(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009885
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】裾調節具を有する衣服及びその使用法
(51)【国際特許分類】
A41D 1/06 20060101AFI20230113BHJP
A41D 1/14 20060101ALI20230113BHJP
A44B 99/00 20100101ALI20230113BHJP
A44B 13/00 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
A41D1/06 M
A41D1/06 501Z
A41D1/14 F
A41D1/06 502E
A41D1/14 501J
A44B99/00 601E
A44B13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021113524
(22)【出願日】2021-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000114606
【氏名又は名称】モリト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087815
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 昭二
(72)【発明者】
【氏名】酒田 明
【テーマコード(参考)】
3B100
【Fターム(参考)】
3B100AA01
3B100AE01
(57)【要約】
【課題】付着力を失いにくく、突出部分が小さく、取付部の厚みが極めて薄い裾調節具を取り付けた衣服を提供する。
【解決手段】複数の裾調節具2を取り付けた衣服1であって、前記各裾調節具2は、テープ生地22と、このテープ生地22よりも下方及び上方のいずれかに設けられた係止具21からなる。前記テープ生地22は、長手方向に対して垂直方向に設けられた複数の架橋を有し、前記係止具21は前記複数の架橋のいずれかに選択的に係合可能である。このテープ生地の架橋に対して係合可能な係止具21としては、ボタンやフックを使用することができる。テープ生地22としては、ラダーテープを使用することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の裾調節具(2,2A,2B,2C)を取り付けた衣服(1)であって、
前記各裾調節具(2,2A,2B,2C)は、テープ生地(22,22A,22B,22C)と、このテープ生地(22,22A,22B,22C)よりも下方及び上方のいずれかに設けられた係止具(21,21A,21B,21C)からなり、
前記テープ生地(22,22A,22B,22C)は、長手方向に対して垂直方向に設けられた複数の架橋(25,25A,25B,25C)を有し、
前記係止具(21,21A,21B,21C)は前記複数の架橋(25,25A,25B,25C)のいずれかに選択的に係合可能であることを特徴とする衣服(1)。
【請求項2】
前記係止具(21,21A)がボタンである請求項1記載の衣服(1)。
【請求項3】
前記係止具(21B)がフックである請求項1記載の衣服(1)。
【請求項4】
前記テープ生地(22,22A,22B,22C)が、2条の帯部分(23,23A,23B,23C)と、これらの帯部分の間に適宜間隔でスリット(24,24A,24B,24C)を形成するように配した架橋(25,25A,25B,25C)とから構成されているラダーテープである請求項1~3のいずれかに記載の衣服。
【請求項5】
衣服(1)がズボン、スカート、キュロット、着物の内のいずれかである請求項1~4のいずれかに記載の衣服(1)。
【請求項6】
複数の裾調節具(2,2A,2B,2C)を取り付けた衣服(1)における、前記裾調節具(2,2A,2B,2C)の使用法であって、
前記各裾調節具(2,2A,2B,2C)として、テープ生地(22,22A,22B,22C)と、このテープ生地(22,22A,22B,22C)よりも下方及び上方のいずれかに設けられた係止具(21,21A,21B,22C)からなり、前記テープ生地(22,22A,22B,22C)は、長手方向に対して垂直方向に設けられた複数の架橋(25,25A,25B,25C)を有し、前記係止具(21,21A,21B,21C)は前記複数の架橋(25,25A,25B,25C)のいずれかに選択的に係合可能であるものを用意する工程と、
前記複数の架橋のいずれかに対して前記係止具(21,21A,21B,21C)を選択的に係止させることにより、裾の長さを微調節する工程と、
を有することを特徴とする裾調節具(2,2A,2B)の使用法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は裾調節具を有する衣服及びその使用法に関する。衣服としては、例えば、ズボン、スカート、キュロット、着物、等に使用可能である。以下では、ズボンを例にして説明する。
【背景技術】
【0002】
ズボンの裾の長さ調節は、一般に、裾の長さを適正位置に調整した後、糸を使用して裾部分を縫い込むことにより行っている。しかし、成長期の子供が着用するズボンや貸衣装など複数の人が使用するズボンなどの場合、頻繁に裾の長さ調節が必要となるが、そのたびに裾の長さを調整して糸で縫うのは面倒である。また、そのようにして裾の長さ調整を繰り返し行なうと次第に布地を傷めてしまう。
【0003】
この問題を解決するため、複数のファスナ片をズボンの裾周辺の内側に取り付けるという考案が公知である。付着したファスナ片同士を外して裾の長さを調整し、その後、再び付着させることにより、簡便に裾の調節をすることができる。ファスナ片としては、フックとループからなる面ファスナ(例えば、特開平9-316709号)、糸付ボタン(例えば、意匠登録第1457830号)、スナップファスナ(例えば、特開2002―115112)などがある。本発明者も、円柱状突起を表面に多数有する面ファスナを提案したことがある(特開2018-35457)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-316709号
【特許文献2】意匠登録第1457830号
【特許文献3】特開2002―115112
【特許文献4】特開2018―35457
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ズボンの裾周辺は埃などがたまりやすいので、フックとループからなる面ファスナは埃などの付着により付着力を失いやすい。糸付ボタンやスナップファスナは比較的に大きな突起物(ボタン、スナップファスナ)が突出するので、身体に接触すると異物感をもたらしやすいし、ファスナ片同士の間隔が広いので、細かなサイズ調節が困難である多数の円柱状突起からなる面ファスナはブロック状となるので取付部が厚くなりやすい。
【0006】
本発明は、これらの問題を解決するために行われたもので、付着力を失いにくく、突出部分が小さく、取付部の厚みが極めて薄く、細かいピッチでサイズ調節が可能な裾調節具を取り付けた衣服(例えばズボン)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明は、複数の裾調節具2を取り付けた衣服1であって、前記各裾調節具2は、テープ生地22と、このテープ生地22よりも下方及び上方のいずれかに設けられた係止具からなり、前記テープ生地22は、長手方向に対して垂直方向に設けられた複数の架橋を有し、前記係止具は前記複数の架橋のいずれかに選択的に係合可能であることを特徴とする。
【0008】
長手方向に対して垂直方向に設けられた複数の架橋を有するテープ生地としては、例えば「ラダーテープ」(特開平9-95838)として公知の製品を使用することができる。
【0009】
このテープ生地の架橋に対して係合可能な係止具としては、フック(ホック)やボタンが使用することができる。
【0010】
本発明は、複数の裾調節具2を取り付けた衣服1における、前記裾調節具2の使用法を含む。この方法においては、前記各裾調節具2は、テープ生地22と、このテープ生地22よりも下方及び上方のいずれかに設けられた係止具からなり、前記テープ生地22は、長手方向に対して垂直方向に設けられた複数の架橋を有し、前記係止具は前記複数の架橋のいずれかに選択的に係合可能であるものを用意する工程と、前記複数の架橋のいずれかに対して前記係止具を係止させることにより、裾の長さを微調節する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、裾調節具の係止具として、複数の架橋を有するテープ生地22と、このテープ生地22から離れた位置にある係止具21を使用する。前記係止具は前記複数の架橋のいずれかに選択的に係合可能なので、人為的に裾の長さを微調節したあとで、その調節済み位置を固定することができる。
【0012】
本発明の使用法によれば、複数の架橋の中から上方向又は下方向に変更選択してから係止具を係止させることにより、裾の長さを正確に微調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例1に係る裾調節具を取り付けたズボンを裏返してみた状態の斜視図である。
【
図2】
図1の裾調節具の(a)平面図、(b)右側面図、(c)正面図、(d)左側面図、(e)底面図、(f)背面図である。
【
図3】(a)
図2のA-A、B―B線拡大図、(b)
図3(a)のC-C線拡大断面図である。
【
図4】裾調節具の(a)裾上げ前の断面図、(b)裾上げ後の断面図である。
【
図6】本発明の実施例2に係る裾調節具の(a)正面図、(b)
図6(a)のF-F線拡大断面図である。
【
図7】本発明の実施例3に係る裾調節具の(a)正面図、(b)
図7(a)のG-G線拡大断面図である。
【
図8】本発明の実施例4に係る裾調節具の(a)正面図、(b)
図8(a)のH-H線拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面に基づいて本発明の実施例をいくつか説明する。
【実施例0015】
図1及び
図2(ズボン1の表裏を裏返して描いている)に示すように、裾調節具2はズボン1の左右筒部11,11の裾部12に取り付けられる。一般には、外部から見えないように内側の脇縫い部13に1つずつ合計4つ取り付けられることが多いが、その数や取付位置は必要に応じて変更することができる。
【0016】
図3~
図5に示すように、各裾調節具2は2つの部品からなる。1つは裾の折り返し部20に設けられた係止具21であり、もう1つは裾の周辺部に設けられたテープ生地22である。テープ生地22には、長手方向に対して垂直方向に設けられた複数の架橋が設定される。
【0017】
係止具21として、実施例1では直径9~11mmの丸ボタンを使用している。この丸ボタンは裾の折り返し部20に糸付けされている。
【0018】
長手方向に対して垂直方向に設けられた複数の架橋を有するテープ生地22としては、それ自体公知の「ラダーテープ」(特開平9-95838)と呼ばれる梯子状のテープを使用することができる。
【0019】
このテープ生地22は、2条の帯部分23と、これらの帯部分23の間に適宜間隔でスリット24を形成するように配した架橋25と、から構成されているものである。素材はポリエステル繊維その他の合成繊維である。
【0020】
このテープ生地22をズボン1に取り付けるには帯部分23を利用してズボン1の脇縫い部13に対して糸26でミシン縫いしている。テープ22の取付位置は裾の末端から、折り返し部20を除き、脇縫い部13に沿って上方向に延びるように配置する。
【0021】
使用するテープ生地22の各寸法は、取付対象の生地や使用するボタンの大きさに応じて適当に調節することができる。この実施例では、長手方向のテープ長さは100~250mm、幅は20~30mmであった。2条の帯部分23のそれぞれの幅は5~9mmであり、架橋25の長さ(各スリット24の長さ)は10~12mm、架橋25間の間隔(各スリット24の高さ)は2~4mmであった。
【0022】
テープ生地22としてのラダーテープの製法は、その一例が前記公報の[0007]~[0009]、[
図1]~[
図3]に記載されているので参照されたい。概略を説明すると、上記帯部分23は、数本(例えば17本)の経糸と緯糸から織成されている。上記架橋25は、帯部分23の緯糸を8本(4組)ずつ絞り込んで、その間にスリット24を形成している。この緯糸の絞り込みは、帯部分の内側に沿って織り込んだ4本の絞用経糸と、この絞用経糸に絡むように織り込まれた搦糸により行われる。上記4本の絞用経糸は、上記8本(4組)の緯糸との間で交互に織り込まれ、これらの4本の絞用経糸に絡むように、搦糸を左右に転じさせながら交差させる。
【0023】
使用方法は、ズボン1の裾12の長さを人為的に調節し、適当と考える位置において、ボタン21を架橋25の間のスリット24にはめ込むだけでよい。
図4(a)の状態から
図4(b)の状態にする。ちょうどボタンを衣服のボタン穴に通して固定するようなものである。調節作業は裾を折り返して裏面を表側に出してテープ生地22を見ながら行えば容易である。ボタン21はスリット24から意識的に取り出すのでなければスリット24から抜け出ることはできず、その位置で固定される。それに伴い裾の位置も固定される。
使用方法は、脚つきボタン21Aの脚部を架橋25Aに引っ掛けるだけである。脚つきボタン21Aは架橋25Aから意識的に外さなければ架橋25Aから外すことはできず、その位置で固定される。それに伴い裾の位置も固定される。