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特開2023-98836良好な透明度を持つ自己接着型歯科用コンポジットセメント
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098836
(43)【公開日】2023-07-11
(54)【発明の名称】良好な透明度を持つ自己接着型歯科用コンポジットセメント
(51)【国際特許分類】
A61K 6/60 20200101AFI20230704BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20230704BHJP
A61K 6/17 20200101ALI20230704BHJP
A61K 6/20 20200101ALI20230704BHJP
A61K 6/30 20200101ALI20230704BHJP
A61K 6/62 20200101ALI20230704BHJP
A61K 6/77 20200101ALI20230704BHJP
A61K 6/836 20200101ALI20230704BHJP
A61K 6/887 20200101ALI20230704BHJP
A61L 24/00 20060101ALI20230704BHJP
A61L 24/02 20060101ALI20230704BHJP
A61L 24/04 20060101ALI20230704BHJP
A61L 27/02 20060101ALI20230704BHJP
A61L 27/16 20060101ALI20230704BHJP
A61L 27/50 20060101ALI20230704BHJP
A61L 27/44 20060101ALI20230704BHJP
【ＦＩ】
A61K6/60
A61P1/02
A61K6/17
A61K6/20
A61K6/30
A61K6/62
A61K6/77
A61K6/836
A61K6/887
A61L24/00 200
A61L24/02
A61L24/00 310
A61L24/04 200
A61L27/02
A61L27/16
A61L27/50
A61L27/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】ＯＬ
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022196966
(22)【出願日】2022-12-09
(31)【優先権主張番号】21218203
(32)【優先日】2021-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】501151539
【氏名又は名称】イフォクレール ヴィヴァデント アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Ｉｖｏｃｌａｒ Ｖｉｖａｄｅｎｔ ＡＧ
【住所又は居所原語表記】Ｂｅｎｄｅｒｅｒｓｔｒ．２ ＦＬ－９４９４ Ｓｃｈａａｎ Ｌｉｅｃｈｔｅｎｓｔｅｉｎ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ノルベルト モスツナー
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドロス ジアナスミディス
(72)【発明者】
【氏名】デルフィーネ カテル
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン カテル
(72)【発明者】
【氏名】アンディ ブロート
(72)【発明者】
【氏名】ティム ハルトナー
(72)【発明者】
【氏名】トルステン ボック
(72)【発明者】
【氏名】バーバラ グラーベンバウアー
【テーマコード（参考）】
4C081
4C089
【Ｆターム（参考）】
4C081AB06
4C081BB02
4C081CA08
4C081CA081
4C081CA082
4C081CC01
4C081CF13
4C081CF132
4C081DA11
4C081DA13
4C081DA14
4C081DA15
4C081DC13
4C089AA06
4C089AA10
4C089BA14
4C089BD02
4C089BD04
4C089BD07
4C089BD08
4C089BD09
4C089BD10
4C089BE02
4C089BE03
4C089CA03
(57)【要約】
【課題】良好な透明度を持つ自己接着型歯科用コンポジットセメントを提供すること。
【解決手段】少なくとも１種の酸性ラジカル重合性モノマー、少なくとも１種のフルオロアルミノシリケートガラス充填材および／または放射線不透過性ガラス充填材と、少なくとも１種の固体形態のマスキング剤を含む、ラジカル重合性組成物。本発明による好ましいマスキング剤は、エチレンジアミン四酢酸（ＥＤＴＡ）およびその二ナトリウム塩（エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム）、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、イミノジコハク酸四ナトリウム、およびメチルグリシン二酢酸の三ナトリウム塩である。ＥＤＴＡが特に好ましい。
【選択図】なし
【解決手段】少なくとも１種の酸性ラジカル重合性モノマー、少なくとも１種のフルオロアルミノシリケートガラス充填材および／または放射線不透過性ガラス充填材と、少なくとも１種の固体形態のマスキング剤を含む、ラジカル重合性組成物。本発明による好ましいマスキング剤は、エチレンジアミン四酢酸（ＥＤＴＡ）およびその二ナトリウム塩（エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム）、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、イミノジコハク酸四ナトリウム、およびメチルグリシン二酢酸の三ナトリウム塩である。ＥＤＴＡが特に好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも１種の酸性ラジカル重合性モノマー、少なくとも１種のフルオロアルミノシリケートガラス充填材、および／または放射線不透過性ガラス充填材、および少なくとも１種のマスキング剤を含み、前記マスキンング剤が固体形態であることを特徴とする、ラジカル重合性組成物。
【請求項2】
前記マスキング剤が、エチレンジアミン四酢酸（ＥＤＴＡ）およびその二ナトリウム塩（エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム）、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、イミノジコハク酸四ナトリウム、およびメチルグリシン二酢酸の三ナトリウム塩から選択される、請求項１に記載の組成物。
【請求項3】
前記マスキング剤が、粒状形態をとり、好ましくは３００から３５０μｍの、より好ましくは２００から２５０μｍの、最も好ましくは１００から１７０μｍの体積平均粒径（Ｄ５０値）を有し、好ましくは１３０から１５０μｍ、より好ましくは８０から１００μｍ、最も好ましくは７０から５５μｍのＤ１０値も有する、請求項１または２に記載の組成物。
【請求項4】
それぞれの場合に前記組成物の全質量に対して、
－ ５から６０重量％、好ましくは８から４５重量％、特に好ましくは１０から３５重量％の、酸基がない少なくとも１種のラジカル重合性モノマー、
－ １から１５重量％、好ましくは２から１２重量％、特に好ましくは３から１０重量％の、酸基を含有する少なくとも１種のラジカル重合性モノマー、
－ ２５から８０重量％、好ましくは３０から７５重量％、特に好ましくは４０から７０重量％の少なくとも１種のフルオロアルミノシリケートガラス充填材および／または放射線不透過性ガラス充填材、
－ ０．１から８重量％、好ましくは０．５から６重量％、特に好ましくは１から５重量％のラジカル重合用の少なくとも１種の開始剤、ならびに
－ ０．５から６．０重量％、好ましくは０．７から５．０重量％、特に好ましくは１．０から４．０重量％の少なくとも１種のマスキング剤
を含む、請求項１から３のいずれか一項に記載の組成物。
－ ５から６０重量％、好ましくは８から４５重量％、特に好ましくは１０から３５重量％の、酸基がない少なくとも１種のラジカル重合性モノマー、
－ １から１５重量％、好ましくは２から１２重量％、特に好ましくは３から１０重量％の、酸基を含有する少なくとも１種のラジカル重合性モノマー、
－ ２５から８０重量％、好ましくは３０から７５重量％、特に好ましくは４０から７０重量％の少なくとも１種のフルオロアルミノシリケートガラス充填材および／または放射線不透過性ガラス充填材、
－ ０．１から８重量％、好ましくは０．５から６重量％、特に好ましくは１から５重量％のラジカル重合用の少なくとも１種の開始剤、ならびに
－ ０．５から６．０重量％、好ましくは０．７から５．０重量％、特に好ましくは１．０から４．０重量％の少なくとも１種のマスキング剤
を含む、請求項１から３のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
それぞれの場合に前記組成物の全質量に対して、
（ａ） ０．５から６重量％、好ましくは０．７から５重量％、特に好ましくは１．０から４．０重量％の少なくとも１種の固体マスキング剤、
ｂ） ５から４０重量％、好ましくは８から３０重量％、特に好ましくは１０から２５重量％の、酸基がない少なくとも１種の多官能性モノマー、
ｃ） １から１５重量％、好ましくは２から１２重量％、特に好ましくは３から１０重量％の、酸基を含有する少なくとも１種のモノマー、
ｄ） ０から１０重量％、好ましくは０から８重量％、特に好ましくは１から５重量％の１種または複数のオリゴマーカルボン酸、
ｅ） １から２０重量％、好ましくは２から１５重量％、特に好ましくは３から１０重量％の、酸基がない１種または複数の一官能性モノマー、
ｆ） ２５から８０重量％、好ましくは３０から７５重量％、特に好ましくは４０から７０重量％の少なくとも１種のフルオロアルミノシリケートガラス充填材および／または放射線不透過性ガラス充填材、
ｇ） １から２５重量％まで、好ましくは１から２０重量％、特に好ましくは２から１５重量％の１種または複数の追加の充填材、
ｈ） ０．１から８重量％、好ましくは０．５から６重量％、特に好ましくは１から５重量％のラジカル重合用開始剤、
ｉ） ０から２０重量％、好ましくは０．２から１０重量％、特に好ましくは１から７重量％の水、ならびに
ｊ） ０．００１から５重量％、好ましくは０．００２から３重量％、特に好ましくは０．００５から２重量％の添加剤
を含む、請求項４に記載の組成物。
（ａ） ０．５から６重量％、好ましくは０．７から５重量％、特に好ましくは１．０から４．０重量％の少なくとも１種の固体マスキング剤、
ｂ） ５から４０重量％、好ましくは８から３０重量％、特に好ましくは１０から２５重量％の、酸基がない少なくとも１種の多官能性モノマー、
ｃ） １から１５重量％、好ましくは２から１２重量％、特に好ましくは３から１０重量％の、酸基を含有する少なくとも１種のモノマー、
ｄ） ０から１０重量％、好ましくは０から８重量％、特に好ましくは１から５重量％の１種または複数のオリゴマーカルボン酸、
ｅ） １から２０重量％、好ましくは２から１５重量％、特に好ましくは３から１０重量％の、酸基がない１種または複数の一官能性モノマー、
ｆ） ２５から８０重量％、好ましくは３０から７５重量％、特に好ましくは４０から７０重量％の少なくとも１種のフルオロアルミノシリケートガラス充填材および／または放射線不透過性ガラス充填材、
ｇ） １から２５重量％まで、好ましくは１から２０重量％、特に好ましくは２から１５重量％の１種または複数の追加の充填材、
ｈ） ０．１から８重量％、好ましくは０．５から６重量％、特に好ましくは１から５重量％のラジカル重合用開始剤、
ｉ） ０から２０重量％、好ましくは０．２から１０重量％、特に好ましくは１から７重量％の水、ならびに
ｊ） ０．００１から５重量％、好ましくは０．００２から３重量％、特に好ましくは０．００５から２重量％の添加剤
を含む、請求項４に記載の組成物。
【請求項6】
多官能性モノマー（ｂ）として、ビスフェノールＡジメタクリレート、ビス－ＧＭＡ（メタクリル酸およびビスフェノールＡジグリシジルエーテルの付加生成物）、エトキシ化もしくはプロポキシ化ビスフェノールＡジメタクリレート、例えば３個のエトキシ基を有するビスフェノールＡジメタクリレートもしくは２，２－ビス［４－（２－メタクリロイルオキシプロポキシ）フェニル］プロパン、２－（ヒドロキシメチル）アクリル酸とジイソシアネートとのウレタン、例えば２，２，４－トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートもしくはイソホロンジイソシアネートとのウレタン、ＵＤＭＡ（２－ヒドロキシエチルメタクリレートおよび２，２，４－トリメチルヘキサメチレン－１，６－ジイソシアネートの付加生成物）、テトラメチルキシリレンジウレタンエチレングリコールジ（メタ）アクリレートもしくはテトラメチルキシリレンジウレタン－２－メチルエチレングリコールジウレタンジ（メタ）アクリレート（Ｖ３８０）、ジ－、トリ－、もしくはテトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ならびにグリセロールジ－およびトリメタクリレート、１，４－ブタンジオールジメタクリレート、１，１０－デカンジオールジメタクリレート（Ｄ３ＭＡ）、ビス（メタクリロイルオキシメチル）トリシクロ［５．２．１．０２，６］デカン（ＤＣＰ）、ポリエチレングリコールもしくはポリプロピレングリコールジメタクリレート、例えばポリエチレングリコール２００－ジメタクリレート（ＰＥＧ－２００－ＤＭＡ）もしくはポリエチレングリコール４００－ジメタクリレート（ＰＥＧ－４００－ＤＭＡ）、１，１２－ドデカンジオールジメタクリレート、ラジカル重合性ピロリドン、例えば１，６－ビス（３－ビニル－２－ピロリドニル）－ヘキサン、ビスアクリルアミド、例えばメチレンもしくはエチレンビスアクリルアミド、ビス（メタ）アクリルアミド、例えばＮ，Ｎ’－ジエチル－１，３－ビス（アクリルアミド）プロパン、１，３－ビス（メタクリルアミド）プロパン、１，４－ビス（アクリルアミド）ブタン、または１，４－ビス（アクリロイル）ピペラジン、ならびにこれらの混合物から選択される少なくとも１種のモノマーを含む、請求項４または５に記載の組成物。
【請求項7】
酸基を含有するモノマー（ｃ）として、リン酸エステル基またはホスホン酸基を含有するモノマー、好ましくはリン酸水素２－メタクリロイルオキシエチルフェニル、リン酸二水素１０－メタクリロイルオキシデシル（ＭＤＰ）、リン酸二水素ジメタクリル酸グリセロール、ジペンタエリスリトールペンタメタクリロイルオキシホスフェート、４－ビニルベンジルホスホン酸、２－［４－（ジヒドロキシホスホリル）－２－オキサ－ブチル］－アクリル酸、および／または２－［４－（ジヒドロキシホスホリル）－２－オキサ－ブチル］－アクリル酸－２，４，６－トリメチルフェニルエステル、および／またはカルボキシ基を含有するモノマー、好ましくは４－（メタ）アクリロイルオキシエチルトリメリット酸無水物、１０－メタクリロイルオキシデシルマロン酸、Ｎ－（２－ヒドロキシ－３－メタクリロイルオキシプロピル）－Ｎ－フェニルグリシン、および／または４－ビニル安息香酸から選択される少なくとも１種のモノマーを含む、請求項１から６のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
オリゴマーカルボン酸（ｄ）として、数平均分子量が７，２００ｇ／ｍｏｌ未満、好ましくは７，０００ｇ／ｍｏｌ未満、特に好ましくは６，８００ｇ／ｍｏｌ未満であるポリアクリル酸を含む、請求項４から７のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
一官能性モノマー（ｅ）として、ベンジル、テトラヒドロフルフリル（メタ）アクリレート、イソボルニル（メタ）アクリレート、ｐ－クミルフェノキシエチレングリコールメタクリレート（ＣＭＰ－１Ｅ）、および２－［１，１’－ビフェニル］－２－オキシ）エチルメタクリレート（ＭＡ－８３６）、トリシクロデカンメチル（メタ）アクリレート、２－（２－ビフェニルオキシ）エチル（メタ）アクリレート、２－ヒドロキシエチル（メタクリレート）、ヒドロキシエチルプロピル（メタクリレート）、２－アセトキシエチルメタクリレート、ならびにこれらの混合物から選択される少なくとも１種のモノマーを含む、請求項４から８のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
下記の組成（重量％）：
ＳｉＯ２：２０～８０；Ｂ２Ｏ３：２～１５、ＢａＯもしくはＳｒＯ：０～４０；Ａｌ２Ｏ３：２～２０；ＣａＯおよび／もしくはＭｇＯ：０～２０；Ｎａ２Ｏ、Ｋ２Ｏ、Ｃｓ２Ｏ：それぞれ０～１０；ＷＯ３：０～２０；ＺｎＯ：０～２０；Ｌａ２Ｏ３：０～１０；ＺｒＯ２：０～１５；Ｐ２Ｏ５：０～３０；Ｔａ２Ｏ５、Ｎｂ２Ｏ５もしくはＹｂ２Ｏ３：０～５；およびＣａＦ２および／もしくはＳｒＦ２ ０～１０；もしくは好ましくはＳｉＯ２：５０～７５；Ｂ２Ｏ３：２～１５；ＢａＯもしくはＳｒＯ：２～３５；Ａｌ２Ｏ３：２～１５；ＣａＯおよび／もしくはＭｇＯ：０～１０；およびＮａ２Ｏ：０～１０を持つ放射線不透過性ガラス充填材；ならびに／または下記の組成（重量％）：ＳｉＯ２：２０～３５；Ａｌ２Ｏ３：１５～３５；ＢａＯもしくはＳｒＯ：１０～２５；ＣａＯ：０～２０；ＺｎＯ：０～１５；Ｐ２Ｏ５：５～２０；Ｎａ２Ｏ、Ｋ２Ｏ、Ｃｓ２Ｏ：それぞれ０～１０；およびＣａＦ２：０．５～２０重量％；もしくは好ましくはＳｉＯ２：２０～３０；Ａｌ２Ｏ３：２０～３０；ＢａＯもしくはＳｒＯ：１０～２５；ＣａＯ：５～２０；Ｐ２Ｏ５：５～２０；Ｎａ２Ｏ：０～１０；およびＣａＦ２：５～２０重量％を持つフルオロアルミノシリケートガラス充填材を含み、全ての数値が前記ガラスの全質量に対するものであり、フッ素以外の全ての構成成分が酸化物として計算される、請求項４から９のいずれか一項に記載の組成物。
ＳｉＯ２：２０～８０；Ｂ２Ｏ３：２～１５、ＢａＯもしくはＳｒＯ：０～４０；Ａｌ２Ｏ３：２～２０；ＣａＯおよび／もしくはＭｇＯ：０～２０；Ｎａ２Ｏ、Ｋ２Ｏ、Ｃｓ２Ｏ：それぞれ０～１０；ＷＯ３：０～２０；ＺｎＯ：０～２０；Ｌａ２Ｏ３：０～１０；ＺｒＯ２：０～１５；Ｐ２Ｏ５：０～３０；Ｔａ２Ｏ５、Ｎｂ２Ｏ５もしくはＹｂ２Ｏ３：０～５；およびＣａＦ２および／もしくはＳｒＦ２ ０～１０；もしくは好ましくはＳｉＯ２：５０～７５；Ｂ２Ｏ３：２～１５；ＢａＯもしくはＳｒＯ：２～３５；Ａｌ２Ｏ３：２～１５；ＣａＯおよび／もしくはＭｇＯ：０～１０；およびＮａ２Ｏ：０～１０を持つ放射線不透過性ガラス充填材；ならびに／または下記の組成（重量％）：ＳｉＯ２：２０～３５；Ａｌ２Ｏ３：１５～３５；ＢａＯもしくはＳｒＯ：１０～２５；ＣａＯ：０～２０；ＺｎＯ：０～１５；Ｐ２Ｏ５：５～２０；Ｎａ２Ｏ、Ｋ２Ｏ、Ｃｓ２Ｏ：それぞれ０～１０；およびＣａＦ２：０．５～２０重量％；もしくは好ましくはＳｉＯ２：２０～３０；Ａｌ２Ｏ３：２０～３０；ＢａＯもしくはＳｒＯ：１０～２５；ＣａＯ：５～２０；Ｐ２Ｏ５：５～２０；Ｎａ２Ｏ：０～１０；およびＣａＦ２：５～２０重量％を持つフルオロアルミノシリケートガラス充填材を含み、全ての数値が前記ガラスの全質量に対するものであり、フッ素以外の全ての構成成分が酸化物として計算される、請求項４から９のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
少なくとも１種のレドックス開始剤、または少なくとも１種のレドックス開始剤および少なくとも１種の光開始剤を含む、請求項１から１０のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
触媒ペーストおよびベースペーストを含み、前記触媒ペーストが、それぞれの場合に前記触媒ペーストの全質量に対して、
（ａ） １．０から１２重量％、好ましくは１．４から１０重量％、特に好ましくは２．０から８．０重量％の少なくとも１種の固体マスキング剤、
ｂ） ５から４０重量％、好ましくは８から３０重量％、特に好ましくは１０から２５重量％の、酸基がない少なくとも１種の多官能性モノマー、
ｃ） ２から３０重量％、好ましくは４から２４重量％、特に好ましくは６から２０重量％の、酸基を含有する少なくとも１種のモノマー、
ｄ） ０．１から２０重量％、好ましくは１から１６重量％、特に好ましくは２から１０重量％の１種または複数のオリゴマーカルボン酸、
ｅ） １から２０重量％、好ましくは２から１５重量％、特に好ましくは３から１０重量％の、酸基がない１種または複数の一官能性モノマー、
ｆ） ２５から８０重量％、好ましくは３０から７５重量％、特に好ましくは４０から７０重量％の少なくとも１種のフルオロアルミノシリケートガラス充填材および／またはガラス充填材、
ｇ） ０．１から２５重量％、好ましくは１から２０重量％、特に好ましくは２から１５重量％の１種または複数の追加の充填材、
ｈ） ０．０１から１６重量％、好ましくは０．０２から１２重量％、特に好ましくは０．０３から１０重量％の少なくとも１種の過酸化物および／またはヒドロペルオキシド、および必要に応じて少なくとも１種の光開始剤、
ｉ） ０から２０重量％、好ましくは０．２から１０重量％、特に好ましくは１から７重量％の水、ならびに
ｊ） ０．００１から５重量％、好ましくは０．００２から３重量％、特に好ましくは０．００５１から２重量％の添加剤
を含み、
前記ベースペーストが、それぞれの場合に前記ベースペーストの全質量に対して、
ａ） 適用せず、
ｂ） ５から４０重量％、好ましくは８から３０重量％、特に好ましくは１０から２５重量％の、酸基がない少なくとも１種の多官能性モノマー、
ｃ） 適用せず、
ｄ） 適用せず、
ｅ） １から２０重量％、好ましくは２から１５重量％、特に好ましくは３から１０重量％の、酸基がない１種または複数の一官能性モノマー、
ｆ） ２５から８０重量％、好ましくは３０から７５重量％、特に好ましくは４０から７０重量％の少なくとも１種のフルオロアルミノシリケートガラス充填材および／またはガラス充填材、
ｇ） ０．１から２５重量％、好ましくは１から２０重量％、特に好ましくは２から１５重量％の１種または複数の追加の充填材、
ｈ） ０．０１から１６重量％、好ましくは０．０２から１２重量％、特に好ましくは０．０３から１０重量％の少なくとも１種の適切な還元剤および必要に応じて光開始剤、
ｉ） ０から２０重量％、好ましくは０．２から１０重量％、特に好ましくは１から７重量％の水、ならびに
ｊ） ０．００１から５重量％、好ましくは０．００２から３重量％、特に好ましくは０．００５１から２重量％の添加剤
を含む、
請求項４から１１のいずれか一項に記載の組成物。
（ａ） １．０から１２重量％、好ましくは１．４から１０重量％、特に好ましくは２．０から８．０重量％の少なくとも１種の固体マスキング剤、
ｂ） ５から４０重量％、好ましくは８から３０重量％、特に好ましくは１０から２５重量％の、酸基がない少なくとも１種の多官能性モノマー、
ｃ） ２から３０重量％、好ましくは４から２４重量％、特に好ましくは６から２０重量％の、酸基を含有する少なくとも１種のモノマー、
ｄ） ０．１から２０重量％、好ましくは１から１６重量％、特に好ましくは２から１０重量％の１種または複数のオリゴマーカルボン酸、
ｅ） １から２０重量％、好ましくは２から１５重量％、特に好ましくは３から１０重量％の、酸基がない１種または複数の一官能性モノマー、
ｆ） ２５から８０重量％、好ましくは３０から７５重量％、特に好ましくは４０から７０重量％の少なくとも１種のフルオロアルミノシリケートガラス充填材および／またはガラス充填材、
ｇ） ０．１から２５重量％、好ましくは１から２０重量％、特に好ましくは２から１５重量％の１種または複数の追加の充填材、
ｈ） ０．０１から１６重量％、好ましくは０．０２から１２重量％、特に好ましくは０．０３から１０重量％の少なくとも１種の過酸化物および／またはヒドロペルオキシド、および必要に応じて少なくとも１種の光開始剤、
ｉ） ０から２０重量％、好ましくは０．２から１０重量％、特に好ましくは１から７重量％の水、ならびに
ｊ） ０．００１から５重量％、好ましくは０．００２から３重量％、特に好ましくは０．００５１から２重量％の添加剤
を含み、
前記ベースペーストが、それぞれの場合に前記ベースペーストの全質量に対して、
ａ） 適用せず、
ｂ） ５から４０重量％、好ましくは８から３０重量％、特に好ましくは１０から２５重量％の、酸基がない少なくとも１種の多官能性モノマー、
ｃ） 適用せず、
ｄ） 適用せず、
ｅ） １から２０重量％、好ましくは２から１５重量％、特に好ましくは３から１０重量％の、酸基がない１種または複数の一官能性モノマー、
ｆ） ２５から８０重量％、好ましくは３０から７５重量％、特に好ましくは４０から７０重量％の少なくとも１種のフルオロアルミノシリケートガラス充填材および／またはガラス充填材、
ｇ） ０．１から２５重量％、好ましくは１から２０重量％、特に好ましくは２から１５重量％の１種または複数の追加の充填材、
ｈ） ０．０１から１６重量％、好ましくは０．０２から１２重量％、特に好ましくは０．０３から１０重量％の少なくとも１種の適切な還元剤および必要に応じて光開始剤、
ｉ） ０から２０重量％、好ましくは０．２から１０重量％、特に好ましくは１から７重量％の水、ならびに
ｊ） ０．００１から５重量％、好ましくは０．００２から３重量％、特に好ましくは０．００５１から２重量％の添加剤
を含む、
請求項４から１１のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記触媒ペーストおよび前記ベースペーストが、それぞれ、デュアルプッシュシリンジの、異なるチャンバーに含有される、請求項１２に記載の組成物。
【請求項14】
歯科用材料として、好ましくは歯科用セメント、コーティングまたはベニア材料、修復用コンポジット、または合着用セメントとしての、治療的使用のための、請求項１から１３のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
歯科修復物、特にインレー、オンレー、クラウン、またはブリッジの製造または修復のための、請求項１から１３のいずれか一項に記載の組成物の非治療的使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用材料として、例えば歯科用セメント、充填コンポジット、またはベニア材料として、およびインレー、オンレー、またはクラウンを製作するために、特に適切な、改善された透明度を持つラジカル重合性の自己接着型コンポジットに関する。
【背景技術】
【0002】
コンポジットは、直接または間接的な充填材を製作するために、即ち直接または間接的な充填コンポジットとしておよびセメントとして、歯科分野で主に使用される。コンポジットの重合性有機母材は、通常、モノマー、開始剤成分、および安定化剤の混合物からなる。ジメタクリレートの混合物は、通常、一官能性および官能化モノマーを含有していてもよいモノマーとして使用される。一般に使用されるジメタクリレートは、２，２－ビス［４－（２－ヒドロキシ－３－メタクリロイルオキシプロピル）フェニル］プロパン（ビス－ＧＭＡ）、１，６－ビス［２－メタクリロイルオキシエトキシカルボニルアミノ］－２－トリメチルヘキサン，２，４（ＵＤＭＡ）であり、これらは高い粘度を有し、非常に良好な機械的性質および低い重合収縮度を持つポリマーを生成する。トリエチレングリコールジメタクリレート（ＴＥＧＤＭＡ）、１，１０－デカンジオールジメタクリレート（Ｄ３ＭＡ）またはビス（３－メタクリロイルオキシメチル）トリシクロ－［５．２．１．０２，６］デカン（ＤＣＰ）は、主に反応性希釈剤として使用される。一官能性メタクリレート、例えばｐ－クミルフェノキシエチレングリコールメタクリレート（ＣＭＰ－１Ｅ）も、粘度を低減させるのに適切であり、さらに網状構造密度の低減および増加した二重結合変換を引き起こす。
【0003】
自己接着型コンポジットを生成するため、リン酸二水素１０－メタクリロイルオキシデシル（ＭＤＰ）などの強酸性接着剤モノマーが使用され、これは歯の構造をエッチングし、イオン性の関係によってエナメル／象牙質への接着をもたらす。接着剤モノマーは、自己接着型の性質をコンポジットに与え、したがってコンポジットは、エナメル／象牙質の接着剤による歯の構造の前処理なしに使用可能になり、それらの使用を特に魅力あるものにする。
【0004】
有機母材に加え、コンポジットは、３－メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなどの重合性カップリング剤で通常は表面修飾される１種または複数の充填材を含有する。充填材は、材料の機械的性質（強度、弾性率、耐摩耗性）および加工特性（ペーストのコンシステンシー、充填可能性）を改善し、放射線不透過性を与える。
【0005】
酸性接着剤モノマーは、充填材としばしば不利に相互作用するので、問題である。例えば酸性接着モノマーは、不溶性塩の形成によって充填材の表面に結合され、または充填材から放出されたイオンと、保存中に不十分な可溶性の塩を形成する。このことは、セメントの接着特性の低減またはさらなる損失に関連付けられた、樹脂母材における接着モノマー濃度の著しい低減をもたらす。したがって酸性接着剤モノマーを含むコンポジットは、限られた保存安定性しか持たない。
【0006】
メタクリレートをベースにした歯科材料は、適用分野に応じて、ラジカル光開始剤、熱開始剤、またはレドックス開始剤系を使用するラジカル重合によって硬化する。二重硬化系は、光開始剤およびレドックス開始剤の組合せを含有する。
【0007】
コンポジットセメントは、不十分な透過率に起因して光硬化が可能ではない場合であっても十分な硬化を確実にするので、通常はレドックス系を含有する。過酸化ジベンゾイル（ＤＢＰＯ）と第三級芳香族アミン、例えばＮ，Ｎ－ジエタノール－ｐ－トルイジン（ＤＥＰＴ）、Ｎ，Ｎ－ジメチル－ｓｙｍ．－キシリジン（ＤＭＳＸ）、またはＮ，Ｎ－ジエチル－３，５－ジ－ｔｅｒｔ－ブチルアニリン（ＤＡＢＡ）との混合物をベースにするレドックス開始剤系が、通常は使用される。ＤＢＰＯ／アミンをベースにしたレドックス開始剤系でのラジカル形成は、強酸によって、したがって強酸性接着剤モノマーによっても大きく損なわれるので、クメンヒドロペルオキシド含有レドックス開始剤系をアセチルチオ尿素などのチオ尿素と組み合わせたものが好ましい。
【0008】
レドックス開始剤の十分な保存安定性を確実にするために、レドックス開始剤系をベースにした材料が、いわゆる２成分系（２Ｃ）として通常は使用され、それによれば酸化剤（過酸化物またはヒドロペルオキシド）および還元剤（アミン、スルフィン酸、バルビツール酸、チオ尿素など）が別々の構成成分に組み込まれる。これらは使用直前に一緒に混合される。混合のため、構成成分を保持するための別々の円筒形チャンバーを有するダブルプッシュシリンジが、主に使用される。構成成分は、２つの相互接続されたピストンによって同時にチャンバーから押し出され、ノズル内で一緒に混合される。可能な限り均質な混合物を得るには、ほぼ等しい体積割合で構成成分を一緒に混合することが有利である。
【0009】
ＺｎＯオイゲノールセメント、リン酸亜鉛セメント、ガラスアイオノマーセメント（ＧＩＣ）、および樹脂修飾ガラスアイオノマーセメント（ＲＭＧＩ）などの従来の合着用セメントは、構成成分の混合をさらに大幅に難しくする粉末成分を含有するので、ダブルプッシュシリンジと共に使用するのに適切ではない。さらに、ガラスアイオノマーセメントは、低い透明度および比較的不十分な機械的性質しか持たない。
【0010】
従来のガラスアイオノマーセメント（ＧＩＣ）は、高分子量ポリアクリル酸（ＰＡＡ、数平均モル質量が３０，０００ｇ／ｍｏｌよりも大きい）、または液体成分としてのアクリル酸およびイタコン酸および粉末成分としてのカルシウムフッ素アルミニウムガラスの同等のモル質量のコポリマーの、水性溶液を含有する。構成成分を混合した後、それらを純粋にイオン性のアイオノマー形成により硬化する。ガラスアイオノマーセメントの欠点は、その低い透明度および不十分な機械的性質である。
【0011】
樹脂修飾ガラスアイオノマーセメント（ＲＭＧＩ）はさらに、親水性モノマー、例えば２－ヒドロキシエチルメタクリレート（ＨＥＭＡ）を含有する。それらは酸塩基反応によっておよびラジカル重合によって共に硬化する。従来のＧＩＣと比較すると、それらは改善された曲げ強度によって特徴付けられる。
【0012】
米国特許出願公開第２００４／００４８２２６号明細書は、清浄化および滅菌溶液としてＥＤＴＡを含有する液体を使用する、根管治療のための方法を開示する。
【0013】
米国特許第８６４８０６２号明細書は、準備を整えられた歯根管の洗浄のための、ＥＤＴＡ含有組成物を開示する。組成物は、消毒に加えてスメア層の同時除去が可能であると言われる。
【0014】
米国特許出願公開第２０１４／０２９４７４２号明細書は、ＥＤＴＡまたはＥＤＴＡ塩を安定化剤として含有し得る、歯垢を処置するための過酸化物を含有する溶液について記述する。
【0015】
特開平１１０６０４２８号公報は、歯の表面を前処理するための水性酸溶液を含有する歯科用接着剤を開示する。適切な酸は、ＥＤＴＡ、リン酸、およびクエン酸である。
【0016】
欧州特許出願公開第３０４５１６０号明細書は、（メタ）アクリレートモノマーおよび充填材をベースにした歯科用コンポジットであって、ラジカル重合の開始剤として過酸化物化合物と組み合わせてバルビツレートを含有するコンポジットに関する。コンポジットは、さらに、アミノカルボン酸キレート剤、例えばＥＤＴＡまたはその塩を含有し、これらはバルビツレートと金属イオンとの反応を防止し、したがって材料の保存安定性を改善すると言われている。
【0017】
独国特許出願公開第１０２００５０２２１７２号明細書は、ＥＤＴＡがエチレン系不飽和モノマーに共有結合されている重合性ＥＤＴＡ誘導体を開示する。ＥＤＴＡ誘導体は、歯科用材料の有機母材への一体化により重合中に固定化され、歯に対する歯科用接着剤の接着を改善すると言われている。
欧州特許出願公開第２０６５３６３号明細書は、良好な水溶性を示し、材料のエナメルおよび象牙質との接着を改善する、加水分解安定なアルキレンジアミン－Ｎ，Ｎ，Ｎ’，Ｎ’－四酢酸（メタ）アクリルアミドをベースにした歯科用材料を開示する。
欧州特許出願公開第２０６５３６３号明細書は、良好な水溶性を示し、材料のエナメルおよび象牙質との接着を改善する、加水分解安定なアルキレンジアミン－Ｎ，Ｎ，Ｎ’，Ｎ’－四酢酸（メタ）アクリルアミドをベースにした歯科用材料を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許出願公開第２００４／００４８２２６号明細書
【特許文献2】米国特許第８６４８０６２号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第２０１４／０２９４７４２号明細書
【特許文献4】特開平１１０６０４２８号公報
【特許文献5】欧州特許出願公開第３０４５１６０号明細書
【特許文献6】独国特許出願公開第１０２００５０２２１７２号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第２０６５３６３号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の目的は、ダブルプッシュシリンジを使用して２成分系としてよく混合し塗布可能である、良好な透明度および良好な機械的性質を持つ保存安定な自己接着型歯科用コンポジットを提供することである。コンポジットは、歯科用の合着用セメントとして特に適切であるべきである。
【0020】
この問題は、少なくとも１種の酸性のラジカル重合性モノマー、少なくとも１種のフルオロアルミノシリケートガラス充填材および／または放射線不透過性ガラス充填材、および少なくとも１種の固体マスキング剤を含む、充填材を含有するラジカル重合性組成物によって、解決される。意外にも、少なくとも部分的に非溶解形態で存在するマスキング剤は、酸性モノマーおよび少なくとも１種のフルオロアルミノシリケートガラス充填材および／または放射線不透過性ガラス充填材を含有する組成物の、保存安定性の著しい増大を提供することが見出された。
本出願は、例えば、下記項目を提供する。
（リクレーム）
（項目１）
少なくとも１種の酸性ラジカル重合性モノマー、少なくとも１種のフルオロアルミノシリケートガラス充填材、および／または放射線不透過性ガラス充填材、および少なくとも１種のマスキング剤を含み、前記マスキンング剤が固体形態であることを特徴とする、ラジカル重合性組成物。
（項目２）
前記マスキング剤が、エチレンジアミン四酢酸（ＥＤＴＡ）およびその二ナトリウム塩（エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム）、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、イミノジコハク酸四ナトリウム、およびメチルグリシン二酢酸の三ナトリウム塩から選択される、前記項目のいずれか一つに記載の組成物。
（項目３）
前記マスキング剤が、粒状形態をとり、好ましくは３００から３５０μｍの、より好ましくは２００から２５０μｍの、最も好ましくは１００から１７０μｍの体積平均粒径（Ｄ５０値）を有し、好ましくは１３０から１５０μｍ、より好ましくは８０から１００μｍ、最も好ましくは７０から５５μｍのＤ１０値も有する、前記項目のいずれか一つに記載の組成物。
（項目４）
それぞれの場合に前記組成物の全質量に対して、
－ ５から６０重量％、好ましくは８から４５重量％、特に好ましくは１０から３５重量％の、酸基がない少なくとも１種のラジカル重合性モノマー、
－ １から１５重量％、好ましくは２から１２重量％、特に好ましくは３から１０重量％の、酸基を含有する少なくとも１種のラジカル重合性モノマー、
－ ２５から８０重量％、好ましくは３０から７５重量％、特に好ましくは４０から７０重量％の少なくとも１種のフルオロアルミノシリケートガラス充填材および／または放射線不透過性ガラス充填材、
－ ０．１から８重量％、好ましくは０．５から６重量％、特に好ましくは１から５重量％のラジカル重合用の少なくとも１種の開始剤、ならびに
－ ０．５から６．０重量％、好ましくは０．７から５．０重量％、特に好ましくは１．０から４．０重量％の少なくとも１種のマスキング剤
を含む、前記項目のいずれか一つに記載の組成物。
（項目５）
それぞれの場合に前記組成物の全質量に対して、
（ａ） ０．５から６重量％、好ましくは０．７から５重量％、特に好ましくは１．０から４．０重量％の少なくとも１種の固体マスキング剤、
ｂ） ５から４０重量％、好ましくは８から３０重量％、特に好ましくは１０から２５重量％の、酸基がない少なくとも１種の多官能性モノマー、
ｃ） １から１５重量％、好ましくは２から１２重量％、特に好ましくは３から１０重量％の、酸基を含有する少なくとも１種のモノマー、
ｄ） ０から１０重量％、好ましくは０から８重量％、特に好ましくは１から５重量％の１種または複数のオリゴマーカルボン酸、
ｅ） １から２０重量％、好ましくは２から１５重量％、特に好ましくは３から１０重量％の、酸基がない１種または複数の一官能性モノマー、
ｆ） ２５から８０重量％、好ましくは３０から７５重量％、特に好ましくは４０から７０重量％の少なくとも１種のフルオロアルミノシリケートガラス充填材および／または放射線不透過性ガラス充填材、
ｇ） １から２５重量％まで、好ましくは１から２０重量％、特に好ましくは２から１５重量％の１種または複数の追加の充填材、
ｈ） ０．１から８重量％、好ましくは０．５から６重量％、特に好ましくは１から５重量％のラジカル重合用開始剤、
ｉ） ０から２０重量％、好ましくは０．２から１０重量％、特に好ましくは１から７重量％の水、ならびに
ｊ） ０．００１から５重量％、好ましくは０．００２から３重量％、特に好ましくは０．００５から２重量％の添加剤
を含む、前記項目のいずれか一つに記載の組成物。
（項目６）
多官能性モノマー（ｂ）として、ビスフェノールＡジメタクリレート、ビス－ＧＭＡ（メタクリル酸およびビスフェノールＡジグリシジルエーテルの付加生成物）、エトキシ化もしくはプロポキシ化ビスフェノールＡジメタクリレート、例えば３個のエトキシ基を有するビスフェノールＡジメタクリレートもしくは２，２－ビス［４－（２－メタクリロイルオキシプロポキシ）フェニル］プロパン、２－（ヒドロキシメチル）アクリル酸とジイソシアネートとのウレタン、例えば２，２，４－トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートもしくはイソホロンジイソシアネートとのウレタン、ＵＤＭＡ（２－ヒドロキシエチルメタクリレートおよび２，２，４－トリメチルヘキサメチレン－１，６－ジイソシアネートの付加生成物）、テトラメチルキシリレンジウレタンエチレングリコールジ（メタ）アクリレートもしくはテトラメチルキシリレンジウレタン－２－メチルエチレングリコールジウレタンジ（メタ）アクリレート（Ｖ３８０）、ジ－、トリ－、もしくはテトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ならびにグリセロールジ－およびトリメタクリレート、１，４－ブタンジオールジメタクリレート、１，１０－デカンジオールジメタクリレート（Ｄ３ＭＡ）、ビス（メタクリロイルオキシメチル）トリシクロ［５．２．１．０２，６］デカン（ＤＣＰ）、ポリエチレングリコールもしくはポリプロピレングリコールジメタクリレート、例えばポリエチレングリコール２００－ジメタクリレート（ＰＥＧ－２００－ＤＭＡ）もしくはポリエチレングリコール４００－ジメタクリレート（ＰＥＧ－４００－ＤＭＡ）、１，１２－ドデカンジオールジメタクリレート、ラジカル重合性ピロリドン、例えば１，６－ビス（３－ビニル－２－ピロリドニル）－ヘキサン、ビスアクリルアミド、例えばメチレンもしくはエチレンビスアクリルアミド、ビス（メタ）アクリルアミド、例えばＮ，Ｎ’－ジエチル－１，３－ビス（アクリルアミド）プロパン、１，３－ビス（メタクリルアミド）プロパン、１，４－ビス（アクリルアミド）ブタン、または１，４－ビス（アクリロイル）ピペラジン、ならびにこれらの混合物から選択される少なくとも１種のモノマーを含む、前記項目のいずれか一つに記載の組成物。
（項目７）
酸基を含有するモノマー（ｃ）として、リン酸エステル基またはホスホン酸基を含有するモノマー、好ましくはリン酸水素２－メタクリロイルオキシエチルフェニル、リン酸二水素１０－メタクリロイルオキシデシル（ＭＤＰ）、リン酸二水素ジメタクリル酸グリセロール、ジペンタエリスリトールペンタメタクリロイルオキシホスフェート、４－ビニルベンジルホスホン酸、２－［４－（ジヒドロキシホスホリル）－２－オキサ－ブチル］－アクリル酸、および／または２－［４－（ジヒドロキシホスホリル）－２－オキサ－ブチル］－アクリル酸－２，４，６－トリメチルフェニルエステル、および／またはカルボキシ基を含有するモノマー、好ましくは４－（メタ）アクリロイルオキシエチルトリメリット酸無水物、１０－メタクリロイルオキシデシルマロン酸、Ｎ－（２－ヒドロキシ－３－メタクリロイルオキシプロピル）－Ｎ－フェニルグリシン、および／または４－ビニル安息香酸から選択される少なくとも１種のモノマーを含む、前記項目のいずれか一つに記載の組成物。
（項目８）
オリゴマーカルボン酸（ｄ）として、数平均分子量が７，２００ｇ／ｍｏｌ未満、好ましくは７，０００ｇ／ｍｏｌ未満、特に好ましくは６，８００ｇ／ｍｏｌ未満であるポリアクリル酸を含む、前記項目のいずれか一つに記載の組成物。
（項目９）
一官能性モノマー（ｅ）として、ベンジル、テトラヒドロフルフリル（メタ）アクリレート、イソボルニル（メタ）アクリレート、ｐ－クミルフェノキシエチレングリコールメタクリレート（ＣＭＰ－１Ｅ）、および２－［１，１’－ビフェニル］－２－オキシ）エチルメタクリレート（ＭＡ－８３６）、トリシクロデカンメチル（メタ）アクリレート、２－（２－ビフェニルオキシ）エチル（メタ）アクリレート、２－ヒドロキシエチル（メタクリレート）、ヒドロキシエチルプロピル（メタクリレート）、２－アセトキシエチルメタクリレート、ならびにこれらの混合物から選択される少なくとも１種のモノマーを含む、前記項目のいずれか一つに記載の組成物。
（項目１０）
下記の組成（重量％）：
ＳｉＯ２：２０～８０；Ｂ２Ｏ３：２～１５、ＢａＯもしくはＳｒＯ：０～４０；Ａｌ２Ｏ３：２～２０；ＣａＯおよび／もしくはＭｇＯ：０～２０；Ｎａ２Ｏ、Ｋ２Ｏ、Ｃｓ２Ｏ：それぞれ０～１０；ＷＯ３：０～２０；ＺｎＯ：０～２０；Ｌａ２Ｏ３：０～１０；ＺｒＯ２：０～１５；Ｐ２Ｏ５：０～３０；Ｔａ２Ｏ５、Ｎｂ２Ｏ５もしくはＹｂ２Ｏ３：０～５；およびＣａＦ２および／もしくはＳｒＦ２ ０～１０；もしくは好ましくはＳｉＯ２：５０～７５；Ｂ２Ｏ３：２～１５；ＢａＯもしくはＳｒＯ：２～３５；Ａｌ２Ｏ３：２～１５；ＣａＯおよび／もしくはＭｇＯ：０～１０；およびＮａ２Ｏ：０～１０を持つ放射線不透過性ガラス充填材；ならびに／または下記の組成（重量％）：ＳｉＯ２：２０～３５；Ａｌ２Ｏ３：１５～３５；ＢａＯもしくはＳｒＯ：１０～２５；ＣａＯ：０～２０；ＺｎＯ：０～１５；Ｐ２Ｏ５：５～２０；Ｎａ２Ｏ、Ｋ２Ｏ、Ｃｓ２Ｏ：それぞれ０～１０；およびＣａＦ２：０．５～２０重量％；もしくは好ましくはＳｉＯ２：２０～３０；Ａｌ２Ｏ３：２０～３０；ＢａＯもしくはＳｒＯ：１０～２５；ＣａＯ：５～２０；Ｐ２Ｏ５：５～２０；Ｎａ２Ｏ：０～１０；およびＣａＦ２：５～２０重量％を持つフルオロアルミノシリケートガラス充填材を含み、全ての数値が前記ガラスの全質量に対するものであり、フッ素以外の全ての構成成分が酸化物として計算される、前記項目のいずれか一つに記載の組成物。
（項目１１）
少なくとも１種のレドックス開始剤、または少なくとも１種のレドックス開始剤および少なくとも１種の光開始剤を含む、前記項目のいずれか一つに記載の組成物。
（項目１２）
触媒ペーストおよびベースペーストを含み、前記触媒ペーストが、それぞれの場合に前記触媒ペーストの全質量に対して、
（ａ） １．０から１２重量％、好ましくは１．４から１０重量％、特に好ましくは２．０から８．０重量％の少なくとも１種の固体マスキング剤、
ｂ） ５から４０重量％、好ましくは８から３０重量％、特に好ましくは１０から２５重量％の、酸基がない少なくとも１種の多官能性モノマー、
ｃ） ２から３０重量％、好ましくは４から２４重量％、特に好ましくは６から２０重量％の、酸基を含有する少なくとも１種のモノマー、
ｄ） ０．１から２０重量％、好ましくは１から１６重量％、特に好ましくは２から１０重量％の１種または複数のオリゴマーカルボン酸、
ｅ） １から２０重量％、好ましくは２から１５重量％、特に好ましくは３から１０重量％の、酸基がない１種または複数の一官能性モノマー、
ｆ） ２５から８０重量％、好ましくは３０から７５重量％、特に好ましくは４０から７０重量％の少なくとも１種のフルオロアルミノシリケートガラス充填材および／またはガラス充填材、
ｇ） ０．１から２５重量％、好ましくは１から２０重量％、特に好ましくは２から１５重量％の１種または複数の追加の充填材、
ｈ） ０．０１から１６重量％、好ましくは０．０２から１２重量％、特に好ましくは０．０３から１０重量％の少なくとも１種の過酸化物および／またはヒドロペルオキシド、および必要に応じて少なくとも１種の光開始剤、
ｉ） ０から２０重量％、好ましくは０．２から１０重量％、特に好ましくは１から７重量％の水、ならびに
ｊ） ０．００１から５重量％、好ましくは０．００２から３重量％、特に好ましくは０．００５１から２重量％の添加剤
を含み、
前記ベースペーストが、それぞれの場合に前記ベースペーストの全質量に対して、
ａ） 適用せず、
ｂ） ５から４０重量％、好ましくは８から３０重量％、特に好ましくは１０から２５重量％の、酸基がない少なくとも１種の多官能性モノマー、
ｃ） 適用せず、
ｄ） 適用せず、
ｅ） １から２０重量％、好ましくは２から１５重量％、特に好ましくは３から１０重量％の、酸基がない１種または複数の一官能性モノマー、
ｆ） ２５から８０重量％、好ましくは３０から７５重量％、特に好ましくは４０から７０重量％の少なくとも１種のフルオロアルミノシリケートガラス充填材および／またはガラス充填材、
ｇ） ０．１から２５重量％、好ましくは１から２０重量％、特に好ましくは２から１５重量％の１種または複数の追加の充填材、
ｈ） ０．０１から１６重量％、好ましくは０．０２から１２重量％、特に好ましくは０．０３から１０重量％の少なくとも１種の適切な還元剤および必要に応じて光開始剤、
ｉ） ０から２０重量％、好ましくは０．２から１０重量％、特に好ましくは１から７重量％の水、ならびに
ｊ） ０．００１から５重量％、好ましくは０．００２から３重量％、特に好ましくは０．００５１から２重量％の添加剤
を含む、
前記項目のいずれか一つに記載の組成物。
（項目１３）
前記触媒ペーストおよび前記ベースペーストが、それぞれ、デュアルプッシュシリンジの、異なるチャンバーに含有される、前記項目のいずれか一つに記載の組成物。
（項目１４）
歯科用材料として、好ましくは歯科用セメント、コーティングまたはベニア材料、修復用コンポジット、または合着用セメントとしての、治療的使用のための、前記項目のいずれか一つに記載の組成物。
（項目１５）
歯科修復物、特にインレー、オンレー、クラウン、またはブリッジの製造または修復のための、前記項目のいずれか一つに記載の組成物の非治療的使用。
本出願は、例えば、下記項目を提供する。
（リクレーム）
（項目１）
少なくとも１種の酸性ラジカル重合性モノマー、少なくとも１種のフルオロアルミノシリケートガラス充填材、および／または放射線不透過性ガラス充填材、および少なくとも１種のマスキング剤を含み、前記マスキンング剤が固体形態であることを特徴とする、ラジカル重合性組成物。
（項目２）
前記マスキング剤が、エチレンジアミン四酢酸（ＥＤＴＡ）およびその二ナトリウム塩（エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム）、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、イミノジコハク酸四ナトリウム、およびメチルグリシン二酢酸の三ナトリウム塩から選択される、前記項目のいずれか一つに記載の組成物。
（項目３）
前記マスキング剤が、粒状形態をとり、好ましくは３００から３５０μｍの、より好ましくは２００から２５０μｍの、最も好ましくは１００から１７０μｍの体積平均粒径（Ｄ５０値）を有し、好ましくは１３０から１５０μｍ、より好ましくは８０から１００μｍ、最も好ましくは７０から５５μｍのＤ１０値も有する、前記項目のいずれか一つに記載の組成物。
（項目４）
それぞれの場合に前記組成物の全質量に対して、
－ ５から６０重量％、好ましくは８から４５重量％、特に好ましくは１０から３５重量％の、酸基がない少なくとも１種のラジカル重合性モノマー、
－ １から１５重量％、好ましくは２から１２重量％、特に好ましくは３から１０重量％の、酸基を含有する少なくとも１種のラジカル重合性モノマー、
－ ２５から８０重量％、好ましくは３０から７５重量％、特に好ましくは４０から７０重量％の少なくとも１種のフルオロアルミノシリケートガラス充填材および／または放射線不透過性ガラス充填材、
－ ０．１から８重量％、好ましくは０．５から６重量％、特に好ましくは１から５重量％のラジカル重合用の少なくとも１種の開始剤、ならびに
－ ０．５から６．０重量％、好ましくは０．７から５．０重量％、特に好ましくは１．０から４．０重量％の少なくとも１種のマスキング剤
を含む、前記項目のいずれか一つに記載の組成物。
（項目５）
それぞれの場合に前記組成物の全質量に対して、
（ａ） ０．５から６重量％、好ましくは０．７から５重量％、特に好ましくは１．０から４．０重量％の少なくとも１種の固体マスキング剤、
ｂ） ５から４０重量％、好ましくは８から３０重量％、特に好ましくは１０から２５重量％の、酸基がない少なくとも１種の多官能性モノマー、
ｃ） １から１５重量％、好ましくは２から１２重量％、特に好ましくは３から１０重量％の、酸基を含有する少なくとも１種のモノマー、
ｄ） ０から１０重量％、好ましくは０から８重量％、特に好ましくは１から５重量％の１種または複数のオリゴマーカルボン酸、
ｅ） １から２０重量％、好ましくは２から１５重量％、特に好ましくは３から１０重量％の、酸基がない１種または複数の一官能性モノマー、
ｆ） ２５から８０重量％、好ましくは３０から７５重量％、特に好ましくは４０から７０重量％の少なくとも１種のフルオロアルミノシリケートガラス充填材および／または放射線不透過性ガラス充填材、
ｇ） １から２５重量％まで、好ましくは１から２０重量％、特に好ましくは２から１５重量％の１種または複数の追加の充填材、
ｈ） ０．１から８重量％、好ましくは０．５から６重量％、特に好ましくは１から５重量％のラジカル重合用開始剤、
ｉ） ０から２０重量％、好ましくは０．２から１０重量％、特に好ましくは１から７重量％の水、ならびに
ｊ） ０．００１から５重量％、好ましくは０．００２から３重量％、特に好ましくは０．００５から２重量％の添加剤
を含む、前記項目のいずれか一つに記載の組成物。
（項目６）
多官能性モノマー（ｂ）として、ビスフェノールＡジメタクリレート、ビス－ＧＭＡ（メタクリル酸およびビスフェノールＡジグリシジルエーテルの付加生成物）、エトキシ化もしくはプロポキシ化ビスフェノールＡジメタクリレート、例えば３個のエトキシ基を有するビスフェノールＡジメタクリレートもしくは２，２－ビス［４－（２－メタクリロイルオキシプロポキシ）フェニル］プロパン、２－（ヒドロキシメチル）アクリル酸とジイソシアネートとのウレタン、例えば２，２，４－トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートもしくはイソホロンジイソシアネートとのウレタン、ＵＤＭＡ（２－ヒドロキシエチルメタクリレートおよび２，２，４－トリメチルヘキサメチレン－１，６－ジイソシアネートの付加生成物）、テトラメチルキシリレンジウレタンエチレングリコールジ（メタ）アクリレートもしくはテトラメチルキシリレンジウレタン－２－メチルエチレングリコールジウレタンジ（メタ）アクリレート（Ｖ３８０）、ジ－、トリ－、もしくはテトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ならびにグリセロールジ－およびトリメタクリレート、１，４－ブタンジオールジメタクリレート、１，１０－デカンジオールジメタクリレート（Ｄ３ＭＡ）、ビス（メタクリロイルオキシメチル）トリシクロ［５．２．１．０２，６］デカン（ＤＣＰ）、ポリエチレングリコールもしくはポリプロピレングリコールジメタクリレート、例えばポリエチレングリコール２００－ジメタクリレート（ＰＥＧ－２００－ＤＭＡ）もしくはポリエチレングリコール４００－ジメタクリレート（ＰＥＧ－４００－ＤＭＡ）、１，１２－ドデカンジオールジメタクリレート、ラジカル重合性ピロリドン、例えば１，６－ビス（３－ビニル－２－ピロリドニル）－ヘキサン、ビスアクリルアミド、例えばメチレンもしくはエチレンビスアクリルアミド、ビス（メタ）アクリルアミド、例えばＮ，Ｎ’－ジエチル－１，３－ビス（アクリルアミド）プロパン、１，３－ビス（メタクリルアミド）プロパン、１，４－ビス（アクリルアミド）ブタン、または１，４－ビス（アクリロイル）ピペラジン、ならびにこれらの混合物から選択される少なくとも１種のモノマーを含む、前記項目のいずれか一つに記載の組成物。
（項目７）
酸基を含有するモノマー（ｃ）として、リン酸エステル基またはホスホン酸基を含有するモノマー、好ましくはリン酸水素２－メタクリロイルオキシエチルフェニル、リン酸二水素１０－メタクリロイルオキシデシル（ＭＤＰ）、リン酸二水素ジメタクリル酸グリセロール、ジペンタエリスリトールペンタメタクリロイルオキシホスフェート、４－ビニルベンジルホスホン酸、２－［４－（ジヒドロキシホスホリル）－２－オキサ－ブチル］－アクリル酸、および／または２－［４－（ジヒドロキシホスホリル）－２－オキサ－ブチル］－アクリル酸－２，４，６－トリメチルフェニルエステル、および／またはカルボキシ基を含有するモノマー、好ましくは４－（メタ）アクリロイルオキシエチルトリメリット酸無水物、１０－メタクリロイルオキシデシルマロン酸、Ｎ－（２－ヒドロキシ－３－メタクリロイルオキシプロピル）－Ｎ－フェニルグリシン、および／または４－ビニル安息香酸から選択される少なくとも１種のモノマーを含む、前記項目のいずれか一つに記載の組成物。
（項目８）
オリゴマーカルボン酸（ｄ）として、数平均分子量が７，２００ｇ／ｍｏｌ未満、好ましくは７，０００ｇ／ｍｏｌ未満、特に好ましくは６，８００ｇ／ｍｏｌ未満であるポリアクリル酸を含む、前記項目のいずれか一つに記載の組成物。
（項目９）
一官能性モノマー（ｅ）として、ベンジル、テトラヒドロフルフリル（メタ）アクリレート、イソボルニル（メタ）アクリレート、ｐ－クミルフェノキシエチレングリコールメタクリレート（ＣＭＰ－１Ｅ）、および２－［１，１’－ビフェニル］－２－オキシ）エチルメタクリレート（ＭＡ－８３６）、トリシクロデカンメチル（メタ）アクリレート、２－（２－ビフェニルオキシ）エチル（メタ）アクリレート、２－ヒドロキシエチル（メタクリレート）、ヒドロキシエチルプロピル（メタクリレート）、２－アセトキシエチルメタクリレート、ならびにこれらの混合物から選択される少なくとも１種のモノマーを含む、前記項目のいずれか一つに記載の組成物。
（項目１０）
下記の組成（重量％）：
ＳｉＯ２：２０～８０；Ｂ２Ｏ３：２～１５、ＢａＯもしくはＳｒＯ：０～４０；Ａｌ２Ｏ３：２～２０；ＣａＯおよび／もしくはＭｇＯ：０～２０；Ｎａ２Ｏ、Ｋ２Ｏ、Ｃｓ２Ｏ：それぞれ０～１０；ＷＯ３：０～２０；ＺｎＯ：０～２０；Ｌａ２Ｏ３：０～１０；ＺｒＯ２：０～１５；Ｐ２Ｏ５：０～３０；Ｔａ２Ｏ５、Ｎｂ２Ｏ５もしくはＹｂ２Ｏ３：０～５；およびＣａＦ２および／もしくはＳｒＦ２ ０～１０；もしくは好ましくはＳｉＯ２：５０～７５；Ｂ２Ｏ３：２～１５；ＢａＯもしくはＳｒＯ：２～３５；Ａｌ２Ｏ３：２～１５；ＣａＯおよび／もしくはＭｇＯ：０～１０；およびＮａ２Ｏ：０～１０を持つ放射線不透過性ガラス充填材；ならびに／または下記の組成（重量％）：ＳｉＯ２：２０～３５；Ａｌ２Ｏ３：１５～３５；ＢａＯもしくはＳｒＯ：１０～２５；ＣａＯ：０～２０；ＺｎＯ：０～１５；Ｐ２Ｏ５：５～２０；Ｎａ２Ｏ、Ｋ２Ｏ、Ｃｓ２Ｏ：それぞれ０～１０；およびＣａＦ２：０．５～２０重量％；もしくは好ましくはＳｉＯ２：２０～３０；Ａｌ２Ｏ３：２０～３０；ＢａＯもしくはＳｒＯ：１０～２５；ＣａＯ：５～２０；Ｐ２Ｏ５：５～２０；Ｎａ２Ｏ：０～１０；およびＣａＦ２：５～２０重量％を持つフルオロアルミノシリケートガラス充填材を含み、全ての数値が前記ガラスの全質量に対するものであり、フッ素以外の全ての構成成分が酸化物として計算される、前記項目のいずれか一つに記載の組成物。
（項目１１）
少なくとも１種のレドックス開始剤、または少なくとも１種のレドックス開始剤および少なくとも１種の光開始剤を含む、前記項目のいずれか一つに記載の組成物。
（項目１２）
触媒ペーストおよびベースペーストを含み、前記触媒ペーストが、それぞれの場合に前記触媒ペーストの全質量に対して、
（ａ） １．０から１２重量％、好ましくは１．４から１０重量％、特に好ましくは２．０から８．０重量％の少なくとも１種の固体マスキング剤、
ｂ） ５から４０重量％、好ましくは８から３０重量％、特に好ましくは１０から２５重量％の、酸基がない少なくとも１種の多官能性モノマー、
ｃ） ２から３０重量％、好ましくは４から２４重量％、特に好ましくは６から２０重量％の、酸基を含有する少なくとも１種のモノマー、
ｄ） ０．１から２０重量％、好ましくは１から１６重量％、特に好ましくは２から１０重量％の１種または複数のオリゴマーカルボン酸、
ｅ） １から２０重量％、好ましくは２から１５重量％、特に好ましくは３から１０重量％の、酸基がない１種または複数の一官能性モノマー、
ｆ） ２５から８０重量％、好ましくは３０から７５重量％、特に好ましくは４０から７０重量％の少なくとも１種のフルオロアルミノシリケートガラス充填材および／またはガラス充填材、
ｇ） ０．１から２５重量％、好ましくは１から２０重量％、特に好ましくは２から１５重量％の１種または複数の追加の充填材、
ｈ） ０．０１から１６重量％、好ましくは０．０２から１２重量％、特に好ましくは０．０３から１０重量％の少なくとも１種の過酸化物および／またはヒドロペルオキシド、および必要に応じて少なくとも１種の光開始剤、
ｉ） ０から２０重量％、好ましくは０．２から１０重量％、特に好ましくは１から７重量％の水、ならびに
ｊ） ０．００１から５重量％、好ましくは０．００２から３重量％、特に好ましくは０．００５１から２重量％の添加剤
を含み、
前記ベースペーストが、それぞれの場合に前記ベースペーストの全質量に対して、
ａ） 適用せず、
ｂ） ５から４０重量％、好ましくは８から３０重量％、特に好ましくは１０から２５重量％の、酸基がない少なくとも１種の多官能性モノマー、
ｃ） 適用せず、
ｄ） 適用せず、
ｅ） １から２０重量％、好ましくは２から１５重量％、特に好ましくは３から１０重量％の、酸基がない１種または複数の一官能性モノマー、
ｆ） ２５から８０重量％、好ましくは３０から７５重量％、特に好ましくは４０から７０重量％の少なくとも１種のフルオロアルミノシリケートガラス充填材および／またはガラス充填材、
ｇ） ０．１から２５重量％、好ましくは１から２０重量％、特に好ましくは２から１５重量％の１種または複数の追加の充填材、
ｈ） ０．０１から１６重量％、好ましくは０．０２から１２重量％、特に好ましくは０．０３から１０重量％の少なくとも１種の適切な還元剤および必要に応じて光開始剤、
ｉ） ０から２０重量％、好ましくは０．２から１０重量％、特に好ましくは１から７重量％の水、ならびに
ｊ） ０．００１から５重量％、好ましくは０．００２から３重量％、特に好ましくは０．００５１から２重量％の添加剤
を含む、
前記項目のいずれか一つに記載の組成物。
（項目１３）
前記触媒ペーストおよび前記ベースペーストが、それぞれ、デュアルプッシュシリンジの、異なるチャンバーに含有される、前記項目のいずれか一つに記載の組成物。
（項目１４）
歯科用材料として、好ましくは歯科用セメント、コーティングまたはベニア材料、修復用コンポジット、または合着用セメントとしての、治療的使用のための、前記項目のいずれか一つに記載の組成物。
（項目１５）
歯科修復物、特にインレー、オンレー、クラウン、またはブリッジの製造または修復のための、前記項目のいずれか一つに記載の組成物の非治療的使用。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、少なくとも１種の酸性ラジカル重合性モノマー、少なくとも１種のフルオロアルミノシリケートガラス充填材、および／または放射線不透過性ガラス充填材、および固体形態である少なくとも１種のマスキング剤を含むラジカル重合性組成物に関する。
【0022】
本発明による好ましいマスキング剤は、エチレンジアミン四酢酸（ＥＤＴＡ）およびその二ナトリウム塩（エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム）、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、イミノジコハク酸四ナトリウム、およびメチルグリシン二酢酸の三ナトリウム塩である。ＥＤＴＡが特に好ましい。
【0023】
１種または複数のマスキング剤は、好ましくは０．５から６．０重量％、より好ましくは０．７から５重量％、最も好ましくは１．０から４．０重量％の総量で添加される。本明細書の全てのパーセンテージは、他に言及しない限り組成物の全質量を指す。
【0024】
１種または複数のマスキング剤は、好ましくは粒状形態で使用され、次いで充填材のように実用的に振る舞い、これは機械的性質に関して有利である。粒子は、好ましくは３００から３５０μｍ、より好ましくは２００から２５０μｍ、最も好ましくは１００から１７０μｍの平均サイズ（Ｄ５０値）を有する。本発明の特に好ましい実施形態によれば、粒子のＤ１０値は、１３０から１５０μｍ、より好ましくは８０から１００μｍ、最も好ましくは７０から５５μｍの範囲にある。Ｄ５０値は、平均粒径を示す。Ｄ５０は、粒子の５０％が、指定された値よりも小さいことを意味する。別の重要なパラメーターは、最小粒子の尺度としてのＤ１０値である。Ｄ１０は、粒子の１０％が指定された値よりも小さいことを意味する。
【0025】
他に言及しない限り、本明細書の全ての粒径は、体積平均粒径（Ｄ５０値）であり、即ち全粒子の全体積の５０％が、指定された値よりも小さい直径の粒子に含有される。Ｄ１０値も、体積測定直径を指す。
【0026】
０．１μｍから１０００μｍの範囲の粒径の決定は、好ましくは静的光散乱（ＳＬＳ）を用いて、例えばＬＡ－９６０静的レーザー散乱粒径分析器（堀場製作所、日本）によりまたはＭｉｃｒｏｔｒａｃ Ｓ１００粒径分析器（Ｍｉｃｒｏｔｒａｃ、ＵＳＡ）により実施される。ここで波長が６５５ｎｍのレーザーダイオードおよび波長が４０５ｎｍのＬＥＤを、光源として使用する。異なる波長を持つ２つの光源の使用は、ただ１回の測定操作で試料の全粒径分布の測定を可能にし、この測定は、湿式測定として実施される。この目的で、充填材の水性分散液を調製し、その散乱光をフローセルで測定する。粒径および粒径分布を計算するための散乱光分析は、ＤＩＮ／ＩＳＯ １３３２０によるＭｉｅ理論に従い実施される。１ｎｍから０．１μｍの範囲の粒径の測定は、好ましくは、水性粒子分散液の動的光散乱（ＤＬＳ）によって、好ましくは波長が６３３ｎｍであり散乱角が９０°であり２５℃で、Ｈｅ－Ｎｅレーザーにより実施され、例えばＭａｌｖｅｒｎ Ｚｅｔａｓｉｚｅｒ Ｎａｎｏ ＺＳ（Ｍａｌｖｅｒｎ Ｉｎｓｔｒｕｍｅｎｔｓ、Ｍａｌｖｅｒｎ ＵＫ）により実施される。
【0027】
凝塊および凝集粒子の場合、一次粒径はＴＥＭ画像から決定することができる。透過型電子顕微鏡法（ＴＥＭ）は、好ましくは、Ｐｈｉｌｉｐｓ ＣＭ３０ ＴＥＭを加速電圧３００ｋＶで使用して行われる。試料調製では、粒子分散液の液滴を、炭素でコーティングされた５０Åの厚さの銅格子（メッシュサイズが３００メッシュ）に付着させ、その後、溶媒を蒸発させる。粒子をカウントし、算術平均を計算する。
【0028】
本発明による組成物は、少なくとも１種のラジカル重合性モノマー、好ましくは１種または複数の一および／または多官能性モノマーを含有する。多官能性モノマーは、２個またはそれよりも多く、好ましくは２から４個、特に２個のラジカル重合性基を持つ化合物であると理解される。したがって一官能性モノマーは、１個のラジカル重合性基のみ有する。多官能性モノマーは、架橋特性を有し、したがって架橋モノマーとも呼ばれる。好ましいラジカル重合性基は、（メタ）アクリレート、（メタ）アクリルアミド、およびビニル基である。
【0029】
本発明によれば、酸基を含有するモノマーと酸基を含有しないモノマーとの間で区別がなされる。本発明による組成物は、酸基がない少なくとも１個のモノマーと、酸基を持つ少なくとも１個のモノマーおよび／またはオリゴマーとを含有する。本発明による組成物は、好ましくは、酸基を持つモノマーおよび酸基を持たないモノマーを、１：５から１：３６、より好ましくは１：６から１：２５、最も好ましくは１：７から１：２０の重量比で含む。
【0030】
酸基がないモノマー
少なくとも１つの（メタ）アクリレート、より好ましくは少なくとも１つの一官能性または多官能性メタクリレート、最も好ましくは少なくとも１つの一官能性もしくは二官能性メタクリレート、またはこれらの混合物を含む組成物が好ましい。
少なくとも１つの（メタ）アクリレート、より好ましくは少なくとも１つの一官能性または多官能性メタクリレート、最も好ましくは少なくとも１つの一官能性もしくは二官能性メタクリレート、またはこれらの混合物を含む組成物が好ましい。
【0031】
好ましい一官能性（メタ）アクリレートは、ベンジル、テトラヒドロフルフリル、またはイソボルニル（メタ）アクリレート、ｐ－クミルフェノキシエチレングリコールメタクリレート（ＣＭＰ－１Ｅ）、および２－（［１，１’－ビフェニル］－２－オキシ）エチルメタクリレート（ＭＡ－８３６）、トリシクロデカンメチル（メタ）アクリレート、２－（２－ビフェニルオキシ）エチル（メタ）アクリレートである。ＣＭＰ－１ＥおよびＭＡ－８３６が特に好ましい。
【0032】
一実施形態によれば、本発明による組成物は、好ましくは少なくとも１種の官能化一官能性（メタ）アクリレートを含む。官能化モノマーは、少なくとも１個のラジカル重合性基に加え、少なくとも１個の官能基、好ましくはヒドロキシル基を保持するようなモノマーであると理解される。好ましい官能化モノ（メタ）アクリレートは、２－ヒドロキシエチルおよびヒドロキシエチルプロピル（メタクリレート）および２－アセトキシエチルメタクリレートである。ヒドロキシエチルメタクリレートが特に好ましい。以下に述べる酸基を含有するモノマーは、本発明の意味の範囲内において官能化モノマーではない。
【0033】
好ましい二または多官能性（メタ）アクリレートは、ビスフェノール－Ａ－ジメタクリレート、ビス－ＧＭＡ（メタクリル酸およびビスフェノール－Ａ－ジグリシジルエーテルの付加生成物）、エトキシ化またはプロポキシ化ビスフェノール－Ａ－ジメタクリレート、例えばビスフェノールＡジメタクリレートＳＲ－３４８ｃ（Ｓａｒｔｏｍｅｒ）であって３個のエトキシ基を持つものまたは２，２－ビス［４－（２－メタクリロイルオキシプロポキシ）フェニル］プロパン、２－（ヒドロキシメチル）アクリル酸メチルエステルとジイソシアネートとのウレタン、例えば２，２，４－トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートまたはイソホロンジイソシアネートとのウレタン、ＵＤＭＡ（２－ヒドロキシエチルメタクリレートおよび２，２，４－トリメチルヘキサメチレン－１，６－ジイソシアネートの付加生成物）、テトラメチルキシリレンジウレタンエチレンジ（メタ）アクリレートまたはテトラメチルキシリレンジウレタン－２－メチルエチレングリコールジ（メタ）アクリレート（Ｖ３８０）、ジ－、トリ－、またはテトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ならびにグリセロールジ－およびトリメタクリレート、１，４－ブタンジオールジメタクリレート、１，１０－デカンジオールジメタクリレート（Ｄ３ＭＡ）、ビス（メタクリロイルオキシメチル）トリシクロ－［５．２．１．０２，６］デカン（ＤＣＰ）、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールジメタクリレート、例えばポリエチレングリコール２００－ジメタクリレートまたはポリエチレングリコール４００－ジメタクリレート（ＰＥＧ－２００－またはＰＥＧ－４００－ＤＭＡ）または１，１２－ドデカンジオールジメタクリレートである。Ｂｉｓ－ＧＭＡ、ＵＤＭＡ、Ｖ－３８０、トリエチレングリコールジメタクリレート（ＴＥＧＤＭＡ）およびＰＥＧ－４００－ＤＭＡ（ＮＫエステル９Ｇ）が特に好ましい。
【0034】
モノマーであるテトラメチルキシリレンジウレタンエチレングリコールジ（メタ）アクリレートおよびテトラメチルキシリレンジウレタン２－メチルエチレングリコールジ（メタ）アクリレート（Ｖ３８０）は、それぞれ、下式：
を有する。
【化1】
【0035】
上式において、Ｒラジカルは独立してＨまたはＣＨ３であり、ラジカルは同じ意味または異なる意味を有していてもよい。好ましくは、両方のラジカルがＨである分子、両方のラジカルがＣＨ３である分子、および一方のラジカルがＨであり他方のラジカルがＣＨ３である分子であって、ＨのＣＨ３に対する比が７：３であることが好ましいものを含有する混合物が使用される。そのような混合物は、例えば１，３－ビス（１－イソシアナト－１－メチルエチル）ベンゼンを２－ヒドロキシプロピルメタクリレートおよび２－ヒドロキシエチルメタクリレートと反応させることによって得ることが可能である。
【0036】
その他の好ましい二官能性モノマーは、ラジカル重合性ピロリドン、例えば１，６－ビス（３－ビニル－２－ピロリドニル）－ヘキサン、または市販のビスアクリルアミド、例えばメチレンまたはエチレンビスアクリルアミド、およびビス（メタ）アクリルアミド、例えばＮ，Ｎ’－ジエチル－１，３－ビス（アクリルアミド）プロパン、１，３－ビス－（メタクリルアミド）プロパン、１，４－ビス（アクリルアミド）ブタン、または１，４－ビス（アクリロイル）ピペラジンであって、対応するジアミンから、（メタ）アクリル酸塩化物との反応によって合成できるものを含む。Ｎ，Ｎ’－ジエチル－１，３－ビス（アクリルアミド）プロパン（Ｖ－３９２）が特に好ましい。これらのモノマーは、高い加水分解安定性によって特徴付けられる。
【0037】
酸基を含有するモノマーおよびオリゴマー
本発明による組成物は、少なくとも１種の酸性ラジカル重合性モノマーおよび／または少なくとも１種の酸性オリゴマーを含有する。酸性モノマーおよびオリゴマーは、少なくとも１個の酸基、好ましくはリン酸エステル、ホスホン酸、またはカルボキシ基を含有し、リン酸エステルが特に好ましいものであるモノマーおよびオリゴマーをそれぞれ意味することが理解される。酸性モノマーおよびオリゴマーは、本明細書では接着剤成分または接着剤モノマーまたは接着剤オリゴマーとも呼ばれる。
本発明による組成物は、少なくとも１種の酸性ラジカル重合性モノマーおよび／または少なくとも１種の酸性オリゴマーを含有する。酸性モノマーおよびオリゴマーは、少なくとも１個の酸基、好ましくはリン酸エステル、ホスホン酸、またはカルボキシ基を含有し、リン酸エステルが特に好ましいものであるモノマーおよびオリゴマーをそれぞれ意味することが理解される。酸性モノマーおよびオリゴマーは、本明細書では接着剤成分または接着剤モノマーまたは接着剤オリゴマーとも呼ばれる。
【0038】
酸基を含有する好ましいモノマーは、リン酸エステルおよびホスホン酸モノマーである。リン酸水素２－メタクリロイルオキシエチルフェニル、リン酸二水素１０－メタクリロイルオキシデシル（ＭＤＰ）、リン酸二水素グリセロールジメタクリレート、またはジペンタエリスリトールペンタメタクリロイルオキシホスフェートが特に好ましい。４－ビニルベンジルホスホン酸、２－［４－（ジヒドロキシホスホリル）－２－オキサ－ブチル］－アクリル酸、または加水分解安定なエステル、例えば２－［４－（ジヒドロキシホスホリル）－２－オキサ－ブチル］－アクリル酸２，４，６－トリメチルフェニルエステル。ＭＤＰ、リン酸水素２－メタクリロイルオキシエチルフェニル、およびリン酸二水素グリセロールジメタクリレートが特に好ましい。
【0039】
酸基を含有するその他の好ましいモノマーは、ＣＯＯＨ基を含有する重合性モノマーである。４－（メタ）アクリロイルオキシエチルトリメリット酸無水物、１０－メタクリロイルオキシデシルマロン酸、Ｎ－（２－ヒドロキシ－３－メタクリロイルオキシプロピル）－Ｎ－フェニルグリシン、および４－ビニル安息香酸が特に好ましい。
【0040】
オリゴマーは、重合度Ｐｎが２から１００のポリマーであることが理解される（Ｐｎ＝Ｍｎ／Ｍｕ；Ｍｎ：数平均ポリマー分子量、Ｍｕ：モノマー単位の分子量）。酸性ラジカル重合性オリゴマーは、少なくとも１個の酸基、好ましくはカルボキシル基、および少なくとも１個のラジカル重合性基、好ましくは少なくとも１個の（メタ）アクリレート基、特に少なくとも１個のメタクリレート基を有する。
【0041】
本発明による好ましい酸基を含有するオリゴマーは、オリゴマー化カルボン酸、例えばポリアクリル酸であって、好ましくは数平均分子量Ｍｎが７，２００ｇ／ｍｏｌ未満、より好ましくは７，０００ｇ／ｍｏｌ未満、最も好ましくは６，８００ｇ／ｍｏｌ未満のものであり、ここでＭｎは、好ましくは８００から７，２００ｇ／ｍｏｌ、特に好ましくは５００から７０００ｇ／ｍｏｌ、最も好ましくは５００から６，８００ｇ／ｍｏｌの範囲にある。（メタ）アクリレート基を持つオリゴマーカルボン酸が特に好ましい。これらは、例えばオリゴマーポリアクリル酸とメタクリル酸グリシジルまたはメタクリル酸２－イソシアナトエチルとを反応させることによって得ることができる。
【0042】
他に言及しない限り、本明細書のオリゴマーおよびポリマーのモル質量は数平均モル質量であり、その絶対値は、凝固点降下（凝固点降下法（cryoscopy））、沸点上昇（沸点上昇法（ebullioscopy））の公知の方法によって、または蒸気圧の降下（蒸気圧浸透圧測定法（vapor pressure osmometry））を通して決定することができる。好ましくは、オリゴマーおよびポリマーの数平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー（ＧＰＣ）によって決定される。これは分子がそのサイズに基づいて、より厳密にはその流体力学的体積に基づいて分離される、相対的な方法である。絶対モル質量は、公知の標準による較正によって決定される。
【0043】
本発明による組成物は、好ましくは水も含有する。それぞれの場合に組成物の全質量に対して１から７重量％、特に好ましくは１から５重量％の含水量は、象牙質およびエナメルとの結合効果の改善をもたらすが、マスキング剤の完全な溶解ももたらさないことが見出された。
【0044】
本発明による組成物は、さらに、ラジカル重合を開始するための少なくとも１種の開始剤、好ましくは光開始剤を含む。好ましい光開始剤は、ベンゾフェノン、ベンゾイン、およびこれらの誘導体、α－ジケトンまたはその誘導体、例えば９，１０－フェナントレンキノン、１－フェニル－プロパン－１，２－ジオン、ジアセチル、および４，４’－ジクロロベンジルである。カンファーキノン（ＣＣ）、および２，２－ジメトキシ－２－フェニル－アセトフェノンが特に好ましく、最も好ましくは、α－ジケトンが、還元剤としてのアミン、例えば４－（ジメチルアミノ）安息香酸エチルエステル（ＥＤＭＡＢ）、Ｎ，Ｎ－ジメチルアミノエチルメタクリレート、Ｎ，Ｎ－ジメチル－ｓｙｍ．－キシリジン、またはトリエタノールアミンと組み合わせて使用される。Ｎｏｒｒｉｓｈ Ｉ型光開始剤、特にアシルまたはビスアシルホスフィンオキシドがさらに好ましく、モノアシルトリアルキルゲルマニウム、ジアシルジアルキルゲルマニウム、およびテトラアシルゲルマニウム化合物、例えばベンゾイルトリメチルゲルマン、ジベンゾイルジエチルゲルマン、ビス（４－メトキシベンゾイル）－ジエチルゲルマン（Ｉｖｏｃｅｒｉｎ（登録商標））、テトラベンゾイルゲルマン、またはテトラキス（ｏ－メチルベンゾイル）ゲルマンなどが最も好ましい。様々な光開始剤の混合物、例えばビス（４－メトキシベンゾイル）ジエチルゲルマンまたはテトラキス（ｏ－メチルベンゾイル）ゲルマンを、カンファーキノンおよび４－（ジメチルアミノ）安息香酸エチルエステルと組み合わせたものを、使用することもできる。
【0045】
ラジカル重合を開始するためのレドックス開始剤、好ましくは酸化剤および還元剤をベースにしたレドックス開始剤を含有する組成物が、さらに好ましい。好ましい酸化剤は、特に過酸化物およびヒドロペルオキシドである。特に好ましい過酸化物は、過酸化ベンゾイルである。好ましいヒドロペルオキシドは、ＥＰ３６９２９７６Ａ１に開示される低臭クメンヒドロペルオキシド誘導体、ＥＰ２１３１５０８９．９に開示されるオリゴマーＣＨＰ誘導体、特に４－（２－ヒドロペルオキシプロパン－２－イル）フェニルプロピオネートおよびクメンヒドロペルオキシド（ＣＨＰ）である。
【0046】
過酸化物と組み合わせるための好ましい還元剤は、第三級アミン、例えばＮ，Ｎ－ジメチル－ｐ－トルイジン、Ｎ，Ｎ－ジヒドロキシエチル－ｐ－トルイジン、ｐ－ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、またはその他の芳香族ジアルキルアミン、アスコルビン酸、スルフィン酸、チオール、および／または水素シランである。
【0047】
ヒドロペルオキシドと組み合わせるための好ましい還元剤は、チオ尿素誘導体、特にＥＰ１７５４４６５Ａ１の段落［０００９］に列挙される化合物である。メチル－、エチル－、アリル－、ブチル－、ヘキシル、オクチル－、ベンジル－、１，１，３－トリメチル－、１，１－ジアリル－、１，３－ジアリル－、１－（２－ピリジル－２－チオ尿素、アセチル－、プロパノイル－、ブタノイル－、ペンタノイル－、ヘキサノイル－、ヘプタノイル－、オクタノイル－、ノナノイル－、デカノイル－、ベンゾイルチオ尿素、およびこれらの混合物が特に好ましい。アセチル－、アリル－、ピリジル－、およびフェニルチオ尿素、およびヘキサノイルチオ尿素、ならびにこれらの混合物、ならびに重合性チオ尿素誘導体、例えばＮ－（２－メタクリロイルオキシエトキシスクシノイル）－チオ尿素およびＮ－（４－ビニルベンゾイル）－チオ尿素）が特に非常に好ましい。さらに、前記チオ尿素誘導体の１種または複数と、１種または複数のイミダゾールとの組合せが、有利に使用され得る。好ましいイミダゾールは、２－メルカプト－１－メチルイミダゾールまたは２－メルカプトベンズイミダゾールである。
【0048】
少なくとも１種のヒドロペルオキシドおよび少なくとも１種のチオ尿素誘導体に加え、本発明による組成物は、硬化を加速させるために少なくとも１種の遷移金属化合物さらに含んでいてもよい。本発明により適切な遷移金属化合物は、特に、少なくとも２つの安定な酸化状態を持つ遷移金属から誘導される化合物である。元素の銅、鉄、コバルト、ニッケル、およびマンガンの化合物が特に好ましい。これらの金属は、下記の安定な酸化状態：Ｃｕ（Ｉ）／Ｃｕ（ＩＩ）、Ｆｅ（ＩＩ）／Ｆｅ（ＩＩＩ）、Ｃｏ（ＩＩ）／Ｃｏ（ＩＩＩ）、Ｎｉ（ＩＩ）／Ｎｉ（ＩＩＩ）、Ｍｎ（ＩＩ）／Ｍｎ（ＩＩＩ）を有する。少なくとも１種の銅化合物を含有する組成物が特に好ましい。遷移金属化合物は、好ましくは触媒量で、特に好ましくは１０から２００ｐｐｍの量で使用される。これらの量は、歯科用材料の変色をもたらさない。それらの良好なモノマー溶解度により、遷移金属は好ましくは、そのアセチルアセトネート、２－エチルヘキサノエート、またはＴＨＦ付加物の形で使用される。それらの、多座配位子、例えば２－（２－アミノエチルアミノ）エタノール、トリエチレンテトラミン、ジメチルグリオキシム、８－ヒドロキシキノリン、２，２’－ビピリジン、または１，１０－フェナントロリンとの錯体がさらに好ましい。本発明による特に適切な開始剤は、クメンヒドロペルオキシド（ＣＨＰ）と、上述のチオ尿素誘導体およびアセチルアセトン酸銅（ＩＩ）の少なくとも１種との混合物である。本発明によれば、バナジウム化合物を含有しない組成物が好ましい。
【0049】
本発明による組成物は、好ましくは、バルビツール酸またはバルビツール酸誘導体、例えば１，３，５－トリメチルバルビツール酸、１－ベンジル－５－フェニルバルビツール酸、５－ブチルバルビツール酸、または１－シクロヘキシル－５－エチルバルビツール酸を含有しない。バルビツレートを含有する組成物は、バルビツレートが大気中の酸素との酸化によって重合開始ラジカルを形成するので、満足のいかない保存安定性を有する。さらに、バルビツレートには、徐脈、低血圧、または血液障害などの有害な生理学的作用がある。
【0050】
本発明による組成物は、少なくとも１種の無機充填材を含有する。充填材を含有する組成物を、コンポジットと呼ぶ。少なくとも１種のフルオロアルミノシリケートガラス充填材（ＦＡＳ充填材）および／または放射線不透過性ガラス充填材を含有する組成物が好ましい。
【0051】
好ましい放射線不透過性ガラス充填材は、下記の組成（重量％）：ＳｉＯ２：２０～８０；Ｂ２Ｏ３：２～１５、ＢａＯまたはＳｒＯ：０～４０；Ａｌ２Ｏ３：２～２０；ＣａＯおよび／またはＭｇＯ：０～２０；Ｎａ２Ｏ、Ｋ２Ｏ、Ｃｓ２Ｏ：それぞれ０～１０；ＷＯ３：０～２０；ＺｎＯ：０～２０；Ｌａ２Ｏ３：０～１０；ＺｒＯ２：０～１５；Ｐ２Ｏ５：０～３０；Ｔａ２Ｏ５、Ｎｂ２Ｏ５またはＹｂ２Ｏ３：０～５；およびＣａＦ２および／またはＳｒＦ２ ０～１０を有する。下記の組成（重量％）：ＳｉＯ２：５０～７５；Ｂ２Ｏ３：２～１５；ＢａＯまたはＳｒＯ：２～３５；Ａｌ２Ｏ３：２～１５；ＣａＯおよび／またはＭｇＯ：０～１０；およびＮａ２Ｏ：０～１０を持つ放射線不透過性ガラス充填材が、特に好ましい。
【0052】
特に好ましいＦＡＳ充填材は、下記の組成（重量％）：ＳｉＯ２：２０～３５；Ａｌ２Ｏ３：１５～３５；ＢａＯまたはＳｒＯ：１０～２５；ＣａＯ：０～２０；ＺｎＯ：０～１５；Ｐ２Ｏ５：５～２０；Ｎａ２Ｏ、Ｋ２Ｏ、Ｃｓ２Ｏ：それぞれ０～１０；およびＣａＦ２：０．５～２０を有する。組成（重量％）：ＳｉＯ２：２０～３０；Ａｌ２Ｏ３：２０～３０；ＢａＯまたはＳｒＯ：１０～２５；ＣａＯ：５～２０；Ｐ２Ｏ５：５～２０；Ｎａ２Ｏ：０～１０；およびＣａＦ２：５～２０を持つＦＡＳ充填材が特に好ましい。
【0053】
全てのデータは、ガラスの全質量を指し、ガラスおよびガラスセラミックではよくあるように、フッ素以外の全ての構成成分は酸化物として計算される。
【0054】
ＦＡＳ充填材および放射線不透過性ガラス充填材は、好ましくは、０．２から２０μｍ、特に好ましくは０．４から５μｍの平均粒径を有する。
【0055】
本発明による組成物は、それぞれの場合に組成物の全質量に対して好ましくは２５から８０重量％、より好ましくは３０から７５重量％、最も好ましくは４０から７０重量％のＦＡＳ充填材および／または放射線不透過性ガラス充填材を含有する。
【0056】
前述のＦＡＳおよび放射線不透過性ガラス充填材に加え、本発明による組成物は、さらなる充填材を含有していてもよい。
【0057】
好ましいさらなる充填材は、金属酸化物、特に好ましくは６０から８０重量％のＳｉＯ２と、総量が１００％になるような金属酸化物ＺｒＯ２、Ｙ２ｂＯ３、ＺｎＯ、Ｔａ２Ｏ５、Ｎｂ２Ｏ５、および／またはＬａ２Ｏ３の少なくとも１種とを含有する混合酸化物である。ＳｉＯ２－ＺｒＯ２などの混合酸化物は、例えば金属アルコキシドの加水分解性共縮合によって入手可能である。金属酸化物は、好ましくは、０．０５から１０μｍ、特に好ましくは０．１から５μｍの平均粒径を有する。
【0058】
その他の好ましい追加の充填材は、ヒュームドシリカまたは沈降シリカであって、一次粒径が０．０１から０．１５μｍであるもの、および石英またはガラスセラミック粉末であって粒径が０．１から１５μｍ、好ましくは０．２から５μｍであるもの、および三フッ化イッテルビウムである。三フッ化イッテルビウムは、好ましくは８０から９００ｎｍ、特に好ましくは１００から３００ｎｍの粒径を有する。
【0059】
さらに、いわゆるコンポジット充填材は、さらなる充填材として好ましい。これらはイソ充填材とも呼ばれる。これらは、同様に充填材、好ましくは上記にて定義された発熱原性ＳｉＯ２および／または三フッ化イッテルビウムを含有するスプリンター様ポリマーである。ジメタクリレートをベースにしたポリマーが好ましい。イソ充填材の生成では、１種または複数の充填材が、例えばジメタクリレート樹脂母材に組み込まれ、得られたコンポジットペーストを引き続き熱重合させ、次いで粉砕する。
【0060】
本発明による好ましいコンポジット充填材は、例えば、硬化した材料を所望の粒径に粉砕する前にビス－ＧＭＡ（８．８０重量％）、ＵＤＭＡ（６．６０重量％）、１，１０－デカンジオールジメタクリレート（５．９３重量％）、過酸化ジベンゾイルおよび２，６－ジ－ｔｅｒｔ．－ブチル－４－メチルフェノール（一緒に０．６７重量％）、ガラス充填材（平均粒径０．４μｍ；５３．０重量％）、およびＹｂＦ３（２５．０重量％）の混合物を熱硬化することによって調製することができる。全てのパーセンテージは、コンポジット充填材の全質量を指す。
【0061】
いわゆる不活性化充填材を、さらなる充填材として使用することもできる。これらは、その表面が拡散障壁層で、例えばゾルゲルベースでまたは例えばＰＶＣのポリマー層によりコーティングされた、ガラス充填材である。好ましい充填材は、ＥＰ２１０３２９６Ａ１に記載されたものである。
【0062】
充填材と母材との間の結合を改善するため、充填材は、好ましくはメタクリレート官能化シラン、例えば３－メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランで表面修飾される。
【0063】
本発明による組成物は、好ましくは、それぞれの場合に組成物の全質量に対して０．１から２５重量％、より好ましくは１から２０重量％、最も好ましくは２から１５重量％の１種または複数のさらなる充填材、好ましくは１種または複数の金属酸化物、ヒュームドシリカ、および／または沈降シリカを含有する。
【0064】
本発明による組成物は、追加の添加剤、特に安定化剤、着色剤、殺菌剤、フッ化物イオン放出添加剤、例えばフッ化物塩、特にＮａＦ、またはフッ化アンモニウム、またはフルオロシラン、光増白剤、可塑剤、および／またはＵＶ吸収剤を含有していてもよい。
【0065】
好ましくは、本発明による組成物は：
－ ５から６０重量％、好ましくは８から４５重量％、特に好ましくは１０から３５重量％の、酸基がない少なくとも１種のラジカル重合性モノマー、
－ １から１５重量％、好ましくは２から１２重量％、特に好ましくは３から１０重量％の少なくとも１種の酸基含有ラジカル重合性モノマー、
－ ２５から８０重量％、好ましくは３０から７５重量％、特に好ましくは４０から７０重量％の少なくとも１種のＦＡＳ充填材および／または放射線不透過性ガラス充填材、
－ ０．１から８重量％、好ましくは０．５から６重量％、特に好ましくは１から５重量％の、ラジカル重合用の少なくとも１種の開始剤、ならびに
－ ０．５から６．０重量％、好ましくは０．７から５．０重量％、特に好ましくは１．０から４．０重量％の少なくとも１種のマスキング剤
を含む。
－ ５から６０重量％、好ましくは８から４５重量％、特に好ましくは１０から３５重量％の、酸基がない少なくとも１種のラジカル重合性モノマー、
－ １から１５重量％、好ましくは２から１２重量％、特に好ましくは３から１０重量％の少なくとも１種の酸基含有ラジカル重合性モノマー、
－ ２５から８０重量％、好ましくは３０から７５重量％、特に好ましくは４０から７０重量％の少なくとも１種のＦＡＳ充填材および／または放射線不透過性ガラス充填材、
－ ０．１から８重量％、好ましくは０．５から６重量％、特に好ましくは１から５重量％の、ラジカル重合用の少なくとも１種の開始剤、ならびに
－ ０．５から６．０重量％、好ましくは０．７から５．０重量％、特に好ましくは１．０から４．０重量％の少なくとも１種のマスキング剤
を含む。
【0066】
他に言及しない限り、本明細書の全てのパーセンテージは、組成物の全質量を指す。ラジカル重合性モノマーに関する全ての量（多および一官能性）は、酸基がないモノマーのみを指し、酸基を含有するモノマーを含まない。
【0067】
開始剤は、レドックス開始剤、光開始剤、または二重硬化用の開始剤とすることができる。言及される量は、全ての開始剤成分、即ち開始剤自体、および存在する場合には還元剤、遷移金属化合物などを含む。本発明によれば、少なくとも１種のレドックス開始剤、または少なくとも１種のレドックス開始剤および少なくとも１種の光開始剤を含有する組成物が、好ましい。
【0068】
本発明によれば、それぞれの場合に組成物の全質量に対して、下記の成分を含有するような組成物が特に好ましい：
ａ） ０．５から６重量％まで、好ましくは０．７から５重量％、特に好ましくは１．０から４．０重量％の少なくとも１種の固体マスキング剤、
ｂ） ５から４０重量％、好ましくは８から３０重量％、特に好ましくは１０から２５重量％の、酸基がない少なくとも１種の多官能性モノマー、
ｃ） １から１５重量％まで、好ましくは２から１２重量％、特に好ましくは３から１０重量％までの、酸基を含有する少なくとも１種のモノマー、
ｄ） ０から１０重量％、好ましくは０から８重量％、特に好ましくは１から５重量％の１種または複数のオリゴマーカルボン酸、
ｅ） １から２０重量％まで、好ましくは２から１５重量％、特に好ましくは３から１０重量％の、酸基がない１種または複数の一官能性モノマー、
ｆ） ２５から８０重量％まで、好ましくは３０から７５重量％、特に好ましくは４０から７０重量％の少なくとも１種のＦＡＳ充填材および／または放射線不透過性ガラス充填材、
ｇ） ０．１から２５重量％まで、好ましくは１から２０重量％、特に好ましくは２から１５重量％の１種または複数の追加の充填材、
ｈ） ０．１から８重量％まで、好ましくは０．５から６重量％、特に好ましくは１から５重量％の、ラジカル重合用の開始剤、
ｉ） ０から２０重量％、好ましくは０．２から１０重量％、特に好ましくは１から７重量％の水、ならびに
ｊ） ０．００１から５重量％、好ましくは０．００２から３重量％、特に好ましくは０．００５から２重量％の添加剤。
ａ） ０．５から６重量％まで、好ましくは０．７から５重量％、特に好ましくは１．０から４．０重量％の少なくとも１種の固体マスキング剤、
ｂ） ５から４０重量％、好ましくは８から３０重量％、特に好ましくは１０から２５重量％の、酸基がない少なくとも１種の多官能性モノマー、
ｃ） １から１５重量％まで、好ましくは２から１２重量％、特に好ましくは３から１０重量％までの、酸基を含有する少なくとも１種のモノマー、
ｄ） ０から１０重量％、好ましくは０から８重量％、特に好ましくは１から５重量％の１種または複数のオリゴマーカルボン酸、
ｅ） １から２０重量％まで、好ましくは２から１５重量％、特に好ましくは３から１０重量％の、酸基がない１種または複数の一官能性モノマー、
ｆ） ２５から８０重量％まで、好ましくは３０から７５重量％、特に好ましくは４０から７０重量％の少なくとも１種のＦＡＳ充填材および／または放射線不透過性ガラス充填材、
ｇ） ０．１から２５重量％まで、好ましくは１から２０重量％、特に好ましくは２から１５重量％の１種または複数の追加の充填材、
ｈ） ０．１から８重量％まで、好ましくは０．５から６重量％、特に好ましくは１から５重量％の、ラジカル重合用の開始剤、
ｉ） ０から２０重量％、好ましくは０．２から１０重量％、特に好ましくは１から７重量％の水、ならびに
ｊ） ０．００１から５重量％、好ましくは０．００２から３重量％、特に好ましくは０．００５から２重量％の添加剤。
【0069】
レドックス開始剤を含有する組成物は、自己硬化するものである。それらは好ましくは、２つの空間的に分離された構成成分の形、即ち２成分系（２Ｃ系）として使用される。酸化および還元剤は、組成物の別々の構成成分に組み込まれる。１つの構成成分、いわゆる触媒ペーストは、酸化剤、好ましくは過酸化物またはヒドロペルオキシドを含有し、第２の構成成分、いわゆるベースペーストは、対応する還元剤および必要に応じて光開始剤および必要に応じて触媒量の遷移金属化合物を含有する。重合は、構成成分を混合することによって開始される。レドックス開始剤および光開始剤の両方を含有する組成物は、二重硬化するものである。
【0070】
２成分組成物では、マスキング剤は、好ましくは強酸性接着剤モノマー、ＦＡＳ充填材、および／または放射線不透過性ガラス充填材を含有する構成成分に添加される。
【0071】
本発明によれば、２成分系が好ましい。それらは好ましくは自己硬化または二重硬化である。ペーストは、使用の少し前に、好ましくはダブルプッシュシリンジで一緒に混合される。
【0072】
触媒ペーストは、好ましくは、それぞれの場合に触媒ペーストの全質量に対して下記の組成を有する：
ａ） １．０から１２重量％、好ましくは１．４から１０重量％、特に好ましくは２．０から８．０重量％の少なくとも１種の固体マスキング剤、
ｂ） ５から４０重量％、好ましくは８から３０重量％、特に好ましくは１０から２５重量％の、酸基がない少なくとも１種の多官能性モノマー、
ｃ） ２から３０重量％、好ましくは４から２４重量％、特に好ましくは６から２０重量％の、酸基を含有する少なくとも１種のモノマー、
ｄ） ０．１から２０重量％まで、好ましくは１から１６重量％、特に好ましくは２から１０重量％の１種または複数のオリゴマーカルボン酸、
ｅ） １から２０重量％、好ましくは２から１５重量％、特に好ましくは３から１０重量％の、酸基がない１種または複数の一官能性モノマー、
ｆ） ２５から８０重量％、好ましくは３０から７５重量％、特に好ましくは４０から７０重量％の少なくとも１種のＦＡＳ充填材および／またはガラス充填材、
ｇ） ０．１から２５重量％まで、好ましくは１から２０重量％、特に好ましくは２から１５重量％の１種または複数の追加の充填材、
ｈ） ０．０１から１６重量％、好ましくは０．０２から１２重量％、特に好ましくは０．０３から１０重量％の少なくとも１種の過酸化物および／またはヒドロペルオキシド、および必要に応じて少なくとも１種の光開始剤、
ｉ） ０から２０重量％、好ましくは０．２から１０重量％、特に好ましくは１から７重量％の水、ならびに
ｊ） ０．００１から５重量％、好ましくは０．００２から３重量％、特に好ましくは０．００５から２重量％の添加剤。
ａ） １．０から１２重量％、好ましくは１．４から１０重量％、特に好ましくは２．０から８．０重量％の少なくとも１種の固体マスキング剤、
ｂ） ５から４０重量％、好ましくは８から３０重量％、特に好ましくは１０から２５重量％の、酸基がない少なくとも１種の多官能性モノマー、
ｃ） ２から３０重量％、好ましくは４から２４重量％、特に好ましくは６から２０重量％の、酸基を含有する少なくとも１種のモノマー、
ｄ） ０．１から２０重量％まで、好ましくは１から１６重量％、特に好ましくは２から１０重量％の１種または複数のオリゴマーカルボン酸、
ｅ） １から２０重量％、好ましくは２から１５重量％、特に好ましくは３から１０重量％の、酸基がない１種または複数の一官能性モノマー、
ｆ） ２５から８０重量％、好ましくは３０から７５重量％、特に好ましくは４０から７０重量％の少なくとも１種のＦＡＳ充填材および／またはガラス充填材、
ｇ） ０．１から２５重量％まで、好ましくは１から２０重量％、特に好ましくは２から１５重量％の１種または複数の追加の充填材、
ｈ） ０．０１から１６重量％、好ましくは０．０２から１２重量％、特に好ましくは０．０３から１０重量％の少なくとも１種の過酸化物および／またはヒドロペルオキシド、および必要に応じて少なくとも１種の光開始剤、
ｉ） ０から２０重量％、好ましくは０．２から１０重量％、特に好ましくは１から７重量％の水、ならびに
ｊ） ０．００１から５重量％、好ましくは０．００２から３重量％、特に好ましくは０．００５から２重量％の添加剤。
【0073】
ベースペーストは好ましくは、それぞれの場合にベースペーストの全質量に対して下記の組成を有する：
ａ） 適用せず、
ｂ） ５から４０重量％、好ましくは８から３０重量％、特に好ましくは１０から２５重量％の、酸基がない少なくとも１種の多官能性モノマー、
ｃ） 適用せず、
ｄ） 適用せず、
ｅ） １から２０重量％、好ましくは２から１５重量％、特に好ましくは３から１０重量％の、酸基がない１種または複数の一官能性モノマー、
ｆ） ２５から８０重量％、好ましくは３０から７５重量％、特に好ましくは４０から７０重量％の少なくとも１種のフルオロアルミノシリケートガラス充填材および／またはガラス充填材、
ｇ） ０．１から２５重量％まで、好ましくは１から２０重量％、特に好ましくは２から１５重量％の１種または複数の追加の充填材、
ｈ） ０．０１から１６重量％、好ましくは０．０２から１２重量％、特に好ましくは０．０３から１０重量％の少なくとも１種の適切な還元剤および必要に応じた光開始剤、
ｉ） ０から２０重量％、好ましくは０．２から１０重量％、特に好ましくは１から７重量％の水、ならびに
ｊ） ０．００１から５重量％、好ましくは０．００２から３重量％、特に好ましくは０．００５から２重量％の添加剤。
ａ） 適用せず、
ｂ） ５から４０重量％、好ましくは８から３０重量％、特に好ましくは１０から２５重量％の、酸基がない少なくとも１種の多官能性モノマー、
ｃ） 適用せず、
ｄ） 適用せず、
ｅ） １から２０重量％、好ましくは２から１５重量％、特に好ましくは３から１０重量％の、酸基がない１種または複数の一官能性モノマー、
ｆ） ２５から８０重量％、好ましくは３０から７５重量％、特に好ましくは４０から７０重量％の少なくとも１種のフルオロアルミノシリケートガラス充填材および／またはガラス充填材、
ｇ） ０．１から２５重量％まで、好ましくは１から２０重量％、特に好ましくは２から１５重量％の１種または複数の追加の充填材、
ｈ） ０．０１から１６重量％、好ましくは０．０２から１２重量％、特に好ましくは０．０３から１０重量％の少なくとも１種の適切な還元剤および必要に応じた光開始剤、
ｉ） ０から２０重量％、好ましくは０．２から１０重量％、特に好ましくは１から７重量％の水、ならびに
ｊ） ０．００１から５重量％、好ましくは０．００２から３重量％、特に好ましくは０．００５から２重量％の添加剤。
【0074】
適用のため、触媒およびベースペーストは、好ましくはほぼ等しい割合で一緒に混合される。したがって、ダブルプッシュシリンジで適用するのに特に適切である。
【0075】
ダブルプッシュシリンジは、ベースペーストおよび触媒ペーストを保持するための、２つの別々の円筒状チャンバーを有する。構成成分は、２つの相互接続されたピストンによって同時にチャンバーから押し出され、好ましくは混合カニューレを経て押し遣られ、その内部で一緒に混合される。ペーストを押し出すために、シリンジは、シリンジの取扱いを容易にするいわゆるハンドディスペンサー内に挿入することができる。
【0076】
本発明による組成物は、高い保存安定性および改善された透明度、好ましくは１０％よりも大きく改善されたもの、およびエナメル／象牙質に対する良好な自己接着によって、特徴付けられる。損傷した歯の修復のための歯科医による口内使用のための歯科用材料として、特に歯科用セメント、コーティング材料、またはベニア材料、充填コンポジットとして、最も特別には合着用セメントとして特に適切である（治療的使用）。透明度は、実施例に記述される手法で決定される。
【0077】
損傷した歯の処置のため、これらは第１のステップで歯科医により好ましく調製される。その後、本発明による少なくとも１種の組成物が、準備を整えられた歯にまたは歯の内部に塗布される。その後、組成物を、好ましくは適切な波長の光の照射によって、例えば歯腔を修復するときに、直接硬化することができる。あるいは、歯科修復物、例えばインレー、オンレー、ベニア、クラウン、ブリッジ、フレームワーク、または歯科用セラミックは、準備を整えられた歯の内部に配置されたまたはその歯に塗布される。組成物の後続の硬化は、好ましくは光および／または自己硬化によって行われる。歯科修復物は、このプロセスで歯に取着される。
【0078】
本発明による組成物は、口外材料（非治療的）として、例えば歯科修復物の製作または修復において使用することもできる。インレー、オンレー、クラウン、またはブリッジの製作および修復のための材料としても適切である。
【0079】
インレー、オンレー、クラウン、またはブリッジなどの歯科修復物の生成のため、本発明による少なくとも１種の組成物が、それ自体が公知の手法で所望の歯科修復物に形成され、次いで硬化される。硬化は、光、自己硬化、または好ましくは熱によって行うことができる。
【0080】
歯科修復物の修正において、本発明による組成物は、修正がなされる修復上に配置され、例えば隙間を修復しまたは断片を結合するのに配置され、次いで硬化される。
【0081】
本発明を、図および実施例を参照しながら、以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【0083】
【実施例0084】
（実施例１）
ＥＤＴＡを含む／含まない自己接着型コンポジットの保存安定性の調査
ＥＤＴＡを含む／含まない自己接着型コンポジットの保存安定性の調査
【0085】
コンポジットペーストＣ－１からＣ－３を、表１（全てのデータは、重量％を単位とする）に示される組成物で、下記の構成成分から調製した：実験用放射線不透過性ガラス充填材１（組成（重量％）：Ａｌ２Ｏ３：６；Ｂ２Ｏ３：５；Ｎａ２Ｏ：８；ＣａＯ、ＢａＯ、Ｋ２Ｏ：それぞれ約２～３；ＣａＦ２；ＭｇＯ、それぞれ約１；およびＳｉＯ２：７０；非シラン化）、リン酸二水素１０－メタクリロイルオキシデシル（ＭＤＰ、Ｏｒｇｅｎｔｉｓ）、トリエチレングリコールジメタクリレート（ＴＥＧＤＭＡ）、ＮＫエステル９Ｇ（ポリエチレングリコール－４００－ジメタクリレート、Ｋｏｗａ Ｅｕｒｏｐａ ＧｍｂＨ）、Ｖ－３９２（Ｎ，Ｎ’－ジエチル－１，３－ビス（アクリルアミド）－プロパン、Ｉｖｏｃｌａｒ Ｖｉｖａｄｅｎｔ ＡＧ）、ＢＨＴ（２，６－ジ－ｔｅｒｔ－ブチル－ｐ－クレゾール）：脱イオン水、およびエチレンジアミン四酢酸（ＥＤＴＡ、Ａｌｄｒｉｃｈ）。
表１：コンポジットペーストの組成（重量％）
＊）比較例
表１：コンポジットペーストの組成（重量％）
【表1-1】
【0086】
ペーストＣ－１（ＥＤＴＡなし）およびＣ－２（３．６６％のＥＤＴＡ）およびＣ－３（１．２６％のＥＤＴＡ）を室温で保存し、ＭＤＰの含量を、数週間の間隔でＨＰＬＣにより決定した。ＨＰＬＣ測定では、１２５×４のＮｕｃｌｅｏｄｕｒ １００－５ Ｃ１８ｅｃカラムおよびＵＶ／ＶＩＳ検出器（２２０ｎｍ）を備えたＨＰＬＣ Ｕｌｔｉｍａｔｅ ３０００機器（ＴｈｅｒｍｏＦｉｓｈｅｒ Ｓｃｉｅｎｔｉｆｉｃ）を使用した。試料をメタノールに溶解し、下記のプログラムに従って、０．０１ｍｏｌ／ｌのＨ３ＰＯ４を水（Ａ）、メタノール（Ｂ）、およびアセトニトリル（Ｃ）に溶かしたもので溶出した。結果を図１に示す。
勾配プログラム
勾配プログラム
【表1-2】
【0087】
図１に示される結果は、ＥＤＴＡを含むコンポジットペーストＣ－２およびＣ－３の著しく改善された保存安定性を実証する。ＥＤＴＡを含まないコンポジットペーストＣ－１（四角形状）は、既に３～４週間後に利用可能なＭＤＰの著しい低下を示し、それに対してＥＤＴＡを含むコンポジットペーストＣ－２（下向き三角形状）およびＣ－３（円形状）では、当初のＭＤＰの２／３よりも多くが、２４週間後に依然として利用可能であった。
【0088】
（実施例２）
二重硬化性自己接着型コンポジットセメントの調製
実施例１と同様に、触媒ペーストＣＰ－１（ＥＤＴＡなし）、ＣＰ－２およびＣＰ－３（ＥＤＴＡあり）、ならびにベースペーストを、表２に示される組成で調製した。材料の象牙質接着は、保存時間の関数として決定した。象牙質接着の調査では、ウシの歯をプラスチックのシリンダーに埋め込んで、象牙質およびプラスチックが一平面内にあるようにした。３７％のリン酸で１５秒間エッチングした後、それらを水で完全に濯いだ。酸エッチングは、象牙細管を開放した。次いで触媒ペーストを、別にそれぞれ１：１の比でベースペーストと混合して、セメントを形成した。次いで試験がなされる混合物の層を、マイクロブラシで歯に塗布させ、ハロゲンランプ（Ａｓｔｒａｌｉｓ ７、Ｉｖｏｃｌａｒ Ｖｉｖａｄｅｎｔ ＡＧ）で４０秒間露光した。歯科用コンポジット材料（Ｔｅｔｒｉｃ（登録商標）Ｃｅｒａｍ；Ｉｖｏｃｌａｒ Ｖｉｖａｄｅｎｔ ＡＧ）で作製されたコンポジットシリンダーを、セメント層上で重合して、それぞれ１～２ｍｍの２層にし、そのそれぞれをハロゲンランプＡｓｔｒａｌｉｓ ７による４０秒間露光によって硬化した。次いで試験片を３７℃で２４時間水中で保存し、剪断結合強度を決定した。結果を図２に示す。
二重硬化性自己接着型コンポジットセメントの調製
実施例１と同様に、触媒ペーストＣＰ－１（ＥＤＴＡなし）、ＣＰ－２およびＣＰ－３（ＥＤＴＡあり）、ならびにベースペーストを、表２に示される組成で調製した。材料の象牙質接着は、保存時間の関数として決定した。象牙質接着の調査では、ウシの歯をプラスチックのシリンダーに埋め込んで、象牙質およびプラスチックが一平面内にあるようにした。３７％のリン酸で１５秒間エッチングした後、それらを水で完全に濯いだ。酸エッチングは、象牙細管を開放した。次いで触媒ペーストを、別にそれぞれ１：１の比でベースペーストと混合して、セメントを形成した。次いで試験がなされる混合物の層を、マイクロブラシで歯に塗布させ、ハロゲンランプ（Ａｓｔｒａｌｉｓ ７、Ｉｖｏｃｌａｒ Ｖｉｖａｄｅｎｔ ＡＧ）で４０秒間露光した。歯科用コンポジット材料（Ｔｅｔｒｉｃ（登録商標）Ｃｅｒａｍ；Ｉｖｏｃｌａｒ Ｖｉｖａｄｅｎｔ ＡＧ）で作製されたコンポジットシリンダーを、セメント層上で重合して、それぞれ１～２ｍｍの２層にし、そのそれぞれをハロゲンランプＡｓｔｒａｌｉｓ ７による４０秒間露光によって硬化した。次いで試験片を３７℃で２４時間水中で保存し、剪断結合強度を決定した。結果を図２に示す。
【0089】
ベースペーストおよびＥＤＴＡを含まないペーストＣＰ－１（四角形状）をベースにしたセメントでは、象牙質結合強度値３．２１ＭＰａが２８日後に決定された。対照的に、ベースペーストならびにＥＤＴＡを含むペーストＣＰ－２（下向き三角形状）およびＣＰ－３（円形状）をベースにしたセメントは、それぞれ、保存の４週間後に室温で、５．７６ＭＰａ（ＣＰ－２）および４．４２ＭＰａ（ＣＰ－３）の著しく高い象牙質結合強度値をもたらした。
表２：ベースおよび触媒ペーストの組成（重量％）
＊） 比較例
１） ＴＥＭＰＯ：２，２，６，６－テトラメチルピペリジニルオキシル、ＣＡＳ番号２５６４－８３－２
２） 組成（重量％）：Ａｌ２Ｏ３：２４；ＳｉＯ２：２３；ＣａＯ：１６．５；ＣａＦ２：１６；ＢａＯ：１１．５；Ｐ２Ｏ５：８；Ｎａ２Ｏ：２；５％シラン；平均粒径１μｍ（Ｓｃｈｏｔｔ ＡＧ、Ｍａｉｎｚ）
３） 組成（重量％）：Ａｌ２Ｏ３：２４；ＳｉＯ２：２３；ＣａＯ：１６．５；ＣａＦ２：１６；ＢａＯ：１１．５；Ｐ２Ｏ５：８；Ｎａ２Ｏ：２；５％シラン；平均粒径７μｍ（Ｓｃｈｏｔｔ ＡＧ、Ｍａｉｎｚ）
４） 発熱原性シリカ；トリメチルシロキシ表面修飾；ＢＥＴ表面積（ＤＩＮ ＩＳＯ ９２７７ ＤＩＮ ６６１３２）非シラン化：約２００ｍ２／ｇ；密度（ＳｉＯ２；ＤＩＮ ５１７５７）：２．２ｇ／ｃｍ３；残留シラノール含量（約２ ＳｉＯＨ／ｎｍ２である非シラン化シリカをベースにした相対的シラノール含量）：２５％（Ｗａｃｋｅｒ Ｃｈｅｍｉｅ ＡＧ）
５） ２，５－ジヒドロキシテレフタル酸ジエチルエステル（Ｒｉｅｄｅｌ－ｄｅ Ｈａｅｎ ＡＧ）
表２：ベースおよび触媒ペーストの組成（重量％）
【表2】
１） ＴＥＭＰＯ：２，２，６，６－テトラメチルピペリジニルオキシル、ＣＡＳ番号２５６４－８３－２
２） 組成（重量％）：Ａｌ２Ｏ３：２４；ＳｉＯ２：２３；ＣａＯ：１６．５；ＣａＦ２：１６；ＢａＯ：１１．５；Ｐ２Ｏ５：８；Ｎａ２Ｏ：２；５％シラン；平均粒径１μｍ（Ｓｃｈｏｔｔ ＡＧ、Ｍａｉｎｚ）
３） 組成（重量％）：Ａｌ２Ｏ３：２４；ＳｉＯ２：２３；ＣａＯ：１６．５；ＣａＦ２：１６；ＢａＯ：１１．５；Ｐ２Ｏ５：８；Ｎａ２Ｏ：２；５％シラン；平均粒径７μｍ（Ｓｃｈｏｔｔ ＡＧ、Ｍａｉｎｚ）
４） 発熱原性シリカ；トリメチルシロキシ表面修飾；ＢＥＴ表面積（ＤＩＮ ＩＳＯ ９２７７ ＤＩＮ ６６１３２）非シラン化：約２００ｍ２／ｇ；密度（ＳｉＯ２；ＤＩＮ ５１７５７）：２．２ｇ／ｃｍ３；残留シラノール含量（約２ ＳｉＯＨ／ｎｍ２である非シラン化シリカをベースにした相対的シラノール含量）：２５％（Ｗａｃｋｅｒ Ｃｈｅｍｉｅ ＡＧ）
５） ２，５－ジヒドロキシテレフタル酸ジエチルエステル（Ｒｉｅｄｅｌ－ｄｅ Ｈａｅｎ ＡＧ）
【0090】
コンポジットセメントの透明度を、高輝度まで研磨した１ｍｍの厚さの試験片に関し、分光光度計（Ｋｏｎｉｋａ－Ｍｉｎｏｌｔａ分光光度計ＣＭ－５）を用いて透過で測定した。ベースペーストおよび触媒ペーストＣＰ－１からＣＰ－３をベースにしたセメントの透明度の決定は、下記の透明度の値を与えた：ＣＰ－１：２１．１％；ＣＰ－２：１６．７％、ＣＰ－３：１８．８％。触媒ペーストＣＰ－２およびＣＰ－３をベースにしたセメントの透明度は、ＣＰ－１をベースにしたセメントと比較して、ＥＤＴＡの添加によりいくらか低減したが、本発明によるコンポジットセメントの透明度の値は、透明度が６．７％であるＶｉｖａｇｌａｓｓ ＣＥＭ ＰＬ（Ｉｖｏｃｌａｒ Ｖｉｖａｄｅｎｔ ＡＧ）などの古典的なガラスアイオノマーセメントの場合よりも著しく高い。
【図1】
【図2】
【外国語明細書】