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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098628
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】天井ボード施工ロボット
(51)【国際特許分類】
   E04F 21/18 20060101AFI20230703BHJP
   B23P 21/00 20060101ALI20230703BHJP
   B25J 5/00 20060101ALI20230703BHJP
   E04G 21/16 20060101ALI20230703BHJP
   B25J 11/00 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
E04F21/18 B
B23P21/00 302A
B25J5/00 A
E04G21/16
E04F21/18 C
E04F21/18 F
B25J11/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190186
(22)【出願日】2022-11-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-21
(31)【優先権主張番号】P 2021213896
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500539561
【氏名又は名称】株式会社テムザック
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳田 克巳
(72)【発明者】
【氏名】小松 淳
(72)【発明者】
【氏名】岡 尚人
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 義秀
(72)【発明者】
【氏名】手島 則夫
(72)【発明者】
【氏名】伊東 真
(72)【発明者】
【氏名】三室 恵史
(72)【発明者】
【氏名】加藤 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼本 陽一
(72)【発明者】
【氏名】川久保 勇次
(72)【発明者】
【氏名】清水 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】石井 佑典
【テーマコード(参考)】
2E174
3C030
3C707
【Fターム(参考)】
2E174BA01
2E174CA02
2E174CA06
2E174CA23
2E174CA24
2E174CA35
2E174DA17
2E174DA52
3C030CB03
3C707AS21
3C707AS26
3C707BS10
3C707BT05
3C707CS08
3C707CT04
3C707DS01
3C707ES19
3C707KS03
3C707KS04
3C707KS09
3C707KT03
3C707KT05
3C707LT06
3C707LV04
3C707LV05
3C707LV07
3C707LV12
3C707MS08
3C707MT09
3C707WA16
3C707WA28
(57)【要約】
【課題】天井ボードを天井ボード施工ロボットによって枠体に載置する。
【解決手段】天井スラブ1により支持された枠体6に天井ボード8を載置する天井ボード施工ロボット100は、床面2を移動可能な台車部10と、台車部10上に載置される昇降部21と、昇降部21から枠体6に向かって延びるアーム部30と、アーム部30の先端側に設けられ天井ボード8を保持可能な保持部40と、枠体6の形状に関する枠体状態を検知可能な状態検知部51,52と、アーム部30の作動を制御する制御部50と、を備え、制御部50は、保持部40によって保持された天井ボード8が枠体6の上方から落とし込まれることにより枠体6に載置されるように、枠体状態に基づいてアーム部30を作動させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井スラブにより支持された枠体に天井ボードを載置する天井ボード施工ロボットであって、
床面を移動可能な台車部と、
前記台車部上に載置される昇降部と、
前記昇降部から前記枠体に向かって延びるアーム部と、
前記アーム部の先端側に設けられ前記天井ボードを保持可能な保持部と、
前記枠体の形状に関する枠体状態を検知可能な状態検知部と、
前記アーム部の作動を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記保持部によって保持された前記天井ボードが前記枠体の上方から落とし込まれることにより前記枠体に載置されるように、前記状態検知部によって検知された前記枠体状態に基づいて、前記アーム部を作動させる、
天井ボード施工ロボット。
【請求項2】
前記制御部は、予め検知された前記天井スラブと前記枠体との間の空間の空間状態に基づいて、前記枠体への前記天井ボードの載置の可否を判定する、
請求項1に記載の天井ボード施工ロボット。
【請求項3】
前記制御部は、
前記保持部により前記天井ボードを保持させる際、前記状態検知部によって前記天井ボードの形状に関する天井ボード状態を検知し、
前記天井ボード状態に基づいて、前記保持部により前記天井ボードを保持する位置を設定する、
請求項1または2に記載の天井ボード施工ロボット。
【請求項4】
前記保持部は、前記天井ボードに突き刺さる突起を有する、
請求項1または2に記載の天井ボード施工ロボット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井ボード施工ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、天井部分に設けられた野縁に対して天井ボードを取り付ける天井ボード施工ロボットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-123645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された天井ボード施工ロボットは、ビスを介して野縁に対して天井ボードを取り付けるものである。このため、天井スラブにより支持された枠体に天井ボードを載置することによって天井ボードを施工する方法では、特許文献1に記載の天井ボード施工ロボットを採用することができなかった。
【0005】
本発明は、天井スラブにより支持された枠体に天井ボードを載置することが可能な天井ボード施工ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、天井スラブにより支持された枠体に天井ボードを載置する天井ボード施工ロボットであって、床面を移動可能な台車部と、台車部上に載置される昇降部と、昇降部から枠体に向かって延びるアーム部と、アーム部の先端側に設けられ天井ボードを保持可能な保持部と、枠体の形状に関する枠体状態を検知可能な状態検知部と、アーム部の作動を制御する制御部と、を備え、制御部は、保持部によって保持された天井ボードが枠体の上方から落とし込まれることにより枠体に載置されるように、状態検知部によって検知された枠体状態に基づいて、アーム部を作動させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、天井ボード施工ロボットによって、天井スラブにより支持された枠体に天井ボードを載置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る天井ボード施工ロボットによって行われる天井ボード設置作業のイメージを示したイメージ図である。
図2】本発明の実施形態に係る天井ボード施工ロボットによって行われる空間状態検知作業のイメージを示したイメージ図である。
図3】本発明の実施形態に係る天井ボード施工ロボットによって行われる天井ボード受け取り作業のイメージを示したイメージ図である。
図4A図3の矢印A部を拡大して示した拡大図であり、天井ボード施工ロボットが天井ボードを保持する前の状態を示す図である。
図4B図3の矢印A部を拡大して示した拡大図であり、天井ボード施工ロボットが天井ボードを保持した後の状態を示す図である。
図5】天井ボード施工ロボット及び運搬ロボットを含む制御システム全体の構成を示すブロック図である。
図6図3の矢印Bで示される方向から見た運搬ロボットの一部を示した図である。
図7】天井ボード施工ロボットが行う作業の手順を示したフローチャートである。
図8A】天井ボード施工ロボットが行う天井ボード設置作業を説明するための概略図である。
図8B】天井ボード施工ロボットが行う天井ボード設置作業を説明するための概略図であり、図8Aに続く状態を示す図である。
図8C】天井ボード施工ロボットが行う天井ボード設置作業を説明するための概略図であり、図8Bに続く状態を示す図である。
図8D】天井ボード施工ロボットが行う天井ボード設置作業を説明するための概略図であり、図8Cに続く状態を示す図である。
図9】本発明の実施形態に係る天井ボード施工ロボットの変形例を示す図である。
図10図9のC-C線に沿う断面を拡大して示した拡大断面図である。
図11図9に示される天井ボード施工ロボットの動作を説明するための図である。
図12図9のD-D線に沿う断面を拡大して示した拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る天井ボード施工ロボットについて説明する。
【0010】
本発明の実施形態に係る天井ボード施工ロボット100(以下、「施工ロボット」という。)は、外部からの操作を必要としない自律型ロボットであり、図1に示すように、天井スラブ1により支持された枠体6に天井ボード8を載置する作業を行うものである。
【0011】
図1に示される天井スラブ1は、コンクリートが流し込まれたデッキプレートであり、デッキプレートには、コンクリートが流し込まれる前に、予め複数のインサート3が所定の位置に取り付けられる。インサート3は、天井ボード8が載置される枠体6を、ハンガー5を介して吊り下げ支持する吊りボルト4を取り付けるために設けられる部材である。なお、天井スラブ1は、合板型枠に打設されて形成されたコンクリートスラブであってもよい。
【0012】
天井ボード8は、所定の厚みを有する平板状の岩綿吸音板であり、天井ボード8が載置される枠体6は、断面が略T字状のバー部材(Tバー)が格子状に結合されることによって形成される。
【0013】
枠体6と天井ボード8とは、いわゆるグリッドタイプのシステム天井を構成するものであり、バー部材で区切られた枠体6の開口部に天井ボード8が上方から落とし込まれることによって、天井ボード8は、鉛直方向下方から枠体6により支持された状態となる。
【0014】
施工ロボット100は、図1に示されるように枠体6に天井ボード8を載置する動作の他に、図2に示されるように、天井スラブ1と枠体6との間の空間の空間状態を検知する動作や、図3に示されるように、運搬ロボット110によって運搬される天井ボード8を運搬ロボット110から受け取る動作を行うことが可能である。図1~3は、施工ロボット100によって行われる作業をわかりやすく誇張して示したイメージ図であり、実際の大きさや比率とは異なる部分がある。
【0015】
運搬ロボット110は、施工ロボット100と同様に、外部からの操作を必要としない自律型ロボットである。なお、運搬ロボット110は、1台の施工ロボット100に対して1台ずつ配置されていてもよいし、複数の施工ロボット100に対して1台配置されていてもよい。
【0016】
施工ロボット100及び運搬ロボット110は、それぞれ同じ構成の台車部10を有し、施工ロボット100は、台車部10に施工ユニット20が組付けられることによって構成され、運搬ロボット110は、台車部10に運搬ユニット60が組付けられることによって構成される。
【0017】
まず、図1~5を参照し、施工ロボット100の構成について説明する。図4A及び図4Bは、図3の矢印Aで示される部分を拡大して示した拡大図であり、図5は、施工ロボット100及び運搬ロボット110を含む制御システム全体の構成を示すブロック図である。
【0018】
施工ロボット100は、図1~3に示すように、床面2を移動可能な台車部10と、台車部10上に載置される昇降部21と、昇降部21から枠体6に向かって延びるアーム部30と、アーム部30の先端側に設けられ天井ボード8を保持可能な保持部40と、台車部10、昇降部21及びアーム部30の作動を制御する制御部50と、を備える。なお、施工ユニット20は、台車部10以外の機構によって構成される。
【0019】
台車部10は、床面2を全方向に自走可能な走行装置であり、本体部11と、本体部11に取り付けられた一対の車輪14と、一対の車輪14を別々に駆動可能に設けられた図示しない一対のモータと、一対のモータに電力を供給する図示しないバッテリと、を備える。このように一対の車輪14を別々に駆動することによって、台車部10は、その場で旋回することが可能である。なお、台車部10に設けられたバッテリは、施工ユニット20へ電力を供給する電力供給源としても使用される。
【0020】
台車部10を、その場で旋回させる構成としては、一対の車輪14に代えて、例えば、3輪のオムニホイールや4輪のメカナムホイールを備えた構成が採用されてもよいし、全方向に回転可能な複数の球状体が床面2に接する駆動輪として機能する構成が採用されてもよい。なお、台車部10は、作業効率の観点からは、その場での旋回が可能であることが好ましいが、床面2を前後左右に自走可能であって所定の位置へと移動することが可能な一般的な走行装置であってもよい。
【0021】
また、台車部10には、台車部10周辺の情報を取得可能な情報取得器15が設けられる。情報取得器15は、台車部10の周囲や台車部10の上方を撮像可能な全天球型または半天球型のカメラである。情報取得器15によって撮像された画像は制御部50へと送られ、台車部10の自己位置の特定や障害物を検知するために用いられる。情報取得器15としては、カメラに代えて、または、カメラに加えて、全方位の距離を検出可能なレーザスキャナ等の三次元測域センサ、いわゆる、3D-LiDAR(light detection and ranging)センサが用いられてもよい。
【0022】
台車部10上に取り付けられる施工ユニット20の昇降部21は、多段型の電動ジャッキであり、上下方向に沿って伸縮可能な構成を有する。昇降部21の上端には、アーム部30を設置するためのフランジ部24が設けられる。このようにアーム部30を上下方向に移動させる昇降部21を設けることによって、アーム部30の可動範囲が拡がるため、比較的小型のアーム部30を採用することができる。
【0023】
なお、昇降部21を設けることなく、アーム部30を大型化することによってアーム部30の可動範囲を大きくすることも可能である。しかしながら、アーム部30を大型化して可動範囲を大きくすると、安全性を確保すべきエリアが拡がり、施工ロボット100の周囲で作業員が作業を行うことができなくなるため、結果として作業効率が低下してしまうおそれがある。また、アーム部30を大型化した場合、枠体6周辺での小回りが利かず、枠体6と干渉しやすくなり、天井ボード8を載置する作業が困難になるおそれがある。このような理由からも、昇降部21を設け、比較的小型のアーム部30を採用することが好ましい。
【0024】
アーム部30は、エンドエフェクタとして先端に取り付けられた保持部40の姿勢を三次元において任意の姿勢とすることが可能な、いわゆる垂直多関節型のロボットアームである。
【0025】
具体的には、アーム部30は、設置プレート26に固定される基部32aと、第1回動部31aを介して連結方向軸線を中心に回動可能に基部32aと連結される第1リンク部32bと、第2回動部31bを介して水平方向軸線を中心に回動可能に第1リンク部32bと連結される第2リンク部32cと、第3回動部31cを介して水平方向軸線を中心に回動可能に第2リンク部32cと連結される第3リンク部32dと、第4回動部31dを介して連結方向軸線を中心に回動可能に第3リンク部32dと連結される第4リンク部32eと、第5回動部31eを介して第4回動部31dの回動軸に対して垂直な方向の軸線を中心に回動可能に第4リンク部32eと連結される第5リンク部32fと、第6回動部31fを介して連結方向軸線を中心に回動可能に第5リンク部32fと連結される第6リンク部32gと、を有する。
【0026】
各回動部31a~31fには、各回動部31a~31fを回動させる図示しないサーボモータ及び減速機がそれぞれ設けられる。
【0027】
なお、アーム部30は、上述のように軸数が6軸のものに限定されず、軸数が7軸以上のものであってもよい。
【0028】
上記構成のアーム部30は、設置プレート26を介して、昇降部21のフランジ部24に取り付けられる。
【0029】
次に、図4A及び図4Bを参照し、アーム部30の先端部である第6リンク部32gに取り付けられる保持部40の構成について説明する。図4Aは、保持部40によって天井ボード8が保持される前の状態を示しており、図4Bは、保持部40によって天井ボード8が保持された後の状態を示している。
【0030】
図4Aに示すように、保持部40は、第6リンク部32gに取り付けられる円盤状の本体部41と、本体部41から第6リンク部32gとは反対の方向に向かって突出する複数のニードル42(突起)と、複数のニードル42を囲むように配置された円環状の保護リング43と、一端が保護リング43に結合され他端が本体部41によって支持される複数の棒部材44と、保護リング43を本体部41から引き離す方向に付勢するバネ部材45と、を有する。
【0031】
本体部41には、バネ部材45を収容するとともに保護リング43を収容可能な環状の収容溝41aと、収容溝41aの底面に貫通して形成され棒部材44が挿通する貫通孔41bと、が設けられる。
【0032】
上記構成の保持部40によれば、保持部40によって天井ボード8が保持される前は、図4Aに示されるように、径方向外側から見てニードル42の先端が保護リング43によって覆われた状態となる。このため、ニードル42が不用意に天井ボード8に接触することで天井ボード8を傷つけたり、作業員がニードル42に接触したりすることを防止することができる。
【0033】
一方、保持部40が天井ボード8の表面8aに押し付けられると、図4Bに示すように、バネ部材45が圧縮されるとともに保護リング43が本体部41の収容溝41a内に収容され、ニードル42が露出した状態となる。このように露出した複数のニードル42が天井ボード8の表面8aに突き刺さることによって、天井ボード8は、保持部40により保持された状態となる。
【0034】
保持部40の構成は上記構成に限定されず、保護リング43といったニードル42を覆うための部材を設けることなく、単に、第6リンク部32gに取り付けられる本体部41と、本体部41から突出する複数のニードル42と、からなるものであってもよいし、保持部40が天井ボード8に接近したことが検知されると複数のニードル42が天井ボード8に向かって突出するように構成されたものであってもよい。
【0035】
また、保持部40は、ニードル42を天井ボード8に突き刺すことによって天井ボード8を保持するものに限定されず、負圧によって天井ボード8の表面8aを吸引して保持するものであってもよい。なお、一般的に岩綿吸音板(天井ボード8)には、複数の通気孔が形成されているため、吸引によって保持するには比較的大きな吸引力が必要となる。このため、天井ボード8を確実に保持するには、ニードル42を有する保持部40を用いることが好ましい。
【0036】
施工ロボット100は、上記各機構に加えて、枠体6の形状に関する枠体状態及び天井スラブ1と枠体6との間の空間の空間状態を検知するために、これらを検知可能な第1距離センサ51(状態検知部)及び第2距離センサ52(状態検知部)をさらに備える。
【0037】
第1距離センサ51は、比較的測定精度が高いポイント式レーザ距離センサであって、アーム部30の第5リンク部32fに固定される。具体的には、図4Aに示されるように、第1距離センサ51は、検出面51aが第5リンク部32fと第6リンク部32gの連結軸方向を向くように、すなわち、距離を検出する方向が保持部40側を常に指向するように、第5リンク部32fのトラニオン部に固定される。なお、第1距離センサ51は、第6リンク部32gに固定されていてもよい。
【0038】
第1距離センサ51により計測を行う際には、第5回動部31eや第4回動部31dを所定の範囲で回動させてスキャン計測することによって、第1距離センサ51の設置位置から計測対象物までの距離を比較的広い範囲に渡って精度よく取得することが可能である。なお、第1距離センサ51としては、ToF(Time of Flight)方式の三次元距離センサや第5リンク部32fと第6リンク部32gの連結軸を含む平面上にある計測対象物までの距離をスキャン計測可能な二次元測域センサ、いわゆる、2D-LiDAR(light detection and ranging)センサが用いられてもよいが、測定精度の観点からはポイント式レーザ距離センサを用いることが好ましい。
【0039】
また、第1距離センサ51は、アーム部30の先端付近に設けられているため、例えば、図2に示すように、枠体6の形状に関する枠体状態及び天井スラブ1と枠体6との間の空間の空間状態を精度よく検知することが可能であるとともに、図3に示すように、運搬ロボット110によって運搬される天井ボード8の形状に関する天井ボード状態を精度よく検知することが可能である。
【0040】
第1距離センサ51によって検出された距離は、制御部50へと送られ、後述のように主にアーム部30の動作を制御するために用いられる。
【0041】
第2距離センサ52は、天井スラブ1側に向けて設置されたToF(Time of Flight)方式の三次元距離センサであり、第2距離センサ52の設置位置から計測対象物までの距離を示す深度データ(Depth data)を取得可能なセンサである。第2距離センサ52は、アーム部30とともに設置プレート26に固定される。なお、第2距離センサ52を枠体6に近付けるために、例えば、上下方向に伸縮自在な支柱を介して第2距離センサ52を設置プレート26に固定してもよい。
【0042】
このように第2距離センサ52を鉛直方向上方に向けて設置することによって、例えば、図1に示すように、天井ボード8を載置する作業を監視することが可能であるとともに、図2に示すように、枠体6の形状に関する枠体状態及び天井スラブ1と枠体6との間の空間の空間状態を検知することが可能である。
【0043】
第2距離センサ52によって検出された距離は、制御部50へと送られ、後述のように主に施工ロボット100を枠体6の下方へと正確に移動させる際や載置作業の監視、載置作業の適否判定などにおいて用いられる。なお、台車部10に設けられた上述の情報取得器15によって、枠体6の位置や天井ボード8の載置状況を十分に把握することができる場合には、第2距離センサ52を設けなくともよい。
【0044】
制御部50は、図5に示すように、第1距離センサ51、第2距離センサ52及び情報取得器15により取得されたデータと、予め読み込まれたBIM(Building Information Modeling)等の作業エリアに関するデータとに基づいて、台車部10、昇降部21及びアーム部30の作動を制御する。制御部50が行う具体的な制御については、枠体6に天井ボード8を載置する後述の方法の説明において詳述する。
【0045】
制御部50は、具体的には、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラム等を予め記憶し、I/Oインターフェースは制御部50に接続された装置や検出器との情報の入出力に使用される。制御部50は、複数のマイクロコンピュータで構成されていてもよく、例えば、施工ユニット20と台車部10とにそれぞれ設けられていてもよい。
【0046】
また、制御部50には、図5に示すように、施工ロボット100及び運搬ロボット110に対して作業の指示を行ったり、作業状況を監視したりする外部のサーバ120とデータの送受信を行うための通信部50aが設けられる。通信部50aは、インターネット回線を介してデータを送信可能な一般的な無線通信機器であってもよいし、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)やWi-Fi(登録商標)といった近距離無線通信機器であってもよい。通信部50aは、運搬ロボット110の制御部90と通信を行う際にも用いられる。
【0047】
次に、図3図5及び図6を参照し、天井ボード8を運搬する運搬ロボット110について説明する。図6は、図3において矢印Bで示される方向から見た運搬ロボット110の上面を部分的に示した図であり、台車部10等を省略して示している。
【0048】
運搬ロボット110は、図3図5及び図6に示すように、床面2を移動可能な台車部10と、複数の天井ボード8が水平方向に重ね合わせられた状態で積載されるローラコンベヤ64と、ローラコンベヤ64に沿って複数の天井ボード8を送り出す送出機構65と、水平方向に積層された天井ボード8が倒れることを防止する第1倒れ防止機構66及び第2倒れ防止機構67と、天井ボード8の表面8aが施工ロボット100側を向くように天井ボード8を反転させる反転機構68と、台車部10に立設され、これら各機構を支持する支柱62と、台車部10、送出機構65、第1倒れ防止機構66、第2倒れ防止機構67及び反転機構68の作動を制御する制御部90と、を備える。なお、運搬ユニット60は、台車部10以外の機構によって構成される。
【0049】
台車部10は、施工ロボット100の台車部10と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0050】
ローラコンベヤ64は、複数の回転ローラ64aと、複数の回転ローラ64aを囲むように設けられた無端ベルト64bと、を有し、上側の平坦面に天井ボード8が積載されるように、図示しないブラケットを介して支柱62に固定される。
【0051】
送出機構65は、ローラコンベヤ64の回転方向に沿って延び支柱62に固定されるレール部材65aと、レール部材65aに沿って移動可能な押当部65bと、押当部65bを移動させる図示しない電動スライドと、押当部65bの移動量を計測可能な移動量センサ65cと、を有する。
【0052】
送出機構65は、施工ロボット100により天井ボード8が引き取られたことが検知されると、電動スライドを駆動し押当部65bを天井ボード8に押し付けることによって、複数の天井ボード8全体をローラコンベヤ64に沿って移動させる。これにより次に施工ロボット100へと引き渡される天井ボード8が所定の位置まで送り出だされる。施工ロボット100により天井ボード8が引き取られたか否かや、天井ボード8が所定の位置まで送り出だされたか否かについては、図示しない近接センサ等によって検知される。
【0053】
また、天井ボード8を送り出す際に押当部65bが移動した距離を移動量センサ65cによって随時計測しておくことにより、何枚の天井ボード8が施工ロボット100に供給されたか、すなわち、運搬ロボット110に何枚の天井ボード8が残っているかを把握することが可能である。
【0054】
なお、送出機構65のレール部材65aは、ローラコンベヤ64を挟み込むように配置された一対のレール部材であってもよく、この場合、押当部65bは一対のレール部材によって下方から支持される。
【0055】
第1倒れ防止機構66は、施工ロボット100へと引き渡される天井ボード8が、施工ロボット100によって保持される前に倒れてしまうことを防止するものであり、第2倒れ防止機構67は、天井ボード8が施工ロボット100によって引き取られる際に、施工ロボット100に引き取られる天井ボード8と重なり合っていた2番目の天井ボード8が倒れてしまうことを防止するものである。
【0056】
第1倒れ防止機構66は、ローラコンベヤ64の回転方向に沿って延びブラケット66cを介して支柱62に固定される本体部66aと、本体部66aから下方に向かって延び、天井ボード8に押し付けられる押付部66bと、を有する。押付部66bには、上下方向に伸縮可能な電動シリンダが内蔵されており、押付部66bが伸長することによって、天井ボード8は、押付部66bとローラコンベヤ64とにより挟持された状態となる。
【0057】
第2倒れ防止機構67は、ローラコンベヤ64の回転方向に沿って延びブラケット67dを介して支柱62に固定されるシリンダ部67aと、シリンダ部67aから突出するロッド部67bと、ロッド部67bの先端から下方に向かって延び、天井ボード8に押し付けられる押付部67cと、を有する。
【0058】
押付部67cには、上下方向に伸縮可能な電動シリンダが内蔵されており、押付部67cが伸長することによって、天井ボード8は、押付部67cとローラコンベヤ64とにより挟持された状態となる。
【0059】
また、シリンダ部67a及びロッド部67bは、送出機構65のレール部材65aに沿って伸縮可能な電動シリンダを構成するものであり、送出機構65の送出速度に合わせて伸長するように制御される。このため、送出機構65によって複数の天井ボード8が送り出される際に、天井ボード8が倒れてしまうことを防止することができる。
【0060】
反転機構68は、天井ボード8を保持可能な保持部68aと、一端に保持部68aが設けられ他端がブラケット68cを介して支柱62に取り付けられるアーム部68bと、を有する。アーム部68bは、回動軸68dを中心として回動可能にブラケット68cにより支持されており、アーム部68bの位置は、図示しないサーボモータによって、図6において実線で示される位置と破線で示される位置との2つの位置に切り替えられる。
【0061】
保持部68aは、施工ロボット100の保持部40と同じ構成を有するとともに、本体部41の収容溝41aに収容された保護リング43を収容溝41a内から押し出すように作動する図示しない電動アクチュエータを有する。電動アクチュエータは、施工ロボット100の保持部40により天井ボード8が保持されたことが検知されたときに作動し、これにより反転機構68の保持部68aによる天井ボード8の保持が解除される。
【0062】
ここで、天井ボード8は、一般的に、表面8aを保護するために、表面8aが重ね合わせられた2枚の天井ボード8を一組とし、複数組が重ねられた状態で市場に流通する。つまり、施工現場に搬入された複数の天井ボード8をそのまま施工ロボット100に対して供給した場合、表面8aと裏面8bとが交互に露出することになる。
【0063】
一方で、施工ロボット100の保持部40は、上述のように、天井ボード8の表面8aを保持するように構成されている。
【0064】
このため、運搬ロボット110は、上記構成の反転機構68によって、天井ボード8の裏面8bが施工ロボット100側を向いている場合には、天井ボード8の表面8aが施工ロボット100側を向くように、天井ボード8を反転させている。
【0065】
運搬ロボット110は、上述のように押当部65bの移動量を計測する移動量センサ65cの検出値に基づいて、ローラコンベヤ64上に何枚の天井ボード8が積載されているかを把握している。ローラコンベヤ64上の天井ボード8の枚数が奇数枚である場合は、天井ボード8の表面8aが施工ロボット100側を向いた状態となり、偶数枚である場合は、天井ボード8の裏面8bが施工ロボット100側を向いた状態となることから、天井ボード8の枚数が偶数枚であると判定された場合のみ、反転機構68を作動させることによって、天井ボード8の表面8aが常に施工ロボット100側を向くようにしておくことが可能である。
【0066】
なお、複数の天井ボード8が、予め表面8aと裏面8bとが重ね合わせられた状態となっている場合、つまり、常に天井ボード8の表面8aが施工ロボット100側を向くようにローラコンベヤ64上に複数の天井ボード8を積載しておくことが可能な場合には、反転機構68を設けなくともよい。
【0067】
運搬ロボット110の制御部90は、情報取得器15及び移動量センサ65cにより取得されたデータと、予め読み込まれたBIM等の作業エリアに関するデータとに基づいて、台車部10、送出機構65、第1倒れ防止機構66、第2倒れ防止機構67及び反転機構68の作動を制御する。また、制御部90には、施工ロボット100の制御部50と同様に、通信部90aが設けられる。なお、制御部90の具体的な構成は、施工ロボット100の制御部50と同じであるため、その説明を省略する。
【0068】
続いて、図1~3、図7及び図8を主に参照し、上記構成の施工ロボット100によって、枠体6に天井ボード8を載置する方法について説明する。図7は、施工ロボット100が行う作業の手順を示したフロー図であり、図8A図8Dは、施工ロボット100が行う天井ボード8の設置作業を説明するための概略図であり、枠体6に天井ボード8が載置される様子を時系列に沿って順に示している。
【0069】
まず、ステップS11では、施工ロボット100の制御部50において、作業エリアに関するデータが読み込まれ、記憶される。具体的には、制御部50の通信部50aを介してサーバ120からBIM等の図面データが取得され、記憶部に記憶される。ここで読み込まれるデータには、BIM等の図面データに加えて、枠体6の位置や天井ボード8を取り付ける順序などが含まれる。
【0070】
次に、ステップS12では、制御部50は、台車部10の情報取得器15によって、施工ロボット100の周辺の情報、例えば、柱までの距離や柱の配置を取得し、記憶されたBIM等の図面データと取得された情報とを照合することにより、施工ロボット100の自己位置、すなわち、図面上での座標を認識する。制御部50は、自己位置を特定するために、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)機能を有していてもよい。
【0071】
続くステップS13では、制御部50は、最初に天井ボード8が取り付けられる枠体6の座標をステップS11で読み込まれたデータから抽出し、台車部10を制御することによって施工ロボット100を抽出された枠体6の座標に向けて移動させる。なお、最初に天井ボード8が取り付けられる枠体6は、施工ロボット100が置かれた場所から最も近くの枠体6であってもよい。
【0072】
施工ロボット100の移動が完了すると、制御部50は、第2距離センサ52によって、作業対象となる枠体6の認識を行う(ステップS14)。具体的には、作業対象となる枠体6までの距離を第2距離センサ52によって測定し、枠体6の開口部を形成する4つの辺の形状を検出する。
【0073】
ここで、枠体6の開口部を形成する4つの辺のうち何れかの辺が検出できない場合、枠体6と施工ロボット100との間に何らかの障害物があり、枠体6の開口部が障害物によって覆われている可能性がある。このため、枠体6を正常に認識することができない場合には、作業を行うことができないとしてステップS22に進み、枠体6が正常に認識された場合には、さらに詳細な情報を取得するためにステップS15に進む。
【0074】
ステップS15では、制御部50は、台車部10を制御することによって施工ロボット100をステップS14で認識された枠体6の直下へと移動させる。具体的には、制御部50は、ステップS14で認識された枠体6の4つの辺の位置に基づいて枠体6の中心座標を算出し、算出された中心座標の直下にアーム部30の基部32aが位置するように施工ロボット100を移動させる。
【0075】
施工ロボット100の移動が完了すると、続くステップS16において枠体6の形状に関する枠体状態が取得される。
【0076】
具体的には、アーム部30の先端側のリンク部である第5リンク部32fに取り付けられた第1距離センサ51によって、枠体6の開口部を形成する4つの辺とアーム部30との相対位置関係が計測される。これにより、制御部50は、アーム部30と枠体6との位置関係を三次元的に把握することができる。
【0077】
第1距離センサ51による計測は、アーム部30が上方に向かって延び、第1距離センサ51の検出面51aが鉛直方向上方に向けられた状態で行われる。なお、枠体6が比較的高い位置にある場合は、第1距離センサ51を枠体6に近付けるために、昇降部21を予め設定された長さに伸長させておいてもよい。
【0078】
ステップS16で行われる枠体6の状態の取得は、第1距離センサ51による計測に代えて、または、これに加えて、第2距離センサ52による計測によって行われてもよい。二つの距離センサ51,52により計測を行うことによって、アーム部30と枠体6との位置関係をより精度よく把握することができる。特に、第1距離センサ51及び第2距離センサ52は、施工ロボット100に直接取り付けられているため、枠体6や床面2が水平面に対して傾斜している場合であっても、施工ロボット100に対する枠体6の相対的な位置関係を精度よく検知することができる。
【0079】
続くステップS17では、天井スラブ1と枠体6との間の空間の空間状態が取得される。
【0080】
具体的には、図2に示すように、昇降部21を予め設定された長さに伸長させた状態において、設置プレート26に取り付けられた第2距離センサ52によって、枠体6から天井スラブ1までの距離を計測するとともに、枠体6と天井スラブ1との間に配置された配管や配線、ブレース、吊りボルト4までの距離が計測される。
【0081】
また、第2距離センサ52の死角となる部分については、図2に示すように、第1距離センサ51によって、例えば、第1距離センサ51の検出面51aを斜め上方に向けられた状態で計測される。第1距離センサ51による計測は、例えば、アーム部30の第1回動部31aを回動させることにより、略360度にわたって行われる。なお、枠体6と天井スラブ1との間の状態をより確実に検知するためには、天井スラブ1に向かって枠体6を超えた位置まで第1距離センサ51を移動させた後、第1距離センサ51の検出面51aを略水平方向に向けた状態で計測を行うことが好ましい。
【0082】
これにより、制御部50は、天井ボード8を枠体6に載置する際に天井ボード8及びアーム部30が通る軌道と、枠体6と天井スラブ1との間にある配管等との相対位置関係を三次元的に把握することができる。特に、第1距離センサ51及び第2距離センサ52は、施工ロボット100に直接取り付けられているため、床面2が水平面に対して傾斜している場合であっても、施工ロボット100に対する配管等の相対的な位置関係を精度よく検知することができる。なお、ステップS16で行われる枠体6の状態の取得と、ステップS17で行われる空間状態の取得とは、同時に行われてもよい。
【0083】
このように枠体6の状態及び空間状態が取得されると、ステップS18に進み、制御部50は、天井ボード8を枠体6に載置する作業の可否を判定する。
【0084】
天井ボード8を枠体6に載置するには、枠体6の開口部を通じて天井ボード8を枠体6の上方に一旦、位置させる必要がある。このように天井ボード8を枠体6の上方に位置させる過程で天井ボード8及びアーム部30が通る軌道上に配管等がある場合、枠体6の開口部を通じて天井ボード8を枠体6に載置することは不可能である。
【0085】
天井ボード8を枠体6の上方に位置させる際には、枠体6の開口部の対角線上を通して斜め上方に向かって天井ボード8が挿入されるが、例えば、枠体6の開口部から見て四隅の何れにも配管やブレースがある場合には、天井ボード8の挿入方向をどのように変えたとしても、天井ボード8はこれらに当たってしまうことから、天井ボード8を枠体6に載置することは不可能である。
【0086】
また、天井ボード8を枠体6の上方に位置させるには、天井ボード8を鉛直方向に沿った状態として、枠体6の開口部の対角線上を上方に向けて真っすぐ挿入してもよいが、枠体6から天井スラブ1下面までの距離が天井ボード8の長さよりも長くなければ、天井ボード8は天井スラブ1に当たってしまうことから、天井ボード8を真っすぐ挿入することによって枠体6に載置することは不可能である。
【0087】
このため、ステップS18において、制御部50は、取得された空間状態に基づいて、天井ボード8を枠体6に載置することが可能か否か、すなわち、配管等を避けて天井ボード8を枠体6に載置することが可能な軌道があるか否かを判定する。
【0088】
具体的には、例えば、枠体6の開口部から見て三つの隅に配管等がある場合には、残りの1つの隅を通る軌道によって天井ボード8を載置することが可能と判定し、例えば、枠体6の開口部の直上に配管等があり、天井ボード8を真っすぐ挿入することができない場合には、天井ボード8を鉛直面に対して所定の角度以上傾けた状態で挿入する軌道によって天井ボード8を載置することが可能と判定する。
【0089】
そして、アーム部30の可動範囲も考慮した結果、配管等を避けて天井ボード8を枠体6に載置可能な軌道があると判定された場合には、保持部40により天井ボード8を保持するためにステップS19へと進む。一方、天井ボード8を枠体6に載置可能な軌道がないと判定された場合には、天井ボード8を載置する作業を行うことができないとしてステップS22に進む。
【0090】
ステップS19において、制御部50は、アーム部30の作動を制御することによって、運搬ロボット110に積載された天井ボード8を保持部40に保持させる。
【0091】
これに先立って、制御部50は、運搬ロボット110に対して、天井ボード8の受け渡しを要求する要求信号を、通信部50aを介して発信する。
【0092】
運搬ロボット110は、制御部90の通信部90aにおいて要求信号を受信すると、天井ボード8を受け渡すために、施工ロボット100の近傍へと移動する。なお、1台の施工ロボット100に対して運搬ロボット110が1台ずつ配置されておらず、複数の施工ロボット100の間で例えば2~3台の運搬ロボット110を共用している場合には、最も近くにいる運搬ロボット110が要求信号に応じて施工ロボット100の近傍へと移動する。
【0093】
運搬ロボット110の接近が検知されると、制御部50は、まず、図3に示すように、アーム部30の第5リンク部32fに取り付けられた第1距離センサ51によって、運搬ロボット110に積載された天井ボード8の状態を認識させる。なお、ステップS19に進んだ時点で、昇降部21は、運搬ロボット110に積載された天井ボード8の高さに応じて予め収縮される。
【0094】
天井ボード8の状態、すなわち、天井ボード8の4つの辺の位置が認識されると、4つの辺の位置に基づいて天井ボード8の中心C1が認識される。そして、制御部50は、認識された天井ボード8の中心C1の延長線上に保持部40の中心C2が位置するように、アーム部30の各回動部31a~31fの回動量を制御する(図4A参照)。
【0095】
図4Aに示される状態から保持部40をさらに天井ボード8に向けて移動させることにより、保持部40のニードル42が天井ボード8の表面8aに突き刺さる(図4B参照)。これにより天井ボード8は、保持部40により保持された状態となる。
【0096】
このように保持部40により天井ボード8が保持された状態となったことは、第1距離センサ51によって検知される。第1距離センサ51による検知結果は、保持完了信号として、施工ロボット100の制御部50から運搬ロボット110の制御部90へと送信される。
【0097】
保持完了信号を受け取った運搬ロボット110の制御部90は、第1倒れ防止機構66の押付部66bを収縮し、押付部66bとローラコンベヤ64とによる天井ボード8の挟持を解除するとともに、施工ロボット100の制御部50へ挟持解除信号を送信する。
【0098】
挟持解除信号を受け取った施工ロボット100の制御部50は、アーム部30の各回動部31a~31fの回動量を制御し、保持部40により保持された天井ボード8を枠体6に向けて移動させる。
【0099】
なお、図6に示すように、運搬ロボット110に積載された天井ボード8が、施工ロボット100側に向けて、2枚並んでいる場合は、施工ロボット100から見て右側の天井ボード8、すなわち、運搬ロボット110の反転機構68によって保持された天井ボード8が、保持部40により保持される天井ボード8として選択される。
【0100】
このようにして運搬ロボット110から施工ロボット100への天井ボード8の引き渡しが完了すると、ステップS20に進み、枠体6への天井ボード8の載置作業が実行される。
【0101】
具体的には、図8Aから図8Dに示すように、制御部50は、アーム部30の各回動部31a~31fの回動量を適宜制御し、天井ボード8が枠体6や配管に当たらないように保持部40の位置を三次元的に変化させることによって、最終的に天井ボード8を枠体6に載置する。
【0102】
図8Aには、格子状に結合されたバー部材6a,6bにより囲まれた枠体6の開口部6cの対角線上を通して斜め上方に向かって天井ボード8が挿入されている状態が示されている。具体的には、天井ボード8は、鉛直面に対して略45度傾けられた状態で開口部6cの対角線上を通るようにして斜め上方へと挿入される。なお、天井ボード8の傾斜角度は、開口部6cの直上の障害物までの距離や枠体6から天井スラブ1下面までの距離に応じて適宜設定される。
【0103】
図8Aに示される状態となった後、天井ボード8全体が枠体6の上方に位置した状態になると、図8Bに示すように、天井ボード8の中心が枠体6の開口部6cの中心と略一致するように、各回動部31a~31fの回動量が制御される。
【0104】
そして、図8Bに示される状態から第1回動部31a、第4回動部31dまたは第6回動部31fを回動させることによって、図8Cに示されるように、開口部6cの4つの辺の向きと天井ボード8の4つの辺の向きとを略一致させる。
【0105】
図8Cに示される状態から第2回動部31b、第3回動部31c及び第5回動部31eを少しずつ回動させることによって、天井ボード8及び保持部40を鉛直方向下方へと移動させる(図1参照)。
【0106】
このように天井ボード8を鉛直方向下方へと移動させると、天井ボード8は、枠体6の開口部6cに対して上方から落とし込まれることによって、図8Dに示すように、4つの辺がバー部材6a,6bによってそれぞれ鉛直方向下方から支持された状態となる。
【0107】
そして、この状態から保持部40をさらに鉛直方向下方へと移動させていくと、天井ボード8の表面8aに突き刺さっていたニードル42が天井ボード8から徐々に抜ける。天井ボード8からニードル42が完全に抜けることによって、枠体6への天井ボード8の載置が完了する。
【0108】
なお、図8A図8Dに示される一連のアーム部30の動きは、一例であって、これに限定されるものではない。例えば、図8Cに示される状態から、天井ボード8全体を鉛直方向下方へと移動させることに代えて、天井ボード8の4つの辺のうちの何れか1つの辺のみを先にバー部材6a,6bに沿って当接した状態、すなわち、天井ボード8が水平面に対して僅かに傾斜した状態とし、その後、バー部材6a,6bに当接した辺を支点として、天井ボード8の残りの3つの辺をバー部材6a,6bに近付けるようにして天井ボード8を枠体6に落とし込んでもよい。
【0109】
また、図8Cに示される状態から天井ボード8を鉛直方向下方へと移動させる工程は、第2距離センサ52によって監視されており、開口部6cの4つの辺の向きと天井ボード8の4つの辺の向きとにずれが生じている場合には、ずれが無くなるように、第1回動部31a、第4回動部31dまたは第6回動部31fが適宜回動される。
【0110】
天井ボード8の載置が完了すると、続くステップS21において、天井ボード8の載置作業の適否の判定、すなわち、天井ボード8の載置作業が正常に完了したか否かが確認される。
【0111】
天井ボード8が枠体6に正常に載置されている場合、すなわち、天井ボード8の4つの辺がバー部材6a,6bにほぼ接した状態となっている場合、施工ロボット100側から見て、枠体6の下面までの距離と天井ボード8の表面8aまでの距離との差は、天井ボード8を下方から支持する枠体6のフランジ部の厚さに略等しく、天井ボード8の4つの辺近傍において同じ大きさになる。
【0112】
このため、ステップS21では、第1距離センサ51及び第2距離センサ52の何れか一方または両方によって天井ボード8の4つの辺近傍における枠体6の下面までの距離と天井ボード8の表面8aまでの距離とを計測し、計測された距離の差が、何れの辺近傍においても予め設定された閾値より小さくなっているか否かによって、天井ボード8の載置作業が正常に完了したか否かを判定している。なお、閾値は、天井ボード8を下方から支持する枠体6のフランジ部の厚さに基づいて設定される。
【0113】
天井ボード8の4つの辺の何れの辺近傍においても距離の差が閾値より小さい場合は、天井ボード8の4つの辺が枠体6にほぼ接した状態になっていると推定されることから、制御部50は、所定の箇所の枠体6に対する天井ボード8の載置作業が正常に完了したとして、作業の完了を記憶するとともにステップS23に進む。
【0114】
一方、何れかの辺近傍における距離の差が閾値以上となった場合は、天井ボード8と枠体6との間に想定を超えた隙間が生じた状態になっていると推定されることから、作業が正常に完了していないとしてステップS22に進む。なお、ステップS22に進む前に、距離の差が閾値以上となった箇所にアーム部30を押し当てて天井ボード8を僅かに上下動させることによって、天井ボード8の載置状態を改善するステップを追加してもよい。
【0115】
ステップS22では、所定の箇所の枠体6に対して天井ボード8の載置が完了していないとして、制御部50は、載置作業不可または載置作業未完了をその原因とともに記憶する。なお、ステップS21及びステップS22で制御部50に記憶された作業状況に関する情報は、制御部50の通信部50aを介してサーバ120へと逐次送信される。
【0116】
このため、サーバ120を介して施工ロボット100の作業状況を監視するオペレータや現場の作業員は、何れの箇所の枠体6に対して天井ボード8の載置作業が正常に完了しているかを容易に確認することができるとともに、何れの天井ボード8の載置作業をやり直す必要があるかや天井ボード8の載置作業が行われなかった原因を容易に把握することができる。
【0117】
このようにステップS21及びステップ22において作業状況の記憶が完了すると、ステップS23に進み、制御部50は、予定されている載置作業がすべて完了したか否かを確認する。
【0118】
予定されていた載置作業がすべて完了した場合、処理を終了し、次の作業の指示をサーバ120から受信するまで施工ロボット100は待機状態となる。
【0119】
一方、予定されていた載置作業がまだ完了していない場合、ステップS13へと戻り、次に天井ボード8が載置される枠体6の場所へと移動する。それ以降、上述のような工程を経て天井ボード8の載置作業が実行される。
【0120】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0121】
上記構成の施工ロボット100の制御部50は、第1距離センサ51及び第2距離センサ52の少なくとも一方により枠体6の形状に関する枠体状態を検知し、検知された枠体状態に基づいてアーム部30を作動させることにより、保持部40によって保持された天井ボード8を、枠体6の上方から落とし込むようにして枠体6に載置している。
【0122】
このように、枠体6の形状を確認した後に、天井ボード8を枠体6に対して載置するようにすることによって、枠体6の4つの辺の向きが施工ロボット100に対してどのような向きとなっている場合であっても、天井ボード8を枠体6に対して円滑に、且つ、自動的に載置することができる。また、高所作業である天井ボード8の載置作業を施工ロボット100によって行うことによって、作業員の作業負担を軽減するとともに安全性を確保することができる。
【0123】
また、上記構成の施工ロボット100の制御部50は、予め検知された天井スラブ1と枠体6との間の空間の空間状態に基づいて、枠体6への天井ボード8の載置の可否を判定している。
【0124】
このように天井スラブ1と枠体6との間の空間に配管等の障害物がある場合には、不用意に天井ボード8を枠体6に載置する作業を実行してしまうことを回避することによって、施工ロボット100による作業の安全性を確保することができる。また、天井スラブ1と枠体6との間の空間に配管等の障害物がある場合であっても、これらを避けることが可能な軌道を演算し、演算された軌道に沿って天井ボード8を移動させることにより、天井ボード8を枠体6に対して円滑に、且つ、自動的に載置することができる。
【0125】
また、上記構成の施工ロボット100の制御部50は、保持部40により天井ボード8を保持させる際、第1距離センサ51によって検出された天井ボード8の形状に関する天井ボード状態に基づいて、保持部40により天井ボード8を保持する位置を設定している。
【0126】
天井ボード8が通る軌道は、天井ボード8が枠体6に当たってしまわないように、天井ボード8の寸法誤差や天井ボード8の保持位置の誤差を考慮して、ある程度の余裕を持って設定されるが、保持部40により天井ボード8が保持される位置を毎回同じ位置とすることが可能となることで、天井ボード8が通る軌道を、あまり余裕がない軌道とすることが可能となる。これにより天井ボード8を載置可能な軌道の範囲が拡がるため、天井ボード8の載置作業の効率を向上させることができる。また、天井ボード8の中心C1を保持部40により保持するようにすることで、天井ボード8の取り回しが安定するため、結果として、天井ボード8を枠体6に載置する作業を安定して行うことができる。
【0127】
なお、次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0128】
上記実施形態では、天井スラブ1と枠体6との間の空間の空間状態を、施工ロボット100に設けられた第1距離センサ51及び第2距離センサ52によって検知している。これに代えて、空間状態は、施工ロボット100または施工ロボット100とは別のロボットに設けられた、水平面における距離をスキャン計測可能な二次元測域センサ、いわゆる、2D-LiDAR(light detection and ranging)センサによって予め検知されていてもよい。具体的には、二次元測域センサを、枠体6の下方から枠体6の開口部を通過させて枠体6の上方へと天井スラブ1に向けて移動させることによって、天井スラブ1と枠体6との間の空間の空間状態を枠体6毎に予め取得しておいてもよい。
【0129】
このように各枠体6に対して予め空間状態が検知されていると、載置作業の可否を事前に判定することが可能となるため、載置作業ができない枠体6を作業対象から予め除外しておくことで、施工ロボット100による天井ボード8の載置作業を効率的に行うことが可能となる。なお、載置作業の可否は、施工ロボット100とは別のロボットが判定してもよい。また、空間状態に加えて、枠体6の状態についても、枠体6毎に予め取得しておいてもよい。
【0130】
また、上記実施形態では、施工ロボット100は、特有の台車部10と昇降部21とを備えている。これに代えて、台車部10と昇降部21とからなる部分は、一般的な高所作業車であってもよく、この場合、アーム部30は、高所作業車の作業台に設置される。
【0131】
また、上記実施形態では、アーム部30の基部32aは、第1リンク部32bとの連結方向軸が鉛直方向に沿うように設置プレート26に固定されている。これに代えて、基部32aは、第1リンク部32bとの連結方向軸が鉛直方向に対して傾いた状態で設置プレート26に固定されていてもよい。このように基部32aを傾けておくことにより、運搬ロボット110からの天井ボード8の受け取りが容易となる。
【0132】
また、上記実施形態では、施工ロボット100は、運搬ロボット110から天井ボード8を受け取っている。これに代えて、施工ロボット100は、複数の天井ボード8を一時的に保管可能な保管部を備えていてもよい。この場合、保管部は、例えば、台車部10に設けられ、天井ボード8は、アーム部30に取り付けられた保持部40により保持可能な状態で保管部に保管される。具体的には、施工ロボット100は、図9図12に示される変形例のような、複数の天井ボード8を保管することが可能な保管部130を備えていてもよい。図9は、保管部130を備えた施工ロボット100の側面図であり、図10は、図9のC-C線に沿う断面を拡大して示した拡大断面図であり、図11は、保管部130を備えた施工ロボット100の動作を説明するための図であり、図12は、図9のD-D線に沿う断面を拡大して示した拡大断面図である。
【0133】
保管部130は、複数の天井ボード8が鉛直方向に積み重ねられた状態で積載される積載機構70と、枠体6に載置される前に天井ボード8が一時的に仮置きされる仮置き部74と、を有する。仮置き部74には、上述の施工ユニット20によって積載機構70から移送された1枚の天井ボード8が仮置きされる。
【0134】
積載機構70は、天井ボード8が積載される積載部71と、台車部10の上面に立設し、積載部71を鉛直方向に移動可能に支持する複数の支柱72と、支柱72に沿って積載部71を鉛直方向に移動させる図示しない電動アクチュエータと、を有する。
【0135】
積載部71は、最も上方に積載される天井ボード8の高さが常に同じ高さとなるように電動アクチュエータによって、その高さが調整される。つまり、積載される天井ボード8が減少するにつれて、積載部71は、徐々に上方へと移動する。なお、作業員が積載部71に天井ボード8を補充する際には、積載部71は最も低い位置へと下げられ、補充が完了すると、積載部71は、最も上方に積載される天井ボード8の高さが所定の高さとなるまで上昇する。最も上方に積載される天井ボード8の高さが所定の高さとなっているか否かは、例えば、何れかの支柱72に取り付けられた近接センサ等によって検知される。
【0136】
仮置き部74は、図9及び図10に示されるように、次に枠体6に載置される予定の天井ボード8を、表面8aが鉛直面にほぼ沿った状態であって、角部の1つが鉛直方向下方を向いた状態で、一時的に置いておくために設けられた載置台であり、天井ボード8の側面8cを支持する第1支持部材76と、天井ボード8の裏面8bを支持する第2支持部材77と、台車部10の上面に立設し、第1支持部材76及び第2支持部材77が直接的または間接的に取り付けられる支柱79と、を有する。
【0137】
第1支持部材76は、図10に示すように、天井ボード8の側面8cが載置される載置面76bを有する載置部76aと、天井ボード8の表面8aに対向する対向部76cと、を有する断面形状が略L字状の部材であり、1枚の天井ボード8の2つの側面8cを支持するように、天井ボード8の中心部分を挟んで対称的に一対配置されている。具体的には、一対の第1支持部材76は、図9に示すように、天井ボード8の側面8cが載置される載置部76aの載置面76bが互いに直交した状態となるようにそれぞれ配置されている。
【0138】
対向部76cは、上方に向かうにつれて天井ボード8の表面8aとの間の間隔が徐々に大きくなるようにテーパ状に形成されており、後述のように天井ボード8を仮置き部74に仮置きする際に天井ボード8の側面8cを案内するガイド部として機能する。
【0139】
第2支持部材77は、天井ボード8の裏面8bが載置される載置面77aを有する平板状の部材であり、第1支持部材76と同様に、天井ボード8の中心を挟んで対称的に一対配置されている。具体的には、第2支持部材77は、図10に示すように、載置面77aが、第1支持部材76の載置部76aの載置面76bと直交した状態となるように配置されている。
【0140】
また、第2支持部材77の載置面77aは、図10に示されるように、鉛直面VPに対して、所定の第1角度θ(例えば、5°~10°、好ましくは6°前後)だけ傾いた状態となっている。このため、仮置き部74に仮置きされた天井ボード8は、2つの側面8cが一対の第1支持部材76の載置部76aの載置面76bにそれぞれ接するとともに、裏面8bが一対の第2支持部材77の載置面77aに接することになる。なお、第1角度θの大きさは、上記範囲に限定されず、載置面77aが鉛直面VPに対して傾くことで天井ボード8が自重により載置面76b及び載置面77aにそれぞれ接した状態となればどのような大きさであってもよく、例えば、10°より大きくてもよい。
【0141】
ここで、上述のように、天井ボード8は、一般的に、表面8aを保護するために、表面8aが重ね合わせられた2枚の天井ボード8を一組とし、複数組が重ねられた状態で市場に流通する。
【0142】
つまり、積載機構70の積載部71に鉛直方向に積み重ねられた天井ボード8をそのまま施工ユニット20の保持部40によって保持して枠体6に載置すると、1枚置きに裏面8b側が枠体6に載置されることになってしまう。
【0143】
そこで、この変形例では、積載機構70に積載された天井ボード8を、施工ユニット20によって、一旦、仮置き部74に仮置きし、仮置きされた天井ボード8の表面8aを施工ユニット20の保持部40によって保持するようにしている。
【0144】
次に、積載機構70の積載部71に積載された天井ボード8を仮置き部74へ仮置きする工程について説明する。
【0145】
制御部50は、アーム部30の作動を制御することによって、積載部71の最も上方に積載された天井ボード8の上面を保持部40により保持させる。なお、天井ボード8は、この後、仮置き部74に一旦、仮置きされることから、この時点において、保持部40の中心C2を天井ボード8の中心C1に合わせる必要がない。このため、例えば、天井ボード8の中心C1位置を認識する必要がないことから、積載部71に積載された天井ボード8を保持部40によって保持することに要する時間を短くすることができる。
【0146】
保持部40により天井ボード8が保持されたことが確認されると、制御部50は、天井ボード8の角部の1つが鉛直方向下方を向いた状態となるようにアーム部30を制御した後、仮置き部74の対向部76cと第2支持部材77との間に天井ボード8が差し込まれるようにアーム部30を制御する。天井ボード8は、対向部76cと第2支持部材77との間に差し込まれる際、対向部76cにテーパ状に形成された部分や第2支持部材77にテーパ状に形成された部分によって案内される。
【0147】
仮置き部74への天井ボード8の仮置きは、保持部40により保持された天井ボード8の面が表面8aである場合、図9に示すように、保持部40を、天井ボード8を挟んで第2支持部材77とは反対側に位置させた状態で行われる。一方、保持部40により保持された天井ボード8の面が裏面8bである場合には、図11に示すように、保持部40を、第2支持部材77側に位置させた状態で行われる。なお、天井ボード8は、上述のように、表面8aが重ね合わせられた2枚の天井ボード8が一組とされていることから、保持部40によって表面8a側と裏面8b側とが交互に保持されることになる。
【0148】
このように仮置き部74に仮置きされた天井ボード8は、その裏面8b側が第2支持部材77側に常に位置し、傾斜した載置面77aに裏面8bが接することになる。
【0149】
ここで、仮置き部74において、保持部40による天井ボード8の保持の解除は、例えば、天井ボード8からニードル42を引き抜く方向に保持部40を動かすことによって行われるが、このとき、天井ボード8は、第1支持部材76や第2支持部材77によって押さえられることになる。このため、第1支持部材76や第2支持部材77が押し当てられた跡が天井ボード8に残ってしまうおそれがある。
【0150】
このような事象を避けるとともに、保持部40による天井ボード8の保持が円滑に解除されるようにするために、保持部40には、図12に示されるような、保持解除機構46が設けられることが好ましい。
【0151】
保持解除機構46は、図12に示すように、保持部40の本体部41の中心部に設けられた電動アクチュエータ48と、電動アクチュエータ48により保持部40の中心C2に沿って進退する押圧部47と、を有する。
【0152】
保持部40によって天井ボード8を保持する際、押圧部47は、図12(a)に示されるように、本体部41内に収容された状態となる一方、保持部40による天井ボード8の保持を解除する際には、図12(b)に示されるように、本体部41から突出することにより、保持部40から天井ボード8を引き離すように天井ボード8を押圧する。なお、図12には、保持部40によって天井ボード8の表面8a側を保持した状態が示されているが、天井ボード8の裏面8b側が保持部40により保持される場合も同様である。
【0153】
押圧部47による天井ボード8の押圧は、瞬間的に行われるものではなく、例えば、数秒程度かけて徐々に行われる。このため、電動アクチュエータ48としては、オンオフ形式の電磁ソレノイドではなく、例えば、ボールねじと回転モータとを組み合わせた電動シリンダといった伸縮量を微調整可能な形式のアクチュエータを用いることが好ましい。また、アクチュエータの駆動方式は、電動式に限定されず、空気圧式や油圧式であってもよい。
【0154】
また、天井ボード8を保持する保持部40の保持力を向上させるために、図12に示されるように、ニードル42は、周方向だけではなく、径方向にも複数配置されてもよい。このようにニードル42を周方向及び径方向に複数配置しておくことにより、積載部71に積載された天井ボード8を保持部40によって容易に持ち上げることが可能となる。なお、保持部40においてニードル42はどのように配列されていてもよく、例えば、円環状や楕円状に配置されていてもよいし、矩形状に配置されていてもよい。
【0155】
保持部40による保持が解除され仮置き部74に仮置きされた天井ボード8は、その自重によって、裏面8bが第2支持部材77の載置面77aに接し、2つの側面8cが載置部76aの載置面76bにそれぞれ接した状態で安定する。つまり、天井ボード8は、仮置き部74に仮置きされることによって、表面8a側が常に同じ方向を向くとともに、中心C1の位置が常に同じ位置となる。
【0156】
上述のように、天井ボード8が仮置きされる仮置き部74は、アーム部30を含む施工ユニット20と同様に、台車部10に設けられていることから、アーム部30の座標系と仮置き部74の座標系とは同じ座標系となる。つまり、アーム部30の座標系において、天井ボード8の表面8aの中心C1の位置座標は常に同じ位置座標となる。
【0157】
したがって、枠体6に天井ボード8を載置するために仮置き部74に仮置きされた天井ボード8を保持部40によって保持する際には、保持部40を所定の位置座標へと移動させるだけで、保持部40の中心C2と天井ボード8の中心C1とを一致させることができる。
【0158】
このように、仮置き部74に仮置きされた天井ボード8を保持部40によって保持するにあたって、天井ボード8の中心C1を検知するための工程、例えば、天井ボード8の4つの辺の位置を認識するといった工程が不要になることから、天井ボード8を枠体6に載置する作業の作業時間を短縮することが可能となる。
【0159】
また、仮置き部74に仮置きされた天井ボード8は、裏面8b側から支持部材77によって支えられた状態となっていることから、天井ボード8の表面8a側から保持部40を近づけることによって、保持部40のニードル42は、天井ボード8の表面8aへと容易に突き刺さることになる。このため、天井ボード8を保持部40によって容易に保持することができる。
【0160】
そして、図9に示すように、天井ボード8の表面8a側が保持部40によって保持されたことが確認されると、制御部50は、上記実施形態と同様にして、アーム部30の各回動部31a~31fの回動量を適宜制御し、天井ボード8を枠体6に載置する。
【0161】
このようにこの変形例では、天井ボード8の保管と、枠体6への天井ボード8の載置と、が1台の施工ロボット100で行われるため、天井ボード8の載置作業をより効率的に行うことができる。
【0162】
また、上述の運搬ロボット110のように、ローラコンベヤ64上に複数の天井ボード8が水平方向に重ね合わされた状態で積載されている場合、ローラコンベヤ64に接する天井ボード8の側面8cが欠損してしまうおそれがあるのに対して、この変形例では、積載機構70に複数の天井ボード8が鉛直方向に積み重ねられた状態で積載されているため、このような欠損が生じることを避けることができる。また、この変形例では、納入された複数の天井ボード8を荷姿のままで積載機構70に載せ、梱包を解くことにより、施工ロボット100への天井ボード8の補充が完了することから、補充作業における作業員の負担を軽減することができる。
【0163】
また、上記実施形態や上記変形例では、施工ロボット100及び運搬ロボット110に搭載されるシリンダやモータといったアクチュエータが電動式である場合について説明したが、アクチュエータの駆動方式は、電動式に限定されず、空気圧式や油圧式であってもよい。
【0164】
また、上記実施形態では、施工ロボット100は、台車部10の情報取得器15によって取得された周辺の情報に基づいて自己位置を認識している。施工ロボット100は、自己位置の認識精度を向上させるために、情報取得器15に加えて、ジャイロセンサや方位センサ、加速度センサを備えていてもよい。
【0165】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0166】
100・・・天井ボード施工ロボット
1・・・天井スラブ
2・・・床面
6・・・枠体
8・・・天井ボード
10・・・台車部
21・・・昇降部
30・・・アーム部
40・・・保持部
42・・・ニードル(突起)
50・・・制御部
51・・・第1距離センサ(状態検知部)
52・・・第2距離センサ(状態検知部)
110・・・運搬ロボット
130・・・保管部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10
図11
図12