(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098638
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】積層セラミックキャパシタ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20230703BHJP
H01G 4/232 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
H01G4/30 201F
H01G4/30 513
H01G4/30 516
H01G4/30 517
H01G4/30 311E
H01G4/30 201G
H01G4/232 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194137
(22)【出願日】2022-12-05
(31)【優先権主張番号】10-2021-0190278
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジュン、ヒー ジュン
(72)【発明者】
【氏名】カン、ジュン イル
(72)【発明者】
【氏名】パク、ミ ジュン
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC09
5E001AC10
5E001AE01
5E001AE02
5E001AE03
5E001AF06
5E001AH07
5E001AJ03
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC19
5E082BC23
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5E082GG11
5E082GG30
5E082JJ03
5E082JJ12
5E082JJ30
(57)【要約】 (修正有)
【課題】水素浸透の抑制による高温信頼性が改善された積層セラミックキャパシタ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】積層型電子部品100は、複数の内部電極121、122及び複数の内部電極の間に配置された誘電体層111を含む本体110と、本体に配置されて内部電極と連結される外部電極130、140と、を含む。外部電極は、それぞれ第1めっき層132、142を含む。第1めっき層は、結晶粒の長径と短径との平均比が1:1~3:1である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の内部電極及び前記複数の内部電極の間に配置された誘電体層を含む本体と、
前記本体に配置されて前記内部電極と連結される外部電極と、を含み、
前記外部電極は第1めっき層を含み、
前記第1めっき層は、結晶粒の長径と短径との平均比が1:1~3:1である、積層セラミックキャパシタ。
【請求項2】
前記第1めっき層はニッケルめっき層を含む、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項3】
前記長径は結晶粒の最大直径を示し、
前記短径は、前記長径の測定方向と垂直な方向に測定された最大直径を示す、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項4】
前記第1めっき層は、面積を全体的に分析する際に、前記長径と前記短径との比率が1:1~3:1を満たす結晶粒の割合が50%以上である、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項5】
前記結晶粒の前記長径と前記短径との平均比は1.5:1~2.5:1である、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項6】
前記第1めっき層は、前記結晶粒の平均直径が0.3~1.5μmである、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項7】
前記第1めっき層は、平均厚さが1~10μmである、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項8】
前記第1めっき層は、前記結晶粒の前記長径が0.2~2μmである、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項9】
前記外部電極は、前記第1めっき層上に配置される第2めっき層をさらに含む、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項10】
前記第2めっき層は錫めっき層を含む、請求項9に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項11】
前記第2めっき層の平均厚さは2~10μmである、請求項9に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項12】
前記第1めっき層の厚さW1に対する前記第2めっき層の厚さW2の平均比率W2/W1が1~10である、請求項9に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項13】
前記外部電極は、前記本体と前記第1めっき層との間に配置されて前記内部電極と連結される電極層をさらに含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項14】
複数の内部電極及び前記複数の内部電極の間に配置された誘電体層を含む本体を準備する段階と、
前記内部電極と連結されるように外部電極を形成する段階と、を含み、
前記外部電極は第1めっき層を含み、前記第1めっき層の形成時には周期的パルス反転めっきを用いる第1めっきを行う、積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項15】
前記第1めっきはニッケルめっきである、請求項14に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項16】
前記第1めっきはバレルめっきである、請求項14に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項17】
前記第1めっき時に、バレルの回転速度が5~30rpmである、請求項16に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項18】
前記周期的パルス反転めっきは、波形中に1以上の反転電流を含む、請求項14に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項19】
前記第1めっき時に、順方向電流密度が0.5~20ASDであり、反転電流密度が0.1~20ASDを満たす、請求項14に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項20】
前記周期的パルス反転めっきは、順方向電流及び反転電流を含み、
前記反転電流の時間Trに対する前記順方向電流の時間Tfの比率Tf/Trが2~50の範囲を満たす、請求項14に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項21】
前記周期的パルス反転めっきは、めっき完了時点まで連続的に行われる、請求項14に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項22】
前記周期的パルス反転めっき時に、めっき完了時点までオフ時間がない、請求項21に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項23】
前記第1めっきによる第1めっき層を形成した後、第1めっき層上に第2めっき層を形成する段階をさらに含む、請求項14から22のいずれか一項に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックキャパシタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(Multi-layered Ceramic Capacitor、MLCC)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)やプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン、及び携帯電話など、様々な電子製品の印刷回路基板に装着され、電気を充電又は放電させる役割を果たすチップ型のコンデンサである。
【0003】
このような積層セラミックキャパシタは、小型でありながらも高容量が保障され、実装が容易であるという利点により、様々な電子装置の部品として使用することができる。最近、電子機器の小型化及び高性能化に伴い、積層セラミックキャパシタも小型化及び高容量化する傾向にある。
【0004】
このような流れに伴って積層セラミックキャパシタの信頼性に対する重要度が高まっており、特に電気的特性の改善に対する要求が高まっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明のいくつかの目的の一つは、水素浸透の抑制による高温信頼性が改善された積層セラミックキャパシタ及びその製造方法を提供することである。
【0006】
但し、本発明の目的は上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は、複数の内部電極及び複数の内部電極の間に配置された誘電体層を含む本体と、上記本体に配置されて上記内部電極と連結される外部電極と、を含み、上記外部電極は第1めっき層を含み、上記第1めっき層は、結晶粒の長径と短径との平均比が1:1~3:1である、積層セラミックキャパシタを提供する。
【0008】
また、本発明のさらに他の一実施形態は、複数の内部電極及び上記複数の内部電極の間に配置された誘電体層を含む本体を準備する段階と、上記内部電極と連結されるように外部電極を形成する段階と、を含み、上記外部電極は第1めっき層を含み、上記第1めっき層の形成時には周期的パルス反転めっきを用いる第1めっきを行う、積層セラミックキャパシタの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の様々な効果の一つは、水素浸透の抑制による高温信頼性が改善された積層セラミックキャパシタ及びその製造方法を提供することである。
【0010】
但し、本発明の多様かつ有益な利点及び効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る積層セラミックキャパシタを概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図1のI-I'線に沿った断面図を概略的に示すものである。
【
図3】
図1のII-II'線に沿った断面図を概略的に示すものである。
【
図4】本発明の一実施形態に係る積層セラミックキャパシタの作製のために、誘電体層及び内部電極が積層された本体を分解して概略的に示す分解斜視図である。
【
図5】従来の直流(DC;direct current)めっき工法による電流印加プロファイルを模式的に示すものである。
【
図6】本発明の一実施形態に係る周期的パルス反転(PPR;Periodic Pulse Reverse)めっき工法による電流印加プロファイルを模式的に示すものである。
【
図7】本発明の発明例1から得られた積層セラミックキャパシタを厚さ方向Tに切った断面を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真を示すものである。
【
図8】本発明の比較例1から得られた積層セラミックキャパシタを厚さ方向Tに切った断面を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真を示すものである。
【
図9】本発明の発明例1及び比較例1に対する高温IR信頼性の評価結果を示すものである。
【
図10】本発明の発明例1及び比較例1に対する均一性の評価結果を示すものである。
【
図11】
図2のXを拡大した模式図を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形することができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどは、より明確な説明のために誇張されてもよく、図面上の同じ符号で示される要素は同じ要素である。
【0013】
そして、図面において本発明を明確に説明するために説明と関係のない部分は省略し、複数の層及び領域を明確に表現するために厚さを拡大して示し、同一思想の範囲内の機能が同一である構成要素については、同一の参照符号を用いて説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0014】
図面において、L方向は第1方向又は長さ方向と定義し、W方向は第2方向又は幅方向と定義し、T方向は第3方向、厚さ方向又は積層方向と定義することができるが、これに制限されるものではない。
【0015】
[積層セラミックキャパシタ]
図1は、本発明の一実施形態に係る積層セラミックキャパシタの斜視図を概略的に示すものであり、
図2は、
図1のI-I'線に沿った断面図を概略的に示すものであり、
図3は、
図1のII-II'線に沿った断面図を概略的に示すものであり、
図4は、本発明の一実施形態に係る誘電体層及び内部電極が積層された本体を分解して概略的に示す分解斜視図である。
【0016】
以下、
図1~
図4を参照して、本発明の一実施形態に係る積層セラミックキャパシタについて詳細に説明する。
【0017】
本発明の一実施形態に係る積層セラミックキャパシタ100は、複数の内部電極121、122及び上記複数の内部電極の間に配置された誘電体層111を含む本体110と、上記本体に配置されて上記内部電極と連結される外部電極130、140と、を含む。
【0018】
本体110は、複数の内部電極121、122及び上記複数の内部電極の間に配置された誘電体層111を含む。上記本体において、誘電体層111及び内部電極121、122は交互に積層されている。
【0019】
本体110の具体的な形状に特に制限はないが、図示のように、本体110は六面体形状又はこれと類似の形状からなってもよい。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粉末の収縮により、本体110は完全な直線を有する六面体形状ではないが、実質的に六面体形状を有することができる。
【0020】
本体110は、厚さ方向Tに互いに対向する第1及び第2面1、2と、上記第1及び第2面1、2と連結され、長さ方向Lに互いに対向する第3及び第4面3、4と、第1及び第2面1、2と連結され、第3及び第4面3、4と連結され、幅方向Wに互いに対向する第5及び第6面5、6と、を有することができる。
【0021】
本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であって、隣接する誘電体層111間の境界は走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0022】
本発明の一実施形態によると、上記誘電体層111を形成する原料は、十分な静電容量が得られる限り特に制限されない。例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料、又はチタン酸ストロンチウム系材料などを使用することができる。上記チタン酸バリウム系材料は、BaTiO3系セラミック粉末を含むことができ、上記セラミック粉末の例示として、BaTiO3、BaTiO3にCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)等が一部固溶した(Ba1-xCax)TiO3、Ba(Ti1-yCay)O3、(Ba1-xCax)(Ti1-yZry)O3、又はBa(Ti1-yZry)O3等が挙げられる。
【0023】
上記誘電体層111を形成する材料は、チタン酸バリウム(BaTiO3)などのパウダーに、本発明の目的に応じて様々なセラミック添加剤、有機溶剤、結合剤、分散剤などを添加することができる。
【0024】
内部電極121、122は、誘電体層111と厚さ方向Tに交互に配置されることができる。内部電極は、第1内部電極121及び第2内部電極122を含むことができる。第1内部電極121及び第2内部電極122は、本体110を構成する誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように交互に配置され、本体110の第3面3及び第4面4にそれぞれ露出することができる。
【0025】
図2を参照すると、第1内部電極121は第4面4と離隔し、第3面3を介して露出し、第2内部電極122は第3面3と離隔し、第4面4を介して露出することができる。
【0026】
すなわち、第1内部電極121及び第2内部電極122は、それぞれ本体の長さ方向Lの両端面である第3面3及び第4面4に交番して露出し、第1外部電極130及び第2外部電極140にそれぞれ露出することができる。
【0027】
第1内部電極121は第2外部電極140とは連結されず、第1外部電極130と連結され、第2内部電極122は第1外部電極130とは連結されず、第2外部電極140と連結される。したがって、第1内部電極121は第4面4において一定距離離隔して形成され、第2内部電極122は第3面3において一定距離離隔して形成される。
【0028】
このとき、第1内部電極121及び第2内部電極122は、中間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離されてもよい。
【0029】
第1内部電極121及び第2内部電極122を形成する材料は特に制限されず、例えば、パラジウム(Pd)、パラジウム-銀(Pd-Ag)合金等の貴金属材料、ニッケル(Ni)及び銅(Cu)のうち1つ以上の物質からなる導電性ペーストを使用して形成されることができる。
【0030】
上記導電性ペーストの印刷方法としては、スクリーン印刷法又はグラビア印刷法などを使用することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0031】
図4を参照すると、本体110は、第1内部電極121が印刷されたセラミックグリーンシートと第2内部電極122が印刷されたセラミックグリーンシートとを交互に積層した後、焼成して形成することができる。
【0032】
一方、内部電極121、122の平均厚さは特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化のために、内部電極121、122の平均厚さteは100nm~1.5μmの範囲であってもよい。
【0033】
内部電極121、122の平均厚さteの測定方法については特に限定されないが、内部電極が観察されるように積層セラミックキャパシタを厚さ方向Tに切った断面を基準として測定することができる。
【0034】
一例として、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。
【0035】
具体的に、
図2に示すように、本体110の幅方向Wの中央部で切断した長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を走査電子顕微鏡(SEM)でスキャンしたイメージから抽出された任意の第1内部電極121及び第2内部電極122に対し、長さ方向Lに等間隔である30個の地点におけるその厚さを測定して平均値を求めることができる。
【0036】
本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含んで容量が形成される容量形成部Aと、上記容量形成部Aの上部及び下部に形成されたカバー部112、113とを含むことができる。
【0037】
また、上記容量形成部Aは、キャパシタの容量形成に寄与する部分であって、誘電体層111を間に挟んで複数の第1内部電極121及び第2内部電極122を繰り返し積層して形成することができる。
【0038】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一の誘電体層又は2つ以上の誘電体層を容量形成部Aの上下面にそれぞれ厚さ方向に積層して形成することができ、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0039】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は内部電極を含まず、誘電体層111と同じ材料を含むことができる。
【0040】
すなわち、上記上部カバー部112及び下部カバー部113はセラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)系セラミック材料を含むことができる。
【0041】
一方、カバー部112、113の厚さtpは特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、カバー部112、113の厚さtpは20μm以下であってもよい。
【0042】
また、上記容量形成部Aの側面にはマージン部114、115が配置されることができる。
【0043】
マージン部114、115は、本体110の第6面6に配置されたマージン部114と、第5面5に配置されたマージン部115とを含むことができる。すなわち、マージン部114、115は、上記セラミック本体110の幅方向の両側面に配置されることができる。
【0044】
マージン部114、115は、
図3に示すように、上記本体110を幅-厚さ(W-T)方向に切った断面において、第1内部電極121及び第2内部電極122の両端と本体110の境界面との間の領域を意味することができる。
【0045】
マージン部114、115は、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0046】
マージン部114、115は、セラミックグリーンシート上にマージン部が形成される箇所を除き、導電性ペーストを塗布して内部電極を形成することにより形成されたものであってもよい。
【0047】
また、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後の内部電極が本体の第5面5及び第6面6に露出するように切断した後、単一の誘電体層又は2つ以上の誘電体層を容量形成部Aの両側面に幅方向に積層してマージン部114、115を形成することもできる。
【0048】
外部電極130、140は本体110に配置され、内部電極121、122と連結される。
【0049】
すなわち、
図2に示す形態のように、本体110の第3面3及び第4面4にそれぞれ配置され、第1内部電極121及び第2内部電極122とそれぞれ連結された第1外部電極130及び第2外部電極140を含むことができる。
【0050】
本実施形態では、積層型電子部品100が2つの外部電極130、140を有する構造について説明しているが、外部電極130、140の個数や形状などは、内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変わることができる。
【0051】
一方、外部電極130、140は、金属などのように、電気伝導性を有するものであれば、如何なる物質を使用して形成されてもよく、電気的特性、構造的安定性などを考慮して具体的な物質が決定されてもよく、さらに、多層構造を有してもよい。
【0052】
例えば、外部電極130、140は、本体110に配置される電極層131、141と、上記電極層上に形成されためっき層132、133、142、143と、を含むことができる。
【0053】
このとき、電極層131、141は、導電性金属及びガラスを含むことができ、具体的に、導電性金属及びガラスを含む焼成(firing)電極であるか、又は導電性金属及び樹脂を含む樹脂系電極であることができる。
【0054】
また、電極層131、141は、本体上に焼成電極及び樹脂系電極が順次に形成された形態であってもよい。また、電極層131、141は、本体上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されてもよく、焼成電極上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されたものであってもよい。
【0055】
電極層131、141に含まれる導電性金属として、電気伝導性に優れた材料を使用することができるが、特に限定されない。例えば、導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)及びそれらの合金のうち1つ以上であってもよい。
【0056】
めっき層132、133、142、143は、実装特性を向上させる役割を果たす。めっき層132、133、142、143の種類は特に限定されず、Ni、Sn、Pd及びこれらの合金のうち1つ以上を含むめっき層であってもよく、複数の層で形成されてもよい。めっき層に対するより具体的な例を挙げると、めっき層132、133、142、143はNiめっき層又はSnめっき層であってもよい。
【0057】
あるいは、めっき層141、142は、電極層131、132上にNiめっき層及びSnめっき層が順次に形成された形態であってもよく、Snめっき層、Niめっき層及びSnめっき層が順次に形成された形態であってもよい。また、めっき層141、142は、複数のNiめっき層及び/又は複数のSnめっき層を含んでもよい。
【0058】
最近、小型化及び高容量化に対する要求が深化し、積層セラミックキャパシタに対して安定した性能を実現することが重要な課題となっている。
【0059】
ところが、積層セラミックキャパシタは、内部電極に電荷が蓄えられて電極の容量を満たすと、漏れ電流以外の電流はもはや流れなくなる。このとき、測定した積層セラミックキャパシタの抵抗値をIR(Insulation Resistance)といい、積層セラミックキャパシタの信頼性を判断するための最も重要な指標である。
【0060】
このような積層セラミックキャパシタの信頼性を判断するための最も重要な指標であるIR特性に関して、本発明者らは、チップの内部に浸透する水素がIR劣化の主な原因と推定し、これを検証する評価を行った。
【0061】
同一機種の積層セラミックキャパシタに対して、信頼性正常製品とIR劣化製品との間の熱放出分光器(Thermal Desorption Spectroscopy;TDS)によって水素含量を分析した結果、IR劣化製品は、正常製品に比べて浸透した水素の含有量が6倍以上高いと分析された。
【0062】
すなわち、積層セラミックキャパシタは、通常、基板内へのチップの実装を目的としてNiやSnなどのめっきを行うが、めっき反応中に水素が発生し、水素の発生は水系で起こる電気化学反応の特性上、不可避であることが特徴である。
【0063】
このことから、本発明者らは、めっき工程中に、水素反応を最小化する必要があることを認識したが、従来技術では、このような技術的問題を認識していないだけでなく、水素の浸透を抑制できる積層セラミックキャパシタの製造技術は開発されていない実情である。
【0064】
よって、本発明者らは鋭意検討した結果、積層セラミックキャパシタの製造時に、めっき条件等を精密制御することにより、外部電極中のめっき層の結晶粒形態に影響を及ぼすことを確認した。
【0065】
また、本発明者らは、めっき層の結晶粒形態が、浸透する水素量を抑制する上で重要な要素であることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的に、本発明による外部電極130、140は第1めっき層132、142を含み、上記第1めっき層は結晶粒の長径と短径との平均比が1:1~3:1の範囲を満たす。
【0066】
外部電極中に含まれる少なくとも1つのめっき層として、第1めっき層を含み、上記第1めっき層に対する結晶粒の長径及び短径の平均比が1:1以上3:1以下を満たすように丸みを帯びた形状を有することにより、高温信頼性を向上させることができる。具体的に、めっき工程中、不可避に発生する水素による影響を最小化することができ、これによりIR特性の改善が可能となる。
【0067】
第1めっき層132、142において、結晶粒の長径と短径との平均比が3:1を超えると、上述した第1めっき層の水素浸透抑制の効果を期待し難い。一方、上記長径は結晶粒の最大直径を意味するものであるため、上記結晶粒の長径と短径との平均比の最小値(すなわち、下限)は1:1となる。なお、上述の効果を極大化する観点から、上記結晶粒の長径と短径との平均比は1.5:1~2.5:1であってもよい。
【0068】
一方、本明細書において、上記結晶粒の長径とは、結晶粒の内部を貫通する最大直径を意味する。また、上記結晶粒の短径とは、上記長径の測定方向と垂直な方向に測定された最大直径を意味する。但し、上記結晶粒の長径として、内部を貫通する最大直径が同じ長さで2つ以上存在する場合は、いずれか任意の1つを長径と見なし、上述した方法と同様に短径を測定することができる。
【0069】
図11には、
図2のXを拡大した模式図が示されている。
図11に示すように、第1めっき層132内の結晶粒150に対して、内部を貫通する最大直径である長径L1と、上記長径の測定方向と垂直な方向に測定された最大直径である短径L2を測定することにより、長径と短径との平均比L1:L2を求めることができる。
【0070】
上述した結晶粒の長径と短径との測定時には、積層セラミックキャパシタの厚さ方向Tに切った断面を基準として測定することができる。例えば、
図2に示すように、長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を走査電子顕微鏡(SEM)でイメージスキャンして測定することにより求めることができる。一例として、断面を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影したとき、上記第1めっき層のうち、最も大きい結晶粒の順に10個に対する長径及び短径をそれぞれ測定した後、長径及び短径の比に対する平均値を求めることによって、結晶粒の長径と短径との平均比を求めることができる。
【0071】
本発明の一実施形態によると、第1めっき層132、142はニッケルめっき層を含むことができ、あるいは、上記第1めっき層はニッケルめっき層であることができる。第1めっき層としてニッケルめっき層を含むことで、水素浸透抑制の効果を確保することができる。
【0072】
本発明の一実施形態によると、上記第1めっき層は、面積を全体的に分析する際に、長径と短径との比率が1:1~3:1を満たす結晶粒の割合が50%以上であってもよい。本発明において、水素浸透抑制の効果を有効に発揮することは、上述した長径と短径との比率を満たす結晶粒であるため、本発明において、上述の長径と短径との比率を満たす結晶粒が50%以上含まれることにより、上述の効果を確保することができる。
【0073】
本発明の一実施形態によると、上記第1めっき層は、結晶粒の平均直径が0.3~1.5μmであってもよい。上記第1めっき層の結晶粒の平均サイズが0.3μm未満であると、めっき膜の応力に問題が生じる可能性がある。一方、上記第1めっき層の結晶粒の平均サイズが1.5μmを超えると、水素浸透経路(path)が短くなり、製品性能が劣化する可能性があり、さらに、硬度が減少して機械的物性に悪影響を及ぼすという問題が生じる可能性がある。
【0074】
また、本発明の一実施形態によると、上記第1めっき層は平均厚さが1~10μmであってもよい。上記第1めっき層の平均厚さが1μm未満であると、Ni遮蔽(coverage)の不足による水素浸透の問題が生じる可能性がある。一方、上記第1めっき層の平均厚さが10μmを超えると、チップ(chip)のL、W、及びT方向のサイズオーバー(size over)の問題が生じる可能性がある。
【0075】
上記第1めっき層の平均厚さの測定時には、外部電極のうち第1めっき層が観察されるように、積層セラミックキャパシタの厚さ方向Tに切った断面を基準として測定することができる。例えば、
図2に示すように、積層セラミックキャパシタの長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を走査電子顕微鏡(SEM)でイメージスキャンして、第1めっき層の同一線上の30個の地点に対する各厚さに対する平均値を求めることで測定することができる。あるいは、積層セラミックキャパシタの外部電極側の幅及び厚さ方向(W-T)の断面を走査電子顕微鏡(SEM)でイメージスキャンし、第1めっき層の同一線上の30個の地点に対する各厚さに対する平均値を求めることで測定することができる。
【0076】
本発明の一実施形態によると、上記第1めっき層の結晶粒の長径は0.2~2μmであってもよい。このとき、上記結晶粒の長径に対する定義は、上述の内容を同様に適用することができる。第1めっき層において、結晶粒の長径が0.2μm未満であると、めっき膜の応力に問題が生じる可能性がある。一方、第1めっき層において、結晶粒の長径が2μmを超えると、水素浸透経路(path)が短くなり、製品性能が劣化する可能性があり、さらに、硬度が減少して機械的物性に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0077】
一方、本発明の一実施形態によると、上記外部電極は、上記第1めっき層上に配置される第2めっき層をさらに含むことができ、上記第2めっき層として錫めっき層を含むことができる(あるいは、上記第2めっき層は錫(Sn)めっき層であってもよい)。
【0078】
本発明の一実施形態によると、上記第2めっき層の平均厚さは2~10μmであってもよい。上記第2めっき層の平均厚さが2μm未満であると、Ni/Sn金属間化合物(IMC)層による半田(Soldering)の問題が生じる可能性がある。一方、上記第2めっき層の平均厚さが10μmを超えると、チップ(chip)のL、W、及びT方向のサイズオーバー(size over)の問題が生じる可能性がある。
【0079】
本発明の一実施形態によると、上記第1めっき層の厚さW1に対する上記第2めっき層の厚さW2の平均比率W2/W1は1~10であってもよい。上記平均比率W2/W1が1未満であると、金属間化合物(IMC)層による半田(Soldering)の問題が生じる可能性がある。一方、上記平均比率W2/W1が10を超えると、チップ(chip)のL、W、及びT方向のサイズオーバー(size over)の問題が生じる可能性がある。
【0080】
また、本発明の一実施形態によると、外部電極130、140は、上記本体110と上記第1めっき層132、142との間に配置され、上記内部電極121、122と接続される電極層131、141をさらに含むことができる。一方、電極層131、141については、上述の説明を同様に適用可能である。
【0081】
積層型電子部品100のサイズは特に限定する必要はない。但し、小型化及び高容量化を同時に達成するためには、誘電体層及び内部電極の厚さを薄くして積層数を増加させなければならないため、1005(長さ×幅、1.0mm×0.5mm)以下のサイズを有する積層型電子部品100において、本発明による信頼性向上効果がより顕著になり得る。
【0082】
したがって、製造誤差、外部電極のサイズなどを考慮すると、積層型電子部品100の長さが1.0mm以下であり、幅が0.5mm以下である場合、本発明による信頼性向上効果がより顕著になり得る。ここで、積層型電子部品100の長さは、積層型電子部品100の第2方向の最大サイズを意味し、積層型電子部品100の幅は、積層型電子部品100の第3方向の最大サイズを意味することができる。
【0083】
次に、本発明のさらに他の一態様による積層セラミックキャパシタの製造方法について詳細に説明する。但し、本発明の積層セラミックキャパシタが必ずしも以下の製造方法により製造されるべきであることを意味するものではない。
【0084】
[積層セラミックキャパシタの製造方法]
本発明の一実施形態に係る積層セラミックキャパシタ100の製造方法は、複数の内部電極121、122及び上記複数の内部電極の間に配置された誘電体層111を含む本体110を準備する段階と、上記内部電極と連結されるように外部電極130、140を形成する段階と、を含む。
【0085】
上記積層セラミックキャパシタの製造方法において、上述の本体を準備する段階及び外部電極を形成する段階については、積層セラミックキャパシタに関する上述の説明を同様に適用可能である。
【0086】
本発明において、外部電極130、140は第1めっき層132、142を含み、上記第1めっき層の形成時には、周期的パルス反転めっきを用いる第1めっきを行う。
【0087】
従来技術では、積層セラミックキャパシタの製造過程のうち、か焼する際にチップの表面にニッケル(Ni)めっき及び錫(Sn)めっきを行う場合、
図5のような直流(DC;direct current)電流印加方式で所定時間の間、一定の電流を印加した。したがって、めっき反応に伴って発生する水素が、めっき時間の間チップの外部から内部に持続的に浸透し、累積された浸透水素量が究極的にはIRの劣化を発生させるという問題があった。
【0088】
そこで、本発明者らは、上述した従来技術の問題点を解決すべく、鋭意検討を行った結果、外部電極のうち第1めっき層の形成時に、周期的パルス反転(Periodic Pulse Reverse;PPR)めっきを適用することにより、丸みを帯びた形状の結晶粒を含む第1めっき層が形成可能であり、これによって、水素浸透の抑制による高温信頼性が確保可能であることを見出した。
【0089】
具体的に、
図5のような従来技術の直流電流印加プロファイルとは異なり、本発明では、周期的パルス反転(PPR)による
図6のような波形の電流印加プロファイルを適用する。したがって、めっきが行われる順方向(Forward)電流の適用時間の間には水素を吸着することができるが、反転(Reverse)電流の適用時間の間には吸着された水素が脱着し、めっき過程中の水素の浸透が容易ではない。したがって、従来技術であるDCめっき工法に比べてPPRめっき工法を利用すると、水素の蓄積がより減少する効果がある。さらに、PPRめっき工法により形成される第1めっき層においても、丸みを帯びた形状の結晶粒が形成されることができる。
【0090】
したがって、本発明によるPPRめっき工法を適用して形成されたニッケルめっき層の場合、
図7に示すように、丸みを帯びた形状の結晶粒を形成する。一方、従来技術によるDCめっき工法を適用して形成されたニッケルめっき層の場合、
図8に示すように、尖った形状である針状の結晶粒を形成する。
【0091】
本発明の一実施形態によると、上記第1めっきはニッケルめっきを含んでもよく、又は第1めっきはニッケルめっきであってもよい。
【0092】
一方、以下では、本発明の好ましい一実施形態である周期的パルス反転めっきの条件について説明する。具体的に、上記周期的パルス反転めっきは、
図6に示すように、順方向(Forward)電流及び反転(Reverse)電流を含み、波形中に1以上の反転電流を含むことができる。このように、順方向電流及び反転電流の両方を含みながらも、反転(Reverse)電流を1以上含むことにより、従来のDC工法に比べて、水素脱着の過程を必ず含むようになるため、めっき過程中における水素の蓄積をより抑制することができる。
【0093】
また、本発明の一実施形態によると、上記第1めっき時に、順方向電流密度が0.5~20ASDであり、反転電流密度が0.1~20ASDを満たすことができる。
【0094】
また、本発明の一実施形態によると、上記反転電流の時間Trに対する上記順方向電流の時間Tfの比率Tf/Trは2~50の範囲を満たすことができる。上記比率Tf/Trが2未満であると、外部電極の消失問題が生じる可能性がある。一方、上記比率Tf/Trが50を超えると、水素浸透抑制効果に問題が生じる可能性がある。
【0095】
また、本発明の一実施形態によると、上記反転電流の強度が上記順方向電流の強度より大きくてもよい。
【0096】
上述した条件を満たすように第1めっき層を形成することにより、第1めっき層の結晶粒形状、結晶粒の分布形態などが制御可能であり、水素浸透抑制による高温信頼性を確保することができる。
【0097】
本発明の一実施形態によると、周期的パルス反転めっきは、
図6に示すように、めっき完了時点まで連続的に行われることができ、めっき完了時点まで電流を「0」に設定する別途のオフ時間なしに行われることができる。
【0098】
また、本発明の一実施形態によると、上記第1めっきはバレルめっきであってもよく、第1めっき時に、バレルの回転速度は5~30rpmの範囲であってもよい。上記第1めっき時に、バレルの回転速度が5rpm未満であるか、バレルの回転速度が30rpmを超える場合は、チップとチップとが互いに付着する現象及び厚さ散布に問題が生じる可能性がある。
【0099】
このとき、上述の説明以外に、バレルめっきについては当該技術分野における通常の内容を同様に適用可能である。
【0100】
本発明の一実施形態によると、上記第1めっきによる第1めっき層を形成した後、第1めっき層上に第2めっき層を形成する段階をさらに含むことができる。このとき、上記第2めっき層を形成する方法については特に限定されず、第2めっき層に関する上述の説明を同様に適用することができる。
【0101】
次いで、本発明の一実施形態によると、上述のめっき段階の後、120~200℃で熱処理を行う段階をさらに含むことができる。めっき後、上述した高温の温度範囲で更なる後処理を行うことにより、めっき層内の焼鈍(annealing)効果及び層内の水分除去や容量回復の効果を確保することができる。
【0102】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。但し、下記の実施例は、例示を挙げて本発明を説明するためのものであり、本発明の権利範囲を制限するものではないことに留意する必要がある。本発明の権利範囲は、特許請求の範囲に記載された事項及びこれにより合理的に類推される事項によって決定されるものである。
【0103】
(実施例)
比較例1と発明例1に対して、同様の条件で、セラミックペーストを形成し、これを用いてPETフィルム上にセラミックグリーンシートを形成し、このようなセラミックグリーンシート上にNi内部電極ペーストを印刷し、
図4に示すように交互に積層して積層体を形成した。このように形成された積層体を焼成した後、積層体の両端面にCuペーストを塗布してベークすることにより、内部電極と電気的に連結される電極層を形成した。
【0104】
次いで、上記電極層上に、Niめっきを行い、且つ下記の比較例1ではDCめっきを適用し、発明例1では、PPRめっきを適用して第1めっき層を形成した。上記めっき後、160℃で2時間の間、高温での後熱処理を行った。
【0105】
高温IR信頼性を評価するために、信頼性劣化を加速化した。具体的に、電極焼成チップが実装された基板をNaOH0.01Mの溶液に浸積した後、比較例1のDC条件は0.03Aを満たすように設定し、発明例1のPPR条件は順方向電流(Fwd.)が0.03A及び450ms、反転電流(Rev.)が0.09A及び50msを満たすように水素反応のみを誘導した。
【0106】
このような高温IR信頼性過酷評価に関し、比較例1では、電極焼成チップが実装された基板にDCめっきの波形を適用すると、40個の試料のほとんどのチップでIR Dropが確認された。
【0107】
これに対し、発明例1では、電極焼成チップが実装された基板にPPRめっきの波形を適用すると、全ての試料でIR正常値が出ることが確認できた。
【0108】
また、上述しためっき時間をより延長して再現評価を行い、このような実験結果を
図9に示した。最初の評価結果と同様に、比較例1及び発明例1に対して同様の結果が出た。
【0109】
また、上述した各比較例1及び発明例1から得られた積層セラミックキャパシタについて、第1めっき層の結晶粒形状を確認するために、長さ及び厚さ方向(L-T)に切った断面の試験片を製造した。次いで、FIB(Focused Ion Beam)装備により表面をエッチングした後に、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて30KV、5万倍の倍率、SE MODEを適用してNi結晶粒に対する長径及び短径を測定した。このとき、サイズが大きい順に結晶粒10個を選定した後、10個の結晶粒に対する長径及び短径をそれぞれ測定し、長径及び短径の比に対する平均値を求めて下記の表1に示した。
【0110】
一方、上述した電極焼成チップが実装された基板を比較例1及び発明例1に該当するものとして各試験片40個を製造し、各試験片に対し、後述する方法により高温IR信頼性及び厚さ散布の変化による均一性を評価し、下記表1に示した。
【0111】
【0112】
上記表1の実験結果から分かるように、本発明で規定する周期的パルス反転(PPR)めっきを適用して第1めっき層を形成した発明例1の場合、第1めっき層は、結晶粒の長径と短径との平均比が1:1~3:1の範囲であることを確認し、高温IR信頼性に優れていた。また、厚さ散布の変化も大きくないため、均一性の面でも優れていることを確認した。
【0113】
特に、
図7には、上記発明例1から得られた積層セラミックキャパシタの第1めっき層が観察されるように、長さ及び厚さ方向(L-T)に切った断面の試験片について、走査電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真を示した。したがって、後述するDCめっきを適用した
図8に比べて、第1めっき層の結晶粒が丸みを帯びた形状を示すことが確認できる。
【0114】
これに対し、DCめっきを適用して第1めっき層を形成した比較例1の場合、第1めっき層に対する結晶粒の長径と短径との平均比が5:1と確認された。
【0115】
図8には、上記比較例1から得られた積層セラミックキャパシタの第1めっき層が観察されるように、長さ及び厚さ方向(L-T)に切った断面の試験片について、走査電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真を示した。したがって、上述したPPRめっきを適用した
図7に比べて、第1めっき層の結晶粒形状が尖った形状である針状を示すことが確認できる。
【0116】
また、厚さ散布の変化による均一性を評価するために、バレルめっきを適用したDCめっきとPPRめっきの適用によるNiめっき層の厚さ結果を測定し、これを
図10に示した。
【0117】
一定の速度で回転するバレルシリンダの内部のチップは、PPRめっきを適用した場合、順方向及び反転波形の適用時に同一位置で電流印加を受けないため、DCめっきの場合に比べて、厚さ散布が発生する恐れがある。しかし、発明例1と比較例1の各条件別50ea(5倍数検査)の断面を分析した結果、
図10に示すように、発明例1の場合でも厚さ散布において有意差がないことが確認できた。したがって、均一性の評価結果も適切であることを確認した。
【0118】
以上のように、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述した実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定されるものとする。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で、当技術分野における通常の知識を有する者により様々な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属すると言える。
【符号の説明】
【0119】
100:積層型電子部品
110:本体
111:誘電体層
112:上部カバー部
113:下部カバー部
121、122:内部電極
130、140:外部電極
131、141:電極層
132、142:第1めっき層
133、143:第2めっき層
114、115:マージン部
150:結晶粒