構成について説明するための模式的正面図である。
【
図7】従来の薄膜の短冊状とした木毛単体を集合させた木毛塊を示す説明図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る転巻木毛を集合させた木毛塊を示す説明図である。
【
図9】(a)は本発明の一実施形態に係る転巻木毛を可撓性袋体中に収納する様子を示した説明図であり、(b)は本発明の一実施形態に係る転巻木毛を可撓性袋体中に収納した状態を示す説明図である。
【
図10】(a)は本発明の一実施形態に係る転巻木毛を硬質容器中に収納する様子を示した説明図であり、(b)は本発明の一実施形態に係る転巻木毛を硬質容器中に収納した状態を示す説明図である。
【
図11】他の実施系に係る小孔を穿設した転巻木毛を示す図であり、(a)は目に見えないほどの微小な小孔を穿設した状態を示す模式的斜視図、(b)は(a)に示す小孔に比して大きな小孔を穿設した状態を示す模式的斜視図をそれぞれ示している。
【
図12】他の実施例に係る転巻木毛に小孔を穿設する方法を示す説明図である。
【
図13】本発明に係る転巻木毛をポプリと一緒にガラス容器中に収納した状態を示す説明図である。
【
図14】他の実施例に係る打ち起こし片を設けた転巻木毛を示す図であり、(a)は模式的斜視図、(b)は模式的正面図をそれぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0048】
この発明の要旨は、薄シート状の木片を数回の転巻形状に成形した木毛であって、含水率30%未満の木材を原料とし切削して成形することにより、表面に機能性凹凸部及び機能性小孔部の少なくともいずれか一方を備えたことにある。
【0049】
また、転巻木毛は、ヒノキやスギやマツ等の木材から成形した一定肉厚と幅員を有する。転巻木毛の転巻数は、少なくとも1.5転回以上が好ましく、2転回以上であることがさらに好ましいし。さらに、このような形状の転巻木毛を多数集合して一定容量の集合体を形成したことにも特徴を有する。
【0050】
また、一定容量の集合体を可撓性袋体中に収納して転巻木毛袋とし、転巻木毛袋を緩衝体や断熱体に利用することにも特徴を有する。
【0051】
また、可撓性袋体は不織布や生地布や合成樹脂等を材料として形成した多孔質袋体としたことにも特徴を有する。
【0052】
また、一定容量の集合体をガラスや紙や樹脂等からなり開口部を設けた箱状や円筒状や半球状の硬質容器中に収納した転巻木毛収納体とし、転巻木毛収納体を芳香剤や消臭剤や吸湿材等に利用することにも特徴を有する。
【0053】
[1.転巻木毛の構成と作成方法について]
以下、本発明にかかる木毛及び木毛を利用した製品の一実施形態を、図面に基づいて詳説する。
図1は本実施形態の転巻木毛単体の形状を表す図であり、(a)は斜視図、(b)は正面図、(c)は平面図、(d)は側面図をそれぞれ示している。
【0054】
以下、明細書中に記載した木毛30とは木材を従来の薄膜の細短冊長手状に形成した木毛単体及び/又は木毛単体を集合した木毛塊を差す。また、転巻木毛10とは、所定の幅員、長さ、厚みの薄膜木片11を転回させた粒体の木毛単体及び/又は木毛単体を集合させた木毛塊を差す。
【0055】
また、以下、明細書中に記載した含水率とは、木材の含水率として一般的な、乾燥前の
質量と乾燥後の質量とから導き出される乾量基準含水率のことである。
【0056】
本実施形態の木毛は、ヒノキやスギやマツ等の木材20を切削し、
図1に示すような数回の転巻状とした転巻木毛10である。
【0057】
具体的には、木毛単体の幅員1mm~80mm、長さ10mm~400mm、肉厚0.05mm~1mmの薄シート状の木片を1.5回転以上に巻いた転巻形状としている。また、転巻状態における巻き直径は、3mm~100mmとしている。
【0058】
上述した転巻木毛10の数値範囲は、目的用途により適宜好ましい範囲が異なる。例えば、複数の転巻木毛10を集合し木毛塊とすることにより緩衝材の用途で用いる場合には、木毛単体の幅員を3mm~10mm、長さを10mm~40mm、肉厚を0.05mm~0.3mmとし、その木毛単体を巻き直径3mm~6mmで2回転以上5回転未満に巻いた転巻形状が好ましい。また、木材の吸湿効果や消臭効果を活かした用途で用いる場合には、転巻木毛10の表面積が大きいほど効果が高くなるため、各種数値を大きくし、回転数も多くすることが好ましい。また、審美性を活かしたポプリのような用途であれば、上述した数値範囲の中で複数種類のパターンを用いることが好ましい場合もある。
【0059】
本実施形態の転巻木毛10は、単体形状を転巻形状とすることで、薄膜の短冊状とした従来の木毛30にはない、木毛単体での緩衝性を付与することが可能となる。
【0060】
また、転巻形状とする際の作業工程(後述する、溝刃40による溝の間隔や木材20の含水率やすくい刃50の切削角度θの値等)では上述した幅員や回転数等の各種パラメータを適宜変更することができる。
【0061】
また、転巻形状とする際の作業工程では上述した各種パラメータの変更を可能としているが、この作業工程による変更させる手法は、樹種の違い加工時期による影響にも適応させることができる。例えば、スギを転巻木毛10に加工しようとした場合には、木の特性上転巻構造を形成しにくい傾向がある。しかしながら、回転数を調整する手法を応用することで、転巻構造を形成しにくい木材20であっても期待する転巻構造への加工を可能とすることができる。
【0062】
例えば、使用する木材20の乾燥度合いや切削刃の深度(切削する木片の厚み)や角度等を変化させることで転巻木毛10の幅員や回転数や丸まる程度を調整することが可能である。
【0063】
具体的には、回転数は木材20から削り出される木片11の長さが長いほど増やすことができ、丸まる程度は使用木材の乾燥度合いが進んでいるものや切削する木片11が薄いものや切削する刃の角度が急なほど丸まりやすくなる。
【0064】
転巻木毛10の回転数や丸まる程度は、転巻木毛10単体の緩衝性能に大きく影響を与える。すなわち、転回数が多くより密に丸まることによって、弾力性が増すことになり、それに比例して緩衝性能が高くなる。その際、転巻木毛10の中空部の空間12は少なくなりその分全体積は少なく、かつ芳香性や消臭性は即効性に乏しい反面長期間の芳香消臭性を長期間に渡り持続することが可能となる。
【0065】
また、この緩衝性能は、回転数や丸まる程度の調節によって、集合体の利用目的に応じた弾力性を適宜選択できるようになる。例えば、より柔らかく手触りの良い転巻木毛10を用いる場合には回転数を少なく丸まる程度も緩くすることで可能となる。
【0066】
また、転巻木毛10の材料である切削前の木材20の乾燥具合も転巻状態を左右する。例えば、乾燥具合が進んでいる木材20ほど切削時に木片11が丸まりやすく転巻木毛10の転回数を増やす際には都合がよい。また、逆に転巻木毛10の転回数を減らしたい場合にはあまり乾燥が進んでいない木材20を用いるとよい。
【0067】
切削前の木材20の含水率は木材20を切削しつつ木片11を転巻状に形成する際の重要な条件の一つであり、水分を多く含んだ木材20では切削される木片11が上手く転巻状を形成しない。このため、切削された木片11は従来の短冊状の木毛30に近しいものとなってしまう。
【0068】
したがって、材料となる木材20の含水率は最低でも30%未満の含水率とする必要がある。また、詳しくは後述するが木材20の含水率は転巻木毛10の丸まる程度を決める要因であり、含水率が低い木材20ほど丸まりやすく密な転巻状の転巻木毛10を作成することができる。ただしこの含水率の値は、低すぎる値であれば切削時に、後述する木片11の内部の微小な破壊16(
図5bを参照。)や機能性凹凸部11aや機能性小孔部11b(
図1を参照。)が過度に生起してしまい割れてしまう虞があるため、5%以上~30%未満とすることが好ましい。また、丸まる度合いには木毛単体の肉厚にも大きく影響するため、丸まる度合いと完成品の肉厚とを逆算して最も適した含水率を選択することが好ましい。
【0069】
また、含水率30%未満の木材20をすくい刃50で切削し転巻状態とすることにより、木片11の表面に転巻木毛10の機能をさらに高める特徴を備えることができる。具体的には、すくい刃50が木材20の表面を引き裂くようにして切削することから、
図1に示すように、木片11の表面に窪みや傷といった凹部と木片11の表面から突出するように毛羽立った凸部とからなる機能性凹凸部11aや、木片11の表面に生起する裂け目や微細な孔からなる機能性小孔部11bを形成することとなる。
【0070】
機能性凹凸部11aは、転巻木毛10の表面積を大きくすることになり、表面積が大きくなることで木材特有の吸湿効果や消臭効果をより高いものとすることができる。また、窪みや傷といった凹部は、木毛全体の柔軟性を向上させることができる。
【0071】
機能性小孔部11bは、転巻木毛10の表面に微細な貫通孔を形成することにより、転巻木毛10の通気性を向上させることができる。
【0072】
ところで、転巻木毛10は、転巻状態において巻き方向に順ずる方向(転巻木毛10の外形を筒形状で例えた際の前後左右方向)に対して弾発力を発揮し従来の木毛30にはない単体での緩衝機能を有している。しかしながら、転巻木毛10は、転巻形状としていることで巻き方向に対向する方向(転巻木毛10の外形を筒形状で例えた際の上下方向)には剛性が高くなりすぎる欠点がある。すなわち、巻き方向に対向する方向に対しては、柔軟性に欠けるため望む緩衝効果が得られない虞がある。
【0073】
機能性小孔部11bは、転巻木毛10の表面に複数の微細な貫通孔を形成することにより、全体の柔軟性を高め、上述した巻き方向に対向する方向に対する緩衝効果の欠点を解消する効果が得られる。
【0074】
この機能性凹凸部11aと機能性小孔部11bとは、木材20の含水率が高いとすくい刃50で切削する際の摩擦を低減し(木材20に含まれる水分子が多いほど潤滑効果を高めるため)生起しづらくなる。そのため、転巻木毛10を形成するに必要となる30%未満の含水率の木材20を切削することが、機能性凹凸部11a及び機能性小孔部11bを生起させるにも好ましい値となる。
【0075】
また、反対に木材20の含水率が低いほど、切削時の摩擦係数が高くなるため、機能性凹凸部11a及び機能性小孔部11bが多く生起することとなる。すなわち、含水率が低い木材20を材料とすると、機能性凹凸部11a及び機能性小孔部11bが多く生起し木片11の柔軟性が高まり転巻状態としたときの巻き密度が高く、より丸まりやすくなる効果がある。
【0076】
このように木材20の切削時の含水率や加工時の条件の変化等の工夫で技術的に転巻木毛10の各種パラメータの調整を行うことができる。
【0077】
次に具体的な転巻木毛10の作成方法について説明する。
図2~
図4は、本実施形態の転巻木毛10の作成方法を示す図であり、
図2は木材20に切込み21を設ける工程を示し、
図3は木材20表面に溝22を設ける工程を示し、
図4は木材20を切削し転巻木毛10を形成する工程を示している。
図5は、本実施形態の転巻木毛10を形成する際に木片11が転巻状態となる原理を説明するための図である。
【0078】
転巻木毛10は、
図3及び
図4に示すように、刃先がジグザグ形状の溝刃(すき刃)40と刃先が直線形状のすくい刃(カンナ刃)50の2種類の異なる刃を用いて切削することで、薄膜状の木片11を転巻形状とすることができる。使用される木材20は、事前に乾燥作業を終え、含水率が30%未満のものを使用する。含水率の値は、完成品となる転巻木毛10の丸まる度合いにより適宜選択され5%以上~30%未満が好適に選択される。
【0079】
なお、乾燥前、すなわち製材直後生木の状態では、おおよそ50%~60%の含水率とされている。より具体的には、スギの芯材であれば約55%で辺材に至っては約159%の含水率とされ、ヒノキの芯材であれば約55%で辺材に至っては約153%の含水率とされている。
【0080】
また、含水率が30%未満の木材20は、それ以上の乾燥を行っても寸法の変化が起きにくく、それに伴い乾燥時に生起する材のひび割れも生起しにくくなるとされている。また、乾燥前の木材20と比して強度も高くなっており、耐久性に優れた状態であると云える。
【0081】
木材20の乾燥方法については、従来行われる木材20の乾燥方法のうちどの方法を用いてもよい。例えば乾燥させる木材20と桟を交互に積み重ねる、所謂桟積みを行い自然の風を用いて乾燥させる天然乾燥や、桟積みした木材20を庫内で保存し、その庫内を45℃ほどの環境下で行う低温除湿式の人工乾燥等が挙げられる。乾燥期間としては、方法と季節等の条件によって異なるが、最短で1週間程度、最長で3年程の期間を有する。
【0082】
手順としては、
図2に示すように、材料となる木材20の木目に対向する方向(木材の繊維方向に直交する向き)に一定間隔で切込み21を入れる。この切込み21は鋸や電動の丸鋸等の切断手段60により行われる。
【0083】
この切込み21は、転巻木毛10単体の展開状態の長さ、すなわち転巻木毛10の巻きの長さを決めるためのものである。具体的には、後述する切削方向(木材の繊維方向)の長さが240mmの木材3に対して等間隔で3本の切込みを入れると巻きの長さが60mmの転巻木毛10が得られることとなる。
【0084】
本実施形態において切込み21は、一定間隔で設けるよう記載したが、実際には一定間隔に限定されず、出来上がる転巻木毛10の巻の長さによって変更されるとよいし、この切込み21を設ける工程を行わずに木材20の繊維方向の長さを転巻木毛10の巻きの長さとするようにしてもよい。
【0085】
次に
図3に示すように、転巻木毛10の材料となる木材20の木目方向に対し平行(木材の繊維方向に沿った向き)となるように刃先がジグザグ形状の下方突出刃41を備えた溝刃40を用いて木材20の表面に溝22を形成する。
【0086】
すなわち、前記の切込み21を入れる工程と合わせて木材20の表面には、格子状の溝が形成されることとなる。溝22は、転巻木毛10の幅員を決めるためのものである。具体的には、幅員(木材の繊維方向に直交する向きの長さ)が100mmの木材20に対して等間隔で9本の溝22を刻設することで幅員10mmの転巻木毛10が得られることとなる。
【0087】
次に、
図4に示すように、複数の溝22を刻設した木材20に対し、溝刃40と同方向(木材の繊維方向)にすくい刃50を用いて木材20の表面を削り出すことで、溝22と溝22との間の平坦面23表面のみが切削されて薄膜状の一定幅員の短冊が形成されつつ転巻状態となっていく。
【0088】
木材20を切削するすくい刃50は、木材20の表面に対して寝かせすぎた場合では切削木片11が上手く転巻状態とならないことがある。そのため、木材20を切削するすくい刃50は、
図5に示すように、木材20の表面との角度θを20度以上で90度未満に設定される。木材20の表面との摩擦や後述する木片11が切削後に上方へ押し上げられる応力の関係から、角度θは、20度~60度の範囲とすることが最も好ましい。
【0089】
すなわち、作成される転巻木毛10の幅員は、溝刃40の刃先に形成されるジグザグ形状の下方突出刃41の間隔によって決まり、下方突出刃41の間隔が狭い溝刃40を使用することで幅員の狭い転巻木毛10が形成され、下方突出刃41の間隔の広い溝刃40を使用することで幅員の広い転巻木毛10が形成される。
【0090】
この木材20から切削された薄膜短冊状の木片11が転巻した状態になる原理について図に基づいて説明する。
【0091】
材料となる木材20と切削するすくい刃50の関係は、
図5に示すように、木材20の上面に対して任意の深度(切削後の木片11の厚みによって選択される)に設定される。
【0092】
次に、任意の深度に設定されたすくい刃50を木材20の端部24から水平移動させることで、刃先51を木材20に所定の深さで侵入させ、木材20の表面から木片11を引き裂くようにして削り出していく。
【0093】
このとき、削り出された木片11はすくい刃50の刃先51により切削されたのちにすくい面52により上方へ押し上げられることとなる。このように、木材20はすくい刃50によりその表面を裂くように切削されることから、木片11と木材20の分離位置25でせん断力が作用し、木片側の内部に微小な破壊16が生じる。すなわち、木片11は切削直後にすくい刃50のすくい面52により上方へ押し上げられ更に、この木片11の微小な破壊16と相まって転巻形状が形成されていくこととなる。
【0094】
また、このとき引裂くように切削されることにより、木片11の表面には、上述した機能性凹凸部11a及び機能性小孔部11bが形成される。
【0095】
前記した切削により木片11の内部に生起する微小な破壊16、木片11の表面に生起する機能性凹凸部11a及び機能性小孔部11bは、木材20の含水率により生起する度合いが変化する。
【0096】
具体的には、水分を多く含んだ木材20を切削した場合には切削面に生じる摩擦が可及的に抑制され、生じる木片11内部の微小な破壊16(
図5bを参照。)、木片11表面の機能性凹凸部11a及び機能性小孔部11b(
図1を参照。)の生起する度合いが少なくなる。そのため、含水率30%以上の木材20では、木片11の微小な破壊16、機能性凹凸部11a及び機能性小孔部11bが生起されず、すくい刃50のすくい面52により木片11を上方へ押し上げても転巻状態とならず従来の薄膜の短冊状とした木毛30と同様なものとなる。
【0097】
また、含水率が低いものほど切削時に生起する微小な破壊16、機能性凹凸部11a及び機能性小孔部11bの生起する度合いがより大きくなる傾向があり、より密な転巻形状を形成することができる。
【0098】
さらには、切削時に生起し微小な破壊16を生起するせん断破壊は、切削する厚みによっても変化する。すなわち、切削時の木片11の厚みが薄いほど、破壊の影響が大きくなり、より密な転巻形状が形成される。
【0099】
また、切削角度θが木材3の表面に対して直角に近づくほど、切削される木片11にすくい刃50のすくい面52により上方に押し上げられる力が大きく働き、より密な転巻形状が形成されやすくなる。だたし、乾燥度合いが進んだもの(含水率が低いもの)ほど丸まりやすくなる反面、切削時の微小な破壊16、機能性凹凸部11a及び機能性小孔部11bが大きくなる。そのような木材20を切削する際には、切削角度θを大きくしすぎると木片11は転巻状態になるよりも先に割れてしまう虞がある。したがって、木材20の含水率とこの切削角度θは、丸まる度合い(転巻形状における密度)を逆算して適宜選択されることが好ましい。
【0100】
また、水分を多く含んだ木材20を切削した場合には切削面に生じる摩擦が可及的に抑制され、機能性凹凸部11a及び機能性小孔部11bの形成される度合いが少なくなる。そのため、含水率50%以上の木材20では、木片11の表面に機能性凹凸部11a及び機能性小孔部11bが十分に生起されず、上述した機能性凹凸部11a及び機能性小孔部11bによる優れた効果が得られないものとなる。さらに、含水率の低い木材11を材料とすることで多くの機能性凹凸部11a及び機能性小孔部11bが生起し、木片11を柔軟なものとすることができ、より丸まりやすくすることができる。
【0101】
上述してきたように、転巻木毛10は木材20から切削され製造されるものであるため、使用後の廃棄処分時には土壌に埋設すれば地中分解が可能となり、従来用いられてきた緩衝材、例えば、発泡スチロールやエアパッキン等のようにゴミとしての処理が環境に影響を与えるのと比較して環境衛生上も利点が大きい。
【0102】
また、転巻木毛10の材料となる木材20は、転巻木毛10のために用意された木材20のみではなく、例えば家具等の木製製品を製造する際に発生した端材等から製造してもよい。
端材を用いて製造することで、限りある資源の節約に寄与することができる効果がある。
【0103】
また、転巻木毛10の製造方法としては、巻きの長さを決める切込み21と幅員を決める溝22とを刻設できるものであればどのような手段を用いてもよい。また、木材20の表面を切削する手段に関しては、所定の角度で刃入れを行い薄膜状に削り出せる手段を持ちることができればどのようなものであってもよい。
【0104】
[2.転巻木毛の性能及び使用について]
次に、転巻木毛10の性能と使用方法について図を用いて詳説する。
図6は、本実施形態の転巻木毛10の構成について説明するための模式的正面図である。
図7は、従来の薄膜短冊状の木毛30単体を集合させた木毛塊とした状態を示す説明図である。
図8は、本実施形態の転巻木毛10単体を集合させた木毛塊とした状態を示す説明図である。
図9は、本実施形態の転巻木毛10を袋体81内に収納した状態を示す説明図である。
図10は、本実施形態の転巻木毛10を硬質容器83内に収納した状態を示す説明図である。
【0105】
転巻木毛10は、単体として薄シート状の木片11を転巻形状としたことで、従来使用されていた薄膜の短冊状とした木毛30にはない弾力性が生まれ、かつ、集合体させ木毛塊とすることにより高度な緩衝機能を発揮することができる。
【0106】
すなわち、転巻木毛10の外側から中心部に向かった押圧応力がかかっても、転巻した木材繊維の弾発力が押圧力に抵抗して転巻形状を維持しながら形状を強固に保持することができる。
【0107】
また、転巻木毛10単体は、転巻形状としたことにより、一つ一つの転巻容積は小さくなるものの木毛単体そのものの表面積は広く、木毛本来の吸湿機能や消臭機能が従来の木毛30に比し高まることとなる。
【0108】
さらに、木毛を転巻形状としているため、
図6に示すように、転巻した木毛30の外周面13と内周面14の間の空間は狭い転巻中途の空白部分15となり直接空気と触れにくくその分使用木材特有の芳香機能が一度に発散されることなく長期間に渡り芳香を持続することができる効果がある。
【0109】
この転巻木毛10は、木材20を材料としているため、木材20の種類によっても様々な特徴を有することができ、使用用途に合った木材を使用することでより良い効果が期待できる。例えば、マツやスギ等は、高い強度を持つため転巻木毛10とした際に弾力性に富み緩衝機能が高くなることが期待できるし、コウヤマキは非常に高い水湿耐性があるため、湿気や水滴が発生しやすい商品の緩衝材としての使用に適している。
【0110】
また、クロモジやヒバ等は高い抗菌機能を有しており、ヒノキやクスノキ等には高い防虫機能を有しているため、消臭剤や調湿材等への使用が考えられる。
【0111】
また、気密性が低く湿気に強いとされるスギや水湿性の高いヒノキ等は、断熱保温を行う際に発生しやすい湿気に強く最適である。
【0112】
また、木材20はそれぞれ違った芳香を有しており、使用者の好みによって材料となる木材20が選定されてもよい。
【0113】
さらには、緩衝機能から見た転巻木毛10の形状の特異性は、単体であっても緩衝機能を有する点にある。したがって、転巻木毛10を集合させた木毛塊としたときに、緩衝機能が相乗され緩衝材として機能が飛躍的に大きくなる。
【0114】
また、転巻木毛10は従来の木毛30と異なり、転巻形状としていること表面に機能性小孔部11bを形成していることで多方向への剛性及び柔軟性が単体で高まる。これにより、転巻木毛10を集合塊とした場合でも外部衝撃による形状の変化が起きにくく緩衝機能を持続させる効果がある。
【0115】
すなわち、従来の木毛30を塊状として緩衝材にしたときには、その単体形状が短冊状の故に強固な塊状になりにくく、その分剛性が低くなるため外部衝撃により損壊し折れ曲がり、その部分は緩衝機能が欠落する虞がある。それに対して転巻木毛10は、転巻しているために単体自体でも剛性が高く、緩衝性を有しているため衝撃により転巻木毛10の単体自体が潰れる可能性が低くより緩衝機能を損なう虞がなくなる。
【0116】
また、従来の木毛30を塊状として緩衝材としたときには、
図7に示すように、塊内の密度を均一とすることが難しく、密度が低い箇所では間隙が広くなりすぎて緩衝機能が低くなる。その反対に、密度が高い箇所においては間隙が狭くなりすぎ塊の硬度が必要以上に高くその部分の弾性が乏しくなり緩衝機能がかえって損なわれる虞がある。
【0117】
転巻木毛10は、粒体であるため、
図8に示すように、密度が均一となりやすく程よく単体間の間隙が形成されると共に、個々が中心に空間12を有しているため、全体の性能が均一にすることができる。
【0118】
転巻木毛10は、従来の薄膜短冊状の木毛30と異なり、転巻形状としていることにより、単体での体積に比して表面積が大きくなる。また、表面に形成された機能性凹凸部11aが表面積をさらに大きくする効果がある。表面積が大きくなることで、木材特有の吸湿機能や消臭機能がより拡張されることとなる。
【0119】
また、上述したような吸湿機能を有した転巻木毛10を複数集合させ木毛塊とした際には、元々の木材20が持つ吸湿機能がより高まり、緩衝材として梱包用外箱の内部に詰めたときには、外箱内部に発生した湿気から梱包対象物を守ることができる。
【0120】
また、転巻木毛10は細長の木片11を転巻状としているため、
図6に示すように、中心部に空間12を形成し空気を保持することとなり、木毛塊としたときに従来の木毛30以上の断熱効果を得ることができる。この空間12は、転巻木毛10の丸まる度合い(巻きの密度)によりその大きさが変化する。具体的には、転巻木毛10の巻き直径に対して2分の1~5分の1ほどの大きさとなるように形成することが好ましい。
【0121】
空間12による断熱効果としては、従来の薄膜の短冊状とした木毛30を塊状にした断熱体では、
図7に示すように、密度に偏りが生じるため、その効果も粗密の差によって異なる。それに対して、転巻木毛10単体は転巻形状で粒体であるため、粗密の差が少なくなり、更には各木毛単体の中心部の空間12に空気を保持ことでより効果的に断熱機能を発揮することができる。
【0122】
本発明の転巻木毛10は、
図9に示すように、個々の転巻木毛10単体が転巻状に丸まっており、取扱いが良好であることから袋体への詰め込み作業が簡便に行うことができる。また、個人的に転巻木毛10の取り換えや入れ替え作業がやりやすく、かかる取り換えや入れ替え作業をすることにより製品の耐久性の向上にもつながる。
【0123】
また、転巻木毛10は単体形状を転巻状としていることで、木毛塊として使用する際に互いに絡まることが少なく、従来の木毛30で問題としていた、木毛単体同士の絡まりが原因で取り分けが煩雑であったり、取り分け時に引っ張られることで木屑が発生したりといった欠点が解消される効果もある。
【0124】
実際の使用方法としては、
図9に示すように、所定の大きさの袋体81に多数の転巻木毛10を収納し、転巻木毛袋82として使用することも考えられる。
【0125】
この際に使用される袋体81は、
図9bに示すように、不織布や生地布や合成樹脂等で形成された多孔質袋体であり、可撓性を有するものを用いる。
【0126】
袋体81を多孔質素材としたことで、内包した転巻木毛10の吸湿機能や芳香機能を生かすことができ、かつ可撓性を有することで緩衝体として使用した際に転巻木毛10の緩衝性を生かすことができる。
【0127】
素材の選択に関しては、必要とする機能に適した素材とすればよく、例えば、緩衝材としたいときは強度と可撓性の高い生地布や合成樹脂製とし、吸湿や芳香性を生かした用途であれば、多孔質の目が粗い不織布を用いる等が考えられる。
【0128】
この袋体81に収納された転巻木毛10は、木毛塊として存在することになり、木毛塊の容量や転巻木毛10単体の大きさ等で多種多様な用途に応用することができる。
【0129】
また、芳香機能や調湿機能を目的として使用する際には、
図10に示すように、少なくとも1つ以上の開口部を有した硬質容器83に直接収納し、転巻木毛収納体84として使用することも考えられる。
【0130】
袋体81の内部に収納した場合に比して、空気と直接触れることができるため、芳香機能や吸湿機能をより生かした使用方法とすることができる。
【0131】
本発明の転巻木毛10は転巻状態としているため単体が粒体となり、単体の集合体としても互いに絡まり合うことなく、小分けに分割することが容易であると共に、無理に引きちぎるような作業を要しないため、細かい屑等のごみの発生の虞がない。
【0132】
すなわち、芳香機能や吸湿機能や消臭機能に重きを置いた転巻木毛収納体84とした際に、機能の調節を量によって行うことが容易となる効果がある。
【0133】
更に、転巻木毛10は、転巻状態としていることで、従来の薄膜の短冊状とした木毛30に比べ木毛単体の製品応用価値が高まり、視覚的にも審美性が高いため透明な硬質容器83に収納しても吸湿機能や芳香機能を有したインテリア雑貨としての外観的美感を提供することができる。
【0134】
[3.転巻木毛を使用した製品について]
次に転巻木毛10を使用した具体的な製品を例に挙ることで様々な効果を詳説する。
【0135】
本発明の転巻木毛10を用いた製品は、緩衝機能を活かした梱包材、緩衝機能や通気性を活かした枕の充填材、断熱機能を活かした保温・断熱材やひざ掛け等の防寒具の充填材、木材特有の消臭効果や芳香を活かした消臭芳香剤及び調湿機能を活かした乾燥剤等が挙げられる。
【0136】
転巻木毛10を梱包材に応用した場合は、従来の薄膜短冊状とした木毛と異なり、転巻しているために単体自体に緩衝機能を備えることができる。したがって、梱包材として使用した際には、従来の薄膜短冊状とした木毛30以上に衝撃を和らげ保護対象となる製品を確実に保護することができる。また、転巻木毛10は転巻形状としていることで、集合体としたときに互いに絡まり合うことなく個々が独立した状態を維持できるため、梱包に適した量の調節が容易となる効果がある。
【0137】
転巻木毛10を枕の充填材に応用した場合は、単体形状を転巻して構成していることで、中心部に空間12を形成される。そのため、集合体とした際に、単体の転巻木毛10のそれぞれが空気を通す空間を保持すると共に、転巻木毛10の表面に機能性小孔部11bを形成することで、従来の薄膜短冊状とした木毛30に比して通気性が向上する。したがって、転巻木毛10を枕の充填材として使用した場合には、夏場でも蒸れることなく安眠効果が期待できる。
【0138】
転巻木毛10を防寒具の充填材に応用した場合は、単体形状を転巻形状としていることで中心部の空間12の空気を薄膜木片11で抱くようにして保持し、従来の薄膜短冊状とした木毛30と比して集合体としたときの空気含有量が多くなる。したがって、建築材としての断熱材や商品の温度を維持させるための保温材としても高い効果が期待できる。また、上述したように転巻木毛10は通気性を備えつつも保温・断熱効果を備えているため、布袋に充填してひざ掛け等の防寒具として用いることも考えられる。
【0139】
転巻木毛10を消臭剤や芳香剤に応用した場合は、木材の呼吸により期待される消臭効果に関しても、単体形状を転巻形状としていることと表面に機能性凹凸部11aを形成していることで、体積に対する表面積が従来の薄膜短冊状とした木毛30に比して高いことから、従来の木毛30を集合体としたものより転巻木毛10を集合体としたものの方が体積当たりの消臭効果が高くなることが期待できる。
【0140】
また、木材特有の芳香は自然由来の優しい香りであり消臭効果と合わせて芳香剤としての機能も期待できると共に、化学的な芳香剤と異なり強烈な香りを放つものではないため、使用場所に限定されず幅広い用途で用い易い利点がある。
【0141】
転巻木毛10を乾燥剤に応用した場合は、材料である木材20による調湿効果も備えており、上記したように、体積あたりの表面積が従来の薄膜短冊状とした木毛30に比して高いことから、湿度の球種率も高くなることが考えられる。また、自然な芳香を有しているため、クローゼットや靴箱等の除湿に用いる乾燥剤だけでなく、食品に対しても臭い移りの心配が少なく好適に用いることができる。
【0142】
また、転巻木毛10は、材料として木材20のみから形成されるため、上述した様々な用途で用いた後の廃棄物に有害なものが含まれず、微生物に分解させることができる。すなわち、転巻木毛10は、梱包材や断熱材等の用途で使用した後の二次利用として畑等に撒いて肥料化することもできる。
【0143】
[4.他の実施形態について]
次に、本発明の転巻木毛10の他の実施形態について図面を用いて詳説する。
図11は、本発明の転巻木毛10にかかる他の実施形態を示す模式的説明図である。
図12は、他の実施形態である小孔17を穿設した転巻木毛10の小孔17穿設方法について示す説明図である。
図13は、本実施形態の転巻木毛10及び他の実施形態の小孔17を穿設した転巻木毛10をポプリ86と一緒に硬質容器83内部に収納した状態を示す説明図である。
【0144】
他の実施形態としては、
図11に示すように、木材20に溝22を形成後に溝22間の木材20表面部分に機能性小孔部11bとは別に多数の小孔17を穿設して転巻木毛10を作成することで、転巻木毛10の表面に空気流通可能な複数の小孔17を形成している。
【0145】
材料となる木材20に複数の小孔17を穿設することにより、転巻木毛10を作成した際に該小孔17が転巻木毛10の薄シート状の木片11の巻き内外のさらなる通気流通孔として機能することにより転巻木毛10の薄シート状の木片11がより乾燥しやすく湿度によって変形したり巻きが弛緩したりする危険を回避することができる。
【0146】
具体的には、
図12に示すように、転巻木毛10を形成させる切削を行う前の木材20に対して、予め複数の小孔17を穿設する。すなわち、木材20の表面に複数の小孔17を開口手段70により定型的に或いは自由に穿設する。
【0147】
この開口手段70は、表面に複数の針71を突設したドラムであったり、複数の針71を直線的に併設した針支持台であったりする。これらの開口手段70を木材20の表面に圧接して回転させ、或いは突き指すことにより転巻木毛10を形成する木片11の表面に小孔17を穿設する。
【0148】
小孔17を設けた転巻木毛10では、転巻状の巻構造において周面を構成する木片11の間隔の空気の流通が円滑に行われるため、転巻した木片11の最外周面13や中心空間12の最内周面14において空気接触を確実に行うことができる。更には、小孔17を介して機構的に空気接触が少ない幾重にも巻かれた薄膜シート状の転巻中途の空白部分15に空気流通を促すことになり空気との接触を可及的に増大することができる。
【0149】
すなわち、かかる小孔17の形成により巻構造の特性を生かして転巻した薄膜の螺旋形状における空白部分15に空気流通機能を生起して小孔17が通気流通孔として機能し、転巻木毛10を湿度に強い自己乾燥機能を有する木毛とすることができる。
【0150】
また、一度水分を含んだ転巻木毛10は、通気孔としての小孔17を介して螺旋内外の空気流通が促され自己乾燥される。これにより、転巻木毛10を緩衝機能のみならず繰り返し使用することができる吸湿剤としても機能させることができる。
【0151】
また、転巻木毛10の薄膜シートに大小の小孔17を多数隣接して穿設することにより孔の分だけ木毛自体の折れ強度を緩和して全体柔軟化してより柔軟性を増し手触りを良好にする効果がある。
【0152】
かかる柔軟性機能は緩衝材として使用する際には緩慢な緩衝機能を生起し従来の薄膜短冊状の木毛30が絡み合って集合した木毛塊に比しデリケートな保管対象物の緩衝保護剤として使用することができる。
【0153】
なお、緩衝機能を高めるために小孔17のない転巻木毛10において転巻径を大きくして全体を膨大化させるとすれば、転巻の巻き数が大きいため弾力性は高まるものの柔軟性に乏しくなる。このように小孔17のない比較的硬質の転巻木毛10はより強い衝撃が加わると折れ曲がり元の形状へ戻ることができなくなる。
【0154】
しかし、上述したように転巻木毛10に複数の小孔17を穿設することにより弾力性と柔軟性の均衡を図り収納物品に合わせた的確な弾力性と柔軟性のバランスをはかったデリケートな緩衝材とすることができる。
【0155】
転巻木毛10に穿設する小孔17は、肉眼で確認できないほどの小さいものから、直径5mm程度とすることができ、使用目的に応じて適宜変更される。
【0156】
例えば、小さい小孔17では数多く穿設可能であるためより均等に柔軟性を得ることができるし、5mm程度のまだらな小孔17ではより空気を通しやすくより通気性や乾燥性の向上を図ることができる。
【0157】
また、小孔17を設けた転巻木毛10は、小孔17を設けない転巻木毛10と混合して同時に使用することも考えられる。
【0158】
そうすることで、小孔17を設けた柔軟性に富む転巻木毛10単体と小孔17を設けない転巻木毛10単体とを混在させ木毛塊として使用することにより、単体の転巻構造に基づく衝撃応力回避機能をより発揮して効果的に衝撃を逃がし緩衝対象物への無用な衝撃を和らげることができる。
【0159】
また、
図13に示すように、透明のガラス容器85中に芳香機能を有する多数のポプリ86を収納して同時に本発明の転巻木毛10を集合混入すればガラス容器85の外側から見た場合に植物性のポプリ86と植物性材木の表面の艶や木目が一体となって自然環境を現出する小宇宙の様の雰囲気を醸し出し視覚的にも看者に精神安定機能を及ぼすことができる効果がある。
【0160】
また、転巻木毛10には精油を含浸させて用いることができる。すなわち一緒にガラス容器85内部に収納されるポプリ86の香りに合わせた精油を用いて芳香効果を高めることができる。その際含浸される精油は、転巻木毛10の材料となる木材20から得られた精油を用いることは勿論、用途に合わせた様々な精油を含浸させることも考えられる。
【0161】
上記のように転巻木毛10の薄膜に対し多数の小孔17を穿設する形態について説明したが、かかる小孔17はその穿設場所を使用状況に応じて変更することができる。例えば、薄膜状の木片11の中央部分に隣接して穿設する場合や端縁部に一列に穿設する場合やジグザグ状に穿設する場合があり、使用する対象物品の種類に応じて通気機能と転巻木毛10全体の柔軟性との相互関係の下で適宜選択することができる。
【0162】
また、転巻木毛10の厚みに関しても転巻中心部の薄膜はやや厚手に形成し外周に至るに従って薄くすることにより弾力性に変化を持たせることができる。すなわち、転巻木毛10の外周側は表面柔軟な弾力性とし中心部分に至るにしたがって硬度を増すことによりデリケートな物品の緩衝やスペーサー機能の選択幅を有効に変更することができる。
【0163】
また、他の実施例として転巻木毛10の小孔17形成に際しては小孔17を打ち起こし片18で形成する場合がある。すなわち、小孔17の縁に連設されたフラップ状の打ち起こし片18により小孔17の一部を覆う形態とする場合がある。
【0164】
実際の打ち起こし片18を有する小孔17の形成作業は後述するとして、かかる形態の小孔17が形成された転巻木毛10では、打ち起こし片18が転巻形状とした薄膜木片11が成す周面の空白部分15に強制的に介在することになる。すなわち、転巻構造における薄膜木片11による周面と周面との間に隙間を形成することができるので、空気流通空間形成の技術を小孔17形成と共に実施できることができる。
【0165】
かかる打ち起こし片18が連設された小孔17は転巻形態が特殊な形態とされるため多種な機能効果を生起することができる。例えば、転巻の締め方や大きさ等自由に選択することができるので使用する対象物品に応じて緻密な転巻木毛10の選択をすることができる。
【0166】
なお、打ち起こし片18形成の作業手順としては、まず木材20に予め打ち起こし片18の小孔17を形成する。この際に小孔17は打ち起こし片18になるように周縁の一部は本体(木材20の表面)とつながっている。
【0167】
その後にカンナ等の切削刃物により転巻木毛10となる薄膜の短冊状の切削を行う。この際にはすでに打ち起こし片18が小孔17と共に形成されているので転巻木毛10の形状に切削された時点では転巻した木毛には小孔17と共に転巻した木毛の螺旋空間(空白部分15)の間にスペーサーとしての打ち起こし片18が介在することになる。
【0168】
また、小孔17にも各種の形状があり、長楕円形状、円形と角型とその他の任意の孔形状との組合せ形状、転巻木毛10の弾力性を維持する強度を有する程度を保持しながら小針状の密集孔を一面に形成する形状、ひょうたん形状等が考えられる。かかる各種の小孔17には空気の流通機能や転巻木毛10の強度の問題や耐久性や転巻形状の維持強度や防音遮断機能等において各種の効果を発揮する。
【0169】
特に防音遮断機能については転巻木毛10の集合体を区画空間の壁面に形成しておくことにより予想外の防音や遮断機能を形成することができる場合がある。要するに、転巻木毛10の特異な形状構造によって音波の伝播性を変位させて音波吸収性を向上すると共に反射機能を減殺して防音や遮断機能を生起することができる。
【0170】
特に薄シート状の木片11に転巻構造を形成させて単体の転巻木毛10とし、それらを集合体としているために、音波が転巻構造による螺旋空間(空白部分15)の間に吸収されやすい。しかも小孔17形成の転巻木毛10の場合は、この小孔17中にも音波が吸収され、かつ材料が木質である特性から木質特有の吸音効果により共鳴が減殺される。
【0171】
かかる機能は転巻木毛10の機構的な特性と共に力学的な緩衝機能とは無関係の音波の伝播緩衝機能ともいうべきものであり、転巻木毛10の異なる効果的な一面を現出することができる。
【0172】
上述した実施形態の説明は本発明の一例であり、本発明に係る転巻木毛10は上述の実施形態に限定されることはない。このため、上述した実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。また、上述した各種効果は、あくまで例示に過ぎず、本発明による効果は、本実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0173】
10 転巻木毛
11 木片
11a 機能性凹凸部
11b 機能性小孔部
12 空間
13 外周面
14 内周面
15 空白部分
16 微小な破壊
17 小孔
18 打ち起こし片
20 木材
21 切込み
22 溝
23 平坦面
24 端部
25 分離位置
30 木毛(従来)
40 溝刃
41 下方突出刃
50 すくい刃
51 刃先
52 すくい面
60 切断手段
70 開口手段
71 針
81 袋体
82 木毛袋体
83 硬質容器
84 木毛収納体
85 ガラス容器
86 ポプリ
θ 角度