(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098666
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】樹脂被覆ガラス基材の製造方法
(51)【国際特許分類】
C03C 17/32 20060101AFI20230703BHJP
【FI】
C03C17/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022204054
(22)【出願日】2022-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2021213664
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 敬造
(72)【発明者】
【氏名】大橋 達也
(72)【発明者】
【氏名】井上 欣彦
【テーマコード(参考)】
4G059
【Fターム(参考)】
4G059AA01
4G059AB05
4G059AC16
4G059FA22
4G059FB05
(57)【要約】
【課題】ガラス基材の平面部及び側面部双方へ塗布した樹脂組成物の塗布膜厚の均一性や塗りムラのない均質な膜質の樹脂被覆膜の形成を実現して、生産性を低下させること無くガラス基材の強度に優れた樹脂被覆ガラス基材を提供する。
【解決手段】矩形の板状体であるガラス基材に対して樹脂組成物噴射手段により樹脂組成物を噴射し、前記樹脂組成物の塗布膜を前記ガラス基材上に塗布するガラス基材の製造方法であって、前記樹脂組成物噴射手段が、前記ガラス基材と非接触で前記樹脂組成物を噴射するノズルヘッドを具備し、前記ガラス基材と前記樹脂組成物噴射手段とを相対移動させ、前記樹脂組成物噴射手段が前記ガラス基材の少なくとも一辺と10~80°の角度で交差する方向に相対移動させることにより、前記ガラス基材の平面部の少なくとも一部位及び側面部の少なくとも一部位に前記ノズルヘッドから噴射される前記樹脂組成物を塗布、硬化して樹脂被覆膜を形成する樹脂被覆ガラス基材の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形の板状体であるガラス基材に対して樹脂組成物噴射手段により樹脂組成物を噴射して前記樹脂組成物の塗布膜を前記ガラス基材上に塗布する樹脂被覆ガラス基材の製造方法であって、
前記樹脂組成物噴射手段が、前記ガラス基材と非接触で前記樹脂組成物を噴射するノズルヘッドを具備し、
前記ガラス基材と前記樹脂組成物噴射手段とを相対移動させ、前記樹脂組成物噴射手段が前記ガラス基材の少なくとも一辺と10~80°の角度で交差する方向に相対移動させることにより、前記ガラス基材の平面部の少なくとも一部位及び側面部の少なくとも一部位に前記ノズルヘッドから噴射される前記樹脂組成物を塗布、硬化して樹脂被覆膜を形成する樹脂被覆ガラス基材の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂組成物噴射手段が前記ノズルヘッドを前記ガラス基材と非接触で前記ガラス基材の上部を前記ガラス基材の平面方向と略平行に移動する移動手段を具備する請求項1に記載の樹脂被覆ガラス基材の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂組成物噴射手段が前記ガラス基材の上部を平行移動しながら複数回往復移動する請求項1または2に記載の樹脂被覆ガラス基材の製造方法。
【請求項4】
前記ガラス基材を35℃~100℃に加熱した状態で前記樹脂組成物を前記ガラス基材に噴射する請求項1または2に記載の樹脂被覆ガラス基材の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂組成物噴射手段と前記ガラス基材の相対移動速度をVn(mm/sec)、前記ノズルヘッドからの前記樹脂組成物の噴射量をMr(ml/sec)とした場合に、Vnが100~650(mm/sec)、Mrが0.01~0.17(ml/sec)である請求項1または2に記載の樹脂被覆ガラス基材の製造方法。
【請求項6】
前記ノズルヘッド先端部と前記ガラス基材表面との間隔が20~100mmである請求項1または2に記載の樹脂被覆ガラス基材の製造方法。
【請求項7】
前記ガラス基材の板厚が0.05mm~0.5mmであり、前記ガラス基材平面の面積(mm2)と前記板厚との比が10~15000である請求項1または2に記載の樹脂被覆ガラス基材の製造方法。
【請求項8】
前記樹脂被覆膜の膜厚が0.1~15μmである請求項1または2に記載の樹脂被覆ガラス基材の製造方法。
【請求項9】
前記ガラス基材がリン酸塩系ガラスまたはフツリン酸塩系ガラスである請求項1または2に記載の樹脂被覆ガラス基材の製造方法。
【請求項10】
前記樹脂組成物がシロキサン樹脂を含有する請求項1または2に記載の樹脂被覆ガラス基材の製造方法。
【請求項11】
前記シロキサン樹脂が、ラジカル重合性基を有する請求項10に記載の樹脂被覆ガラス基材の製造方法。
【請求項12】
前記樹脂組成物が溶媒(S)を含有する請求項1または2に記載の樹脂被覆ガラス基材の製造方法。
【請求項13】
前記溶媒(S)が、大気圧下で沸点が100℃以上200℃未満の溶媒(S1)及び大気圧下で沸点が200℃以上250℃以下の溶媒(S2)を含有し、前記溶媒(S1)の含有量をSw1(重量%)、前記溶媒(S2)の含有量をSw2(重量%)とすると、Sw2/Sw1が1/99~4/96である請求項12に記載の樹脂被覆ガラス基材の製造方法。
【請求項14】
前記溶媒(S)中、前記Sw1が96~99重量%、前記Sw2が1~4重量%含有する請求項12に記載の樹脂被覆ガラス基材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基材に樹脂被覆膜を形成する樹脂被覆ガラス基材の製造方法に関する。
本発明は、電子機器用のガラス基材や電子機器用画像表示装置、スマートフォン等の電子機器用のカメラ内部に搭載されるIRカットフィルターに用いるガラス基材に樹脂被覆膜を形成する樹脂被覆ガラス基材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、CCDやCMOSなどの固体撮像素子を内蔵した撮像装置がデジタルカメラやスマートフォン等に使用されている。これらの撮像装置は、固体撮像素子が近紫外域から近赤外域まで分光感度を有しているため、入射光の近赤外線をカットして、人間の視感度に近くなるように感度を補正する近赤外線カットフィルター(IRカットフィルター)を備えている。
【0003】
IRカットフィルターとしては、近赤外線を選択的に吸収できる、CuO等が添加されたリン酸塩系ガラスやフツリン酸塩系ガラスが知られている。しかし、IRカットフィルターは、薄型化や大型化が強く望まれており、強度が不足してガラスが割れやすい課題があった。特許文献1には、表裏に化学強化処理層を有し、且つ、その端部断面に電離放射線硬化性樹脂組成物からなる保護膜が施されてなるガラス基板が記載され、それにより、ガラス基板の表裏の強度に加えて、その端部断面の強度を向上させることができる効果が開示されている。
【0004】
特許文献2では、ノズルと基板を相対的に移動させながら、塗膜形成材料を溶剤に溶解した塗布液を前記ノズルから前記基板上に吐出し、塗布液膜を形成した後、この塗布液膜から溶剤を除去することによって塗膜を形成する方法が記載され、スキャン塗布法により均一な膜厚を有する塗膜を形成することができる効果が開示されている。
【0005】
特許文献3では、前記基板に対して縦横方向に処理液供給手段を移動させながら、前記基板の表面に処理液を供給する工程と、を具備し、前記供給工程において、前記処理液供給手段を移動させる順序を変更可能とした塗布方法が記載され、膜厚の均一性を確保することができ、ノズルが基板Gの外側を移動する際にはレジスト液の吐出量を小さく、レジストの節約を図ることができる効果が開示されている。
【0006】
特許文献4では、ラジカル反応性官能基を有するシロキサンポリマー組成物を、吐出ノズルと基板とを相対的に移動させつつ、基板上に塗布して塗膜を形成し、現像、加熱により硬化膜を形成する方法が記載され、吐出ノズル式塗布法に好適で、塗布ムラがなく外観に優れ、また高度な平坦性(膜厚均一性)及び高速塗布を達成できる効果が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-214444号公報
【特許文献2】特開2003-211070号公報
【特許文献3】特開2002-110506号公報
【特許文献4】特開2012-68417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述した文献にはガラス等の基材の平面部及び側面部双方への均質な塗膜を形成する技術思想の開示はなく、ガラス等の基材の強度を高めるために、その基材の平面部のみならず側面部にも樹脂組成物を塗布することは重要である。
【0009】
本発明は、ガラス基材の平面部及び側面部双方へ樹脂組成物を塗布することで、強度に優れた樹脂被覆ガラス基材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明は以下の手段を採用するものである。すなわち、
[1]矩形の板状体であるガラス基材に対して樹脂組成物噴射手段により樹脂組成物を噴射して前記樹脂組成物の塗布膜を前記ガラス基材上に塗布する樹脂被覆ガラス基材の製造方法であって、前記樹脂組成物噴射手段が、前記ガラス基材と非接触で前記樹脂組成物を噴射するノズルヘッドを具備し、前記ガラス基材と前記樹脂組成物噴射手段とを相対移動させ、前記樹脂組成物噴射手段が前記ガラス基材の少なくとも一辺と10~80°の角度で交差する方向に相対移動させることにより、前記ガラス基材の平面部の少なくとも一部位及び側面部の少なくとも一部位に前記ノズルヘッドから噴射される前記樹脂組成物を塗布、硬化して樹脂被覆膜を形成する樹脂被覆ガラス基材の製造方法。
【0011】
[2]前記樹脂組成物噴射手段が前記ノズルヘッドを前記ガラス基材と非接触で前記ガラス基材の上部を前記ガラス基材の平面方向と略平行に移動する移動手段を具備する[1]に記載の樹脂被覆ガラス基材の製造方法。
【0012】
[3]前記樹脂組成物噴射手段が前記ガラス基材の上部を平行移動しながら複数回往復移動する[1]または[2]に記載の樹脂被覆ガラス基材の製造方法。
【0013】
[4]前記ガラス基材を35℃~100℃に加熱した状態で前記樹脂組成物を前記ガラス基材に噴射する[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂被覆ガラス基材の製造方法。
【0014】
[5]前記樹脂組成物噴射手段と前記ガラス基材の相対移動速度をVn(mm/sec)、前記ノズルヘッドからの前記樹脂組成物の噴射量をMr(ml/sec)とした場合に、Vnが100~650(mm/sec)、Mrが0.01~0.17(ml/sec)である[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂被覆ガラス基材の製造方法。
【0015】
[6]前記ノズルヘッド先端部と前記ガラス基材表面との間隔が20~100mmである[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂被覆ガラス基材の製造方法。
【0016】
[7]前記ガラス基材の板厚が0.05mm~0.5mmであり、前記ガラス基材平面の面積(mm2)と前記板厚との比が10~15000である[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂被覆ガラス基材の製造方法。
【0017】
[8]前記樹脂被覆膜の膜厚が0.1~15μmである[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂被覆ガラス基材の製造方法。
【0018】
[9]前記ガラス基材がリン酸塩系ガラスまたはフツリン酸塩系ガラスである[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂被覆ガラス基材の製造方法。
【0019】
[10]前記樹脂組成物がシロキサン樹脂を含有する[1]~[9]のいずれかに記載の樹脂被覆ガラス基材の製造方法。
【0020】
[11]前記シロキサン樹脂が、ラジカル重合性基を有する[10]に記載の樹脂被覆ガラス基材の製造方法。
【0021】
[12]前記樹脂組成物が溶剤(S)をさらに含有する[1]~[11]に記載の樹脂被覆ガラス基材の製造方法。
【0022】
[13]前記溶剤(S)が、大気圧下で沸点が100℃以上200℃未満の溶剤(S1)及び大気圧下で沸点が200℃以上250℃以下の溶剤(S2)を含有し、前記溶剤(S1)の含有量をSw1(重量%)、前記溶剤(S2)の含有量をSw2(重量%)とすると、Sw2/Sw1が1/99~4/96である[12]に記載の樹脂被覆ガラス基材の製造方法。
【0023】
[14]前記溶剤(S)中、前記Sw1が96~99重量%、前記Sw2が1~4重量%含有する[12]または[13]に記載の樹脂被覆ガラス基材の製造方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明の樹脂被覆ガラス基材の製造方法によれば、ガラス基材の平面部及び側面部双方へ塗布した樹脂組成物の塗布膜の膜厚均一性や塗りムラのない、均質な樹脂組成物の膜質の形成を実現して、生産性を低下させること無く強度に優れた樹脂被覆ガラス基材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に係る樹脂被覆ガラス基材の製造方法における樹脂組成物を基材表面上に塗布する製造過程を示した斜視模式図である。
【
図2】本発明に係る樹脂被覆ガラス基材の製造方法の製造過程を示した平面図である。
【
図3】本発明に係る樹脂被覆ガラス基材の製造方法の製造過程を示した側面断面図である。
【
図4】本発明に係る樹脂被覆ガラス基材の製造方法における樹脂組成物噴射手段の移動軌跡を示した平面図である。
【
図5】本発明に係る樹脂被覆ガラス基材の製造方法における別の樹脂組成物噴射手段の移動軌跡を示した平面図である。
【
図6】樹脂被覆ガラス基材の曲げ荷重を測定する装置の概略断面図である。
【
図7】従来技術に係る樹脂被覆ガラス基材の製造過程を示した斜視模式図である。
【
図8】従来技術に係る樹脂被覆ガラス基材の製造過程を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、実施の形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は図や実施例に何ら限定されるものではない。
【0027】
本発明の樹脂被覆ガラス基材の製造方法は、
図1の斜視図に示すように、矩形の板状体であるガラス基材1に対して樹脂組成物噴射手段2により樹脂組成物3を噴射し、樹脂組成物3の塗布膜4をガラス基材1上に塗布する樹脂被覆ガラス基材の製造方法であって、樹脂組成物噴射手段2がガラス基材1と非接触で樹脂組成物3を噴射するノズルヘッド5を具備し、ガラス基材1と樹脂組成物噴射手段2とを相対移動させ、樹脂組成物噴射手段2がガラス基材1の少なくとも一辺と10~80°の角度で交差する方向に相対移動させることにより、ガラス基材1の平面部1aの少なくとも一部位及び側面部1bの少なくとも一部位にノズルヘッド5から噴射される樹脂組成物3を塗布、硬化して樹脂被覆膜を形成する樹脂被覆ガラス基材の製造方法である。
【0028】
本発明において、ガラス基材上に樹脂組成物3を噴射して膜を形成した際、樹脂組成物3の膜中に溶剤が残存している膜は塗布膜4、塗布膜4を乾燥した加熱硬化直前の膜は乾燥膜、乾燥膜を紫外線、可視光線、電子線、X線などの化学線を照射して露光した膜は露光膜、乾燥膜や露光膜を加熱硬化した膜は樹脂被覆膜という。
【0029】
本発明において、ガラス基材1の平面方向としてXY平面、ガラス基材1の平面に対する垂直方向をZ方向と称する場合がある。
【0030】
これにより、ガラス基材1の平面部1aのみならず側面部1bに対しても均一な膜厚の塗布膜4を形成することができる。さらに、側面部1bにおいて樹脂組成物が帯状模様の不連続な状態の膜となる、いわゆる樹脂の液だれの形成を回避することができる。また、ガラス基材1上に塗布した際に樹脂組成物3の一部分が抜け落ちるいわゆるピンホールの発生を抑制することができ、ガラス基材1の平面部1a及び側面部1b双方へ樹脂組成物3の均一な膜厚で塗りムラのない均質な樹脂組成物3の塗布膜4を形成することができる。
【0031】
樹脂組成物噴射手段2の移動の軌道とガラス基材1の一辺との交差角度の関係を
図2の平面図に示す。ガラス基材1は四角形を例示し、ガラス基材1はステージに固定し、樹脂組成物噴射手段2を移動させる形態を例示した。基材を支持するステージは図示せず省略している。また、平面図であるが、樹脂組成物噴射手段2は
図1の斜視図のものをそのまま用いている。
【0032】
本実施形態では、樹脂組成物噴射手段2に保持されているノズルヘッド5はガラス基材1の投影平面領域外から矢印7の一点鎖線で示す移動方向に沿って投影平面領域内に移動させる。この際、
図3の側面図に示すようにノズルヘッド5はガラス基材1と非接触で一定の間隔を設け、また、ガラス基材1への樹脂組成物3の噴射方向はガラス基材1の平面に対して略垂直方向とすることが好ましい。
【0033】
ノズルヘッド5を具備する樹脂組成物噴射手段2はガラス基材1の直線部分の1辺1cを横切り、そのままガラス基材1の平面内を、樹脂組成物3を噴射しながら矢印7の方向に直線的に移動する。この移動時において、ガラス基材1の直線部分の1辺1cと樹脂組成物噴射手段2の移動方向7との交差角度6を10~80°とする。移動を一定の角度を持って1辺1cに対して斜め方向とすることにより、ノズルヘッド5から噴射される樹脂組成物3がガラス基材1の側面部1bへ均質に塗布された塗布膜4を形成することができる。これによりガラス基材1の側面部1bでの塗布膜4の膜厚を均一にし、膜表面が凸凹になるような塗りムラの発生を抑えることができる。ここでの交差角度6は鈍角の方ではなく、鋭角を指している。交差角度6が10°未満または80°を超えると、ガラス基材1の周辺の側面部1bにおいて、樹脂組成物3が液だれや一部の箇所において塗布されない不連続な塗布膜4が形成される場合がある。側面部1bに均質な塗布膜4が形成されないため、ガラス基材の強度向上効果が発現しにくい場合がある。交差角度6は、好ましくは20~70°、より好ましくは30~60°、さらに好ましくは40~50°である。
【0034】
これに対し、
図7の従来技術の斜視図または
図8の平面図に示すように、樹脂組成物噴射手段2の移動方向7をガラス基材1の直線部分の1辺1cとの角度を90°とすると、ガラス基材1の側面部1bの長手面方向が、樹脂組成物噴射手段2の移動方向7と略平行となり、ノズルヘッド5から噴射される樹脂組成物3が側面部1bにおいて液だれを生じる場合があり、塗布膜4に塗りムラが生じたり、部分的に一部の樹脂組成物3が脱落する抜けが生じ易くなる場合がある。結果、均質な塗布膜4形成が困難となり、ガラス基材1の強度が低下する場合がある。
【0035】
ガラス基材1の形状としては、
図1、
図2または
図3に示すように一定の板厚を有し平面形状は矩形状であり、その板厚よりも平面の一辺が長い形態の板状体であることが好ましく、その形は少なくとも一辺が直線状である。また、矩形状でその四隅が角状になっているもの以外にも四隅の角が丸みを帯びた形状のものも含まれる。矩形形状としては、4つの角がすべて等しい四角形であり、平行四辺形の性質をすべて満たすほか、4つの内角はすべて直角に等しく、2本の対角線は等しい長さを持つものが好ましい。
【0036】
図4の平面図に、四角形状のガラス基材1を例示して樹脂組成物噴射手段2の移動の状態を示す。ガラス基材1の投影平面領域外から矢印7の一点鎖線で示す移動方向に沿って投影平面領域内に移動させる。樹脂組成物噴射手段2を複数回往復移動させガラス基材1の必要な箇所に樹脂組成物3の塗布膜4を形成する。ガラス基材1の直線部分の1辺1cと樹脂組成物噴射手段2の移動方向7との交差角度6を前述した10~80°となる方向に移動させている。
【0037】
なお、上述したように、本実施形態では、ガラス基材1を固定し、樹脂組成物噴射手段2を移動させることにより、塗布時におけるガラス基材1と樹脂組成物噴射手段2とを相対移動を行う。しかしながら、本発明はこれに限定されず、ガラス基材1の方を移動させて上記相対移動を行ってもよく、あるいはガラス基材1と樹脂組成物噴射手段2との双方を移動させて上記相対移動を行ってもよい。また、ガラス基材1とノズルヘッド5との間隔は、図示しない駆動装置を介して調整する手段や、ノズルヘッド5あるいはガラス基材1のXY平面に対する傾きを調整する手段や、XY平面内での回転角を調整する手段を備えてもよい。
【0038】
また、本発明において、樹脂組成物噴射手段2がノズルヘッド5をガラス基材1と非接触でガラス基材1の上部をガラス基材1の平面方向と略平行に移動する移動手段を具備する形態が好ましい。
【0039】
ガラス基材1はステージに固定し、樹脂組成物3を噴射するノズルヘッド5を、ガラス基材1と非接触で、ガラス基材1の上部をXY平面方向へ走査するように樹脂組成物噴射手段2を移動させる形態が好ましい。平面方向と略平行とは、XY平面方向に対して上下方向±5°以内で走査することを意味する。このばらつきは、ノズルヘッド5の移動中にノズルヘッド5からガラス基材1へ樹脂組成物3が到達し、かつノズルヘッド5がガラス基材1と接触しないことが必要条件となる。
【0040】
これにより、樹脂組成物噴射手段を固定し基材を支持するステージを移動させるよりも、装置自体の大きさを小さくでき,駆動にかかるトルクも低減できる。
【0041】
また、本発明において、樹脂組成物噴射手段2がガラス基材1の上部を平行移動しながら複数回往復移動する形態が好ましい。
【0042】
樹脂組成物噴射手段2がXY平面方向に対して平行に、かつガラス基材1のすべての一辺と10~80°の角度で交差する方向に相対移動するように、少なくとも樹脂組成物噴射手段2またはガラス基材1を複数回往復移動する構成とすることが好ましい。
【0043】
図4の平面図に示すように、樹脂組成物噴射手段2の移動の軌跡がガラス基材1のすべての一辺と一定の角度を持って斜め方向に交差することにより、ガラス基材1のすべての側面部で均質な樹脂組成物3の塗布膜4を形成することでき、ガラス基材1の強度を向上させることが可能となる。
【0044】
図5の平面図に示す長方形の矩形型状のガラス基材1を例示して樹脂組成物噴射手段2の移動の状態を説明する。出発点7aから樹脂組成物噴射手段2をガラス基材1の投影平面領域外から矢印7の一点鎖線で示す移動方向に沿って投影平面領域内に移動させ、ガラス基材1のすべての1辺と10~80°の角度で交差するように終点7bまで複数回往復移動させガラス基材1の平面部及び側面部の必要なすべての箇所に樹脂組成物の塗布膜4を形成するものである。
また、本発明において、ガラス基材1を35℃~100℃に加熱した状態で樹脂組成物3をガラス基材1に噴射する形態が好ましい。
【0045】
ガラス基材1を一定温度に加熱することにより、ガラス基材1上に噴射される樹脂組成物3が短時間で乾燥されて側面部での液だれが発生し難くなり、塗布膜4の膜厚の均質性を向上することができる。ガラス基材1を35℃以上に加熱することにより、樹脂組成物3が短時間で乾燥されて側面部での液だれが発生し難くなり、膜厚の均質性を向上することができる。ガラス基材1を100℃以下で加熱することにより、樹脂組成物3が濡れ広がらない現象の発生を回避することができる。ガラス基材1の加熱温度は好ましくは40℃~90℃、より好ましくは45℃~75℃、さらに好ましくは50℃~60℃である。
【0046】
加熱方法としては、ステージを加温することが好ましい。ヒーターの種類は特に制限はなく、赤外線ヒーター、電熱線、UVランプ、ガス、熱風ドライヤーなど公知の方法から適宜選択して適用することが好ましい。中でも、電熱線、赤外線ヒーターによる加温が、安全性やエネルギー効率の点から好ましい。
【0047】
また、本発明において、樹脂組成物噴射手段2ガラス基材1との相対移動速度をVn(mm/sec)、前記ノズルヘッドの前記樹脂組成物の噴射量をMr(ml/sec)とすると、Vnが100~650(mm/sec)であり、Mrが0.01~0.17(ml/sec)であることが好ましい。
【0048】
樹脂組成物3の単位時間当たりの噴射量及び樹脂組成物噴射手段2とガラス基材1との相対移動速度を一定範囲とすることにより、単位領域あたりの樹脂組成物の噴射量を一定範囲とすることができ、塗布膜4の膜厚の均一化を図れるとともに、側面部での樹脂組成物の液だれによるムラの発生を抑えることができる。
【0049】
Mrは好ましくは、0.02~0.15、より好ましくは0.03~0.06、Vnは好ましくは150~600、より好ましくは250~400である。また、本発明において、ノズルヘッド5先端部とガラス基材1表面との間隔8が20~100mmであることが好ましい。
【0050】
図3の側面図において、ノズルヘッド5の先端とガラス基材1の平面部の表面との間隔8が20mm未満となると液の跳ね返りが生じ易くなり、100mmを超えると塗布膜4に凹凸が生じる場合があり、塗布膜厚の均一性が阻害される場合がある。好ましくは30~80mm,より好ましくは35~60mm、さらに好ましくは40~50mmである。
【0051】
また、本発明において、電子機器の小型化とガラス機材の最低限の強度を確保するために、ガラス基材1の板厚が0.05mm~0.5mmであり、ガラス基材1の平面の投影面積(mm2)と板厚との比が10~15000であることが好ましい。
【0052】
ガラス基材1の最低限の強度を得るために板厚が0.05mm以上、ガラス基材1の平面の投影面積(mm2)と板厚との比が10以上とすることが好ましく、ガラス基材1を電子機器に搭載した場合の機器の小型化を確保するために0.5mm以下、ガラス基材1の平面の投影面積(mm2)と板厚との比が15000以下とすることが好ましい。
【0053】
また、本発明において、ガラス基材1に形成される塗布膜4を加熱硬化した樹脂被覆膜の膜厚が0.1~15μmであることが好ましい。
【0054】
膜厚の調整はノズルヘッド5からの樹脂組成物3の噴射量、ノズルヘッド5の移動速度、または塗布膜4の積層回数を変更することにより調整することができる。膜厚が0.1μm未満であるとガラス基材1の強度が低下する場合がある。膜厚が15μmを超えると樹脂組成物の塗りムラや膜厚の均一性が阻害される場合がある。膜厚は好ましくは0.4~10μm、より好ましくは1~8μm、さらに好ましくは2~6μmである。
【0055】
本発明において、樹脂組成物3をガラス基材1上に噴射して塗布膜4を形成する際、樹脂組成物噴射手段2を複数回往復させて塗布膜4が複数層積層した形態とすることが好ましく、その積層された積層数が2~4層であることが好ましい。これにより、側面部の樹脂組成物の膜厚が均一になるため、ガラスの強度を高めることができ、耐久性や信頼性を得ることができる。
【0056】
同じ膜厚でも単層で厚膜を形成する場合、側面部の塗布膜4に液だれが生じて膜厚均一性が悪化する場合があり、同じ膜厚を複数層の積層構成とすることにより側面部の塗布膜4の均質性をより高めることができる。積層数が1層だと、側面部の塗布膜4に液だれが生じて膜厚均一性が悪化する場合がある。積層数が4層を超えると生産性向上に課題がでる場合がある。
【0057】
また、本発明において、ガラス基材1の平面部に形成される塗布膜4の重ね幅が1~20mmであることが好ましい。一定の重ね幅とすることにより、樹脂組成物噴射手段2を移動させてガラス基材1の平面部及び側面部に塗布膜4を形成する際の往復移動時に、塗布膜4の未塗布部分を生じさせず、また、塗布膜4の凹凸を形成させないためにも、塗布膜4に一定量の重なりを設けることが好ましい。
【0058】
樹脂組成物噴射手段2としては、噴射ノズル式の塗布方法であって、噴射するノズルヘッド5を一定方向に掃引して基材1に塗布膜4を形成する塗布方法が好ましい。噴射式の塗布方法としては回転霧化方式、低圧霧化方式などが挙げられるが、均一な粒子径を安定的に噴霧でき、塗布された塗布膜4の乾燥速度が均一になることから低圧霧化方式が好ましい。
【0059】
また、樹脂組成物3を保管する容器と、一定の圧力を加えることで樹脂組成物3を先端から噴射するノズルヘッド5から構成されることが好ましいが、樹脂組成物3を保管した別離した容器からチューブ等の樹脂組成物輸送管をノズルヘッド5に連結する形態も好ましい。ノズルヘッド5からの樹脂組成物3の噴射は間欠式または連続式どちらでも構わないが、樹脂組成物が基材に着弾した後の跳ね返りを防止するためにも連続式が好ましい。
【0060】
また、本発明において、ガラス基材1の材質がリン酸塩系ガラスまたはフツリン酸塩系ガラスであることが好ましい。この材質のガラスの使用により赤外線吸収効果を発揮することができ、センサー用フィルターとして使用することによりセンサーに届く赤外光をカットすることができる。さらに後述するシロキサン樹脂を側面部に塗布することによりガラスの強度を高めることができ、耐久性や信頼性を得ることができる。
【0061】
本発明におけるリン酸塩系ガラスとは、必須成分としてのP、Oと、他の任意成分とを含むガラスであり、CuOを含むものが特に好ましい。リン酸塩系ガラスがCuOを含むことにより、近赤外光をより効果的に吸収することができる。リン酸塩系ガラスの他の任意成分としては例えば、Al、Ca、Mg、Sr、Ba、Li、Na、K、Csなどが挙げられる。
【0062】
本発明におけるフツリン酸塩系ガラスとは、必須成分としてのP、O、Fと、他の任意成分とを含むガラスであり、CuOを含むものが特に好ましい。フツリン酸塩系ガラスがCuOを含むことにより、近赤外光をより効果的に吸収することができる。フツリン酸塩系ガラスの他の任意成分としては例えば、Al、Ca、Mg、Sr、Ba、Li、Na、K、Csなどが挙げられる。なお、リン酸塩系ガラスおよびフツリン酸塩系ガラスには、ガラスの骨格の一部がSiO2で構成されるケイリン酸塩ガラスも含むものとする。
【0063】
上記リン酸塩系ガラスとしては、P2O5を1重量%以上70重量%以下、Al2O3を1重量%以上40重量%以下、RO(ただしRは、Ca、Mg、Sr、Ba、Li、Na、K、CsおよびZnから選択される少なくとも1種)を1重量%以上40重量%以下、CuOを1重量%以上40重量%以下含有することが好ましい。更には、P2O5を20重量%以上60重量%以下、Al2O3を1重量%以上10重量%以下、ROを1重量%以上10重量%以下、CuOを1重量%以上10重量%以下含有することがより好ましい。
【0064】
上記フツリン酸塩系ガラスとしては、P2O5を1重量%以上70重量%以下、Al2O3を1重量%以上40重量%以下、ROを1重量%以上40重量%以下、CuOを1重量%以上40重量%以下、フッ化物を1重量%以上40重量%以下含有することが好ましい。更には、P2O5を20重量%以上60重量%以下、Al2O3を1重量%以上10重量%以下、ROを1重量%以上10重量%以下、CuOを1重量%以上10重量%以下、フッ化物を1重量%以上30重量%以下含有することがより好ましい。なお、上記フッ化物としては、MgF2、CaF2、SrF2等から選ばれる一種以上が挙げられる。
【0065】
P2O5は、ガラス骨格を形成する成分であり、P2O5の含有量が少なすぎると、ガラス化が不安定になる場合がある。一方、P2O5の含有量が多すぎると、耐候性が低下しやすくなることがある。
【0066】
Al2O3は、耐候性をより一層向上させる成分であり、Al2O3の含有量が少なすぎると、耐候性が十分でないことがある。一方、Al2O3の含有量が多すぎると、溶融性が低下して溶融温度が上昇する場合がある。なお、溶融温度が上昇すると、Cuイオンが還元されてCu2+からCu+にシフトしやすくなるため、所望の光学特性が得られにくくなる場合がある。具体的には、近紫外~可視域における光透過率が低下したり、赤外線吸収特性が低下し易くなったりすることがある。
【0067】
RO(ただしRは、Ca、Mg、Sr、Ba、Li、Na、K、CsおよびZnから選択される少なくとも1種)は、耐候性を改善するとともに、溶融性を向上させる成分である。ROの含有量が少なすぎると、耐候性及び溶融性が十分でない場合がある。一方、ROの含有量が多すぎると、ガラスの安定性が低下し易く、RO成分起因の結晶が析出しやすくなることがある。
【0068】
CuOは、近赤外線を吸収するための成分である。CuOの含有量は、重量%で、好ましくは0.3~20%であり、より好ましくは0.3~15%であり、さらに好ましくは0.4~13%である。CuOの含有量が少なすぎると、所望の近赤外線吸収特性が得られない場合がある。一方、CuOの含有量が多すぎると、紫外~可視域の光透過率が低下しやすくなることがある。また、ガラス化が不安定になる場合がある。なお、所望の光学特性を得るためCuOの含有量は、板厚によって適宜調整することが好ましい。
【0069】
また、上記成分以外にも更に金属酸化物を含有しても良く、具体的には、B2O3、Nb2O5、Y2O3、La2O3、Ta2O5、Fe2O3、MoO3、WO3、CeO2、Sb2O3、V2O5等が挙げられる。
【0070】
また、本発明において、樹脂組成物がシロキサン樹脂を含有することが好ましい。
樹脂組成物がシロキサン樹脂を含有し、前述したリン酸塩系のガラス基材の平面部及び側面部に塗布膜4を形成することによりガラス基材1の強度をより高めることができる。
また、本発明において、シロキサン樹脂が、ラジカル重合性基を有することが好ましい。
【0071】
後述する光ラジカル重合開始剤とともにラジカル重合性基を有することにより、光照射により発生するラジカルによるラジカル重合反応の進行により、樹脂被覆膜の架橋度を高め、ガラス強度をより向上させることができる。
本発明におけるシロキサン樹脂とは、シロキサン骨格を有する繰り返し単位を有するポリマーを言い、オルガノシラン化合物の加水分解縮合物が好ましい。ただし、シロキサン樹脂がオキセタニル基を有する場合は、後述する「オキセタニル基を有するシロキサン化合物」に分類するものとする。
【0072】
本発明におけるシロキサン樹脂の重量平均分子量は、塗布性を向上させる観点から、2,000~7,000が好ましい。
ラジカル重合性基としては、例えば、ビニル基、α-メチルビニル基、アリル基、スチリル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。樹脂被覆膜の架橋度をより高める観点から、(メタ)アクリロイル基が好ましい。ラジカル重合性基を有するシロキサン樹脂としては、ラジカル重合性基を有するオルガノシラン化合物の加水分解縮合物が好ましい。ラジカル重合性基を有するオルガノシラン化合物と、その他のオルガノシラン化合物との加水分解縮合物でもよい。ラジカル重合性基を有するオルガノシラン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリ(2-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルメチルジメトキシシラン、アリルメチルジエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、p-スチリルトリエトキシシラン、p-スチリルメチルジメトキシシラン、p-スチリルメチルジエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらのうち、樹脂被覆膜の架橋度をより高めて、ガラス強度をより向上させる観点から、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0073】
その他のオルガノシラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン、n-デシルトリエトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3-トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0074】
本発明におけるシロキサン樹脂は、オルガノシラン化合物を加水分解縮合することにより得ることができる。例えば、オルガノシラン化合物を加水分解した後、得られるシラノール化合物を溶媒の存在下または無溶媒で縮合反応させることによって得ることができる。
【0075】
加水分解反応の各種条件は、反応スケール、反応容器の大きさ、形状などを考慮して適宜設定することができる。例えば、溶媒中、オルガノシラン化合物に酸触媒および水を1~180分間かけて添加した後、室温~110℃で1~180分間反応させることが好ましい。このような条件で加水分解反応を行うことにより、急激な反応を抑制することができる。反応温度は、より好ましくは30~105℃である。
【0076】
加水分解反応は、酸触媒の存在下で行うことが好ましい。酸触媒としては、蟻酸、酢酸、リン酸を含む酸性水溶液が好ましい。酸触媒の添加量は、加水分解反応時に使用される全オルガノシラン化合物100重量部に対して、0.1~5重量部が好ましい。酸触媒の量を上記範囲とすることにより、加水分解反応をより効率的に進めることができる。
【0077】
オルガノシラン化合物の加水分解反応によりシラノール化合物を得た後、反応液をそのまま50℃以上、溶媒の沸点以下で1~100時間加熱し、縮合反応を行うことが好ましい。また、シロキサン樹脂の重合度を上げるために、再加熱または塩基触媒添加を行ってもよい。オルガノシラン化合物の加水分解反応およびシラノール化合物の縮合反応に用いられる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、3-メチル-2-ブタノール、3-メトキシ-1-ブタノール、3-メチル-3-メトキシ-1-ブタノール、1-t-ブトキシ-2-プロパノール、ダイアセトンアルコールなどのアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチルエーテルなどのエーテル類;メチルエチルケトン、アセチルアセトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、2-ヘプタノンなどのケトン類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどのアセテート類;トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサンなどの芳香族あるいは脂肪族炭化水素、γ-ブチロラクトン、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどを挙げることができる。有機膜(C)の透過率、耐クラック性などをより向上させる観点から、ダイアセトンアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノt-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、γ-ブチロラクトンなどが好ましく用いられる。
【0078】
加水分解反応によって溶媒が生成する場合には、無溶媒で加水分解させることも可能である。反応終了後に、さらに溶媒を添加することにより、組成物として適切な濃度に調整することも好ましい。また、目的に応じて加水分解後に、生成アルコールなどを加熱および/または減圧下にて適量を留出、除去し、その後好適な溶媒を添加してもよい。
【0079】
加水分解反応において使用する溶媒の量は、全オルガノシラン化合物100重量部に対して80~500重量部が好ましい。溶媒の量を上記範囲とすることにより、加水分解反応をより効率的に進めることができる。
また、加水分解反応に用いる水は、イオン交換水が好ましい。水の量は、シラン原子1モルに対して、1.0~4.0モルが好ましい。
【0080】
樹脂組成物中におけるシロキサン樹脂の含有量は、強度と透明性をより向上させる観点から、全固形分中15重量%以上が好ましく、25重量%以上がより好ましい。一方、硬化のひび割れを防止する観点から、シロキサン樹脂の含有量は、全固形分中90重量%以下が好ましく、80重量%以下がより好ましい。ここで、全固形分とは、樹脂組成物を含有する組成物中における、溶媒以外の全成分をいう。
【0081】
樹脂組成物は、塗布性の観点から、溶媒(S)を含有することが好ましい。溶媒(S)を含有することにより、各成分を均一に溶解することができる。溶媒(S)としては、例えば、脂肪族炭化水素、カルボン酸エステル、ケトン、エーテル、アルコール類などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。各成分を均一に溶解し、得られる樹脂被覆膜の透明性を向上させる観点から、アルコール性水酸基を有する化合物、カルボニル基を有する環状化合物が好ましい。
【0082】
アルコール性水酸基を有する化合物としては、例えば、アセトール、3-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブタノン、4-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブタノン、5-ヒドロキシ-2-ペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン(ダイアセトンアルコール)、乳酸エチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノt-ブチルエーテル、3-メトキシ-1-ブタノール、3-メチル-3-メトキシ-1-ブタノールなどが挙げられる。これらの中でも、保存安定性の観点から、ダイアセトンアルコール、3-メチル-3-メトキシ-1-ブタノールが好ましい。
【0083】
カルボニル基を有する環状化合物の具体例としては、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、炭酸プロピレン、N-メチルピロリドン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノンなどが挙げられる。これらの中でも、γ-ブチロラクトンが特に好ましく用いられる。
【0084】
脂肪族炭化水素としては、例えば、キシレン、エチルベンゼン、ソルベントナフサなどが挙げられる。
【0085】
カルボン酸エステルとしては、例えば、ベンジルアセテート、エチルベンゾエート、γ-ブチロラクトン、メチルベンゾエート、マロン酸ジエチル、2-エチルヘキシルアセテート、2-ブトキシエチルアセテート、3-メトキシ-3-メチル-ブチルアセテート、シュウ酸ジエチル、アセト酢酸エチル、シクロヘキシルアセテート、3-メトキシ-ブチルアセテート、アセト酢酸メチル、エチル-3-エトキシプロピオネート、2-エチルブチルアセテート、イソペンチルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソペンチル、酢酸ペンチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。
ケトンとしては、例えば、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどが挙げられる。
エーテルとしては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのプロピレングリコール誘導体などの脂肪族エーテル類などが挙げられる。
【0086】
樹脂組成物を基材に塗布する際の揮発性および乾燥特性を適度に調整し、塗布性を向上させる観点から、樹脂組成物は、大気圧下における沸点が100℃以上200℃未満の溶媒(S1)と、大気圧下における沸点が200℃以上250℃以下の溶媒(S2)を含有することが好ましく、溶媒(S1)の含有量をSw1(重量%)、溶媒(S2)の含有量をSw2(重量%)とすると、Sw2/Sw1が1/99~4/96であることが、より好ましい。また、樹脂組成物の溶媒(S)中、Sw1が96~99重量%、Sw2が1~4重量%含有することが、さらに好ましい。
【0087】
樹脂組成物の溶媒(S)中、Sw1が96~99重量%、Sw2が1~4重量%含有することにより、ガラス基材の側面部の凹凸に樹脂組成物が浸透し、かつ、液だれの形成を回避することで、ガラス基材の強度を向上することができる。
【0088】
樹脂組成物の溶媒(S)中、液だれの形成を回避し、ガラス基材の強度を向上する観点から、Sw1とSw2の総量は60~100重量%であることが好ましく、80~100重量%であることが好ましく、90~100重量%であることが好ましい。
【0089】
大気圧下における沸点が100℃以上200℃未満の溶媒(S1)としては、例えば、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン(ダイアセトンアルコール)(沸点=168℃)、乳酸エチル(沸点=154℃)、乳酸ブチル(沸点=170℃)、プロピレングリコールモノt-ブチルエーテル(沸点=152℃)、3-メトキシ-1-ブタノール(沸点=158℃)、3-メチル-3-メトキシ-1-ブタノール(沸点=173℃)、メチルベンゾエート(沸点=199℃)、マロン酸ジエチル(沸点=199℃)、2-ブトキシエチルアセテート(沸点=192℃)、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート(沸点=188℃)、シュウ酸ジエチル(沸点=185℃)、アセト酢酸エチル(沸点=181℃)、シクロヘキシルアセテート(沸点=175℃)、3-メトキシブチルアセテート(沸点=172℃)、アセト酢酸メチル(沸点=170℃)、エチル-3-エトキシプロピオネート(沸点=170℃)、イソペンチルプロピオネート(沸点=156℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート(沸点=161℃)、シクロヘキサノン(沸点=156℃)、シクロヘプタノン(沸点=179℃)、n-プロピルアセテート(沸点=102℃)、ブチルアセテート(沸点=126℃)、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点=145℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点=146℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点=120℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(沸点=133℃)、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル(沸点=135℃)などが挙げられる。これらの中でも、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン(ダイアセトンアルコール)、3-メチル-3-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルが特に好ましく用いられる。
【0090】
大気圧下における沸点が200℃以上250℃以下の溶媒(S2)としては、例えば、ベンジルアセテート(沸点=213℃)、エチルベンゾエート(沸点=212℃)、2-エチルヘキシルアセテート(沸点=200℃)、γ-ブチロラクトン(沸点=204℃)、γ-バレロラクトン(沸点=207℃)、δ-バレロラクトン(沸点=220℃)、炭酸プロピレン(沸点=242℃)、N-メチルピロリドン(沸点=202℃)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(沸点=231℃)、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(沸点=213℃)などが挙げられる。これらの中でも、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテートが特に好ましく用いられる。
【0091】
樹脂組成物は、シリカ粒子を含有することが好ましく、さらに他の成分を含有してもよい。樹脂組成物は、シリカ粒子を含有することにより、強度と透明性を高いレベルで両立することができる。樹脂組成物は、シリカ粒子の含有率が、全固形分中10重量%以上40重量%以下であることが好ましい。シリカ粒子の含有率を全固形分中10重量%以上とすることにより、シロキサン樹脂とシリカ粒子とのシラノール縮合反応により架橋を促進し、樹脂被覆膜の架橋度を高め、ガラス強度をより向上させることができる。シリカ粒子の含有率を全固形分中40重量%以下とすることにより、密着性がより良好な樹脂被覆膜を得ることができる。
【0092】
シリカ粒子の平均粒子径は、樹脂被覆膜の透明性をより向上させる観点から、1~200nmが好ましく、1~70nmがより好ましい。ここで、シリカ粒子の平均粒子径は、動的光散乱法によって求めることができる。具体的には、シリカ粒子濃度10~30重量%の分散液に対して、半導体レーザーにより波長780nmの光を照射し、散乱光を測定した後、FFT-ヘテロダイン法によって周波数解析することにより、平均粒子径を求めることができる。
【0093】
シリカ粒子としては、例えば、sicastar(コアフロント(株)製)、“レオロシール(登録商標)”((株)トクヤマ製)などが挙げられる。これらを、ビーズミル等の分散機を用いて粉砕または分散させて用いてもよい。シリカ粒子の分散液としては、例えば、IPA-ST、MIBK-ST、IPA-ST-L、IPA-ST-ZL、PGM-ST、PMA-ST(いずれも日産化学工業(株)製)、“オスカル(登録商標)”101、“オスカル”105、“オスカル”106、“カタロイド(登録商標)”-S(いずれも日揮触媒化成(株)製)、“クォートロン(登録商標)”PL-1-IPA、PL-1-TOL、PL-2L-PGME、PL-2L-MEK、PL-2L、GP-2L(いずれも扶桑化学工業(株)製)などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0094】
樹脂組成物は、光ラジカル重合開始剤を含有することが好ましく、ラジカル重合性基を有するシロキサン樹脂との組み合わせにより、光ラジカル重合反応により、樹脂被覆膜の架橋度を高め、強度をより向上させることができる。
【0095】
この場合、樹脂組成物中における光ラジカル重合開始剤の含有量は、ラジカル重合性基の反応を十分に進めて強度をより向上させる観点から、全固形分中0.1重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましい。一方、光ラジカル重合開始剤の含有量は、樹脂被覆膜の透明性をより向上させる観点から、全固形分中20重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましい。
【0096】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、α-アミノアルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤やα-ヒドロキシアルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤などのアルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤;アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤;オキシムエステル系光ラジカル重合開始剤;ベンゾフェノン系光ラジカル重合開始剤;オキサントン系光ラジカル重合開始剤;イミダゾール系光ラジカル重合開始剤;ベンゾチアゾール系光ラジカル重合開始剤;ベンゾオキサゾール系光ラジカル重合開始剤;カルバゾール系光ラジカル重合開始剤;トリアジン系光ラジカル重合開始剤;安息香酸エステル系光ラジカル重合開始剤;リン系光ラジカル重合開始剤;チタネート等の無機系光ラジカル重合開始剤などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0097】
これらのうち、樹脂被覆膜の架橋度を高めて強度をより向上させる観点から、α-アミノアルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤、オキシムエステル系光ラジカル重合開始剤、アミノ基を有するベンゾフェノン系光ラジカル重合開始剤、アミノ基を有する安息香酸エステル系光ラジカル重合開始剤が好ましい。
【0098】
α-アミノアルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤としては、例えば、2-メチル-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1などが挙げられる。アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-(2,4,4-トリメチルペンチル)-フォスフィンオキサイドなどが挙げられる。オキシムエステル系光ラジカル重合開始剤としては、例えば、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]、1-フェニル-1,2-ブタジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1,3-ジフェニルプロパントリオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)などが挙げられる。アミノ基を有するベンゾフェノン系光ラジカル重合開始剤としては、例えば、4,4-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどが挙げられる。アミノ基を有する安息香酸エステル系光ラジカル重合開始剤としては、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル、2-エチルヘキシル-p-ジメチルアミノベンゾエート、p-ジエチルアミノ安息香酸エチルなどが挙げられる。
【0099】
樹脂組成物は、さらに、ラジカル重合性基を2個以上有する化合物を含有することが好ましい。ラジカル重合性基を2個以上有する化合物を含有することにより、シロキサン樹脂に含有されるラジカル重合性基とのラジカル重合反応により、樹脂被覆膜の架橋度を高めて強度をより向上させることができる。
ラジカル重合性基としては、シロキサン樹脂が有するラジカル重合性基として例示したものが挙げられる。
【0100】
ラジカル重合性基を2個以上有する化合物としては、多官能(メタ)アクリレートが好ましい。多官能(メタ)アクリレートとは、2つ以上の(メタ)アクリレート基を有する化合物をいい、例えば、2,2-[9H-フルオレン-9,9-ジイルビス(1,4-フェニレン)ビスオキシ]ジエタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレートなどの2つの(メタ)アクリレート基を有する化合物;トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のアクリル酸エステル、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールノナ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート、ペンタペンタエリスリトールウンデカ(メタ)アクリレート、ペンタペンタエリスリトールドデカ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0101】
樹脂組成物中のラジカル重合性基を2個以上有する化合物の含有量は、樹脂被覆膜の架橋度を高めて強度をより向上させる観点から、全固形分中5重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましい。一方、ラジカル重合性基を2個以上有する化合物の含有量は、樹脂被覆膜の透明性をより向上させる観点から、全固形分中50重量%以下が好ましく、30重量%以下がより好ましい。
【0102】
樹脂組成物は、オキセタニル基を有するシロキサン化合物を含有してもよい。オキセタニル基を有するシロキサン化合物を含有することにより、オキセタン環の開環反応により樹脂被覆膜の応力が緩和され、支持体と樹脂被覆膜との密着性を向上させることができる。
オキセタニル基を有するシロキサン化合物としては、例えば下記一般式(1)で示される化合物等が挙げられる。
【0103】
【0104】
上記一般式(1)中、R1~R4は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基または下記一般式(2)で表される基を表す。ただし、R1~R4の少なくとも1つは下記一般式(2)で表される基である。wは1~10の整数を表す。反応性の観点から、アルキル基の炭素数は1~6が好ましく、シクロアルキル基の炭素数は3~6が好ましい。
【0105】
【0106】
上記一般式(2)中、R5~R9は水素原子、フッ素原子、炭素数1~4のアルキル基、フェニル基または炭素数1~4のパーフルオロアルキル基を表す。pは1~6の整数を表す。
前記一般式(1)で示されるシロキサン化合物は、オキセタニル基を有するアルコキシシラン化合物を、必要に応じてオキセタニル基を有しないアルコキシシラン化合物とともに加水分解することにより得ることができる。
【0107】
オキセタニル基を有するアルコキシシラン化合物としては、例えば、(オキセタン-3-イル)メチルトリメトキシシラン、(オキセタン-3-イル)メチルトリエトキシシラン、(オキセタン-3-イル)メチルトリ-n-プロピルオキシシラン、(オキセタン-3-イル)メチルトリ-i-プロピルオキシシラン、(オキセタン-3-イル)メチルトリアセトキシシラン、(オキセタン-3-イル)メチルメチルジメトキシシラン、(オキセタン-3-イル)メチルメチルジエトキシシラン、(オキセタン-3-イル)メチルメチルジ-n-プロピルオキシシラン、(オキセタン-3-イル)メチルメチルジ-i-プロピルオキシシラン、(オキセタン-3-イル)メチルメチルジアセトキシシラン、(オキセタン-3-イル)メチルエチルジメトキシシラン、(オキセタン-3-イル)メチルエチルジエトキシシラン、(オキセタン-3-イル)メチルエチルジ-n-プロピルオキシシラン、(オキセタン-3-イル)メチルエチルジ-i-プロピルオキシシラン、(オキセタン-3-イル)メチルエチルジアセトキシシラン、(オキセタン-3-イル)メチルフェニルジメトキシシラン、(オキセタン-3-イル)メチルフェニルジエトキシシラン、(オキセタン-3-イル)メチルフェニルジ-n-プロピルオキシシラン、(オキセタン-3-イル)メチルフェニルジ-i-プロピルオキシシラン、(オキセタン-3-イル)メチルフェニルジアセトキシシラン、ジ(オキセタン-3-イル)メチルジメトキシシラン、ジ(オキセタン-3-イル)メチルジエトキシシラン、ジ(オキセタン-3-イル)メチルジ-n-プロピルオキシシラン、ジ(オキセタン-3-イル)メチルジ-i-プロピルオキシシラン、ジ(オキセタン-3-イル)メチルジアセトキシシラン、ジ(オキセタン-3-イル)メチルメチルメトキシシラン、ジ(オキセタン-3-イル)メチルメチルエトキシシラン、ジ(オキセタン-3-イル)メチルメチル-n-プロピルオキシシラン、ジ(オキセタン-3-イル)メチルメチル-i-プロピルオキシシラン、ジ(オキセタン-3-イル)メチルメチルアセトキシシラン、ジ(オキセタン-3-イル)メチルエチルメトキシシラン、ジ(オキセタン-3-イル)メチルエチルエトキシシラン、ジ(オキセタン-3-イル)メチルエチル-n-プロピルオキシシラン、ジ(オキセタン-3-イル)メチルエチル-i-プロピルオキシシラン、ジ(オキセタン-3-イル)メチルエチルアセトキシシラン、ジ(オキセタン-3-イル)メチルフェニルメトキシシラン、ジ(オキセタン-3-イル)メチルフェニルエトキシシラン、ジ(オキセタン-3-イル)メチルフェニル-n-プロピルオキシシラン、ジ(オキセタン-3-イル)メチルフェニル-i-プロピルオキシシラン、ジ(オキセタン-3-イル)メチルフェニルアセトキシシラン、トリ(オキセタン-3-イル)メチルメトキシシラン、トリ(オキセタン-3-イル)メチルエトキシシラン、トリ(オキセタン-3-イル)メチル-n-プロピルオキシシラン、トリ(オキセタン-3-イル)メチル-i-プロピルオキシシラン、トリ(オキセタン-3-イル)メチルアセトキシシランなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0108】
また、オキセタニル基を有しないアルコキシシラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、トリメチルシラノール、トリエチルシラノール、トリプロピルシラノール、トリブチルシラノール、トリフェニルシラノール、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリプロピルメトキシシラン、トリプロピルエトキシシラン、トリメチルシリルアセテート、トリメチルシリルベンゾエート、トリエチルシリルアセテート、トリエチルシリルベンゾエート、ベンジルジメチルメトキシシラン、ベンジルジメチルエトキシシラン、ジフェニルメトキシメチルシラン、ジフェニルエトキシメチルシラン、アセチルトリフェニルシラン、エトキシトリフェニルシラン、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサエチルジメチルジシロキサン、ヘキサプロピルジシロキサン、1,3-ジブチル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3-ジフェニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3-ジメチル-1,1,3,3-テトラフェニルジシロキサンなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0109】
オキセタニル基を有するシロキサン化合物としては、例えば、“アロンオキセタン(登録商標)”OXT-191(商品名、東亞合成(株)製)(一般式(1)におけるR1~R4が(3-エチル-3-オキセタニル)メチル基、wが平均5)や、下記一般式(3)または(6)で示される化合物などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0110】
【0111】
前記一般式(3)中、R10およびR12は水素原子、フッ素原子、炭素数1~6個のアルキル基、炭素数1~6個のフルオロアルキル基、炭素数6~18のアリール基、フリル基またはチエニル基を表す。R11は下記一般式(4)で示される基を表す。dは0~3の整数を表す。炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。炭素数1~6のフルオロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基などが挙げられる。炭素数6~18のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
【0112】
【0113】
上記一般式(4)中、R13、R15、R16およびR18は、炭素数1~4のアルキル基、炭素数6~18のアリール基を表し、R14およびR17は炭素数1~4のアルキル基、炭素数6~18のアリール基または下記一般式(5)で表される基を表す。uは、0~200の整数を表す。uが2以上の場合、複数のR14およびR17は、同じでも異なってもよい。
【0114】
【0115】
上記一般式(5)中、R19~R23は、炭素数1~4のアルキル基または炭素数6~18のアリール基を表す。Zは、0~100の整数を表す。zが2以上の場合、複数のR19およびR23は、同じでも異なってもよい。
【0116】
【0117】
前記一般式(6)中、R24は水素原子、フッ素原子、炭素数1~6個のアルキル基、炭素数1~6個のフルオロアルキル基、炭素数6~18のアリール基、フリル基またはチエニル基を表し、R25は、3~10価の有機基を表す。例えば、下記一般式(7)~(9)のいずれかで表される線状、分枝状またはかご状ポリシロキサン含有基等が挙げられる。一般式(6)中、jは、R25の価数に等しい3~10の整数を表す。
【0118】
【0119】
前記一般式(9)で表されるかご状のオキセタニル基を有するシロキサン化合物としては、例えば、シルセスキオキサン誘導体OX-SQ TX-100、OX-SQ SI-20(以上、商品名、東亞合成(株)製)などが挙げられる。
【0120】
これらの中でも、オキセタニル基を複数有するものが好ましい。オキセタニル基を複数有することにより、オキセタン環の開環反応による樹脂被覆膜の応力緩和効果が向上し、ガラス基材との密着性をより向上させることができる。
【0121】
樹脂組成物におけるオキセタニル基を有するシロキサン化合物の含有量は、樹脂被覆膜の応力をより緩和して密着性をより向上させる観点から、全固形分中0.1重量%以上が好ましく、0.5重量%以上がより好ましい。一方、オキセタニル基を有するシロキサン化合物の含有量は、シロキサン樹脂の含有量を増やすことで樹脂被覆膜の応力を向上させて強度をより向上させる観点から、全固形分中10重量%以下が好ましく、6重量%以下がより好ましい。
【0122】
樹脂組成物は、下記一般式(10)で表される金属キレート化合物を含有してもよい。金属キレート化合物がシロキサン樹脂のシラノール縮合反応の触媒として働くことから、樹脂被覆膜の架橋度が高くなり、強度をより向上させることができる。
【0123】
【0124】
上記一般式(10)中、Mは金属原子を表す、R26は水素、アルキル基、アリール基またはアルケニル基を表し、R27およびR28はそれぞれ独立に水素、アルキル基、アリール基、アルケニル基またはアルコキシ基を表す。ただし、アルキル基、アリール基、アルケニル基またはアルコキシ基は、置換基により置換されていてもよい。eは金属原子Mの原子価を表し、fは0~eの整数を表す。反応性の観点から、e-fは0が好ましい。
【0125】
金属原子Mとしては樹脂被覆膜の透明性の観点から、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、亜鉛、コバルト、モリブデン、ランタン、バリウム、ストロンチウム、マグネシウム、カルシウムが好ましく、ジルコニウム、アルミニウムがより好ましい。
【0126】
R26としては、例えば、水素、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-オクタデシル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、オレイル基などが挙げられる。
【0127】
R27およびR28としては、例えば、水素、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、フェニル基、ビニル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-オクタデシル基、ベンジルオキシ基などが挙げられる。
【0128】
金属原子Mがジルコニウムであるジルコニウムキレート化合物としては、例えば、ジルコニウムテトラn-プロポキシド、ジルコニウムテトラn-ブトキシド、ジルコニウムテトラ-sec-ブトキシド、ジルコニウムテトラフェノキシド、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラ(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)、ジルコニウムテトラメチルアセトアセテート、ジルコニウムテトラエチルアセトアセテート、ジルコニウムテトラメチルマロネート、ジルコニウムテトラエチルマロネート、ジルコニウムテトラベンゾイルアセトネート、ジルコニウムテトラジベンゾイルメタネート、ジルコニウムモノn-ブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムモノn-ブトキシエチルアセトアセテートビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムモノn-ブトキシトリス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムモノn-ブトキシトリス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムジ(n-ブトキシ)ビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムジ(n-ブトキシ)ビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムジ(n-ブトキシ)ビス(エチルマロネート)、ジルコニウムジ(n-ブトキシ)ビス(ベンゾイルアセトネート)、ジルコニウムジ(n-ブトキシ)ビス(ジベンゾイルメタネート)などが挙げられる。
【0129】
金属原子Mがアルミニウムであるアルミニウムキレート化合物としては、例えば、アルミニウムトリスイソプロポキシド、アルミニウムトリスn-プロポキサイド、アルミニウムトリスsec-ブトキシド、アルミニウムトリスn-ブトキシド、アルミニウムトリスフェノキシド、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムトリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスメチルアセトアセテート、アルミニウムトリスメチルマロネート、アルミニウムトリスエチルマロネート、アルミニウムエチルアセテートジ(イソプロポキシド)、アルミニウムアセチルアセトネート)ジ(イソプロポキシド)、アルミニウムメチルアセトアセテートジ(イソプロポキシド)、アルミニウムオクタデシルアセトアセテートジ(イソプロピレート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。
【0130】
これらの中でも、各種溶媒への溶解性や化合物の安定性の観点から、ジルコニウムテトラノルマルプロポキシド、ジルコニウムテトラノルマルブトキシド、ジルコニウムテトラフェノキシド、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラ(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)、ジルコニウムテトラメチルマロネート、ジルコニウムテトラエチルマロネート、ジルコニウムテトラエチルアセトアセテート、ジルコニウムジノルマルブトキシビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムモノノルマルブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムトリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスメチルアセトアセテート、アルミニウムトリスメチルマロネート、アルミニウムトリスエチルマロネート、アルミニウムエチルアセテートジ(イソプロポキシド)、アルミニウムアセチルアセトネート)ジ(イソプロポキシド)、アルミニウムメチルアセトアセテートジ(イソプロポキシド)、アルミニウムオクタデシルアセトアセテートジ(イソプロピレート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)が好ましい。
【0131】
樹脂組成物における金属キレート化合物の含有量は、樹脂被覆膜の架橋度をより向上させて強度をより向上させる観点から、全固形分中0.1重量%以上が好ましく、0.5重量%以上がより好ましい。一方、金属キレート化合物の含有量は、樹脂組成物の経時安定性の観点から、全固形分中10重量%以下が好ましく、7重量%以下がより好ましい。
【0132】
樹脂組成物は、密着改良剤を含有してもよい。密着改良剤を含有することにより、樹脂被覆膜と支持体との密着性をより向上させることができる。
【0133】
密着改良剤としては、例えば、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、(メタ)アクリロキシ基、アミノ基等の官能基を有するシランカップリング剤が挙げられる。具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、p-スリチルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、p-スリチルトリメトキシシランなどが好ましい。
【0134】
樹脂組成物における密着改良剤の含有量は、樹脂被覆膜と支持体との密着性をより向上させる観点から、全固形分中0.1重量%以上が好ましく、0.5重量%以上がより好ましい。一方、樹脂組成物の経時安定性の観点から、全固形分中10重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましい。
【0135】
樹脂組成物は、各種の架橋剤を含有してもよく、架橋を促進または容易にすることができる。架橋剤としては、例えば、窒素含有有機物、シリコーン樹脂架橋剤、イソシアネート化合物やその重合体、メチロール化メラミン誘導体、メチロール化尿素誘導体などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。なかでも、架橋性と経時安定性の観点から、メチロール化メラミン誘導体、メチロール化尿素誘導体が好ましく用いられる。
【0136】
シロキサン樹脂は酸により硬化が促進されるので、樹脂組成物に熱酸発生剤や光酸発生剤などの硬化触媒を含有してもよい。熱酸発生剤としては、例えば、SI-60、SI-80、SI-100、SI-110、SI-145、SI-150、SI-60L、SI-80L、SI-100L、SI-110L、SI-145L、SI-150L、SI-160L、SI-180L(以上、三新化学工業(株)製)、4-ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、ベンジル-4-ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、2-メチルベンジル-4-ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、4-アセトキシフェニルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、4-アセトキシフェニルベンジルメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、4-メトキシカルボニルオキシフェニルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、ベンジル-4-メトキシカルボニルオキシフェニルメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナートなどが挙げられる。
【0137】
光酸発生剤としては、例えば、SI-100、SI-101、SI-105、SI-106、SI-109、PI-105、PI-106、PI-109、NAI-100、NAI-1002、NAI-1003、NAI-1004、NAI-101、NAI-105、NAI-106、NAI-109、NDI-101、NDI-105、NDI-106、NDI-109、PAI-01、PAI-101、PAI-106、PAI-1001(以上、みどり化学(株)製)、SP-077、SP-082(以上、(株)ADEKA製)、TPS-PFBS(以上、東洋合成工業(株)製)、MDT(以上、ヘレウス社製)、WPAG-281、WPAG-336、WPAG-339、WPAG-342、WPAG-344、WPAG-350、WPAG-370、WPAG-372、WPAG-449、WPAG-469、WPAG-505、WPAG-506(以上、和光純薬工業(株)製)などが挙げられる。
【0138】
樹脂組成物における熱酸発生剤や光酸発生剤などの硬化触媒の含有量は、樹脂被覆膜の架橋度を向上させて強度をより向上させる観点から、全固形分中0.1重量%以上が好ましく、0.3重量%以上がより好ましい。一方、樹脂組成物を含有する組成物の経時安定性の観点から、熱酸発生剤や光酸発生剤などの硬化触媒の含有量は、全固形分中5重量%以下が好ましく、3重量%以下がより好ましい。
【0139】
樹脂組成物は、重合禁止剤を含有してもよい。重合禁止剤を含有することにより、経時安定性を向上させることができる。重合禁止剤としては、例えば、フェノール、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、4-t-ブチルカテコール、2,6-ジ(t-ブチル)-p-クレゾール、フェノチアジン、4-メトキシフェノールなどが挙げられる。
【0140】
樹脂組成物における重合禁止剤の含有量は、全固形分中0.01重量%以上が好ましく、0.1重量%以上がより好ましい。一方、樹脂被覆膜の架橋を阻害しない観点から、全固形分中5重量%以下が好ましく、1重量%以下がより好ましい。
【0141】
樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含有してもよい。紫外線吸収剤を含有することにより、樹脂被覆膜の耐光性を向上させることができる。紫外線吸収剤としては、透明性、非着色性の面から、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物が好ましく用いられる。
【0142】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば、2-(2Hベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-t-ペンチルフェノール、2-(2Hベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0143】
ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
トリアジン系化合物としては、例えば、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノールなどが挙げられる。
【0144】
樹脂組成物における紫外線吸収剤の含有量は、樹脂被覆膜と支持体との密着性を向上させる観点から、全固形分中10重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましい。
【0145】
樹脂組成物は、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤を含有することにより、塗布時のフロー性を向上させることができる。界面活性剤としては、例えば、フッ素系界面活性剤;シリコーン系界面活性剤;含フッ素熱分解性界面活性剤;ポリエーテル変性シロキサン系界面活性剤;ポリアルキレンオキシド系界面活性剤;ポリ(メタ)アクリレート系界面活性剤;ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミンなどの陰イオン界面活性剤;ステアリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライドなどの陽イオン界面活性剤;ラウリルジメチルアミンオキサイド、ラウリルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリウムベタインなどの両性界面活性剤;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ソルビタンモノステアレートなどの非イオン界面活性剤などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0146】
これらの中でも、はじき等の塗布性不良を抑制するとともに、表面張力を低減し塗布膜4の乾燥時のムラを抑制する観点から、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、含フッ素熱分解性界面活性剤、ポリエーテル変性シロキサン系界面活性剤が好ましく、含フッ素熱分解性界面活性剤がより好ましい。
【0147】
フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、“メガファック(登録商標)”F142D、同F172、同F173、同F183、同F445、同F470、同F475、同F477(以上、DIC(株)製)、NBX-15、FTX-218((株)ネオス製)などが挙げられる。シリコーン系界面活性剤の市販品としては、例えば、“BYK(登録商標)”-333、BYK-301、BYK-331、BYK-345、BYK-307(ビックケミー・ジャパン(株)製)などが挙げられる。含フッ素熱分解性界面活性剤の市販品としては、例えば、“メガファック(登録商標)”DS-21(DIC(株)製)などが挙げられる。ポリエーテル変性シロキサン系界面活性剤の市販品としては、例えば、“BYK(登録商標)”-345、BYK-346、BYK-347、BYK-348、BYK-349(以上、ビックケミー・ジャパン(株)製)、“シルフェイス(登録商標)”SAG002、同SAG005、同SAG0503A、同SAG008(以上、日信化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0148】
界面活性剤の含有量は、樹脂組成物を均一に塗布する観点から、全樹脂組成物中、0.001重量%以上が好ましく、0.005重量%以上がより好ましい。一方、表面均一性を向上させる観点から、全樹脂組成物中、0.1重量%以下が好ましく、0.03重量%以下がより好ましい。
【0149】
次に、樹脂組成物の製造方法について、以下に説明する。
樹脂組成物の製造方法としては、シロキサン樹脂と、必要に応じて、シリカ粒子、光ラジカル重合開始剤、ラジカル重合性を2個以上有する化合物、溶媒などのその他原料を所定量混合し、撹拌する方法が一般的である。
【0150】
次に、ガラス基材1上に形成した塗布膜4が乾燥、硬化した樹脂被覆膜の製造方法について、以下に説明する。
【0151】
ノズルヘッド5から噴射された樹脂組成物3を乾燥して、乾燥膜を得る。乾燥方法としては、例えば、加熱乾燥、風乾、減圧乾燥、赤外線照射等が挙げられる。加熱乾燥装置としては、例えば、オーブン、ホットプレートなどが挙げられる。乾燥温度は50~150℃が好ましく、乾燥時間は1~60分間が好ましい。
【0152】
得られた乾燥膜に、紫外線、可視光線、電子線、X線などの化学線を照射して、露光膜を得ることが好ましい。樹脂組成物3に光ラジカル重合開始剤を含有する場合は、化学線を照射することにより、乾燥膜の架橋を促進することができる。水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)を照射することが好ましい。
【0153】
得られた乾燥膜や露光膜を加熱処理(ポストベイク)することにより、シロキサン樹脂の架橋が進行し、乾燥膜や露光膜が硬化した樹脂被覆膜を得ることができる。加熱処理は、空気中、窒素雰囲気下、真空状態のいずれで行ってもよい。加熱温度は140~300℃が好ましく、加熱時間は0.25~5時間が好ましい。加熱温度を連続的に変化させてもよいし、段階的に変化させてもよい。
【実施例0154】
本実施例で使用するシロキサン樹脂を含有した樹脂組成物及びその製造方法について説明する。
【0155】
(シロキサン樹脂(PS-1)の合成)
500mLの三口フラスコにメチルトリメトキシシラン47.67g(0.35mol)、フェニルトリメトキシシラン39.66g(0.20mol)、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物26.23g(0.10mol)、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン82.04g(0.35mol)、ダイアセトンアルコール(以下、「DAA」)182.88gを仕込み、40℃のオイルバスに漬けて撹拌しながら、水55.8gにリン酸0.391g(仕込みモノマーに対して0.2重量部)を溶かしたリン酸水溶液を滴下ロートで10分間かけて添加した。40℃で1時間撹拌した後、オイルバス温度を70℃に設定して1時間撹拌し、さらにオイルバスを30分間かけて115℃まで昇温した。昇温開始1時間後に溶液の内温が100℃に到達し、そこから2時間加熱撹拌した(内温は100~110℃)。反応中に副生成物であるメタノール及び水が合計120g留出した。得られたシロキサン樹脂のDAA溶液に、ポリマー濃度が40重量%となるようにDAAを加えてシロキサン樹脂(PS-1)溶液を得た。なお、得られたシロキサン樹脂(PS-1)の重量平均分子量(以下、「Mw」)をGPCにより測定したところ5,000(ポリスチレン換算)であった。
【0156】
(シロキサン樹脂(PS-2)の合成)
500mLの三口フラスコにメチルトリメトキシシラン54.48g(0.40mol)、フェニルトリメトキシシラン99.15g(0.50mol)、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン24.64g(0.10mol)、DAAを163.35g仕込み、40℃のオイルバスに漬けて撹拌しながら、水54.0gにリン酸0.535g(仕込みモノマに対して0.3重量部)を溶かしたリン酸水溶液を滴下ロートで10分間かけて添加した。40℃で1時間撹拌した後、オイルバス温度を70℃に設定して1時間撹拌し、さらにオイルバスを30分間かけて115℃まで昇温した。昇温開始1時間後に溶液の内温が100℃に到達し、そこから2時間加熱撹拌した(内温は100~110℃)。反応中に副生成物であるメタノール及び水が合計120g留出した。得られたシロキサン樹脂のDAA溶液に、ポリマー濃度が40重量%となるようにDAAを加えてシロキサン樹脂(PS-2)溶液を得た。なお、得られたシロキサン樹脂(PS-2)のMwをGPCにより測定したところ5,000(ポリスチレン換算)であった。
【0157】
(シロキサン樹脂を含有する樹脂組成物(GR-1)の調製)
黄色灯下にてフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(商品名「“Omnirad(登録商標)”819」;IGM社製)(以下、「Omnirad819」)1.52gと、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート(商品名「“オルガチックス(登録商標)”ZC-150」;マツモトファインケミカル(株)製)(以下、「ZC-150」)1.30gを、DAA23.96g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」)1.53g、3-メチル-3-メトキシ-1-ブタノール(以下、「MMB」)14.80gの混合溶媒に溶解させ、オキセタニル基を有するシロキサン化合物「“アロンオキセタン(登録商標)”OXT-191」;東亞合成(株)製)(以下、「OXT-191」)0.98g、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名「KBM-903」;信越化学工業(株)製)(以下、「KBM-903」)0.43g、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のアクリル酸エステル(商品名「“アロニックス(登録商標)”M-315」;東亞合成(株)製)(以下、「M-315」)4.35g、シリカ粒子のPGMEA30重量%分散液(平均粒子径=20~30nm、商品名「PMA-ST」;日産化学工業(株)製)(以下、「PMA-ST」)28.99g、シロキサン樹脂(PS-1)溶液21.74g、含フッ素熱分解性界面活性剤(商品名「DS-21」;DIC(株)製)のPGMEA5重量%溶液0.20g(濃度100ppmに相当)、シリコーン変性アクリル系界面活性剤(商品名「“BYK(登録商標)”-3550」;ビックケミー社製)のPGMEA5重量%溶液0.20g(濃度100ppmに相当)を加え、撹拌した。次いで1.00μmのフィルターでろ過を行い、固形分濃度26重量%のシロキサン樹脂を含有する組成物(GR-1)を調製した。
【0158】
(シロキサン樹脂を含有する樹脂組成物(GR-2)の調製)
黄色灯下にてトリフルオロメタンスルホン酸エステル(商品名「MDT」ヘレウス社製)0.36gを、DAA4.00g、PGMEA8.80g、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート(以下、「MMB-AC」)22.20gの混合溶媒に溶解させ、シラン変性イソシアヌル酸エステル系化合物(商品名「KBM-9659」信越化学工業(株)製)0.54g、PMA-ST23.89g、シロキサン樹脂(PS-2)溶液39.82g、含フッ素熱分解性界面活性剤(商品名「DS-21」DIC(株)製)のPGMEA5重量%溶液0.20g(濃度100ppmに相当)、シリコーン変性アクリル系界面活性剤(商品名「“BYK(登録商標)”-3550」ビックケミー社製)のPGMEA5重量%溶液0.20g(濃度100ppmに相当)を加え、撹拌した。次いで1.00μmのフィルターでろ過を行い、固形分濃度24重量%のシロキサン樹脂を含有する組成物(GR-2)を調製した。
【0159】
(シロキサン樹脂を含有する樹脂組成物(GR-3)の調整)
黄色灯下にて1.52gのOmnirad819と、1.30gのZC-150を、DAA23.96g、PGMEA1.53g、MMB14.06g、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(以下、「DPMA」)0.74gの混合溶媒に溶解させ、0.98gのOXT-191、0.43gのKBM-903、4.35gのM-315、PMA-ST28.99g、シロキサン樹脂(PS-1)溶液21.74g、含フッ素熱分解性界面活性剤(商品名「DS-21」;DIC(株)製)のPGMEA5重量%溶液0.20g(濃度100ppmに相当)、シリコーン変性アクリル系界面活性剤(商品名「“BYK(登録商標)”-3550」;ビックケミー社製)のPGMEA5重量%溶液0.20g(濃度100ppmに相当)を加え、撹拌した。次いで1.00μmのフィルターでろ過を行い、固形分濃度26重量%のシロキサン樹脂を含有する組成物(GR-3)を調製した。
【0160】
(シロキサン樹脂を含有する樹脂組成物(GR-4)の調整)
黄色灯下にて1.52gのOmnirad819と、1.30gのZC-150を、DAA23.96g、PGMEA1.53g、MMB11.84g、DPMA2.96gの混合溶媒に溶解させ、0.98gのOXT-191、0.43gのKBM-903、4.35gのM-315、PMA-ST28.99g、シロキサン樹脂(PS-1)溶液21.74g、含フッ素熱分解性界面活性剤(商品名「DS-21」;DIC(株)製)のPGMEA5重量%溶液0.20g(濃度100ppmに相当)、シリコーン変性アクリル系界面活性剤(商品名「“BYK(登録商標)”-3550」;ビックケミー社製)のPGMEA5重量%溶液0.20g(濃度100ppmに相当)を加え、撹拌した。次いで1.00μmのフィルターでろ過を行い、固形分濃度26重量%のシロキサン樹脂を含有する組成物(GR-4)を調製した。
【0161】
(実施例1)
シロキサン樹脂を含有する樹脂組成物GR-1を
図1~
図4における樹脂組成物3として、
図1~
図4に示す構成の方法を用いて、ガラス基材1に塗布膜4を形成した。図示しない容量タンクに保管された樹脂組成物3(GR-1)を図示しない送液管を通じて樹脂組成物噴射手段2である噴射ノズル式のスプレーノズル2に送り、ノズルヘッド5から樹脂組成物3(GR-1)を噴射してガラス基材1にスプレー塗布した。
【0162】
ガラス基材1として、フツリン酸塩ガラス(Schott社製“BG66”)を使用した。これは板厚0.21mm、77×40mmの四角形のガラスで、投影面積(2800mm2)と前記板厚(0.21mm)との比は14667であった。
【0163】
ガラス基材1は図示しないステージに固定し、ノズルヘッド5とガラス基材1との間隔は45mmとし、樹脂組成物噴射手段2をXY平面方向に移動させた。樹脂組成物噴射手段2であるスプレーコートの相対移動速度Vnは300mm/sec、ノズルヘッド5からの噴射量Mrは0.05ml/secであった。
【0164】
ガラス基材1は図示しない電熱線により加温して基材加熱温度を55℃とした。移動は
図4に示すように、域外から始めて、ガラス基材1の左側の域内上部をガラス基材1の一辺1cに対して交差角度45°で突入させた。ノズルヘッド5から樹脂組成物3の噴射方向はガラス基材1のXY平面に対して略垂直に噴射させた。噴射圧力は0.03MPaで、ノズルヘッド5を往復移動させた際の塗布膜4の重ね幅は5mmで積層数が2層となるように往復移動させた。ノズルヘッド5として、噴射口の大きさはΦ0.6mmであり、低圧霧化方式の微少吐出エアスプレイノズルを用いた。得られた塗布膜4を、100℃のホットプレートを用いて2分間プリベイクし、乾燥膜を得た。その後、大日本スクリーン(株)製露光機“XG-5000”を用いて500mJ/cm
2(i線換算)で露光し、露光膜を得た。得られた露光膜を、180℃の熱風オーブンを用いて40分間キュアし、膜厚4μmの樹脂被覆膜を得た。
【0165】
【0166】
次に、樹脂被覆膜を形成した樹脂被覆ガラス基材の強度の評価方法である4点曲げ試験の実施の状態を
図6の側面断面図に示す。支持棒13を具備した下側の置き台12と押込棒10を具備した上側の降下台9とから構成され、支持棒13の上にガラス基材1を載せ、降下台9を矢印16の方向に降下させ、押込棒10によりガラス基材1に荷重を掛けて最大曲げ荷重(N)を測定した。支持棒13と押込棒10の先端の曲率半径は5mm、降下台9の下降速度15は1mm/min、押込棒10の間隔11は20mm、支持棒13の間隔14は50mm、ガラス基材1の1辺は77mmである。測定結果を(表2)に示す。
(実施例2~14)
実施例1と同様に、表1の条件を用いて樹脂被覆膜を形成した樹脂被覆ガラス基材を作製して、評価を行った。各実施例の評価結果を表2に示す。なお、GR-1~GR-4の組成物におけるSw1とSw2の比率をまとめたものを表3に示す。
(比較例1~2)
比較例1として
図7または
図8に示す構成で、表1に示す条件で、ガラス基材1に樹脂被覆膜を形成した。作製した樹脂被覆ガラス基材を評価し、評価結果を表2に示す。
【0167】
樹脂組成物噴射手段2の移動は
図7に示すように、域外から始めて、ガラス基材1の域内上部をガラス基材1の一辺1cに対して交差角度85°で突入させた。そうすると、ガラス基材1の側面部1bにおいて塗布膜4の塗布状態が一部に液だれが生じて塗りムラが発生した。
表1に示す条件以外の部分は、実施例1と同様である。
(比較例2)
比較例1と同様に表1に記載する条件で樹脂被覆膜を形成した樹脂被覆ガラス基材を作製して、評価した。評価結果を表2に示す。
【0168】
【0169】
【0170】
実施例1~14では最大曲げ荷重(N)は2以上と高い強度を保持し、実使用上問題ないレベルであった。それに対して比較例1、2では最大曲げ荷重(N)は1~2程度と低い値となり、実使用上強度的に課題を有する結果となった。
本発明の製造方法は、近赤外線ガラスへの樹脂被覆膜形成に利用でき、またそれによって得られた樹脂被覆ガラス基材は、写像装置等に用いられる赤外線カットフィルター用のガラス基材として好適に利用できる。