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特開2023-98895カーボンナノファイバ糸の神経足場の製造
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098895
(43)【公開日】2023-07-11
(54)【発明の名称】カーボンナノファイバ糸の神経足場の製造
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/02 20060101AFI20230704BHJP
   A61L 27/08 20060101ALI20230704BHJP
   A61L 27/50 20060101ALI20230704BHJP
   D02G 1/02 20060101ALI20230704BHJP
   D04H 3/04 20120101ALI20230704BHJP
【FI】
A61F2/02
A61L27/08
A61L27/50
D02G1/02 Z
D04H3/04
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050175
(22)【出願日】2023-03-27
(62)【分割の表示】P 2020549611の分割
【原出願日】2019-03-14
(31)【優先権主張番号】62/643,496
(32)【優先日】2018-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/758,035
(32)【優先日】2018-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519164079
【氏名又は名称】リンテック・オヴ・アメリカ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】ブイコワ,ジュリア
(72)【発明者】
【氏名】リマ,マルシオ・ディー
(72)【発明者】
【氏名】イノウエ,カンザン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】神経足場を製造する方法を提供する。
【解決手段】生体適合性ポリマーから作製された管状のアウターハウジングを備えた神経足場であって、アウターハウジングの中に複数のカーボンナノファイバ糸が配置されている神経足場が記載されている。カーボンナノファイバ糸は、平均的な神経線維の直径にほぼ対応する距離だけ離すことができ、神経線維が再成長できる表面を提供する。隣り合ったカーボンナノファイバ糸は個々の神経線維を支持できるため、神経痛や神経機能低下などの望ましくない結果の可能性を低減して神経を再生できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経足場を製造する方法であって、
ローラ上に第1の接着剤ストリップを配置するステップと、
前記ローラを回転させることによって、前記ローラの周りにナノファイバ糸を巻き付け
るステップであって、前記巻き付けられたナノファイバ糸が、ナノファイバ糸の整列され
たセグメントの束を前記ローラ上に形成し、前記ナノファイバ糸が、前記第1の接着剤ス
トリップ上を通る、ステップと、
前記ストリップを2つの部分に分割することによって、前記ナノファイバ糸の整列され
たセグメントの束を分けるステップと、
前記ナノファイバ糸の整列されたセグメントの束を前記ローラから取り外すステップと

前記ナノファイバ糸の整列されたセグメントの束を折り畳むステップであって、この束
が、第1の端部と、前記第1の端部の反対側の第2の端部とを含む、ステップと、
前記束が管の中に配置されるように構成するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記ローラに第2の接着剤ストリップを配置するステップをさらに含み、前記第1の接
着剤ストリップと前記第2の接着剤ストリップとによって、それらの間のギャップが規定
される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ナノファイバ糸の束を分けるステップが、前記第1の接着剤ストリップと前記第2
の接着剤ストリップによって規定された前記ギャップで生じる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ナノファイバ糸の整列されたセグメントの束が、中点を含み、前記折り畳むステッ
プが、前記ナノファイバ糸の束を前記中点で折り畳むことを含む、請求項1に記載の方法
【請求項5】
前記折り畳まれた束の前記中点が、引き抜き構造に接続され、前記引き抜き構造が、前
記折り畳まれた束を前記管の中に配置するために使用される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記折り畳まれたナノファイバ糸の整列されたセグメントの束の前記第1の端部及び第
2の端部を切断するステップをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ナノファイバ糸の整列されたセグメントの束の前記第1の端部及び前記第2の端部
を切断するステップによって、前記ナノファイバ糸の整列されたセグメントの束が、前記
管の断面を満たすように拡張される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記折り畳まれた束が、前記ナノファイバ糸の1000から8000の整列されたセグ
メントを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記折り畳まれた束が配置される管に対する前記折り畳まれたナノファイバ糸の束の重
量比が、約0.65~約1である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ナノファイバ糸が5μm~30μmの直径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ナノファイバ糸が13μm~15μmの直径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ナノファイバ糸がカーボンナノチューブで構成されている、請求項1に記載の方法
【請求項13】
外科用縫合材料を含む円筒形螺旋を形成するサブステップであって、前記円筒形螺旋が
内部を規定するサブステップと、
前記円筒形螺旋の周りに、前記内部とは反対側の前記螺旋の表面に、カーボンナノファ
イバシートを巻き付けるサブステップと
によって前記管を形成するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ナノファイバ糸が仮撚りナノファイバ糸である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記ナノファイバ糸がシングルプライ仮撚りナノファイバ糸である、請求項1に記載の
方法。
【請求項16】
前記ナノファイバ糸の表面が、前記ナノファイバ糸の表面の上または下に1μmより大
きい表面トポグラフィ特徴を有するものではない、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記ナノファイバ糸の表面が、前記ナノファイバ糸の表面の上または下に0.1μm未
満の表面トポグラフィ特徴を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記ナノファイバ糸の整列されたセグメントの束が、この束が内部に配置される前記管
の体積の1~5%、1~10%、1~20%、1~30%、1~40%、または、1~5
0%を占める、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記管の中に配置される、隣り合った前記ナノファイバ糸の整列されたセグメント間の
平均距離が、5μm~15μmである、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
外科用縫合材料を含む円筒形螺旋であって、前記円筒形螺旋が内部を規定する円筒形螺
旋と、
前記円筒形螺旋の前記内部に、整列されたカーボンナノファイバ糸の束と、
前記円筒形螺旋の前記内部とは反対側の前記円筒形螺旋の周りのカーボンナノファイバ
シートと
を備える、カーボンナノファイバ神経足場。
【請求項21】
前記束の前記整列されたセグメントが、互いに5μm~15μm離間している、請求項
20に記載のカーボンナノファイバ神経足場。
【請求項22】
前記カーボンナノファイバシートが、生体吸収性ポリマー溶浸材を含む、請求項20に
記載のカーボンナノファイバ神経足場。
【請求項23】
前記円筒形螺旋が、第1の方向に巻き付けられた第1の螺旋と、前記第1の螺旋と反対
の第2の方向に巻き付けられた第2の螺旋とを含む、請求項20に記載のカーボンナノフ
ァイバ神経足場。
【請求項24】
前記円筒形螺旋が、かぎ針編みの円筒形螺旋である、請求項20に記載のカーボンナノ
ファイバ神経足場。
【請求項25】
前記円筒形螺旋が、編まれた円筒形螺旋である、請求項20に記載のカーボンナノファ
イバ神経足場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的に、カーボンナノファイバに関する。具体的には、本開示は、カーボ
ンナノファイバ糸(yarn)の神経足場(nerve scaffold)の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
神経損傷は治療が難しい疾患である。詳細には、神経を切断すると、神経の再成長は、
神経機能の回復の制限、持続的な神経痛(神経障害と呼ばれることもある)等につながる
可能性がある。他の種類の組織とは異なり、切断された神経の両端を縫い合わせるだけで
は、神経の完全な回復及び治癒を促すのには不十分であることが多い。神経再生を改善す
るために、いくつかの実験技術が開発された。これらの技術には、切断された神経の末端
を管で接続することや、身体が神経細胞を再生するために使用できる細胞(シュワン組織
)を提供することが含まれることが多い。
【発明の概要】
【0003】
例1(Example 1)は、神経足場を製造する方法であって、この方法は、ローラに第1
の接着剤ストリップを配置することと、ローラを回転させることによりローラの周りにナ
ノファイバ糸を巻き付けるステップであって、巻き付けられたナノファイバ糸が、ナノフ
ァイバ糸の整列されたセグメントの束をローラ上に形成し、ナノファイバ糸が第1の接着
剤ストリップ上を通る、ステップと、ストリップを2つの部分に分割することにより、ナ
ノファイバ糸の整列されたセグメントの束を分ける(separate)ステップと、ナノファイ
バ糸の整列されたセグメントの束をローラから取り外すステップと、ナノファイバ糸の整
列されたセグメントの束を折り畳むステップであって、折り畳まれたナノファイバ糸の整
列されたセグメントの束が、第1の端部と、第1の端部の反対側の第2の端部とを含む、
ステップと、ナノファイバ糸の整列されたセグメントの束を管の中に配置されるように構
成することとを含む。
【0004】
例2(Example 2)は、例1の主題を含み、第2の接着剤ストリップをローラ上に配置
するステップをさらに含み、第1の接着剤ストリップと第2の接着剤ストリップとによっ
て、それらの間のギャップが規定される。
【0005】
例3(Example 3)は、例2の主題を含み、ナノファイバ糸の束を分けるステップは、
第1の接着剤ストリップと第2の接着剤ストリップによって規定されたギャップで生じる
【0006】
例4(Example 4)は、先行する例のいずれかの主題を含み、ナノファイバ糸の整列さ
れたセグメントの束は中点を含み、折り畳むステップは、ナノファイバ糸の束を中点で折
り畳むことを含む。
【0007】
例5(Example 5)は、例4の主題を含み、折り畳まれた束の中点は、引き抜き構造(d
rawing structure)に接続され、引き抜き構造は、折り畳まれた束を管の中に配置するた
めに使用される。
【0008】
例6(Example 6)は、例5の主題を含み、折り畳まれたナノファイバ糸の整列された
セグメントの束の第1の端部及び第2の端部を切断するステップをさらに含む。
【0009】
例7(Example 7)は、例6の主題を含み、ナノファイバ糸の整列されたセグメントの
束の第1の端部及び第2の端部を切断するステップによって、ナノファイバ糸の整列され
たセグメントの束が、管の断面を満たすように拡張される。
【0010】
例8(Example 8)は、先行する例のいずれかの主題を含み、折り畳まれたナノファイ
バ糸の束は、ナノファイバ糸の1000から8000個の整列されたセグメントを含む。
【0011】
例9(Example 9)は、先行する例のいずれかの主題を含み、折り畳まれた束が配置さ
れる管に対する折り畳まれたナノファイバ糸の束の重量比は、約0.65~約1である。
【0012】
例10(Example 10)は、先行する例のいずれかの主題を含み、ナノファイバ糸は、5
μm~30μmの直径を有する。
【0013】
例11(Example 11)は、先行する例のいずれかの主題を含み、ナノファイバ糸は、1
3μm~15μmの直径を有する。
【0014】
例12(Example 12)は、先行する例のいずれかの主題を含み、ナノファイバ糸は、カ
ーボンナノチューブから構成される。
【0015】
例13(Example 13)は、先行する例のいずれかの主題を含み、外科用縫合材料を含む
円筒形螺旋を形成するサブステップであって、円筒形螺旋が内部を規定するサブステップ
と、円筒形螺旋の周りに、円筒形螺旋の内部と反対側の螺旋の表面にカーボンナノファイ
バシートを巻き付けるサブステップとによって、管を形成するステップをさらに含む。
【0016】
例14(Example 14)は、先行する例のいずれかの主題を含み、ナノファイバ糸の束の
質量は、束と束が配置される管とを備える神経足場の総質量の1.5質量%~2.5質量
%である。
【0017】
例15(Example 15)は、先行する例のいずれかの主題を含み、ナノファイバ糸の束の
質量は、束と束が配置される管との総質量の4.5質量%~5.5質量%である。
【0018】
例16(Example 16)は、先行する例のいずれかの主題を含み、ナノファイバ糸の束の
質量は、束と束が配置される管との総質量の9.5質量%~10.5質量%である。
【0019】
例17(Example 17)は、先行する例のいずれかの主題を含み、ナノファイバ糸は、仮
撚りナノファイバ糸である。
【0020】
例18(Example 18)は、先行する例のいずれかの主題を含み、ナノファイバ糸は、シ
ングルプライの仮撚りナノファイバ糸である。
【0021】
例19(Example 19)は、先行する例のいずれかの主題を含み、ナノファイバ糸の表面
は、ナノファイバ糸の表面の上または下に1μmより大きい表面トポグラフィ特徴を有す
るものではない。
【0022】
例20(Example 20)は、先行する例のいずれかの主題を含み、ナノファイバ糸の表面
は、ナノファイバ糸の表面の上または下に0.1μm未満の表面トポグラフィ特徴を有す
る。
【0023】
例21(Example 21)は、先行する例のいずれかの主題を含み、ナノファイバ糸の整列
されたセグメントの束は、束が配置される管の体積の1~5%、1~10%、1~20%
、1~30%、1~40%、または1~50%を占める。
【0024】
例22(Example 22)は、先行する例のいずれかの主題を含み、管の中に配置されたナ
ノファイバ糸の隣り合った整列されたセグメント間の平均距離は、5μm~15μmであ
る。
【0025】
例23(Example 23)は、先行する例のいずれかの主題を含み、管の中に配置されたナ
ノファイバ糸の隣り合った整列されたセグメント間の平均距離は、5μm~12μmであ
る。
【0026】
例24(Example 24)は、外科用縫合材料を含む円筒形螺旋であって、内部を規定する
円筒形螺旋と、円筒形螺旋の内部にある、整列したカーボンナノファイバ糸の束と、円筒
形螺旋の内部とは反対側の円筒形螺旋の周りのカーボンナノファイバシートとを備える、
カーボンナノファイバ神経足場である。
【0027】
例25(Example 25)は、例24の主題を含み、束の整列されたセグメントが互いに5
μm~15μm離間している。
【0028】
例26(Example 26)は、例24~25の主題を含み、カーボンナノファイバシートは
、生体吸収性ポリマー溶浸材を含む。
【0029】
例27(Example 27)は、例24~26の主題を含み、円筒形螺旋は、第1の方向に巻
き付けられた第1の螺旋と、第1の螺旋と反対の第2の方向に巻き付けられた第2の螺旋
とを含む。
【0030】
例28(Example 28)は、例24~27の主題を含み、円筒形螺旋は、かぎ針編みの円
筒形螺旋である。
【0031】
例29(Example 29)は、例24~27の主題を含み、円筒形螺旋は、編まれた円筒形
螺旋である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】管状神経足場と接続された切断された神経線維の概略図である。
図2】管状神経足場と接続された切断された神経線維の概略図であり、神経線維は、2つの切断された神経部分の間で再成長している。
図3】本開示の例における、カーボンナノファイバ神経足場を示す。
図4A】本開示の例における、図3に示すカーボンナノファイバ神経足場の一部分の拡大図を示す。
図4B】本開示の例における、図4Aに示すカーボンナノファイバ神経足場の一部分の拡大図を示す。
図5A】本開示の例における、図3に示すカーボンナノファイバ神経足場の分解図である。
図5B】本開示の例における、カーボンナノファイバ神経足場で使用されるシングルプライ仮撚りナノファイバの走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
図6】本開示の例における、神経足場の総質量に対して65%質量のナノファイバを有するカーボンナノファイバ神経足場の組織学的標本の光学顕微鏡画像である。
図7】本開示の例における、神経足場の総質量に対して65%質量のナノファイバを有するカーボンナノファイバ神経足場の組織学的標本の光学顕微鏡画像である。
図8A】本開示のカーボンナノファイバ神経足場を使用して再生された神経と比較するための対照試料として使用される健康な神経の筋電図である。
図8B】本開示のカーボンナノファイバ神経足場を使用して再生された神経と比較するための対照試料として使用される健康な神経の組織学的断面の光学画像である。
図8C】神経フィラメント及び神経細胞核を示す図8Bの組織学的断面の一部分の拡大図である。
図9A】本開示の例における、神経足場の総質量に対して2質量%のナノファイバ糸を有するカーボンナノファイバ神経足場を使用して再生された切断された神経線維の筋電図である。
図9B】本開示の例における、図9Aで電気的に分析された、神経足場の総質量に対して2質量%のナノファイバ糸を有するカーボンナノファイバ神経足場を使用して再生された神経線維の組織学的断面の光学画像である。
図9C】本開示の例における、足場のカーボンナノファイバ糸と接触している神経フィラメント及び神経細胞核を示す図9Bの組織学的断面の一部分の拡大図である。
図10A】本開示の例における、神経足場の総質量に対する5質量%のナノファイバ糸を有するカーボンナノファイバ神経足場を使用して再生された切断された神経線維の筋電図である。
図10B】本開示の例における、図10Aで電気的に分析された、5質量%のナノファイバ糸を有するカーボンナノファイバ神経足場を使用して再生された神経線維の組織学的断面の光学画像である。
図11A】本開示の例における、神経足場の総質量に対する10質量%ナノファイバ糸を有するカーボンナノファイバ神経足場を使用して再生された切断された神経線維の筋電図である。
図11B】本開示の例における、図11Aで電気的に分析された、10質量%のナノファイバ糸を有するカーボンナノファイバ神経足場を使用して再生された神経線維の組織学的断面の光学画像である。
図11C】本開示の例における、カーボンナノファイバ糸と接触している神経フィラメント及び神経細胞核を示す図11Bの組織学的断面の一部分の拡大図である。
図12】実施形態における、神経足場を製造するための例示的な方法の方法フロー図である。
図13】一実施形態における、ローラ上にナノファイバ糸の整列されたセグメントの束を形成し、束を管内に配置するための例示的な方法の概略図である。
図14】一実施形態における、ローラ上にナノファイバ糸の整列されたセグメントの束を形成し、束を管内に配置するための例示的な方法の概略図である。
図15】一実施形態における、ローラ上にナノファイバ糸の整列されたセグメントの束を形成し、束を管内に配置するための例示的な方法の概略図である。
図16】一実施形態における、ローラ上にナノファイバ糸の整列されたセグメントの束を形成し、束を管内に配置するための例示的な方法の概略図である。
図17】一実施形態における、ローラ上にナノファイバ糸の整列されたセグメントの束を形成し、束を管内に配置するための例示的な方法の概略図である。
図18】一実施形態における、ローラ上にナノファイバ糸の整列されたセグメントの束を形成し、束を管内に配置するための例示的な方法の概略図である。
図19】一実施形態における、ローラ上にナノファイバ糸の整列されたセグメントの束を形成し、束を管内に配置するための例示的な方法の概略図である。
図20】一実施形態における、ローラ上にナノファイバ糸の整列されたセグメントの束を形成し、束を管内に配置するための例示的な方法の概略図である。
図21】一実施形態における、ローラ上にナノファイバ糸の整列されたセグメントの束を形成し、束を管内に配置するための例示的な方法の概略図である。
図22】一実施形態における、ローラ上にナノファイバ糸の整列されたセグメントの束を形成し、束を管内に配置するための例示的な方法の概略図である。
図23】一実施形態における、ローラ上にナノファイバ糸の整列されたセグメントの束を形成し、束を管内に配置するための例示的な方法の概略図である。
図24】一実施形態における、ローラ上にナノファイバ糸の整列されたセグメントの束を形成し、束を管内に配置するための例示的な方法の概略図である。
図25】一実施形態における、ローラ上にナノファイバ糸の整列されたセグメントの束を形成し、束を管内に配置するための例示的な方法の概略図である。
図26】一実施形態における、カーボンナノファイバ神経足場の側面図である。
図27】一実施形態における、図26に示すカーボンナノファイバ神経足場の段階的製造の例示的な段階を示す断面図である。
図28】一実施形態における、基材上のナノファイバの例示的なフォレストの顕微鏡写真である。
図29】一実施形態における、ナノファイバの成長のための例示的な反応器の概略図である。
図30】一実施形態における、シートの相対的な寸法を特定し、シートの表面に平行な平面で端から端まで整列したシート内のナノファイバを概略的に示すナノファイバシートの概略図である。
図31】一実施形態における、図28に概略的に示すように、ナノファイバが端から端まで整列するナノファイバフォレストから横方向に引き出されているナノファイバシートの画像であるSEM顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図面は、例示目的のためだけに、本開示の様々な実施形態を示す。多くの変形、構成、
及び他の実施形態は、以下の詳細な説明から明らかになる。さらに、認識されるように、
図面は、必ずしも縮尺どおりに描かれているわけではなく、記載した実施形態を図示する
特定の構成に限定することも意図していない。例えば、一部の図は、概して、直線、直角
、及び滑面を示すが、開示される技術の実際の実施態様は、完全ではない直線及び直角を
有してよく、一部の特徴は、製造プロセスの現実世界の制限を考慮して、表面トポグラフ
ィを有してよい、または、非平滑であってよい。要するに、図面は、単に例示的な構造を
示すために提供される。
【0034】
[概要]
神経断裂は、神経と神経鞘が切断される神経損傷である。これは、神経が制御する筋肉
の感覚の喪失と麻痺を引き起こす。一般に、神経は医学的介入なしでは回復しない。神経
断裂の症状はオピオイドと抗炎症薬で治療でき、神経と神経に関連する機能の回復は手術
で支援できる。神経の回復を促進する外科的方法には、神経末端の縫合、神経移植片の移
植、または「神経足場」の埋め込みが含まれる。
【0035】
神経の両端を縫合すると欠点が生じる可能性がある。例えば、神経の両端を縫合すると
、縫合された神経内に緊張が生じる。この緊張は、再成長を阻害し、瘢痕化の可能性を高
め得る、また、神経機能をあまり改善しない場合がある。同様に、神経移植片の使用にも
欠点がある。例えば、生きているドナーから神経の一部を除去してレシピエントに提供す
ると、ドナーは、除去した神経が以前、働いていた身体の部分で感覚喪失を経験する。
【0036】
切断された神経の再成長を促進するための中空神経足場の使用は、継続的な研究課題で
ある。足場は、神経の末端に縫合される生体適合性の管である。一部の例では、足場は神
経線維を再成長させるためのガイドとして機能する複数の小さなチャネルを備え、他の例
では、足場は単一の内部チャンバを規定する単なる中空管である。内部構成に関係なく、
足場の目的は、神経線維の再成長を促進して筋肉機能の回復を助ける環境を作り出すこと
である。
【0037】
中空管神経足場の後者のシナリオは、図1に概略的に示されている。この例では、神経
セグメント100A及び100Bは互いに切断されている。中空管神経足場104は、切
断された神経セグメント100A及び100Bの向かい合う末端にかかるように配置され
、神経線維の再成長を促進する。
【0038】
例示的な神経足場104等のいくつかのタイプの神経足場の1つの欠点は、再成長した
神経線維が再成長中に張力を受けることである。これにより、神経線維が、ある場所で収
縮することから、神経機能の低下、神経痛、または他の望ましくない結果を引き起こす可
能性がある。例えば、図2に示すように、神経セグメント200A及び200Bは、切断
され、中空管神経足場204を介して再接続されている。神経足場204は、縫合糸20
6A、206B、206C、及び206Dによって神経セグメント200A及び200B
に取り付けられている。図に示すように、再生された神経線維208は、神経セグメント
200A及び200Bの向かい合う面の間に狭窄がある砂時計形状を有する。再生された
神経線維208内のこの狭窄は、上述した望ましくない結果の一部または全てを引き起こ
す可能性がある。
【0039】
したがって、本明細書に記載する一部の例によれば、本開示は、生体適合性材料から製
造された管状のアウターハウジングを備えた神経足場であって、アウターハウジングの中
に複数のカーボンナノファイバ糸が配置されている神経足場について記載する。これら複
数のカーボンナノファイバ糸は、隣り合った糸が、平均的な神経線維の直径にほぼ対応す
る距離をもって隔てられており、神経線維が再成長できる表面を提供している。近接する
カーボンナノファイバ糸によって個々の神経線維を支持(support)できるため(部分的
には、ナノファイバ糸間のこの適切な空間の隔たりによって)、再成長中に神経線維に引
張応力がかかる可能性を低くする。本開示の一部の例では、再生された神経線維に対する
引張応力の大きさは、カーボンナノファイバ糸を含まない神経足場を使用して再生された
神経線維と比較して、低減される。少なくともこれらの理由により、本開示の実施形態を
神経足場として使用するとき、神経痛または神経機能低下などの望ましくない結果の可能
性が低減される。
【0040】
[神経足場の例]
上記のように、本開示の一部の例では、神経足場は、カーボンナノファイバ及び/また
はカーボンナノチューブから製造された複数の糸を含む。本開示は主にカーボンナノファ
イバに言及するが、カーボンナノチューブは同じ有利な特徴の多くを共有し、「カーボン
ナノファイバ」の総称に含まれることは認識されよう。カーボンナノファイバ、より具体
的にはカーボンナノファイバ糸は、導電性と生体適合性があるので、本明細書に記載する
例示的な神経足場の構成要素として使用すると有益である。例えば、カーボンナノファイ
バが足場の構成要素として(例えば、上記の管状構成要素内で)使用されるとき、隣り合
ったカーボンナノファイバ糸間に複数の経路が規定される。神経線維は、これらの経路内
で成長(同等に「再生」とも呼ばれる)することができる。カーボンナノファイバ糸はま
た、切断された神経のあるセグメントから、この切断された神経の別のセグメントへの導
電性の経路も提供することができる。導電性の経路の存在は、神経の成長を向上させるこ
とができるとともに、再生された神経に一般的に期待される以上に神経機能を改善するこ
とができる。一部の例では、神経足場内でのカーボンナノファイバ糸の使用は、再生され
た神経の神経機能を、切断損傷の前の同じ神経の神経機能に近づけることができると考え
られている。一部の例では、カーボンナノファイバ、特にシングルプライの仮撚りカーボ
ンナノファイバ糸は、トポグラフィ的に滑らかでナノポーラスな支持表面を提供でき、そ
の表面上で、神経線維が成長して、低引張応力の神経線維の再成長を促進できる。
【0041】
本開示の神経足場の一例が、図3に概略的に示されている。神経足場300は、管30
4及び複数のナノファイバ糸308を含む。この神経足場300の利点としては、複数の
ナノファイバ糸の間に、複数のナノファイバ糸によって規定された複数のギャップまたは
経路が提供されることがある。これらギャップは、神経の成長を促進するような構成及び
寸法にすることで、切断された神経のセグメント間に電気的な接続を提供することができ
る。
【0042】
管304は、いくつかの機能のいずれかを実行することができる。一部の例では、管3
04は、神経線維が再成長できる領域を、周囲の環境から隔てるというものである。これ
は、再成長する神経の成長率や連続性を低下させ得る物理的損傷やその他の外乱から、再
成長する神経線維を保護するのに役立ち得る。管304はまた、本明細書に記載されるよ
うに、カーボンナノファイバ糸が神経線維の再成長を促進する密度及び配列となるように
、カーボンナノファイバ糸を配置及び構成することができるスペースを規定する。
【0043】
管304は生体適合性材料及び/または生体吸収性材料から製造することができる。こ
れらの材料の例としてはシリコンがあるが、これには、剛性ではなく、コンプライアント
であるという追加の利点がある。このコンプライアンスは、縫合(図2に示すような)に
よる近接する神経セグメントへの管304の端部の取り付けを容易にする。管304に使
用できる生体適合性材料の他の例には、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(テトラフ
ルオロエチレン)、ポリエチレン、ポリグリコリド、ポリカプロラクタム、ポリ(乳酸-
コ-グリコール酸)、ポリ乳酸、ポリ(セバシン酸グリセロール)、ポリシアル酸、ポリ
エチレングリコール、ポリウレタン、コラーゲン、キトサン、絹、アルギン酸塩等がある
が、これらに限定されるものではない。別のセットの実施形態では、管は、カーボンナノ
チューブ等のカーボンで作製してもよい。一部の実施形態では、管304は、血管及び骨
格筋を含む生物学的材料で作製してもよい。特定の実施形態では、カーボンナノチューブ
管とカーボンナノチューブ糸の両方を一緒に使用して、神経再生を促進することができる
【0044】
上記のように、複数のナノファイバ糸308としては、実撚りのマルチプライ及びシン
グルプライのナノファイバ糸、無撚りのマルチプライ及びシングルプライのナノファイバ
糸、並びに仮撚りのマルチプライ及びシングルプライのナノファイバ糸などがある。複数
のナノファイバ糸308を管304内に配置して、再生された神経線維が成長できる複数
のファイバ間スペースの構造を規定することができる。ナノファイバ糸は、神経線維が成
長でき、再成長する神経線維の機械的支持もできる滑らかでナノポーラスな表面を提供す
る。この機械的支持により、再成長中の神経線維及び全体として再生中の神経は、神経障
害痛を引き起こしたり、神経線維の成長に悪影響を及ぼしたりする可能性のある引張応力
または圧縮応力を経験する可能性が低くなる。
【0045】
複数のナノファイバ糸308(その製造は、図12~15に関連して以下に記載する)
は、図3に示すように、管304内に配置することができる。図3のナノファイバ糸は、
互いに平行であり、管304内に均一に分布しているように示されているが、これは、単
に例示の便宜のためであることは認識されよう。むしろ、ナノファイバ糸は、互いに実質
的に整列しているが、必ずしも互いに正確に平行でなく、管304によって規定される容
積の一部を占めるような複数のナノファイバ糸308として集められている。多くの実施
形態では、複数のナノファイバ糸308におけるこのようなナノファイバ糸の概略的な整
列は、神経線維の断面直径にほぼ対応するナノファイバ糸間に経路(ギャップ及び/また
はスペースとも呼ばれる)を規定するのに十分である。これは一般に直径5μm~10μ
mで、一部の例では8μm~10μmである。ナノファイバ糸が互いに交差または不整列
な場合でも、管304の長さに沿って少なくとも部分的に連続した(すなわち、管304
の長さに沿って10%より大きいまたは20%より大きい)直径5μm~10μmの範囲
のスペースがあれば、上記の張力を最小限に抑えて神経の再生を促進するのに十分である
【0046】
図4A及び4Bは、本開示のカーボンナノファイバ糸神経足場300の例を形成するた
めの管内のナノファイバ糸のこの有益な構成を示す。図4A及び4Bの両方を同時に参照
すると、説明が容易になる。これらの図に示されているように、複数のナノファイバ糸3
08におけるナノファイバ糸の断面直径は、管304の断面と同様の方向(+/-10°
内)に向いている。同様に、管304の長さと、複数のナノファイバ糸308におけるナ
ノファイバ糸の長さは、ほぼ同じ方向に整列している(複数のナノファイバ糸のマイクロ
メートル及び/またはナノメートルスケールでの配向の変化は許容する)。
【0047】
ナノファイバ糸のこのような配向の1つの結果として、上記のように、ナノファイバ糸
間に、再生時に神経線維が成長するスペースが規定される。隣り合ったナノファイバによ
って規定されるスペースの例は、拡大図4Bに示されている。図に示すように、複数の近
接するナノファイバ糸は、α1、α2、及びα3で表される距離だけ互いに離れている。
神経の成長を促進するために、少なくとも一部のナノファイバ糸の間のスペースの幅α1
、α2、及びα3は、5μm~10μm、5μm~12μm、5μm~8μm、5μm~
10μm、及び8μm~10μmの範囲のいずれかであってよい。神経線維は一般に直径
が約8μm(+/-10%)であるため、幅α1、α2、及びα3を有するナノファイバ
糸間のスペースは、神経線維の再成長を支持するような寸法と構成にされる。上記範囲α
1、α2、及びα3より大きい幅は、一部の例では、神経線維への引張応力を低減するよ
うに、再成長中の神経線維を適切に支持することができる。したがって、場合によっては
、ナノファイバ糸間のスペースは、20μm未満、15μm未満、12μm未満、10μ
m未満、または8μm未満であってよい。前述のα1、α2、及びα3の範囲よりも狭い
幅では、一部の例で、神経線維が複数のナノファイバ糸を通して成長するのを妨げ得るか
、または神経線維と、神経線維と接触している隣り合った複数のナノファイバ糸との間に
圧縮力が存在する物理的に制約された環境で神経線維が成長し得る。これは神経機能の制
限及び/または神経障害痛につながり得る。場合によっては、ナノファイバ糸間のスペー
スは、1μmより大きい、2μmより大きい、3μmより大きい、5μmより大きい、ま
たは7μmより大きくてよい。
【0048】
一部の例では、複数のナノファイバ糸308の個々のナノファイバ糸は、仮撚り、シン
グルプライのナノファイバ糸である。ナノファイバ糸を仮撚りすることができる技術は、
ここに引用することによってその全体が本明細書の記載の一部をなすものとする米国特許
出願番号第15/844,756号に記載されている。理論に縛られることを望まないが
、場合によっては、シングルプライナノファイバ糸、特に仮撚りナノファイバ糸の比較的
滑らかでナノポーラスの表面が、神経線維の再成長が促進される表面を提供すると考えら
れている。この滑らかな表面としては、全体としてナノファイバ糸の表面の上または下に
100nmを超えるいかなる特徴も有さない表面トポグラフィがある。
【0049】
図5Aは、管304と複数のナノファイバ糸308とを備える神経足場300の分解図
を示す。図に示すように、管304は、長さL1及び内径D1を有する。長さL1は、切
断された神経の向かい合う面の間のギャップのサイズに部分的に従った寸法にされる。一
部の例では、長さL1は、1mm~2cm、1mm~1cm、1mm~0.5mm、1c
m~2cm、1.5cm~2cm、5mm~1.5cmのいずれかの範囲であってよい。
内径D1は、図2に示すように、管304が神経の切断された末端にかかるように配置さ
れ、縫合または他の方法で神経の末端に接続できるような寸法にされる。一部の例では、
内径D1は、1mm~40mm、1mm~5mm、3mm~10mm、1mm~15mm
、10mm~30mm、15mm~40mmの範囲のいずれかであってよい。
【0050】
図に示すように、複数のナノファイバ糸308は、長さL2及び外径D2を有する。長
さL2は、切断された神経の向かい合う面の間のギャップのサイズ及び管304の長さL
1に部分的に従った寸法にされる。一部の例では、管304の十分な材料が管304に縫
合される神経セグメントの末端に重なることができるように、長さL2が長さL1以下で
あるのが望ましい。一部の例では、長さL2は、神経セグメントの向かい合う面に接触す
る(言い換えると、切断された神経を架橋する)か、または、切断された神経セグメント
の各面から5μm以内であると十分である。一部の例では、長さL2は、1mm~2cm
、1mm~1cm、1mm~0.5mm、1cm~2cm、1.5cm~2cm、5mm
~1.5cmの範囲のいずれかであってよい。
【0051】
複数のナノファイバ糸308の外径D2は、複数のナノファイバ糸308が管304内
に配置できるような寸法及び構成にされる。一部の例では、外径D2は、管304の内径
D1より2%~10%小さい。複数のナノファイバ糸308の外径D2が管304の内径
D1よりもわずかに小さい寸法であるとき、複数のナノファイバ糸308は、管304に
よって規定されるスペースに挿入されるのに十分に小さいが、隣接する管304内面との
締まりばめ(interference fit)を形成するのに十分に大きい。この締まりばめにより、
複数のナノファイバ糸308が管304内にしっかりと留まり、意図せずに滑って外れる
ことがない。場合によっては、ナノファイバ糸の束をより小さな直径に圧縮して、より簡
単に管に通すことができる。管に入ると、束は管の全内径まで拡張可能であってよい。さ
らに、このような寸法にされた複数のナノファイバ糸308は、内径D1と一致し、長さ
L1に垂直な管304の断面全体に分布することができる。複数のナノファイバ糸308
を管304の長さ及び断面直径の両方にわたって分布させることによって、神経線維が成
長することができる多くの間質(interstitial)スペースを提供する。
【0052】
一部の実施形態では、近接したナノファイバ糸間の間質スペースは、神経線維の成長を
支持するために1つまたは複数のポリマーマトリックスを含むことができる。一部の例で
は、ポリマーマトリックスは、コラーゲン、ゼラチン、またはフィブリンの1つまたは複
数であってよい。他の一部の例では、ポリマーマトリックスは、グリコサミノグリカンの
1つまたは複数であってよい。
【0053】
一部の実施形態では、近接したナノファイバ糸間の間質スペースはまた、1つまたは複
数のタンパク質または成長因子を含み得る。一部の例では、タンパク質または成長因子は
、血管内皮成長因子(VEGF)、神経成長因子(NGF)、肝細胞成長因子(HGF)
、またはフィブリンマトリックスゲルのうちの少なくとも1つであってよい。1つの特定
の例では、間質スペースは神経成長因子を含む。
【0054】
さらに別の実施形態では、近接したナノファイバ糸間の間質スペースは、1つまたは複
数のタンパク質と組み合わせて1つまたは複数のポリマーマトリックスを含むことができ
る。特定の例では、間質スペースは、神経成長因子と組み合わせたコラーゲンを含む。
【0055】
一部の例では、上に示した、複数のナノファイバ糸308の隣り合ったナノファイバ糸
間の適切な間隔は、神経足場の総質量(すなわち、管プラス複数のカーボンナノファイバ
糸の質量)に対するカーボンナノファイバ糸質量のパーセンテージとして間接的に測定す
ることができる。このカーボンナノファイバ神経足場の総質量に対するカーボンナノファ
イバ糸質量のパーセンテージは、簡潔にするために、本明細書では、場合によって「充填
密度」と記載される。一部の例では、本開示のカーボンナノファイバ糸神経足場内におけ
る神経線維の成長は、2%未満、2%~5%、2%~10%の範囲のいずれかの充填密度
で十分であることが分かった(図6、7、9A~11Cの文脈で以下に記載されるように
、神経信号伝達時間及び再成長した神経線維形態という点で)。管内の糸の密度は、断面
積ベースでも測定できる。例えば、管の断面積(内径)に対する束308の糸の累積断面
積の比は、1%より大きい、5%より大きい、10%より大きい、20%より大きい、3
0%より大きい、40%より大きい、50%より大きい、75%未満、65%未満、50
%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、または、3%未
満であってよい。
【0056】
充填密度は巨視的な測定値であるが、充填密度は複数のナノファイバ308の個々のナ
ノファイバ間のスペースの平均直径を予測できることが実験的に分かっている。これによ
り、神経線維の成長を促進するように構成されるように、複数のナノファイバ糸308を
容易に測定することが可能になる。例えば、2%~10%の範囲のシングルプライの仮撚
りナノファイバ糸の充填密度は、以下でより詳細に記載するように、直径8μm~10μ
mの繊維間スペースがあることが分かっている。上記のように、多くの神経線維の断面直
径はこの範囲にある。したがって、2%~10%のナノファイバ糸充填密度を有する本開
示のカーボンナノファイバ糸神経足場は、空の管の場に比べて神経線維への引張応力を低
減するように、多くの異なるタイプの神経線維の再成長を促進するように構成される。ま
た、本開示のカーボンナノファイバ糸神経足場は、神経線維よりも小さい断面直径を有す
るギャップから神経線維にかかる圧縮応力を低減する。
【0057】
他の例では、充填密度は、1%~40%、2%~35%、2%~65%のいずれかの範
囲にあってよい。しかしながら、高すぎる充填密度(例えば、65%超)は、隣り合った
ナノファイバ糸間のスペースが、神経線維が成長するには小さすぎる(例えば、5μm未
満、2μm未満)ものとなることは認識されよう。同様に、低い充填密度(一部の例では
、5%未満であることが分かっている)は、隣り合ったナノファイバ糸間のスペースが、
再成長時に、ナノファイバ糸を物理的に支持する構造を提供するには大きすぎるものとな
る。これは、上記のように、線維に引張応力をもたらす可能性がある。
【0058】
一部の例では、個々のナノファイバ糸自体の外径に応じて、図5Bの文脈で以下に記載
するように、1000~8000のシングルプライの仮撚りナノファイバ糸は、15mm
の断面直径を有する管304について上記の充填密度を形成するように構成することがで
きることが分かっている。
【0059】
また、カーボンナノファイバ糸が均一に整列しているほど、神経の成長が促進されるこ
とが実験的に観察されている。実験結果を以下に示す。
【0060】
図5Bは、本開示のシングルプライの仮撚りナノファイバ糸の走査型電子顕微鏡(SE
M)画像を示す。上記のように、仮撚り技術は、ここに引用することによってその全体が
本明細書の記載の一部をなすものとする米国特許出願第15/844,756号に記載さ
れている。一部の例では、図5Bに示されるもの等、本開示のカーボンナノファイバ神経
足場で使用されるシングルプライの仮撚りナノファイバ糸は、5μm~40μm、5μm
~30μm、5μm~20μm、10μm~30μm、50μm~40μm、25μm~
35μm、40μm未満、30μm未満、20μm未満、5μmを超える、10μmを超
える、または20μmを超えるのいずれかの範囲の断面直径(図5Aの場合では、両方向
矢印によって示される糸の縦軸に対して垂直)を有することができる。図5Bに示すナノ
ファイバ糸の特定の例では、断面直径は約15μmである。さらに、上記のように、本開
示の実施形態の1つの利点は、ナノファイバ糸が、神経線維が成長できる滑らかな表面を
提供することである。図5Bに示すナノファイバ糸は、糸の表面の平均位置の上または下
に1μm未満(及び、一部の例では0.1μm未満)の表面トポグラフィの特徴を有する
ような糸である(平均位置は、糸の長さにわたる糸の外周から測定され、統計的に有意な
サンプリングから計算される)。
【0061】
[実験結果]
図6図11Cは、本開示の様々な実験例を示す。図6から図8Cは、図9から図11
Cに示された実施形態の参照として機能することができる様々な実施形態を示す。例えば
図6は、切断された神経線維の組織学的断面を示す。この例では、65%のカーボンナ
ノファイバ糸の充填密度(シングルプライ、仮撚り)を有する本開示の神経足場を用いて
再生が試みられた。複数の糸(または一本の糸の複数の整列されたセグメント)は、直径
が14.5μmであった。約8000の糸セグメントが一つの束となっていた。図6に示
す断面において、10倍の倍率で撮影すると、遠位端及び近位端から介在する(より暗い
)カーボンナノファイバ糸への神経線維の再成長が制限されていることが分かる。実際は
図6の囲み領域の400倍の拡大図である図7に示されている。65%を超える充填密
度を有する複数のナノファイバ糸への神経線維の再生は、切断された近位神経表面から遠
くまで伸びていない。また、再生中の神経線維が近位端から遠位端まで連続した線維を形
成することもないため、切断された神経の近位端と遠位端の間の神経学的接続を再確立で
きない。図6及び7は、カーボンナノファイバ糸の適切な充填密度、すなわち、再成長中
に神経線維を支持するのに十分な密度であるが、切断された神経の末端を再接続できる再
成長を阻害するほど高くはない密度、を有する本開示の神経足場を選択することの重要性
を示す。
【0062】
図8A~8Cは、本明細書に記載の実施形態の別の基準となる点を示すものであって、
切断されておらず、また、いかなる種類の神経足場を使用して再生されたものでもない健
康な神経である。図8Aはこの健康な神経の筋電図である。一般に、遠位潜時と振幅とい
う2つの測定値が筋電図を使用して取得される。これらは一緒に、刺激に応答して神経を
通る電気信号の伝播速度とその信号強度をそれぞれ特徴付ける。図8Aに示すグラフは健
康な神経に対応し、その神経の断面が図8B及び8Cに示される。切断後、神経足場に縫
合された3つの別個の健康なラットの坐骨神経からの筋電図の結果の要約を、以下の表1
にまとめる。
【0063】
図8Bの画像は、40倍の光学倍率で撮影され、図8Cの画像は、40倍超の光学倍率
で撮影された。図8Cは、細胞核を有する神経線維フィラメントの連続性を単に示すため
に提供されている。
【0064】
図9A、9B、及び9Cは、2%の充填密度を有する本開示の神経足場を使用して再生
された切断された神経に対応する。図9Aは、この実施形態の一例の筋電図の例である。
図9Bは、40倍の光学倍率で撮影した組織学的断面である。図9Cは、40倍を超える
光学倍率で撮影した図9Bの断面の一部の拡大画像である。
【0065】
図9Aに対応する筋電図は、以下の表1にまとめられた遠位潜時及び振幅を有する。特
図6及び図7とは対照的に、図9B及び図9Cは、切断された神経の両端を接続する再
生された神経線維(神経フィラメント及び神経細胞の核を含む)を示す。神経の右端部分
と神経の中央部分の間の神経のギャップは、断面とプロセスのアーチファクトであり、再
生された神経の不連続性を示すものではない。さらに、図9Cの拡大図に見られるように
、神経フィラメント及び神経細胞核は、上記のように、カーボンナノチューブ糸と密接に
接触している。カーボンナノファイバに近接した神経フィラメントと核の両方の存在は、
機能している再生神経を示唆している。これは、機能している神経の核と神経線維を欠い
ている主に瘢痕組織である再生組織とは対照的である。再生神経の神経機能は、表1の文
脈で以下で説明する筋電図の結果によっても示される。この試料の結果は、以下で説明す
る筋電図の結果を含み、本開示の神経足場によって提供される神経再生と神経機能の回復
の利点を示す。
【0066】
図10A及び10Bは、5%充填密度を有する本開示の神経足場を使用して再生した切
断された神経に対応する。図10Aは、図示の実施形態の例示的な筋電図である。図10
Bは、40倍の光学倍率で撮影された組織学的断面である。図9A~9Cに示される例と
同様に、筋電図データ及び画像自体が、以前に切断された神経末端間の神経機能を再確立
するように、カーボンナノファイバ糸と密接に接触する神経フィラメント及び神経細胞核
の再成長を示す。
【0067】
図11A、11B、及び11Cは、10%の充填密度で、本開示の神経足場を使用して
再生した切断された神経に対応する。図11Aは、この実施形態の一例の筋電図の例であ
る。図11Bは、40倍の光学倍率で撮影された組織学的断面である。図11Cは、40
倍の光学倍率で撮影された図11Bの断面の一部の画像である。
【0068】
前述の例と同様に、図11A~11Cは、カーボンナノチューブ糸と密接に接触してい
る神経線維、及び以前に切断された神経末端間の連続的な神経経路を示している。
【0069】
前述の実験例の筋電図データは、以下の表1にまとめられている。表に示すように、本
開示の2%、5%、及び10%の充填密度の実施形態はそれぞれ、基準の役割をする健康
な神経の2.5倍以内の遠位潜時及び振幅を生み出した。実際、2%の充填密度の例示的
な実施形態に対してテストされた3つのサンプルの1つは、健康な神経と同等の遠位潜時
及び振幅を生み出した。
【表1】
【0070】
[方法]
図12は、本開示の実施形態を製造することができる例示的な方法を示す。図13~図
25は、図12に示される例示的な方法の製造の様々な段階の図を示す。図12図13
図25とを同時に参照すると、説明が容易になる。
【0071】
方法1200は、上記のように、管への挿入時に、管内で拡張し、神経の再成長を促進
するファイバ間の間隔を有するような複数のナノファイバの束を集める例示的な方法であ
る。
【0072】
方法1200は、図13に示すように、少なくとも2つの接着剤ストリップ(strip)
1304A及び1304B(まとめて1304)をローラ1308上に配置するステップ
(1204)を含む。接着剤ストリップ1304及びローラ1308は、上記のように、
神経の再生を容易にするためにファイバ間の間隔を提供しながら、任意の所望の直径の管
を満たすように拡張する量及び構成で、複数のナノファイバを束ねる利便性を向上させる
。この束ねは、直径Dのローラ1308を(図13の矢印で示される)方向に回転させな
がら、1つまたは複数のナノファイバ糸1316をローラ1308の周りに巻き付けるこ
とにより達成される。
【0073】
2つの接着剤ストリップ1304は、以下に記載するように、束の2つの領域を固定し
、それにより、処理中に束を操作する能力を向上させる。2つのストリップ1304は、
互いに離れていて、それらの間にギャップ1312を規定し得る。ストリップの寸法は、
ローラのサイズや集められるナノファイバ糸の量(ローラの周りの糸の巻き数とローラの
直径に比例する)を含む多くの因子に基づいて変化し得る。一部の実施形態では、ストリ
ップの長さは、約1mm~約1000mmの(または糸の直径及びローラの回転数に応じ
てより高い)範囲にあってよく、一方、ストリップの幅は、約5mm~100mmの範囲
にあってよい。一例では、直径14.5mmの糸をローラ1308に55mm~65mm
の接着剤ストリップの長さにわたるように4000回巻き、最終的にナノファイバ糸の8
000の整列されたセグメントを65%の充填密度で有する神経足場を作製した。別の例
では、直径14.5mmの糸がローラ1308に1.0mm~1.2mmの接着剤ストリ
ップの長さにわたるように80回巻き付けられ、最終的にナノファイバ糸の190の整列
されたセグメントを2%の充電密度で有する神経足場を作製した。
【0074】
2つの接着剤ストリップ1304には、任意の種類の接着剤を使用することができる。
例えば、接着剤1304は、接着テープの使用、または接着剤でコーティングされたバッ
キング材の様々な組み合わせのいずれかの上の接着剤の使用を含むことができる。一実施
形態では、接着剤ストリップは、粘着テープであってよい。粘着テープは、紙、プラスチ
ックフィルム、布、または金属箔等のバッキング材にコーティングされた粘着剤を含む。
粘着剤は、熱を加えたり溶剤を活性化したりせずに、圧力を加えることによって表面に付
着する。別の例では、接着剤1304は、ローラ1308上または介在する基材(ポリマ
ーフィルム等)上に配置される「非キャリア接着剤」層を含むことができる。非キャリア
接着剤層は、ポリマーバッキング上に配置されず、任意の表面(例えば、ローラ1308
上に配置された可撓性基材)に直接適用できる自己支持性接着剤のストリップである。
【0075】
ギャップ1312は、2つのストリップ1304によって(及びそれらの間に)規定さ
れるスペースである。ギャップ1312は、ストリップ1304への接着によってナノフ
ァイバの端部が固定されている間に、ローラの周りに巻かれたナノファイバをローラから
切断及び除去できる場所を提供する。このようにして、束はまとめて便利に扱うことがで
きる。これにより、切断されたナノファイバ糸をさらにナノファイバ糸の束に処理して、
神経の修復/再成長のための足場に使用できるようにする。ギャップ1312は、糸を接
着剤から分離しない間、刃/切断技術を収容するのに十分でなければならない。一部の実
施形態では、ギャップ1312は、1mm~50mmの範囲であってよい。一部の例では
、2つのストリップによって規定されるようなギャップは不要であり、接着剤の単一のス
トリップを代わりに使用できることは認識されよう。ナノファイバの端部が接着剤ストリ
ップの2つの部分に固定されている状態で、接着剤ストリップは(ストリップ上に接着さ
れたナノファイバと共に)2つの部分に切断され、ローラから取り外すことができる。
【0076】
ローラ1308は、整列したナノファイバ糸の束を巻き付けることができる円形または
楕円形の円筒の断面であってよい。ローラのサイズは、その直径Dによって規定される。
直径Dは、集められるナノファイバ糸の束の長さの決定に使用される因子である。直径D
が大きいローラの例では、(切断後に)長いナノファイバ糸の束が生成され、直径Dが小
さいローラの他の例では、(切断後に)短いナノファイバ糸の束が生成される。一部の実
施形態では、直径Dは、約10cm~3mの範囲であってよい。
【0077】
束におけるナノファイバの体積は、ローラ1308の周りのナノファイバ糸の回転数の
関数であってよい。糸の各回転は、ローラの円周の関数である糸の直線距離に対応する。
ナノファイバ糸の回転数が多いローラは、ナノファイバが多い束を生成し、ナノファイバ
糸の回転数が少ない同じサイズのローラは、ナノファイバの数が少ない束を生成する。一
部の実施形態では、ローラの周りのナノファイバ糸の巻き数は、10~100,000で
あってよい。一実施形態では、ナノファイバ糸の巻数は、2000~4000である。
【0078】
2つの接着剤ストリップがローラ1308上に配置されると(1204)、(例えば、
図13の矢印で示されるように)ローラを回転させることにより、ナノファイバ糸をロー
ラの周りに巻き付けることができる(1208)。ナノファイバ1316は、2つの接着
剤ストリップと接触するようにローラの一部に巻き付けることができる。上記のように、
接着剤ストリップは、ローラ1308からのナノファイバの束の取り外しを容易にする。
【0079】
一部の実施形態では、ナノファイバ糸は、糸に張力をかけながらローラの周りに巻き付
けることができる。巻き付け中に糸の張力を維持すると、ローラ上のナノファイバ糸の整
列が向上する。一部の例では、ローラをより遅い速度で回転させることにより、ナノファ
イバの整列をさらに改善することもできる。束内のナノファイバの体積はまた、巻き付け
中の糸の張力の関数であってよい。張力がかかった状態でローラに巻き付けられた糸は、
張力がほとんどまたは全くない状態でローラに巻き付けられた糸よりも、束の体積が少な
くなる可能性がある。張力が低いまたは無いと整列しにくくなり、より多くのスペースを
占め得るからである。一部の例では、糸がローラ上に巻かれるときに糸にかかる張力を維
持するボビンを使用することにより、ナノファイバ糸に張力をかけることができる。他の
一部の例では、ガイドは、ナノファイバ糸に張力を提供するように構成することができる
、または、張力は、プーリーシステムを使用して加えることができる。加えられる張力は
、ナノファイバ糸間の整列を引き起こすほど十分に大きく、糸の極限引張強度未満であっ
てよい。
【0080】
図14を参照すると、ナノファイバ糸がローラの周りに巻き付けられると(1208)
、ナノファイバ糸の整列されたセグメントの束1404が、ローラ1308上に形成され
る(1212)。ナノファイバ糸の束1404は、2つの端部が2つの接着剤ストリップ
1304に固定されている整列したナノファイバ糸の集まりである。上記のように、束の
長さはローラ1308の円周に比例し、束の体積と束内の糸のセグメント数は、ナノファ
イバ糸がローラに巻き付けられる回数に比例する。望ましい束1404の長さは、製造さ
れる神経足場のサイズ、修復される神経損傷の大きさ、及び再生される神経の切断された
末端間のギャップの長さ等の因子によって影響を受ける場合がある。束1404の体積は
、管の直径(以下で説明)、ナノファイバで充填される管の体積百分率、及び各束が管内
に配置される(1228)前に折り畳まれる回数等の因子によって影響を受ける場合があ
る。
【0081】
ナノファイバ糸の束1404がローラ1308の周りに形成される(1212)と、糸
の束は、ギャップ1312で分ける(1216)または切断される。この分けるとは、図
15の矢印1504によって示されている。束の端部は、互いにさらに離されて(121
6)、束の線形構成を形成することができる。2つの接着剤ストリップの代わりに単一の
広い接着剤ストリップが使用される例では、広い接着剤ストリップは、ストリップに固定
されたナノファイバ糸の束と共に切断され、端部が分離される。
【0082】
精密刃、レーザ等を含む、ナノファイバ糸の束1404を切断するために様々な技術を
適用することができる。ナノファイバ糸の束1404は、ナノファイバ糸が2つの接着剤
ストリップ1304に固定されたままで切断される。(2つの接着剤ストリップの代わり
に)単一の広い接着剤ストリップが使用される実施形態では、単一の切断技術または2つ
の異なる切断技術を適用して、接着剤のストリップ及びナノファイバ糸の束1404を切
断することができる。
【0083】
図16に示すように、1216で分けられると、ナノファイバ糸の束1404は、ロー
ラ1308から取り外される(1220)。
【0084】
ナノファイバ糸の束1404をローラ1308から取り外した(1220)後、束14
04は、その元の長さの半分(または他の何らかのサブユニット)に折り畳むことができ
る(1224)。ナノファイバ糸の束1404の折り畳み(1224)は、2つの端部(
この例では接着剤ストリップ1304A、1304Bに対応する)を図17の矢印170
4A及び1704Bで示すように持ってくることによって、達成することができる。
【0085】
図18に示すように、ナノファイバの束1404を半分に折り畳むことにより、ナノフ
ァイバ糸が折り畳まれた束1804が作製される。折り畳まれた束1804は、単位長さ
当たりのナノファイバ糸の数が、束1404と比較して2倍になる。ナノファイバ糸の折
り畳まれた束1804は、互いに重ねられた2つの接着剤ストリップによって規定された
第1の端部1808と、接着剤ストリップの支持の無いナノファイバ糸の折り畳まれた束
によって規定された第2の端部1812との2つの端部を含む。
【0086】
ナノファイバ糸の束1404が折り畳まれると(1224)、折り畳まれた束1804
は、ナノファイバ糸の束を管1916内に配置するようにさらに処理することができる。
折り畳まれた束1804を管に配置する(1228)ために、束の第2の端部1812は
、(矢印1912A及び1912Bによって示されるように)ナノファイバ糸がより狭い
群に集結するように括ってもよい。図19図21に示すように、全てのナノファイバ糸
を集結させることにより、折り畳まれた束1904を、管1916を通して引っ張り、管
1916内に配置し、または管1916内に通すことができる。図19に示すように、針
またはフック1908の使用を含むがこれに限定されない多くの方法で括ることができる
【0087】
上記のように、例示的な中空管神経足場1916は、ナノファイバ糸の束1904を受
け入れるように構成された円筒形または楕円形または多角形の管の断面であってよく、ナ
ノファイバ糸の束は、神経の再生を促進するためのファイバ間の間隔を提供しながらも、
拡張して管1916を満たす。
【0088】
図20は、ナノファイバ糸の束1904が中に配置されている(1228)例示的な管
1916の斜視図である。束1904を管1916内に配置する(1228)と、束19
04の2つの端部を管2004の外側に残しながら、束1904の中央部分を管内に封入
することになる。図21は、ナノファイバ糸の束1904を封入する管1916の断面図
である。ナノファイバ糸は、管1916内に整列され、留まることが示されている。
【0089】
図22図25に示すように、ナノファイバ糸の束1904が管1916内に配置され
ると(1228)、管の両側で束1904の2つの端部が(矢印2204A及び2204
Bで示すように)切断され、新しく解放された端部による管の断面を満たすようにナノフ
ァイバの束が拡張する(1232)。図23及び図25は、管全体に均一に分布したナノ
ファイバを封入する管1916の断面図である。
【0090】
[カーボンナノファイバの神経足場]
上記のように、いくつかの神経足場管(例えば、管304)は、生物学的に適合性のあ
るポリマー及び/または生体吸収性材料(例えば、シリコン)から製造される。場合によ
っては、柔軟性とコンプライアンスのために選択されたポリマーでさえも、神経足場デバ
イスで使用されたときに患者に不快感を与えるほど硬い(例えば、ポリマー管は周囲の組
織よりも硬いため)。また、場合によっては、非生体吸収性材料で形成された管は、神経
再生後に外科的に除去することが必要な場合がある。この追加の手術は、患者の不便、費
用、及びリスクの増加につながる。あるいは、生体吸収性材料を管に使用することができ
るが、これらの材料が高価な場合もある。
【0091】
本明細書に記載の実施形態では、柔軟で、コンプライアントであり、生物学的に適合及
び/または生体吸収性の管が、市販の生体吸収性縫合材料とカーボンナノファイバシート
(後述する)を使用して製造できる。上記のように、生体吸収性縫合材料及びカーボンナ
ノファイバシートから形成された神経足場管の中にカーボンナノファイバの束を含む神経
足場の例示的な構造が、図26に示されている。
【0092】
図26に示されるカーボンナノファイバ神経足場2600の例示的な実施形態は、生体
吸収性螺旋(helix)2604と、カーボンナノファイバ糸2608の束と、円筒形カー
ボンナノファイバシート2612とを備える。
【0093】
一部の実施形態における生体吸収性螺旋2604は、ナノファイバ糸2608の束の形
状を一時的に維持する。生体吸収性螺旋2604は、例えば、体内への挿入後に徐々に分
解することができる外科用糸(例えば、縫合材料)のスレッドまたは糸から形成すること
ができる。生体吸収性螺旋2604の例には、特に外科縫合に使用される材料のうち、ポ
リグリコール酸、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、コラーゲン、及びそれらのポリマーの
ファイバ及び/または糸が含まれるが、これらに限定されない。本開示に照らして認識さ
れるように、一部の例では、螺旋2604は、全体として足場2600の形状及び直径を
維持する形態を提供することができ、これによって、神経の再成長を阻害し得る足場26
00の断面の崩壊または収縮を防止(または抑制)する。
【0094】
一部の例では、螺旋2604は、第1の方向(例えば、右側)に円筒形基材2704の
周りに巻き付けられた第1の螺旋と、反対の方向に円筒形基材2704の周りに反対側(
例えば、左側)に巻き付けられた第2の螺旋とによって形成されてよい。一部の例では、
螺旋2604は、基材2704上にある間、螺旋2604を形成するために使用される構
成ポリマー材料のガラス転移温度(T)の例えば、50%、60%、70%、または8
0%で、加熱することができる。さらに他の例では、螺旋2604は、本明細書に記載さ
れるように、束2608のナノファイバ間の間隔を維持するのに必要な剛性を提供する、
ブレイズ編の、ニット編の、またはかぎ針編みの管状構造から形成することができる。
【0095】
カーボンナノファイバシート2612は、ナノファイバ糸束2608及び螺旋2604
によって形成された構造の周りに巻き付けることができる。カーボンナノファイバシート
2612は、螺旋2604の形状を維持するのに役立ち、また螺旋2604がナノファイ
バ糸束2608に加える閉じ込めバイアスを維持するのに役立ち得る。束2608の構造
、より具体的には、束2608内の個々のナノファイバ糸の互いに対する相対距離及び位
置を維持することにより、上記のように神経の再成長を促進することができる。
【0096】
螺旋2604は時間の経過とともにゆっくりと体内で溶解するように構成された材料で
製造され、螺旋2604の巻き線は(例えば、動きに応じた)柔軟性とコンプライアンス
を可能にするので、螺旋2604は他の一部のポリマー管よりも患者に快適さを提供する
。さらに、螺旋2604は、その吸収性組成のために外科的除去を必要としない。
【0097】
図27A~Dは、一例におけるカーボンナノファイバ神経足場2600の製造の段階を
示す。図27Aに示すように、円筒形基材2704を提供することができ、その周りに生
体適合性及び/または生体吸収性の糸(またはファイバ)が、螺旋2604を形成するよ
うに巻き付けられる。円筒形基材2704によって、生体適合性及び/または生体吸収性
の糸(またはファイバ)を図26に示すように、螺旋2604構成に形成することができ
る。
【0098】
図27Bは、カーボンナノファイバシート2612の螺旋2604への巻き付けを示す
。一部の例では、カーボンナノファイバシート2612は、(例えば、溶媒と生体適合性
及び/または生体吸収性ポリマーの溶液を使用して、ここで、溶媒はシートへの塗布後に
除去される)ポリマーを浸透させることができる。いずれにせよ、図27Cに示すように
、シート2612の塗布後、円筒形基材2704を取り外すことができる。円筒形基材2
704の除去によって形成された円筒形空孔2708は、螺旋2604及び/またはナノ
ファイバシート2612の1つまたは複数によって規定される。次に、空孔2708を使
用して、ナノファイバ糸2608の束を収容できる。
【0099】
螺旋2604の内部に配置されたカーボンナノファイバ糸2608の束は、前述の実施
形態のいずれかを含み、さらなる記載を必要としない。同様に、螺旋2604及び糸26
08の周りに巻かれたカーボンナノファイバシート2612を以下に記載する。
【0100】
カーボンナノファイバ神経足場2600は、一例では、螺旋状に巻き付けることによっ
て形成することができる。
【0101】
[ナノファイバフォレスト]
本明細書で使用される場合、用語「ナノファイバ」は、1μm未満の直径を有するファ
イバを意味する。本明細書の実施形態は主にカーボンナノチューブから製造されたものと
して記載されるが、グラフェン、ミクロンもしくはナノスケールのグラファイトファイバ
及び/またはプレート等の他の炭素同素体、並びに、窒化ホウ素等のナノスケールファイ
バの他の組成物が、以下に記載する技術を使用して高密度になり得ることは認識されよう
。本明細書で使用される場合、用語「ナノファイバ」及び「カーボンナノチューブ」は、
炭素原子が一緒に結合して円筒構造を形成する単層カーボンナノチューブ及び/または多
層カーボンナノチューブの両方を含む。一部の実施形態では、本明細書で言及されるカー
ボンナノチューブは、4~10の層を有する。本明細書で使用される場合、「ナノファイ
バシート」または単に「シート」は、引き抜き加工(ここに引用することによってその全
体が本明細書の記載の一部をなすものとする国際公開第2007/015710号に記載
されている)によって、シートのナノファイバの縦軸がシートの主面に対して垂直ではな
く、シートの主面に対して平行になる(すなわち、「フォレスト」と称されることが多い
堆積されたままのシートの形態になる)ように整列されたナノファイバのシートを指す。
これは、それぞれ、図30及び31に示される。
【0102】
カーボンナノチューブの寸法は、使用される生産方法に依存して大きく変わり得る。例
えば、カーボンナノチューブの直径は0.4nm~100nmであってよく、その長さは
10μm~55.5cmを超える範囲であってよい。カーボンナノチューブはまた、13
2,000,000:1以上の非常に高いアスペクト比(長さと直径との比)を有するこ
とが可能である。広範な寸法可能性を考慮すると、カーボンナノチューブの特性は、高度
に調節可能または「調整可能」である。カーボンナノチューブの多くの興味深い特性が確
認されているが、実際の適用でカーボンナノチューブの特性を利用するには、カーボンナ
ノチューブの特徴を維持または向上することを可能にするスケーラブルで制御可能な生産
方法が必要である。
【0103】
カーボンナノチューブはその特異構造により、カーボンナノチューブを特定用途に適合
させる特定の機械的、電気的、化学的、熱的、及び光学的特性を有する。特に、カーボン
ナノチューブは優れた導電性、高い機械的強度、良好な熱安定性を示し、また、疎水性で
ある。これらの特性に加えて、カーボンナノチューブはまた、有用な光学特性を示し得る
。例えば、カーボンナノチューブは、狭く選択された波長で光を放出または検出するため
に、発光ダイオード(LED)及び光検出器で使用されてよい。カーボンナノチューブは
また、光子輸送及び/またはフォノン輸送に有用であることを証明し得る。
【0104】
本主題の開示の様々な実施形態に従って、ナノファイバ(カーボンナノチューブを含む
が、カーボンナノチューブに限らない)は、「フォレスト」と本明細書で称される構成を
含む様々な構成で配置することができる。本明細書で使用される場合、ナノファイバまた
はカーボンナノチューブの「フォレスト」は、基材上で互いに実質的に平行に配置された
ほぼ等しい寸法を有するナノファイバの配列を指す。図28は、基材上のナノファイバの
例示的なフォレストを示す。基材は任意の形状であってよいが、一部の実施形態では、基
材は、フォレストが集められる平面を有する。図28で分かるように、フォレスト内のナ
ノファイバは、高さ及び/または直径がほぼ等しくてよい。
【0105】
本明細書に開示されるナノファイバフォレストは、比較的密であってよい。詳細には、
開示のナノファイバフォレストは、少なくとも10億ナノファイバ/cm2の密度を有し
てよい。一部の特定の実施形態では、本明細書に記載のナノファイバフォレストは、10
0億/cm2と300億/cm2の間の密度を有してよい。他の例では、本明細書に記載の
ナノファイバフォレストは、900億ナノファイバ/cm2の範囲の密度を有してよい。
フォレストは高密度または低密度の領域を含んでよく、特定の領域はナノファイバが無い
場合がある。フォレスト内のナノファイバはまた、ファイバ間接続を示してよい。例えば
、ナノファイバフォレスト内の隣接するナノファイバは、ファンデルワールス力によって
相互に引き付けられてよい。いずれにせよ、フォレスト内のナノファイバの密度は、本明
細書に記載する技術を適用することによって増加させることができる。
【0106】
ナノファイバフォレストを製造する方法は、例えば、ここに引用することによってその
全体が本明細書の記載の一部をなすものとする国際公開第2007/015710号に記
載されている。
【0107】
様々な方法が、ナノファイバ前駆体フォレストを生成するために使用できる。例えば、
一部の実施形態では、ナノファイバは、図29に概略的に示されている高温炉内で成長さ
せてよい。一部の実施形態では、触媒が、基材上に堆積され、反応器に載置され、次に、
反応器に供給される燃料化合物に暴露されてよい。基材は800℃またはさらに1000
℃よりも高い温度に耐えることができ、不活性物質であってよい。基材は、下にあるシリ
コン(Si)ウェハ上に配置されたステンレス鋼またはアルミニウムを含んでよいが、他
のセラミック基材(例えば、アルミナ、ジルコニア、SiO2、ガラスセラミック)をS
iウェハの代わりに使用してよい。前駆体フォレストのナノファイバがカーボンナノチュ
ーブである例では、アセチレン等の炭素系化合物を燃料化合物として使用してよい。反応
器に導入された後、次に、燃料化合物(複数可)は触媒上に蓄積し始めてよく、基材から
上方に成長することにより集合して、ナノファイバのフォレストを形成してよい。反応器
はまた、燃料化合物(複数可)及びキャリアガスが反応器に供給され得るガス入口と、消
費された燃料化合物及びキャリアガスが反応器から放出され得るガス出口とを含んでよい
。キャリアガスの例は、水素、アルゴン、及びヘリウムを含む。これらのガス、具体的に
は、水素はまた、ナノファイバフォレストの成長を促進するために反応器に導入されてよ
い。さらに、ナノファイバに組み込まれる予定のドーパントがガス流に加えられてよい。
【0108】
多層ナノファイバフォレストを製造するために使用されるプロセスでは、1つのナノフ
ァイバフォレストが基材上に形成され、その後、第1のナノファイバフォレストと接触し
て第2のナノファイバフォレストが成長する。多層ナノファイバフォレストは、第1のナ
ノファイバフォレストを基材上に形成し、触媒を第1のナノファイバフォレスト上に堆積
させ、次に、追加の燃料化合物を反応器に導入し、第1のナノファイバフォレスト上に配
置された触媒から第2のナノファイバフォレストの成長を促進すること等による、多くの
適切な方法によって形成することができる。適用される成長方法、触媒の種類、及び触媒
の場所に応じて、第2のナノファイバ層は第1のナノファイバ層の上に成長し得る、また
は、例えば水素ガス等で触媒をリフレッシュした後、基材上で直接成長することによって
、第1のナノファイバ層の下で成長する。いずれにせよ、第2のナノファイバフォレスト
は、第1のナノファイバフォレストのナノファイバとほぼ端から端まで整列することがで
きるが、第1のフォレストと第2のフォレストとの間で容易に検出可能な界面がある。多
層ナノファイバフォレストは、任意の数のフォレストを含んでよい。例えば、多層前駆体
フォレストは、2、3、4、5、またはそれよりも多いフォレストを含んでよい。
【0109】
[ナノファイバシート]
フォレスト構成での配置に加えて、本出願のナノファイバはシート構成で配置されても
よい。本明細書で使用する場合、「ナノファイバシート」、「ナノチューブシート」、ま
たは単に「シート」という用語は、ナノファイバが平面内で端から端まで整列するナノフ
ァイバの配置を指す。ナノファイバシートの例の図を寸法のラベルを付して図30に示す
。一部の実施形態では、シートは、シートの厚さの100倍を超える長さ及び/または幅
を有する。一部の実施形態では、長さ、幅、または、その両方が、シートの平均厚さの1
、10、または、10倍を超える。ナノファイバシートは、例えば、約5nm~
30μmの厚さ、ならびに意図する用途に適した任意の長さ及び幅を有することができる
。一部の実施形態では、ナノファイバシートは、1cm~10メートルの長さ及び1cm
~1メートルの幅を有してよい。これらの長さは、単に例示のために提供されている。ナ
ノファイバシートの長さと幅は、ナノチューブ、フォレスト、またはナノファイバシート
の物理的または化学的特性ではなく、製造装置の構成によって制約される。例えば、連続
プロセスで任意の長さのシートを作成できる。これらのシートは、製造時にロールに巻き
付けることができる。
【0110】
図30で分かるように、ナノファイバが端から端まで整列される軸は、ナノファイバ整
列の方向と呼ばれる。一部の実施形態では、ナノファイバ整列の方向は、ナノファイバシ
ート全体にわたって連続的であってよい。ナノファイバは必ずしも互いに完全に平行では
なく、ナノファイバの整列の方向は、ナノファイバの整列の方向の平均的または一般的な
尺度であると理解されている。
【0111】
ナノファイバシートは、シートを製造することができる任意のタイプの適切なプロセス
を使用してアセンブルされてよい。一部の例示的な実施形態では、ナノファイバシートは
、ナノファイバフォレストから引き出されてよい。ナノファイバフォレストから引き出さ
れているナノファイバシートの例が図31に示されている。
【0112】
図31で分かるように、ナノファイバはナノファイバフォレストから横方向に引き出さ
れ、次に端から端まで整列させてナノファイバシートを形成してよい。ナノファイバシー
トがナノファイバフォレストから引き出される実施形態では、フォレストの寸法を制御し
て、特定の寸法を有するナノファイバシートを形成してよい。例えば、ナノファイバシー
トの幅は、シートが引き出されたナノファイバフォレストの幅とほぼ等しくてよい。さら
に、シートの長さは、例えば、所望のシートの長さが達成されたときに引き出しプロセス
を終了することによって制御することができる。
【0113】
ナノファイバシートには、様々な用途に利用できる多くの特性がある。例えば、ナノフ
ァイバシートは、調整可能な不透明度、高い機械的強度及び柔軟性、熱伝導性及び電気伝
導性を有してよく、そしてまた疎水性を示してよい。シート内のナノファイバの高度な整
列を考えると、ナノファイバシートは非常に薄い場合がある。一部の例では、ナノファイ
バシートは約10nm厚さのオーダーであり(通常の測定許容誤差内で測定)、ほぼ2次
元になる。他の例では、ナノファイバシートの厚さは、200nmまたは300nmに達
し得る。したがって、ナノファイバシートは、コンポーネントに最小限の追加の厚さを追
加する場合がある。
【0114】
ナノファイバフォレストと同様に、ナノファイバシート内のナノファイバは、シートの
ナノファイバの表面に化学基または元素を追加することにより、処理剤によって機能化さ
れてよく、ナノファイバのみとは異なる化学的活性を提供する。ナノファイバシートの機
能化は、既に機能化されたナノファイバに対して行うことができる、または、まだ機能化
されていないナノファイバに対して行うこともできる。機能化は、CVD、及び様々なド
ーピング技術を含むが、これらに限定されない本明細書に記載される任意の技術を使用し
て行うことができる。
【0115】
ナノファイバフォレストから引き出されたナノファイバシートは、高い純度も有してよ
く、場合によっては、ナノファイバシートの90%を超える、95%を超える、または9
9%を超える重量パーセントがナノファイバに起因する。同様に、ナノファイバシートは
、90%を超える、95%を超える、99%を超える、または99.9%を超える炭素重
量を含んでよい。
【0116】
[他の考察]
本開示の実施形態の前述の記載は、例示の目的で提示されており、網羅的であること、
または請求項を開示された正確な形式に限定することを意図していない。当業者は、上記
の開示を考慮して、多くの修正及び変形が可能であることを認識することができる。
【0117】
本明細書で使用される言葉は、主に読みやすさ及び指示の目的のために選択されており
、その言葉は、本発明の主題を記述または制限するために選択されていない場合がある。
したがって、本開示の範囲は、この「発明を実施する形態」によってではなく、本明細書
に基づく出願において生じるあらゆる請求項によって制限されることが意図される。した
がって、本実施形態の開示は、以下の「特許請求の範囲」に記載されている本発明の範囲
の制限ではなく、例示を意図している。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27A-27D】
図28
図29
図30
図31
【手続補正書】
【提出日】2023-04-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用縫合材料を含む円筒形螺旋であって、前記円筒形螺旋が内部を規定する円筒形螺旋と、
前記円筒形螺旋の前記内部に、整列されたカーボンナノファイバ糸の束と、
前記円筒形螺旋の前記内部とは反対側の前記円筒形螺旋の周りのカーボンナノファイバシートと
を備える、カーボンナノファイバ神経足場。
【請求項2】
前記束の前記整列されたセグメントが、互いに5μm~15μm離間している、請求項に記載のカーボンナノファイバ神経足場。
【請求項3】
前記カーボンナノファイバシートが、生体吸収性ポリマー溶浸材を含む、請求項に記載のカーボンナノファイバ神経足場。
【請求項4】
前記円筒形螺旋が、第1の方向に巻き付けられた第1の螺旋と、前記第1の螺旋と反対の第2の方向に巻き付けられた第2の螺旋とを含む、請求項に記載のカーボンナノファイバ神経足場。
【請求項5】
前記円筒形螺旋が、かぎ針編みの円筒形螺旋である、請求項に記載のカーボンナノファイバ神経足場。
【請求項6】
前記円筒形螺旋が、編まれた円筒形螺旋である、請求項に記載のカーボンナノファイバ神経足場。
【請求項7】
前記外科用縫合材料が、生体吸収性のものである、請求項1に記載のカーボンナノファイバ神経足場。