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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098582
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】縫製装置
(51)【国際特許分類】
   D05B 35/06 20060101AFI20230703BHJP
   D05B 23/00 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
D05B35/06
D05B23/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142743
(22)【出願日】2022-09-08
(31)【優先権主張番号】202111626194.2
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002712
【氏名又は名称】弁理士法人みなみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西田 瞳
(72)【発明者】
【氏名】澤田 敏昭
【テーマコード(参考)】
3B150
【Fターム(参考)】
3B150AA22
3B150BB06
3B150CC01
3B150CC05
3B150ED01
(57)【要約】
【課題】生地の上にスライドファスナーが載せられたものを被縫製物とし、生地に縫い合わせたテープが一直線になるようにすること。
【解決手段】本発明は、スライドファスナー32の一対のテープ33a,33bのうち一方のテープ33aの上から被縫製物3をテーブル1に押し付けながらスライドファスナーのエレメント列の長手方向に対して平行に搬送して他方のテープ33bと生地30とをミシン2で縫い合わせる縫製装置を前提にする。そして縫製中にスライドファスナーのエレメント列34Lを位置決め可能なエレメントガイド5と、エレメントガイドを位置決め位置と待機位置に変更可能なガイド変位装置6とを備える。またミシンのミシンフット7は、スライドファスナーのスライダー35に衝突してスライダー35の進路を修正する進路修正面72bを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生地(30)の上にスライドファスナー(32)が載せられたものを被縫製物(3)とし、
前記スライドファスナー(32)の一対のテープ(33a,33b)のうち一方の前記テープ(33a)の上から前記被縫製物(3)をテーブル(1)に押し付けながら前記スライドファスナー(32)のエレメント列(34L)の長手方向に対して平行に搬送して他方の前記テープ(33b)と前記生地(30)とをミシン(2)で縫い合わせる縫製装置において、
縫製中に前記ミシン(2)の針(21)に対して搬送方向(X)の上流側で前記スライドファスナー(32)のエレメント列(34L)をその幅方向に位置決め可能なエレメントガイド(5)と、
前記エレメント列(34L)を位置決めする位置決め位置(P1)と前記エレメント列(34L)から離れて待機する待機位置(P2)とに前記エレメントガイド(5)を変位可能なガイド変位装置(6)とを備えることを特徴とする縫製装置。
【請求項2】
前記エレメントガイド(5)は、上下方向に揺動可能に支持されるガイドアーム(51)と、前記ガイドアーム(51)の揺動端から突出すると共に前記エレメント列(34L)を幅方向の両側から案内する一対のガイド片(52)とを備え、
前記ガイド変位装置(6)は、前記エレメントガイド(5)の揺動中心側を固定する軸(61)と、前記軸(61)を中心として前記エレメントガイド(5)ごと前記軸(61)を揺動可能に支持する揺動装置(62)とを備えることを特徴とする請求項1に記載の縫製装置。
【請求項3】
前記スライドファスナー(32)は、一対の前記テープ(33a,33b)が前記スライダー(35)を境にして直線状に延びる直線部分(33S)と二又に分岐する一対の分岐部分(33T)とを備え、前記直線部分(33S)がスライダー(35)に対して搬送方向(X)の下流側に位置する状態で搬送されるものであり、
前記被縫製物(3)の上面を押さえるミシンフット(7)を備え、
前記ミシンフット(7)は、前記エレメント列(34L)に対してその幅方向に対向する面に、前記スライダー(35)に衝突させて前記スライダー(35)の進路を修正する進路修正面(72b)を備え、
前記進路修正面(72b)は、搬送方向(X)の下流側に向かうにつれて前記エレメント列(34L)の通路の方に接近することを特徴とする請求項1に記載の縫製装置。
【請求項4】
前記進路修正面(72b)は平面視して円弧状に凹んでいることを特徴とする請求項3に記載の縫製装置。
【請求項5】
前記ミシンフット(7)は、前記進路修正面(72b)に対して搬送方向(X)の下流側に針孔(72h)を備えることを特徴とする請求項3に記載の縫製装置。
【請求項6】
前記ミシンフット(7)は、前記進路修正面(72b)に対して搬送方向(X)の下流側には前記進路修正面(72b)で修正済みの前記スライダー(35)の進路を維持する進路維持面(72c)を備え、
前記進路維持面(72c)は搬送方向(X)に一直線に延びるものであることを特徴とする請求項3に記載の縫製装置。
【請求項7】
前記ミシンフット(7)は、前記進路修正面(72b)に対して搬送方向(X)の下流側には前記進路修正面(72b)で修正済みの前記スライダー(35)の進路を維持する進路維持面(72c)を備え、
前記進路維持面(72c)は搬送方向(X)に一直線に延びるものであることを特徴とする請求項5に記載の縫製装置。
【請求項8】
前記ミシンフット(7)は、前記進路修正面(72b)に対して搬送方向(X)の上流側には前記進路修正面(72b)に前記スライダー(35)を誘導する誘導面(72a)を備え、
前記誘導面(72a)は搬送方向(X)に一直線に延びるものであることを特徴とする請求項3~7の何れかに記載の縫製装置。
【請求項9】
前記エレメントガイド(5)は、前記ミシン(2)の前記針(21)に対して搬送方向(X)の上流側で且つ前記誘導面(72a)の搬送方向(X)の全長(L1)の範囲内に対応する位置で前記エレメント列(34L)を位置決め可能であることを特徴とする請求項8に記載の縫製装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生地の上にスライドファスナーが載せられたものを被縫製物とし、スライドファスナーの一対のテープのうち一方のテープの上から被縫製物をテーブルに押し付けながらスライドファスナーのエレメント列の長手方向に対して平行に搬送して他方のテープと生地とをミシンで縫い合わせる縫製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記した縫製装置の一例として、次の1)~6)の手順で生地としての前立てとファスナーのテープを縫い合わせるものが知られている(特許文献1)。
1)テーブルとしての天板上に生地としての前立てを載せる。
2)第2,第3の押え板で前立てを幅方向の一方側の端部において押えて保持する。
3)前立ての上であって第2,第3の押え板で押さえられていない部分にファスナーを重なるように乗せる。
4)一対の幅寄せ板でファスナーを幅寄せして前立てに対してファスナーを位置決めする。
5)その位置決めされた状態の前立てとスライドファスナーに対して幅方向の他方側の端部を第4の押え板で押さえる。このとき第4の押え板は、第2,第3の押さえ板と一対の幅寄せ板を避けた位置に保たれる。
6)第2,第3の押さえ板と一対の幅寄せ板による位置決めを解除し、前立てとファスナーを第4の押え板で押さえながらミシンに向かって搬送して、前立てとテープをミシンで縫い合わせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6423568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで特許文献1では、第4の押え板による押さえ方については、「ファスナーのY方向に沿って背面側の半分を避けて前立て布及びファスナーを押さえるように構成されている」と記載されている。ちなみにY方向とは、縫製装置の正面側から背面側への方向(X方向と直交する方向)である。またX方向とは、縫製される前立て布及びファスナーが進む方向である。
【0005】
この記載から判断すると、第4の押え板が押さえているのは、正面側のテープなのかエレメント列やスライダーの正面側の部分なのかそれともこれら全部なのかが不明である。しかし第4の押え板が板であることから、第4の押え板が押さえているのは正面側のテープであると解する。そして第4の押え板は、背面側のテープが第1のミシンの針の真下を通るように前立て布及びファスナーを搬送するようになっている。
【0006】
第4の押え板が正面側のテープを押さえているとすると、ファスナーのうち押さえられていない部分、つまりエレメントや背面側のテープが縫製中にY方向に微妙にずれるおそれがあり、そのずれた状態でテープと前立て布とが縫い合わされるおそれがある。つまりファスナーのテープとその下側の前立てとの位置決めが不十分な状態で縫い合わされるおそれがあり、それに伴って生地に縫い合わされたテープが微妙に曲がって一直線ではなくなるおそれがある。
【0007】
またファスナーの一対のテープはスライダーを境にして一直線に延びる直線部分と、二又に分岐する一対の分岐部分とを備える形状である。しかもスライダーがエレメント列よりも厚いことから、一対のテープはスライダーの付近では皺のある形状、言い換えればテープの厚み方向に凸凹して恰も波打つような形状である。
【0008】
特許文献1の縫製装置で、このような形状のファスナーと生地とを縫製した場合、直線部分が搬送方向の下流側に位置する状態で生地とファスナーとが一緒に搬送され、生地とファスナーとが縫い合わされる。そうすると、縫い目S1は図7に示すように直線部分ではテープの幅方向における外側の辺に概ね平行な直線状に形成されたとしても、スライダーの付近では曲がるし、分岐部分では分岐部分の形状を維持するようにテープの幅方向における外側の辺に対して斜めに形成されることになる。
【0009】
本発明は上記実情を考慮して創作されたもので、その目的は生地に縫い合わせたテープができる限り一直線になるようにすることである。また望ましくは、テープのうち分岐部分についても直線部分と同様にできる限り一直線になるようにし、縫い目ができる限り一直線になるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の縫製装置は、生地の上にスライドファスナーが載せられたものを被縫製物とする。また本発明の縫製装置は、スライドファスナーの一対のテープのうち一方のテープの上から被縫製物をテーブルに押し付けながらスライドファスナーのエレメント列の長手方向に対して平行に搬送して他方のテープと生地とをミシンで縫い合わせるものである。そして本発明の縫製装置は、縫製中にミシンの針に対して搬送方向の上流側でスライドファスナーのエレメント列をその幅方向に位置決め可能なエレメントガイドと、エレメント列を位置決めする位置決め位置とエレメント列から離れて待機する待機位置とにエレメントガイドを変位可能なガイド変位装置とを備えることを特徴とする。
【0011】
またエレメントガイドとガイド変位装置の構成は問わないが、簡素な構成とするには次のようにすることが望ましい。
すなわちエレメントガイドは、上下方向に揺動可能に支持されるガイドアームと、ガイドアームの揺動端から突出すると共にエレメント列を幅方向の両側から案内する一対のガイド片とを備えることにする。ガイド変位装置は、エレメントガイドの揺動中心側を固定する軸と、軸を中心としてエレメントガイドごと軸を揺動可能に支持する揺動装置とを備えることにする。
【0012】
一対のテープの形状はスライダーを境にして異なる。そのため、他方のテープを生地に縫い合わせると、縫い目がスライダーの付近で曲がったり、テープの形状が縫製前と同じ形状、つまり分岐した形状を維持したりするようになり易い。それをできる限り防止するには次のようにすることが望ましい。
すなわちスライドファスナーは、一対のテープがスライダーを境にして直線状に延びる直線部分と二又に分岐する一対の分岐部分とを備える。そしてスライドファスナーは直線部分がスライダーに対して搬送方向の下流側に位置する状態で搬送されるものとする。その上で本発明の縫製装置は、エレメントガイドとガイド変位装置の他に、被縫製物の上面を押さえるミシンフットを備えることが望ましい。
ミシンフットは、エレメント列に対してその幅方向に対向する面に、スライダーに衝突させてスライダーの進路を修正する進路修正面を備える。そして進路修正面は、搬送方向の下流側に向かうにつれてエレメント列の通路の方に接近するものである。
【0013】
また進路修正面の詳細は問わず、例えば階段状に凹んでいても良いが、スライダーの進路を滑らかに修正するには次のようにすることが望ましい。
すなわち進路修正面は平面視して円弧状に凹んでいることである。
【0014】
またミシンフットはどの位置に針孔を備えるかを問わないが、次のようにすることがエレメント列に縫い目を近づけて形成するには望ましい。
すなわちミシンフットは進路修正面に対して搬送方向の下流側に離れた位置に針孔を備えることである。
【0015】
またミシンフットは、進路修正面に対して搬送方向の下流側をどのようにしてあるのかを問わない。しかし他方のテープを直線部分と同様にできる限り一直線の形状で縫い合わせるには次のようにすることが望ましい。
すなわちミシンフットは、進路修正面に対して搬送方向の下流側には進路修正面で修正済みのスライダーの進路を維持する進路維持面を備えることである。そして進路維持面は搬送方向に一直線に延びるものとすることである。
【0016】
またミシンフットは、進路修正面に対して搬送方向の上流側をどのようにしてあるのかを問わない。しかし進路修正面にスライダーを円滑に誘導するには次のようにすることが望ましい。
すなわちミシンフットは、進路修正面に対して搬送方向の上流側には進路修正面にスライダーを誘導する誘導面を備えることである。そして誘導面は搬送方向に一直線に延びるものにすることである。
【0017】
エレメントガイドはミシンの針に対して搬送方向の上流側でエレメント列を位置決め可能なものであれば良く、その詳細を問わないが、エレメントガイドがスライダーにできる限り近い位置までエレメント列を位置決めした状態での縫製と、ミシンフットがスライダーの進路修正をした状態での縫製をできる限り連続させるには次のようにすることが望ましい。
すなわちエレメントガイドは、ミシンの針に対して搬送方向の上流側で且つ誘導面の搬送方向の全長の範囲内に対応する位置でエレメント列を位置決め可能にすることである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の縫製装置は、一対のテープのうち一方のテープの上から被縫製物を押さえて位置決めした状態でありながら、さらにエレメントガイドを位置決め位置に配置することによってエレメント列を位置決めできるので、被縫製物の位置決めが十分になされた状態になり、その結果、一方のテープのみを押さえて縫い合わせる縫製装置に比べれば、縫い合わされた他方のテープの形状が直線に近似した状態になる。
【0019】
また本発明の縫製装置は、進路修正面が形成されたミシンフットを備えるものであれば、進路修正面を搬送方向の下流側に向かうにつれてエレメント列の通路の方に接近するようにしてあるので、進路修正面に衝突することでスライダーの進路が修正され、それに伴って他方のテープのうちスライダーの付近の部分も進路が修正されることになり、進路修正面がないミシンフットを備える縫製装置に比べれば、縫い合わされた他方のテープの形状と縫い目がスライダーの付近を含めて直線に近似した状態になる。
【0020】
また本発明の縫製装置は、進路修正面が平面視して円弧状に凹んでいるものであれば、円弧に沿ってスライダーの進路が滑らかに修正されるので、縫い合わされた他方のテープの形状と縫い目がスライダーの付近を含めて直線に近似した状態になる。
【0021】
また本発明の縫製装置は、ミシンフットが進路修正面に対して搬送方向の下流側に離れた位置に針孔を備えるものであれば、例えば進路修正面に対して平面視して搬送方向に直交する方向に離れた位置に針孔を備える縫製装置に比べると、エレメント列に縫い目を近づけて形成することができる。
【0022】
また本発明の縫製装置は、進路維持面が形成されたミシンフットを備えるものであれば、進路維持面が搬送方向に一直線に延びるので、進路修正済みのスライダーが進路維持面に沿って搬送されることになり、それに伴って他方のテープのうちスライダーに対して搬送方向の上流側の部分、つまり分岐部分も進路が修正されることになり、進路維持面がないミシンフットを備える縫製装置に比べれば、縫い合わされた他方のテープの形状と縫い目がスライダーの付近を含めて直線に近似した状態になる。
【0023】
また本発明の縫製装置は、誘導面が形成されたミシンフットを備えるものであれば、誘導面が搬送方向に一直線に延びるので、スライダーが誘導面に沿って搬送されてから進路修正面に円滑に誘導されることになり、誘導面のないミシンフットを備える縫製装置に比べれば、縫い合わされた他方のテープの形状と縫い目がスライダーの付近を含めて直線に近似した状態になる。
【0024】
また本発明の縫製装置は、エレメントガイドがミシンの針に対して搬送方向の上流側で且つ誘導面の搬送方向の全長の範囲内に対応する位置でエレメント列を位置決め可能なものであれば、エレメントガイドがスライダーにできる限り近い位置までエレメント列を位置決めした状態での縫製の終了後にエレメントガイドを待機位置に変位させることによって、エレメントガイドがエレメント列を位置決めした状態での縫製の終了時と、ミシンフットが進路修正面でのスライダーの進路修正をした状態での縫製の開始時との時間差を短時間にでき、当該時間差が長い縫製装置に比べれば、縫い合わされた他方のテープの形状と縫い目がスライダーの付近を含めて直線に近似した状態になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第一実施形態の縫製装置を示す斜視図である。
図2】(a)~(d)図は第一実施形態の縫製装置による被縫製物の縫製手順を示す説明図である。
図3】第一実施形態の縫製装置の動作を示す説明図である。
図4】第一実施形態の縫製装置による被縫製物の縫製状態を示す平面図である。
図5】第一実施形態の縫製装置の各部の位置関係を示す平面図である。
図6】第二実施形態の縫製装置による被縫製物の縫製状態を示す平面図である。
図7】従来の縫製装置による被縫製物の縫製状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の第一実施形態の縫製装置に用いられる被縫製物3は図4に示すように、生地30の上にスライドファスナー32が載せられたものである。生地30の一例としては前立てが挙げられる。なお生地30は、第一実施形態の縫製装置による縫製前においては、幅方向の一方側において縁かがり縫いがなされたものとする。ちなみに図4に示す被縫製物3は、第一実施形態の縫製装置によって生地30とスライドファスナー32とが既に縫い合わされ、縫い目S1が形成されたものである。
【0027】
スライドファスナー32を平面に置かれた状態を基準として説明する。スライドファスナー32は、長手方向に延びると共に長手方向に直交する方向である幅方向に対向する一対のテープ33a,33bと、一対のテープ33a,33bの対向する側縁部に対しその長手方向に間隔を開けて固定された複数のエレメント34と、全てのエレメント34によって構成されるエレメント列34Lを開閉するスライダー35と、スライダー35に衝突してスライダー35の移動範囲の両端を定める第1の止具36および第2の止具37とを備える。なおテープ33a,33bは柔軟な帯である。
【0028】
第1の止具36は、スライダー35の移動範囲のうちエレメント列34Lの閉鎖側の限界位置を定めるものであり、図示の例では一方のテープ33aにおける対向する側縁部に固定されている。
【0029】
第2の止具37はスライダー35の移動範囲のうちエレメント列34Lの開放側の限界位置を定めるもので、図示の例では一対のテープ33a,33bの対向する側縁部に対し固定されている。第2の止具37はエレメント列34Lよりも僅かに幅広で、エレメント列34Lに対して幅方向の両方向に僅かに張り出している。
【0030】
スライドファスナー32は、エレメント列34Lが完全に閉鎖した状態、言い換えれば全てのエレメント34に関して隣り合うエレメント34同士が噛合した状態であり、スライダー35が第1の止具36に接する状態である。この状態では、エレメント列34Lは一直線に延びる形である。この一直線に延びる方向はスライドファスナー32の長手方向であり、エレメント列34Lの長手方向でもある。一方、スライドファスナー32を平面視した状態でエレメント列34Lの長手方向に対して直交する方向は、スライドファスナー32の幅方向であり、エレメント列34Lの幅方向である。
【0031】
またスライドファスナー32は、一対のテープ33a,33bがスライダー35を境にして直線状に延びる直線部分33Sと二又に分岐する一対の分岐部分33Tとを備える。被縫製物3は、生地30の上にスライドファスナー32が重なり合うと共に直線部分33Sの幅方向の両側に生地30がはみ出す状態である。そして被縫製物3は、直線部分33Sの直線方向を搬送方向Xに対して平行に保った状態で且つ直線部分33Sがスライダー35に対して搬送方向Xの下流側に位置する状態を保持したまま搬送され、片方のテープ33bと生地30とが縫い合わされ、縫い目S1が形成される。
【0032】
スライダー35は、エレメント列34Lに移動可能に案内されるスライダー胴体35aと、スライダー胴体35aに対して連結された引手(図示せず)とを備える。生地30の上にスライドファスナー2が載った状態では、引手はスライダー胴体35aの下に重なる状態となる。
またスライダー胴体35aはその内部空間として、エレメント列34Lの長手方向に貫通するエレメント通路(図示せず)と、エレメント通路に連通すると共にエレメント列34Lの幅方向に開口するテープ溝(図示せず)とを備える。
エレメント通路は、長手方向の一方側が一つの本路であると共に長手方向の他方側がエレメント列34Lの幅方向に二又に分岐する一対の分岐路からなる。
エレメント通路にはエレメント列34Lが通され、各テープ溝には対応する側のテープが通される。
スライダー胴体35aの形状はエレメント通路に対応した形状となっている。つまりスライダー胴体35aのうち一対の分岐路に対応する部分は、スライダー胴体35aのうち本路に対応する部分よりも、エレメント列34Lの幅方向の両側に張り出す形状となっている。
【0033】
本発明の第一実施形態の縫製装置は図1又は図3に示すように、テーブル1と、ミシン2と、被縫製物3をテーブル1に押し付けながらミシン2に対して上流側から下流側に搬送する搬送装置4と、縫製中に被縫製物3のスライドファスナー32のエレメント列34Lをその幅方向に且つミシン2の針21に対して搬送方向Xの上流側で位置決め可能なエレメントガイド5と、エレメント列34Lを位置決めする位置決め位置P1とエレメント列34Lから離れて待機する待機位置P2とにエレメントガイド5を変位可能なガイド変位装置6とを備える。
【0034】
搬送装置4は、一対のテープ33a,33bのうち一方のテープ33aの上から被縫製物3をテーブル1に押し付けながらスライドファスナー32のエレメント列34Lの長手方向に対して平行に搬送するものである。そして搬送中に一対のテープ33a,33bのうち他方のテープ33bと下側の生地30とが縫い合わされる。以後、一対のテープ33a,33bのうち搬送装置4で押さえられる方のテープ33aを押さえ側テープ33aと称し、縫い合わされる方のテープ33bを縫製側テープ33bと称する。
また本実施形態では搬送装置4は、押さえ側テープ33aを上から押さえる押さえ部41と、押さえ部41を搬送方向Xとは反対方向と搬送方向Xとに往復動自在に且つ昇降自在に移動させる図示しない搬送部とを備える。押さえ部41の搬送方向Xの長さは、被縫製物3の搬送方向Xの全長(生地30の上に重ねられたテープ33a,33bの長手方向における被縫製物3の全長)とほぼ同じとしてある。
【0035】
本実施形態ではテーブル1は上面を水平面にしてあるものとする。
ミシン2は、被縫製物3を縫うミシン本体2aとミシンフット7とを備える。
【0036】
ミシン本体2aは周知のもので、針21に通された上糸とテーブル1の針孔の下側に供給された下糸とを絡めて、テーブル1上に載置された被縫製物3に対し縫目を形成する。なお上糸・下糸・針孔は図示していない。ちなみに本実施形態では、ミシン本体2aは本縫いミシンであり、搬送装置4との協働によって被縫製物3に対して点線状の直線の縫い目S1を形成するようになっている。
【0037】
またミシン本体2aは、テーブル1に対して下側に設置されるベッド部(図示せず)と、ベッド部から起立するポスト部22と、ポスト部22の上部からベッド部に対し上方において対向する状態で延びるミシンヘッド部23とを備える。そしてミシン本体2aは、ベッド部とミシンヘッド部23とが上下に離れた状態で前後方向に延びており、ベッド部とミシンヘッド部23の後部に挟まれる形でポスト部22が上下に延びている。なお前後方向とは、搬送方向Xおよび上下方向に直交する方向である。
【0038】
ベッド部の内部には下糸を上糸に絡める機構が内蔵されている。ポスト部22の内部には例えばミシンヘッド部23の内部機構とベッド部の内部機構とを連動させる機構が内蔵されている。
【0039】
ミシンヘッド部23は、その外郭を形成するミシンヘッドケース(符号省略)と、ミシンヘッドケース内に収容される内部機構を備えている。ちなみにこの内部機構とは、針棒上下動機構や天秤駆動機構やミシンフット駆動機構等である。ミシンヘッドケースの先部の下面からはミシンフット駆動機構の連結棒23aが下方に突出している。そして連結棒23aの下端部に固定されているのがミシンフット7である。
【0040】
ミシンフット7は、連結棒23aに対し固定されて下方に延びる固定部71と、固定部71の下端部から搬送方向Xの上流側に延びるフット部72とを備える。フット部72には上下方向に貫通する針孔72hが形成されている。図示の例では2つの針孔72hが前後方向に間隔をあけて形成されている。
【0041】
フット部72の前面は縫製中のエレメント列34Lに対してその幅方向に対向する面になる。フット部72は前面の搬送方向Xの中間部に、スライダー35に衝突させてスライダー35の進路を修正する進路修正面72bを備える。
【0042】
進路修正面72bは、搬送方向Xの下流側に向かうにつれてエレメント列34Lの通路の方に接近する形状である。具体的には進路修正面72bは、平面視して円弧状に凹む形状である。ちなみに円弧の中心は、円弧の両端点のうち搬送方向Xの下流側の端点に対し搬送方向Xの上流側に位置し、且つ搬送方向Xの上流側の端点に対しエレメント列34Lの通路側に位置する。また円弧は楕円を長軸方向と短軸方向にほぼ四等分した形の円弧、より詳しくは楕円の円弧である。
【0043】
フット部72は前面に進路修正面72bの他に、進路修正面72bにスライダー35を誘導する誘導面72aと、進路修正面72bで修正済みのスライダー35の進路を維持する進路維持面72cとを備える。
【0044】
誘導面72aは進路修正面72bに対して搬送方向Xの上流側に配置される。また誘導面72aは搬送方向Xに一直線に延びている。より詳しく言えば誘導面72aは進路修正面72bの円弧のうち搬送方向Xの上流側の端点から延びる接線に対して一致する関係を保って搬送方向Xに一直線に延びている。
【0045】
進路維持面72cは進路修正面72bに対して搬送方向Xの下流側に配置される。また進路維持面72cは進路修正面72bの円弧のうち搬送方向Xの下流側の端点から延びる接線に対して交差する関係を保って搬送方向Xに一直線に延びている。
【0046】
フット部72の前面(誘導面72a・進路修正面72b・進路維持面72c)とフット部72の針孔72hとの関係は図5に示すように次のようになる。
2つのうち1つ(前側)の針孔72hは進路修正面72bに対して搬送方向Xの下流側に配置される。より詳しく言えば、前側の針孔72hにおける搬送方向Xに直交する方向の両端から、搬送方向Xの上流側へ向かって2つの仮想線72Lを引く。2つの仮想線72Lの間の領域、つまり針孔72hの上流側領域72Uに進路修正面72bが存在する。図示の例では針孔72hの上流側領域72Uに対して進路修正面72bが部分的に存在している。つまり進路修正面72bのうち誘導面72a側の部分と誘導面72aとは針孔72hの上流側領域72Uに存在し、進路修正面72bのうち進路維持面72c側の部分は針孔72hの上流側領域72Uに存在せず、針孔72hの上流側領域72Uに対して前側に位置する。また進路維持面72cは、針孔72hの上流側領域72Uと針孔72hと針孔72hの下流側領域に対して前側に位置する。
【0047】
またミシンヘッド部23は図1,3に示すように、ミシンヘッドケースの先部の下面から針棒駆動機構の針棒23bが下方に突出する状態で配置される。そして針棒23bの下端部に固定具23cを介して針21が下方に延びる状態で取付けられる。図示の例では固定具23cには2本の針21が前後方向に間隔を開けて取り付けられる。針21はスライドファスナー32の幅方向に関して縫製中にスライダー胴体35aに接しないようにしながらもエレメント列34Lに対してできるだけ近くで上下動させることが望ましい。それによって縫い目S1がエレメント列34Lに対してできるだけ近くに形成できる。スライドファスナー32の幅方向に関して縫い目S1の限界位置は、針21の太さによって変動するが、図4に示すようにスライダー胴体35aの幅の最大寸法となる点からスライドファスナー32の長手方向に平行に引いた仮想の限界線Bに対して針21を接しないようにしながらも最接近させた位置である。またミシン2の針21に対して搬送方向Xの上流側においてエレメント列34Lを位置決め可能なものがエレメントガイド5である。
【0048】
エレメントガイド5は、上下方向に揺動可能に支持されるガイドアーム51と、ガイドアーム51の揺動端から突出すると共にエレメント列34Lを幅方向の両側から案内する一対のガイド片52とを備える。なおガイドアーム51は棒状である。
【0049】
一対のガイド片52は図2(a)に示すように、ミシン2の針21に対して搬送方向Xの上流側で且つミシンフット7の誘導面72aの搬送方向Xの全長L1の範囲内に対応する位置でエレメント列34Lを位置決め可能である。また一対のガイド片52は、ガイドアーム51が搬送方向Xに向かうにつれて下方に向かう傾斜状態でエレメント列34Lを位置決めしている。そして一対のガイド片52は、エレメント列34Lを位置決めしている状態では、ガイドアーム51の揺動端の下面から下方に突出している。一対のガイド片52は前後方向(エレメント列34Lの幅方向)に間隔を開けて配置される。また一対のガイド片52とガイドアーム51の揺動端とは協働してガイド溝53を形成する。ガイド溝53はエレメント列34Lを位置決めしている状態において搬送方向Xに貫通する状態である。つまりエレメントガイド5の揺動端部にはガイド溝53が形成されている。ガイド溝53の溝幅はエレメント列34Lの幅および第2の止具37の幅よりも僅かに広い。またガイド溝53の溝幅は搬送方向Xの上流側の部分を搬送方向Xの下流側の部分よりも広くしてある。
【0050】
より詳しく言えば、一対のガイド片52は、エレメント列34Lに対してその幅方向に対向する面(以下「対向面」と称する。)に関して、搬送方向Xの下流側の部分を搬送方向Xに平行に形成してある。そして一方のガイド片52の対向面は搬送方向Xの全長に亘って搬送方向Xに平行に一直線に形成されている。したがって当該一方のガイド片52の対向面は搬送方向Xの下流側の部分だけでなく、搬送方向Xの上流側の部分も搬送方向Xに平行に一直線に形成してある。他方のガイド片52の対向面は、搬送方向Xの上流側の部分を搬送方向Xの上流側に向かうにつれて、一方のガイド片52の対向面から離れるように搬送方向Xに対して傾斜する傾斜面52aとしてある。なお一対のガイド片52の対向面のうち傾斜面52a以外を平行面52bと称することにする。このような一対のガイド片52を含むエレメントガイド5を変位させるのがガイド変位装置6である。
【0051】
ガイド変位装置6は図1又は図3に示すように、エレメントガイド5の揺動中心側を固定する軸61と、その軸61を中心としてエレメントガイド5ごと軸61を揺動可能に支持する揺動装置62とを備える。
【0052】
軸61はテーブル1に対して上方に間隔を開けて配置される。また軸61は一直線に延びる棒状である。軸61が延びる方向である長手方向は前後方向に平行である。また軸61の一端部にはガイドアーム51の一端部が固定される。一方、軸61の他端部には揺動装置62が固定される。
【0053】
揺動装置62は本実施形態では直線往復運動を揺動運動に変換したものである。より詳しく言えば揺動装置62は、直線往復運動装置としてのシリンダ装置63と、シリンダ装置63のピストンロッド63aと軸61とに連結されると共に直線往復運動を揺動運動に変換する変換装置64とを備える。
【0054】
変換装置64は、軸61の他端部(エレメントガイド5とは反対側の端部)を揺動可能(所定角度範囲で回転可能)に支持する軸受部65と、軸61をクランク軸として兼用するクランク66と、シリンダ装置63のピストンロッド63aの先部に固定されると共にクランク66のクランクピン66aにピストンロッド63aの動きを伝達する伝達ブロック67と、シリンダ装置63のシリンダ63bとクランク66のクランクピン66aとに架設されると共に伝達ブロック67とクランクピン66aとを連動可能に係わり合わせる引張バネ68とを備える。
【0055】
シリンダ装置63は、軸61に対して搬送方向Xの下流側に配置されたシリンダ63bと、シリンダ63bに対し搬送方向Xの上流側に向かって突出するピストンロッド63aとを備える。
【0056】
クランク66は、クランク軸として兼用する軸61と、軸61に対し半径方向に延びる状態で固定されると共に軸61を揺動させるクランク腕66bと、クランク腕66bの揺動端部から軸61と平行に且つエレメントガイド5とは反対側に向かって延びるクランクピン66aとを備える。
【0057】
伝達ブロック67はクランク腕66bの揺動端部に対し対向する面を、搬送方向Xに直交する方向に段差のある面としてある。より詳しく言えば伝達ブロック67のうちクランク腕66bの揺動端部に対し対向する面は、搬送方向Xの下流側の部分に対して搬送方向Xの上流側の部分を搬送方向Xに直交する方向(後方向)に向かって段差状に凹ませてある。したがって伝達ブロック67には、搬送方向Xの上流側の部分と下流側の部分との境界に段差面67aが形成される。この段差面67aは搬送方向Xに直交する面で、クランクピン66aの先部を上下方向に移動可能に案内する案内面である。
引張バネ68はクランクピン66aの先部を段差面67aに押し当てる。また引張バネ68はその復元力によってエレメントガイド5の揺動端部をテーブル1に向かって下方に押し込む。そして被縫製物3が搬送されながら、スライダー35がエレメントガイド5の揺動端部の下を通過するときには、エレメントガイド5の揺動端部はスライダー35によって押し上げられる形で引張バネ68の復元力に逆らって上方に変位するようになっている。ちなみに引張バネ68の一端部はシリンダ63bに固定されたブラケット63cの穴に通して引っ掛けられている。引張バネ68の他端部は前述したようにクランクピン66aに引っ掛けられている。
【0058】
軸受部65は、テーブル1上に固定されると共に軸61を貫通させるベースブロック65aと、ベースブロック65aに対し形成された軸61の長手方向に貫通する貫通穴(図示せず)と軸61との間において軸61を揺動可能に支持するカラー65bと、ベースブロック65aに対し軸61の長手方向の両側において軸61に対し固定された一対のフランジ65fとを備える。
【0059】
カラー65bは、円筒状の図示しないカラー本体部と、カラー本体部の貫通方向の一端部から鍔状に突出するカラーフランジ部65dとを備える。ちなみにカラーフランジ部65dは、エレメントガイド5とは反対側のフランジ65fとベースブロック65aとの間に配置され、ベースブロック65aに対しボルトで固定されている。
【0060】
フランジ65fは環状で、軸61に対して半径方向外側に張り出す状態で固定されている。エレメントガイド5側のフランジ65fにはクランク腕66bがボルトで固定されている。
【0061】
ベースブロック65aは搬送方向Xに延びている。ベースブロック65aのうち搬送方向Xの上流側の部分には前記したようにカラー本体部と一緒に軸61を通す貫通穴が形成されている。またベースブロック65aのうち搬送方向Xの下流側の部分の上にはシリンダ装置63のシリンダ63bが固定される。図示の例では、ベースブロック65aのうち搬送方向Xの上流側の部分の上面は、ベースブロック65aのうち搬送方向Xの下流側の部分の上面よりも高くなっている。またベースブロック65aのうち搬送方向Xの上流側の部分の上面と伝達ブロック67との間には伝達ブロック67の往復動を確保するために間隔が開けられている。
【0062】
上記した第一実施形態の縫製装置は例えば次の1)~15)のようにして被縫製物3を縫製する。
1)エレメントガイド5よりも搬送方向Xの上流側においてテーブル1の所定位置に被縫製物3が載せられる。なお被縫製物3は生地30の上にスライドファスナー32が載せられた(重ね合わされた)ものである。
2)搬送装置4が駆動して、押さえ部41が下降し、スライドファスナー32の一対のテープ33a,33bのうち押さえ側テープ33aを押さえ部41でテーブル1に押し付けて、スライドファスナー32と生地30とを位置決めする。
3)押さえ部41が搬送方向Xに移動して、被縫製物3をテーブル1に押し付けながらスライドファスナー32のエレメント列34Lの長手方向に対して平行に移動させて、被縫製物3をミシン2に向かって搬送する。また被縫製物3は、直線部分33Sがスライダー35に対して搬送方向Xの下流側に位置する状態を保持したまま搬送される。
4)押さえ部41の搬送方向Xへの移動を開始してから所定時間経過後にミシンフット7が初期位置から下降して被縫製物3を押さえると共に、ミシン2の縫製が開始され、被縫製物3に縫い目S1が形成される。所定時間とは、例えばミシンフット7の搬送方向Xの上流側における端の真下を被縫製物3の先端が通過すると想定される時間である。
5)ミシンフット7が下降した後にさらに所定時間経過後に、エレメントガイド5が待機位置P2から位置決め位置P1に移動し、エレメントガイド5の揺動端部が一対のテープ33a,33bに接触する。
6)さらに押さえ部41が搬送方向Xへ移動すると、エレメント列34Lの先端側の第2の止具37がエレメントガイド5の一対のガイド片52の間に侵入して傾斜面52aのある幅広の部分で案内され、その後に一対の平行面52bの間を通って位置決めされる。第2の止具37が位置決めされることによって、第2の止具37よりも僅かに幅の狭いエレメント列34Lも位置決めされ、また第2の止具37がエレメントガイド5を通過した後には一対のガイド片52の間にエレメント列34Lが案内される状態になる。その結果、縫製側テープ33bも位置決めされた状態となり、その状態で縫製側テープ33bと生地30とが縫い合わされ、縫い目S1が搬送方向Xに一直線に且つ点線状に形成される。なお図示の例では2本の針21で縫製するので、2本の縫い目S1が前後方向に並列する形で形成される。
【0063】
7)さらに押さえ部41が搬送方向Xへの移動を続けているうちに、図2(a)に示すようにエレメント列34Lの後端がエレメントガイド5に接近し、スライダー35がミシンフット7の誘導面72aに対向する領域に入る。ちなみに押さえ部41は、スライドファスナー32をそのままの形状を保つようにして(一対のテープ33a,33bが直線部分33Sと一方の分岐部分33Tを維持した状態を保つようにして)、搬送方向Xに平行な状態で押さえ側テープ33aを押さえている。その結果、押さえ側テープ33aは、スライダー35を境にして搬送方向Xの下流側部分、つまり直線部分33Sでは直線部分33Sに対して平行な状態で押さえられ、搬送方向Xの上流側部分、つまり一方の分岐部分33Tでは押さえ側テープ33aに対して傾斜する状態で押さえられている。
8)さらに押さえ部41が搬送方向Xへの移動を続けると、スライダー35が引張バネ68の復元力に逆らってエレメントガイド5の揺動端部を持ち上げつつ当該揺動端部の下を通過し、図2(b)に示すようにスライダー35が進路修正面72bに衝突してスライダー35の進路が修正され、前側に移動する。ちなみに押さえ側テープ33aが押さえ部41によってテーブル1の方に押し付けられて位置決めされているので、スライダー35の前側への移動に伴って、スライダー35の付近の部分において縫製側テープ33bの進路が修正され、押さえ側テープ33aの方に接近するように移動する。また縫製側テープ33bがその進路を修正されながら生地30に縫い合わされる。
9)さらに押さえ部41が搬送方向Xへの移動を続けると、図2(c)に示すようにスライダー35が進路修正面72bを通過し、進路修正済みのスライダー35が進路維持面72cに沿って移動し始め、縫製側テープ33bの分岐部分33Tも進路が修正される。
10)さらに押さえ部41が搬送方向Xへの移動を続けると、図2(d)に示すようにスライダー35が進路維持面72cに沿って移動し続け、縫製側テープ33bの分岐部分33Tの進路が修正された状態で、縫製側テープ33bと生地30とが縫い合わされる。
11)さらに押さえ部41が搬送方向Xへの移動を続けると、スライダー35が進路維持面72cを通過し、被縫製物3の後端が針21の真下を通過する。
12)所定時間経過後に押さえ部41の移動を停止する。またミシン2の縫製を停止し、ミシンフット7を初期位置に上昇させ、エレメントガイド5を待機位置P2に移動させる。
13)その後に押さえ部41を上昇させ、初期位置に移動させる。
14)その後に1)~13)を繰り返して別の被縫製物3が縫製される。
【0064】
上記した第一実施形態の縫製装置は、押さえ側テープ33aの上から被縫製物3を押さえて位置決めした状態でありながら、さらにエレメントガイド5を位置決め位置P1に配置することによってエレメント列34Lを位置決めできるので、被縫製物3の位置決めが十分になされた状態になり、その結果、押さえ側テープ33aのみを押さえて縫い合わせる縫製装置に比べれば、縫い合わされた縫製側テープ33bの形状が直線に近似した状態になる。
【0065】
また第一実施形態の縫製装置は、進路修正面72bが形成されたミシンフット7を備え、進路修正面72bを搬送方向Xの下流側に向かうにつれてエレメント列34Lの通路の方に接近するようにしてあるので、進路修正面72bに衝突することでスライダー35の進路が修正され、それに伴って縫製側テープ33bのうちスライダー35の付近の部分も進路が修正されることになり、進路修正面72bがないミシンフット7を備える縫製装置に比べれば、縫い合わされた縫製側テープ33bの形状と縫い目S1がスライダー35の付近を含めて直線に近似した状態になる。
【0066】
また第一実施形態の縫製装置は、進路修正面72bが平面視して円弧状に凹んでおり、円弧に沿ってスライダー35の進路が滑らかに修正されるので、縫い合わされた縫製側テープ33bの形状と縫い目S1がスライダー35の付近を含めて直線に近似した状態になる。
【0067】
また第一実施形態の縫製装置は、ミシンフット7が進路修正面72bに対して搬送方向Xの下流側に離れた位置に前側の針孔72hを備えるので、例えば進路修正面72bに対して平面視して搬送方向に直交する方向に離れた位置に針孔を備える縫製装置に比べると、エレメント列34Lに縫い目S1を近づけて形成することができる。
【0068】
また第一実施形態の縫製装置は、進路維持面72cが形成されたミシンフット7を備えており、進路維持面72cが搬送方向Xに一直線に延びるので、進路修正済みのスライダー35が進路維持面72cに沿って搬送されることになり、それに伴って縫製側テープ33bのうちスライダー35に対して搬送方向Xの上流側の部分、つまり分岐部分33Tも進路が修正されることになり、進路維持面72cがないミシンフット7を備える縫製装置に比べれば、縫い合わされた縫製側テープ33bの形状と縫い目S1がスライダー35の付近を含めて直線に近似した状態になる。
【0069】
また第一実施形態の縫製装置は、誘導面72aが形成されたミシンフット7を備えており、誘導面72aが搬送方向Xに一直線に延びるので、スライダー35が誘導面72aに沿って搬送されてから進路修正面72bに円滑に誘導されることになり、誘導面72aのないミシンフット7を備える縫製装置に比べれば、縫い合わされた縫製側テープ33bの形状と縫い目S1がスライダー35の付近を含めて直線に近似した状態になる。
【0070】
また第一実施形態の縫製装置は、エレメントガイド5がミシン2の針21に対して搬送方向Xの上流側で且つ誘導面72aの搬送方向Xの全長L1の範囲内に対応する位置でエレメント列34Lを位置決め可能なものなので、エレメントガイド5がスライダー35にできる限り近い位置までエレメント列34Lを位置決めした状態での縫製の終了後にエレメントガイド5を待機位置P2に変位させることによって、エレメントガイド5がエレメント列34Lを位置決めした状態での縫製の終了時と、ミシンフット7が進路修正面72bでのスライダー35の進路修正をした状態での縫製の開始時との時間差を短時間にでき、当該時間差が長い縫製装置に比べれば、縫い合わされた縫製側テープ33bの形状と縫い目S1がスライダー35の付近を含めて直線に近似した状態になる。。
【0071】
図6には本発明の第二実施形態の縫製装置で縫製された被縫製物3が示されている。本実施形態では被縫製物3には1本の縫い目S1が形成されている。つまり図示しないが、第二実施形態の縫製装置においてミシンには1本の針が取り付けられていたことになる。
【0072】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。たとえば揺動装置は、本実施形態では直線往復運動を揺動運動に変換したものであったが、本発明ではこれに限らず、モータを用い、時計回りと反時計回りに所定角度範囲で軸61を回転可能なものであっても良い。
【符号の説明】
【0073】
1 テーブル
2 ミシン
2a ミシン本体
21 針
22 ポスト部
23 ミシンヘッド部
23a 連結棒
23b 針棒
23c 固定具
3 被縫製物
30 生地
32 スライドファスナー
33a 押さえ側テープ
33b 縫製側テープ
33S 直線部分
33T 分岐部分
34 エレメント
34L エレメント列
35 スライダー
36 第1の止具
37 第2の止具
4 搬送装置
41 押さえ部
5 エレメントガイド
51 ガイドアーム
52 ガイド片
52a 傾斜面
52b 平行面
53 ガイド溝
6 ガイド変位装置
61 軸
62 揺動装置
63 シリンダ装置
63a ピストンロッド
63b シリンダ
63c ブラケット
64 変換装置
65 軸受部
65a ベースブロック
65b カラー
65d カラーフランジ部
65f フランジ
66 クランク
66a クランクピン
66b クランク腕
67 伝達ブロック
67a 段差面
68 引張バネ
7 ミシンフット
71 固定部
72 フット部
72a 誘導面
72b 進路修正面
72c 進路維持面
72h 針孔
L1 全長
P1 位置決め位置
P2 待機位置
S1 縫い目
X 搬送方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-06-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項3
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項3】
前記スライドファスナー(32)は、一対の前記テープ(33a,33b)がスライダー(35)を境にして直線状に延びる直線部分(33S)と二又に分岐する一対の分岐部分(33T)とを備え、前記直線部分(33S)が前記スライダー(35)に対して搬送方向(X)の下流側に位置する状態で搬送されるものであり、
前記被縫製物(3)の上面を押さえるミシンフット(7)を備え、
前記ミシンフット(7)は、前記エレメント列(34L)に対してその幅方向に対向する面に、前記スライダー(35)に衝突させて前記スライダー(35)の進路を修正する進路修正面(72b)を備え、
前記進路修正面(72b)は、搬送方向(X)の下流側に向かうにつれて前記エレメント列(34L)の通路の方に接近することを特徴とする請求項1に記載の縫製装置。