(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098749
(43)【公開日】2023-07-11
(54)【発明の名称】屋根の断熱遮音構造
(51)【国際特許分類】
E04B 7/22 20060101AFI20230704BHJP
E04B 1/76 20060101ALI20230704BHJP
E04B 1/82 20060101ALI20230704BHJP
E04B 1/90 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
E04B7/22
E04B1/76 500Z
E04B1/82 R
E04B1/82 B
E04B1/90 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021215367
(22)【出願日】2021-12-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124316
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】松井 健
(72)【発明者】
【氏名】菊池 敏正
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 憲一
(72)【発明者】
【氏名】岡本 正人
(72)【発明者】
【氏名】菅野 智義
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DD01
2E001DF04
2E001EA05
2E001FA16
2E001GA05
2E001GA28
2E001HA01
2E001HA04
2E001HA32
2E001HA33
2E001HD03
(57)【要約】
【課題】屋根に断熱性能と共に、屋内で発生する音の建物外への漏れを抑制する機能を持たせる上で、断熱性と遮音性が不連続状態にならず、両性能の低下を生じさせない。
【解決手段】屋根架構を構成する骨組材1上に敷設されるデッキプレート2と、デッキプレート2の屋外側に敷設される屋根葺き材3とを備える屋根において、デッキプレート2に骨組材1上に載置される平板部21と、平板部21の一方向に間隔を置いて並列し、平板部21から起立し、頂部の高さが揃えられた起立部22を形成し、デッキプレート2の平板部21上に直接、もしくは間接的にセメント系材料を含む材料からなる遮音材層5を起立部22の頂部、もしくはその付近まで形成し、起立部22の頂部上と遮音材層5の天端面上に多孔質材料6を敷設し、支持させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根架構を構成する骨組材上に敷設されるデッキプレートと、このデッキプレートの屋外側に敷設される屋根葺き材とを備える屋根の断熱遮音構造であり、
前記デッキプレートは前記骨組材上に載置される平板部と、この平板部の一方向に間隔を置いて並列し、前記平板部から起立し、頂部の高さが揃えられた起立部を有し、
前記デッキプレートの前記平板部上に直接、もしくは間接的にセメント系材料を含む材料からなる遮音材層が前記起立部の頂部、もしくはその付近まで形成され、前記起立部の頂部上と前記遮音材層の天端面上に多孔質材料が敷設され、支持されていることを特徴とする屋根の断熱遮音構造。
【請求項2】
軸方向が前記デッキプレートの前記起立部の軸方向に交差する方向を向いて架設され、前記デッキプレートを支持する前記骨組材の上面に、前記屋根葺き材を直接、支持する母屋材が立設され、この母屋材は前記母屋材を直接、支持する前記骨組材の上面に、軸方向が前記骨組材の軸方向を向いて接合されるプレートと、このプレートの上部に接合され、前記屋根葺き材を受ける受け部を備えることを特徴とする請求項1に記載の屋根の断熱遮音構造。
【請求項3】
前記多孔質材料の頂部と前記屋根葺き材の下面との間に空気層が確保されていることを特徴とする請求項1、もしくは請求項2に記載の屋根の断熱遮音構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は断熱性能と共に、屋内で発生する音の建物外への漏れを抑制する機能を屋根に持たせた屋根の断熱遮音構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば折版を用いた屋根に断熱性能を持たせる方法として、2枚の折版間に断熱材を挟み込む方法がある(特許文献1、2参照)。このような折版を用いた断熱屋根に遮音性能、特に低音域の遮音性能を持たせようとする場合には、
図3に示すように二重折版の屋内側に配置された、屋根架構の骨組となる骨組材に比較的、質量の大きいALC版等のコンクリート版を敷設することが行われる。
【0003】
低音域に加え、高音域の遮音性能を持たせようとすれば、コンクリート版に加え、高音域の遮音性能のある、グラスウール等の空隙を有する断熱材を兼ねる材料を併用することが望ましい(特許文献3参照)。
【0004】
但し、この特許文献3の例では隣接する骨組材(梁)間単位で、デッキプレートとコンクリートと断熱材からなる断熱床ユニットを敷設している関係で、骨組材上の隣接するユニット間で断熱性と遮音性が不連続になるため、骨組材上で断熱性と遮音性が失われる。隣接するユニット間の表面側には両ユニットに跨る段付き部が配置され、防水シートが貼着されるため、ユニット間の防水性は確保されている。
【0005】
これに対し、平坦部分とこれから立ち上がるリブ部分を有する形状の折版(デッキプレート)を利用して屋根や壁の断熱性を確保する方法がある(特許文献4参照)。この方法に特許文献3を組み合わせ、折版と断熱材にコンクリート版を敷設する状況を想定すれば、特許文献3のような骨組材上での断熱性と遮音性の不連続状態は回避されるように見える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭54-52125号公報(明細書第3頁第2行~第5頁第1行、第1図)
【特許文献2】特開平10-292566号公報(段落0007~0012、
図1~
図3)
【特許文献3】特開平4-131413号公報(公報第3欄上左欄第7行~第4欄上左欄第9行、第1図~第4図)
【特許文献4】特開2005-76364号公報(段落0010~0020、
図1、
図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献4の方法では断熱材を折版のリブ部分に止め具で固定していることから(段落0020)、
図4に示すようにリブ部分に孔を穿設することになるため、リブ部分での断熱性と遮音性に漏れが生じ、この部分で両性能の低下を招くことになる。
【0008】
また断熱材をリブ部分に固定しても、隣接するリブ部分間では断熱材は支持されないことから、断熱材に垂れ下がりが生じ易いため、断熱材が伸長し、断熱材の断熱性能と遮音性能が面内方向に不均一になり易い。この他、断熱材の屋外側に位置する屋根葺き材の部分で万一、漏水が発生すれば、デッキプレート下への漏水が生じ得る。
【0009】
本発明は上記背景より、屋根に低音域と高音域の遮音性能を持たせようとする場合に、断熱性と遮音性が不連続状態にならず、両性能の低下を生じさせない形態の屋根の断熱遮音構造を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の屋根の断熱遮音構造は、屋根架構を構成する骨組材上に敷設されるデッキプレートと、このデッキプレートの屋外側に敷設される屋根葺き材とを備える屋根の断熱遮音構造であり、
前記デッキプレートは前記骨組材上に載置される平板部と、この平板部の一方向に間隔を置いて並列し、前記平板部から起立し、頂部の高さが揃えられた起立部を有し、
前記デッキプレートの前記平板部上に直接、もしくは間接的にセメント系材料を含む材料からなる遮音材層が前記起立部の頂部、もしくはその付近まで形成され、前記起立部の頂部上と前記遮音材層の天端面上に多孔質材料が敷設され、支持されていることを構成要件とする。
【0011】
「屋根架構を構成する骨組材」は、屋根架構自体の骨組である梁(桁)や梁同士をつなぐブレース等のつなぎ材その他の構造材を指し、梁にはトラスの構成材等が含まれる。トラスは立体トラスを含む。
【0012】
「デッキプレートの屋外側に敷設される屋根葺き材」とは、
図1-(a)に示すようにデッキプレート2の屋外側に屋根葺き材3が敷設されることを言うが、デッキプレート2の上面(天端面)と屋根葺き材3との間には、遮音に必要な厚さを持つ多孔質材料6が配置されるだけの距離(空間)が確保される。デッキプレート2の上面上に多孔質材料6が配置された状態で、多孔質材料6と屋根葺き材3との間に空隙が形成される場合の空隙は空気層7になる(請求項3)。
【0013】
「平板部とその一方向に並列する起立部」とは、デッキプレート2が骨組材1上に直接、もしくは間接的に載置される平板部21と、平板部21を基準にしたときに平板部21から起立する起立部22を有することを言い、それぞれの部分の形状と形成方法は問われない。「平板部の一方向に」とは、平板部21を平面図として見たときの二方向の内の一方向を指す。平板部21と起立部22は流動性を有するセメント系材料を含む材料が充填(打設)されるときのせき板になる。起立部22の上面(天端面)は多孔質材料6が敷設されるときの敷設高さを決める基準面になり、流動性を有する材料が充填されるときの天端面を位置決めするときの基準面になる。
【0014】
流動性を有する材料は例えば隣接する起立部22、22と、この両起立部22、22に挟まれた平板部21の領域毎に充填され、この領域毎に遮音材層5が形成される。この場合、起立部22の、多孔質材料6が載る上部以外の、平板部21から立ち上がる部分で遮音材層5が分断されるように見えるが、この立ち上がり部分が2枚の板の密着した状態で形成されていれば、分断の影響は小さく、立ち上がり部分に貫通孔が形成されていれば、分断は生じない。
【0015】
セメント系材料は主にモルタル、コンクリートを指すが、一部にセメントミルク等が含まれることもある。「セメント系材料を含む材料」とは、セメント系材料に何らかの混和材料が配合される場合がある趣旨である。混和材料の種類と配合比率は問われない。
【0016】
「セメント系材料を含む材料からなる遮音材層が形成され」とは、流動性のある状態のセメント系材料が現場でデッキプレート2の平板部21上に充填(注入)されることで、遮音材層5が形成される場合と、コンクリート版のように遮音に必要な厚さを持って予め成型された製品が設置されることで、遮音材層5が形成される場合があることを言う。多孔質材料6はグラスウール、ロックウール、ウレタンフォーム等の断熱材の機能を兼ねた、多数の空隙を有する材料を指す。
【0017】
「遮音材層が起立部の頂部、もしくはその付近まで形成され」とは、遮音材層5が起立部22の頂部(上面)まで、または頂部に到達しないながらも、頂部の近くまで形成されることを言う。「頂部の付近」は多孔質材料6がデッキプレート2の頂部と遮音材層5の天端面上に載置されたときに、多孔質材料6が遮音材層5の区間で実質的に垂れ下がりを生じない程度の高さまで形成されていることを言う。遮音材層5が起立部22の頂部がその付近まで形成されることで、多孔質材料6がデッキプレート2の頂部と遮音材層5に支持(分担)される状態が得られる。
【0018】
「平板部上に直接、もしくは間接的に遮音材層が形成され」とは、
図1に示すように平板部21上に直接、遮音材層5が形成される場合と、
図2に示すように断熱材を兼ねる他の多孔質材料10が平板部21上に直接、敷設され、この多孔質材料10上に遮音材層5が形成される場合があることを言う。
【0019】
多孔質材料6がデッキプレート2の頂部と、遮音材層5の天端面に支持されることで、多孔質材料6をデッキプレート2上に敷設し、支持させる上で、多孔質材料6を特許文献4のようにねじを用いて固定する必要がなくなり、デッキプレート2の頂部に孔を穿設する必要がなくなる。デッキプレート2に孔形成の必要がないことで、孔の形成に起因する断熱性と遮音性の漏れがなくなり、断熱性と遮音性の低下を招くことはなくなる。その上、屋根葺き材3に漏水が生じた場合でも、デッキプレート2を通じた漏水は回避される。
【0020】
また特許文献4のように多孔質材料がデッキプレートの頂部のみに支持される状態ではなく、多孔質材料6がデッキプレート2上で頂部と遮音材層5に分担されることで、頂部のみに支持される場合のような、隣接する頂部間での多孔質材料6の垂れ下がりも回避されるため、多孔質材料6の断熱性能と遮音性能が面内方向に不均一になることはない。
【0021】
平板部21上に遮音材層5が形成されるデッキプレート2はその下に架設された骨組材1に支持されるため、デッキプレート2の屋外側に敷設される屋根葺き材3は
図1-(b)に示すように骨組材1上に立設される母屋材8に支持されることになる。
図1-(a)に示すようにデッキプレート2を支持した骨組材1の軸方向に起立部22の軸方向を向けて骨組材1上にデッキプレート2が敷設される場合、デッキプレート2は母屋材8の位置で分断される。
【0022】
ここで、母屋材8が例えばH型鋼である場合、平板部21上に現場でセメント系材料が充填される場合で、遮音材層5の天端面が揃えられた場合、母屋材8の下部のフランジ部分では遮音材層5の層厚が不均一になり、下部のフランジ部分と平板部21との間で遮音材層5の下面に急激な段差が生じる。また遮音材層5が予め成型されているコンクリート版である場合、平板部21上にコンクリート版を水平に設置できない状況になり得る。
【0023】
そこで、母屋材8(の本体)としてプレート81を使用することで(請求項2)、現場で充填される材料の場合でも、母屋材8に突き当たるまで遮音材層5の層厚を変化させることがなくなり、平板部21上にコンクリート版を水平に設置することも可能になる。母屋材8寄りの部分で遮音材層5の層厚が急激に変化することがなくなることで、全体的に遮音材層5の遮音性能を一様にすることが可能になる。
【0024】
この場合、屋根葺き材3を直接、支持する母屋材8は、軸方向がデッキプレート2の起立部22の軸方向に交差する方向を向いて架設され、デッキプレート2を支持する骨組材1の上面に、立設される(請求項2)。「交差する方向」は主に直交する方向であるが、必ずしも直交とは限られない。プレート81は母屋材8を直接、支持する骨組材1の上面に、軸方向が骨組材1の軸方向を向いて接合される。
【0025】
「母屋材8を直接、支持する骨組材1」とは、屋根架構を構成する複数の骨組材1の内、母屋材8が骨組材1上に位置する関係にある骨組材1に母屋材8が支持されることを言う。母屋材8はプレート81とその上部の厚さ方向両側に接合され、屋根葺き材3を受ける受け部82とを備える(請求項2)。
【0026】
多孔質材料は中高音域の音に対する吸音性能が高い特徴があるが、この吸音率の効果は多孔質材料を挟んだ音源の背面側に空気層を形成することが有効であることが知られている(日本音響材料協会、音響材料の使い方と技術資料集、音響技術No.159、2012年、P.12)。
【0027】
そこで、
図1に示すように多孔質材料6の上面と屋根葺き材3の下面との間に空気層7を確保することで(請求項3)、多孔質材料6による中高音域の音に対する吸音(遮音)性能を高めることが可能である。
【0028】
特許文献3の例では断熱材の屋外側にコンクリート層が重なって配置され、特許文献4の
図3の例では断熱材の屋外側に防水シート層が重なって配置されているため、断熱材の屋外側に直接、空気層が形成された場合のような吸音性能の向上は期待できない。
【0029】
骨組材1上には上記の通り、
図1-(b)に示すように屋根葺き材3を直接、または直接的に支持する母屋材8が立設され、母屋材8の上端面は多孔質材料6の上面より上に位置するため、母屋材8の高さの設定次第で多孔質材料6の屋外側に確保される空気層7の厚さが調整される。
【発明の効果】
【0030】
骨組材上に敷設され、平板部と平板部から起立し、頂部の高さが揃えられた起立部を有するデッキプレートの平板部上に起立部の頂部かその付近までセメント系材料を含む材料からなる遮音材層を形成し、起立部の頂部上と遮音材層の天端面上に多孔質材料を敷設し、支持させるため、多孔質材料をデッキプレート上に敷設し、支持させる上で、多孔質材料をねじを用いて固定する必要がない。従ってデッキプレートの頂部に孔を穿設する必要がなく、結果として、デッキプレートへの孔の形成に起因する断熱性と遮音性の漏れがなくなり、断熱性と遮音性の低下を招くことがない。また屋根葺き材に漏水が生じた場合でも、デッキプレートを通じた漏水を回避することができる。
【0031】
加えて多孔質材料がデッキプレートの頂部のみに支持される状態にはならず、デッキプレート上で頂部と遮音材層に支持されることで、頂部のみに支持される場合のような、隣接する頂部間での多孔質材料の垂れ下がりも回避されるため、多孔質材料の断熱性能と遮音性能が面内方向に不均一になることはない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】(a)はデッキプレート上に直接、セメント系材料を含む材料からなる遮音材層を形成し、その上に多孔質材料を敷設した状況を示した、起立部の軸方向に見たときの縦断面図、(b)は(a)の直交方向の縦断面図である。
【
図2】デッキプレート上に敷設された断熱材を兼ねる多孔質材料上にセメント系材料を含む材料からなる遮音材層を形成した場合に、その上に多孔質材料を敷設した状況を示した起立部の軸方向に直交する方向の縦断面図である。
【
図3】二重折版の屋内側に配置された、屋根架構の骨組となる骨組材にコンクリート版を敷設した様子を示した従来構造の縦断面図である。
【
図4】特許文献4のデッキプレートのリブ部分上に断熱材を敷設し、リブ部分に止め具で固定した様子を示した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1-(a)、(b)は屋根架構を構成する骨組材1上に敷設されるデッキプレート2と、デッキプレート2の屋外側に敷設される屋根葺き材3とを備えた屋根の断熱遮音構造の構成例を示す。
図1は屋根葺き材3として折版を使用した場合の例を示す。(a)は折版を軸方向(流れ方向)に見た様子を、(b)はその直交方向の様子を示す。
【0034】
デッキプレート2は骨組材1上に載置される平板部21と、平板部21の平面上の一方向に間隔を置いて並列し、平板部21から起立し、頂部の高さが揃えられた起立部22を有する。
図1-(a)では1枚の板を曲げ加工することで、平板部21と起立部22を形成しているが、デッキプレート2の形成方法と、平板部21と起立部22の形状は任意である。
図1の例では1枚の鋼板等の板を曲げ加工することで、デッキプレート2は一筆書きの軌跡のような断面形状をし、起立部22の上部以外の部分は2枚の板が重なり、密着した状態にある。起立部22の頂部は上部の閉じた断面形状部分の上の部分、特に上面を指す。
【0035】
デッキプレート2の平板部21上には
図1に示すように直接、もしくは
図2に示すように間接的にセメント系材料を含む材料からなる遮音材層5が起立部22の頂部、もしくはその付近まで形成される。起立部22の頂部(上面)上と遮音材層5の天端面上に断熱材を兼ねる多孔質材料6が敷設され、起立部22と遮音材層5支持される。遮音材層5は、多孔質材料6や屋根葺き材3では発揮できない低音域の音に対する遮音性能を発揮する。
【0036】
図1は骨組材1としてのトラス構成材にH型鋼を使用した場合に、上部のフランジ1a上と、一方向に隣接するトラス構成材間に架設される骨組材1としての水平ブレースやその他のつなぎ材(水平材)の上面(天端面)上にデッキプレート2を敷設し、デッキプレート2の平板部21上に流動性のある材料を充填して遮音材層5を形成した場合の例を示す。骨組材1がH型鋼の場合、デッキプレート2は二方向を向いて架設された異なる骨組材1、1の上部のフランジ1a上に載り、支持される。
図1は「デッキプレート2の平板部21上に直接、遮音材層5が形成された」場合の例を示す。
【0037】
図1に示す例の骨組材1としてのH型鋼は平面トラス、または立体トラスを構成する上弦材を示している。
図1に示す例では
図1-(b)に示すように隣接する上記のトラス構成材間に水平等に架設されるつなぎ材である骨組材1としてのH型鋼の上部のフランジ1a上に、骨組材1の軸方向に沿って母屋材8を接合(固定)し、この母屋材8の上面(天端面)に屋根葺き材3である折版を支持させている。屋根葺き材(折版)3は母屋材8の上面上に固定される、折版の断面形状に沿った断面形状をした受け材4に直接、もしくは間接的に固定され、支持される。
図1の例では屋根葺き材3上に断熱材9を水平に敷設している。
【0038】
図1の例では特に、デッキプレート2の平板部21上に形成される遮音材層5の層厚を母屋材8寄りまで一定に保てるよう、母屋材8を直接、支持する骨組材1の上部のフランジ1a上に溶接等により接合されるプレート81と、その上部の厚さ方向両側に接合され、屋根葺き材3を受ける溝形鋼等の受け部82から母屋材8を構成している。母屋材8の本体がプレート81であり、プレート81が骨組材1上に溶接等されることで、遮音材層5は母屋材8(プレート81)の側面に突き当たるまで平板部21上に一様な厚さで形成される状態が得られる。
【0039】
流動性を有する場合のセメント系材料は平板部21上にはデッキプレート2の現場への搬入前に、または現場で骨組材1上にデッキプレート2を敷設した後に、注入(充填)される。セメント系材料の一部を搬入前に注入しておき、残りを現場でレベルを調整しながら、注入することもある。平板部21上には予め成型されたコンクリート版やALC版等が敷設されることもあり、その場合もコンクリート版等は母屋材8のプレート81の厚さ方向の側面に突き当たる状態で敷設可能である。只、平板部21上に空隙なく遮音材層5を形成する上では流動性を有するセメント系材料を注入する方が効率的である。
【0040】
デッキプレート2の起立部22と遮音材層5に支持された多孔質材料6の上面(天端面)と屋根葺き材3である折版の下面との間には空気層7が確保される。多孔質材料6は主に中・高音域の音に対する遮音性能を有するが、多孔質材料6を挟んで音源の背面側に確保される空気層7が大きい(厚い)程、多孔質材料6による低音域の音に対する吸音率が高まることが知られている(日本音響材料協会、音響材料の使い方と技術資料集、音響技術No.159、2012年、P.12)。
【0041】
このことから、多孔質材料6の屋外側に空気層7が形成されることで、遮音材層5への積層と併せ、低音域から高音域までの音に対する遮音性能が確保される。多孔質材料6は空気を含み得るため、多孔質材料6自体の厚さを増すことによっても、低音域の音に対する吸音率を高めることは可能である。多孔質材料6の上面と屋根葺き材3の下面との間の空気層7の厚さ(層厚)は、
図1-(b)に示すように上記した母屋材8の長さ(高さ)を調整することで、自由に設定される。
【0042】
図2はデッキプレート2の平板部21上に断熱材を兼ねる、上記の多孔質材料6とは別の多孔質材料10を敷設し、この多孔質材料10上に遮音材層5を形成し、遮音材層5上に
図1の例における多孔質材料6を敷設した場合の例を示す。
図2は「デッキプレート2の平板部21上に間接的に遮音材層5が形成された」場合の例を示す。この例では屋根葺き材3としての2枚の折版の間に断熱材9を挟み込んでいる。
【符号の説明】
【0043】
1……骨組材、1a……フランジ、
2……デッキプレート、21……平板部、22……起立部、
3……屋根葺き材、4……受け材、
5……遮音材層、6……多孔質材料、7……空気層、
8……母屋材、81……プレート、82……受け部、
9……断熱材、
10……多孔質材料。