(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098600
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20230703BHJP
【FI】
H01G4/30 201D
H01G4/30 513
H01G4/30 516
H01G4/30 201C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163274
(22)【出願日】2022-10-11
(31)【優先権主張番号】10-2021-0189701
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジュン オー
(72)【発明者】
【氏名】キム、ビュン クン
(72)【発明者】
【氏名】オー、ユ ホン
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC01
5E001AC09
5E001AH01
5E001AJ01
5E082AB03
5E082BC38
5E082BC39
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082EE45
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5E082PP03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電極の切れ現象と電極の凝集現象を抑制し、信頼性の高い小型、高容量の積層セラミック電子部品を提供する。
【解決手段】積層セラミック電子部品は、誘電体層111及び誘電体層111と第1方向Xに交互に配置される内部電極(第1内部電極121、第2内部電極122)を含む本体と、本体に配置されて内部電極と連結される外部電極と、を含む。内部電極は、複数のNi結晶粒121a、122aを含み、Ni結晶粒の粒界にはNi及びInを含む複合層121b、122bが備えられる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層及び前記誘電体層と第1方向に交互に配置される内部電極を含む本体と、
前記本体に配置されて前記内部電極と連結される外部電極と、を含み、
前記内部電極は複数のNi結晶粒を含み、前記Ni結晶粒の粒界にはNi及びInを含む複合層が備えられる、積層セラミック電子部品。
【請求項2】
前記複合層は平均厚さが1~5nmである、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項3】
前記複合層は、少なくとも一つの前記Ni結晶粒を完全に取り囲んでいる形態である、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項4】
前記複合層は、Niに対するInの含量が0.1wt%以上である、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項5】
前記Ni結晶粒の粒界に含まれたInの含量は、前記Ni結晶粒内に含まれたInの含量より高い、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項6】
前記複合層は、Niに対するInの含量が0.1~2.5wt%である、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項7】
前記誘電体層と前記内部電極の界面から内部電極側の厚さ方向に3nm以内の領域及び前記Ni結晶粒の外郭線から3nm以内の領域におけるNiに対するInの含量が0.1~2.5wt%である、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項8】
前記複合層は、全含量を基準として、Inの含量が0.3~0.7wt%であり、Niの含量が43.7~66.9wt%である、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項9】
前記内部電極は、Inを含むコーティング層が表面に形成されたNi粉末又はInを合金の形態で含むNi粉末を含む内部電極用ペーストにより形成され、
前記Ni粉末に対するInの含量は0.1wt%以上である、請求項1から8のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミック電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層セラミック電子部品の一つである積層型キャパシタは、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン及び携帯電話など、様々な電子製品の印刷回路基板に装着されて電気を充電又は放電させる役割を果たすチップ型のコンデンサである。
【0003】
このような積層型キャパシタは、小型でありながらも高容量が保障され、実装が容易であるという利点により、様々な電子機器の部品として使用されることができる。近年、電子装置の部品が小型化するにつれて、積層型キャパシタの小型化及び高容量化に対する要求が増加している。
【0004】
積層型キャパシタの小型化及び高容量化のためには、内部電極及び誘電体層の厚さを薄く形成することができる技術が必要である。一般に、内部電極を薄く作製するためには、既存より微粒のメタルパウダーを使用しなければならない。なぜならば、薄く印刷された内部電極の厚さ方向に5~6個の微粒メタルパウダーが存在する場合にのみ収縮進行時の切れ現象を抑制することができるためである。
【0005】
しかし、既存よりも微粒のメタルパウダーを使用する必要がある場合、収縮開始温度が低温に移動するため、内部電極とセラミック層との収縮挙動の差が大きくなり、むしろ収縮過程で内部電極の凝集現象及び内部電極の切れ現象が激しくなるという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的の一つは、電極の切れ現象と電極の凝集現象を抑制し、信頼性の高い小型、高容量の積層セラミック電子部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は、誘電体層及び上記誘電体層と第1方向に交互に配置される内部電極を含む本体と、上記本体に配置されて上記内部電極と連結される外部電極と、を含み、上記内部電極は複数のNi結晶粒を含み、上記Ni結晶粒の粒界(Grain Boundary)にはNi及びInを含む複合層が備えられる、積層セラミック電子部品を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、内部電極が複数のNi結晶粒を含み、上記Ni結晶粒の粒界にNi及びInを含む複合層が備えられることにより、内部電極の凝集現象及び内部電極の切れ現象を抑制することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品を概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図1のI-I線に沿った断面を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品を製造するためのセラミックグリーンシートを示す図である。
【
図4】
図2のA領域を拡大して概略的に示す模式図である。
【
図5a】本発明の一実現例による積層セラミック電子部品の内部電極を撮影した写真及びNi結晶粒の粒界における成分分析を示すものである。
【
図5b】本発明の一実現例による積層セラミック電子部品の内部電極を撮影した写真及びNi結晶粒の粒界における成分分析を示すものである。
【
図5c】本発明の一実現例による積層セラミック電子部品の内部電極を撮影した写真及びNi結晶粒の粒界における成分分析を示すものである。
【
図5d】本発明の一実現例による積層セラミック電子部品の内部電極を撮影した写真及びNi結晶粒の粒界における成分分析を示すものである。
【
図6】積層セラミック電子部品の焼成条件を決定するEllinghamダイヤグラムを示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形することができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどは、より明確な説明のために誇張することができ、図面上の同じ符号で示される要素は同じ要素である。
【0011】
そして、図面において本発明を明確に説明するために説明と関係のない部分は省略し、複数の層及び領域を明確に表現するために厚さを拡大して示しており、同一の思想の範囲内の機能が同一である構成要素については同一の参照符号を使用して説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、これは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0012】
図面において、X方向は第1方向、L方向又は長さ方向と定義することができ、Y方向は第2方向、W方向又は幅方向と定義することができ、Z方向は第3方向、T方向又は厚さ方向と定義することができる。
【0013】
積層セラミック電子部品
図1は、本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品を概略的に示す斜視図であり、
図2は、
図1のI-I線に沿った断面を示す図であり、
図3は、本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品を製造するためのセラミックグリーンシートを示す図であり、
図4は、
図2のA領域を拡大して示す図であり、
図5aから
図5dは、本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品の内部電極及び誘電体層を撮影した写真である。
【0014】
以下では、
図1~
図5dを参照して、本発明の一側面による積層セラミック電子部品について詳細に説明する。本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品100は、
図1及び
図2に示すように、誘電体層111と交互に配置された内部電極121、122を含む本体110と、本体110に配置されて上記内部電極121、122と連結される外部電極131、132と、を含む。また、上記内部電極121、122は、
図4に示すように、複数のNi結晶粒121aを含み、上記Ni結晶粒の粒界(Grain Boundary)にはNi及びInを含む複合層121bが備えられる。
【0015】
上記本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されている。本体110の具体的な形状に特に限定はないが、図示のように本体110は六面体形状又はこれと類似の形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粉末の収縮により、本体110は完全な直線を有する六面体形状ではないが、実質的に六面体形状を有することができる。
【0016】
本体110は、厚さ方向(Z方向)に互いに対向する第1面1及び第2面2、上記第1面1及び第2面2と連結され、長さ方向(X方向)に互いに対向する第3面3及び第4面4、第1面1及び第2面2と連結され、第3面3及び第4面4と連結され、幅方向(Y方向)に互いに対向する第5面5及び第6面6を有することができる。
【0017】
本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であって、隣接する誘電体層111の間の境界は走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0018】
誘電体層111を形成する原料は、十分な静電容量が得られる限り特に限定されず、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)粉末であってもよい。誘電体層111を形成する材料は、チタン酸バリウム(BaTiO3)などのパウダーに、本発明の目的に応じて様々なセラミック添加剤、有機溶剤、可塑剤、結合剤、分散剤などを添加することができる。
【0019】
本体110の上部及び下部、すなわち、厚さ方向(Z方向)の両端部には、それぞれ内部電極が形成されていない誘電体層を積層して形成されるカバー層112を含むことができる。カバー層112は、外部衝撃に対してキャパシタの信頼性を保持する役割を果たすことができる。カバー層112の厚さは特に限定する必要はない。ただし、キャパシタ部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、カバー層112の厚さは20μm以下であってもよい。
【0020】
誘電体層111の厚さは特に限定する必要はない。ただし、本発明によると、誘電体層及び内部電極が極めて薄い場合でも効果的に電極の切れ及び凝集の増加を抑制することができるため、キャパシタ部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、誘電体層111の厚さは0.4μm以下であってもよい。このとき、上記誘電体層111の厚さは、上記第1内部電極121及び第2内部電極122の間に配置される誘電体層111の平均厚さを意味することができる。
【0021】
上記誘電体層111の平均厚さは、本体110の長さ及び厚さ方向の断面(L-T断面;
図2参照)を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)で画像をスキャンして測定することができる。
【0022】
例えば、本体110の幅方向(Y方向)の中央部で切断した長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)でスキャンした画像から抽出された任意の誘電体層について、長さ方向に等間隔の30個の地点でその厚さを測定して平均値を測定することができる。上記等間隔の30個の地点は、第1内部電極121及び第2内部電極122が互いに重なる領域を意味する容量形成部で測定することができる。
【0023】
次に、内部電極121、122は誘電体層111と交互に積層され、上記本体110は内部電極121、122と誘電体層111とを含む。第1内部電極121及び第2内部電極122は、本体110を構成する誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように交互に配置され、本体110の第3面3及び第4面4にそれぞれ露出することができる。このとき、第1内部電極121及び第2内部電極122は、中間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離されてもよい。
【0024】
図3を参照すると、本体110は、第1内部電極121が印刷されたセラミックグリーンシートaと第2内部電極122が印刷されたセラミックグリーンシートbとを交互に積層した後、焼成して形成することができる。
【0025】
図4を参照すると、内部電極121、122は複数のNi結晶粒121a、122aを含み、上記Ni結晶粒の粒界(Grain Boundary)にはNi及びInを含む複合層121b、122bが配置される。
【0026】
積層セラミック電子部品の超小型化に伴い、単位面積当たりの容量を増加させるために内部の誘電材料及び電極材料の薄層化がさらに求められている。誘電材料と内部電極材料が薄くなると、切れ現象が現れるが、特に内部電極の材料に主に現れる。これは、内部電極材料が誘電材料に比べて相対的に焼成温度が低いため現れる現象であって、薄い内部電極を作るために微粒のメタルパウダーを使用すればするほどその問題が深化する。
【0027】
ところで、一般に内部電極を薄く作製するためには、既存より微粒のメタルパウダーの使用が必要であるが、既存より微粒のメタルパウダーを使用する場合、収縮開始温度が低温に移動するため、内部電極と誘電体層との収縮挙動の差が大きくなり、むしろ収縮過程で内部電極の凝集現象及び内部電極の切れ現象が激しくなるという問題がある。
【0028】
このような問題点を解決するために、従来はSnを内部電極材料として使用する技術が研究されてきた。しかし、Snを内部電極材料として使用する場合には、確保可能な信頼性のレベルに限界があり、本発明者らはさらに高いレベルの信頼性を確保すべくNi結晶粒の粒界にInを含ませる研究を重ねた。
【0029】
一般に積層セラミック電子部品の焼成時には、Niの酸化を防止するために、
図6に示すEllingham Diagrams上の2Ni(s)+O
2(g)=2NiO(s)の基準よりやや高い程度の還元性雰囲気で(例えば、
図6中、酸素分圧は8.65×10
-9atm及び温度1150℃レベルの条件)行われる。
【0030】
しかし、本発明では、
図6に示すEllingham Diagrams上のSn(s)+O
2(g)=SnO
2(s)と、4/3In(s)+O
2(g)=2/3In
2O
3(g)との間の酸素分圧1.75×10
-11atm~2.95×10
-12atmを満たす強い還元性雰囲気で数十分間焼成を行う。これにより、還元されにくい物質であるInが酸化物の形態で誘電体層と内部電極の界面やNi結晶粒の粒界に存在するようになる。
【0031】
このとき、Ni結晶粒121a、122aはNi原子が規則的に配列して作られた多面体であることができ、Ni及びInを含む複合層121b、122bはNi結晶粒121a、122aを取り囲んでいる。すなわち、Ni及びInを含む複合層121b、122bが少なくとも一つの上記Ni結晶粒を完全に取り囲んでいる形態であることができる。
【0032】
上記Ni及びInを含む複合層121b、122bは、Ni結晶粒121a、122aが外部に成長することを抑制し、焼結温度の増加に伴うニッケルの表面積減少(球状化)を抑制して内部電極の切れ現像及び内部電極の凝集現象を改善する役割を果たすことができる。
【0033】
図5a~
図5dは、本発明の一実現例による積層セラミック電子部品について、透過型電子顕微鏡(TEM;Transmission Electron Microscope)及びエネルギー分散分光法(EDS;Energy Disperse X-Ray Spectrometer)を用いて、内部電極を撮影した写真及びNi結晶粒の粒界(Grain Boundary)における成分分析を示したものである。
【0034】
図5a~
図5dによると、本発明による積層セラミック電子部品の内部電極は、複数のNi結晶粒121a、122aを含み、上記Ni結晶粒の粒界にはNi及びInを含む複合層121b、122bが備えられることが確認できる。
【0035】
内部電極121、122の全長さに対する実際に内部電極が形成された部分の長さの比を内部電極の連結性Cと定義するとき、前述した粒界にNi及びInを含む複合層121b、122bはNi結晶粒121a、122aが外部に成長することを抑制し、焼結温度の増加に伴うニッケルの表面積減少(球状化)を抑制することにより、内部電極121が85%≦Cを満たすことができる。
【0036】
本発明の一実現例によると、上記複合層121b、122bは平均厚さが1~5nmであってもよい。上記複合層121b、122bの平均厚さが1nm未満の場合には、Ni結晶粒121a、122aが外部に成長すること及び焼結温度の増加に伴うニッケルの表面積減少(球状化)を十分に抑制することができない。これに対し、上記複合層121b、122bの平均厚さが5nm超である場合には、複合層121b、122bの厚さが均一でなく、Ni結晶粒121a、122aが外部に成長すること及び焼結温度の増加に伴うニッケルの表面積減少(球状化)を抑制する効果が低下する可能性がある。
【0037】
上記複合層の平均厚さは、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を走査電子顕微鏡(SEM)で画像をスキャンして測定することができる。例えば、本体110の幅W方向の中央部で切断した長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を走査電子顕微鏡(SEM)でスキャンした画像から抽出された任意の第1内部電極121及び第2内部電極122について、長さ方向に等間隔の30個の地点で各複合層の厚さを測定することができる。
【0038】
本発明の一実現例によると、複合層121b、122bは、Niに対するInの含量が0.1wt%以上(あるいは、0.1~2.5wt%)であってもよい。複合層121b、122b中のNiに対するInの含量が0.1wt%未満であると、焼結温度の増加に伴うニッケルの表面積減少の抑制効果が不足し、電極の切れ現象及び内部電極の凝集現象を改善する効果が僅かである可能性がある。一方、Ni結晶粒の粒界にIn成分が含まれることにより、前述した効果が発現するものであるため、その上限については別途に限定しなくてもよい。ただし、上記複合層121b、122b中にNiに対するInの含量が過剰であると、むしろ信頼性が低下することもあるため、その上限を2.5wt%とすることができる。
【0039】
本発明の一実現例によると、上記Ni結晶粒の粒界に含まれたInの含量は、上記Ni結晶粒内に含まれたInの含量より高くてもよい。前述したように、セラミック積層電子部品の製造過程中に、適切な還元性雰囲気で焼成することにより、Ni結晶粒の内部よりNi結晶粒の粒界にInがより高い含量で存在するようになる。このように、Ni結晶粒の粒界にInがより多く存在することで、焼結温度の増加に伴うニッケルの表面積減少の機能をより効果的に発現できるようになる。
【0040】
または、本発明の一実現例によると、上記誘電体層と上記内部電極の界面から内部電極側の厚さ方向に3nm以内の領域及び上記Ni結晶粒の外郭線から3nm以内の領域におけるNiに対するInの含量が0.1~2.5wt%であってもよい。あるいは、本発明の一実現例によると、上記複合層は、全含量を基準にして、Inの含量が0.3~0.7%であり、Niの含量が43.7~66.9%であってもよい。また、上記複合層は、Sn、Ba、Ti及びOからなる群から選択された1種以上の成分をさらに含んでもよい。
【0041】
一方、内部電極121、122の厚さは特に限定する必要はない。ただし、本発明によると、誘電体層及び内部電極が極めて薄い場合でも効果的に電極の切れ及び凝集の増加を抑制することができるため、キャパシタ部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために内部電極121、122の厚さは0.4μm以下であってもよい。このとき、上記内部電極121、122の厚さは、第1内部電極121及び第2内部電極122の平均厚さを意味することができる。上記第1内部電極121及び第2内部電極122の平均厚さは、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を走査電子顕微鏡(SEM)で画像をスキャンして測定することができる。
【0042】
例えば、本体110の幅W方向の中央部で切断した長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を走査電子顕微鏡(SEM)でスキャンした画像から抽出された任意の第1内部電極121及び第2内部電極122について、長さ方向に等間隔の30個の地点で各内部電極の厚さを測定して平均値を求めることにより、上記内部電極121、122の厚さを測定することができる。このとき、上記等間隔の30個の地点は、第1内部電極121及び第2内部電極122が互いに重なる領域を意味する容量形成部で測定することができる。
【0043】
本発明の一実現例によると、上記内部電極は、Inを含むコーティング層が表面に形成されたNi粉末又はInを合金の形態で含むNi粉末を含む内部電極用ペーストによって形成することができる。このとき、上記Ni粉末に対するInの含量は0.1wt%以上であってもよい。このように、Inを含むコーティング層が表面に形成されたNi粉末又はInを合金の形態で含むNi粉末を用いることにより、分散性とは関係なく焼結を遅延させることができる。
【0044】
外部電極131、132は本体110に配置され、内部電極121、122と連結される。
図2に示すように、第1内部電極121及び第2内部電極122とそれぞれ接続された第1外部電極131及び第2外部電極132を含むことができる。本実施形態では、キャパシタ部品100が2つの外部電極131、132を有する構造を説明しているが、外部電極131、132の個数や形状などは内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変更することができる。
【0045】
一方、外部電極131、132は、金属などのように電気伝導性を有するものであれば、如何なる物質を使用して形成されてもよく、電気的特性、構造的安定性などを考慮して具体的な物質が決定されてもよく、さらに、多層構造を有してもよい。
【0046】
例えば、外部電極131、132は、本体110に配置される電極層131a、132a及び電極層131a、132a上に形成されためっき層131b、132bを含むことができる。電極層131a、132aに対するより具体的な例を挙げると、電極層131a、132aは、導電性金属及びガラスを含む焼成電極であってもよく、導電性金属はCuであってもよい。また、電極層131a、132aは、複数の金属粒子及び導電性樹脂を含む樹脂系電極であってもよい。
【0047】
めっき層131b、132bに対するより具体的な例を挙げると、めっき層131b、132bは、Niめっき層又はSnめっき層であってもよく、電極層131a、132a上にNiめっき層及びSnめっき層が順次に形成された形態であってもよく、複数のNiめっき層及び/又は複数のSnめっき層を含んでもよい。
【0048】
積層セラミック電子部品のサイズは特に限定する必要はない。ただし、小型化及び高容量化を同時に達成するためには、誘電体層及び内部電極の厚さを薄くして積層数を増加させなければならないため、0402(0.4mm×0.2mm)サイズ以下の積層セラミック電子部品であるとき、本発明による電極の切れ及び凝集の増加を抑制する効果がより顕著になることができる。したがって、積層セラミック電子部品の長さは0.4mm以下であり、厚さは0.2mm以下であることができる。
【0049】
以下では、実施形態によって本発明をより具体的に説明する。ただし、下記の実施形態は、例示を通じて本発明を説明するためのものであり、本発明の権利範囲を限定するためのものではないことに留意する必要がある。本発明の権利範囲は、特許請求の範囲に記載された事項及びこれにより合理的に類推される事項によって決定されるものであるためである。
【0050】
(実施例)
内部電極用ペーストにNi粉末に対するInの含量を異ならせて、上記Ni結晶粒の粒界(Grain Boundary)におけるNiに対するInの含量が下記表1を満たす内部電極が含まれたサンプルチップを作製した。一方、上記サンプルチップの作製時には、10-9~10-10程度に酸素分圧の条件を精密に制御しながら、10分間焼成した。
【0051】
試験片No.1は内部電極用ペーストにInを添加しなかった場合を示す。このとき、上記Ni結晶粒の粒界(Grain Boundary)におけるNiに対するInの含量は、Ni結晶粒の粒界に該当する位置について、TEM及びEDSを用いて成分分析した結果を示した。
【0052】
各サンプルチップの容量、MTTF及び電極連結性を測定し、且つ内部電極にInが含まれていない試験片No.1の容量、MTTF及び電極連結性を基準値として他の試験番号は相対値を下記表1に記載した。容量はLCR meterを用いて1kHZ、AC0.5Vの条件で測定した。試験片No.1の容量を基準値1として他の試験片の相対値を記載した。
【0053】
MTTFは、各試験番号当たり400個のサンプルについて125℃、8Vの条件で高温負荷試験を実施して測定した。このとき、絶縁抵抗が10KΩ以下となった時間を故障時間とし、試験片No.1のMTTFを基準値1として他の試験片の相対値を記載した。
【0054】
電極連結性は、内部電極の全長さに対する実際に内部電極が形成された部分の長さの比と定義することができる。各実験例によるサンプルチップの本体を幅W方向の中央部で切断して、その長さ及び厚さ方向の断面(L-T断面)の画像をSEM(Scanning Eletron Microscope)でスキャンし、全ての内部電極について、全長さに対する実際に内部電極が形成された部分の長さを測定して導出される電極連結性の平均値を記載したものである。
【0055】
一方、
図2の「P1」領域を拡大した拡大図を
図7に示した。
図7は、内部電極の連結性の定義を示す図であって、
図7を参照して本実施形態における内部電極の連結性に関して説明する。
【0056】
図7を参照すると、内部電極のある一地点で測定された全体電極の長さをb、及び実際に電極が形成された部分の長さをそれぞれe1、e2、e3、e4と規定するとき、実際に電極が形成された部分の長さの和(e=e1+e2+e3+e4)を全体電極の長さbで除した値であるe/bで上記内部電極の連結性を表すことができる。
【0057】
前述の方法により、試験片No.1の電極連結性を基準値1として他の試験片の相対値を記載した。各試験片について、下記のような基準で判断し、表1に記載した。
O.K:No.1のMTTF基準値に対して相対値が大きい場合
N.G:No.1のMTTF基準値に対して相対値が小さい場合
【0058】
【表1】
X*:Ni及びInを含む複合層のNiに対するInの含量[wt%]
【0059】
上記表1の実験結果から分かるように、試験片No.1は、Ni結晶粒の粒界(Grain Boundary)にNi及びInを含む複合層が形成されていない場合を示す(すなわち、粒界にInが存在しない)。試験片No.1の場合、Ni結晶粒の粒界にNi及びInを含む複合層が形成されず、他の試験片No.2~8に比べて容量、MTFF及び電極連結性が劣っていることを確認した。
【0060】
一方、試験片No.2~8は、Ni結晶粒の粒界にNi及びInを含む複合層が形成された場合であって、上記複合層におけるNiに対するInの含量が0.1~2.5wt%を満たすことにより、容量、MTFF及び電極連結性が向上し、顕著な効果があることを確認した。
【0061】
特に、上記試験片No.2~8の場合、Ni及びInを含む複合層の平均厚さは1~5nmの範囲を満たした。このとき、上述した複合層の平均厚さの測定時には、試験片に対する長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を走査電子顕微鏡(SEM)で画像をスキャンした画像から抽出された任意の第1内部電極及び第2内部電極について、長さ方向に等間隔の30個の地点における各複合層の厚さの平均値を測定した。
【0062】
また、上記試験片No.2~8は、Ni結晶粒の粒界に含まれたInの含量が上記Ni結晶粒内に含まれたInの含量より高かった。また、誘電体層と内部電極の界面から内部電極側の厚さ方向に3nm以内の領域及び上記Ni結晶粒の外郭線から3nm以内の領域におけるNiに対するInの含量が0.1~2.5wt%を満たした。
【0063】
一方、試験片No.9は、Ni結晶粒の粒界に備えられたNi及びInを含む複合層におけるNiに対するInの含量が2.5wt%を超える場合であって、電極連結性は多少向上するが、静電容量及びMTFFが試験片No.1より低く、劣っていることを確認した。
【0064】
以上のように、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、上述した実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定するものとする。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で、当技術分野における通常の知識を有する者により様々な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属すると言える。
【符号の説明】
【0065】
100:積層セラミック電子部品
110:本体
111:誘電体層
112:カバー層
121:第1内部電極
122:第2内部電極
121a、122a:Ni結晶粒
121b、122b:Ni及びInを含む複合層
131、132:外部電極
131a、132a:電極層
131b、132b:めっき層