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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098581
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】縫製装置
(51)【国際特許分類】
   D05B 29/06 20060101AFI20230703BHJP
【FI】
D05B29/06
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142742
(22)【出願日】2022-09-08
(31)【優先権主張番号】202111626192.3
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002712
【氏名又は名称】弁理士法人みなみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西田 瞳
(72)【発明者】
【氏名】梅川 道
【テーマコード(参考)】
3B150
【Fターム(参考)】
3B150CB03
3B150CB26
3B150CC05
3B150DE33
3B150EA01
(57)【要約】
【課題】搬送装置が被縫製物をミシンに対して上流側から下流側に搬送する場合に、必要に応じて針の近傍でも被縫製物を押さえて縫製できるようにする。
【解決手段】縫製装置は、被縫製物(3)をテーブル(1)に押し付けながら搬送する搬送装置(4)と、被縫製物をテーブルの上面に接近するように案内するガイド(5)とを備える。平面視した場合に、テーブル上における搬送装置のクランプ部(41)の搬送領域(41L)と針落ち領域(1a)との間には空間領域(L3)が被縫製物の搬送方向(X)に直交する方向(Y)に関して形成され、平面視した場合にガイドの配置領域(5a)は、空間領域以外であるという条件と、針落ち領域に対して被縫製物の搬送方向の上流側の領域を少なくとも含むという条件とを満たすようにする。このような空間領域を形成したので、クランプ部の搬送領域を針に近づけることができる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーブル(1)と、ミシン本体(2a)と、被縫製物(3)を前記テーブル(1)に押し付けながらミシン本体(2a)に対して上流側から下流側に搬送する搬送装置(4)と、前記被縫製物(3)を前記テーブル(1)の上面に接近するように案内するガイド(5)とを備え、
前記搬送装置(4)は、前記被縫製物(3)を前記テーブル(1)に押し付けるクランプ部(41)と、前記クランプ部(41)を搬送する搬送部(42)とを備え、
平面視した場合に、前記テーブル(1)上におけるクランプ部(41)の搬送領域(41L)と針落ち領域(1a)との間には空間領域(L3)が前記被縫製物(3)の搬送方向(X)に直交する方向(Y)に関して形成され、
平面視した場合に前記ガイド(5)の配置領域(5a,5b,5c)は、前記空間領域(L3)以外であるという条件と、前記針落ち領域(1a)に対して前記被縫製物(3)の前記搬送方向(X)の上流側の領域を少なくとも含むという条件とを満たすことを特徴とする縫製装置。
【請求項2】
平面視した場合に前記ガイド(5)の前記配置領域(5a,5b,5c)は、前記針落ち領域(1a)の周囲であるという条件と、前記クランプ部(41)の搬送領域(41L)から離れているという条件とを満たすことを特徴とする請求項1に記載の縫製装置。
【請求項3】
平面視した場合に、前記クランプ部(41)の前記搬送方向(X)に直交する方向(Y)に前記針落ち領域(1a)を通過する領域が第1の基準領域(L1)として設定され、
平面視した場合に前記ガイド(5)の前記配置領域(5a)は、前記第1の基準領域(L1)に対して前記被縫製物(3)の前記搬送方向(X)の上流側の領域のみという条件を満たすことを特徴とする請求項2に記載の縫製装置。
【請求項4】
前記ガイド(5)は前記ミシン本体(2a)に対して前記被縫製物(3)の前記搬送方向(X)の上流側を向く面にブラケット(6)を介して固定されていることを特徴とする請求項3に記載の縫製装置。
【請求項5】
前記搬送装置(4)は前記被縫製物(3)を搬送する唯一のものであることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の縫製装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被縫製物をミシンに対して上流側から下流側へ自動的に搬送するための搬送装置を含む縫製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ミシンには押さえ足が通常付いている。押さえ足の一例としては、平面視すると、針孔の周囲を包囲する形のものが知られている(特許文献1)。より詳しく言えば、特許文献1に開示された押さえ足は平面視すると、二又状である。便宜上、押さえ足の各部に名称を付ける。二つに分岐している部分のそれぞれを片足部と称し、二つの片足部が接合している部分を接合部と称することにする。そして押さえ足は、二つの片足部の間の空間部に針が出入りすると共に、当該空間部のうち被縫製物の搬送方向の下流側が接合部で塞がれ、当該空間部のうち被縫製物の搬送方向の上流側が開口する状態で使用されている。また特許文献1に開示されたミシンは、作業者が被縫製物を手で搬送する手動搬送方式を採用している。ちなみに特許文献1に開示されたミシンは、押さえ足の下方に送り歯を備えており、送り歯と押さえ足の間に被縫製物を挟みながら、送り歯が被縫製物をミシンに対して下流側に送り出している。
【0003】
また縫製装置の一例として、ミシンの他に、被縫製物をミシンに対して上流側から下流側へ自動的に搬送する搬送装置(自動搬送方式)を採用したものが知られている(特許文献2)。特許文献2の図12には第2のミシン用案内部と称される搬送装置が開示されている。そしてこの縫製装置は、第2のミシン用案内部の押さえ板が被縫製物をその幅方向の片方側において押さえており、押さえ板が搬送されると、被縫製物の縁部がミシンの針の真下付近を通過するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62-44292号公報
【特許文献2】特許6423568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで特許文献2にはミシンの詳細が開示されておらず、押さえ足の有無が不明である。しかしミシンには押さえ足があるのが通常である。押さえ足には、縫製時に被縫製物が針と一緒に持ち上がらないように押さえるという役割がある。
【0006】
ここで仮定の縫製装置として、特許文献2のミシンに対し、特許文献1に開示されている手動搬送方式の押さえ足、つまり二又の押さえ足が採用されているものを想定する。
【0007】
この仮定の縫製装置を平面視の状態で説明すると、仮定の縫製装置は図10に示すように搬送装置の押さえ板と針8との間に押さえ足9の分岐した片足部91が配置されることになる。その結果、搬送装置の押さえが被縫製物を押さえる位置は、当該片足部に対して押さえ足の幅方向に離れた位置になる。図10ではテーブル上における搬送装置の搬送領域がハッチングで示され、分岐した二つの片足部91の間に細長い楕円状の針孔が示されている。
【0008】
しかしながら押さえ足が付いたミシンで縫製すると、被縫製物の縫製具合の品質が不十分な場合がある。この場合に、針に対してできるだけ近くで被縫製物を搬送装置で押さえながら搬送したいと思っても、押さえ足の当該片足部が邪魔になる。なお針の近傍で被縫製物を押さえながら搬送して縫製する場合の方が、針から十分に離れた位置で被縫製物を押さえながら搬送して縫製する場合よりも、被縫製物の縫製品質が良いことが技術常識として知られている。
【0009】
本発明は上記実情を考慮して創作されたもので、その目的は搬送装置が被縫製物をミシンに対して上流側から下流側に搬送する場合に、必要に応じて針の近傍でも被縫製物を押さえて縫製できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の縫製装置は、テーブルと、ミシン本体と、被縫製物をテーブルに押し付けながらミシン本体に対して上流側から下流側に搬送する搬送装置と、被縫製物をテーブルの上面に接近するように案内するガイドとを備える。そして搬送装置は、被縫製物をテーブルに押し付けるクランプ部と、クランプ部を搬送する搬送部とを備える。その上で平面視した場合に、テーブル上におけるクランプ部の搬送領域と針落ち領域との間には空間領域が被縫製物の搬送方向に直交する方向に関して形成され、平面視した場合にガイドの配置領域は、空間領域以外であるという条件と、針落ち領域に対して被縫製物の搬送方向の上流側の領域を少なくとも含むという条件とを満たすようにする。
【0011】
また縫製装置は、ガイドの配置領域をより明確化すると、次のようになる。
すなわち平面視した場合にガイド部の配置領域は、針落ち領域の周囲であるという条件と、クランプ部の搬送領域から離れているという条件とを満たすことである。
【0012】
またガイドの配置領域は、できるだけ狭くするには設けるようにするには、次のようにすることが望ましい。
すなわち、平面視した場合に、クランプ部の搬送方向に直交する方向に針落ち領域を通過する領域が第1の基準領域として設定され、平面視した場合にガイド部の配置領域は、前記第1の基準領域に対して被縫製物の搬送方向の上流側の領域のみという条件を満たすことである。
【0013】
ガイドは具体的な一例としては次のようにして設置される。
すなわちガイドはミシン本体に対して被縫製物の搬送方向の上流側を向く面にブラケットを介して固定されている。
【0014】
また本発明の縫製装置は被縫製物をテーブルに押し付けながらミシン本体に対して上流側から下流側に搬送するものであり、それ以外のもの、例えばテーブルの下側からガイドの方へ被縫製物を押し付けながら被縫製物を搬送するものを含まないことを明確にするには、次のようにすることが望ましい。
すなわち搬送装置は被縫製物を搬送する唯一のものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の縫製装置は、ガイド部の配置領域を各条件を満たすものとし、特に針落ち領域とクランプ部の搬送領域との間を空間領域としてあるので、クランプ部の搬送領域をガイドの配置領域から離した状態を保持しながら針に近づけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第一実施形態の縫製装置の概要を示す斜視図である。
図2】第一実施形態の縫製装置を示す正面図である。
図3】第一実施形態の縫製装置を示す右側面図である。
図4図2のIV-IV線断面図である。
図5】第一実施形態の縫製装置で用いられる搬送装置を示す正面図である。
図6】第一実施形態の縫製装置における針落ち位置とガイドとの関係を示す平面図である。
図7】第二実施形態の縫製装置における針落ち位置とガイドとの関係を示す平面図である。
図8】第三実施形態の縫製装置における針落ち位置とガイドとの関係を示す平面図である。
図9】第四実施形態の縫製装置を示す説明図である。
図10】仮定の縫製装置における押さえ足と針等との関係を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の第一実施形態の縫製装置は図1,6に示すように、テーブル1と、ミシン2と、被縫製物3をテーブル1に押し付けながらミシン2に対して上流側から下流側に搬送する搬送装置4とを備える。
【0018】
搬送装置4は図5に示すように、被縫製物3をテーブル1に押し付けるクランプ部41と、クランプ部41を搬送する搬送部42とを備える。本実施形態では搬送装置4は被縫製物3を搬送する唯一のものである。
【0019】
搬送部42は例えば多軸の多関節ロボットである。そして多関節ロボットの先端のロボットアーム42aが下方に向かって延びており、ロボットアーム42aの先端部である下端部にクランプ部41が固定されている。そして搬送部42は、予め設定された手順に従ってクランプ部41を動かし、テーブル1上にクランプ部41を押し付けながら搬送する。
【0020】
クランプ部41は、被縫製物3を押さえるクランプ部本体41aと、クランプ部本体41aとロボットアーム42aの先部とを連結すると共に衝撃を吸収する衝撃吸収部41bとを備える。なおクランプ部本体41aは図では複数の部品で構成されているが、本実施形態では一枚の板であるものとする。
【0021】
衝撃吸収部41bは、水平に延びると共にその延びる長さ方向の中間部がロボットアーム42aの先部に固定される固定アーム41cと、固定アーム41cの長さ方向の両端部に対して上下動可能に案内されるロッド41dと、ロッド41dを取り囲む形でロッド41dに通される圧縮コイルバネ41eと、ロッド41dを固定アーム41cに対して吊り下げる形で支持するストッパ41fとを備えるものとする。なおストッパ41fはロッド41dの上端部に固定されている。そしてストッパ41fは、ロッド41dよりも直径を大きくしてあり、固定アーム41cに対して形成された上下方向に貫通する貫通孔(図示せず)を通過不能となっている。
【0022】
圧縮コイルバネ41eは、クランプ部本体41aと固定アーム41cとの間に配置されている。被縫製物3をテーブル1上で搬送するときには、搬送部42が駆動してロボットアーム42aを介してクランプ部本体41aをテーブル1に押し付けることになる。そうすると、クランプ部本体41aに一体化されたロッド41dが固定アーム41cに対して上昇し、圧縮コイルバネ41eがクランプ部本体41aと固定アーム41cとの間で収縮して、クランプ部本体41aがテーブル1の上面に被縫製物3を押し付けることになる。このようにしてテーブル1とクランプ部本体41aに挟まれた形でクランプ部本体41aがミシン2に対して上流側から下流側に搬送されることにより、被縫製物3が搬送される。
【0023】
ミシン2は図1に示すように、被縫製物3を縫うミシン本体2aと、被縫製物3をテーブル1の上面に接近するように案内するガイド5と、ガイド5をミシン本体2aに取り付けるブラケット6と、被縫製物3を一直線に搬送しながら縫製する場合にその一直線の方向の目印となる位置決めプレート7とを備える。
【0024】
ミシン2に対する被縫製物3の搬送方向は、搬送装置4の搬送部42の動き(搬送部42の駆動を制御する制御装置への設定)に依拠する。そして本実施形態の搬送装置4は搬送部42を前述したように多関節ロボットとしてあり、搬送部42を一直線の方向だけでなく、多様な方向に動かすことができるので、当該搬送方向Xが一見定まらないかのように思える。しかしながらミシン2の基本的な使用方法(被縫製物3の基本的な搬送方向)では前述したように被縫製物3を一直線に搬送しながら縫製するので、本発明ではこの一直線の方向を被縫製物3の搬送方向Xであるものとする。そして本実施形態では「被縫製物3の搬送方向X」とは、位置決めプレート7が被縫製物3の端を一直線に案内可能とする方向であるものとする。また被縫製物3の搬送方向Xは、位置決めプレート7以外の目印となるものであっても良いし、目印となるものが無い場合には、ミシン2の取り扱い説明書を参照する。
【0025】
「被縫製物3の搬送方向X」は、図4での右から左へ向かう方向のことである。従って本実施形態での「左右方向」とは、図4での左右方向に一致する。また対象物に対して「搬送方向Xの上流側」とは、図4では対象物に対して右側のことである。また対象物に対して「搬送方向Xの下流側」とは、図4では対象物に対して左側のことである。
なおクランプ部41の搬送方向は、被縫製物3の搬送方向Xに一致する。
また「被縫製物3の搬送方向Xに直交する方向Y」は、前後方向とも称し、図4では上下方向のことである。図4での上方向は、後方向であり、図4での下方向は前方向である。
【0026】
テーブル1は図1,4に示すように、ミシン2の針板2tと、針板2tとは別部品の搬送テーブル11とを備える。また本実施形態ではテーブル1は、針板2tと搬送テーブル11の他に、ミシン2の位置決めプレート7の一部を、テーブル1の一部として備える。針板2tと搬送テーブル11と位置決めプレート7の一部は何れも上面を水平面とすると共に、ほぼ同一平面に位置するように揃えてある。
【0027】
位置決めプレート7は、鉛直な面を有すると共に被縫製物3の端を位置決め可能な位置決め本体部71と、位置決め本体部71に対して直角に屈曲する形で延びると共に被縫製物3の下面側を案内可能な下板部72と、位置決め本体部71に連続すると共にミシン本体2aに固定する固定板部73とを備える。なお下板部72がテーブル1の一部を構成する部分である。
【0028】
位置決め本体部71は鉛直な板で、左右方向に延びている。位置決め本体部71の下端部には下板部72が連続しており、位置決め本体部71の上端部にはミシン本体2aに固定するための固定板部73が連続している。
【0029】
固定板部73は図4に示すように、平面視して直角に屈曲した板であり、ミシン本体2aに固定する第1の固定板部74と、第1の固定板部74に対し直角に屈曲する形で延びると共に位置決め本体部71に連続する第2の固定板部75とを備える。なお第2の固定板部75は、位置決め本体部71に対して下板部72とは反対側に延びる。また第1の固定板部74は、位置決め本体部71に対して平行である。
【0030】
下板部72は針板2tに対して搬送方向Xの下流側に配置されている。
搬送テーブル11は、平面視して搬送方向Xに一直線に延びており、ミシン2に対して上流側と下流側との範囲に亘って左右方向に延びている。また搬送テーブル11にはミシン2から離れる方向に凹んだ凹部11cが形成されており、位置決めプレート7の下板部72と針板2tとが凹部11c内に配置されている。
【0031】
ミシン本体2aは周知のもので、針8に通された上糸とテーブル1の針板2tの下側に供給された下糸とを絡めて、針板2t上に載置された被縫製物3に対し縫目を形成する。ちなみに本実施形態では、ミシン本体2aは環縫いミシンであり、搬送装置4との協働によって矩形状の被縫製物の一辺に対して縁かがり縫いするようになっている。
またミシン本体2aは図2,3に示すように、テーブル1に対して下側に設置されるベッド部21と、ベッド部21から起立するポスト部22と、ポスト部22の上部からベッド部21に対し上方において対向する状態で延びるミシンヘッド部23とを備える。
【0032】
ミシン本体2aは、ベッド部21とミシンヘッド部23とが上下に離れた状態で前後方向に延びており、ベッド部21とミシンヘッド部23の後部に挟まれる形でポスト部22が上下に延びている。
【0033】
ベッド部21は、その外郭を形成するベッドケース21aと、ベッドケース21a内に収容される内部機構とを備える。内部機構は、下糸を上糸に絡める機構である。ベッドケース21aの上面には針孔1hが形成された針板2tをベッドケース21aの一部として備える。
【0034】
ミシンヘッド部23は、その外郭を形成するミシンヘッドケース23aと、ミシンヘッドケース23a内に収容される内部機構を備えている。ちなみに内部機構とは、針棒上下動機構や天秤駆動機構等である。そしてミシンヘッド部23は、ミシンヘッドケース23aの先部の下面から針棒駆動機構の針棒23bが下方に突出する状態で配置される。そして針棒23bの下端部に針8が下方に延びる状態で取付けられる。
【0035】
ポスト部22は、その外郭を形成するポストケース22aと、ポストケース22a内に収容される内部機構とを備える。内部機構とは、例えばミシンヘッド部23の内部機構とベッド部21の内部機構とを連動させる機構である。そしてテーブル1に対して上方であってポストケース22a(ミシン本体2a)に対して被縫製物3の搬送方向Xの上流側を向く面にブラケット6を介してガイド5が固定されている。
【0036】
ブラケット6は複数の部品で構成される。ブラケット6は図4に示すように、平面視してミシン本体2aのポスト部22に対し搬送方向Xの上流側に延びる状態で固定される第1のブラケット61と、第1のブラケット61の先部(搬送方向Xの上流側の端部)に対し固定されると共に平面視してテーブル1の真上の方へ搬送方向Xに直交する方向Yに延びる第2のブラケット62とを備える。
【0037】
第1のブラケット61は、下向きに開口する形に屈曲した金属板である。より詳しく言えば第1のブラケット61は図2に示すように、搬送方向Xに離れた状態で平行に配置される二枚の固定板部61a,61bと、二枚の固定板部61a,61bの上端を繋ぐ状態で搬送方向Xに延びる第1のブラケット本体部61cとを備える。第1のブラケット本体部61cは図4に示すように平面視して直角に延びる形状である。詳しく言えば、第1のブラケット本体部61cは、搬送方向Xに延びる第1の板部61dと、第1の板部61dの上流側の端部からテーブル1の方へ延びる第2の板部61eとを備える。なお二枚の固定板部61a,61bのうち下流側の固定板部61aはミシン本体2aのポストケース22aに固定される。一方、上流側の固定板部61bは下流側の固定板部61aよりも搬送方向Xに直交する方向Yの寸法が長くなっており、第2のブラケット62が固定される。
【0038】
第2のブラケット62は図4に示すように、平面視してL字状に屈曲した金属板である。より詳しく言えば第2のブラケット62は、第1のブラケット61における上流側の固定板部61bに固定されると共に針板2tの上流側の方へ向かって搬送方向Xに直交する方向Yに延びる第2のブラケット本体部62aと、搬送方向Xに延びる状態でその搬送方向Xの上流側の端部が第2のブラケット本体部62aの先端部(前端部)に繋がる固定板部62bとを備える。第2のブラケット62の固定板部62bにはガイド5が固定される。
【0039】
ガイド5は剛体であり、本実施形態では金属物であるものとする。ガイド5は図2,3に示すように、被縫製物3をテーブル1の上面に接近するように案内すると共に搬送方向Xに延びる案内ブロック部51と、案内ブロック部51から上方に延びると共にブラケット6(第2のブラケット62の固定板部62b)に固定する固定ブロック部52とを備える。また本実施形態ではガイド5とブラケット6との固定や、ブラケット6とミシン本体2aとの固定、位置決めプレート7とミシン本体2aとの固定等にはネジ止めを用いている。
【0040】
固定ブロック部52は図3に示すように、案内ブロック部51よりも左右方向の寸法が短く、案内ブロック部51の上面のうちポスト部22側から上方に延びる形となっている。また固定ブロック部52は図2に示すように、案内ブロック部51よりも前後方向(搬送方向X)の寸法が短く、案内ブロック部51の上面のうち搬送方向Xの上流側から上方に延びる形となっている。
【0041】
案内ブロック部51の上面は図2に示すように、固定ブロック部52よりも搬送方向Xの下流側の部分を搬送方向Xの上流側の部分に対し段差状に凹ませて(低くして)ある。
案内ブロック部51の下面(ガイド5の下面)は、被縫製物3の搬送方向Xに向かうにつれて下降する(テーブル1に接近する)第1のガイド面51aと、第1のガイド面51aに対し被縫製物3の搬送方向Xの下流側に隣接すると共にテーブル1の上面と平行な第2のガイド面51bとを備える。
【0042】
以下、平面視した場合のガイド5の配置領域5aを図6に基づいて説明する。まずガイド5の配置領域5aを特定するための前提は以下の通りである。
【0043】
テーブル1上における針落ち領域1aは、本発明では針8がまさにテーブル1を貫通する領域であるものとする。そして図6の例では針落ち領域1aは円形状である。なお本実施形態では針孔1hは、針落ち領域1aを一部として含む形の細長い長孔であり、左右方向に長い長孔である。また針孔1hは針8に触れないように針8の外周よりも大きく、より詳しくは針落ち領域1aよりも前後に僅かに長くなっており、針落ち領域1aよりも左右に十分に長くなっている。また平面視した場合に針孔1hの外形は針孔1hの領域を内外に仕切る境界であるので、平面視した場合に針孔1hは針孔領域1hとなる。そしてテーブル1上における針孔領域1h、つまり平面視した場合の針孔領域1hは、針落ち領域1aよりも大きくなっている。
【0044】
クランプ部41の搬送領域41Lは、搬送方向Xに平行な領域であり、針落ち領域1aに対して搬送方向Xに直交する方向Yであってミシン本体2aのポスト部22とは反対側に離れている。
【0045】
また2つの領域を設定する。
第1の基準領域L1は、針落ち領域1aを搬送方向Xに直交する方向Yに通過する領域である。
第2の基準領域L2は、針落ち領域1aを搬送方向Xに通過する領域である。
【0046】
クランプ部41の搬送領域41Lと針落ち領域1aとの間には空間領域L3がクランプ部41の搬送方向Xに直交する方向Yに関して形成される。空間領域L3とは、その言葉通り、物体が存在しない領域である。空間領域L3は、第1の基準領域L1の一部である。なお本実施形態では空間領域L3は、クランプ部41の搬送領域41Lと針落ち領域1aとの間だけでなく、クランプ部41の搬送領域41Lと針孔領域1hとの間に形成される。
【0047】
そして本実施形態でのガイド5の配置領域5aは平面視した場合に以下の通りである。ガイド5の配置領域5aは図6に示すように矩形状であり、図6では点を散在させた領域で示されている。そしてガイド5の配置領域5aに対して搬送方向Xの下流側に針孔領域1hが離れて配置されている。また針落ち領域1aを一部に含む第1の基準領域L1に対してガイド5の配置領域5aの全てが搬送方向Xの上流側に離れて配置されている。つまりガイド5の配置領域5aは、第1の基準領域L1に対して搬送方向Xの上流側にのみ配置されている。そして第1の基準領域L1には空間領域L3が含まれるので、ガイド5の配置領域5aは空間領域L3以外に形成されていることになる。
【0048】
またガイド5の配置領域5aと第2の基準領域L2とは部分的に重複している。より詳しく言えば、第2の基準領域L2はガイド5の配置領域5aにおける前後方向(搬送方向Xに直交する方向Y)の中間部を通過する形になっている。そしてガイド5の配置領域5aは、第2の基準領域L2と重複する領域と、第2の基準領域L2に対してクランプ部41の搬送領域41L側にはみ出す領域と、第2の基準領域L2に対してクランプ部41の搬送領域41Lとは反対側にはみ出す領域とを備えている。
【0049】
なお平面視した場合にガイド5の配置領域5aは、針落ち領域1aの周囲であるという条件と、クランプ部41の搬送領域41Lから離れているという条件とを満たしている。 針落ち領域1aの周囲でなければ、縫製時に針8の真下に被縫製物を案内するというガイド5の役割を果たすことができず、縫製不良が発生し易くなる。ちなみに搬送装置4のクランプ部41が被縫製物をテーブル1に押し付けているので、被縫製物3が針8と一緒に持ち上がらないようにする役割をクランプ部41が果たしている。なおガイド5も被縫製物3が針8と一緒に持ち上がらないようにする役割を補助的に果たしている。
またガイド5の配置領域5aとクランプ部41の搬送領域41Lとが離れていないと、クランプ部41がガイド5に衝突するので、クランプ部41とガイド5のうち少なくとも一方が弾性体でないと、搬送に支障をきたすことになるし、衝突により、クランプ状態が不安定になったり、ガイド5の役割が不安定になったりして、望ましくない。
【0050】
なおガイド5の配置領域5aは、クランプ部41の搬送領域41Lをできるだけ針8(針落ち領域1a)に近づけるには、第2の基準領域L2よりもクランプ部41の搬送領域41L側にはみ出す量をできるだけ短くしたり、配置領域5aのうちクランプ部41の搬送領域41L側の端を第2の基準領域L2に一致させたりすることが望ましい。
【0051】
上記した第一実施形態の縫製装置は、ガイド5の配置領域5aを各条件を満たすものとし、特に針落ち領域1aを含む針孔領域1hとクランプ部41の搬送領域41Lとの間を空間領域L3としてあるので、クランプ部41の搬送領域41Lをガイド5の配置領域5aから離した状態を保持しながら針8に近づけることができる。また第一実施形態の縫製装置は、ガイド5の配置領域5aを第1の基準領域L1や針孔領域1hよりも搬送方向Xの上流側のみとする条件を満たすので、後述する他の実施形態に比べて、狭い範囲に設けられている。
【0052】
本発明の第二実施形態の縫製装置は図7に示すように、ガイド5の配置領域5bにおいて第一実施形態の配置領域5aよりも広いものである。
【0053】
平面視した場合にガイド5の配置領域5bはL字状であり、針落ち領域1aを含む針孔領域1hに対してクランプ部41の搬送領域41Lとは反対側および搬送方向Xの上流側に離れて配置されている。より詳しく言えばガイド5の配置領域5bは、針落ち領域1aを一部に含む第1の基準領域L1及び針孔領域1hに対して搬送方向Xの上流側に離れた位置において被縫製物3の搬送方向Xに対して直交する方向Yに延びる第1の配置領域Aと、第2の基準領域L2及び針孔領域1hに対してクランプ部41の搬送領域41Lとは反対側において第1の基準領域L1に対して直角に交わる状態で搬送方向Xに延びる第2の配置領域Bとを備える。
【0054】
第1の配置領域Aは第一実施形態におけるガイド5の配置領域5aと同じである。
第2の配置領域Bは第1の基準領域L1および針孔領域1hよりも搬送方向Xの上流側と下流側との範囲に亘って延びている。
【0055】
第二実施形態の縫製装置では、ガイド5の配置領域5bに第1の配置領域Aを含むことから、針落ち領域1aを一部に含む第1の基準領域L1および針孔領域1hに対してガイド5の配置領域5bの一部(第1の配置領域A)が搬送方向Xの上流側に離れて配置されている。またガイド5の配置領域5bは第一実施形態の配置領域5aと同様に空間領域L3以外に形成されている。なお平面視した場合にガイド5の配置領域5bは、針落ち領域1aの周囲であるという条件と、クランプ部41の搬送領域41Lから離れているという条件とを満たしている。
【0056】
なお第二実施形態のガイド5の下面のうち第1の配置領域Aを形成する部分は、第1実施形態のガイド5の下面と同じである。つまり当該下面のうち第1の配置領域Aにおける搬送方向Xの上流側部分は第1のガイド面51a(搬送方向Xに向かうにつれて下降してテーブル1に接近する面)であり、当該下面のうち第1の配置領域Aにおける搬送方向Xの下流側部分は第2のガイド面51b(テーブル1の上面と平行な面)である。また第二実施形態のガイド5の下面のうち第2の配置領域Bを形成する部分は、搬送方向Xの上流端部を第1のガイド面51aとし、それ以外を第2のガイド面51bとする。第2の配置領域Bを形成する部分のうち第1のガイド面51aと第1の配置領域Aを形成ずる部分のうち第1のガイド面51aとは搬送方向Xに直交する方向Yに連続する。
また第二実施形態のガイドの下面のうち針落ち領域1aよりも搬送方向Xの上流側の部分は、縫製時に針8の真下に被縫製物を案内するというガイド5の役割を主として果たすが、それ以外の部分は、被縫製物3が針8と一緒に持ち上がらないようにする役割のみを果たす。
【0057】
本発明の第三実施形態の縫製装置は図8に示すように、ガイド5の配置領域5cにおいて第二実施形態の配置領域5bよりも広いものである。
【0058】
平面視した場合にガイド5の配置領域5cはU字状であり、前記した第1の配置領域Aと第2の配置領域Bの他に、第1の基準領域L1および針孔領域1hよりも搬送方向Xの下流側に離れた位置において第2の配置領域Bの下流側からクランプ部41の搬送領域41Lに向かって搬送方向Xに直交する方向Yに延びる第3の配置領域Cとを備える。
【0059】
第3の配置領域Cは針孔領域1hを中心にして第1の配置領域Aに対向して配置されている。また第3の配置領域Cもクランプ部41の搬送領域41Lから搬送方向Xに直交する方向Yに離れている。
【0060】
第三実施形態の縫製装置では、ガイド5の配置領域5cに第1の配置領域Aを含むことから、針落ち領域1aを一部に含む第1の基準領域L1および針孔領域1hに対してガイド5の配置領域5cの一部(第1の配置領域A)が搬送方向Xの上流側に離れて配置されている。またガイド5の配置領域5cは空間領域L3以外に形成されている。なお平面視した場合にガイド5の配置領域5cは、針落ち領域1aの周囲であるという条件と、クランプ部41の搬送領域41Lから離れているという条件とを満たしている。
【0061】
なお第三実施形態のガイド5の下面のうち第3の配置領域Cを形成する部分は、第2のガイド面51b(テーブル1の上面と平行な面)である。
また第三実施形態のガイド5の下面のうち針落ち領域1aよりも搬送方向Xの上流側の部分は、縫製時に針8の真下に被縫製物を案内するというガイド5の役割を主として果たすが、それ以外の部分は、被縫製物3が針8と一緒に持ち上がらないようにする役割のみを果たす。
【0062】
本発明の第四実施形態の縫製装置は図9に示すように、テーブル1とミシン2と搬送装置4の各細部において第一実施形態の縫製装置と相違する。ただし第四実施形態の縫製装置も、ガイド5の配置領域5aに関しては第一実施形態の縫製装置と同じである。
【0063】
テーブル1は一枚の搬送テーブル12で構成される。この場合、搬送テーブル12のうち針板に相当する部分には針孔1hが形成される。
【0064】
ミシン2は第一実施形態の位置決めプレート7が無いものである。位置決めプレート7が無いので、位置決めプレート7がある第一実施形態のミシン2よりも、被縫製物3の端をミシン本体2aのポスト部22側に寄せて縫製することができる。
また第四実施形態では、ミシン本体2aは本縫いミシンであり、搬送装置4との協働によって被縫製物3に対してミシン目状の直線の縫い目を形成するようになっている。
【0065】
搬送装置4は、クランプ部41を縫製物3の大きさに対応させてあり、第一実施形態よりも、クランプ部本体41aを搬送方向に長く形成してある。ちなみにクランプ部本体41aは、例えば被縫製物3が一枚の生地の場合には板だけで構成されていても良いが、被縫製物3が上下に2枚重ねた生地の場合には、上下の生地を突き刺す刺し針と、刺し針が下面から突き出た板とから構成されるものを用いることが望ましい。
【0066】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。例えば、針孔1hは本実施形態では細長い長孔形状であったが、本発明ではこれに限らず、丸孔に代表される他形状であっても良い。また搬送装置4は、本実施形態では搬送部42に多軸の多関節ロボットを用いたが、本発明ではこれに限らず、単に一直線にクランプ部を搬送するものであっても良い。この場合は、クランプ部の搬送方向と被縫製物3の搬送方向Xとは一致する。
【符号の説明】
【0067】
1 テーブル
1a 針落ち領域
1h 針孔、針孔領域
11,12 搬送テーブル
11c 凹部
2 ミシン
2a ミシン本体
2t 針板
21 ベッド部
21a ベッドケース
22 ポスト部
22a ポストケース
23 ミシンヘッド部
23a ミシンヘッドケース
23b 針棒
3 被縫製物
4 搬送装置
41 クランプ部
41a クランプ部本体
41b 衝撃吸収部
41c 固定アーム
41d ロッド
41e 圧縮コイルバネ
41f ストッパ
41L クランプ部の搬送領域
42 搬送部
42a ロボットアーム
5 ガイド
5a,5b,5c 配置領域
51 案内ブロック部
51a 第1のガイド面
51b 第2のガイド面
52 固定ブロック部
6 ブラケット
61 第1のブラケット
61a,61b 固定板部
61c 第1のブラケット本体部
61d 第1の板部
61e 第2の板部
62 第2のブラケット
62a 第2のブラケット本体部
62b 固定板部
7 位置決めプレート
71 位置決め本体部
72 下板部
73 固定板部
74 第1の固定板部
75 第2の固定板部
8 針
9 押さえ足
A 第1の配置領域
B 第2の配置領域
C 第3の配置領域
L1 第1の基準領域
L2 第2の基準領域
L3 空間領域
X 搬送方向
Y 直交する方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10