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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098849
(43)【公開日】2023-07-11
(54)【発明の名称】フォトレジスト下層組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/11 20060101AFI20230704BHJP
   C08F 20/54 20060101ALI20230704BHJP
   C08G 63/181 20060101ALI20230704BHJP
   H01L 21/312 20060101ALN20230704BHJP
【FI】
G03F7/11 502
G03F7/11 503
C08F20/54
C08G63/181
H01L21/312 D
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022205380
(22)【出願日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】63/294,569
(32)【優先日】2021-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】509266480
【氏名又は名称】ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ・コリア・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】弁理士法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャン ミン ギョン
(72)【発明者】
【氏名】シン ヒョンウ
(72)【発明者】
【氏名】チョン キジョン
【テーマコード(参考)】
2H225
4J029
4J100
5F058
【Fターム(参考)】
2H225AE03N
2H225AE04N
2H225AE11N
2H225AE22N
2H225AF12N
2H225AF64N
2H225AM22N
2H225AM38N
2H225AM61N
2H225AM62N
2H225AM92N
2H225AM93N
2H225AM94N
2H225AN14N
2H225AN39N
2H225AN56N
2H225BA01N
2H225BA24N
2H225CA12
2H225CB09
2H225CC03
2H225CC15
4J029AA03
4J029AC01
4J029BH01
4J029CB06
4J029DA13
4J029HA01
4J029HB03A
4J029JC361
4J029KE09
4J100AM21P
4J100BA02P
4J100CA01
4J100FA03
4J100FA19
4J100JA38
5F058AA10
5F058AC07
5F058AD08
5F058AF04
(57)【要約】
【課題】 フォトレジスト下層組成物を提供する。
【解決手段】 N-(アルコキシメチル)(メタ)アクリルアミドモノマーから誘導される第1の構造単位と;芳香族基、複素環基、エステル基、及びアミド基、又はそれらの組み合わせを含む第2の構造単位であって、架橋性基を更に含む第2の構造単位とを含む第1のポリマーを含むフォトレジスト下層組成物であって、第2の構造単位を含む第2のポリマー又はその組み合わせ、熱酸発生剤、及び溶剤を更に含む、フォトレジスト下層組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトレジスト下層組成物であって、
N-(アルコキシメチル)(メタ)アクリルアミドモノマーから誘導される第1の構造単位と;
芳香族基、複素環基、エステル基、アミド基、又はそれらの組み合わせを含む第2の構造単位であって、架橋性基を更に含む第2の構造単位とを含む第1のポリマーを含むフォトレジスト下層組成物であって、
前記第2の構造単位を含む第2のポリマー又はその組み合わせ、
熱酸発生剤、及び
溶剤を更に含む、フォトレジスト下層組成物。
【請求項2】
前記第1のポリマーが、前記第1の構造単位と前記第2の構造単位とを含み、
前記第2の構造単位がC6~60アリール基と前記架橋性基とを含む、
請求項1に記載のフォトレジスト下層組成物。
【請求項3】
前記第2のポリマーを更に含み、前記第2のポリマーが前記第2の構造単位と前記架橋性基とを含み、前記第2のポリマーが置換シアヌレートを含む第3の構造単位を更に含む、請求項1又は2に記載のフォトレジスト下層組成物。
【請求項4】
前記N-(アルコキシメチル)(メタ)アクリルアミドモノマーが式(1)のものである、請求項1~3のいずれか一項に記載のフォトレジスト下層組成物:
【化1】

(式(1)において、
は、水素、フッ素、シアノ、又は置換若しくは無置換C1~10アルキルであり;
は、水素又は置換若しくは無置換C1~10アルキルであり;
及びRは、それぞれ独立して、水素、置換若しくは無置換C1~30アルキル、置換若しくは無置換C1~30ヘテロアルキル、置換若しくは無置換C3~30シクロアルキル、置換若しくは無置換C2~30ヘテロシクロアルキル、置換若しくは無置換C2~30アルケニル、置換若しくは無置換C6~30アリール、置換若しくは無置換C7~30アリールアルキル、置換若しくは無置換C7~30アルキルアリール、置換若しくは無置換C3~30ヘテロアリール、置換若しくは無置換C4~30ヘテロアリールアルキル、又は置換若しくは無置換C4~30アルキルヘテロアリールであり;
及びRのそれぞれは、それらの構造の一部として二価連結基を任意選択的に更に含み;
及びRは、任意選択的には、単結合又は二価連結基を介して環を形成していてもよく、前記環は置換されているか又は無置換であり;
は、水素、置換若しくは無置換C1~20アルキル、置換若しくは無置換C3~20シクロアルキル、置換若しくは無置換C2~20ヘテロシクロアルキル、置換若しくは無置換C6~24アリール、置換若しくは無置換C7~25アリールアルキル、置換若しくは無置換C7~25アルキルアリール、置換若しくは無置換C3~20ヘテロアリール、置換若しくは無置換C4~20ヘテロアリールアルキル、又は置換若しくは無置換C4~20アルキルヘテロアリールであり;
又はRのうちの1つは、単結合又は二価連結基を介して、Rと一緒になって複素環を任意選択的に形成し、前記複素環は置換若しくは無置換である)。
【請求項5】
が、水素であるか、又は無置換C1~3アルキルであり;
が水素又はメチルであり;
及びRが、それぞれ独立して、水素、又は置換若しくは無置換C1~10アルキルであり;
は、置換若しくは無置換C1~10アルキル、置換若しくは無置換C3~10シクロアルキル、置換若しくは無置換C2~10ヘテロシクロアルキル、置換若しくは無置換C6~14アリール、又は置換若しくは無置換C3~20ヘテロアリールである、
請求項4に記載のフォトレジスト下層組成物。
【請求項6】
前記第2の構造単位が、式(4)、式(5)、又はそれらの組み合わせによって表される化合物から誘導される置換シアヌレート構造単位を含む複素環基を含む、請求項2~5のいずれか一項に記載のフォトレジスト下層組成物:
【化2】

(式(4)及び(5)において、
及びRは、それぞれ独立して、水素、置換若しくは無置換C1~30アルキル、置換若しくは無置換C3~30シクロアルキル、置換若しくは無置換C3~30ヘテロシクロアルキル、置換若しくは無置換C6~30アリール、又は置換若しくは無置換C3~30ヘテロアリールであり;
は、水素、-COOH、置換若しくは無置換C1~30アルキル、置換若しくは無置換C2~30アルケニル、置換若しくは無置換C2~30アルキニル、置換若しくは無置換C2~30アルカノイル、置換若しくは無置換C~C30アルコキシ、置換若しくは無置換C~C30アルキルチオ、置換若しくは無置換C~C30アルキルスルフィニル、置換若しくは無置換C~C30アルキルスルホニル、置換若しくは無置換C~C30アルコキシカルボニル、置換若しくは無置換C3~20シクロアルケニル、置換若しくは無置換C3~20ヘテロシクロアルケニル、置換若しくは無置換C~C30アリール、置換若しくは無置換C~C30アルキルアリール、置換若しくは無置換C~C30アリールアルキル、置換若しくは無置換C3~30ヘテロアリール、置換若しくは無置換C4~30アルキルヘテロアリール、又は置換若しくは無置換C4~30ヘテロアリールアルキルであり;
X及びX’のそれぞれは、独立して、水素、又は置換若しくは無置換C1~10アルキルであり;
n1、n2、m1、m2、及びm3は、それぞれ独立して1~10の整数である)。
【請求項7】
基板上に配置された請求項1~6のいずれか一項に記載のフォトレジスト下層組成物の層と、
前記フォトレジスト下層組成物の層の上に配置された第2の層と、
を含むコーティングされた基板。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載のフォトレジスト下層組成物の層を基板上に塗布する工程と;
前記塗布されたフォトレジスト下層組成物を硬化してフォトレジスト下層を形成すること;及び
前記フォトレジスト下層の上にフォトレジスト層を形成すること;
を含むパターン形成方法。
【請求項9】
前記フォトレジスト層を形成する前に、前記フォトレジスト下層の上にケイ素含有層、有機反射防止コーティング層、又はこれらの組み合わせを形成することを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記フォトレジスト層をパターン化し、前記パターン化されたフォトレジスト層から、前記フォトレジスト下層及び前記フォトレジスト下層の下の層にパターンを転写することを更に含む、請求項8又は9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、電子デバイスを製造する分野に関し、より具体的には、半導体製造において使用するための材料の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトレジスト下層組成物は、集積回路製造用の最新のテクノロジーノードにおけるリソグラフィー用のエッチングマスクとして半導体産業で使用されている。これらの組成物は、有機物又はケイ素を含む反射防止コーティングとパターン化可能なフォトレジスト膜の層とが下層の上に配置される3層及び4層フォトレジストの集積化スキームでよく使用されている。
【0003】
理想的なフォトレジスト下層材料は、特定の具体的な特徴を有する必要がある。すなわち、これはスピンコートプロセスによって基板上にキャストできる必要があり、加熱されると少ないガス放出及び昇華で熱硬化する必要があり、スピンボウルとの優れた適合性のために一般的な溶剤に可溶性である必要があり、フォトレジストイメージングに必要な低反射率を付与するための、反射防止コーティング層と共に機能するために適切なn&k値を有することが必要であり、また後続の処理工程中の損傷を回避するために高い熱安定性を有する必要がある。これらの要件に加えて、理想的なフォトレジスト下層材料は、フォトパターンを正確な方法で最終的な基板に転写するために、基板上でのスピンコート及び熱硬化の後に、フォトレジスト下層膜の上下に位置するケイ素含有層に対するトポグラフィと十分なドライエッチング選択性とを平坦な膜に付与しなければならない。
【0004】
したがって、改善された下にある基板への接着性、硬化後の耐溶剤性、及び高い熱安定性(例えば硬化中の昇華の減少)を有するフォトレジスト下層材料など、新規な下層材料が依然として求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第3,474,054号明細書
【特許文献2】米国特許第4,200,729号明細書
【特許文献3】米国特許第4,251,665号明細書
【特許文献4】米国特許第5,187,019号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Pappas et al.“Organic Coatings,Science and Technology,”pp246-257(John Wiley&Sons,1999,2ed.)
【非特許文献2】Houben-Weyl,“Methoden der Organischen Chemie,Band E20,Makromolekulare Soffe,Polyester,”pp1405-1429.(Georg Thieme Verlag,Stuttgart 1987)
【非特許文献3】McCutcheon’s Emulsifiers and Detergents, North American Edition for the Year 2000
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
N-(アルコキシメチル)(メタ)アクリルアミドモノマーから誘導される第1の構造単位と;芳香族基、複素環基、エステル基、及びアミド基、又はそれらの組み合わせを含む第2の構造単位であって、架橋性基を更に含む第2の構造単位とを含む第1のポリマーを含むフォトレジスト下層組成物であって、第2の構造単位を含む第2のポリマー又はその組み合わせ、熱酸発生剤;及び溶剤を更に含む、フォトレジスト下層組成物が提供される。
【0008】
また、基板上に配置されたフォトレジスト下層組成物の層と、フォトレジスト下層組成物の層の上に配置された第2の層と、を含むコーティングされた基板も提供される。
【0009】
更に別の態様は、基板上にフォトレジスト下層組成物の層を塗布すること;塗布されたフォトレジスト下層組成物を硬化してフォトレジスト下層を形成すること;及びフォトレジスト下層の上にフォトレジスト層を形成することを含むパターン形成方法が開示される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A-1D】本明細書で提供される、それぞれ実施例1、比較例1、実施例6、及び比較例3の下層組成物でコーティングされたパターンの顕微鏡画像である。
図2A】本明細書に記載の実施例1及び比較例1の下層組成物を使用して得られたパターンの走査型電子顕微鏡(SEM)の結果である。
図2B】本明細書に記載の実施例6及び比較例3の下層組成物を使用して得られたパターンのSEMの結果である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
例示的な実施形態がこれから詳細に言及され、それらの例が本記載で例示される。これに関連して、本例示的な実施形態は、異なる形態を有し得、本明細書に明記される記載に限定されると解釈されるべきではない。したがって、例示的な実施形態は、本記載の態様を説明するために、図に言及することによって、以下に記載されるにすぎない。本明細書で用いる場合、用語「及び/又は」は、関連する列挙された項目の1つ以上の全ての組み合わせを包含する。「の少なくとも1つ」などの表現は、要素のリストに先行する場合、要素の全リストを修飾し、リストの個々の要素を修飾しない。
【0012】
本明細書で用いるところでは、用語「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、量の制限を意味せず、本明細書で特に示さないか又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方を包含すると解釈されるべきである。「又は」は、特に明記しない限り、「及び/又は」を意味する。本明細書で開示される全ての範囲は、終点を含み、終点は、独立して、互いに合体できる。接尾辞「(s)」は、それが修飾する用語の単数形及び複数形の両方を含み、それによってその用語の少なくとも1つを含むことを意図する。「任意選択の」又は「任意選択的に」は、その後に記載される事象又は状況が起こり得るか又は起こり得ないこと、及びその記載は、事象が起こる場合及び事象が起こらない場合を含むことを意味する。用語「第1」、「第2」等は、本明細書では、順番、量、又は重要性を意味せず、むしろ1つの要素を別の要素から区別するために用いられる。要素が別の要素「上」にあると言われる場合、それは、他の要素と直接に接触し得るか、又は介在要素がそれらの間に存在し得る。対照的に、要素が別の要素の「直接上に」あると言われる場合、介在要素は、存在しない。態様の記載される成分、要素、制限、及び/又は特徴は、様々な態様では任意の適切な方法で組み合わされ得ることが理解されるべきである。
【0013】
別に定義しない限り、本明細書で用いられる全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。一般に使用される辞書において定義されるものなどの、用語は、関連技術分野及び本開示との関連でそれらの意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明確にそのように定義しない限り、理想的な意味又は過度に形式的な意味で解釈されないことが更に理解されるであろう。
【0014】
本明細書で使用される場合、「化学線」又は「放射線」は、例えば、水銀ランプの輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子ビーム及びイオンビームなどの粒子線などを意味する。更に、本発明において、「光」は化学線又は放射線を意味する。フッ化クリプトンレーザー(KrFレーザー)は、特定のタイプのエキシマレーザーであり、エキシプレックスレーザーと称することもある。「エキシマ」は「励起二量体」の略であり、一方で「エキシプレックス」は「励起錯体」の略である。エキシマレーザーは、希ガス(アルゴン、クリプトン、又はキセノン)とハロゲンガス(フッ素又は塩素)の混合物を使用し、電気刺激と高圧の適切な条件下で、コヒーレントな誘導放射線(レーザー光)を紫外線領域で放出する。更に、本明細書における「露光」には、特に明記しない限り、水銀ランプ、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、X線、極紫外線(EUV光)などによる露光のみならず、電子ビーム及びイオンビームなどの粒子線による書き込みも含まれる。
【0015】
本明細書で用いるところでは、用語「炭化水素」は、少なくとも1個の炭素原子と少なくとも1個の水素原子とを有する有機化合物を指し;「アルキル」は、明記された数の炭素原子を有し、且つ1の価数を有する直鎖若しくは分岐鎖の飽和炭化水素基を指し;「アルキレン」は、2の価数を有するアルキル基を指し;「ヒドロキシアルキル」は、少なくとも1個のヒドロキシル基(-OH)で置換されたアルキル基を指し;「アルコキシ」は、「アルキル-O-」を指し;「カルボキシル」及び「カルボン酸基」は、式「-C(=O)-OH」を有する基を指し;「シクロアルキル」は、全ての環員が炭素である1つ以上の飽和環を有する一価基を指し;「シクロアルキレン」は、2の価数を有するシクロアルキル基を指し;「アルケニル」は、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を有する直鎖若しくは分岐鎖の一価炭化水素基を指し;「アルケノキシ」は、「アルケニル-O-」を指し;「アルケニレン」は、2の価数を有するアルケニル基を指し;「シクロアルケニル」は、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を持った、少なくとも3個の炭素原子を有する非芳香族環状二価炭化水素基を指し;「アルキニル」は、少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を有する一価炭化水素基を指し;用語「芳香族基」は、Huckel則(4n+2π個の電子)を満たし、環中に炭素原子を含む単環式又は多環式の芳香環系を指し;用語「ヘテロ芳香族基」は、環中の炭素原子の代わりに、N、O、及びSから選択される1つ以上のヘテロ原子(例えば1~4個のヘテロ原子)を含む芳香族基を指し;「アリール」は、全ての環員が炭素である一価の単環式若しくは多環式芳香環系を指し、少なくとも1つのシクロアルキル又はヘテロシクロアルキル環に縮合した芳香環を持った基を含んでいてもよく;「アリーレン」は、2の価数を有するアリール基を指し;「アルキルアリール」は、アルキル基で置換されているアリール基を指し;「アリールアルキル」は、アリール基で置換されているアルキル基を指し;「アリールオキシ」は、「アリール-O-」を指し;「アリールチオ」は、「アリール-S-」を指す。
【0016】
接頭辞「ヘテロ」は、化合物又は基が、炭素原子の代わりに、ヘテロ原子である少なくとも1つのメンバー(例えば、1、2、3、又は4個以上のヘテロ原子)を含むことを意味し、ここで、ヘテロ原子は、それぞれ独立して、N、O、S、Si、又はPであり;「ヘテロ原子含有基」は、少なくとも1個のヘテロ原子を含む置換基を指し;「ヘテロシクロアルキル」という用語は、炭素の代わりに少なくとも1個のヘテロ原子を環員として有するシクロアルキル基を指し;「ヘテロシクロアルキレン」という用語は、2の価数を有するヘテロシクロアルキル基を指す。「ヘテロアリール」という用語は、1~4個のヘテロ原子(単環式の場合)、1~6個のヘテロ原子(二環式の場合)、又は1~9個のヘテロ原子(三環式の場合)を有する、4~8員の単環式、8~12員の二環式、又は11~14員の三環式芳香環系を意味する。
【0017】
接頭辞「ハロ」は、水素原子の代わりにフルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨード置換基のうちの1つ又はそれ以上を含む基を意味する。用語「ハロゲン」は、フッ素(フルオロ)、塩素(クロロ)、臭素(ブロモ)、又はヨウ素(ヨード)である一価置換基を意味する。ハロゲン基の組み合わせ(例えば、ブロモとフルオロ)、又はフルオロ基のみが存在していてもよい。用語「置換C~8ハロアルキル」は、少なくとも1つのハロゲンによって置換されたC~8アルキル基を指し、ハロゲンではない1つ以上の他の置換基で更に置換されている。
【0018】
明白に別に提示されない限り、上記置換基のそれぞれは、任意選択的に置換され得る。「任意選択的に置換される」という用語は、置換若しくは無置換であることを指す。「置換された」は、化学構造又は基の少なくとも1つの水素原子が、指定された原子の通常の価数を超えないことを条件として、典型的には一価である別の末端置換基で置き換えられていることを意味する。置換基がオキソ(すなわち=O)である場合、炭素原子上の2つのジェミナル水素原子が末端オキソ基で置き換えられている。オキソ基は、二重結合を介して炭素に結合してカルボニル(C=O)を形成し、カルボニル基は本明細書では-C(O)-として表されることに更に留意される。置換基又は変数の組み合わせが許容される。「置換」位置に存在し得る例示的な置換基としては、ニトロ(-NO)、シアノ(-CN)、ヒドロキシル(-OH)、オキソ(O)、アミノ(-NH)、モノ-又はジ-(C1~6)アルキルアミノ、アルカノイル(アシルなどのC2~6アルカノイル基など)、ホルミル(-C(O)H)、カルボン酸又はそのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩;C2~6アルキルエステル(-C(O)O-アルキル又は-OC(O)-アルキル)、C7~13アリールエステル(-C(O)O-アリール又は-OC(O)-アリール)などのエステル(アクリレート、メタクリレート、及びラクトンを含む);アミド(-C(O)NR、式中、Rは水素又はC1~6アルキルである)、カルボキサミド(-CHC(O)NR、式中、Rは水素又はC1~6アルキルである)、ハロゲン、チオール(-SH)、C1~6アルキルチオ(-S-アルキル)、チオシアノ(-SCN)、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C1~6ハロアルキル、C1~9アルコキシ、C1~6ハロアルコキシ、C3~12シクロアルキル、C5~18シクロアルケニル、C2~18ヘテロシクロアルケニル、少なくとも1つの芳香環(例えば、フェニル、ビフェニル、ナフチルなど、それぞれの環は、置換又は無置換芳香族)を有するC6~12アリール、1~3個の分離した環又は縮合環と6~18個の環炭素原子とを有するC7~19アリールアルキル、1~3個の分離した環又は縮合環と6~18個の環炭素原子とを有するアリールアルコキシ、C7~12アルキルアリール、C3~12ヘテロシクロアルキル、C3~12ヘテロアリール、C1~6アルキルスルホニル(-S(O)-アルキル)、C6~12アリールスルホニル、(-S(O)-アリール)、又はトシル(CHSO-)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
本明細書において、別途定義されない限り、「二価連結基」は、-O-、-S-、-Te-、-Se-、-C(O)-、-C(O)O-、-N(R)-、C(O)N(R)-、-S(O)-、-S(O)-、-C(S)-、-C(Te)-、-C(Se)-、置換若しくは無置換C1~30アルキレン、置換若しくは無置換C3~30シクロアルキレン、置換若しくは無置換C3~30ヘテロシクロアルキレン、置換若しくは無置換C6~30アリーレン、置換若しくは無置換C3~30ヘテロアリーレン、又はこれらの組み合わせのうちの1つ以上を含む二価の基を指し、各Rは、独立して、水素、置換若しくは無置換C1~20アルキル、置換若しくは無置換1~20ヘテロアルキル、置換若しくは無置換C6~30アリール、又は置換若しくは無置換C3~30ヘテロアリールである。典型的には、二価連結基は、-O-、-S-、-C(O)-、-C(O)O-、-N(R’)-、C(O)N(R)-、-S(O)-、-S(O)-、置換若しくは無置換C1~30アルキレン、置換若しくは無置換C3~30シクロアルキレン、置換若しくは無置換C3~30ヘテロシクロアルキレン、置換若しくは無置換C6~30アリーレン、置換若しくは無置換C3~30ヘテロアリーレン、又はこれらの組み合わせのうちの1つ以上を含み、R’は、水素、置換若しくは無置換C1~20アルキル、置換若しくは無置換C1~20ヘテロアルキル、置換若しくは無置換C6~30アリール、又は置換若しくは無置換C3~30ヘテロアリールである。
【0020】
本明細書で使用される「(メタ)アクリル」という用語は、アクリル種とメタクリル種(すなわちアクリルモノマー及びメタクリルモノマー)の両方を含み、「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレート種とメタクリレート種(すなわちアクリレートモノマー及びメタクリレートモノマー)の両方を含む。
【0021】
様々なパターン転写及びエッチングプロセスの間に下にある基板を保護するために、有機下層膜を使用することができる。多くの場合、これらの膜は、無機基板(すなわちTiN)上に直接キャストされ硬化される。これらの場合、下層膜は、膜がない場合に損傷を与える条件から基板を保護するために、後続の全ての処理工程中に基板に十分に接着することが望ましい。一般的なウェットエッチングプロセスは、基板を苛性溶剤槽に浸漬することを含む。基板に十分に接着されていない下層膜は、それらが浸漬されている間に層間剥離し、下にある無機基板を露出させて損傷を生じさせる可能性がある。
【0022】
N-(アルコキシメチル)(メタ)アクリルアミドから誘導される構造単位をフォトレジスト下層材料のポリマー単位に組み込むことにより、エッチング耐性及び反射率パラメータを大きく損なうことなしに、硬化後の耐溶剤性及び熱安定性を大幅に改善することができ、場合によっては崩壊マージンを改善することができる。フォトレジスト下層組成物に使用される場合、N-(アルコキシメチル)(メタ)アクリルアミドから誘導される構造単位は架橋を形成することができ、及び/又は架橋可能であることができ、好ましくはポリマーは照射なしで架橋可能である。本発明のフォトレジスト下層組成物は熱酸発生剤(TAG)を更に含み、好ましくは光酸発生剤(PAG)を含まない。架橋は、架橋剤を介していてもよく、又は自己架橋によるものであってもよい。
【0023】
本発明の一態様によれば、フォトレジスト下層組成物は、N-(アルコキシメチル)(メタ)アクリルアミドモノマーから誘導される第1の構造単位と、芳香族基、複素環基、エステル基、アミド基、又はそれらの組み合わせを含む第2の構造単位であって、架橋性基を更に含む第2の構造単位とを含む第1のポリマーと;熱酸発生剤と;溶剤とを含む。フォトレジスト下層組成物において、第1のポリマーは第2の構造単位を含むことができ、又はフォトレジスト下層組成物は第2の構造単位を含む第2のポリマーを更に含むことができ、又は第1のポリマーと第2のポリマーの両方がそれぞれ第2の構造単位を含むことができる。
【0024】
いくつかの実施形態では、第1のポリマーは、N-(アルコキシメチル)(メタ)アクリルアミドモノマーから誘導される第1の構造単位と、芳香族基、複素環基、エステル基、アミド基、又はそれらの組み合わせを含む第2の構造単位であって架橋性基を更に含む第2の構造単位とを含み得る。
【0025】
本明細書において、「架橋性基」とは、ヒドロキシル(-OH)、カルボキシル(-C(O)OH)、アミン(-NH)、チオール(-SH)、ビニル(例えばC2~30アルケニル)、又はアミド(-C(O)NH)などの、酸素、窒素、又は硫黄を含む求核性基を指す。架橋可能な基の他の例としては、エポキシ及びラクトン、例えばエポキシ、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、又はδ-バレロラクトンなどのものを挙げることができる。架橋性基は、芳香族基及び/又は複素環基に直接(単結合を介して)又は2価の連結基を介して結合することができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、フォトレジスト下層組成物は、N-(アルコキシメチル)(メタ)アクリルアミドモノマーから誘導される第1の構造単位を含む第1のポリマーと、第2のポリマーとを含むことができ、第2のポリマーは、芳香族基、複素環基、又はそれらの組み合わせを含む第2の構造単位であって、架橋性基を更に含む第2の構造単位を含む。
【0027】
更に別の実施形態では、第1のポリマーは、N-(アルコキシメチル)(メタ)アクリルアミドモノマーから誘導される第1の構造単位と、第1の芳香族基、第1の複素環基、第1のエステル基、第1のアミド基、又はこれらの組み合わせを含む第2の構造単位とを含むことができ、第2の構造単位は第1の架橋性基を更に含み、フォトレジスト下層組成物は、第3の構造単位を含む第2のポリマーを更に含むことができ、第3の構造単位は、第2の芳香族基、第2の複素環基、第2のエステル基、第2のアミド基、又はそれらの組み合わせを含み、第3の構造単位は第2の架橋性基を更に含む。第1の芳香族基と第2の芳香族基は同じであっても異なっていてもよく、第1の複素環基と第2の複素環基は同じであっても異なっていてもよく、第1のエステル基と第2のエステル基は同じであっても異なっていてもよく、第1のアミド基と第2のアミド基は同じでも異なっていてもよく、第1の架橋性基と第2の架橋性基は同じでも異なっていてもよいことが理解されるべきである。
【0028】
第2の構造単位は、芳香族基、複素環基、エステル基、アミド基、又はこれらの組み合わせを含む。本明細書において使用される「エステル基」は、式-C(O)O-又は-O(CO)-の基を示す。本明細書において使用される「アミド基」は、式-C(O)NR-又は-RNC(O)-の基を示し、式中、Rは水素、置換若しくは無置換C1~20アルキル基、又は置換若しくは無置換C6~60アリール基である。本明細書において使用される「芳香族基」は、単環式又は多環式のC6~60芳香族基を指す。C6~60芳香族基が多環式である場合、環又は環基は縮合(ナフチルなど)又は直接結合(ビアリール、ビフェニルなど)していてもよい。一実施形態では、多環式芳香族基は、縮合している環又は環基と、直接結合している環又は環基との組み合わせ(ビナフチルなど)を含み得る。本明細書において使用される「ヘテロ環基」は、単環式若しくは多環式のC3~60ヘテロ芳香族基又は単環式若しくは多環式のC3~60ヘテロシクロアルキル基を指す。C3~60ヘテロ芳香族基及び/又はC3~60ヘテロシクロアルキルが多環式である場合、環又は環基は、縮合しているか、直接結合しているか、又は縮合している環若しくは環基と直接結合している環若しくは環基との組み合わせであってよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、第1のポリマーは、N-(アルコキシメチル)(メタ)アクリルアミドモノマーから誘導される第1の構造単位と、C6~60アリール基及び架橋性基を含む第2の構造単位とを含み得る。C6~60アリール基は、架橋性基以外の他の置換基で更に置換されていてもよく、或いは架橋性基以外は無置換であってもよい。例示的な置換基としては、置換若しくは無置換C1~30アルキル、置換若しくは無置換C1~30ヘテロアルキル、置換若しくは無置換C3~30シクロアルキル、置換若しくは無置換C1~30ヘテロシクロアルキル、置換若しくは無置換C2~30アルケニル、置換若しくは無置換C2~30アルキニル、置換若しくは無置換C6~30アリール、置換若しくは無置換C7~30アリールアルキル、置換若しくは無置換C7~30アルキルアリール、置換若しくは無置換C3~30ヘテロアリール、置換若しくは無置換C4~30アルキルヘテロアリール、又は置換若しくは無置換C4~30ヘテロアリールアルキルのうちの1つ以上を挙げることができる。架橋性基は、C6~60アリール基の炭素原子に直接結合していてもよく、或いは架橋性基は、C6~60アリール基の二価結合基を介して結合することができる(すなわちポリマー主鎖へのペンダント基として)。
【0030】
いくつかの実施形態では、第1のポリマーは、N-(アルコキシメチル)(メタ)アクリルアミドモノマーから誘導される第1の構造単位を含むことができ、フォトレジスト下層組成物は、第2の構造単位を含む第2のポリマーを更に含み得る。例えば、第2のポリマーは、C3~60ヘテロシクロアルキル基と架橋性基とを含む第2の構造単位を含み得る。C3~60ヘテロシクロアルキル基は、架橋性基以外の別の置換基で更に置換されていてもよく、或いは架橋性基を含む以外は無置換であってもよい。例示的な追加の置換基としては、置換若しくは無置換C1~30アルキル、置換若しくは無置換C1~30ヘテロアルキル、置換若しくは無置換C3~30シクロアルキル、置換若しくは無置換C1~30ヘテロシクロアルキル、置換若しくは無置換C2~30アルケニル、置換若しくは無置換C2~30アルキニル、置換若しくは無置換C6~30アリール、置換若しくは無置換C7~30アリールアルキル、置換若しくは無置換C7~30アルキルアリール、置換若しくは無置換C3~30ヘテロアリール、置換若しくは無置換C4~30アルキルヘテロアリール、又は置換若しくは無置換C4~30ヘテロアリールアルキルのうちの1つ以上を挙げることができる。架橋性基は、C3~60ヘテロシクロアルキル基の原子に直接結合されていてもよく(すなわち単結合を介して)、或いは架橋性基は、二価結合基を介してCC3~60ヘテロシクロアルキル基に結合されていてもよい(すなわちポリマー主鎖へのペンダント基として)。
【0031】
第1の構造単位は、N-(アルコキシメチル)(メタ)アクリルアミドモノマーから誘導され、これは式(1)で表すことができる:
【化1】
【0032】
式(1)において、Rは、水素、フッ素、シアノ、又は置換若しくは無置換C1~10アルキルである。好ましくは、Rは、水素、フッ素、シアノ、又は置換若しくは無置換C1~5アルキルであり、典型的にはメチルである。
【0033】
式(1)において、Rは、水素、又は置換若しくは無置換C1~10アルキルである。典型的には、Rは水素又はメチルである。いくつかの実施形態では、Rは水素ではない。
【0034】
式(1)において、R及びRは、それぞれ独立して、水素、置換若しくは無置換C1~30アルキル、置換若しくは無置換C1~30ヘテロアルキル、置換若しくは無置換C3~30シクロアルキル、置換若しくは無置換C2~30ヘテロシクロアルキル、置換若しくは無置換C2~30アルケニル、置換若しくは無置換C6~30アリール、置換若しくは無置換C7~30アリールアルキル、置換若しくは無置換C7~30アルキルアリール、置換若しくは無置換C3~30ヘテロアリール、置換若しくは無置換C4~30ヘテロアリールアルキル、又は置換若しくは無置換C4~30アルキルヘテロアリールである。好ましくは、R及びRは、それぞれ独立して、水素であるか、又は置換若しくは無置換C1~10アルキル、典型的にはメチルである。いくつかの態様では、RとRのうちの少なくとも1つは水素であり、例えばRとRの両方が水素であってもよい。R及びRは、任意選択的には、単結合又は二価連結基を介して環を形成していてもよく、前記環は置換されているか無置換である。
【0035】
及びRのそれぞれは、それらの構造の一部として、二価連結基を任意選択的に更に含む。例えば、各R~Rは、任意選択的には、その構造の一部として、-O-、-C(O)-、-C(O)O-、-S-、-S(O)-、-N(R)-、又は-C(O)N(R’)-から選択される1つ以上の二価連結基を更に含んでいてもよく、Rは、水素、置換若しくは無置換C1~20アルキル、置換若しくは無置換C3~20シクロアルキル、又は置換若しくは無置換C3~20ヘテロシクロアルキルであってよい。
【0036】
は、水素、置換若しくは無置換C1~20アルキル、置換若しくは無置換C3~20シクロアルキル、置換若しくは無置換C2~20ヘテロシクロアルキル、置換若しくは無置換C6~24アリール、置換若しくは無置換C7~25アリールアルキル、置換若しくは無置換C7~25アルキルアリール、置換若しくは無置換C3~20ヘテロアリール、置換若しくは無置換C4~20ヘテロアリールアルキル、又は置換若しくは無置換C4~20アルキルヘテロアリールである。
【0037】
又はRのうちの1つは、単結合又は二価連結基を介して、Rと一緒になって複素環を任意選択的に形成していてもよく、前記ヘテロ環は置換若しくは無置換である。
【0038】
例示的なN-(アルコキシメチル)(メタ)アクリルアミドモノマーとしては、以下のうちの1つ以上を挙げることができる:
【化2】

(式中、Rは、式(1)において定義されたとおりである)。
【0039】
N-(アルコキシメチル)(メタ)アクリルアミドモノマーから誘導される第1の構造単位は、第1のポリマー中の繰り返し単位の合計を基準として、典型的には5~100モルパーセント(モル%)、より典型的には5~75モル%、更に典型的には5~50モル%の量で第1のポリマー中に存在する。
【0040】
第2の構造単位は、芳香族基を含むことができ、式(2)のモノマーから誘導することができる:
【化3】

(式中、各Rは、水素、フッ素、シアノ、シアノ、又は置換若しくは無置換C1~10アルキルであってよい)。好ましくは、Rは、水素、フッ素、又は置換若しくは無置換C1~5アルキルであってよく、典型的にはメチルである。
【0041】
式(2)において、nは0又は1である。nが0の場合には、Lは式(2)中のアルケニル基の炭素原子に直接結合していると理解されるべきである。
【0042】
式(2)において、Lは、単結合又は二価連結基を表す。例えば、Lは、任意選択的には-O-、-C(O)-、-C(O)O-、-S-、-S(O)-、-NR102-、又は-C(O)N(R102)-から選択される1つ以上の連結部位を有する、任意選択的に置換されていてもよい脂肪族(C1~6アルキレン又はC3~20シクロアルキレンなど)及び芳香族の炭化水素、並びにそれらの組み合わせから選択される二価の連結基であってもよく、R102は、水素及び任意選択的に置換されていてもよいC1~10アルキルから選択される。
【0043】
nが0であり且つLが単結合である場合には、基Arは、式(2)中のアルケニル基の炭素原子に直接結合していると理解されるべきである。
【0044】
式(2)において、Arは、置換若しくは無置換C6~60アリール基、典型的には置換若しくは無置換C6~14アリール基である。
【0045】
式(2)において、各Lは、独立して単結合又は二価の連結基である。Lの例示的な二価連結基としては、置換若しくは無置換1~30アルキレン、置換若しくは無置換C1~30ヘテロアルキレン、置換若しくは無置換C3~30シクロアルキレン、置換若しくは無置換C3~30ヘテロシクロアルキレン、置換若しくは無置換C6~30アリーレン、置換若しくは無置換C3~30ヘテロアリーレン、-O-、-C(O)-、-C(O)O-、-S-、-S(O)2-、-N(R103)-、又は-C(O)N(R104)-のうちの1つ以上が挙げられ、R103及びR104は、それぞれ独立して、水素、置換若しくは無置換C1~20アルキル、置換若しくは無置換C3~20シクロアルキル、又は置換若しくは無置換C3~20ヘテロシクロアルキルであってよい。
【0046】
式(2)において、各Zは独立して架橋性基である。好ましくは、各Zは、独立してヒドロキシル、カルボキシル、チオール、アミノ、アミド、エポキシ、又はラクトンであり、典型的にはヒドロキシル、チオール、又はエポキシであり、より典型的にはヒドロキシルである。
【0047】
式(2)において、yは1~3の整数であり、好ましくはyは1~2の整数であり、典型的にはyは1である。
【0048】
式(2)のモノマーの非限定的な例としては、以下のものを挙げることができる:
【化4】

(式中、Rは、式(2)において定義されたとおりである)。
【0049】
第2の構造単位を含むポリマーは、式2のモノマーから誘導される繰り返し単位を、ポリマー中の繰り返しの合計を基準として2~100モル%、典型的には10~100モル%、より典型的には50~100モル%の量で含み得る。第1のポリマーが第2の構造単位を含む場合、第2の構造単位は、第1のポリマー中の構造単位の合計を基準として典型的には5~100モル%、より典型的には5~75モル%、更に典型的には5~50モル%の量で第1のポリマー中に存在する。
【0050】
本発明の非限定的な例示的な第1のポリマーとしては、以下のうちの1つ以上が挙げられる:
【化5】

(式中、a、b、c、及びdは、第1のポリマーのそれぞれの繰り返し単位のモル分率を表す)。
【0051】
いくつかの実施形態では、第2の構造単位は、複素環基を含んでいてもよく、また架橋性基を含む架橋性ポリエステルポリマーであってもよい。例えば、第2のポリマーは、イソシアヌレート繰り返し単位と架橋性基とを含み得る。いくつかの態様において、架橋性基は、ヒドロキシル、カルボキシル、チオール、アミノ、エポキシ、アルコキシ、アミド、ビニル、又はそれらの組み合わせから選択され得る。
【0052】
第2のポリマーは、使用される場合、式(3)のモノマーから誘導される1種以上のイソシアヌレート繰り返し単位を含むポリマーであることが好ましい:
【化6】
【0053】
式(3)において、K、L、及びMは、それぞれ独立して、そのそれぞれがカルボン酸基で任意選択的に置換されている、直鎖若しくは分岐C1~10炭化水素基、C1~10アルコキシカルボニル基、C1~10アルカノイルオキシ基、又はC1~5アルコキシカルボニル基若しくはC1~5置換アルコキシ基で任意選択的に置換された直鎖若しくは分岐C1~10ヒドロキシアルキル基である。
【0054】
式(3)において、K、L、及びMについて、C1~10炭化水素基、C1~10アルコキシカルボニル基、C1~10アルカノイルオキシ基、及びC1~10ヒドロキシアルキル基のそれぞれは、ハロゲン、アミノ基、チオール基、エポキシ基、アミド基、C1~5アルキル基、C3~8シクロアルキル基、C3~20ヘテロシクロアルキル基、C2~5アルケニル基、C1~5アルコキシ基、C2~5アルケノキシ基、C6~12アリール基、C6~12アリールオキシ基、C7~13アルキルアリール基、又はC7~13アルキルアリールオキシ基のうちの少なくとも1つで任意選択的に置換されていてもよい。C3~8シクロアルキル基及びC3~20ヘテロシクロアルキル基は、オキソ基(=O)で少なくとも1個の環炭素原子上で任意選択的に置換され得る。式(2)のモノマーから誘導される第1のポリマーの少なくとも1個の水素原子は、ヒドロキシル、カルボキシル、チオール、アミノ、エポキシ、アルコキシ、アミド、ビニル、又はそれらの組み合わせから独立して選択される官能基で置換されている。これらのうちで、ヒドロキシル、カルボキシル、又はアルコキシが好ましい。
【0055】
いくつかの実施形態では、第2の構造単位は、式(4)、式(5)、又はそれらの組み合わせによって表される化合物から誘導される置換シアヌレート構造単位を含む複素環基を含み得る:
【化7】
【0056】
式(4)及び(5)において、R及びRは、それぞれ独立して、水素、置換若しくは無置換C1~30アルキル、置換若しくは無置換C3~30シクロアルキル、置換若しくは無置換C3~30ヘテロシクロアルキル、置換若しくは無置換C6~30アリール、又は置換若しくは無置換C3~30ヘテロアリールである。
【0057】
式(4)及び(5)において、Rは、水素、-C(O)OH、置換若しくは無置換C1~30アルキル、置換若しくは無置換C2~30アルケニル、置換若しくは無置換C2~30アルキニル、置換若しくは無置換C2~30アルカノイル、置換若しくは無置換C~C30アルコキシ、置換若しくは無置換C~C30アルキルチオ、置換若しくは無置換C~C30アルキルスルフィニル、置換若しくは無置換C~C30アルキルスルホニル、置換若しくは無置換C~C30アルコキシカルボニル、置換若しくは無置換C3~20シクロアルケニル、置換若しくは無置換C3~20ヘテロシクロアルケニル、置換若しくは無置換C~C30アリール、置換若しくは無置換C~C30アルキルアリール、置換若しくは無置換C~C30アリールアルキル、置換若しくは無置換C3~30ヘテロアリール、置換若しくは無置換C4~30アルキルヘテロアリール、又は置換若しくは無置換C4~30ヘテロアリールアルキルである。
【0058】
式(4)及び(5)において、X及びX’のそれぞれは、独立して、水素、又は置換若しくは無置換C1~10アルキルである。好ましくは、X及びX’のそれぞれは水素である。
【0059】
式(4)及び(5)において、n1、n2、m1、m2、及びm3は、それぞれ独立して1~10の整数である。好ましくは、n1、n2、m1、m2、及びm3のそれぞれは、独立して1~4までの整数であり、典型的には1又は2である。
【0060】
置換シアヌレート構造単位を含む第2の構造単位を含む第2のポリマーは、例えば(非特許文献1)及びその中の参考文献、並びに/又は(非特許文献2)及びその中の参考文献に記載されているものなどの従来の重縮合技術によって形成され得る。一態様において、ジオール又はポリオール及びジカルボン酸又はポリカルボン酸は、従来の重合容器へ入れられ、数時間約100~280℃で反応させられる。任意選択的に、エステル化触媒が、反応時間を減らすために使用され得る。ポリカルボン酸のジメチルエステル又は無水物などの、ポリカルボン酸のエステル化可能な誘導体がポリエステルを調製するために使用できることもまた理解される。例示的なポリオール及びポリカルボン酸としては、イソシアヌレートポリオール及びイソシアヌレートポリカルボン酸が挙げられる。ポリエステルポリマーは、直鎖又は分岐であることができる。
【0061】
第2のポリマーを形成するために使用され得る適切なジカルボン酸若しくはポリカルボン酸、又はそれらの対応するアルキルエステルとしては、飽和及び不飽和のジカルボン酸、例えばイソフタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マロン酸、フマル酸、コハク酸、無水コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2-メチル-1,6-ヘキサン酸、ピメリン酸、スベリン酸、ドデカン二酸、フタル酸、無水フタル酸、5-tert-ブチルイソフタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、アゼライン酸、セバシン酸、テトラクロロフタル酸無水物、クロレンド酸、イソフタル酸、トリメリット酸無水物、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、二量体脂肪酸、又はこれらの酸のいずれかの無水物、又はそれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0062】
好適なジオール及びポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及び高次ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール及び高次ポリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール及び他のブタンジオール、1,5-ペンタンジオール及び他のペンタンジオール、ヘキサンジオール、デカンジオール、及びドデカンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトール、シクロヘキサンジメタノール、ジペンタエリスリトール、1,2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ベンジルジメタノール、2,4-ジメチル-2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、イソプロピリデンビス(p-フェニレン-オキシプロパノール-2)、4,4’-ジヒドロキシ-2,2’-ジフェニルプロパン、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール(又はシス若しくはトランスであってもよい、1,3-及び1,4-シクロヘキサンジメタノールの混合物)、ソルビトール等、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。
【0063】
複素環基を含む第2の構造単位を第2のポリマーが含む場合、第2の構造単位は、第2ポリマー中の構造単位の合計を基準として典型的には5~100モル%、より典型的には5~50モル%、更に典型的には5~30モル%の量で第2のポリマー中に存在する。例えば、第2の構造単位は、式(4)、式(5)、又はそれらの組み合わせで表される化合物から誘導される置換シアヌレート構造単位を5~50モル%又は5~30モル%含むヘテロ環基を含み得る。
【0064】
第1のポリマーと第2のポリマーとを含む本明細書に記載のポリマーは、それぞれ独立して、上記繰り返し単位とは異なる1種以上の追加の繰り返し単位を任意選択的に含んでいてもよいことが理解されるべきである。追加の繰り返し単位としては、例えば、エッチ速度及び溶解性などの、フォトレジスト下層組成物の特性を調整する目的のための1つ以上の追加の単位が含まれ得る。例示的な更なる単位は、(メタ)アクリレート、ビニルエーテル、ビニルケトン及びビニルエステルの1つ以上を含み得る。ポリマー中に存在する場合、1種以上の追加の繰り返し単位は、典型的には、それぞれのポリマーの繰り返し単位の合計を基準として、最大99モル%、典型的には3~80モル%の量で使用される。
【0065】
本発明のポリマーは、1モル当たり1,000~10,000,000グラム(g/モル)、より典型的には2,000~10,000g/モルの重量平均分子量(M)、及び500~1,000,000g/モルの数平均分子量(M)を有することができる。分子量(M又はM)は、ポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって適切に決定される。
【0066】
本発明の好適なポリマーは、当業者によって容易に理解される、本出願の実施例に記載される手順に基づいて及び手順から類推して容易に調製することができる。例えば、本明細書で記載される繰り返し単位に対応する1つ以上のモノマーは、適切な溶剤及び開始剤を使用して組み合わせられるか又は別々に供給され、反応器中で重合され得る。モノマー組成物は、溶剤、重合開始剤、硬化触媒(すなわち酸触媒)等などの添加剤を更に含み得る。例えば、ポリマーは、有効な温度での加熱、有効な波長での活性化放射線での照射、又はそれらの組み合わせなどの、任意の好適な条件下でのそれぞれのモノマーの重合によって得られ得る。
【0067】
フォトレジスト下層組成物は、上で記載されたポリマーに加えて1種以上のポリマー(「追加のポリマー」)を更に含み得る。例えば、フォトレジスト下層組成物は、上で記載されたような、しかし組成が異なる追加のポリマーを更に含んでいてもよい。それに加えて、又はその代わりに、1つ以上の追加のポリマーとしては、当該技術において周知のもの、例えば、ポリアクリレート、ポリビニルエーテル、ポリエステル、ポリノルボルネン、ポリアセタール、ポリエチレングリコール、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリフェノール、ノボラック、スチレン系ポリマー、ポリビニルアルコール、又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上のポリマーが含まれる。
【0068】
フォトレジスト下層組成物は、例えばフォトレジスト下層組成物が表面に塗布された後に、フォトレジスト下層組成物の硬化を助ける熱酸発生剤(TAG)化合物を更に含む。本発明のフォトレジスト下層組成物は、基板の表面上でフォトレジスト下層組成物の硬化を引き起こす任意の適切なTAGを含み得る。
【0069】
例示的な熱酸発生剤には、アミンブロック化強酸、例えば、アミンブロック化ドデシルベンゼンスルホン酸などのアミンブロック化スルホン酸が含まれるが、これらに限定されない。特定の光酸発生剤が加熱時に酸を遊離することができ、熱酸発生剤として機能し得ることも又当業者によって十分理解されるであろう。
【0070】
適切なTAG化合物には、例えば、2-ニトロベンジルトシレート、2,4-ジニトロベンジルトシレート、2,6-ジニトロベンジルトシレート、4-ニトロベンジルトシレートなどのニトロベンジルトシレート;2-トリフルオロメチル-6-ニトロベンジル4-クロロベンゼンスルホネート、2-トリフルオロメチル-6-ニトロベンジル4-ニトロベンゼンスルホネートなどのベンゼンスルホネート;フェニル,4-メトキシベンゼンスルホネートなどのフェノールスルホネートエステル;10-カンファースルホン酸、トリフルオロメチルベンゼンスルホン酸、ペルフルオロブタンスルホン酸のトリエチルアンモニウム塩などの、有機酸のアルキルアンモニウム塩;及び特定のオニウム塩が含まれ得る。(特許文献1)、(特許文献2)、(特許文献3)及び(特許文献4)に開示されているものなどの、様々な芳香族(アントラセン、ナフタレン、又はベンゼン誘導体)スルホン酸アミン塩をTAGとして用いることができる。第3,474,054号明細書、同第4,200,729号明細書、同第4,251.665号明細書及び同第5,187,019号明細書に記載されている。TAGの例としては、NACURE、CDX、及びK-PUREの名称で、例えば、NACURE 5225、CDX-2168E、K-PURE2678及びKPURE2700としてKing Industries,Norwalk,Conn.USAによって販売されているものが挙げられる。そのようなTAGの1つ以上を使用することができる。
【0071】
本組成物において有用なTAG化合物の量は、例えば、フォトレジスト下層組成物の総固形分を基準として0.01~15重量%、典型的には0.01~10重量%であってよい。
【0072】
いくつかの実施形態では、フォトレジスト下層組成物は、光酸発生剤(PAG)を更に含み得る。適切なPAGとしては、例えば、オニウム塩、例えば、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、(p-tert-ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリス(p-tert-ブトキシフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムp-トルエンスルホネート;ニトロベンジル誘導体、例えば、2-ニトロベンジル-p-トルエンスルホネート、2,6-ジニトロベンジル-p-トルエンスルホネート、及び2,4-ジニトロベンジル-p-トルエンスルホネート;スルホン酸エステル、例えば、1,2,3-トリス(メタンスルホニルオキシ)ベンゼン、1,2,3-トリス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ベンゼン、及び1,2,3-トリス(p-トルエンスルホニルオキシ)ベンゼン;ジアゾメタン誘導体、例えば、ビス(ベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p-トルエンスルホニル)ジアゾメタン;グリオキシム誘導体、例えば、ビス-O-(p-トルエンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、及びビス-O-(n-ブタンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム;N-ヒドロキシイミド化合物のスルホン酸エステル誘導体、例えば、N-ヒドロキシスクシンイミドメタンスルホン酸エステル、N-ヒドロキシスクシンイミドトリフルオロメタンスルホン酸エステル;並びにハロゲン含有トリアジン化合物、例えば、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、及び2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジンを含む。そのようなPAGの1つ以上を使用することができる。
【0073】
いくつかの態様では、フォトレジスト下層組成物は光酸発生剤を含まない。したがって、これらの実施形態では、フォトレジスト下層組成物はPAG化合物を実質的に含まなくてもよい。
【0074】
フォトレジスト下層組成物は、1種以上の架橋剤、例えば非エポキシ架橋剤を含む架橋剤を更に含み得る。そのような架橋剤が、フォトレジスト下層組成物中の官能基と反応することができる少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つの部位を有することを条件として、任意の適切な架橋剤を本コーティング組成物で更に使用することができる。例示的な架橋剤としては、ノボラック樹脂、メラミン化合物、グアナミン化合物、イソシアネート含有化合物、ベンゾシクロブテン、ベンゾオキサジン等を挙げることができ、典型的には、メチロール、C10アルコキシメチル、及びC10アシルオキシメチルから選択される2個以上、より典型的には3個以上の置換基を有する前述したもののいずれかを挙げることができる。適切な架橋剤の例としては以下に示すものが挙げられる:
【化8】
【0075】
追加的な架橋剤は当該技術分野において周知であり、様々な供給元から市販されている。存在する場合、本フォトレジスト下層組成物に有用なそのような追加の架橋剤の量は、例えばフォトレジスト下層組成物の総固形分を基準として0.01~30重量%、好ましくは0.01~20重量%であってよい。
【0076】
フォトレジスト下層組成物は、例えば、界面活性剤、酸化防止剤など、又はそれらの組み合わせを含む1種以上の任意選択的な添加剤を含み得る。存在する場合、各任意選択的な添加剤は、フォトレジスト下層組成物の総固形分を基準として0.01~10重量%などの少量でフォトレジスト下層組成物で使用され得る。
【0077】
典型的な界面活性剤としては、両親媒性性質を示すものが挙げられる。これは、それらが同時に親水性及び疎水性の両方であってもよいことを意味する。両親媒性界面活性剤は、水に対して強い親和性を有する、親水性の頭部基と、親有機性で水をはじく、長い疎水性の尾部とを有する。好適な界面活性剤は、イオン性(すなわち、アニオン性、又はカチオン性)又は非イオン性であってもよい。界面活性剤のさらなる例としては、シリコーン界面活性剤、ポリ(アルキレンオキシド)界面活性剤、及びフルオロケミカル界面活性剤が挙げられる。好適な非イオン界面活性剤としては、TRITON X-114、X-100、X-45、X-15などのオクチル及びノニルフェノールエトキシレート並びにTERGITOL TMN-6(The Dow Chemical Company,Midland,Mich.USA)などの分岐状第二級アルコールエトキシレートが挙げられるが、それらに限定されない。もっと更なる例示的な界面活性剤としては、アルコール(第一級及び第二級)エトキシレート、アミンエトキシレート、グルコシド、グルカミン、ポリエチレングリコール、ポリ(エチレングリコール-co-プロピレングリコール)、又はGlen Rock,N.J.のManufacturers Confectioners Publishing Co.によって出版された(非特許文献3)に開示されている他の界面活性剤が挙げられる。アセチレンジオール誘導体である非イオン界面活性剤もまた好適であり得る。そのような界面活性剤は、Allentown,Pa.のAir Products and Chemicals,Inc.から商業的に入手可能であり、SURFYNOL及びDYNOLの商品名で販売されている。追加の好適な界面活性剤としては、トリブロックEO-PO-EOコポリマーPLURONIC 25R2、L121、L123、L31、L81、L101、及びP123(BASF,Inc.)などの他の高分子化合物が挙げられる。
【0078】
好適な酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、有機酸誘導体からなる酸化防止剤、硫黄含有酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、アミン-アルデヒド縮合物からなる酸化防止剤及びアミン-ケトン縮合物からなる酸化防止剤が挙げられる。フェノール系酸化防止剤の例としては、1-オキシ-3-メチル-4-イソプロピルベンゼン、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、4-ヒドロキシメチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、ブチル.ヒドロキシアニソール、2-(1-メチルシクロヘキシル)-4,6-ジメチルフェノール、2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノール、2-メチル-4,6-ジノニルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-α-ジメチルアミノ-p-クレゾール、6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチル.アニリノ)2,4-ビス.オクチル-チオ~1,3,5-トリアジン、n-オクタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチル.フェニル)プロピオネート、オクチル化フェノール、アラルキル置換フェノール、アルキル化p-クレゾール及びヒンダードフェノールなどの置換フェノール;4,4’-ビスフェノール、4,4’-メチレン-ビス(ジメチル-4,6-フェノール)、2,2’-メチレン-ビス-(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレン-ビス-(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール)、2,2’-メチレン-ビス-(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-メチレン-ビス-(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレン-ビス-(6-α-メチル-ベンジル-p-クレゾール)、メチレン架橋多価アルキルフェノール、4,4’-ブチリデン-ビス-(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-シクロヘキサン、2,2’-ジヒドロキシ-3,3’-ジ-(α-メチルシクロヘキシル)-5,5’-ジメチル.ジフェニルメタン、アルキル化ビスフェノール、ヒンダードビスフェノール、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、及びテトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどのビス-、トリス-及びポリ-フェノールが挙げられる。好適な酸化防止剤は、商業的に入手可能であり、例えば、Irganox(商標)酸化防止剤(Ciba Specialty Chemicals Corp.)である。
【0079】
フォトレジスト下層組成物は溶剤を含む。溶剤成分は、単一溶剤であってもよく、或いは2種以上の別個の溶剤の混合物を含んでいてもよい。好適には、複数の溶剤のそれぞれは、互いに混和性であり得る。適切な溶剤としては、例えば、1種以上のオキシイソ酪酸エステル、特にメチル-2-ヒドロキシイソ酪酸、2-ヒドロキシイソ酪酸、及び乳酸エチル;1種以上のグリコールエーテル、特に2-メトキシエチルエーテル(ジグリム)、エチレングリコールモノメチルエーテル、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル;エーテル部位とヒドロキシ部位の両方を有する1種以上の溶剤、特にメトキシブタノール、エトキシブタノール、メトキシプロパノール、及びエトキシプロパノール;1種以上のアルキルエステル、特にメチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、及びジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、並びに1種以上の二塩基性エステルなどの他の溶剤;並びに/又は1種以上のプロピレンカーボネート及びガンマブチロラクトンなどの他の溶剤が挙げられる。
【0080】
フォトレジスト下層組成物の望まれる総固形分は、所望の最終層厚さなどの因子に依存するであろう。典型的には、フォトレジスト下層組成物の総固形分は、フォトレジスト下層組成物の総重量を基準として、0.1~20重量%、例えば0.1~10重量%、より典型的には0.1~5重量%であってよい。
【0081】
フォトレジスト下層組成物は、公知の手順に従って作製することができる。例えば、フォトレジスト下層組成物は、第1の材料と、第2の材料と、添加剤と、溶剤と、任意の任意選択的な成分とを任意の順序で混ぜ合わせることによって調製することができる。フォトレジスト下層組成物は、そのままで使用することができ、或いは基板上にコートする前に精製又は希釈を行うこともできる。精製は、例えば、遠心分離、濾過、蒸留、デカンテーション、蒸発、イオン交換ビーズでの処理等の1つ以上を含み得る。
【0082】
本発明のパターン形成方法は、基板上にフォトレジスト下層組成物の層を塗布すること;塗布されたフォトレジスト下層組成物を硬化させて、フォトレジスト下層を形成すること;及びフォトレジスト下層の上にフォトレジスト層を形成することを含む。方法は、フォトレジスト層をパターン化し、パターン化されたフォトレジスト層から、フォトレジスト下層及びフォトレジスト下層の下の層にパターンを転写することを更に含み得る。いくつかの実施形態では、この方法は、フォトレジスト層を活性化放射にパターン状に露光する工程;及び露光されたフォトレジスト層を現像してレジストレリーフ像を得る工程を更に含み得る。いくつかの態様では、方法は、フォトレジスト層を形成する前に、フォトレジスト下層の上にケイ素含有層、有機反射防止コーティング層、又はそれらの組み合わせを形成することを更に含み得る。いくつかの態様では、方法は、露光されたフォトレジスト層を現像した後、且つフォトレジスト下層にパターンを転写する工程の前に、ケイ素含有層、有機反射防止コーティング層、又はこれらの組み合わせにパターンを転写する工程を更に含み得る。
【0083】
多種多様の基板がパターン形成方法において使用され得、電子デバイス基板が典型的である。適切な基板としては、例えば、マルチチップモジュールなどのパッケージング基板、フラットパネルディスプレー基板、集積回路基板、有機発光ダイオード(OLED)などの発光ダイオード(LED)用の基板、半導体ウェハー、多結晶シリコン基板等が挙げられる。適切な基板は、集積回路、光センサー、フラットパネルディスプレー、光集積回路、及びLEDの製造において使用されるものなどのウェハーの形態にあり得る。本明細書で使用される場合、用語「半導体ウェハー」は、シングルチップウェハー、マルチプルチップウェハー、様々なレベルのためのパッケージ、又ははんだ接続を必要とする他のアセンブリなどの、「電子デバイス基板」、「半導体基板」、「半導体デバイス」、及び様々なレベルの相互接続のための様々なパッケージを包含することを意図する。そのような基板は、任意の好適なサイズであってもよい。典型的なウェハー基板直径は、200mm~300mmであるが、より小さい及びより大きい直径を有するウェハーが、本発明に従って好適に用いられ得る。本明細書で使用される場合、用語「半導体基板」には、半導体デバイスの有効部分又は動作可能部分を任意選択で含み得る1つ以上の半導体層又は構造物を有する任意の基板が含まれる。半導体デバイスは、少なくとも1つのマイクロ電子デバイスがその上にバッチ製造されたか又は製造されつつある半導体基板を意味する。
【0084】
基板は、典型的には、シリコン、ポリシリコン、酸化ケイ素、窒化ケイ素、オキシ窒化ケイ素、シリコンゲルマニウム、ヒ化ガリウム、アルミニウム、サファイア、タングステン、チタン、チタン-タングステン、ニッケル、銅、及び金の1つ又はそれ以上から構成される。基板は、1つ又はそれ以上の層及びパターン化形体を含み得る。層は、例えば、アルミニウム、銅、モリブデン、タンタル、チタン、タングステン、このような金属の合金、窒化物又はケイ化物、ドープされたアモルファスシリコン又はドープされたポリシリコンの層などの1つ以上の導電層、酸化ケイ素、窒化ケイ素、オキシ窒化ケイ素、又は金属酸化物の層などの1つ以上の誘電体層、単結晶シリコンなどの半導体層、及びこれらの組み合わせを含み得る。いくつかの態様では、基板は窒化チタンを含む。層は、様々な技術、例えば、プラズマ強化CVD(PECVD)、低圧CVD(LPCVD)又はエピタキシャル成長などの化学蒸着(CVD)、スパッタリング又は蒸発などの物理蒸着(PVD)、或いは電気めっきなどによって形成することができる。
【0085】
本発明のある種のパターン形成方法においては、ハードマスク層、例えば、スピン-オン-カーボン(SOC)、無定形炭素、若しくは金属ハードマスク層、窒化ケイ素(SiN)層、酸化ケイ素(SiO)層、若しくはオキシ窒化ケイ素(SiON)層などのCVD層、有機若しくは無機BARC層、又はそれらの組み合わせなどの1つ以上のリソグラフィー層を、本発明のフォトレジスト下層を形成する前に基板の上層上に提供することが望ましくあり得る。そのような層は、本発明のフォトレジスト下層組成物の層及びフォトレジスト層と一緒に、リソグラフィー材料スタックを形成する。本発明のパターン形成方法において使用され得る典型的なリソグラフィースタックとしては、例えば、下記:SOC層/下層/フォトレジスト層;SOC層/SiON層/下層/フォトレジスト層;SOC層/SiARC層/下層/フォトレジスト層;SOC層/金属ハードマスク層/下層/フォトレジスト層;無定形炭素層/下層/フォトレジスト層;及び無定形炭素層/SiON層/下層/フォトレジスト層が挙げられる。
【0086】
本明細書で使用される「フォトレジスト下層」は、基板とフォトレジスト層との間に(すなわち「基板の上に」)配置される1つ以上の層を指すことが理解される。したがって、本発明のコーティングされた下層(すなわちフォトレジスト下層組成物の層)は、フォトレジスト下層として単独で使用することができ、或いは本発明のコーティングされた下層(すなわちフォトレジスト下層組成物の層)は、本明細書に記載のものなどの他の下層と組み合わせて使用することができる。
【0087】
フォトレジスト下層組成物は、スピンコーティング、スロットダイコーティング、ドクターブレーディング、カーテンコーティング、ローラーコーティング、噴霧コーティング、浸漬コーティング等などの、任意の好適な手段によって基板上にコートされ得る。半導体ウェハーの場合には、スピンコーティングが好ましい。典型的なスピンコーティング方法において、本組成物は、基板上に縮合ポリマーの所望の層を得るために、15~90秒の期間500~4000回転毎分(rpm)の速度で回転している基板に塗布される。コートされる層の厚さが、スピン速度、並びに組成物の固形分を変えることによって調整され得ることは、当業者によって十分理解するであろう。フォトレジスト下層組成物から形成される下層は、典型的には、1~500ナノメートル(nm)、より典型的には1~100nmの乾燥層厚さを有する。
【0088】
コーティングされたフォトレジスト下層組成物は、あらゆる溶剤及び他の比較的揮発性の成分を除去するために、比較的低い温度で任意選択的にソフトベークされる。典型的には、基板は、150℃以下、好ましくは60~125℃、より好ましくは90~115℃の温度でベークされる。ベーキング時間は、典型的には、10秒~10分、好ましくは30秒~5分、より好ましくは6~90秒である。基板がウェハーである場合、このようなベーク工程は、ウェハーをホットプレート上で加熱することによって行われ得る。そのようなソフトベーキング工程は、コーティング層の硬化の一環として行われ得るか、又は全く省略され得る。
【0089】
フォトレジスト下層組成物は、次いで、コーティングされた下層を形成するために硬化させられる。コーティング組成物は、コーティングされた下層膜が、下層上に形成される別の下層構成要素又はフォトレジスト層と混ざらないように、或いは最小限しか混ざらないように十分に硬化させる必要がある。コーティング組成物は、空気などの酸素含有雰囲気中で、又は窒素などの不活性雰囲気中で、且つ硬化したコーティング層を得るのに十分な、加熱などの条件下で硬化することができる。この硬化工程は、好ましくは、ホットプレート型装置上で行われるが、オーブン硬化が、同等の結果を得るために用いられ得る。典型的には、硬化は、150℃以上、又は150~450℃の温度で行うことができる。硬化温度が180℃以上、又は200~400℃であることがより好ましい。硬化時間は、典型的には10秒~10分、又は30秒~5分、又は45秒~2分、又は45~90秒である。
【0090】
任意選択で、傾斜又は多段階硬化プロセスが用いられ得る。傾斜ベークは、典型的には、比較的低い(例えば、周囲)温度で始まり、温度は、より高い標的温度まで一定の又は変動する傾斜速度で上げられる。多段階硬化プロセスは、2つ以上の温度平坦域、典型的には、より低いベーク温度での第1段階及びより高い温度での1つ以上の追加の段階での硬化を含む。このような傾斜又は多段階硬化プロセスのための条件は、当業者に公知であり、先行のソフトベークプロセスの省略を可能にし得る。
【0091】
塗布されたフォトレジスト下層組成物の硬化後に、塗布された下層上にフォトレジスト層が形成される。上述したように、他の介在する層は、塗布されたフォトレジスト下層とオーバーコートされたフォトレジスト層との間に設けられ得る。いくつかの態様では、方法は、フォトレジスト層を形成する前に、塗布されたフォトレジスト下層の上にケイ素含有層、有機反射防止コーティング層、又はそれらの組み合わせを形成することを更に含み得る。
【0092】
多種多様のフォトレジストを本発明の方法において適切に使用することができ、典型的にはこれはポジティブトーン材料である。使用される具体的なフォトレジストは、使用される露光波長に依存し、通常、酸感受性マトリックスポリマーと、光酸発生剤などの光活性成分と、溶剤と、任意選択の追加の成分とを含む。好適なフォトレジストは、当業者に公知であり、市販の、例えば、DuPont Electronics&Imaging製のUV(商標)及びEPIC(商標)製品系統の様々なフォトレジスト材料である。フォトレジストは、下層組成物に関連して上に記載されたような公知のコーティング技術によって基板に塗布することができ、スピンコーティングが典型的である。フォトレジスト層についての典型的な厚さは、10~300nmである。フォトレジスト層は、典型的には次に、層中の溶剤含有量を最小限にするためにソフトベークされ、それによって不粘着性コーティングを形成し、基板への層の接着性を改善する。ソフトベークは、ホットプレート上で又はオーブン中で行うことができ、ホットプレートが典型的である。典型的なフォトレジストのソフトベークは、70~150℃の温度、及び30~90秒の時間で行われる。
【0093】
フォトレジスト層は、次に、露光領域と非露光領域との間で溶解性の差を生じさせるためにフォトマスクを通して活性化放射線に露光される。組成物のために活性化する放射線にフォトレジスト組成物を露光することへの本明細書での言及は、放射線がフォトレジスト組成物に潜像を形成できることを示す。フォトマスクは、活性化放射線によって、それぞれ、露光される及び露光されないレジスト層の領域に対応する光学的に透過性領域及び光学的に不透過性領域を有する。露光波長は、典型的には、400nm未満、より典型的には、248nm(KrF)、193nm(ArF)、又はEUV波長(例えば13.5nm)などの、300nm未満である。好ましい態様において、露光波長は193nm又はEUV波長である。露光エネルギーは、例えば露光ツール及び感光性組成物の成分に応じて、典型的には、1平方センチメートル当たり10~100ミリジュール(mJ/cm)である。
【0094】
フォトレジスト層の露光に続いて、典型的には、後露光ベーク(PEB)が実行される。PEBは、例えば、ホットプレート上又はオーブン中で行うことができる。PEBは、典型的には、70~150℃の温度、及び30~90秒の時間で行われる。それにより、極性が切り替えられた領域と切り替えられていない領域(それぞれ露光領域及び非露光領域に対応する)との間の境界によって規定される潜像が形成される。フォトレジスト層は、次に、層の露光領域を除去するために現像され、パターン形成されたフォトレジスト層を形成する非露光領域を残す。現像液は、典型的には、水性のアルカリ性現像液、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)溶液、典型的には0.26規定(N)(2.38重量%)のTMAH溶液などの水酸化テトラアルキルアンモニウム溶液である。現像液は、公知の技術、例えば、スピンコーティング又はパドルコーティングによって塗布され得る。
【0095】
フォトレジスト層のパターンは、エッチングされる各層にとって適切なガス種を使用するプラズマエッチングによるなどの適切なエッチング技術によって、コーティングされた下層を含む1つ以上の下層に、及び基板に転写することができる。層の数及び関係している材料に応じて、パターン転写は、異なるエッチングガスを使用する複数のエッチング工程を含み得る。リソグラフィースタック中のパターン形成されたフォトレジスト層、コーティングされた下層、及び他の任意選択の層は、従来技術を用いて基板へのパターン転写後に除去され得る。任意選択的に、スタックの層の1つ以上は、下層へのパターン転写後に及び基板へのパターン転写前に除去され得るか、又はパターン転写中に及び基板へのパターン転写前に消費され得る。例えば、ケイ素含有層、有機反射防止コーティング層などのうちの1つ以上へのパターン転写は、露光されたフォトレジスト層が現像された後、且つコーティングされた下層へのパターン転写の前に行われ得る。基板は、次いで、電子デバイスを形成するために公知の方法に従って更に処理される。
【0096】
基板上に配置された本発明のフォトレジスト下層組成物の層と、フォトレジスト下層組成物の層上に配置された第2の層とを含むコーティングされた基板も提供される。第2の層は、本明細書に記載の任意の1つ以上の層であってよく、場合によっては、フォトレジスト下層組成物の層上に配置されたフォトレジスト層であってよい。本明細書で用いる場合、用語「硬化した層」は、組成物が基板上に配置され、その後コーティング層又は膜を形成するために硬化させられた後のフォトレジスト下層組成物から誘導された層を指し、これは単に「フォトレジスト下層」とも呼ばれる。言い換えると、フォトレジスト下層組成物を硬化させることは、フォトレジスト下層である「硬化層」を形成するということができる。
【0097】
更に別の態様は、本発明のフォトレジスト下層組成物から得られるコーティングされた下層を含む層状物品を提供する。一実施形態では、層状物品は、基板と、基板上に配置されたコーティングされた下層と、コーティングされた下層の上に配置されたフォトレジスト層とを含み得る。
【0098】
本発明のコンセプトは、非限定的であることを意図する、以下の実施例によって更に例示される。本明細書で使用される化合物及び試薬は、手順が以下に与えられている場合を除いて、市販されている。
【実施例0099】
合成実施例
ポリマーA-1の合成
【化9】

50.0gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を、温度制御ユニットを備えた250mLの3口の丸底フラスコ(RBF)に入れた。フラスコを窒素下で60℃に加熱した。N-(ブトキシメチル)アクリルアミド(BOAM、40.0g)とV-65(6.52g)をPGMEA(43.3g)に溶解させた混合溶液を調製し、これを180分かけて反応器に供給した。供給が完了した後、反応器を更に60分間60℃に維持した。次いで、反応器を撹拌しながら室温まで放冷した。反応混合物をヘプタンとMTBEとの混合物(体積で4:1)を用いて析出させた(反応混合物の体積に対して体積で10倍過剰を添加した)。溶媒を濾過によって除去し、その後析出物を真空下50℃で1日乾燥した。次いで、テトラヒドロフラン(THF)を使用して生成物の30%溶液を調製し、ヘプタンとMTBEとの混合物(体積で4:1)から析出させた。溶媒を濾過により除去し、次いで得られた析出物を真空下50℃で1日乾燥した。
【0100】
ポリマーA-2の合成
【化10】

ポリマーA-2は、BOAMの代わりにN-(ブトキシメチル)メタクリルアミド(BOMM、40.0g)を使用し、V-65開始剤の量が5.80gであったことを除いて、ポリマーA-1の調製に使用した手順と同様の手順を使用して調製した。
【0101】
ポリマーA-3の合成
【化11】

ポリマーA-3は、BOAMの代わりにN-(メトキシメチル)メタクリルアミド(MOMM、40.0g)を使用し、V-65開始剤の量が7.69gであったことを除いて、ポリマーA-1の調製に使用した手順と同様の手順を使用して調製した。
【0102】
BOMMMの合成:N-(ブトキシメチル)-N-メチルメタクリルアミド(BOMMM)
【化12】

9.78gのn-ブチルアルコール及び0.07gの4-メトキシフェノール(MEHQ)を、コンデンサーと静的液体装置とを備えた250mLの3口RBFセットに入れた。溶液温度を30℃に保ちながら、N-メタクリルアミド(29.2g)を20分かけてRBFの内容物に滴下した。試薬が溶解した後、これに水酸化ナトリウム水溶液(10%溶液)を添加し、続いて10.0gのパラホルムアルデヒドを20分かけて少しずつ添加した。得られた混合物を55℃で30分間加熱した。反応溶液を室温まで放冷した。次いで、塩酸水溶液(35%溶液)を添加することにより、pHを5~6のpHに調整した。その後、この反応溶液に0.3gのシュウ酸と52.45gのn-ブチルアルコールを添加し、静的液体装置を使用して水を抽出しながら得られた混合物を90~95℃で6.5時間加熱し、126.57gの反応溶液を得た。
【0103】
ポリマーA-4の合成
【化13】

ポリマーA-4は、BOAMの代わりにBOMMM(40.0g)を使用し、V-65開始剤の量が5.36gであったことを除いて、ポリマーA-1の調製に使用した手順と同様の手順を使用して調製した。
【0104】
BOEAMの合成:N-(1-ブトキシエチル)アクリルアミド(BOEAM)
【化14】

10.0gのn-ブチルアルコール及び0.07gの4-メトキシフェノール(MEHQ)を、コンデンサーと静的液体装置とを備えた250mLの3口RBFセットに入れた。その後、溶液温度を30℃に保ちながら、アクリルアミド(21.4g)を20分かけてRBFの内容物に滴下した。試薬が溶解した後、これに水酸化ナトリウム水溶液(10%溶液)を添加し、続いて15.0gのアセトアルデヒドを20分かけて少しずつ添加した。得られた混合物を55℃で30分間加熱した。反応溶液を室温まで放冷した。次いで、塩酸(35%溶液)を添加することにより、pHを5~6のpHに調整した。その後、この反応溶液に0.3gのシュウ酸と78.67gのn-ブチルアルコールを添加し、静的液体装置を使用して水を抽出しながら得られた混合物を90~95℃で6.5時間加熱し、119.63の反応溶液を得た。
【0105】
ポリマーA-5の合成
【化15】

ポリマーA-5は、BOAMの代わりにBOEAM(40.0g)を使用し、V-65開始剤の量が5.80gであったことを除いて、ポリマーA-1の調製に使用した手順と同様の手順を使用して調製した。
【0106】
POMAの合成:N-(フェノキシメチル)アクリルアミド(POMA)
【化16】

61.2gの脱イオン(DI)水及び0.2gのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を、コンデンサーと静的液体装置とを備えた250mLの3口RBFセットに入れた。次いで、溶液に56.4gのフェノール、42.6gのアクリルアミド、及び36.0gのパラホルムアルデヒドを添加し、得られた混合物を110℃で2時間加熱した。溶液を室温まで放冷し、次いで真空下で濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、29.0gの生成物を黄色オイルとして得た。
【0107】
ポリマーA-6の合成
【化17】

ポリマーA-6は、BOAMの代わりにPOMA(40.0g)を使用し、V-65開始剤の量が5.61gであったことを除いて、ポリマーA-1の調製に使用した手順と同様の手順を使用して調製した。
【0108】
ポリマーA-7の合成
【化18】

50.0gのPGMEAを、温度制御ユニットを備えた3口の250mLのRBFに入れた。フラスコを窒素下で60℃に加熱した。PGMEA(43.3g)に溶解させた4-ヒドロキシフェニルメタクリレート(HQMA、29.0g)と、BOAM(11.0g)と、V-65開始剤(5.78g)とを含む混合溶液を調製し、180分間かけて反応器に供給した。供給が完了した後、反応器を更に60分間60℃に維持した。次いで、反応器を撹拌しながら室温まで放冷した。反応混合物をヘプタンとMTBEとの混合物(体積で4:1)を用いて析出させた(反応混合物の体積に対して体積で10倍過剰を添加した)。溶媒を濾過によって除去し、その後析出物を真空下50℃で1日乾燥した。次いで、THFを使用して生成物の30%溶液を調製し、これをヘプタンとMTBEとの混合物(体積で4:1)から析出させた。溶媒を濾過により除去し、次いで得られた析出物を真空下50℃で1日乾燥した。
【0109】
ポリマーB-1の合成
【化19】

250mLのRBFに、46.09gのトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、21.6gのトリス(2-カルボキシエチル)イソシアヌレート、1.35gのパラ-トルエンスルホン酸一水和物、31.15gのテレフタル酸ジメチル、及び52gのアニソールを入れた。次いで、混合物を140~150℃に加熱し、内容物を激しく撹拌した。蒸留によりアニソールと共にメタノールを反応物からゆっくりと除去した。次いで、100gのHBMを添加することによってポリマー溶液を希釈した。混合物をイソプロパノールから析出させた。ポリマーを回収し、真空下40~60℃で一晩乾燥した。Mは3000g/molであり、PDIは1.4(GPC)であった。
【0110】
ポリマーB-2の合成
【化20】

250mLのRBFに、39.8gのトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、17.5gのトリス(2-カルボキシエチル)イソシアヌレート、0.73gのp-トルエンスルホン酸一水和物、32.1gのジブチルナフタレンジカルボキシレート、67gのアニソール、及び100gの1-ブタノールを入れた。次いで、混合物を140~160℃に加熱し、内容物を激しく撹拌した。蒸留によりアニソールとブタノールを反応物からゆっくりと除去した。次いで、100gのTHFを添加することによってポリマー溶液を希釈した。混合物をMTBEとイソプロパノールとの組み合わせ(体積で1:1)から析出させた。ポリマーを回収し、真空下40~60℃で12時間乾燥した。Mは3000g/molであり、PDIは1.30(GPC)であった。
【0111】
ポリマーB-3の合成
【化21】

温度制御ユニットを備えた250mLの3口RBFに、60.0gの乳酸エチルを入れた。反応器を90℃に加熱した。4-ヒドロキシフェニルメタクリレート(HQMA、40.0g)とV-601開始剤(10.34g)をシクロヘキサノン(60.0g)に溶解し、その後、この調製した混合溶液を180分かけて反応器に供給した。供給が完了した後、反応器を更に60分間90℃に維持した。次いで、反応器を撹拌しながら室温まで放冷した。MTBEとヘプタンとの混合物(体積で4:6)(体積で10倍過剰を使用)を用いて反応混合物を析出させた。デカンテーションにより溶媒を除去し、その後析出物を風乾した。得られた白色固体をTHF(120g)に溶解し、MTBEとヘプタンとの組み合わせ(体積で4:6)から析出させた。
【0112】
下層組成物
表1は、示されている量の成分を混合することによって調製した実施例1~11及び比較例1~6の下層組成物を示す。各組成物は、5mgの2,4,6-トリメチルピリジニウムp-トルエンスルホネート、4.8gのメチル-2-ヒドロキシイソブチレート、及び4.8gのPGMEAを更に含んでいた。使用の前に、溶液を孔径0.45μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターを通して濾過した。
【0113】
【表1】
【0114】
表1では以下の略語を使用した:C-1はテトラメトキシメチルグリコールウリルであり;C-2はヘキサキス(メトキシメチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミンである。
【0115】
耐溶剤性の評価
表1の各組成物をそれぞれの200mmのベアシリコンウェハー上に1500rpmでスピンコーティングし、次いで205℃で60秒間硬化させて硬化したコーティング層を膜として形成した。シリコンウェハー上の膜の初期厚さをエリプソメトリー(M2000エリプソメーター、J.A.Woolam)で測定し、次いで、30mLのPGMEAをウェハーの表面に接触させ、1分間放置してウェハーの表面に固定した。その後、ウェハーを4,000rpmで1分間スピン乾燥し、残った膜の厚さをエリプソメトリーによって測定した。その後、PGMEとの接触/スピン乾燥の前後の膜厚に基づいて、厚さの差(すなわち膜減り)を計算した。その結果を膜減り(オングストローム、Å)として表2に示す。
【0116】
昇華耐性の評価
硬化プロセス中に膜から昇華する材料の量を決定するために、ホットプレートを使用してベアシリコンウェハー上の膜を硬化するプロセス中にポリマー膜の約1cm上に配置された水晶上に凝縮する材料の量を測定する試験手順を採用した。表1の各組成物を、ポストベーク加熱ステップなしで、1500rpmでそれぞれの200mmのベアシリコンウェハー上にスピンコーティングした。硬化膜を形成するために205℃で60秒間加熱しながら、膜からの昇華をQuartz Crystal Microbalance(QCM)で測定した。硬化膜の厚さは100nmであった。その結果を硬化膜から吸収される昇華質量(μg)として表2に示す。
【0117】
硬化膜のガラス転移温度
表1の各組成物を、それぞれの200mmのベアシリコンウェハー上に1500rpmでスピンコーティングし、次いで215℃で60秒間硬化させて、厚さ900nmの膜として硬化したコーティング層を形成した。コーティングされたウェハーを2cm×2cmの断片に切断し、エリプソメーター(M2000エリプソメーター、J.A.Woollam)の加熱セルに入れた。示差走査熱量測定(DSC)を使用して、10℃/秒の速度で250℃まで加熱し、10℃/秒の速度で30℃まで冷却するサイクルを2回使用して、ガラス転移温度(T)を決定した。ガラス転移温度(T)は、Universal Analysisソフトウェアを使用して、最初の冷却プロファイルから計算した。その結果をT(℃)として表2に示す。
【0118】
【表2】
【0119】
表2から分かるように、実施例1~11のサンプルは、比較例1~6(1.1~1.5Åの膜減り)と比較して、より少ない膜減り(0.2~0.8Åの膜減り)によって証明されるより大きい耐溶剤性を達成した。得られた昇華量が0~6μgであったため、実施例1~11は昇華の影響を受けにくかった。対照的に、比較例1~6を加熱すると、33~48μgの量の昇華膜が得られた。更に、実施例1~11のそれぞれは250℃を超える膜のTを有するが、比較例1~6のいずれも231℃を超える膜のTを有しない。したがって、実施例1~11の本発明の下層組成物は、より高い膜密度を示した。
【0120】
パターンコーティングの評価
実施例1、比較例1、実施例6、及び比較例3の下層組成物を、1μmのCD及び107.7nmの深さのトレンチを有するSiO基板上にスピンコーティングし、続いて205℃で1分間加熱した。その後、光学顕微鏡を使用してパターン上の下地組成物の塗布安定性と充填性を観察した。図1A~1Dは、それぞれ実施例1、比較例1、実施例6、及び比較例3の下層組成物でコーティングされたパターンの顕微鏡画像を示す。実施例1及び実施例6の組成物のコーティング膜は、パターンに対応してよくコーティングされることが見出された。しかしながら、比較例1及び比較例3のコーティング膜ではプルバック現象が観察され、熱処理中にパターンに裂けが生じた。
【0121】
リソグラフィー性能
実施例1及び比較例1の下層組成物をシリコンウェハー上にスピンコーティングし、次いでTEL Mark8ウェハーコーティングトラックマシンを使用して205℃でベークして、底部反射防止コーティングを生成した。次に、DuPont EPIC(商標)2150フォトレジストを反射防止膜の上にスピンコートし、110℃で60秒間ベークして、厚さ170nmのフォトレジスト膜を得た。次に、フォトレジストを、0.93NA(0.82/0.53の環状設定)の193nmのArFウェハーステッパーを使用して、ターゲットマスクを通して露光した。次いで、フォトレジスト膜を115℃で60秒間露光後ベークし、その後標準的な60秒間のシングルパドルプロセスでShipley MF CD-26現像剤(2.38%のTMAH)を使用して現像した。60,000倍の走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して、レジストパターンの品質を調べた。
【0122】
図2AのSEMの結果は、実施例1及び比較例1の反射防止組成物を使用した160nmのピッチライン及びスペースパターンについて65nmのCDを示す。実施例1を底部反射防止膜として使用した場合、比較例1を使用した場合よりも良好な崩壊マージンが観察された。これは、より高い膜のTによって証明される実施例1のより高い膜密度によるものと考えられる。図2Bに示されるように、実施例6及び比較例3が下部反射防止膜として使用された場合、同じ傾向が観察された。
【0123】
本開示は、実用的で例示的な実施形態であると現在考えられるものと併せて記載されてきたが、本発明は、開示された実施形態に限定されず、むしろ、添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲内に含まれる様々な修正及び同等な取り決めを包含することを意図することが理解されるべきである。
図1A-1D】
図2A-2B】
【外国語明細書】