(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098821
(43)【公開日】2023-07-11
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20230704BHJP
【FI】
H01G4/30 201G
H01G4/30 201F
H01G4/30 513
H01G4/30 516
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171709
(22)【出願日】2022-10-26
(31)【優先権主張番号】10-2021-0191395
(32)【優先日】2021-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョ、スン ミン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジャン イェオル
(72)【発明者】
【氏名】ジュン、ホ フィル
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AF06
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE01
5E082FF05
5E082FG26
5E082GG11
5E082GG12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】耐湿信頼性を向上させた、積層型電子部品の提供。
【解決手段】積層型電子部品は、複数の内部電極121、122及び複数の内部電極の間に配置された誘電体層111を含む本体110と、本体に配置され、複数の内部電極と接続し、電極層131、132及び電極層をカバーするめっき層141、142を含む外部電極200、300と、めっき層をカバーし、めっき層表面のうち一部を露出させる島領域を含むコーティング層151、152とを有する。コーティング層は、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化シリコン、酸化チタン、酸化ジルコニウム及び酸化スズからなる群から選択された1種以上の物質を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の内部電極及び前記複数の内部電極の間に配置された誘電体層を含む本体と、
前記本体に配置され、前記複数の内部電極と接続され、電極層及び前記電極層をカバーするめっき層を含む外部電極と、
前記めっき層をカバーし、前記めっき層表面のうち一部を露出させる島領域を含むコーティング層とを含む、積層型電子部品。
【請求項2】
前記めっき層の表面において前記コーティング層が形成された領域の割合である前記コーティング層の面積率は、0.1から10%である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記露出しためっき層表面の面積率は、90から99.9%である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記コーティング層は、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化シリコン、酸化チタン、酸化ジルコニウム及び酸化スズからなる群から選択された1種以上の物質を含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記コーティング層は、多層構造を有する、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記コーティング層は、原子層蒸着工法、分子層蒸着工法、化学気相蒸着工法、またはスパッタリング工法を用いて蒸着層を形成した後、めっき層をカバーするように形成された蒸着層の一部領域のみを選択的に除去する方法を用いて形成される、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記コーティング層の厚みは、30nmから0.2μmである、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記島領域の平均直径は、0.5から5μmである、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記島領域は、複数の島を含み、前記複数の島間の最短距離は、5から10μmである、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
前記めっき層は、Snめっき層である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項11】
前記電極層は、導電性金属及びガラスを含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項12】
前記本体のうち前記外部電極が配置されない領域上に配置される追加のコーティング層をさらに含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項13】
前記追加のコーティング層は、前記本体のうち前記外部電極が配置されない領域の全面をカバーする、請求項12に記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一つである積層型セラミックキャパシタ(Multi-layered Ceramic Capacitor、MLCC)は、 液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン及び携帯電話など、様々な電子製品のプリント回路基板に装着され、電気を充電または放電させる役割を果たすチップ型のコンデンサである。
【0003】
このような積層型セラミックキャパシタは、小型でありながらも高容量が保障され、実装が容易であるという長所により、様々な電子装置の部品として用いられることができる。最近、電子装置の部品が小型化され、積層型セラミックキャパシタの小型化及び高容量化に対する要求も増加している。
【0004】
このような流れにより、積層型セラミックキャパシタのサイズが次第に小さくなっており、小規模で高容量を実現するために同一体積における誘電体の有効体積率が高くなるにつれて、相対的に電極の厚みがさらに薄くなっている。しかし、電極の厚みが薄くなることで、従来、水分浸透による耐湿信頼性の問題が多数発生している。よって、耐湿信頼性に対する重要度が高まっているだけでなく、耐湿信頼性においてより強化された仕様が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明のいくつかの目的の一つは、積層型電子部品の耐湿信頼性を向上させることである。
【0006】
本発明のいくつかの目的の他の一つは、積層型電子部品の耐湿信頼性及び実装性をいずれも向上させることである。
【0007】
但し、本発明の目的は上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によると、複数の内部電極及び上記複数の内部電極の間に配置された誘電体層を含む本体と、上記本体に配置され、上記複数の内部電極と接続され、電極層及び上記電極層をカバーするめっき層を含む外部電極と、上記めっき層をカバーし、上記めっき層表面のうち一部を露出させる島領域を含むコーティング層とを含む積層型電子部品を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のいくつかの効果の一つは、耐湿信頼性に優れた積層型電子部品を提供することである。
【0010】
また、本発明のいくつかの効果の他の一つは、耐湿信頼性及び実装性のいずれも優れた積層型電子部品を提供することである。
【0011】
但し、本発明の多様でかつ有益な長所及び効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態による積層型電子部品を概略的に示した斜視図である。
【
図2】
図1の第1面上から見た
図1の積層型電子部品の平面図である。
【
図3】
図1のI-I'線に沿った断面図を概略的に示したものである。
【
図4】
図1のII-II'線に沿った断面図を概略的に示したものである。
【
図5】本発明の一実施形態による積層型電子部品の作製のために、誘電体層及び内部電極が積層された本体を分解して概略的に示した分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は、いくつかの他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(又は強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上の同一の符号で示される要素は同一の要素である。
【0014】
そして、図面において本発明を明確に説明するために説明と関係のない部分は省略し、図面において示された各構成の大きさ及び厚みは説明の便宜のために任意で示したため、本発明が必ずしも図示によって限定されるものではない。また、同一思想の範囲内の機能が同一である構成要素は、同一の参照符号を付与して説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というのは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0015】
図面において、X方向は第1方向または長さ方向、Y方向は第2方向または幅方向、Z方向は第3方向、厚み方向または積層方向と理解されることができるが、これに制限されるものではない。
【0016】
[積層型電子部品]
図1は、本発明の一実施形態による積層型電子部品の斜視図を概略的に示したものであり、
図2は、第1面上から見た
図1の積層型電子部品の平明図であり、
図3は、
図1のI-I'線に沿った断面図を概略的に示したものであり、
図4は、
図1のII-II'線に沿った断面図を概略的に示したものであり、
図5は、本発明の一実施形態による誘電体層及び内部電極が積層された本体を分解して概略的に示した分解斜視図である。
【0017】
以下、
図1~
図4を参照して、本発明の一実施形態による積層型電子部品について詳しく説明する。
【0018】
本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、複数の内部電極121、122及び上記複数の内部電極の間に配置された誘電体層111を含む本体110と、上記本体に配置され、上記複数の内部電極と接続され、電極層131、132及び上記電極層をカバーするめっき層141、142を含む外部電極と、上記めっき層をカバーし、上記めっき層表面のうち一部を露出させる島領域を含むコーティング層151、152とを含む。
【0019】
本体110は、複数の内部電極121、122及び上記複数の内部電極の間に配置された誘電体層111を含む。上記本体において、誘電体層111及び内部電極121、122は、交互に積層されている。
【0020】
本体110の具体的な形状に特に制限はないが、図示のように、本体110は六面体状またはこれと類似した形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粉末の収縮により、本体110は完全な直線を有する六面体状ではないが、実質的に六面体状を有することができる。
【0021】
本体110は、厚み方向(Z方向)に互いに対向する第1及び第2面1、2、上記第1及び第2面1、2と連結され、長さ方向(X方向)に互いに対向する第3及び第4面3、4、第1及び第2面1、2と連結され、第3及び第4面3、4と連結され、幅方向(Y方向)に互いに対向する第5及び第6面5、6を有することができる。
【0022】
本体110を形成する複数の誘電体層111は、焼成された状態であり、隣接する誘電体層111間の境界は、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認し難い程度に一体化されることができる。
【0023】
本発明の一実施形態によると、上記誘電体層111を形成する原料は十分な静電容量が得られる限り、特に制限されない。例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料、またはチタン酸ストロンチウム系材料などを使用することができる。上記チタン酸バリウム系材料は、BaTiO3系セラミック粉末を含むことができ、上記セラミック粉末の例示として、BaTiO3、BaTiO3にCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)などが一部固溶された(Ba1-xCax)TiO3、Ba(Ti1-yCay)O3、(Ba1-xCax)(Ti1-yZry)O3、またはBa(Ti1-yZry)O3などが挙げられる。
【0024】
上記誘電体層111を形成する材料は、チタン酸バリウム(BaTiO3)などのパウダーに本発明の目的に応じて多様なセラミック添加剤、有機溶剤、結合剤、分散剤などが添加されることができる。
【0025】
内部電極121、122は、誘電体層111と厚み方向(Z方向)に交互に配置されることができる。内部電極は、第1内部電極121及び第2内部電極122を含むことができる。第1及び第2内部電極121、122は、本体110を構成する誘電体層111を挟んで互いに対向するように交互に配置され、本体110の第3面及び第4面3、4にそれぞれ露出することができる。
【0026】
図3を参照すると、第1内部電極121は、第4面4と離隔し、第3面3を通じて露出し、第2内部電極122は、第3面3と離隔し、第4面4を通じて露出することができる。
【0027】
即ち、第1及び第2内部電極121、122は、それぞれ本体の長さ方向(X方向)の両端面である第3面3及び第4面4に交互に露出し、第1及び第2外部電極200、300にそれぞれ露出することができる。第1内部電極121は、第2外部電極300とは連結されず第1外部電極200と連結され、第2内部電極122は、第1外部電極200とは連結されず第2外部電極300と連結される。よって、第1内部電極121は、第4面4で一定距離離隔して形成され、第2内部電極122は、第3面3で一定距離離隔して形成される。
【0028】
この時、第1及び第2内部電極121、122は、中間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離することができる。
【0029】
第1及び第2内部電極121、122を形成する材料は、特に制限されず、例えばパラジウム(Pd)、パラジウム-銀(Pd-Ag)合金などの貴金属材料、ニッケル(Ni)及び銅(Cu)のうち一つ以上の物質からなる導電性ペーストを使用して形成されることができる。
【0030】
上記導電性ペーストの印刷方法は、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法などを使用することができ、本発明がこれに限定されるものではない。
【0031】
図5を参照すると、本体110は、第1内部電極121が印刷されたセラミックグリーンシートと第2内部電極122が印刷されたセラミックグリーンシートとを交互に積層した後、焼成して形成することができる。
【0032】
一方、内部電極121、122の平均厚み(te)は、特に限定する必要がない。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化のために、内部電極121、122の平均厚み(te)は、100nm~1.5μm範囲であることができる。
【0033】
内部電極121、122の平均厚み(te)は、本体110の長さ及び厚み方向(L-T)断面を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)でイメージをスキャンして測定することができる。
【0034】
例えば、本体110のY方向(幅方向)の中央部で切断したX及びZ方向(長さ及び厚み方向)断面を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)でスキャンしたイメージから抽出された任意の第1及び第2内部電極121、122に対して、長さ方向に等間隔である30個の地点でその厚みを測定して平均値を測定することができる。
【0035】
本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を挟んで互いに対向するように配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含み、容量が形成される容量形成部Aと、上記容量形成部Aの上部及び下部に形成されたカバー部112、113とを含むことができる。
【0036】
また、上記容量形成部Aは、キャパシタの容量形成に寄与する部分であり、誘電体層111を挟んで複数の第1及び第2内部電極121、122を繰り返し積層して形成されることができる。
【0037】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一誘電体層または2個以上の誘電体層を容量形成部Aの上下面にそれぞれ厚み方向に積層して形成することができ、基本的に物理的または化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割をすることができる。
【0038】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、内部電極を含まず、誘電体層111と同一の材料を含むことができる。
【0039】
すなわち、上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、セラミック材料を含むことができ、例えばチタン酸バリウム(BaTiO3)系セラミック材料を含むことができる。
【0040】
一方、カバー部112、113の厚みは、特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、カバー部112、113の厚み(tp)は20μm以下であることができる。
【0041】
また、上記容量形成部Aの側面には、マージン部114、115が配置されることができる。
【0042】
マージン部114、115は、本体110の第6面6に配置されたマージン部114と第5面5に配置されたマージン部115とを含むことができる。すなわち、マージン部114、115は、上記セラミック本体110の幅方向両側面に配置されることができる。
【0043】
マージン部114、115は、
図3に示すように、上記本体110を幅-厚み(W-T)方向に切った断面において、第1及び第2内部電極121、122の両末端と本体110の境界面間の領域を意味することができる。
【0044】
マージン部114、115は、基本的に物理的または化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割をすることができる。
【0045】
マージン部114、115は、セラミックグリーンシート上にマージン部が形成される所を除き、導電性ペーストを塗布して内部電極を形成することで形成されたものであることができる。
【0046】
また、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後に内部電極が本体の第5及び第6面5、6に露出するように切断した後、単一誘電体層または2個以上の誘電体層を容量形成部Aの両側面に幅方向に積層してマージン部114、115を形成することもできる。
【0047】
外部電極200、300は、本体110に配置され、内部電極121、122と連結される。
【0048】
図3に示す形態のように、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ配置され、第1及び第2内部電極121、122とそれぞれ連結された第1及び第2外部電極200、300を含むことができる。
【0049】
本実施形態では、積層型電子部品100が2個の外部電極200、300を有する構造を説明しているが、外部電極200、300の個数や形状などは内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変わることができる。
【0050】
一方、外部電極200、300は、金属などのように電気伝導性を有するものであれば、ある物質を用いて形成されることができ、電気的特性、構造的安定性などを考慮して具体的な物質が決められることができ、さらに多層構造を有することができる。
【0051】
例えば、外部電極200、300は、本体110に配置される電極層131、132及び電極層131、132上に形成されためっき層141、142を含むことができる。すなわち、電極層131、132は、導電性金属及びガラスを含むことができ、具体的に、導電性金属及びガラスを含む焼成(firing)電極であるか、導電性金属及び樹脂を含む樹脂系電極であることができる。
【0052】
また、電極層131、132は、本体上に焼成電極及び樹脂系電極が順次に形成された形態であることができる。また、電極層131、132は、本体上に導電性金属を含んだシートを転写する方式で形成されるか、焼成電極上に導電性金属を含んだシートを転写する方式で形成されたものであることができる。
【0053】
電極層131、132に含まれる導電性金属として電気伝導性に優れた材料を使用することができ、特に限定しない。例えば、導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)及びそれらの合金のうち一つ以上であることができる。
【0054】
めっき層141、142は、実装特性を向上させる役割をする。めっき層141、142の種類は特に限定せず、Ni、Sn、Pd及びこれらの合金のうち一つ以上を含むめっき層であることができ、複数の層で形成されることができる。
【0055】
めっき層141、142に対するより具体的な例を挙げると、めっき層141、142は、Niめっき層またはSnめっき層であることができ、特にSnめっき層であることができる。あるいは、めっき層141、142は、電極層131、132上にNiめっき層及びSnめっき層が順次に形成された形態であることができ、Snめっき層、Niめっき層及びSnめっき層が順次に形成された形態であることができる。また、めっき層141、142は、複数のNiめっき層及び/または複数のSnめっき層を含むこともできる。
【0056】
従来は、積層型セラミックキャパシタの小型化及び高容量化のための外部電極の薄層化が進行されることにより、水分浸透などによる耐湿信頼性が劣化するという問題があった。これにより、最近、電極端子の欠陥による実装性及び信頼性の劣化の問題が台頭している。すなわち、めっき前から下部外部電極が素体を完全に覆わず発生する下部外部電極の切れ及びめっき層の切れ欠陥は、緻密でない電極端子を誘発する。かかる電極端子の緻密度の低下は、外部からの水分が内部に浸透する通路を作ることができる。内部に浸透した水分は、製品の駆動中に内部電極と誘電体層の間の界面で電気化学反応を起こして内部欠陥を誘導し、これは製品の耐湿信頼性の不良につながるおそれがある。
【0057】
これにより、耐湿信頼性を強化し、水分浸透経路を防ぐための多様な試みがあった。一例として、従来は、有機物などの含浸といった方法で外部電極と素体間の界面にコーティングを施す技術が開発された。すなわち、めっき後に有機系コーティングを行い水分の経路を遮断する方法として、めっき後にPDMS及びSi有機系などの材料を外部電極とセラミック本体の間の界面にコーティングする形態があった。
【0058】
しかし、セラミック素体の表面に存在する異種の抜水性有機物は、外部接触物質との帯電現象による静電気を誘導しやすく、そのため部品の使用時に実装ずれなどの不良が発生するという問題がある。また、めっき層の最外郭に有機物が存在する場合は、実装時にはんだペーストとウェッティング(wetting)が少なく、実装リフロー(reflow)不良が発生するおそれがある。
【0059】
そこで、本発明者らは、前述した従来技術の問題点を解決しながらも、耐湿信頼性の向上と同時に、実装性も優れた積層型電子部品を提供するために鋭意研究を重ねた。その結果、実装面積を除いたチップ全体のコーティングによる密封性を強化しつつも、絶縁コーティングは有機物コーティングではなく無機物コーティングを適用して透湿制御効果を強化すると同時に、はんだ部の絶縁コーティングを除去して実装性にも問題のない積層型電子部品が提供可能なことを見出した。
【0060】
具体的に、本発明者らは、
図3に示すように、めっき層141、142をカバーするコーティング層151、152を備え、コーティング層151、152がめっき層141、142の表面のうち一部を露出させる島領域を含むように構成することで、前述した目的が達成可能なことを確認した。すなわち、本発明によると、後述する水分浸透を抑制する無機物の材料を使用して絶縁コーティングを施すことで耐湿信頼性を確保し、はんだ部では絶縁コーティングの一部を選択的に除去してコーティング層151、152が島領域を含むように制御することで、実装不良の問題を解決することができる。
【0061】
したがって、島領域を含むように形成されたコーティング層151、152は、水分浸透の抑制機能をするようにめっき層141、142の一部をカバーする。これと同時に、コーティング層151、152は島領域を含むため、めっき層141、142の表面のうち一部を露出させて実装性までも確保可能である。
【0062】
一方、特に限定するものではないが、本発明者らは追加の研究をさらに行った結果、前述したはんだ部における絶縁コーティングの選択的除去により残存するコーティング層の面積率と、露出するめっき層表面の面積率を適正範囲に制御することで、優れた耐湿信頼性と実装性の確保に寄与することを見出した。
【0063】
具体的に、本発明の一実施形態によると、上記めっき層の表面で上記コーティング層が形成された領域の割合であるコーティング層151、152の面積率は、0.1~10%であることができる。本発明者らは、特に実装性を確保するためには、はんだ部におけるコーティング層の残存面積率を制御することが重要な要素であることを見出した。すなわち、コーティング層151、152の面積率が0.1%未満の場合は、耐湿信頼性が不十分になるおそれがある。一方、コーティング層151、152の面積率が10%を超える場合は、耐湿信頼性は目的の水準に確保可能であるとしても、固着強度やはんだ付け性に問題が生じ実装性が不十分になるおそれがある。
【0064】
この時、コーティング層151、152の面積率に対する測定方法は特に限定しないが、走査電子顕微鏡(SEM)ではんだ部に含まれる外部電極200、300を観察して、めっき層141、142表面の全体面積に対する残存するコーティング層151、152の面積の割合を測定することで求めることができる。
【0065】
また、本発明の一実施形態によると、実装及びリフロー(reflow)時に滑りなどの問題を防止するために、露出しためっき層の表面面積を一定の割合で確保する必要がある。そこで、上記露出しためっき層表面の面積率を90~99.9%にすることができる。上記露出しためっき層表面の面積率が90%未満の場合は、耐湿信頼性は確保可能であるとしても、固着強度やはんだ付け性に問題が生じて実装性が不十分になるおそれがある。一方、上記露出しためっき層表面の面積率が99.9%を超える場合は、実装性は確保可能であるとしても、耐湿信頼性が不十分になるおそれがある。
【0066】
露出しためっき層表面の面積率に対する測定方法も特に限定しない。但し、一例として、コーティング層151、152の面積率の測定方法と同様に、走査電子顕微鏡(SEM)ではんだ部に含まれる外部電極200、300を観察して、めっき層141、142の全体面積に対する露出しためっき層表面の面積の割合を測定することで求めることができる。この時、めっき層表面の全体面積中に、上記コーティング層の面積を除いた面積が露出しためっき層表面の面積であることができる。
【0067】
前述したように、コーティング層151、152を、有機物材料を用いて形成すると、セラミック素体表面に存在する有機物により実装不良が発生するおそれがあるため、本発明の一実施形態による上記コーティング層は、無機物材料で形成される無機コーティング層であることができる。すなわち、既存の有機物材料を用いた含浸方式は、キャパシタ本体と外部電極の界面に浮きが発生する場合に一部の隙間は埋めることができるが、隙間が薄い場合は深くまで浸透が難しいため、外部電極に内部ポア(pore)が残留するという問題が発生し得る。よって、本発明では、コーティング層の材料として無機物材料を用いることで、透湿防止の効果を強化しながらも、はんだ(solder)とのウェッティング(wetting)問題を改善することができる。
【0068】
本発明の一実施形態によると、コーティング層151、152は、無機物材料を用いて、原子層蒸着(AtomicLayer Deposition、ALD)工法、分子層蒸着(MolecularLayer Deposition、MLD)工法、化学気相蒸着(Chimical Vapor Deposition、CVD)工法、スパッタリング(Sputtering)工法などを用いて蒸着層を形成した後、めっき層をカバーするように形成された蒸着層の一部領域のみが選択的に除去されるように、マスキングを用いたレーザーエッチング、化学的エッチング、物理的エッチング、湿式及び研磨(超音波方式を含む)方法を利用することで形成されることができる。
【0069】
一方、本発明の一実施形態によると、上記コーティング層151、152は、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化シリコン、酸化チタン、酸化ジルコニウム及び酸化スズからなる群から選択された1種以上の物質を含むことができる。
【0070】
本発明の一実施形態によると、上記コーティング層は、単層構造を有してもよく、あるいは透湿制御強化の効果を極大化するために上記コーティング層が多層構造を有するように形成されてもよい。上記コーティング層が多層構造で形成される場合は、単層構造で形成される場合に比べて同一厚みでより優れた耐湿信頼性の向上効果を得ることができる。
【0071】
一方、上記コーティング層が多層構造を有する一例として、上記コーティング層は、上記めっき層と直接接触する第1コーティング層と、上記第1コーティング層上に形成された第2コーティング層とを含むことができる。この時、上記第1コーティング層及び第2コーティング層は、前述した酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化シリコン、酸化チタン、酸化ジルコニウム及び酸化スズからなる群から選択された1種以上の物質を含むことができ、上記第2コーティング層は、上記第1コーティング層に含まれない物質を含むことができる。このように、多層構造を有するコーティング層において、各層は互いに異なる成分が1種以上含まれることにより区分されることができる。
【0072】
本発明の一実施形態によると、上記コーティング層の厚みは、30nm~0.2μmであることができる。上記コーティング層の厚みが薄過ぎる場合は、耐湿信頼性の向上効果が不充分なことがあり、上記コーティング層の厚みが厚過ぎる場合は、耐湿信頼性は向上しても厚いコーティング層による実装不良が発生するおそれがある。よって、本発明では、コーティング層の厚みを30nm~0.2μmの適正範囲に調節することができる。
【0073】
本発明の一実施形態によると、上記島の平均直径は0.5~5μmであることができる。上記島の平均直径が0.5μm未満の場合は、コーティング層で確保される耐湿信頼性の効果が不充分なことがある。一方、上記島の平均直径が5μmを超える場合は、はんだ部に存在するコーティング層の影響が大き過ぎて実装性が不充分なことがある。
【0074】
一方、上記島の平均直径は、コーティング層151、152のLW面、LT面またはWT面が観察されるように走査電子顕微鏡(SEM)で撮影して島の平均直径を測定することで求めることができる。この時、上記島の平均直径とは、各島と同一の面積を有する理想的な円を仮定した時の円相当直径に対する平均値を意味することができる。
【0075】
また、本発明の一実施形態によると、上記島領域は、複数の島を含み、上記複数の島間の最短距離は5~10μmであることができる。これは、めっき層の表面に対して残存するコーティング層を表す尺度であり、複数の島間の最短距離を適正範囲に調節することで、確保される耐湿信頼性及び実装性を調節することができる。
【0076】
上記複数の島間の最短距離の測定は、LW面、LT面及びWT面が観察されるように走査電子顕微鏡(SEM)で撮影した積層型電子部品の表面を基準として、分離した形態で観察される複数の島中に、最も隣接した2個の島間の最短距離を測定することで求めることができる。
【0077】
本発明の一実施形態によると、上記本体のうち上記外部電極が配置されない領域上に配置される追加のコーティング層153をさらに含むことができる。この時、上記追加のコーティング層153は、上記本体のうち上記外部電極が配置されない領域の全面をカバーすることができる。これは、前述したコーティング層の製造時に、無機物材料を用いて蒸着層を形成した後、めっき層をカバーするように形成された蒸着層の一部領域のみを選択的に除去し、外部電極(あるいは、めっき層)が配置されない領域は蒸着層を除去しないため、全面をカバーするように追加のコーティング層が形成されるものである。このように、外部電極が配置されない領域の全面は追加のコーティング層153がカバーするようにすることで、耐湿信頼性を確実に確保可能である。この時、上記追加のコーティング層153に対する成分及び厚みなどについては、島領域を含まない点を除いては、前述したコーティング層151、152に対する説明を同一に適用可能である。
【0078】
積層型電子部品100のサイズは、特に限定する必要はない。
【0079】
但し、小型化及び高容量化を同時に達成するためには、誘電体層及び内部電極の厚みを薄くして積層数を増加させる必要があるため、0402(長さ×幅、0.4mm×0.2mm)以下のサイズを有する積層型電子部品100において本発明による信頼性の向上効果がより顕著になることができる。
【0080】
したがって、製造誤差、外部電極の大きさなどを考慮すると、積層型電子部品100の長さが0.44mm以下で、幅が0.22mm以下の場合、本発明による信頼性の向上効果がより顕著になることができる。ここで、積層型電子部品100の長さは、積層型電子部品100の第2方向の最大大きさを意味し、積層型電子部品100の幅は、積層型電子部品100の第3方向の最大大きさを意味することができる。
【0081】
以下、実施形態を通じて本発明をより具体的に説明する。但し、下記の実施形態は例示により本発明を説明するためのものであるだけで、本発明の権利範囲を制限するためのものではないという点に留意する必要がある。本発明の権利範囲は、特許請求の範囲に記載された事項とこれから合理的に類推される事項により決められるためである。
【0082】
(実施形態)
誘電体セラミック原料を用いてセラミックペーストを形成し、これを用いてPETフィルム上にセラミックグリーンシートを形成した。このようなセラミックグリーンシート上にNi内部電極ペーストを印刷して、
図5のように交互に積層してグリーンチップを形成し、所定温度で焼成して誘電体層と内部電極を有する本体を形成した。次いで、上記本体の内部電極が露出する断面に、Cu電極を形成した後、Sn湿式めっきを実施して外部電極を形成することでキャパシタ素子を製造した。
【0083】
上記キャパシタ素子にAl2O3材料を使用して原子層蒸着工法の方法で全面にコーティング層を形成した後、Snめっき層をカバーするように形成された蒸着層部分のみを選択的に除去できるように1時間の間30Hzの強さで湿式研磨を行った。以後、めっき層表面のうち一部を露出させる島領域を含むように、コーティング層の面積率及び露出しためっき層表面の面積率を下記の表1のように制御して各試片を製造した。上記各試片に対するコーティング層の面積率及び露出しためっき層表面の面積率は、はんだ部のLW面、LT面及びWT面が観察されるように走査電子顕微鏡(SEM)で撮影して前述した方法と同様に測定した。
【0084】
以後、各試片に対する固着強度及びはんだ付け性及び耐湿信頼性を以下の方法で評価した。
【0085】
<固着強度>
固着強度の場合、solderと基板との接着力及びsolderとめっき層間の接着力を評価するための方法としてsolder ball shearの方法で測定し、下記の基準により評価した。
OK:250 Min Force(gf.)以上の場合
NG:250 Min Force(gf.)未満の場合
【0086】
<はんだ付け性>
はんだ付け性の判定は、solder bath dipping soldering検査方法を利用し、フラックス(flux)にチップを浸漬させた後、solder bathにデイッピング(dipping)し、はんだ付け後、電極部頭面に鉛で覆われているか否かで評価した。はんだ付けされているか否かは、はんだ付け後にCu露出頻度の方法で測定し、下記の基準により評価した。
OK:100ppm以下の場合
NG:100ppm超の場合
【0087】
<耐湿信頼性>
耐湿信頼性の判定を出荷信頼性85℃85%の雰囲気下で2hr後にIR(Ω)<10^4測定し、下記の基準により評価した。
OK:IR>104(Ω)
NG:IR<104(Ω)
【0088】
【0089】
上記表1の実験結果から分かるように、試片No.1は、コーティングを実施しない場合であり、耐湿信頼性が劣化していることを確認した。
【0090】
また、試片No.8は、めっき層の表面が露出しないように全面にコーティング層を形成した場合であり、固着強度の測定不可範囲として弱く、はんだ(soldering)されずはんだ付け性及び信頼性の評価が不可能な水準であることを確認した。
【0091】
一方、めっき層をカバーし、上記めっき層表面のうち一部を露出させる島領域を含むコーティング層を形成した試片No.2~7の場合、耐湿信頼性が試片No.1より改善されることを確認した。
【0092】
一方、コーティング層の面積率が0.1~10%、露出しためっき層表面の面積率が90~99.9%を満たす試片No.2~4の場合、耐湿信頼性だけでなく、固着強度及びはんだ付け性のいずれも改善されることを確認した。
【0093】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、上述の実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定される。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で、当技術分野における通常の知識を有する者によって多様な形態の置換、変形、及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属するといえる。
【符号の説明】
【0094】
100:積層型電子部品
110:本体
111:誘電体層
112:上部カバー部
113:下部カバー部
121、122:内部電極
131、132:電極層
141、142:めっき層
151、152:コーティング層
153:追加のコーティング層
200、300:外部電極