(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098566
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】積層セラミックキャパシタ
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20230703BHJP
【FI】
H01G4/30 201N
H01G4/30 201L
H01G4/30 512
H01G4/30 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107787
(22)【出願日】2022-07-04
(31)【優先権主張番号】10-2021-0190033
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェオン、ジョン ミョン
(72)【発明者】
【氏名】リー、キ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジン ウー
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、チャン ハク
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC10
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E001AH01
5E001AH05
5E001AH06
5E001AH07
5E001AH09
5E001AJ01
5E082AB03
5E082BC19
5E082BC40
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE26
5E082EE35
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG54
5E082GG10
5E082GG26
5E082LL02
5E082LL03
5E082MM24
5E082PP03
5E082PP09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】耐湿信頼性及び電気的特性を向上する積層セラミックキャパシタを提供する。
【解決手段】積層セラミックキャパシタ100は、誘電体層111を含み、互いに対向する第1面及び第2面と、第1面1及び第2面2を連結する第3面3及び第4面4と、第1面~第4面と連結され、互いに対向する第5面5及び第6面6を含むセラミック本体110と、セラミック本体の内部に配置され、第1面及び第2面に露出し、第3面又は第4面に一端が露出する複数の内部電極121、122と、第1面及び第2面に露出した内部電極の端部上に配置された第1サイドマージン部112及び第2サイドマージン部113と、を含む。セラミック本体は、誘電体層を間に挟んで互いに対向するように配置される複数の内部電極を含んで容量が形成される活性部と、を含み、活性部のサイドマージン部近傍領域における平均Sn含量は、活性部の中心領域における平均Sn含量より大きい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層を含み、互いに対向する第1面及び第2面と、前記第1面及び第2面を連結する第3面及び第4面と、前記第1面~第4面と連結され、互いに対向する第5面及び第6面を含むセラミック本体と、
前記セラミック本体の内部に配置され、前記第1面及び第2面に露出し、前記第3面又は第4面に一端が露出する複数の内部電極と、
前記第1面及び第2面に露出した前記内部電極の端部上に配置された第1サイドマージン部及び第2サイドマージン部と、
前記セラミック本体は、前記誘電体層を間に挟んで互いに対向するように配置される複数の内部電極を含んで容量が形成される活性部と、を含み、
前記活性部のサイドマージン部近傍領域における平均Sn含量は、前記活性部の中心領域における平均Sn含量より大きい、積層セラミックキャパシタ。
【請求項2】
前記第1サイドマージン部から前記第2サイドマージン部までの最短距離をtとするとき、
前記活性部の前記サイドマージン部近傍領域は、前記第1サイドマージン部及び第2サイドマージン部のいずれか一つと、前記活性部との間の界面からt/10となる地点までの領域を示し、
前記活性部の中心領域は、前記サイドマージン部近傍領域を除いた領域を示す、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項3】
前記活性部の前記サイドマージン部近傍領域における平均Dy含量は、前記活性部の中心領域における平均Dy含量より小さい、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項4】
前記活性部の前記サイドマージン部近傍領域におけるDy/Snのモル比率は1.74以下である、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項5】
前記活性部の中心領域のうち、前記誘電体層における平均Sn含量は、前記誘電体層の主成分であるチタン酸バリウム100モルに対して0.75モル以上である、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項6】
前記第1サイドマージン部及び第2サイドマージン部はSnを含む、請求項1から5の何れか1つに記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項7】
第1サイドマージン部及び第2サイドマージン部の平均厚さは2~15μmである、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項8】
前記第1サイドマージン部及び前記第2サイドマージン部における平均Sn含量は、前記第1サイドマージン部及び前記第2サイドマージン部の主成分であるチタン酸バリウム100モルに対して1.0モル以上である、請求項6に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項9】
前記第1サイドマージン部及び前記第2サイドマージン部における平均Sn含量は、前記活性部の誘電体層における平均Sn含量に対して1~3倍である、請求項6に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項10】
前記第1サイドマージン部及び前記第2サイドマージン部における平均Sn含量は、前記活性部の誘電体層における平均Sn含量に対して1~1.5倍である、請求項6に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項11】
前記活性部の中心領域のうち、誘電体層におけるSn及びDyの平均合計含量は、誘電体層の主成分であるチタン酸バリウム100モルに対して2モル以上である、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項12】
活性部の誘電体層における平均Sn含量は、誘電体層の主成分であるチタン酸バリウム100モルに対して0.8モル以上である、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項13】
下記関係式1を満たす、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
[関係式1]
W1<W2<W3
(前記関係式1において、前記第1サイドマージン部から前記第2サイドマージン部までの最短距離をtとするとき、W1は、前記第1サイドマージン部及び前記第2サイドマージン部のいずれか一つと、前記活性部との間の界面からt/2となる地点におけるSn含量を示す。また、W2は、前記第1サイドマージン部及び前記第2サイドマージン部のいずれか一つと、前記活性部との間の界面からt/10となる地点におけるSn含量を示す。また、W3は、前記第1サイドマージン部及び前記第2サイドマージン部のいずれか一つと前記活性部との間の界面におけるSn含量を示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックキャパシタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(Multi-layered Ceramic Capacitor、MLCC)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン及び携帯電話など、様々な電子製品の印刷回路基板に装着され、電気を充電又は放電させる役割を果たすチップ型のコンデンサである。
【0003】
このような積層セラミックキャパシタは、電子機器の電子回路内でブロッキング(blocking)、カップリング(coupling)、デカップリング(decoupling)、電流分離及びエネルギー貯蔵など、様々な役割を果たす素子であって、小型化及び高性能化の要求が多く、技術的な競争が深化している。
【0004】
様々な役割を果たす積層セラミックキャパシタは、小型化及び高性能化しながらも、より安定した動作を必要とする。したがって、上述の要求を満たすために耐湿信頼性及び電気的特性の向上した積層セラミックキャパシタの開発が必要な実情であるが、これまでにこのような高度な要求を全て満たす技術は開発されていなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明のいくつかの目的の一つは、積層セラミックキャパシタの耐湿信頼性及び電気的特性を向上させることである。ただし、本発明の目的は、上述の内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、誘電体層を含み、互いに対向する第1面及び第2面と、上記第1面及び第2面を連結する第3面及び第4面と、上記第1面~第4面と連結され、互いに対向する第5面及び第6面を含むセラミック本体と、
上記セラミック本体の内部に配置され、上記第1面及び第2面に露出し、上記第3面又は第4面に一端が露出する複数の内部電極と、
上記第1面及び第2面に露出した上記内部電極の端部上に配置された第1サイドマージン部及び第2サイドマージン部と、
上記セラミック本体は、上記誘電体層を間に挟んで互いに対向するように配置される複数の内部電極を含んで容量が形成される活性部と、を含み、
上記活性部の上記サイドマージン部近傍領域における平均Sn含量は、上記活性部の中心領域における平均Sn含量より大きい、積層セラミックキャパシタを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のいくつかの効果の一つは、耐湿信頼性及び電気的特性に優れた積層型電子部品を提供することである。ただし、本発明の多様かつ有益な利点及び効果は上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタを概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図1のセラミック本体の外観を示す斜視図である。
【
図3】
図2のセラミック本体の焼成前のセラミックグリーンシート積層本体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形することができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどは、より明確な説明のために誇張することができ、図面上の同じ符号で示される要素は同じ要素である。
【0010】
そして、図面において本発明を明確に説明するために説明と関係のない部分は省略し、複数の層及び領域を明確に表現するために厚さを拡大して示しており、同一の思想の範囲内での機能が同一である構成要素については同一の参照符号を用いて説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、これは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0011】
図面において、L方向は第1方向又は長さ方向、W方向は第2方向又は幅方向、T方向は第3方向、厚さ方向又は積層方向と理解することができるが、これに限定されるものではない。
【0012】
積層セラミックキャパシタ
図1は、本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタを概略的に示す斜視図であり、
図2は、
図1のセラミック本体の外観を示す斜視図であり、
図3は、
図2のセラミック本体の焼成前のセラミックグリーンシート積層本体を示す斜視図であり、
図4は、
図2のI-I'線に沿った断面図である。
【0013】
以下では、
図1~
図4を参照して、本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタについて詳細に説明する。
【0014】
本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタ100は、セラミック本体110、セラミック本体110の内部に形成される複数の内部電極121、122及びセラミック本体110の外表面に形成される外部電極131、132を含む。
【0015】
上記セラミック本体110は、互いに対向する第1面1及び第2面2と、上記第1面及び第2面を連結する第3面3及び第4面4と、上記第1面~第4面と連結され、互いに対向する第5面5及び第6面6とを含む。第1面1及び第2面2は、セラミック本体110の幅方向Wに相対する面と定義することができ、第3面3及び第4面4は長さ方向Lに相対する面と定義することができ、第5面5及び第6面6は厚さ方向Tに相対する面と定義することができる。
【0016】
セラミック本体110の具体的な形状に特に限定はないが、図示のように、セラミック本体110は、六面体形状又はこれと類似の形状からなることができる。焼成過程でセラミック本体110に含まれたセラミック粉末の収縮により、セラミック本体110は、完全な直線を有する六面体形状ではないが、実質的に六面体形状を有することができる。
【0017】
セラミック本体110は、複数の内部電極121、122及び上記複数の内部電極の間に配置された誘電体層111を含む。上記本体において、誘電体層111及び内部電極121、122は交互に積層されている。セラミック本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であって、隣接する誘電体層111の間の境界は走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0018】
本発明の一実施形態によると、上記誘電体層111を形成する原料は、十分な静電容量が得られる限り特に限定されない。例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料又はチタン酸ストロンチウム系材料などを使用することができる。上記チタン酸バリウム系材料は、BaTiO3系セラミック粉末を含むことができ、上記セラミック粉末の例示として、BaTiO3、BaTiO3にCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)等が一部固溶された(Ba1-xCax)TiO3、Ba(Ti1-yCay)O3、(Ba1-xCax)(Ti1-yZry)O3又はBa(Ti1-yZry)O3等が挙げられる。
【0019】
上記誘電体層111を形成する材料は、チタン酸バリウム(BaTiO3)などのパウダーに、本発明の目的に応じて様々なセラミック添加剤、有機溶剤、結合剤、分散剤などを添加することができる。
【0020】
内部電極121、122は、誘電体層111と厚さ方向(Z方向)に交互に配置されてもよい。内部電極は、第1内部電極121及び第2内部電極122を含むことができる。第1内部電極121及び第2内部電極122は、本体110を構成する誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように交互に配置され、本体110の第3面3及び第4面4に第1内部電極121及び第2内部電極122の一端がそれぞれ露出することができる。第1内部電極121及び第2内部電極122は、互いに異なる極性を有する第1内部電極121及び第2内部電極122を一対とすることができる。
【0021】
図3を参照すると、第1内部電極121は第4面4と離隔し、第3面3を介して露出し、第2内部電極122は第3面3と離隔し、第4面4を介して露出することができる。すなわち、第1内部電極121及び第2内部電極122は、それぞれ本体の長さ方向(X方向)の両端面である第3面3及び第4面4に交番して露出し、セラミック本体110の第3面3には第1外部電極131が形成されて、第1内部電極121と電気的に連結されることができる。また、セラミック本体110の第4面4には第2外部電極132が形成されて、第2内部電極122と電気的に連結されることができる。
【0022】
したがって、第1内部電極121は第2外部電極132とは連結されず、第1外部電極131と連結され、第2内部電極122は第1外部電極131とは連結されず、第2外部電極132と連結される。したがって、第1内部電極121は第4面4から一定距離離隔して形成され、第2内部電極122は第3面3から一定距離離隔して形成される。このとき、第1内部電極121及び第2内部電極122は、中間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離されてもよい。
【0023】
第1内部電極121及び第2内部電極122を形成する材料は特に限定されず、例えば、パラジウム(Pd)、パラジウム-銀(Pd-Ag)合金等の貴金属材料、ニッケル(Ni)及び銅(Cu)のうち一つ以上の物質からなる導電性ペーストを使用して形成することができる。上記導電性ペーストの印刷方法としては、スクリーン印刷法又はグラビア印刷法などを使用することができ、本発明はこれに限定されるものではない。
【0024】
本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタ100は、上記セラミック本体110の内部に配置され、上記第1面1及び第2面2に露出し、上記第3面3又は第4面4に一端が露出する複数の内部電極121、122と、上記第1面1及び第2面2に露出した上記内部電極の端部上に配置された第1サイドマージン部112及び第2サイドマージン部113と、を含む。
【0025】
セラミック本体110の内部には複数の内部電極121、122が形成されており、複数の内部電極121、122の各末端はセラミック本体110の幅方向Wの面である第1面1及び第2面2に露出し、露出した端部上に第1サイドマージン部112及び第2サイドマージン部113がそれぞれ配置される。すなわち、セラミック本体110は、複数の誘電体層111が積層された積層体と、上記積層体の幅方向Wの両側面に配置される第1サイドマージン部112及び第2サイドマージン部113で構成されることができる。
【0026】
本発明の一実施形態によると、セラミック本体110の長さは、セラミック本体の第3面3から第4面4までの距離に該当する。これに限定されるものではないが、セラミック本体の長さは300~1400μmであってもよい。上記誘電体層111上に内部電極121、122が形成されることができ、内部電極121、122は焼結によって一誘電体層を間に挟んで、セラミック本体110の内部に形成されることができる。
【0027】
図3を参照すると、誘電体層111上に第1内部電極121が形成されている。上記第1内部電極121は、誘電体層の長さ方向Lに対しては全体的に形成されない。すなわち、第1内部電極121の一端はセラミック本体の第4面4から所定の間隔をおいて形成されることができ、第1内部電極121の他端は第3面3まで形成されて第3面3に露出することができる。
【0028】
セラミック本体110の第3面3に露出した第1内部電極121の端部は第1外部電極131と連結される。第1内部電極とは逆に、第2内部電極122の一端は第3面3から所定の間隔をおいて形成され、第2内部電極122の他端は第4面4に露出して第2外部電極132と連結される。上記内部電極は、高容量の積層セラミックキャパシタを実現するために200層以上積層されてもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0029】
上記誘電体層111は、第1内部電極121の幅と同じ幅を有することができる。すなわち、上記第1内部電極121は、誘電体層111の幅方向Wに対しては全体的に形成されることができる。これに限定されるものではないが、本発明の一実施形態によると、誘電体層の幅及び内部電極の幅は100~900μmであってもよい。
【0030】
このようなセラミック本体110は、キャパシタの容量形成に寄与する部分として、活性部Aを含む。すなわち、上記活性部は、上記誘電体層を間に挟んで互いに対向するように配置される複数の内部電極を含んで容量が形成される。また、セラミック本体110は、上述した活性部Aとともに、上部カバー部141及び下部カバー部142で構成されることができる。
【0031】
上部カバー部141及び下部カバー部142は、単一の誘電体層又は2つ以上の誘電体層を活性部の積層方向Tに上下面にそれぞれ積層して形成することができ、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。したがって、上部カバー部141及び下部カバー部142は、内部電極を含まないことを除いては、誘電体層111と同じ材料及び構成を有することができる。
【0032】
すなわち、上部カバー部141及び下部カバー部142はセラミック材料を含むことができ、一例としてチタン酸バリウム(BaTiO3)系セラミック材料を含むことができる。なお、上部カバー部141及び下部カバー部142は、それぞれ20μm以下の厚さを有してもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0033】
一方、近年、小型化及び高容量化の要求が深化するにつれて、積層セラミックキャパシタは安定した性能を実現することが重要な課題となった。そこで、本発明者らは、積層セラミックキャパシタの耐湿信頼性に加えて、電気的特性までも改善すべく鋭意研究を重ねた結果、積層セラミックキャパシタの活性部A内のSn成分の挙動が重要な要素であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0034】
具体的に、一つの誘電体内のグレイン(grain)においてもSnの拡散が行われるが、本発明では、セラミック本体の容量形成に寄与する部分である活性部AにおいてSn成分の全般的な拡散挙動が積層セラミックキャパシタの特性に重要な影響を及ぼすことが分かった。また、上述した活性部AへのSnの添加に加えて、第1サイドマージン部112及び第2サイドマージン部113にもSnを添加したとき、耐湿信頼性及びIR散布が改善されることによって、全般的な積層セラミックキャパシタ内でSn拡散挙動の変化は電気的特性及び信頼性の変化を引き起こすことを確認した。
【0035】
まず、活性部A内におけるSn成分の拡散挙動について説明する。本発明の一実施形態によると、上記活性部Aは、
図4に示すように、サイドマージン部近傍領域Aiと、活性部の中心領域Acとを含む。この際、上記第1サイドマージン部112から上記第2サイドマージン部113までの最短距離をtとするとき、上記活性部の上記サイドマージン部近傍領域Aiは上記第1サイドマージン部112及び第2サイドマージン部113のいずれか一つと、上記活性部Aとの間の界面からt/10となる地点までの領域を意味することができる。
【0036】
また、活性部の中心領域Acは、上記サイドマージン部近傍領域Aiを除いた領域を示すことができる。したがって、活性部の中心領域Acは、上記第1サイドマージン部112及び第2サイドマージン部113のいずれか一つからt/10となる地点から、9t/10となる地点までの領域を意味することができる。
【0037】
一方、積層セラミックキャパシタの誘電体内にSnを添加すると、グレイン(grain)内にSnとDyの高濃度シェル(shell)層が存在するようになる。このようなシェル層に存在するSn及びDy等は、全般的な誘電体の粒成長制御によって、粒界(grain bondary)の量を増加させて粒界抵抗を高め、BaTiO3として存在するコア層と、Sn及びDyがドーピングされたBaTiO3であるシェル層におけるショットキー障壁の大きさの増加により信頼性を向上させる。
【0038】
ところで、第1サイドマージン部及び第2サイドマージン部へのSnの添加は、積層セラミックキャパシタの活性部におけるSn成分の拡散挙動を変化させ、これは、活性部内のSn含量を一定レベル以上に保持させることによって、信頼性及びIR散布を改善させる。
【0039】
本発明者らは鋭意研究を行った結果、サイドマージン部112、113に隣接した活性部内のサイドマージン部近傍領域AiにおいてSn含量が高いとき、耐湿信頼性が向上することを見出した。具体的に、Snをサイドマージン部形成のための母材であるギャップシート(gap sheet)に添加する場合、サイドマージン部からSnが活性部に拡散し、活性部の中心領域Acから活性部の上記サイドマージン部近傍領域Aiに向かうほど、Sn含量が漸進的に増加する形態の濃度勾配が生じる。
【0040】
このように、活性部内の幅方向Wに、中心領域Acからサイドマージン部近傍領域Aiに向かうほど、Sn含量が漸進的に増加する濃度勾配が形成されることにより、格子定数の差も漸進的に増加して界面の歪み(strain)が大きくならないように制御される。さらに、Snは粒成長制御効果を有するため、粒界が多く生成され、これによる歪みの減少の影響により、活性部とサイドマージン部との結合が良好に形成される。これにより、積層セラミックキャパシタ内の水分浸透経路が減少し、耐湿信頼性が向上すると判断される。
【0041】
これに対し、相対的にサイドマージン部にSnを添加しない場合、前述のサイドマージン部にSnを添加した場合とは活性部内での位置別Sn含量が異なる様相を示すが、これはSnの拡散挙動が逆に作用するためである。したがって、サイドマージン部形成のための母材であるギャップシートにSnを添加しない場合には、ギャップシートへのSn添加時とは逆に、活性部の中心領域Acからサイドマージン部近傍領域Aiに向かうほど、漸進的にSn含量が減少するようになる。
【0042】
このように、活性部の幅方向Wに、中心領域Acからサイドマージン部近傍領域Aiに向かうほど、Sn含量が漸進的に減少すると、活性部とサイドマージン部との界面領域で相対的にDyがSnに比べて多量を占めることで、格子定数の差が発生するようになる。したがって、相対的に粒成長が多くなされるため、粒界の数が減少し、これによる歪み緩和(strain relaxation)の効果も少なくなる。これにより、積層セラミックキャパシタ内の水分浸透経路が相対的に多く生成され、耐湿信頼性が良くないと判断される。
【0043】
さらに、IR散布の観点から見ても、サイドマージン部にSnを添加すると同時に、活性部へのSn拡散を一定レベル以上に保持するように制御することにより、シェル層においてSnがショットキー障壁を一定レベルに保持させるため散布が少なくなる。
【0044】
これに対し、サイドマージン部にSnを添加しなかった場合には、活性部内の誘電体のSnがサイドマージン部側方向に一定レベルに拡散し、内部電極の界面側にも拡散するため、誘電体内のSn含量が減少してシェル層においてSnの影響性が減少するため、散布が大きくなる。
【0045】
したがって、本発明では、活性部内でのSn含量を一定レベル以上に制御することを特徴としており、具体的には、活性部Aの上記サイドマージン部近傍領域Aiにおける平均Sn含量を上記活性部の中心領域Acにおける平均Sn含量より大きく制御する。このように、サイドマージン部112、113にSnを添加するほかにも、活性部A内でのSn拡散挙動を制御することで、耐湿信頼性だけでなく、IR散布までも同時に改善可能である。
【0046】
一方、本発明の一実施形態によると、上記積層セラミックキャパシタは、下記関係式1を満たすことができる。下記関係式1のように、活性部内で、幅方向Wに中心領域Acからサイドマージン部近傍領域Aiに向かうほど、Sn含量が漸進的に高く示されることによって、前述と同様の機作により、耐湿信頼性と同時に、IR散布を改善することができる。
【0047】
[関係式1]
W1<W2<W3
(上記関係式1において、上記第1サイドマージン部から上記第2サイドマージン部までの最短距離をtとするとき、W1は、上記第1サイドマージン部112及び上記第2サイドマージン部のいずれか一つと、上記活性部との間の界面からt/2となる地点におけるSn含量を示す。また、W2は、上記第1及び第2サイドマージン部のいずれか一つと、上記活性部との間の界面からt/10となる地点におけるSn含量を示す。また、W3は、上記第1サイドマージン部112及び上記第2サイドマージン部のいずれか一つと活性部との間の界面におけるSn含量を示す。)
【0048】
本発明の一実施形態によると、上記活性部の上記サイドマージン部近傍領域Aiにおける平均Dy含量は、上記活性部の中心領域Acにおける平均Dy含量より小さくてもよい。一方、本発明者らは、特に限定するものではないが、活性部の幅方向WにDyの拡散挙動がSnと反対の様相を示すことが分かった。すなわち、活性部の中心領域Acから活性部の上記サイドマージン部近傍領域Aiに向かうほど、Dy含量が漸進的に減少し、これを満たすことで耐湿信頼性及び電気的特性をより改善することができる。
【0049】
また、本発明の一実施形態によると、本発明者らは更なる研究を行い、積層セラミックキャパシタの性能改善のために、活性部の上記サイドマージン部近傍領域Aiにおける前述のSnとDyの比率を制御することも重要な要素であることが更に分かった。すなわち、活性部Aのサイドマージン部近傍領域AiにおけるDy/Snのモル比率は1.74以下(あるいは、0超過1.74以下)であってもよい。
【0050】
また、本発明の一実施形態によると、上記活性部の中心領域Acのうち、上記誘電体層における平均Sn含量は、上記誘電体層の主成分であるチタン酸バリウム100モルに対して0.75モル以上(又は、0.75~1.4モル)であってもよい。あるいは、上記活性部の中心領域Acのうち、誘電体層におけるSn及びDyの平均合計含量は、誘電体層の主成分であるチタン酸バリウム100モルに対して2モル以上であってもよい。これを満たすことにより、IR散布が減少し、電気的特性をより改善することができる。
【0051】
一般的な積層セラミックキャパシタの場合には、内部電極が互いに重なって容量を形成する活性部と、内部電極が重ならないか又は内部電極未形成部であるマージン部とを含むセラミック本体を作製する。したがって、活性部及び内部電極未形成部について、同じ誘電体組成を有するセラミックグリーンシートを積層して形成するため、活性部の誘電体組成とマージン部の誘電体組成とが同一であることが一般的である。
【0052】
そのため、このような従来の積層セラミックキャパシタの場合、同じ誘電体組成を有するセラミックグリーンシートを積層して活性部とマージン部を含むセラミック本体を作製するため、両領域の誘電体組成が異なるように適用することができない構造である。
【0053】
ところで、本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタを実現するためには、積層セラミックキャパシタの製造において、
図3に示すように、内部電極が本体の幅方向に露出するように設計することにより、マージンのない設計を通じて内部電極の幅方向Wの面積を極大化する。ただし、本発明による積層セラミックキャパシタを製造する際、このようなチップ作製後、焼成前の段階でチップの幅方向Wの電極露出面にマージン部112、113を別途に付着して完成する方法を適用する。
【0054】
しかし、上述したように、積層セラミックキャパシタを作製する場合、従来は、サイドマージン部形成用誘電体組成をセラミック本体の誘電体組成と差別化せずに、セラミック本体の誘電体組成物をそのまま使用していた。したがって、従来技術では、サイドマージン部とセラミック本体の両領域において誘電体組成は同一であり、異なるように適用されていなかった。
【0055】
あるいは、サイドマージン部形成用誘電体組成は異なるように適用しても、従来技術では活性部の誘電体層はSnを含まないか、含んだとしても極少量のみを含んでいた。しかし、本発明者らは、従来技術のように、活性部の誘電体層がSnを含まないか、極小量を含む場合には、確保可能な信頼性レベルにおいて限界があることが分かった。
【0056】
そこで、本発明では、サイドマージン部だけでなく、活性部の中心領域Acのうち、誘電体層においてもSnを0.6モル以上に多量含むように積極的に制御することにより、むしろ耐湿信頼性だけでなく、電気的特性までも改善することができる。
【0057】
上記第1面1及び第2面2に露出した上記内部電極121、122の端部上に第1サイドマージン部112及び第2サイドマージン部113が配置されることができる。したがって、内部電極121、122の末端の露出したセラミック本体110の幅方向Wの一側面である第1面1に第1サイドマージン部112が配置されることができ、幅方向Wのさらに他の一側面である第2面2に第2サイドマージン部113が配置されることができる。
【0058】
第1サイドマージン部112及び第2サイドマージン部113は、
図4に示すように、セラミック本体110を幅-厚さ(W-T)方向に切断した断面において、第1内部電極121及び第2内部電極122の両端とセラミック本体110の境界面の間の領域を意味することができる。
【0059】
第1サイドマージン部112及び第2サイドマージン部113は、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。このような第1サイドマージン部112及び第2サイドマージン部113の形成方法としては、内部電極121、122と誘電体層111を積層した後、内部電極121、122がセラミック本体の第1及び第2面1、2に露出するように切断する。次いて、単一の誘電体層又は2つ以上の誘電体層を活性部の両側面に幅方向Wに積層して第1サイドマージン部112及び第2サイドマージン部113を形成することができる。したがって、本発明の一実施形態において、内部電極と誘電体層は同時に切断されて形成されるため、内部電極の幅と誘電体層の幅は同様に形成されることができる。
【0060】
本実施形態において、誘電体層の幅は内部電極の幅と同様に形成され、これによりセラミック本体110の幅方向の第1面及び第2面1、2に内部電極121、122の末端が露出することができる。
【0061】
一方、本発明の一実施形態によると、上記第1サイドマージン部及び第2サイドマージン部はSnを含むことができる。上述したように、活性部A内での幅方向WへのSn拡散挙動には、サイドマージン部112、113へのSn添加の有無が重要な要素である。したがって、本発明の一実施形態では、製造過程中に、サイドマージン部形成用母材であるギャップシートにSnを添加することにより、サイドマージン部112、113にSnを含むことができる。
【0062】
本発明の一実施形態によると、上記第1サイドマージン部及び第2サイドマージン部における平均Sn含量は、上記第1サイドマージン部及び第2サイドマージン部の主成分であるチタン酸バリウム100モルに対して1.0モル以上(あるいは、1.0~3.0モル)であってもよい。サイドマージン部112、113へのSn添加は、活性部内のSn拡散挙動に影響を及ぼすため、目的とする耐湿信頼性及び電気的特性の改善のために上述の適正範囲に制御することができる。
【0063】
また、本発明の一実施形態によると、活性部Aの誘電体層における平均Sn含量は、誘電体層の主成分であるチタン酸バリウム100モルに対して1.0モル以上であってもよい。これを満たすことにより、積層セラミックキャパシタの電気的信頼性をより改善することができる。このとき、活性部Aの誘電体層における平均Sn含量は、活性部の全領域のうち誘電体層におけるSn含量の平均値を意味する。
【0064】
したがって、活性部Aの誘電体層における平均Sn含量を測定する際には、活性部の中心領域Acや活性部の上記サイドマージン部近傍領域Aiのいずれか一つのみに限定されず、活性部の中心領域Ac及び活性部の上記サイドマージン部近傍領域Aiを共に含む全領域におけるSn含量の平均値を求めることができる。
【0065】
したがって、一例として、活性部Aの誘電体層における平均Sn含量の測定は、積層セラミックキャパシタの活性部が観察されるように、幅-厚さ(W-T)方向に切断した断面において、全長さtを基準に幅方向Wの同一線上の等間隔で10個の地点でSn含量を測定し、Sn含量の平均値を求めることができる。
【0066】
本発明の一実施形態によると、上記第1サイドマージン部及び上記第2サイドマージン部における平均Sn含量は、上記活性部の誘電体層における平均Sn含量に対して1~3倍であってもよい。これを満たすことにより、電気的信頼性及び耐湿信頼性をより強化することができる。
【0067】
あるいは、本発明の一実施形態によると、上記積層セラミックキャパシタにおいて、誘電体層が400nm以下の薄膜型である場合には、上記第1サイドマージン部112及び上記第2サイドマージン部における平均Sn含量は、上記活性部Aのうち誘電体層における平均Sn含量に対して1~1.5倍であるとき、電気的安定性及びIR散布改善の電気的特性が強化し、耐湿信頼性も向上することができる。
【0068】
これに限定されるものではないが、第1サイドマージン部112及び第2サイドマージン部113の平均厚さは15μm以下であってもよい。第1サイドマージン部112及び第2サイドマージン部113の平均厚さが小さいほど、相対的にセラミック本体内に形成される内部電極の重なり面積が広くなることができる。したがって、上述した第1サイドマージン部112及び第2サイドマージン部113の平均厚さの範囲を満たすことで、容量を形成する内部電極の重なり面積を最大に確保することにより、高容量及び小型の積層セラミックキャパシタを実現することができる。
【0069】
第1サイドマージン部112及び第2サイドマージン部113の平均厚さの下限は、セラミック本体110の側面に露出する内部電極のショートを防止可能な平均厚さを有すれば特に限定されないが、例えば、第1サイドマージン部112及び第2サイドマージン部113の平均厚さは2μm以上であってもよい。
【0070】
一方、上記第1サイドマージン部112及び第2サイドマージン部113の平均厚さは、
図4のように、セラミック本体110を幅-厚さ(W-T)方向に切断した断面を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影した後、第1面及び第2面に垂直な方向に測定された上記第1サイドマージン部112及び上記第2サイドマージン部の厚さの平均値を意味することができる。
【0071】
積層セラミックキャパシタの容量を極大化するために誘電体層を薄膜化する方法、薄膜化した誘電体層を高積層化する方法、内部電極のカバレッジを向上させる方法、あるいは容量を形成する内部電極の重なり面積を向上させる方法などが考えられている。これらのうち、内部電極の重なり面積を向上させるためには、内部電極が形成されていないマージン部領域を最小化しなければならない。特に、積層セラミックキャパシタが小型化するほど、内部電極の重なり領域を増やすためにはマージン部領域を最小化する必要がある。
【0072】
したがって、本実施形態によると、誘電体層の幅方向全体に内部電極が形成され、サイドマージン部の厚さが15μm以下に設定されて内部電極の重なり面積が広いという特徴を有する。一般に、誘電体層が高積層化するほど、誘電体層及び内部電極の厚さは薄くなる。したがって、内部電極がショートする現象が頻繁に発生する可能性がある。また、誘電体層の一部にのみ内部電極が形成される場合、内部電極による段差が発生して絶縁抵抗の加速寿命や信頼性が低下する可能性がある。
【0073】
しかし、本実施形態によると、薄膜の内部電極及び誘電体層を形成しても、内部電極が誘電体層の幅方向に対して全体的に形成されるため、内部電極の重なり面積が大きくなって積層セラミックキャパシタの容量を大きくすることができる。また、内部電極による段差を減少させて絶縁抵抗の加速寿命が向上し、容量特性に優れながらも信頼性に優れた積層セラミックキャパシタを提供することができる。
【0074】
外部電極131、132はセラミック本体110に配置され、内部電極121、122と連結される。
図3に示すように、セラミック本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ配置され、第1内部電極121及び第2内部電極122とそれぞれ連結された第1外部電極131及び第2外部電極132を含むことができる。
【0075】
本実施形態では、積層セラミックキャパシタ100が2つの外部電極131、132を有する構造を説明しているが、外部電極131、132の個数や形状などは内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変更することができる。
【0076】
一方、外部電極131、132は、金属などのように電気伝導性を有するものであれば、如何なる物質を使用して形成されてもよく、電気的特性、構造的安定性などを考慮して具体的な物質が決定されてもよく、さらに、多層構造を有してもよい。
【0077】
例えば、外部電極131、132は、本体110に配置される電極層及び電極層上に形成されためっき層を含むことができる。すなわち、電極層は、導電性金属及びガラスを含むことができ、具体的に、導電性金属及びガラスを含む焼成(firing)電極であってもよく、導電性金属及び樹脂を含む樹脂系電極であってもよい。
【0078】
また、電極層は、本体上に焼成電極及び樹脂系電極が順次に形成された形態であってもよい。また、電極層は、本体上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されるか、又は焼成電極上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されたものであってもよい。電極層に含まれる導電性金属として、電気伝導性に優れた材料を使用することができるが、特に限定されない。例えば、導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)及びそれらの合金のうち一つ以上であってもよい。
【0079】
めっき層は実装特性を向上させる役割を果たす。めっき層の種類は特に限定されず、Ni、Sn、Pd及びこれらの合金のうち一つ以上を含むめっき層であってもよく、複数の層で形成されてもよい。
【0080】
めっき層に対するより具体的な例を挙げると、めっき層は、Niめっき層又はSnめっき層であってもよく、特にSnめっき層であってもよい。あるいは、めっき層は、電極層上にNiめっき層及びSnめっき層が順次に形成された形態であってもよく、Snめっき層、Niめっき層及びSnめっき層が順次に形成された形態であってもよい。また、めっき層は、複数のNiめっき層及び/又は複数のSnめっき層を含んでもよい。
【0081】
積層型電子部品100のサイズは特に限定する必要はない。ただし、小型化及び高容量化を同時に達成するためには、誘電体層及び内部電極の厚さを薄くして積層数を増加させなければならないため、0402(長さ×幅、0.4mm×0.2mm)以下のサイズを有する積層型電子部品100であるとき、本発明による信頼性向上効果がより顕著になることができる。
【0082】
したがって、製造誤差、外部電極のサイズなどを考慮すると、積層型電子部品100の長さが0.44mm以下、幅が0.22mm以下である場合、本発明による信頼性向上効果がより顕著になることができる。ここで、積層型電子部品100の長さは、積層型電子部品100の第2方向の最大サイズを意味し、積層型電子部品100の幅は、積層型電子部品100の第3方向の最大サイズを意味することができる。
【0083】
以下では、実施形態によって本発明をより具体的に説明する。ただし、下記の実施形態は、例示を通じて本発明を説明するためのものであり、本発明の権利範囲を限定するためのものではないことに留意する必要がある。本発明の権利範囲は、特許請求の範囲に記載された事項及びこれにより合理的に類推される事項によって決定されるものであるからである。
【0084】
(実験例1)
Snを含むセラミックペーストを形成し、これを用いてPETフィルム上にセラミックグリーンシートを形成し、このようなセラミックグリーンシート上にNi内部電極ペーストを印刷して交互に積層して積層体を形成した。上記積層体において、内部電極がセラミック本体の第1面及び第2面に露出するように切断した。次いで、Snの添加の有無が異なるギャップシート(gap sheet)を製造した後、上記露出した切断面上に(すなわち、幅方向Wに両側面上に)積層した。
【0085】
その後、焼成の時間及び強度を制御し、下記表1の条件を満たすように調節することにより、積層セラミックキャパシタを製造した。次いて、
図4のように、積層セラミックキャパシタを幅-厚さ(W-T)方向の断面が観察されるように切断した断面試片を製造し、上記断面試片に対する下記表1の値を測定して記載した。
【0086】
このとき、各試片について、誘電体層の主成分であるチタン酸バリウム100モルに対する活性部の誘電体層(Ac及びAi領域を共に含む)における平均Sn含量は、上記断面試片の活性部の幅方向の誘電体層全体において、幅方向(W方向)に同一線上に等間隔で10個の地点におけるSn含量をTEM-EDSを用いて測定した後、平均値を求めた。
【0087】
また、各試片について、第1サイドマージン部及び第2サイドマージン部の主成分であるチタン酸バリウム100モルに対する第1サイドマージン部及び第2サイドマージン部における平均Sn含量は、上記断面試片の第1サイドマージン部及び第2サイドマージン部に対して、幅方向(W方向)に同一線上に等間隔で10個の地点におけるSn含量をTEM-EDSを用いて測定した後、平均値を求めた。
【0088】
なお、各試片について、誘電体層の主成分であるチタン酸バリウム100モルに対する活性部の中心領域Acにおける平均Sn含量及び平均Dy含量は、上記断面試片の活性部の中心領域Ac(第1サイドマージン部112から第2サイドマージン部113までの最短距離をtとするとき、上記第1サイドマージン部112及び第2サイドマージン部113のいずれか一つからt/10となる地点から、9t/10となる地点までの領域)のうち、誘電体層において幅方向Wに同一線上に等間隔で10個の地点におけるSn及びDyの各成分に対する含量をTEM-EDSを用いて測定した後、平均値を求めた。
【0089】
また、各試片について、誘電体層の主成分であるチタン酸バリウム100モルに対する活性部の上記サイドマージン部近傍領域Aiにおける平均Sn含量及びDy含量は、上記断面試片の活性部の上記サイドマージン部近傍領域Ai(第1サイドマージン部112から第2サイドマージン部113までの最短距離をtとするとき、第1サイドマージン部112及び第2サイドマージン部113のいずれか一つと、上記活性部Aとの間の界面からt/10となる地点までの領域)のうち、誘電体層において幅方向Wに同一線上に等間隔で10個の地点における各成分Sn及びDyに対する含量をTEM-EDSを用いて測定した後、平均値を求めた。
【0090】
また、各試片について、第1サイドマージン部から第2サイドマージン部までの最短距離をtとするとき、W1(第1サイドマージン部及び第2サイドマージン部のいずれか一つと、上記活性部Aとの間の界面からt/2となる地点におけるSn含量)、W2(第1サイドマージン部及び第2サイドマージン部のいずれか一つと、上記活性部Aとの間の界面からt/10となる地点におけるSn含量)及びW3(第1サイドマージン部及び第2サイドマージン部のいずれか一つと活性部の間の界面におけるSn含量)をTEM-EDSを用いて測定した。
【0091】
このようにして得られたW1、W2、W3の値に基づいて、関係式1[W1<W2<W3]を満たすか否かを評価し、満たす場合を「○」、満たさない場合を「×」と下記表1に示した。その後、各試片に対する電気的特性及び耐湿信頼性を以下の方法で評価した。
【0092】
<電気的特性>
温度115℃の高温で初期IRと特定時間以降の後期IRを測定し、各IRの標準偏差を平均で除するCV(Coefficient of varation)値を求め、下記基準に従って評価した。
大きい:CV値が0.22以上
小さい:CV値が0.22未満
【0093】
<耐湿信頼性>
各試片に対してそれぞれ同じサンプルチップ100個を準備した後、温度85℃及び85%の湿度で3時間処理し、チップ特性が有効であることをテストして通過できなかったチップが存在する場合を「×」と、全て通過した場合を「○」と評価した。
【0094】
【0095】
上記表1の実験結果から分かるように、試片No.1は、活性部のサイドマージン部近傍領域における平均Sn含量が活性部の中心領域における平均Sn含量より小さい場合であって、IR散布が大きくて電気的特性が劣ることを確認した。これに対し、試片No.2は、活性部のサイドマージン部近傍領域における平均Sn含量が活性部の中心領域における平均Sn含量より大きい場合であって、耐湿信頼性に優れるだけでなく、IR散布も小さくて電気的特性に優れることを確認した。
【0096】
特に、上記試片No.1では、Snが第1サイドマージン部及び第2サイドマージン部側に多く拡散するにつれて、活性部のサイドマージン部近傍領域AiにおけるDy/Snのモル比率が1.75レベルであり、他の領域に比べて高いことが確認できた。また、Snの過度な拡散により、上記活性部の中心領域Acのうち、誘電体層におけるSn及びDyの平均合計含量は、誘電体層の主成分であるチタン酸バリウム100モルに対して2モル未満であった。これに対し、上記試片No.2では、活性部のサイドマージン部近傍領域AiにおけるDy/Snのモル比率が1.74以下を満たし、上記活性部の中心領域Acのうち、誘電体層におけるSn及びDyの平均合計含量も2モル以上を満たしている。
【0097】
(実験例2)
上記実験例1の試片No.2について、活性部の誘電体層の平均厚さを400nm以下の薄膜型に変更し、活性部の誘電体層における平均Sn含量を下記表2のように変更した以外は、実験例1と同様の方法で試片を製造した。また、活性部の誘電体層における平均Sn含量も実験例1と同様の方法で測定した。次いで、各試片についてそれぞれ同じサンプルチップ100個を準備した後、温度115℃、電圧7.56Vで一定時間処理した後、チップ故障(fail)の個数を数えて電気的信頼性を評価し、その結果を下記表2に示した。
【0098】
【0099】
上記表2の実験結果から分かるように、活性部の誘電体層における平均Sn含量が薄膜化した活性部の誘電体層における平均Sn含量は、電気的信頼性の結果に大きな影響を及ぼし、活性部の誘電体層における平均Sn含量が1モル%のとき、最も優れた効果を奏した。
【0100】
(実験例3)
上記実験例1の試片No.2について、活性部の誘電体層全体における平均Sn含量及び上記第1及び第2サイドマージン部における平均Sn含量を下記のように変更した以外は、実験例1と同様に評価した。
【0101】
【0102】
上記表3の実験によって、上記第1サイドマージン部及び上記第2サイドマージン部における平均Sn含量と、上記活性部の誘電体層における平均Sn含量との比率が1:1である試片No.5の場合においても、電気的信頼性及び耐湿信頼性を実験例1と同様に実験したとき、試片No.2と同様に優れることを確認した。
【0103】
以上のように、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、上述した実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定されるものとする。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で、当技術分野における通常の知識を有する者により様々な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属すると言える。
【符号の説明】
【0104】
100:積層セラミックキャパシタ
110:セラミック本体
111:誘電体層
112:第1サイドマージン部
113:第2サイドマージン部
121:第1内部電極
122:第2内部電極
131:第1外部電極
132:第2外部電極
141:上部カバー部
142:下部カバー部