(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098832
(43)【公開日】2023-07-11
(54)【発明の名称】積層型キャパシタ
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20230704BHJP
【FI】
H01G4/30 201N
H01G4/30 201L
H01G4/30 201K
H01G4/30 515
H01G4/30 512
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022193192
(22)【出願日】2022-12-02
(31)【優先権主張番号】10-2021-0191598
(32)【優先日】2021-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジェ ヒー
(72)【発明者】
【氏名】ベイク、スン イン
(72)【発明者】
【氏名】ホン、ジ ス
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジェ スン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジョン ホ
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AD02
5E001AD03
5E001AE04
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC31
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5E082GG28
5E082PP03
(57)【要約】
【課題】高い信頼性を有する誘電体組成物とこれを用いた積層型キャパシタを提供する。
【解決手段】
本発明の一実施形態は、本体及び上記本体の外部に配置された外部電極を含み、上記本体は、複数の誘電体層及び上記誘電体層を間に挟んで積層された複数の内部電極を含む活性部、及び上記積層体において、上記内部電極が露出した側面の少なくとも一つの側面を覆うサイドマージン部を含み、上記サイドマージン部は、BaTiO
3系主成分と、希土類元素を含む第1副成分と、Zrを含む第2副成分とを含み、上記主成分100モル当たりのモル含有量を基準に、上記希土類元素のモル含有量をREとするとき、上記Zrのモル含有量及びREは、0.20≦Zr/RE≦0.37の条件を満たす誘電体を含む積層型キャパシタを提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体及び前記本体の外部に配置された外部電極を含み、
前記本体は、複数の誘電体層及び前記誘電体層を間に挟んで積層された複数の内部電極を含む活性部、及び前記活性部において前記内部電極が露出した側面の少なくとも一つの側面を覆うサイドマージン部を含み、
前記サイドマージン部は、BaTiO3系主成分と、希土類元素を含む第1副成分と、Zrを含む第2副成分とを含み、前記BaTiO3系主成分が100モル当たりのモル含有量を基準に、前記希土類元素のモル含有量をREとするとき、前記Zrのモル含有量及びREは、0.20≦Zr/RE≦0.37の条件を満たす誘電体を含む、積層型キャパシタ。
【請求項2】
前記希土類元素は、Sc、Y、La、Nd、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Yb、Luから構成された群から選択された少なくとも一つの元素を含む、請求項1に記載の積層型キャパシタ。
【請求項3】
前記サイドマージン部は、Baを含む第3副成分をさらに含む、請求項1または2に記載の積層型キャパシタ。
【請求項4】
前記Zr及びBaのモル含有量は、0.25≦Zr/Ba≦0.85の条件を満たす、請求項3に記載の積層型キャパシタ。
【請求項5】
前記活性部において、前記サイドマージン部に隣接した領域である界面部におけるZrのモル含有量は、前記活性部の中央部におけるZrのモル含有量よりも高い、請求項1または2に記載の積層型キャパシタ。
【請求項6】
前記活性部の中央部はZrを含まない、請求項5に記載の積層型キャパシタ。
【請求項7】
前記サイドマージン部の誘電体は、コア部及び前記コア部とは異なる組成を有するシェル部を含むコア-シェル構造の誘電体グレインを含む、請求項1または2に記載の積層型キャパシタ。
【請求項8】
前記シェル部は、0.20≦Zr/RE≦0.37の条件を満たす、請求項7に記載の積層型キャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型キャパシタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
キャパシタは電気を蓄えることができる素子であり、基本的に2つの電極を対向させて電圧をかけると、各電極に電気が蓄積されるものである。直流電圧を印加した場合には、電気が蓄電されてキャパシタ内部に電流が流れるが、蓄積が完了すると電流が流れなくなる。一方、交流電圧を印加した場合、電極の極性が交変しながら交流電流が流れるようになる。
【0003】
このようなキャパシタは、電極間に備えられる絶縁体の種類に応じて、アルミニウムで電極を構成し、上記アルミニウム電極間に薄い酸化膜を備えるアルミニウム電解キャパシタ、電極材料としてタンタルを用いるタンタルキャパシタ、電極間にチタン酸バリウムなどの高誘電率の誘電体を用いるセラミックキャパシタ、電極間に備えられる誘電体として高誘電率系セラミックを多層構造で用いる積層セラミックキャパシタ(Multi-Layer Ceramic Capacitor、MLCC)、電極間の誘電体としてポリスチレンフィルムを用いるフィルムキャパシタなど様々な種類に区分することができる。
【0004】
この中で、積層セラミックキャパシタは温度特性及び周波数特性に優れ、小型で実現可能であるという利点を有しており、最近では、高周波回路などの多様な分野で多く応用されている。最近では、積層セラミックキャパシタをさらに小さく実現するための試みが続けられており、このために誘電体層及び内部電極を薄く形成している。
【0005】
積層型キャパシタを小型化しながら容量を増加させるための方法として、内部電極が本体の幅方向に露出するようにすることで、マージンのない設計によって内部電極の幅方向の面積を最大化するが、このようなチップ製作後の焼成前段階でチップの幅方向の電極露出面にサイドマージン部を別途付着して完成する工程が適用されている。しかしながら、このようなサイドマージン工法の場合、サイドマージン部自体の緻密度を確保し難く、活性部とサイドマージン部との界面の間に空孔(void)やクラックなどが発生するという問題があった。したがって、超小型及び高容量の製品においてサイドマージン部の耐衝撃性及び耐クラック性を向上させることができる誘電体材料の適用が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一目的は、高い信頼性を有する誘電体組成物とこれを用いた積層型キャパシタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するための方法として、本発明は一例によって新規な誘電体組成物を提案し、具体的には、本体及び上記本体の外部に配置された外部電極を含み、上記本体は複数の誘電体層及び上記誘電体層を間に挟んで積層された複数の内部電極を含む活性部、及び上記積層体において上記内部電極が露出した側面の少なくとも一つの側面を覆うサイドマージン部を含み、上記サイドマージン部は、BaTiO3系主成分と、希土類元素を含む第1副成分と、Zrを含む第2副成分とを含み、上記主成分100モル当たりのモル含有量を基準に、上記希土類元素のモル含有量をREとするとき、上記Zrのモル含有量及びREは、0.20≦Zr/RE≦0.37の条件を満たす誘電体を含む。
【0008】
一実施形態において、上記希土類元素は、Sc、Y、La、Nd、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Yb、Luからなる群から選択された少なくとも一つの元素を含むことができる。
【0009】
一実施形態において、上記サイドマージン部は、Baを含む第3副成分をさらに含むことができる。
【0010】
一実施形態において、上記Zr及びBaのモル含有量は、0.25≦Zr/Ba≦0.85の条件を満たすことができる。
【0011】
一実施形態において、上記活性部において、上記サイドマージン部に隣接した領域である界面部におけるZrのモル含有量、上記活性部の中央部におけるZrのモル含有量よりも高いことができる。
【0012】
一実施形態において、上記活性部の中央部はZrを含まないことができる。
【0013】
一実施形態において、上記サイドマージン部の誘電体は、コア部及び上記コア部とは異なる組成を有するシェル部を含むコア-シェル構造の誘電体グレインを含むことができる。
【0014】
一実施形態において、上記シェル部は、0.20≦Zr/RE≦0.37の条件を満たすことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一例に係る誘電体組成物の場合、焼結時の緻密化に有利でありながらも、粒成長は効果的に抑制されることができ、これを積層型キャパシタに利用する際に信頼性が向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態による積層型キャパシタの外観を概略的に示した斜視図である。
【
図2】
図1の積層型キャパシタにおけるI-I'線に沿った断面図である。
【
図3】
図1の積層型キャパシタにおけるII-II'線に沿った断面図である。
【
図4】本発明の誘電体層の微細構造を説明するための概略図である。
【
図5a】サイドマージン部の緻密度を示したイメージである。
【
図5b】サイドマージン部の粒成長の様相を示したイメージである。
【
図6a】サイドマージン部の緻密度を示したイメージである。
【
図6b】サイドマージン部の粒成長の様相を示したイメージである。
【
図7a】サイドマージン部の緻密度を示したイメージである。
【
図7b】サイドマージン部の粒成長の様相を示したイメージである。
【
図8a】高温信頼性の実験結果を示したグラフである。
【
図8b】耐湿信頼性の実験結果を示したグラフである。
【
図9a】高温信頼性の実験結果を示したグラフである。
【
図9b】耐湿信頼性の実験結果を示したグラフである。
【
図10a】高温信頼性の実験結果を示したグラフである。
【
図10b】耐湿信頼性の実験結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は、いくつかの他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(又は強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上の同一の符号で示される要素は同一の要素である。
【0018】
そして、図面において本発明を明確に説明するために説明と関係のない部分は省略し、複数の層及び領域を明確に表現するために厚さを拡大して示し、同一思想の範囲内の機能が同一である構成要素は、同一の参照符号を付与して説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というのは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態による積層型キャパシタの外観を概略的に示した斜視図であり、
図2は、
図1の積層型キャパシタにおけるI-I'線に沿った断面図であり、
図3は、
図1の積層型キャパシタにおけるII-II'線に沿った断面図であり、
図4は、本発明の誘電体層の微細構造を説明するための概略図である。
【0020】
図1~
図3を参照すると、本発明の一実施形態による積層型キャパシタ100は、本体110及び外部電極131、132を含み、ここで、本体110は複数の誘電体層111及びこれを間に挟んで積層された複数の内部電極121、122を含む活性部112と、活性部112で内部電極121、122が露出した側面の少なくとも一つの側面を覆うサイドマージン部113を含む。
【0021】
活性部112は、複数の誘電体層111が第1方向(X方向)に積層された積層構造を含み、例えば、複数のグリーンシートを積層した後、焼結して得られる。このような焼結工程によって、複数の誘電体層111は一体化した形態を有することができる。活性部112は、複数の内部電極121、122を含んで静電容量を形成する活性領域に該当し、複数の内部電極121、122のないカバー部114が配置されることができる。活性部112に含まれた誘電体層111は焼成された状態であり、隣接する誘電体層111間の境界は走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0022】
本発明の一実施形態によると、誘電体層111を形成する原料は、十分な静電容量が得られる限り特に制限されない。例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料またはチタン酸ストロンチウム系材料などを用いることができる。上記チタン酸バリウム系材料は、BaTiO3系セラミック粉末を含むことができ、上記セラミック粉末の例示としては、BaTiO3、BaTiO3にCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)などが一部固溶された(Ba1-xCax)TiO3、Ba(Ti1-yCay)O3、(Ba1-xCax)(Ti1-yZry)O3、またはBa(Ti1-yZry)O3などがある。誘電体層111を形成する材料は、チタン酸バリウム(BaTiO3)などのパウダーに本発明の目的に応じて様々なセラミック添加剤、有機溶剤、結合剤、分散剤などが添加されることができる。例えば、誘電体層111は、チタン酸バリウム(BaTiO3)などのパウダーを含んで形成されたスラリーをキャリアフィルム(carrier film)上に塗布及び乾燥して複数個のセラミックシートを設けることによって形成されることができる。セラミックシートは、セラミック粉末、バインダー、溶剤を混合してスラリーを製造し、スラリーをドクターブレード法で数μmの厚さを有するシート(sheet)状に製作することによって形成されることができるが、これに限定されない。
【0023】
サイドマージン部113は、図示されたように、活性部112において第2方向(Y方向)に垂直な面S1、S2に配置されることができ、第2方向(Y方向)は第1方向(X方向)に垂直であり、外部電極131、132が向かい合う方向である第3方向(Z方向)にも垂直な方向である。サイドマージン部113は、活性部112を製作した後、焼成前段階で内部電極121、122が露出した活性部112の側面に付着されることができる。ここで、活性部112とは異なり、サイドマージン部113は、圧着工程を別途行わないなどの理由からセラミック粒子の充填密度が低いことがある。本実施形態においては、上述した組成条件を有する誘電体組成物をサイドマージン部113が含むことで、焼結後の誘電体の緻密度に優れながらも結晶粒が微細かつ均一になるようにした。
【0024】
具体的には、サイドマージン部113は、BaTiO3系主成分と、希土類元素を含む第1副成分と、Zrを含む第2副成分とを含み、上記主成分100モル当たりのモル含有量を基準に、上記希土類元素のモル含有量をREとするとき、上記Zrのモル含有量とREは、0.20≦Zr/RE≦0.37の条件を満たす誘電体を含むことで、緻密度、強度特性、結晶粒の大きさの均一性などに優れることができる。すなわち、サイドマージン部113に含まれた誘電体が上述した組成条件を満たす場合、緻密度が向上する一方、粒成長は効果的に抑制された焼結体が得られる。したがって、このような誘電体を含むサイドマージン部113は、緻密度、強度特性、結晶粒の大きさの均一性などが向上することができる。
【0025】
サイドマージン部113に含まれた上記誘電体における副成分の組成条件は、下記で説明する主要成分の機能及び実験例に基づいて設定されたものである。誘電体組成物の焼結は、イオン間の物質移動によって発生し、大きく緻密化及び粒成長の段階を経るようになる。ここで、緻密化はイオンの表面拡散によって、粒成長は全表面積を下げるための界面移動によって発生する。この場合、誘電体内に高抵抗成分である粒界が多く存在するほど電荷の移動度を下げることができるため、粒界の分率が多くなるように誘電体グレインが微細化すると、誘電体の誘電率が向上することができる。但し、粒界も電界強度が高くなる薄層環境(例えば、誘電体層の厚さが0.5μm以下である場合)では、ショットキーバリア(Schottky barrier)が低くなって電気導電性が高くなることがある。粒界以外にも、誘電体グレインのコア部とシェル部との界面においても高いポテンシャルバリア(potential barrier)が形成されるように、BaTiO3系物質よりも仕事関数が高い元素を副成分として添加することができ、母材及び添加剤の反応性が高くなるようにBaTiO3系主成分粒子の表面をイオン化されたコーティング表面とする工法を用いることができる。
【0026】
このような粒界及びコア-シェル構造における界面への考慮事項以外に、誘電体が薄型化し、高電界環境で高いレベルの絶縁抵抗を有するためには、電荷の濃度が低いことが有利である。具体的には、MLCC絶縁抵抗劣化の主要原因として作用する酸素空孔欠陥を最小化する際に結晶粒内におけるp-n接合(junction)形成による絶縁抵抗劣化を防止することができ、本実施形態ではグレイン内の伝導現象を抑制するために、n-type傾向性の高い元素として希土類元素を用いた。また、Zr副成分の場合、誘電体の粒成長を制御し、Ba-Tiのモル比制御に効果的であり、本発明の発明者らが研究した結果によると、Zr及び希土類元素の含有量の割合を最適化する場合、誘電体の信頼性の向上効果を確認することができる。
【0027】
サイドマージン部113に含まれた上記誘電体の副成分に関してさらに具体的な例を説明すると、まず、上記希土類元素はSc、Y、La、Nd、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Yb、Luから構成された群から選択された少なくとも一つの元素を含むことができる。また、サイドマージン部113は、Baを含む第3副成分をさらに含むことができ、この場合、上記Zr及びBaのモル含有量は、0.25≦Zr/Ba≦0.85の条件を満たすことができる。
【0028】
本実施形態の場合、上述したようにサイドマージン部113にZr成分が添加され、活性部112の場合、サイドマージン部113に隣接した領域である界面部におけるZrのモル含有量は活性部112の中央部におけるZr含有量よりも高いことができる。さらに、活性部112の中央部は実質的にZrを含まないこともできる。
【0029】
サイドマージン部113の誘電体は、コア-シェル構造の誘電体グレインを含むことができ、
図4を参照してこれを説明する。サイドマージン部113の誘電体は、コア部11a及びこれと異なる組成を有するシェル部11bを含むコア-シェル構造の誘電体グレイン11を含み、これ以外にコア-シェル構造ではない誘電体グレイン12も含むことができる。この場合、誘電体グレイン11、12は、上記誘電体の組成条件、すなわち、BaTiO
3系主成分と、希土類元素を含む第1副成分と、Zrを含む第2副成分とを含み、上記主成分100モル当たりのモル含有量を基準に、上記希土類元素のモル含有量をREとするとき、上記Zrのモル含有量及び0.20≦Zr/RE≦0.37の条件を満たす。さらに具体的な例として、上述した第1及び第2副成分は、BaTiO
3系主成分に固溶されてシェル部11bを形成することができる。これにより、シェル部11bは、BaTiO
3系主成分と、希土類元素を含む第1副成分と、Zrを含む第2副成分とを含み、上記主成分100モル当たりのモル含有量を基準に、上記希土類元素のモル含有量をREとするとき、上記Zrのモル含有量及び0.20≦Zr/RE≦0.37の条件を満たすことができる。以下の例においては、シェル部11bに第1及び第2副成分が存在することを説明するが、コア部11aにも希土類の副成分が一部存在することもできる。
【0030】
コア-シェル構造の誘電体グレイン11においてコア部11aの直径をD1とするとき、5nm≦D1≦100nmの条件を満たすことができる。そして、誘電体グレイン11の直径をD2とするとき、50nm≦D2≦600nmの条件を満たすことができる。このとき、誘電体グレイン11の直径は、各誘電体グレイン11の面積を測定し、上記面積を有する円相当直径に換算した値を誘電体グレイン11の直径とすることができる。コア-シェル構造の誘電体グレイン11における希土類元素及びZrのモル含有量は、
図4に示したように、一つのグレイン11の一側から他側に向かって線を引き、等間隔で9つの点(P1~P9)を打って、P1~P9における希土類元素及びZrの少なくとも一つの含有量をSTEM/EDSを用いて分析することができる。より具体的に説明すると、上記誘電体の一領域に対してSTEMを用いてスキャンしてイメージを得た後、STEM/EDS分析によって位置P1~P9で検出しようとする元素の含有量を分析することができる。このような分析によってコア部11aとシェル部11bの境界を決定することができ、例えば、誘電体グレイン11の表面から内部に向かうにつれて希土類元素やZrが実質的に検出されなくなる領域をその境界と決定することができる。
【0031】
一方、上述した誘電体に含まれた副成分は、酸化物または炭酸塩の形態で添加されることができるが、焼結した後には、酸化物または炭酸塩の形態ではないBaTiO3系主成分に固溶された形態で存在することができる。但し、副成分の主要元素の含有量の割合は、ほぼ類似して維持されることができ、焼結前の誘電体組成物に含まれた主成分及び副成分の含有量に基づいて、焼結後の誘電体層の各元素含有量を計算することができる。また、活性部112、サイドマージン部113、カバー部114の誘電体に含まれた各元素の含有量は、非破壊工法、破壊工法などを用いて測定することができる。例えば、非破壊工法の場合、TEM-EDSを用いてチップの中央部で誘電体グレインの内部の成分を分析することができる。具体的には、焼結が完了された本体の一断面のうち、誘電体層を含む領域で集束イオンビーム(FIB)装備を用いて薄片化された分析試料を用意する。そして、薄片化された試料を、Arイオンミリングを用いて表面のダメージ層を除去し、この後、STEM-EDSを用いて得られたイメージで各成分のマッピング及び定量分析を行う。この場合、各成分の定量分析グラフは、各元素の質量分率で得られることができるが、これをモル分率または原子分率に換算して示すことができる。また、破壊工法の場合、積層型キャパシタを粉砕して内部電極を除去した後、誘電体部分を選別し、このように選別された誘電体を誘導結合プラズマ分光分析器(ICP-OES)、誘導結合プラズマ質量分析器(ICP-MS)などの装置を用いて誘電体の成分を分析することができる。
【0032】
複数の内部電極121、122は、セラミックグリーンシートの一面に所定の厚さで導電性金属を含むペーストを印刷した後、これを焼結して得られる。この場合、複数の内部電極121、122は、
図2に示したように、本体110の互いに対向する第3方向(Z方向)に露出した第1及び第2内部電極121、122を含むことができる。第1及び第2内部電極121、122は、互いに異なる外部電極131、132と連結され、駆動時に互いに異なる極性を有することができ、これらの間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離されることができる。但し、外部電極131、132の個数や内部電極121、122との連結方式は実施形態によって変わることができる。内部電極121、122を構成する主要構成物質としては、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)などが挙げられ、これらの合金も使用することができる。
【0033】
外部電極131、132は、本体110の外部に形成され、第1及び第2内部電極121、122とそれぞれ接続された第1及び第2外部電極131、132を含むことができる。外部電極131、132は、導電性金属を含む物質をペーストで製造した後、これを本体に塗布する方法などで形成されることができ、導電性金属の例として、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、金(Au)またはこれらの合金が挙げられる。ここで、外部電極131、132は、Ni、Snなどをさらに含むめっき層を含むことができる。
【0034】
以下、本発明の発明者が行った実験例によって本発明をさらに詳細に説明するが、これは発明の具体的な理解を助けるためのものであり、本発明の範囲が実験例によって限定されるものではない。
【0035】
母材主成分は50-70nm級のBaTiO
3粉末を用い、このとき、副成分の具体的な組成は下記表1のとおりである。セラミックスラリーの製作時に、母材主成分及び副成分パウダーを、ジルコニアボールを用いて混合/分散し、エタノール/トルエンと分散剤を混合した後、機械的ミリング(milling)を施した。主成分と副成分の他に、Si、Al、Na、Liなどを含む焼結助剤成分を添加した。また、誘電体シートの強度を高めるためにバインダー混合工程を追加した。製造されたスラリーを用いて活性部用セラミックグリーンシートを形成し、その上に内部電極用ペーストを塗布した。そして、ヘッド吐出方式のオン-ロール(on-roll)成形コーター(coater)を用いて約10-20μmの厚さで製作され、このように得られた成形シートを活性部用の積層体の内部電極露出部に付着した。一方、表1の試料の場合、副成分の含有量は、BaTiO
3の主成分100モルを基準に添加されたモル含有量(焼結体内に存在する副成分元素のモル含有量の基準)を示し、各記号の基準は以下のとおりである。第1副成分の希土類元素の場合、Tb及びDyを添加した。但し、他の希土類元素、例えば、Sc、Y、La、Nd、Eu、Gd、Ho、Er、Yb、Luをともに添加することができ、希土類元素の全体含有量及びZrの含有量が重要な要素といえる。また、全てのサンプルに第1及び第2副成分以外に第3副成分としてBa成分をBaCO
3の形態で2.0モル添加した。一方、下記表1において、各記号の基準は、以下のとおりである。
◎:優秀、○:良好、△:普通、X:不良
【表1】
【0036】
上記のように製作が完了されたグリーンチップ形態のセラミック積層体を400℃以下、窒素雰囲気でバインダーバーン-アウト(burn out)過程を経て焼成温度1200℃以下、水素濃度0.5%H
2以下の条件で焼成した。この後、得られた試料について高温信頼性及び耐湿信頼性を測定した。
図5a~7bの(a)はサイドマージン部の緻密度、(b)は粒成長の様相を示したイメージである。ここで、
図5a及び
図5bは、Zr/RE<0.20であるサンプル、
図6a及び
図6bは、0.20≦Zr/RE≦0.37条件を満たすサンプル(本発明の実施例として*で示したサンプル3、10-12、17-18、20、23-24、27)、
図7a及び
図7bは、0.37<Zr/REであるサンプルに該当する。また、
図8a~
図10bは、高温信頼性(
図8a、9a、10a)及び耐湿信頼性(
図8b、9b、10b)の実験結果を示したグラフであり、それぞれ
図5a~
図7bのサンプルに対応する。上記表1及び
図5a~10bの実験結果から分かるように、サイドマージン部における誘電体の添加剤の含有量が0.20≦Zr/RE≦0.37である場合、サイドマージン部の緻密度及び粒成長の程度が良好であり、これによって高温信頼性及び耐湿信頼性のレベルが向上されることが確認できる(
図6a、6b、9a、9b)。これとは異なって、Zr/RE<0.20であるサンプルの場合(
図5a、5b、8a、8b)、サイドマージン部において誘電体の緻密度が低く、マージン部の粒成長も少なく起こることが確認できる。これにより、高温信頼性及び耐湿信頼性の特性の全てが劣化した。また、0.37<Zr/REのサンプルの場合(
図7a、7b、10a、10b)、サイドマージン部の緻密度は良好なレベルであったが、粒成長が過度に起こり、これによって特に、高温信頼性の劣化が発生することを確認した。
【0037】
結論として、上記実験結果によると、0.20≦Zr/RE≦0.37の条件を満たす場合、サイドマージン部の緻密度に優れ、結晶粒が微細化しながら、その大きさも均一になることができる。これにより、これを適用した積層型キャパシタの耐電圧特性などの信頼性が向上することができる。そして好ましい条件の例として、Zrのモル含有量の条件は0.50モル≦Zr≦1.7であることができ、これをBaの含有量との割合で示す場合、0.25≦Zr/Ba≦0.85に該当する。
【0038】
本発明は、上述した実施形態及び添付された図面によって限定されるものではなく、添付された特許請求の範囲によって限定される。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で多様な形態の置換、変形及び変更が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者によって明らかであり、これもまた添付された特許請求の範囲に記載された技術的思想に属するといえる。
【符号の説明】
【0039】
100 積層型キャパシタ
110 本体
111 誘電体層
112 活性部
113 サイドマージン部
114 カバー部
121、122 内部電極
131、132 外部電極