(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098869
(43)【公開日】2023-07-11
(54)【発明の名称】内部加圧に対する増加した弾性を有するカテーテルバルーン
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20230704BHJP
A61M 25/10 20130101ALI20230704BHJP
【FI】
A61B18/14
A61M25/10 540
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022211652
(22)【出願日】2022-12-28
(31)【優先権主張番号】63/294,823
(32)【優先日】2021-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/072,905
(32)【優先日】2022-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】オードリー・ブ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン・ロドリゲス
【テーマコード(参考)】
4C160
4C267
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK04
4C160KK12
4C160KK54
4C160MM38
4C267AA06
4C267BB28
4C267GG02
4C267GG05
(57)【要約】
【課題】カテーテルバルーンを提供すること。
【解決手段】カテーテルバルーンは、楕円体膜を備える。各々が基材及びコンタクト電極を備える、複数のフレキシブル回路ストリップが、膜の周りに配置されている。コーティングは、膜の少なくとも外側表面の上に配置され、基材の各々の一部分の上にも配置されていてもよい。コーティングは、パリレンなどの誘電材料を含むことができる。コーティングは、バルーンの滑らかさを増加させることができる。バルーンを拡張させる内圧を受けたとき、コーティングはまた、拡張前後のバルーンの直径の変化によって測定したときに、コーティングを欠くバルーンに対して、バルーンの弾性を増加させることができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルバルーンであって、
近位端部及び遠位端部と、外側表面とを含む楕円体膜と、
前記膜の周りに配置された複数のフレキシブル回路ストリップであって、前記フレキシブル回路ストリップの各々が、
外側表面と、前記膜の前記外側表面の上に配置された内側表面と、を含む基材と、
コンタクト電極であって、前記コンタクト電極が環境に露出可能であるように、前記基材の前記外側表面上に配置されたコンタクト電極と、
を備える、複数のフレキシブル回路ストリップと、
前記膜の前記外側表面の上に配置されているが、前記コンタクト電極のいずれの上にも配置されていないコーティングと、
を備える、カテーテルバルーン。
【請求項2】
前記複数のフレキシブル回路ストリップの各々が、前記膜の前記近位端部から前記膜の前記遠位端部に向かって延びる、請求項1に記載のカテーテルバルーン。
【請求項3】
前記コーティングが、前記基材の各々の一部分の上に配置されている、請求項2に記載のカテーテルバルーン。
【請求項4】
前記コンタクト電極の各々が、主本体から離れて延びる複数の突起部を有するフィッシュボーン構成を有する、請求項3に記載のカテーテルバルーン。
【請求項5】
前記コーティングの一部分が、前記複数の突起部のうちの第1の突起部と第2の突起部との間に配置されている、請求項4に記載のカテーテルバルーン。
【請求項6】
前記コーティングが、誘電材料を含む、請求項3に記載のカテーテルバルーン。
【請求項7】
前記誘電材料が、パリレンを含む、請求項6に記載のカテーテルバルーン。
【請求項8】
前記コーティングの厚さが、約1マイクロメートル~約5マイクロメートルである、請求項6に記載のカテーテルバルーン。
【請求項9】
前記コーティングの前記厚さが、約3マイクロメートルである、請求項8に記載のカテーテルバルーン。
【請求項10】
前記膜の前記外側表面から前記コーティングの外側表面までの第1の距離と、前記膜の前記外側表面から前記コンタクト電極の前記外側表面までの第2の距離との間の差が、約5マイクロメートル未満である、請求項6に記載のカテーテルバルーン。
【請求項11】
前記差が、約1マイクロメートル未満である、請求項10に記載のカテーテルバルーン。
【請求項12】
前記差が、約0.5マイクロメートル未満である、請求項11に記載のカテーテルバルーン。
【請求項13】
前記膜が、約6.89kPa(約1ポンド/平方インチ)未満の第1の内圧を受けたとき、第1の直径を有し、前記膜が、6.89kPa(1ポンド/平方インチ)より大きい第2の内圧を受けたとき、第2の直径を有する、請求項1に記載のカテーテルバルーン。
【請求項14】
前記第2の内圧が約6.89kPa~約17.24kPa(約1ポンド/平方インチ~約2.5ポンド/平方インチ)であるとき、前記第2の直径が、前記第1の直径よりも0.5%未満大きい、請求項13に記載のカテーテルバルーン。
【請求項15】
前記第2の内圧が約17.24kPa~約27.58kPa(約2.5ポンド/平方インチ~約4ポンド/平方インチ)であるとき、前記第2の直径が、前記第1の直径よりも1.25%未満大きい、請求項13に記載のカテーテルバルーン。
【請求項16】
前記第2の内圧が約27.58kPa~約37.92kPa(約4ポンド/平方インチ~約5.5ポンド/平方インチ)であるとき、前記第2の直径が、前記第1の直径よりも2%未満大きい、請求項13に記載のカテーテルバルーン。
【請求項17】
前記直径が、約30ミリメートルに等しい、請求項14に記載のカテーテルバルーン。
【請求項18】
前記複数のフレキシブル回路ストリップが、10個のフレキシブル回路ストリップを含む、請求項17に記載のカテーテルバルーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(同時係属出願の相互参照)
本出願は、米国特許法第119条の下で2021年12月29日に出願された米国特許出願第63/294,823号に対する優先権を主張する。この出願の全内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本明細書において開示されている主題は、電気生理学的カテーテル、特に、バルーン表面に配設されている電極による心臓組織をアブレーションすることが可能な電気生理学的カテーテルに関する。
【背景技術】
【0003】
心臓組織のアブレーションは、心不整脈の治療に使用されている。焼灼エネルギーは、典型的には、先端部分により心臓組織に供給され、この先端部分は、アブレーションされるべき組織に沿って焼灼エネルギーを送達することができる。これらのカテーテルの一部は、三次元構造、例えばワイヤバスケット及びバルーンに配設されている又は組み入れられている、種々の電極から焼灼エネルギーを与える。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
カテーテルバルーンは、近位端部及び遠位端部と、外側表面とを含む楕円体膜を備える。複数(例えば、10個)のフレキシブル回路ストリップが、膜の周りに配置されている。フレキシブル回路ストリップの各々は、膜の近位端部から膜の遠位端部に向かって延びる。加えて、各々は、基材と、コンタクト電極と、を備える。基材は、外側表面と、膜の外側表面の上に配置された内側表面と、を含む。コンタクト電極は、コンタクト電極が環境、例えば心臓環境に露出可能であるように、基材の外側表面上に配置されている。コンタクト電極の各々は、主本体から離れて延びる複数の突起部を含むフィッシュボーン構成を有する。
【0005】
コーティングは、膜の少なくとも外側表面の上に配置されている。コーティングはまた、基材の各々の一部分の上に配置されていてもよい。例えば、コーティングは、複数の突起部のうちの第1の突起部と第2の突起部との間の基材上に配置されていてもよい。
【0006】
コーティングは、パリレンなどの誘電材料を含むことができる。コーティングの厚さは、約1マイクロメートル~約5マイクロメートル、例えば約3マイクロメートルであってもよい。更に、コーティングは、バルーンの滑らかさを増加させることができる。例えば、膜の外側表面からコーティングの外側表面までの第1の距離と、膜の外側表面からコンタクト電極の外側表面までの第2の距離との間の差は、約5マイクロメートル未満、例えば、約1マイクロメートル未満又は約0.5マイクロメートル未満であってもよい。
【0007】
コーティングは、コーティングを欠くバルーンに対して、バルーンの弾性を増加させる。例えば、膜は、約1ポンド/平方インチ未満の第1の内圧を受けたとき、第1の直径(例えば、約30ミリメートル)を有してもよく、膜は、約1ポンド/平方インチより大きい第2の内圧を受けたとき、第1の直径より大きい第2の直径を有する。バルーンがコーティングされている場合、第2の内圧が約1ポンド/平方インチ~約2.5ポンド/平方インチであるとき、第2の直径は、第1の直径より0.5%未満大きく、第2の内圧が約2.5ポンド/平方インチ~約4ポンド/平方インチであるとき、第2の直径は、第1の直径より1.25%未満大きく、第2の内圧が約4ポンド/平方インチ~約5.5ポンド/平方インチであるとき、第2の直径は、第1の直径より2%未満大きい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本明細書は、本明細書に記載の主題を特に指摘し、かつ明確にその権利を主張する特許請求の範囲で終了するが、その主題は、添付の図面と併せて取られた特定の実施例の以下の説明からよりよく理解されると考えられ、図面において、同様の参照番号は同じ要素を特定する。
【
図2】ラッソーカテーテルと共に使用している、拡張状態のバルーンを有するカテーテルの上面図を示す。
【
図3】補強構成要素を含む補強材を含むものとしてバルーンを示している、
図2のカテーテルの遠位端部の斜視図を示す。
【
図4】バルーンの内部のカテーテルの構造を示している、
図2のカテーテルの遠位端部の斜視図を示す。
【
図5】
図3のバルーン上のフレックス回路電極アセンブリのストリップの斜視詳細図を示す。
【
図6A】
図6に示すストリップの一部分の詳細図を示す。
【
図6B】切断線6B-6Bに沿って取られた、
図6Aに示す詳細図の一部分の断面図を示す。
【
図7A】
図6に示すストリップの一部分の代替詳細図を示す。
【
図7B】切断線7B-7Bに沿って取られた、
図7Aに示す詳細図の一部分の断面図を示す。
【
図8A】拡張構成にあるバルーンの第1の試料の写真を示す。
【
図8B】拡張構成にあるバルーンの第2の試料の写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の詳細な説明は、図面を参照して読まれるべきものであり、異なる図面における同様の要素には同様の番号が付けられている。図面は、必ずしも縮尺どおりとは限らず、選択された実施形態を描写しており、また本発明の範囲を限定することを意図していない。詳細な説明は、限定ではなく、例として、本発明の原理を例解する。この説明は、当業者が本発明を製造及び使用することを明らかに可能にし、また本発明を実施するための最良の態様であると現在考えられているものを含めて、本発明のいくつかの実施形態、適応例、変形例、代替物及び使用を説明する。
【0010】
本明細書で使用される際、任意の数値又は数値範囲に対する「約」又は「ほぼ」という用語は、構成要素の一部又は構成要素の集合を、本明細書に記載のその意図された目的に沿って機能させるのに適した寸法の許容誤差を示すものである。より具体的には、「約」又は「およそ」は、列挙された値の±10%の値の範囲を指してもよく、例えば「約90%」は、81%~99%の値の範囲を指してもよい。更に、本明細書で使用される場合、「患者」、「宿主」、「ユーザー」、及び「被験者」という用語は、任意のヒト又は動物被験体を指し、ヒト患者における本発明の使用が好ましい実施形態を表すが、システム又は方法をヒトの使用に限定することを意図するものではない。
【0011】
概説
機能不全心臓を治す心臓組織のアブレーションは、周知の手技である。典型的には、アブレーションを成功させるために、心筋の様々な位置で心臓の電極電位を測定する必要がある。更に、アブレーション中の温度測定により、アブレーションの有効性を測定することができるデータがもたらされる。典型的には、アブレーション処置に対して、実際のアブレーション前、アブレーション中、及びアブレーション後に、電極電位及び温度が測定される。
【0012】
アブレーションカテーテルは、ルーメンを含むことができ、バルーンは、カテーテルルーメンから配置され得る。多層の可撓性のある金属構造体がバルーンの外壁又は膜に取り付けられる。構造体は、長手方向軸線を中心に周囲に配置された複数の電極群を含み、それぞれの電極群は、典型的には、長手方向に配置された複数のアブレーション電極を含む。
【0013】
それぞれの電極群はまた、その群におけるアブレーション電極から物理的かつ電気的に絶縁されている少なくとも1つの微小電極を含むことができる。それぞれの電極群はまた、少なくとも熱電対を含むことができる。一部の実施形態では、それぞれの電極群は、通常の場所に形成された微小電極及び熱電対を含む。単一のカテーテルを使用して、アブレーション、電極電位の測定、及び温度の測定を行う能力のうちの3つの機能により、心臓のアブレーション手技を簡素化することができる。
【0014】
システムの説明
図1は、一実施形態による、装置12を使用する侵襲的医療処置の概略図である。この処置は医療専門家14によって実施され、一例として、以下の説明における処置は、ヒト患者18の心臓の心筋16の一部のアブレーションを含むと仮定される。ただし、本明細書に開示される実施形態は、この特定の処置に単に適用可能であるわけでなく、生物学的組織又は非生物学的材料に対する実質的に任意の処置を含み得ることが理解される。
【0015】
アブレーションを実施するために、医療専門家14は、患者の管腔に事前に配置されたシース21にプローブ20を挿入する。シース21は、プローブ20の遠位端22が患者の心臓に入るように位置付けられている。
図2に示す診断/治療用カテーテル24(例えば、バルーンカテーテル)は、プローブ20のルーメン23内に少なくとも部分的に配置され、それにより、ルーメン23を通して展開されて、プローブ20の遠位端部から出ることができる。
【0016】
図1に示されているように、装置12は、装置の操作用コンソール15内にある、システムプロセッサ46により制御される。コンソール15は、プロセッサと通信するために専門家14によって使用される制御装置49を備える。処置の間、プロセッサ46は、典型的には、当該技術分野において既知である任意の方法を使用してプローブ20の遠位端部22の場所及び配向を追跡する。例えば、プロセッサ46は、磁気追跡方法を使用することができ、患者18の外部にある磁気送信機25X、25Y、及び25Zは、プローブ20の遠位端に配置されたコイル内で信号を生成する。CARTO(登録商標)システム(Biosense Webster,Inc.(Irvine,California)から入手可能)は、このような追跡方法を使用する。
【0017】
プロセッサ46用のソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して電子形式でプロセッサにダウンロードすることができる。代替的に又は追加的に、ソフトウェアは、光、磁気又は電子記憶媒体などの非一時的な有形媒体上に提供されてもよい。遠位端部22の追跡は、画面62上で患者18の心臓の三次元表示60で表示され得る。ただし、それは、例えば、蛍光透視法又はMRIによって2次元的に表示されてもよい。
【0018】
装置12を操作するために、プロセッサ46は、装置を操作するためのプロセッサにより使用される多数のモジュールを有するメモリ50と通信する。したがって、メモリ50は、温度モジュール52、アブレーションモジュール54、及び心電計(ECG)モジュール56を含み、これらのモジュールの機能を以下で説明する。メモリ50は、典型的には、遠位端部22にかかる力を測定する力モジュール、プロセッサ46により使用される追跡方法を操作する追跡モジュール、及びプロセッサが流体接続73を介してバルーン80内に提供される潅注を制御することを可能にする潅注モジュールなどの他のモジュールを含む。簡略化のために、そのような他のモジュールは
図1には示されていない。モジュールは、ハードウェア要素及びソフトウェア要素を含むことができる。例えば、モジュール54は、少なくとも1つの出力部又は出力チャネル、例えば、10個の出力部又は10個の出力チャネルを有する高周波発生器を含むことができる。出力部の各々は、スイッチによって個別にかつ選択的に起動又は停止されてもよい。すなわち、各スイッチは、信号発生器とそれぞれの出力部との間に配設されてもよい。したがって、10個の出力部を有する発生器は、10個のスイッチを含むことになる。これらの出力部はそれぞれ、以下に更に詳細に説明されるアブレーションカテーテル上の電極、例えばバルーン80上の10個の電極33に個別に結合されてもよい。このような電気的接続は、各出力部と各電極との間に電気経路を確立することによって達成することができる。例えば、各出力部は、1つ又は2つ以上のワイヤ又は適切な電気コネクタによって対応する電極に接続されてもよい。したがって、一部の実施形態では、電気経路は、少なくとも1本のワイヤを含むことができる。一部の実施形態では、電気経路は、電気コネクタ及び少なくとも第2のワイヤを更に含むことができる。したがって、電極33は、スイッチにより選択的に活性化及び非活性化されて、他の電極の各々から個別に高周波エネルギーを受け取ることができる。
【0019】
図3は、拡張構成のバルーン80を示す診断/治療用カテーテル24の概略斜視図である。診断/治療用カテーテル24は、近位又は第1のシャフト部分82P、遠位又は第2のシャフト部分82D、及び遠位シャフト端部88を有する管状シャフト70により支持されている。
図3と同様であるが、バルーン80上の外部構造が隠されている
図4に示すように、遠位又は第2のシャフト部分82Dは、少なくとも部分的に近位又は第1のシャフト部分82P内に、それと伸縮関係で配設されている。シャフト70はまた、中空の中心管74を含み、これにより、カテーテルは、中心管を通って遠位シャフト端部88を過ぎることが可能となる。カテーテルは、例示したとおり、局所線状カテーテル又はラッソーカテーテル72であってもよい。ラッソーカテーテル72を肺静脈内に挿入し、口のアブレーションの前に口に対して正しく診断/治療用カテーテル24を配置することができる。カテーテル72の遠位ラッソー部分は、典型的には、ニチノールなどの形状記憶保持材料によって形成されている。診断/治療用カテーテル24はまた、PV内又は心臓の他の場所で、線形カテーテル又は局所カテーテル99(
図3の破線で示されているように)と共に使用することができることを理解されたい。局所カテーテル99は、その遠位先端に力センサを含むことができる。好適な力感知遠位先端は、米国特許第8,357,152号及び同第10,688,278号に開示されており、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。診断/治療用カテーテルと共に使用される任意のカテーテルは、例えば、圧力感知、アブレーション、診断、例えば、ナビゲーション及びペーシングを含む特徴及び機能を有し得る。
【0020】
図5を更に参照すると、診断/治療用カテーテル24のバルーン80は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリウレタン、Pellethane(登録商標)又はPEBAX(登録商標)などのプラスチックから形成された生体適合性材料の膜26を含む。膜26は、外側表面26o及び内側表面26iを有する。膜26、したがってバルーン80は、近位端部87及び遠位シャフト端部88に遠位端部89を有する。
【0021】
シャフト70及び遠位シャフト端部88は、バルーン80の長手方向軸78を画定する。バルーン80は、プローブ20のルーメン23を介して、折り畳まれた構成で配置される。バルーン80の膜26の近位端部は、第1の又は近位シャフト部分82Pに取り付けられ、バルーン80の膜26の遠位端部は、遠位シャフト端部88に近接して、第2の又は遠位シャフト部分82Dに取り付けられている。バルーン80は、遠位端部22から出た後、遠位シャフト端部88を近位に移動させてバルーン80の遠位端部89とバルーン80の近位端部87との間の距離を短縮し、こうしてバルーン80の幅を大きくすることによって、すなわち、近位シャフト部分82P内で近位に遠位シャフト部分82Dをはめ込むことによって、拡張構成に拡張され得る。灌注流体を流体接続73を介してバルーン80に通過させることにより、バルーン80を更に拡張することができる。バルーン80は、灌注を停止し、次いで遠位シャフト端部88を近位端部87から離れるように移動させて、バルーン80の幅を減少させ、長さを拡張することによって、すなわち、近位シャフト部分82P内で遠位に遠位シャフト部分82Dをはめ込むことによって、その折り畳まれた構成に戻し得る。第1のシャフト部分と第2のシャフト部分との間のこの伸縮運動は、
図2に示される制御ハンドル83のノブ85によって制御され得る。具体的には、ノブ85は、遠位シャフト部分82Dを遠位に延在させるために第1の方向に回転され得、こうして遠位シャフト端部88を遠位に移動させ、一方、ノブ85は、遠位シャフト部分82Dを近位に引き戻すために反対方向に回転され得、こうして遠位シャフト端部88を近位に移動させ得る。ノブ85は、遠位シャフト端部をその最も近位の位置に、かつその最も遠位の位置に維持するために、戻り止めなどの係止特徴部を更に含み得る。そのような係止特徴部は、バルーン80がアブレーション中にその拡張構成からいくらか折り畳まれるのを防ぐのに役立ち、プローブ20のルーメン23への引き戻し中にその折り畳まれた構成からいくらか拡張するのを防ぐのに役立つ。バルーンを折り畳まれた構成と拡張構成との間で移行させることに関する更なる説明は、米国特許出願公開第2018/0161093号として公開された、米国特許出願第15/827,111号に記載されている。この出願の全内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0022】
膜26は、多層のフレキシブル回路電極アセンブリ84として構築される電極と温度感知部材との組み合わせを支持して、これを担持する。「フレックス回路電極組立体」84は、多くの異なる幾何学的構造を有してもよい。例示されている実施形態では、フレックス回路電極アセンブリ84は、複数の放射状フレキシブル回路ストリップ30を有する。ストリップ30は、バルーン80の外側膜表面26oの周辺に均一に分布されている。各々は、より狭い遠位部分に向かって徐々に先細りする、より広い近位部分を有する基材34を備える。
図3で分かるように、フレキシブル回路電極アセンブリ84は、10個のストリップ30を含むことができる。
【0023】
各基材34は、広い側の近位部分に対して近位に近位尾部31P、及び狭い側の遠位部分の遠位に遠位尾部31Dを有する。以下に説明するように、遠位尾部31Dは、遠位シャフト端部88まで延びて、その下に固定されてもよい。基材34は、エポキシなどの接着剤で膜26に接着することができる。いくらかの接着剤は、基材34の内側表面37と膜26との間に配置することができる。
【0024】
フレックス回路電極アセンブリ84を、
図5に示すようなそのストリップ30のうちの1つに関して説明する。フレックス回路電極アセンブリ84は、例えば、ポリイミドなどの非導電性の生体適合性材料で構成された、可撓性かつ弾性のシート状の基材34を含む。一部の実施形態では、シート状基材34は、バルーン膜26の耐熱性と比較して、より大きな耐熱性(又はより高い融解温度)を有する。一部の実施形態では、基材34は、バルーン膜26の融点よりおよそ摂氏100度以上高い分解温度を有する熱硬化性材料から構成されている。基材は、約15マイクロメートル~約25マイクロメートル、例えば約20マイクロメートルの厚さを有してもよい。
【0025】
基材34には、バルーン部材26の灌注用開口部27と整列する1つ又は2つ以上の灌注孔又は開口部35が形成されており、その結果、灌注用開口部27及び35を通過する流体を、小孔のアブレーション部位に流すことができる。基材34は、レーザ切断などの任意の好適な製造技術によって成形するために切断されてもよく、灌注孔35が形成されてもよい。
【0026】
基材34は、バルーン膜26から離れる方向に面する第1のすなわち外側表面36、及びバルーン膜26に面する第2のすなわち内側表面37を有する。その外側表面36上で、基材34は、心臓の一部分の内部などの環境に露出可能であり、かつ特に肺静脈口と組織接触するように適合されていてもよい、コンタクト電極33を支持及び担持する。その内側表面37上で、基材34は、配線電極38を支持及び担持する。コンタクト電極33は、アブレーション中、小孔にRFエネルギーを送達するか、又は小孔の温度感知のための熱電対接合部に接続されている。例示されている実施形態では、コンタクト電極33は、長手方向細長部分40と、拡大近位端部42Pと遠位端部42Dとの間に概ね等間隔に配置された、細長部分40のそれぞれの側面から概ね垂直に延びる、複数の薄い横断線状部分又は突起部41と、を有する。細長部分40は、より大きい幅を有し、突起部の各々は、概ね均一なより小さい幅を有する。したがって、コンタクト電極33の構成又はトレースは、電極の主本体から延びる様々な長さの「魚の骨」である突起部41を有する「魚の骨」に似ていてもよいが、本発明は、そのような構成に限定されないことに留意されたい。領域又は「パッチ」アブレーション電極とは対照的に、隣接する突起部41間の空隙領域43により、その赤道に沿う位置において必要に応じて有利にバルーン80を内側に折り畳むことができる、又は半径方向に拡張することができる一方、コンタクト電極33の突起部41は、有利に小孔とのコンタクト電極33の周囲接触面又は赤道接触面を増加させる。例示されている実施形態では、突起部41は、異なる長さを有し、一部は、より長く、他は、より短い。例えば、複数の突起部は、遠位突起部と、近位突起部と、それらの間の突起部と、を含み、それらの間の突起部は各々、より短い隣接突起部を有する。例えば、各突起部は、各突起部の長さが各基材34の先細り構成に概ね従うように、その遠位又は近位の直接隣接する隣接突起部(単数又は複数)とは異なる長さを有する。図示されている実施形態では、細長部分40を横切って(細長部分40の各側面を過ぎて)延びる22個の突起部が存在し、最長の突起部が拡大近位端部42Pから3番目の突起部である。いくつかの実施形態では、コンタクト電極33は、外側又はコンタクト層76と、コンタクト層と基材34との間の内側又はシード層77と、を含む。コンタクト層76は、金を含むことができる。シード層77は、チタン、タングステン、パラジウム、銀、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。シード層77は、基材34上にスパッタリングすることができ、コンタクト層76は、シード層上にスパッタリング、めっき、又はそれらの組み合わせを行うことができる。シード層77の厚さは、約250オングストローム~約350オングストローム、例えば、約300オングストロームであってもよい。コンタクト層76の厚さは、約0.75マイクロメートル~約1.25マイクロメートル、例えば、約1マイクロメートルであってもよい。シード層77がどんな材料、例えばチタンを含んでいても、シード層77は、基材34の材料、例えばポリイミドに容易に結合可能であるべきである。
【0027】
1つ又は2つ以上の排除ゾーン47がコンタクト電極33内に形成されており、排除ゾーン47のそれぞれは、基材34に形成された灌注用開口部35を囲繞している。排除ゾーン47は、コンタクト電極33内に意図的に形成された空隙であり、灌注用開口部35をそれらの位置及びそれらの機能に適応させた状態で電極アセンブリ84を構築している間にコンタクト電極33に損傷が加わるのを回避するためのものである。
【0028】
基材34中の貫通孔を通って延在する導電性形成物又は金属製形成物であり、また外側表面36上のコンタクト電極33と内側表面37上の配線電極38とを接続する電線用導管として構成された、1つ又は2つ以上の導電性ブラインドビア48も、コンタクト電極33中に形成される。「導電性の」は、本明細書において、すべての関連する事例において、「金属製の」と互換的に使用されることを理解されたい。例えば、ビアは、基材34のスルーホールを通して金をめっきすることによって製造されてもよい。好ましくは、ブラインドビア48の厚さは、基材34の厚さよりも小さい、又はそれに近い。例えば、ブラインドビア48の厚さは、約4マイクロメートル~約25マイクロメートル、例えば、約10マイクロメートル~約14マイクロメートルであってもよい。
【0029】
例示されている実施形態では、コンタクト電極33は、長手方向に、約0.1インチ~1.0インチ、及び好ましくは約0.5インチ~0.7インチ、より好ましくは約0.57インチとなり、4つの排除ゾーン47及び9つのブラインドビア48を有する。
【0030】
基材34の内側表面37において、配線電極38は、コンタクト電極33の細長部分40と概ね同様の形状及びサイズの細長い本体として概ね構成されている。配線電極38は、「脊柱」とやや類似し、電極アセンブリ84の各基材34に対して所定の程度の長手方向の剛性をもたらすという観点では、脊柱としても機能している。配線電極38は、ブラインドビア48の各々がコンタクト電極33及び配線電極38の両方と導電接触するよう位置付けられている。例示されている実施形態では、2つの電極33及び38は、他方と長手方向に整列しており、9つすべてのブラインドビア48は、電極33及び38の両方と導電接触している。一部の実施形態では、配線電極38は、銅の内側部分及び金の周辺部分を有する。
【0031】
配線電極38はまた、基材34の灌注用開口部35の周囲にその排除ゾーン59を有して形成されている。配線電極38には、少なくとも1つの活性61Aであるはんだパッド部分が更に形成されており、1つ又は2つ以上の不活性(inactive)はんだパッド部分61Bが存在してもよい。はんだパッド部分61A及び61Bは、配線電極38の細長い本体の側面からの延長部である。例示されている実施形態では、活性はんだパッド部分61Aには、細長形本体に沿っておよそ中間の場所に形成されており、それぞれの不活性はんだパッド部分61Bは、拡大遠位端部42D及び拡大近位端部42Pの各々に設けられている。
【0032】
例えば、はんだ溶接部63によって、活性はんだパッド部分61Aに、対線、例えば、コンスタンタンワイヤ51及び銅配線53が取り付けられている。銅配線53は、配線電極33のリードワイヤを提供し、銅ワイヤ53及びコンスタンタンワイヤ51は、接合部がはんだ溶接部63にある熱電対を提供する。対線51/53は、膜26に形成された貫通孔29を通過する。貫通孔29が存在しない他の実施形態では、対線51/53が、近位リング28Pに一層近接する管状シャフト側壁に形成された(図示しない)別の貫通孔を介して管状シャフト70に入るまで、対線51/53は、膜26と基材34との間、更に近位には膜26と近位尾部31Pとの間を通ることができることが理解される。
【0033】
基材34は、バルーン膜26に取り付けられており、それにより、基材34の外側表面36は、露出され、基材34の内側表面37は、バルーン膜26に取り付けられ、配線電極38及び対線51/53は、基材34とバルーン膜26との間に挟まれている。基材34の灌注用開口部35は、バルーン膜26の灌注用開口部27と整列する。配線電極38における排除ゾーン59及びコンタクト電極33における排除ゾーン47は、互いに、及びバルーン26の灌注用開口部27及び基材34の灌注用開口部35と、それぞれ同心円状に並んでいる。
【0034】
上述の開示による、診断/治療用カテーテルの構築に関する更なる詳細は、米国特許出願公開第2017/0312022号として公開された米国特許出願第15/360,966号に見出すことができる。この出願の全内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0035】
増加した弾性
上記の主題に関する進行中の研究及び製品開発努力を通して、出願人は、バルーン80の弾性を増加させることによって、組織、例えば、肺静脈口の組織に接触するコンタクト電極33の全表面積を最大化することができることを解明した。本明細書で使用されるとき、「弾性を増加させる」という語句は、バルーン80の可撓性を減少させて、上述のように、近位シャフト部分82P内で近位方向の遠位シャフト部分82Dの伸縮移動に続いてバルーン80を拡張させる灌注流体によって生成される拡張圧力に応じて、バルーン80の材料が、あったとしてもほとんど伸張しないようにすることを意味する。
【0036】
図6を参照すると、誘電材料、例えばパリレンから構成されるコーティング100が、膜26の少なくとも外側表面上に設けられている。コーティングは、電流が1つのコンタクト電極33から別のコンタクト電極33に直接流れるのを防止するのに役立つ誘電材料であるべきである。コーティング100は、フレキシブル回路84の基材34の各々の少なくとも一部分上に追加的に設けられていてもよい。コーティング100は、コンタクト電極33の周辺部分上に追加的に設けられていてもよい。
図6、並びに
図6A及び
図7Aに示すその代替詳細
図Dに示すように、コーティング100は、基材34上に延びるように設けられているが、いずれの場合も、コンタクト電極33のいずれの部分も覆わない。
【0037】
図6の詳細
図Dに対応する
図6Aでは、コーティング縁部94は、第1の突起部41’及び第2の突起部41’’などのその突起部を含むコンタクト電極33から離間している。したがって、
図6Aの切断線6B-6Bを通って取られた断面図である
図6Bで分かるように、コーティング100のいかなる部分も、隣接する突起部、例えば、第1の突起部41’と第2の突起部41’’との間に見えず、したがって、これらの突起部の間に間隙93を残す。
【0038】
あるいは、コーティング100は、コーティング100がコンタクト電極33の隣接する突起部、例えば、第1の突起部41’と第2の突起部41’’との間の基材34の上にも配置されているように、コンタクト電極33の外側境界90にほぼ当接する、当接する、又は更にはそれをわずかに覆うことができる。
図6の詳細Dに代替的に対応する
図7A、及び
図7Aの切断線7B-7Bを通って取られた
図7Bに示す断面図に示すように、コーティング縁部94は、コンタクト電極33の境界90にほぼ当接する。したがって、コンタクト電極33の上面及びコーティング100は共に、コンタクト電極33の突起部、例えば、第1の突起部41’と第2の突起部41’’との間を含む、かなり均一又は滑らかな表面を形成する。コーティング100がコンタクト電極33の周辺部分を覆う場合、コーティング100がコンタクト電極33と組織との間で接触がなされることを妨げない、又は他の方法でそれらの間の任意の電気的接続のインピーダンスを増加させないことを確実にするために、コンタクト電極33の表面積の少なくとも98%は、露出されたまま、すなわち、コーティング100によって覆われていないままであるべきである。
【0039】
コーティング100は、約1マイクロメートル~約5マイクロメートル、例えば約3マイクロメートルの厚さを有することができる。コーティング100の厚さは、コーティング100が膜26上のみに配置されている、コンタクト電極33の境界90まで膜26及び基材34上のみに配置されている、又は膜26、基材34、及びコンタクト電極33の周辺部分の3つすべて上に配置されているかに依存して、バルーン80の表面にわたって変化し得る。更に、コーティング100の厚さは、コーティング100がバルーン80の外側表面に増加した滑らかさを与えるべきかどうかに依存し得る。したがって、コーティング100は、基材34よりも膜26上で幾分厚くてもよい。したがって、コーティング100は、その外側表面がコンタクト電極33のコンタクト層76の外側表面と同じレベル又はほぼ同じレベルに配置されているように設けられていてもよい。換言すれば、膜26の外側表面からコーティング100の外側表面までの第1の距離と、膜26の外側表面からコンタクト電極の外側表面までの第2の距離との間の差は、約5マイクロメートル未満、例えば、約1マイクロメートル未満又は約0.5マイクロメートル未満である。
【0040】
バルーン80は、コンタクト電極33が処置中に組織に押し付けられたとき、楕円体、例えば、球形の形態を有するべきである。コーティング100は、バルーン80の弾性を増加させるので、コーティング100は、バルーンが拡張したときにその形態を維持するのを助ける。本出願人は、
図8A及び
図8Bに示すように、これを実証しており、これらの図は、上述した近位シャフト部分82P内で近位方向の遠位シャフト部分82Dの伸縮移動によって拡張され、次いで流体接続73を介して灌注流体でバルーン80を充填することによって生成される最大約1ポンド/平方インチの内圧を受けた後に、直径30ミリメートルの球形形態を有するように設計されたバルーン80の2つの異なる試料の底部の写真を含む。
図8Aでは、バルーン80は、コーティング100を欠いており、約1.5ポンド/平方インチの圧力下で拡張されている。このように拡張されたバルーン80は、スカロップ状の非球形の形状を有する。すなわち、膜26は、コンタクト電極33間で膨らみ、コンタクト電極33が位置する谷を形成する。このスカロップ状バルーンの最大直径、すなわち、1つの膨らみからバルーンの反対側の膨らみまで(バルーンの周囲180°)の距離は、約31ミリメートルであると測定されたが、最小直径、すなわち、1つのコンタクト電極33からバルーンの反対側のコンタクト電極33までの距離は、約30ミリメートルのままであった。したがって、約1.5ポンド/平方インチの拡張圧力でのバルーン80のこの拡張された試料において、約1ミリメートルの直径変動が観察される。バルーン80のこの試料は、約2ポンド/平方インチより大きい圧力で破裂する。
【0041】
図8Bでは、バルーン80は、コーティング100を含み、
図8Aのバルーンの拡張圧力よりも約4ポンド/平方インチ大きい、約5.5ポンド/平方インチのより大きい圧力下で拡張されている。破裂は、回避された。バルーン80内の内圧のこの急激な増加の下でさえ、バルーンは、わずか30.5ミリメートルの最大直径を有する球形形状を維持した。したがって、バルーン80のこの拡張された試料において、約0.5ミリメートルの直径変動が観察され、これは、30ミリメートルの意図された直径に対して1.7%の増加である。
【0042】
したがって、コーティング100は、バルーン80の弾性を増加させる。コーティング100は、膜26が約1ポンド/平方インチ~約2.5ポンド/平方インチの内圧を受けたときに、膜26の直径が約0.5%を超えて増加するのを防止することができる。すなわち、これらの条件下で、膜の直径は、約0.5%未満だけ増加する。コーティング100は、膜26が約2.5ポンド/平方インチ~約4ポンド/平方インチの内圧を受けたときに、膜26の直径が約1.25%を超えて増加するのを防止することができる。すなわち、これらの条件下で、膜の直径は、約1.25%未満だけ増加する。コーティング100は、膜26が約4ポンド/平方インチ~約5.5ポンド/平方インチの内圧を受けたときに、膜26の直径が約2%を超えて増加するのを防止することができる。すなわち、これらの条件下で、膜の直径は、約2%未満だけ増加する。バルーン80内に生成される前述の内圧は、流体接続73をバルーン80に接続する灌注管を灌注流体が通過する際に生じる圧力降下に起因して、流体接続73における対応する圧力よりも低いことを理解されたい。更に、流体接続73における圧力の関数としてバルーン80内に生成される圧力は、バルーン80の灌注孔35の数、並びにそれらのサイズに依存する。
【0043】
コーティング100の誘電特性はまた、電流が1つの電極から別の電極に直接流れることを防止するのに役立ち、これは、電極が双極様式で使用される場合、例えば、パルス高電圧直流電流によって生成される電界からのエレクトロポレーションを介してアブレーション処置を行うために、特に有用である。外科処置、例えば、肺静脈隔離処置の間の組織のアブレーションは、一般に、診断/治療用カテーテル24などのカテーテル上に配置された電極から心臓組織に高周波エネルギーを供給することによって行われる。高周波数エネルギーは、組織を加熱し、その中に損傷を引き起こす。罹患組織中の正しい位置に損傷が形成されることを確実にし、かつ非罹患組織の損傷を回避するように注意しなければならない。不可逆的エレクトロポレーションによる心筋組織などの心臓組織のアブレーションは、高周波エネルギーからの加熱に対して特定の利点を提供することが解明されている。注目すべきことに、心筋組織は、他のタイプの心臓組織を含む場合であっても、他のタイプの組織よりも、パルス高電圧直流電流から生じる電界から損傷を受ける可能性がより高い。更に、心筋組織の不可逆的エレクトロポレーションは、心筋組織を加熱することなく達成することができ、これは、非罹患組織を損傷する任意の可能性を最小限にするために有用である。
【0044】
本出願人は、バルーン80が膨らみ及び谷を形成するように過剰に加圧されていない場合であっても、コーティング100がパルス高電圧直流電流によって生成された電界からのエレクトロポレーションを介して組織をアブレーションするバルーン80の能力を改善することを解明した。本出願人は、これは、誘電体コーティングが2つのコンタクト電極33の間に直流電流が直接流れるのを阻止するためであり得ると理論付ける。更に、コーティング100によってバルーン80に与えられる滑らかさの増加は、肺静脈口へのバルーン80のより良好な適合をもたらし、したがって、電極30と組織との間の界面における血液又は灌注流体(すなわち、生理食塩水)の存在を減少させる。具体的には、バルーン80が組織に対して配置されると、コーティングが存在しない場合、2つの隣接する電極30によって両側で結合された、組織と膜26との間の空間が画定されることがある。血液及び生理食塩水は、この空間に集まる可能性がある。したがって、誘電体コーティングを膜26の外側表面26o上に、及びおそらく基材34上にも適用することによって、血液又は生理食塩水が電極間に集まる空間が小さくなるはずである。
【0045】
直流電流が1つのコンタクト電極33から別のコンタクト電極へ、例えば、血液又は生理食塩水を通って、バルーンの内側に又は外へ直接流れることを阻止することによって、直流電流及びその対応する電界は、心筋組織へ分流される。そのように、治療効果(例えば、肺静脈を隔離すること)を提供するために十分なサイズ及び均一性で心筋組織に損傷を形成することを支援する一方で、RFアブレーションによって引き起こされる加熱に関連する特定のリスク(例えば、非標的組織を燃やすこと)も低減又は回避する。
【0046】
コーティング100のための例示的な材料は、約2~約4、例えば約3の比誘電率と、伸張に対する高い抵抗とを有する。例えば、誘電体コーティングは、パリレンC、N、F等のパリレンの任意の変形を含んでもよい。
【0047】
本出願人は、肺静脈口の心筋組織全体にわたって均一に分布している損傷が、肺静脈を隔離する可能性が最も高く、一方で他の標的組織への損傷のリスクも最小限に抑えることを解明した。このような損傷は、コーティング100で改変されたバージョンのバルーン80を使用することによって可能にすることができる。これらの損傷を生成するために、一対の電極33の間の直流は、高電圧で短パルスで提供されるべきである。例えば、毎秒約1~約300個の直流パルス、例えば150個のパルスが、約0.1秒~約10秒ごと、例えば約5秒ごとに提供されてもよく、各パルスは、約1500ボルト~約3000ボルト、例えば1800ボルトの電圧を有してもよい。これらの直流パルスは、約1秒~約100秒の間、例えば約50秒間、連続的に提供されてもよい。直流パルスは、セットで提供されてもよい。すなわち、今説明した特性を有するパルスの第1のセットを提供した後、第1のセットと同じ又は異なる特性を有するパルスの第2のセットを、約0.1秒~約10秒の間続く休止期間中に任意のパルスを提供しない後に、提供してもよい。例えば、2つのそのようなセットから20個のそのようなセット、例えば、10個のそのようなセットが提供されてもよい。更に、各パルスにおける電流は、正であっても、負であっても、又は正と負との間で交番してもよい。
【0048】
本明細書に記載の実施例又は実施形態のいずれも、上記のものに加えて又はそれらの代わりに様々な他の特徴を含むことができる。本明細書に記載の教示、表現、実施形態、実施例などは、互いに対して単独で考慮されるべきではない。本明細書の教示を組み合わせることができる様々な適切な方法は、本明細書の教示に鑑みて当業者には明らかであるべきである。
【0049】
本発明に含まれる主題の例示的な実施形態について図示及び説明したが、本明細書に記載の方法及びシステムの更なる適合は、特許請求の範囲から逸脱することなく適切な修正によって達成することができる。更に、上記の方法及びステップが特定の順序で発生する特定の事象を示す場合、特定のステップは、説明された順序で実行される必要はなく、ステップが、実施形態がそれらの意図された目的のために機能することを可能にする限り、任意の順序で実行されることが意図される。したがって、本開示の趣旨の範囲内であるか、又は特許請求の範囲に見出される本発明と同等である本発明の変形例が存在する限り、本特許はそれらの変形例も包含することが意図されている。一部のそのような修正は、当業者には明らかであるはずである。例えば、上述の実施例、実施形態、幾何学的形状、材料、寸法、比率、ステップなどは、例示的なものである。したがって特許請求の範囲は、明細書及び図面に記載される構造及び操作の特定の詳細に限定されるべきではない。
【0050】
〔実施の態様〕
(1) カテーテルバルーンであって、
近位端部及び遠位端部と、外側表面とを含む楕円体膜と、
前記膜の周りに配置された複数のフレキシブル回路ストリップであって、前記フレキシブル回路ストリップの各々が、
外側表面と、前記膜の前記外側表面の上に配置された内側表面と、を含む基材と、
コンタクト電極であって、前記コンタクト電極が環境に露出可能であるように、前記基材の前記外側表面上に配置されたコンタクト電極と、
を備える、複数のフレキシブル回路ストリップと、
前記膜の前記外側表面の上に配置されているが、前記コンタクト電極のいずれの上にも配置されていないコーティングと、
を備える、カテーテルバルーン。
(2) 前記複数のフレキシブル回路ストリップの各々が、前記膜の前記近位端部から前記膜の前記遠位端部に向かって延びる、実施態様1に記載のカテーテルバルーン。
(3) 前記コーティングが、前記基材の各々の一部分の上に配置されている、実施態様2に記載のカテーテルバルーン。
(4) 前記コンタクト電極の各々が、主本体から離れて延びる複数の突起部を有するフィッシュボーン構成を有する、実施態様3に記載のカテーテルバルーン。
(5) 前記コーティングの一部分が、前記複数の突起部のうちの第1の突起部と第2の突起部との間に配置されている、実施態様4に記載のカテーテルバルーン。
【0051】
(6) 前記コーティングが、誘電材料を含む、実施態様3に記載のカテーテルバルーン。
(7) 前記誘電材料が、パリレンを含む、実施態様6に記載のカテーテルバルーン。
(8) 前記コーティングの厚さが、約1マイクロメートル~約5マイクロメートルである、実施態様6に記載のカテーテルバルーン。
(9) 前記コーティングの前記厚さが、約3マイクロメートルである、実施態様8に記載のカテーテルバルーン。
(10) 前記膜の前記外側表面から前記コーティングの外側表面までの第1の距離と、前記膜の前記外側表面から前記コンタクト電極の前記外側表面までの第2の距離との間の差が、約5マイクロメートル未満である、実施態様6に記載のカテーテルバルーン。
【0052】
(11) 前記差が、約1マイクロメートル未満である、実施態様10に記載のカテーテルバルーン。
(12) 前記差が、約0.5マイクロメートル未満である、実施態様11に記載のカテーテルバルーン。
(13) 前記膜が、約6.89kPa(約1ポンド/平方インチ)未満の第1の内圧を受けたとき、第1の直径を有し、前記膜が、6.89kPa(1ポンド/平方インチ)より大きい第2の内圧を受けたとき、第2の直径を有する、実施態様1に記載のカテーテルバルーン。
(14) 前記第2の内圧が約6.89kPa~約17.24kPa(約1ポンド/平方インチ~約2.5ポンド/平方インチ)であるとき、前記第2の直径が、前記第1の直径よりも0.5%未満大きい、実施態様13に記載のカテーテルバルーン。
(15) 前記第2の内圧が約17.24kPa~約27.58kPa(約2.5ポンド/平方インチ~約4ポンド/平方インチ)であるとき、前記第2の直径が、前記第1の直径よりも1.25%未満大きい、実施態様13に記載のカテーテルバルーン。
【0053】
(16) 前記第2の内圧が約27.58kPa~約37.92kPa(約4ポンド/平方インチ~約5.5ポンド/平方インチ)であるとき、前記第2の直径が、前記第1の直径よりも2%未満大きい、実施態様13に記載のカテーテルバルーン。
(17) 前記直径が、約30ミリメートルに等しい、実施態様14に記載のカテーテルバルーン。
(18) 前記複数のフレキシブル回路ストリップが、10個のフレキシブル回路ストリップを含む、実施態様17に記載のカテーテルバルーン。
【外国語明細書】