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特開2023-98627計時器又は宝飾品のための外側部品の要素及びその製造方法
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  • 特開-計時器又は宝飾品のための外側部品の要素及びその製造方法 図1
  • 特開-計時器又は宝飾品のための外側部品の要素及びその製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098627
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】計時器又は宝飾品のための外側部品の要素及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A44C 25/00 20060101AFI20230703BHJP
   G04B 45/00 20060101ALI20230703BHJP
   G04B 37/22 20060101ALI20230703BHJP
   G04B 37/18 20060101ALI20230703BHJP
   B44C 1/26 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
A44C25/00 Z
G04B45/00 D
G04B37/22 Z
G04B37/18 Z
B44C1/26
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022188097
(22)【出願日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】21217928.7
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】22201436.7
(32)【優先日】2022-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】504341564
【氏名又は名称】モントレー ブレゲ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ポリクロニス ナキス・カラパティス
(72)【発明者】
【氏名】ルシアン・ジェルモン
(72)【発明者】
【氏名】アドリアン・シャピュイ
【テーマコード(参考)】
3B114
【Fターム(参考)】
3B114AA01
3B114AA11
3B114CC03
3B114JA00
(57)【要約】
【課題】 機械的耐性と審美性が優れた材料によって作られた計時器又は宝飾品のための外側部品の要素を提供する。
【解決手段】 本発明は、繊維強化ポリマーマトリックス複合材料を用いて作られた計時器又は宝飾品のための外側部品の要素又はコンポーネントに関し、この外側部品の要素又はコンポーネントには、その面(2)の少なくとも1つに、金属性ガラスによって作られたインサート(6)を収容する少なくとも1つの空欠部(4)がある。本発明は、さらに、このような外側部品の要素を製造する方法に関する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化ポリマーマトリックス複合材料を用いて作られた計時器又は宝飾品のための外側部品の要素又はコンポーネントであって、
この外側部品の要素又はコンポーネントには、その面(2)の少なくとも1つに、金属性ガラスによって作られたインサート(6)を収容する少なくとも1つの空欠部(4)がある
ことを特徴とする外側部品の要素又はコンポーネント。
【請求項2】
前記マトリックスを形成するために用いられるポリマー材料は、熱可塑性又は熱硬化性である
ことを特徴とする請求項1に記載の外側部品の要素又はコンポーネント。
【請求項3】
前記ポリマー材料は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、及びポリアミドイミド(PAI)からなる群から選択される
ことを特徴とする請求項2に記載の外側部品の要素又はコンポーネント。
【請求項4】
前記ポリマーマトリックスを強化する前記繊維は、ガラス繊維、炭素繊維、及びアラミド繊維からなる群から選択される
ことを特徴とする請求項2に記載の外側部品の要素又はコンポーネント。
【請求項5】
前記ポリマーマトリックスを強化する前記繊維は、ガラス繊維、炭素繊維、及びアラミド繊維からなる群から選択される
ことを特徴とする請求項3に記載の外側部品の要素又はコンポーネント。
【請求項6】
前記複合材料は、±10%の範囲内で35%のPEEKポリマーと65%の炭素繊維を含む
ことを特徴とする請求項5に記載の外側部品の要素。
【請求項7】
前記インサートを作るために用いる前記金属性ガラスは、バルク金属性ガラス(BMG)タイプのものである
ことを特徴とする請求項1に記載の外側部品の要素又はコンポーネント。
【請求項8】
前記インサートに用いられる前記金属性ガラスは、ジルコニウム又は白金を含む
ことを特徴とする請求項7に記載の外側部品の要素又はコンポーネント。
【請求項9】
前記インサートを作るために用いられる前記金属性ガラスは、不可避の不純物を除けば、ジルコニウム、銅、ニッケル、アルミニウム、ニオブ、及び/又はチタンの合金に由来する
ことを特徴とする請求項8に記載の外側部品の要素又はコンポーネント。
【請求項10】
前記インサートを作るために用いられる前記金属性ガラスは、ジルコニウム、銅、チタン、ニッケル、アルミニウム及びニオブを、重量%で、60≦Zr≦75、10≦Cu≦20、0≦Ti≦6、7≦Ni≦15、0≦Al≦8、0≦Nb≦6の量含む
ことを特徴とする請求項9に記載の外側部品の要素又はコンポーネント。
【請求項11】
前記インサートを作るために用いられる前記金属性ガラスは、重量%で、組成がZr70Cu13Ni9.9Al3.65Nb3.4の合金、又は組成がZr65.7Cu15.6Ni11.7Al3.7Ti3.3の合金である
ことを特徴とする請求項10に記載の外側部品の要素又はコンポーネント。
【請求項12】
前記インサートを作るために用いられる前記金属性ガラスは、白金、銅、ニッケル及びリンを、重量%で、80≦Pt≦90、5≦Cu≦10、1≦Ni≦3、4≦P≦7の量含む
ことを特徴とする請求項8に記載の外側部品の要素又はコンポーネント。
【請求項13】
前記インサートを作るために用いられる前記金属性ガラスは、重量%で、Pt85Cu7Ni2.3P5.7の組成である
ことを特徴とする請求項12に記載の外側部品の要素又はコンポーネント。
【請求項14】
前記インサートを作るために用いられる前記金属性ガラスは、ガラス転移温度が350℃以下である
ことを特徴とする請求項7に記載の外側部品の要素又はコンポーネント。
【請求項15】
計時器又は宝飾品のための前記外側部品は、裏部、ミドル部、ベゼル(1)、ブレスレットリンク、又はクラスプである
ことを特徴とする請求項1に記載の外側部品の要素又はコンポーネント。
【請求項16】
計時器又は宝飾品のための外側部品の要素又はコンポーネントを製造する方法であって、
繊維強化ポリマーマトリックス複合材料を用いて外側部品の要素又はコンポーネントを作るステップと、
前記外側部品の要素又はコンポーネントの面(2)の少なくとも1つを加工して少なくとも1つの空欠部(4)を形成するステップと、
金属性ガラスをその融点まで加熱するステップと、
前記少なくとも1つの空欠部(4)に金属性ガラスを注入充填してインサート(6)を形成するステップと、
必要に応じて仕上げ作業を行うステップと、を備える
ことを特徴とする方法。
【請求項17】
前記空欠部は、フライス加工によって形成する
ことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記仕上げ作業は、余分な材料の除去、研磨、及び/又は前記インサート(6)のトリミングを伴う
ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記空欠部(4)には、5~10°であるアンダーカット角(α)がある
ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計時器又は宝飾品のための外側部品の要素に関する。本発明は、さらに、このような外側部品の要素を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
裏部、ミドル部、ベゼル、ブレスレットリンクのような計時器又は宝飾品のための外側部品の要素を製造する方法が、すでに数多く提案されている。これらの既知の製造方法のうち、ポリマーマトリックス中に繊維を分散させて得られる複合材料を用いてこのような外側部品の要素を製造する方法がある。このような複合材料の例として、炭素繊維をポリマーマトリックス中にて分散させるものがあり、炭素繊維強化ポリマー(Carbon Fibre Reinforced Polymer:CFRP)としても知られている。
【0003】
複合材料を用いて作られた、計時器又は宝飾品のための外側部品の要素が、使用時に、外部からの攻撃に対する機械的耐性が高くないことと、輝度が低いこと、である2つの大きな課題の影響を受けることが多いことが確認されている。実際に、炭素繊維が分散したポリマーマトリックスは、比較的柔らかく、傷がつきやすいことがわかっている。このため、このような複合材料を用いて装飾や起伏を作る手法では、技術的に長い寿命を期待することができないことがわかっている。また、炭素繊維強化ポリマーマトリックスタイプの複合材料を用いて得た外側部品の要素は、マット的な外観を有し、このために、高級な携行型時計(例、腕時計、懐中時計)の外側部品のためにこのような外側部品の要素を用いることは考えにくい。
【0004】
これらの問題を改善するために、代替的手法がすでに提案されている。ベゼルやリュウズタイプの制御機構や押し部品のような外部からの攻撃を非常に多く受ける外側部品の要素を作るために、金属やセラミックス材料が用いられている。この他、金属性マトリックスや繊維強化タイプの複合材料も用いられている。また、最近、セラミックス補強材と金属性マトリックスによって構成する、サーメットと一般的に呼ばれる複合材料を用いて、計時器又は宝飾品のための外側部品の要素を作ることも提案されている。
【0005】
金属マトリックスと繊維を含む複合材料、セラミックスによって強化された複合材料の使用のおかげで、外側部品の要素の機械的耐性という点において進歩が見られているが、得られる外側部品の要素は、その装飾又は起伏の機械的耐性に関して、携行型時計及び宝飾品の分野における必要条件をまだ十分に満たしていない。実際に、これらの外側部品の要素に装飾や起伏を形成するために通常用いられる技術は、物理的気相成長法(PVD)と電鋳を組み合わせており、非常に薄い層しか得ることができない。この結果、このような薄い層が金属性であるために外観に光沢はあっても、厚みは非常に小さく、このような薄い層の摩擦や摩耗に対する機械的耐性は高くない。
【0006】
例えば、欧州特許出願EP2315673A1に、腕時計のベゼルなどを装飾するための別の技術が提案されている。簡潔に説明すると、この技術は、セラミックスなどによって作られたベゼルの面に凹部を形成して、この凹部がタイムインデックスなどを受ける。そして、アモルファス金属によって作られた環状のフランジをベゼルの面に堆積させる。次に、このアモルファス金属フランジをそのガラス転移温度Tgよりも高い温度まで加熱し、アモルファス金属が凹部に入り込むように加圧する。その後に、アモルファス金属を冷却し、余分な材料を除去する。
【0007】
この技術のおかげで、機械的応力や摩耗に強い固体の装飾が形成された、計時器のための外側部品の要素が得られる。しかし、この技術には、アモルファス金属フランジを用意し、加熱し、加圧し、冷却し、最後に外側部品の要素の面における余分なアモルファス金属を除去する必要があり、実行に時間がかかり、コストが高くなってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、特に機械的耐性と審美性に関係する、携行型時計又は宝飾品の分野において求められる必要条件、を完全に満たす材料によって作られた、計時器又は宝飾品のための外側部品の要素を提供することによって、上記の課題及びその他の課題を改善することを目的とする。本発明は、さらに、このような外側部品の要素を製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような状況に鑑みて、本発明は、繊維強化ポリマーマトリックス複合材料を用いて作られた計時器又は宝飾品のための外側部品の要素又はコンポーネントに関し、この外側部品の要素又はコンポーネントには、その面の少なくとも1つに、金属性ガラスによって作られたインサートを収容する少なくとも1つの空欠部がある。
【0010】
本発明の特別な実施形態において、前記マトリックスを形成するために用いられるポリマー材料は、熱可塑性又は熱硬化性である。
【0011】
本発明の別の特別な実施形態において、前記ポリマー材料は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びポリアミドイミド(PAI)からなる群から選択される。
【0012】
本発明の別の特別な実施形態において、前記ポリマーマトリックスを強化する前記繊維は、ガラス繊維、炭素繊維、及びアラミド繊維からなる群から選択される。
【0013】
本発明の別の特別な実施形態において、前記インサートを作るために用いる前記金属性ガラスは、バルク金属性ガラスタイプ(BMG)のものである。
【0014】
本発明の別の特別な実施形態において、前記インサートに用いられる前記金属性ガラスは、ジルコニウム又は白金を含む。
【0015】
本発明のさらに特別な実施形態において、前記インサートを作るために用いられる前記金属性ガラスは、不可避の不純物を除けば、ジルコニウム、銅、チタン、ニッケル、アルミニウム、ニオブ、及びチタンの合金に由来する。
【0016】
本発明の別の特別な実施形態において、前記インサートを作るために用いられる前記金属性ガラスは、ジルコニウム、銅、チタン、ニッケル、アルミニウム及びニオブを、重量%で、60≦Zr≦75、10≦Cu≦20、0≦Ti≦6、7≦Ni≦15、0≦Al≦8、0≦Nb≦6の量含む。
【0017】
本発明の別の実施形態において、前記インサートを作るために用いられる前記金属性ガラスは、重量%で、組成がZr70Cu13Ni9.9Al3.65Nb3.4の合金Vit106a、又は組成がZr65.7Cu15.6Ni11.7Al3.7Ti3.3の合金Vit105である。
【0018】
本発明のさらに特別な実施形態において、前記インサートを作るために用いられる前記金属性ガラスは、不可避の不純物を除けば、白金、銅、ニッケル及びリンの合金に由来する。
【0019】
本発明の別の特別な実施形態において、前記インサートを作るために用いられる前記金属性ガラスは、白金、銅、ニッケル及びリンを、重量%で、80≦Pt≦90、5≦Cu≦10、1≦Ni≦3、4≦P≦7の量含む。
【0020】
本発明の別の特別な実施形態において、前記インサートを作るために用いられる前記金属性ガラスは、重量%で、Pt85Cu7Ni2.3P5.7の組成である。
【0021】
本発明の別の特別な実施形態において、前記インサートを作るために用いられる前記金属性ガラスは、ガラス転移温度が350℃以下である。
【0022】
本発明の別の特別な実施形態において、計時器又は宝飾品のための前記外側部品は、裏部、ミドル部、ベゼル、ブレスレットリンク、又はクラスプである。
【0023】
本発明は、さらに、計時器又は宝飾品のための外側部品の要素又はコンポーネントを製造する方法に関し、
繊維強化ポリマーマトリックス複合材料を用いて外側部品の要素を作るステップと、
前記外側部品の要素又はコンポーネントの面の少なくとも1つを加工して少なくとも1つの空欠部を形成するステップと、
金属性ガラスをその融点まで加熱するステップと、
前記少なくとも1つの空欠部に金属性ガラスを注入充填してインサートを形成するステップと、
必要に応じて仕上げ作業を行うステップと、を備える。
【0024】
本発明の特別な実施形態において、前記空欠部は、フライス加工によって形成する。
【0025】
本発明の別の特別な実施形態において、前記仕上げ作業は、余分な材料の除去、研磨、及び/又は前記インサートのトリミングを伴う。
【0026】
これらの特徴のおかげで、本発明は、タイムインデックス、数字、ロゴ、その他の技術的又は装飾的な印であるような1つ又は複数のインサートで外側を覆われた、計時器又は宝飾品のための外側部品の要素を提供することができる。金属性ガラスを注入して作られるこのようなインサートは、固体のブロックの形態であり、したがって、摩擦や摩耗に対する機械的耐性に優れている。また、このようなインサートは、携行型時計や宝飾品の分野において求められる審美的な必要条件を満たすような外観を有する。実際に、このようなインサートには厚みがあるため、あらゆる仕上げ作業を行うことが可能であり、これによって、金属的な光沢を与えることができる。同様に、このようなインサートは、金属性ガラスの注入という単一の工程で作られ、このことによって、時間とコストを大幅に削減することが可能となり、優れた製造精度を確実にすることができる。なお、すべての実用的な目的に対して、本明細書の必要上、「金属性ガラス」は、少なくとも部分的にアモルファス状態、すなわち、規則的な原子配列を有しない状態、において凝固可能であるという特異性を有する金属合金の範疇のものを意味する。したがって、金属性ガラスは、特に、単純立方構造、体心又は面心構造、六方構造、及びこれらの構造の変異形態のような組織化された構造に従って結晶化するような伝統的な金属とは明確に区別される。このような金属性ガラスは、一般的に、互いに寸法的に適合しない元素が組み合わさって、所与の冷却速度からの凝固速度系を無秩序な固体結晶構造を得ることができるほどに十分に遅くすることによって、アモルファス状態で凝固する性質が得られる、3元系、4元系又はそれよりも多い多元系の合金から得られる。このような材料群のふるまいは、射出成形や熱間加工のようなポリマー材料の用途と同様の用途を可能にする。このような材料群には、特に、耐食性が高く、硬度が高く、そして、内部の機械的損失を抑えるように弾性的にふるまうという利点がある。
【0027】
添付の図面を参照しながら本発明に係る計時器又は宝飾品のための外側部品の要素の実施形態についての以下の詳細な説明を読むことによって、本発明の他の特徴及び利点が明らかになる。この例は、純粋に説明のために与えられるものであり、これに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に係る携行型時計用ベゼルの上面図である。
図2図1における線B-Bに沿った断面の図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、携行型時計の分野における必要条件を満たす機械的及び審美的特徴を有するような、計時器又は宝飾品のための外側部品の要素を提供することを伴う創造性のある概念に基づいている。このために、本発明は、繊維強化ポリマーマトリックス複合材料を用いて前記のような外側部品の要素を作り、そして、その外側部品の要素の面に少なくとも1つの空欠部を形成して、金属性ガラスによって作られた装飾的又は機能的インサートを前記空欠部内に収容することを教示する。繊維強化ポリマーマトリックス複合材料を用いるおかげで、本発明に係る外側部品の要素は、計時器のアプリケーションに完全に適している機械的摩耗に対する耐性と審美的特徴を有する。また、金属性ガラスを注入して作られるインサートは、外部からの機械的な攻撃に耐えられるほどに十分な厚みを有する固体のブロックを形成する。また、このようなインサートは、厚いために、仕上げ作業に耐えやすく、これによって、最高の輝度や輝きを得ることができる。最後に、このようなインサートは、単一の注入ステップによって作られ、このため、大幅な時間短縮と優れた製造精度を実現することができる。
【0030】
ベゼルの全体に対して、参照番号1を割り当てており、図1に示しているベゼル1は、本発明に係る計時器のための外側部品の要素の一例である。また、裏部、ミドル部、ブレスレットリンク、クラスプのような別の外側部品の要素も考えられる。
【0031】
本発明によると、ベゼル1を、繊維強化ポリマーマトリックス複合材料を用いて作る。説明用の例において、マトリックスを形成するために用いられるポリマー材料は、熱可塑性又は熱硬化性である。なお、これに限定されない。このポリマー材料は、好ましくは、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone:PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene:PTFE)、及びポリアミドイミド(polyamide-imide:PAI)からなる群から選択される。このマトリックスは、好ましくはガラス繊維、炭素繊維及びアラミド繊維からなる群から選択される、繊維によって強化される。複数のこのようなベゼル1に対して、必要な厚みを有する複合材料のプレートにて、個別に特徴を与えることができる。
【0032】
例えば、フランスの機械産業のための技術センターCETIMが開発したSPIDE TPタイプのフィラメントワインド法を用いて、本発明に係るベゼル1のような外側部品の要素を作ることができる。簡潔に説明すると、このフィラメントワインド法は、円筒状の形を形成する断面を有するチューブのような型上にて、ポリマー材料を事前に含浸された繊維をワインドして、特定の輪郭を得る方法である。同時に、ポリマーを事前に含浸されたこれらの繊維が、所定の層数に従って、かつ、型の縦方向の対称軸に対する角度に従って、型のまわりに巻かれるのと同時に、これらの繊維は、含浸されたポリマーを溶融させるほどに十分に高い温度まで加熱されて、型に対して押される。この型は、特に、輪郭を切断することによって得られる部分のその後の用途に応じて、選択される。最後に、得られた部分を、旋盤やフライス盤を用いて伝統的な方法で加工して、最終的な寸法に仕上げる。
【0033】
本発明の場合、典型的には内径が30mm程度で外径が45mm程度であるような筒状の輪郭を切断して、ベゼル1が得られる。切断して本発明に係るベゼル1を得る筒状の輪郭は、直径が通常5~25m程度であり融点が341℃であるポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を含浸させた炭素繊維をワインドすることによって得られる。後で切断されて本発明に係るベゼル1を得るための所望の管状の輪郭を得るために、好ましくは、管状の輪郭の縦方向の対称軸に対して、垂直に、90°の角度にて、炭素繊維をワインドすることによって得る。
【0034】
特にベゼル1を作るために用いられる、管状の輪郭を有する材料は、典型的には、±10%の範囲内で35重量%のPEEKポリマーと65重量%の炭素繊維(25~45%のPEEKポリマーと55~75%の炭素繊維)を含む。したがって、このような管状の輪郭から得られる外側部品の要素には、炭素繊維が多く含まれ、このことによって、その熱伝導性が大幅に向上し、金属性ガラスを注入しているときに入り込む熱を迅速に拡散させることが可能であることがわかる。この結果、金属性ガラスを注入する温度はポリマーマトリックスの融点よりも高いが、ベゼル1は分解されず、また、歪みも発生しない。また、注入されるインサートの厚みが減少することは、型と複合材料の良好な熱伝導性と相まって、ポリマーの融点よりも高い温度へのポリマーの曝露時間を大幅に短縮することができることも注目される。このため、ポリマーの劣化を抑えるための特別な追加措置を金属性ガラスとの短い接触の間に実行することは必要ない。また、金属性ガラスと接触した可能性のある複合材のうちの可視部分が、型から取り出した後の表面仕上げ作業においてさらに除去される。
【0035】
ベゼル1には、上面2に、典型的にはフライス加工によって形成される、一又は複数の空欠部4が形成される。本発明によると、これらの空欠部4は、金属性ガラスタイプの材料を用いて充填されて、インサート6を形成する。図1に示しているように、これらのインサート6は、数字、そして、三角形や円形のような形のインデックスを表す。なお、これに限定されない。好ましくは、これらの空欠部4は、インサート6が優れた機械的強度を有することを確実にするために、5~10°のアンダーカット角αを形成する。
【0036】
インサート6を作るために用いられる金属性ガラスは、バルク金属性ガラス(bulk metallic glass:BMG)タイプのものである。好ましくは、この金属性ガラスは、ジルコニウムを含む。例えば、避けられない不純物を除き、ジルコニウム、銅、チタン、ニッケル、アルミニウム、ニオブを含む合金を用いることができる。例によると、前記インサートを作るために用いられる金属性ガラスは、これらの材料を、重量%で、60≦Zr≦75、10≦Cu≦20、0≦Ti≦6、7≦Ni≦15、0≦Al≦8、0≦Nb≦6の量含む。
【0037】
本発明のニーズに適したジルコニウムを含む金属性ガラスの例として、重量%で、Zr70Cu13Ni9.9Al3.65Nb3.4の組成の合金Vit106aや、重量%で、Zr65.7Cu15.6Ni11.7Al3.7Ti3.3の組成のVit105が挙げられる。
【0038】
また、インサート6を作るために用いられる金属性ガラスは、白金をベースとすることもできる。例えば、避けられない不純物を除き、白金、銅、ニッケル、アルミニウム、リンを含む合金を用いることができる。一実施例によると、インサートを作るために用いられる金属性ガラスは、これらの材料を、重量%で、
80≦Pt≦90、5≦Cu≦10、1≦Ni≦3、4≦P≦7、の量含む。
【0039】
本発明の別の特別な実施形態において、インサートを作るために用いられる金属性ガラスは、重量%で、組成Pt85Cu7Ni2.3P5.7によって与えられる。
【0040】
本発明の別の特別な実施形態において、インサートを作るために用いられる金属性ガラスは、350℃以下のガラス転移温度を有する。
【0041】
本発明によると、インサート6を形成するために、注入によって金属性ガラスを空欠部4内に充填する。このために、金属性ガラスのインゴットを用意し、これを溶解室に入れ、融点よりも高い温度に加熱する。金属性ガラスのインゴットが溶融した後に、金属性ガラスを、ベゼル1が中に配置された型内に注入する。この型は、金属性ガラスがこのベゼル1の空欠部4を充填するように構成している。このようなベゼル1が中に配置された型内への金属性ガラスの注入は、ピストンによって又はガスによる圧力によって与えられる機械的圧力によって実行することができる。空欠部4は、好ましくは、ベゼル1とインサート6の間の最適なリンクを提供するように、金属性ガラスの厚みがわずかに余分であるように充填される。
【0042】
金属性ガラスの冷却後、ベゼル1は、型から取り外され、余分な材料の除去、研削、及び/又は機械的又は化学的研磨のような仕上げ作業を経ることができる。余分な厚みやバリがあれば、トリミングによって取り除く。
【0043】
当然、本発明は、ここで説明した実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲によって定められる本発明の範囲から逸脱することなく、当業者によって様々な改変及び単純な変異形態を考えることができる。特に、本発明の範囲内において、金属性ガラスをその融点まで一時的に加熱して、注入装置を用いて注入できるようにする必要があることがわかる。
【符号の説明】
【0044】
1 ベゼル
2 上面
4 空欠部
6 インサート
図1
図2
【外国語明細書】