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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098660
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】磁性粒子及び磁性部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/33 20060101AFI20230703BHJP
   H01F 1/22 20060101ALI20230703BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20230703BHJP
   H01F 27/255 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
H01F1/33
H01F1/22
H01F17/04 F
H01F27/255
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202038
(22)【出願日】2022-12-19
(31)【優先権主張番号】10-2021-0189222
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0099703
(32)【優先日】2022-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0169924
(32)【優先日】2022-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ジョン オク
(72)【発明者】
【氏名】リム、ジョン ホ
(72)【発明者】
【氏名】ホン、ヒョ キ
(72)【発明者】
【氏名】パク、イル ジン
(72)【発明者】
【氏名】ユー、ヨン ソク
(72)【発明者】
【氏名】カン、イン ヨウン
【テーマコード(参考)】
5E041
5E070
【Fターム(参考)】
5E041AA01
5E041AA02
5E041AA04
5E041AA07
5E041AA11
5E041BD12
5E041BD13
5E041NN06
5E070AA01
5E070BB01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】磁性部品の損失特性を改善する磁性粒子及び磁性部品を提供する。
【解決手段】磁性粒子は、金属磁性粒子100及び金属磁性粒子100の表面に形成された酸化膜110を含み、金属磁性粒子100は、Fe成分を含む単結晶領域を含み、酸化膜110は、Fe成分を含む非晶質領域を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属磁性粒子と、
前記金属磁性粒子の表面に形成された酸化膜と、を含み、
前記金属磁性粒子は、Fe成分を含む単結晶領域を含み、
前記酸化膜は、Fe成分を含む非晶質領域を含む、磁性粒子。
【請求項2】
前記金属磁性粒子は、前記単結晶領域からなる、請求項1に記載の磁性粒子。
【請求項3】
前記金属磁性粒子は非晶質領域を含まない、請求項1に記載の磁性粒子。
【請求項4】
前記金属磁性粒子の断面における前記単結晶領域の面積割合は30%以上である、請求項1に記載の磁性粒子。
【請求項5】
前記単結晶領域は、Fe、Si、Crを含む金属を含む、請求項1に記載の磁性粒子。
【請求項6】
前記単結晶領域はα-Fe相を含む、請求項1に記載の磁性粒子。
【請求項7】
前記α-Fe相は、Fe(001)相、Fe(002)相、Fe(011)相、Fe(101)相、Fe(111)相からなる群の少なくとも一つを含む、請求項6に記載の磁性粒子。
【請求項8】
前記酸化膜の非晶質領域は、Fe系金属酸化物を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の磁性粒子。
【請求項9】
前記酸化膜は、結晶領域をさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の磁性粒子。
【請求項10】
前記酸化膜の断面における前記非晶質領域の面積割合は30%以上である、請求項9に記載の磁性粒子。
【請求項11】
前記酸化膜の厚さは5から20nmである、請求項1から7のいずれか一項に記載の磁性粒子。
【請求項12】
直径が10から900nmである、請求項1から7のいずれか一項に記載の磁性粒子。
【請求項13】
複数の磁性粒子を含む本体を含む磁性部品において、
前記複数の磁性粒子の少なくとも一つは、Fe成分を含む金属磁性粒子、及び前記金属磁性粒子の表面に形成された酸化膜を含み、
前記金属磁性粒子は、Fe成分を含む単結晶領域を含み、
前記酸化膜は、Fe成分を含む非晶質領域を含む、磁性部品。
【請求項14】
前記本体内に配置されたコイルをさらに含む、請求項13に記載の磁性部品。
【請求項15】
前記単結晶領域を含む磁性粒子を単結晶粒子とすると、
前記本体内には、複数個の前記単結晶粒子が含まれ、
前記複数個の単結晶粒子は、直径のD50が100から300nmである、請求項13または14に記載の磁性部品。
【請求項16】
複数の磁性粒子を含む本体を含む磁性部品において、
前記複数の磁性粒子は、第1金属磁性粒子を含む第1磁性粒子と、第2金属磁性粒子を含む第2磁性粒子と、第3金属磁性粒子を含む第3磁性粒子とを含み、
前記第1磁性粒子は第1直径範囲の直径を有し、前記第2磁性粒子は前記第1直径範囲より小さい第2直径範囲の直径を有し、前記第3磁性粒子は前記第2直径範囲より小さい第3直径範囲の直径を有し、
前記第3金属磁性粒子は、Fe成分を含む単結晶領域を含む、磁性部品。
【請求項17】
前記第1磁性粒子から前記第3磁性粒子の直径は、前記本体の断面で測定された直径である、請求項16に記載の磁性部品。
【請求項18】
前記第1直径範囲は5から61μmであり、
前記第2直径範囲は0.6から4.5μmであり、
前記第3直径範囲は10から900nmである、請求項17に記載の磁性部品。
【請求項19】
前記第2金属磁性粒子及び前記第3金属磁性粒子は、互いに異なる物質を含む、請求項18に記載の磁性部品。
【請求項20】
前記本体の断面において、前記第1磁性粒子から前記第3磁性粒子の面積の合計に対する前記第1磁性粒子の面積割合は50から90%であり、前記第3磁性粒子の面積割合は7.6から16%である、請求項18に記載の磁性部品。
【請求項21】
前記第1直径範囲は5から61μmであり、
前記第2直径範囲は0.9から4.5μmであり、
前記第3直径範囲は10から800nmである、請求項17から20のいずれか一項に記載の磁性部品。
【請求項22】
前記第1磁性粒子から前記第3磁性粒子は、前記第1金属磁性粒子から前記第3金属磁性粒子の表面にそれぞれ形成された第1酸化膜から第3酸化膜をさらに含み、
前記第3酸化膜は、Fe成分を含む非晶質領域を含む、請求項16から20のいずれか一項に記載の磁性部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性粒子及び磁性部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インダクタ、共通モードフィルタ(Common Mode Filter)、LCフィルタ、バラン(Balun)、磁気記録媒体などの磁性部品の場合、一般的に本体内部に磁性粒子が含まれることで意図した磁気的特性を実現する。ここで、磁性粒子は、フェライト系列、金属系列磁性物質などで形成されることができる。
【0003】
磁性部品において、低い抵抗、高いDCバイアス特性、高い効率特性などを実現するためには、磁性粒子を微細化して充填率を高める一方、損失は低くする必要がある。但し、磁性部品の小型化の傾向により本体の大きさも小型化しており、これによって本体内に含まれ得る磁性粒子の量を増やすのに限界がある。また、磁性粒子の充填率を高めるために高い圧力で本体を成形する場合、磁性部品の変形をもたらすなどの問題がある。ここで、磁性粒子の特性の向上により磁性部品の損失を最小化することができる方案が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的の一つは、磁性部品の損失特性が改善されることができる磁性粒子を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の課題を解決するための方法として、本発明は一例によって新規な磁性粒子を提案し、具体的には、金属磁性粒子及び上記金属磁性粒子の表面に形成された酸化膜を含み、上記金属磁性粒子は、Fe成分を含む単結晶領域を含み、上記酸化膜はFe成分を含む非晶質領域を含む。
【0006】
一実施形態において、上記金属磁性粒子は上記単結晶領域からなることができる。
【0007】
一実施形態において、上記金属磁性粒子は非晶質領域を含まないことができる。
【0008】
一実施形態において、上記金属磁性粒子の断面における上記単結晶領域の面積割合は30%以上であることができる。
【0009】
一実施形態において、上記単結晶領域はFe、Si、Crを含む金属を含むことができる。
【0010】
一実施形態において、上記単結晶領域はα-Fe相を含むことができる。
【0011】
一実施形態において、上記α-Fe相は、Fe(001)相、Fe(002)相、Fe(011)相、Fe(101)相、Fe(111)相からなる群の少なくとも一つを含むことができる。
【0012】
一実施形態において、上記酸化膜の非晶質領域はFe系金属酸化物を含むことができる。
【0013】
一実施形態において、上記酸化膜は結晶領域をさらに含むことができる。
【0014】
一実施形態において、上記酸化膜の断面における上記非晶質領域の面積割合は30%以上であることができる。
【0015】
一実施形態において、上記酸化膜の厚さは5から20nmであることができる。
【0016】
一実施形態において、上記磁性粒子は直径が10から900nmであることができる。
【0017】
本発明の他の側面は、複数の磁性粒子を含む本体を含む磁性部品において、上記複数の磁性粒子の少なくとも一つは、Fe成分を含む金属磁性粒子及び上記金属磁性粒子の表面に形成された酸化膜を含み、上記金属磁性粒子はFe成分を含む単結晶領域を含み、上記酸化膜はFe成分を含む非晶質領域を含む磁性部品を提供する。
【0018】
一実施形態において、上記複数の磁性粒子を含む本体と、上記本体内に配置されたコイルを含むことができる。
【0019】
一実施形態において、上記単結晶領域を含む磁性粒子を単結晶粒子とすると、上記本体内には上記単結晶粒子が複数個含まれ、上記複数個の単結晶粒子は直径のD50が100から300nmであることができる。
【0020】
本発明の他の側面は、
複数の磁性粒子を含む本体を含む磁性部品において、上記複数の磁性粒子は、それぞれ第1から第3金属磁性粒子を含む第1から第3磁性粒子を含み、上記第1磁性粒子は、第1直径範囲の直径を有し、上記第2磁性粒子は上記第1直径範囲より小さい第2直径範囲の直径を有し、上記第3磁性粒子は上記第2直径範囲より小さい第3直径範囲の直径を有し、上記第3金属磁性粒子は、Fe成分を含む単結晶領域を含む磁性部品を提供する。
【0021】
一実施形態において、上記第1から第3磁性粒子の直径は、上記本体の断面で測定された直径であることができる。
【0022】
一実施形態において、上記第1直径範囲は5から61μmであり、上記第2直径範囲は0.6から4.5μmであり、上記第3直径範囲は10から900nmであることができる。
【0023】
一実施形態において、上記第2及び第3金属磁性粒子は互いに異なる物質を含むことができる。
【0024】
一実施形態において、上記本体の断面において、上記第1から第3磁性粒子の面積の合計に対する上記第1磁性粒子の面積割合は50から90%であり、上記第3磁性粒子の面積割合は7.6-16%であることができる。
【0025】
一実施形態において、上記第1直径範囲は5から61μmであり、上記第2直径範囲は0.9から4.5μmであり、上記第3直径範囲は10から800nmであることができる。
【0026】
一実施形態において、上記第1から第3磁性粒子は、上記第1から第3金属磁性粒子の表面にそれぞれ形成された第1から第3酸化膜をさらに含み、上記第3酸化膜はFe成分を含む非晶質領域を含むことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一例による磁性粒子の場合、保磁力を効果的に低減することができ、これによってこれを採用した磁性部品の損失を低減して効率が増加されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態による磁性粒子を示し、(a)は透過斜視図、(b)は断面図である。
図2】変形された実施形態による磁性粒子を示した図面である。
図3】変形された実施形態による磁性粒子を示した図面である。
図4】金属磁性粒子のHR-TEM分析結果を示した図面である。
図5】金属磁性粒子のHR-TEM分析結果を示した図面である。
図6】金属磁性粒子のHR-TEM分析結果を示した図面である。
図7】金属磁性粒子のHR-TEM分析結果を示した図面である。
図8】金属磁性粒子のHR-TEM分析結果を示した図面である。
図9】本発明の一実施形態による磁性部品を概略的に示した透過斜視図である。
図10図9の磁性部品の概略的なI-I'線に沿った面の切断断面図である。
図11図9の磁性部品における本体の一領域を拡大して示した図面である。
図12図9の磁性部品における本体の一領域を拡大して示した図面である。
図13図12の磁性粒子を示した図面である。
図14】巻線型コイル構造を有する磁性部品を示した図面である。
図15】巻線型コイル構造を有する磁性部品を示した図面である。
図16】巻線型コイル構造を有する磁性部品を示した図面である。
図17】巻線型コイル構造を有する磁性部品を示した図面である。
図18】巻線型コイル構造を有する磁性部品を示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下では、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は、いくつかの他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及びサイズなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(または強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上の同一の符号で示される要素は同一の要素である。
【0030】
図1は、本発明の一実施形態による磁性粒子を示し、(a)は透過斜視図、(b)は断面図である。本実施形態の場合、磁性粒子100は、金属磁性粒子101及びその表面に形成された酸化膜110を含む。ここで、金属磁性粒子101は、Fe成分を含む単結晶領域102を含み、酸化膜110は、Fe成分を含む非晶質領域を含む。後述するように、磁性粒子100を構成する金属磁性粒子101と酸化膜110の結晶特性を本実施形態のように実現することで磁性粒子100の保磁力を下げることができ、このように保磁力が低くなった磁性粒子100を磁性部品に用いる場合、損失を低減することで効率特性が改善されることができる。
【0031】
金属磁性粒子101は、磁気的特性を確保するための物質、例えば、鉄(Fe)、シリコン(Si)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、ニオブ(Nb)、銅(Cu)及びニッケル(Ni)からなる群から選択されたいずれか一つ以上を含むことができる。具体的には、金属磁性粒子101は、Fe、Si、Crを含む金属を含むことができる。さらに具体的な例として、金属磁性粒子101は、純鉄、Fe-Si系合金、Fe-Si-Al系合金、Fe-Ni系合金、Fe-Ni-Mo系合金、Fe-Ni-Mo-Cu系合金、Fe-Co系合金、Fe-Ni-Co系合金、Fe-Cr系合金、Fe-Cr-Si系合金、Fe-Si-Cu-Nb系合金、Fe-Ni-Cr系合金、Fe-Cr-Al系合金の少なくとも一つを含むことができる。上述したように、金属磁性粒子101は単結晶領域102を含み、単結晶領域102はFe-Si-Cr系合金を含むことができる。ここで、上記Fe-Si-Cr系合金におけるSiとCrの重量%は15%以下であり、より具体的な例として、0.80重量%<Si<12.5重量%、2.5重量%<Cr<14.2重量%であることができる。
【0032】
単結晶領域102はα-Fe相を含むことができ、この場合、上記α-Fe相はFe(001)相、Fe(002)相、Fe(011)相、Fe(101)相、Fe(111)相からなる群の少なくとも一つを含むことができる。単結晶領域102は、その内部に存在する結晶が一定の配向(orientation)を有するように形成された領域として定義されることができる。例えば、単結晶領域102がFe(011)相で構成される場合、金属磁性粒子101内に存在する他のFe相またはFe酸化物相(例:Fe相)などは単結晶領域102に含まれず、多結晶構造を形成するようになる。図示された形態から分かるように、金属磁性粒子101は単結晶領域102の一つからなることができる。また、金属磁性粒子101は、単結晶領域102以外に非晶質領域を含まないことができる。但し、図2の変形例のように、金属磁性粒子101は、単結晶領域102以外に非晶質領域103をさらに含むこともできる。このように金属磁性粒子101に単結晶領域102と非晶質領域103が共に存在する場合、金属磁性粒子101の断面における単結晶領域102の面積割合は30%以上であり、ここで金属磁性粒子101の断面は、中心を含む断面であるか、等間隔で複数個の領域から得られることができる。また、単結晶領域102と非晶質領域103の面積の合計は50%以上であることができる。
【0033】
このように金属磁性粒子101が実質的に単結晶領域102で構成される場合には、多結晶構造を有する場合よりも保磁力が低くなることがある。特に、金属磁性粒子101の大きさが比較的小さい超微粉の場合、非晶質で形成し難くて、保磁力を十分に下げることは難しいが、本実施形態のように金属磁性粒子101を単結晶構造で実現することで保磁力を著しく低減することができる。このように保磁力が低減された磁性粒子100を用いる場合、磁性部品のQ効率特性及び損失特性が改善されることができる。
【0034】
超微粉に該当する磁性粒子100の大きさは、直径Dが10から900nmの範囲であることができる。磁性粒子100の直径Dは、中央部の断面で測定されることができる。例えば、磁性粒子100の中心を通るZ-Y断面を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)を用いて撮影してイメージを得て、この場合、SEMイメージにおいてイメージピクセルサイズ(image pixel size)は、10nm×10nmに固定し、作業距離(working distance)は8mmに固定することができる。そして、モードはバックスキャッタモード(back scattered mode)を用いることができる。この後、イメージ分析プログラム(例:ORS社Deep learning tool)を用いて直径Dを計算することができる。磁性粒子100は、球形またはほぼ球形に近い形状であることができるが、これに制限されない。したがって、磁性粒子100が球形を維持しない任意の形状である場合、上述した直径はフェレット直径(Feret Diameter)に置き換えて解釈することができ、直径の平均値もフェレット直径の平均値に置き換えて解釈することができる。直径平均値の計算方法として、イメージプロセッサソフトウェアのツール(tool)を活用することができ、各領域別に粒径分析によりサイズ分布を得ることができる。但し、これは磁性粒子100のサイズを個別的に分析する方法の一例であり、後述するように、磁性部品200、400、500に含まれた磁性粒子のサイズを分析する場合には、磁性部品200、400、500の断面イメージを介して測定されることができる。
【0035】
酸化膜110は、金属磁性粒子101の表面に形成され、金属磁性粒子101を保護し、磁性粒子101が外部に対して電気的に絶縁された形態を有するようにすることができる。酸化膜110によって磁性粒子100の渦電流損失などが低減されることができる。上述したように、酸化膜110は、Fe成分を含む非晶質領域111を含む。この場合、非晶質領域111はFe系金属酸化物、例えば、Fe、Si、Crなどを含む金属の酸化物を含むことができる。非晶質領域111は実質的に結晶構造の内部組織を有さず、本実施形態のように酸化膜110は実質的に非晶質領域111で構成されることができる。但し、図3の変形例のように、酸化膜110は、非晶質領域111以外に単結晶領域112を含むこともできる。ここで、単結晶領域112は、Fe成分を含むことができる。この場合、酸化膜110の断面における非晶質領域111の面積割合は30%以上であることができ、酸化膜110の断面は等間隔で複数個の領域で得られることができる。そして、酸化膜110の厚さTは5から20nmであることができる。
【0036】
金属磁性粒子101が単結晶領域102を有するようにするための製造方法の一例において、RFプラズマ工法を用いて原料を蒸発させた後、不活性ガスを用いて冷却して微粒粉末を形成することができる。この過程で原料の多結晶構造が単結晶構造に変化されることができる。この場合、得られた粉末を、気流を介して移動させる方法などで粒径が大きいものを分離する過程を経ることもできる。ここで、RFプラズマ工程は、還元雰囲気(例えば、Hガス雰囲気)で行われ、この過程で金属磁性粒子101の表面に非晶質領域111を有する酸化膜110が形成されることができる。酸化膜110の非晶質領域111は結晶質に対する磁性(magnetism)を低下させる可能性があるが、超常磁性(Super-Paramagnetism)特性が実現されて金属磁性粒子101を磁化させる役割を果たすことができ、この場合、一般的な常磁性体の磁化率より高いことができる。金属磁性粒子101を、多結晶構造を有するように形成する場合、一般的なNガス雰囲気で製作されるため、金属磁性粒子101は角形の面(facet)を有し、これによって酸化膜110は面成長(facet growth)をして結晶質酸化膜の形態で形成されることができる。
【0037】
本発明の発明者らは、上述の内容に基づいて単結晶領域を有する磁性粒子を製造して断面分析を行った。図4から8は、金属磁性粒子のHR-TEM分析結果を示す。この場合、HR-TEM分析のために製作されたサンプルをFIB(Focused Ion Beam)で前処理した。そして、HR-TEMはJEOL社の2100Fを用いた。まず、製造された磁性粒子は10から900nmの直径範囲を有し、金属磁性粒子の成分の場合、Feが大部分であり、Si、Crが添加されたことを確認した。そして、金属磁性粒子のSTEM-EDS分析の結果、内部にFe-Si-Crが均一な(uniform)成分の分布を示すことが確認できた。また、金属磁性粒子を覆う酸化膜の場合、その厚さは5から20nmの範囲で形成された。
【0038】
図4を参照すると、金属磁性粒子の断面イメージに対する配向(orientation)を分析した結果、一つの配向角(orientation angle)を有する単結晶領域で構成されたことが確認でき、この場合、Feを含む単結晶領域の主ピークは(011)であった。ここで、配向(orientation)分析の場合、ソフトウェア(例えば、Gatan digital microscopy)を用いて断面イメージに対するFast Furrier Transform(FFT)分析を行い、図4の右側に示された分析結果から分かるように、分析領域の全てがFe(011)に配向された単結晶領域であることが確認できた。これ以外にも、Feを含む単結晶領域が異なる配向角を有する場合も確認されており、図5は、Fe(011)とFe(002)に配向された単結晶領域、図6は、Fe(101)に配向された単結晶領域、図7は、Fe(001)に配向された単結晶領域、図8は、Fe(111)に配向された単結晶領域を含む。
【0039】
以下、上述した磁性粒子を含む磁性部品の一例を説明する。図9から図11を参照すると、本実施形態の場合、複数の磁性粒子211を含む磁性部品200はコイル部品に該当する。具体的には、磁性部品200は本体201、支持部材202、コイルパターン203、外部電極205、206を含み、本体201は複数の磁性粒子211を含む。ここで、複数の磁性粒子211の少なくとも一つは、上述した単結晶構造を有し、具体的には、Fe成分を含む金属磁性粒子101及びその表面に形成された酸化膜110を含み、ここで、金属磁性粒子101は、Fe成分を含む単結晶領域102を含む。また、上述したように、酸化膜110は、Fe成分を含む非晶質領域を含む。
【0040】
本体201は、支持部材202とコイル203の少なくとも一部を付着させて磁性部品200の外観をなすことができる。また、本体201は、引き出しパターンLの一部領域が外部に露出するように形成されることができる。図10に示した形態のように、本体201は複数の磁性粒子211を含み、このような磁性粒子211は絶縁材210の内部に分散されることができる。絶縁材210は、エポキシ樹脂、ポリイミドなどの高分子成分を含むことができる。本体201は、複数の磁性粒子211を含み、これらの少なくとも一つは図1から図4で説明した単結晶構造(または実質的な単結晶構造)を有することができる。上述したように、金属磁性粒子101がFe成分を含む単結晶領域102を有し、酸化膜110がFe成分を含む非晶質領域111を含む形態の磁性粒子211は、保磁力が低減されることができ、これを用いた磁性部品200の場合、Q特性及び損失特性が向上することができる。磁性粒子211のうち、上述した単結晶領域102を含む磁性粒子211を単結晶粒子211とすると、本体201内には単結晶粒子211が複数個含まれ、複数個の単結晶粒子211は、直径のD50が100から300nmであることができる。この場合、D50は、直径サイズの順に並べたときに最も中央に位置する値を意味する。
【0041】
一方、本体201内に存在する磁性粒子211の直径は、本体201の断面で測定されることができる。具体的には、本体201の中心を通るX-Z方向の断面に対して、Y方向に等間隔の複数の領域(例:5個または10個の領域)を、走査電子顕微鏡を用いて撮影した後、イメージ分析プログラムを用いて磁性粒子211の直径を得ることができる。この場合、本体201の外側領域は、圧着工程などにより磁性粒子211が変形されるか、酸化膜110が破壊されることができるため、これを除いて磁性粒子211の直径を測定することができる。例えば、本体201の表面から5%または10%内の長さに該当する領域は除外することができる。
【0042】
一方、製造方法の一例に関して、本体201は積層工法で形成されることができる。具体的には、支持部材202上にめっきなどの方法を用いてコイル203を形成した後、本体201を製造するための単位積層体を多数個設けて、これを積層する。ここで、上記単位積層体は、金属などの磁性粒子211と熱硬化性樹脂、バインダー、及び溶剤などの有機物を混合してスラリーを製造し、上記スラリーをドクターブレード法でキャリアフィルム(carrier film)上に数十μmの厚さで塗布した後に乾燥してシート(sheet)状に製造することができる。これにより、単位積層体は、磁性粒子がエポキシ樹脂またはポリイミド(polyimide)などの熱硬化性樹脂に分散した形態で製造されることができる。上述した単位積層体を複数個形成して、これをコイル203の上部及び下部で加圧積層して本体201を実現することができる。
【0043】
支持部材202はコイル203を支持し、ポリプロピレングリコール(PPG)基板、フェライト基板または金属系軟磁性基板などで形成されることができる。図示された形態のように、支持部材202の中央部は貫通されて貫通孔が形成され、このような貫通孔には本体201の一部が充填されてマグネティックコア部Cを形成することができる。
【0044】
コイル203は本体201の内部に内設され、磁性部品200のコイルから発現する特性により電子機器内で様々な機能を行う役割を果たす。例えば、磁性部品200はパワーインダクタであることができ、この場合、コイル203は電気を磁場の形態で蓄えて出力電圧を維持して電源を安定させる役割などを行うことができる。この場合、コイル203をなすコイルパターンは、支持部材202の両面上にそれぞれ積層された形態として、第1コイル203a及び第2コイル203bを含むことができ、ここで、第1コイル203a及び第2コイル203bは、支持部材202を貫通する導電性ビアVを介して電気的に連結されることができる。この場合、コイル203はパッド領域Pを含むことができる。コイル203は螺旋(spiral)状に形成されることができ、このような螺旋状の最外側には外部電極205、206との電気的な連結のために、本体201の外部に露出する引き出し部Tを含むことができる。但し、図示された形態とは異なって、コイル203は支持部材202の一つの面にのみ配置されることもできる。一方、コイル203をなすコイルパターンの場合、当技術分野で用いられるめっき工程、例えば、パターンめっき、異方めっき、等方めっきなどの方法を用いて形成されることができ、これらの複数の工程を利用して多層構造で形成されることもできる。但し、コイル203は巻線型コイル構造で実現されることもでき、この場合、支持部材202は本体201内に含まれないこともできる。巻線型コイル構造については、図14の以下の実施形態で詳細に説明する。
【0045】
外部電極205、206は、本体201の外部に形成されて引き出し部Tと接続するように形成されることができる。外部電極205、206は、電気導電性に優れた金属を含むペーストを用いて形成することができ、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、スズ(Sn)または銀(Ag)などの単独またはこれらの合金などを含む導電性ペーストであることができる。また、外部電極205、206上にめっき層をさらに形成することができる。この場合、上記めっき層は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)及びスズ(Sn)からなる群から選択されたいずれか一つ以上を含むことができ、例えば、ニッケル(Ni)層及びスズ(Sn)層が順に形成されることができる。
【0046】
図12及び図13を参照して、他の実施形態による磁性部品を説明する。図12及び図13の実施形態は、図9から図11の実施形態と本体内部に存在する磁性粒子において差異があり、他の構成要素は同様に採用できるため、重複する説明は省略する。本実施形態の場合、本体201は複数の磁性粒子321、322、323を含み、複数の磁性粒子321、322、323はそれぞれ第1から第3金属磁性粒子301、302、303を含む第1から第3磁性粒子321、322、323を含む。ここで、複数の磁性粒子321、322、323は、直径サイズが互いに異なる。具体的には、第1磁性粒子321は第1直径範囲の直径D1を有し、第2磁性粒子322は上記第1直径範囲より小さい第2直径範囲の直径D2を有し、第3磁性粒子323は、上記第2直径範囲より小さい第3直径範囲の直径D3を有する。具体的な例として、上記第1直径範囲は5から61μmであり、上記第2直径範囲は0.6から4.5μmであることができる。さらに、上記第3直径範囲は10から900nmであることができる。第1から第3磁性粒子321、322、323の直径は、本体201の断面で測定された直径であることができる。本実施形態の場合、最も大きさが小さい第3磁性粒子323は、保磁力が低減されるように単結晶構造、すなわち、Fe成分を含む単結晶領域304を含む構造を有し、これに応じて、Q特性及び損失特性が向上することができる。一方、第2磁性粒子322と第3磁性粒子323は、直径範囲が一部重なることがあるが、この場合、第2及び第3金属磁性粒子302、303は互いに異なる物質を含むことができる。これにより、SEM-EDS、XRFなどの方法を用いて第2磁性粒子322と第3磁性粒子323を区別することができる。さらに、第1及び第3磁性粒子321、322、323をより明確に区分できるように、上記第1から第3直径範囲は互いに重なる範囲がないこともあり、例えば、上記第1直径範囲は5から61μm、上記第2直径範囲は0.9から4.5μm、上記第3直径範囲は10から800nmであることができる。
【0047】
本実施形態のように、互いに大きさが異なる複数種類の磁性粒子321、322、323を用いることで、本体201内に磁性粒子321、322、323の充填率が向上することができ、これから磁性部品200の磁気的特性が向上することができる。また、サイズが比較的小さい超微粉の場合、非晶質で形成することが困難であり、保磁力を十分に下げることが難しいが、本実施形態のようにサイズが小さい第3金属磁性粒子303を単結晶構造で実現することで保磁力を著しく低減することができる。
【0048】
第1から第3金属磁性粒子301、302、303は、純鉄、Fe-Si系合金、Fe-Si-Al系合金、Fe-Ni系合金、Fe-Ni-Mo系合金、Fe-Ni-Mo-Cu系合金、Fe-Co系合金、Fe-Ni-Co系合金、Fe-Cr系合金、Fe-Cr-Si系合金、Fe-Si-Cu-Nb系合金、Fe-Ni-Cr系合金、Fe-Cr-Al系合金の少なくとも一つを含むことができる。第1磁性粒子321は、第1金属磁性粒子301の表面に形成された第1酸化膜311を含むことができる。同様に、第2磁性粒子322は、第2金属磁性粒子302の表面に形成された第2酸化膜312を含むことができ、第3磁性粒子323は第3金属磁性粒子303の表面に形成された第3酸化膜313を含むことができる。第1から第3酸化膜311、312、313は、Fe酸化物、例えば、Fe、Feなどを含むことができる。これ以外にも、第1から第3酸化膜311、312、313は、リン酸塩(phosphate)やフェライト(例えば、NiZnCuフェライト、NiZnフェライト)などを含むことができ、これ以外にもMgO、Alなどの酸化物を含むこともできる。ここで、第3金属磁性粒子303が単結晶構造を有する場合、第3酸化膜313は、Fe成分を含む非晶質領域314を含むことができる。
【0049】
本発明の発明者らは、本体201内に存在する第1から第3磁性粒子321、322、323の相対的な含有量に応じて特性(透磁率、コア損失)の変化を実験し、表1から3にその結果を示した。上述したように、本体201内に存在する磁性粒子321、322、323の直径は、本体201の断面で測定されることができる。具体的には、本体201の中心を通るX-Z方向の断面に対して、Y方向に等間隔の複数の領域(例:5個または10個の領域)を、走査電子顕微鏡を用いて撮影した後、イメージ分析プログラムを用いて磁性粒子321、322、323の直径を得ることができる。この場合、具体的な例として、SEMイメージにおいて、イメージピクセルサイズ(image pixel size)は、10nm×10nmに固定し、作業距離(working distance)は、8mmに固定することができる。そして、モードはバックスキャッタモード(back scattered mode)を用いることができる。この後、イメージ分析プログラム(例:ORS社Deep learning tool)を用いて直径の平均値を計算することができる。磁性粒子321、322、323は、球形またはほぼ球形に近い形状であることができるが、これに制限されない。すなわち、磁性粒子321、322、323は非球形の形状を有することもできる。磁性粒子321、322、323が球形を維持しない任意の形状である場合、上述した直径はフェレット直径(Feret Diameter)に置き換えて解釈することができ、直径の平均値もフェレット直径の平均値に置き換えて解釈することができる。直径平均値の計算方法として、イメージプロセッサソフトウェアのツール(tool)を活用することができ、各領域別に粒径分析によりサイズ分布を得ることができる。一方、本体201の外側領域は、圧着工程などによって磁性粒子321、322、323が変形されるか、酸化膜110が破壊されることがあるため、このような磁性粒子321、322、323は測定時に除外することができ、例えば、本体201の表面から5%または10%内の長さに該当する領域は除外することができる。また、他の例として、破壊が発生していない3ヶ所の地点で測定した大きさにより破壊された粒子の大きさを類推することも可能である。また、上記説明においては、磁性部品において複数の断面を取って磁性粒子321、322、323の直径を測定するとしたが、複数の断面を取り難い場合には、一つの断面、例えば、磁性部品の中心を通るX-Y断面で測定されることもできる。
【0050】
上述した方法などを用いて測定された直径に応じて直径範囲が5から61μmの場合は第1磁性粒子、直径範囲が0.6から4.5μmの場合は第2磁性粒子、直径範囲が10から900nmの場合は第3磁性粒子と分類した。そして、各サンプル別に、第1から第3磁性粒子の面積の合計に対する各磁性粒子の面積割合を%で表し、透磁率及びコア損失を測定した。
【0051】
まず、以下の表1は、第1磁性粒子のD50が21から36μmの範囲を有するサンプルに対する結果であり、*で表したサンプル1、2、9は比較例に該当する。透磁率の場合、基準サンプルに対して5%以上増加する場合を「O」、そうでない場合を「X」と表した。ここで、上記基準サンプルは、第1及び第2磁性粒子の含有量の比を76:24とし、第3磁性粒子は含まない。そして、コア損失/Qの場合、上記基準サンプルに対して増加した透磁率から30%以上Qが下落する際に不良(X)と示した(例:透磁率5増加時にQ6.5以上が下落すると不良)。
【0052】
【表1】
【0053】
以下の表2は、第1磁性粒子のD50が12から21μmの範囲を有するサンプルに対する結果であり、*で表したサンプル10、15、16、20は比較例に該当する。
【0054】
【表2】
【0055】
以下の表3は、第1磁性粒子のD50が5から12μmの範囲を有するサンプルに対する結果であり、*で表したサンプル21、31は比較例に該当する。
【0056】
【表3】
【0057】
上記実験結果によって、第1から第3磁性粒子の最適化された割合を導出することができ、具体的には、第1磁性粒子の面積割合は90%以下、第3磁性粒子の面積割合は7.6から16%である場合、透磁率及びコア損失の特性の面で良好な性能を示すことが確認できた。この場合、大きさが比較的大きい第1磁性粒子の割合が半分以下に低下する場合、磁性粒子の全体的な充填率が低下して透磁率損失が増加するという問題が発生する可能性がある。したがって、第1磁性粒子の面積割合は50%以上であることが好ましい。
【0058】
以下、上述した磁性粒子を含む他の形態の磁性部品として巻線型コイル構造を有する磁性部品を説明する。まず、図14図15図16を参照すると、磁性部品400は、モールド部450、コイル部430、カバー部460、及び収容溝h1、h2を含み、外部電極470、480をさらに含む。本体Bは磁性部品400の外観をなし、内部にコイル部430を埋設する。本体Bは、モールド部450及びカバー部460を含む。モールド部450はコア420を含むことができる。本体Bは、全体的に六面体状に形成されることができる。本体Bは、第1方向Xに互いに向かい合う第1面401と第2面402、第2方向Yに互いに向かい合う第3面403と第4面404、第3方向Zに向かい合う第5面505及び第6面506を含む。本体Bの第1から第4面401、402、403、404のそれぞれは、本体Bの第5面405と第6面406を連結する本体Bの壁面に該当する。以下において、本体Bの両端面は本体Bの第1面401及び第2面402を意味し、本体Bの両側面は本体Bの第3面403及び第4面404を意味することができる。
【0059】
本体Bは、例示的に、後述する外部電極470、480が形成された本実施形態による磁性部品400が2.0mmの長さ、1.2mmの幅及び0.6mmの厚さを有するように形成されることができるが、これに制限されるものではない。一方、本体Bはモールド部450及びカバー部460を含むが、カバー部460は、図1を基準にモールド部450の上部に配置され、モールド部450の下面を除いた全ての表面を囲む。したがって、本体Bの第1から第5面101、102、103、104、105はカバー部460によって形成され、本体Bの第6面106はモールド部450及びカバー部460により形成される。モールド部450は、互いに向かい合う一面及び他面を有する。モールド部450の一面は、モールド部450の下面に該当する面であり、後述する収容溝h1、h2が配置される一領域を意味する。後述するように、収容溝h1、h2はモールド部450の内部に加工されるため、収容溝h1、h2の底面はモールド部450の一面と他面との間の領域に配置されることができる。モールド部450は、支持部410及びコア420を含む。コア420は、コイル部430を貫通する形態で支持部410の他面の中央部に配置される。上記の理由から、本明細書上において、モールド部450の一面及び他面は、それぞれ支持部410の一面及び他面と同じ意味で使用される。モールド部450は、金型に図13の金属磁性粒子321、322、323と絶縁樹脂を含む複合物質を充填することで形成されることができる。ここで、上記絶縁樹脂は、エポキシ(epoxy)、ポリイミド(polyimide)、液晶結晶性ポリマー(Liquid Crystal Polymer)などを単独または混合して含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0060】
コイル部430は本体Bに埋設され、磁性部品400の特性を発現する。例えば、本実施形態の磁性部品400がパワーインダクタとして活用される場合、コイル部430は、電界を磁場に蓄積して出力電圧を維持することによって電子機器の電源を安定させる役割を果たすことができる。コイル部430は、モールド部450の他面に配置される。具体的には、コイル部430は、コア420を中心に巻線された形態で、支持部410の他面に配置される。コイル部430は空心コイルであり、平角コイルで構成されることができる。コイル部430は、表面が絶縁物質で被覆された銅ワイヤーなどの金属ワイヤーをスパイラル(spiral)状に巻いて形成されることができる。コイル部430は複数の層で構成されることができる。コイル部430の各層は平面螺旋状に形成され、複数のターン(turn)数を有することができる。すなわち、コイル部430は、モールド部450の一面の中央部から外側に最内側ターンT1、少なくとも一つの中間ターンT2及び最外側ターンT3を形成することができる。
【0061】
カバー部460は、モールド部450及びコイル部430上に配置されることができる。カバー部460は、モールド部450及びコイル部430を覆う。カバー部460は、モールド部450の支持部410と、コア420及びコイル部430上に配置された後に加圧されてモールド部450に結合されることができる。モールド部450及びカバー部460の少なくとも一つは、図13の金属磁性粒子321、322、323を含み、本実施形態の場合、モールド部450及びカバー部460はそれぞれ図13の金属磁性粒子321、322、323を含む。
【0062】
第1及び第2収容溝h1、h2は、モールド部450の一面に互いに離隔して形成され、第1及び第2収容溝h1、h2には、後述するコイル部430の両端部が配置される。一例として、第1及び第2収容溝h1、h2は、モールド部450の一面にそれぞれ形成され、長さ方向Xに沿って互いに離隔する。第1及び第2収容溝h1、h2は、モールド部450の一面のうちコア420に対応される領域の外側に配置されることができるが、これに制限されない。第1及び第2収容溝h1、h2のそれぞれは、モールド部450の一面において一方向に沿って延びるように形成されることができるが、コイル部430の両端部を効果的に露出させることができる構造であれば、制限されない形態で形成されることができる。
【0063】
本体Bは、モールド部450及びカバー部460を含む領域であるため、本体Bの一面は、モールド部450及びカバー部460を含む領域の一面を意味する。コイル部430は、外部に引き出され、それぞれ第1及び第2収容溝h1、h2に配置された第1及び第2引き出し部を含む。第1及び第2収容溝h1、h2は、コイル部430の両端部を外部電極470、480に引き出す領域であるため、第1及び第2外部電極470、480にそれぞれ対応されるように互いに離隔して本体Bの一面に形成される。
【0064】
一例として、貫通溝H1、H2は、モールド部450を形成する際に金型により形成されることができ、第1及び第2収容溝h1、h2は、金属磁性粒子を含む磁性シートを積層及び圧着してカバー部460を形成する工程でモールド部450に形成されることができる。モールド部450を形成するための金型には、貫通溝H1、H2に対応される突出部が形成され、金型の形状に対応される形態で製造されるモールド部450に貫通溝H1、H2が形成されることができる。また、第1及び第2収容溝h1、h2は、モールド部450を形成するための工程で形成されず、モールド部450上にカバー部460を形成するための工程で形成されることができる。すなわち、モールド部450の貫通溝H1、H2を介してモールド部450の一面に突出配置されているコイル部の300の両端部は、上記磁性シート圧着工程でモールド部450の内側に埋め込まれることができる。これにより、モールド部450の一面に第1及び第2収容溝h1、h2が形成されることができる。または、第1及び第2収容溝h1、h2及び貫通溝H1、H2は、金型を用いてモールド部450を形成する工程で形成されることもできる。この場合、モールド部450の形成に用いられる金型には、第1及び第2収容溝h1、h2及び貫通溝H1、H2に対応される突出部が形成されることができる。
【0065】
コイル部430の両端部は、それぞれモールド部450の一面を貫通して第1及び第2収容溝h1、h2のそれぞれに配置されることができる。コイル部430の端部が収容溝h1、h2に配置された形態は制限されないため、第1及び第2収容溝h1、h2の幅は貫通溝H1、H2の幅と同一であることもでき、異なることもできる。コイル部430の両端部は、モールド部450の一面、すなわち本体Bの第6面406に露出する。モールド部450の一面に露出したコイル部430の両端部は、本体Bの第6面406に互いに離隔して形成された第1及び第2収容溝h1、h2に配置される。コイル部430の両端部は、モールド部450の支持部410を貫通して支持部410の一面に露出することができる。具体的には図示していないが、コイル部430の両端部はコイル部430の厚さと同一であるため、コイル部430の厚さに該当する分だけ支持部410の一面に突出された形態であることができる。しかしながら、後述する外部電極470、480を形成するためのめっきレジストの開口部を研磨する過程で上記突出された端部も一緒に研磨できるため、支持部410の一面に露出したコイル部430の端部は実質的にコイル部430の厚さより小さいことができる。
【0066】
外部電極470、480は、本体Bの一面、すなわち第6面106に互いに離隔配置されることができる。具体的には、外部電極470、480は、モールド部450の一面上に互いに離隔配置され、第1及び第2収容溝h1、h2に配置されたコイル部430の両端部とそれぞれ連結されることができる。第1及び第2収容溝h1、h2の底面に沿ってコイル部430の両端部が配置され、コイル部430の両端部に沿って外部電極470、480が塗布されるため、外部電極は、第1及び第2収容溝h1、h2の形態に対応されるように形成されることができる。一例として、銀(Ag)などの導電性粒子を含む導電性樹脂を第1及び第2収容溝h1、h2上に塗布して外部電極470、480を形成することができる。外部電極470、480は、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、スズ(Sn)、金(Au)、ニッケル(Ni)、鉛(Pb)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、またはこれらの合金などの導電性物質で形成されることができるが、これに限定されるものではない。外部電極470、480は、単層または複数層の構造で形成されることができる。本実施形態によると、外部電極470、480は、コイル部430の両端部に接触連結される第1層と、第1層を覆う第2層を含むことができる。一例として、第1層は、銀(Ag)粒子を含む導電性樹脂で形成されることができるが、これに制限されずに銅(Cu)を含む先めっき層によって形成されることもできる。具体的には示されていないが、第2層は第1層上に配置されて第1層を覆うことができる。第2層はニッケル(Ni)及び/またはスズ(Sn)を含むことができる。第2層は電解めっきで形成されることができるが、これに制限されるものではない。
【0067】
一方、本実施形態による磁性部品400は、コイル部430の表面を囲む絶縁層490をさらに含むことができる。絶縁層490を形成する方式には制限はないが、例えば、パリレン樹脂などをコイル部430の表面に化学気相蒸着することで形成することができ、スクリーン印刷法、フォトレジスト(photo resist、PR)の露光、現像による工程、スプレー(spray)塗布、ディッピング(dipping)工程など公知の方法で形成することができる。絶縁層490は、薄膜で形成できるものであれば特に制限はないが、例えば、フォトレジスト(PR)、エポキシ(epoxy)系樹脂などを含んで形成されることができる。
【0068】
一方、図示してはいないが、本実施形態による磁性部品400は、本体Bの第6面406のうち外部電極470、480が配置された領域を除いた領域に追加絶縁層をさらに含むことができる。追加絶縁層は、電解めっきで外部電極470、480を形成する際にめっきレジストとして用いられることができるが、これに制限されるものではない。また、追加絶縁層は、本体Bの第1から第5面401、402、403、404、405の少なくとも一部に配置されて、他の電子部品と外部電極470、480との間の電気的ショートを防止することができる。一方、貫通溝H1、H2がモールド部450の内側でモールド部450を貫通することを示しているが、これは例示に過ぎない。すなわち、本実施形態の変形例として、貫通溝H1、H2は、モールド部450の側面に形成されて、モールド部450の一面に配置された第1及び第2収容溝h1、h2と連通されることができる。この場合、コイル部430の両端部は、モールド部450の側面とモールド部450の一面に沿って配置されることができる。なお、本実施形態では、磁性部品400が図13の磁性粒子を含んでいるが、図11の磁性粒子を含むこともでき、これは以下の実施形態においても同様である。
【0069】
図17及び図18を参照して、変形例による磁性部品を説明する。まず、図17の実施形態において磁性部品500は、コイル部430が本体Bの外部に引き出される方式が上述の実施形態とは異なり、その他に重複される構成に関しては説明を省略する。本実施形態において磁性部品500の支持部410には、巻線コイル430の第1及び第2引き出し部431、432を収容することができるように第1及び第2引き出し部431、432と対応される形状に形成された第1及び第2収容溝h1、h2を含むことができる。第1及び第2収容溝h1、h2は、それぞれ支持部410の一側面において厚さ方向(T方向)に沿って形成され、支持部410の他面406において第2方向(Y方向)に延びて形成されることができる。第1及び第2収容溝h1、h2は、第1方向(X方向)に互いに並んで配置されることができる。したがって、カバー部460に磁性物質が含まれた場合、カバー部460の磁性物質と同じ成分が第1及び第2収容溝h1、h2内に配置されることができる。第1及び第2引き出し部431、432は、それぞれ支持部410の第1及び第2収容溝h1、h2に沿って収容され、一端は巻回部に連結され、他端は本体Bの第6面406に露出して第1及び第2外部電極470、480とそれぞれ連結される。この場合、第1外部電極470は、本体Bの第6面406を覆う領域510及び第2面402を覆う領域520を含むことができ、第2外部電極480は、本体Bの第6面406を覆う領域530及び第1面401を覆う領域540を含むことができる。
【0070】
次に、図18の実施形態の場合、磁性部品600の支持部410には別の収容溝が形成されていない構造である。ここで、巻線コイル430の第1及び第2引き出し部431、432は、それぞれ本体Bの互いに向かい合う側面に露出することができる。例えば、第1引き出し部431は本体Bの第1面401に、第2引き出し部432は本体Bの第2面402に露出して、それぞれ第1及び第2外部電極470、480と連結されることができる。
【0071】
本発明は、上述した実施形態及び添付された図面によって限定されるものではなく、添付された特許請求の範囲によって限定しようとする。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で当技術分野の通常の知識を有する者によって多様な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これもまた本発明の範囲に属するといえる。
【符号の説明】
【0072】
100、211、321、322、323 磁性粒子
101、301、302、303 金属磁性粒子
102、304 単結晶領域
103、314 非晶質領域
110、311、312、313 酸化膜
111 非晶質領域
112 単結晶領域
201 本体
202 支持部材
203 コイル
205、206 外部電極
210 絶縁材
C コア部
P パッド領域
V 導電性ビア
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