(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098837
(43)【公開日】2023-07-11
(54)【発明の名称】良好な透明度を有する硫酸塩含有またはリン酸塩含有自己接着型歯科用コンポジットセメント
(51)【国際特許分類】
A61K 6/831 20200101AFI20230704BHJP
A61K 6/887 20200101ALI20230704BHJP
A61K 6/836 20200101ALI20230704BHJP
A61K 6/20 20200101ALI20230704BHJP
A61K 6/30 20200101ALI20230704BHJP
【FI】
A61K6/831
A61K6/887
A61K6/836
A61K6/20
A61K6/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022196968
(22)【出願日】2022-12-09
(31)【優先権主張番号】21218209
(32)【優先日】2021-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】501151539
【氏名又は名称】イフォクレール ヴィヴァデント アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Ivoclar Vivadent AG
【住所又は居所原語表記】Bendererstr.2 FL-9494 Schaan Liechtenstein
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ノルベルト モスツナー
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドロス ジアナスミディス
(72)【発明者】
【氏名】デルフィーネ カテル
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン カテル
(72)【発明者】
【氏名】アンディ ブロート
(72)【発明者】
【氏名】ティム ハルトナー
(72)【発明者】
【氏名】トルステン ボック
(72)【発明者】
【氏名】バーバラ グラーベンバウアー
【テーマコード(参考)】
4C089
【Fターム(参考)】
4C089AA06
4C089AA10
4C089BA13
4C089BA14
4C089BA16
4C089BA18
4C089BA19
4C089BC03
4C089BD01
4C089BD02
4C089BD06
4C089CA03
(57)【要約】
【課題】良好な透明度を有する硫酸塩含有またはリン酸塩含有自己接着型歯科用コンポジットセメントを提供すること。
【解決手段】少なくとも1種の酸性ラジカル重合性モノマー、少なくとも1種のフルオロアルミノシリケートガラス充填材および/または放射線不透過性ガラス充填材、ならびに少なくとも1種の水溶性硫酸塩および/またはリン酸塩を含む、ラジカル重合性組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の酸性ラジカル重合性モノマーと、少なくとも1種のフルオロアルミノシリケートガラス充填材および/または放射線不透過性ガラス充填材とを含み、少なくとも1種の水溶性硫酸塩および/またはリン酸塩をさらに含むことを特徴とする、ラジカル重合性組成物。
【請求項2】
水溶性硫酸塩として、20℃で少なくとも100g/lの、好ましくは110から1,000g/lの水溶解度を有する硫酸の少なくとも1種の無機塩、および/または水溶性リン酸塩として、20℃で少なくとも100g/lの、好ましくは110から1,000g/lの水溶解度を有するオルトリン酸の少なくとも1種の無機塩を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
水溶性硫酸塩として、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、もしくはこれらの混合物、および/または水溶性リン酸塩として、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸アンモニウム、もしくはこれらの混合物を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物の全質量に対して、0.3から9.0重量%、好ましくは0.4から6.0重量%、特に好ましくは0.7から4.0重量%の少なくとも1種の水溶性硫酸塩および/またはリン酸塩を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
各場合に前記組成物の全質量に対して、
- 5から60重量%、好ましくは8から45重量%、特に好ましくは10から35重量%の、酸基を有さない少なくとも1種のラジカル重合性モノマー、
- 1から15重量%、好ましくは2から12重量%、特に好ましくは3から10重量%の、酸基を有する少なくとも1種のラジカル重合性モノマー、
- 25から80重量%、好ましくは30から75重量%、特に好ましくは40から70重量%の少なくとも1種のフルオロアルミノシリケートガラス充填材および/または放射線不透過性ガラス充填材、
- 0.1から8重量%、好ましくは0.5から6重量%、特に好ましくは1から5重量%の、ラジカル重合用の少なくとも1種の開始剤、ならびに
- 0.3から9重量%、好ましくは0.4から6重量%、特に好ましくは0.7から4.0重量%の少なくとも1種の水溶性硫酸塩および/またはリン酸塩
を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
各場合に前記組成物の全質量に対して、
a) 0.3から9重量%、好ましくは0.4から6重量%、特に好ましくは0.7から4.0重量%の少なくとも1種の水溶性硫酸塩および/またはリン酸塩、
b) 5から40重量%、好ましくは8から35重量%、特に好ましくは10から30重量%の、酸基を有さない少なくとも1種の多官能性モノマー、
c) 1から15重量%、好ましくは2から12重量%、特に好ましくは3から10重量%の、酸基を含有する少なくとも1種のラジカル重合性モノマー、
d) 0から10重量%、好ましくは0から8重量%、特に好ましくは0から5重量%の1種または複数のオリゴマーカルボン酸、
e) 必要に応じて0.1から20重量%、好ましくは0.5から15重量%、特に好ましくは1から10重量%の、酸基を有さない1種または複数の一官能性モノマー、
f) 25から80重量%、好ましくは30から75重量%、特に好ましくは40から70重量%の少なくとも1種のフルオロアルミノシリケートガラス充填材および/または放射線不透過性ガラス充填材、
g) 必要に応じて1から50重量%、好ましくは1.5から40%、特に好ましくは2から30重量%の1種または複数の追加の充填材、
h) 0.1から8重量%、好ましくは0.5から6%、特に好ましくは1から5重量%の、ラジカル重合用の開始剤、
i) 0から20重量%、好ましくは0.2から10重量%、特に好ましくは1から7重量%の水、ならびに
j) 0.01から5重量%、好ましくは0.1から3重量%、特に好ましくは0.1から2重量%の1種または複数の添加剤
を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
多官能性モノマー(b)として、ビスフェノールAジメタクリレート、ビス-GMA(メタクリル酸およびビスフェノールAジグリシジルエーテルの付加生成物)、エトキシ化もしくはプロポキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、例えば3個のエトキシ基を有するビスフェノールAジメタクリレートもしくは2,2-ビス[4-(2-メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸とジイソシアネートとのウレタン、例えば2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートもしくはイソホロンジイソシアネートとのウレタン、UDMA(2-ヒドロキシエチルメタクリレートおよび2,2,4-トリメチルヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネートの付加生成物)、テトラメチルキシリレンジウレタンエチレングリコールジ(メタ)アクリレートもしくはテトラメチルキシリレンジウレタン-2-メチルエチレングリコールジウレタンジ(メタ)アクリレート(V380)、ジ-、トリ-、もしくはテトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、およびグリセロールジ-およびトリメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート(D3MA)、ビス(メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ-[5.2.1.02,6]デカン(DCP)、ポリエチレングリコールもしくはポリプロピレングリコールジメタクリレート、例えばポリエチレングリコール200-ジメタクリレート(PEG-200-DMA)もしくはポリエチレングリコール400-ジメタクリレート(PEG-400-DMA)、1,12-ドデカンジオールジメタクリレート、ラジカル重合性ピロリドン、例えば1,6-ビス(3-ビニル-2-ピロリドニル)-ヘキサン、ビスアクリルアミド、例えばメチレンもしくはエチレンビスアクリルアミド、ビス(メタ)アクリルアミド、例えばN,N’-ジエチル-1,3-ビス(アクリルアミド)プロパン、1,3-ビス(メタクリルアミド)プロパン、1,4-ビス(アクリルアミド)ブタン、または1,4-ビス(アクリロイル)ピペラジン、ならびにこれらの混合物から選択される少なくとも1種のモノマーを含む、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
酸基を含有するモノマー(c)として、リン酸エステル基もしくはホスホン酸基を含有するモノマー、好ましくはリン酸水素2-メタクリロイルオキシエチルフェニル、リン酸二水素10-メタクリロイルオキシデシル(MDP)、リン酸二水素ジメタクリル酸グリセロール、ジペンタエリスリトールペンタメタクリロイルオキシホスフェート、4-ビニルベンジルホスホン酸、2-[4-(ジヒドロキシホスホリル)-2-オキサ-ブチル]-アクリル酸、および/もしくは2-[4-(ジヒドロキシホスホリル)-2-オキサ-ブチル]-アクリル酸-2,4,6-トリメチルフェニルエステル、ならびに/またはカルボキシ基を含有するモノマー、好ましくは4-(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸無水物、10-メタクリロイルオキシデシルマロン酸、N-(2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロピル)-N-フェニルグリシン、および/もしくは4-ビニル安息香酸から選択される少なくとも1種のモノマーを含む、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
数平均分子量が7,200g/mol未満、好ましくは7,000g/mol未満、特に好ましくは6,800g/mol未満のポリアクリル酸から選択される、少なくとも1種のオリゴマーカルボン酸(d)を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
ベンジル、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、p-クミルフェノキシエチレングリコールメタクリレート(CMP-1E)、および2-([1,1’-ビフェニル]-2-オキシ)エチルメタクリレート(MA-836)、トリシクロデカンメチル(メタ)アクリレート、2-(2-ビフェニルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタクリレート)、ヒドロキシエチルプロピル(メタクリレート)、2-アセトキシエチルメタクリレート、ならびにこれらの混合物から選択される、少なくとも1種の一官能性モノマー(e)を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
組成(重量%):
SiO2:20~80;B2O3:2~15、BaOもしくはSrO:0~40;Al2O3:2~20;CaOおよび/もしくはMgO:0~20;Na2O、K2O、Cs2O:それぞれ0~10;WO3:0~20;ZnO:0~20;La2O3:0~10;ZrO2:0~15;P2O5:0~30;Ta2O5、Nb2O5もしくはYb2O3:0~5;およびCaF2および/もしくはSrF2 0~10;もしくは好ましくはSiO2:50~75;B2O3:2~15;BaOもしくはSrO:2~35;Al2O3:2~15;CaOおよび/もしくはMgO:0~10;およびNa2O:0~10を有する放射線不透過性ガラス充填材、ならびに/または組成(重量%):SiO2:20~35;Al2O3:15~35;BaOもしくはSrO:10~25;CaO:0~20;ZnO:0~15;P2O5:5~20;Na2O、K2O、Cs2O:それぞれ0~10;およびCaF2:0.5~20;もしくは好ましくはSiO2:20~30;Al2O3:20~30;BaOもしくはSrO:10~25;CaO:5~20;P2O5:5~20;Na2O:0~10;およびCaF2:5~20を有するフルオロアルミノシリケートガラス充填材を含み、全ての数値が前記ガラスの全質量に対するものであり、フッ素以外の全ての構成成分が酸化物として計算される、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
触媒ペーストおよびベースペーストを含み、前記触媒ペーストが、各場合に前記触媒ペーストの全質量に対して、
a) 0.3から9重量%、好ましくは0.4から6重量%、特に好ましくは0.7から4.0重量%の少なくとも1種の水溶性硫酸塩および/またはリン酸塩、
b) 5から40重量%、好ましくは8から35重量%、特に好ましくは10から30重量%の、酸基を有さない少なくとも1種の多官能性モノマー、
c) 2から最大30重量%、好ましくは4から24重量%、特に好ましくは6から20重量%の、酸基を含有する少なくとも1種のモノマー、
d) 0から20重量%、好ましくは0から16重量%、特に好ましくは0から10重量%の1種または複数のオリゴマーカルボン酸、
e) 必要に応じて0.1から20重量%、好ましくは0.5から15重量%、特に好ましくは1から10重量%の、酸基を有さない1種または複数の一官能性モノマー、
f) 25から80重量%、好ましくは30から75重量%、特に好ましくは40から70重量%の少なくとも1種のFASおよび/またはガラス充填材、
g) 必要に応じて1から50重量%、好ましくは1.5から40重量%、特に好ましくは2から30重量%の1種または複数の追加の充填材、
h) 0.01から16重量%、好ましくは0.02から12重量%、特に好ましくは0.03から10重量%の少なくとも1種の過酸化物および/またはヒドロペルオキシドおよび必要に応じて少なくとも1種の光開始剤、
i) 0から20重量%、好ましくは0.2から10重量%、特に好ましくは1から7重量%の水、ならびに
j) 0.001から5重量%、好ましくは0.03から3重量%、特に好ましくは0.05から2重量%の1種または複数の添加剤を含み、
前記ベースペーストが、各場合に前記ベースペーストの全質量に対して、
a) 適用せず、
b) 5から40重量%、好ましくは8から35重量%、特に好ましくは10から30重量%の、酸基を有さない少なくとも1種の多官能性モノマー、
c) 適用せず、
d) 適用せず、
e) 必要に応じて0.1から20重量%、好ましくは0.5から15重量%、特に好ましくは1から10重量%の、酸基を有さない1種または複数の一官能性モノマー、
f) 25から80重量%、好ましくは30から75重量%、特に好ましくは40から70重量%の少なくとも1種のFASおよび/またはガラス充填材、
g) 必要に応じて1から50重量%、好ましくは1.5から40重量%、特に好ましくは2から30重量%の1種または複数の追加の充填材、
h) 0.01から16重量%、好ましくは0.02から12重量%、特に好ましくは0.03から10重量%の少なくとも1種の適切な還元剤および必要に応じて光開始剤、
i) 0から20重量%、好ましくは0.2から10重量%、特に好ましくは1から7重量%の水、ならびに
j) 0.001から5重量%、好ましくは0.03から3重量%、特に好ましくは0.05から2重量%の1種または複数の添加剤を含む、
請求項6から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記触媒ペーストおよび前記ベースペーストが、それぞれ、デュアルプッシュシリンジの、異なるチャンバーに含有される、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
歯科用材料として、好ましくは歯科用セメント、コーティング材料、ベニア材料、修復用コンポジット、または合着用セメントとしての治療的使用のための、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
歯科用修復物、特にインレー、オンレー、クラウン、またはブリッジの製造または修復のための、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物の非治療的使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用材料として、例えば歯科用セメント、充填コンポジット、またはベニア材料として、およびインレー、オンレー、またはクラウンの製造に特に適切な、改善された透明度を有する保存安定なラジカル重合性の自己接着型コンポジットに関する。
【背景技術】
【0002】
コンポジットは、主に、直接および間接的な充填材の製作のために、即ち直接および間接的な充填コンポジットとしてならびにセメントとして、歯科分野で使用される。コンポジットの重合性有機母材は、通常、モノマー、開始剤構成成分、および安定剤の混合物からなる。ジメタクリレートの混合物は、一官能性および官能化モノマーを含有していてもよいモノマーとして、通常は使用される。一般に使用されるジメタクリレートは、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]プロパン(ビス-GMA)、1,6-ビス[2-メタクリロイルオキシエトキシカルボニルアミノ]-2,2,4-トリメチルヘキサン(UDMA)であり、これらは高い粘度を有し、ポリマーに良好な機械的性質および低い重合収縮を与える。トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、1,10-デカンジオールジメタクリレート(D3MA)またはビス(3-メタクリロイルオキシメチル)-トリシクロ-[5.2.1.02,6]デカン(DCP)が、反応性希釈剤として主に使用される。一官能性メタクリレート、例えばp-クミルフェノキシエチレングリコールメタクリレート(CMP-1E)も、粘度を低減させるのに適切であり、網状構造の密度の低減および増大する二重結合変換を引き起こす。
【0003】
自己接着型コンポジットを生成するには、リン酸二水素10-メタクリロイルオキシデシル(MDP)などの強酸性接着剤モノマーが使用され、歯の構造をエッチングし、イオン性の関係によってエナメル/象牙質への接着を引き起こす。接着剤モノマーは、自己接着性をコンポジットに与え、したがってエナメル/象牙質接着剤による歯の構造の前処理なしにコンポジットを使用することが可能になり、それらの使用を特に魅力あるものにする。
【0004】
有機母材に加え、コンポジットは、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなどの重合性カップリング剤で通常は表面修飾される、1種または複数の充填材を含有する。充填材は、材料の機械的性質(強度、弾性率、耐摩耗性)および加工特性(ペーストのコンシステンシー、彫刻性)を改善し、放射線不透過性を与える。
【0005】
酸性接着剤モノマーがしばしば充填材と不利に相互作用することが、問題である。例えば酸性接着モノマーは、不溶性塩の形成によって充填材の表面に結合されるか、または保存中に、充填材から放出されたイオンと不十分な溶解性塩を形成する。このことは、接着特性の低減または損失にも関連する樹脂母材中の接着モノマー濃度の著しい低減をもたらす。したがって酸性接着剤モノマーを含むコンポジットは、ごく限られた保存安定性を有する。
【0006】
メタクリレートをベースにした歯科用材料は、適用の分野に応じてラジカル光開始剤、熱開始剤、またはレドックス開始剤系を使用するラジカル重合によって硬化する。二重硬化系は、光開始剤およびレドックス開始剤の組合せを含有する。
【0007】
コンポジットセメントは、不十分な透過率に起因して光硬化が可能ではない場合であっても十分な硬化を確実にするので、通常はレドックス系を含有する。過酸化ジベンゾイル(DBPO)の第三級芳香族アミンとの混合物をベースにしたレドックス開始剤系、例えばN,N-ジエタノール-p-トルイジン(DEPT)、N,N-ジメチル-sym.-キシリジン(DMSX)、またはN,N-ジエチル-3,5-ジ-tert.-ブチルアニリン(DABA)が、通常は使用される。DBPO/アミンをベースにしたレドックス開始剤系でのラジカル形成は強酸によって、したがって強酸性接着剤モノマーによっても大幅に損なわれるので、アセチルチオ尿素などのチオ尿素と組み合わせてクメンヒドロペルオキシドを含有するレドックス開始剤系が、好ましい。
【0008】
レドックス開始剤の十分な保存安定性を確実にするために、レドックス開始剤系をベースにした材料が、いわゆる2構成成分(2C)系として通常は使用され、そこでは酸化剤(過酸化物またはヒドロペルオキシド)および還元剤(アミン、スルフィン酸、バルビツレート、チオ尿素など)が別々の構成成分に組み込まれる。これらは使用直前に一緒に混合される。混合のため、構成成分を保持する別々の円筒状チャンバーを有するダブルプッシュシリンジが好ましくは使用される。構成成分は、2つの相互接続されたピストンによって同時にチャンバーから押し出され、ノズル内で一緒に混合される。可能な限り均質な混合物を得るには、ほぼ等しい体積割合で構成成分を一緒に混合することが有利である。
【0009】
従来の合着用セメント、例えばZnOオイゲノールセメント、リン酸亜鉛セメント、ガラスアイオノマーセメント(GIC)、および樹脂修飾ガラスアイオノマーセメント(RMGI)は、構成成分の混合をより非常に難しくする粉末構成成分を含有するので、ダブルプッシュシリンジとの使用に適切ではない。さらに、ガラスアイオノマーセメントは、低い透明度および比較的不十分な機械的性質のみを有する。
独国特許出願公開第10021605号明細書は、アンモニウム塩、例えば硫酸アンモニウムまたは硫酸水素アンモニウムを、塩基性カルシウム塩と組み合わせて含有するエポキシ樹脂をベースにした歯科用充填材料を開示する。好ましいカルシウム塩は、酸化カルシウムおよび水酸化カルシウムである。水分と接触すると、アンモニウム塩は、塩基性カルシウム塩と反応することによってアンモニアを形成し、エポキシ樹脂を硬化させる。石膏も形成され、これは結晶化中の膨張によって歯科および根管充填の辺縁封鎖を改善すると言われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】独国特許出願公開第10021605号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、良好な透明度および良好な機械的性質を有する保存安定な自己接着型歯科用コンポジットであって、ダブルプッシュシリンジを使用して2構成成分系として混合し十分塗布することができ、歯科用の合着用セメントとして特に適切であるコンポジットを、提供することである。
【0012】
この目的は、少なくとも1種の酸性ラジカル重合性モノマー、少なくとも1種のフルオロアルミノシリケートガラス充填材および/または放射線不透過ガラス充填材、ならびに20℃で水溶性である少なくとも1種の硫酸塩および/またはリン酸塩を含む、充填材を含有するラジカル重合性組成物によって達成される。意外にも、水溶性硫酸塩またはリン酸塩は、少なくとも1種のフルオロアルミノシリケートガラス充填材および/または放射線不透過性ガラス充填材と組み合わせて酸性モノマーを含有する組成物の保存安定性の著しい増大をもたらすことが見出された。
本件出願は、例えば、以下の項目を提供する。
(リクレーム)
(項目1)
少なくとも1種の酸性ラジカル重合性モノマーと、少なくとも1種のフルオロアルミノシリケートガラス充填材および/または放射線不透過性ガラス充填材とを含み、少なくとも1種の水溶性硫酸塩および/またはリン酸塩をさらに含むことを特徴とする、ラジカル重合性組成物。
(項目2)
水溶性硫酸塩として、20℃で少なくとも100g/lの、好ましくは110から1,000g/lの水溶解度を有する硫酸の少なくとも1種の無機塩、および/または水溶性リン酸塩として、20℃で少なくとも100g/lの、好ましくは110から1,000g/lの水溶解度を有するオルトリン酸の少なくとも1種の無機塩を含む、前記項目のいずれか一つに記載の組成物。
(項目3)
水溶性硫酸塩として、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、もしくはこれらの混合物、および/または水溶性リン酸塩として、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸アンモニウム、もしくはこれらの混合物を含む、前記項目のいずれか一つに記載の組成物。
(項目4)
前記組成物の全質量に対して、0.3から9.0重量%、好ましくは0.4から6.0重量%、特に好ましくは0.7から4.0重量%の少なくとも1種の水溶性硫酸塩および/またはリン酸塩を含む、前記項目のいずれか一つに記載の組成物。
(項目5)
各場合に前記組成物の全質量に対して、
- 5から60重量%、好ましくは8から45重量%、特に好ましくは10から35重量%の、酸基を有さない少なくとも1種のラジカル重合性モノマー、
- 1から15重量%、好ましくは2から12重量%、特に好ましくは3から10重量%の、酸基を有する少なくとも1種のラジカル重合性モノマー、
- 25から80重量%、好ましくは30から75重量%、特に好ましくは40から70重量%の少なくとも1種のフルオロアルミノシリケートガラス充填材および/または放射線不透過性ガラス充填材、
- 0.1から8重量%、好ましくは0.5から6重量%、特に好ましくは1から5重量%の、ラジカル重合用の少なくとも1種の開始剤、ならびに
- 0.3から9重量%、好ましくは0.4から6重量%、特に好ましくは0.7から4.0重量%の少なくとも1種の水溶性硫酸塩および/またはリン酸塩
を含む、前記項目のいずれか一つに記載の組成物。
(項目6)
各場合に前記組成物の全質量に対して、
a) 0.3から9重量%、好ましくは0.4から6重量%、特に好ましくは0.7から4.0重量%の少なくとも1種の水溶性硫酸塩および/またはリン酸塩、
b) 5から40重量%、好ましくは8から35重量%、特に好ましくは10から30重量%の、酸基を有さない少なくとも1種の多官能性モノマー、
c) 1から15重量%、好ましくは2から12重量%、特に好ましくは3から10重量%の、酸基を含有する少なくとも1種のラジカル重合性モノマー、
d) 0から10重量%、好ましくは0から8重量%、特に好ましくは0から5重量%の1種または複数のオリゴマーカルボン酸、
e) 必要に応じて0.1から20重量%、好ましくは0.5から15重量%、特に好ましくは1から10重量%の、酸基を有さない1種または複数の一官能性モノマー、
f) 25から80重量%、好ましくは30から75重量%、特に好ましくは40から70重量%の少なくとも1種のフルオロアルミノシリケートガラス充填材および/または放射線不透過性ガラス充填材、
g) 必要に応じて1から50重量%、好ましくは1.5から40%、特に好ましくは2から30重量%の1種または複数の追加の充填材、
h) 0.1から8重量%、好ましくは0.5から6%、特に好ましくは1から5重量%の、ラジカル重合用の開始剤、
i) 0から20重量%、好ましくは0.2から10重量%、特に好ましくは1から7重量%の水、ならびに
j) 0.01から5重量%、好ましくは0.1から3重量%、特に好ましくは0.1から2重量%の1種または複数の添加剤
を含む、前記項目のいずれか一つに記載の組成物。
(項目7)
多官能性モノマー(b)として、ビスフェノールAジメタクリレート、ビス-GMA(メタクリル酸およびビスフェノールAジグリシジルエーテルの付加生成物)、エトキシ化もしくはプロポキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、例えば3個のエトキシ基を有するビスフェノールAジメタクリレートもしくは2,2-ビス[4-(2-メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸とジイソシアネートとのウレタン、例えば2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートもしくはイソホロンジイソシアネートとのウレタン、UDMA(2-ヒドロキシエチルメタクリレートおよび2,2,4-トリメチルヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネートの付加生成物)、テトラメチルキシリレンジウレタンエチレングリコールジ(メタ)アクリレートもしくはテトラメチルキシリレンジウレタン-2-メチルエチレングリコールジウレタンジ(メタ)アクリレート(V380)、ジ-、トリ-、もしくはテトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、およびグリセロールジ-およびトリメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート(D3MA)、ビス(メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ-[5.2.1.02,6]デカン(DCP)、ポリエチレングリコールもしくはポリプロピレングリコールジメタクリレート、例えばポリエチレングリコール200-ジメタクリレート(PEG-200-DMA)もしくはポリエチレングリコール400-ジメタクリレート(PEG-400-DMA)、1,12-ドデカンジオールジメタクリレート、ラジカル重合性ピロリドン、例えば1,6-ビス(3-ビニル-2-ピロリドニル)-ヘキサン、ビスアクリルアミド、例えばメチレンもしくはエチレンビスアクリルアミド、ビス(メタ)アクリルアミド、例えばN,N’-ジエチル-1,3-ビス(アクリルアミド)プロパン、1,3-ビス(メタクリルアミド)プロパン、1,4-ビス(アクリルアミド)ブタン、または1,4-ビス(アクリロイル)ピペラジン、ならびにこれらの混合物から選択される少なくとも1種のモノマーを含む、前記項目のいずれか一つに記載の組成物。
(項目8)
酸基を含有するモノマー(c)として、リン酸エステル基もしくはホスホン酸基を含有するモノマー、好ましくはリン酸水素2-メタクリロイルオキシエチルフェニル、リン酸二水素10-メタクリロイルオキシデシル(MDP)、リン酸二水素ジメタクリル酸グリセロール、ジペンタエリスリトールペンタメタクリロイルオキシホスフェート、4-ビニルベンジルホスホン酸、2-[4-(ジヒドロキシホスホリル)-2-オキサ-ブチル]-アクリル酸、および/もしくは2-[4-(ジヒドロキシホスホリル)-2-オキサ-ブチル]-アクリル酸-2,4,6-トリメチルフェニルエステル、ならびに/またはカルボキシ基を含有するモノマー、好ましくは4-(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸無水物、10-メタクリロイルオキシデシルマロン酸、N-(2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロピル)-N-フェニルグリシン、および/もしくは4-ビニル安息香酸から選択される少なくとも1種のモノマーを含む、前記項目のいずれか一つに記載の組成物。
(項目9)
数平均分子量が7,200g/mol未満、好ましくは7,000g/mol未満、特に好ましくは6,800g/mol未満のポリアクリル酸から選択される、少なくとも1種のオリゴマーカルボン酸(d)を含む、前記項目のいずれか一つに記載の組成物。
(項目10)
ベンジル、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、p-クミルフェノキシエチレングリコールメタクリレート(CMP-1E)、および2-([1,1’-ビフェニル]-2-オキシ)エチルメタクリレート(MA-836)、トリシクロデカンメチル(メタ)アクリレート、2-(2-ビフェニルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタクリレート)、ヒドロキシエチルプロピル(メタクリレート)、2-アセトキシエチルメタクリレート、ならびにこれらの混合物から選択される、少なくとも1種の一官能性モノマー(e)を含む、前記項目のいずれか一つに記載の組成物。
(項目11)
組成(重量%):
SiO2:20~80;B2O3:2~15、BaOもしくはSrO:0~40;Al2O3:2~20;CaOおよび/もしくはMgO:0~20;Na2O、K2O、Cs2O:それぞれ0~10;WO3:0~20;ZnO:0~20;La2O3:0~10;ZrO2:0~15;P2O5:0~30;Ta2O5、Nb2O5もしくはYb2O3:0~5;およびCaF2および/もしくはSrF2 0~10;もしくは好ましくはSiO2:50~75;B2O3:2~15;BaOもしくはSrO:2~35;Al2O3:2~15;CaOおよび/もしくはMgO:0~10;およびNa2O:0~10を有する放射線不透過性ガラス充填材、ならびに/または組成(重量%):SiO2:20~35;Al2O3:15~35;BaOもしくはSrO:10~25;CaO:0~20;ZnO:0~15;P2O5:5~20;Na2O、K2O、Cs2O:それぞれ0~10;およびCaF2:0.5~20;もしくは好ましくはSiO2:20~30;Al2O3:20~30;BaOもしくはSrO:10~25;CaO:5~20;P2O5:5~20;Na2O:0~10;およびCaF2:5~20を有するフルオロアルミノシリケートガラス充填材を含み、全ての数値が前記ガラスの全質量に対するものであり、フッ素以外の全ての構成成分が酸化物として計算される、前記項目のいずれか一つに記載の組成物。
(項目12)
触媒ペーストおよびベースペーストを含み、前記触媒ペーストが、各場合に前記触媒ペーストの全質量に対して、
a) 0.3から9重量%、好ましくは0.4から6重量%、特に好ましくは0.7から4.0重量%の少なくとも1種の水溶性硫酸塩および/またはリン酸塩、
b) 5から40重量%、好ましくは8から35重量%、特に好ましくは10から30重量%の、酸基を有さない少なくとも1種の多官能性モノマー、
c) 2から最大30重量%、好ましくは4から24重量%、特に好ましくは6から20重量%の、酸基を含有する少なくとも1種のモノマー、
d) 0から20重量%、好ましくは0から16重量%、特に好ましくは0から10重量%の1種または複数のオリゴマーカルボン酸、
e) 必要に応じて0.1から20重量%、好ましくは0.5から15重量%、特に好ましくは1から10重量%の、酸基を有さない1種または複数の一官能性モノマー、
f) 25から80重量%、好ましくは30から75重量%、特に好ましくは40から70重量%の少なくとも1種のFASおよび/またはガラス充填材、
g) 必要に応じて1から50重量%、好ましくは1.5から40重量%、特に好ましくは2から30重量%の1種または複数の追加の充填材、
h) 0.01から16重量%、好ましくは0.02から12重量%、特に好ましくは0.03から10重量%の少なくとも1種の過酸化物および/またはヒドロペルオキシドおよび必要に応じて少なくとも1種の光開始剤、
i) 0から20重量%、好ましくは0.2から10重量%、特に好ましくは1から7重量%の水、ならびに
j) 0.001から5重量%、好ましくは0.03から3重量%、特に好ましくは0.05から2重量%の1種または複数の添加剤を含み、
前記ベースペーストが、各場合に前記ベースペーストの全質量に対して、
a) 適用せず、
b) 5から40重量%、好ましくは8から35重量%、特に好ましくは10から30重量%の、酸基を有さない少なくとも1種の多官能性モノマー、
c) 適用せず、
d) 適用せず、
e) 必要に応じて0.1から20重量%、好ましくは0.5から15重量%、特に好ましくは1から10重量%の、酸基を有さない1種または複数の一官能性モノマー、
f) 25から80重量%、好ましくは30から75重量%、特に好ましくは40から70重量%の少なくとも1種のFASおよび/またはガラス充填材、
g) 必要に応じて1から50重量%、好ましくは1.5から40重量%、特に好ましくは2から30重量%の1種または複数の追加の充填材、
h) 0.01から16重量%、好ましくは0.02から12重量%、特に好ましくは0.03から10重量%の少なくとも1種の適切な還元剤および必要に応じて光開始剤、
i) 0から20重量%、好ましくは0.2から10重量%、特に好ましくは1から7重量%の水、ならびに
j) 0.001から5重量%、好ましくは0.03から3重量%、特に好ましくは0.05から2重量%の1種または複数の添加剤を含む、
前記項目のいずれか一つに記載の組成物。
(項目13)
前記触媒ペーストおよび前記ベースペーストが、それぞれ、デュアルプッシュシリンジの、異なるチャンバーに含有される、前記項目のいずれか一つに記載の組成物。
(項目14)
歯科用材料として、好ましくは歯科用セメント、コーティング材料、ベニア材料、修復用コンポジット、または合着用セメントとしての治療的使用のための、前記項目のいずれか一つに記載の組成物。
(項目15)
歯科用修復物、特にインレー、オンレー、クラウン、またはブリッジの製造または修復のための、前記項目のいずれか一つに記載の組成物の非治療的使用。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、少なくとも1種の酸性ラジカル重合性モノマーと、少なくとも1種のフルオロアルミノシリケートガラス充填材および/または放射線不透過性ガラス充填材と、少なくとも1種の水溶性硫酸塩および/またはリン酸塩とを含むラジカル重合性組成物に関する。
【0014】
本発明によれば、好ましい硫酸塩は硫酸の無機塩であり、好ましいリン酸塩はオルトリン酸の無機塩(H3PO4)である。水溶性硫酸塩またはリン酸塩は、好ましくは、少なくとも100g/l、好ましくは110から1,000g/l、特に好ましくは150から800g/lの水溶解度を有する硫酸塩またはリン酸塩である。好ましい水溶性硫酸塩は、硫酸カリウム(K2SO4;水溶解度111g/l)、硫酸ナトリウム(Na2SO4;水溶解度170g/l)、特に好ましくは硫酸アンモニウム((NH4)2SO4;水溶解度754g/l)である。好ましい水溶性リン酸塩は、リン酸カリウム(K3PO4;水溶解度508g/l)、リン酸ナトリウム(Na3PO4;水溶解度285g/l)、特に好ましくはリン酸アンモニウム((NH4)3PO4;水溶解度580g/l)である。全ての溶解度データは、20℃の水への溶解度を指す。
【0015】
1種または複数の水溶性硫酸塩および/または水溶性リン酸塩は、少なくとも0.3重量%、特に少なくとも0.4重量%の総量で、好ましくは添加される。本発明によれば、最大で0.3から9.0重量%、より好ましくは0.4から6.0重量%、最も好ましくは0.7から4.0重量%の少なくとも1種の水溶性硫酸塩および/またはリン酸塩を含有する組成物が好ましい。他に言及しない限り、本明細書における全てのパーセンテージは、組成物の全質量に対するものである。硫酸塩またはリン酸塩は、溶解した、または好ましくは固体の形で存在していてもよい。本発明によれば、硫酸塩が好ましい。
【0016】
本発明による組成物は、少なくとも1種のラジカル重合性モノマー、好ましくは1種または複数の一官能性および/または多官能性モノマーを含有する。多官能性モノマーは、2個またはそれよりも多くの、好ましくは2から4個、特に好ましくは2個のラジカル重合性基を有する化合物であることが理解される。したがって、一官能性モノマーは、1個のラジカル重合性基だけを有する。多官能性モノマーは架橋特性を有し、したがって架橋モノマーとも呼ばれる。好ましいラジカル重合性基は、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、およびビニル基である。
【0017】
本発明によれば、酸基を含有するモノマーと、酸基を含有しないモノマートは区別される。本発明による組成物は、酸基を有さない少なくとも1種のモノマーと、酸基を有する少なくとも1種のモノマーおよび/またはオリゴマーとを含有する。本発明によれば、酸基を有するモノマーおよび酸基を有さないモノマーを、1:5から1:36、特に好ましくは1:6から1:25、最も好ましくは1:7から1:20の重量比で含有する組成物が、好ましい。
酸基を有さないモノマー
【0018】
少なくとも1種の(メタ)アクリレート、より好ましくは少なくとも1種の一官能性または多官能性メタクリレート、最も好ましくは少なくとも1種の一官能性または二官能性メタクリレート、またはこれらの混合物を含む組成物が好ましい。
【0019】
好ましい一官能性(メタ)アクリレートは、ベンジル、テトラヒドロフルフリル、またはイソボルニル(メタ)アクリレート、p-クミルフェノキシエチレングリコールメタクリレート(CMP-1E)、および2-([1,1’-ビフェニル]-2-オキシ)エチルメタクリレート(MA-836)、トリシクロデカンメチル(メタ)アクリレート、および2-(2-ビフェニルオキシ)エチル(メタ)アクリレートである。CMP-1EおよびMA-836が特に好ましい。
【0020】
一実施形態によれば、本発明による組成物は、好ましくは少なくとも1種の官能化一官能性(メタ)アクリレートを含む。官能化モノマーは、少なくとも1種のラジカル重合性基に加え、少なくとも1個の官能基、好ましくはヒドロキシル基を有するモノマーであると理解される。好ましい官能化モノ(メタ)アクリレートは、2-ヒドロキシエチル-およびヒドロキシエチルプロピル(メタクリレート)、ならびに2-アセトキシエチルメタクリレートである。ヒドロキシエチルメタクリレートが特に好ましい。以下に述べる酸基を含有するモノマーは、本発明の意味の範囲内の官能化モノマーではない。
【0021】
好ましい二官能性および多官能性(メタ)アクリレートは、ビスフェノール-A-ジメタクリレート、ビス-GMA(メタクリル酸およびビスフェノール-A-ジグリシジルエーテルの付加生成物)、エトキシ化またはプロポキシ化ビスフェノール-A-ジメタクリレート、例えば3個のエトキシ基を有するビスフェノールAジメタクリレートSR-348c(Sartomer)または2,2-ビス[4-(2-メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸とジイソシアネートとのウレタン、例えば2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートまたはイソホロンジイソシアネートとのウレタン、UDMA(2-ヒドロキシエチルメタクリレートおよび2,2,4-トリメチルヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネートの付加生成物)、テトラメチルキシリレンジウレタンエチレングリコールジ(メタ)アクリレートまたはテトラメチルキシリレンジウレタン-2-メチルエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(V380)、ジ-、トリ-、またはテトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ならびにグリセロールジ-およびトリメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート(D3MA)、ビス(メタクリロイルオキシメチル)トリシクロ-[5.2.1.02,6]デカン(DCP)、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールジメタクリレート、例えばポリエチレングリコール200-ジメタクリレートまたはポリエチレングリコール400-ジメタクリレート(PEG-200-またはPEG-400-DMA)または1,12-ドデカンジオールジメタクリレートである。ビス-GMA、UDMA、V-380、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)およびPEG-400-DMA(NKエステル9G)が特に好ましい。
【0022】
モノマーであるテトラメチルキシリレンジウレタンエチレングリコールジ(メタ)アクリレートまたはテトラメチルキシリレンジウレタン2-メチルエチレングリコールジウレタンジ(メタ)アクリレート(V380)は、下式:
【化1】
を有する。
【0023】
示される式において、Rラジカルはそれぞれ独立して、HまたはCH3であり、ラジカルは、同じ意味または異なる意味を有していてもよい。好ましくは、両方のラジカルがHである分子、両方のラジカルがCH3である分子、一方のラジカルがHであり他方のラジカルがCH3である分子であってHのCH3に対する比が好ましくは7:3であるものを含有する混合物が、使用される。そのような混合物は、例えば1,3-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼンを2-ヒドロキシプロピルメタクリレートおよび2-ヒドロキシエチルメタクリレートと反応させることによって、得ることが可能である。
【0024】
他の好ましい二官能性モノマーは、ラジカル重合性ピロリドン、例えば1,6-ビス(3-ビニル-2-ピロリドニル)ヘキサン、または市販のビスアクリルアミド、例えばメチレンまたはエチレンビスアクリルアミド、およびビス(メタ)アクリルアミド、例えばN,N’-ジエチル-1,3-ビス(アクリルアミド)プロパン、1,3-ビス(メタクリルアミド)プロパン、1,4-ビス(アクリルアミド)ブタン、または1,4-ビス(アクリロイル)ピペラジンであり、これらは対応するジアミンから(メタ)アクリル酸塩化物との反応によって合成することができる。N,N’-ジエチル-1,3-ビス(アクリルアミド)プロパン(V-392)が特に好ましい。これらのモノマーは、高い加水分解安定性によって特徴付けられる。
酸基を有するモノマーおよびオリゴマー
【0025】
本発明による組成物は、少なくとも1種の酸性ラジカル重合性モノマーを含有する。酸性ラジカル重合性モノマーは、少なくとも1種のラジカル重合性基に加え、少なくとも1個の酸基、好ましくはリン酸エステル、ホスホン酸、またはカルボキシ基、特に好ましくは少なくとも1個のリン酸エステル基を含有するモノマーである。酸性モノマーは、本明細書では接着構成成分または接着モノマーとも呼ばれる。少なくとも1個の(メタ)アクリレート、特にメタクリレート基を、ラジカル重合性基として含有する接着モノマーが好ましい。
【0026】
少なくとも1個の酸基を含有する好ましいモノマーは、リン酸エステルおよびホスホン酸モノマーである。リン酸水素2-メタクリロイルオキシエチルフェニル、リン酸二水素10-メタクリロイルオキシデシル(MDP)、リン酸二水素ジメタクリル酸グリセロール、またはジペンタエリスリトールペンタメタクリロイルオキシホスフェート、4-ビニルベンジルホスホン酸、2-[4-(ジヒドロキシホスホリル)-2-オキサ-ブチル]-アクリル酸、または加水分解安定なエステル、例えば2-[4-(ジヒドロキシホスホリル)-2-オキサ-ブチル]-アクリル酸2,4,6-トリメチルフェニルエステルが、特に好ましい。MDP、リン酸水素2-メタクリロイルオキシエチルフェニル、およびリン酸二水素ジメタクリル酸グリセロールが特に好ましい。
【0027】
酸基を含有する他の好ましいモノマーは、少なくとも1個のCOOH基を含有する重合性モノマーである。4-(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸無水物、10-メタクリロイルオキシデシルマロン酸、N-(2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロピル)-N-フェニルグリシン、および4-ビニル安息香酸が特に好ましい。
【0028】
さらに好ましい実施形態によれば、本発明による組成物はさらに、少なくとも1種の酸性のラジカル重合性オリゴマーを含有する。オリゴマーは、重合度Pnが2から100(Pn=Mn/Mu;Mn:数平均ポリマーモル質量、Mu:モノマー単位のモル質量)のポリマーであることが理解される。酸性ラジカル重合性オリゴマーは、少なくとも1個の酸基、好ましくはカルボキシル基と、少なくとも1個のラジカル重合性基、好ましくは(メタ)アクリレート基、特にメタクリレート基を有する。
【0029】
本発明による好ましい酸基を含有するオリゴマーは、オリゴマーカルボン酸、例えば、好ましくは数平均分子量Mnが7,200g/mol未満、好ましくは7,000g/mol未満、特に好ましくは6,800g/mol未満のポリアクリル酸であって、ここでMnは、好ましくは800から7,200g/mol、より好ましくは500から7,000g/mol、より特に好ましくは500から6,800g/molの範囲にある。(メタ)アクリレート基を含有するオリゴマーカルボン酸が特に好ましい。これらは、例えばオリゴマーポリアクリル酸をメタクリル酸グリシジルまたはメタクリル酸2-イソシアナトエチルと反応させることによって、得ることができる。
【0030】
他に言及しない限り、本明細書のオリゴマーおよびポリマーのモル質量は数平均モル質量であり、その絶対値は、凝固点降下(凝固点降下法(cryoscopy))、沸点上昇(沸点上昇法(ebullioscopy))の公知の方法によって、または蒸気圧の降下(蒸気圧浸透圧測定法(vaporpressure osmometry))を経て決定することができる。好ましくは、オリゴマーおよびポリマーの数平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって決定される。これは分子がそのサイズに基づいて、より正確にはその流体力学的体積に基づいて分離される、相対的な方法である。絶対モル質量は、公知の標準による較正によって決定される。
【0031】
本発明による組成物は、好ましくは水も含有する。組成物の全質量に対して各場合に1から7重量%、特に好ましくは1から5重量%の含水量が、象牙質およびエナメルに対する結合効果の改善をもたらすことが見出されている。
【0032】
本発明による組成物はさらに、ラジカル重合を開始するための少なくとも1種の開始剤、好ましくは光開始剤を含む。好ましい光開始剤は、ベンゾフェノン、ベンゾインおよびその誘導体、α-ジケトンまたはその誘導体、例えば9,10-フェナントレンキノン、1-フェニル-プロパン-1,2-ジオン、ジアセチル、および4,4’-ジクロロベンジルである。特に好ましくは、カンファーキノン(CQ)および2,2-ジメトキシ-2-フェニル-アセトフェノンが使用され、最も好ましくは、α-ジケトンが、還元剤としてのアミン、例えば4-(ジメチルアミノ)安息香酸エチル(EDMAB)、メタクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、N,N-ジメチル-sym.-キシリジン、またはトリエタノールアミンと組み合わせて使用される。Norrish I型光開始剤、特にアシルまたはビスアシルホスフィンオキシドがさらに好ましく、最も好ましくはモノアシルトリアルキル、ジアシルジアルキルゲルマニウム、およびテトラアシルゲルマニウム化合物、例えばベンゾイルトリメチルゲルマン、ジベンゾイルジエチルゲルマン、ビス(4-メトキシベンゾイル)ジエチルゲルマン(Ivoserin(登録商標))、テトラベンゾイルゲルマン、またはテトラキス(o-メチルベンゾイル)ゲルマンである。カンファーキノンおよび4-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステルと組み合わせたビス(4-メトキシベンゾイル)ジエチルゲルマンまたはテトラキス(o-メチルベンゾイル)ゲルマンなど、様々な光開始剤の混合物を使用することもできる。
【0033】
ラジカル重合を開始するためのレドックス開始剤、好ましくは酸化剤および還元剤をベースにしたレドックス開始剤を含有する組成物がさらに好ましい。好ましい酸化剤は過酸化物、特にヒドロペルオキシドである。特に好ましい過酸化物は、過酸化ベンゾイルである。好ましいヒドロペルオキシドは、EP 3 692 976 A1に開示される低臭クメンヒドロペルオキシド誘導体、EP 21315089.9に開示されるオリゴマーCHP誘導体、特に4-(2-ヒドロペルオキシプロパン-2-イル)フェニルプロピオネート、およびクメンヒドロペルオキシド(CHP)である。
【0034】
過酸化物と組み合わせるための好ましい還元剤は、第三級アミン、例えばN,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジヒドロキシエチル-p-トルイジン、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、または他の芳香族ジアルキルアミン、アスコルビン酸、スルフィン酸、チオール、および/または水素シランである。
【0035】
ヒドロペルオキシドと組み合わせるための好ましい還元剤は、チオ尿素誘導体、特にEP 1 754 465 A1の段落[0009]に列挙された化合物である。メチル-、エチル-、アリル-、ブチル-、ヘキシル-、オクチル、ベンジル-、1,1,3-トリメチル-、1,1-ジアリル-、1,3-ジアリル-、1-(2-ピリジル)-2-チオ尿素、アセチル-、プロパノイル-、ブタノイル-、ペンタノイル-、ヘキサノイル-、ヘプタノイル-、オクタノイル-、ノナノイル-、デカノイル-、ベンゾイルチオ尿素、およびこれらの混合物が、特に好ましい。アセチル-、アリル-、ピリジル-、およびフェニルチオ尿素、およびヘキサノイルチオ尿素、ならびにこれらの混合物、ならびに重合性チオ尿素誘導体、例えばN-(2-メタクリロイルオキシエトキシスクシノイル)-チオ尿素、およびN-(4-ビニルベンゾイル)-チオ尿素)がさらに特に好ましい。さらに、前記チオ尿素誘導体の1種または複数の、1種または複数のイミダゾールとの組合せが、有利に使用され得る。好ましいイミダゾールは、2-メルカプト-1-メチルイミダゾール、または2-メルカプトベンズイミダゾールである。
【0036】
好ましい実施形態によれば、本発明による組成物はさらに、少なくとも1種のヒドロペルオキシドおよび少なくとも1種のチオ尿素誘導体に加え、硬化を加速するための少なくとも1種の遷移金属化合物を含んでいてもよい。本発明による好ましい遷移金属化合物は、少なくとも2個の安定した酸化状態を有する遷移金属から誘導される化合物である。元素の銅、鉄、コバルト、ニッケル、およびマンガンの化合物が特に好ましい。これらの金属は、下記の安定な酸化状態:Cu(I)/Cu(II)、Fe(II)/Fe(III)、Co(II)/Co(III)、Ni(II)/Ni(III)、Mn(II)/Mn(III)を有する。少なくとも1種の銅化合物を含有する組成物が、特に好ましい。遷移金属化合物は、好ましくは触媒量で、特に好ましくは10から200ppmの量で使用される。これらの量は、歯科用材料の変色をもたらさない。それらの良好なモノマー溶解度により、遷移金属は好ましくは、それらのアセチルアセトネート、2-エチルヘキサノエート、またはTHF付加物の形で使用される。それらの、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール、トリエチレンテトラミン、ジメチルグリオキシム、8-ヒドロキシキノリン、2,2’-ビピリジン、または1,10-フェナントロリンなどの多座配位子との錯体が、さらに好ましい。本発明による特に好ましい開始剤は、クメンヒドロペルオキシド(CHP)の、上述のチオ尿素誘導体およびアセチルアセトン酸銅(II)の少なくとも1種との混合物である。
【0037】
本発明による組成物は、好ましくは、バルビツール酸またはバルビツール酸誘導体、例えば1,3,5-トリメチルバルビツール酸、1-ベンジル-5-フェニルバルビツール酸、5-ブチルバルビツール酸、または1-シクロヘキシル-5-エチルバルビツール酸を含有しない。バルビツレートを含有する組成物は、大気中の酸素との酸化によってバルビツレートが重合開始ラジカルを形成するので、満足のいかない保存安定性を有する。さらに、バルビツレートには、徐脈、低血圧、または血液障害などの有害な生理学的効果がある。
【0038】
本発明による組成物は、少なくとも1種の無機充填材を含有する。充填材を含有する組成物を、コンポジットと呼ぶ。少なくとも1種のフルオロアルミノシリケートガラス充填材(FAS充填材)および/または放射線不透過性ガラス充填材を含有する組成物が好ましい。
【0039】
好ましい放射線不透過性ガラス充填材は、下記の組成(重量%)を有する:SiO2:20~80;B2O3:2~15、BaOまたはSrO:0~40;Al2O3:2~20;CaOおよび/またはMgO:0~20;Na2O、K2O、Cs2O:それぞれ0~10;WO3:0~20;ZnO:0~20;La2O3:0~10;ZrO2:0~15;P2O5:0~30;Ta2O5、Nb2O5またはYb2O3:0~5;ならびにCaF2および/またはSrF2 0~10。組成(重量%):SiO2:50~75;B2O3:2~15;BaOまたはSrO:2~35;Al2O3:2~15;CaOおよび/またはMgO:0~10;ならびにNa2O:0~10を有する放射線不透過性ガラス充填材が特に好ましい。
【0040】
特に好ましいFAS充填材は、下記の組成(重量%)を有する:SiO2:20~35;Al2O3:15~35;BaOまたはSrO:10~25;CaO:0~20;ZnO:0~15;P2O5:5~20;Na2O、K2O、Cs2O:それぞれ0~10;およびCaF2:0.5~20。組成(重量%):SiO2:20~30;Al2O3:20~30;BaOまたはSrO:10~25;CaO:5~20;P2O5:5~20;Na2O:0~10;およびCaF2:5~20を有するFAS充填材が特に好ましい。
【0041】
全てのデータはガラスの全質量を指し、フッ素以外の全ての構成成分は、ガラスおよびガラスセラミックでよくあるように酸化物として計算される。
【0042】
FAS充填材および放射線不透過性ガラス充填材は、好ましくは0.2から20μm、特に好ましくは0.4から5μmの平均粒径を有する。
【0043】
本発明による組成物は、各場合に組成物の全質量に対して、好ましくは25から80重量%、より好ましくは30から75重量%、最も好ましくは40から70重量%のFAS充填材および/または放射線不透過性充填材を含有する。
【0044】
前述のFASおよび放射線不透過性ガラス充填材に加え、本発明による組成物はさらなる充填材を含有していてもよい。
【0045】
好ましいさらなる充填材は、金属酸化物、特に好ましくは、60から80重量%のSiO2と、金属酸化物ZrO2、Yb2O3、ZnO、Ta2O5、Nb2O5、および/またはLa2O3の少なくとも1種を含有する混合酸化物であって、総量が合計100%になるものである。SiO2-ZrO2などの混合酸化物は、例えば金属アルコキシドの加水分解性共縮合によって入手可能である。金属酸化物は好ましくは、0.05から10μm、特に好ましくは0.1から5μmの平均粒径を有する。
【0046】
他の好ましい追加の充填材は、一次粒径が0.01~0.15μmのヒュームドシリカまたは沈降シリカ、および粒径が0.1から15μm、好ましくは0.2から5μmの石英またはガラスセラミック粉末、および三フッ化イッテルビウムである。三フッ化イッテルビウムは、好ましくは80から900nmの、特に好ましくは100から300nmの粒径を有する。これらの充填材は、各場合に組成物の全質量に対して、好ましくは0.1から40重量%、より好ましくは0.2から35重量%の量で、特に非常に好ましくは0.3から25重量%の量で使用される。
【0047】
さらに、いわゆるコンポジット充填材は、さらなる充填材として好ましい。これらはイソ充填材とも呼ばれる。これらは、充填材、好ましくは発熱原性SiO2および/または三フッ化イッテルビウムを含有するスプリンター様ポリマーである。ジメタクリレートをベースにしたポリマーが好ましい。イソ充填材の生成では、1種または複数の充填材が、例えばジメタクリレート樹脂母材に組み込まれ、得られたコンポジットペーストは引き続き熱重合され、次いで粉砕される。
【0048】
本発明による好ましいコンポジット充填材は、例えば、ビス-GMA(8.80重量%)、UDMA(6.60重量%)、1,10-デカンジオールジメタクリレート(5.93重量%)、過酸化ジベンゾイル+2,6-ジ-tert.-ブチル-4-メチルフェノール(組合せで0.67重量%)、ガラス充填材(平均粒径0.4μm;53.0重量%)およびYbF3(25.0重量%)の混合物を熱硬化し、次いで硬化した材料を粉砕して所望の粒径にすることによって調製することができる。全てのパーセンテージは、コンポジット充填材の全質量を指す。
【0049】
いわゆる不活性化充填材も、さらなる充填材として使用することができる。これらは、その表面が、例えばゾルゲルベースの拡散障壁層で、またはポリマー層、例えばPVCでコーティングされた、ガラス充填材である。好ましい充填材は、EP 2 103 296 A1に記載されたものである。
【0050】
充填材と母材との間の結合を改善するために、充填材は好ましくは、メタクリレート官能化シラン、例えば3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランで表面修飾される。
【0051】
本発明による組成物は、各場合に組成物の全質量に対して、好ましくは1から50重量%、より好ましくは1.5から40重量%、最も好ましくは2から30重量%の1種または複数のさらなる充填材、好ましくは1種または複数の金属酸化物、発熱性シリカ、および/または沈降シリカを含有する。
【0052】
他に言及しない限り、本明細書の全ての粒径は、体積平均粒径(D50値)、即ち全ての粒子に共通の全体積の50%が、記述される値よりも小さい直径を有する粒子に含有される。したがってD10値は、全充填材体積の10%が指定された値よりも小さい体積径である。
【0053】
0.1μmから1000μmの範囲の粒径決定は、好ましくは静的光散乱(SLS)を用いて、例えばLA-960静的レーザー散乱粒径分析器(Horiba、Japan)によりまたはMicrotrac S100粒径分析器(Microtrac、USA)により実施される。この場合、波長655nmのレーザーダイオードおよび波長405nmのLEDが、光源として使用される。異なる波長を有する2つの光源の使用は、ただ1つの測定操作で試料の全粒径分布の測定を可能にし、測定は湿式測定として実施される。この目的のため、充填材の水性分散液が調製され、その散乱光がフローセルで測定される。粒径および粒径分布を計算するための散乱光分析は、DIN/ISO 13320によるMie理論に従い実施される。1nmから0.1μmの範囲の粒径の測定は、好ましくは、水性粒子分散液の動的光散乱(DLS)によって、好ましくは波長633nm、散乱角90°、および25℃で、He-Neレーザーで、例えばMalvern Zetasizer Nano ZS(Malvern Instruments、Malvern UK)で実施される。
【0054】
凝塊および凝集粒子の場合、一次粒径は、TEM画像から決定することができる。透過型電子顕微鏡法(TEM)は、好ましくはPhilips CM30 TEMを300kVの加速電圧を使用して行われる。試料の調製では、粒子分散液の液滴を、炭素でコーティングされた50Åの厚さの銅格子(メッシュサイズ 300メッシュ)上に堆積し、その後、溶媒を蒸発させる。粒子をカウントし、算術平均を計算する。
【0055】
本発明による組成物は、追加の添加剤、特に安定剤、着色剤、相間移動触媒、殺菌剤、フッ化物イオン供与添加剤、例えばフッ化物塩、特にNaFもしくはフッ化アンモニウム、またはフルオロシラン、光増白剤、可塑剤、および/またはUV吸収剤も含有していてもよい。
【0056】
好ましくは、本発明による組成物は:
- 5から60重量%、好ましくは8から45重量%、特に好ましくは10から35重量%の、酸基を有さない少なくとも1種のラジカル重合性モノマー、
- 1から15重量%、好ましくは2から12重量%、特に好ましくは3から10重量%の、酸基を有する少なくとも1種のラジカル重合性モノマー、
- 25から80重量%、好ましくは30から75重量%、特に好ましくは40から70重量%の少なくとも1種のFAS充填材および/または放射線不透過性ガラス充填材、
- 0.1から8重量%、好ましくは0.5から6重量%、特に好ましくは1から5重量%の、ラジカル重合用の少なくとも1種の開始剤、ならびに
- 0.3から9重量%、好ましくは0.4から6重量%、特に好ましくは0.7から4.0重量%の少なくとも1種の水溶性硫酸塩および/またはリン酸塩
を含む。
【0057】
他に言及しない限り、本明細書の全てのパーセンテージは、組成物の全質量を指す。ラジカル重合性モノマー(多官能性および一官能性)に関する全ての量は、酸基を有さないモノマーのみを指し、酸基を含有するモノマーを含まない。
【0058】
開始剤は、レドックス開始剤、光開始剤、または二重硬化用の開始剤とすることができる。言及される量は、全ての開始剤構成成分、即ち開始剤自体、および必要な場合には還元剤、遷移金属化合物などを含む。本発明によれば、少なくとも1種のレドックス開始剤、または少なくとも1種のレドックス開始剤および少なくとも1種の光開始剤を含有する組成物が、好ましい。
【0059】
本発明によれば、各場合に組成物の全質量に対して、下記の成分を含む組成物が特に好ましい:
a) 0.3から9重量%、好ましくは0.4から6重量%、特に好ましくは0.7から4.0重量%の少なくとも1種の水溶性硫酸塩および/またはリン酸塩、
b) 5から40重量%、好ましくは8から35重量%、特に好ましくは10から30重量%の、酸基を有さない少なくとも1種の多官能性モノマー、
c) 1から15重量%、好ましくは2から12重量%、特に好ましくは3から10重量%の、酸基を有する少なくとも1種のラジカル重合性モノマー、
d) 0から10重量%、好ましくは0から8重量%、特に好ましくは0から5重量%の1種または複数のオリゴマーカルボン酸、
e) 必要に応じて0.1から20重量%、好ましくは0.5から15重量%、特に好ましくは1から10重量%の、酸基を有さない1種または複数の一官能性モノマー、
f) 25から80重量%、好ましくは30から75重量%、特に好ましくは40から70重量%の少なくとも1種のFAS充填材および/または放射線不透過性ガラス充填材、
g) 必要に応じて1から50重量%、好ましくは1.5から40重量%、特に好ましくは2から30重量%の1種または複数の追加の充填材、
(h) 0.1から8重量%、好ましくは0.5から6重量%、特に好ましくは1から5重量%の、ラジカル重合用の少なくとも1種の開始剤、
i) 0から20重量%、好ましくは0.2から10重量%、特に好ましくは1から7重量%の水、ならびに
j) 0.01から5重量%、好ましくは0.1から3重量%、特に好ましくは0.1から2重量%の1種または複数の添加剤。
【0060】
レドックス開始剤を含有する組成物は、自己硬化とも呼ばれる。それらは好ましくは、2つの空間的に分離された構成成分の形で、即ち2構成成分系(2C系)として使用される。酸化および還元剤は、組成物の別々の構成成分に組み込まれる。一構成成分、いわゆる触媒ペーストは、酸化剤、好ましくは過酸化物またはヒドロペルオキシドを含有し、第2の構成成分、いわゆるベースプレートは、対応する還元剤および必要に応じて光開始剤および必要に応じて触媒量の遷移金属化合物を含有する。重合は、構成成分を混合することによって開始される。レドックス開始剤および光開始剤の両方を含有する組成物は、二重硬化と呼ばれる。
【0061】
2構成成分組成物では、水溶性硫酸塩および/またはリン酸塩が好ましくは、強酸性接着剤モノマー、FAS充填材、および/または放射線不透過性ガラス充填材を含有する構成成分に添加される。
【0062】
本発明によれば、2構成成分系が好ましい。それらは好ましくは、自己硬化または二重硬化である。ペーストは、使用の少し前に一緒に、好ましくはダブルプッシュシリンジで混合される。
【0063】
触媒ペーストは、各場合に触媒ペーストの全質量に対して、好ましくは下記の組成を有する:
a) 0.3から9重量%、好ましくは0.4から6重量%、特に好ましくは0.7から4.0重量%の少なくとも1種の水溶性硫酸塩および/またはリン酸塩、
b) 5から40重量%、好ましくは8から35重量%、特に好ましくは10から30重量%の少なくとも1種の多官能性モノマー、
c) 2から30重量%、好ましくは4から24重量%、特に好ましくは6から20重量%の、酸基を含有する少なくとも1種のモノマー、
d) 0から20重量%、好ましくは0から16重量%、特に好ましくは0から10重量%の1種または複数のオリゴマーカルボン酸、
e) 必要に応じて0.1から20重量%、好ましくは0.5から15重量%、特に好ましくは1から10重量%の1種または複数の一官能性モノマー、
f) 25から80重量%、好ましくは30から75重量%、特に好ましくは40から70重量%の少なくとも1種のFASおよび/またはガラス充填材、
g) 必要に応じて1から50重量%、好ましくは1.5から40重量%、特に好ましくは2から30重量%の1種または複数の追加の充填材、
h) 0.01から16重量%、好ましくは0.02から12重量%、特に好ましくは0.03から10重量%の少なくとも1種の過酸化物および/またはヒドロペルオキシドおよび必要に応じて少なくとも1種の光開始剤、
i) 0から20重量%、好ましくは0.2から10重量%、特に好ましくは1から7重量%の水、ならびに
j) 0.001から5重量%、好ましくは0.03から3重量%、特に好ましくは0.05から2重量%の1種または複数の添加剤。
【0064】
ベースペーストは、各場合にベースペーストの全質量に対して、好ましくは、下記の組成を有する:
a) 適用せず、
b) 5から40重量%、好ましくは8から35重量%、特に好ましくは10から30重量%の少なくとも1種の多官能性モノマー、
c) 適用せず、
d) 適用せず、
e) 必要に応じて0.1から20重量%、好ましくは0.5から15重量%、特に好ましくは1から10重量%の1種または複数の一官能性モノマー、
f) 25から80重量%、好ましくは30から75重量%、特に好ましくは40から70重量%の少なくとも1種のFASおよび/またはガラス充填材、
g) 必要に応じて1から50重量%、好ましくは1.5から40重量%、特に好ましくは2から30重量%の1種または複数の追加の充填材、
h) 0.01から16重量%、好ましくは0.02から12重量%、特に好ましくは0.03から10重量%の少なくとも1種の適切な還元剤および必要に応じて光開始剤、
i) 0から20重量%、好ましくは0.2から10重量%、特に好ましくは1から7重量%の水、ならびに
j) 0.001から5重量%、好ましくは0.03から3重量%、特に好ましくは0.05から2%の1種または複数の添加剤。
【0065】
適用のため、触媒およびベースペーストは、好ましくはほぼ等しい割合で一緒に混合される。したがって、ダブルプッシュシリンジによる適用に特に適切である。
【0066】
ダブルプッシュシリンジは、ベースペーストおよび触媒ペーストを保持するための、2つの別々の円筒状チャンバーを有する。構成成分は、2つの相互接続されたピストンによって同時にチャンバーから押し出され、好ましくは混合カニューレを押し通され、その内部で一緒に混合される。ペーストを押し出すために、シリンジを、いわゆるハンドディスペンサー内に挿入することができ、シリンジの取扱いが改善される。
【0067】
本発明による組成物は、高い保存安定性および改善した、好ましくは10%よりも高い透明度、およびエナメル/象牙質への良好な自己接着によって特徴付けられる。それらは損傷した歯の修復のための歯科医による口内使用(治療的使用)のための歯科用材料として、特に歯科用セメント、コーティング材料、またはベニア材料、充填コンポジットとして、特に合着用セメントとして、特に適切である。透明度は、実施例に記述される手法で決定される。
【0068】
損傷した歯の処置のため、これらは第1のステップで歯科医により好ましく調製される。引き続き、本発明による少なくとも1種の組成物を、調製された歯にまたはその内部に塗布する。その後、組成物を、例えば歯腔を修復する場合、直接、好ましくは適切な波長の光を照射することによって硬化することができる。あるいは、歯科修復、例えばインレー、オンレー、ベニア、クラウン、ブリッジ、フレームワーク、または歯科用セラミックは、調製された歯の内部に配置されるかまたは表面に適用される。組成物の後続の硬化は、好ましくは光および/または自己硬化によって行われる。歯科修復は、このプロセスで歯に取り付けられる。
【0069】
本発明による組成物は、口外材料として(非治療的)、例えば歯科用修復物の製作または修復で使用することもできる。それらは、インレー、オンレー、クラウン、またはブリッジの製作および修復用の材料としても適切である。
【0070】
インレー、オンレー、クラウン、またはブリッジなどの歯科用修復物の生成では、本発明による少なくとも1種の組成物が、それ自体が公知の手法で所望の歯科用修復物へと形成され、次いで硬化される。硬化は、光によって、自己硬化を通して、または好ましくは熱によって行うことができる。
【0071】
歯科用修復物の修復では、本発明による組成物は、例えば隙間を修復するためにまたは断片を結合するために、修復がなされる修復物上に配置され、次いで硬化される。
【0072】
本発明を、図および実施形態の実施例を参照しながら、以下に、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【
図1】
図1は、硫酸アンモニアを含む(--三角形状--;--菱形形状--)および含まない(--四角形状--)コンポジットペーストでの保存時間の関数として、酸性モノマーMDPの濃度の低下を示す。
【実施例0074】
(実施例1)
硫酸アンモニウムを含むおよび含まない自己接着型コンポジットの保存安定性の調査
【0075】
表1に示される組成(全てのデータは、重量%を単位とする)を有するコンポジットペーストC-1からC-3を、下記の構成成分から調製した:ガラス充填材GM27884、シラン化(Schott AG;平均粒径1μm;比表面積(BET DIN ISO9277)3.9m
2/g;組成(重量%):Al
2O
3:10、B
2O
3:10、BaO:25、およびSiO
2:55)、発熱性シリカHDK2000(Wacker Chemie AG;BET表面積120m
2/g)、リン酸二水素10-メタクリロイルオキシデシル(MDP、Orgentis)、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、NKエステル9G(ポリエチレングリコ-400-ジメタクリレート、Kowa Europa GmbH)、V-392(N,N’-ジエチル-1,3-ビス(アクリルアミド)プロパン、Ivoclar Vivadent AG)、BHT(2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール)、および硫酸アンモニウム(NH
4)
2SO
4(Aldrich)。
【表1】
*
)比較例
【0076】
ペーストC-1((NH
4)
2SO
4を含まない)、C-2(1.41%(NH
4)
2SO
4)、およびC-3(0.456%(NH
4)
2SO
4)を、室温で16週間にわたり保存し、MDPの含量を
31P-NMR分光法によって繰り返し決定した。
31P-NMR測定では、分析される各試料1.5gを遠心分離管内に秤量し、内部標準として10mlの重水素化アセトン(アセトン-d
6)中の0.1gのトリフェニルホスフィンの溶液1.5mlと混合した。得られた懸濁液を、プラットフォームシェーカー(Vibramax、Heidolph Instruments GmbH & Co.KG、Schwabach、Germany)を使用して少なくとも5分間振盪し、次いで3,500rpmで15分間、遠心分離した。上澄みを、使い捨てピペットを使用してNMR試料管に移した。測定を、Avance DPX400(Bruker Spectrospin)400MHz-核磁気共鳴分光計を使用して行った。MDP濃度を、内部標準に対するピーク面積の比から計算した。
図1は、(NH
4)
2SO
4を含むおよび含まないコンポジットペースト中のMDPの含量の、経時的な変化を示す。
【0077】
図1に示される結果は、(NH
4)
2SO
4を含むコンポジットC-2およびC-3の著しく改善された保存安定性を実証する。(NH
4)
2SO
4を含まないコンポジットC-1は、わずか10週間後に、利用可能なMDPのほぼ完全な低下を示す一方、(NH
4)
2SO
4を含むコンポジットペーストC-2およびC-3では、適切な含量のMDPが、16週間後に依然として検出可能であった。