(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098834
(43)【公開日】2023-07-11
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20230704BHJP
【FI】
H01G4/30 201N
H01G4/30 201L
H01G4/30 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194753
(22)【出願日】2022-12-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0191316
(32)【優先日】2021-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、キュン シク
(72)【発明者】
【氏名】パク、シ テク
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ミン ヨウン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジェ スン
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC09
5E001AE01
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE05
5E001AF06
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5E082GG11
5E082GG28
5E082JJ03
5E082JJ12
5E082JJ23
5E082PP03
(57)【要約】
【課題】本発明は、積層型電子部品に関する。
【解決手段】
本発明の一実施形態による積層型電子部品は、誘電体層、及び上記誘電体層を挟んで交互に配置される第1及び第2内部電極を含み、第1方向に対向する第1及び第2面、上記第1及び第2面と連結されて第2方向に対向する第3及び第4面、上記第1~第4面と連結されて第3方向に対向する第5及び第6面を有する本体と、上記本体上に配置される外部電極と、を含み、上記本体は、上記誘電体層を挟んで交互に配置される上記第1及び第2内部電極を含み、容量が形成される容量形成部と、上記容量形成部の第3方向の両端面(end surface)に配置されるマージン部と、を含み、上記誘電体層及び上記マージン部はBaTiO
3系主成分を含み、上記マージン部は、Znを含む酸化物を第1副成分として含み、上記マージン部が含むTi100mol%に対して、上記Znを0.5mol%以上1.5mol%未満含むことができる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層、及び前記誘電体層を挟んで交互に配置される第1及び第2内部電極を含み、第1方向に対向する第1及び第2面、前記第1及び第2面と連結されて第2方向に対向する第3及び第4面、前記第1~第4面と連結されて第3方向に対向する第5及び第6面を有する本体と、
前記本体上に配置される外部電極と、を含み、
前記本体は、前記誘電体層を挟んで交互に配置される前記第1及び第2内部電極を含み、容量が形成される容量形成部と、前記容量形成部の第3方向の両端面に配置されるマージン部と、を含み、
前記誘電体層及び前記マージン部はBaTiO3系主成分を含み、
前記マージン部は、Znを含む酸化物を第1副成分として含み、前記マージン部が含むTi100mol%に対して、前記Znを0.5mol%以上1.5mol%未満含む、積層型電子部品。
【請求項2】
前記Znを含む酸化物はZnOである、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記マージン部は、複数の誘電体グレインを含み、
前記マージン部に含まれる複数の誘電体グレインの平均グレインサイズは90nmを超え、140nm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記マージン部は、複数の誘電体グレイン、及び前記複数の誘電体グレインの間に配置されるグレインバウンダリーを含み、
前記Znを含む酸化物は、前記マージン部のグレインバウンダリーに偏析されて配置される、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記マージン部及び前記誘電体層は、複数の誘電体グレインをそれぞれ含み、
前記マージン部に含まれる誘電体グレインの平均グレインサイズをDm、前記誘電体層に含まれる誘電体グレインの平均グレインサイズをDaとしたときに、1/4<Dm/Da<1/2を満たす、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記マージン部は、原子価固定アクセプタ元素Mgを含む酸化物または炭酸塩を第2副成分として含み、前記マージン部が含むTi100mol%に対して、前記Mgを0.1mol%以上1.5mol%以下含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記マージン部は、Dyを含む酸化物または炭酸塩を第3副成分として含み、前記マージン部が含むTi100mol%に対して、前記Dyを0.5mol%以上2.0mol%以下含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記マージン部は、Tbを含む酸化物または炭酸塩を第4副成分として含み、前記マージン部が含むTi100mol%に対して、前記Tbを0.2mol%以上0.5mol%以下含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記マージン部は、Si及びAlのうち少なくとも1つを含む酸化物またはSiを含むガラス化合物を第5副成分として含み、前記マージン部が含むTi100mol%に対して、SiまたはAlを3.0mol%以上5.6mol%以下含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
前記誘電体層は、Znを含む酸化物を含まない、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項11】
前記誘電体層は、Znを含む酸化物を含み、
前記マージン部に含まれるZnを含む酸化物の含量と、前記誘電体層に含まれるZnを含む酸化物の含量が互いに異なる、請求項1から10のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項12】
前記マージン部に含まれるZnを含む酸化物の含量が、前記誘電体層に含まれるZnを含む酸化物の含量より多い、請求項11に記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の1つである積層セラミックキャパシター(MLCC:Multi-Layered Ceramic Capacitor)は、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマディスプレイパネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピューター、スマートフォン、及び携帯電話などの種々の電子製品のプリント回路基板に取り付けられ、電気を充電または放電させる役割を果たすチップ形態のコンデンサーである。
【0003】
かかる積層セラミックキャパシターは、小型でありながらも高容量が保障され、且つ実装が容易であるという利点を有するため、種々の電子装置の部品として用いられることができる。近年、電子機器の小型化及び高性能化に伴い、積層セラミックキャパシターも小型化及び高容量化する傾向にあり、このような流れにより、積層セラミックキャパシターの高信頼性を確保することの重要度が高くなっている。
【0004】
近年、積層セラミックキャパシターは、小型化及び高容量化を達成するために、誘電体層または内部電極層の薄層化が進んでいる。誘電体層が薄層化する場合、高い有効容量及び温度安定性を確保するためには、誘電体の焼成時に伴う粒成長を抑えることが必要である。そのために、従来は、粒界偏析によるドラッグ効果(Drag Effect)を利用して誘電体層の粒成長抑制効果を誘導しようとする試みがあった。
【0005】
しかしながら、薄膜の誘電体層には、単位厚さ当たりに大きい電界が印加され、温度変化に敏感であるという問題があり、実際の使用条件下で有効容量と温度特性を実現することが困難であるのが実情である。
【0006】
また、粒成長を過度に抑える場合、誘電体層の緻密度低下の問題が発生する恐れがあり、誘電率が低下するという問題が発生する恐れがある。特に、容量形成部に含まれる誘電体層は、積層型電子部品の容量形成に寄与する部分であるため、誘電体グレインの粒成長を過度に抑える場合、小型化及び高性能化が難しい。
【0007】
さらに、容量形成部の側面にマージン部が付着される構造を有する積層型電子部品は、主にマージン部の端部で耐電圧破壊が起こるという問題が発生する恐れがある。
【0008】
したがって、このような問題を解決するために、誘電体層の過度な粒成長抑制効果に対する副作用を低減するとともに、積層型電子部品の信頼性を向上できるように、マージン部の成分を具体化する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の様々な目的の1つは、容量形成部に含まれる誘電体層の粒成長を過度に抑えた場合に発生し得る緻密度低下及び誘電率低下の問題を解決することにある。
【0010】
本発明の様々な目的の1つは、マージン部の粒成長を抑制できない場合に、DFが増加し、DC電界下で有効容量変化率が増加する問題を解決することにある。
【0011】
本発明の様々な目的の1つは、マージン部の粒成長を抑えた場合に緻密度が減少し、外部からの水分浸透に弱くなるという問題を解決することにある。
【0012】
但し、本発明の目的は上述の内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施形態による積層型電子部品は、誘電体層、及び上記誘電体層を挟んで交互に配置される第1及び第2内部電極を含み、第1方向に対向する第1及び第2面、上記第1及び第2面と連結されて第2方向に対向する第3及び第4面、上記第1~第4面と連結されて第3方向に対向する第5及び第6面を有する本体と、上記本体上に配置される外部電極と、を含み、上記本体は、上記誘電体層を挟んで交互に配置される上記第1及び第2内部電極を含み、容量が形成される容量形成部と、上記容量形成部の第3方向の両端面に配置されるマージン部と、を含み、上記誘電体層及び上記マージン部はBaTiO3系主成分を含み、上記マージン部は、Znを含む酸化物を第1副成分として含み、上記マージン部が含むTi100mol%に対して、上記Znを0.5mol%以上1.5mol%未満含むことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の様々な効果の一効果は、容量形成部に含まれる誘電体層の粒成長を過度に抑制しなくても、マージン部に含まれる誘電体層の粒成長を抑えることで、低温緻密化を可能とし、DF(誘電損失、Dissipation Factor)を減少させ、DC電界下での有効容量変化率を減少させることである。
【0015】
本発明の様々な効果の一効果は、マージン部の粒成長を抑えながらも緻密性を向上させ、高温信頼性及び耐湿信頼性を向上させることである。
【0016】
本発明の多様で且つ有益な利点と効果は上述の内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態による積層型電子部品を概略的に示した斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態による積層型電子部品の本体を分解して示した分解斜視図である。
【
図5】本発明の一実施例及び比較例によるマージン部のグレインサイズを示したグラフである。
【
図6】本発明の一実施例による過酷信頼性(a)及び耐湿信頼性(b)を評価した結果のグラフである。
【
図7】本発明の一実施例による過酷信頼性(a)及び耐湿信頼性(b)を評価した結果のグラフである。
【
図8】本発明の比較例による過酷信頼性(a)及び耐湿信頼性(b)を評価した結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(または強調表示や簡略化表示)がされることがある。
【0019】
なお、本発明を明確に説明すべく、図面において説明と関係ない部分は省略し、様々な層及び領域を明確に表現するために厚さを拡大して示し、同一思想の範囲内において機能が同一である構成要素に対しては同一の参照符号を用いて説明する。さらに、明細書全体において、ある構成要素を「含む」というのは、特に異なる趣旨の説明がされていない限り、他の構成要素を除外する趣旨ではなく、他の構成要素をさらに含むことができるということを意味する。
【0020】
図面において、第1方向は積層方向または厚さ(T)方向、第2方向は長さ(L)方向、第3方向は幅(W)方向と定義されることができる。
【0021】
図1は本発明の一実施形態による積層型電子部品を概略的に示した斜視図である。
【0022】
【0023】
【0024】
図4は本発明の一実施形態による積層型電子部品の本体を分解して示した分解斜視図である。
【0025】
以下、
図1から
図4を参照して、本発明の一実施形態による積層型電子部品100について説明する。
【0026】
本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、誘電体層、及び上記誘電体層を挟んで交互に配置される第1及び第2内部電極121、122を含み、第1方向に対向する第1及び第2面1、2、上記第1及び第2面と連結されて第2方向に対向する第3及び第4面3、4、上記第1~第4面と連結されて第3方向に対向する第5及び第6面5、6を有する本体110と、上記本体上に配置される外部電極131、132と、を含み、上記本体は、上記誘電体層を挟んで交互に配置される上記第1及び第2内部電極を含み、容量が形成される容量形成部Acと、上記容量形成部の第3方向の両端面(end surface)に配置されるマージン部114、115と、を含み、上記誘電体層及び上記マージン部はBaTiO3系主成分を含み、上記マージン部は、Znを含む酸化物を第1副成分として含み、上記マージン部が含むTi100mol%に対して上記Znを0.5mol%以上1.5mol%未満含むことができる。
【0027】
本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されている。
【0028】
本体110の具体的な形状は特に制限されないが、図示されたように、本体110は、六面体形状またはそれに類似の形状からなることができる。焼成過程における、本体110に含まれているセラミック粉末の収縮により、本体110は、完全な直線を有する六面体形状ではないが、実質的に六面体形状を有することができる。
【0029】
本体110は、第1方向に互いに対向する第1及び第2面1、2と、上記第1及び第2面1、2と連結されて第2方向に互いに対向する第3及び第4面3、4と、第1及び第2面1、2と連結され、且つ第3及び第4面3、4と連結されて第3方向に互いに対向する第5及び第6面5、6と、を有することができる。
【0030】
本体110を成す複数の誘電体層111は焼成された状態であって、隣接する誘電体層111の間の境界は、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いずには確認が困難な程度に一体化されていることができる。
【0031】
本発明の一実施形態によると、上記誘電体層111を形成する原料は、十分な静電容量を得ることができれば特に制限されない。例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料、またはチタン酸ストロンチウム系材料などが使用できる。上記チタン酸バリウム系材料は、BaTiO3系セラミック粉末を含むことができ、上記セラミック粉末の例として、BaTiO3、BaTiO3にCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)などが一部固溶された(Ba1-xCax)TiO3(0<x<1)、Ba(Ti1-yCay)O3(0<y<1)、(Ba1-xCax)(Ti1-yZry)O3(0<x<1、0<y<1)、またはBa(Ti1-yZry)O3(0<y<1)などが挙げられる。
【0032】
また、上記誘電体層111を形成する原料は、チタン酸バリウム(BaTiO3)などの粉末に、本発明の目的に応じて、種々のセラミック添加剤、有機溶剤、結合剤、分散剤などが添加されることができる。
【0033】
一方、誘電体層111の平均厚さtdは、特に限定する必要はない。例えば、誘電体層111の平均厚さtdは、0.2μm以上2μm以下であることができる。
【0034】
但し、一般に、誘電体層を0.6μm未満の厚さで薄く形成する場合、特に、誘電体層の厚さが0.35μm以下である場合には、積層型電子部品100の信頼性がさらに低下する恐れがある。
【0035】
本発明の一実施形態によると、上記マージン部は、Znを含む酸化物を第1副成分として含み、上記マージン部が含むTi100mol%に対して、上記Znを0.5mol%以上1.5mol%未満含むため、誘電体層111の平均厚さtdが0.35μm以下である場合に、本発明による信頼性向上効果がより顕著になることができる。
【0036】
誘電体層111の平均厚さtdは、上記第1内部電極121と第2内部電極122との間に配置される誘電体層111の平均厚さtdを意味することができる。
【0037】
誘電体層111の平均厚さtdは、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を1万倍率の走査型電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)でイメージスキャンして測定することができる。より具体的に、スキャンされた画像において、1つの誘電体層を長さ方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定し、平均値を測定することができる。上記等間隔である30個の地点は、容量形成部Acで指定されることができる。また、このような平均値の測定を10個の誘電体層に拡張して平均値を測定すると、誘電体層の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0038】
本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を挟んで交互に配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含み、容量が形成される容量形成部Acと、上記容量形成部Acの第1方向の上部及び下部に形成されたカバー部112、113と、を含むことができる。
【0039】
また、上記容量形成部Acは、キャパシターの容量形成に寄与する部分であり、誘電体層111を挟んで複数の第1及び第2内部電極121、122を繰り返し積層することで形成されることができる。
【0040】
カバー部112、113は、上記容量形成部Acの第1方向の上部に配置される上部カバー部112と、上記容量形成部Acの第1方向の下部に配置される下部カバー部113と、を含むことができる。
【0041】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一の誘電体層または2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの上下面にそれぞれ厚さ方向に積層することで形成されることができ、基本的に、物理的または化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0042】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、内部電極を含まず、誘電体層111と同一の材料を含むことができる。
【0043】
すなわち、上記上部カバー部112及び下部カバー部113はセラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)系セラミック材料を含むことができる。
【0044】
一方、カバー部112、113の平均厚さは特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、カバー部112、113の平均厚さtcは15μm以下であることができる。また、本発明の一実施形態によると、上記マージン部は、Znを含む酸化物を第1副成分として含み、上記マージン部が含むTi100mol%に対して、上記Znを0.5mol%以上1.5mol%未満含むため、カバー部の平均厚さtcが15μm以下である場合にも、積層型電子部品にクラックが発生することを抑えることができる。
【0045】
カバー部112、113の平均厚さは第1方向のサイズを意味し、容量形成部Acの上部または下部において等間隔の5個の地点で測定したカバー部112、113の第1方向のサイズを平均した値であることができる。
【0046】
また、上記容量形成部Acの側面にはマージン部114、115が配置されることができる。
【0047】
マージン部114、115は、本体110の第5面5に配置されたマージン部114と、第6面6に配置されたマージン部115と、を含むことができる。すなわち、マージン部114、115は、上記本体110の第3方向(幅方向)の両端面(end surfaces)に配置されることができる。
【0048】
マージン部114、115は、
図3に示されたように、上記本体110を幅-厚さ(W-T)方向に切断した断面(cross-section)において、第1及び第2内部電極121、122の両端と本体110の境界面の間の領域を意味することができる。
【0049】
マージン部114、115は、基本的に、物理的または化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0050】
マージン部114、115は、セラミックグリーンシート上に、マージン部が形成されるべき箇所を除いて導電性ペーストを塗布して内部電極を形成することにより形成されたものであることができる。
【0051】
また、内部電極121、122による段差を抑えるために、積層後に内部電極が本体の第5及び第6面5、6に露出するように切断した後、単一の誘電体層または2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの両側面に第3方向(幅方向)に積層することでマージン部114、115が形成されてもよい。
【0052】
一方、マージン部114、115の幅は特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、マージン部114、115の平均幅は15μm以下であることができる。また、本発明の一実施形態によると、上記マージン部は、Znを含む酸化物を第1副成分として含み、上記マージン部が含むTi100mol%に対して、上記Znを0.5mol%以上1.5mol%未満含むため、マージン部114、115の平均幅が15μm以下である場合にも、信頼性を向上させることができる。
【0053】
マージン部114、115の平均幅は、マージン部114、115の第3方向の平均サイズを意味し、容量形成部Acの側面において等間隔の5個の地点で測定したマージン部114、115の第3方向のサイズを平均した値であることができる。
【0054】
本発明の一実施形態によると、上記マージン部114、115はBaTiO3系主成分を含み、Znを含む酸化物を第1主成分として含み、上記マージン部が含むTi100mol%に対して、上記Znを0.5mol%以上1.5mol%未満含むことができる。
【0055】
一般に、高周波低電界環境で有効容量変化率を減少させ、且つ温度安定性を確保するためには、焼成時に伴う誘電体材料の粒成長を抑えることが必要である。
【0056】
セラミック材料の粒成長を抑えるためには、粒界偏析によるドラッグ効果(Drag Effect)を用いる。ドラッグ効果(Drag Effect)が発生すると、誘電体グレインのバウンダリー内における移動度が減少して粒成長を抑えることができる。したがって、本発明の一実施形態では、ドラッグ効果(Drag Effect)を誘導することができる添加剤として酸化亜鉛(ZnO)を添加して粒成長を抑え、且つその含量を制御することで、DC電界下での有効容量変化率の減少及び信頼性の改善を実現した。
【0057】
一般に、亜鉛(Zn)イオンはそのサイズが小さいため、ABO3のようにペロブスカイト構造内でのBサイトへの置換に適している。
【0058】
しかし、原子価がTiに比べて低いため、実際に固溶されることは困難である。
【0059】
亜鉛(Zn)イオンは+2価の原子価を有し、低い原子価を有する側面から、+2価の原子価を有するBa位、すなわち、Aサイトへの置換に適しているが、これも、イオンサイズが大きいBaとのサイズミスマッチ(size mismatch)が大きいため、固溶限界が非常に低い。
【0060】
そのため、酸化亜鉛(ZnO)を添加する場合、殆どの酸化亜鉛(ZnO)は格子内に固溶されず、酸化亜鉛(ZnO)の形態で粒界(grain boundary)に偏析される。このように粒界に偏析された酸化亜鉛(ZnO)は、粒成長時に粒界の移動を妨げるドラッグ効果(Drag Effect)を誘導し、これにより、セラミック材料の粒成長を抑える。
【0061】
セラミック材料の粒成長が抑えられる場合、誘電体グレイン内のドメイン壁(Domain Wall)の幅が減少し、高周波低電界下でのドメイン壁(Domain Wall)の移動度が増加する。
【0062】
これは、高周波低電界下でのDC有効容量の増加につながる。それだけでなく、ドメインの大きさが小さくなるため、常温公称容量が減少するようになる。また、コア-シェル構造における誘電体グレインのシェル部の割合を減少することができて、温度安定性を改善することができる。
【0063】
しかし、このような効果を達成するために、容量形成部Acに含まれる誘電体層111の粒成長を過度に抑える場合、積層型電子部品の誘電率(permittivity)が減少するという副効果が発生する恐れがある。また、容量形成部Acに含まれる誘電体層111のみの粒成長を調節する場合、マージン部114、115の端部で耐電圧破壊が起こる現象を抑えることができない。
【0064】
したがって、本発明では、マージン部に含まれる、Znを含む酸化物の含量を調節し、マージン部に含まれる誘電体グレインの粒成長を適切に抑えることで、DF(誘電損失、Dissipation Factor)及び有効容量変化率を減少させるとともに、緻密性を向上させることにより、高温及び耐湿信頼性を向上させる。
【0065】
本発明の一実施形態によると、マージン部114、115は、主成分としてBaTiO3、(Ba1-xCax)(Ti1-yCay)O3(ここで、xは0≦x≦0.3、yは0≦y≦0.1)、(Ba1-xCax)(Ti1-yZry)O3(ここで、xは0≦x≦0.3、yは0≦y≦0.5)、及びBa(Ti1-yZry)O3(ここで、0<y≦0.5)からなる群から選択される1つ以上を含むが、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0066】
本発明の一実施形態によると、マージン部114、115は、上記主成分に加えて、Znを含む酸化物を第1副成分として含み、上記マージン部114、115が含むTi100mol%に対して、上記Znを0.5mol%以上1.5mol%未満含むことができる。
【0067】
Znを含む酸化物は、上述のようにドラッグ効果(Drag effect)により、マージン部に含まれる誘電体グレインの粒成長を抑える役割を果たすことができる。また、Znを含む酸化物は、融点が低くて代表的な低温焼結助剤として知られている。
【0068】
一方、マージン部に含まれるZnの含量が、上記マージン部が含むTi100mol%に対して0.5mol%未満である場合には、低温焼成に与える影響が僅かであるだけでなく、粒成長低下の効果が僅かであるため、誘電損失(Dissipation Factor、DF)減少及びDC電界下での有効容量変化率減少の効果が不足する。
【0069】
マージン部に含まれるZnの含量が、上記マージン部が含むTi100mol%に対して1.5mol%を超える場合には、粒成長低下の効果及び低温焼成を可能とする効果があるが、Znを含む酸化物がマージン部114、115のグレインバウンダリーに過度に偏析され、マージン部の誘電体グレインの粒成長を過度に妨げた結果、緻密性を減少させるため、耐湿信頼性及び過酷信頼性が劣化する恐れがある。
【0070】
したがって、本発明の一実施形態では、上記マージン部114、115が含むTi100mol%に対して、上記Znを0.5mol%以上1.5mol%未満含むようにすることで、優れた誘電損失(Dissipation Factor、DF)減少及びDC電界下での有効容量変化率減少の効果を奏するだけでなく、マージン部114、115の誘電体グレインの緻密性を向上させ、耐湿信頼性及び過酷信頼性を向上させることができる。
【0071】
一方、上記Znを含む酸化物は酸化亜鉛(ZnO)であることができるが、これに制限されるものではなく、多様な酸化数を有する亜鉛を含む酸化物であることができる。
【0072】
また、マージン部114、115に含まれるZn、またはZnを含む酸化物の含量は、第1及び第2内部電極121、122を積層した後、内部電極が本体の第5及び第6面5、6に露出するように切断した後、容量形成部Acの第3方向(幅方向)の両端面(End surface)に誘電体シートを積層し、この際、誘電体シートに添加されるZnOの含量を調節することで決定されることができる。
【0073】
一実施形態において、上記マージン部は複数の誘電体グレインを含み、上記マージン部に含まれる誘電体グレインの平均グレインサイズは90nmを超え、140nm以下であることができる。
【0074】
上述のように、本発明の一実施形態によると、上記マージン部114、115が含むTi100mol%に対して、上記Znを0.5mol%以上1.5mol%未満含むことができる。後述の
図5によると、Znの含量によって、マージン部の誘電体グレインの平均グレインサイズが変わり得る。具体的に、マージン部がZnを含む酸化物を含まない場合(比較例1)、マージン部の誘電体グレインの平均粒径が300nmであり、Znを、マージン部に含まれるTi100mol%に対して0.5mol%含む場合(実施例1)には140nm、1.0mol%含む場合(実施例2)には130nm、1.5mol%含む場合(比較例2)には90nmに変化する。したがって、本発明の一実施形態では、上記マージン部が複数の誘電体グレインを含み、上記マージン部に含まれる誘電体グレインの平均グレインサイズが90nmを超え、140nm以下を満たすようにすることで、優れた誘電損失(Dissipation Factor、DF)減少及びDC電界下での有効容量変化率減少の効果、並びに耐湿信頼性及び過酷信頼性の向上効果を奏することができる。
【0075】
一実施形態において、上記マージン部は、複数の誘電体グレイン、及び上記誘電体グレインの間の配置されるグレインバウンダリーを含み、上記Znを含む酸化物は上記マージン部のグレインバウンダリーに偏析されて配置されることができる。これにより、マージン部の誘電体の粒成長時にグレインバウンダリーの移動を妨げるドラッグ効果(Drag effect)を誘導することで、マージン部に含まれるグレインの成長を抑えることができる。
【0076】
一実施形態において、上記マージン部及び上記誘電体層は複数の誘電体グレインをそれぞれ含み、上記マージン部に含まれる誘電体グレインの平均グレインサイズをDm、上記誘電体層に含まれる誘電体グレインの平均グレインサイズをDaとしたときに、1/4<Dm/Da<1/2を満たすことができる。
【0077】
Dm/Daが1/4以下である場合、マージン部に含まれる誘電体グレインの平均グレインサイズ(Dm)が小さいのに対し、誘電体層に含まれる誘電体グレインの平均グレインサイズ(Da)が大きいため、優れた誘電損失(Dissipation Factor、DF)減少及びDC電界下での有効容量変化率減少の効果を奏することができるが、マージン部に含まれる誘電体グレインの平均グレインサイズ(Dm)が小さすぎるため、高温及び過酷信頼性の点から不利である。
【0078】
Dm/Daが1/2以上である場合、マージン部に含まれる誘電体グレインの平均グレインサイズ(Dm)が大きいのに対し、誘電体層111に含まれる誘電体グレインの平均グレインサイズ(Da)が小さいため、誘電損失(Dissipation Factor、DF)減少及びDC電界下での有効容量変化率減少の効果を奏することができず、容量形成部に含まれる誘電体層111の誘電率が減少するため、積層型電子部品100の単位体積当たりの容量が減少する恐れがある。
【0079】
したがって、一実施形態では1/4<Dm/Da<1/2を満たすことで、誘電損失(Dissipation Factor、DF)減少及びDC電界下での有効容量変化率減少の効果、耐湿信頼性及び過酷信頼性の向上効果、並びに単位体積当たりの容量増加効果を奏することができる。
【0080】
誘電体層111に含まれる誘電体グレインの「平均グレインサイズ(Da)」は、積層型電子部品の中心を通る長さ-厚さ方向の断面に対して、容量形成部Acの長さ方向に等間隔の10箇所を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した後、イメージ分析プログラム(Leica Microsystem社のLAS X Grain Expert)を用いて計算した平均値を意味することができる。
【0081】
また、マージン部114、115に含まれる誘電体グレインの「平均グレインサイズ(Dm)」は、積層型電子部品の中心を通る長さ-厚さ方向の断面に対して、容量形成部Acの第3方向の両端面(End surface)に配置されたマージン部領域の中央部において、走査型電子顕微鏡(SEM)で50000倍拡大した第1方向x第3方向=20μmx10μm領域を撮影した後、イメージ分析プログラム(Zootos社のZootos)を用いて計算した平均値を意味することができる。
【0082】
一実施形態によると、上記誘電体層111は、Znを含む酸化物を含まないことができる。これにより、マージン部に含まれる誘電体グレインの粒成長を抑えて信頼性及び誘電損失(Dissipation Factor、DF)減少及びDC電界下での有効容量変化率減少の効果を奏するようにするとともに、誘電体層111の誘電体グレインの粒成長は抑えずに積層型電子部品100の誘電率を向上させ、単位体積当たりの容量を向上させることができる。
【0083】
一実施形態によると、上記誘電体層はZnを含む酸化物を含み、上記マージン部に含まれるZnを含む酸化物の含量と、上記誘電体層に含まれるZnを含む酸化物の含量は互いに異なることができる。これにより、誘電体層111に含まれる誘電体グレインの粒成長を適切に調節するとともに、マージン部114、115に含まれる誘電体グレインの粒成長を調節することで、積層型電子部品の誘電損失(Dissipation Factor、DF)減少及びDC電界下での有効容量変化率減少の効果、耐湿性及び過酷信頼性の向上効果、並びに体積当たりの容量向上効果がさらに顕著になることができる。
【0084】
このような点から、より好ましくは、上記マージン部に含まれるZnを含む酸化物の含量が、上記誘電体層に含まれるZnを含む酸化物の含量より多いことができる。これにより、容量形成に寄与する誘電体層111の誘電体グレインの粒成長は控えめに抑えて容量形成に寄与するようにし、容量形成に寄与しない部分であるマージン部114、115の誘電体グレインの粒成長を抑えることで、誘電損失(Dissipation Factor、DF)減少及びDC電界下での有効容量変化率減少の効果、耐湿性及び過酷信頼性の向上効果を奏することができる。
【0085】
マージン部114、115の成分と誘電体層111に含まれる元素の含量、誘電体グレインの平均グレインサイズを異ならせる方法は、
一実施形態によると、上記マージン部は、原子価固定アクセプタ元素Mgを含む酸化物または炭酸塩を第2副成分として含み、上記マージン部が含むTi100mol%に対して、上記Mgを0.1mol%以上1.5mol%以下含むことができる。
【0086】
原子価固定アクセプタ元素及びこれを含む化合物として、アクセプタ(Acceptor)として作用して電子濃度を減少させる役割を果たすことができる。上記第2副成分である原子価固定アクセプタ(fixed-valence acceptor)元素Mgを、上記マージン部が含むTi100mol%に対して0.1mol%以上1.5mol%以下含むようにすることで、n-type化による信頼性改善効果を極大化することができる。
【0087】
上記第2副成分の含量が、上記マージン部が含むTi100mol%に対して1.5mol%を超える場合には、誘電率が低くなるという問題が発生する恐れがあり、絶縁破壊電圧(BDV)が低くなるという問題があるため好ましくない。
【0088】
一実施形態によると、上記マージン部は、Dyを含む酸化物または炭酸塩を第3副成分として含み、上記マージン部が含むTi100mol%に対して、上記Dyを0.5mol%以上2.0mol%以下含むことができる。
【0089】
上記第3副成分は、積層型電子部品の信頼性を向上させる役割を果たすことができる。上記第3副成分の含量が、上記マージン部が含むTi100mol%に対して2.0mol%を超える場合には、誘電率が低くなり、高温耐電圧特性が悪くなるという問題が発生する恐れがある。
【0090】
一実施形態によると、上記マージン部は、Tbを含む酸化物または炭酸塩を第4副成分として含み、上記マージン部が含むTi100mol%に対して、上記Tbを0.2mol%以上0.5mol%以下含むことができる。
【0091】
上記第4副成分は、積層型電子部品の信頼性を向上させる役割を果たすことができる。上記第4副成分の含量が、上記マージン部が含むTi100mol%に対して0.5mol%を超える場合には、誘電率が低くなり、高温耐電圧特性が悪くなるという問題が発生する恐れがある。
【0092】
一実施形態によると、上記マージン部は、Si及びAlのうち少なくとも1つを含む酸化物、またはSiを含むガラス化合物を第5副成分として含み、上記マージン部が含むTi100mol%に対して、SiまたはAlを3.0mol%以上5.6mol%以下含むことができる。
【0093】
上記第5副成分の含量は、ガラス、酸化物、または炭酸塩のような添加形態を区分せず、第5副成分に含まれているSi及びAlのうち少なくとも1つ以上の元素の含量を基準とすることができる。
【0094】
上記第5副成分は、誘電体磁気組成物が適用された積層セラミックキャパシターの焼成温度を低下させ、且つ高温耐電圧特性を向上させる役割を果たす。
【0095】
上記第5副成分の含量が、上記マージン部に含まれているTi100mol%に対して5.6mol%を超えると、焼結性及び緻密度が低下し、二次相が生成されるなどの問題がある恐れがあるため好ましくない。
【0096】
特に、本発明の一実施形態によると、上記マージン部が0.6mol%以下の含量でAlを含むことで、Alがアクセプタとして作用し、電子濃度をむしろ減少させることができるため信頼性の改善に効果がある。
【0097】
誘電体層111及びマージン部114、115中の各元素の含量を測定する方法の例を説明する。非破壊工法としては、TEM-EDS(Transmission Electron Microscope- Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)を用いて、チップの中央部で誘電体層111及びマージン部114、115のグレイン内部の成分を分析することができる。焼結が完了した本体の一断面のうち誘電体層111及びマージン部114、115を含む領域で、集束イオンビーム(FIB)装備を用いて薄片化された分析試料を準備する。そして、薄片化された試料に対して、Arイオンミリングにより表面のダメージ層を除去し、その後、STEM-EDXを用いて得られた画像で、各成分のマッピングと定量分析を行う。この場合、各成分の定量分析グラフは各元素の質量分率で得られるが、これをモル分率に換算して示すことができる。また、破壊工法としては、積層型電子部品を粉砕して内部電極を除去した後、マージン部及び誘電体層の誘電体部分を選別し、このように選別された誘電体を誘導結合プラズマ発光分析器(ICP-OES)、誘導結合プラズマ質量分析器(ICP-MS)などの装置を用いて、誘電体の成分を分析することができる。
【0098】
複数の内部電極121、122は、誘電体層111を挟んで交互に配置されることができる。
【0099】
複数の内部電極121、122は、第1及び第2内部電極121、122を含むことができる。第1及び第2内部電極121、122は、本体110を構成する誘電体層111を挟んで互いに対向するように交互に配置され、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ連結されることができる。
【0100】
具体的に、第1内部電極121の一端は第3面に連結され、第2内部電極122の一端は第4面に連結されることができる。
【0101】
第1内部電極121は、第4面4から離隔して第3面3を介して露出し、第2内部電極122は、第3面3から離隔して第4面4を介して露出することができる。本体の第3面3には第1外部電極131が配置されて第1内部電極121と連結され、本体の第4面4には第2外部電極132が配置されて第2内部電極122と連結されることができる。
【0102】
すなわち、第1内部電極121は、第2外部電極132とは連結されず、第1外部電極131と連結されており、第2内部電極122は、第1外部電極131とは連結されず、第2外部電極132と連結される。したがって、第1内部電極121は第4面4から一定距離離隔して形成され、第2内部電極122は第3面3から一定距離離隔して形成されることができる。
【0103】
この時、第1及び第2内部電極121、122は、その間に配置された誘電体層111により互いに電気的に分離されることができる。
【0104】
本体110は、第1内部電極121が印刷されたセラミックグリーンシートと、第2内部電極122が印刷されたセラミックグリーンシートとを交互に積層した後、焼成することで形成されることができる。
【0105】
内部電極121、122を形成する材料は特に制限されず、電気伝導性に優れた材料を用いることができる。例えば、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)、及びこれらの合金のうち1つ以上を含むことができる。
【0106】
また、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)、及びこれらの合金のうち1つ以上を含む内部電極用導電性ペーストをセラミックグリーンシートに印刷することで形成されることができる。上記内部電極用導電性ペーストの印刷方法としては、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法などを用いることができるが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0107】
一実施形態において、内部電極121、122はNiを含むことができる。この場合、後述の本発明の第1電極層に含まれている銅(Cu)と合金を形成したり、金属接合したりすることにより、電気的連結性を向上させることができる。
【0108】
また、内部電極121、122の平均厚さteは、特に限定する必要はない。例えば、内部電極121、122の平均厚さteは0.2μm以上2μm以下であることができる。
【0109】
但し、一般に、内部電極を0.6μm未満の厚さで薄く形成する場合、特に、内部電極の厚さが0.35μm以下である場合には、積層型電子部品100の信頼性がさらに問題となる恐れがある。
【0110】
本発明の一実施形態によると、上記マージン部は、Znを含む酸化物を第1副成分として含み、上記マージン部が含むTi100mol%に対して、上記Znを0.5mol%以上1.5mol%未満含むため、内部電極121、122の平均厚さteが0.35μm以下である場合にも、信頼性を向上させることができる。
【0111】
したがって、内部電極121、122の平均厚さが0.35μm以下である場合に、本発明による効果がより顕著になることができ、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成することができる。
【0112】
上記内部電極121、122の平均厚さteは、内部電極121、122の平均厚さteを意味することができる。
【0113】
内部電極121、122の平均厚さteは、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を1万倍率の走査型電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)でイメージスキャンして測定することができる。より具体的に、スキャンされた画像において、1つの内部電極を長さ方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定し、平均値を測定することができる。上記等間隔である30個の地点は、容量形成部Acで指定されることができる。また、このような平均値の測定を10個の内部電極に拡張して平均値を測定すると、内部電極の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0114】
外部電極131、132は、本体110の第3面3及び第4面4に配置されることができる。外部電極131、132は、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ配置され、第1及び第2内部電極121、122とそれぞれ連結された第1及び第2外部電極131、132を含むことができる。
【0115】
本実施形態では、積層型電子部品100が2個の外部電極131、132を有する構造を説明しているが、外部電極131、132の個数や形状などは、内部電極121、122の形態やその他の目的によって変わり得る。
【0116】
一方、外部電極131、132は、金属などのように電気伝導性を有するものであれば如何なる物質を用いて形成されてもよく、電気的特性、構造的安定性などを考慮して具体的な物質が決定されることができ、さらには、多層構造を有することができる。
【0117】
例えば、外部電極131、132は、本体110に配置される電極層と、電極層上に形成されためっき層と、を含むことができる。
【0118】
電極層のより具体的な例として、電極層は、導電性金属及びガラスを含む焼成電極であってもよく、導電性金属及び樹脂を含む樹脂系電極であってもよい。
【0119】
また、電極層は、本体上に焼成電極及び樹脂系電極が順に形成された形態であることができる。また、電極層は、本体上に導電性金属を含むシートを転写する方式により形成されてもよく、焼成電極上に導電性金属を含むシートを転写する方式により形成されてもよい。
【0120】
電極層に含まれる導電性金属として、電気伝導性に優れた材料を用いることができるが、特に限定されない。例えば、導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、及びこれらの合金のうち1つ以上であることができる。
【0121】
めっき層は、実装特性を向上させる役割を果たす。めっき層の種類は特に限定されず、Ni、Sn、Pd、及びこれらの合金のうち1つ以上を含むめっき層であることができ、複数の層で形成されることができる。
【0122】
めっき層のより具体的な例として、めっき層は、Niめっき層またはSnめっき層であることができ、電極層上にNiめっき層及びSnめっき層が順に形成された形態であってもよく、Snめっき層、Niめっき層、及びSnめっき層が順に形成された形態であってもよい。また、めっき層は、複数のNiめっき層及び/または複数のSnめっき層を含んでもよい。
【0123】
積層型電子部品100のサイズは特に限定する必要はない。
【0124】
但し、小型化及び高容量化をともに達成するためには、誘電体層及び内部電極の厚さを薄くし、積層数を増加させる必要があるため、0603(長さ×幅、0.6mm×0.3mm)以下のサイズを有する積層型電子部品100において、本発明による固着強度の向上効果がより顕著になることができる。
【0125】
したがって、製造誤差、外部電極のサイズなどを考慮すると、積層型電子部品100の長さが0.66mm以下であり、幅が0.33mm以下である場合、本発明による固着強度の向上効果がより顕著になることができる。ここで、積層型電子部品100の長さは、積層型電子部品100の第2方向の最大サイズを意味し、積層型電子部品100の幅は、積層型電子部品100の第3方向の最大サイズを意味することができる。
【実施例0126】
本発明の実施例は、上記マージン部が含むTi100mol%に対して、上記Znを0.5mol%以上1.5mol%未満含むように製作した。具体的に、誘電体層111及び第1及び第2内部電極121、122を積層した後、内部電極が本体の第5及び第6面5、6に露出するように切断し、単一の誘電体層または2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの両側面に第3方向(幅方向)に積層してマージン部114、115を形成した。この時、マージン部に含まれる誘電体層は、チタン酸バリウム(BaTiO3)などの粉末にZnO、添加剤、有機溶剤、結合剤、分散剤などを含む誘電体シートを用いて形成し、誘電体シートに含まれるZnOの含量を調節して形成した。
【0127】
マージン部を形成した後、熱を加えてバインダーを除去してから焼成することで、本体110を形成した。
【0128】
次に、焼成された本体に対して、銅(Cu)ペーストでターミネーション工程及び電極焼成を経て外部電極を完成した。
【0129】
上記実施例のうち実施例1は、上記Znの含量が、マージン部のTi100mol%に対して0.5mol%となるように製作した。
【0130】
次に、実施例2は、上記Znの含量が、マージン部のTi100mol%に対して1.0mol%となるように製作した。
【0131】
比較例1は、マージン部がZnを含む酸化物を含まない従来の場合であって、その他の構成は上述の実施例と同様である。
【0132】
比較例2は、マージン部に含まれるZnの含量が、マージン部が含むTi100mol%に対して1.5mol%である場合であって、その他の構成は上述の実施例と同様である。
【0133】
下記表1は、実験例(実施例1、2及び比較例1、2)によるプロトタイプの積層型電子部品の誘電損失(Dissipation Factor、DF)と1VのDCでの有効容量変化率を示す。
【0134】
【0135】
上記表1を参照すると、比較例1は、マージン部にZnを含む酸化物を含まない場合であって、誘電損失(Dissipation Factor、DF)に問題があり、1VのDCでの有効容量変化率が高いという問題があることが確認できる。
【0136】
実施例1及び2は、マージン部が含むTi100mol%に対してZnを0.5mol%以上1.5mol%未満含む場合であって、誘電損失(Dissipation Factor、DF)減少及びDC電界下での有効容量変化率減少の効果があることが分かる。
【0137】
但し、マージン部が含むTi100mol%に対してZnを0.5mol%以上1.5mol%含む比較例2は、誘電損失(Dissipation Factor、DF)減少及びDC電界下での有効容量変化率減少の効果はあるものの、後述のように信頼性低下現象が顕著に現れるという問題がある。
【0138】
図5は本発明の一実施例及び比較例によるマージン部のグレインサイズを示したグラフである。
【0139】
図5を参照すると、マージン部がZnを含む酸化物を含まない場合(比較例1)、マージン部の誘電体グレインの平均粒径が300nmであり、Znを、マージン部に含まれるTi100mol%に対して0.5mol%含む場合(実施例1)には140nm、1.0mol%含む場合(実施例2)には130nm、1.5mol%含む場合(比較例2)には90nmに変化することが確認できる。
【0140】
すなわち、マージン部のZnの含量が、マージン部に含まれるTi100mol%に対して0.5mol%未満である比較例1は、粒成長の抑制効果が僅かであることが確認できる。0.5mol%以上である実施例1及び実施例2は、同一の焼成温度でマージン部の誘電体グレインの緻密化が現れ、明確な粒成長抑制効果が現れることが確認できる。一方、1.5mol%を超える比較例2は、マージン部の誘電体グレインの粒成長が過度に抑えられることが確認できる。
【0141】
このようなマージン部の粒成長抑制及び緻密化効果は、DF減少及びDC有効容量変化率減少を大きくもたらすことができる。
【0142】
図6は本発明の一実施例による過酷信頼性(a)及び耐湿信頼性(b)を評価した結果のグラフである。
【0143】
図6を参照すると、マージン部のZnの含量が、マージン部に含まれるTi100mol%に対して0.5mol%である場合(実施例1)であって、マージン部の誘電体グレインの粒成長を抑えるとともに、優れた緻密性を有するため、過酷信頼性及び耐湿信頼性に優れていることが確認できる。
【0144】
図7は本発明の一実施例による過酷信頼性(a)及び耐湿信頼性(b)を評価した結果のグラフである。
【0145】
図7を参照すると、マージン部のZnの含量が、マージン部に含まれるTi100mol%に対して1.0mol%である場合(実施例2)であって、マージン部の誘電体グレインの粒成長を抑えるとともに、優れた緻密性を有するため、過酷信頼性及び耐湿信頼性に優れていることが確認できる。
【0146】
図8は本発明の比較例による過酷信頼性(a)及び耐湿信頼性(b)を評価した結果のグラフである。
【0147】
図8を参照すると、マージン部のZnの含量が、マージン部に含まれるTi100mol%に対して1.5mol%である場合(比較例2)であって、過酷信頼性及び耐湿信頼性の低下が著しく現れることが確認できる。これは、Znを含む酸化物が過量でマージン部のグレインバウンダリーに偏析され、粒成長を過度に妨げて緻密性を減少させた結果であると予想される。
【0148】
したがって、本発明の一実施形態によると、上記マージン部が含むTi100mol%に対して、上記Znを0.5mol%以上1.5mol%未満含むようにすることで、マージン部の誘電体グレインの粒成長を適切に抑えるとともに、緻密性を向上させ、DF減少、DC容量変化率減少、耐湿性及び高温信頼性向上の効果を奏することができる。
【0149】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。
【0150】
一方、本発明で用いられた一実施例という表現は、互いに同一の実施例を意味せず、それぞれ互いに異なる固有の特徴を強調して説明するために提供されるものである。しかし、上記提示された一実施例は、他の実施例の特徴と結合して実施される場合を排除しない。例えば、特定の一実施例で説明された事項が他の実施例で説明されていなくても、他の実施例でその事項と反対の説明がされているかその事項と矛盾する説明がされていない限り、他の実施例に関連する説明であると解釈することもできる。
【0151】
また、本発明で用いられた用語は、一例を説明するために用いられたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。このとき、単数の表現は文脈上、明確に異なる意味でない限り、複数を含む。