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特開2023-98975大動脈の部分遮断用の大動脈血流量計およびポンプ
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  • 特開-大動脈の部分遮断用の大動脈血流量計およびポンプ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098975
(43)【公開日】2023-07-11
(54)【発明の名称】大動脈の部分遮断用の大動脈血流量計およびポンプ
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/10 20130101AFI20230704BHJP
   A61B 5/0215 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
A61M25/10 546
A61B5/0215 C
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063182
(22)【出願日】2023-04-10
(62)【分割の表示】P 2019556882の分割
【原出願日】2018-04-20
(31)【優先権主張番号】62/488,625
(32)【優先日】2017-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(71)【出願人】
【識別番号】519253225
【氏名又は名称】ガバメント オブ ザ ユナイテッド ステイツ アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー オブ ジ エア フォース
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン マイケル オースティン
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ ティモシー ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】ネフ ルーカス ポール
(57)【要約】      (修正有)
【課題】大動脈の部分遮断用のシステムおよび方法が提供される。
【解決手段】本システムは、患者の大動脈内に配置される、カテーテルの先端部に設置されている拡張式大動脈血流調節装置を有するカテーテルと、大動脈の血流を制限するために該装置を拡張および収縮させるカテーテル制御装置とを含みうる。また、本システムは、拡張式装置より先端側および基端側の血圧を測定するためのセンサを含みうる。本システムは、命令を記憶している非一時的コンピュータ可読媒体であって、該命令が、センサに接続されているプロセッサにより実行されると、該プロセッサが、血圧測定値および対応する波形に基づいて大動脈血流量を推定し、該推定大動脈血流量と目標大動脈血流量範囲とを比較し、該推定大動脈血流量が該目標大動脈血流量範囲外にある場合に警報を発生する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管の血流を部分的に制限するために該血管内に設置される拡張式血流調節装置の拡張および収縮を自動化するための、カテーテル制御装置であって、該拡張式血流調節装置がカテーテルの先端領域に設置されており、該カテーテル制御装置が、
該カテーテルを介して該拡張式血流調節装置と流体連通しているポンプであって、該血管内の該拡張式血流調節装置を拡張および収縮させるように構成されている、ポンプと、
命令を記憶している非一時的コンピュータ可読媒体であって、該命令が、該拡張式血流調節装置より先端側に位置づけられている第1の血圧センサおよび該拡張式血流調節装置より基端側に位置づけられている第2の血圧センサに作動的に接続されているプロセッサにより実行されると、該プロセッサが、
該拡張式血流調節装置より先端側の生理学的情報測定値を該第1の血圧センサから受け取り、
該拡張式血流調節装置より基端側の生理学的情報測定値を該第2の血圧センサから受け取り、
該第1の血圧センサおよび該第2の血圧センサのうちの少なくとも1つからの該生理学的情報測定値と目標生理学的範囲とを比較し、
動的スケーリング係数を計算し、
少なくとも部分的に該動的スケーリング係数に基づいてボーラス量を計算し、かつ
該第1の血圧センサおよび該第2の血圧センサのうちの少なくとも1つからの該生理学的情報測定値が該目標生理学的範囲外にある場合に該血管の血流量を調整するために、該ボーラス量だけ該拡張式血流調節装置の拡張または収縮を該ポンプに調整させる、
非一時的コンピュータ可読媒体と
を含む、カテーテル制御装置。
【請求項2】
前記拡張式血流調節装置が、血管の血流を制限するために拡張するように膨張するように構成されているバルーンを含み、前記ポンプが、前記第1の血圧センサおよび前記第2の血圧センサのうちの少なくとも1つからの前記生理学的情報測定値が前記目標生理学的範囲外にある場合に該血管の血流量を調整するために該バルーンを膨張または縮小させるように構成されている、請求項1記載のカテーテル制御装置。
【請求項3】
前記ポンプが、1マイクロリットルという少ないボーラス量を送達することによって前記バルーンを膨張または縮小させるように構成されている、請求項2記載のカテーテル制御装置。
【請求項4】
前記ポンプが、前記プロセッサに接続されているステッパモータによって前記バルーンを膨張または縮小させるように構成されている、請求項2記載のカテーテル制御装置。
【請求項5】
前記プロセッサが、前記比較に基づいて、前記第1の血圧センサおよび前記第2の血圧センサのうちの少なくとも1つからの前記生理学的情報測定値が前記目標生理学的範囲外にある場合に前記血管の血流量を調整するために前記拡張式血流調節装置の拡張または収縮を前記ポンプに自動的に調整させる、請求項1記載のカテーテル制御装置。
【請求項6】
前記カテーテル制御装置が、前記プロセッサに作動的に接続されている複数のスイッチおよび/またはボタンをさらに含み、該プロセッサが、該複数のスイッチおよび/またはボタンを介して受け取ったユーザー入力に応答して、前記第1の血圧センサおよび前記第2の血圧センサのうちの少なくとも1つからの前記生理学的情報測定値が前記目標生理学的範囲外にある場合に前記血管の血流量を調整するために前記拡張式血流調節装置の拡張または収縮を前記ポンプに調整させる、請求項1記載のカテーテル制御装置。
【請求項7】
前記カテーテル制御装置が、前記比較を示す情報を表示するように構成されているグラフィカルユーザーインターフェースをさらに含む、請求項1記載のカテーテル制御装置。
【請求項8】
前記グラフィカルユーザーインターフェースが、ユーザーが、意思決定サポートに基づいてユーザー入力を行うことができるように、前記比較に基づいて該意思決定サポートを聴覚的に伝達するようにさらに構成されている、請求項7記載のカテーテル制御装置。
【請求項9】
前記第1の血圧センサおよび前記第2の血圧センサのうちの少なくとも1つからの前記生理学的情報測定値が前記目標生理学的範囲外にある場合に前記プロセッサが警報を発する、請求項1記載のカテーテル制御装置。
【請求項10】
請求項1記載のカテーテル制御装置を含む、大動脈の部分遮断用の精密制御システムであって、
前記カテーテルの先端部に設置されている前記拡張式血流調節装置;
前記第1の血圧センサ;および
前記第2の血圧センサ
をさらに含む、システム。
【請求項11】
前記プロセッサに作動的に接続され、かつ前記拡張式血流調節装置内の圧力、心拍数、呼吸数、血液温度、患者の心拍出量、頸動脈血流量、肺動脈圧、末梢血管抵抗、または頭蓋内圧のうちの少なくとも1つを測定するように構成されている1つまたは複数の追加のセンサをさらに含む、請求項10記載のシステム。
【請求項12】
前記システムが、前記カテーテル制御装置ならびに前記第1および第2の血圧センサに作動的に接続されている外部中央処理装置をさらに含み、該外部中央処理装置が、前記プロセッサを含み、かつ該第1の血圧センサおよび該第2の血圧センサのうちの少なくとも1つからの前記生理学的情報測定値が前記目標生理学的範囲外にあるか否かを示す情報を該カテーテル制御装置に伝達するように構成されている、請求項10記載のシステム。
【請求項13】
前記外部中央処理装置が、WiFi、Bluetooth、Wixelベース通信、セルラー通信、または他の通信形態のうち少なくとも1つを通じて、前記情報をカテーテル制御装置に伝達する、請求項12記載のシステム。
【請求項14】
前記生理学的情報測定値が血圧測定値の波形を含む、請求項1記載のカテーテル制御装置。
【請求項15】
前記動的スケーリング係数が、前記第1の血圧センサからの前記生理学的情報測定値および前記第2の血圧センサからの前記生理学的情報測定値のうちの1つまたは複数に基づく、請求項1記載のカテーテル制御装置。
【請求項16】
前記動的スケーリング係数が、前記第1の血圧センサからの前記生理学的情報測定値における変化および前記第2の血圧センサからの前記生理学的情報測定値における変化のうちの1つまたは複数に基づく、請求項15記載のカテーテル制御装置。
【請求項17】
前記命令が、前記プロセッサにより実行されると、該プロセッサがさらに、
前記動的スケーリング係数を計算する前に、最初に前記ポンプに前記拡張式血流調節装置の拡張または収縮を調整させる、
請求項1記載のカテーテル制御装置。
【請求項18】
前記命令が、前記プロセッサにより実行されると、該プロセッサがさらに、
前記第1の血圧センサおよび前記第2の血圧センサのうちの少なくとも1つからの前記生理学的情報測定値と前記目標生理学的範囲との間の第1の差を計算し、前記動的スケーリング係数が該第1の差に基づく、
請求項17記載のカテーテル制御装置。
【請求項19】
前記命令が、前記プロセッサにより実行されると、該プロセッサがさらに、
時間の遅れが経過したことを決定し、
前記ボーラス量だけ、かつ該時間の遅れの経過を決定したことに応答して、前記ポンプに前記拡張式血流調節装置の収縮または拡張を調整させた後、前記第1の血圧センサおよび前記第2の血圧センサからの後続の生理学的情報測定値を受け取り、かつ
該第1の血圧センサおよび該第2の血圧センサのうちの少なくとも1つからの該後続の生理学的情報測定値と前記目標生理学的範囲との間の第2の差を計算する、
請求項18記載のカテーテル制御装置。
【請求項20】
前記ボーラス量が第1のボーラス量であり、前記命令が、前記プロセッサにより実行されると、該プロセッサがさらに、
前記第2の差に基づいて前記動的スケーリング係数を修正し、かつ
該修正された動的スケーリング係数に基づいて第2のボーラス量を計算する、
請求項19記載のカテーテル制御装置。
【請求項21】
前記時間の遅れが前記第1の差に基づく、請求項19記載のカテーテル制御装置。
【請求項22】
前記ポンプが、1-50マイクロリットルのボーラス量を送達して前記バルーンを膨張または縮小させるように構成されている、請求項2記載のカテーテル制御装置。
【請求項23】
前記ポンプがシリンジポンプである、請求項4記載のカテーテル制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の権益に関する記載
本発明は、米国国立心臓肺臓血液研究所から授与された契約番号K12HL108964に基づく政府支援により行われたものである。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は2017年4月21日出願の米国仮出願第62/488,625号の優先権を主張するものであり、その内容全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0003】
使用分野
本開示は全体として、大動脈内に配置される血管内大動脈血流調節装置に関する。より具体的には、本発明は、大動脈の部分遮断を達成するための精密制御システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
出血は、一般市民および軍人における予防可能な死亡の主因であり、非圧迫性血管損傷により生じる場合、制御することが特に困難である。医療患者および手術患者の両方での圧倒的多数の症例において、外傷およびショックによる出血の合併症による死亡は高い確率で存在し続けている。多くの場合、ショック状態を治療するために使用される既存のシステム、薬物、および手順は、重要臓器への十分な酸素送達を維持できないことにより、最終的に患者の死亡をもたらす。この酸素送達は、臓器への十分な血液灌流に基づく。心臓および肺の血圧が十分でないことで血行動態の崩壊が生じ、これにより残りの臓器への灌流が減少し、最終的に死亡することが、よく認識されている。
【0005】
神経原性ショック、出血性ショック、循環血液量減少性、または敗血症性ショックのいずれであっても、ショックを呈する患者の蘇生は、救命救急の最初の数時間に特有の課題である。あらゆる低血圧エピソードが患者にとって有害でありうる。高齢患者および脳外傷に罹患した患者において特に低血圧エピソードが生じやすい。ショックを治療するための現在の実務は病因に基づいて行われるが、ほぼすべての治療アルゴリズムは、IV輸液または血液製剤を含み、必要であれば、血管収縮および血圧上昇を引き起こすように血管系に作用する薬物を含む。出血が継続中である状況では、出血を停止させるために手術による出血制御がしばしば必要になる。
【0006】
ショックの治療の微妙な差異は病因に依存するが、すべての治療様式は欠点を抱えている。第一に、出血の状況では、多くの場合、患者が失血して血液量減少により死亡する前に出血を停止させることは不可能である。
【0007】
第二に、ほぼすべての形態のショックにおいて、血圧を改善する治療の早期に大量のIV輸液および/または血液製剤がしばしば必要になる。時々、多すぎる量の輸液を心血管系に与えることにより、肺水腫、ARDS、または心不全が生じることがある。したがって、治療の早期にしばしば必要ではあるが、患者が利尿作用に耐えることができるかぎり早期に、この過剰の輸液を除去するための代わりの方法がしばしば必要になる。
【0008】
現行の治療法による第3の合併症は、高用量の昇圧薬の二次的な結果である。昇圧剤は血管に直接作用することで血管緊張を増加させ、全身血圧を改善する。より良い治療ソリューションが存在しなければ、重要臓器への灌流を改善するために、これらの薬物が必要になる場合がある。しかし、この全身血圧上昇は、微小血管レベルでの灌流不良という潜在的な代償を伴う。残念ながら、これらの薬物に対する応答性が臓器および組織床間で異なることから、予期せぬ局所血流の変化が生じうるし、これにより最終的に逆効果または有害効果が生じうる。高用量のこれらの薬物によって、特定の組織が永久損傷を被ることがあり、例えば、遠位四肢では四肢大切断が潜在的に必要になり、または、腎臓では腎損傷が生じて透析が必要になる。頭蓋内圧の上昇を伴う脳外傷に罹患した患者に関して、動物およびヒトにおける試験は、高用量の昇圧剤が脳の損傷区域への灌流をしばしば改善可能であるが、多くの場合その代償として、脳の他の領域が顕著な血管収縮を示すことで虚血性神経細胞障害が生じることを示した。
【0009】
最後に、ショックを治療するための現行の治療法は、機能するまでに時間を要する。血液製剤およびIV輸液ボーラスの大量輸注には数分~1時間を要し、昇圧薬は、機能し始めるまで10分~15分を要する場合が多く、後続の数時間にわたる用量のタイトレーションがしばしば必要になる。機能するときであっても、いくつかの形態のショックは単一の薬物には応答せず、血圧を最適化するには複数の昇圧剤が必要になる。これらの従来の治療法は、血圧をタイムリーに最適化することがしばしば不可能であり、多くの場合、所期の目標全体を達成することができない。短期間の虚血であっても臓器の機能不全および生存率の低下が生じうることから、血流および血圧をよりタイムリーかつ確実に最適化するための改良された戦略が求められている。
【0010】
機能するまでに時間を要する血液製剤、晶質液、および/または血圧薬を送達する直前に有効な血圧および血流をショック状態の心臓、肺、および脳に速やかに送達する能力は、数え切れない命を救うであろう。
【0011】
血圧を増大させるために大動脈内で装置を使用するというコンセプトは独特なものではない。蘇生用大動脈血管内バルーン遮断(REBOA)は臨終期の外傷患者において使用される治療法である。REBOAは、止血のための最終的な外科的治療介入の前にバルーンカテーテルによって一時的な血行動態支援および出血制御を行う治療法として登場した。救急科開胸術を行って大動脈をクロスクランプすることで遠位側大動脈血流を最小化するよりもむしろ、バルーンカテーテルを大動脈内で損傷レベルを超えて完全に膨張させることで血流を停止させる。このテクノロジーは、大動脈を完全に遮断するように機能するものであり、十分な循環量が存在する場合にカテーテルより上流の血圧を速やかに改善する。
【0012】
現在、REBOAは非圧迫性体幹出血の管理において定評のある臨床戦略であり、血行動態支援を行い、出血を最小化する。外傷医療界内でのその採用拡大は、革新的な血管内テクノロジーおよび血管内技術と血管および外傷手術分野内のオピニオンリーダーからの強力な支持との融合により促進されている。熱狂の高まりにもかかわらず、既に生理学的に異常を来した患者においてREBOAが第2の生理学的侵襲を生じさせることを認識することが重要である。具体的には、上流および下流血管床に対するいくつかの有害な生理作用が理由で、REBOAの有用性はその使用期間に関して限定的である。例えば、バルーンの下流では、遮断点に対して遠位側の組織床の進行性虚血、例えば、血流の欠如による臓器損傷が生じることがあり、バルーンの上流では、長期間の後に、バルーンに対して近位側の超生理的血圧および後負荷増大による心臓損傷、肺損傷、および脳損傷が生じることがある。遮断レベル未満の組織中で発生する遠位虚血によりREBOA治療期間は30分~45分に限定される。これらの副作用はZone 1遮断中に最大になり、これにより、REBOAの総治療期間が著しく制限され、したがって、速やかな出血制御を得ることが可能な外科医が近くにいる状況でしかREBOAが適用できないことから、この治療法の恩恵を受ける可能性がある患者の数が著しく制限される。
【0013】
したがって、このテクノロジーの使用拡大により完全大動脈遮断の持続という有害な結果が顕在化することは当然である。したがって、完全大動脈遮断による進行性の虚血負荷および潜在的な心機能不全に関する懸念により、とりわけ長期遮断が必要なシナリオにおいて、この治療法を使用するための既に高い閾値が上昇している。医療提供者側のこの躊躇は、それを超えると生存が不可能であるREBOAの耐容閾値が十分に確定されていないという事実により増幅している。この懸念により、REBOAの範囲が本質的に狭くなり、厳しい環境または農村環境および施設間輸送でのその有用性が低下する。
【0014】
伝統的なREBOA技術の修正版は、治療期間を延長する方法として、全血流を完全に停止させるのではなく低量の遠位側血流を実現するためにバルーンカテーテルによる大動脈の部分遮断を利用するというものである。この技術は、蘇生用大動脈血管内バルーン部分遮断(PREBOA)を含むがそれに限定されない種々の名称で呼ばれており、大動脈遮断の持続による作用を軽減するために実行可能な戦略である。大動脈の部分遮断は、血流を維持することを通じてバルーン下方の損傷を減少させることで、治療介入期間を延長して出血の外科的制御のための時間を長くすることができる。
【0015】
しかし、初期の動物実験は、REBOAまたはP-REBOA中に損傷区域への下流大動脈血流を厳格に調節することができないことで、失血による早期死亡が生じうることを示している。これまで、バルーンの膨張および縮小の制御が手作業による膨張シリンジの低忠実度操作でしか達成できないことから、P-REBOAの臨床有効性は達成困難であった。外傷状況下で遠位側出血を停止させるための大動脈の完全遮断または部分遮断用に作り出された現行のバルーン技術は、特に、狭く規定された範囲内で一貫した遠位側血流を維持することが意図されている場合、手動制御だけでは完全遮断から無遮断までの全範囲にわたって一貫したタイトレーションされた血流を実現することができない。PryTime MedicalのER-REBOAカテーテルは、外傷後に出血を減少させるように意図されたコンプライアントバルーンカテーテルであり、外部シリンジポンプ装置を使用する医師幇助による精密制御に役立ちうる1種のバルーンである。
【0016】
その内容全体が参照により本明細書に組み入れられるTimothy K. Williams, MD, et al., Automated Variable Aortic Control Versus Complete Aortic Occlusion in a Swine Model of Hemorrhage(2017年2月10日)(未刊)(Journal of Trauma Acute Care Surgeryに保管)(非特許文献1)に記載のように、大動脈の部分遮断は、遠位側大動脈血流の制御が不十分であることから、血行動態の不安定性および出血の継続を引き起こすことがあり、これにより特にリソースに制約がある環境下でのその有用性が限定される。したがって、現行のシステムでは、拡張式大動脈部分遮断装置、例えばバルーンカテーテルに対して遠位側の大動脈血流量を推定することができない。現在、開業医は、外傷において大動脈の部分遮断がいつ許容されるかを示す代替マーカーとして、遮断装置に対して近位側の血圧を使用している。その内容全体が参照により本明細書に組み入れられるM. Austin Johnson, MD, PhD, et al., Small Changes, Big Effects: The Hemodynamics of Partial and Complete Aortic Occlusion to Inform Next Generation Resuscitation Techniques and Technologies(2017年1月5日)(Journal of Trauma and Acute Care Surgery)(Journal of Trauma Acute Care Surgeryに保管)(非特許文献2)に記載のように、近位側の血圧は様々な出血レベルにわたる大動脈血流量と相関しない。したがって、近位側の血圧が不十分な大動脈血流量マーカーであり、遮断装置の体積の小さな変化が血流量の大きな変化を生じさせることがあり、さらに、これが出血および代償不全の継続を生じさせることがあることから、代替マーカーとしての近位側の血圧の使用は有害でありうる。具体的には、血流量のこれらの変化に対する近位側の血圧の応答が遅れることから、近位側の血圧は、大動脈の部分遮断を試みる際に使用される代替手段としては不十分である。制御不能な出血に際して血流量を低量に制御できないことで、失血および死亡が生じうる。さらに、血流量を検出できないことで、進行性虚血を生じさせる完全大動脈遮断が認識されないことがある。したがって、遮断装置を越えた大動脈血流量を推定する手段を伴わない大動脈の部分遮断の臨床適用は、危険なことがあり、死亡を生じさせることがある。
【0017】
既存の装置および提案された装置に関する上記の問題および限界に照らせば、大動脈血流量の測定手段、およびタイトレーションされた遠位側血流量を実現するためのカテーテルバルーン体積の制御を支援する装置を医師に提供することを可能にする実行可能な解決策に対する緊急かつ満たされていない要求が存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Timothy K. Williams, MD, et al., Automated Variable Aortic Control Versus Complete Aortic Occlusion in a Swine Model of Hemorrhage(2017年2月10日)(未刊)(Journal of Trauma Acute Care Surgeryに保管)
【非特許文献2】M. Austin Johnson, MD, PhD, et al., Small Changes, Big Effects: The Hemodynamics of Partial and Complete Aortic Occlusion to Inform Next Generation Resuscitation Techniques and Technologies(2017年1月5日)(Journal of Trauma and Acute Care Surgery)(Journal of Trauma Acute Care Surgeryに保管)
【発明の概要】
【0019】
概要
本開示は、遮断バルーンより上流および下流ならびに遮断バルーン内の患者の生理状態を測定する一連のセンサを含めることで、該バルーンを通過する大動脈血流量の測定手段を実現することにより、現行の血管内遮断システムの欠点を克服する。
【0020】
本システムは、拡張式大動脈血流調節装置の拡張および収縮を自動化するためのカテーテル制御装置と、大動脈の血流を部分的に制限するように該大動脈内に配置されているバルーンとを含みうる。カテーテル制御装置は、カテーテルを介して拡張式大動脈血流調節装置と流体連通しているポンプ(例えばシリンジポンプ)であって、大動脈内の該拡張式大動脈血流調節装置を拡張および収縮させうるポンプを含みうる。例えば、ポンプは、例えばステッパモータによって1マイクロリットルという少ないボーラス量を送達することでバルーンを膨張または縮小させることができる。
【0021】
また、カテーテル制御装置は、命令を記憶している非一時的コンピュータ可読媒体を含んでもよく、該拡張式大動脈血流調節装置より先端側に位置づけられている第1のセンサおよび該拡張式大動脈血流調節装置より基端側に位置づけられている第2のセンサに作動的に接続されているプロセッサにより該命令が実行されると、該プロセッサが、該拡張式大動脈血流調節装置より先端側の血圧測定値を示す情報を該第1のセンサから受け取り、該拡張式大動脈血流調節装置より基端側の血圧測定値を示す情報を該第2のセンサから受け取り、該第1のセンサからの該情報および該第2のセンサからの該情報に基づいて大動脈血流量(例えば、該拡張式大動脈血流調節装置より遠位側の大動脈血流量)を推定し、該推定大動脈血流量と目標大動脈血流量範囲とを比較し、該推定大動脈血流量が該目標大動脈血流量範囲外にある場合に該大動脈の血流量を調整するために該拡張式大動脈血流調節装置の拡張および収縮を該ポンプに調整させる。
【0022】
一態様では、プロセッサは、前記比較に基づいて、推定大動脈血流量が目標大動脈血流量範囲外にある場合に大動脈の血流量を調整するために、拡張式大動脈血流調節装置の拡張および収縮を、カテーテル制御装置に自動的に調整させる。別の態様では、プロセッサは、カテーテル制御装置に作動的に接続されている複数のスイッチおよび/またはボタンを介して受け取ったユーザー入力に応答して、推定大動脈血流量が目標大動脈血流量範囲外にある場合に大動脈の血流量を調整するために拡張式大動脈血流調節装置の拡張および収縮を該カテーテル制御装置調整させる。例えば、システムは、前記比較を示す情報を表示可能なグラフィカルユーザーインターフェースを含むことができ、さらに、該グラフィカルユーザーインターフェースは、該比較に基づく意思決定サポートを例えば視覚的または聴覚的に伝達することができ、そのため、ユーザーは該意思決定サポートに基づいてユーザー入力を行うことができる。また、プロセッサは、推定大動脈血流量が目標大動脈血流量範囲外にある場合に警報を発することができる。
【0023】
本システムは、大動脈内に配置されるための、カテーテルの先端部に設置されている拡張式大動脈血流調節装置をさらに含みうる。拡張式大動脈血流調節装置は、拡張して大動脈の血流を制限しかつ収縮しうる。本システムは、大動脈の血流を示す生理学的情報を測定するための1つまたは複数のセンサをさらに含みうる。例えば、先端側センサは、カテーテル上で拡張式大動脈血流調節装置より先端側に設置可能であり、該拡張式大動脈血流調節装置より先端側の大動脈の生理学的情報、例えば血圧を測定することができ、基端側センサは、該カテーテル上で該拡張式大動脈血流調節装置より基端側に設置可能であり、該拡張式大動脈血流調節装置より基端側の大動脈の生理学的情報、例えば血圧を測定することができる。また、1つまたは複数のセンサは、拡張式大動脈血流調節装置内の圧力、心拍数、呼吸数、血液温度、患者の心拍出量、頸動脈血流量、肺動脈圧、末梢血管抵抗、または頭蓋内圧のうち少なくとも1つを含む、大動脈の血流を示す生理学的情報を測定することができる。2つの拡張式大動脈血流調節装置が利用される態様では、先端側センサは拡張式大動脈血流調節装置より先端側に位置づけ可能であり、基端側センサは第2の拡張式大動脈血流調節装置より基端側に位置づけ可能であり、追加のセンサは該拡張式大動脈血流調節装置と該第2の拡張式大動脈血流調節装置との間に位置づけ可能である。
【0024】
一態様では、本システムは、1つまたは複数のセンサ、例えば先端側センサおよび基端側センサ、バルーンカテーテル圧力のセンサ、ならびにカテーテル制御装置に作動的に接続されている外部中央処理装置をさらに含みうる。外部中央処理装置は、プロセッサを含むことができ、推定大動脈血流量が目標大動脈血流量範囲外にあるか否かを示す情報をカテーテル制御装置に伝達することができる。例えば、外部中央処理装置はWiFi、Bluetooth、Wixelベース通信、セルラー通信、または他の通信形態のうち少なくとも1つを通じて情報をカテーテル制御装置に伝達することができる。
【0025】
本開示のさらに別の局面によれば、部分REBOA、大動脈の部分遮断、または血管内灌流増大のために大動脈血流調節の程度を動的に調節するための方法が提供される。本方法は、拡張式大動脈血流調節装置(例えばバルーン)を有するカテーテルの先端部を患者の大動脈内に導入する段階;該カテーテルの外側端部に連結されているカテーテル制御装置(例えばシリンジポンプ)によって該拡張式大動脈血流調節装置を拡張させることで該大動脈の血流を部分的に遮断する段階;1つまたは複数のセンサ、該バルーンカテーテル内の圧力を測定するセンサによって該拡張式大動脈血流調節装置より先端側の血圧および該拡張式大動脈血流調節装置より基端側の血圧を測定する段階;該拡張式大動脈血流調節装置より先端側および基端側の該血圧測定値の波形ならびに対応する該血圧測定値の波形に基づいて大動脈血流量を推定する段階;該推定大動脈血流量と目標大動脈血流量範囲とを比較する段階;該推定大動脈血流量が該目標大動脈血流量範囲外にある場合に警報を発する段階;ならびに該推定大動脈血流量が該目標大動脈血流量範囲外にある場合に該大動脈の血流量を調整するために該拡張式大動脈血流調節装置の拡張および収縮を調整する段階を含みうる。本方法はまた、拡張式大動脈血流調節装置内の圧力を測定する段階を含みうる。本方法はさらに、前記比較を示す情報を1つまたは複数のセンサに接続されているグラフィカルユーザーインターフェースによって表示する段階を含みうる。
【0026】
一態様では、推定大動脈血流量が目標大動脈血流量範囲外にある場合に大動脈の血流量を調整するために拡張式大動脈血流調節装置の拡張および収縮を調整する段階は自動的に行われる。別の態様では、推定大動脈血流量が目標大動脈血流量範囲外にある場合に大動脈の血流量を調整するために拡張式大動脈血流調節装置の拡張および収縮を調整する段階は、カテーテル制御装置に作動的に接続されている複数のスイッチおよび/またはボタンを介して受け取ったユーザー入力に応答して行われる。
[本発明1001]
血管の血流を部分的に制限するために該血管内に設置される拡張式血流調節装置の拡張および収縮を自動化するための、カテーテル制御装置であって、該拡張式血流調節装置がカテーテルの先端領域に設置されており、該カテーテル制御装置が、
該カテーテルを介して該拡張式血流調節装置と流体連通しているポンプであって、該血管内の該拡張式血流調節装置を拡張および収縮させるように構成されている、ポンプと、
命令を記憶している非一時的コンピュータ可読媒体であって、該命令が、該拡張式血流調節装置より先端側に位置づけられている第1のセンサおよび該拡張式血流調節装置より基端側に位置づけられている第2のセンサに作動的に接続されているプロセッサにより実行されると、該プロセッサが、
該拡張式血流調節装置より先端側の血圧測定値または血圧測定値の波形を示す情報を該第1のセンサから受け取り、
該拡張式血流調節装置より基端側の血圧測定値または血圧測定値の波形を示す情報を該第2のセンサから受け取り、
該第1のセンサからの該情報および該第2のセンサからの該情報に基づいて血管血流量を推定し、
該推定血流量と目標血流量範囲とを比較し、かつ、
該推定血流量が該目標血流量範囲外にある場合に該血管の血流量を調整するために、該拡張式血流調節装置の拡張および収縮を該ポンプに調整させる、
非一時的コンピュータ可読媒体と
を含む、カテーテル制御装置。
[本発明1002]
前記拡張式血流調節装置が、血管の血流を制限するために拡張するように膨張するように構成されているバルーンを含み、前記ポンプが、前記推定血流量が前記目標血流量範囲外にある場合に該血管の血流量を調整するために該バルーンを膨張または縮小させるように構成されている、本発明1001のカテーテル制御装置。
[本発明1003]
前記ポンプが、1マイクロリットルという少ないボーラス量を送達することによって前記バルーンを膨張または縮小させるように構成されている、本発明1002のカテーテル制御装置。
[本発明1004]
前記ポンプが、前記プロセッサに接続されているステッパモータによって前記バルーンを膨張または縮小させるように構成されている、本発明1002のカテーテル制御装置。
[本発明1005]
前記推定血流量が、前記血管内の前記拡張式血流調節装置より遠位側の血流量である、本発明1001のカテーテル制御装置。
[本発明1006]
前記プロセッサが、前記比較に基づいて、前記推定血流量が前記目標血流量範囲外にある場合に前記血管の血流量を調整するために前記拡張式血流調節装置の拡張および収縮を前記ポンプに自動的に調整させる、本発明1001のカテーテル制御装置。
[本発明1007]
前記カテーテル制御装置が、前記プロセッサに作動的に接続されている複数のスイッチおよび/またはボタンをさらに含み、該プロセッサが、該複数のスイッチおよび/またはボタンを介して受け取ったユーザー入力に応答して、前記推定血流量が前記目標血流量範囲外にある場合に前記血管の血流量を調整するために前記拡張式血流調節装置の拡張および収縮を前記ポンプに調整させる、本発明1001のカテーテル制御装置。
[本発明1008]
前記カテーテル制御装置が、前記比較を示す情報を表示するように構成されているグラフィカルユーザーインターフェースをさらに含み、該グラフィカルユーザーインターフェースが、該比較に基づく意思決定サポートを伝達するようにさらに構成されており、そのため、ユーザーが、該意思決定サポートに基づいてユーザー入力を行うことができる、本発明1001のカテーテル制御装置。
[本発明1009]
前記グラフィカルユーザーインターフェースが、前記意思決定サポートを聴覚的に伝達するように構成されている、本発明1008のカテーテル制御装置。
[本発明1010]
前記推定血流量が前記目標血流量範囲外にある場合に前記プロセッサが警報を発する、本発明1001のカテーテル制御装置。
[本発明1011]
本発明1001のカテーテル制御装置を含む、大動脈の部分遮断用の精密制御システムであって、
血管内に配置されるための、前記カテーテルの先端部に設置されている拡張式血流調節装置であって、血管の血流を制限するために拡張するようにおよび収縮するように構成されている、拡張式血流調節装置;
該拡張式血流調節装置より先端側に位置づけられ、該拡張式血流調節装置より先端側の血圧を測定するように構成されている、第1のセンサ;および
該拡張式血流調節装置より基端側に位置づけられ、該拡張式血流調節装置より基端側の血圧を測定するように構成されている、第2のセンサ
をさらに含む、システム。
[本発明1012]
前記拡張式血流調節装置内の圧力、心拍数、呼吸数、血液温度、患者の心拍出量、頸動脈血流量、肺動脈圧、末梢血管抵抗、または頭蓋内圧のうちの少なくとも1つを含む、血流を示す生理学的情報を測定するように構成されている1つまたは複数のセンサをさらに含む、本発明1011のシステム。
[本発明1013]
前記システムが、前記カテーテル制御装置ならびに前記第1および第2のセンサに作動的に接続されている外部中央処理装置をさらに含み、該外部中央処理装置が、プロセッサを含み、かつ推定血流量が目標血流量範囲外にあるか否かを示す情報を該カテーテル制御装置に伝達するように構成されている、本発明1011のシステム。
[本発明1014]
前記外部中央処理装置が、WiFi、Bluetooth、Wixelベース通信、セルラー通信、または他の通信形態のうち少なくとも1つを通じて、前記情報をカテーテル制御装置に伝達する、本発明1013のシステム。
[本発明1015]
血流調節の程度を動的に調節するための方法であって、
拡張式血流調節装置を含むカテーテルの先端部を患者の血管内に導入する段階;
該血管の血流を制限するために、該カテーテルの基端部に連結されているカテーテル制御装置によって該拡張式血流調節装置を拡張させる段階;
1つまたは複数のセンサによって該拡張式血流調節装置より先端側の血圧および該拡張式血流調節装置より基端側の血圧を測定する段階;
該拡張式血流調節装置より先端側および基端側の該血圧測定値ならびに対応する該血圧測定値の波形に基づいて血流量を推定する段階;
該推定血流量と目標血流量範囲とを比較する段階;
該推定血流量が該目標血流量範囲外にある場合に警報を発する段階;ならびに
該推定血流量が該目標血流量範囲外にある場合に該血管の血流量を調整するために該拡張式血流調節装置の拡張および収縮を調整する段階
を含む、方法。
[本発明1016]
前記拡張式血流調節装置が、前記血管の血流を制限するために拡張するように膨張するように構成されているバルーンを含み、該拡張式血流調節装置を拡張または収縮させる段階が、ポンプによって該バルーンを膨張または縮小させることを含む、本発明1015の方法。
[本発明1017]
前記推定血流量が前記目標血流量範囲外にある場合に前記血管の血流量を調整するために前記拡張式血流調節装置の拡張および収縮を調整する段階が、自動的に行われる、本発明1015の方法。
[本発明1018]
前記推定血流量が前記目標血流量範囲外にある場合に前記血管の血流量を調整するために前記拡張式血流調節装置の拡張および収縮を調整する段階が、前記カテーテル制御装置に作動的に接続されている複数のスイッチおよび/またはボタンを介して受け取られたユーザー入力に応答して行われる、本発明1015の方法。
[本発明1019]
前記拡張式血流調節装置内の圧力を測定する段階をさらに含む、本発明1015の方法。
[本発明1020]
前記比較を示す情報を、前記1つまたは複数のセンサに接続されているグラフィカルユーザーインターフェースによって表示する段階をさらに含む、本発明1015の方法。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本開示の原理に従って構築された大動脈の部分遮断用の例示的な精密制御システムの模式図である。
図2】本開示の原理に従って構築された例示的なバルーンカテーテルを示す。
図3図1の例示的なセンサを示す。
図4図1の例示的なカテーテル制御装置の概念図である。
図5】本開示の原理に従って構築された例示的な外部中央処理装置の模式図である。
図6】本開示の原理に従って大動脈血流調節の程度を動的に調節するための例示的な方法を示す流れ図である。
図7図7A図7Cは、本開示の原理による試験の平均近位動脈圧、平均遠位動脈圧、および大動脈血流量の変化をそれぞれ示すグラフである。
図8図8A図8Cは、本開示の原理による試験におけるバルーン体積と様々な血行動態パラメータとの間の関係を示す。図8Dは、試験における大動脈血流量と目標大動脈血流量との間の関係を示す。
図9図9Aは、EVAC中のバルーン体積と大動脈血流量との間の関係を示し、図9Bは、EVAC中のバルーン体積と平均近位動脈圧との間の関係を示す。
図10】本開示の原理による試験を示す流れ図である。
図11図11A図11Cは、REBOAおよびEVAC中の試験における平均近位動脈圧、平均遠位動脈圧、および大動脈血流量をそれぞれ比較するグラフである。
図12図12Aおよび図12Bは、REBOAおよびEVAC中に必要な蘇生輸液の総量および昇圧剤の総量をそれぞれ示す。
図13】REBOAおよびEVAC中のピークおよび最終乳酸レベルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
詳細な説明
蘇生用大動脈血管内バルーン部分遮断(P-REBOA)は、遮断部位に対して遠位側のタイトレーションされた制御された低量の大動脈血流を可能にすることで、遠位虚血および再灌流傷害を減少させかつ高い近位側の血圧を軽減するための、大動脈部分遮断プラットフォームである。P-REBOAは、その内容全体が参照により本明細書に組み入れられるM. Austin Johnson, MD, PhD, et al., Partial Resuscitative Balloon Occlusion of the Aorta (P-REBOA): Clinical Technique and Rationale, 80 J Trauma Acute Care Surg S133 (2016)に記載の技術を使用して達成および維持可能である。様々なショック状態中にバルーンより上流の血圧を改善するために使用可能な大動脈の部分遮断の別の形態は、救命救急のための血管内灌流増大(EPACC)であり、これは、一連の血管内装置と、該装置用の制御装置と、患者の生理状態に応じてEPACC装置をリアルタイムに変化させることができるアルゴリズムとを含むシステムによって達成される。EPACCのコンセプトは、REBOAなどの技術とは対照的に、P-REBOAと同様の大動脈の部分遮断により機能する。REBOAは、大動脈を完全に遮断することで、遠位組織の進行性虚血傷害を代償として近位灌流を最大化する。対照的に、EPACCは大動脈を部分的にしか遮断せず、これにより近位側の血圧が生理学的にいっそう増大する。大動脈内に異なるレベルでバルーンを配置することで、開業医は、どの遠位毛細血管床において血流を減少させるかを選択することができる。下行胸部大動脈にEPACCを配置することで、腸間膜、腎臓、肝臓、および四肢への血流の減少が緩やかになる。対照的に、大動脈分岐部に配置すれば、骨盤および四肢への血流のみが潜在的に減少する。大動脈血流が生理学的に必要な量をしばしば超えることから、大動脈血流制限が最小限~中程度であることにより、虚血は最小限にとどまる。近位側の血圧上昇と遠位虚血との間のこのトレードオフは、ショックの程度および患者の基礎生理状態に応じて異なる。
【0029】
どのような生理学的測定値に対しても動的に応答するように部分REBOA、大動脈の部分遮断、および/またはEPACCを自動化することができるため、EPACCは、複数のショック状態における灌流を最大化するために実行可能な技術となる。血管内可変大動脈制御(EVAC)は、完全遮断から完全無妨害血流までの全範囲にわたって遠位大動脈血流を精密かつ動的に調節するために、大動脈遮断の自動制御を利用する。外科特異的用途では、EVAC技術を使用することで遠位大動脈血流を非常に低いレベルに制限して出血の継続と進行性遠位虚血との間の微妙なバランスを取ると同時に、局所灌流最適化(REPO)(旧称は許容的局所低灌流)と呼ばれる近位血行動態の増大、例えば心臓、肺、および脳への血流の増大を行うことができる。REPOは、腹部大動脈への血流を精密かつ動的に制御可能な方法に基づいている。REPOを臨床的に適用可能にするには、精密に制御可能な血管内装置によって実現しなければならない。別の態様では、これらの技術は、任意の生理学的測定値に対して動的に応答するようにユーザーおよび/または装置に指示する意思決定サポートを生成することで、複数のショック状態における灌流を最大化することができる。
【0030】
EVACを伴うREPOは、致死性肝損傷ブタモデルにおいて、完全大動脈遮断、例えばREBOAに比べて改善された生存率、終末器官機能、および低い蘇生要件を伴って、大動脈治療介入期間を90分に延長することが示された。これらの技術は、出血の継続の外科的制御を得ることを試みながら失血による瀕死状態を治療するために同様に実行可能であり、治療に必要なIV輸液および昇圧剤の量を減少させて敗血症性ショックを治療するために、または脳外傷もしくは脳内出血の状況で神経原性ショックを治療するためにも同様に実行可能である。当業者が理解するように、本明細書に記載の例示的なカテーテル制御装置を任意の市販のP-REBOAカテーテルシステムまたはカスタム設計のカテーテルシステムと共に使用することができる。
【0031】
図1を参照して、本開示の原理に従って構築された大動脈の部分遮断用の例示的な精密制御システムを説明する。図1では、精密制御システム100の構成要素は相対的にも絶対的にも原寸通り図示されない。システム100は、拡張式血流調節装置200およびセンサ300ならびに場合によっては外部処理装置に作動的に接続されている、カテーテル制御装置400を含む。
【0032】
カテーテル制御装置400は、生理学的情報測定値を示すデータをセンサ300から受け取り、生理学的情報測定値が所定の目標生理学的範囲内にあるか否かを確定することができる。例えば、カテーテル制御装置400は、拡張式血流調節装置より先端側の血圧測定値および拡張式血流調節装置より基端側の血圧測定値を示すデータを受け取り、拡張式血流調節装置より先端側および基端側の血圧測定値ならびに/または先端側および基端側の血圧測定値に対応する波形に基づいて血流量を推定し、かつ、推定大動脈血流量が所定の目標大動脈血流量範囲内にあるか否かを確定することができる。
【0033】
カテーテル制御装置400は、患者Pの大動脈A内に配置されるようにサイズ決定および成形されたカテーテルによって、拡張式血流調節装置200に連結可能である。例えば、カテーテル制御装置400はカテーテルの基端部に連結可能であり、拡張式血流調節装置200はカテーテルの先端部に設置可能である。カテーテルは、当技術分野において周知のどのカテーテルであってもよく、カテーテルが大腿動脈または橈骨動脈を通じて患者に挿入可能でありかつ患者の血管系を通って大動脈内へと延伸可能であるほど十分な長さを有する。
【0034】
大動脈内にコンプライアント大動脈遮断バルーン(例えば血流調節装置200)を配置した後、このカテーテルにカテーテル制御装置400を接続することで、制御装置400の手動制御を用いて、または膨張もしくは縮小を医療提供者に推奨する意思決定サポートを通じて、大動脈血流を調節するための膨張または縮小を行うことが可能になる。拡張式血流調節装置200は、大動脈遮断用に設計されておらず、また経時的な形態変化を経ることがある、任意の現在利用可能なバルーンカテーテルであってもよい。
【0035】
また、以下でさらに詳細に説明するように、カテーテル制御装置400は、生理学的情報測定値が目標生理学的範囲外にある場合に大動脈の血流量を調整するためにカテーテル制御装置400が拡張式血流調節装置200の拡張および収縮を自動的に調整するように、拡張式血流調節装置200に連結可能である。別の態様では、カテーテル制御装置400は、例えばカテーテル制御装置400に作動的に接続されているスイッチおよび/またはボタンによってカテーテル制御装置400が受け取ったユーザー入力に応答して、生理学的情報測定値が目標生理学的範囲外にある場合に大動脈の血流量を調整するためにカテーテル制御装置400が拡張式血流調節装置200の拡張および収縮を自動的に調整するように、拡張式血流調節装置200に連結可能である。例えば、カテーテル制御装置400は、生理学的情報測定値が所定の目標生理学的範囲外にある場合に意思決定サポートを生成することができ、これによりユーザーは、患者の生理状態が目標生理学的範囲内になるように大動脈の血流量を調整するために十分なユーザー入力を行うように案内される。カテーテル制御装置400は、拡張式血流調節装置200を例えば1~50マイクロリットル単位で小刻みに拡張および収縮させること、例えば膨張および縮小させることができる。カテーテル制御装置400は電池式であってもよく、電気取出口に直接プラグ接続されてもよい。
【0036】
一態様では、システム100は外部中央処理装置を含みうる。外部中央処理装置は、以下でさらに詳細に説明するように、外部中央処理装置が、生理学的情報測定値を示すデータをセンサ300から受け取り、生理学的情報測定値が所定の目標生理学的範囲内にあるか否かを確定し、患者の生理状態を目標生理学的範囲内にするための拡張式血流調節装置200のサイズの変化量を計算し、かつ生理学的情報測定値が目標生理学的範囲外にあるか否かを示す情報をカテーテル制御装置400に伝達することができるように、センサ300およびカテーテル制御装置400に作動的に接続可能である。したがって、カテーテル制御装置400は、外部中央処理装置から受け取った情報に基づいて拡張式血流調節装置200の拡張および収縮を自動的に調整することで大動脈の血流量を調整する。別の態様では、カテーテル制御装置400は、カテーテル制御装置400が受け取ったユーザー入力に応答して、生理学的情報測定値が目標生理学的範囲外にある場合に拡張式血流調節機種200の拡張および収縮を調整することで大動脈の血流量を調整し、ここでユーザー入力は、外部中央処理装置から受け取った情報に基づいてカテーテル制御装置400により生成される命令により案内されるユーザーにより入力される。
【0037】
図2を参照すると、図1の拡張式血流調節装置200はバルーンカテーテルでありうる。したがって、拡張式血流調節装置200は、カテーテルの先端部に位置づけられているバルーン204を含みうる。バルーン204は、慎重にタイトレーションされたバルーン体積に膨張することで大動脈の血流を調節するように設計されている。例えば、バルーン204が慎重にタイトレーションされたバルーン体積を維持することができるように、非圧縮性流体を出口202を介してカテーテルの管腔を通じてバルーン204に導入することができる。バルーン204は、膨張用流体が膜を横切って患者の血管系内へと拡散することを防止するのに好適な膜で作製されうる。また、膜は、経時的な形態変化を経ることなく膨張および縮小するように設計されうる。しかし、当業者が理解するように、拡張式血流調節装置は、部分REBOAを実現するための当技術分野において公知の任意のカテーテルシステム、大動脈遮断バルーンシステム、または任意の血管遮断バルーンシステムでありうる。
【0038】
拡張式血流調節装置200が大動脈の血流を部分的にしか制限しないことから、近位側の血圧を生理学的にいっそう増大させると同時に下流の臓器および組織床への血流を最適化することができる。大動脈血流がショック患者の大多数の症例において生理学的に必要な量を全体として超えることから、遮断が最小限~中程度であることにより、虚血は最小限にとどまる。近位側の血圧上昇と遠位虚血との間のこのトレードオフは、ショックの程度および患者の基礎生理状態に応じて異なる。当業者が理解するように、カテーテル制御装置400は、任意のP-REBOAバルーンカテーテルシステム、REBOAカテーテルシステム、大動脈遮断バルーンシステム、または他の血管遮断バルーンシステム(例えば、IVCもしくは腸骨)に作動的に接続可能である。
【0039】
ここで図3を参照すると、センサ300は、患者の基礎生理状態を確定するために、大動脈の血流を示す生理学的情報を測定することができる。例えば、センサ300は、拡張式血流調節装置より先端側の血圧、拡張式血流調節装置より基端側の血圧、拡張式血流調節装置内の圧力、心拍数、呼吸数、拡張式血流調節装置より基端側もしくは先端側の大動脈血流量、血液温度、患者の心拍出量、頸動脈血流量、肺動脈圧、末梢血管抵抗、または頭蓋内圧を含むがそれに限定されない生理学的パラメータを測定することができる。センサ300は1つまたは複数のセンサを含みうる。例えば、図3に示すように、センサ300は2つのセンサ、すなわち、遠位動脈に挿入された血圧ラインからの血圧を測定するように位置づけられた先端側センサ302、および拡張式血流調節装置より基端側の動脈に挿入された血圧ラインからの血圧を測定するように位置づけられたセンサ304を含みうる。例えば、先端側センサ302は、例えばルアーロックコネクタによって、拡張式血流調節装置イントロデューサーシースのフラッシュポートに、または対側大腿動脈に位置づけられた動脈ラインに接続可能であり、基端側センサ304は、拡張式血流調節装置上の基端側の血圧ポートに、または橈骨動脈を通じて近位動脈ライン上の基端側の血圧ポートに接続可能である。過度の膨張を防止し、かつ接続不良または拡張式血流調節装置での漏出/破裂による拡張式血流調節装置の圧力損失の検出を促進するために、拡張式血流調節装置200内の圧力を測定する別のセンサを拡張式血流調節装置200の膨張ポートに接続することができる。
【0040】
センサ300は、生理学的情報測定値を示すデータをアナログ機構またはデジタル機構を通じて記録することができる。次に、以下でさらに詳細に説明するように、このデータを使用することで、血圧の自動増大によって重要臓器灌流を最大化すると同時に出血を制御することを目指すために大動脈血流の多少の制限が必要である否かを確定すること、拡張式血流調節装置下方の虚血を軽減すること、および拡張式血流調節装置より上流の高い血圧を軽減することができる。
【0041】
また、患者の生理状態を、患者の血液、血清、尿、または唾液中の化合物のリアルタイムかつ断続的な測定値、例えば乳酸レベル、コルチゾールレベル、活性酸素種レベル、体液のpH、および他の一般的に使用される患者生理状態マーカーによってモニタリングすることができる。
【0042】
図1を再び参照すると、カテーテル制御装置400は、メモリ404および通信回路406を有するプロセッサ402と、ポンプ408とを含む。プロセッサ402は、センサ300、グラフィカルユーザーインターフェース410、およびポンプ408に作動的に接続可能であり、ポンプ408は拡張式血流調節装置200に作動的に接続可能である。
【0043】
プロセッサ402は、生理学的情報測定値を示すデータをセンサ300から通信回路406を通じて受け取り、データをメモリ404に記録することができる。さらに、プロセッサ402は、センサ300からの生理学的情報測定値に対応する波形をメモリ404に記録することができる。メモリ404、例えば非一時的コンピュータ可読媒体は、大動脈の血流に関連する生理学的目標パラメータおよび対応する範囲と、プロセッサ402により実行されるとプロセッサ402に生理学的情報測定値と目標生理学的範囲とを比較することで生理学的情報測定値が所定の目標生理学的範囲内にあるか否かを確定させる、命令とを記憶することができる。プロセッサ402は、グラフィカルユーザーインターフェース410、例えばタッチ操作可能なLCDディスプレイに、生理学的情報測定値と目標生理学的範囲との比較を示す情報を表示させることができる。例えば、プロセッサ402は、拡張式血流調節装置200より先端側の血圧測定値および拡張式血流調節装置200に対して基端側の血圧測定値を示すデータを受け取ることができ、このデータからプロセッサ402は大動脈血流量を推定することができる。したがって、プロセッサ402はグラフィカルユーザーインターフェース410に推定大動脈血流量、ならびに生理学的目標パラメータ、例えば目標大動脈血流量、およびその所望の対応する範囲を例えばグラフィカルに表示させることができる。例えば、グラフィカルユーザーインターフェース410は目標大動脈血流量を中心線に、所定の所望範囲を中心線の上方および下方に、例えば緑色で表示することができ、ここで、所望範囲は所定の許容範囲によって、例えば所望範囲の上方および下方の黄色で囲まれ、また、許容範囲は所定の非許容範囲によって、例えば許容範囲の上方および下方の赤色で囲まれる。グラフィカルユーザーインターフェース410は推定大動脈血流量を、推定大動脈血流量が所望範囲および/または許容範囲外にあるか否かを示す範囲と関連させて表示することができる。したがって、プロセッサ402は、患者の現在の生理状態測定値に基づいて、患者の生理状態を目標生理学的範囲内にするために必要な拡張式血流調節装置200による遮断量の適切な変化を計算することができる。
【0044】
グラフィカルユーザーインターフェース410によって、ユーザーは様々なメニュー機能、例えば目標大動脈血流量を設定する機能、血流量がいつ所望範囲を逸脱するかを示す可聴アラームを設定する機能、センサ300をゼロに合わせることを許容する機能、身長、体重、性別、氏名、および誕生日を例えば含む患者情報を入力することを許容する機能を選択することができる。したがって、メモリ404は、グラフィカルユーザーインターフェース410によって入力された患者情報に対応する患者プロファイルを記憶することができる。メモリ404に記憶された情報は例えばリムーバブルメディアカードによってカテーテル制御装置400からダウンロード可能である。
【0045】
プロセッサ402は、バルーンカテーテルを使用する際にバルーンの適切な膨張、縮小、および生理学的変化に対する応答量の各局面を制御するための一連のサブアルゴリズムを含む。これらの個々のアルゴリズムは、血管の物理的測定値を同定するための初期較正、完全遮断の確定、カテーテルの動作範囲、例えば患者の生理状態の変化により生じる遮断の範囲の同定、セットポイント最適化、カテーテルベースの生理学的支援の休止、およびバルーン体積の調整も計算することができる。
【0046】
バルーンカテーテル200では、カテーテルの最初の挿入またはEPACCの開始時に、バルーン較正手順が行われる。また、EPACCにより誘導されない血行動態の大きな変化が検出されるときは常に較正手順が実行される。バルーン較正手順の開始時に、カテーテル制御装置400のポンプ408はガスまたは流体、例えば二酸化炭素、生理食塩水、または造影剤と生理食塩水との混合物の小さいアリコートをバルーンに繰り返し導入する。連続ボーラス中に、バルーン204の動作範囲の低セットポイントを示す変化が観察されるまで、近位側の生理状態をモニタリングすることができる。遠位側の血圧波形が消失するまで、または、バルーンカテーテル200の動作範囲上限を示す近位側の生理学的変化がもはや観察されなくなるまで、バルーン204は膨張し続ける。あるいは、大動脈血流の停止を測定することで上限を示すこともできる。動作範囲の中間点を、低セットポイントからのバルーン体積の増加間隔として設定することができ、EPACC中に必要であれば動作範囲への速やかな回帰の基準とすることができる。
【0047】
バルーン較正が行われて初期バルーン体積セットポイントが同定された後、プロセッサ402は、ポンプ408を通じてカテーテル制御装置400に拡張式血流調節装置200の形状およびサイズを調整させることで、患者の生理状態に応じて近位側の血圧を上昇させる。上記のように、プロセッサ402は、センサ300から受け取った生理学的情報測定値とメモリ404に記憶された目標生理学的範囲とを比較することで、生理学的情報測定値が所定の目標生理学的範囲内にあるか否かを確定する。例えば、近位側の血圧が生理学的マーカーとして設定される場合、近位側の血圧が目標血圧範囲未満に低下しているとプロセッサ402が確定するとき、カテーテル制御装置400は、ポンプ408を通じて拡張式血流調節装置200を拡張させ、例えばバルーンを膨張させる。同様に、近位側の血圧が目標血圧範囲を超えるとプロセッサ402が確定するとき、カテーテル制御装置400は、ポンプ408を通じて拡張式血流調節装置200を収縮させ、例えばバルーンを縮小させる。範囲外の血圧変化に応答して生じるバルーン体積の変化の量は、現在の血圧測定値が目標血圧からどれだけ離れているかに応じて異なる。したがって、血圧がごく最小限に目標範囲外である場合、拡張式血流調節装置200のサイズをわずかに変化させる。対照的に、血圧が著しく目標範囲外である場合、拡張式血流調節装置200のサイズをより大きく変化させる。プロセッサ402は、メモリ404が例えばバルーン充填量の途中集計を記憶するように、ポンプ408により引き起こされる拡張式血流調節装置200のサイズ変化の量を記録することができる。したがって、どれほど多くの量の流体がバルーン内にあるかを例えば示す定常的なリアルタイム情報をユーザーに与えることができる。
【0048】
EPACCを行うために使用可能な例示的アルゴリズムは以下を含む:
uLボーラス = (P0-PS)J * V
式中、P0は現在の血圧であり、PSはセットポイント血圧であり、Jは定数であり、Vは以下に記載の定数である。当業者は、代わりのアルゴリズムを使用して現在の生理状態および目標生理状態に基づいてバルーン体積を調整することができることを理解するであろう。例えば、代わりのアルゴリズムは2つより少ないまたは多い定数および/または変数を使用しうる。
【0049】
バルーン調整アルゴリズムによって、生理学的情報測定値と生理学的目標パラメータとの間の差に応じた拡張式血流調節装置200のサイズの変化の規模を例えば定数VおよびJにより動的に制御することができる。最初にVおよびJをデフォルトに設定することができるが、VまたはJは、初期目標セットポイントを超えて生じる生理学的変化の規模に応じて動的に変化しうる。例えば、血圧が生理学的マーカーとして設定され、センサ300により記憶された初期血圧がセットポイント血圧を未満であったが、ポンプ408による拡張式血流調節装置200の拡張量の変化後にセンサ300により記録された結果的な血圧がセットポイント血圧を超える場合、Vおよび/またはJは、目標セットポイントの超過を補正するために修正されるであろう。血圧測定値が目標血圧の範囲内であると確定され、結果として拡張式血流調節装置200の拡張量が低セットポイント未満に低下する場合、拡張式血流調節装置200は停止してそのベースラインゼロセットポイントに戻る。これはバルーンを縮小させることで行われうる。例えば、以下のコードは、拡張式血流調節装置の拡張の動的な規模調整を示す。
【0050】
上記のように、プロセッサ402は、本開示の原理に従って、ポンプ408を通じて拡張式血流調節装置200を自動で拡張および収縮させることができる。例えば、拡張式血流調節装置200がバルーンカテーテルを含む場合、ポンプ408は、カテーテルの管腔と流体連通する出口を通じて流体をバルーンに注入するかまたはバルーンから除去することでバルーンを膨張または縮小させるように設計されたシリンジポンプでありうる。シリンジポンプは、患者の生理状態に応じて自動化機能によって例えば1~50マイクロリットル単位のバルーン体積の小さなタイトレーションされた変化を生じさせることができる。例えば、シリンジポンプは、シリンジプランジャガイドの線形移動を可能にする金属製ねじロッドを含みうる。シリンジポンプは、低電力消費ステッパモータ、例えばNEMA 11または8によって作動可能であり、減速ギアボックスを含みうる。一態様では、シリンジポンプはリニアアクチュエータによって制御可能である。
【0051】
カテーテル制御装置400のポンプ408によるバルーン体積の各変化後に、プロセッサ402は、得られた生理学的変化のモニタリングを所定期間待った後、バルーン体積をさらに調整することができる。
【0052】
一態様では、ポンプ408は、例えば自動化機能が利用不可能または実行不可能である際に、バルーンの手動膨張を行うことができる。例えば、手動ポンプは、シリンジの通常動作を使用して流体を注入可能であるが、シリンジのプランジャ上およびバレル内のスレッドが起動されたときにスクリュー作動によって流体を注入または除去することも可能な、シリンジポンプを含みうる。通常のシリンジプランジングにより注入するが、スクリュー作動のみにより流体を除去することで、バルーンを速やかに膨張させるが、プランジャ上のスレッドのピッチに基づいて流体の慎重にタイトレーションされた除去を行うことが可能になる。当業者が理解するように、手動ポンプは例えば蠕動ポンプ、回転ポンプなどを含みうる。
【0053】
別の態様では、カテーテル制御装置400は、生理学的情報測定値が所定の目標生理学的範囲外にある場合に意思決定サポートを生成することができる。意思決定サポート(例えば一組の命令)をグラフィカルユーザーインターフェース410によって(例えば視覚的または聴覚的に)ユーザーに伝達することができ、これにより、意思決定サポートは、例えばグラフィカルユーザーインターフェース410によって、またはプロセッサ402に作動的に接続されている複数のスイッチおよび/もしくはボタンによってユーザー入力を行うように、ユーザーに案内する。当業者が理解するように、グラフィカルユーザーインターフェース410は、ユーザー入力を受け取るための複数のスイッチおよび/またはボタンを含みうる。ユーザー入力は、プロセッサ402により計算される患者の現在の生理状態測定値に基づいて、患者の生理状態を目標生理学的範囲内にするために必要な拡張式血流調節装置200による遮断量を変化させるために十分でありうる。したがって、プロセッサ402は、ユーザー入力を受け取るのに応答して、ポンプ408(例えばシリンジポンプ)に、カテーテルの管腔と流体連通する出口を通じて流体をバルーンに注入させるかまたはバルーンから除去させることでバルーンを膨張または縮小させる。シリンジポンプは、ユーザー入力に応答して例えば1~1000マイクロリットル単位のバルーン体積の小さなタイトレーションされた変化を生じさせることができる。
【0054】
図4は、グラフィカルユーザーインターフェース410を有しかつポンプ408がシリンジポンプである、カテーテル制御装置400の概念的態様を示す。図4に示すように、グラフィカルユーザーインターフェース410は、情報をユーザーに視覚的に伝達するためのディスプレイ412と、ユーザーにカテーテル制御装置400と対話させ、例えば拡張式血流調節装置200を拡張もしくは収縮させ、かつ/またはグラフィカルユーザーインターフェース410により与えられるメニュー機能を通じてナビゲートさせるための複数のボタンおよびスイッチ414とを含みうる。
【0055】
図5を参照して、本開示の原理に従って構築された例示的な外部中央処理装置を説明する。図5に示すように、外部中央処理装置500は、メモリ504および通信回路506を有するプロセッサ502を含む。図5では、プロセッサ502の構成要素は相対的にも絶対的にも原寸通り図示されない。プロセッサ502は図1のカテーテル制御装置400のプロセッサ402と同様に構築されうる。したがって、プロセッサ502は、センサ300に作動的に接続され、生理学的情報測定値を示すデータをセンサ300から受け取り、かつ生理学的情報測定値とメモリ504に記憶された目標生理学的範囲とを比較することができる。システム100が外部中央処理装置500を含む場合、外部中央処理装置500のプロセッサ502は、生理学的情報測定値が目標生理学的範囲内にあるか否かを確定し、生理学的情報測定値が目標生理学的範囲外にある場合に患者の生理状態を目標生理学的範囲内にするために必要な拡張式血流調節装置200による遮断量の適切な変化を示す情報を計算し、この情報を通信回路506を通じてカテーテル制御装置400に伝達する。例えば、外部中央処理装置500の通信回路506はWiFi、Bluetooth、Wixelベース通信、もしくはセルラー通信、または有線接続、あるいは他の通信形態のうち少なくとも1つを通じて情報をカテーテル制御装置400の通信回路406に伝達することができる。
【0056】
図6を参照して、本開示の原理に従って大動脈血流調節の程度を動的に調節するための例示的な方法を説明する。方法300を使用することで、例えば敗血症または外傷によるショックの患者に対して大動脈の部分遮断、例えばP-REBOA、EVAC、またはEPACCを行うことができる。段階602において、カテーテルの先端部は大腿動脈または橈骨動脈を通じて患者に導入され、これにより、先端部に設置されている拡張式血流調節装置200は大動脈内に配置される。上記のように、拡張式血流調節装置200はバルーンカテーテル200を含みうる。
【0057】
段階604において、拡張式大動脈血流調節装置200は拡張することで大動脈の血流を調節することができる。例えば、カテーテル制御装置400の駆動機構408は、バルーンカテーテル200のバルーン204が大動脈内で血流を調節するようにそれを膨張させることができる。
【0058】
段階606において、センサ300は大動脈の血流を示す生理学的情報を測定することができる。例えば、上記のように、センサ300は、拡張式血流調節装置より先端側の血圧、拡張式血流調節装置より基端側の血圧、拡張式血流調節装置内の圧力、心拍数、呼吸数、拡張式血流調節装置より基端側もしくは先端側の大動脈血流量、血液温度、患者の心拍出量、頸動脈血流量、肺動脈圧、末梢血管抵抗、または頭蓋内圧を示す情報を測定することができる。センサ300は、患者の生理状態を効果的にモニタリングするための、拡張式血流調節装置200に対して基端側および/または先端側に位置づけられている1つまたは複数のセンサを含みうる。例えば、1つのセンサを拡張式血流調節装置より先端側に位置づけることで拡張式血流調節装置より先端側の血圧を測定することができ、別のセンサを拡張式血流調節装置より基端側に位置づけることで拡張式血流調節装置より基端側の血圧を測定することができる。
【0059】
段階608において、カテーテル制御装置400のプロセッサ402、または外部中央処理装置500を利用する場合のプロセッサ802は、生理学的情報測定値と目標生理学的範囲とを比較することができる。段階608において、プロセッサ402は最初に生理学的情報測定値、例えば拡張式血流調節装置より先端側および基端側の血圧、ならびに対応する波形から例えば大動脈血流量を推定し、次に推定大動脈血流量と目標生理学的範囲、例えば目標大動脈血流量とを比較することができる。段階610において、プロセッサ402は、生理学的情報測定値が目標生理学的範囲内にあるか否かを確定する。段階610において生理学的情報測定値が目標生理学的範囲内にあると確定される場合、方法300は、拡張式血流調節装置200の現在の拡張状態を維持し、段階606に戻って患者の生理学的状態の測定を続けることができる。段階610において生理学的情報測定値が目標生理学的範囲外にある、例えば目標生理学的範囲を超えるかまたはそれに満たないと確定される場合、カテーテル制御装置400のプロセッサ402は、患者の生理状態を目標生理学的範囲内にするために必要な拡張式血流調節装置200の拡張の変化量を確定することができる。
【0060】
段階612において、プロセッサ402は、駆動機構408が拡張式血流調節装置の拡張または収縮を調整する、例えばバルーンを膨張または縮小させることで大動脈の血流量を調整するように促す。一態様では、駆動機構408は、プロセッサ402により確定された、患者の生理状態を目標生理学的範囲内にするために必要な拡張式血流調節装置200の拡張の変化量に基づいて、拡張式血流調節装置の拡張または収縮を自動的に調整する。別の態様では、段階612において、プロセッサ402は、ユーザー入力を入力するためにユーザーが使用可能な意思決定サポートを生成することができ、これにより、プロセッサ402はユーザー入力に基づいて、駆動機構408が拡張式血流調節装置の拡張および収縮を調整するように促す。段階612中に、プロセッサ402は、段階610において生理学的情報測定値が目標生理学的範囲外にあると確定される場合に警報を発することができ、グラフィカルユーザーインターフェースが警報をユーザーに例えば視覚的または聴覚的に伝達することを促すことができる。
【0061】
外部中央処理装置500を利用する場合、プロセッサ502は、段階610において確定された、患者の生理状態を目標生理学的範囲内にするために必要な拡張式血流調節装置200の拡張の変化量を示す情報を、通信回路506および406を通じてカテーテル制御装置400に伝達した後、段階612に進む。
【0062】
試験#1. EVACシリンジポンプと手動制御ポンプとを比較する
大動脈血流を制御するためのカスタム構築ハードウェアおよびソフトウェアシステムのインビボ動物試験を包含する以下の実験的試験が、カリフォルニア州Travis空軍基地David Grant Medical CenterのInstitutional Animal Care and Use Committeeにより承認された。健康な成体の去勢雄および非妊娠雌ヨークシャー交雑種ブタ(イノシシ)を最低7日間順化させた。実験時の動物の体重は60~95kgとした。
【0063】
このプラットフォームの新規構成要素は、精密自動シリンジポンプと、患者からの生理学的ストリーミングデータを統合するカスタムマイクロコントローラとの組み合わせを含む。簡潔に言えば、このハードウェア構造は、無線機能付きの市販のマイクロコントローラ(マサチューセッツ州サマービルのArduinoから入手可能)、ならびに大動脈血流量、近位動脈圧、および遠位動脈圧を含む生理学的リアルタイムデータの取得用のマルチチャネル16ビットアナログデジタルコンバータを利用する。カスタムシリンジポンプは、標準的リードスクリューを駆動させるNEMA 17ステッパモータと、市販のステッパモータコントローラ(BigEasyDriver、コロラド州ニオットのSparkfunから入手可能)と、シリンジおよびプランジャを保持するカスタム3D印刷構成要素と、マスター制御装置との双方向通信を行う無線マイクロコントローラとを利用するものであった。カスタムソフトウェアは、閉ループフィードバックアルゴリズムを使用して大動脈血流を精密に調節するために開発された。体重ベースの大動脈血流量4.3mL/kg/分が確立された。これはベースライン遠位大動脈血流量の約10%である。
【0064】
動物に筋肉内チレタミン/ゾラゼパム(TELAZOL、アイオワ州フォートドッジのFort Dodge Animal Healthから入手可能)6.6mg/kgを予め投薬した。イソフルラン誘導および気管内挿管の後、全身麻酔を100%酸素中2%イソフルランで維持した。全身麻酔の血管拡張効果を相殺するために、ノルエピネフリンの静注輸液(0.01mg/kg/分)を静脈アクセスにより開始し、実験前にタイトレーションすることで目標平均動脈圧65~75mmHgを達成した。動物を機械的に人工呼吸させることで終末呼気CO2を40±5mmHgに維持した。腹部を閉鎖するまでPlasmalyte(イリノイ州ディアフィールドのBaxterから入手可能)維持輸液を流量10mL/kg/時で静脈内投与し、腹部閉鎖時点で、不感水分喪失を克服するために試験の残りでの流量を5mL/kg/時に減少させた。ヘパリンを静脈内投与して、ヒトベースライン値と同様の活性凝固時間(ACT)100秒を達成した。アンダーボディウォーマーを使用して深部体温を35~37℃に維持した。
【0065】
開腹後、脾摘出術を行うことで自己血輸血による血行動態変動を最小化した。左横隔膜を分割することで上腹部大動脈を露出させ、外周方向に長さ5~10cmで切開した。血管周囲大動脈血流プローブ(ニューヨーク州イサカのTransonic Systems Inc.から入手可能)を2本の隣接する肋間動脈の結紮を伴って遠位側に配置し、これにより血流プローブと血管内遮断バルーンとの間に介在する血流を防止した。腹部をケーブルタイで閉鎖した。外頸静脈にカニューレ挿入して投薬および輸液投与を促進した。右上腕動脈を露出させ、出血制御のために7Fシース(SuperSheath、マサチューセッツ州マールボロのBoston Scientificから入手可能)をカニューレ挿入した。左腋窩動脈を露出させ、近位動脈圧モニタリングのために9Fシース(SuperSheath、マサチューセッツ州マールボロのBoston Scientificから入手可能)をカニューレ挿入した。左大腿動脈を露出させ、ペンシルベニア州ウェインのTeleflex Inc.から入手可能な12Fシースをカニューレ挿入し、それを通じて9F Coda LPバルーン(インディアナ州ブルーミントンのCook Medicalから入手可能)を蛍光顕微鏡案内下で大動脈血流量プローブのすぐ遠位側にある上腹部大動脈のレベル(Zone 1)まで前進させた。遠位圧もこのシースによってモニタリングした。
【0066】
生理学的パラメータおよび大動脈血流量測定値を、Biopac MP150マルチチャネルデータ取得システムおよびカスタムArduinoベースデータ取得システム/コントローラ(カリフォルニア州ゴリータのBioPacから入手可能)を使用してリアルタイムで収集した。測定パラメータは、心拍数、大動脈内バルーンに対して近位側および遠位側の血圧、ならびにZone Iバルーンを越えた大動脈血流量を含んだ。
【0067】
データ解析を行い、グラフをExcel(ワシントン州レドモンドのMicrosoft Corporationから入手可能)およびSTATAバージョン14.0(テキサス州ブライアンのStata Corporationから入手可能)を使用して構築した。連続変数を平均値および平均値の標準誤差としてグラフで示す。カテゴリー変数を平均値ならびに平均値の標準偏差および標準誤差として示す。
【0068】
実験開始時(T0)に、動物の全血液量の25%を30分かけて出血させた。この30分の出血間隔後、マスターコントローラは、目標の体重ベースの血流量が達成されるまで、約3分にわたる段階的バルーン膨張を開始した。EVACシリンジポンプは、45分のEVAC間隔の期間中に大動脈血流量をこのレベルに能動的に維持するようにバルーン体積を自動調整した。積極的蘇生中のEVACシリンジポンプの性能を確認するために、全血輸血をT65時点で開始した。次に、EVACシリンジポンプは、T75時点で始まる5分間のバルーンの縮小およびウィーニングという順序を開始した。
【0069】
5匹の動物は、機器設置、出血、続いて45分のZone 1 EVACを経た。すべての動物は実験期を生き延びた。図7A図7Cに示すように、出血は、遠位大動脈血流量ならびに近位下行胸大動脈および遠位腹部大動脈の両方において測定された平均動脈圧(例えば、近位MAPおよび遠位MAP)の予想通りの低下に関連していた。T30時点でのEVAC開始時に、近位平均動脈圧が突然上昇し、同時に遠位MAPが低下した。また、図7Bに示すように、遠位大動脈圧はEVAC全体を通じて約16mmHgと安定したままであった。ここで図7C図8C、および図8Dを参照すると、EVACシリンジポンプは、45分の治療介入期間全体を通じて、大動脈血流目標からの逸脱を最小化しながら安定な大動脈血流量を維持することができた。
【0070】
図8Aに示すように、T65時点での輸血開始時に近位MAPは急激に上昇した。EVACシリンジポンプは、指定された大動脈血流量を維持するために、バルーン体積の代償的増加により応答した。これらの代償的バルーン調整の結果として、積極的ボリューム蘇生中の大動脈血流量および遠位大動脈圧はいずれも安定しかつ不変のままであった。
【0071】
バルーン体積と様々な血行動態パラメータとの関係を図9Aおよび図9Bに示す。EVACシリンジポンプはEVAC間隔全体を通じてバルーン体積のわずかだが識別可能な変化を生じさせ、一方で、10分の輸血期間中に最大の変化が生じた。実際の大動脈血流量は目標大動脈血流量に近似していた(平均血流量、4.5対4.4ml/kg/分)。図8Dおよび図9Aに示すように、EVACシリンジポンプは、大動脈血流量を治療介入期間全体を通じてベースラインの11%~14%以内に維持し、治療介入期間の90%超において13%~14%に維持した。
【0072】
段階的なバルーンの縮小により、バルーンの周りの大動脈血流量が速やかに急激に増加した。図9Aに示すように、バルーンからの2.5mLの抜き取り後に完全ベースライン血流量への回帰が観察され、完全バルーン縮小時にベースライン血流量の約2倍が観察された(それぞれ34ml/kg/分および67ml/kg/分)。
【0073】
45分間のEVAC全体を通じて、シリンジポンプは平均537回のバルーン調整を行い、調整1回当たりの平均バルーン体積変化は6.4uLであった。以下の表1に示すように、指定された範囲内に血流量を維持するために必要な最大平均バルーン体積変化は約100uLであった。
【0074】
【表1】
【0075】
図9Aおよび図9Bは、1回の代表的実験におけるそれぞれ大動脈血流量および平均近位動脈圧に応答するEVACシリンジポンプによるバルーン体積の制御を示す。バルーン体積の小さく高度に動的な調整の結果として、血流量は本質的に経時変化しないままである。なお、バルーン体積のプロファイルは治療介入全体を通じての平均近位動脈圧の傾向を密接に反映している。
【0076】
本試験は、市販の大動脈遮断カテーテルおよび完全自動化血流調節装置を使用するEVACの初動物実験である。精密大動脈血流調節は、アルゴリズムで駆動する自動シリンジポンプで遮断バルーン体積を調整することで、市販の大動脈遮断カテーテルによって実行可能かつ緊急に達成可能であることが示された。
【0077】
初期の臨床実験は、P-REBOAが極めて困難であり、手動バルーンタイトレーションによる忠実度の欠如を理由とする不安定な血行動態を生じさせることを示した。さらに、P-REBOAの大型動物モデルは、出血の継続が永続化する傾向を示した。出血の継続は、あらゆる臨床環境において深刻な懸念事項であるが、血液製剤の供給が限定的なシナリオにおいて、または外科的止血の著しい遅れが予想される場合に特にそうである。
【0078】
したがって、自動化機能には、P-REBOAコンセプトを改善することが期待された。自動化機能の使用は、大動脈血流量調節に対する手動アプローチのいくつかの主要な限界に対処するものである。第1に、EVACシリンジポンプは、バルーン充填量の非常に小さな変化を実行することが可能である。シリンジポンプの現行のハードウェア設計は、一度に10uLアリコートの流体を送達するかまたは抜き取ることが可能である。これらの変化は、任意の様式の忠実度または一貫性を伴って手動で行うには精細すぎるものであり、ロボット制御を必要とする。以前の実験において、また本実験において再度示されたように、遮断バルーン体積の非常に小さな調整は大動脈血流量の大きな変化に変換される。この充血性大動脈血流は、実験のバルーン縮小期に観察されたものであり、おそらく、極めて高い近位大動脈圧と遠位組織床の最大血管拡張との組み合わせにより生じる。この充血性血流は、発生が相当に予測不可能であり、個々の動物に応じて異なるバルーン体積で生じる。したがって、血行動態の崩壊または沈着した血栓の不安定化および出血の再開を予防するには、精密制御が必要である。10uLという小さなバルーン体積変化によって大動脈血流量の明白な差が生じることから、なぜ以前の手動血流タイトレーションの試みが不安定な血行動態を生じさせたかは明らかである。
【0079】
さらに、このEVACシリンジポンプは、バルーン体積のほぼ連続的な調整によって変化する患者の生理状態に応じた動的変化が可能である。本試験では、所望の大動脈血流量を維持するために45分間にわたって平均約600回のバルーン調整が行われた。この調整回数をバルーン体積の手動制御によって行うのは不可能ではないにしても困難であろう。さらに、ヒトは、連続データの複数のストリームを統合しかつ適切な測定応答でタイムリーに応答することにおいて非常に非効率的である。しかし、コンピュータおよびロボットはこれらの統合タスクおよび計算タスクにおいて優れている。ケアの非効率性は、熟練した医療提供者に遮断バルーンを手動でタイトレーションするという唯一のタスクを配分することで増幅する。重要な医療専門技術およびマンパワーのこの潜在的な配分の誤りによって、厳しい環境下での蘇生補助手段としての大動脈の部分遮断の採用が妨げられることがある。
【0080】
現行のEVACシリンジポンプは、以前の体外血流調節回路に比べて優れてはいないにしても同等の程度の大動脈血流量制御を実現する。以前のアプローチによって、低量の遠位大動脈血流の厳格な調節が、大動脈遮断の持続による虚血負荷を有効に軽減すると同時に出血を最小化することが示された。しかし、この現行のソフトウェア設計に関する1つの重要な考慮事項は、タイトレーションが大動脈血流量のデータ入力に基づくということである。実験では、このデータを、臨床的に実施不可能である外科的に埋め込まれた血管周囲血流プローブの使用を通じて取得した。残念ながら、バルーンカテーテルの慎重なタイトレーションを可能にする最小侵襲性手段または血管内手段によって大動脈血流量の正確な測定値を得る商業的に利用可能な方法は存在しない。この事実にもかかわらず、本試験は、遠位大動脈圧および大動脈血流量がこの特定の出血および虚血モデルにおいて相関することを示すものである。したがって、遮断度を特定の遠位大動脈圧に対してタイトレーションすることで安定な下流大動脈血流量が得られると考えられる。
【0081】
試験#2. EVACとREBOAとを比較する
EVACとREBOAとを比較する以下の試験がTravis空軍基地David Grant Medical CenterのThe Institutional Animal Care and Use Committeeにより承認された。ここで図10を参照すると、本試験において、体重60~95kgの健康な成体の去勢雄および非妊娠雌ヨークシャー交雑種ブタ(イノシシ)の全血液量の25%を30分かけて出血させた後、Zone 1またはEVACによる45分の治療介入に対するブロックランダム化を行った(群当たりn=6)。次に、すべての動物は流した血液による蘇生を受け、360分の期間のうち残りはプロトコル化救命救急期を受け、その間、所定の生理学的パラメータに基づいて昇圧剤および等張性輸液の投与を自動的に調節した。
【0082】
動物に筋肉内チレタミン/ゾラゼパム(TELAZOL、アイオワ州フォートドッジのFort Dodge Animal Healthから入手可能)6.6mg/kgを予め投薬した。イソフルラン誘導および気管内挿管の後、全身麻酔を100%酸素中2%イソフルランで維持し、100%酸素を40%酸素にタイトレーションすることでパルスオキシメトリーを92~98%に維持した。全身麻酔の血管拡張効果を相殺するために、ノルエピネフリンの静注輸液(0.01mg/kg/分)を静脈アクセスにより開始し、実験前にタイトレーションすることで目標平均動脈圧(MAP)65~75mmHgを達成した。動物を機械的に人工呼吸させることで終末呼気CO2を40±5mmHgに維持した。すべての動物は静脈アクセス時に1リットルPlasmalyte-A(イリノイ州ディアフィールドのBaxterから入手可能)のボーラスを受け取った。ボーラス後、腹部を閉鎖するまでPlasmalyte-A維持輸液を流量10mL/kg/時で静脈内投与した後、試験の残りにおいて5mL/kg/時に減少させた。実験前にヘパリンを静脈内投与して活性凝固時間(ACT)100秒を達成した。アンダーボディウォーマーを使用して深部体温を35~37℃に維持した。
【0083】
開腹後、脾摘出術を行うことで自己血輸血による血行動態変動を最小化した。上腹部大動脈を左横隔膜を分割することで露出させた後、大動脈を外周方向に長さ5~10cmで切開した。2本の隣接する肋間動脈を結紮し、結紮した血管の近位側に血管周囲血流プローブ(ニューヨーク州イサカのTransonic Systems Inc.から入手可能)を配置することで血流プローブと血管内遮断バルーンとの間に介在する血流を防止した。腹部をケーブルタイで閉鎖し、血管アクセスを先に記載したように行った。9F Coda LPバルーン(インディアナ州ブルーミントンのCook Medial LLCから入手可能)を大動脈血流プローブのすぐ遠位側に位置づけた。膨張シリンジを、完全REBOAおよびEVACの両方が可能なカスタム開発EVAC自動シリンジポンプに接続した。
【0084】
出血および引き続くランダム化の後、EVACアームの動物は1.5~4.4ml/kg/分、例えば70kgの動物当たり100ml/分~300ml/分の範囲の厳格に制御されたバルーン下方の大動脈血流を45分間示し、これはカスタム閉ループフィードバックアルゴリズムを実行する無線自動シリンジポンプを使用して達成された。REBOAアームにおいては、動物を同じ自動シリンジポンプで維持される45分の持続的な完全大動脈遮断に供した。
【0085】
80分時点から試験終了まで、晶質輸液のボーラス静脈内投与および昇圧剤のタイトレーションを、それぞれ標準的蠕動輸液ポンプおよびカスタム注入シリンジポンプとインターフェース接続されたマイクロコントローラを使用して自動化した。輸液ボーラスを連続的中心静脈圧(CVP)値およびMAP値に基づいて開始した。低血圧(MAP 60未満)または高血圧(MAP 70超)に応じてそれぞれ上方または下方に昇圧剤をタイトレーションした。動物をT360時点で安楽死させた後、直ちに剖検を行った。
【0086】
試験中に生理学的パラメータおよび大動脈血流量測定値を、マルチチャネルデータ取得システム(Biopac MP150、カリフォルニア州ゴリータのBioPacから入手可能)を使用してリアルタイムで収集した。測定パラメータは心拍数、大動脈内バルーンカテーテルに対して近位側および遠位側の血圧、中心静脈圧、深部体温、ならびに大動脈血流量を含んだ。動脈血および尿を分析用に試験全体を通じて所定の間隔で採取した。終末器官を組織学的検査に供し、盲検化された獣医病理学者が分析した。データ解析をSTATAバージョン14.0(テキサス州ブライアンのStata Corporationから入手可能)により行った。連続変数を、正規分布している場合は平均値および平均値の標準誤差として示し、正規分布していない場合は中央値および四分位範囲として示し、適切な検定を使用して解析する。二分変数およびカテゴリー変数をフィッシャー直接検定により解析し、パーセントとして示した。統計的有意性をp<0.05に設定した。
【0087】
以下の表2に示すように、群間で血行動態、実験パラメータ、およびベースライン昇圧剤所要量を含むベースライン特性の差は存在しなかった。
【0088】
【表2】
【0089】
ここで図11A図11Cを参照すると、REBOA動物およびEVAC動物は出血に対する同様の低血圧応答を示した(それぞれ33mmHg 95CI 29~36対38mmHg 95CI 32~44、p=0.08)。
【0090】
以下の表3に示すように、治療介入中に、REBOA動物はEVACに比べて有意に高い近位MAPを示した(それぞれ129mmHg 95CI 105~151対101mmHg 95CI 83~119、p=0.04)が、2つの群でピークMAPの差は存在しなかった。REBOAアームにおいて治療介入中にバルーンを越えた認識可能な血流量が存在しなかった一方で、EVAC動物は平均血流量5.2mL/kg/分 95CI 4.86~5.62を示した。
【0091】
【表3】
pMAP = 平均近位動脈圧
【0092】
救急救命期中に、EVAC動物は目標範囲内の平均近位MAPを維持し、この期間全体を通じてREBOA動物よりも高い全体的MAPを示した。また、EVAC動物は、救命救急中にREBOA動物に比べてベースライン値により近い大動脈血流量を示した(36ml/kg/分 95CI 30~44対51mL/kg/分 95CI 41~61、p=0.01)。
【0093】
ここで図12Aおよび図12Bを参照すると、実験の救命救急期中に蘇生所要量の有意な差が見られた。REBOA動物は、低血圧および低CVPの発症がEVAC動物に比べて頻繁であることに応答して、EVAC動物に比べて2倍を超える量の晶質液を必要とした(7400ml 95CI 6148~8642対3450ml 95CI 1215~5684、p<0.01)。さらに、昇圧剤所要量はREBOA動物のほうが有意に多かった(50.5ng/kg±5.3対21.5ng/kg±7.4、p=0.05)。
【0094】
EVAC群の1匹の動物は、救命救急期中に進行性の血行動態悪化を経験し、試験終了の40分前に死んだ。この動物における全体的な輸液および昇圧剤の所要量は、EVACコホート全体の輸液および昇圧剤の平均所要量よりも2標準偏差多く、5匹の生存EVAC動物よりも3標準偏差多かった。また、この動物は、初期の実験前輸液ボーラスの前に組み入れ基準未満のベースライン大動脈血流量を示した両群の唯一の動物であったが、輸液投与後に大動脈血流量の組み入れ基準を満たしたため、本試験に組み入れた。
【0095】
ここで図13を参照すると、ピーク乳酸レベルおよび最終乳酸レベルはいずれもEVAC群のほうが有意に低かった。蘇生後の群間でヘモグロビン値の差は存在せず、群間で最終クレアチニンレベルの差は存在しなかった。組織学的解析はREBOA動物とEVAC動物との間の有意差を示さなかった。
【0096】
現行のREBOAの臨床使用を反映する治療介入期間でのこの大型動物出血モデルにおいて、EVACは遠位虚血および生理学的異常をREBOAに比べて減少させた。この改善は、救命救急期中の血清乳酸レベルの低下および蘇生所要量の減少により証明される。さらに、EVACは、出血性ショック中に近位圧をより生理学的なやり方で増大させることで、標準的REBOAにより生じる心臓、肺、および脳の極めて高い血圧を減少させる。これらの有益な生理学的結果は45分の臨床的に関連する遮断期間にわたって示された。最後に、本試験は、自動シリンジポンプと標準的で現在利用可能な大動脈遮断カテーテルとを組み合わせることで、慎重にタイトレーションされた遠位大動脈血流量が可能であることを示す。
【0097】
以前の概念実証実験では、すべての対照動物が数分以内に死ぬブタ肝損傷モデルにおいて体外回路を利用して遠位大動脈血流を精密に制御した。90分の治療介入期間を使用して戦場での現代の戦術的後送救護の現実を模倣することで、長期治療介入(60分超)が必要なシナリオでは完全REBOAの適用が実行不可能であることを認識した。完全大動脈遮断、例えばREBOAによる遠位虚血の程度によって、慎重にタイトレーションされた遠位大動脈血流が与えられた動物に比べて致死率および蘇生所要量が劇的に増加した。重要なことに、この試験は、完全大動脈遮断の持続により誘発される遠位虚血ならびに近位の超生理的な大動脈圧および心臓後負荷を含む完全大動脈遮断による有害作用を相殺するには、EVAC装置により送達されるベースライン大動脈血流のわずか10%で十分であることを示した。さらに、この先行試験は、壊滅的で制御不能な肝損傷に際して10%の遠位大動脈血流量を許容することで血栓破砕および致命的な出血の継続が生じないことを示した。これは、下流血流量の制御不能および引き続く出血の継続による早期の死亡に直面する、類似の肝損傷モデルにおいて手動タイトレーションを使用して部分的な大動脈血流を達成しようという以前の試みとの著しい相違であった。
【0098】
これらの初期実験は、大動脈血流量のタイトレーションが、長期の治療介入期間にわたってREBOAの有益性を延長するために実行可能なアプローチでありうることを示唆した。しかし、これらの予備試験は、最大遮断時間が通常60分未満に限定されるREBOAの院内適用というより典型的なシナリオに対処しなかった。これらの比較的短い遮断期間については既存の臨床データまたはトランスレーショナルデータが存在せず、このことは、部分的血流戦略が完全大動脈遮断に対しての生理学的利点を示すであろうことを示唆している。本試験は、現代のシナリオにおけるEVACの臨床適用可能性に関するこの重要な懸念に対処しようとするものであった。45分という短い治療介入期間では、EVACはなお、大動脈遮断の持続による生理学的影響を劇的に減少させることで、生理学的近位圧を比較的適度に増大させた。蘇生後、輸液所要量および昇圧剤所要量はいずれもREBOA後の所要量の半分未満であった。さらに、救命救急期中の大動脈血流量がより少なかったことが証明するように、EVACは救命救急期全体を通じてより少ない充血性血流量を生じさせた。おそらく、この知見は、この治療介入により生理学的侵襲が減少したことを反映している。全体的に、本試験は、典型的な院内使用を反映する治療介入期間でのEVAC部分的血流戦略に対する実験による裏付けを与える。
【0099】
臨床エビデンスの蓄積は、心停止時点またはその後にREBOAを適用することで、生存率が、蘇生開胸術を受けた患者での酷い生存率と同等に低くなることを示唆している。逆に、血行動態崩壊前のREBOAの適用により生存率が向上することが示された。したがって、蘇生努力中のより早期に治療介入を行うことが、この患者集団の全体的管理における優先事項であるべきである。EVACがもたらす虚血プロファイルおよび生理学的応答の改善に基づけば、この戦略は、理論的には、REBOAが利用される閾値よりも前に適用可能でありうる。このような使用は、外傷蘇生中に、生存率を改善させることができるだけでなく、十分に説明されている大量の輸液、昇圧剤、および晶質液の下流における結果を減少させることで罹患率を好都合に最小化することもできる。
【0100】
継続的な技術開発を通じて、自動シリンジポンプで膨張した従来のコンプライアントバルーンカテーテルを使用して、制御されたタイトレーションされた遠位大動脈血流を達成するために実行可能な戦略が洗練された。このポンプおよびコントローラは大きな進歩となる。血圧、心拍出量、血管緊張、および他の神経内分泌因子の複雑な相互作用を前提とすれば、EVACによる大動脈血流の精密制御は、手動制御の能力を超えたバルーン体積の小さな変化がリアルタイムで実行される閉ループフィードバックを使用する自動化機能を必要とする。本試験において利用した自動シリンジポンプは、マイクロリットルサイズのバルーン体積調整をほぼ連続的に行うことが可能である。この実験的なEVACシリンジポンプの開発は、当技術分野を、非圧迫性体幹出血の管理に臨床的に関連する血管内装置に向けてさらに進歩させるものである。
【0101】
本実験における唯一の死亡例はEVAC試験アームにおけるものであったが、この動物がデータの異常値であって、比較的有意に高い輸液および昇圧剤の所要量を必要としたことを強調することが重要である。本試験は、この技術のいくつかの派生的用途を評価する6つのランダム化アームを包含するより広範な試験のサブセットである。これは、試験期間を生き延びなかった約60匹中唯一の動物であった。異常値であるにもかかわらず、この動物からのすべての生理学的データおよび実験データを分析に組み入れた。これにより、群間の全体的な差が確実に減少する。にもかかわらず、本試験は複数の生理学的および生化学的エンドポイントにわたる群間の有意差を示した。これはREBOAに比べてのEVACの認識された利点を強化するものでしかない。
【0102】
本試験にはいくつかの限界がある。第1に、これは総実験時間がわずか6時間の非生存試験であった。おそらく、生理状態または組織状態に関する群間の決定的な差は、より長期間の試験によって明らかになるであろう。にもかかわらず、特に治療介入期間の終わりの全血による積極的蘇生中に安定的な大動脈血流を送達するEVACシリンジポンプの忠実度は、既存の体外血流回路モデルと同等であった。血管内手段によってEVACを生成するための現行のハードウェアの実施は実験的なものであり、大動脈血流は、上腹部大動脈を取り囲む血管周囲プローブによる直接大動脈血流測定値に基づいて調節される。しかし、以前の報告と一致して、特に本試験において目標となる低血流量において、遠位大動脈圧とバルーンを越えた下流の大動脈血流量との間に強い相関が存在する。このことは、遠位血圧が、それによりEVACを臨床的に調節するための実行可能な大動脈血流の代替測定基準の役割を果たしうることを示唆している。これらの限界にもかかわらず、これらの結果は、救命上の利点を維持しながらREBOAの有害な結果を軽減するという著しい技術およびテクノロジーの進歩を示す。
【0103】
本開示の様々な例示的な態様を上記で説明したが、当業者には、本開示を逸脱することなく本開示に様々な変更および修正を加えることができることは明らかであろう。添付の特許請求の範囲は、本開示の真の範囲内にあるすべての変更および修正を包含するように意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2023-05-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管の血流を部分的に制限するために該血管内に設置される拡張式血流調節装置の拡張および収縮を自動化するための、カテーテル制御装置であって、該拡張式血流調節装置がカテーテルの先端領域に設置されており、該カテーテル制御装置が、
該カテーテルを介して該拡張式血流調節装置と流体連通しているポンプであって、該血管内の該拡張式血流調節装置を拡張および収縮させるように構成されている、ポンプと、
命令を記憶している非一時的コンピュータ可読媒体であって、該命令が、該拡張式血流調節装置より先端側に位置づけられている第1の血圧センサおよび該拡張式血流調節装置より基端側に位置づけられている第2の血圧センサに作動的に接続されているプロセッサにより実行されると、該プロセッサが、
該拡張式血流調節装置より先端側の生理学的情報測定値を該第1の血圧センサから受け取り、
該拡張式血流調節装置より基端側の生理学的情報測定値を該第2の血圧センサから受け取り、
該第1の血圧センサおよび該第2の血圧センサのうちの少なくとも1つからの該生理学的情報測定値と目標生理学的範囲とを比較し、
その値が該第1の血圧センサ又は該第2の血圧センサからの該生理学的情報測定値と該目標生理学的範囲内のセットポイントとの間の差によって決まる動的スケーリング係数を計算し、
少なくとも部分的に該動的スケーリング係数に基づいてボーラス量を計算し、かつ
該第1の血圧センサおよび該第2の血圧センサのうちの少なくとも1つからの該生理学的情報測定値が該目標生理学的範囲外にある場合に該血管の血流量を調整するために、該ボーラス量だけ該拡張式血流調節装置の拡張または収縮を該ポンプに調整させる、
非一時的コンピュータ可読媒体と
を含む、カテーテル制御装置。
【請求項2】
前記拡張式血流調節装置が、血管の血流を制限するために拡張するように膨張するように構成されているバルーンを含み、前記ポンプが、前記第1の血圧センサおよび前記第2の血圧センサのうちの少なくとも1つからの前記生理学的情報測定値が前記目標生理学的範囲外にある場合に該血管の血流量を調整するために該バルーンを膨張または縮小させるように構成されている、請求項1記載のカテーテル制御装置。
【請求項3】
前記ポンプが、1マイクロリットルという少ないボーラス量を送達することによって前記バルーンを膨張または縮小させるように構成されている、請求項2記載のカテーテル制御装置。
【請求項4】
前記ポンプが、前記プロセッサに接続されているステッパモータによって前記バルーンを膨張または縮小させるように構成されている、請求項2記載のカテーテル制御装置。
【請求項5】
前記プロセッサが、前記比較に基づいて、前記第1の血圧センサおよび前記第2の血圧センサのうちの少なくとも1つからの前記生理学的情報測定値が前記目標生理学的範囲外にある場合に前記血管の血流量を調整するために前記拡張式血流調節装置の拡張または収縮を前記ポンプに自動的に調整させる、請求項1記載のカテーテル制御装置。
【請求項6】
前記カテーテル制御装置が、前記プロセッサに作動的に接続されている複数のスイッチおよび/またはボタンをさらに含み、該プロセッサが、該複数のスイッチおよび/またはボタンを介して受け取ったユーザー入力に応答して、前記第1の血圧センサおよび前記第2の血圧センサのうちの少なくとも1つからの前記生理学的情報測定値が前記目標生理学的範囲外にある場合に前記血管の血流量を調整するために前記拡張式血流調節装置の拡張または収縮を前記ポンプに調整させる、請求項1記載のカテーテル制御装置。
【請求項7】
前記カテーテル制御装置が、前記比較を示す情報を表示するように構成されているグラフィカルユーザーインターフェースをさらに含む、請求項1記載のカテーテル制御装置。
【請求項8】
前記グラフィカルユーザーインターフェースが、ユーザーが、意思決定サポートに基づいてユーザー入力を行うことができるように、前記比較に基づいて該意思決定サポートを聴覚的に伝達するようにさらに構成されている、請求項7記載のカテーテル制御装置。
【請求項9】
前記第1の血圧センサおよび前記第2の血圧センサのうちの少なくとも1つからの前記生理学的情報測定値が前記目標生理学的範囲外にある場合に前記プロセッサが警報を発する、請求項1記載のカテーテル制御装置。
【請求項10】
請求項1記載のカテーテル制御装置を含む、大動脈の部分遮断用の精密制御システムであって、
前記カテーテルの先端部に設置されている前記拡張式血流調節装置;
前記第1の血圧センサ;および
前記第2の血圧センサ
をさらに含む、システム。
【請求項11】
前記プロセッサに作動的に接続され、かつ前記拡張式血流調節装置内の圧力、心拍数、呼吸数、血液温度、患者の心拍出量、頸動脈血流量、肺動脈圧、末梢血管抵抗、または頭蓋内圧のうちの少なくとも1つを測定するように構成されている1つまたは複数の追加のセンサをさらに含む、請求項10記載のシステム。
【請求項12】
前記システムが、前記カテーテル制御装置ならびに前記第1および第2の血圧センサに作動的に接続されている外部中央処理装置をさらに含み、該外部中央処理装置が、前記プロセッサを含み、かつ該第1の血圧センサおよび該第2の血圧センサのうちの少なくとも1つからの前記生理学的情報測定値が前記目標生理学的範囲外にあるか否かを示す情報を該カテーテル制御装置に伝達するように構成されている、請求項10記載のシステム。
【請求項13】
前記外部中央処理装置が、WiFi、Bluetooth、Wixelベース通信、セルラー通信、または他の通信形態のうち少なくとも1つを通じて、前記情報をカテーテル制御装置に伝達する、請求項12記載のシステム。
【請求項14】
前記生理学的情報測定値が血圧測定値の波形を含む、請求項1記載のカテーテル制御装置。
【請求項15】
前記動的スケーリング係数が、前記第1の血圧センサからの前記生理学的情報測定値における変化および前記第2の血圧センサからの前記生理学的情報測定値における変化のうちの1つまたは複数に基づく、請求項1記載のカテーテル制御装置。
【請求項16】
前記命令が、前記プロセッサにより実行されると、該プロセッサがさらに、
前記動的スケーリング係数を計算する前に、最初に前記ポンプに前記拡張式血流調節装置の拡張または収縮を調整させる、
請求項1記載のカテーテル制御装置。
【請求項17】
前記命令が、前記プロセッサにより実行されると、該プロセッサがさらに、
時間の遅れが経過したことを決定し、
前記ボーラス量だけ、かつ該時間の遅れの経過を決定したことに応答して、前記ポンプに前記拡張式血流調節装置の収縮または拡張を調整させた後、前記第1の血圧センサおよび前記第2の血圧センサからの後続の生理学的情報測定値を受け取り、かつ
該第1の血圧センサおよび該第2の血圧センサのうちの少なくとも1つからの該後続の生理学的情報測定値と前記目標生理学的範囲との間の第2の差を計算する、
請求項1記載のカテーテル制御装置。
【請求項18】
前記ボーラス量が第1のボーラス量であり、前記命令が、前記プロセッサにより実行されると、該プロセッサがさらに、
前記第2の差に基づいて前記動的スケーリング係数を修正し、かつ
該修正された動的スケーリング係数に基づいて第2のボーラス量を計算する、
請求項17記載のカテーテル制御装置。
【請求項19】
前記時間の遅れが前記第1の差に基づく、請求項17記載のカテーテル制御装置。
【請求項20】
前記ポンプが、1-50マイクロリットルのボーラス量を送達して前記バルーンを膨張または縮小させるように構成されている、請求項2記載のカテーテル制御装置。
【請求項21】
前記ポンプがシリンジポンプである、請求項4記載のカテーテル制御装置。
【手続補正書】
【提出日】2023-05-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
張式血流調節装置の拡張および収縮を自動化するための制御装置であって、該拡張式血流調節装置がカテーテルの先端領域に設置されており、該制御装置が、
該カテーテルを介して該拡張式血流調節装置と流体連通しているポンプであって、該拡張式血流調節装置を拡張および収縮させるように構成されている、ポンプと、
1つまたは複数のセンサに作動的に接続されているプロセッサであって、該プロセッサが、
理学的情報測定値を該1つまたは複数のセンサから受け取り
該1つまたは複数のセンサからの該生理学的情報測定値と目標生理学的範囲とを比較し、
その値が該生理学的情報測定値およびセットポイント圧力に基づく動的スケーリング係数を計算し、
少なくとも部分的に該動的スケーリング係数に基づいてボーラス量を計算し、かつ
1つまたは複数のセンサのうちの少なくとも1つからの該生理学的情報測定値が該目標生理学的範囲外にある場合に血管の血流量を調整するために、該ボーラス量だけ該拡張式血流調節装置の拡張または収縮を該ポンプに調整させる
ように構成されている、該プロセッサ
を含む、制御装置。
【請求項2】
前記拡張式血流調節装置が、血管の血流を制限するために拡張するように膨張するように構成されているバルーンを含み、前記ポンプが、前記1つまたは複数のセンサのうちの少なくとも1つからの前記生理学的情報測定値が前記目標生理学的範囲外にある場合に該血管の血流量を調整するために該バルーンを膨張または縮小させるように構成されている、請求項1記載の制御装置。
【請求項3】
前記ポンプが、1マイクロリットルという少ないボーラス量を送達することによって前記バルーンを膨張または縮小させるように構成されている、請求項2記載の制御装置。
【請求項4】
前記ポンプが、前記プロセッサに接続されているステッパモータによって前記バルーンを膨張または縮小させるように構成されている、請求項2記載の制御装置。
【請求項5】
前記ポンプが、前記1つまたは複数のセンサのうちの少なくとも1つからの前記生理学的情報測定値が前記目標生理学的範囲外にある場合に前記血管の血流量を調整するために前記拡張式血流調節装置の拡張または収縮を自動的に調整するように構成されている、請求項1記載の制御装置。
【請求項6】
前記ポンプ、ユーザー入力に基づいて、前記1つまたは複数のセンサのうちの少なくとも1つからの前記生理学的情報測定値が前記目標生理学的範囲外にある場合に前記血管の血流量を調整するために前記拡張式血流調節装置の拡張または収縮を調するように構成されている、請求項1記載の制御装置。
【請求項7】
記制御装置が、前記比較を示す情報を表示するように構成されているグラフィカルユーザーインターフェースをさらに含む、請求項1記載の制御装置。
【請求項8】
前記グラフィカルユーザーインターフェースが、ユーザーが、意思決定サポートに基づいてユーザー入力を行うことができるように、前記比較に基づいて該意思決定サポートを聴覚的に伝達するようにさらに構成されている、請求項7記載の制御装置。
【請求項9】
前記1つまたは複数のセンサのうちの少なくとも1つからの前記生理学的情報測定値が前記目標生理学的範囲外にある場合に前記プロセッサが警報を発する、請求項1記載の制御装置。
【請求項10】
前記1つまたは複数のセンサが、前記拡張式血流調節装置より基端側に位置付けられている基端側センサを含む、請求項1記載の制御装置。
【請求項11】
前記1つまたは複数のセンサが、前記拡張式血流調節装置より先端側に位置付けられている先端側センサを含む、請求項1記載の制御装置。
【請求項12】
前記1つまたは複数のセンサが、1つまたは複数の血圧センサを含む、請求項1記載の制御装置。
【請求項13】
請求項1記載の制御装置
前記カテーテルの先端部に設置されている前記拡張式血流調節装置;および
前記1つまたは複数のセンサ
を含む、大動脈の部分遮断用のシステム。
【請求項14】
前記プロセッサに作動的に接続され、かつ前記拡張式血流調節装置内の圧力、心拍数、呼吸数、血液温度、患者の心拍出量、頸動脈血流量、肺動脈圧、末梢血管抵抗、または頭蓋内圧のうちの少なくとも1つを測定するように構成されている1つまたは複数の追加のセンサをさらに含む、請求項13記載のシステム。
【請求項15】
前記システムが、前記制御装置ならびに前記1つまたは複数のセンサに作動的に接続されている外部中央処理装置をさらに含み、該外部中央処理装置が、前記プロセッサを含み、かつ該1つまたは複数のセンサのうちの少なくとも1つからの前記生理学的情報測定値が前記目標生理学的範囲外にあるか否かを示す情報を該制御装置に伝達するように構成されている、請求項13記載のシステム。
【請求項16】
前記外部中央処理装置が、WiFi、Bluetooth、Wixelベース通信、セルラー通信、または他の通信形態のうち少なくとも1つを通じて、前記情報を前記制御装置に伝達する、請求項15記載のシステム。
【請求項17】
前記生理学的情報測定値が血圧測定値の波形を含む、請求項1記載の制御装置。
【請求項18】
記プロセッサが、
前記動的スケーリング係数を計算する前に、最初に前記ポンプに前記拡張式血流調節装置の拡張または収縮を調整させるようにさらに構成されている
請求項1記載の制御装置。
【請求項19】
記プロセッサが、
時間の遅れが経過したことを決定し、
前記ボーラス量だけ、かつ該時間の遅れの経過を決定したことに応答して、前記ポンプに前記拡張式血流調節装置の収縮または拡張を調整させた後、前記1つまたは複数のセンサからの後続の生理学的情報測定値を受け取り、かつ
1つまたは複数のセンサのうちの少なくとも1つからの該後続の生理学的情報測定値と前記目標生理学的範囲との間の差を計算する
ようにさらに構成されている、請求項1記載の制御装置。
【請求項20】
前記ボーラス量が第1のボーラス量であり、前記プロセッサが、
記差に基づいて前記動的スケーリング係数を修正し、かつ
該修正された動的スケーリング係数に基づいて第2のボーラス量を計算する
ようにさらに構成されている、請求項19記載の制御装置。
【請求項21】
前記時間の遅れが前記差に基づく、請求項19記載の制御装置。
【請求項22】
前記ポンプが、1-50マイクロリットルのボーラス量を送達して前記バルーンを膨張または縮小させるように構成されている、請求項2記載の制御装置。
【請求項23】
前記ポンプがシリンジポンプである、請求項4記載の制御装置。