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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098615
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】ワイヤレス送電システムの送電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/12 20160101AFI20230703BHJP
   H02J 50/40 20160101ALI20230703BHJP
【FI】
H02J50/12
H02J50/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175351
(22)【出願日】2022-11-01
(62)【分割の表示】P 2022522799の分割
【原出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】522151813
【氏名又は名称】松本 洋和
(74)【代理人】
【識別番号】100142550
【弁理士】
【氏名又は名称】重泉 達志
(72)【発明者】
【氏名】松本 洋和
(57)【要約】
【課題】複数の送電コイルが用いられる場合に、従来よりも送電効率を向上することのできるワイヤレス送電システムの送電装置を提供する。
【解決手段】送電コイル11,12,13と受電コイル20との間でワイヤレス送電を行うワイヤレス送電システム1における送電装置2であって、複数の送電コイル11,12,13と、所定の電源30に接続され各送電コイル11,12,13へ電力を供給するインバータ回路40と、を備え、インバータ回路40は、各送電コイル11,12,13ごとに設けられ互いに並列接続された複数のレグ41,42,43を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電コイルと受電コイルとの間でワイヤレス送電を行うワイヤレス送電システムにおける送電装置であって、
1つの前記受電コイルに対して設けられた複数の前記送電コイルと、
所定の電源に接続され、互いに並列接続された複数のレグを有し、前記各送電コイルへ電力を供給するインバータ回路と、
前記各送電コイルとともに共振回路をなす力率補償回路と、を備え、
前記各送電コイルの一端側は、互いに接続され、
前記各送電コイルの一端側の接続部分は、前記インバータ回路における所定電圧の部分に接続され、
前記力率補償回路は、前記各送電コイルの一端側の接続部分と前記インバータ回路における前記所定電圧の部分との間に介在するインダクタ又はコンデンサを含むワイヤレス送電システムの送電装置。
【請求項2】
前記力率補償回路は、前記各送電コイルごとに設けられたコンデンサを含む請求項1に記載のワイヤレス送電システムの送電装置。
【請求項3】
少なくとも1つの変圧器を含み、前記各送電コイルの間の相互インダクタンスの差に基づいて当該相互インダクタンスを調整する相互インダクタンス補償回路を備えた請求項2に記載のワイヤレス送電システムの送電装置。
【請求項4】
前記インバータ回路の前記レグのスイッチング素子を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記インバータ回路の出力相電圧の比に応じて、前記各送電コイルの電流の比を制御する請求項3に記載のワイヤレス送電システムの送電装置。
【請求項5】
複数の前記送電コイルは、複数の送電グループのいずれかに割り当てられ、
前記インバータ回路からの電力が、前記各送電グループから選択された1つの前記送電コイルへ供給されるように、電力の供給先を切り替える切替回路を備えた請求項1に記載のワイヤレス送電システムの送電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電コイルと受電コイルとの間でワイヤレス送電を行うワイヤレス送電システムの送電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
同一平面に複数の送電コイルを並べて配置し、受電コイルの細やかな位置制御をせずに、ワイヤレス送電を行うワイヤレス送電システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のワイヤレス送電装置は、直列共振キャパシタおよび切り替え可能な複数の送信コイルを含む送信アンテナと、出力側が送信アンテナと接続されるインバータと、インバータを制御するコントローラと、を備え、コントローラが、所定の条件に基づいて、送電に使用する1つの送電コイルを決定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-78754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のワイヤレス送電システムでは、送電に使用する送電コイルが1つであるため、受電コイルの位置によっては、送電効率が低下してしまう。例えば、送電コイルがアレイ状に並べられている場合、受電コイルが各送電コイルの目地の上に位置してしまうと、送電効率が大きく低下してしまう。
【0005】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数の送電コイルが用いられる場合に、従来よりも送電効率を向上することのできるワイヤレス送電システムの送電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明では、
送電コイルと受電コイルとの間でワイヤレス送電を行うワイヤレス送電システムにおける送電装置であって、
複数の前記送電コイルと、
所定の電源に接続され、前記各送電コイルごとに設けられ互いに並列接続された複数のレグを有し、前記各送電コイルへ電力を供給するインバータ回路と、を備えたワイヤレス送電システムの送電装置が提供される。
【0007】
上記ワイヤレス送電システムの送電装置において、前記各送電コイルとともに共振回路をなす力率補償回路を備えることが好ましい。
【0008】
上記ワイヤレス送電システムの送電装置において、
前記各送電コイルの一端側は、互いに接続され、
前記各送電コイルの一端側の接続部分は、前記インバータ回路における所定電圧の部分に接続され、
前記力率補償回路は、前記各送電コイルの一端側の接続部分と前記インバータ回路における前記所定電圧の部分との間に介在し前記各送電コイルの間の相互インダクタンスに基づいてインダクタンス又はキャパシタンスが設定されたインダクタ又はコンデンサを含むことが好ましい。
【0009】
上記ワイヤレス送電システムの送電装置において、前記力率補償回路は、前記各送電コイルごとに設けられ前記各送電コイルの自己インダクタンス及び前記各送電コイルの間の相互インダクタンスに基づいてキャパシタンスが設定されたコンデンサを含むことが好ましい。
【0010】
上記ワイヤレス送電システムの送電装置において、前記各送電コイルの間の相互インダクタンスの差に基づいて、当該相互インダクタンスを調整する相互インダクタンス補償回路を備えることが好ましい。
【0011】
上記ワイヤレス送電システムの送電装置において、
前記各送電コイルの一端側は、互いに接続され、
前記各送電コイルの一端側の接続部分は、前記インバータ回路における所定電圧の部分に接続され、
前記力率補償回路は、前記各送電コイルの一端側の接続部分と前記インバータ回路における前記所定電圧の部分との間に介在し前記相互インダクタンス補償回路により調整された前記各送電コイルの間の相互インダクタンスに基づいてインダクタンス又はキャパシタンスが設定されることが好ましい。
【0012】
上記ワイヤレス送電システムの送電装置において、
前記力率補償回路は、前記各送電コイルの自己インダクタンスと、前記相互インダクタンス補償回路の自己インダクタンスと、前記相互インダクタンス補償回路により調整された前記各送電コイルの間の相互インダクタンスと、に基づいてキャパシタンスが設定され前記各送電コイルごとに設けられたコンデンサを含むことが好ましい。
【0013】
上記ワイヤレス送電システムの送電装置に
前記インバータ回路の前記レグのスイッチング素子を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記各送電コイルの電流の比が、前記各送電コイルと前記受電コイルの間の相互インダクタンスの比となるように、前記各送電コイルの電流を制御することが好ましい。
【0014】
また、本発明では、
送電コイルと受電コイルとの間でワイヤレス送電を行うワイヤレス送電システムにおける送電装置であって、
複数の送電グループのいずれかに割り当てられた複数の前記送電コイルと、
所定の電源に接続され、前記各送電グループごとに設けられ互いに並列接続された複数のレグを有し、前記各送電グループへ電力を供給するインバータ回路と、
前記インバータ回路からの電力が、前記各送電グループから選択された1つの前記送電コイルへ供給されるように、電力の供給先を切り替える切替回路と、を備えたワイヤレス送電システムの送電装置が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明のワイヤレス送電システムの送電装置によれば、複数の送電コイルが用いられる場合に、従来よりも送電効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態を示すワイヤレス送電システムの送電装置及び受電装置の回路図である。
図2】送電コイル及び受電コイルの平面説明図である。
図3】各レグのスイッチングのタイミングを示す説明図である。
図4】本発明の第2の実施形態を示す送電コイル及び受電コイルの平面説明図である。
図5】ワイヤレス送電システムの送電装置及び受電装置の回路図である。
図6】本発明の第3の実施形態を示す送電コイルの平面説明図である。
図7】ワイヤレス送電システムの送電装置及び受電装置の回路図である。
図8】本発明の第4の実施形態を示す送電コイルの平面説明図である。
図9】ワイヤレス送電システムの送電装置及び受電装置の回路図である。
図10】本発明の第5の実施形態を示す送電コイル及び受電コイルの平面説明図である。
図11】ワイヤレス送電システムの送電装置の回路図である。
図12】本発明の第6の実施形態を示す送電コイルの平面説明図である。
図13】ワイヤレス送電システムの送電装置の回路図である。
図14】本発明の第7の実施形態を示す送電コイルの平面説明図である。
図15】ワイヤレス送電システムの送電装置の回路図である。
図16】変形例を示す送電装置の回路図である。
図17】変形例を示す送電装置の回路図である。
図18】変形例を示す送電装置の回路図である。
図19】変形例を示す送電装置の回路図である。
図20】変形例を示す送電装置の回路図である。
図21】変形例を示す受電装置の回路図である。
図22】変形例を示す受電装置の回路図である。
図23】比較例を示す送電装置の回路図である。
図24】実施例と比較例の送電効率を示すシミュレーション結果である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1から図3は本発明の第1の実施形態を示すものであり、図1はワイレス送電システムの回路図、図2は送電コイル及び受電コイルの平面説明図、図3は各レグのスイッチングを示す説明図である。
【0018】
図1に示すように、このワイヤレス送電システム1は、複数の送電コイル11,12,13を有する送電装置2と、各送電コイル11,12,13とワイヤレス送電を行う受電コイル20を有する受電装置3と、を備えている。本実施形態においては、図2に示すように、所定厚さで平面視円形の3つの送電コイル11,12,13が、互いに重ならないように同一平面上で隣接して配置される。本実施形態においては、3つの送電コイル11,12,13は、同一のものが用いられる。送電装置2と受電装置3は、相対的に移動自在であり、受電コイル20が各送電コイル11,12,13に近接した状態でワイヤレス送電が可能となる。
【0019】
図1に示すように、送電装置2は、直流電源30に接続され、各送電コイル11,12,13へ電力を供給するインバータ回路40を備えている。インバータ回路40は、正負の母線間に、各送電コイル11,12,13ごとに設けられ互いに並列接続された複数のレグ41,42,43を有する。本実施形態においては、送電コイル11,12,13が3つであることから、これに対応してレグ41,42,43も3つである。各レグ41,42,43は、直流電源30の正側に接続される正側スイッチング素子41a,42a,43aと、負側に接続される負側スイッチング素子41b,42b,43bと、が直列に接続されている。各スイッチング素子41a,41b,42a,42b,43a,43bとして、例えば、IGBT、MOSFET、HEMT等のトランジスタを使用することができる。正側スイッチング素子41a,42a,43aと負側スイッチング素子41b,42b,43bの間に、各送電コイル11,12,13の他端と接続される正側ノード41c,42c,43cが設定される。
【0020】
また、インバータ回路40は、正負の母線間に、直列接続された正側コンデンサ51及び負側コンデンサ52を有する。正側コンデンサ51及び負側コンデンサ52は、直流電源30からの入力電圧を等分する。すなわち、直流電源30の入力電圧をEとしたとき、正側コンデンサ51及び負側コンデンサ52の間の電圧がE/2となるよう設計される。正側コンデンサ51と負側コンデンサ52の間に、各送電コイル11,12,13の一端と接続される負側ノード53が設定される。
【0021】
図1に示すように、各送電コイル11,12,13の一端は、互いに接続されている。本実施形態においては、いわゆるY結線であり、各送電コイル11,12,13の一端に結線ノード14が設定される。このように、各送電コイル11,12,13の一端は結線された状態で、インダクタ60を介して直流電源30の入力電圧の中間電圧に接続される。また、各送電コイル11,12,13の他端は、それぞれ共振コンデンサ61,62,63を介して各レグ41,42,43に接続される。本実施形態においては、インダクタ60及び各共振コンデンサ61,62,63が各送電コイル11,12,13とともに共振回路をなす力率補償回路70をなしている。
【0022】
インダクタ60は、各送電コイル11,12,13の間の相互インダクタンスに基づいてインダクタンスが設定されている。また、各共振コンデンサ61,62,63は、各送電コイル11,12,13の自己インダクタンス及び各送電コイル11,12,13の間の相互インダクタンスを考慮してキャパシタンスが設定される。
【0023】
具体的に、本実施形態においては、各送電コイル11,12,13の自己インダクタンスは互いに等しく、各送電コイル11,12,13間の相互インダクタンスも互いに等しい。ただし、各送電コイル11,12,13は、同方向に電流が流れた際に互いに磁界を弱め合うことから、相互インダクタンスの値はマイナスとなる。装置の動作角周波数をω、各送電コイル11,12,13の自己インダクタンスをL、各送電コイル11,12,13間の相互インダクタンスを-M(M>0)としたとき、各共振コンデンサ61,62,63のキャパシタンスC及びインダクタ60のインダクタンスLは、
=1/(ω(L+M))
=M
と設定される。
【0024】
また、図1に示すように、受電装置3は、受電コイル20と直列に接続される共振コンデンサ21及び負荷抵抗22を有している。負荷抵抗22には、送電装置2から送電された電力が供給される。受電装置3においては、共振コンデンサ21が受電側の力率補償回路をなしている。受電コイル20の自己インダクタンスをLとしたとき、共振コンデンサ21のキャパシタンスCは、
=1/(ω
と設定される。
【0025】
また、送電装置2は、各スイッチング素子41a,41b,42a,42b,43a,43bのスイッチ動作を制御する制御部80を有している。第1から第3の送電コイル11,12,13と受電コイル20の間の相互インダクタンスをMt1r,Mt2r,Mt3r、第1から第3の送電コイル11,12,13の電流をIt1,It2,It3としたとき、制御部80は、
t1r:Mt2r:Mt3r=It1:It2:It3
となるよう各スイッチング素子41a,41b,42a,42b,43a,43bを制御する。ここで、各送電コイル11,12,13の巻線抵抗が無視できる場合、インバータ回路40が出力する相電圧の比は、各送電コイル11,12,13と受電コイル20の間の相互インダクタンスMt1r,Mt2r,Mt3rの比に一致する。この場合、制御部80は、インバータ回路40の出力電圧の比に応じて、各送電コイル11,12,13の電流の比を制御すればよい。図3に示すように、制御部80は、相互インダクタンスMt1r,Mt2r,Mt3rが負となる場合は、正となるものに対して電流の位相を180°(π)だけずらすよう制御する。
【0026】
以上のように構成されたワイヤレス送電システム1の送電装置2によれば、ワイヤレス送電時に各送電コイル11,12,13へそれぞれ電流を流すようにしたので、1つの送電コイルを選択して電流を流す従来のものと比べて、送電効率を向上させることができる。特に、受電コイル20が各送電コイル11,12,13の隙間に位置する場合に、送電効率が大きく向上する。
【0027】
また、制御部80が、各送電コイル11,12,13の電流の比が、各送電コイル11,12,13と受電コイル20の間の相互インダクタンスの比となるように、各送電コイル11,12,13の電流を制御するようにしたので、送電効率が極めて高くなっている。さらに、1つのインバータ回路40により複数の送電コイル11,12,13へ電力を供給するようにしたので、複数の送電コイルに対応して複数のインバータ回路を設ける必要はなく、装置の小型化を図ることができる。
【0028】
また、各送電コイル11,12,13の一端側を、互いに接続した上で、インダクタ60を介して、電源電圧30の所定電圧の部分に接続したので、各送電コイル11,12,13の間の相互インダクタンスに対応して共振回路を構成することができる。また、各共振コンデンサ61,62,63を各送電コイルごと11,12,13に設けたので、各送電コイル11,12,13の自己インダクタンスに対応して共振回路を構成することができる。特に、本実施形態においては、C=1/(ω(L+M))、かつ、L=M(M>0)とすることにより、自己インダクタンス及び相互インダクタンスに起因するリアクタンス成分を打ち消すことができる。
【0029】
図4及び図5は本発明の第2の実施形態を示すものであり、図4は送電コイル及び受電コイルの平面説明図、図5はワイヤレス送電システムの送電装置及び受電装置の回路図である。
【0030】
本実施形態のワイヤレス送電システム101においては、図4に示すように、所定厚さで平面視四角形の2つの送電コイル111,112が、互いに重ならないように同一平面上で隣接して配置される。本実施形態においては、2つの送電コイル111,112は、同一のものが用いられる。また、受電装置103は、受電コイル120と、受電コイル120と直列に接続される共振コンデンサ121及び負荷抵抗122と、を有している。
【0031】
図5に示すように、送電装置102は、直流電源130に接続され、各送電コイル111,112へ電力を供給するインバータ回路140を備えている。インバータ回路140は、正負の母線間に、各送電コイル111,112ごとに設けられ互いに並列接続された2つのレグ141,142を有する。直列に接続された正側スイッチング素子141a,142aと負側スイッチング素子141b,142bの間に、各送電コイル111,112の他端と接続される正側ノード141c,142cが設定される。
【0032】
また、インバータ回路140は、正負の母線間に、正側コンデンサ151及び負側コンデンサ152を有する。正側コンデンサ151及び負側コンデンサ152は、直流電源130からの入力電圧を等分する。正側コンデンサ151と負側コンデンサ152の間に、各送電コイル111,112の一端と接続される負側ノード153が設定される。
【0033】
図5に示すように、各送電コイル111,112の一端は、互いに接続され、結線ノード114が設定されている。各送電コイル111,112の一端は結線された状態で、インダクタ160を介して直流電源130の入力電圧の中間電圧に接続される。また、各送電コイル111,112の他端は、それぞれ共振コンデンサ161,162を介して各レグ141,142に接続される。本実施形態においては、インダクタ160及び各共振コンデンサ161,162が各送電コイル111,112とともに共振回路をなす力率補償回路170をなしている。
【0034】
インダクタ160は、各送電コイル111,112の間の相互インダクタンスに基づいてインダクタンスが設定されている。また、各共振コンデンサ161,162は、各送電コイル111,112の自己インダクタンスと各送電コイル111,112の間の相互インダクタンスに基づいてキャパシタンスが設定されている。
【0035】
本実施形態においても、各送電コイル111,112の自己インダクタンスは互いに等しく、同方向に電流が流れた際に互いに磁界を弱め合うことから、各送電コイル111,112間の相互インダクタンスの値はマイナスとなる。装置の動作角周波数をω、各送電コイル111,112の自己インダクタンスをL、各送電コイル111,112間の相互インダクタンスを-Mとしたとき、各共振コンデンサ161,162のキャパシタンスC及びインダクタ160のインダクタンスLは、
=1/(ω(L+M))
=M(M>0)
と設定される。
【0036】
また、図5に示すように、受電装置103は、受電コイル120と直列に接続される共振コンデンサ121及び負荷抵抗122を有している。受電コイル120の自己インダクタンスをLとしたとき、共振コンデンサ121のキャパシタンスCは、
=1/(ω
と設定される。
【0037】
また、送電装置102は、各スイッチング素子141a,141b,142a,142bのスイッチ動作を制御する制御部180を有している。第1及び第2の送電コイル111,112と受電コイル120の間の相互インダクタンスをMt1r,Mt2r、第1及び第2の送電コイル111,112の電流をIt1,It2としたとき、制御部180は、
t1r:Mt2r=It1:It2
となるよう各スイッチング素子141a,141b,142a,142bを制御する。ここで、各送電コイル111,112の巻線抵抗が無視できる場合、インバータ回路140が出力する相電圧の比は、各送電コイル111,112と受電コイル120の間の相互インダクタンスMt1r,Mt2rの比に一致する。この場合、制御部180は、インバータ回路140の出力電圧の比に応じて、各送電コイル111,112の電流の比を制御すればよい。
【0038】
以上のように構成されたワイヤレス送電システム101の送電装置102によれば、ワイヤレス送電時に各送電コイル111,112へそれぞれ電流を流すようにしたので、1つの送電コイルを選択して電流を流す従来のものと比べて、送電効率を向上させることができる。特に、受電コイル120が各送電コイル111,112の中間に位置する場合に、送電効率が大きく向上する。
【0039】
また、制御部180が、各送電コイル111,112の電流の比が、各送電コイル111,112と受電コイル120の間の相互インダクタンスの比となるように、各送電コイル111,112の電流を制御するようにしたので、送電効率が極めて高くなっている。さらに、1つのインバータ回路140により複数の送電コイル111,112へ電力を供給するようにしたので、複数の送電コイルに対応して複数のインバータ回路を設ける必要はなく、装置の小型化を図ることができる。
【0040】
また、各送電コイル111,112一端側を、互いに接続した上で、インダクタ160を介して、電源電圧130の所定電圧の部分に接続したので、各送電コイル111,112の間の相互インダクタンスに対応して共振回路を構成することができる。また、各共振コンデンサ161,162を各送電コイルごと111,112に設けたので、各送電コイル111,112の自己インダクタンスに対応して共振回路を構成することができる。本実施形態においては、C=1/(ω(L+M))、かつ、L=M(M>0)とすることにより、自己インダクタンス及び相互インダクタンスに起因するリアクタンス成分を打ち消すことができる。
【0041】
図6及び図7は本発明の第3の実施形態を示すものであり、図6は送電コイルの平面説明図、図7はワイヤレス送電システムの送電装置及び受電装置の回路図である。
【0042】
本実施形態のワイヤレス送電システム201は、図6に示すように、第2の実施形態の各送電コイル111,112が一部重なり、同方向に電流が流れた際に互いに磁界を強め合うよう配置されている。すなわち、各送電コイル111,112間の相互インダクタンスの値はプラスである。また、本実施形態のワイヤレス送電システム201は、図7に示すように、第2の実施形態のインダクタ160に代えて、コンデンサ260が配置されている。その他は、第2の実施形態と同様の構成である。
【0043】
コンデンサ260は、各送電コイル111,112の間の相互インダクタンスに基づいてキャパシタンスが設定されている。各送電コイル111,112の自己インダクタンスをL、各送電コイル111,112間の相互インダクタンスをMとしたとき、各共振コンデンサ161,162のキャパシタンスC及びコンデンサ260のキャパシタンスCは、
=1/(ω(L-M))
=1/(ω
と設定される。
以上のように構成されたワイヤレス送電システム201によっても、第2の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0044】
図8及び図9は本発明の第4の実施形態を示すものであり、図8は送電コイルの平面説明図、図9はワイヤレス送電システムの送電装置及び受電装置の回路図である。
【0045】
本実施形態のワイヤレス送電システム301は、図8に示すように、第2の実施形態の隣接する各送電コイル111,112の並び方向に、さらにもう1つの送電コイル113が隣接して配置される。本実施形態においても、3つの送電コイル111,112,113は、同一のものが用いられる。すなわち、送電装置302の送電コイル111,112,113は、3つである。本実施形態においては、一端側の送電コイル111と中央側の送電コイル112と、中央側の送電コイル112と他端側の送電コイル113の間の相互インダクタンスは等しいものの、一端側の送電コイル111と他端側の送電コイル113の間の相互インダクタンスとは異なっている。
【0046】
図9に示すように、送電装置302のインバータ回路340は、正負の母線間に、各送電コイル111,112,113ごとに設けられた3つのレグ141,142,143を有する。直列に接続された正側スイッチング素子141a,142a,143aと負側スイッチング素子141b,142b,143bの間に、各送電コイル111,112,113の他端と接続される正側ノード141c,142c,143cが設定される。各送電コイル111,112,113の一端は、互いに接続され、結線ノード314が設定されている。各送電コイル111,112,113の一端は結線された状態で、インダクタ360を介して直流電源130の入力電圧の中間電圧に接続される。各送電コイル111,112,113の他端は、それぞれ共振コンデンサ361,362,363を介して各レグ141,142,143に接続される。本実施形態においては、インダクタ360及び各共振コンデンサ361,362,363が各送電コイル111,112,113とともに共振回路をなす力率補償回路370をなしている。
【0047】
さらに、本実施形態においては、各共振コンデンサ361,362,363と各レグ141,142,143の間に、変圧器391,392が介在する。本実施形態においては、一端側及び中央側の各送電コイル111,112に対応する変圧器391と、中央側及び他端側の各送電コイル112,113に対応する変圧器392の、2つの変圧器391,392が設けられる。各変圧器391,392は、その相互インダクタンスと各送電コイル111,112,113の間の相互インダクタンスの和が、互いに等しくなるようにする。すなわち、各変圧器391,392は、各送電コイル111,112,113の間の相互インダクタンスの差に基づいて、相互インダクタンスを調整する相互インダクタンス補償回路390をなしている。尚、相互インダクタンス補償回路390を、一端側及び他端側の各送電コイル111,113に対応する1つの変圧器により構成することもできる。
【0048】
本実施形態においては、インダクタ360のインダクタンスは、調整後の相互インダクタンスに基づいて設定される。また、相互インダクタンス補償回路390に自己インダクタンスがあることから、各共振コンデンサ361,362,363のキャパシタンスCt1,Ct2,Ct3は、各変圧器391,392の自己インダクタンスを考慮して設定される。具体的に、各送電コイル111,112,113における自己インダクタンスに各変圧器391,392の自己インダクタンスを足し合わせたものをL´t1,L´t2,L´t3,調整後の各送電コイル111,112,113間の相互インダクタンスを-M(M>0)としたとき、各共振コンデンサ361,362,363のキャパシタンスCt1,Ct2,Ct3及びインダクタ360のインダクタンスLは、
t1=1/(ω(L´t1+M)),Ct2=1/(ω(L´t2+M)),Ct3=1/(ω(L´t3+M))
=M
と設定される。
【0049】
また、制御部380は、各送電コイル111,112,113の電流の比が、各送電コイル111,112,113と受電コイル120の間の相互インダクタンスの比となるように、各送電コイル111,112,113の電流を制御する。
以上のように構成されたワイヤレス送電システム301によれば、第3の実施形態の作用効果に加え、相互インダクタンス補償回路390を設けたことにより、各送電コイル111,112,113の間の相互インダクタンスが互いに等しい場合と同様に各送電コイル111,112,113への電力供給を制御することができる。
【0050】
図10及び図11は本発明の第5の実施形態を示すものであり、図10は送電コイル及び受電コイルの平面説明図、図11はワイヤレス送電システムの送電装置の回路図である。尚、図11では、受電装置の回路図は省略している。尚、図11において、受電装置、受電コイル等を図示していないが、受電装置、受電コイル等は第2の実施形態と同様である。
【0051】
本実施形態のワイヤレス送電システムは、図10に示すように、第2の実施形態の2つの送電コイル111,112の並び方向と直交する方向に、さらに2つの送電コイル113,114を隣接して設けている。すなわち、送電装置402の送電コイル111,112,113,114は、4つである。本実施形態においては、4つの送電コイル111,112,113,114は、同一のものが用いられる。本実施形態においては、並び方向又はこれと直交する方向に隣接する送電コイル111,112,113,114の間の相互インダクタンスは等しいものの、いずれの方向にも隣接しない送電コイル111,112,113,114の間の相互インダクタンスとは異なっている。
【0052】
図11に示すように、送電装置402のインバータ回路440は、正負の母線間に、各送電コイル111,112,113,114ごとに設けられた4つのレグ141,142,143,144を有する。直列に接続された正側スイッチング素子141a,142a,143a,144aと負側スイッチング素子141b,142b,143b,144bの間に、各送電コイル111,112,113,114の他端と接続される正側ノード141c,142c,143c,144cが設定される。各送電コイル111,112,113,114の一端は、互いに接続され、結線ノード414が設定されている。各送電コイル111,112,113,114の一端は結線された状態で、インダクタ460を介して直流電源130の入力電圧の中間電圧に接続される。各送電コイル111,112,113,114の他端は、それぞれ共振コンデンサ461,462,463,464を介して各レグ141,142,143,144に接続される。本実施形態においては、インダクタ460及び各共振コンデンサ461,462,463,464が各送電コイル111,112,113,114とともに共振回路をなす力率補償回路470をなしている。
【0053】
さらに、本実施形態においては、各共振コンデンサ461,462,463,464と各レグ141,142,143,144の間に、各変圧器491,492が介在する。各変圧器491,492は、その相互インダクタンスと各送電コイル111,112,113,114の間の相互インダクタンスの和が、互いに等しくなるようにする。すなわち、各変圧器491,492は、各送電コイル111,112,113,114の間の相互インダクタンスの差に基づいて、相互インダクタンスを調整する相互インダクタンス補償回路490をなしている。第4の実施形態と同様に、インダクタ460のインダクタンスは、調整後の相互インダクタンスに基づいて設定され、各共振コンデンサ461,462,463,464のキャパシタンスは、調整後の自己インダクタンスを考慮して設定される。
【0054】
また、制御部480は、各送電コイル111,112,113,114の電流の比が、各送電コイル111,112,113,114と受電コイル120の間の相互インダクタンスの比となるように、各送電コイル111,112,113,114の電流を制御する。
以上のように構成されたワイヤレス送電システムによっても、第4の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0055】
図12及び図13は本発明の第6の実施形態を示すものであり、図12は送電コイルの平面説明図、図13はワイヤレス送電システムの送電装置の回路図である。尚、図12及び図13において、受電装置、受電コイル等を図示していないが、受電装置、受電コイル等は第1の実施形態と同様である。
【0056】
図12に示すように、このワイヤレス送電装置502では、複数の送電コイル511~519が、所定の平面上で横方向と斜め縦方向とに並んで整列している。本実施形態においては、各送電コイル511~519は、同一のものが用いられる。本実施形態においては、横方向と斜め縦方向のなす角は60°である。図13に示すように、送電装置502は、第1の実施形態と同様に3つのレグ41,42,43を有するインバータ回路40を備えている。各送電コイル511~519は、レグ41,42,43の数に対応して、3つの送電グループのいずかに割り当てられている。
【0057】
本実施形態においては、図12に示すように、各送電コイル511~519は、横方向につき、一方(図12中右方)へ向かって、第1の送電グループに属する送電コイル、第2の送電グループに属する送電コイル、第3の送電グループの順に繰り返し並べられている。また、各送電コイル511~519は、斜め縦方向につき、一方(図12中右上方向)へ向かって、第1の送電グループに属する送電コイル、第3の送電グループに属する送電コイル、第2の送電コイルに属する送電コイルの順に繰り返し並べられている。
【0058】
図13に示すように、ワイヤレス送電装置502のインバータ回路40の各レグ41,42,43は、各送電コイル511~519の他端と切替スイッチ581,582,583を介して接続される。各切替スイッチ581,582,583は、送電グループごとに設けられ、各送電グループに属する1つの送電コイル511~519へ選択的に電力を供給する。本実施形態においては、各切替スイッチ581,582,583が切替回路をなしている。制御部580は、受電コイルに関する情報に基づいて、各切替スイッチ581,582,583を切り替える。また、制御部580は、各送電コイル511~519の電流の比が、各送電511~519と受電コイルの間の相互インダクタンスの比となるように、各送電コイル511~519の電流を制御する。
【0059】
各送電コイル511~519の一端は、互いに接続された状態で、インダクタ560を介して直流電源30の入力電圧の中間電圧に接続される。各送電コイル511~519の他端と選択的に接続される各切替スイッチ581,582,583は、それぞれ共振コンデンサ561,562,563を介して各レグ41,42,43に接続される。本実施形態においては、インダクタ560及び各共振コンデンサ561,562,563が各送電コイル511~519とともに共振回路をなす力率補償回路570をなしている。
【0060】
本実施形態のワイヤレス送電装置502によれば、送電コイル511~519の数が多い場合であっても、インバータ回路40のレグの数を増やすことなく、全ての送電コイル511~519に対応することができる。
【0061】
図14及び図15は本発明の第7の実施形態を示すものであり、図14は送電コイルの平面説明図、図15はワイヤレス送電システムの送電装置の回路図である。尚、図14及び図15において、受電装置、受電コイル等を図示していないが、受電装置、受電コイル等は第1の実施形態と同様である。
【0062】
図14に示すように、このワイヤレス送電装置602では、複数の送電コイル611~619が、所定の平面上で横方向と縦方向とに並んで整列している。本実施形態においては、各送電コイル611~619は、同一のものが用いられる。図14に示すように、送電装置602は、4つのレグ41,42,43,44を有するインバータ回路640を備えている。各送電コイル611~619は、レグ41,42,43,44の数に対応して、4つの送電グループのいずかに割り当てられている。
【0063】
本実施形態においては、図14に示すように、各送電コイル611~619は、第1の送電グループに属する送電コイルに横方向に隣接して第2の送電グループに属する送電コイルが配置され、第1の送電グループに属する送電コイルに縦方向に隣接して第3の送電グループに属する送電コイルが配置され、第3の送電グループに属する送電コイルに横方向に隣接して第4の送電グループに属する送電コイルが配置されている。すなわち、横方向についてみると、第1及び第2の送電グループに属する送電コイルが交互に並べられる、もしくは、第3及び第4の送電グループに属する送電コイルが交互に並べられた状態となっている。また、縦方向についてみると、第1及び第3の送電グループに属する送電コイルが交互に並べられる、もしくは、第2及び第4の送電グループに属する送電コイルが交互に並べられた状態となっている。
【0064】
図15に示すように、ワイヤレス送電装置602のインバータ回路640の各レグ41,42,43,44は、各送電コイル611~619の他端と切替スイッチ681,682,683,684を介して接続される。各切替スイッチ681,682,683,684は、送電グループごとに設けられ、各送電グループに属する1つの送電コイル611~619へ選択的に電力を供給する。本実施形態においては、各切替スイッチ681,682,683,684が切替回路をなしている。制御部680は、受電コイルに関する情報に基づいて、各切替スイッチ681,682,683,684を切り替える。さらに、本実施形態においては、各切替スイッチ681,682,683,684と各レグ41,42,43,44の間に、各送電コイル611~619の間の相互インダクタンスの差に基づいて、相互インダクタンスを調整する相互インダクタンス補償回路690が介在する。また、制御部680は、各送電コイル611~619の電流の比が、各送電コイル611~619と受電コイルの間の相互インダクタンスの比となるように、各送電コイル611~619の電流を制御する。
【0065】
各送電コイル611~619の一端は、互いに接続された状態で、インダクタ660を介して直流電源30の入力電圧の中間電圧に接続される。各送電コイル611~619の他端と選択的に接続される各切替スイッチ681,682,683,684は、それぞれ共振コンデンサ661,662,663,664を介して各レグ41,42,43,44に接続される。本実施形態においては、インダクタ660及び各共振コンデンサ661,662,663,664が各送電コイル611~619とともに共振回路をなす力率補償回路670をなしている。
【0066】
本実施形態のワイヤレス送電装置602によっても、送電コイル611~619の数が多い場合であっても、インバータ回路640のレグの数を増やすことなく、全ての送電コイル611~619に対応することができる。
【0067】
尚、第6及び第7の実施形態では、インバータ回路のレグの数が3つ及び4つのものを示したが、レグの数は2つであってもよいし、5以上であってもよく、レグの数は任意に変更することができる。また、各共振コンデンサ661,662,663,664を各送電コイル611~619の他端側に設けたものを示したが、図16に示すように、各共振コンデンサ661,662,663,664を各送電コイル611~619の一端側に設けてもよい。ここで、各送電コイル611~619の自己インダクタンスが互いに異なる場合は、各送電コイル611~619毎に直列に共振コンデンサを設ければよい。
【0068】
また、前記各実施形態では、同一の送電コイルが複数設けられるものを示したが、例えば素線種類、材質、大きさ、巻き数、形状等が異なる等により、互いの自己インダクタンスが異なる送電コイルが複数設けられるものであってもよい。また、各送電コイルが、互いに同一平面上に位置するものを示したが、同一平面上に位置する必要はなく、さらに規則的に配置されている必要もなく、各送電コイル間の相互インダクタンスに規則性等がなくともよい。これらの場合における送電装置の回路図の例を図17に示す。図17の回路図は、各送電コイル1111,1112,1113、力率補償回路1370及び相互インダクタンス補償回路1390を除いて図9と同様である。
【0069】
図17の回路図における3つの送電コイル1111,1112,1113は、互いに異なる仕様であり、また同一平面上に配置されておらず、互いの距離も異なっている。図17の回路図では、各送電コイル1111,1112,1113の組合せにそれぞれ対応する3つの変圧器1391,1392,1393を含む相互インダクタンス補償回路1390が設けられている。また、図17の回路図では、各送電コイル1111,1112,1113に対応するインダクタ1360及び共振コンデンサ1361,1362,1363を含む力率補償回路1370が設けられている。
【0070】
ここで、第1から第3の送電コイル1111,1112,1113の電流及び自己インダクタンスをIt1,It2,It3,Lt1,Lt2,Lt3、各共振コンデンサ1361,1362,1363のキャパシタンスをCt1,Ct2,Ct3、第1及び第2の送電コイルに対応する変圧器1391の第1及び第2の送電コイル側の自己インダクタンス並びに相互インダクタンスをLc121,Lc122,Mc12、第2及び第3の送電コイルに対応する変圧器1392の第2及び第3の送電コイル側の自己インダクタンス並びに相互インダクタンスをLc232,Lc233,Mc23、第3及び第1の送電コイルに対応する変圧器1393の第3及び第1の送電コイル側の自己インダクタンス並びに相互インダクタンスをLc313,Lc311,Mc31、第1の送電コイルと第2の送電コイルの間の相互インダクタンスをMt12、第2の送電コイルと第3の送電コイルの間の相互インダクタンスをMt23、第3の送電コイルと第1の送電コイルの間の相互インダクタンスをMt31、インダクタ1360のインダクタンスをL、第1から第3の送電コイルと受電コイルの相互インダクタンスをMt1r,Mt2r,Mt3r、受電コイルの電流をIとし、第1から第3の送電コイル1111,1112,1113の巻線抵抗を無視したとき、インバータ回路340の出力相電圧Vt1,Vt2,Vt3は、次のように表される。
ここで、任意の実数M´に対して、
が成立するようにMc12,Mc23,Mc31を設定するとともに、L´t1,L´t2,L´t3
とすると、(1)-(3)式は、
となる。これを整理すると、
となる。そして、Ct1,Ct2,Ct3を、
とし、M´が負の場合に、
とすることで、インバータ回路340の出力相電圧Vt1,Vt2,Vt3は、
となる。すなわち、各送電コイルの自己インダクタンス及び相互インダクタンスに起因するリアクタンス成分が打ち消されている。尚、M´が正の場合は、インダクタ1360に代えてキャパシタンスCが、
となるキャパシタとすることにより、(20)-(22)式を得ることができる。
また、図17の回路図においても、制御部380は、
t1r:Mt2r:Mt3r=It1:It2:It3
となるよう各スイッチング素子141a,141b,142a,142b,143a,143bを制御する。式(20)-(22)から理解されるように、インバータ回路340の出力相電圧Vt1,Vt2,Vt3の比は、各送電コイルと受電コイルの相互インダクタンスMt1r,Mt2r,Mt3rの比に一致する。従って、制御部380は、インバータ回路340の出力相電圧の比に応じて、各送電コイルの電流の比を制御すればよい。
尚、巻線抵抗が無視できない場合、各送電コイルの抵抗値をrt1,rt2,rt3とすると、インバータ回路340の出力相電圧Vt1,Vt2,Vt3は、
で表される。従って、各送電コイルの抵抗値rt1,rt2,rt3に関する情報を予め測定等により取得しておき、インバータ回路340の出力相電圧及び電流の値から相互インダクタンスの比を求めればよい。
【0071】
また、前記各実施形態では、インバータ回路が直流電源に接続されるものを示したが、例えば図18に示すようにインバータ回路1040が交流電源1030に接続されるものであってもよく、細部の回路構成は任意に変更することができる。図18の回路図は、図1の回路図に対し、直流電源30に代えて交流電源1030を設けた点、正側コンデンサ51及び負側コンデンサ52に代えて第1回路1051及び第2回路1052を設けた点が異なっている。第1回路1051は、例えばダイオード整流回路、AC-DCコンバータ等であり、交流電源1030からの入力により直流電圧を出力する。第2回路1054は、例えばダイオード整流回路、AC-DCコンバータ、DC-DCコンバータ、バランサ付き直列コンデンサ等であり、その入力端子は正負の母線もしくは別途直流電源や交流電源に接続され、その出力端子は各送電コイル11,12,13の一端と接続され、各送電コイル11,12,13側が所定電圧となるよう設計される。この所定電圧は任意に設定することができ、交流電源1030の入力電圧をEとしたとき、所定電圧をE/2とすることができることは勿論、所定電圧を0、あるいは、Eとすることもできる。
【0072】
また、前記各実施形態においては、送電装置の力率補償回路の各共振コンデンサが各送電コイルと直列に接続されて直列共振回路をなすものを示したが、各共振コンデンサと各送電コイルが並列に接続されて並列共振回路をなすものであってもよいし、図19に示すようにLCL共振回路をなすものでもあってもよく、力率補償回路の構成は任意に変更できる。図19の送電装置702の力率補償回路770では、各送電コイル11,12,13の他端が、それぞれ共振インダクタ761,762,763を介して各レグ41,42,43に接続されるとともに、共振コンデンサ764,765,766を介して入力電圧の中間電圧に接続されている。
【0073】
また、前記各実施形態においては、送電装置のリアクタンス成分がゼロとなるように各共振コンデンサのキャパシタンスを設定し、比較的低い入力電圧で電力を送電できるものを示したが、例えば、図20に示すように、各スイッチング素子41a,41b,42a,42b,43a,43bと並列にコンデンサ41d,41e,42d,42e,43d,43eを接続し、インバータ40の出力インピーダンスが遅れ力率となるよう各共振コンデンサ61,62,63のキャパシタンスを設定することで、インバータ40の動作をソフトスイッチングとして、送電効率を改善するようにすることもできる。さらに、コンデンサ41d,41e,42d,42e,43d,43eでなく各スイッチング素子41a,41b,42a,42b,43a,43bの寄生キャパシタンスを利用して、インバータ40の出力インピーダンスが遅れ力率となるよう各共振コンデンサ61,62,63のキャパシタンスを設定することもできる。
【0074】
また、前記各実施形態においては、受電装置の力率補償回路の共振コンデンサが受電コイルと直列に接続されて直列共振回路をなすものを示したが、図21に示すように各共振コンデンサと各送電コイルが並列に接続されて並列共振回路をなすものであってもよいし、図22に示すようにLCL共振回路をなすものでもあってもよく、力率補償回路の構成は任意に変更できる。図21の受電装置803では、出力回路822に対し、受電コイル20及び共振コンデンサ821が並列に接続されている。また、図22の受電装置903では、出力回路923に対し、受電コイル20及び共振コンデンサ921が並列に接続されるとともに、受電コイル20の一端と出力回路923の間に共振インダクタ922が設けられている。出力回路822,923は、例えば、交流負荷、整流器又はADコンバータを介した直流負荷等とすることができる。
【0075】
ここで、第1の実施形態の送電装置2を実施例とし、従来の構成の送電装置を比較例とし、送電効率をシミュレーションにより比較した。図23は比較例を示す送電装置の回路図、図24は実施例と比較例の送電効率を示すシミュレーション結果である。
【0076】
図23に示すように、比較例の送電装置では、第1の実施形態と同様に配置された送電コイル11,12,13のいずれかに、1つのインバータ回路から電力が供給されるようにした。
図24に示すように、実施例の送電装置では、比較例の送電装置に対し、送電可能な受電コイル20の領域が拡大するとともに送電効率が向上した。特に、受電コイル20が各送電コイル11,12,13の目地の部分に位置するときに、送電効率が飛躍的に向上した。
【0077】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0078】
1 ワイヤレス送電システム
2 送電装置
3 受電装置
11 送電コイル
12 送電コイル
13 送電コイル
20 受電コイル
30 直流電源
40 インバータ回路
41 レグ
42 レグ
43 レグ
44 レグ
60 インダクタ
61 共振コンデンサ
62 共振コンデンサ
63 共振コンデンサ
70 力率補償回路
80 制御部
101 ワイヤレス送電システム
102 送電装置
103 受電装置
111 送電コイル
112 送電コイル
113 送電コイル
114 送電コイル
120 受電コイル
130 直流電源
140 インバータ回路
141 レグ
142 レグ
143 レグ
144 レグ
160 インダクタ
161 共振コンデンサ
162 共振コンデンサ
170 力率補償回路
180 制御部
201 ワイヤレス送電システム
202 送電装置
260 コンデンサ
270 力率補償回路
301 ワイヤレス送電システム
302 送電装置
340 インバータ回路
360 インダクタ
361 共振コンデンサ
362 共振コンデンサ
363 共振コンデンサ
370 力率補償回路
380 制御部
390 相互インダクタンス補償回路
391 変圧器
392 変圧器
402 送電装置
440 インバータ回路
460 インダクタ
461 共振コンデンサ
462 共振コンデンサ
463 共振コンデンサ
464 共振コンデンサ
470 力率補償回路
480 制御部
490 相互インダクタンス補償回路
491 変圧器
492 変圧器
502 送電装置
511 送電コイル
512 送電コイル
513 送電コイル
514 送電コイル
515 送電コイル
516 送電コイル
517 送電コイル
518 送電コイル
519 送電コイル
560 インダクタ
561 共振コンデンサ
562 共振コンデンサ
563 共振コンデンサ
570 力率補償回路
580 制御部
581 切替スイッチ
582 切替スイッチ
583 切替スイッチ
602 送電装置
611 送電コイル
612 送電コイル
613 送電コイル
614 送電コイル
615 送電コイル
616 送電コイル
617 送電コイル
618 送電コイル
619 送電コイル
640 インバータ回路
660 インダクタ
661 共振コンデンサ
662 共振コンデンサ
663 共振コンデンサ
664 共振コンデンサ
670 力率補償回路
680 制御部
681 切替スイッチ
682 切替スイッチ
683 切替スイッチ
684 切替スイッチ
690 相互インダクタンス補償回路
702 送電装置
761 共振インダクタ
762 共振インダクタ
763 共振インダクタ
764 共振コンデンサ
765 共振コンデンサ
766 共振コンデンサ
770 力率補償回路
803 受電装置
821 共振コンデンサ
822 出力回路
903 受電装置
921 共振コンデンサ
922 共振インダクタ
923 出力回路
1111 送電コイル
1112 送電コイル
1113 送電コイル
1360 インダクタ
1361 共振コンデンサ
1362 共振コンデンサ
1363 共振コンデンサ
1370 力率補償回路
1390 相互インダクタンス補償回路
1391 変圧器
1392 変圧器
1393 変圧器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
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図19
図20
図21
図22
図23
図24