(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098794
(43)【公開日】2023-07-11
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20230704BHJP
【FI】
H01G4/30 201G
H01G4/30 513
H01G4/30 516
H01G4/30 201F
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066033
(22)【出願日】2022-04-13
(31)【優先権主張番号】10-2021-0191599
(32)【優先日】2021-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イェオン、ギュ ホ
(72)【発明者】
【氏名】オー、ウォン クエン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン、セオ ウォン
(72)【発明者】
【氏名】リー、セオ ホ
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC10
5E001AE01
5E001AE02
5E001AE03
5E001AH01
5E001AH05
5E001AH09
5E001AJ01
5E001AJ03
5E082AB03
5E082BC19
5E082BC32
5E082BC33
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE26
5E082EE35
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG54
5E082GG10
5E082GG28
5E082GG30
5E082LL02
5E082MM24
(57)【要約】
【課題】
固着強度及び耐衝撃性に優れた外部電極を含むことで、耐熱及び耐湿特性が改善された積層セラミック電子部品を提供する。
【解決手段】
本発明の一実施形態は、誘電体層及び内部電極を含むセラミック本体と、上記セラミック本体上に配置され、上記内部電極と連結される第1電極層と、上記第1電極層上に配置され、銀(Ag)及びパラジウム(Pd)を含む導電性金属、炭素素材、及びガラスを含む第2電極層と、を含み、上記第2電極層の少なくとも一部の断面において上記炭素素材が占める面積割合は1~5%である積層セラミック電子部品を提供する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層及び内部電極を含むセラミック本体と、
前記セラミック本体上に配置され、前記内部電極と連結される第1電極層と、
前記第1電極層上に配置され、銀(Ag)及びパラジウム(Pd)を含む導電性金属、炭素素材、及びガラスを含む第2電極層と、を含み、
前記第2電極層の少なくとも一部の断面において前記炭素素材が占める面積割合は1~5%である積層セラミック電子部品。
【請求項2】
前記炭素素材は、グラフェン、炭素ナノチューブ、フラーレン、及びブラックカーボンのうち1種以上を含む、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項3】
前記セラミック本体は、第1方向に対向する第1面及び第2面と、第2方向に対向する第3面及び第4面と、第3方向に対向する第5面及び第6面と、含み、
前記第2電極層の第1及び第2方向断面、及び第2及び第3方向断面の少なくとも一方において、前記炭素素材が占める面積割合が1~5%である、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項4】
前記炭素素材は、球形又は板状形である、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項5】
前記球形及び板状形の炭素素材を全て含む、請求項4に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項6】
前記炭素素材の直径は、0.25μm~4μmである、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項7】
前記炭素素材は、前記断面の面積2500μm2当たり10個以上が配置されている、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項8】
前記面積は、50μm×50μm(横×縦)である、請求項7に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項9】
前記第2電極層の導電性金属は、白金(Pt)及び金(Au)のうち1種以上をさらに含む、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項10】
前記第1電極層は導電性金属及びガラスを含み、
前記第1電極層の導電性金属は銅(Cu)を含む、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項11】
前記第2電極層のラマン(Raman)分析を行うとき、2つのピーク(peak)が検出される、請求項1から10のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項12】
前記炭素素材は、グラフェンを含む、請求項11に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項13】
前記2つのピーク(peak)は、Dバンド(band)及びGバンド(band)で検出される、請求項11に記載の積層セラミック電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミック電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミック電子部品のうち、積層セラミックキャパシタ(Multilayer Ceramic Capacitor,MLCC)は、小型でありながら高容量が保障されるという長所から、通信、コンピュータ、家電、自動車などの産業に用いられる重要なチップ部品であり、特に、携帯電話、コンピュータ、デジタルTVなどの各種電気、電子、情報通信機器に用いられる核心受動素子でもある。
【0003】
従来は、積層セラミックキャパシタを基板などに実装するために、積層セラミックキャパシタの外部電極が電極層上に形成されためっき層を含んでいた。但し、高温環境下での実装の際に、基板の反りやめっき層に含まれるスズ(Sn)の酸化によって、はんだクラックが発生したり、接触抵抗が増加したりする問題があった。
【0004】
このような問題を解決すべく、銅(Cu)を含む電極層と、銀(Ag)及びパラジウム(Pd)を含む電極層とからなる外部電極構造が使用されてきた。かかる外部電極を使用する場合、スズはんだ付けの代わりに銀エポキシ(Ag epoxy)を導電性接着剤(Conductive glue)として使用することで、積層セラミックキャパシタを基板に実装することができる。
【0005】
但し、このような二次外部電極構造であると、上記電極層が互いに分離又は剥離するピール・オフ(peel-off)現象が発生することがあり、耐熱特性に劣る恐れがあるため、電極間の固着強度、耐熱及び耐湿特性が改善された積層セラミックキャパシタが求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的の一つは、固着強度及び耐衝撃性に優れた外部電極を含むことで、耐熱及び耐湿特性が改善された積層セラミック電子部品を提供することにある。
【0007】
但し、本発明の目的は上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態は、誘電体層及び内部電極を含むセラミック本体と、上記セラミック本体上に配置され、上記内部電極と連結される第1電極層と、上記第1電極層上に配置され、銀(Ag)及びパラジウム(Pd)を含む導電性金属、炭素素材、及びガラスを含む第2電極層と、を含み、上記第2電極層の少なくとも一部の断面において上記炭素素材が占める面積割合は1~5%である積層セラミック電子部品を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の様々な効果の一つとして、固着強度及び耐衝撃性に優れた外部電極を含むことで、耐熱及び耐湿特性が改善された積層セラミック電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る積層セラミック電子部品を示す斜視図である。
【
図3】
図2のP領域を拡大して示した拡大図である。
【
図4】
図3のQ領域を拡大して示した拡大図である。
【
図5】第1及び第2電極層の断面を走査電子顕微鏡(SEM)を用いて分析したイメージである。
【
図6】エネルギー分散型分光分析法(EDS)を用いて炭素元素をマッピングしたイメージである。
【
図7】第2電極層に対するラマン(Raman)分析結果を示すグラフである。
【
図8】炭素素材の面積割合に応じたイオンマイグレーション(Ion migration)現象を撮影したイメージである。
【
図9】炭素素材の面積割合に応じて外部電極が外部応力によって破壊される形態を撮影したイメージである。
【
図10】炭素素材の面積割合に応じて積層セラミック電子部品の等価直列抵抗(ESR)を評価したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどは、より明確な説明のために拡大縮小表示(又は強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上の同一の符号で示される要素は同一の要素である。
【0012】
そして、図面において本発明を明確に説明するために、説明と関係のない部分は省略し、図面に示した各構成の大きさ及び厚さは説明の便宜上、任意に示しているため、本発明は必ずしも図示されたものに限定されない。なお、同一思想の範囲内の機能が同一である構成要素については、同一の参照符号を用いて説明する。説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というとき、これは特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0013】
図面において、第1方向は積層方向又は厚さT方向、第2方向は長さL方向、第3方向は幅W方向と定義することができる。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る積層セラミック電子部品を示す斜視図であり、
図2は、
図1のI-I'線に沿った断面図であり、
図3は、
図2のP領域を拡大して示した拡大図であり、
図4は、
図3のQ領域を拡大して示した拡大図である。
【0015】
以下では、
図1~
図4を参照して、本発明の一実施形態に係る積層セラミック電子部品100について説明する。
【0016】
本発明の一実施形態に係る積層セラミック電子部品100は、誘電体層111及び内部電極121、122を含むセラミック本体110と、セラミック本体110上に配置され、内部電極121、122と連結される第1電極層131a、131bと、第1電極層131a、131b上に配置され、銀(Ag)及びパラジウム(Pd)を含む導電性金属32a、炭素素材32b、及びガラス32cを含む第2電極層132a、132bと、を含み、第2電極層132a、132bの少なくとも一部の断面において炭素素材32bが占める面積割合は1~5%を満たす。
【0017】
セラミック本体110の具体的な形状に特に限定はないが、図示されたように、セラミック本体110は、六面体形状やこれと類似の形状からなることができる。焼成過程でセラミック本体110に含まれたセラミック粉末の収縮や角部の研磨により、セラミック本体110は完全な直線を有する六面体形状ではないが、実質的に六面体形状を有することができる。
【0018】
セラミック本体110は、第1方向に対向する第1面及び第2面1、2と、上記第1面及び第2面1、2と連結され、第2方向に対向する第3面及び第4面3、4と、第1面及び第2面1、2と連結され、且つ、第3面及び第4面3、4と連結され、第3方向に対向する第5面及び第6面5、6と、を有することができる。
【0019】
セラミック本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されていることができる。セラミック本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であって、隣接する誘電体層111間の境界は、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化していることができる。
【0020】
誘電体層111は、セラミック粉末、有機溶剤、及びバインダーを含むセラミックグリーンシートの焼成によって形成されることができる。セラミック粉末は、十分な静電容量が得られる限り特に制限されない。例えば、チタン酸バリウム系(BaTiO3)材料、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)系材料などを使用することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0021】
このとき、誘電体層111の厚さは、セラミック本体110の大きさと容量を考慮して10μm以下であることができ、積層セラミック電子部品100の小型化及び高容量化のために、0.6μm以下、より好ましくは、0.4μm以下であることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0022】
ここで、誘電体層111の厚さは、内部電極121、122の間に配置される誘電体層111の平均厚さを意味することができる。誘電体層111の厚さは、セラミック本体110の第1方向及び第2方向断面を1万倍率の走査電子顕微鏡を用いてスキャンして測定することができる。より具体的には、任意の誘電体層111の多数の地点、例えば、第2方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定して平均値を求めることができる。また、このような平均値の測定を多数の誘電体層111に拡張して求めると、誘電体層111の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0023】
セラミック本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように配置される複数の第1内部電極121及び複数の第2内部電極122を含むことで容量が形成される容量形成部と、上記容量形成部の上部に配置される第1カバー部112と、上記容量形成部の下部に配置される第2カバー部113と、を含むことができる。第1カバー部112及び第2カバー部113は、単一の誘電体層又は2つ以上の誘電体層を上記容量形成部の上下面にそれぞれ第1方向に積層して形成することができ、基本的には物理的又は化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。第1及び第2カバー部112、113は、内部電極を含まないことを除いては、誘電体層111と同じ構成を有することができる。第1及び第2カバー部112、113のそれぞれは、20μm以下の厚さを有することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0024】
内部電極121、122は、誘電体層111と交互に配置されることができ、複数の第1内部電極121及び複数の第2内部電極122は、誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように配置されることができる。即ち、第1及び第2内部電極121、122は、互いに異なる極性を有する一対の電極であり、誘電体層111の積層方向に沿ってセラミック本体110の第3面及び第4面3、4に交互に露出するように形成されることができる。
【0025】
例えば、複数の第1内部電極121のそれぞれは、セラミック本体110の第4面4と離隔して第3面3に露出することができる。且つ、複数の第2内部電極122のそれぞれは、セラミック本体110の第3面3と離隔して第4面4に露出することができる。複数の第1内部電極121及び複数の第2内部電極122は、その間に配置されている誘電体層111により互いに電気的に分離されることができる。複数の第1内部電極121及び複数の第2内部電極122は、第1方向に交互に積層されることができるが、これに限定されるものではなく、第3方向に交互に積層されてもよい。
【0026】
内部電極121、122は、セラミックグリーンシート上に所定の厚さで導電性金属を含む内部電極用導電性ペーストを印刷することで形成されることができる。内部電極用導電性ペーストの印刷方法としては、スクリーン印刷法又はグラビア印刷法などを使用することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0027】
内部電極121、122に含まれる導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)、及びこれらの合金のうち1種以上であることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0028】
このとき、内部電極121、122の厚さは、セラミック本体110の大きさと容量を考慮して10μm以下であることができ、積層セラミック電子部品100の小型化及び高容量化のために、0.6μm以下、より好ましくは、0.4μm以下であることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0029】
ここで、内部電極121、122の厚さは、内部電極121、122の平均厚さを意味することができる。内部電極121、122の平均厚さは、セラミック本体110の第1方向及び第2方向断面を1万倍率の走査電子顕微鏡を用いてスキャンして測定することができる。より具体的には、任意の内部電極の多数の地点、例えば、第2方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定して平均値を求めることができる。このような平均値の測定を多数の内部電極に拡張して求めると、内部電極の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0030】
このような第1及び第2内部電極121、122は、上記セラミック本体110の第3面及び第4面3、4上に配置された第1電極層131a、131bを介して第1及び第2外部電極130a、130bとそれぞれ電気的に連結されることができる。
【0031】
したがって、第1及び第2外部電極130a、130bに電圧を印加すると、互いに対向する第1及び第2内部電極121、122の間に電荷が蓄積されるようになり、この際、積層セラミック電子部品100の静電容量は、第1及び第2内部電極121、122の重なり領域の面積と比例するようになる。
【0032】
外部電極130a、130bは、セラミック本体110の第3面及び第4面3、4に配置され、第1面、第2面、第5面、及び第6面1、2、5、6のそれぞれの一部まで延長されることができる。外部電極130a、130bは、複数の第1内部電極121及び複数の第2内部電極122とそれぞれ連結される第1外部電極130a及び第2外部電極130bを含むことができる。外部電極130a、130bは、金属などのように電気伝導性を有するものであれば、如何なる物質を使用して形成されてもよく、電気的特性、構造的安定性などを考慮して具体的な物質が決定されることもできる。さらに、多層構造を有することができる。
【0033】
例えば、第1及び第2外部電極130a、130bは、セラミック本体110上に配置され、それぞれ第1及び第2内部電極121、122と連結される第1電極層131a、131bと、第1電極層131a、131b上に配置される第2電極層132a、132bと、をそれぞれ含むことができる。
【0034】
このとき、第1電極層131a、132bは、セラミック本体110と外部電極130a、130bとを機械的に結合させる役割を果たすことができる。第1電極層131a、131bは、セラミック本体110の第3面及び第4面3、4に交互に露出する複数の第1及び第2内部電極121、122とそれぞれ接続されることで、第1及び第2外部電極130a、130bと第1及び第2内部電極121、122間の電気的導通を確保する。一方、第1電極層131a、131bの厚さは、特に制限する必要はないが、例えば、5~30μmであることができる。
【0035】
このとき、第1電極層131a、131bは、導電性金属及びガラスを含むことができる。第1電極層131a、131bの導電性金属は、例えば、銅(Cu)を含むことができる。第1電極層131a、131bは、セラミック本体110の第3面及び第4面3、4を導電性金属及びガラスを含む導電性ペーストにディッピング(dipping)した後、焼成することで形成されることができる。或いは、導電性金属及びガラスを含むシートを転写することで形成されることができる。
【0036】
第2電極層132a、132bは、第1電極層131a、131b上に配置され、導電性金属32aとして、銀(Ag)及びパラジウム(Pd)を含むことができる。第2電極層132a、132bは、第1電極層131a、131bと電気的に連結され、銀(Ag)及びパラジウム(Pd)を含むことで酸化を防止し、外部からの水分及び水素の浸透を防ぐ役割を果たすことができる。さらに、銀(Ag)を含む導電性金属32aによって第2電極層132a、132b上に銀エポキシ(Ag epoxy)などの導電性接着剤を塗布することで、積層セラミック電子部品100をスズ(Sn)を含むはんだを使用せずにセラミック基板に実装することができる。これによって、高温-低温Cycleにおける外部電極とはんだとの熱膨張率の差から生じるストレスによってはんだクラックが発生するという問題を解決することができる。
【0037】
このとき、第2電極層132a、132bに含まれる導電性金属32aが銀(Ag)のみからなるか、又は、銀(Ag)の含量が高すぎると、高温環境下でイオンマイグレーション現象が発生することがある。このとき、第2電極層132a、132bがパラジウム(Pd)をさらに含むことで、イオンマイグレーションの発生を防止することができる。ここで、パラジウム(Pd)は、イオンマイグレーションを防止できる他の金属、例えば、白金(Pt)及び/または金(Au)などに代替又は混合されることができる。
【0038】
上記ガラス32cは、導電性ペーストを塗布及び焼成して第2電極層132a、132bを形成するとき、導電性金属32aの焼結速度を制御し、導電性金属32aが焼結過程で収縮される時にボイド空間を充填することで、第2電極層132a、132bの緻密度を高めることができる。これによって、外部からの水分の浸透を効果的に抑えることができる。
【0039】
ガラス32c成分は、酸化物が混合された組成であることができ、特に制限されるものではないが、ケイ素酸化物、ホウ素酸化物、アルミニウム酸化物、転移金属酸化物、アルカリ金属酸化物、及びアルカリ土金属酸化物からなる群より選択された1種以上であることができる。上記転移金属は、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、及びニッケル(Ni)からなる群より選択され、上記アルカリ金属は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、及びカリウム(K)からなる群より選択され、且つ、上記アルカリ土金属は、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、及びバリウム(Ba)からなる群より選択された1種以上であることができる。
【0040】
炭素素材32bは、炭素同素体であればよく、伝導性を有さない炭素素材32bであってもよい。伝導性を有する炭素素材32bは電気伝導度に優れるという利点があるものの、伝導性を有さない炭素素材32bであっても、イオンマイグレーション(ion migration)の防止、又は、固着強度の向上が可能な素材であればよい。
【0041】
例えば、炭素素材32bは、グラフェン、炭素ナノチューブ、フラーレン、及びブラックカーボンのうちいずれか1種以上を含むことができるが、本発明はこれに限定されるものではない。炭素素材32bは、高温でも安定的で優れた機械的物性を有することから、第2電極層132a、132b内に炭素素材32bが均一に分布する場合、外部からの衝撃を吸収することができる。さらに、温度による変化率が低いことから、積層セラミック電子部品100の強度及び耐熱特性を向上させることができる。
【0042】
第2電極層132a、132bは、銀(Ag)及びパラジウム(Pd)を含む導電性金属、炭素素材、及びガラスを含む導電性ペーストを塗布及び乾燥し、600~700℃で1~2時間にかけて低温焼成することで形成されることができる。
【0043】
図5は、第1及び第2電極層の断面を走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いて分析したイメージである。より具体的には、積層セラミック電子部品100の第1方向の中心を通る第2方向及び第3方向断面において、第2方向への長さ×第3方向への長さ=135μm×95μmである領域を分析したイメージである。
図6は、エネルギー分散型分光分析法(EDS)を用いて炭素元素をマッピングしたイメージである。より具体的には、第2電極層132a、132bの第2方向及び第3方向断面を2千倍率でスキャンした走査電子顕微鏡(SEM)のイメージにおいて、第2方向への長さ×第3方向への長さ=60μm×40μmである領域に対して炭素(C)元素をマッピング(mapping)したイメージである。イメージにおいて、明るい領域ほど、炭素元素の含量が高いことを意味する。
【0044】
図5及び
図6から、炭素素材32bが第2電極層132a、132b内で占める面積を測定することができ、炭素素材32bが第2電極層132a、132b内に均一に分布していることが分かる。
【0045】
本発明の一実施形態によると、第2電極層132a、132bの少なくとも一部の断面において炭素素材32bが占める面積割合は1~5%であることができる。
【0046】
上記炭素素材32bが占める面積割合を測定する方法の一例として、
図5及び
図6のように、積層セラミック電子部品100の第1方向の中心を通る第2方向及び第3方向断面、又は、積層セラミック電子部品100の第3方向の中心を通る第1方向及び第2方向断面において、第2電極層132a、132を走査電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影し、エネルギー分散型分光分析法(EDS)を用いて炭素元素をマッピングすることで、測定することができる。
【0047】
積層セラミック電子部品100に電界を印加すると、第2電極層132a、132bに含まれている銀(Ag)がイオン化して第1電極層131a、131bに移動するイオンマイグレーション(ion migration)が発生し、信頼性が低下することがある。このとき、第2電極層132a、132bの少なくとも一部の断面において、炭素素材32bが占める面積割合が1~5%であると、イオンマイグレーション(ion migration)を防止し、信頼性を向上させることができる。これは、第2電極層132a、132bに含まれている炭素素材32bによって銀(Ag)の相対的な体積が減少し、炭素素材32bが銀(Ag)の移動を効果的に抑制するためである。
【0048】
また、第2電極層132a、132bの少なくとも一部の断面において炭素素材32bが占める面積割合が上記条件を満たす場合、炭素素材32bが第2電極層132a、132b内に均一に分布することで、固着強度及び耐衝撃性が向上されるようになる。炭素素材32bは、その種類に応じて弾性、耐衝撃性、変形に抵抗する剛性(stiffness)などに優れることから、外部からの応力を吸収及び緩和する役割を果たし、このことから、第2電極層132a、132bの固着強度及び耐衝撃性が向上されるようになる。
【0049】
第2電極層132a、132bの少なくとも一部の断面において炭素素材32bが占める面積割合が1%未満であると、炭素素材32bが十分に分布していないために耐熱特性が低下し、銀(Ag)イオンマイグレーション(ion migration)の抑制効果が低下することがある。また、炭素素材32bが十分に分布していないために耐衝撃性が低下し、このことから、固着強度の評価時に第1電極層131a、131bが破壊したり、第2電極層132a、132bのピール・オフ(peel-off)現象が発生することがある。
【0050】
第2電極層132a、132bの少なくとも一部の断面において炭素素材32bが占める面積割合が5%を超えると、焼成時に炭素素材32bが第2電極層132a、132b内で均一に分布しておらず、炭素素材32bが互いにくっついて固着強度が低下することがある。特に、炭素素材32bが占める面積割合が10%以上であると、焼成時に炭素素材32bが互いにくっついて多量の空隙を形成したり、外部電極でブリスター(blister)などが発生することがある。これにより、第1電極層131a、131bと第2電極層132a、132bとの間にピール・オフ(peel-off)現象が発生することがあり、積層セラミック電子部品100をセラミック基板に実装する際に使用される上記銀エポキシとの接着力が低下するという問題が発生する恐れがある。
【0051】
上記炭素素材32bは、炭素同素体の種類によって多様な形状を有することができ、球形又は板状形の形状であることができるが、本発明はこれに限定されるものではなく、上記球形及び板状形の炭素素材32bを全て含むことができる。特に、炭素素材32bがグラフェンを含む場合、上記グラフェンは板状に分散されることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0052】
本発明の一実施形態において、炭素素材32bの直径は、0.25μm~4μmであることができる。炭素素材32bの直径は、上記第2方向及び第3方向断面、又は、第1方向及び第2方向断面において、第2電極層132a、132bを走査電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影し、エネルギー分散型分光分析法(EDS)を用いて炭素元素をマッピングした後、EDS内のプログラムによって測定することができる。
【0053】
本発明の一実施形態において、炭素素材32bは、上記断面の面積2500μm2当たり10個以上が配置されることができる。ここで、上記断面は、炭素素材32bが占める面積割合を測定するための第2電極層132a、132bの第1及び第2方向断面、又は、第2及び第3方向断面を意味することができる。上記炭素素材32bの測定は、特に制限されないが、例えば、第2電極層132a、132bでの50μm×50μm(横×縦)の面積内で測定されることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0054】
炭素素材32bの個数を測定する方法の一例として、上記断面を走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)又は透過電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)を用いてスキャンしたイメージから抽出された第2電極層132a、132bの50μm×50μm(横×縦)の面積内でエネルギー分散型分光分析法(EDS)を用いて炭素元素をマッピング(mapping)することで、炭素素材32bの個数を測定することができる。
【0055】
図7は、第2電極層に対するラマン(Raman)分析結果を示すグラフである。
【0056】
本発明の一実施形態において、第2電極層132a、132bのラマン(Raman)分析を行うとき、2つのピーク(peak)が検出されることができる。上記2つのピーク(peak)はDバンド(band)及びGバンド(band)で検出されることができ、Gバンド(band)は1580cm-1付近、Dバンド(band)は1350cm-1付近に現れることができる。上記第2電極層132a、132bのラマン(Raman)分析を行うとき、2つのピーク(peak)が検出される理由は、第2電極層132a、132bがグラフェンを含むためであり、これにより他の炭素素材とは異なるラマン分析グラフになることができる。
実施形態
【0057】
下記表1は、第2電極層132a、132bの第2方向及び第3方向断面において上記炭素素材が占める面積割合に応じたイオンマイグレーション(ion migration)、固着強度及びESR(等価直列抵抗,Equivalent series resistance)の変動係数(coefficient of variation,CV)を測定した実験結果である。
【0058】
下記表1の全ての試料は、銅(Cu)を含む第1電極層131a、132a上に、銀(Ag)及びパラジウム(Pd)を含む第2電極層132a、132bが形成されている外部電極130a、130bを含むサンプルチップ(MLCC)であり、上記炭素素材の面積割合を変えて設定した以外は、同様の条件で製造した。
【0059】
<炭素素材の面積割合の測定>
上記炭素素材が占める面積割合は、サンプルチップの第1方向の中心まで研磨した後、第2電極層の第2方向及び第3方向断面を走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いて撮影した後、EDS(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)分析して測定した。このとき、加速電圧15kV、WD(working distance)15mmの条件で炭素(C)元素をマッピング(mapping)して、炭素素材が占める面積割合を測定した。
【0060】
より具体的には、
図6を参照すると、第2方向及び第3方向断面を2千倍率でスキャンした走査電子顕微鏡(SEM)イメージをEDS分析し、第2方向への長さ×第3方向への長さ=60μm×40μmである領域に対して炭素(C)元素をマッピング(mapping)した後、EDS内のプログラムによって上記領域で炭素素材が占める面積割合を測定した。
【0061】
さらに、サンプルチップを2時間にかけて700℃で熱処理して有機物を揮発させた後、第2電極層に対するラマン(Raman)分析を行った。このとき、
図7に示すように、1580cm
-1付近でGバンド(band)、1350cm
-1付近でDバンド(band)が測定された。これにより、第2電極層が炭素素材、より具体的には、グラフェンを含んでいることが確認された。
【0062】
<イオンマイグレーション(ion migration)の評価>
図8は、炭素素材の面積割合に応じたイオンマイグレーション(Ion migration)現象を撮影したイメージである。
【0063】
作製された各サンプルチップをイオンマイグレーション計測器を用いてイオンマイグレーションを評価した。試験条件は、相対湿度85%、温度85℃、10V直流電圧、及び1A直流電流とし、water drop(1000μL)加速試験法によって評価した。その後、
図8に示すように、各サンプルチップでイオンマイグレーションが発生するまでにかかる時間を測定した。
【0064】
<固着強度の評価>
図9は、炭素素材の面積割合に応じて外部電極が外部応力によって破壊される形態を撮影したイメージである。
【0065】
各サンプルチップの固着強度は、各サンプルチップを銀エポキシ(Ag epoxy)導電性接着剤(Conductive Glue)で基板に実装した状態で基板と平行な方向に力を加え、破壊された時に加えられた力を測定することで求めた。さらに、各サンプルチップの破壊形態を観察した。
【0066】
<ESR変化の評価>
図10は、炭素素材の面積割合に応じて積層セラミック電子部品の等価直列抵抗(ESR)を評価したグラフである。
【0067】
各試料に対し、LCR meterを用いて自己共振周波数でESR(等価直列抵抗,Equivalent series resistance)を測定し、
図10に示した。下記表1には、ESRの変動係数(coefficient of varation,CV)を測定して示した。
【0068】
【0069】
上記表1及び
図8を参照すると、炭素素材の面積割合が1%未満である試料番号1*及び2*の場合は、銀(Ag)金属粒子のイオンマイグレーションが2分以内に発生し、イオンマイグレーションの防止効果が低下したことが確認された。
【0070】
これに対し、試料番号3~5の場合は、イオンマイグレーションが発生するまでにかかる時間が5分以上であり、イオンマイグレーションを効果的に抑制できたことが確認された。
【0071】
上記表1及び
図9を参照すると、炭素素材の面積割合が1%未満である試料番号1*及び2*の場合、固着強度の評価時に、サンプルチップにクラックが発生したり、第1電極層又は第2電極層の破壊が生じて、第1及び第2電極層間にピール・オフ(peel-off)現象が発生することが確認された。これによって、炭素素材の面積割合が1%未満であると、上記第2電極層の耐衝撃性が低下することが分かる。
【0072】
炭素素材の面積割合が5%を超える試料番号6*の場合、焼成時に炭素素材が第2電極層内で均一に分布しておらず、炭素素材が互いにくっついて固着強度が低下することが確認された。これによって、固着強度を評価する際に、第2電極層のピール・オフ(peel-off)現象が発生することが分かる。
【0073】
特に、炭素素材が占める面積割合が10%である試料番号7*の場合、焼成時に炭素素材が互いにくっついて多量の空隙を形成したり、外部電極でブリスター(blister)などが発生して、第1電極層及び第2電極層間の固着が行われず、空隙及びブリスターが原因となって焼成による外部電極が形成されないことが確認された。
【0074】
これに対し、炭素素材が占める面積割合が1~5%である試料番号3~5の場合は、固着強度が良好で、固着強度を評価する際に、サンプルチップやサンプルチップの外部電極は破壊されずに、実装のための導電性接着剤(Glue)のみが破壊されたことが確認された。
【0075】
また、上記表1及び
図10を参照すると、炭素素材の面積割合が7%を超える試料番号6*の場合、ガラス及び炭素素材が占める体積分率が過度に高くなり、変動係数(coefficient of varation,CV)が増加することが確認された。これは、炭素分布が均一にならず、ノイズ(Noise)として作用するためである。
【0076】
したがって、上記第2電極層の少なくとも一部の断面において炭素素材が占める面積割合が積層セラミック電子部品の機械的・電気的性質に大きな影響を与え、上記範囲を満たす場合、イオンマイグレーションを効果的に抑制することができ、外部電極の固着強度及び耐衝撃性を向上させることで積層セラミック電子部品の信頼性を改善することができることが確認された。
【0077】
本発明は、上述した実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定されるものとする。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で、当該技術分野における通常の知識を有する者により様々な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属すると言える。
【符号の説明】
【0078】
100:積層セラミック電子部品
110:セラミック本体
111:誘電体層
112:第1カバー部
113:第2カバー部
121:第1内部電極
122:第2内部電極
130a:第1外部電極
130b:第2外部電極
131a、131b:第1電極層
132a、132b:第2電極層
32a:導電性金属
32b:炭素素材
32c:ガラス