IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイアベループの特許一覧

特開2023-98861予測モデルによって決定される主な予測的出力の信頼度を評価するためのコンピュータ化された方法
<>
  • 特開-予測モデルによって決定される主な予測的出力の信頼度を評価するためのコンピュータ化された方法 図1
  • 特開-予測モデルによって決定される主な予測的出力の信頼度を評価するためのコンピュータ化された方法 図2
  • 特開-予測モデルによって決定される主な予測的出力の信頼度を評価するためのコンピュータ化された方法 図3
  • 特開-予測モデルによって決定される主な予測的出力の信頼度を評価するためのコンピュータ化された方法 図4
  • 特開-予測モデルによって決定される主な予測的出力の信頼度を評価するためのコンピュータ化された方法 図5
  • 特開-予測モデルによって決定される主な予測的出力の信頼度を評価するためのコンピュータ化された方法 図6
  • 特開-予測モデルによって決定される主な予測的出力の信頼度を評価するためのコンピュータ化された方法 図7
  • 特開-予測モデルによって決定される主な予測的出力の信頼度を評価するためのコンピュータ化された方法 図8
  • 特開-予測モデルによって決定される主な予測的出力の信頼度を評価するためのコンピュータ化された方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098861
(43)【公開日】2023-07-11
(54)【発明の名称】予測モデルによって決定される主な予測的出力の信頼度を評価するためのコンピュータ化された方法
(51)【国際特許分類】
   G06N 20/00 20190101AFI20230704BHJP
   G06N 3/044 20230101ALI20230704BHJP
   A61B 5/145 20060101ALI20230704BHJP
   A61M 5/172 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
G06N20/00
G06N3/044
A61B5/145
A61M5/172 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022210463
(22)【出願日】2022-12-27
(31)【優先権主張番号】21218042
(32)【優先日】2021-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】520023949
【氏名又は名称】ダイアベループ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】エクトル・ロメロ・ウガルデ
(72)【発明者】
【氏名】ローラン・ドーデ
【テーマコード(参考)】
4C038
4C066
【Fターム(参考)】
4C038KK10
4C038KL07
4C038KL09
4C038KM03
4C038KX02
4C066AA07
4C066BB01
4C066CC01
4C066FF01
4C066FF04
4C066QQ41
4C066QQ82
(57)【要約】      (修正有)
【課題】予測モデルによって決定される主な予測的出力の信頼度を評価するためのコンピュータ化された方法を提供する。
【解決手段】予測時間モデルが、時間ベースのシステムを表す実際の時間ベースのデータに基づいて、所定の将来の時点に関するシステムの特性を表す時間ベースのパラメータに関する予測的出力を決定するように適合された方法であって、所定の主な将来の時点に関する予測データである主な予測的出力を現在の時点で行い、予測モジュールが、主な予測的出力、主な将来の時点に先立つ少なくとも1つの将来の中間の時点での少なくとも1つの中間予測データを決定し、比較モジュールが、将来の中間の時点で、中間予測データと、実際のデータとの間の比較スコアを決定し、信頼度評価モジュールが、信頼時点で、比較スコアに基づいて信頼度評価方法に従って少なくとも1つの主な時間ベースの予測的出力の信頼度を割り振るかまたは否定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間的予測モデルによって決定される少なくとも1つの主な予測的出力の信頼度を評価するためのコンピュータ化された方法であって、
前記モデルが、時間ベースのシステムを表す実際の時間ベースのデータに基づいて、所定の将来の時点に関する前記時間ベースのシステムの特性を表す時間ベースのパラメータに関する予測的出力を決定するように適合され、
前記主な予測的出力が、所定の主な将来の時点に関する予測データであり、
前記主な予測的出力が、現在の時点で行われ、
方法が、以下、すなわち、
- コンピュータ化された予測モジュールが、
- 前記主な予測的出力、
- 前記主な将来の時点に先立つ少なくとも1つの将来の中間の時点での少なくとも1つの中間予測データ
を決定するために前記モデルを実施し、
- 前記少なくとも1つの将来の中間の時点で、コンピュータ化された比較モジュールが、
前記少なくとも1つの中間予測データと、前記中間の将来の時点での前記時間ベースのシステムを表す実際のデータと
の間の比較スコアを決定し、
- 信頼時点で、コンピュータ化された信頼度評価モジュールが、前記比較モジュールによって決定された前記比較スコアに基づいて信頼度評価方法に従って少なくとも1つの主な時間ベースの予測的出力の信頼度を割り振るかまたは否定することを含む、方法。
【請求項2】
- 前記時間的予測モデルが、少なくとも実際の測定された血糖に基づいて予測的出力血糖を決定するように適合されたモデルであり、
- 時間ベースのシステムを表す前記時間ベースのパラメータが、持続血糖モニタリングシステムによって測定された血糖である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記時間的予測モデルが、前記予測的出力が行われる前記現在の時点で考慮される以下のパラメータ、すなわち、
- 送達インスリン量パラメータ、
- 送達炭水化物量パラメータ、
- インスリン感受性因子パラメータ、または
- 炭水化物対インスリン比パラメータ
のうちの少なくとも1つにさらに基づいて、前記予測的出力血糖のいずれかを決定するように適合されたモデルである請求項2に記載の方法。
【請求項4】
- 前記予測モジュールが、前記主な将来の時点に先立ついくつかの将来の中間の時点でのいくつかの中間予測データを決定するために前記モデルを実施し、
- 所定の数の予測の後に、前記比較モジュールが、
一部の中間予測データと一部の対応する実際の時点のデータと
の間の比較スコアを決定し、
- 信頼度モジュールが、決定された前記比較スコアに基づいて、主な時間的予測データ出力の信頼度を割り振るかまたは否定する請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
- 前記予測モジュールが、前記主な将来の時点に先立ついくつかの将来の中間の時点でのいくつかの中間予測データを決定するために前記モデルを実施し、
- それぞれの一定の時間間隔の後に、前記比較モジュールが、
前記現在の時点に対応する少なくとも1つの中間予測データと、前記時間ベースのシステムを表す対応する実際の現在の時点のデータとの間、および/または
少なくとも2つの異なる時点で作成された前記現在の時点に対応する中間予測データの間
の比較スコアを決定し、
- 所定の数の予測の後に、信頼度モジュールが、決定された前記比較スコアに基づいて、主な時間的予測データ出力の信頼度を割り振るかまたは否定する請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
- 前記予測モジュールが、前記主な将来の時点に先立ついくつかの将来の中間の時点でのいくつかの中間予測データを決定するために前記モデルを実施し、
- それぞれの中間の時点で、コンピュータ化された信頼度モジュールが、前記比較モジュールによって決定された前記中間の時点の前記比較スコアに基づいて信頼度評価方法に従って前記主な時間ベースの予測的出力の信頼度を一時的に割り振るかまたは前記信頼度を確定的に否定し、
- 最後の中間の時点において、前記コンピュータ化された信頼度モジュールが、前記比較モジュールによって決定された前記最後の中間の時点の前記比較スコアに基づいて信頼度評価方法に従って前記主な時間ベースの予測的出力の信頼度を確定的に割り振るかまたは前記信頼度を確定的に否定する請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
- 前記予測モジュールが、前記主な将来の時点に先立ついくつかの将来の中間の時点でのいくつかの中間予測データを決定するために前記モデルを実施し、
- ある時点で、前記比較モジュールが、異なる過去の時点で作成された少なくとも2つの中間予測データに関する比較スコアを決定し、
各中間予測データが、前記時点に関する予測データであり、
- モジュールが、決定された前記比較スコアに基づいて、主な時間的予測データ出力の信頼度を割り振るかまたは否定する請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
- 前記比較モジュールによって決定された前記比較スコアが、集約方法に従って集約された比較スコアに集約され、
- コンピュータ化された信頼度モジュールが、前記集約された比較スコアに基づいて主な時間的予測データ出力の信頼度を評価する請求項5から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記主な将来の時点に先立つ将来の時点が、以下の分布、すなわち、
- 所定の一定の時間間隔に従った経時的な線形分布、
- 二次分布、
- それぞれの将来の時点が前記主な将来の時点までの継続時間の所定のパーセンテージに対応する分布
のうちの1つに従って分布させられる請求項4から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
比較方法が、以下、すなわち、
- 絶対誤差比較法
- 勾配差比較法
- 二乗平均平方根誤差比較法
- 加速度または二階導関数差分法、または、
- 上記方法の組合せ
のうちの1つである請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
- 前記信頼時点で、前記コンピュータ化された信頼度評価モジュールが、前記比較モジュールによって決定された前記比較スコアに基づいて前記信頼度評価方法に従って前記主な時間ベースの予測的出力の信頼度を割り振る場合、
- 一時的な信頼度が前記時間的予測モデルに割り振られ、それから
- 前記コンピュータ化された予測モジュールが、信頼度がすでに割り振られている少なくとも1つのその他の主な予測的出力を決定するために前記モデルを実施する請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
以下、すなわち、
- 前記主な予測的出力の前記信頼時点に先立つ1つのその他の最初の時点で、前記コンピュータ化された予測モジュールが、
- 前記主な予測的出力と異なる1つのその他の主な予測的出力、
- 1つのその他の主な将来の時点に先立つ少なくとも1つのその他の将来の中間の時点での少なくとも1つのその他の中間予測データ
を決定するために前記モデルを実施し、
1つの将来の中間の時点が、1つのその他の将来の中間の時点に先立ち、
- 前記少なくとも1つのその他の将来の中間の時点で、前記コンピュータ化された比較モジュールが、
前記少なくとも1つのその他の中間予測データと、前記1つのその他の中間の将来の時点での前記時間ベースのシステムを表す別の実際のデータと
の間の1つのその他の比較スコアを決定し、
一時的な信頼度が、前記主な予測的出力の割り振られた前記信頼度に従って前記時間的予測モデルに割り振られ、
1つのその他の信頼時点で、前記コンピュータ化された信頼度評価モジュールが、前記比較モジュールによって決定された前記1つのその他の比較スコアに基づいて信頼度評価方法に従って1つのその他の主な時間ベースの予測的出力の信頼度を否定する場合、
前記時間的予測モデルに割り振られた一時的な信頼度が失効することをさらに含む請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
システムを制御するための方法であって、
- コンピュータ化されたモジュールが、時間的予測モデルによって決定された少なくとも1つの主な予測的出力に対して請求項1から12のいずれか一項に記載のコンピュータ化された方法を実施し、
- 前記信頼時点で、前記コンピュータ化された信頼度評価モジュールが、前記比較モジュールによって決定された前記比較スコアに基づいて前記信頼度評価方法に従って前記主な時間ベースの予測的出力の信頼度を割り振る場合、
- 前記システムの能動システムが、前記主な予測的出力に従って制御され、
- 別のコンピュータ化されたモジュールが、前記主な予測出力に対して実施され、および/または
- 一時的な信頼度が、前記時間的予測モデルに割り振られる、方法。
【請求項14】
時間的予測モデルによって決定される少なくとも1つの主な予測的出力の信頼度を評価するためのコンピュータ化されたシステムであって、
前記モデルが、時間ベースのシステムを表す実際の時間ベースのデータに基づいて、所定の将来の時点に関する前記時間ベースのシステムの特性を表す時間ベースのパラメータに関する予測的出力を決定するように適合され、
前記主な予測的出力が、所定の主な将来の時点に関する予測データであり、
前記主な予測的出力が、現在の時点で行われ、
システムが、以下、すなわち、
- コンピュータ化された予測モジュールであって、
- 前記主な予測的出力、
- 前記主な将来の時点に先立つ少なくとも1つの将来の中間の時点での少なくとも1つの中間予測データ
を決定するために前記モデルを実施するように適合された、コンピュータ化された予測モジュール、
- 前記少なくとも1つの将来の中間の時点で、
前記少なくとも1つの中間予測データと、前記中間の将来の時点での前記時間ベースのシステムを表す実際のデータと
の間の比較スコアを決定するように適合されたコンピュータ化された比較モジュール、
- 信頼時点で、前記比較モジュールによって決定された前記比較スコアに基づいて信頼度評価方法に従って少なくとも1つの主な時間ベースの予測的出力の信頼度を割り振るかまたは否定するように適合されたコンピュータ化された信頼度評価モジュールを含む、システム。
【請求項15】
時間的予測モデルによって決定された少なくとも1つの主な予測的出力の信頼度を評価するためのコンピュータプログラムであって、プロセッサ上で実行されるときに、前記プロセッサに請求項1から13のいずれか一項に記載の方法を実施させるように適合される、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、深層学習または機械学習モデルによって決定された主な予測的出力の信頼度を評価するためのコンピュータ化された方法の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
より正確には、本発明は、時間ベースのシステムを表す時間ベースのパラメータに関する予測的出力の信頼度の評価に関する。
【0003】
たとえば、本発明は、ヘルスケアの分野、特に、糖尿病の分野で使用され得るが、この用途に限定されない。
【0004】
糖尿病の分野においては、血糖の濃度を評価し、測定された濃度に応じてある量のインスリンを注射することが知られている。最近、患者のデータに基づいて、注射されるインスリンのボリュームレート(volume rate)を評価し、この評価に基づいてインスリンの注射を制御するようにプロセッサがプログラミングされる、いわゆる「閉ループ」システムが開発された。さらに、プロセッサは、ある特別な状況、特に食事において注射されるインスリンの量を評価するようにプログラミングされ得る。量は、患者の承認を条件に、患者に注射され得る。そのようなシステムは、これらの特別な状況の一部の患者による宣言が必要であるので、「準閉ループ(semi closed-loop)」とも呼ばれる。
【0005】
血糖の測定された濃度は、多くの場合、血糖の将来の濃度を予測するために使用される。したがって、この予測は、血糖の濃度を許容区間内に維持するために注射されなければならないインスリンの量を計算するために使用される。
【0006】
将来の血糖の誤った予測は、計算されるインスリンの不適切な量につながり、許容できない区間内の血糖の濃度につながり得る。
【0007】
それが、例において、血糖の将来の濃度の予測の信頼度を評価する必要がある理由である。
【0008】
同様に、所与の時間ベースのシステムに関して、時間的な予測は、多くの場合、(時間ベースのシステムの文脈で)長期的に、ときには、短期的にさえも精度を欠く。
【0009】
それが、時間的な予測の信頼度を評価する必要がある理由である。
【0010】
血糖の濃度の例に従えば、いくつかの方法が、この必要性に対処するために考えられた。これらの方法は、医学分野に関係するだけでなく、様々な産業分野にも応用されてきた。
【0011】
たとえば、[GHOSHALら、2021] GHOSHAL、Biraja、TUCKER, Allan、SANGHERA, Balら、「Estimating uncertainty in deep learning for reporting confidence to clinicians in medical image segmentation and diseases detection」、Computational Intelligence、2021、第37巻、第2号、p.701~734において、著者は、ニューラルネットワークにおいてドロップウェイト(drop weights)を使用してベイズニューラルネットワークを近似する。ドロップウェイト手法は、ベルヌーイ分布に従ってニューラルネットワークの接続を抑制することからなる。
【0012】
[GHOSHALら、2021]において、推論は、T回繰り返されるべきであり、古典的な深層学習モデルと比較して、さらなる計算コストを必要とする。
【0013】
上記の方法は、ベイズニューラルネットワークと比較して、必要とされるハイパーパラメータを減らし、計算を向上させる。しかし、推論をT回繰り返すことは、古典的な深層学習モデルと比較して、さらなる計算コストをやはり必要とする。
【0014】
[PAPERNOTら、2018] PAPERNOT, NicolasおよびMCDANIEL, Patrick、「Deep k-nearest neighbors: Towards confident, interpretable and robust deep learning」、arXiv査読前論文arXiv:1803.04765、2018において、著者は、k近傍アルゴリズムを深層ニューラルネットワーク(DNN)の各層によって学習されるデータの表現と組み合わせるハイブリッド分類器である深層k近傍法(DkNN: Deep k-Nearest Neighbors)を導入した。テスト入力は、その近隣の訓練点と、表現内でそれらを隔てる距離によって比較される。この近傍点のラベルは、敵対的な例(adversarial example)のような悪意のある入力に関するものも含む、モデルの訓練コレクタ(training collector)外の入力に関する信頼度の推定値を提供し、その中で、モデルの理解を超える入力に対する保護を提供する。
【0015】
通常大きい訓練セット内でテストの入力のすべての近傍を見つけるための計算コストが、この方法の欠点である。各訓練点に関する各層のすべての出力が記憶されるべきであるので、大きなメモリが必要とされる。
【0016】
したがって、[PAPERNOTら、2018]においては、所与の予測の信頼度が評価されるたびに、すべての近傍が訓練セット内で見つけられるべきである。訓練セットが大きい場合、計算時間が長くなる。さらに、各訓練点に関する各層のすべての出力が記憶されるべきであるので、大きなメモリが必要とされる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Roman Hovorkaらによる「Nonlinear model predictive control of glucose concentration in subjects with type 1 diabetes」(Phiol Meas.、2004; 25: 905-920)
【非特許文献2】Roman Hovorkaらによる「Partitioning glucose distribution/transport, disposal, and endogenous production during IVGTT」(Physical Endocrinol Metab 282: E992-E1007、2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、本発明は、時間的な予測の信頼度を評価する技術的問題を踏まえて、以前の方法の欠点を解決し、多種多様な技術分野で使用可能な解決策を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
したがって、本発明は、時間的予測モデルによって決定される少なくとも1つの主な予測的出力の信頼度を評価するためのコンピュータ化された方法であって、
モデルが、時間ベースのシステムを表す実際の時間ベースのデータに基づいて、所定の将来の時点に関する時間ベースのシステムの特性を表す時間ベースのパラメータに関する予測的出力を決定するように適合され、
主な予測的出力が、所定の主な将来の時点に関する予測データであり、
主な予測的出力が、現在の時点で行われ、
方法が、以下、すなわち、
- コンピュータ化された予測モジュールが、
- 主な予測的出力、
- 主な将来の時点に先立つ少なくとも1つの将来の中間の時点での少なくとも1つの中間予測データ
を決定するためにモデルを実施し、
- 前記少なくとも1つの将来の中間の時点で、コンピュータ化された比較モジュールが、
少なくとも1つの中間予測データと、前記中間の将来の時点での時間ベースのシステムを表す実際のデータと
の間の比較スコアを決定し、
- 信頼時点(confidence time point)で、コンピュータ化された信頼度評価モジュールが、比較モジュールによって決定された比較スコアに基づいて信頼度評価方法に従って少なくとも1つの主な時間ベースの予測的出力の信頼度を割り振るかまたは否定することを含む、方法に関する。
【0020】
信頼度評価モジュールが主な予測的出力、すなわち、主な予測の信頼度を割り振る場合、主な予測的出力が、安全使用され得る。
【0021】
たとえば、第1のコンピュータ化されたモジュールの出力が第2のコンピュータ化されたモジュールの入力であることが多いので、そのとき、信頼度評価モジュールが主な予測の信頼度を割り振る場合、後者は、総合的システム(general system)の別のモジュールによって入力として使用され得る。
【0022】
別のモジュールは、別のアルゴリズムのモジュール、または総合的システムの特性の制御を直接担当するモジュールであることが可能である。
【0023】
例として、特性は、物理的特性である。特性は、生理学的、生物学的、または化学的特性でもあり得る。反対に、信頼度が否定される場合、主な予測的出力は、総合的システムのいかなるその他のモジュールによっても使用されない。
【0024】
主な予測的出力の割り振られた信頼度の別の「使用」は、予測モデル全体の一時的な信頼度である可能性がある。たとえば、現在の主な予測の信頼度が割り振られると、予測モデルの信頼度が割り振られ、したがって、次の主な予測的出力の信頼度は評価されなくても構わないと考えることが可能である。
【0025】
結果として、予測的出力は、計算された後、直ちに使用される。これは、時間の獲得を表す。
【0026】
代替的な実施形態において、コンピュータ化された予測モジュールは、主な予測的出力を決定するために第1のモデルを実施し、コンピュータ化された予測モジュールは、主な将来の時点に先立つ少なくとも1つの将来の中間の時点での少なくとも1つの中間予測データを決定するために第2の異なるモデルを実施する。
【0027】
言い換えると、この代替的な実施形態において、本発明は、第1の時間的予測モデルによって決定される少なくとも1つの主な予測的出力の信頼度を評価するためのコンピュータ化された方法であって、
第1のモデルが、時間ベースのシステムを表す実際の時間ベースのデータに基づいて、所定の将来の時点に関する時間ベースのシステムの特性を表す時間ベースのパラメータに関する予測的出力を決定するように適合され、
主な予測的出力が、所定の主な将来の時点に関する予測データであり、
主な予測的出力が、現在の時点で行われ、
方法が、以下、すなわち、
- コンピュータ化された予測モジュールが、
主な予測的出力を決定するための第1のモデル、および
主な将来の時点に先立つ少なくとも1つの将来の中間の時点での少なくとも1つの中間予測データを決定するために、時間ベースのシステムを表す実際の時間ベースのデータに基づいて、所定の将来の時点に関する時間ベースのシステムの特性を表す時間ベースのパラメータに関する予測的出力を決定するよう適合された、第1のモデルとは異なる第2のモデル
を実施し、
- 前記少なくとも1つの将来の中間の時点で、コンピュータ化された比較モジュールが、
少なくとも1つの中間予測データと、前記中間の将来の時点での時間ベースのシステムを表す実際のデータと
の間の比較スコアを決定し、
- 信頼時点で、コンピュータ化された信頼度評価モジュールが、比較モジュールによって決定された比較スコアに基づいて信頼度評価方法に従って少なくとも1つの主な時間ベースの予測的出力の信頼度を割り振るかまたは否定することを含む、方法に関する。
【0028】
一実施形態において、時間的予測モデルは、少なくとも実際の測定された血糖に基づいて予測的出力血糖を決定するように適合されたモデルであり、時間ベースのシステムを表す時間ベースのパラメータは、持続血糖モニタリング(continuous glycemia monitoring)システムによって測定された血糖である。
【0029】
一実施形態において、時間的予測モデルは、予測的出力が行われる現在の時点で考慮される以下のパラメータ、すなわち、
- 送達インスリン量パラメータ(insulin quantity delivered parameter)、
- 取り込み炭水化物量パラメータ(carbohydrate quantity ingested parameter)、
- インスリン感受性因子パラメータ(Insulin Sensitivity Factor parameter)、または
- 炭水化物対インスリン比パラメータ
のうちの少なくとも1つにさらに基づいて、予測的出力血糖のいずれかを決定するように適合されたモデルである。
【0030】
一実施形態において、予測モジュールは、主な将来の時点に先立ついくつかの将来の中間の時点でのいくつかの中間予測データを決定するためにモデルを実施し、
- 所定の数の予測の後、比較モジュールは、一部の中間予測データと一部の対応する実際の時点のデータとの間の比較スコアを決定し、
- 信頼度モジュールは、決定された比較スコアに基づいて、主な時間的予測データ出力の信頼度を割り振るかまたは否定する。
【0031】
好ましい実施形態において、比較モジュールは、すべての中間予測データとすべての対応する実際の時点のデータとの間の比較スコアを決定する。
【0032】
一実施形態において、予測モジュールは、主な将来の時点に先立ついくつかの将来の中間の時点でのいくつかの中間予測データを決定するためにモデルを実施し、
- それぞれの一定の時間間隔の後のそれぞれの将来の中間の時点で、比較モジュールは、
現在の時点に対応するそれぞれの少なくとも1つの中間予測データと、時間ベースのシステムを表すそれぞれの対応する時間ベースのパラメータ、時間ベースのシステムを表す実際の現在の時点のデータとの間、および/または
少なくとも2つの異なる時点で作成された現在の時点に対応する中間予測データの間
の比較スコアを決定し、
- 所定の数の予測の後に、信頼度モジュールは、決定された比較スコアに基づいて、主な時間的予測データ出力の信頼度を割り振るかまたは否定する。
【0033】
一実施形態において、予測モジュールは、主な将来の時点に先立ついくつかの将来の中間の時点でのいくつかの中間予測データを決定するためにモデルを実施し、それぞれの中間の時点で、コンピュータ化された信頼度モジュールは、比較モジュールによって決定された中間の時点の比較スコアに基づいて信頼度評価方法に従って、主な時間ベースの予測的出力の信頼度を一時的に割り振るかまたは信頼度を確定的に否定する。
最後の中間の時点において、コンピュータ化された信頼度モジュールは、比較モジュールによって決定された最後の中間の時点の比較スコアに基づいて信頼度評価方法に従って主な時間ベースの予測的出力の信頼度を確定的に割り振るかまたは信頼度を確定的に否定する。
【0034】
一実施形態において、予測モジュールは、主な将来の時点に先立ついくつかの将来の中間の時点でのいくつかの中間予測データを決定するためにモデルを実施し、ある時点で、比較モジュールは、異なる過去の時点で作成された少なくとも2つの中間予測データに関する比較スコアを決定し、各中間予測データは、時点に関する予測データであり、モジュールは、決定された比較スコアに基づいて、主な時間的予測データ出力の信頼度を割り振るかまたは否定する。
【0035】
一実施形態において、比較モジュールによって決定された比較スコアは、集約方法に従って集約された比較スコアに集約され、コンピュータ化された信頼度モジュールは、集約された比較スコアに基づいて主な時間的予測データ出力の信頼度を評価する。
【0036】
一実施形態において、該当する場合、主な将来の時点に先立つ将来の時点は、以下の分布、すなわち、
- 所定の一定の時間間隔に従った経時的な線形分布、
- 二次分布(quadratic distribution)、
- それぞれの将来の時点が主な将来の時点までの継続時間の所定のパーセンテージに対応する分布
のうちの1つに従って分布させられる。
【0037】
一実施形態において、比較方法は、以下、すなわち、
- 絶対誤差比較法、
- 勾配差比較法、
- 二乗平均平方根誤差比較法、
- 加速度または二階導関数差分法(acceleration or double derivative difference method)、または、上記方法の組合せ
のうちの1つである。
【0038】
一実施形態において、信頼度評価方法は、比較スコアと所定の閾値との比較である。
【0039】
別の例においては、様々な閾値が設定され得る。これらの閾値の各々は、主な予測の信頼度のレベル、すなわち、信頼度なし、信頼度低、信頼度高、確実を定義する。
【0040】
その他の信頼度の方法(confidence method)が、実施され得る。
【0041】
たとえば、主な予測の信頼度のパーセンテージを出力する、エントリデータとしての勾配差比較、絶対誤差比較、および/またはRMSE比較の上に実装された信頼度モデルを作成することが可能である。この実施形態において、信頼度の方法は、信頼度モデルを実施することからなる。
【0042】
信頼度のパーセンテージは、決定された比較スコア、または異なる比較方法によって決定された様々な比較スコアの組合せに基づいて決定され得る。
【0043】
一実施形態において、主な時間的な予測は、30分、35分、40分、45分、50分、55分、1時間、65分、70分、75分、80分、85分、90分までの予測であり、予測モジュールは、以下の中間の時間的な予測、すなわち、5、10、15、20、30、35、40分までの予測の任意の組合せを実施する。
【0044】
実施形態においては、信頼時点で、コンピュータ化された信頼度評価モジュールが、比較モジュールによって決定された比較スコアに基づいて信頼度評価方法に従って主な時間ベースの予測的出力の信頼度を割り振る場合、
- 一時的な信頼度が時間的予測モデルに割り振られ、それから
- コンピュータ化された予測モジュールが、信頼度がすでに割り振られている少なくとも1つのその他の主な予測出力を決定するためにモデルを実施する。
【0045】
一実施形態において、主な予測的出力の信頼時点に先立つ1つのその他の最初の時点で、コンピュータ化された予測モジュールは、
- 主な予測的出力と異なる1つのその他の主な予測的出力、
- 1つのその他の主な将来の時点に先立つ少なくとも1つのその他の将来の中間の時点での少なくとも1つのその他の中間予測データ
を決定するためにモデルを実施し、
1つの将来の中間の時点が、1つのその他の将来の中間の時点に先立ち、
- 前記少なくとも1つのその他の将来の中間の時点で、コンピュータ化された比較モジュールは、少なくとも1つのその他の中間予測データと前記1つのその他の中間の将来の時点での時間ベースのシステムを表す別の実際のデータとの間の1つのその他の比較スコアを決定し、
- 一時的な信頼度が、主な予測的出力の割り振られた信頼度に従って時間的予測モデルに割り振られ、1つのその他の信頼時点で、コンピュータ化された信頼度評価モジュールが、比較モジュールによって決定された1つのその他の比較スコアに基づいて信頼度評価方法に従って1つのその他の主な時間ベースの予測的出力の信頼度を否定する場合、
- 時間的予測モデルに割り振られた一時的な信頼度が失効する。
【0046】
本発明は、システムを制御するための方法であって、
- コンピュータ化されたモジュールが、時間的予測モデルによって決定された少なくとも1つの主な予測的出力に対して本発明によるコンピュータ化された方法を実施し、
- 信頼時点で、コンピュータ化された信頼度評価モジュールが、比較モジュールによって決定された比較スコアに基づいて信頼度評価方法に従って主な時間ベースの予測的出力の信頼度を割り振る場合、
- システムの能動システムが、主な予測的出力に従って制御され、
- 別のコンピュータ化されたモジュールが、主な予測出力に対して実施され、および/または
- 一時的な信頼度が、時間的予測モデルに割り振られる、方法にも関する。
【0047】
本発明は、時間的予測モデルによって決定される少なくとも1つの主な予測的出力の信頼度を評価するためのコンピュータ化されたシステムであって、
モデルが、時間ベースのシステムを表す実際の時間ベースのデータに基づいて、所定の将来の時点に関する時間ベースのシステムの特性を表す時間ベースのパラメータに関する予測的出力を決定するように適合され、
主な予測的出力が、所定の主な将来の時点に関する予測データであり、
主な予測的出力が、現在の時点で行われ、
システムが、以下、すなわち、
- コンピュータ化された予測モジュールであって、
- 主な予測的出力、
- 主な将来の時点に先立つ少なくとも1つの将来の中間の時点での少なくとも1つの中間予測データ
を決定するためにモデルを実施するように適合された、コンピュータ化された予測モジュール、
- 前記少なくとも1つの将来の中間の時点で、
少なくとも1つの中間予測データと、前記中間の将来の時点での時間ベースのシステムを表す実際のデータと
の間の比較スコアを決定するように適合されたコンピュータ化された比較モジュール、
- 信頼時点で、比較モジュールによって決定された比較スコアに基づいて信頼度評価方法に従って少なくとも1つの主な時間ベースの予測的出力の信頼度を割り振るかまたは否定するように適合されたコンピュータ化された信頼度評価モジュールを含む、システムにも関する。
【0048】
本発明は、時間的予測モデルによって決定された少なくとも1つの主な予測的出力の信頼度を評価するためのコンピュータプログラムであって、プロセッサ上で実行されるときに、プロセッサに本発明による方法を実施させるように適合される、コンピュータプログラムにも関する。
【0049】
本発明の実施形態が、以下の図面に関連して下で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】普通の予測時間モデルを示す図である。
図2】本発明の一実施形態による予測時間モデルを示す図である。
図3】コンパートメント予測モデルを概略的に示す図である。
図4】コンパートメント予測モデルを概略的に示す図である。
図5】本発明の一実施形態に適用可能なリカレントニューラルネットワークを概略的に示す図である。
図6】本発明の一実施形態に適用可能なリカレントニューラルネットワークをより詳細に示す図である。
図7】本発明の一実施形態に適用可能なリカレントニューラルネットワークをより詳細に示す図である。
図8】本発明の一実施形態による医療システムを概略的に示す図である。
図9】本発明の一実施形態による医療システムを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図面上で、同じ参照符号は、同じまたは同様のものを示す。
【0052】
定義
インスリンの単位
この詳細な説明においては、およびWHO生物学的標準化専門委員会(WHO Expert Committee on Biological Standardization)によれば、インスリンの1国際単位(1U)は、34.7マイクログラム(μg)の純粋な結晶のインスリンの「生物学的同等物(biological equivalent)」と定義される。この単位は、患者に注入されるインスリンの量を検討するための適切な単位であり、国際単位系に変換され得ず、その理由は、変換がどのインスリンが使用されているかに依存するからである。本発明の開示のためには、インスリンの量が、本発明、読者、および科学界にとって意味のある体系で表現されることが重要である。
【0053】
全体的概要
時間ベースのシステムおよび時系列
時間ベースのシステムは、経時的に展開する(evolving)システムとして定義される。経時的な展開は、システムのいくつかの特性の実際の値Rのいくつかの時間変化によって明らかにされ得る。通常、経時的に変化するこれらの特性は、システムの時間変数、または以降、システムの変数と呼ばれる。
【0054】
さらに、これらの特性は、システムの物理的特性であることが可能であり、したがって、時間変数の実際の値と、結局のところ、経時的な変化とが、これらの値Rを経時的に検出し、測定するように適合されたセンサ、測定システム、捕捉システム、および/または獲得システムによって測定、捕捉、および/または獲得され得る。
【0055】
物理的特性は、生理学的、生物学的、または化学的特性でもあり得る。用語「物理的」は、そのより広い意味、すなわち、自然現象に関連するより広い意味で理解されなければならない。
【0056】
つまり、所与の時点Txにおいて、すなわち、時間Txのまさにその瞬間に、システムの物理的特性は、センサ、測定システム、捕捉システム、および/または獲得システムによって検出された実際の値Rxを有する。次に、Txと比較して別の将来の時点Ty、すなわち、Ty > Txにおいて、システムの物理的特性は、センサ、測定システム、捕捉システム、および/または獲得システムによって検出された実際の値Ryを有する。
【0057】
具体的な例は、サッカーボールの圧力(物理的特性)の経時的な展開である。圧力は、時点Txにおいて値Rx = 1100g/cm2を有する可能性があり、その後、ある継続時間の後、圧力は、時点Tyにおいて値Ry = 600g/cm2を有する可能性がある。
【0058】
圧力の例は、気象学にも当てはまる可能性がある。たとえば、低気圧は、定義により、圧力が所与の時点TにおいてR = 1013.25hPa未満である領域である。逆に、高気圧は、所与の時点TにおいてR = 1013.25hPaを超える圧力によって定義される。同じ領域が、所与の時点Txにおいては低気圧、すなわち、たとえば、値Rx = 980hPaの圧力を有する低気圧であることが可能であり、その後、ある継続時間の後、圧力は、時点Tyにおいて値Ry = 1030hPaを有する可能性がある。
【0059】
さらに、これらの測定システムは、経時的な時間変数の検出された実際の値Rを登録する(または少なくとも適切な登録デバイスに送信する)ように適合される。
【0060】
システムの物理的時間変数(physical time variable)の経時的な実際の値Rの登録は、経時的な値Rの時間シーケンスを構築する。このシーケンスの中で、実際の値Rの変化が見られ、測定され、分析され得る。
【0061】
気象学の同じ例に従えば、経時的な圧力は、天候を予測するための優れた洞察である。したがって、この分野においては、経時的な圧力の実際の値Rを測定し、分析することが重要である。所与の場所の圧力を評価する方法をより深く理解することは、この場所の天候を予測する助けになる。
【0062】
数学的な手法から、時間ベースのシステムの経時的な実際の値Rのこのシーケンスは、時系列である。
【0063】
数学において、時系列は、時間順にインデックス付けされた(またはリスト化されたまたはグラフ化された)データ点の系列である。最も普通には、時系列は、連続した等間隔の時点で取得されたシーケンスである。したがって、それは、離散時間データのシーケンスである。
【0064】
物理変数の時系列の例は、経時的な海洋の潮汐の高さ、または経時的な血糖濃度である。
【0065】
時間的な値の予測
上で説明されたように、変数の時系列は、経時的に各時点での値Rを表す時間順にインデックス付されたデータ点の系列である。時間は過去から未来に向かうので、任意の時系列からの実際の値Rは、現在の値であり、過去の値の直後にある。興味深い問題は、変数の現在および/または過去の値Rを知って、将来の値R、すなわち、将来の時点における観測された/測定された変数の値を予測しようとすることである。この問題は、予測として知られている。
【0066】
さらに、予測の特定の分野は、物理的特性の時系列の予測である。それらの特性は、物理的であり、したがって、定義により、物理法則と、特に決定的な物理法則とに従う。
【0067】
それらの特性が決定的な物理法則に従い、したがって、経時的に一定であるので、将来は、過去によって決定され、将来を予測したい場合は、現在を観測し、過去および/または現在に基づいて未来を決定する物理法則を知らなければならない。予測の問題を対処するこの方法は、動的予測と呼ばれることがある。
【0068】
したがって、時間ベースのシステムの将来の値Rを予測するためには、時間ベースのシステムの現在の状態と、実際の値Rの経時的な展開を説明する法則またはモデルとの両方を正確に知る必要がある。
【0069】
たとえば、重力の理論によれば、リンゴが木から落ちた場合、リンゴは規定された一定の加速度で地球の中心に向かって移動することが分かる。
【0070】
現在の状態は、過去の状態に拡張され得る。さらに、時間ベースのシステムの状態は、以下によって説明され得る。
I - 物理変数の実際の値Rの時系列、および
II - 時間ベースのシステムを説明する所与の数の状態パラメータS。これらのパラメータは、値Rとは異なり、経時的に一定であり、経時的に変動し得ない。
【0071】
Rの展開を説明する一般法則は、Rの展開法則Eまたは展開モデルEと呼ばれ得る。また、パラメータSは、展開モデルEを定義し得る。したがって、時間が実際の値Rの時系列のあらゆる時点Tによって離散的に表される場合に、物理変数が現在の時点Txで状態Rxである、すなわち、値Rxを有する場合、その物理変数は、あらゆる将来の時点で状態E(Rx)、E(E(Rx))などになる。
【0072】
したがって、値E(Rx)、E(E(Rx))は、実際の値Rではなく、実際の値R、所与の数の状態パラメータS、および展開モデルEに基づく計算されたまたは推定された値であるで、変数の予測である。
【0073】
リンゴの落下の例に従えば、時間ベースのシステムは、リンゴであり、観測され、測定される変数は、その高度またはその速度である可能性がある。
【0074】
したがって、展開モデルは、摩擦力のない重力法則だけの単純なモデルであることが可能であるが、必要に応じて摩擦力の導入によって改良され得る。このモデル、リンゴの形態または重さなどのリンゴの初期状態と、速度および/または高度の時系列の過去の値(少なくとも初期速度および/または初期高度)、ならびに展開モデルE(重力法則)に基づいて、落下の任意の将来の時点での変数速度および/または変数高度の将来の値を予測することが可能である。
【0075】
時系列の将来の値の予測における問題
実際には、時系列の将来の値Rを予測することは、様々な理由から困難で挑戦的な問題である。
【0076】
まず、上で説明されたように、正確な予測は、時間ベースのシステムの現在の状態の十分な知識を必要とする。したがって、正確な予測は、これらの値Rを経時的に検出し、測定するように適合された正確なセンサ、測定システム、捕捉システム、および/または獲得システムを必要とする。
【0077】
さらに、システムをそれを説明する有限個の状態パラメータSにまとめることは、困難であり得る。実際、どれが選択すべき適切なパラメータなのだろうか。そして、選択されたら、それらのパラメータが経時的に展開しないことをどうやって確認するべきで、それらのパラメータが展開する場合には、どのように展開するのだろうか。パラメータSのそれらの展開は、展開モデルEにどのような影響を与えるのだろうか。
【0078】
それが、時間的な予測によくある問題がパラメータSの経時的な更新である理由である。この更新は、困難であり、時間ベースのシステムの不良なパラメータ化は、不良な予測をもたらす可能性が高い。いずれにせよ、たとえすべてのパラメータSが知される可能性があるとしても、それらは数が多すぎてすべて測定されることが不可能であるかまたは利用不可能でさえあるので、すべてのパラメータSがしっかりと定義されていることを検証することは困難である。
【0079】
さらに、展開法則または展開モデルの概念も、難しい課題である。実際、変数Rに影響を与える(経時的な)複数の変数が存在することが多く、決定的な物理法則から導出される、経時的なすべての変数を結びつける数学的法則に基づくモデルを構築することは、不可能ではないとしても、非常に困難であり得る。
【0080】
最後に、動的予測は、たとえすべての状態変数が正確に測定され、展開法則またはモデルの知識が正確であるとしても、短期間、すなわち、近い将来に関してしか良い結果をもたらさないことが多い。システムのダイナミクスの正確な知識は、初期条件に敏感であるため、実際の値が数値または予測された値と同じになることを保証するのに常に十分であるとは限らない。原理は単純であり、すなわち、ごくわずかな最初の違いが大きな結果を招き得る。
【0081】
「近い将来」とは、時間ベースのシステムがそれを説明する所与の数の状態パラメータSを一定に保つのに十分なだけ近い将来であると理解しなければならない。
【0082】
結果として、時間ベースのシステムの長期の時間的な予測は、その時間ベースのシステムを説明する所与の数の状態パラメータSが時間ベースのシステムの展開の仕方を変えるほど変化した、すなわち、状態パラメータSの変化が原因で展開モデルEが異なるプロパティを持ち得る将来を定義する。長期の別の定義の仕方は、観測された時系列R(または時間ベースのシステムの変数のその他の時系列)が今や完全に異なる値を有することである。
【0083】
アルゴリズムの観点
複雑なコンピュータ化されたシステムにおいては、第1のコンピュータ化されたモジュールの出力データが、第2のコンピュータ化されたモジュールの入力データであることが多い。したがって、第1のコンピュータ化された予測モジュールによって実現される予測出力の誤りは、第2のコンピュータ化されたモジュールが不正確な入力データに対してコンピュータ化された動作を実施することになるので、その他の誤りにつながり得る。
【0084】
この状況は、第2のコンピュータ化されたモジュールも予測モジュールである場合、さらに悪化する。
【0085】
説明されたすべてのこれまでの問題に関して、実現されたまたは計算された予測の信頼度、信用、または信頼性を評価する必要がある。
【0086】
発明によって実施される解決策
方法を実施する総合的システムの構成要素
方法は、物理的特性を検出し、測定するように適合された様々なセンサ、測定システム、捕捉システム、および/または獲得システムから測定データを受信するように適合された総合的システムによって実施され得る。
【0087】
後で説明されるように、および全体的概要において説明されたように、任意の物理的特性が、予測される変数である可能性がある。
【0088】
総合的システムは、処理サブシステム、ストレージサブシステム、ユーザインターフェース、通信サブシステム、電力サブシステムを含んでよい。総合的システムは、その他の構成要素(明示的に示されていない)も含んでよい。
【0089】
ストレージサブシステムは、多かれ少なかれ配列された方法でデータを記憶することができ、および/またはその他の種類の情報を記憶することができ、その他の種類の情報の例は、下で説明される。一部の実施形態において、ストレージサブシステムは、処理サブシステムによって実行される1つまたは複数のコンピュータプログラムも記憶することができる。ユーザインターフェースは、入力デバイスと出力デバイスとの任意の組合せを含み得る。ユーザは、ユーザインターフェースの入力デバイスを操作して総合的システムに情報を提供することができ、ユーザインターフェースの出力デバイスを介して総合的システムから情報を受け取ることができる。
【0090】
この総合的システムは、1つまたは複数の集積回路、たとえば、1つまたは複数のシングルコアまたはマルチコアマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラとして処理サブシステムを実装することもできる。動作中、処理システムが、コンピュータ化されたシステムの動作を制御することができる。様々な実施形態において、処理サブシステムは、プログラムコードを含む様々なコンピュータプログラムを実行することができ、複数の同時に実行されるプログラムまたはプロセスを維持することができる。任意の所与の時間に、実行されるプログラムコードの一部またはすべては、処理サブシステムに、および/またはストレージサブシステムなどのストレージ媒体に存在し得る。
【0091】
最後に、総合的システムは、外部構成要素からデータを受信し、外部構成要素にデータを送信するように適合された電気通信モジュールを有する。
【0092】
モジュール
様々なコンピュータ化されたモジュールは、総合的システムのプロセッサによって実装され得る。
【0093】
コンピュータ化された予測モジュールは、全体的概要において定義され、説明されたように、時間的な値の予測を決定するように適合される。この予測は、予測データである。
【0094】
それを決定するために、コンピュータ化された予測モジュールは、予測モデルを実施するように適合され得る。
【0095】
この予測モデルは、予測P、すなわち、予測された値Pを決定、計算、または算出するように適合される。この予測は、アルゴリズムの観点から見るとモデルの出力である。この予測は、モデルの予測的出力と呼ばれ得る。この予測は、経時的に変化する時間ベースのシステムの物理的特性、すなわち、時間ベースのシステムを表す時間ベースのパラメータ(または特性)について行われる。
【0096】
したがって、予測は、時間ベースのシステムを表す時間ベースのパラメータ(または特性)について行われる。
【0097】
さらに、この予測は、全体的概要において説明されたように、任意の予測として、所定の将来の時点に関して行われる。
【0098】
慣例により、最初の時点T0から始まり、時間ΔX先の予測Pは、将来の時点Tx = T0 +ΔXに関して最初の時点T0で行われる時間的な予測Pxであり、ΔXは、継続時間である。
【0099】
モジュールは、1つまたは複数の中間予測を出力することもできる。中間予測は、主な時間的な予測Pxの時点Txに先立つ時点Tで行われる予測である。言い換えると、T0 < T < Txである。
【0100】
さらに、全体的概要において説明されたように、予測は、総合的システムのセンサによって測定された時間ベースのシステムの物理的特性の実際の現在および/または過去の値に基づいて行われる。予測は、全体的概要において説明されたように、時間ベースのシステムの様々な状態パラメータSにも基づき得る。
【0101】
図1は、例として、T0 < T1 < T2 < T3 < Txとして、時点T1、T2、およびT3に関して最初の時点T0で3つの中間予測P1、P2、およびP3が行われ、時点Txに関して同じ時点T0で主な予測Pxが行われる予測時間モデルの図式を示した。
【0102】
さらに、予測モデルは、将来の所定の時点の物理的特性の将来の値を計算または算出するために考えられた任意の数学的モデルであることができる。上述のように、全体的な状態パラメータSがモデルを定義し得る。
【0103】
モデルのエントリまたは入力または入力データは、時間ベースのシステムの物理的特性の実際の過去または現在の値であり、出力または出力データは、予測(予測出力と呼ばれる)である。
【0104】
予測モデルは、機械学習または深層学習モデルであることが可能であるが、それは必須ではない。
【0105】
機械学習または深層学習モデルは、関心のある予測、すなわち、任意の応用(上記参照)に応じてその後使用される主な予測を出力する。
【0106】
言い換えると、モデルの出力は、主な予測である。この主な予測は、全体的概要において説明されたように、将来の時点に関して行われる。
【0107】
コンピュータ化された比較モジュールは、少なくとも2つの数値または仮想ベクトル(virtual vector)を比較し、比較採点方法に従って比較スコアを決定するよう適応される。
【0108】
比較スコアは、2つのベクトルが比較される場合、比較スコアベクトルであることが可能である。
【0109】
したがって、比較モジュールの入力は、少なくとも2つの数値または仮想ベクトルであり、出力は、比較スコア(値またはベクトル)である。
【0110】
たとえば、比較スコアは、不一致インジケータとも呼ばれるインジケータを生成するために使用され得る。
【0111】
特に、比較モジュールは、少なくとも2つの予測された値Pまたは予測、すなわち、予測モジュールによって計算されたまたは算出された値を比較するように適合される。
【0112】
比較スコアの方法は、様々な選択肢に従って選択され得る。比較スコアは、以下であることが可能である。
- 絶対誤差比較法
- 勾配差比較法
- 二乗平均平方根誤差比較法
- 加速度または二階導関数差分法(acceleration or double derivative difference method)
【0113】
これらの比較スコアの方法の各々は、信頼度評価方法に異なる比較スコアを提供するために組み合わされ得る。
【0114】
すべてのこれらの方法が、重み付けされ得る。
【0115】
予測された値と実際の値との間の不一致の測定のその他の方法が、使用され得る。たとえば、予測された信号と実際の信号との加速度を比較することが、不一致を検出するために使用されてよい(加速度または二階導関数法(acceleration or double derivative method))。
【0116】
勾配差比較法は、以下のように定義される。
【0117】
数学において、直線の勾配または傾きは、直線の方向と勾配の急さとの両方を説明する数である。
【0118】
勾配は、直線またはグラフ上の(任意の)2つの異なる点の間の「水平方向の変化」に対する「垂直方向の変化」の比を定めることによって計算される。比は、商(quotient)(「ラン(run)分のライズ(rise)」)として表現されることもあり、同じ直線上の異なる2つの異なる点ごとに同じ数値を与える。減少している直線は、負の「ライズ」を有する。直線は、道路測量技師によって設定されるとき、または道路もしくは屋根を記述としてかもしくは平面図としてかのどちらかでモデル化する図おいて、実際に役立つ場合がある。
【0119】
勾配の比較は、以下の式、すなわち、
slope_diff = slope prediction - slope real
【0120】
【数1】
【0121】
によって定義される場合があるが、slope realおよびslope predictionを用いる重み付けされたslope_diffも考えられ、以下のように定義され得る。
【0122】
【数2】
【0123】
この比較方法によれば、様々な時点Tiの間の実際の値Riおよび予測された値Pi、すなわち、予測の時系列の勾配が集約され、比較される。
【0124】
この方法の重み付けされたバージョンによれば、実際の値Riおよび予測された値Piが、重みbiによって重み付けされる。
【0125】
この比較方法は、時間変数の傾向の急激な変化を検出するのに特に適切である。たとえば、実際の勾配が、時間変数が減少していることを示し、予測の勾配が、時間変数が増加していることを予測する場合、主な予測が誤っていることはほぼ間違いない。
【0126】
さらに、一部の応用は、データの絶対値よりも、データの時系列のダイナミクスの制御についてのものである。したがって、この方法は、それらの応用に適切である。
【0127】
絶対誤差比較は、以下のように定義される。
【0128】
任意の時点Tiで、実際の値Riと予測Piとが、以下の式に従って比較される。
【0129】
【数3】
【0130】
この比較は、最後の時点TLで行われる。好ましい場合に、絶対誤差比較は、以下のように、中間予測全体に対して計算されてよい加重平均絶対誤差を使用することによって計算される。
【0131】
【数4】
【0132】
この方法は、予測と実際の値との間に、slop_diffインジケータによって検出されない可能性がある一定の誤差がある場合に適切である。例として、予測の勾配が実際の値と同じ勾配であるが、一定の誤差が存在するものとする。この不一致の測定は、その一定の誤差のインジケータである可能性がある。制御の判断がデータの現在の値にまたは現在の範囲に基づくとき、絶対誤差を最小にすることは、制御を大きく改善することができる。
【0133】
二乗平均平方根誤差比較は、以下のように定義される。
【0134】
二乗平均平方根偏差(RMSD: root-mean-square deviation)または二乗平均平方根誤差(RMSE)は、モデルまたは推定器によって時点Tに関してまたは時点Tで予測された値Pと、同じ時点Tで観測された値との間の差の頻繁に使用される尺度である。RMSDは、予測された値Pと観測された、測定された、もしくは実際の値Rとの間の差の二次標本積率(second sample moment)の平方根またはこれらの差の二次平均(quadratic mean)を表す。RMSDは、様々なデータ点の予測における誤差の大きさを予測力の単一の尺度に集約する働きをする。RMSDは、精度の指標であり、規模に依存するので、データセット間ではなく、特定のデータセットに関する異なるモデルの予想誤差を比較するための精度の尺度である。
【0135】
以下の式は、この種の比較方法の例を説明する。
【0136】
【数5】
【0137】
この比較方法は、データの収集または測定が収集または測定の一定の誤差を示唆する場合に特に適切であり、すなわち、勾配が、収集の一定の誤差の影響を受けない。
【0138】
実際の値Riと中間予測Piとの間のその他の誤差測定または偏差測定が、使用され得る。たとえば、勾配差、絶対誤差、および/またはRMSEに重みを加えることが可能である。
【0139】
コンピュータ化された信頼度評価モジュールは、信頼度評価方法に従って、予測モジュールによって決定された予測Pの信頼度を評価するように適合される。
【0140】
信頼度評価方法
信頼度評価モジュールの入力は、少なくとも予測Pを含む少なくとも比較スコアであり、出力は、この少なくとも1つの予測Pの信頼度の評価である。信頼度評価モジュールは、信頼度評価方法に従って予測Pの信頼度を割り振るかまたは否定するように適合される。
【0141】
出力、評価の出力は、様々な形式を取り得る。出力は、連続的な形式、すなわち、信頼度の最小(信頼度なし)および信頼度の最大を定義する下限と上限との間のパーセンテージまたはスコア、あるいは離散的な形式、すなわち、たとえば、2進出力、すなわち、信頼度を否定するための0および信頼度を割り振るための1であることが可能である。
【0142】
上で見られたように、比較モジュールによって決定された比較スコアに従って、インジケータが決定され得る。そして、様々な閾値が、比較スコアに基づく各インジケータに関して設定され得る。
【0143】
信頼度評価方法は、それらのインジケータを関連する閾値と比較することである可能性があり、すなわち、インジケータが所与の閾値を超えている場合、主な予測は正確であるとみなされず、信頼度評価モジュールはそれに信頼度を割り振らない。
【0144】
別の例においては、様々な閾値が設定され得る。これらの閾値の各々は、主な予測の信頼度のレベル、すなわち、信頼度なし、信頼度低、信頼度高、確実を定義する。
【0145】
その他の信頼度の方法が、実施され得る。
【0146】
たとえば、主な予測の信頼度のパーセンテージを出力する、エントリデータとしての勾配差比較、絶対誤差比較、および/またはRMSE比較の上に実装された信頼度モデルを作成することが可能である。この実施形態において、信頼度の方法は、信頼度モデルを実施することからなる。
【0147】
信頼度のパーセンテージは、決定された比較スコア、または異なる比較方法によって決定された様々な比較スコアの組合せに基づいて決定され得る。
【0148】
方法
以降、上述の様々なコンピュータ化されたモジュールのおかげで、コンピュータ化された総合的システムによって実施される方法を説明する。
【0149】
念のための確認として、必要なのは、以降で主な予測Pxと呼ばれる、時間ベースのシステムの物理的特性についての時間的な予測の信頼度を評価することである。
【0150】
上で定義されたように、我々は、瞬間T0で時間X先の時間ベースのシステムの値Pxを予測したい、すなわち、予測が、将来の時点Txに関して時点T0で行われ、Tx = T0 +Δxであり、ΔXは、継続時間である。
【0151】
このよくある状況が、図1に示されている。
【0152】
図2に示されるように、提案は、
- 時点T0で、少なくとも中間予測、すなわち、より短いタイムホライズン(time horizon)に関する予測、すなわち、ΔY<ΔXとして時間Y先の予測を決定し、それから
- システムのセンサによって測定されたTy = To +ΔYの時間ベースのシステムの実際の値Ryを用いて、Ty = To +ΔYの瞬間の時間Y先の予測Pyの品質を評価することである。
【0153】
我々は、過去の時点で行われた正確な短期予測が、同じ過去の時点で行われた長期予測も正確である可能性が高いことを示す傾向があると仮定するので、Pyの品質の評価は、主な予測PXの品質の洞察を与える。
【0154】
実施形態においては、主な予測を決定するために実装された(ここでは、第1の)予測モデルが、中間予測を決定するために実装された第2の予測モデルとまったく同じではないこともあり得る。アーキテクチャ、訓練データセット、またはノードの重みなどの一部のパラメータが、第1の予測モデルと第2の予測モデルとの間で異なることが可能である。
【0155】
以降、この提案をシステムおよびそのモジュールを用いて実装する方法をより詳細に説明する。
【0156】
1つの中間の時点
方法の第1のステップにおいては、最初の時点T0で、コンピュータ化された予測モジュールが、
- 主な予測的出力Px
- 主な将来の時点Txに先立つ少なくとも1つの将来の中間の時点Tyの少なくとも1つの中間予測Pyのデータ
を決定するためのモデル(予測器とも呼ばれる)を実装する。
【0157】
主な予測的(または予測)出力は、所定の主な将来の時点Txに関する予測データである。この主な予測は、最初の時点T0で決定される。
【0158】
中間の時点Tyは、時点Txに先立つ任意の瞬間または時点であることが可能である。中間の時点Tyは、主な予測Px出力が行われる最初の瞬間Toと比較して将来の時点であるので、「将来の時点」とも呼ばれ得る。
【0159】
そして、前記少なくとも1つの将来の中間の時点Tyで、コンピュータ化された比較モジュールが、少なくとも1つの中間予測データPyと中間の時点Tyでの時間ベースのシステムの実際のデータの代表Ryとの間の比較スコアを決定する。
【0160】
上述のように、比較スコアは、以下のような様々な方法によって決定され得る。
- 絶対誤差比較法
- 勾配差比較法
- 二乗平均平方根誤差比較法
- 加速度または二階導関数差分法
【0161】
その他の方法が、想像され得る。
【0162】
比較スコアは、不一致インジケータの基礎であるか、または不一致インジケータそのものでさえあることが可能である。
【0163】
それから、コンピュータ化された信頼度モジュールが、比較モジュールによって決定された比較スコアに基づいて信頼度評価方法に従って主な時間ベースの予測的出力の信頼度を評価する。
【0164】
したがって、評価モジュールは、上述の信頼度評価方法に従って、主な予測に信頼度を割り振るか、または反対に、主な予測への信頼度を否定する。
【0165】
複数の中間の時点
時間ベースのシステムが上で定義されたように、そのセンサ、測定システム、または捕捉システム、または獲得システムのおかげで時系列を生成するように適合されるとき、1つの中間の時点Tyを用いる先の方法が、時間ベースのシステムによって生成された時系列の複数の間隔を空けた中間の時点Tiに適用され得る。
【0166】
同様に、中間の予測が正しいほど、主な予測は正しい可能性が高い。
【0167】
この拡張されたバージョンに関して、目的は、予測出力が決定される瞬間Toに、次の関係、すなわち、To +ΔX = Txを検証する時間X先のまたは時点Txの予測的出力Pxの信頼度を評価することである。
【0168】
それぞれの中間の時点Tiは、時点Txに先立つ。言い換えると、To < Ti < Txであり、iは、1から任意の整数nまでの整数である。
【0169】
任意の時点Tiが、モデルを実施するコンピュータ化された予測モジュールによって中間予測Piが決定される中間点であるように選択され得る。
【0170】
例として、T0 < T1 < T2 < T3 < Txであるようにして、3つの中間点T1、T2、およびT3が使用され得る。
【0171】
時点T1、T2、およびT3に関する予測P1、P2、およびP3は、瞬間T3に、比較モジュールによって比較スコアを計算するために使用される。
【0172】
瞬間T3に、比較モジュールが、T1、T2、およびT3に関してシステムのセンサのおかげで実際の値R1、R2、およびR3を受け取ったので、我々は、瞬間T1、T2、およびT3に関して最初の瞬間T0に決定された予測P1、P2、およびP3と比較することが可能である。
【0173】
それから、時点Tc、信頼時点で、コンピュータ化された信頼度モジュールが、少なくとも比較モジュールによって決定された比較スコアに基づいて信頼度評価方法に従って主な時間ベースの予測的出力Pxの信頼度を評価する。
【0174】
信頼度モジュールによって信頼度を評価するために複数の(所定の数の)比較スコアが使用される場合、使用される比較スコアの各々が重みを付けされ得る。
【0175】
時点Tcは、T3≦Tc < Txを検証する。信頼度ができるだけ早く評価されることが有利であり得る。したがって、有利な実施形態によれば、Tc = T3であり、T3は、定義された最後の中間点である。
【0176】
それが、4つ以上の中間の時点がある場合に、Tcが引き続き最後の中間の時点であることができる理由である。
【0177】
例は、任意の数の中間の時点Tiに一般化され得る。
【0178】
中間の時点の分布
すでに説明されたように、本発明は、必要な数の中間の時点に一般化され得る。
【0179】
それらの点は、様々な時間的分布に従って継続時間ΔX内に分布させられ得る。
【0180】
簡単な分布は、2つの時点Tiの間の時間間隔が一定である分布であることが可能である。この分布によれば、
Ti+1 = Ti +Δt
であり、Δtは、秒を単位とする一定の時間間隔である。
【0181】
別の例においては、
Ti+2 - Ti+1 = 2×(Ti+1 - Ti)
である。
【0182】
予測が信用され得るかどうかをできるだけ早く知ることが有利であり得る。この場合、中間点を点Txのあまりにも近くに設定することは、適切でない。
【0183】
それが、分布が何であれ、最後の中間点が独立して設定されることが可能であり、それから、前の中間点Tiが選択された分布に従って設定される理由である。
【0184】
たとえば、最後の中間点は、継続時間Tx - T0が継続時間TL - T0の2倍であるような時点TLに設定され得る。言い換えると、最後の中間点TLは、継続時間Xの半分に設定され得る。
【0185】
時点の分布の別の可能性は、各時点TiをTxの点の特定のiパーセントに設定することである。
【0186】
【数6】
【0187】
時間分布が何であれ、第1の中間予測が、予測系列の時間分布の間隔の時間を設定する。
【0188】
主な予測Pxの使用
信頼度評価モジュールが主な予測の信頼度を割り振る場合、この主な予測は使用され得る。様々な応用、またはこの使用の例は、後で説明される。
【0189】
たとえば、第1のコンピュータ化されたモジュールの出力は、第2のコンピュータ化されたモジュールの入力であることが多く、そして、信頼度評価モジュールが主な予測Pxの信頼度を割り振る場合、後者は、総合的システムの別のモジュールによって入力として使用され得る。別のモジュールは、別のアルゴリズムのモジュール、または総合的システムの物理的特性の制御を直接担当するモジュールであることが可能である。
【0190】
反対に、いずれかの時点(中間または最後)で、信頼度が与えられない場合、主な予測は、総合的システムのいかなるその他のモジュールによっても使用されない。
【0191】
割り振られた信頼度の別の「使用」は、予測モデル全体の一時的な信頼度である可能性がある。たとえば、現在の主な予測の信頼度が割り振られると、予測モデルの信頼度が割り振られ、したがって、次の主な予測、すなわち、時点TCで決定された主な予測または最初の次の主な予測の信頼度は評価されなくても構わないと考えることが可能である。
【0192】
これは、時点TCで決定された任意の所定の数の次の主な予測に一般化され得る。たとえば、2、3、4、5個の次の主な予測が、時点TCで行われ得る。それらの主な予測は、現在の主な予測の評価に基づいて信頼できるとみなされる。
【0193】
結果として、予測は、計算された後、直ちに使用される。これは、時間の獲得を表す。
【0194】
複数の主な予測Px
方法は、同じ最初の時点T0で行われた複数の主な予測PXに一般化され得る。この実施形態は、予測モデルの一時的な信頼度が割り振られる実施形態とは異なり、すなわち、この実施形態においては、主な予測が、最初の時点T0ですべて行われ、一方、予測モデルにおける一時的な信頼度が割り振られる実施形態においては、その他の主な予測が、信頼時点TCで計算される。
【0195】
応用
本発明は、時系列についての時間的な予測が存在し、使用される任意の技術領域において使用され得る。時系列の予想は、データ分析に幅広い応用を見いだす。これらは、本発明が役立つ可能性があるユースケースのうちのほんのいくつかである。
- 気象学:気温、降水量、風などの気象の変数の予想など
- 経済&金融:経済的要因、金融指標、為替レートの説明および予測など
- マーケティング:売上、収益/支出などの重要業績評価指標(key business performance indicator)の追跡など
- 電気通信:通話データの記録の予想、コールセンターのワークフォースマネジメントなど
- 産業:エネルギー変数(energy variable)の制御、効率的なジャーナル(journal)、感情および行動の分析など
- ウェブ:ウェブトラフィック、クリック、およびログのソースなど
出願人は、特許性の基準を尊重するために、必要があれば、これらの応用のいずれかを放棄するすべての権利を留保する。
【0196】
糖尿病
本発明の特定の技術領域は、糖尿病の分野にある。以降、この分野における本発明の特定の応用が説明される。
【0197】
この分野においては、血糖の濃度を評価し、測定された濃度に応じてある量のインスリンを注射することが知られている。最近、患者のデータに基づいて、注射されるインスリンのボリュームレートを評価し、この評価に基づいてインスリンの注射を制御するようにプロセッサがプログラミングされる、いわゆる「閉ループ」システムが開発された。さらに、プロセッサは、ある特別な状況、特に食事において注射されるインスリンの量を評価するようにプログラミングされ得る。量は、患者の承認を条件に、患者に注射され得る。そのようなシステムは、これらの特別な状況の一部の患者による宣言が必要であるので、「準閉ループ」とも呼ばれる。
【0198】
血糖の測定された濃度は、多くの場合、血糖の将来の濃度を予測するために使用される。したがって、この予測は、血糖の濃度を許容区間内に維持するために注射されなければならないインスリンの量を計算するために使用される。
【0199】
したがって、時間ベースのシステムは、対象者であり、時間ベースのシステムの経時的に変化する物理的特性は、経時的な血糖の濃度である。たとえば、血糖は、持続グルコースモニタリング(continuous glucose monitoring)システムによって測定され得る。
【0200】
さらに、対象者の経時的な血糖の濃度は、約30分の時間的慣性(temporal inertia)を有する時間ベースのシステムと考えられる。
【0201】
構成要素
本発明のこの特定の応用は、I型糖尿病患者へのインスリンの自動注入に適用される。
【0202】
図8および図9に示されるように、総合的システムと考えられる医療システムが、データ獲得システム2を含む。たとえば、データ獲得システムは、患者の血液中のグルコースの量を決定するように適合されたグルコースモニタリングシステムを含む。様々な種類のセンサが、このデータを提供するために適用され得る。一例は、患者の血液中のグルコースの量(質量、モル、質量百分率、またはモル百分率)を高い頻度、たとえば、1分ごと、またはそれよりもさらに高い頻度で評価する、いわゆる持続血糖モニタリングである。化学的微量滴定(chemical micro-titration)または光学(optics)などの様々な技術があり得る。データ獲得システムは、患者の他の場所に固定された別のグルコースモニタリングシステムなどの追加のセンサを含む場合がある。
【0203】
データ獲得システム2は、患者の生理学的状態のインジケータである可能性がある追加のセンサのデータ、たとえば、加速度測定法(accelerometry)、温度などを獲得するためのシステムも含む場合がある。
【0204】
データ獲得システム2は、追加の患者の情報を獲得するためのシステムも含む場合がある。これは、たとえば、患者からの食事の情報を含む。たとえば、データ獲得システム2は、患者が食事に関連する情報を入力することを可能にするインターフェースを含んでよい。任意のその他の情報が、宣言システムを通じて医療システム1に入力されてよい。
【0205】
医療システムは、データ処理システム3を含む。たとえば、データ処理システム3は、血糖モニタリングシステムから遠隔にあり、ワイヤレス(Bluetoothなどの無線周波数)または有線などの任意の好適な手段によって血糖モニタリングシステムと通信するように適合される。しかし、たとえば、データ獲得システム2の上述の宣言インターフェースは、データ処理システム3と同じユニットに設けられる可能性がある。データ処理システム3は、以下でより詳細に説明されるように、獲得されたデータに対して「決定」モジュール11を適用し、この場合ではポンプを含む能動システム4に関する1組の動作パラメータを決定するように設計される。
【0206】
医療システム1は、注入システムを含む能動システム4を含む。たとえば、データ処理システム3は、能動システム4から遠隔にあり、ワイヤレス(Bluetoothなどの無線周波数)または有線などの任意の好適な手段によって能動システム4と通信するように適合される。
【0207】
血糖予測モデル
「決定」モジュール11は、血糖予測モデルまたは血糖予測器を実装する。
【0208】
それは、少なくとも実際の測定された血糖に基づいて予測的出力血糖を決定するように適合されたモデル、以降、血糖予測モデルまたは血糖予測器である。それは、入力データに基づいて、所定のタイムホライズンの、すなわち、所定の将来の時点での血糖PGを予測する予測モデルである。したがって、出力は、(実際の値、すなわち、実データへの反対(opposition)による予測データである)予測された血糖PGである。
【0209】
入力データは、残存インスリン(IOB: insulin-on-board)、残存カーボ(COB: carbs-on-board)、血糖RGの実際の過去のまたは現在の値、インスリン、インスリン活性を含む。インスリンに対する患者の感受性に関連するパラメータなどのその他の予め定義されたパラメータが、考慮に入れられる場合がある。
【0210】
したがって、予測される血糖PGは、PG = E (IOB, COB, RG)に従って、予め定義された展開関数(evolution function)Eまたは予測モデルEを使用して決定されてよい。上で挙げられた任意のその他の入力データが、使用され得る。
【0211】
血糖予測モデルによって行われる任意の予測は、以下のパラメータ、すなわち、送達されたインスリン量パラメータ、消費された炭水化物量パラメータ、インスリン感受性因子などの患者固有のパラメータ、または炭水化物対インスリン比パラメータのうちの1つまたは複数にさらに基づき得る。
【0212】
一実施形態によれば、モデルEは、入力変数i(t)およびcho(t)ならびに出力変数PG(t)に加えて、患者の複数の生理学的変数の瞬間的な値に対応する複数の状態変数が経時的に展開するときのそれらの状態変数を含むコンパートメントモデルであることが可能である。
【0213】
状態変数の時間的展開は、MPCブロックの入力p1に適用されるベクトル[PARAM]によって図3に表される複数のパラメータを含む連立微分方程式によって統制される。
【0214】
生理学的モデルの応答は、状態変数に割り振られた初期値によって条件付けられることもあり、初期値は、MPCブロックの入力p2に適用されるベクトル[INIT]によって図3に表されている。
【0215】
図4は、図3のシステムの実施形態において実装される生理学的モデルの非限定的な例をより詳細に表す図である。
【0216】
たとえば、モデルは、図3に示され、たとえば、Roman Hovorkaらによる「Nonlinear model predictive control of glucose concentration in subjects with type 1 diabetes」(Phiol Meas.、2004; 25: 905-920)およびRoman Hovorkaらによる「Partitioning glucose distribution/transport, disposal, and endogenous production during IVGTT」(Physical Endocrinol Metab 282: E992-E1007、2002)に記載されたHovorkaモデルであることが可能である。
【0217】
このモデルにおいて、予測された血糖値PGは、血糖として単にGとも呼ばれる。
【0218】
図4に示された生理学的モデルは、血漿中のグルコースの発現の速度に対するグルコース摂取の影響を説明する第1の2コンパートメント(bi-compartmental)サブモデル301を含む。
【0219】
サブモデル301は、入力として、たとえばmmol/minを単位とする取り込まれたグルコースの量cho(t)を取り、出力として、たとえばmmol/minを単位とする血漿中のグルコースの吸収の速度UGを提供する。
【0220】
このモデルにおいて、サブモデル301は、それぞれ第1および第2のコンパートメントにおける、たとえばmmolを単位とするグルコースの質量にそれぞれ対応する2つの状態変数D1およびD2から構成されている。
【0221】
図4のモデルは、血漿中の患者に送達された外因性インスリンの吸収を説明する第2の2コンパートメントサブモデル303も含む。サブモデル303は、たとえばmU/minを単位とする患者の皮下組織に送達された外因性インスリンの量i(t)を入力として取り、mU/minを単位とする血漿中のインスリンの吸収の速度UIを出力として提供する。
【0222】
サブモデル303は、たとえば、それぞれ、患者の皮下組織を表す皮下コンパートメントをモデル化する第1および第2の区画におけるインスリンの質量である残存インスリンにそれぞれ対応する2つの状態変数S1およびS2を含んでよい。状態変数S1およびS2の瞬間的な残存インスリンレベルは、たとえば、mmolで表される場合がある。
【0223】
図4のモデルは、患者の体によるグルコースの調節を説明する第3のサブモデル305をさらに含んでよい。このサブモデル305は、グルコースおよびインスリンの吸収速度UG、UIを入力として取り、たとえばmmol/lを単位とする血糖値G(t)、すなわち、血漿中のグルコースの濃度を出力として与える。
【0224】
したがって、サブモデル305は、患者の血漿/身体コンパートメントのモデル、すなわち、患者の血漿および身体内のグルコースおよびインスリンの動態のおよび化学的な展開のモデルである。
【0225】
「患者の血漿および身体」によって、皮下組織を除いた患者の身体が意味される。
【0226】
この例において、サブモデル305は、6つの状態変数Q1、Q2、x3、x1、x2、Iを含む。
【0227】
変数Q1およびQ2は、たとえばmmolを単位とする、それぞれ第1および第2のコンパートメント内のグルコースの質量にそれぞれ対応する。
【0228】
変数x1、x2、x3は、グルコースの動態に対するインスリンの3つのそれぞれの作用の各々をそれぞれ表す無次元の変数である。
【0229】
最後に、変数Iは、瞬間的な血漿インスリンレベルであり、すなわち、血漿中のインスリンの濃度であるインスリン血症(insulinemia)に対応する。瞬間的な血漿インスリンレベルは、たとえば、mU/lで表される。
【0230】
血糖Gを予測する、すなわち、予測された血糖PGを決定するように適合されたHovorkaモデルは、以下の連立方程式によって統制される。
【0231】
【数7】
【0232】
この連立微分方程式は、以下の意味を有する15個のパラメータVG、F01、k12、FR、EGP0、kb1、ka1、kb2、ka2、kb3、ka3、ka、VI、ke、およびtmaxを含む。
【0233】
VGは、たとえばリットルを単位とするグルコースの分配の量に対応し、
【0234】
F01は、たとえばmmol/minを単位とするインスリン非依存グルコース移送速度(non-insulin-dependent glucose transfer rate)に対応し、
【0235】
k12は、たとえばmin-1を単位とするサブモデル305の2つのコンパートメント間の移送速度に対応し、
【0236】
ka1、ka2、ka3は、たとえばmin-1を単位とするインスリン不活性化速度定数(insulin deactivation rate constant)に対応し、
【0237】
FRは、たとえばmmol/minを単位とするグルコースの尿中排泄量に対応し、
【0238】
EGP0は、たとえばmin-1を単位とするグルコースの内因性産生に対応し、
【0239】
kb1、kb2、およびkb3は、たとえばmin-1を単位とするインスリン活性化速度定数(insulin activation rate constant)に対応し、
【0240】
kaは、たとえばmin-1を単位として、皮下注射されたインスリンの吸収の速度に対応し、
【0241】
VIは、たとえばリットルを単位とするインスリンの分配の量に対応し、
【0242】
keは、たとえばmin-1を単位とするインスリンの血漿消失速度(plasma elimination rate)に対応し、
【0243】
tmaxは、たとえばminを単位とする、患者によって取り込まれたピークのグルコースの吸収に達するまでの時間に対応する。
【0244】
これらの15個のパラメータは、図3に示されたベクトル[PARAM]に対応する。
【0245】
このモデルは、10個の状態変数D1、D2、S1、S2、Q1、Q2、x1、x2、x3、およびIをさらに含み、これらの状態変数は、モデルによる患者の行動のシミュレーションの開始に対応する時間ステップt0におけるこれらの変数の値に対応する初期値のベクトル[INIT]に初期化される。
【0246】
本発明のシステムおよび方法は、上述のHovorkaモデルよりも単純な生理学的モデル、特に、Hovorkaモデルと比較してより少ない数の状態変数および削減された数のパラメータを有するコンパートメントモデルを使用してもよい。
【0247】
別の実施形態において、モデルは、深層学習モデルまたは機械学習モデルであることが可能である。
【0248】
この実施形態によれば、予測血糖モデルEは、以前のデータに基づく。予測血糖モデルEは、患者の生理のいかなる予め定義された分析的な定義も考慮に入れない。一例によれば、予測モジュールEは、患者の血糖に関する少なくとも1つの予測された値を決定するためにニューラルネットワークを使用する。
【0249】
予測された値は、将来の瞬間、すなわち、将来の時点Tに関して決定される。
【0250】
ニューラルネットワークは、以前の患者データに基づいて、または患者のグループの以前のデータを含むデータベースに基づいて機械によって構築される機械学習ニューラルネットワークである。例において、ニューラルネットワークの高レベルのアーキテクチャは、事前に定義されていてよいが、ニューラルネットワークのパラメータは、所与の患者の所与の状況を改善するために機械学習プロセスによって適応されてよい。別の例として、ニューラルネットワークの高レベルのアーキテクチャとニューラルネットワークのパラメータとの両方は、患者が属する患者の所与のグループの所与の状況を改善するために事前に定義されてよい。
【0251】
特に、機械学習モデルは、深層学習モデルであることが可能である。たとえば、ニューラルネットワークは、リカレントニューラルネットワークまたは畳み込みニューラルネットワークなどである。研究の結果、発明者は、リカレントニューラルネットワークおよび/または畳み込みニューラルネットワークが、患者データに基づく血糖の予測に特に適していると評価した。実際、ニューラルネットワークは、多くの入力を処理するその能力と、異なる活性化関数を設定することによって任意の非線形関数を近似するその能力のおかげで、動的で複雑なシステムをモデリングするための強力なツールであることが明らかになっている。特に、リカレントニューラルネットワークは、その要素(すなわち、ニューロンまたはノード)のうちの少なくとも1つに少なくとも再帰ノード(recurrency node)を含むので、時間的なデータを扱うのに適している。再帰は、ニューロンの現在の出力が入力に依存するだけでなく、システムの過去の出力に依存することをリカレントニューラルネットワークが理解するのを助ける。血糖の予測の特定の場合に、再帰は、予測された血糖値が残存インスリンまたは残存カーボの現在のレベルおよび血糖の現在の値に依存するだけでなく、血糖の過去の値にも依存することをリカレントニューラルネットワークが理解することを可能にし、言い換えると、リカレントニューラルネットワークは、所与のシステムのダイナミクスを理解することができる。
【0252】
図5は、患者の入力データに基づいて予測された血糖の値を決定するのに好適なリカレントニューラルネットワークの簡略化されたバージョンを示す。畳み込みニューラルネットワークも、患者の入力データに基づいて予測された血糖の値を決定するのに好適である。
【0253】
反復
この分野において、応用は、血糖の濃度の将来の予測に従って、インスリンのボーラス、基礎インスリン、および/またはグルコースを送達することによって血糖の濃度を制御するためのものである。たとえば、将来の予測は、1時間先の予測である。
【0254】
前述の予測血糖モデルのいずれかが、予測モジュールによって使用され得る。
【0255】
しかし、この詳細な実施形態においては、血糖値モデルが、図7に示されるように、上述の深層学習モデルまたは機械学習モデルであると仮定する。
【0256】
代替的な実施形態において、予測モジュールは、主な予測のための第1の血糖モデルと、中間予測のための第2の異なる血糖モデルとを実装することができる。2つの血糖モデルは、異なるアーキテクチャを有する、異なるノードの重みを有する、および/または同じアーキテクチャを有するが異なる訓練データセットで訓練された2つの機械学習モデルであることが可能である。
【0257】
送達されるインスリンの量は、少なくとも、主な予測Pxに基づいて決定され、インスリンポンプおよび/またはグルコースポンプは、少なくともこの量に基づいて制御される。
【0258】
したがって、ここではたとえば、上で説明されたように、最初の時点T0で行われた主な予測PGlyx = PGly(T0 + Tx)が、1時間先の血糖の将来の濃度であり、中間予測が、現在の時間と1時間先の時間との間の中間の時間の血糖の濃度の予測である。したがって、主な予測は、PGly60 = PGly(T0 + 60)である。
【0259】
主な予測は、以下の将来の主な時点、すなわち、40分、45分、50分、55分、65分、70分、75分、80分のうちのいずれかに関して行われ得る。
【0260】
上述のように、方法は、複数の主な予測が最初の時間T0に行われるようにして実施され得る。その他の主な予測は、PGly40 = PGly(T0 + 40)、PGly50 = PGly(T0 + 50)、PGly55 = PGly(T0 + 55)、PGly65 = PGly(T0 + 65)などであることが可能である。
【0261】
ここでは、たとえば、中間予測は、5分先、10分先、および30分先に設定される。中間予測は、PGly5、PGly10、およびPGly30である。
【0262】
その他の中間予測は、以下の中間の時点、すなわち、15分、20分、25分、35分などのうちのいずれかに設定され(使用され)得る。前述のように、方法は、少なくとも1つの中間点を用いて実施されることが可能であるが、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、またはそれより多いことさえ可能である。
【0263】
したがって、目的は、5分、10分、および30分の3つの中間予測のおかげで、血糖の濃度の1時間における将来の予測の信頼度を評価することである。
【0264】
図6および図7において、この特定の実施形態による本発明の全体的概要が、図式化される。
【0265】
示されるように、モデルは、5分、10分、および30分の3つの中間予測に関する3つの中間出力と、1時間または60分の主な予測に関する1つの主な出力とを有する。
【0266】
最初の反復において、すなわち、t = T0 = 0で、血糖予測器は、少なくとも実際の値RGly(T0)に基づいて、3つの中間予測PGly(T0 + 5)、PGly(T0 + 10)、PGly(T0 + 30)および主な予測PGly(T0 + 60)を決定する。
【0267】
第1の中間予測は、予測系列の時間分布の間隔の時間を設定する。
【0268】
t = T0 + 5で、実際の値RGly(T0 + 5)が、持続グルコースモニタリングシステムによって測定される。したがって、比較モジュールは、任意の比較方法に従ってPGly(T0 + 5)とRGly(T0 + 5)とを比較することによって、比較スコア[PGly(T0 + 5); RGly(T0 + 5)]を決定または計算することが可能である。
【0269】
本発明のこの特定の応用において、好ましい比較方法は、持続グルコースモニタリングシステムが誤差の広い範囲を持ち得るが、この範囲が経時的に極めて一定しており、勾配が非常に正確であるので、勾配比較である。
【0270】
ここで、勾配比較方法は、(まったく初めての反復に関して)RGly(T0)とRGly(T0 + 5)との間の勾配と、RGly(T0)とPGly(T0 + 5)と間の傾きとを比較する。
【0271】
したがって、第1の比較スコアは、任意の比較方法に基づいて計算または決定される。
【0272】
したがって、この時点で、評価モジュールは、PGly(T0 + 5)とRGly(T0 + 5)との間の比較スコア[PGly(T0 + 5); RGly(T0 + 5)]に基づいて、主な予測PGly(T0 + 60)に対する信頼度を評価することがすでに可能である。たとえば、比較スコアまたは集約された比較スコアに関する所定の閾値が、設定され得る。閾値とスコアとの間の距離(ここでは任意の数学的距離が使用され得る)が大きすぎる場合、信頼度評価モジュールは、主な予測PGly(T0 + 60)の信頼度が低いとすでに判断または判定し得る。この判定の使用は、第1の使用として後で説明される。
【0273】
しかし、同時に、すなわち、t' = t + 5 = T0 + 5 = T1で、血糖予測器は、少なくとも実際の値RGly(T1)に基づいて、3つの新しい中間予測PGly(T1 + 5)、PGly(T1 + 10)、PGly(T1 + 30)および別の主な予測PGly(T1 + 60)を決定する。
【0274】
様々な比較スコアが計算される場合、比較スコアのいずれかが、信頼度評価モジュールによって使用され得る。それは、集約されたスコアを形成するそれらのスコアの組合せであることも可能である。組合せは、スコアの重み付け、たとえば、最新の予測のスコアに関してより重い重みを含み得る。
【0275】
中間予測PGly(T1 + 5)は、予測PGly(T0 + 60)の信頼度を評価するために使用され得る。実際、時点T1 + 5とT0 + 10とは同じであり、したがって、中間予測PGly(T1 + 5)およびPGly(T0 + 10)は、同じ時点に関する、ただし、異なる瞬間に実現され、したがって、異なる実際の値RGlyに基づく予測である。
【0276】
それらの2つの中間予測は、最初の主な予測の信頼度を評価するために比較され得る。予測PGly(T1 + 5)がPGly(T0 + 10)よりも短いホライズンでの予測であるので、この予測は、最初の予測より2つの優位性を有し、すなわち、この予測は、より最近の実際の値に基づいており、その結果、ホライズンがより短いので、時間ベースのシステムは、予測できない方法で展開する時間または可能性がより少ない。それらの理由で、PGly(T1 + 5)は、PGly(T0 + 10)と比較される適切な値であり、それは、2つの予測の間のこの比較が、PGly(T0 + 10)とRGly(T0 + 10)との間の比較が行われ得るT0 + 10 = T1 + 5よりも早いt = T0 + 5 = T1で行われ得るという事実があるからである。
【0277】
t = T0 + 5 = T1でのこの予測比較スコア[PGly(T0 + 10); PGly(T1 + 5)]は、使用される実際の値が前の時点の予測によって置き換えられることを除いて同じ比較方法を用いて比較モジュールによって行われ得る。
【0278】
同様に、t = T0 + 5 = T1で、信頼度評価モジュールは、最初の主な予測のための第2の中間予測が同じ時間に関するより最近の中間予測と一致する場合、その他の中間の最初の予測および主な最初の予測は正確であるという特徴に基づいて、主な予測PGly(T0 + 60)についての信頼度を評価するために、同じ時点に関する2つの中間予測の間のこの比較スコアを使用することができる。
【0279】
さらに、信頼度評価モジュールは、比較スコア[PGly(T0 + 5); RGly(T0 + 5)]と比較スコア[PGly(T0 + 10); PGly(T1 + 5)]とを比較することができる。
【0280】
特に、勾配比較法による比較スコアは、たとえ予測が実際の値との絶対値が完全に正確でない場合でも、T0およびT1での中間予測の勾配の相関が主な予測PGly(T0 + 60)の精度の優れた洞察を与えるので、特に適切である。
【0281】
比較スコア[PGly(T0 + 5); RGly(T0 + 5)]および[PGly(T0 + 10); PGly(T1 + 5)]は、互いに近いが、時点T0にも近い2つの時点を比較するので、洞察に富んでいる。
【0282】
言い換えると、主な予測に関する最後の中間の時点TLの前のそれぞれの中間の時点Tに関して、信頼度評価モジュールは、信頼度を否定するか、またはそうでなければ最後の時点TLで確認されなければならない潜在的な信頼度を割り振ることができる。考え方は、中間予測が信頼度評価方法に従って十分に適切でない場合、できるだけ早く信頼度を否定することである。目的は、時間ベースのシステムに対してより優れた作用を持つために、できるだけ早く代替的なプロセスを許可し、それから本発明に従って信用される可能性がある将来の予測を改善することである。
【0283】
この特定の実施形態において、最後の時点TLは、TL = T0 + 30に設定される。言い換えると、TLは、主な予測のホライズンの半分であるホライズンに設定される。このパラメータは、異なる可能性がある。しかし、TLは、信頼度評価モジュールが主な予測の信頼度を否定することができる最後の瞬間であるとき、特に適切である。
【0284】
この潜在的な否定、または主な予測の最終的な信頼度の評価は、主な予測の使用がそれに基づくので、極めて重要である。したがって、最後の時点TLは、後で説明されるように、主な予測の信頼度が否定される場合に代替的なプロセスを可能にするために、主な予測のホライズンから大きく離れていることが望ましい。
【0285】
信頼度の確定的な評価
信頼度の確定的な評価は、所定の信頼時点TCで行われる。この実施形態において、この時点TCは、最後の中間時点TLであるように設定される。
【0286】
したがって、比較モジュールは、任意の比較方法に従って、実際の値RGly(TL = T0 + 30)を、時点TLに対応する中間予測、すなわち、発生順にPGly(TL-30 + 30)、PGly(TL-10 + 10)、およびPGly(TL-5 + 5)のいずれかと比較することができる。
【0287】
比較モジュールは、以下の3つの比較スコアを決定する。
- [RGly(TL = T0 + 30): PGly(TL-30 + 30)]、
- [RGly(TL = T0 + 30); PGly(TL-10 + 10)]、および
- [RGly(TL = T0 + 30); PGly(TL-5 + 5)]
【0288】
集約された比較スコアへと一緒に潜在的に組み合わされる3つの比較スコアを用いて、信頼度評価モジュールは、主な予測PGly(T0 + 60)の信頼度を最終的に割り振るかまたは否定することができる。
【0289】
集約された比較スコアが決定される場合、スコアは重み付けされ得る。たとえば、より新しい予測は、最も古い予測よりも重く重み付けされ得る。
【0290】
別の実施形態においては、単一の比較スコアが、すべての予測および対応する実際の値、すなわち、PGly(T0 + 5)、PGly(T0 + 10)、PGly(T0 + 30)、およびRGly(T0 + 5)、RGly(T0 + 10)、RGly(T0 + 30)を用いて決定される。
【0291】
この別の実施形態において、比較スコアは、したがって、[RGly(T0 + 5), RGly(T0 + 10), RGly(T0 + 30); PGly(T0 + 5), PGly(T0+ 10), PGly(T0 + 30)]である。
【0292】
同じ比較方法が、すべての中間予測および実際の値、ここでは、予測および実際の値の3つの対に対して使用される。
【0293】
厳密にすべての予測およびそれらに対応する実際の値を用いるのではなく、一部の予測およびそれらに対応する実際の値だけを用いて単一の比較スコアを決定することが可能である。たとえば、所定の数の過去の予測およびそれらに対応する実際の値のみが、単一の比較スコアを決定するために比較モジュールによって考慮に入れられ得る。
【0294】
好ましい方法は、時点TLに関する比較スコア(または集約された比較スコア)のいずれかと所定の閾値との比較である。
【0295】
この閾値は、信頼度評価モジュールの学習段階のおかげで決定され得る。この学習は、閾値と比較されたそれらの比較スコアに従って信用されるのに十分なだけ、すなわち、その信頼度を評価するのに十分なだけ正確ではないと考えられる一部の予測を否定し、この場合、信頼できない予測を考慮に入れられない将来の血糖の管理のための代替的なプロセスに切り替えることにある。
【0296】
つまり、2つの可能性が存在し、すなわち、(主な将来の時点での)主な予測が信用され、その信頼度が信頼度評価モジュールによって評価され、この予測が主な将来の時点での実際の血糖の管理のために使用されるか、または予測が信用され得ず、その信頼度が否定され、主な将来の時点での実際の血糖の管理のための代替的なプロセスが動作させられるかのどちらかである。
【0297】
主な将来の時点での実際の血糖と、同じ時点に関する予測された血糖とを比較することによって、所定の精度が達せられるまで、両者の差を小さくするように閾値が調整される。
【0298】
試行および反復によって、または傾きベースのアルゴリズムを使用することによって、適切な閾値が計算、学習、または決定され、信頼度評価モジュールによって使用されることが可能である。
【0299】
同じことが、時点TCの設定に当てはまる。ここでは、TLの時点がTCの時点であるので、TCの時点の設定は、最後の中間点TLを定義することを意味する。この設定も、試行および反復によって、または傾きに基づくアルゴリズムを使用することによって行われる。適切なTLの時点の選択は、可能な中間の時点について上で説明されたように、可能なすべての異なるTLの時点を用いて方法によって達せられる信頼度の予測精度を比較することによって行われる。適切なTLの時点の選択は、主な予測時点にも依拠する。
【0300】
それによって、時点TLに関する比較スコアが、たとえば、絶対誤差比較に従って閾値と比較され、主な予測の信頼度が、この比較に応じて割り振られるかまたは否定される。
【0301】
したがって、主な予測の信頼度が、確定的に割り振られるか、または最終的に否定される。
【0302】
信頼度評価モジュールの判断の使用
今、この時点TLで、信頼度は、割り振られたかまたは否定されたかのどちらかである。
【0303】
信頼度評価モジュールによって使用される閾値に関する学習段階と同様に、2つの可能性が存在し、すなわち、(主な将来の時点での)主な予測が信用され、その信頼度が信頼度評価モジュールによって評価され、この予測が主な将来の時点での実際の血糖の管理のために使用されるか、または予測が信用され得ず、その信頼度が否定され、主な将来の時点での実際の血糖の管理のための代替的なプロセスが動作させられるかのどちらかである。
【0304】
アルゴリズムの観点から、信頼度評価モジュールの判断は、コンピュータ化された血糖管理システムのアルゴリズムノードに対する責任を負う。
【0305】
念のための確認として、応用は、血糖の濃度の予測、ここでは、主な予測された血糖(主な予測データ)に従って、インスリンのボーラス、基礎インスリン、および/またはグルコース、たとえば、救助カーボ(rescue carbs)を送達することによって、能動システムを用いて、血糖の濃度を制御するためのものである。
【0306】
したがって、たとえば、信頼度評価の第1の使用は、信頼度が否定されるときに発生する。この場合、主な予測データ、すなわち、ここでは主な予測された血糖は、血糖を適切な限度の間に維持するために注射されるインスリンまたはグルコースの量を決定するために使用されない。
【0307】
この第1の使用において、血糖管理システムは、たとえば、予め定義された規則を含む代替的なコンピュータ化されたモジュールを実装することができる。特に、代替的なモジュールは、解釈可能な規則を含む。たとえば、代替的なモジュールは、特定の病状を説明し、この特定の病状に関連する結果を提供するために医師によって設定された規則を含む。これは、代替的なモジュールが定期的に更新される可能性を排除しない。そして、総合的システムの能動システムが、代替的なモジュールの出力に基づいて制御される。
【0308】
この使用は、時点TL前に、信頼度が否定される任意の中間の時点Tiで発生し得ることに留意されたい。
【0309】
これは、予測およびそれらの対応する実際の値が何らかの理由で利用可能でない場合にも発生し得る。この場合、比較スコアの決定は行われ得ず(少なくとも1つ)、評価方法の信頼性が低すぎるとみなされ得る。これは、単一の比較スコアがすべての予測および対応する実際の値を用いて決定される実施形態に特に当てはまる。
【0310】
信頼度評価の第2の使用は、信頼度が主な予測、主な予測された血糖に割り振られるときに発生する。この場合、主な予測データ、すなわち、ここでは主な予測された血糖は、血糖を適切な限度の間に維持するために注射されるインスリンまたはグルコースの量を決定するために使用される。
【0311】
この使用の例は、総合的システムの能動システムのための1組の動作パラメータを決定するために(信用された)主な予測された血糖に関するコンピュータ化された機械学習モジュールを実装することであることが可能である。そして、1組の動作パラメータが、能動システムを制御するために能動システム4に送信される。
【0312】
主な予測の信頼度の評価の第3の使用は、予測血糖モデルにおいて割り振られる一時的な信頼度である。
【0313】
この実施形態によれば、少なくとも2つの主な予測が考慮されなければならない。時点Tcで上述の方法に従って信頼度モジュールによって信頼性が割り振られた、最初の時点T0で決定された第1の主な予測、および時点TCでまたは少し後で決定された少なくとも第2の主な予測。
【0314】
第3の使用は、第1の主な予測の割り振られた信頼度に基づいて、上で定義されたように、第2の主な予測の信頼度を割り振るためのものである。
【0315】
この第3の使用は、時点TCで実現される任意の数のその他の主な予測、すなわち、第2の主な予測、第3の主な予測、第4の主な予測などに一般化され得る。これらのその他の主な予測は、すべて信頼時点TCで(または少なくとも、第1の主な予測に関する信頼性の割り振りの少し後に同時に)行われる。
【0316】
第2の主な予測の信頼度は、第1の主な予測の信頼度のように評価されるのではなく、むしろ直接割り振られる。したがって、第2の主な予測は、前述の第2の使用によって直接使用され得る。
【0317】
この第3の使用は、第2の主な予測のタイムラインの時点TCの前に信頼度が割り振られるので、時間を節約することを可能にする。前述のように、対象者の経時的な血糖の濃度は、約30分の時間的慣性を有する時間ベースのシステムと考えられる。したがって、この例において説明されたように15分節約することは、時間の重要な節約である。
【0318】
同じことが、任意の数のその他の主な予測における、すなわち、複数の主な予測が時点TCで行われるときの一般化に当てはまる。モデルの割り振られたこの一時的な信頼度が、時間の節約を可能にする。
【0319】
第1の主な予測のタイムラインに関連して、様々なその他の主な予測が、継続時間TC-T0の間に、すなわち、主な予測の信頼度が(第3の使用に従って)割り振られる前に、上で定義されたように第1の主な予測と第2の主な予測との間に決定されており、決定されたそれらの主な予測が中間の主な予測と呼ばれることに留意されたい。
【0320】
これらの中間の主な予測の各々の信頼度は、これらの中間の主な予測が第1の主な予測とは独立しているので、方法に従ってやはり評価される。それぞれの中間の主な予測の信頼度は、それらのそれぞれのタイムラインの任意の中間の時点Tiで否定され得るか、またはそれらのタイムラインの信頼時点TCで確定的に割り振られ得るかのどちらかである。
【0321】
いずれの信頼度の否定も発生しない場合、それぞれの中間の主な予測に割り振られた各信頼度は、最後の中間の主な予測の信頼度が使用されるまで、(予測モデルの一時的な信頼度が割り振られる場合)説明された第3の使用に従って使用され得る。この時点で、モデルの一時的な信頼度は失効しており、次の主な予測の信頼度は上記の方法に従って評価される。
【0322】
中間の主な予測の1つの信頼度がいずれかの時点で否定される場合、モデルの一時的な信頼度はこの時点で失効しており、予測モデルによって決定された次の主な予測の信頼度は上述の方法に従って評価される。
【0323】
さらに、第1の主な予測のタイムラインに従って、1つの中間予測の信頼度の評価が、主な第1の予測の評価と同じ時点で行われることが可能であり、すなわち、1つの中間の主な予測の信頼度が否定される一方で、主な予測の信頼度が割り振られ得る。この場合、一時的な信頼度は割り振られず、そのとき、第1の主な予測の信頼度は上述の第3の使用に従って使用され得ない。
【符号の説明】
【0324】
1 医療システム
2 データ獲得システム
3 データ処理システム
4 能動システム
11 決定モジュール
301 第1の2コンパートメントサブモデル
303 第2の2コンパートメントサブモデル
305 第3のサブモデル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【外国語明細書】