IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 阪野 昇の特許一覧 ▶ 株式会社沖山製作所の特許一覧

特開2023-98789塗装前処理装置およびこれを用いる塗装前処理方法
<>
  • 特開-塗装前処理装置およびこれを用いる塗装前処理方法 図1
  • 特開-塗装前処理装置およびこれを用いる塗装前処理方法 図2
  • 特開-塗装前処理装置およびこれを用いる塗装前処理方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098789
(43)【公開日】2023-07-11
(54)【発明の名称】塗装前処理装置およびこれを用いる塗装前処理方法
(51)【国際特許分類】
   B08B 3/02 20060101AFI20230704BHJP
   B08B 3/08 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
B08B3/02 A
B08B3/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021215598
(22)【出願日】2021-12-29
(71)【出願人】
【識別番号】000174529
【氏名又は名称】阪野 昇
(71)【出願人】
【識別番号】599092723
【氏名又は名称】株式会社沖山製作所
(72)【発明者】
【氏名】阪野 昇
(72)【発明者】
【氏名】沖山 雅哉
【テーマコード(参考)】
3B201
【Fターム(参考)】
3B201AA46
3B201AB01
3B201BB21
3B201BB62
3B201BB90
3B201BB92
3B201BB99
(57)【要約】
【課題】 被塗装物の洗浄、脱気等を行う塗装前処理において洗浄力を向上させることができる塗装前処理装置および塗装前処理方法を得る。
【解決手段】 被塗装物1を洗浄処理する洗浄処理部(洗浄処理槽)12に対し、薬液供給部(薬液槽)11から薬液を供給する供給路13に気液混合器20を配置するとともに、この気液混合器の上流側に不活性ガス供給部(不活性ガスボンベ)15から不活性ガスを導入する不活性ガス導入路16を設け、薬液と不活性ガスとを混合させることによりマイクロナノコロイダルバブルを発生させて洗浄処理部(洗浄処理槽)に供給するように構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗装物を洗浄処理する洗浄処理部に対し、薬液供給部から薬液を供給する供給路に気液混合器を配置するとともに、
この気液混合器の上流側に不活性ガス供給部から不活性ガスを導入する不活性ガス導入路を設け、
薬液と不活性ガスとを混合させることによりマイクロナノコロイダルバブルを発生させて洗浄処理部に供給するように構成したことを特徴とする塗装前処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の塗装前処理装置において、
前記気液混合器として、静止型気液混合器を用いたことを特徴とする塗装前処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の塗装前処理装置において、
前記薬液供給部は、薬液槽を備え、
前記洗浄処理部は、前記気液混合器から供給されてくるマイクロナノコロイダルバブルを被塗装物に散布する散布手段を有するスプレー式又はシャワー式による洗浄処理槽を備えていることを特徴とする塗装前処理装置。
【請求項4】
請求項3記載の塗装前処理装置において、
前記薬液槽には、加熱源としての熱交換器が付設され、被塗装物を脱脂処理する脱脂薬液槽であることを特徴とする塗装前処理装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の塗装前処理装置において、
前記薬液供給部は、薬液が貯留されるとともに、前記気液混合器からのマイクロナノコロイダルバブルが供給されている脱脂薬液槽であることを特徴とする塗装前処理装置。
【請求項6】
被塗装物を洗浄処理する洗浄処理部に対し、薬液供給部から洗浄処理部に対し薬液を供給する供給路の途中に配置されるとともに、その上流側に不活性ガスが導入される気液混合器を用い、
薬液と不活性ガスとを混合させてマイクロナノコロイダルバブルを発生させ、前記被塗装物の洗浄処理等の塗装前処理を行うことを特徴とする塗装前処理方法。
【請求項7】
請求項6記載の塗装前処理方法において、
前記気液混合器において常圧下で薬液の沸点以下、又は薬液の冷凍温度以上で不活性ガスを完全溶解させることによりマイクロナノコロイダルバブルを発生させ、
被塗装物の洗浄、脱脂を行うことを特徴とする塗装前処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不活性ガスを完全溶解し、マイクロナノコロイダルバブル発生供給する装置を塗装前処理洗浄槽や脱脂槽に付設することにより、塗装前処理に用いて好適な塗装前処理装置およびこれを用いる塗装前処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塗装前処理として塗装前の物品を、例えば脱脂液に浸漬させて脱脂処理するのに、マイクロバブル(直径が50μm以下の気泡)に代表される微細気泡を脱脂液中に分散させることで塗装前物品に対する脱脂効果を高めることが一般に知られている。
【0003】
しかし、単に空気を微細気泡にして脱脂液中に分散させるのでは、その空気に含まれる二酸化炭素ガスの影響により脱脂液のpH値が低下し、それが原因で脱脂液の脱脂効果が低下したり塗装前物品に悪影響を与えたりしてしまう。
【0004】
このことから、CO2除去装置により二酸化炭素ガスを除去した空気を微細気泡にして脱脂液中に分散させることで、二酸化炭素ガスの影響による脱脂液のpH値低下を回避するようにした脱脂システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかし、上述した特許文献1の脱脂システムでは、空気から二酸化炭素ガスを除去するCO2除去装置の付加装備を必要とすることから、また、CO2除去装置は通気抵抗が大きくてCO2除去装置に空気を供給するのに圧縮空気を要することなどからも、システムのイニシャルコスト及びランニングコストが嵩むとともに、保守管理の負担が大きくなる問題があった。
【0006】
そこで、空気に代え窒素などの不活性ガスの気泡を脱脂液中に噴出させるようにして、CO2除去装置を不要にすることも考えられるが、このように気泡を液中に対して直接に噴出させる方式(いわゆるバブリング方式)では、微細気泡を液中に分散させ得るものの、マイクロバブルなどの微細気泡が有する特有の性質を備えず、また、浮上速度が大きくて液中に短時間しか存在し得ない大径の気泡が微細気泡とともに形成され易く、その分、不活性ガスの浪費が大きくなってランニングコストの上昇を招く問題が生じる。
【0007】
これらの問題を解決し、不活性ガスの微細気泡を含む処理液を生成するコスト面で有利な処理液生成装置として、ガス供給源から供給される不活性ガスと液供給源から供給される原液とを加圧状態で気液接触させて不活性ガスを原液に溶解させる気液接触手段と、この気液接触手段において不活性ガスが溶解した原液を加圧状態から開放することで原液中に不活性ガスの微細気泡を発生させる圧力開放手段とを装備するようにした構成によるものも先に提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
そして、このような処理液生成装置であれば、二酸化炭素ガスを含まない微細気泡が液に分散する処理液を、先述の如きCO2除去装置を用いずに生成することができて、CO2除去装置の不要化により装置のイニシャルコスト及びランニングコストを効果的に低減するとともに、保守管理の負担も効果的に軽減することができる。
【0009】
また、加圧状態からの開放により溶解不活性ガスを液中で気泡化させる気泡発生形態を採るから、気泡を液中に対して直接に噴出させる方式(バブリング方式)のように微細気泡とともに大径の気泡が発生することも抑止することができて、大径気泡の発生による不活性ガスの浪費も回避することができ、この点からもランニングコストを効果的に低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4915455号公報
【特許文献2】特開2017-023923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上述した特許文献1、特許文献2に示されている構成において、気泡を利用する塗装前処理等では、まだまだ改善の余地が残されている。
【0012】
即ち、これらの従来構成によれば、脱炭酸除去エアーによる微細気泡供給や、不活性ガスによる微細気泡供給による脱酸剤劣化のさらなる低減化とシステムの簡略化は期待することはできない。
【0013】
特に、上述した従来構成のように、単に空気をエジェクターや、加圧装置など用いて、例えば脱脂溶液中に供給すると空気中の酸素の酸化力で、脱脂液が劣化してしまいその効果が劣化して、塗装前物品に支障をきたしてしまう。また、炭酸はアルカリ溶液中に良く溶け込むので、これも脱脂液の劣化に繋がってしまう、といった問題があった。
【0014】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、常圧下で薬液の沸点以下、冷凍温度以上で、目的に応じた不活性ガスを、簡単で効率的に、しかも薬液の飽和溶解度までに完全に溶解し、尚且つ、マイクロナノコロイダルバブルを発生させ、洗浄処理部(洗浄処理槽)又は薬液供給部(薬液槽)内に万遍なく行き渡らせることにより、合理的な気泡発生形態を採り、塗装前処理において被塗装物の洗浄力を大幅に向上させることができ、また構成が簡単で、コスト低減を図ることができる塗装前処理装置およびこれを用いる塗装前処理方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このような目的に応えるために本発明(請求項1記載の発明)に係る塗装前処理装置は、被塗装物を洗浄処理する洗浄処理部に対し、薬液供給部から薬液を供給する供給路に気液混合器を配置するとともに、
この気液混合器の上流側に不活性ガス供給部から不活性ガスを導入する不活性ガス導入路を設け、
薬液と不活性ガスとを混合させることによりマイクロナノコロイダルバブルを発生させて洗浄処理部に供給するように構成したことを特徴とする。
【0016】
本発明(請求項2記載の発明)に係る塗装前処理装置は、請求項1記載の塗装前処理装置において、
前記気液混合器として、静止型気液混合器を用いたことを特徴とする。
【0017】
本発明(請求項3記載の発明)に係る塗装前処理装置は、請求項1または請求項2記載の塗装前処理装置において、
前記薬液供給部は、薬液槽を備え、
前記洗浄処理部は、前記気液混合器から供給されてくるマイクロナノコロイダルバブルを被塗装物に散布する散布手段を有するスプレー式又はシャワー式による洗浄処理槽を備えていることを特徴とする。
【0018】
本発明(請求項4記載の発明)に係る塗装前処理装置は、請求項3記載の塗装前処理装置において、
前記薬液槽には、加熱源としての熱交換器が付設され、被塗装物を脱脂処理する脱脂薬液槽であることを特徴とする。
【0019】
本発明(請求項5記載の発明)に係る塗装前処理装置は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の塗装前処理装置において、
前記薬液供給部は、薬液が貯留されるとともに、前記気液混合器からのマイクロナノコロイダルバブルが供給されている脱脂薬液槽であることを特徴とする。
【0020】
本発明(請求項6記載の発明)に係る塗装前処理装置は、被塗装物を洗浄処理する洗浄処理部に対し、薬液供給部から洗浄処理部に対し薬液を供給する供給路の途中に配置されるとともに、その上流側に不活性ガスが導入される気液混合器を用い、
薬液と不活性ガスとを混合させてマイクロナノコロイダルバブルを発生させ、前記被塗装物の洗浄処理等の塗装前処理を行うことを特徴とする。
【0021】
本発明(請求項7記載の発明)に係る塗装前処理装置は、請求項6記載の塗装前処理方法において、
前記気液混合器において常圧下で薬液の沸点以下、又は薬液の冷凍温度以上で不活性ガスを完全溶解させることによりマイクロナノコロイダルバブルを発生させ、
被塗装物の洗浄、脱脂を行うことを特徴とする。
【0022】
このような構成を採ることにより、不活性ガスを上流側に導入した気液混合器を用い、常圧下で薬液の沸点以下、冷凍温度以上で、目的に応じた不活性ガスを完全に溶解し、尚且つ、マイクロナノコロイダルバブルを発生させ、洗浄処理部(シャワー式では洗浄処理槽)又は薬液供給部(沈積式では薬液槽)内に万遍なく行き渡らせることになる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように本発明に係る塗装前処理装置およびこれを用いる塗装前処理方法によれば、気液混合器、特に静止型気液混合器を用いることにより、常圧下で薬液の沸点以下、冷凍温度以上で、目的に応じた不活性ガスを完全に溶解し、尚且つ、マイクロナノコロイダルバブルを発生させ、洗浄処理部(シャワー式では洗浄処理槽)又は薬液供給部(沈積式では薬液槽)内に万遍なく行き渡らせることにより、合理的な気泡発生形態を採り、塗装前処理において被塗装物の洗浄力を大幅に向上させることができ、また構成が簡単で、コスト低減を図ることができる。
【0024】
特に、本発明による塗装前処理装置及び方法によれば、薬液の供給路において循環ポンプの吐出側に静止型気液混合器を設置するとともに、その上流側部分に不活性ガスを導入し、薬液と不活性ガスを気液混合させることにより、常圧下で不活性ガスを薬液中に完全溶解させ、給送側である洗浄処理槽又は薬液槽内でマイクロナノコロイダルバブルを発生させるように構成している。そして、ガス圧は循環ポンプ圧よりも多少高く設定されているため、槽内のガス溶解ガス分圧を上げることができ、大気中からの空気中酸素や炭酸ガスの液表面からの侵入を防ぐといった効果もある。
【0025】
また、加圧装置大気開放型により発生する気泡は一般的に100~200μm位、エジェクター方式で50μm位と言われているが、加圧タンク大気開放方法やエジェクター方法でさらに細かい気泡を得ようとすると動力の増加が必要になる。しかし、問題となることは、いずれも圧力開放時、負圧が生じるほかにガスが完全に液体に溶解しないために圧力解放されたと同時にガス分圧が低くなり、大気とのガス分圧平衡が起こり、ガス移動が液体に移行するスピードが遅くなると同時に気泡は大きく成り水中にとどまる気泡の滞在時間は早くなるところにある。
【0026】
したがって、このようなマイクロナノコロイダルバブルを発生させる装置では、ポンプ圧とガス圧を利用して瞬間的に気液混合器内で完全気液混合させ、同時に余剰のガスをマイクロナノコロイダル、タンクに吐出した時には完全溶解溶存ガスがコロイダルバブル化して発生するので槽内は均一な気泡充満状態が維持されることになる。
【0027】
また、上述した構成において特徴とすべきことは、液体温度沸点以下、冷凍温度以上の範囲で必要とする液温に合わせることができ、最低必要な温度の一定条件で、常にマイクロナノコロイダルバブルが得られるところにある。そして、このことにより、加圧タンクも必要なく、洗浄処理槽や浸漬薬液槽に取付けるだけで、常に安定した下地処理ができることになる。
【0028】
特に、静止型気液混合器として、例えば特許第4921127号公報に開示されているように、管体内にハの字状の抵抗体がハの字の広い方から狭い方に流れるように、45°ずれながら、8個360°になるように挿入されている構造のものを用いることにより、この静止型気液混合器の管体内を通過する、循環ポンプで圧送された薬液と、ポンプ圧よりやや高い圧力で、圧入した液体とガス体は内部の抵抗体で分散、剪断、混合を繰り返しながら混ざり合いガスはその水温の過飽和状態まで吸収され、また余剰のガスはマイクロナノコロイダルバブル化し液中に保持されて槽内に吐出されることになる。
【0029】
このような構成による静止型気液混合器を用いると、過飽和の吸収された部分は、槽内でマイクロナノコロイダルバブル化して充満することになり、また循環ポンプの吐出圧より、ガス導入圧は0.05Mpa以上より高ければよいことになる。そして、このような圧力設定で静止型気液混合器に薬液と不活性ガスとを同時に送り込むことで、完全なガス溶解とそれに伴うマイクロナノコロイダルバブルの発生が得られることになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】 本発明に係る塗装前処理装置およびこれを用いる塗装前処理方法の一実施形態を示す概略構成図。
図2】 本発明に係る塗装前処理装置およびこれを用いる塗装前処理方法の別の実施形態を示す概略構成図。
図3】 本発明に係る塗装前処理装置およびこれを用いる塗装前処理方法の他の実施形態を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は本発明に係る塗装前処理装置およびこれを用いる塗装前処理方法の一実施形態を示す。
同図において、符号1は各種金属素材などをプレス加工や溶接することにより形成される種々の金属加工品による被塗装物であり、これを塗装するにあたっての前処理として、洗浄、脱脂などを行う塗装前処理装置10が用いられている。ここで、この実施形態では、スプレーシャワー式の場合を説明する。
【0032】
本発明によれば、被塗装物1を洗浄処理する洗浄処理部(洗浄処理槽)12に対し、薬液供給部(薬液槽)11から洗浄液等の薬液11aを供給する供給路13に気液混合ミキサーと呼ばれる気液混合器20を配置するとともに、この気液混合器20の上流側に不活性ガス供給部(不活性ガスボンベ)15から不活性ガスを導入する不活性ガス導入路16を設け、薬液と不活性ガスとを混合させることによりマイクロナノコロイダルバブルを発生させて洗浄処理部(洗浄処理槽)12に供給するように構成している。
【0033】
ここで、マイクロナノコロイダルバブルとは、直径100μm未満で1μm(=0.001mm)以上の泡であるマイクロバブルよりもさらい細かい直径1μm(=0.001mm)未満の気泡が均一に分散するとともにコロイド状態にあることを言う。
【0034】
このようなマイクロナノコロイダルバブルを得るために気液混合器20、特に静止型気液混合器を用い、その上流側に不活性ガスを導入することにより、常圧下で薬液の沸点以下、冷凍温度以上で、目的に応じた不活性ガスを完全に溶解し、尚且つ、マイクロナノコロイダルバブルを発生させるように構成している。
【0035】
なお、図中14は供給路13中で前記気液混合器20の上流側に設けた循環ポンプで、薬液11aを洗浄処理槽12に対し給送するようになっている。また、不活性ガス導入路16には、圧力計17a、減圧弁17b、流量計17c、ニードル弁17d、チャッキ弁17e等が付設されている。さらに、前記供給路13には、流路を開閉制御する手動弁18が設けられている。
【0036】
また、図中12aは洗浄処理槽12の内側面に配列して設けられた散布手段としてのスプレーノズルであり、薬液11aを微細化して被塗装物1に吹き付ける力で、被塗装物1に付着しているものをたたき落として、薬液11aとともに、流し落とすようになっている。図1では、この洗浄処理槽12の下方に前記薬液槽11が配置され、流し落とされた薬液11aが薬液槽11に回収されて循環するようになっている。
また、図中2は、被塗装物1を前記洗浄処理槽12内に搬送するためのオーバーヘッドコンベアである。
【0037】
上述した構成によれば、前記オーバーヘッドコンベア2により洗浄処理槽12内に搬送される被塗装物1は、薬液槽12から供給路13を介して洗浄処理槽12側に送られ、静止型気液混合器20において、その上流側に不活性ガスを導入し、常圧下で薬液の沸点以下、冷凍温度以上で、目的に応じた不活性ガスを完全に溶解し、尚且つ、マイクロナノコロイダルバブルを発生させることにより、スプレーノズル12aから散布することで、被塗装物1の洗浄が行われるようになっている。
【0038】
換言すれば、上述した構成による塗装前処理装置10によれば、不活性ガスを上流側に導入した気液混合器20を用い、常圧下で薬液の沸点以下、冷凍温度以上で、目的に応じた不活性ガスを完全に溶解し、尚且つ、マイクロナノコロイダルバブルを発生させ、洗浄処理部(洗浄処理槽)12内に万遍なく行き渡らせることにより、合理的な気泡発生形態を採り、塗装前処理において被塗装物に付着している汚れや油分を取るための洗浄力を大幅に向上させることができ、また構成が簡単で、コスト低減を図ることができることになる。
【0039】
特に、上述した被塗装物1に付着している汚れや油分を取るためには、より一層細かい気泡が必要となるもので、上述した気液混合器20を用いることで、その気泡による剥離効果を発揮し得るものである。
【0040】
さらに、1μm未満の気泡を取るためには、それよりさらに細かい気泡を多量に付けて気泡の剥離効果を発揮させて、液中へと金属に着いた汚れを除去することができる。このため、次の工程の下地(金属)保護剤が良く金属と馴染むと同時に、塗装むらなく塗料をコーティングできるので、仕上げの塗料が良くなる。
【0041】
このような利点は、この下地塗りにむらがあると、仕上げ塗装は塗料をスプレーで吹き付けて塗るので気泡を巻き込み乾燥した時、気泡を巻き込んだところから剥がれ製品にはならなくなってしまう、ことからも明らかである。
【0042】
そして、このように金属面や、その他の塗装するための下地処理は、大変重要で今までよりもさらに細かい気泡の供給が重要となるもので、経費削減のための解決に大きく役立つことになる。
【0043】
ここで、上述した気液混合器20としては、静止型気液混合器を用いて薬液と不活性ガス(例えば窒素ガス)とを混合させることにより、ガスが完全に溶解され、マイクロナノコロイダルバブル状態とされて万遍なく行き渡らせることができ、これにより被塗装物1の表面に付着している汚れや油分を綺麗に剥離させ、下地処理剤、例えばリン酸亜鉛などの下地処理剤の塗布などが均一となり、それによる防錆効果を一段と向上させることができる。さらに、仕上げ塗装をした場合に、塗装剤が接着し易くなり、凹凸波形の間隔もほぼ平均的に分布することになるので、接着力も通常の脱脂処理よりも強固になり仕上げ工程の軽減にも繋がるといった利点も奏することができる。
【0044】
図2は本発明に係る塗装前処理装置及び塗装前処理方法の別の実施形態を示し、同図において、この実施形態では、被塗装物1の塗装前処理として脱脂処理を行う場合の装置構成を示す。
【0045】
即ち、この実施形態では、前記薬液供給部としての脱脂薬液槽となるように薬液槽11に、加熱源としての熱交換器19を設けており、この熱交換器19による加熱作用により、薬液槽11内の薬液11aを加熱してから、循環ポンプ14により給送路13を介して洗浄処理部(洗浄処理槽)12に急送するように構成されており、その途中に設けた静止型気液混合器20で薬液11aに不活性ガスを混合させ、常圧下で薬液の沸点以下、冷凍温度以上で、目的に応じた不活性ガスを完全に溶解し、尚且つ、マイクロナノコロイダルバブルを発生させることにより、加熱された状態で洗浄処理槽12内に散布され、被塗装物1の脱脂処理が行われるようになっている。
【0046】
ここで、このような脱脂処理を含む塗装前処理における工程は、例えば予備脱脂-本脱脂-第一水洗-第二水洗-表面調整-化成皮膜-第三水洗-第四水洗-新鮮水などにより構成されている。
【0047】
図3は本発明に係る塗装前処理装置及び塗装前処理方法の他の実施形態を示すものであり、同図において、この実施形態では、被塗装物1を、薬液供給部としての脱脂薬液槽11に沈積することでが、脱脂処理、洗浄処理を行う沈積式である場合である。
【0048】
このような沈積式の装置では、被塗装物1をホイストレール25aに沿って搬送するとともに、脱脂薬液槽11の上方で昇降機能付きコンベア25で昇降動作させ、被塗装物1を脱脂薬液槽11内の薬液11a内に沈積させ、脱脂、洗浄処理を行うように構成されている。
【0049】
また、この槽11内の薬液11aは、槽11下方から循環ポンプ14により給送路13により給送され、静止型気液混合器20により不活性ガスと混合され、マイクロナノコロイダルバブルが生成されて、槽11上方において槽11内に送り込まれるようになっている。
【0050】
このような沈積式の場合には、薬液槽11内に被塗装物1を漬け込むことになる。このとき、薬液が動かないので、かけ流しのように被塗装物1の表面には反応して薬液が存在するので、撹拌、揺動などの駆動手段を付加している槽もあるが、その水流はわずかでよいので、シャワー式よりは反応が劣るが、省スペースで前処理でき、製造コストも抑制できるという利点があり、必要に応じて適宜採用されている。
【0051】
なお、本発明は上述した実施の形態で説明した構造には限定されず、塗装前処理装置10を構成する各部の形状、構造等を適宜変形、変更し得ることはいうまでもない。
【0052】
たとえば上述した実施形態では、シャワー式洗浄、沈積式洗浄を行う塗装前処理装置10をそれぞれ例示したが、本発明はこれらのいずれにも適用して効果を発揮し得るものである。要は、薬液を給送する給送路13中に、この薬液と不活性ガスとを混合し、マイクロナノコロイダルバブルを生成して、被塗装物1の洗浄などに用いることができる構成であればよい。また、必要に応じて脱脂処理を行える構成であってもよい。
【0053】
さらに、塗装以外であっても、メッキ、部品洗浄等に使用して作用効果を発揮し得るものである。
【符号の説明】
【0054】
1 被塗装物
2 オーバーヘッドコンベア
10 塗装前処理装置
11 薬液供給部(薬液槽)
12 洗浄処理部(洗浄処理槽)
13 供給路
14 ポンプ
15 不活性ガス供給部(不活性ガスボンベ)
16 不活性ガス導入路
19 熱交換器(加熱源)
20 気液混合器
25 昇降機能付きコンベア
図1
図2
図3