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▶ エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098822
(43)【公開日】2023-07-11
(54)【発明の名称】有機発光表示パネル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/02 20060101AFI20230704BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20230704BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20230704BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20230704BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20230704BHJP
   H10K 50/16 20230101ALI20230704BHJP
   H10K 50/15 20230101ALI20230704BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20230704BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20230704BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
H05B33/02
H05B33/14 A
H01L27/32
H05B33/12 B
H05B33/22 Z
H05B33/22 B
H05B33/22 D
H05B33/12 C
H05B33/10
G09F9/30 365
G09F9/00 338
G09F9/30 349Z
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171890
(22)【出願日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】10-2021-0191875
(32)【優先日】2021-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】501426046
【氏名又は名称】エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【弁理士】
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100209808
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 高志
(72)【発明者】
【氏名】金 剛 ▲ヒュン▼
(72)【発明者】
【氏名】金 世 振
(72)【発明者】
【氏名】林 熹 兌
【テーマコード(参考)】
3K107
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC06
3K107CC33
3K107CC45
3K107DD52
3K107DD71
3K107DD75
3K107DD78
3K107DD89
3K107DD97
3K107GG08
3K107GG24
3K107GG28
5C094AA43
5C094DA13
5C094FA02
5C094FB01
5C094GB01
5G435AA17
5G435BB05
5G435KK05
(57)【要約】
【課題】工程を簡素化して表示品質を向上させることができる有機発光表示パネルの製造方法を提供する。
【解決手段】有機発光表示パネルは、多数のサブ画素領域が定義された基板上の各サブ画素領域に配置される第1電極と、各サブ画素領域の境界部上の前記基板に配置され、側面が親水化したバンク層と、前記バンク層と前記第1電極の上側とにわたって配置され、前記バンク層の上側の表面は疎水化した第1有機物質層と、前記バンク層の間の第1有機物質層上に配置される第2有機物質層と、前記第2有機物質層及び前記第1有機物質層上にわたって配置される第3有機物質層と、前記第3有機物質層上に配置される第2電極とを含む。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数のサブ画素領域が定義された基板上の各サブ画素領域に配置される第1電極と、
各サブ画素領域の境界部上の前記基板に配置され、側面が親水化したバンク層と、
前記バンク層と前記第1電極の上側とにわたって配置され、前記バンク層の上側の表面は疎水化した第1有機物質層と、
前記バンク層の間の前記第1有機物質層上に配置される第2有機物質層と、
前記第2有機物質層及び前記第1有機物質層上にわたって配置される第3有機物質層と、
前記第3有機物質層上に配置される第2電極と、を含む、有機発光表示パネル。
【請求項2】
前記第1有機物質層は、正孔注入層及び正孔輸送層のうちの少なくとも一つを含み、
前記第2有機物質層は、発光層を含み、
前記第3有機物質層は、電子輸送層及び電子注入層のうちの少なくとも一つを含む、請求項1に記載の有機発光表示パネル。
【請求項3】
赤色、緑色、及び青色サブ画素を備えた多数のサブ画素領域が定義された基板上の各サブ画素領域に配置される第1電極と、
各サブ画素領域の境界部上の前記基板に配置され、側面が親水化したバンク層と、
前記バンク層の上面及び側面と前記第1電極の上側とにわたって配置され、前記バンク層の上側の表面は疎水化した第1有機物質層と、
前記バンク層の間の前記第1有機物質層上に配置される第2有機物質層と、
前記第2有機物質層及び前記第1有機物質層上にわたって配置される第3有機物質層と、
前記第3有機物質層上に配置される第2電極と、を含み、
前記第2有機物質層は、前記バンク層の間の前記赤色サブ画素領域及び前記緑色サブ画素領域の前記第1有機物質層上にのみ配置される第1正孔輸送層と、前記赤色サブ画素領域、前記緑色サブ画素領域、及び前記赤色サブ画素領域に配置される発光層とを含む、有機発光表示パネル。
【請求項4】
前記第1有機物質層は、正孔注入層及び第2正孔輸送層のうちの少なくとも一つを含み、
前記第3有機物質層は、電子輸送層及び電子注入層のうちの少なくとも一つを含む、請求項3に記載の有機発光表示パネル。
【請求項5】
多数のサブ画素領域が定義された基板上の各サブ画素領域に配置される第1電極と、
各サブ画素領域の境界部上の前記基板に配置され、側面が親水化したバンク層と、
前記バンク層の間の各サブ画素領域の前記第1電極上に配置される第1有機物質層と、
前記第1有機物質層と前記バンク層とにわたって配置され、前記バンク層の上側の表面は疎水化した第2有機物質層と、
前記バンク層の間の前記第2有機物質層上に配置される第3有機物質層と、
前記第3有機物質層及び前記第1有機物質層上にわたって配置される第4有機物質層と、
前記第4有機物質層上に配置される第2電極と、を含む、有機発光表示パネル。
【請求項6】
前記第1有機物質層は、第1正孔輸送層及び第1発光層を含み、
前記第2有機物質層は、第1電子輸送層、n型電荷生成層、p型電荷生成層、及び正孔注入層を含み、
前記第3有機物質層は、第2正孔輸送層及び第2発光層を含み、
前記第4有機物質層は、第2電子輸送層及び電子注入層を含む、請求項5に記載の有機発光表示パネル。
【請求項7】
赤色、緑色、及び青色サブ画素を備えた多数のサブ画素領域が定義された基板上の各サブ画素領域に配置される第1電極と、
各サブ画素領域の境界部上の前記基板に配置され、側面が親水化したバンク層と、
前記バンク層の間の各サブ画素領域の前記第1電極上に配置される第1有機物質層と、
前記第1有機物質層と前記バンク層とにわたって配置され、前記バンク層の上側の表面は疎水化した第2有機物質層と、
前記バンク層の間の前記第2有機物質層上に配置される第3有機物質層と、
前記第3有機物質層及び前記第1有機物質層上にわたって配置される第4有機物質層と、
前記第4有機物質層上に配置される第2電極と、を含み、
前記第3有機物質層は、前記バンク層の間の前記赤色サブ画素領域及び前記緑色サブ画素領域の前記第2有機物質層上にのみ配置される第1正孔輸送層と、前記赤色サブ画素領域、前記緑色サブ画素領域、及び前記赤色サブ画素領域に配置される第1発光層と、を含む、有機発光表示パネル。
【請求項8】
前記第1有機物質層は、第2正孔輸送層及び第1発光層を含み、
前記第2有機物質層は、第1電子輸送層、n型電荷生成層、p型電荷生成層、及び第3正孔輸送層を含み、
前記第4有機物質層は、第2電子輸送層及び電子注入層を含む、請求項7に記載の有機発光表示パネル。
【請求項9】
赤色、緑色、及び青色サブ画素を備えた多数のサブ画素領域が定義された基板上の各サブ画素領域に配置される第1電極と、
各サブ画素領域の境界部上の前記基板に配置され、側面が親水化したバンク層と、
前記バンク層と前記第1電極の上側とにわたって基板上に配置され、前記バンク層の上側の表面は疎水化した第1有機物質層と、
前記バンク層の間の各サブ画素領域の前記第1有機物質層上に配置される第2有機物質層と、
前記第2有機物質層及び前記第1有機物質層上にわたって配置され、前記バンク層の上側の表面は疎水化した第3有機物質層と、
前記バンク層の間の前記第3有機物質層上に配置される第4有機物質層と、
前記第4有機物質層及び前記第3有機物質層上にわたって配置される第5有機物質層と、
前記第5有機物質層上に配置される第2電極と、を含み、
前記第4有機物質層は、前記バンク層の間の前記赤色サブ画素領域及び前記緑色サブ画素領域の前記第3有機物質層上にのみ配置される第1正孔輸送層と、前記赤色サブ画素領域、前記緑色サブ画素領域、及び前記赤色サブ画素領域に配置される第1発光層と、を含む、有機発光表示パネル。
【請求項10】
前記第1有機物質層は、第2正孔輸送層を含み、
前記第2有機物質層は、第2発光層を含み、
前記第3有機物質層は、第1電子輸送層、n型電荷生成層、p型電荷生成層、及び第3正孔輸送層を含み、
前記第5有機物質層は、第2電子輸送層及び電子注入層を含む、請求項9に記載の有機発光表示パネル。
【請求項11】
多数のサブ画素領域が定義された基板上の各サブ画素領域に第1電極を形成するステップと、
前記基板上の前記各サブ画素領域の境界部にバンク層を形成するステップと、
前記バンク層の側面及び前記第1電極の上部を第1プラズマ処理して各サブ画素領域の各第1電極上の有機残膜を除去し、前記バンク層の側面を親水化させるステップと、
インクジェットプリンティング工程で各第1電極上に有機物質層を形成するステップと、を含む、有機発光表示パネルの製造方法。
【請求項12】
多数のサブ画素領域が定義された基板上の各サブ画素領域に第1電極を形成するステップと、
前記基板上の前記各サブ画素領域の境界部にバンク層を形成するステップと、
前記バンク層の側面及び前記第1電極の上部を第1プラズマ処理して各サブ画素領域の各第1電極上の有機残膜を除去し、前記バンク層の側面を親水化させるステップと、
蒸着工程で前記第1電極及び前記バンク層にわたって第1有機物質層を形成するステップと、
第2プラズマ処理して前記バンク層の上側の前記第1有機物質層の上面を疎水化させるステップと、
インクジェットプリンティング工程で各サブ画素領域の前記第1有機物質層上に第2有機物質層を形成するステップと、
蒸着工程で前記第1有機物質層と前記第2有機物質層とにわたって第3有機物質層と第2電極を形成するステップと、を含む、有機発光表示パネルの製造方法。
【請求項13】
前記第1有機物質層は、正孔注入層及び正孔輸送層のうちの少なくとも一つを含み、
前記第2有機物質層は、発光層を含み、
前記第3有機物質層は、電子輸送層及び電子注入層のうちの少なくとも一つを含む、請求項12に記載の有機発光表示パネルの製造方法。
【請求項14】
前記多数のサブ画素領域は、赤色、緑色、及び青色サブ画素領域を備え、
前記第1有機物質層は、正孔注入層及び第1正孔輸送層のうちの少なくとも一つを含み、前記第3有機物質層は、電子輸送層及び電子注入層のうちの少なくとも一つを含み、
前記第2有機物質層を形成するステップは、
前記バンク層の間の前記赤色サブ画素領域及び前記緑色サブ画素領域の前記第1有機物質層上にのみ第2正孔輸送層を形成し、
前記赤色サブ画素領域、前記緑色サブ画素領域、及び前記赤色サブ画素領域にそれぞれ発光層を形成する、請求項12に記載の有機発光表示パネルの製造方法。
【請求項15】
多数のサブ画素領域が定義された基板上の各サブ画素領域に第1電極を形成するステップと、
前記基板上の前記各サブ画素領域の境界部にバンク層を形成するステップと、
前記バンク層の側面及び前記第1電極の上部を第1プラズマ処理して各サブ画素領域の各第1電極上の有機残膜を除去し、前記バンク層の側面を親水化させるステップと、
インクジェットプリンティング工程で前記バンク層の間の各サブ画素領域の前記第1電極上に第1有機物質層を形成するステップと、
蒸着工程で前記第1有機物質層と前記バンク層とにわたって第2有機物質層を形成するステップと、
第2プラズマ処理して前記バンク層の上側の前記第2有機物質層の上面を疎水化させるステップと、
インクジェットプリンティング工程で前記バンク層の間の前記第2有機物質層上に第3有機物質層を形成するステップと、
蒸着工程で前記第3有機物質層及び前記第1有機物質層上にわたって第4有機物質層及び第2電極を形成するステップと、を含む、有機発光表示パネルの製造方法。
【請求項16】
前記第1有機物質層は、第1正孔輸送層及び第1発光層を含み、
前記第2有機物質層は、第1電子輸送層、n型電荷生成層、p型電荷生成層、及び正孔注入層を含み、
前記第3有機物質層は、第2正孔輸送層及び第2発光層を含み、
前記第4有機物質層は、第2電子輸送層及び電子注入層を含む、請求項15に記載の有機発光表示パネルの製造方法。
【請求項17】
前記多数のサブ画素領域は、赤色、緑色、及び青色サブ画素領域を備え、
前記第1有機物質層は、第1正孔輸送層及び第1発光層を含み、
前記第2有機物質層は、第1電子輸送層、n型電荷生成層、p型電荷生成層、及び第2正孔輸送層を含み、
前記第4有機物質層は、第2電子輸送層及び電子注入層を含み、
前記第3有機物質層を形成するステップは、
前記バンク層の間の前記赤色サブ画素領域及び前記緑色サブ画素領域の前記第2有機物質層上にのみ第3正孔輸送層を形成するステップと、
前記赤色サブ画素領域、前記緑色サブ画素領域、及び前記赤色サブ画素領域に第2発光層を形成するステップとを含む、請求項15に記載の有機発光表示パネルの製造方法。
【請求項18】
多数のサブ画素領域が定義された基板上の各サブ画素領域に第1電極を形成するステップと、
前記基板上の前記各サブ画素領域の境界部にバンク層を形成するステップと、
前記バンク層の側面及び前記第1電極の上部を第1プラズマ処理して各サブ画素領域の各第1電極上の有機残膜を除去し、前記バンク層の側面を親水化させるステップと、
蒸着工程で前記バンク層と前記第1電極の上側とにわたって基板上に第1有機物質層を形成するステップと、
第2プラズマ処理して前記バンク層の上側の第2有機物質層の上面を疎水化させるステップと、
インクジェット工程で前記バンク層の間の各サブ画素領域の前記第1有機物質層上に第2有機物質層を形成するステップと、
蒸着工程で前記第2有機物質層及び前記第1有機物質層上にわたって第3有機物質層を形成するステップと、
前記第2プラズマ処理して前記バンク層の上側の前記第3有機物質層の上面を疎水化させるステップと、
インクジェット工程で前記バンク層の間の第3有機物質層上に第4有機物質層を形成するステップと、
蒸着工程で前記第4有機物質層及び前記第3有機物質層上にわたって第5有機物質層及び第2電極を形成するステップと、を含む、有機発光表示パネルの製造方法。
【請求項19】
前記第1有機物質層は、第1正孔輸送層を含み、
前記第2有機物質層は、第1発光層を含み、
前記第3有機物質層は、第1電子輸送層、n型電荷生成層、p型電荷生成層、及び第2正孔輸送層を含み、
前記第4有機物質層は、第2発光層を含み、
前記第5有機物質層は、第2電子輸送層及び電子注入層を含む、請求項18に記載の有機発光表示パネルの製造方法。
【請求項20】
前記多数のサブ画素領域は、赤色、緑色、及び青色サブ画素領域を備え、
前記第1有機物質層は、第1正孔輸送層を含み、
前記第2有機物質層は、第1発光層を含み、
前記第3有機物質層は、第1電子輸送層、n型電荷生成層、p型電荷生成層、及び第2正孔輸送層を含み、
前記第4有機物質層を形成するステップは、
前記バンク層の間の前記赤色サブ画素領域及び前記緑色サブ画素領域の前記第3有機物質層上にのみ第3正孔輸送層を形成するステップと、
前記赤色サブ画素領域、前記緑色サブ画素領域、及び前記赤色サブ画素領域に第2発光層を形成するステップと、を含む、請求項18に記載の有機発光表示パネルの製造方法。
【請求項21】
前記第1プラズマ処理は、O/N/Arガスを用い、第1方向に、隣接した2個のバンク層の上面の一部及び側面と前記第1電極の上部をスキャン方式で遂行することにより、前記バンク層の上部の一部を除去して前記バンク層に段差を形成し、前記段差部及び側面を親水化させる、請求項11~20のいずれか一項に記載の有機発光表示パネルの製造方法。
【請求項22】
前記第2プラズマ処理は、スキャン方式を用い、格子状のバンク層のうち第1方向のバンク層の上部の有機物質層のみを選択的にCFまたはSFガスプラズマ処理する、請求項12~20のいずれか一項に記載の有機発光表示パネルの製造方法。
【請求項23】
前記バンク層は、疎水性感光性有機物質で形成する、請求項11~20のいずれか一項に記載の有機発光表示パネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機発光表示パネル及びその製造方法に関し、特に表示品質を向上させることができる有機発光表示パネル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光表示装置は、データライン、スキャンライン、及びデータラインとスキャンラインとの交差部に形成された多数のサブ画素を備える有機発光表示パネルと、スキャンラインにスキャン信号を供給するゲート駆動回路と、データラインにデータ電圧を供給するデータ駆動回路とを含む。
【0003】
有機発光表示パネルの各サブ画素は、有機発光ダイオード(organic light emitting diode;以下、「OLED」という)と、有機発光ダイオードを独立的に駆動する画素回路とを含む。有機発光ダイオードはアノード電極とカソード電極との間に多数の有機化合物層を備える。最近には、多数の有機化合物層をインクジェットプリンティング(inkjet printing)方式で製造している。すなわち、各サブ画素領域に発光素子の第1電極を形成する。そして、親水性を有する第1バンク物質をコーティングした後、第1バンク物質をパターニングして各サブ画素領域の境界部に第1バンクを形成する。第1バンクの上部に疎水性を有する第2バンクを形成した後、インクジェットプリンティング方式で第1電極上に多数の有機化合物層を形成する。
【0004】
しかし、上述のように第1及び第2バンクを形成するとき、第1電極上に有機残膜が存在して有機発光ダイオードの特性が低下し、有機残膜を除去するためにUVまたはプラズマ処理を遂行すれば、第2バンクの疎水性が低下して、以後のインクジェットプリンティング工程が不可能になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は工程を簡素化し、表示品質を向上させることができる有機発光表示パネル及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するための本開示の実施例による有機発光表示パネルは、多数のサブ画素領域が定義された基板上の各サブ画素領域に配置される第1電極と、各サブ画素領域の境界部上の前記基板に配置され、側面が親水化したバンク層と、前記バンク層と前記第1電極の上側とにわたって配置され、前記バンク層の上側の表面は疎水化した第1有機物質層と、前記バンク層の間の第1有機物質層上に配置される第2有機物質層と、前記第2有機物質層及び前記第1有機物質層上にわたって配置される第3有機物質層と、前記第3有機物質層上に配置される第2電極とを含み、前記第1有機物質層は、正孔注入層及び正孔輸送層のうちの少なくとも一つを含み、前記第2有機物質層は、発光層を含み、前記第3有機物質層は、電子輸送層及び電子注入層のうちの少なくとも一つを含み得る。
【0007】
ここで、パイルアップ(Pile-up)を改善するために、前記第2有機物質層は、前記バンク層の間の赤色サブ画素領域及び緑色サブ画素領域の前記第1有機物質層上にのみ配置される第1正孔輸送層と、赤色サブ画素領域、緑色サブ画素領域、及び赤色サブ画素領域に配置される発光層とを含み得る。
【0008】
前記のような目的を達成するための本開示の実施例による有機発光表示パネルは、多数のサブ画素領域が定義された基板上の各サブ画素領域に配置される第1電極と、各サブ画素領域の境界部上の前記基板に配置され、側面が親水化したバンク層と、前記バンク層の間の各サブ画素領域の前記第1電極上に配置される第1有機物質層と、前記第1有機物質層と前記バンク層とにわたって配置され、前記バンク層の上側の表面は疎水化した第2有機物質層と、前記バンク層の間の第2有機物質層上に配置される第3有機物質層と、前記第3有機物質層及び前記第1有機物質層上にわたって配置される第4有機物質層と、前記第4有機物質層上に配置される第2電極とを含み、前記第1有機物質層は、第1正孔輸送層及び第1発光層を含み、前記第2有機物質層は、第1電子輸送層、n型電荷生成層、p型電荷生成層、及び正孔注入層を含み、前記第3有機物質層は、第2正孔輸送層及び第2発光層を含み、前記第4有機物質層は、第2電子輸送層及び電子注入層を含み得る。
【0009】
パイルアップ(Pile-up)を改善するために、本開示の実施例による有機発光表示パネルは、赤色、緑色、及び青色サブ画素を備えた多数のサブ画素領域が定義された基板上の各サブ画素領域に配置される第1電極と、各サブ画素領域の境界部上の前記基板に配置され、側面が親水化したバンク層と、前記バンク層の間の各サブ画素領域の前記第1電極上に配置される第1有機物質層と、前記第1有機物質層と前記バンク層とにわたって配置され、前記バンク層の上側の表面は疎水化した第2有機物質層と、前記バンク層の間の第2有機物質層上に配置される第3有機物質層と、前記第3有機物質層及び前記第1有機物質層上にわたって配置される第4有機物質層と、前記第4有機物質層上に配置される第2電極とを含み、前記第3有機物質層は、前記バンク層の間の前記赤色サブ画素領域及び前記緑色サブ画素領域の前記第2有機物質層上にのみ配置される第1正孔輸送層と、前記赤色サブ画素領域、前記緑色サブ画素領域、及び前記赤色サブ画素領域に配置される第1発光層とを含み得る。
【0010】
前記のような目的を達成するための本開示の実施例による有機発光表示パネルは、赤色、緑色、及び青色サブ画素を備えた多数のサブ画素領域が定義された基板上の各サブ画素領域に配置される第1電極と、各サブ画素領域の境界部上の前記基板に配置され、側面が親水化したバンク層と、前記バンク層と前記第1電極の上側とにわたって基板上に配置され、前記バンク層の上側の表面は疎水化した第1有機物質層と、前記バンク層の間の各サブ画素領域の前記第1有機物質層状に配置される第2有機物質層と、前記第2有機物質層及び前記第1有機物質層上にわたって配置され、前記バンク層の上側の表面は疎水化した第3有機物質層と、前記バンク層の間の第3有機物質層上に配置される第4有機物質層と、前記第4有機物質層及び前記第3有機物質層上にわたって配置される第5有機物質層と、前記第5有機物質層上に配置される第2電極とを含み、前記第4有機物質層は、前記バンク層の間の前記赤色サブ画素領域及び前記緑色サブ画素領域の前記第3有機物質層上にのみ配置される第1正孔輸送層と、前記赤色サブ画素領域、前記緑色サブ画素領域、及び前記赤色サブ画素領域に配置される第1発光層とを含み得る。
【0011】
また、前記のような目的を達成するための本開示の実施例による有機発光表示パネルの製造方法は、多数のサブ画素領域が定義された基板上の各サブ画素領域に第1電極を形成するステップと、前記基板上の前記各サブ画素領域の境界部にバンク層を形成するステップと、前記バンク層の側面及び前記第1電極の上部を第1プラズマ処理して各サブ画素領域の各第1電極上の有機残膜を除去し、前記バンク層の側面を親水化させるステップと、蒸着工程で前記第1電極及び前記バンク層にわたって第1有機物質層を形成するステップと、第2プラズマ処理して前記バンク層の上側の前記第1有機物質層の上面を疎水化させるステップと、インクジェットプリンティング工程で各サブ画素領域の前記第1有機物質層上に第2有機物質層を形成するステップと、蒸着工程で前記第1有機物質層と前記第2有機物質層とにわたって第3有機物質層と第2電極を形成するステップとを含み、前記第1有機物質層は、正孔注入層及び正孔輸送層のうちの少なくとも一つを含み、前記第2有機物質層は、発光層を含み、前記第3有機物質層は、電子輸送層及び電子注入層のうちの少なくとも一つを含み得る。
【0012】
ここで、パイルアップ(Pile-up)を改善するために、前記第2有機物質層を形成するステップは、前記バンク層の間の赤色サブ画素領域及び緑色サブ画素領域の前記第1有機物質層上にのみ第2正孔輸送層を形成し、前記赤色サブ画素領域、前記緑色サブ画素領域、及び前記赤色サブ画素領域にそれぞれ発光層を形成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示による有機発光表示パネルの製造方法によれば以下の効果を奏することが可能である。
【0014】
第1に、バンク構造を単層にして工程を簡素化しながら第1電極上の有機残膜を除去することができる。
【0015】
第2に、蒸着及びインクジェットプリンティング工程を並行して発光素子を構成することができるので、各発光層の材料を多様に選択することができる。
【0016】
第3に、蒸着及びインクジェットプリンティング工程を多数回繰り返して発光層を多重スタックに構成することができるので、発光素子の発光特性を向上させることができる。
【0017】
第4に、本発明はインクジェットプリングティング工程及び蒸着工程を並行して発光素子を製造するので、パイルアップ(Pile-up)を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明による有機発光表示パネルのサブ画素の平面図である。
図2】本発明の第1実施例による単一スタック構造を有する有機発光素子と各層別工程を示す構造図である。
図3】本発明の第1実施例による有機発光表示パネルの構造を示す断面図である。
図4a】本発明の第1実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図4b】本発明の第1実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図4c】本発明の第1実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図4d】本発明の第1実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図4e】本発明の第1実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図4f】本発明の第1実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図4g】本発明の第1実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図5a】本発明の第1実施例による図1のII-II’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図5b】本発明の第1実施例による図1のII-II’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図6】本発明の実施例によるバンク層の上側に疎水化プラズマ処理方法を説明するための平面図及び断面図である。
図7】本発明の実施例によって疎水化プラズマ処理を遂行するときの有機物質層表面の化学構造の計略的な説明図である。
図8】本発明の第2実施例による単一スタック構造を有する発光素子においてパイルアップ影響を排除することができる各層別工程を示す構造図である。
図9】本発明の第2実施例による有機発光表示パネルの構造を示す断面図である。
図10a】本発明の第2実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図10b】本発明の第2実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図10c】本発明の第2実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図10d】本発明の第2実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図10e】本発明の第2実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図10f】本発明の第2実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図10g】本発明の第2実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図10h】本発明の第2実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図10i】本発明の第2実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図11】本発明の第3実施例による多重スタック構造を有する発光素子と各層別工程を示す構造図である。
図12】本発明の第3実施例による有機発光表示パネルの構造を示す断面図である。
図13a】本発明の第3実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図13b】本発明の第3実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図13c】本発明の第3実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図13d】本発明の第3実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図13e】本発明の第3実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図13f】本発明の第3実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図13g】本発明の第3実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図13h】本発明の第3実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図13i】本発明の第3実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図14】本発明の第4実施例による多重スタック構造を有する発光素子と各層別工程を示す構造図である。
図15】本発明の第4実施例による有機発光表示パネルの構造を示す断面図である。
図16a】本発明の第4実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図16b】本発明の第4実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図16c】本発明の第4実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図16d】本発明の第4実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図16e】本発明の第4実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図16f】本発明の第4実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図16g】本発明の第4実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図16h】本発明の第4実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図16i】本発明の第4実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図16j】本発明の第4実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図16k】本発明の第4実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図17】本発明の第5実施例による多重スタック構造を有する発光素子と各層別工程を示す構造図である。
図18】本発明の第5実施例による有機発光表示パネルの構造を示す断面図である。
図19a】本発明の第5実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図19b】本発明の第5実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図19c】本発明の第5実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図19d】本発明の第5実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図19e】本発明の第5実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図19f】本発明の第5実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図19g】本発明の第5実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図19h】本発明の第5実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図19i】本発明の第5実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図19j】本発明の第5実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図19k】本発明の第5実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図19l】本発明の第5実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
図19m】本発明の第5実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、上述のような特徴を有する本発明の好適な実施例による有機発光表示パネルを添付図面に基づいてより詳細に説明する。明細書全般にわたって同じ参照番号は実質的に同じ構成要素を意味する。
【0020】
図1は本発明による有機発光表示パネルのサブピクセルの平面図である。
【0021】
図1に示すように、本発明の実施例による有機発光表示パネルは、多数のサブ画素領域Pと、各サブ画素領域Pに配置された第1電極11と、各サブ画素領域Pを取り囲んで格子状のバンク層20とを含む。多数のサブ画素は、赤色(Red)を発光する有機発光素子(OLED)を備えた赤色サブ画素と、緑色(Green)を発光する有機発光素子(OLED)を備えた緑色サブ画素と、青色(Blue)を発光する有機発光素子(OLED)を備えた青色サブ画素とを含む。
【0022】
本発明の第1実施例による有機発光表示パネルの構造及び製造方法を説明すれば次のようである。
【0023】
図2は本発明の第1実施例による単一スタック構造を有する有機発光素子と各層別工程を示す構造図である。
【0024】
本発明の第1実施例による発光素子は、図2に示すように、第1電極(Anode)ITOと第2電極(Cathode)Metalとの間に、正孔注入層(Hole Injection layer)HIL、正孔輸送層(Hole transport layer)HTL、発光層(Emission layer)EML、電子輸送層(Electron transport layer)ETL、及び電子注入層(Electron Injection layer)EILが順に積層された単一スタック構造を有する。ここで、正孔注入層が形成されなくてもよい。
【0025】
ここで、正孔注入層HIL及び正孔輸送層HTLは蒸着工程によって形成され、発光層EMLはインクジェットプリンティング工程(Soluble工程)によって形成され、電子輸送層ETL、電子注入層EIL、及び第2電極は蒸着工程によって形成され得る。
【0026】
図3は本発明の第1実施例による有機発光表示パネルの構造を示す断面図である。
【0027】
本発明の第1実施例による有機発光表示パネルは、図3に示すように、基板80上の多数のサブ画素領域Pに薄膜トランジスタ70及び有機発光素子を含む。
【0028】
基板80は絶縁物質からなり得る。例えば、基板80は、ガラス、ポリイミド(PI)などのようなプラスチック物質から構成され得る。
【0029】
基板80上にバッファー層81が配置される。バッファー層81は、無機物である窒化シリコン(SiNx)または酸化シリコン(SiOx)の単一層または窒化シリコン(SiNx)及び酸化シリコン(SiOx)の多重層からなり得る。ただ、バッファー層81は必須な構成要素ではなく、基板80の種類及び物質、薄膜トランジスタ70の構造及びタイプなどによって省略されてもよい。
【0030】
バッファー層81上に薄膜トランジスタ70が配置される。薄膜トランジスタ70は、アクティブ層71、ゲート電極72、ソース電極73、及びドレイン電極74を含む。
【0031】
薄膜トランジスタ70のアクティブ層71がバッファー層81上に配置され、アクティブ層71及びバッファー層81上にゲート絶縁層82が配置される。
【0032】
アクティブ層71は、非晶質シリコン(amorphous silicon、a-Si)、多結晶シリコン(polycrystalline silicon、poly-Si)、酸化物(oxide)半導体または有機物(organic)半導体などから形成され得る。
【0033】
ゲート絶縁層62は、無機物である窒化シリコン(SiNx)または酸化シリコン(SiOx)の単一層または窒化シリコン(SiNx)及び酸化シリコン(SiOx)の多重層からなり得るが、これに限定されるものではない。
【0034】
ゲート絶縁層82にはソース電極73及びドレイン電極74のそれぞれがアクティブ層71とコンタクトするためのコンタクトホールが形成される。
【0035】
ゲート電極72はアクティブ層71と重畳するようにゲート絶縁層82上に配置される。ゲート電極72は、導電性金属、例えば、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)など、またはこれらの合金からなり得るが、これに限定されるものではない。
【0036】
ゲート電極72上に層間絶縁層83が配置される。層間絶縁層83は、無機物である窒化シリコン(SiNx)または酸化シリコン(SiOx)の単一層または窒化シリコン(SiNx)及び酸化シリコン(SiOx)の多重層からなり得るが、これに限定されるものではない。層間絶縁層83にはソース電極73及びドレイン電極74をアクティブ層71とコンタクトするためのコンタクトホールが形成され得る。
【0037】
層間絶縁層83上にはソース電極73及びドレイン電極74が配置される。ソース電極73及びドレイン電極74は導電性金属、例えば銅(Cu)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)など、またはこれらの合金から構成され得るが、これに限定されるものではない。ソース電極73及びドレイン電極74のそれぞれはコンタクトホールを介してアクティブ層71に電気的に連結され得る。
【0038】
薄膜トランジスタ70上にパッシベーション層84が配置されることができる。パッシベーション層84は、無機物である窒化シリコン(SiNx)または酸化シリコン(SiOx)の単一層または窒化シリコン(SiNx)及び酸化シリコン(SiOx)の多重層からなり得るが、これに限定されるものではない。
【0039】
パッシベーション層84には発光素子(OLED)の第1電極11が薄膜トランジスタ70と連結されるためのコンタクトホールが形成され得る。パッシベーション層64は必ずしも必要な構成要素ではなく、有機発光表示パネルの設計によって省略されてもよい。
【0040】
パッシベーション層84上には平坦化層85が配置される。平坦化層85は有機物からなることができ、平坦化層85には薄膜トランジスタ70のドレイン電極74を露出させるためのコンタクトホールが形成され得る。
【0041】
平坦化層85上の各サブ画素領域に第1電極11が配置され、第1電極11の縁部と重畳するように各サブ画素領域Pの境界部上の基板10にバンク層20が配置される。
【0042】
垂直方向(第1方向)のバンク層20の上面縁部及び側面は親水化し、各サブ画素領域に隣接した水平方向(第2方向)のバンク層20の上面及び側面も親水化することができる。
【0043】
バンク層20の上面及び側面と第1電極11の上側とにわたって第1有機物質層51が形成され、バンク層20の上部の第1有機物質層51は選択的に疎水化する。
バンク層20の間の第1有機物質層51上に第2有機物質層53a~53cが配置され、第2有機物質層53a~53c及びバンク層20の上側の第1有機物質層51上に第3有機物質層54が配置される。そして、第3有機物質層54上に第2電極60が配置される。
【0044】
ここで、第1有機物質層は正孔注入層HIL及び正孔輸送層HTLを含むことができ、第2有機物質層は発光層EMLを含むことができ、第3有機物質層は電子輸送層ETL及び電子注入層EILを含み得る。
【0045】
図3のような構造を有する本発明の第1実施例による有機発光表示パネルの製造方法を説明すれば次のようである。
【0046】
図4a~図4gは本発明の第1実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図であり、図5a~図5bは本発明の第1実施例による図1のII-II’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
【0047】
図4a~図4g及び図5a及び図5bでは、図3の構造断面図の薄膜トランジスタ70の製造工程を説明せず、発光素子の工程のみを示した。よって、図4a~図4g及び図5a及び図5bに示した基板10は、図3に示した基板80、薄膜トランジスタ70、及び平坦化層85までを全部含むものである。
【0048】
図4a及び図5aに示すように、多数のサブ画素領域Pを含む基板10上の各サブ画素領域Pに多数の第1電極11を形成する。第1電極11が形成された基板10上に疎水性(hydrophobic)有機絶縁物質をコーティングし、選択的に除去することにより、第1電極11の縁部と重畳するように各サブ画素領域の境界部に格子状のバンク層20を形成する。バンク層20を形成するために疎水性有機絶縁物質を選択的に除去するとき、第1電極11の表面には有機残膜20aが存在することができる。
【0049】
図4b及び図5bに示すように、垂直方向のバンク層20の上部縁部及び側面と、水平方向の一部のバンク層20の上面及び側面と、第1電極11の表面とを選択的にプラズマプリンティング(Plasma Printing)処理することにより、第1電極11の表面に残っている有機残膜20aを除去するとともにバンク層20の上面の一部、上面縁部及び側面を親水化(hydrophilization)させる。より具体的に説明すれば次のようである。
【0050】
プラズマプリンティング処理は、O/N/Arガスを用い、スキャン方式を用いて選択的にプラズマプリンティングを遂行する。すなわち、図1で、プラズマプリンティング方向を「30」で表示した。格子状のバンク層20のうち隣接した2個の垂直方向のバンク層20の上面縁部と重畳するように垂直方向のサブ画素に沿ってスキャン方式でプラズマプリンティングを遂行する。
【0051】
したがって、隣接した2個の垂直方向のバンク層20の上面縁部が所定の深さに除去されて段差が形成され、図5bに示すように、格子状のバンク層20のうちサブ画素領域に隣接した水平方向のバンク層20の上面も所定の深さに除去される。そして、垂直方向のバンク層20の段差が形成された部分と垂直方向のバンク層20の側面と水平方向のバンク層20の上面及び側面とが親水化する。
【0052】
図4cに示すように、第1電極11及びバンク層20を含む基板10の全面に蒸着工程で第1有機物質層51を形成する。第1有機物質層51は、図2に示した正孔注入層HIL及び正孔輸送層HTLを含み得る。もちろん、正孔注入層が形成されなくてもよい。
【0053】
したがって、図4cでは第1有機物質層51が単一層として示されているが、これに限定されず、第1有機物質層51は正孔注入層HIL及び正孔輸送層HTLを含む多層から構成されてもよい。
【0054】
図4dに示すように、バンク層20の上側の第1有機物質層51の表面をCFまたはSFガスプラズマ処理することにより、バンク層20の上側の第1有機物質層51の表面を疎水化(hydrophobic)させる。より具体的に説明すれば次のようである。
【0055】
図6は本発明の実施例によるバンク層の上側の疎水化プラズマ処理方法を説明するための平面図及び断面図であり、図7は本発明の実施例によって疎水化プラズマ処理するとき、有機物質層の表面の化学構造の計略的な説明図である。
【0056】
図6に示すように、スキャン方式を用いて格子状のバンク層20のうち垂直方向(第1方向)のバンク層20の上部の第1有機物質層51にのみ選択的にCFまたはSFガスプラズマ処理を遂行する。
【0057】
図7に示すように、CFまたはSFガスプラズマ処理の前には、第1有機物質層51の表面は炭素(C)に末端基(X)が結合される化学構造を有する。図6で説明したように、スキャン方式を用いてバンク層20の上部の第1有機物質層51にのみ選択的にCFまたはSFガスプラズマ処理を遂行すれば、CFまたはSFガスプラズマ処理された第1有機物質層51の表面は末端基(X)がホウ素(Fluorine)に置換されて炭素(C)に結合される化学構造を有する。
【0058】
したがって、バンク層20の上部の第1有機物質層51の表面にのみ選択的にCFまたはSFガスプラズマ処理を遂行すれば、バンク層20の上部の第1有機物質層51の表面は疎水化する。
【0059】
図4eに示すように、バンク層20の上側の第1有機物質層51を疎水化させた後、各サブ画素領域Pの第1有機物質層51上にそれぞれ第2有機物質溶液52a~52cを滴下(ドロッピング)する。
【0060】
ここで、第2有機物質溶液52a~52cの拡散性は、第2有機物質溶液52a~52cの表面張力、滴下された第2有機物質溶液52a~52cと接触する各サブ画素領域Pに配置された第1電極11の表面エネルギー及び各サブ画素領域Pの境界部に配置されたバンク層20の表面エネルギーによって決定される。
【0061】
すなわち、第2有機物質溶液52a~52cの表面張力が小さいほど第2有機物質溶液52a~52cの拡散性がよくなり、滴下された第2有機物質溶液52a~52cと接触する面の表面エネルギーが大きくなるほど拡散性がよくなる。
【0062】
一方、表面張力の小さい第2有機物質溶液52a~52cは乾燥過程で不均一に乾燥して第2有機物質溶液52a~52cを構成する各層の厚さ均一性(uniformity)を低下させることができる。したがって、表面張力が比較的大きい第2有機物質溶液52a~52cを使うことができる。また、滴下された第2有機物質溶液52a~52cは、第1電極11の上面だけでなくバンク層20の上面にも存在することができる。
【0063】
本発明の第1実施例による有機発光表示パネルでは、垂直方向のバンク層20の上側の第1有機物質層51の上面は疎水性を有し、垂直方向のバンク層20の上側の第1有機物質層51の表面エネルギーが減少する。したがって、各サブ画素領域Pに滴下された第2有機物質溶液52a~52cは水平方向に隣接した各サブ画素領域Pに滴下された第2有機物質溶液52a~52cと互いに混合されることを防止することができる。
【0064】
ここで、水平方向のバンク層20の上側の第1有機物質層51は疎水化しなかったので、垂直方向に隣接した各サブ画素領域には同じ第2有機物質溶液52a~52cが滴下されることができる。
【0065】
図4fに示すように、滴下された第2有機物質溶液52a~52cを乾燥させる工程を遂行して第2有機物質溶液52a~52cの溶媒を蒸発させ、第2有機物質溶液52a~52cの溶質のみを第1有機物質層51上に残すことにより、第1有機物質層51上に第2有機物質層53a~53cを形成する。
【0066】
第2有機物質層53a~53cは図2に示した発光層EMLを含み得る。例えば、各サブ画素領域Pの第1有機物質層51上に第2有機物質溶液52a~52cとして、赤色発光物質溶液52a、緑色発光物質溶液52b、及び青色発光物質溶液52cを滴下して乾燥することにより、赤色発光層53a、緑色発光層53b、及び青色発光層53cを形成することができる。
【0067】
図4gに示すように、第2有機物質層53a~53cが形成された基板10上に蒸着工程で第3有機物質層54を形成する。第3有機物質層54は、図2に示した電子輸送層ETL及び電子注入層EILを含み得る。よって、図5gでは第3有機物質層54が単一層として示されたが、これに限定されず、第3有機物質層54は多層からなり得る。そして、第3有機物質層54が形成された基板10上に蒸着工程で第2電極60を形成する。
【0068】
一方、図2で説明したような単一スタック構造の発光素子においても、赤色、緑色、及び青色サブ画素別にキャビティ(Cavity)の差によって、サブ画素別に正孔注入層の厚さと正孔輸送層の厚さとの間に差があり得る。
【0069】
また、インクジェットプリンティング工程のようなソリュブル(Soluble)溶液工程の場合、厚さ増加の際にパイルアップ(Pile-up)領域が拡張する可能性があり、特に相対的に厚さが大きい赤色サブ画素に対するパイルアップ(Pile-up)リスク(Risk)影響が大きい。したがって、インクジェットプリンティング工程と蒸着工程とを並行してパイルアップ影響を排除することができる。
【0070】
パイルアップ影響を排除することができる本発明の第2実施例による有機発光表示パネル及びその製造方法を説明すれば次のようである。
【0071】
図8は本発明の第2実施例による単一スタック構造を有する発光素子においてパイルアップ影響を排除することができる各層別の工程を示す構造図である。
本発明の第2実施例による発光素子は、図8に示すように、第1電極(Anode)ITOと第2電極(Cathode)Metalとの間に正孔注入層(Hole Injection layer)HIL、第1正孔輸送層HTL1、第2正孔輸送層HTL2、発光層(Emission layer)EML、電子輸送層(Electron transport layer、ETL)、及び電子注入層(Electron Injection layer、EIL)が順に積層された単一スタック構造を有する。ここで、正孔注入層が形成されなくてもよい。
【0072】
ここで、正孔注入層HIL及び第1正孔輸送層HTL1は蒸着工程によって形成され、第2正孔輸送層HTL2及び発光層EMLはインクジェットプリンティング工程(Soluble工程)によって形成され、電子輸送層ETL、電子注入層EIL及び第2電極は蒸着工程によって形成され得る。
【0073】
単一スタック構造を有する発光素子において、パイルアップ影響を排除することができる本発明の第2実施例の有機発光表示パネルの構造は次のようである。
【0074】
図9は本発明の第2実施例による有機発光表示パネルの構造を示す断面図である。本発明の第2実施例による有機発光表示パネルは、図9に示すように、基板80上の赤色、緑色、及び青色サブ画素領域R、G、Bにそれぞれ薄膜トランジスタ70及び有機発光素子を含む。
【0075】
基板80は絶縁物質からなり得る。例えば、基板80は、ガラス、ポリイミド(PI)などのようなプラスチック物質からなり得る。
【0076】
基板80上にバッファー層81が配置される。バッファー層81は、無機物である窒化シリコン(SiNx)または酸化シリコン(SiOx)の単一層または窒化シリコン(SiNx)及び酸化シリコン(SiOx)の多重層からなり得る。ただ、バッファー層81は必須な構成要素ではなく、基板80の種類及び物質、薄膜トランジスタ70の構造及びタイプなどによって省略されることもできる。
【0077】
バッファー層81上に薄膜トランジスタ70が配置される。薄膜トランジスタ70は、アクティブ層71、ゲート電極72、ソース電極73、及びドレイン電極74を含む。
【0078】
薄膜トランジスタ70のアクティブ層71がバッファー層81上に配置され、アクティブ層71及びバッファー層81上にゲート絶縁層82が配置される。
【0079】
アクティブ層71は、非晶質シリコン(amorphous silicon、a-Si)、多結晶シリコン(polycrystalline silicon、poly-Si)、酸化物(oxide)半導体または有機物(organic)半導体などから形成されることができる。
【0080】
ゲート絶縁層62は、無機物である窒化シリコン(SiNx)または酸化シリコン(SiOx)の単一層または窒化シリコン(SiNx)及び酸化シリコン(SiOx)の多重層からなり得るが、これに限定されるものではない。ゲート絶縁層82にはソース電極73及びドレイン電極74のそれぞれがアクティブ層71とコンタクトするためのコンタクトホールが形成される。
【0081】
ゲート電極72はアクティブ層71と重畳するようにゲート絶縁層82上に配置される。ゲート電極72は、導電性金属、例えば銅(Cu)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)など、またはこれらの合金からなり得るが、これに限定されるものではない。
【0082】
ゲート電極72上に層間絶縁層83が配置される。層間絶縁層83は、無機物である窒化シリコン(SiNx)または酸化シリコン(SiOx)の単一層または窒化シリコン(SiNx)及び酸化シリコン(SiOx)の多重層からなり得るが、これに限定されるものではない。層間絶縁層83にはソース電極73及びドレイン電極74をアクティブ層71とコンタクトするためのコンタクトホールが形成され得る。
【0083】
層間絶縁層83上にはソース電極73及びドレイン電極74が配置される。ソース電極73及びドレイン電極74は、導電性金属、例えば銅(Cu)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)など、またはこれらの合金からなり得るが、これに限定されるものではない。ソース電極73及びドレイン電極74のそれぞれはコンタクトホールを介してアクティブ層71に電気的に連結されることができる。
【0084】
薄膜トランジスタ70上にパッシベーション層84が配置されることができる。パッシベーション層84は、無機物である窒化シリコン(SiNx)または酸化シリコン(SiOx)の単一層または窒化シリコン(SiNx)及び酸化シリコン(SiOx)の多重層からなり得るが、これに限定されるものではない。
【0085】
パッシベーション層84には発光素子(OLED)の第1電極11が薄膜トランジスタ70と連結されるためのコンタクトホールが形成され得る。パッシベーション層64は必ずしも必要な構成要素ではなく、有機発光表示パネルの設計によって省略されてもよい。
【0086】
パッシベーション層84上には平坦化層85が配置される。平坦化層85は有機物からなることができ、平坦化層85には薄膜トランジスタ70のドレイン電極74を露出させるためのコンタクトホールが形成されることができる。
【0087】
平坦化層85上の赤色、緑色、及び青色サブ画素R、G、Bを含む多数のサブ画素領域Pが定義された基板10上の各サブ画素領域に第1電極11が配置され、第1電極11の縁部と重畳するように各サブ画素領域Pの境界部上の基板10にバンク層20が配置される。
【0088】
垂直方向(第1方向)のバンク層20の上面縁部及び側面は親水化し、各サブ画素領域に隣接した水平方向(第2方向)のバンク層20の上面及び側面も親水化することができる。バンク層20の上面及び側面と第1電極11の上側とにわたって第1有機物質層91が形成され、バンク層20の上部の第1有機物質層91は選択的に疎水化する。
【0089】
バンク層20を除いた赤色サブ画素領域R及び緑色サブ画素領域Gの第1有機物質層91上には第2正孔輸送層93a、93b及び発光層95a、95bが積層されて配置され、赤色サブ画素領域Bの第1有機物質層91上には発光層95cのみが配置される。
【0090】
発光層95a~95c及びバンク層20の上側の第1有機物質層91上に第3有機物質層96が配置され、第3有機物質層96上に第2電極60が配置される。ここで、第1有機物質層は正孔注入層HIL及び第1正孔輸送層HTL1を含むことができ、第3有機物質層は電子輸送層ETL及び電子注入層EILを含み得る。
【0091】
図9のような構造を有する本発明の第2実施例による有機発光表示パネルの製造方法を説明すれば次のようである。
図10a~図10hは本発明の第2実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。図10a~図10iでは、図9の構造断面図の薄膜トランジスタ70の製造工程を説明せずに発光素子の工程のみを示した。よって、図10a~図10iに示した基板10は、図9に示した基板80、薄膜トランジスタ70及び平坦化層85までを全部含むものである。
【0092】
図10aに示すように、多数のサブ画素領域Pを含む基板10上の各サブ画素領域Pに多数の第1電極11を形成する。そして、第1電極11が形成された基板10上に絶縁物質を蒸着して選択的に除去することにより、各サブ画素領域の境界部に格子状のバンク層20を形成する。バンク層20は有機物質で形成するか無機物質で形成することができる。ここで、バンク層20を形成するために疎水性有機絶縁物質を選択的に除去するとき、第1電極11の表面には有機残膜20aが存在することができる。バンク層20を形成するために疎水性有機絶縁物質を選択的に除去するとき、第1電極11の表面には有機残膜20aが存在することができる。
【0093】
図10b及び図5bに示すように、垂直方向のバンク層20の上部の縁部及び側面と、水平方向の一部のバンク層20の上面及び側面と、第1電極11の表面とを選択的にプラズマプリンティング(Plasma Printing)処理することにより、第1電極11の表面に残っている有機残膜20aを除去するとともにバンク層20の上面の一部、上面縁部及び側面を親水化(hydrophilization)させる。より具体的に説明すれば次のようである。
【0094】
プラズマプリンティング処理は、O/N/Arガスを用い、スキャン方式を用いて選択的にプラズマプリンティングする。すなわち、図1で、プラズマプリンティング方向を「30」で表示した。
【0095】
格子状のバンク層20のうち隣接した2個の垂直方向のバンク層20の上面縁部と重畳するように垂直方向のサブ画素に沿ってスキャン方式でプラズマプリンティングを遂行する。
【0096】
したがって、隣接した2個の垂直方向のバンク層20の上面縁部が所定の深さに除去されて段差が形成され、図5bに示すように、格子状のバンク層20のうちサブ画素領域に隣接した水平方向のバンク層20の上面も所定の深さに除去される。そして、垂直方向のバンク層20の段差が形成された部分と垂直方向のバンク層20の側面と水平方向のバンク層20の上面及び側面とが親水化する。
【0097】
図10cに示すように、第1電極11及びバンク層20を含む基板10の全面に蒸着工程で第1有機物質層91を形成する。第1有機物質層91は、図8に示した正孔注入層HIL及び第1正孔輸送層HTL1を含み得る。もちろん、正孔注入層が形成されなくてもよい。したがって、図10cでは第1有機物質層91が単一層として示されたが、これに限定されず、第1有機物質層91は正孔注入層HIL及び第1正孔輸送層HTL1を含む多層からなり得る。
【0098】
図10dに示すように、バンク層20の上側の第1有機物質層51の表面をCFまたはSFガスプラズマ処理することにより、バンク層20の上側の第1有機物質層91の表面を疎水化(hydrophobic)させる。
【0099】
ここで、第1有機物質層91が正孔注入層HIL及び第1正孔輸送層HTL1を含む場合、バンク層20の上側の第1正孔輸送層HTL1の表面をCFまたはSFガスプラズマ処理することにより、第1正孔輸送層HTL1の表面を疎水化(hydrophobic)させる。具体的な説明は図6及び図7で説明したので、省略する。
【0100】
図10eに示すように、各サブ画素領域Pを、赤色サブ画素領域R、緑色サブ画素領域G、及び青色サブ画素領域Bと仮定すれば、赤色サブ画素領域R及び緑色サブ画素領域Gの第1有機物質層91上に第2正孔輸送物質溶液92a、92bを滴下し、青色サブ画素領域Bには第2正孔輸送物質溶液を滴下しない。
【0101】
図10fに示すように、滴下された第2正孔輸送物質溶液92a、92bを乾燥させる工程を遂行する。すなわち、第2正孔輸送物質溶液92a、92bの溶媒を蒸発させ、第2正孔輸送物質溶液92a、92bの溶質のみが第1有機物質層91上に残るようにする。したがって、赤色サブ画素領域R及び緑色サブ画素領域Gの第1有機物質層91上に第2正孔輸送層93a、93bを形成する。青色サブ画素領域Bには第2正孔輸送層が形成されない。
【0102】
図10gに示すように、赤色サブ画素領域R、緑色サブ画素領域G、及び青色サブ画素領域Bのそれぞれに赤色発光物質溶液94a、緑色発光物質溶液94b、及び青色発光物質溶液94cを滴下する。
【0103】
図10hに示すように、滴下された赤色発光物質溶液94a、緑色発光物質溶液94b、及び青色発光物質溶液94cを乾燥させる工程を遂行する。すなわち、赤色発光物質溶液94a、緑色発光物質溶液94b、及び青色発光物質溶液94cの溶媒を蒸発させ、赤色発光物質溶液94a、緑色発光物質溶液94b、及び青色発光物質溶液94cの溶質のみが各サブ画素領域に残るようにする。したがって、赤色サブ画素領域R、緑色サブ画素領域G、及び青色サブ画素領域Bのそれぞれに赤色発光層95a、緑色発光層95b、及び青色発光層95cを形成する。
【0104】
図10e~図10hで説明したように、赤色サブ画素領域R及び緑色サブ画素領域Gは第1及び第2正孔輸送層HTL1、HTL2が形成されるが、青色サブ画素領域Bには第1正孔輸送層HTL1のみが形成されるので、パイルアップ影響を排除することができる。
【0105】
図10iに示すように、発光層95a~95cが形成された基板10上に蒸着工程で第3有機物質層96を形成する。第3有機物質層96は、図8に示した電子輸送層ETL及び電子注入層EILを含み得る。よって、図10iでは第3有機物質層96が単一層として示されたが、これに限定されず、第3有機物質層96は多層からなり得る。そして、第3有機物質層96が形成された基板10上に蒸着工程で第2電極60を形成する。一方、インクジェットプリンティング工程と蒸着工程とを並行して多重スタック構造の発光素子を製造することができる。
【0106】
図11は本発明の第3実施例による多重スタック構造を有する発光素子と各層別工程を示す構造図である。
【0107】
本発明の第3実施例による発光素子は、図11に示すように、第1電極(Anode)ITOと第2電極(Cathode)Metalとの間に、第1正孔輸送層HTL1、第1発光層EML1、第1電子輸送層ETL1、n型電荷生成層(n type Charge Generation Layer;n-CGL)、p型電荷生成層(p type Charge Generation Layer;p-CGL)、正孔注入層HIL、第2正孔輸送層HTL2、第2発光層EML2、第2電子輸送層ETL2、及び電子注入層EILが順に積層された多重スタック構造を有する。
【0108】
ここで、第1スタックStack1は、第1正孔輸送層HTL1、第1発光層EML1、及び第1電子輸送層ETL1を含んでなり、第2スタックStack2は、正孔注入層HIL、第2正孔輸送層HTL2、第2発光層EML2、第2電子輸送層ETL2、及び電子注入層EILを含んでなる。よって、第1及び第2スタックの間に電荷生成層が位置する。
【0109】
第1正孔輸送層HTL1及び第1発光層EML1はインクジェットプリンティング工程(Soluble工程)によって形成されることができる。第1電子輸送層ETL1、n型電荷生成層n-CGL、p型電荷生成層p-CGL、及び正孔注入層HILは蒸着工程で形成されることができる。
【0110】
第2正孔輸送層HTL2及び第2発光層EML2はインクジェットプリンティング工程(Soluble工程)によって形成されることができる。第2電子輸送層ETL2、電子注入層EIL、及び第2電極は蒸着工程によって形成されることができる。多重スタック構造を有する本発明の第3実施例の有機発光表示パネルの構造は次のようである。
【0111】
図12は本発明の第3実施例による有機発光表示パネルの構造を示す断面図である。
【0112】
本発明の第3実施例による有機発光表示パネルの構造は、図12に示すように、基板80上の多数のサブ画素領域Pに薄膜トランジスタ70及び有機発光素子を含む。基板80は絶縁物質からなり得る。例えば、基板80は、ガラス、ポリイミド(PI)などのようなプラスチック物質からなり得る。
【0113】
基板80上にバッファー層81が配置される。バッファー層81は、無機物である窒化シリコン(SiNx)または酸化シリコン(SiOx)の単一層または窒化シリコン(SiNx)及び酸化シリコン(SiOx)の多重層からなり得る。ただ、バッファー層81は必須な構成要素ではなく、基板80の種類及び物質、薄膜トランジスタ70の構造及びタイプなどによって省略されることもできる。
【0114】
バッファー層81上に薄膜トランジスタ70が配置される。薄膜トランジスタ70は、アクティブ層71、ゲート電極72、ソース電極73、及びドレイン電極74を含む。薄膜トランジスタ70のアクティブ層71がバッファー層81上に配置され、アクティブ層71及びバッファー層81上にゲート絶縁層82が配置される。
【0115】
アクティブ層71は、非晶質シリコン(amorphous silicon、a-Si)、多結晶シリコン(polycrystalline silicon、poly-Si)、酸化物(oxide)半導体または有機物(organic)半導体などから形成されることができる。
【0116】
ゲート絶縁層62は、無機物である窒化シリコン(SiNx)または酸化シリコン(SiOx)の単一層または窒化シリコン(SiNx)及び酸化シリコン(SiOx)の多重層からなり得るが、これに限定されるものではない。ゲート絶縁層82にはソース電極73及びドレイン電極74のそれぞれがアクティブ層71とコンタクトするためのコンタクトホールが形成される。
【0117】
ゲート電極72はアクティブ層71と重畳するようにゲート絶縁層82上に配置される。ゲート電極72は、導電性金属、例えば銅(Cu)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)など、またはこれらの合金からなり得るが、これに限定されるものではない。
【0118】
ゲート電極72上に層間絶縁層83が配置される。層間絶縁層83は、無機物である窒化シリコン(SiNx)または酸化シリコン(SiOx)の単一層または窒化シリコン(SiNx)及び酸化シリコン(SiOx)の多重層からなり得るが、これに限定されるものではない。層間絶縁層83にはソース電極73及びドレイン電極74をアクティブ層71とコンタクトするためのコンタクトホールが形成され得る。
【0119】
層間絶縁層83上にはソース電極73及びドレイン電極74が配置される。ソース電極73及びドレイン電極74は、導電性金属、例えば銅(Cu)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)など、またはこれらの合金からなり得るが、これに限定されるものではない。ソース電極73及びドレイン電極74のそれぞれはコンタクトホールを介してアクティブ層71に電気的に連結され得る。
【0120】
薄膜トランジスタ70上にパッシベーション層84が配置されることができる。パッシベーション層84は、無機物である窒化シリコン(SiNx)または酸化シリコン(SiOx)の単一層または窒化シリコン(SiNx)及び酸化シリコン(SiOx)の多重層からなり得るが、これに限定されるものではない。
パッシベーション層84には発光素子(OLED)の第1電極11が薄膜トランジスタ70と連結されるためのコンタクトホールが形成され得る。パッシベーション層64は必ずしも必要な構成要素ではなく、有機発光表示パネルの設計によって省略されてもよい。
【0121】
パッシベーション層84上には平坦化層85が配置される。平坦化層85は有機物からなることができ、平坦化層85には薄膜トランジスタ70のドレイン電極74を露出させるためのコンタクトホールが形成されることができる。
【0122】
平坦化層85上の各サブ画素領域に第1電極11が配置され、第1電極11の縁部と重畳するように各サブ画素領域Pの境界部上の基板10にバンク層20が配置される。垂直方向(第1方向)のバンク層20の上面縁部及び側面は親水化し、各サブ画素領域に隣接した水平方向(第2方向)のバンク層20の上面及び側面も親水化することができる。
バンク層20の間の第1電極11上に第1有機物質層112a~112cが配置される。
【0123】
第1有機物質層112a~112cとバンク層20の上側とにわたって第2有機物質層113が配置され、バンク層20の上部の第2有機物質層113は選択的に疎水化する。バンク層20の間の第2有機物質層113上に第3有機物質層115a~115cが配置され、第3有機物質層115a~115c及びバンク層20の上側の第1有機物質層51上にわたって第4有機物質層116が配置される。
【0124】
そして、第4有機物質層116上に第2電極60が配置される。ここで、第1有機物質層112a~112cは、第1正孔輸送層HTL1及び第1発光層EML1を含むことができ、第2有機物質層113は、第1電子輸送層EHL1、n型電荷生成層n-CGL、p型電荷生成層p-CGL、及び正孔注入層HILを含み得る。
【0125】
第3有機物質層115a~115cは、第2正孔輸送層HTL2及び第2発光層EML2を含むことができ、第4有機物質層116は、第2電子輸送層ETL2及び電子注入層EILを含み得る。
【0126】
図12のような構造を有する本発明の第3実施例による有機発光表示パネルの製造方法を説明すれば次のようである。
【0127】
図13a~図13iは本発明の第3実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。図13a~図13iでは図12の構造断面図の薄膜トランジスタ70の製造工程を説明せずに発光素子の工程のみを示した。よって、図13a~図13iに示した基板10は、図12に示した基板80、薄膜トランジスタ70、及び平坦化層85までを全部含むものである。
【0128】
図13aに示すように、多数のサブ画素領域Pを含む基板10上の各サブ画素領域Pに多数の第1電極11を形成する。そして、第1電極11が形成された基板10上に疎水性(hydrophobic)有機絶縁物質をコーティングして選択的に除去することにより、各サブ画素領域の境界部に格子状のバンク層20を形成する。ここで、バンク層20を形成するために疎水性有機絶縁物質を選択的に除去するとき、第1電極11の表面には有機残膜20aが存在することができる。
【0129】
図13b及び図5bに示すように、垂直方向のバンク層20の上部の縁部及び側面と、水平方向の一部のバンク層20の上面及び側面と、第1電極11の表面とを選択的にプラズマプリンティング(Plasma Printing)処理することにより、第1電極11の表面に残っている有機残膜20aを除去するとともにバンク層20の上面の一部、上面縁部及び側面を親水化(hydrophilization)させる。より具体的に説明すれば次のようである。
【0130】
プラズマプリンティング処理は、O/N/Arガスを用い、スキャン方式を用いて選択的にプラズマプリンティングを遂行する。すなわち、図1で、プラズマプリンティング方向を「30」で表示した。
【0131】
格子状のバンク層20のうち隣接した2個の垂直方向のバンク層20の上面縁部と重畳するように垂直方向のサブ画素に沿ってスキャン方式でプラズマプリンティングを遂行する。したがって、隣接した2個の垂直方向のバンク層20の上面縁部が所定の深さに除去されて段差が形成され、図5bに示すように、格子状のバンク層20のうちサブ画素領域に隣接した水平方向のバンク層20の上面も所定の深さに除去される。そして、垂直方向のバンク層20の段差が形成された部分と垂直方向のバンク層20の側面と水平方向のバンク層20の上面及び側面とが親水化する。
【0132】
図13cに示すように、インクジェットプリンティング(Inkjet Printing)方式(soluble工程)で各サブ画素領域Pの第1電極11の上部に第1有機物質溶液111a、111b、111cを滴下(dropping)する。
ここで、垂直方向のバンク層20の上面は疎水性を有しているので、バンク層20の上面の表面エネルギーが減少し、水平方向に隣接した各サブ画素領域Pに滴下された第1有機物質溶液111a~111cは互いに混合されない。また、水平方向のバンク層20の上側は親水化したので、垂直方向に隣接した各サブ画素領域には同じ第1有機物質溶液52a~52cが滴下され得る。
【0133】
図13dに示すように、滴下された第1有機物質溶液111a~111cを乾燥させる工程を遂行して、第1有機物質溶液111a~111cの溶媒を蒸発させ、第1有機物質溶液111a~111cの溶質のみが第1電極11上に残るようにすることにより、第1電極11上に第1有機物質層112a~112cを形成する。
ここで、第1有機物質層112a~112cは、図11に示した第1正孔輸送層HTL1及び第1発光層EML1を含み得る。
【0134】
したがって、図13dでは第1有機物質層112a~112cが単一層として示されたが、これに限定されず、第1有機物質層112a~112cは多層からなり得る。
【0135】
仮に、第1有機物質層112a~112cが第1正孔HTL1及び第1発光層EML1を含む場合、次のように遂行することができる。
【0136】
図13c及び13dで説明したように、正孔輸送物質溶液を各サブ画素領域Pの第1電極11の上部に滴下し、乾燥することにより、第1電極11の上部に第1正孔輸送層HTL1を形成する。各サブ画素領域Pを赤色サブ画素領域R、緑色サブ画素領域G、及び青色サブ画素領域Bと仮定する。
【0137】
図13cのように、赤色サブ画素領域R、緑色サブ画素領域G、及び青色サブ画素領域Bのそれぞれの第1正孔輸送層上に赤色発光物質溶液、緑色発光物質溶液、及び青色発光物質溶液を滴下し、図13dで説明したように、滴下された赤色発光物質溶液、緑色発光物質溶液、及び青色発光物質溶液を乾燥させることにより、赤色発光層、緑色発光層、及び青色発光層を形成する。
【0138】
図13eに示すように、第1有機物質層112a~112c及びバンク層20を含む基板10の全面に蒸着工程で第2有機物質層113を形成する。第1有機物質層51は、図11に示した第1電子輸送層ETL1、n型電荷生成層n-CGL、p型電荷生成層p-CGL、及び正孔注入層HILを含み得る。
【0139】
すなわち、第1有機物質層112a~112c及びバンク層20を含む基板10の全面に第1電子輸送層ETL1、n型電荷生成層n-CGL、p型電荷生成層p-CGL、及び正孔注入層HILを順に蒸着する。
【0140】
したがって、図13eでは第2有機物質層113が単一層として示されたが、これに限定されず、第2有機物質層113は第1電子輸送層ETL1、n型電荷生成層n-CGL、p型電荷生成層p-CGL、及び正孔注入層HILを含む多層からなり得る。
【0141】
図13fに示すように、バンク層20の上側の第2有機物質層113の表面をCFまたはSFガスプラズマ処理することにより、バンク層20の上側の第2有機物質層113の表面を疎水化(hydrophobic)させる。
【0142】
すなわち、第2有機物質層113において最上側に形成された正孔注入層HILのうちバンク層20の上側に位置する正孔注入層HILの表面をCFまたはSFガスプラズマ処理することにより、バンク層20の上側の正孔注入層HILの表面を疎水化(hydrophobic)させる。より具体的な疎水化プラズマ処理方法は図6及び図7で説明したので、省略する。
【0143】
図13gに示すように、各サブ画素領域Pの第2有機物質層113上にそれぞれ第3有機物質溶液114a~114cを滴下する。ここで、バンク層20の上部の第2有機物質層113は疎水性を有しているので、バンク層20の上側の第2有機物質層113の表面エネルギーが減少し、各サブ画素領域Pに滴下された第3有機物質溶液114a~114cが互いに混合されることを防止することができる。
【0144】
図13hに示すように、滴下された第3有機物質溶液114a~114cを乾燥させる工程を遂行して、第3有機物質溶液114a~114cの溶媒を蒸発させ、第3有機物質溶液114a~114cの溶質のみが第2有機物質層113上に残るようにすることにより、第2有機物質層113上に第2有機物質層115a~115cを形成する。
【0145】
第3有機物質層115a~115cは、図10に示した第2正孔輸送層HTL2、及び第2発光層EML2を含み得る。例えば、各サブ画素領域Pの第2有機物質層113上に第3有機物質溶液114a~114cとして第2正孔輸送物質溶液を滴下して乾燥することによって第2正孔輸送層HTL2を形成する。
【0146】
そして、それぞれの赤色サブ画素領域R、緑色サブ画素領域G、及び青色サブ画素領域Bの第2正孔輸送層HTL2上に第3有機物質溶液114a~114cとして、赤色発光物質溶液、緑色発光物質溶液、及び青色発光物質溶液を滴下して乾燥することにより、赤色発光層、緑色発光層、及び青色発光層を形成することができる。
【0147】
図13iに示すように、第3有機物質層115a~115cが形成された基板10上に蒸着工程で第4有機物質層116を形成する。第4有機物質層116は、図11に示した第2電子輸送層ETL2、及び電子注入層EILを含み得る。よって、図13iでは第4有機物質層116が単一層として示されたが、これに限定されず、第4有機物質層116は多層からなり得る。そして、第4有機物質層116が形成された基板10上に蒸着工程で第2電極60を形成する。
【0148】
一方、多重スタック構造の発光素子において、インクジェットプリンティング工程と蒸着工程とを並行してパイルアップ影響を排除することができる。以下で、多重スタック構造においてパイルアップ影響を排除することができる製造方法を説明する。
【0149】
図14は本発明の第4実施例による多重スタック構造を有する発光素子と各層別工程を示す構造図である。
本発明の第4実施例による発光素子は、図14に示すように、第1電極(Anode)ITOと第2電極(Cathode)Metalとの間に、第1正孔輸送層HTL1、第1発光層EML1、第1電子輸送層ETL1、n型電荷生成層n-CGL、p型電荷生成層p-CGL、第2正孔輸送層HTL2、第3正孔輸送層HTL3、第2発光層EML2、第2電子輸送層ETL2、及び電子注入層EILが順に積層された多重スタック構造を有する。
【0150】
ここで、第1スタックStack1は、第1正孔輸送層HTL1、第1発光層EML1、及び第1電子輸送層ETL1を含んでなり、第2スタックStack2は、第2正孔輸送層HTL2、第3正孔輸送層HTL3、第2発光層EML2、第2電子輸送層ETL2、及び電子注入層EILを含んでなる。よって、第1及び第2スタックの間に電荷生成層が位置する。
【0151】
第1正孔輸送層HTL1及び第1発光層EML1はインクジェットプリンティング工程(Soluble工程)によって形成され得る。第1電子輸送層ETL1、n型電荷生成層n-CGL、p型電荷生成層p-CGL、及び第2正孔輸送層HTL2は蒸着工程によって形成され得る。
【0152】
第3正孔輸送層HTL3及び第2発光層EML2はインクジェットプリンティング工程(Soluble工程)によって形成され得る。第2電子輸送層ETL2、電子注入層EIL、及び第2電極は蒸着工程によって形成されることができる。
【0153】
上述のように、多重スタック構造を有する発光素子においてパイルアップ影響を排除することができる本発明の第4実施例の有機発光表示パネルの構造は次のようである。
図15は本発明の第4実施例による有機発光表示パネルの構造を示す断面図である。本発明の第4実施例による有機発光表示パネルは、図15に示すように、基板80上の多数のサブ画素領域Pに薄膜トランジスタ70及び有機発光素子を含む。
【0154】
基板80は絶縁物質からなり得る。例えば、基板80は、ガラス、ポリイミド(PI)などのようなプラスチック物質からなり得る。基板80上にバッファー層81が配置される。バッファー層81は、無機物である窒化シリコン(SiNx)または酸化シリコン(SiOx)の単一層または窒化シリコン(SiNx)及び酸化シリコン(SiOx)の多重層からなり得る。ただ、バッファー層81は必須な構成要素ではなく、基板80の種類及び物質、薄膜トランジスタ70の構造及びタイプなどによって省略されることもできる。
【0155】
バッファー層81上に薄膜トランジスタ70が配置される。薄膜トランジスタ70は、アクティブ層71、ゲート電極72、ソース電極73、及びドレイン電極74を含む。
【0156】
薄膜トランジスタ70のアクティブ層71がバッファー層81上に配置され、アクティブ層71及びバッファー層81上にゲート絶縁層82が配置される。
【0157】
アクティブ層71は、非晶質シリコン(amorphous silicon、a-Si)、多結晶シリコン(polycrystalline silicon、poly-Si)、酸化物(oxide)半導体または有機物(organic)半導体などから形成されることができる。
【0158】
ゲート絶縁層62は、無機物である窒化シリコン(SiNx)または酸化シリコン(SiOx)の単一層または窒化シリコン(SiNx)及び酸化シリコン(SiOx)の多重層からなり得るが、これに限定されるものではない。
【0159】
ゲート絶縁層82にはソース電極73及びドレイン電極74のそれぞれがアクティブ層71とコンタクトするためのコンタクトホールが形成される。
【0160】
ゲート電極72はアクティブ層71と重畳するようにゲート絶縁層82上に配置される。ゲート電極72は、導電性金属、例えば銅(Cu)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)など、またはこれらの合金からなり得るが、これに限定されるものではない。
【0161】
ゲート電極72上に層間絶縁層83が配置される。層間絶縁層83は、無機物である窒化シリコン(SiNx)または酸化シリコン(SiOx)の単一層または窒化シリコン(SiNx)及び酸化シリコン(SiOx)の多重層からなり得るが、これに限定されるものではない。層間絶縁層83にはソース電極73及びドレイン電極74をアクティブ層71とコンタクトするためのコンタクトホールが形成されることができる。
【0162】
層間絶縁層83上にはソース電極73及びドレイン電極74が配置される。ソース電極73及びドレイン電極74は、導電性金属、例えば銅(Cu)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)など、またはこれらの合金からなり得るが、これに限定されるものではない。ソース電極73及びドレイン電極74のそれぞれはコンタクトホールを介してアクティブ層71に電気的に連結されることができる。
【0163】
薄膜トランジスタ70上にパッシベーション層84が配置されることができる。パッシベーション層84は、無機物である窒化シリコン(SiNx)または酸化シリコン(SiOx)の単一層または窒化シリコン(SiNx)及び酸化シリコン(SiOx)の多重層からなり得るが、これに限定されるものではない。
【0164】
パッシベーション層84には発光素子(OLED)の第1電極11が薄膜トランジスタ70と連結されるためのコンタクトホールが形成されることができる。パッシベーション層64は必ずしも必要な構成要素ではなく、有機発光表示パネルの設計によって省略されることもできる。
【0165】
パッシベーション層84上には平坦化層85が配置される。平坦化層85は有機物からなることができ、平坦化層85には薄膜トランジスタ70のドレイン電極74を露出させるためのコンタクトホールが形成されることができる。
【0166】
平坦化層85上の各サブ画素領域に第1電極11が配置され、第1電極11の縁部と重畳するように各サブ画素領域Pの境界部上の基板10にバンク層20が配置される。垂直方向(第1方向)のバンク層20の上面縁部及び側面は親水化し、各サブ画素領域に隣接した水平方向(第2方向)のバンク層20の上面及び側面も親水化することができる。
【0167】
バンク層20の間の第1電極11上に第1有機物質層132a~132cが配置される。第1有機物質層132a~132cとバンク層20の上側とにわたって第2有機物質層133が配置され、バンク層20の上部の第2有機物質層133は選択的に疎水化する。
【0168】
バンク層20の間の第2有機物質層133上に第3有機物質層135a、135b、137a~137cが配置され、第3有機物質層135a、135b、137a~137c及びバンク層20の上側の第2有機物質層133上にわたって第4有機物質層138が配置される。そして、第4有機物質層138上に第2電極60が配置される。
【0169】
ここで、第1有機物質層132a~132cは、第1正孔輸送層HTL1及び第1発光層EML1を含むことができ、第2有機物質層133は、第1電子輸送層EHL1、n型電荷生成層n-CGL、p型電荷生成層p-CGL、及び第2正孔輸送層HTL2を含み得る。
【0170】
第3有機物質層135a、135b、137a~137cは、赤色サブ画素領域Rと緑色サブ画素領域Gにのみ形成される第3正孔輸送層135a、135b、赤色サブ画素領域R、緑色サブ画素領域G、及び青色サブ画素領域Bに形成される赤色発光層137a、緑色発光層137b、及び青色発光層137cを含み得る。
【0171】
第4有機物質層116は、第2電子輸送層ETL2及び電子注入層EILを含み得る。上述のように、多重スタック構造を有する発光素子においてパイルアップ影響を排除することができる本発明の第4実施例の発光素子の製造方法を説明すれば次のようである。
【0172】
図16a~図16kは本発明の第4実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
【0173】
図16a~図16kでは、図15の構造断面図の薄膜トランジスタ70の製造工程を説明せずに発光素子の工程のみを示した。よって、図16a~図16kに示した基板10は、図15に示した基板80、薄膜トランジスタ70、及び平坦化層85までを全部含むものである。
【0174】
図16aに示すように、多数のサブ画素領域Pを含む基板10上の各サブ画素領域Pに多数の第1電極11を形成する。そして、第1電極11が形成された基板10上に疎水性(hydrophobic)有機絶縁物質をコーティングして選択的に除去することにより、各サブ画素領域の境界部に格子状のバンク層20を形成する。
【0175】
ここで、バンク層20を形成するために疎水性有機絶縁物質を選択的に除去するとき、第1電極11の表面には有機残膜20aが存在することができる。
【0176】
図16b及び図5bに示すように、垂直方向のバンク層20の上部の縁部及び側面と、水平方向の一部のバンク層20の上面及び側面と、第1電極11の表面とを選択的にプラズマプリンティング(Plasma Printing)処理することにより、第1電極11の表面に残っている有機残膜20aを除去するとともにバンク層20の上面の一部、上面縁部及び側面を親水化(hydrophilization)させる。より具体的に説明すれば次のようである。
【0177】
前ラズマプリンティング処理はO/N/Arガスを用い、スキャン方式で選択的にプラズマプリンティングする。すなわち、図1で、プラズマプリンティング方向を「30」で表示した。格子状のバンク層20のうち隣接した2個の垂直方向のバンク層20の上面縁部と重畳するように垂直方向のサブ画素に沿ってスキャン方式でプラズマプリンティングを遂行する。
【0178】
したがって、隣接した2個の垂直方向のバンク層20の上面縁部が所定の深さに除去されて段差が形成され、図5bに示すように、格子状のバンク層20のうちサブ画素領域に隣接した水平方向のバンク層20の上面も所定の深さに除去される。そして、垂直方向のバンク層20の段差が形成された部分と垂直方向のバンク層20の側面と水平方向のバンク層20の上面及び側面とが親水化する。
【0179】
図16cに示すように、インクジェットプリンティング(Inkjet Printing)方式(soluble工程)で各サブ画素領域Pの第1電極11の上部に第1有機物質溶液131a~131cを滴下(dropping)する。
【0180】
ここで、バンク層20の上面は疎水性を有しているので、バンク層20の上面の表面エネルギーが減少して各サブ画素領域Pに滴下された第1有機物質溶液131a~131cが互いに混合されることを防止することができる。
【0181】
ここで、垂直方向のバンク層20の上面は疎水性を有しているので、バンク層20の上面の表面エネルギーが減少して水平方向に隣接した各サブ画素領域Pに滴下された第1有機物質溶液131a~131cは互いに混合されない。
【0182】
また、水平方向のバンク層20の上側は親水化したので、垂直方向に隣接した各サブ画素領域には同じ第1有機物質溶液131a~131cが滴下されることができる。
【0183】
図16dに示すように、滴下された第1有機物質溶液131a~131cを乾燥させる工程を遂行して、第1有機物質溶液131a~131cの溶媒を蒸発させ、第1有機物質溶液131a~131cの溶質のみが第1電極11上に残るようにすることにより、第1電極11上に第1有機物質層132a~132cを形成する。
【0184】
ここで、第1有機物質層132a~132cは、図14に示した第1正孔輸送層HTL1及び第1発光層EML1を含み得る。したがって、図16dでは第1有機物質層132a~132cが単一層として示されたが、これに限定されず、第1有機物質層132a~132cは多層からなり得る。仮に、第1有機物質層132a~132cが第1正孔HTL1及び第1発光層EML1を含む場合、次のように遂行することができる。
【0185】
図16c及び図16dで説明したように、正孔輸送物質溶液を各サブ画素領域Pの第1電極11の上部に滴下して乾燥することにより、第1電極11の上部に第1正孔輸送層HTL1を形成する。
【0186】
各サブ画素領域Pを、赤色サブ画素領域R、緑色サブ画素領域G、及び青色サブ画素領域Bと仮定すれば、赤色サブ画素領域R、緑色サブ画素領域G、及び青色サブ画素領域Bのそれぞれの第1正孔輸送層HTL1上に赤色発光物質溶液、緑色発光物質溶液、及び青色発光物質溶液を滴下し、滴下された赤色発光物質溶液、緑色発光物質溶液、及び青色発光物質溶液を乾燥させて、赤色発光層、緑色発光層、及び青色発光層を形成する。
【0187】
図16eに示すように、第1有機物質層132a~132c及びバンク層20を含む基板10の全面に蒸着工程で第2有機物質層133を形成する。第2有機物質層133は、図14に示した第1電子輸送層ETL1、n型電荷生成層n-CGL、p型電荷生成層p-CGL、及び第2正孔輸送層HTL2を含み得る。
【0188】
すなわち、第1有機物質層132a~132c及びバンク層20を含む基板10の全面に第1電子輸送層ETL1、n型電荷生成層n-CGL、p型電荷生成層p-CGL、及び第2正孔輸送層HTL2を順に蒸着する。
【0189】
したがって、図16eでは第2有機物質層133が単一層として示されたが、これに限定されず、第2有機物質層133は、第1電子輸送層ETL1、n型電荷生成層n-CGL、p型電荷生成層p-CGL、及び第2正孔輸送層HTL2を含む多層からなり得る。
【0190】
図16fに示すように、バンク層20の上側の第2有機物質層133の表面をCFまたはSFガスプラズマ処理して、バンク層20の上側の第2有機物質層133の表面を疎水化(hydrophobic)させる。
【0191】
すなわち、第2有機物質層133において最上側に形成された第2正孔輸送層HTL2のうちバンク層20の上側に位置する第2正孔輸送層HTL2の表面をCFまたはSFガスプラズマ処理して、バンク層20の上側の第2正孔輸送層HTL2の表面を疎水化(hydrophobic)させる。より具体的な疎水化プラズマ処理方法は図6及び図7で説明したので、省略する。
【0192】
図16gに示すように、各サブ画素領域Pを、赤色サブ画素領域R、緑色サブ画素領域G、及び青色サブ画素領域Bと仮定すれば、赤色サブ画素領域R及び緑色サブ画素領域Gの第2有機物質層133上にのみ第3正孔輸送物質溶液134a、134bを滴下し、青色サブ画素領域Bには第3正孔輸送物質溶液を滴下しない。
【0193】
図16hに示すように、滴下された第3正孔輸送物質溶液134a、134bを乾燥させる工程を遂行する。すなわち、第3正孔輸送物質溶液134a、134bの溶媒を蒸発させ、第3正孔輸送物質溶液134a、134bの溶質のみが第2有機物質層133上に残るようにする。
【0194】
したがって、赤色サブ画素領域R及び緑色サブ画素領域Gの第2有機物質層133上に第3正孔輸送層135a、135bを形成する。青色サブ画素領域Bには第3正孔輸送層が形成されない。
【0195】
図16iに示すように、赤色サブ画素領域R、緑色サブ画素領域G、及び青色サブ画素領域Bのそれぞれに赤色発光物質溶液136a、緑色発光物質溶液136b、及び青色発光物質溶液136cを滴下する。
【0196】
図16jに示すように、滴下された赤色発光物質溶液136a、緑色発光物質溶液136b、及び青色発光物質溶液136cを乾燥させる工程を遂行して、赤色サブ画素領域R、緑色サブ画素領域G、及び青色サブ画素領域Bのそれぞれに赤色発光層137a、緑色発光層137b、及び青色発光層137cを形成する。ここで、第3正孔輸送層135a、135b、赤色発光層137a、緑色発光層137b、及び青色発光層137cを第3有機物質層と言う。
【0197】
したがって、図16e~図16jで説明したように、赤色サブ画素領域R及び緑色サブ画素領域Gには第2及び第3正孔輸送層HTL2、HTL3が形成されるが、青色サブ画素領域Bには第1正孔輸送層HTL1のみが形成されるので、パイルアップ影響を排除することができる。
【0198】
図16kに示すように、赤色発光層137a、緑色発光層137b、及び青色発光層137cが形成された基板10上に蒸着工程で第4有機物質層138を形成する。
【0199】
第4有機物質層138は、図14に示した第2電子輸送層ETL2及び電子注入層EILを含み得る。よって、図16kでは第4有機物質層138が単一層として示されたが、これに限定されず、第4有機物質層138は多層からなり得る。
【0200】
そして、第4有機物質層138が形成された基板10上に蒸着工程で第2電極60を形成する。
【0201】
一方、多重スタック構造の発光素子において、インクジェットプリンティング工程と蒸着工程とを並行しながらも、インクジェットプリンティング工程と蒸着工程の順を変えることでパイルアップ影響を排除することができる。以下で、インクジェットプリンティング工程と蒸着工程の順を変えてパイルアップ影響を排除することができる有機発光表示パネルの構造及び製造方法を説明する。
【0202】
図17は本発明の第5実施例による多重スタック構造を有する発光素子と各層別工程を示す構造図である。
【0203】
本発明の第5実施例による発光素子は、図17に示すように、第1電極(Anode)ITOと第2電極(Cathode)Metalとの間に、第1正孔輸送層HTL1、第1発光層EML1、第1電子輸送層ETL1、n型電荷生成層n-CGL、p型電荷生成層p-CGL、第2正孔輸送層HTL2、第3正孔輸送層HTL3、第2発光層EML2、第2電子輸送層ETL2、及び電子注入層EILが順に積層された多重スタック構造を有する。
【0204】
ここで、第1スタックStack1は、第1正孔輸送層HTL1、第1発光層EML1、及び第1電子輸送層ETL1を含んでなり、第2スタックStack2は、第2正孔輸送層HTL2、第3正孔輸送層HTL3、第2発光層EML2、第2電子輸送層ETL2、及び電子注入層EILを含んでなる。よって、第1及び第2スタックの間に電荷生成層が位置する。
【0205】
第1正孔輸送層HTL1は蒸着工程によって形成され、第1発光層EML1はインクジェットプリンティング工程(Soluble工程)によって形成されることができる。第1電子輸送層ETL1、n型電荷生成層n-CGL、p型電荷生成層p-CGL、及び第2正孔輸送層HTL2は蒸着工程によって形成されることができる。
【0206】
第3正孔輸送層HTL3及び第2発光層EML2は、インクジェットプリンティング工程(Soluble工程)によって形成されることができる。第2電子輸送層ETL2、電子注入層EIL、及び第2電極は蒸着工程によって形成されることができる。
上述のように、多重スタック構造を有する発光素子において、パイルアップ影響を排除することができる本発明の第5実施例の有機発光表示パネルの構造は次のようである。
【0207】
図18は本発明の第5実施例による有機発光表示パネルの構造を示す断面図である。本発明の第5実施例による有機発光表示パネルの構造は、図18に示すように、基板80上の多数のサブ画素領域Pに薄膜トランジスタ70及び有機発光素子を含む。
【0208】
基板80は絶縁物質からなり得る。例えば、基板80は、ガラス、ポリイミド(PI)などのようなプラスチック物質からなり得る。
【0209】
基板80上にバッファー層81が配置される。バッファー層81は、無機物である窒化シリコン(SiNx)または酸化シリコン(SiOx)の単一層または窒化シリコン(SiNx)及び酸化シリコン(SiOx)の多重層からなり得る。ただ、バッファー層81は必須な構成要素ではなく、基板80の種類及び物質、薄膜トランジスタ70の構造及びタイプなどによって省略されることもできる。
【0210】
バッファー層81上に薄膜トランジスタ70が配置される。薄膜トランジスタ70は、アクティブ層71、ゲート電極72、ソース電極73、及びドレイン電極74を含む。
【0211】
薄膜トランジスタ70のアクティブ層71がバッファー層81上に配置され、アクティブ層71及びバッファー層81上にゲート絶縁層82が配置される。アクティブ層71は、非晶質シリコン(amorphous silicon、a-Si)、多結晶シリコン(polycrystalline silicon、poly-Si)、酸化物(oxide)半導体または有機物(organic)半導体などから形成されることができる。
【0212】
ゲート絶縁層62は、無機物である窒化シリコン(SiNx)または酸化シリコン(SiOx)の単一層または窒化シリコン(SiNx)及び酸化シリコン(SiOx)の多重層からなり得るが、これに限定されるものではない。
【0213】
ゲート絶縁層82にはソース電極73及びドレイン電極74のそれぞれがアクティブ層71とコンタクトするためのコンタクトホールが形成される。ゲート電極72はアクティブ層71と重畳するようにゲート絶縁層82上に配置される。ゲート電極72は、導電性金属、例えば銅(Cu)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)など、またはこれらの合金からなり得るが、これに限定されるものではない。
【0214】
ゲート電極72上に層間絶縁層83が配置される。層間絶縁層83は、無機物である窒化シリコン(SiNx)または酸化シリコン(SiOx)の単一層または窒化シリコン(SiNx)及び酸化シリコン(SiOx)の多重層からなり得るが、これに限定されるものではない。層間絶縁層83にはソース電極73及びドレイン電極74をアクティブ層71とコンタクトするためのコンタクトホールが形成されることができる。
【0215】
層間絶縁層83上にはソース電極73及びドレイン電極74が配置される。ソース電極73及びドレイン電極74は、導電性金属、例えば銅(Cu)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)など、またはこれらの合金からなり得るが、これに限定されるものではない。ソース電極73及びドレイン電極74のそれぞれはコンタクトホールを介してアクティブ層71に電気的に連結されることができる。
【0216】
薄膜トランジスタ70上にパッシベーション層84が配置されることができる。パッシベーション層84は、無機物である窒化シリコン(SiNx)または酸化シリコン(SiOx)の単一層または窒化シリコン(SiNx)及び酸化シリコン(SiOx)の多重層からなり得るが、これに限定されるものではない。
【0217】
パッシベーション層84には発光素子(OLED)の第1電極11が薄膜トランジスタ70と連結されるためのコンタクトホールが形成されることができる。パッシベーション層64は必ずしも必要な構成要素ではなく、有機発光表示パネルの設計によって省略されることもできる。
【0218】
パッシベーション層84上には平坦化層85が配置される。平坦化層85は有機物からなることができ、平坦化層85には薄膜トランジスタ70のドレイン電極74を露出させるためのコンタクトホールが形成されることができる。
【0219】
平坦化層85上の各サブ画素領域に第1電極11が配置され、第1電極11の縁部と重畳するように各サブ画素領域Pの境界部上の基板10にバンク層20が配置される。バンク層20及び第1電極11の上側にわたって基板上に第1有機物質層151が配置され、バンク層20の上部の第1有機物質層151は選択的に疎水化する。
バンク層20の間の第1有機物質層151上に第2有機物質層153a~153cが配置される。
【0220】
第2有機物質層153a~153c及び第1有機物質層151上にわたって第3有機物質層154が配置され、バンク層20の上部の第3有機物質層154は選択的に疎水化する。
【0221】
バンク層20の間の第3有機物質層154上に第4有機物質層156a~156b、158a~158cが配置され、第4有機物質層156a~156b、158a~158c及びバンク層20の上側の第3有機物質層154上にわたって第5有機物質層159が配置される。
【0222】
そして、第5有機物質層159上に第2電極60が配置される。ここで、第1有機物質層151は第1正孔輸送層HTL1を含み、第2有機物質層153a~153cは第1発光層EML1を含み得る。
【0223】
第3有機物質層154は、第1電子輸送層EHL1、n型電荷生成層n-CGL、p型電荷生成層p-CGL、及び第2正孔輸送層HTL2を含み得る。
【0224】
第4有機物質層156a~156b、158a~158cは、赤色サブ画素領域R及び緑色サブ画素領域Gにのみ形成される第3正孔輸送層135a、135bと、赤色サブ画素領域R、緑色サブ画素領域G、及び青色サブ画素領域Bに形成される赤色発光層158a、緑色発光層158b、及び青色発光層158cとを備えた第2発光層とを含み得る。
【0225】
第5有機物質層159は、第2電子輸送層ETL2及び電子注入層EILを含み得る。上述のように、多重スタック構造を有する発光素子においてパイルアップ影響を排除することができる本発明の第5実施例の発光素子の製造方法を説明すれば次のようである。
【0226】
図19a~図19mは本発明の第5実施例による図1のI-I’線についての有機発光表示パネルの工程断面図である。
【0227】
図19a~図19mでは、図18の構造断面図の薄膜トランジスタ70の製造工程を説明せずに発光素子の工程のみを示した。よって、図19a~図19mに示した基板10は、図18に示した基板80、薄膜トランジスタ70、及び平坦化層85までを全部含むものである。
【0228】
図19aに示すように、多数のサブ画素領域Pを含む基板10上の各サブ画素領域Pに多数の第1電極11を形成する。そして、第1電極11が形成された基板10上に疎水性(hydrophobic)有機絶縁物質をコーティングして選択的に除去することにより、各サブ画素領域の境界部に格子状のバンク層20を形成する。
【0229】
ここで、バンク層20を形成するために疎水性有機絶縁物質を選択的に除去するとき、第1電極11の表面には有機残膜20aが存在することができる。
【0230】
図19b及び図5bに示すように、垂直方向のバンク層20の上部の縁部及び側面と、水平方向の一部のバンク層20の上面及び側面と、第1電極11の表面とを選択的にプラズマプリンティング(Plasma Printing)処理することにより、第1電極11の表面に残っている有機残膜20aを除去するとともにバンク層20の上面の一部、上面縁部及び側面を親水化(hydrophilization)させる。より具体的に説明すれば次のようである。
【0231】
プラズマプリンティング処理はO/N/Arガスを用い、スキャン方式で選択的にプラズマプリンティングする。すなわち、図1で、プラズマプリンティング方向を「30」で表示した。格子状のバンク層20のうち隣接した2個の垂直方向のバンク層20の上面縁部と重畳するように垂直方向のサブ画素に沿ってスキャン方式でプラズマプリンティングを遂行する。
【0232】
したがって、隣接した2個の垂直方向のバンク層20の上面縁部が所定の深さに除去されて段差が形成され、図5bに示すように、格子状のバンク層20のうちサブ画素領域に隣接した水平方向のバンク層20の上面も所定の深さに除去される。そして、垂直方向のバンク層20の段差が形成された部分と垂直方向のバンク層20の側面と水平方向のバンク層20の上面及び側面とが親水化する。
【0233】
図19cに示すように、第1電極11及びバンク層20を含む基板10の全面に蒸着工程で第1有機物質層151を形成する。第1有機物質層151は、図17に示した第1電子輸送層ETL1を含み得る。
【0234】
図19dに示すように、バンク層20の上側の第1有機物質層151の表面をCFまたはSFガスプラズマ処理することにより、バンク層20の上側の第1有機物質層151の表面を疎水化(hydrophobic)させる。より具体的な疎水化プラズマ処理方法は図6及び図7で説明したので、省略する。
【0235】
図19eに示すように、インクジェットプリンティング(Inkjet Printing)方式(soluble工程)で赤色サブ画素領域R、緑色サブ画素領域G、及び青色サブ画素領域Bの第1有機物質層151の上部に赤色発光物質溶液152a、緑色発光物質溶液152b、及び青色発光物質溶液152cを滴下(dropping)する。
【0236】
ここで、垂直方向バンク層20の上側の第1有機物質層151の上面は疎水性を有しているので、水平方向に隣接した各サブ画素領域Pに滴下された赤色発光物質溶液152a、緑色発光物質溶液152b、及び青色発光物質溶液152cが互いに混合されない。
【0237】
また、水平方向のバンク層20の上側の第1有機物質層151の上面は疎水化しなかったので、垂直方向に隣接した各サブ画素領域には同じ赤色発光物質溶液152a、緑色発光物質溶液152b、及び青色発光物質溶液152cが滴下され得る。
【0238】
図19fに示すように、滴下された赤色発光物質溶液152a、緑色発光物質溶液152b、及び青色発光物質溶液152cを乾燥させる工程を遂行する。すなわち、赤色発光物質溶液152a、緑色発光物質溶液152b、及び青色発光物質溶液152cの溶媒を蒸発させ、赤色発光物質溶液152a、緑色発光物質溶液152b、及び青色発光物質溶液152cの溶質のみが第1有機物質層151上に残るようにする。
【0239】
したがって、第1有機物質層151上に、赤色発光層153a、緑色発光層153b、及び青色発光層153cを形成する。ここで、赤色発光層153a、緑色発光層153b、及び青色発光層153cを第2有機物質層と表現する。
【0240】
図19gに示すように、第2有機物質層153a~153c及び第1有機物質層151を含む基板10の全面に蒸着工程で第3有機物質層154を形成する。第3有機物質層154は、図17に示した第1電子輸送層ETL1、n型電荷生成層n-CGL、p型電荷生成層p-CGL、及び第2正孔輸送層HTL2を含み得る。
【0241】
すなわち、第1有機物質層151及び第2有機物質層153a~153cを含む基板10の全面に、第1電子輸送層ETL1、n型電荷生成層n-CGL、p型電荷生成層p-CGL、及び第2正孔輸送層HTL2を順に蒸着する。
【0242】
したがって、図19gでは第3有機物質層154が単一層として示されたが、これに限定されず、第3有機物質層154は、第1電子輸送層ETL1、n型電荷生成層n-CGL、p型電荷生成層p-CGL、及び第2正孔輸送層HTL2を含む多層からなり得る。
【0243】
図19hに示すように、バンク層20の上側の第3有機物質層154の表面をCFまたはSFガスプラズマ処理することにより、バンク層20の上側の第3有機物質層154の表面を疎水化(hydrophobic)させる。すなわち、第3有機物質層154において最上側に形成された第2正孔輸送層HTL2のうちバンク層20の上側に位置する第2正孔輸送層HTL2の表面をCFまたはSFガスプラズマ処理することにより、バンク層20の上側の第2正孔輸送層HTL2の表面を疎水化(hydrophobic)させる。より具体的な疎水化プラズマ処理方法は図6及び図7で説明したので、省略する。
【0244】
図19iに示すように、各サブ画素領域Pにおいて赤色サブ画素領域R、緑色サブ画素領域G、及び青色サブ画素領域Bのうち、赤色サブ画素領域R及び緑色サブ画素領域Gの第3有機物質層154上にのみ第3正孔輸送物質溶液155a、155bを滴下し、青色サブ画素領域Bには第3正孔輸送物質溶液を滴下しない。
【0245】
図19jに示すように、滴下された第3正孔輸送物質溶液155a、155bを乾燥させる工程を遂行することにより、赤色サブ画素領域R及び緑色サブ画素領域Gの第2有機物質層133上に第3正孔輸送層156a、156bを形成する。青色サブ画素領域Bには第3正孔輸送層が形成されない。
【0246】
図19kに示すように、赤色サブ画素領域R、緑色サブ画素領域G、及び青色サブ画素領域Bのそれぞれに赤色発光物質溶液157a、緑色発光物質溶液157b、及び青色発光物質溶液157cを滴下する。
【0247】
図19lに示すように、滴下された赤色発光物質溶液157a、緑色発光物質溶液157b、及び青色発光物質溶液157cを乾燥させる工程を遂行することにより、赤色サブ画素領域R、緑色サブ画素領域G、及び青色サブ画素領域Bのそれぞれに赤色発光層158a、緑色発光層158b、及び青色発光層158cを形成する。ここで、第3正孔輸送層156a、156b、赤色発光層158a、緑色発光層158b、及び青色発光層158cを第4有機物質層と言う。
【0248】
したがって、図19i~図19lで説明したように、赤色サブ画素領域R及び緑色サブ画素領域Gは第2及び第3正孔輸送層HTL2、HTL3が形成されるが、青色サブ画素領域Bには第2正孔輸送層HTL2のみが形成されるので、パイルアップ影響を排除することができる。
【0249】
図19mに示すように、赤色発光層137a、緑色発光層137b、及び青色発光層137cが形成された基板10の全面に蒸着工程で第5有機物質層159を形成する。
【0250】
第5有機物質層159は、図17に示した第2電子輸送層ETL2及び電子注入層EILを含み得る。よって、図19mでは第5有機物質層159が単一層として示されたが、これに限定されず、第5有機物質層159は多層からなり得る。
そして、第5有機物質層159が形成された基板10上に蒸着工程で第2電極60を形成する。
【0251】
一方、本発明の第5実施例製造方法において、パイルアップ影響を甘受する場合、図19i及び図19jで説明した第3正孔輸送層156a、156bの形成工程を省略することもできる。
【0252】
以上で説明したように、本発明の実施例による有機発光表示パネルの製造方法は、蒸着工程及びインクジェットプリンティング工程を多数回繰り返して発光層を多重スタックに構成することができるので、発光素子の発光特性を向上させることができる。
【0253】
また、第2、第4及び第5実施例のように、本発明はインクジェットプリングティング工程と蒸着工程とを並行して発光素子を製造するので、パイルアップ(Pile-up)影響を排除することができる。
【0254】
以上の説明は本発明を例示的に説明したものに過ぎなく、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者によって本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で多様な変形が可能であろう。したがって、本発明の明細書に開示された実施例は本発明を限定するものではない。本発明の範囲は以降の特許請求範囲によって解釈されなければならなく、それと均等な範囲内にあるすべての技術も本発明の範囲に含まれるものと解釈しなければならないであろう。
【符号の説明】
【0255】
10 基板
11 第1電極
20 バンク層
60 第2電極
40a~40c、52a~52c、92a~92c、111a~111c、114a~114c、131a~131c、75a~75c 有機物質溶液
94a、136a、152a、157a 赤色発光物質溶液
94b、136b、152b、157b 緑色発光物質溶液
94c、136c、152c、157c 青色発光物質溶液
95a、137a、153a、158a 赤色発光層
95b、137b、153b、158b 緑色発光層
95c、137c、153c、158c 青色発光層
134a~134b、155a~155b 第3正孔輸送物質溶液
135a~135b、156a~156b 第3正孔輸送層
51、53a~53c、54、91、93a~93c、96、112a~112c、113、115a~115c、116、132a~132c、133、138、151、154、159 有機物質層
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図4d
図4e
図4f
図4g
図5a
図5b
図6
図7
図8
図9
図10a
図10b
図10c
図10d
図10e
図10f
図10g
図10h
図10i
図11
図12
図13a
図13b
図13c
図13d
図13e
図13f
図13g
図13h
図13i
図14
図15
図16a
図16b
図16c
図16d
図16e
図16f
図16g
図16h
図16i
図16j
図16k
図17
図18
図19a
図19b
図19c
図19d
図19e
図19f
図19g
図19h
図19i
図19j
図19k
図19l
図19m