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特開2023-9905橋梁のたわみ測定方法とそのたわみ測定装置及び橋梁のたわみ測定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009905
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】橋梁のたわみ測定方法とそのたわみ測定装置及び橋梁のたわみ測定プログラム
(51)【国際特許分類】
   E01D 22/00 20060101AFI20230113BHJP
   G01M 5/00 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
E01D22/00 A
G01M5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021113567
(22)【出願日】2021-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100104064
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 岳人
(72)【発明者】
【氏名】松岡 弘大
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA05
2D059AA11
2D059GG39
(57)【要約】
【課題】橋梁上を移動する移動体側からこの橋梁のたわみを簡単に測定することができる橋梁のたわみ測定方法とそのたわみ測定装置、及び橋梁のたわみ測定プログラムを提供する。
【解決手段】たわみ測定方法#100は、列車が移動する橋梁のたわみを測定する方法であり、橋梁上の軌道変位を測定する軌道変位測定装置の測定結果に基づいて、この橋梁のたわみを演算する。軌道変位測定装置は、列車の前方及び後方で通路変位を測定する。たわみ演算工程#120は、列車の前方の軌道変位測定装置の測定結果と、この列車の後方の軌道変位測定装置の測定結果とに基づいて、橋梁のたわみを演算する。軌道変位測定装置は、列車が橋梁に荷重を作用させる荷重位置における軌道変位を測定する。たわみ演算工程#120は、列車の前方の軌道変位測定装置が測定する軌道変位と、列車の後方の軌道変位測定装置が測定する軌道変位との差分に基づいて、橋梁のたわみを演算する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体が移動する橋梁のたわみを測定する橋梁のたわみ測定方法であって、
前記橋梁上の通路変位を測定する通路変位測定装置の測定結果に基づいて、この橋梁のたわみを演算するたわみ演算工程を含むこと、
を特徴とする橋梁のたわみ測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の橋梁のたわみ測定方法において、
前記通路変位測定装置は、前記移動体の前方及び後方で通路変位を測定し、
前記たわみ演算工程は、前記移動体の前方の前記通路変位測定装置の測定結果と、この移動体の後方の前記通路変位測定装置の測定結果とに基づいて、前記橋梁のたわみを演算する工程を含むこと、
を特徴とする橋梁のたわみ測定方法。
【請求項3】
請求項2に記載の橋梁のたわみ測定方法において、
前記通路変位測定装置は、前記移動体が前記橋梁に荷重を作用させる荷重位置における前記通路変位を測定し、
前記たわみ演算工程は、前記移動体の前方の前記通路変位測定装置が測定する通路変位と、前記移動体の後方の前記通路変位測定装置が測定する通路変位との差分に基づいて、前記橋梁のたわみを演算する工程を含むこと、
を特徴とする橋梁のたわみ測定方法。
【請求項4】
請求項1に記載の橋梁のたわみ測定方法において、
前記通路変位測定装置は、前記移動体の一端で通路変位を測定し、
前記たわみ演算工程は、前記移動体が上り方向に移動するときの前記通路変位測定装置の測定結果と、この移動体が下り方向に移動するときのこの通路変位測定装置の測定結果とに基づいて、前記橋梁のたわみを演算する工程を含むこと、
を特徴とする橋梁のたわみ測定方法。
【請求項5】
請求項4に記載の橋梁のたわみ測定方法において、
前記通路変位測定装置は、前記移動体が前記橋梁に荷重を作用させる荷重位置における前記通路変位を測定し、
前記たわみ演算工程は、前記移動体が上り方向に移動するときの前記通路変位測定装置が測定する通路変位と、前記移動体が下り方向に移動するときの前記通路変位測定装置が測定する通路変位との差分に基づいて、前記橋梁のたわみを演算する工程を含むこと、
を特徴とする橋梁のたわみ測定方法。
【請求項6】
移動体が移動する橋梁のたわみを測定する橋梁のたわみ測定装置であって、
前記橋梁上の通路変位を測定する通路変位測定装置の測定結果に基づいて、この橋梁のたわみを演算するたわみ演算部を備えること、
を特徴とする橋梁のたわみ測定装置。
【請求項7】
移動体が移動する橋梁のたわみを測定するための橋梁のたわみ測定プログラムであって、
前記橋梁上の通路変位を測定する通路変位測定装置の測定結果に基づいて、この橋梁のたわみを演算するたわみ演算手順をコンピュータに実行させること、
を特徴とする橋梁のたわみ測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、移動体が移動する橋梁のたわみを測定する橋梁のたわみ測定方法とそのたわみ測定装置及び橋梁のたわみ測定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の鉄道橋梁のたわみ測定装置は、鉄道橋梁に装着される加速度センサと、この加速度センサの出力信号に基づいて鉄道橋梁のたわみを求める演算部とを備えている(例えば、特許文献1参照)。この従来の鉄道橋梁のたわみ測定装置は、鉄道橋梁が無載荷状態であるときの加速度センサの出力を加速度のゼロ点として設定し、この鉄道橋梁が載荷状態であるときの加速度センサの出力に基づいて、この鉄道橋梁のたわみ量を演算部によって推定している
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-049095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
橋梁のたわみを地上から計測する場合には、橋梁側に加速度センサなどを装着する必要があり、全ての橋梁に加速度センサなどを装着すると膨大な手間と費用が掛かる問題点がある。このため、橋梁を通過する車上から橋梁のたわみを計測することが提案されている。しかし、橋梁上を走行する車両上に設置したセンサで計測される応答には、橋梁のたわみ以外にも軌道凹凸や測定ノイズなど多様な成分で構成される。また、橋梁のたわみを地上から計測する概念について、実際にたわみを計測可能な理論構築には至っていない。さらに、これまでの理論的検討は、単一荷重作用時の桁に着目し、車両上のセンサ(観測点)は一つであると仮定する場合がほとんどであった。
【0005】
この発明の課題は、橋梁上を移動する移動体側からこの橋梁のたわみを簡単に測定することができる橋梁のたわみ測定方法とそのたわみ測定装置及び橋梁のたわみ測定プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、図1図4図8及び図10図14に示すように、移動体(T)が移動する橋梁(B)のたわみを測定する橋梁のたわみ測定方法であって、前記橋梁上の通路変位を測定する通路変位測定装置(2A,2B;2C;2D,2E)の測定結果に基づいて、この橋梁のたわみを演算するたわみ演算工程(#120)を含むことを特徴とする橋梁のたわみ測定方法(#100)である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の橋梁のたわみ測定方法において、図1図2図6図12及び図13に示すように、前記通路変位測定装置(2A,2B;2D,2E)は、前記移動体の前方及び後方で通路変位を測定し、前記たわみ演算工程は、前記移動体の前方の前記通路変位測定装置の測定結果と、この移動体の後方の前記通路変位測定装置の測定結果とに基づいて、前記橋梁のたわみを演算する工程を含むことを特徴とする橋梁のたわみ測定方法である。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載の橋梁のたわみ測定方法において、図7及び図12に示すように、前記通路変位測定装置は、前記移動体が前記橋梁に荷重(P0,P1;P2,PN-1)を作用させる荷重位置(a,a-Δ;a2,aN-1)における前記通路変位を測定し、前記たわみ演算工程は、前記移動体の前方の前記通路変位測定装置が測定する通路変位と、前記移動体の後方の前記通路変位測定装置が測定する通路変位との差分(zm,l(x)-zm,f(x);zf,m(a)-zl,m(a))に基づいて、前記橋梁のたわみを演算する工程を含むことを特徴とする橋梁のたわみ測定方法である。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1に記載の橋梁のたわみ測定方法において、図10に示すように、前記通路変位測定装置は、前記移動体の一端で通路変位を測定し、前記たわみ演算工程は、前記移動体が上り方向(Du)に移動するときの前記通路変位測定装置の測定結果と、この移動体が下り方向(Dd)に移動するときのこの通路変位測定装置の測定結果とに基づいて、前記橋梁のたわみを演算する工程を含むことを特徴とする橋梁のたわみ測定方法である。
【0010】
請求項5の発明は、請求項4に記載の橋梁のたわみ測定方法において、図10に示すように、前記通路変位測定装置(2C)は、前記移動体が前記橋梁に荷重(P1)を作用させる荷重位置(a)における前記通路変位を測定し、前記たわみ演算工程は、前記移動体が上り方向に移動するときの前記通路変位測定装置が測定する通路変位と、前記移動体が下り方向に移動するときの前記通路変位測定装置が測定する通路変位との差分(zm,l(x)-zm,f(x))に基づいて、前記橋梁のたわみを演算する工程を含むことを特徴とする橋梁のたわみ測定方法である。
【0011】
請求項6の発明は、図1図3図10図11図13及び図14に示すように、移動体(T)が移動する橋梁(B)のたわみを測定する橋梁のたわみ測定装置であって、前記橋梁上の通路変位を測定する通路変位測定装置(2A,2B;2C;2D,2E)の測定結果に基づいて、この橋梁のたわみを演算するたわみ演算部(4d)を備えることを特徴とする橋梁のたわみ測定装置(4)である。
【0012】
請求項7の発明は、図1図3図9図11図13及び図14に示すように、移動体(T)が移動する橋梁(B)のたわみを測定するための橋梁のたわみ測定プログラムであって、前記橋梁上の通路変位を測定する通路変位測定装置(2A,2B;2C;2D,2E)の測定結果に基づいて、この橋梁のたわみを演算するたわみ演算手順(S300)をコンピュータに実行させることを特徴とする橋梁のたわみ測定プログラムである。
【発明の効果】
【0013】
この発明によると、橋梁上を移動する移動体側からこの橋梁のたわみを簡単に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明の第1実施形態に係る橋梁のたわみ測定装置における測定対象の橋梁を移動する移動体の模式図である。
図2】この発明の第1実施形態に係る橋梁のたわみ測定システムを概略的に示す全体図である。
図3】この発明の第1実施形態に係る橋梁のたわみ測定システムを概略的に示す構成図である。
図4】この発明の第1実施形態に係る橋梁のたわみ測定システムの軌道変位測定装置の模式図である。
図5】この発明の第1実施形態に係る橋梁のたわみ測定システムの軌道変位測定装置における測定データ記憶部のデータ構造を示す模式図である。
図6】この発明の第1実施形態に係る橋梁のたわみ測定装置において想定される車両モデルの模式図である。
図7】この発明の第1実施形態に係る橋梁のたわみ測定装置において想定される二移動荷重下の準静的な梁のたわみの模式図である。
図8】この発明の第1実施形態に係る橋梁のたわみ測定方法を説明するための工程図である。
図9】この発明の第1実施形態に係る橋梁のたわみ測定装置の動作を説明するためのフローチャートである。
図10】この発明の第2実施形態に係る橋梁のたわみ測定システムを概略的に示す全体図であり、(A)は列車が上り方面に走行するときの全体図であり、(B)は列車が下り方面に走行するときの全体図である。
図11】この発明の第3実施形態に係る橋梁のたわみ測定装置における測定対象の橋梁を移動する移動体の模式図である。
図12】この発明の第3実施形態に係る橋梁のたわみ測定装置において想定される車両モデル及び連行移動荷重下の準静的な梁のたわみの模式図である。
図13】この発明の第4実施形態に係る橋梁のたわみ測定システムを概略的に示す全体図である。
図14】この発明の第4実施形態に係る橋梁のたわみ測定システムを概略的に示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、この発明の第1実施形態について詳しく説明する。
図1に示す軌道Rは、列車Tが走行する通路(線路)である。軌道Rは、図4に示すように、列車Tの車輪を案内する左右一対のレールR1,R2などを備えている。軌道Rは、例えば、二本の本線で構成された複線であり、終点から起点に向かって列車Tが走行する上り線と、起点から終点に向かって列車Tが走行する下り線とから構成されている。
【0016】
図1及び図2に示す列車Tは、軌道Rに沿って移動する移動体である。列車Tは、橋梁B上を走行する電気車、気動車又は客車などの鉄道車両である。列車Tは、前後の二つの台車T1,T2に軌道変位測定装置2A,2Bを備えている。図1及び図2に示す列車Tは、例えば、図1及び図2に示す橋梁B上を100km/h程度までの比較的定速で走行しながら、地上設備の状態を検測する機能を有する在来線列車であり、軌道Rを試験及び調査する試験車などである。列車Tは、例えば、図1に示すように、車両長(車体長)が25m程度の試験車両1両で編成されている。
【0017】
列車Tは、図1及び図2に示すように、車両Vによって組成されており、略一定の速度で橋梁Bを移動している。車両Vは、台車T1,T2を備えており、一つの車体が二つの台車T1,T2によって支持されている。台車T1,T2は、車両Vの車体を支持して軌道R上を走行する装置である。図1及び図2に示す台車T1,T2は、二対の輪軸によって構成された二軸台車(ボギー台車)であり、車両Vの車体の一方の端部と他方の端部とを支持している。台車T1は、車両Vの進行方向前側に配置されて車体の一方の端部を支持する第一台車であり、台車T2は車両Vの進行方向後側に配置されて車体の他方の端部を支持する第二台車である。
【0018】
図1に示す橋梁Bは、軌道Rの下方に空間を形成するように建設された固定構造物である。橋梁Bは、川、谷、湖沼などの水圏又は道路、鉄道などの交通路を横切るように建設されている。橋梁Bは、例えば、コンクリートが主要材料である鉄筋コンクリート構造(RC構造)、又はプレストレストコンクリート構造の一種であり、通常の使用状態でひび割れの発生を許容し、異形鉄筋の配置とプレストレストの導入によりひび割れ幅を制御する構造 (PRC構造)のコンクリート鉄道橋である。橋梁Bは、桁B1と橋脚B2などを備えている。桁B1は、水平方向に配置されて軌道Rを支持する構造物である。桁B1は、橋脚B2を支点として一方の支点と他方の支点とを跨ぐPRC桁のような梁である。桁B1は、二つの支点間に架け渡された単純支持桁である。橋脚B2は、桁B1を支持する構造物である。橋脚B2は、橋梁Bの長さ方向に所定の間隔をあけて施工されており、鉛直方向に配置される鉄筋コンクリート柱などである。
【0019】
図2及び図3に示すたわみ測定システム1は、列車Tが走行する橋梁Bのたわみを測定するシステムである。たわみ測定システム1は、図3に示すように、軌道変位測定装置2A,2Bと、通信装置3と、たわみ測定装置4などを備えている。たわみ測定システム1は、軌道変位測定装置2A,2Bの測定結果を通信装置3によってたわみ測定装置4に送信し、軌道変位測定装置2A,2Bの測定結果に基づいてたわみ測定装置4が橋梁Bのたわみを測定する。
【0020】
図2及び図3に示す軌道変位測定装置2A,2Bは、橋梁B上の軌道変位を測定する装置である。図2に示すように、軌道変位測定装置2Aは列車Tの車両Vの進行方向前側の台車T1に配置されており、軌道変位測定装置2Bは列車Tの車両Vの進行方向後側の台車T2に配置されている。軌道変位測定装置2Aは、列車Tの前方で軌道変位を測定し、軌道変位測定装置2Bは列車Tの後方で軌道変位を測定する。軌道変位測定装置2A,2Bは、列車Tとともに軌道R上を移動しながら軌道変位を測定する。ここで、軌道変位(通路変位)とは、列車Tの繰り返し通過などによって、列車Tの走行路面である軌道Rが徐々に変動して、レールR1,R2の長さ方向の形状が変化する現象であり、軌道不整又は軌道狂いともいう。軌道変位測定装置2A,2Bは、図6及び図7に示すように、列車Tが橋梁Bに荷重P0,P1を作用させる荷重位置a,a-Δにおける軌道変位を測定する。軌道変位測定装置2A,2Bは、いずれも同一構造である。軌道変位測定装置2A,2Bは、図4に示すように、ジャイロ2aと、加速度センサ2bと、レーザ変位計2c,2dと、軌道変位演算部2eと、走行距離演算部2fと、測定データ記憶部2gと、測定データ送信部2hと、制御部2iなどを備えている。
【0021】
図2及び図3に示す軌道変位測定装置2A,2Bは、例えば、一部の高速鉄道列車又は試験車などに導入されており、慣性正矢法による車載型の軌道不整計測機器であり、列車Tの台車T1,T2に搭載される台車搭載型の軌道変位測定装置(慣性正矢測定装置)である。ここで、慣性正矢法とは、図4に示すように、台車T1,T2に搭載したジャイロ2a及び加速度センサ2bの出力信号を軌道変位演算部2eが二回積分することによって算出した台車T1,T2の変位に基づいて、軌道変位演算部2eが仮想基準線を作成し、この仮想基準線からレールR1,R2までの変位量を軌道変位演算部2eが軌道変位として演算する手法である。軌道変位測定装置2A,2Bは、ジャイロ2a及び加速度センサ2bの出力信号を軌道変位演算部2eが二回積分することによって、各時点における測定機器の位置(台車変位)を推定する慣性計測を軌道変位演算部2eが実施する。軌道変位測定装置2A,2Bは、レーザ変位計2cによって測定された台車直下の軌道Rと台車T1,T2との相対変位(左右のレール位置)から、ジャイロ2a及び加速度センサ2bによって慣性計測された台車変位(装置本体の空間上の絶対位置)を軌道変位演算部2eが差し引き、台車T1,T2の振動がキャンセルされた軌道変位を軌道変位演算部2eが測定する。
【0022】
図4に示すジャイロ2aは、台車T1,T2の角加速度を測定する装置である。加速度センサ2bは、台車T1,T2の加速度を測定する装置である。レーザ変位計2cは、左右のレールR1,R2の頭頂面にレーザ光を照射して反射レーザ光を受光し、台車T1,T2から左右のレールR1,R2までの変位を測定する装置である。レーザ変位計2dは、左右のレールR1,R2の頭側面にレーザ光を照射して反射レーザ光を受光し、台車T1,T2から左右のレールR1,R2までの変位を測定する装置である。軌道変位演算部2eは、軌道Rの軌道変位を演算する手段である。軌道変位演算部2eは、ジャイロ2a、加速度センサ2b及びレーザ変位計2c,2dの測定結果に基づいて軌道Rの軌道変位を演算し、軌道変位データD1~D5として制御部2iに出力する。
【0023】
走行距離演算部2fは、列車Tの走行距離を演算する手段である。走行距離演算部2fは、例えば、軌道Rの特定地点に設置された自動列車停止装置(ATS)のATS車上子が出力する絶対位置情報を受信して列車Tの絶対位置を検出し、次のATS地上子に列車Tが到達するまで、列車Tの速度を検出する速度発電機が出力する距離パルス信号を積算して列車Tの走行距離を演算する。走行距離演算部2fは、起点から終点まで又は終点から起点までの列車Tの走行距離(移動距離)を走行距離データD6として制御部2iに出力する。
【0024】
測定データ記憶部2gは、軌道変位測定装置2A,2Bが測定する種々の測定データDを記憶する手段である。測定データ記憶部2gは、例えば、図5に示すように、軌道変位演算部2eが演算する軌道変位データD1~D5と、走行距離演算部2fが演算する走行距離データD6とを測定データ(検測データ)Dとして記憶する記憶装置であり、軌道変位データD1~D5を走行距離データD6と対応させて時系列順に記憶する。ここで、図5に示す軌道変位データD1は、レールR1,R2の上下方向の変位である高低変位に関するデータである。軌道変位データD2は、左右のレールR1,R2の高さの差(高低差)である水準変位に関するデータである。軌道変位データD3は、一定距離間の軌道Rの水準の変化量(軌道Rの平面に対するねじれ状態)である平面性変位に関するデータである。軌道変位データD4は、レールR1,R2の左右方向の変位である通り変位に関するデータである。軌道変位データD5は、左右のレールR1,R2の間隔(軌間)の変化である軌間変位に関するデータである。
【0025】
図4に示す測定データ送信部2hは、軌道変位測定装置2A,2Bから測定データDを送信する手段である。測定データ送信部2hは、軌道変位測定装置2A,2Bから通信装置3を通じてたわみ測定装置4に測定データDを送信する送信機である。測定データ送信部2hは、測定データDをリアルタイムでたわみ測定装置4に送信する。
【0026】
制御部2iは、軌道変位測定装置2A,2Bに関する種々の動作を制御する中央処理部(CPU)である。制御部2iは、例えば、ジャイロ2a及び加速度センサ2bに角加速度及び加速度の検出を指令したり、軌道変位演算部2eに軌道変位の演算を指令したり、軌道変位演算部2eが出力する軌道変位データD1~D5を測定データ記憶部2gに出力したり、走行距離演算部2fに走行距離の演算を指令したり、走行距離演算部2fが出力する走行距離データD6を測定データ記憶部2gに出力したり、軌道変位データD1~D5及び走行距離データD6の記憶を測定データ記憶部2gに指令したり、測定データDを測定データ記憶部2gから読み出して測定データ送信部2hに出力したり、測定データDの送信を測定データ送信部2hに指令したりする。制御部2iは、ジャイロ2a、加速度センサ2b、レーザ変位計2c,2d、軌道変位演算部2e、走行距離演算部2f、測定データ記憶部2g及び測定データ送信部2hと相互に通信可能に接続されている。
【0027】
図3に示す通信装置3は、軌道変位測定装置2A,2Bからたわみ測定装置4に測定データDを送信する装置である。通信装置3は、軌道変位測定装置2A,2Bの測定データ送信部2hからたわみ測定装置4の測定データ受信部4aに測定データDを送信するために、これらを相互に通信可能なように接続する電話回線又はインターネット回線などの電気通信回線である。
【0028】
図2及び図3に示すたわみ測定装置4は、列車Tが走行する橋梁Bのたわみを測定する装置である。たわみ測定装置4は、軌道変位測定装置2A,2Bが測定する軌道変位データD1から橋梁変位(橋梁変位成分)以外の軌道変位及び軌道変位のノイズを除去して橋梁Bのたわみを演算する。たわみ測定装置4は、軌道変位測定装置2A,2Bが測定する軌道変位データD1が台車T1,T2で測定される走行面の変位であるため、この走行面の変位に含まれる橋梁Bのたわみ成分以外のレール凹凸や桁B1の反りなどのような変位及び測定ノイズのようなノイズ成分を除去し、この走行面の変位から橋梁変位のみを抽出して、橋梁Bのたわみを演算する。たわみ測定装置4は、進行方向前側の台車T1で測定される軌道変位と、進行方向後側の台車T2で測定される軌道変位との差分から、橋梁Bのたわみを測定する。たわみ測定装置4は、軌道変位測定装置2A,2Bが測定する軌道変位の差分の最大値と、橋梁Bの支間中央のたわみの最大値とが比例関係にあることを利用して、橋梁Bのたわみを測定することができる。たわみ測定装置4は、図3に示すように、測定データ受信部4aと、測定データ記憶部4bと、差分演算部4cと、たわみ演算部4dと、演算条件データ記憶部4eと、たわみデータ記憶部4fと、たわみ測定プログラム記憶部4gと、表示部4hと、制御部4iなどを備えている。たわみ測定装置4は、例えば、パーソナルコンピュータなどによって構成されており、たわみ測定プログラムに従って所定の処理をコンピュータに実行させる。たわみ測定装置4は、例えば、軌道変位及び車両動揺などの鉄道に関するデータを、種々の角度から分析及び加工する軌道保守管理データベースシステム(Laboratory’s Conversational System(LABOCS))上でたわみ測定プログラムを実行する。
【0029】
次に、二重移動荷重による列車通過時の鉄道橋のたわみ現象について説明する。
(二重移動荷重下の準静的な梁のたわみ)
以下では、図7に示すように、二移動荷重下の準静的な梁のたわみを例に挙げて説明する。図6に示す車両モデルは、台車T1内の2つの輪軸による荷重P01,P02を1つの集中荷重P0と仮定し、台車T2内の2つの輪軸による荷重P11,P12を1つの集中荷重P1と仮定している。図7に示す橋梁Bの支間中央のたわみza(Lb/2)は、橋梁Bの支間長Lb、進行方向前側の荷重P0、進行方向後側の荷重P1、荷重間隔Δ、進行方向前側の荷重位置a、進行方向後側の荷重位置a-Δ、進行方向前側の荷重P0によるたわみza0、進行方向後側の荷重P1によるたわみza1であるときに、以下の数1によって表される。
【0030】
【数1】
【0031】
ここで、数1に示す進行方向前側の荷重P0、進行方向後側の荷重P1、支間長Lb、荷重間隔Δが既知である場合には、たわみの推定問題は桁の曲げ剛性EIの推定問題となる。以下では、車上の軌道変位測定装置2A,2Bによって測定される荷重位置a,a-Δの軌道面変位(一般的には、軌道変位として測定される)を用いて、桁たわみ成分の抽出及び桁たわみ成分と桁の曲げ剛性EIの関係を説明する。図6及び図7に示すような二移動荷重でモデル化した場合の車上からのたわみ推定法の適用範囲は、Lb/3<Δ<4Lb/5となり、在来線の一般的な車両Vの場合には荷重間隔Δ=13.8mであるため、17.25<Lb<41.4となり、概ね支間長20m~40mの桁B1が適応範囲となる。
【0032】
(着目荷重P0の後方に荷重P1が存在する場合)
図6及び図7に示すように、着目荷重P0よりも後方に非着目荷重P1が追走する場合には、非着目荷重P1分のたわみz1(a)(x=a,a1=a-Δ)は、Δ≦a<Lbの範囲おいて、以下の数2に示すようにa=(Lb+Δ)/2で最大値を取る。
【0033】
【数2】
【0034】
(着目荷重P1の前方に荷重P0が存在する場合)
一方、図6及び図7に示すように、着目荷重P1よりも前方に非着目荷重P0が追走する場合には、非着目荷重P0分のたわみz0(a)(x=a,a0=a+Δ)は、0≦a<Lbの範囲おいて、以下の数3に示すようにa=(Lb-Δ)/2で最大値を取る。
【0035】
【数3】
【0036】
(二移動荷重の各荷重位置の変位)
図2に示す進行方向前側の軌道変位測定装置2Aは、図6及び図7に示すように、後方に荷重P1が存在する場合の荷重P0の載荷点xにおける走行面の変位zm,f(x)を測定する。軌道変位測定装置2Aは、以下の数4に示す走行面の変位zm,f(x)を測定する。
【0037】
【数4】
【0038】
ここで、数4に示すzf(x)は、荷重P0の載荷点xにおける橋梁Bのたわみである。ξ(x)は、荷重P0の載荷点xにおける橋梁Bのたわみ成分以外のレール凹凸及び桁B1の反りなどの軌道変位である。εf(x)は荷重P0の載荷点xの測定ノイズである。zf,0(x)は、荷重P0分の載荷点xにおける橋梁Bのたわみである。zf,1(x)は、荷重P1分の載荷点xにおける橋梁Bのたわみである。
【0039】
図2に示す進行方向後側の軌道変位測定装置2Bは、図6及び図7に示すように、前方に荷重P0が存在する場合の荷重P1の載荷点xにおける走行面の変位zm,l(x)を測定する。軌道変位測定装置2Bは、以下の数5に示す走行面の変位zm,l(x)を測定する。
【0040】
【数5】
【0041】
ここで、数5に示すzl(x)は、荷重P1の載荷点xにおける橋梁Bのたわみである。ξ(x)は、荷重P1の載荷点xにおける橋梁Bのたわみ成分以外のレール凹凸及び桁B1の反りなどの軌道変位である。εl(x)は荷重P1の載荷点xの測定ノイズである。zl,0(x)は、荷重P0分の載荷点xにおける橋梁Bのたわみである。zl,1(x)は、荷重P1分の載荷点xにおける橋梁Bのたわみである。
【0042】
図3に示す測定データ受信部4aは、軌道変位測定装置2A,2Bが送信する測定データDを受信する手段である。測定データ受信部4aは、軌道変位測定装置2A,2Bが通信装置3を通じて送信する測定データDを受信する。測定データ記憶部4bは、軌道変位測定装置2A,2Bが送信する測定データDを記憶する手段である。測定データ記憶部4bは、例えば、図5に示すような軌道変位測定装置2A.2Bが送信する測定データDを走行距離と対応させて時系列順に記憶する記憶装置である。測定データ記憶部4bは、軌道変位測定装置2Aが測定した軌道変位データD1と、軌道変位測定装置2Bが測定した軌道変位データD1とを対応させて記憶する。
【0043】
図3に示す差分演算部4cは、列車Tの前方の軌道変位測定装置2Aの測定結果と、列車Tの後方の軌道変位測定装置2Bの測定結果との差分を演算する手段である。差分演算部4cは、列車Tの前方の軌道変位測定装置2Aが測定する軌道変位(走行面の変位)zm,f(x)と、列車Tの後方の軌道変位測定装置2Bが測定する軌道変位(走行面の変位)zm,l(x)との差分zm,l(x)-zm,f(x)を演算する。差分演算部4cは、図7に示すような二移動荷重の各荷重位置a,a-Δにおける変位の差分を演算する。
【0044】
差分演算部4cは、数4に示す進行方向前側の台車T1の軌道変位測定装置2Aによって測定される走行面の変位zm,f(x)と、数5に示す進行方向後側の台車T2の軌道変位測定装置2Bによって測定される走行面の変位zm,l(x)との差分zm,l(x)-zm,f(x)を、0≦Δ<L/2の場合には以下の数6によって演算し、L/2≦Δ≦Lの場合には以下の数7によって演算する。
【0045】
【数6】
【0046】
【数7】
【0047】
ここで、数6及び数7に示すノイズ成分ε(x)とこの分散σ2は、以下の数8によって表される。
【0048】
【数8】
【0049】
差分演算部4cは、以下の数9に示すように前方の荷重P0及び後方の荷重P1の大きさが等しいとする仮定を導入したときには、0≦Δ<L/2の場合には以下の数10によって軌道変位の差分zm,l(x)-zm,f(x)を演算し、L/2≦Δ≦Lの場合には以下の数11によって軌道変位の差分zm,l(x)-zm,f(x)を演算する。
【0050】
【数9】
【0051】
【数10】
【0052】
【数11】
【0053】
差分演算部4cは、演算後の軌道変位の差分zm,l(x)-zm,f(x)を差分データとしてたわみ演算部4dに出力する。
【0054】
たわみ演算部4dは、軌道変位測定装置2A,2Bの測定結果に基づいて、橋梁Bのたわみを演算する手段である。たわみ演算部4dは、列車Tの前方の軌道変位測定装置2Aの測定結果と、列車Tの後方の軌道変位測定装置2Bの測定結果とに基づいて、橋梁Bのたわみを演算する。たわみ演算部4dは、列車Tの前方の軌道変位測定装置2Aが測定する軌道変位zm,f(x)と、列車Tの後方の軌道変位測定装置2Bが測定する軌道変位zm,l(x)との差分zm,l(x)-zm,f(x)に基づいて、橋梁Bのたわみを演算する。たわみ演算部4dは、支間中央のたわみの推定値z^aを以下の数12によって演算する。
【0055】
【数12】
【0056】
たわみ演算部4dは、差分演算部4cが演算する差分zm,l(x)-zm,f(x)に基づいて、数12に示す荷重P0,P1分のたわみの最大値z1((LB+Δ)/2),z0((LB-Δ)/2)をそれぞれたわみの最大値の推定値z^1,z^0として演算する。たわみ演算部4dは、たわみの最大値の推定値z^1,z^0としたときに、桁B1の曲げ剛性の推定値EI^を演算し、この曲げ剛性の推定値EI^を数1に代入して、支間中央のたわみの推定値z^a(LB/2)を数12によって演算する。たわみ演算部4dは、曲げ剛性の推定値EI^を演算せずに、たわみの最大値の推定値z^1,z^0から支間中央のたわみの推定値z^a(LB/2)を数12によって直接演算することも可能である。たわみ演算部4dは、演算後の支間中央のたわみの推定値z^a(LB/2)をたわみデータとして制御部4iに出力する。
【0057】
演算条件データ記憶部4eは、橋梁Bのたわみの演算に必要な種々のデータを記憶する手段である。演算条件データ記憶部4eは、例えば、起点又は終点から橋梁Bのまでの走行距離(キロ程)、橋梁Bの桁B1の支間長Lb、進行方向前側の荷重P0の荷重位置と進行方向後側の荷重P1の荷重位置との間の荷重間隔Δ、橋梁Bの桁B1の曲げ剛性EIなどの橋梁Bのたわみの演算に必要な演算条件を演算条件データとして記憶する。演算条件データ記憶部4eは、例えば、演算条件データを走行距離と対応させて橋梁B毎に記憶する記憶装置である。
【0058】
たわみデータ記憶部4fは、たわみ演算部4dの演算結果を記憶する手段である。たわみデータ記憶部4fは、例えば、たわみ演算部4dが出力するたわみデータを走行距離と対応させて橋梁B毎に時系列順に記憶する記憶装置である。
【0059】
たわみ測定プログラム記憶部4gは、列車Tが走行する橋梁Bのたわみを測定するためのたわみ測定プログラムを記憶する手段である。たわみ測定プログラム記憶部4gは、情報記録媒体から読み取ったたわみ測定プログラム又は電気通信回線を通じて取り込まれたたわみ測定プログラムを記憶する記憶装置などである。
【0060】
表示部4hは、たわみ測定装置4に関する種々の情報を表示する手段である。表示部4hは、例えば、軌道変位測定装置2A,2Bの測定結果、差分演算部4cの演算結果及びたわみ演算部4dの演算結果などを画面上に表示する表示装置である。表示部4hは、例えば、図5に示すような軌道変位データD1~D5を走行距離データD6と対応させて画面上に表示するとともに、列車Tが通過する橋梁B毎のたわみを走行距離データD6と対応させて画面上に表示する。
【0061】
制御部4iは、たわみ測定装置4に関する種々の動作を制御する中央処理部(CPU)である。制御部4iは、たわみ測定プログラム記憶部4gからたわみ測定プログラムを読み出して、このたわみ測定プログラムに従ってたわみ測定処理を実行する。制御部4iは、例えば、測定データ受信部4aから受信した測定データDを測定データ記憶部4bに出力したり、測定データDの記憶を測定データ記憶部4bに指令したり、測定データ記憶部4bから軌道変位データD1を読み出して差分演算部4cに出力したり、軌道変位測定装置2A,2Bで測定される軌道変位zm,f(x),zm,l(x)の差分zm,l(x)-zm,f(x)の演算を差分演算部4cに指令したり、差分演算部4cが出力する差分データをたわみ演算部4dに出力したり、演算条件データ記憶部4eから演算条件データを読み出してたわみ演算部4dに出力したり、橋梁Bのたわみの演算をたわみ演算部4dに指令したり、たわみ演算部4dが出力するたわみデータをたわみデータ記憶部4fに出力したり、たわみデータの記憶をたわみデータ記憶部4fに指令したり、表示部4hに種々のデータの表示を指令したりする。制御部4iは、測定データ受信部4a、測定データ記憶部4b、差分演算部4c、たわみ演算部4d、演算条件データ記憶部4e、たわみデータ記憶部4f、たわみ測定プログラム記憶部4g及び表示部4hと相互に通信可能に接続されている。
【0062】
次に、この発明の第1実施形態に係る橋梁のたわみ測定方法について説明する。
図8に示すたわみ測定方法#100は、列車Tが走行する橋梁Bのたわみを測定する方法である。たわみ測定方法#100は、差分演算工程#110と、たわみ演算工程#120などを含む。たわみ測定方法#100では、図3及び図4に示す軌道変位測定装置2Aが測定する軌道変位データD1と、軌道変位測定装置2Bが測定する軌道変位データD1との差分zm,l(x)-zm,f(x)を演算することによって、軌道変位データD1に含まれる橋梁Bのたわみ成分以外の軌道変位ξ(x)を除去して、橋梁Bのたわみを演算する。
【0063】
差分演算工程#110は、軌道変位測定装置2A,2Bの測定結果の差分zm,l(x)-zm,f(x)を演算する工程である。差分演算工程#110では、列車Tの前方の軌道変位測定装置2Aが測定する軌道変位zm,f(x)と、列車Tの後方の軌道変位測定装置2Bが測定する軌道変位zm,l(x)との差分zm,l(x)-zm,f(x)を演算する。差分演算工程#100では、橋梁Bの桁B1の支間中央で軌道変位測定装置2A,2Bが測定する軌道変位データD1の差分zm,l(x)-zm,f(x)を演算する。
【0064】
たわみ演算工程#120は、軌道変位測定装置2A,2Bの測定結果に基づいて、橋梁Bのたわみを演算する工程である。たわみ演算工程#120では、列車Tの前方の軌道変位測定装置2Aが測定する軌道変位zm,f(x)と、列車Tの後方の軌道変位測定装置2Bが測定する軌道変位zm,l(x)との差分zm,l(x)-zm,f(x)に基づいて、橋梁Bのたわみを演算する。たわみ演算工程#120では、列車Tの前方の軌道変位測定装置2Aが測定する軌道変位zm,f(x)と、列車Tの後方の軌道変位測定装置2Bが測定する軌道変位zm,l(x)との差分zm,l(x)-zm,f(x)に基づいて、橋梁Bのたわみを演算する。たわみ演算工程#120では、橋梁Bの桁B1の支間中央のたわみを演算する。
【0065】
次に、この発明の第1実施形態に係る橋梁のたわみ測定装置の動作について説明する。
以下では、制御部4iの動作を中心として説明する。
図9に示すステップ(以下、Sという)100において、たわみ測定プログラム記憶部4gからたわみ測定プログラムを制御部4iが読み込む。たわみ測定プログラムを制御部4iが読み込むと、一連のたわみ測定処理を制御部4iが開始する。
【0066】
S200において、軌道変位測定装置2A,2Bの測定結果の差分zm,l(x)-zm,f(x)を差分演算部4cに制御部4iが指令する。軌道変位測定装置2A,2Bが測定する軌道変位データD1を測定データ記憶部4bから制御部4iが読み出して、この軌道変位データD1を差分演算部4cに制御部4iが出力する。このため、列車Tの前方の軌道変位測定装置2Aが測定する軌道変位zm,f(x)と、列車Tの後方の軌道変位測定装置2Bが測定する軌道変位zm,l(x)との差分zm,l(x)-zm,f(x)の演算を差分演算部4cが演算する。その結果、図7に示すように、進行方向後側の台車T2で測定される走行面の変位と、進行方向前側の台車T1で測定される走行面の変位との差分zm,l(x)-zm,f(x)を、数10及び数11によって差分演算部4cが演算する。走行面の変位の差分zm,l(x)-zm,f(x)を差分演算部4cが演算すると、走行面の変位の差分zm,l(x)-zm,f(x)を差分データとしてたわみ演算部4dに差分演算部4cが出力する。
【0067】
S300において、軌道変位測定装置2A,2Bの測定結果に基づいて、橋梁Bのたわみの演算をたわみ演算部4dに制御部4iが指令する。演算条件データ記憶部4eから演算条件データを制御部4iが読み出して、この演算条件データを制御部4iがたわみ演算部4dに出力するとともに、橋梁Bのたわみの演算をたわみ演算部4dに制御部4iが指令する。その結果、制御部4iが出力する演算条件データと、差分演算部4cが出力する差分データとに基づいて、橋梁Bの支間中央のたわみの推定値z^aを、数12によってたわみ演算部4dが演算する。橋梁Bの支間中央のたわみの推定値z^aをたわみ演算部4dが演算すると、橋梁Bの支間中央のたわみの推定値z^aをたわみデータとしてたわみ演算部4dが制御部4iに出力する。たわみデータを制御部4iがたわみデータ記憶部4fに出力すると、このたわみデータをたわみデータ記憶部4fが記憶する。
【0068】
S400において、測定結果の表示を表示部4hに制御部4iが指令する。たわみデータをたわみデータ記憶部4fから制御部4iが読み出して、このたわみデータを制御部4iが表示部4hに出力する。その結果、橋梁Bのたわみなどを表示部4hが画面上に表示する。
【0069】
この発明の第1実施形態に係る橋梁のたわみ測定方法とそのたわみ測定装置及び橋梁のたわみ測定プログラムには、以下に記載するような効果がある。
(1) この第1実施形態では、橋梁B上の軌道変位zm,f(x),zm,l(x)を測定する軌道変位測定装置2A,2Bの測定結果に基づいて、橋梁Bのたわみをたわみ演算部4dが演算する。このため、軌道変位測定装置2A,2Bを利用することによって、橋梁B上を走行しながら列車T側から橋梁Bのたわみを簡単に計測することができる。
【0070】
(2) この第1実施形態では、列車Tの前方及び後方で軌道変位測定装置2A,2Bが軌道変位zm,f(x),zm,l(x)を測定し、列車Tの前方の軌道変位測定装置2Aの測定結果と、列車Tの後方の軌道変位測定装置2Bの測定結果とに基づいて、橋梁Bのたわみをたわみ演算部4dが演算する。このため、二つの移動荷重作用時の橋梁Bのたわみを二つの移動荷重P0,P1の荷重位置a,a-Δで測定し、各荷重位置a,a-Δの測定結果の差分zm,l(x)-zm,f(x)を取ることによって、非着目荷重分を簡単に抽出することができる。その結果、列車T上で測定される2点の軌道変位zm,f(x),zm,l(x)を用いることによって、橋梁Bのたわみを列車T上から簡単に測定することができる。
【0071】
(3) この第1実施形態では、列車Tが橋梁Bに荷重P0,P1を作用させる荷重位置a,a-Δにおける軌道変位zm,f(x),zm,l(x)を軌道変位測定装置2A,2Bが測定し、列車Tの前方の軌道変位測定装置2Bが測定する軌道変位zm,f(x)と、列車Tの後方の軌道変位測定装置2Aが測定する軌道変位zm,l(x)との差分zm,l(x)-zm,f(x)に基づいて、橋梁Bのたわみをたわみ演算部4dが演算する。このため、橋梁変位以外のレール凹凸や桁B1の反りなどの軌道変位(いわゆる静的軌道変位)ξ(x)などの二つの着目荷重位置P0,P1の変位に共通して混入する影響因子を相殺することができる。その結果、橋梁Bのたわみ以外のレール凹凸などの多様な成分を差分処理によって相殺し、橋梁Bのたわみを正確に測定することができる。また、軌道変位zm,f(x),zm,l(x)の差分zm,l(x)-zm,f(x)の最大値と、支間中央のたわみの最大値z1((LB+Δ)/2),z0((LB-Δ)/2)とが比例関係にある点に着目して、橋梁Bのたわみを正確に測定することができる。
【0072】
(4) この第1実施形態では、橋梁B上の軌道変位zm,f(x),zm,l(x)を測定する軌道変位測定装置2A,2Bの測定結果に基づいて、たわみ演算手順において橋梁Bのたわみを演算する。このため、既存の軌道保守管理データベースシステムにたわみ測定プログラムを実装し、軌道保守管理データベースシステム上でたわみ測定プログラムを実行させることができる。また、既存の軌道保守管理データベースシステムにたわみ測定プログラムをオプション機能として簡単に付加することができる。
【0073】
(第2実施形態)
以下では、図1図7に示す部分と同一の部分については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
図10に示す軌道Rは、例えば、一本の本線で構成された単線であり、一本の本線を上り方向及び下り方向の両方向で使用され列車Tが走行する。図10に示す軌道変位測定装置2Cは、図2図4に示す軌道変位測定装置2A,2Bと同一構造である。図10に示す軌道変位測定装置2Cは、図2図4に示す軌道変位測定装置2A,2Bとは異なり、車両Vの台車T2にのみ搭載されており、列車Tの一端で軌道変位zm,f(x),zm,l(x)を測定する。軌道変位測定装置2Cは、図7に示すように、列車Tが橋梁Bに荷重P1を作用させる荷重位置a-Δにおける軌道変位zm,f(x),zm,l(x)を測定する。軌道変位測定装置2Cは、図10(A)に示すように、列車Tが上り方面(Du方向)に走行するときには、進行方向後側で軌道変位zm,l(x)を測定し、図10(B)に示すようにこの列車Tが下り方面(Dd方向)に走行するときには、進行方向前側で軌道変位zm,f(x)を測定する。図3及び図4に示す測定データ記憶部2g,4bは、列車Tが上り方向に走行したときに、軌道変位測定装置2Cが測定した測定データDと、列車Tが下り方向に走行したときに、軌道変位測定装置2Cが測定した測定データDとを合成して記憶する。
【0074】
図3に示す差分演算部4cは、列車Tが上り方向に走行するときの軌道変位測定装置2Cの測定結果と、列車Tが下り方向に走行するときの軌道変位測定装置2Cの測定結果との差分zm,l(x)-zm,f(x)を演算する。差分演算部4cは、列車Tが上り方向に走行するときの軌道変位測定装置2Cが測定する軌道変位zm,l(x)と、列車Tが下り方向に走行するときの軌道変位測定装置2Cが測定する軌道変位zm,f(x)との差分zm,l(x)-zm,f(x)を演算する。
【0075】
たわみ演算部4dは、列車Tが上り方向に走行するときの軌道変位測定装置2Cの測定結果と、列車Tが下り方向に走行するときの軌道変位測定装置2Cの測定結果とに基づいて、橋梁Bのたわみを演算する。たわみ演算部4dは、列車Tの前方の軌道変位測定装置2Aの測定結果と、列車Tの後方の軌道変位測定装置2Bの測定結果とに基づいて、橋梁Bのたわみを演算する。たわみ演算部4dは、列車Tの前方の軌道変位測定装置2Aが測定する軌道変位zm,f(x)と、列車Tの後方の軌道変位測定装置2Bが測定する軌道変位zm,l(x)との差分zm,l(x)-zm,f(x)に基づいて、橋梁Bのたわみを演算する。
【0076】
この発明に第2実施形態に係る橋梁のたわみ測定方法とそのたわみ測定装置及び橋梁のたわみ測定プログラムには、第1実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
(1) この第2実施形態では、軌道変位測定装置2Cが列車Tの一端で軌道変位zm,f(x),zm,l(x)を測定し、列車Tが上り方向に走行するときの軌道変位測定装置2Cの測定結果と、この列車Tが下り方向に走行するときのこ軌道変位測定装置2Cの測定結果とに基づいて、橋梁Bのたわみをたわみ演算部4dが演算する。このため、列車Tが1両の車両Vによって組成されており、前後いずれか一方の台車T1,T2にのみ軌道変位測定装置2Cを備えている場合であっても、上り方向と下り方向で同じ軌道Rを走行することによって、橋梁Bのたわみを簡単に測定することができる。
【0077】
(2) この第2実施形態では、列車Tが橋梁Bに荷重P1を作用させる荷重位置a-Δにおける軌道変位zm,f(x),zm,l(x)を軌道変位測定装置2Cが測定し、列車Tが上り方向に走行するときの軌道変位測定装置2Cが測定する軌道変位zm,l(x)と、列車Tが下り方向に走行するときの軌道変位測定装置2Cが測定する軌道変位zm,f(x)との差分zm,l(x)-zm,f(x)に基づいて、橋梁Bのたわみをたわみ演算部4dが演算する。このため、1台の軌道変位測定装置2Cが測定する軌道変位データD1に基づいて、橋梁Bのたわみを効率的に測定することができる。
【0078】
(第3実施形態)
図11及び図12に示す列車Tは、例えば、100km/h程度までの比較的低速で在来線又は新幹線(登録商標)を走行する鉄道車両である。列車Tは、旅客又は貨物の運輸営業を行うことを目的として組成された営業列車である。列車Tは、例えば、車両長(車体長)が25m程度の複数の営業車両で編成されており、客扱いをしないで車両運用する回送列車である。図11及び図12に示す列車Tは、車両VF,VM,VLによって組成されており、略一定の速度で橋梁Bを移動している。車両VFは、編成の先頭に位置する先頭車両であり、車両VMは編成の中間に位置する中間車両であり、車両VLは編成の後尾に位置する後尾車両(最後尾車両)である。車両VF,VM,VLは、台車T1,T2を備えている。
【0079】
図12に示すように、軌道変位測定装置2Aは列車Tの先頭の車両VFの進行方向後側の台車T2に配置されており、軌道変位測定装置2Bは列車Tの後尾の車両VLの進行方向前側の台車T1に配置されている。軌道変位測定装置2Aは、列車Tの前方で軌道変位を測定し、軌道変位測定装置2Bは列車Tの後方で軌道変位を測定する。
【0080】
次に、連行移動荷重列による列車通過時の鉄道橋のたわみ現象について説明する。
(連行移動荷重列下の準静的な梁のたわみ)
以下では、図11に示すように、連行移動荷重列下の準静的な梁のたわみを例に挙げて説明する。図11に示す車両モデルは、1車両4軸2台車を有する車両VF,VM,VLのうち、同じ台車T1,T2内の2車軸分の荷重を一つの集中荷重P1,…,PNとしてモデル化した新幹線車両を想定している。荷重間隔Δ1は、車両VF,VM,VL内の前後の台車T1,T2の回転中心間の距離である台車中心間隔(台車中心間距離)である。荷重間隔Δ2(Δ2<Δ1)は、隣接する車両VF,VM,VL間の台車中心間隔である。荷重P1,…,PNは、先頭の車両VFから後尾の車両VLまで順次橋梁Bに作用する集中荷重である。着目荷重の位置をaとすれば、先頭の荷重P1からそれぞれの荷重P1,…,PNまでの距離は、以下の数13によって表される。
【0081】
【数13】
【0082】
なお、一般的な日本の新幹線車両のような高速鉄道車両では、Δ1=17.5m、Δ2=7.5mである。単一荷重の作用時のたわみz(x)などは、第1実施形態と同様に定式化されるため、荷重位置aにおける支間中央のたわみza(Lb/2,a)は,以下の数14によって表現される。なお、以下の定式化ではLb/2を省略する。
【0083】
【数14】
【0084】
ここで、数14に示すH(x)は、ヘヴィサイド関数である。着目箇所は、日本の高速鉄道における台車装荷型の軌道変位測定装置の設置位置に合わせて、先頭の車両VFの台車T2の回転中心(荷重P2の荷重位置)及び後尾の車両VLの台車T1の中心(荷重PN-1の荷重位置)とした。以下では、図12に示す荷重P2で観測される変位を前方荷重位置変位zfとし、PN-1で観測される変位を後方荷重位置変位zlとする。
【0085】
(前方荷重位置変位)
図12に示す荷重P2の荷重位置a2における前方荷重位置変位zfに着目すると、考慮すべき前後荷重は通過する橋梁Bの支間長Lbと荷重間隔Δ1,Δ2の関係に依存し、以下の数15~数19に示す通りである。なお、各条件の括弧書きは、一般的な日本の高速鉄道車両諸元(Δ1=17.5m,Δ2=7.5m)の場合の例を示す。
【0086】
b<Δ2(Lb<7.5m)の場合には、着目する前方の荷重P2のみの変位を、以下の数15に示す前方荷重位置変位zf,2(a2)として、軌道変位測定装置2Aが測定する。
【0087】
【数15】
【0088】
Δ2≦Lb≦Δ1(7.5m≦Lb<17.5m)の場合には、前方の荷重P2の後方に位置する荷重P3の変位を考慮して、以下の数16に示す前方荷重位置変位zf,2(a2)を軌道変位測定装置2Aが測定する。後方の荷重P3成分は、Δ2≦a2≦Lbの範囲内でa2=(Lb+Δ2)/2において、以下の数16に示すたわみの最大値zf,3((Lb+Δ2)/2)を取る。
【0089】
【数16】
【0090】
Δ1≦Lb≦2Δ1+Δ2(17.5m≦Lb<42.5m)の場合には、前方の荷重P2の後方に位置する荷重P3の変位に加えて、荷重P2の前方に位置する荷重P1の変位を考慮して、以下の数17に示す前方荷重位置変位zf(a2)を軌道変位測定装置2Aが測定する。着目荷重の前方の荷重P1成分は、0≦a2≦Lb-Δ1の範囲内でa2=(Lb-Δ1)/2において、以下の数17に示すたわみの最大値zf,1((Lb-Δ1)/2)を取る。なお、2Δ1+Δ2≦Lb<2Δ1+2Δ2(42.5m≦Lb<50.0m)の場合には、Δ2≦a2<Lb-Δ1の範囲内において荷重P1成分のたわみzf,1と荷重P3成分のたわみzf,3とが重複する。
【0091】
【数17】
【0092】
2Δ1+Δ2≦Lb<2Δ1+2Δ2(42.5m≦Lb<50.0m)の場合には、前方の荷重P2の前後の荷重P1,P3の変位に加えて、さらに後方の荷重P4の変位を考慮して、以下の数18に示す前方荷重位置変位zf(a2)を軌道変位測定装置2Aが測定する。着目荷重の後方の荷重P4成分は、Δ1+Δ2≦a2≦2Δ1+Δ2の範囲内でa2=(Lb+Δ1+Δ2)/2において、以下の数18に示すたわみの最大値zf,1((Lb+Δ1+Δ2)/2)を取る。なお、Δ2≦a2<Lb-Δ1の範囲内で荷重P1成分のたわみzf,1と荷重P3成分のたわみzf,3とが重複するとともに、Δ1+Δ2≦a2<Lbの範囲内で荷重P3成分のたわみzf,3と荷重P4成分のたわみzf,4とが重複する。
【0093】
【数18】
【0094】
2Δ1+2Δ2≦Lb<3Δ1+2Δ2(50.0m≦Lb<67.5m)の場合には、前方の荷重P2の前後の荷重P1,P3,P4の変位に加えて、さらに後方の荷重P5の変位を考慮して、以下の数19に示す前方荷重位置変位zf(a2)を軌道変位測定装置2Aが測定する。着目荷重の後方の荷重P5成分は、Δ1+2Δ2≦a2≦Lbの範囲内でa2=(Lb+Δ1+2Δ2)/2において、以下の数19に示すたわみの最大値zf,1((Lb+Δ1+Δ2)/2)を取る。
【0095】
【数19】
【0096】
非着目荷重によるたわみの最大値は、着目荷重からの距離が増大するとともに急激に減少する。したがって、3Δ1+2Δ2≦Lb(67.5m≦Lb)の支間長Lbを有する橋梁Bにおける荷重P6以降の荷重は省略することとする。なお,単純桁の適用範囲を考慮すれば、概ねほとんどの既設橋梁について適用可能であると考えられる。
【0097】
(後方荷重位置変位)
図12に示す荷重PN-1の荷重位置aN-1における前方荷重位置変位zl(aN-2)に着目すると、考慮すべき前後荷重は通過する橋梁Bの支間長Lbと荷重間隔Δ1,Δ2の関係に依存し、前方荷重位置変位と支間中央で対称となる。このため、前方荷重位置変位における荷重P2の荷重位置a2をLb-a2=aN-1とし、前方荷重位置変位の各荷重番号iをN+1-iとした場合に等しい。以下では、2Δ1+2Δ2≦Lb<3Δ1+2Δ2(50.0m≦Lb<67.5m)の場合のみについて説明する。
【0098】
2Δ1+2Δ2≦Lb<3Δ1+2Δ2(50.0m≦Lb<67.5m)の場合には、荷重PN-1の前後の荷重PN,PN-2,PN-3,PN-4の変位を考慮して、以下の数20に示す後方荷重位置変位zl(aN-1)を軌道変位測定装置2Bが測定する。
【0099】
【数20】
【0100】
図3に示す差分演算部4cは、図12に示すよう連行移動荷重列の各荷重位置a2,aN-1における変位の差分を演算する。差分演算部4cは、数15~数19に示す進行方向前側の台車T1の軌道変位測定装置2Aによって測定される走行面の変位zf,m(a)と、数20に示す進行方向後側の台車T2の軌道変位測定装置2Bによって測定される走行面の変位zl,m(a)との差分zf,m(a)-zl,m(a)を以下の数21~数25によって演算する。
【0101】
差分演算部4cは、Lb<Δ2(Lb<7.5m)の場合には差分zf,m(a)-zl,m(a)を以下の数21によって演算し、Δ2≦Lb≦Δ1(7.5m≦Lb<17.5m)の場合には以下の数22によって差分zf,m(a)-zl,m(a)を演算し、Δ1≦Lb≦2Δ1+Δ2(17.5m≦Lb<42.5m)の場合には以下の数23によって差分zf,m(a)-zl,m(a)を演算し、2Δ1+Δ2≦Lb<2Δ1+2Δ2(42.5m≦Lb<50.0m)の場合には以下の数24によって差分zf,m(a)-zl,m(a)を演算し、2Δ1+2Δ2≦Lb<3Δ1+2Δ2(50.0m≦Lb<67.5m)の場合には以下の数25によって差分zf,m(a)-zl,m(a)を演算する。以下では、全ての荷重P1,…,PNの大きさが等しいと仮定して説明する。
【0102】
【数21】
【0103】
【数22】
【0104】
【数23】
【0105】
【数24】
【0106】
【数25】
【0107】
ここで、数21~数25に示すzf,m(a)は、前方の軌道変位測定装置2Aによって測定される荷重位置aにおける橋梁Bのたわみである。zl,m(a)は、後方の軌道変位測定装置2Bによって測定される荷重位置aにおける橋梁Bのたわみである。ξ(a)は、前方及び後方の軌道変位測定装置2A,2Bによって測定される荷重位置aにおける橋梁Bのたわみ成分以外のレール凹凸及び桁B1の反りなどの軌道変位である。εf(a)は、前方の軌道変位測定装置2Aによって測定される軌道変位の測定ノイズであり、εl(a)は後方の軌道変位測定装置2Bによって測定される軌道変位の測定ノイズである。
【0108】
なお、着目荷重P2,PN-1によるたわみ成分は、前方と後方とで等しく、zf,2(a)=zl,N-1(a)である。このため、数21~数25に示す前方の軌道変位測定装置2Aによって測定される測定ノイズεf(a)及び後方の軌道変位測定装置2Bによって測定される測定ノイズεl(a)とこれらの分散σ2は、以下の数26によって表される。
【0109】
【数26】
【0110】
前方荷重位置変位zf,m(a)と後方荷重位置変位zl,m(a)との差分zf,m(a)-zl,m(a)の最大値max{|zf,m(a)-zl,m(a)|}(=zc,M)は、荷重位置aを既知とすれば、支間長Lbのみを変数とする適用な関数GC(Lb)を用いて、以下の数27のように表現される。
【0111】
【数27】
【0112】
一方、地上側で測定されるたわみについても、荷重P1,…,PN=Pの場合には、数14に示す支間中央のたわみza(a)は、以下の数28によって表現される。
【0113】
【数28】
【0114】
支間中央のたわみの最大値max{za(a)}(=zb,M)は、荷重位置aを既知とすれば、支間長Lbのみを変数とする適用な関数Gb(Lb)を用いて、以下の数29のように表現される。
【0115】
【数29】
【0116】
たわみ演算部4dは、数27を数29に代入することによって、支間中央のたわみの最大値zb,Mを以下の数30によって演算する。
【0117】
【数30】
【0118】
たわみ演算部4dは、差分演算部4cが演算する差分zf,m(a)-zl,m(a)の最大値zc,Mに基づいて、支間中央のたわみの最大値zb,Mを数30によって演算する。たわみ演算部4dは、予め数値計算によって求めた数30に示す係数Gb(Lb)/GC(Lb)に差分zf,m(a)-zl,m(a)を乗算して、支間中央のたわみの最大値zb,Mを演算する。ここで、係数Gb(Lb)/GC(Lb)は、荷重P1,…,PN及び桁B1の剛性EIに依存しないため、適当な荷重P1,…,PN及び桁B1の剛性EIを用いて、支間中央のたわみの最大値zb,M及び差分zf,m(a)-zl,m(a)の最大値zc,Mを予め演算することで得られる。演算条件データ記憶部4eは、例えば、数30に示す係数Gb(Lb)/GC(Lb)などの橋梁Bのたわみの演算に必要な演算条件を演算条件データとして記憶する。この第3実施形態には、第1実施形態と同様の効果がある。
【0119】
(第4実施形態)
図13に示すガイドウェイWは、磁気浮上式鉄道の車両VF,VM,VLが走行する空間を構成する地上設備である。ガイドウェイWは、図1図2図10及び図11に示す軌道Rに相当し、断面形状が略U字状の凹部である。ガイドウェイWは、車両VF,VM,VLの支持車輪が走行する走行路W1と、走行路W1の両側に形成された略垂直な側壁W2とを備えている。ガイドウェイWは、車両VF,VM,VLを支持する支持部として機能するとともに、車両VF,VM,VLが水平方向に逸脱するのを防ぐガイド部としても機能する。ガイドウェイWは、車両VF,VM,VLに推進力を与える推進コイルと、車両VF,VM,VLに浮上力及び案内力を発生させる浮上案内コイルとを支持している。
【0120】
図13に示す列車Tは、ガイドウェイWに沿って移動する移動体である。列車Tは、橋梁B上を移動する磁気浮上式鉄道車両である。列車Tは、車両VF,VM,VLが磁気吸引力及び磁気反発力によって浮上し走行する。列車Tは、強磁界を発生する超電導磁石Mを備えている。
【0121】
図13及び図14に示すたわみ測定システム1は、ガイドウェイ変位測定装置2D,2Eなどを備えている。たわみ測定システム1は、ガイドウェイ変位測定装置2D,2Eの測定結果を通信装置3によってたわみ測定装置4に送信し、ガイドウェイ変位測定装置2D,2Eの測定結果に基づいて橋梁Bのたわみを測定する。
【0122】
ガイドウェイ変位測定装置2D,2Eは、橋梁B上のガイドウェイ変位を測定する装置である。ここで、ガイドウェイ変位(通路変位)とは、ガイドウェイWの設計上の位置及び基本寸法に対する現場のガイドウェイWの位置及び寸法の誤差である。ガイドウェイ変位は、軌道変位と同様に高低変位、通り変位、水準変位、平面性変位及び内面間距離変位などがあり、ガイドウェイ不整又はガイドウェイ狂いともいう。図13に示すように、ガイドウェイ変位測定装置2Dは列車Tの先頭の車両VFの進行方向後側の超電導磁石Mに配置されており、ガイドウェイ変位測定装置2Eは列車Tの後尾の車両VLの進行方向前側の超電導磁石Mに配置されている。ガイドウェイ変位測定装置2Dは、列車Tの前方でガイドウェイ変位を測定し、ガイドウェイ変位測定装置2Eは列車Tの後方でガイドウェイ変位を測定する。ガイドウェイ変位測定装置2D,2Eは、列車TとともにガイドウェイW上を移動しながらガイドウェイ変位を測定する。ガイドウェイ変位測定装置2D,2Eは、いずれも同一構造であり、図2図4及び図10に示す軌道変位測定装置2A~2Cに近似した構造である。
【0123】
図13及び図14に示すたわみ測定装置4は、ガイドウェイ変位測定装置2D,2Eが測定するガイドウェイ変位データから橋梁Bの変位成分(橋梁変位)以外のガイドウェイ変位及びガイドウェイ変位のノイズを除去して橋梁Bのたわみを演算する。たわみ測定装置4は、ガイドウェイ変位測定装置2D,2Eが測定するガイドウェイ変位データが走行路W1の変位であるため、この走行路W1の変位に含まれる路面凹凸のような橋梁Bのたわみ成分以外の変位及び測定ノイズのようなノイズ成分を除去し、この走行路W1の変位から橋梁変位のみを抽出して、橋梁Bのたわみを演算する。図14に示す測定データ受信部4aは、ガイドウェイ変位測定装置2D,2Eが送信する測定データDを受信する。測定データ記憶部4bは、ガイドウェイ変位測定装置2D,2Eが送信する測定データDを記憶する。
【0124】
差分演算部4cは、列車Tの前方のガイドウェイ変位測定装置2Dの測定結果と、列車Tの後方のガイドウェイ変位測定装置2Eの測定結果との差分zf,m(a)-zl,m(a)を演算する。差分演算部4cは、列車Tの前方のガイドウェイ変位測定装置2Dが測定するガイドウェイ変位と、列車Tの後方のガイドウェイ変位測定装置2Eが測定するガイドウェイ変位との差分zf,m(a)-zl,m(a)を演算する。
【0125】
たわみ演算部4dは、ガイドウェイ変位測定装置2D,2Eの測定結果に基づいて、橋梁Bのたわみを演算する。たわみ演算部4dは、列車Tの前方のガイドウェイ変位測定装置2Dの測定結果と、列車Tの後方のガイドウェイ変位測定装置2Eの測定結果とに基づいて、橋梁Bのたわみを演算する。たわみ演算部4dは、列車Tの前方のガイドウェイ変位測定装置2Dが測定するガイドウェイ変位と、列車Tの後方のガイドウェイ変位測定装置2Eが測定するガイドウェイ変位との差分zf,m(a)-zl,m(a)に基づいて、橋梁Bのたわみを演算する。
【0126】
次に、この発明の第4実施形態に係る橋梁のたわみ測定方法について説明する。
図8に示すたわみ測定方法#100では、図13及び図14に示すガイドウェイ変位測定装置2Dが測定するガイドウェイ変位データと、ガイドウェイ変位測定装置2Eが測定するガイドウェイ変位データとの差分zf,m(a)-zl,m(a)を演算することによって、ガイドウェイ変位データに含まれる橋梁Bのたわみ成分以外のガイドウェイ変位をガイドウェイ変位データから除去して、橋梁Bのたわみを演算する。差分演算工程#110では、列車Tの前方のガイドウェイ変位測定装置2Dが測定するガイドウェイ変位と、列車Tの後方のガイドウェイ変位測定装置2Eが測定するガイドウェイ変位との差分zf,m(a)-zl,m(a)を演算する。たわみ演算工程#120では、列車Tの前方のガイドウェイ変位測定装置2Dが測定するガイドウェイ変位と、列車Tの後方のガイドウェイ変位測定装置2Eが測定するガイドウェイ変位との差分zf,m(a)-zl,m(a)に基づいて、橋梁Bのたわみを演算する。この第4実施形態には、第1実施形態及び第3実施形態と同様の効果がある。
【0127】
(他の実施形態)
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
(1) この実施形態では、橋梁BがPRC桁を備えるコンクリート橋である場合を例に挙げて説明したが、橋梁Bが鋼橋である場合についても、この発明を適用することができる。また、この実施形態では、軌道変位測定装置2A,2Bを台車T1,T2に配置し、ガイドウェイ変位測定装置2D,2Eを超電導磁石Mに配置する場合を例に挙げて説明したが、軌道変位測定装置2A,2B及びガイドウェイ変位測定装置2D,2Eの配置箇所を限定するものではない。例えば、軌道変位測定装置2A,2B及びガイドウェイ変位測定装置2D,2Eを列車Tの編成中央部から前後に等距離離れた位置に配置する場合についても、この発明を適用することができる。さらに、この実施形態では、橋梁Bの桁B1が単純支持桁である場合を例に挙げて説明したが、3個以上の支点によって支えられた連続桁、連続桁に適当なヒンジを挿入したゲルバー橋、又はアーチ橋のような特殊橋梁などについても、この発明を適用することができる。
【0128】
(2) この実施形態では、鉄道橋のたわみを列車Tによって測定する場合を例に挙げて説明したが、トラック又は乗用車などの自動車によって道路橋のたわみを測定する場合についても、この発明を適用することができる。また、この実施形態では、車両V,VF,VM,VLの各車軸の重量が概ね等しいと仮定した場合を例に挙げて説明したが、車両V,VF,VM,VLの各車軸の重量が異なる場合についても、この発明を適用することができる。さらに、この実施形態では、移動体が列車Tである場合を例に挙げて説明したが、自動車などの他の移動体についてもこの発明を適用することができる。例えば、工具又は材料を搭載して軌道R上を走行する台車などのトロ、軌道R及び道路の双方を走行可能な作業要車両である軌陸車などが移動体である場合についても、この発明を適用することができる。
【0129】
(3) この実施形態では、橋梁Bの桁B1の支間中央のたわみを測定する場合を例に挙げて説明したが、桁B1の任意の箇所のたわみを測定する場合についても、この発明を適用することができる。また、この実施形態では、起点から終点まで軌道変位又はガイドウェイ変位を連続して軌道変位測定装置2A~2C又はガイドウェイ変位測定装置2D,2Eが測定する場合を例に挙げて説明したが、橋梁B上の区間内のみで軌道変位又はガイドウェイ変位を軌道変位測定装置2A~2C又はガイドウェイ変位測定装置2D,2Eが測定する場合についても、この発明を適用することができる。
【0130】
(4) この実施形態では、支間長20m~40mの桁B1が適応範囲となる場合を例に挙げて説明したが、適用可能な支間長Lbをこの範囲内に限定するものではない。例えば、ある程度正確に橋梁Bのたわみの最大値を推定できる場合や、カーブフィットによって差分曲線を演算した上で橋梁Bのたわみの最大値を推定できる場合には、測定誤差の影響が大きく低減できるため、支間長15m~70mの桁B1についても、この発明を適用することができる。また、この実施形態では、曲げ剛性の推定値EI^を演算して橋梁Bのたわみの最大値を演算する場合を例に挙げて説明したが、数10及び数11によって演算した差分zm,l(x)-zm,f(x)の直接フィッティングによって橋梁Bのたわみの最大値を演算する場合についても、この発明を適用することができる。同様に、この実施形態では、曲げ剛性の推定値EI^を演算して橋梁Bのたわみの最大値を演算する場合を例に挙げて説明したが、曲げ剛性の推定値EI^を演算せずに橋梁Bのたわみの最大値を一意に演算する場合についても、この発明を適用することができる。
【0131】
(5) この第1実施形態~第3実施形態では、軌道変位測定装置2A~2Cが慣性正矢測定装置である場合を例に挙げて説明したが、慣性正矢測定装置以外の測定装置についても、この発明を適用することができる。また、この第1実施形態~第3実施形態では、速度発電機の出力信号とATS車上子の出力信号とに基づいて列車Tの走行距離を走行距離演算部2fが演算する場合を例に挙げて説明したが、このような検出方法に限定するものではない。例えば、GPS(Global Positioning System(全地球測位システム))又は自律航行装置(ジャイロ)を併用して列車Tの走行距離を演算することもできる。また、この第1実施形態では、荷重P0,P1分のたわみの推定値z^a0(LB/2),z^a1(LB/2)の双方を演算する場合を例に挙げて説明したが、これらのたわみの推定値z^a0(LB/2),z^a1(LB/2)のいずれか一方のみを演算する場合についても、この発明を適用することができる。さらに、この第2実施形態では、軌道変位測定装置2Cを台車T2に配置する場合を例に挙げて説明したが、軌道変位測定装置2Cを台車T1に配置する場合についても、この発明を適用することができる。
【0132】
(6) この第3実施形態では、列車Tが新幹線を走行する新幹線車両である場合を例に挙げて説明したが、在来線を走行する在来線車両、又は新幹線と在来線とを相互に走行可能な新在直通運転用の車両などについても、この発明を適用することができる。また、この第3実施形態では、列車Tが営業列車である場合を例に挙げて説明したが、車両、軌道又は架線を試験及び調査することを目的として組成された検査列車である場合についても、この発明を適用することができる。例えば、地上設備の状態を検測する機能を有する電気軌道総合試験車などの軌道検測車についても、この発明を適用することができる。さらに、この第3実施形態では、複数の車両VF,VM,VLによって組成された列車Tを例に挙げて説明したが、複数のトロ、軌陸車又はトラックなどの自動車を同じ間隔及び速度を維持して走行する場合についても、この発明を適用することができる。
【0133】
(7) この第3実施形態では、軌道変位測定装置2Aを台車T2に配置し、軌道変位測定装置2Bを台車T1に配置する場合を例に挙げて説明したが、軌道変位測定装置2Aを台車T1に配置し、軌道変位測定装置2Bを台車T2に配置する場合についても、この発明を適用することができる。また、この第3実施形態では、鉄道車両を複数連結して荷重間隔Δを固定して橋梁Bのたわみを測定する場合を例に挙げて説明したが、トロ、軌陸車又はトラックなどを複数連結して、橋梁Bの支間長Lbに合わせて荷重間隔Δを可変して橋梁Bのたわみを測定する場合についても、この発明を適用することができる。さらに、この第3実施形態では、車両VF,VL上の測定結果である差分zm,l(a)-zm,f(a)の最大値zc,Mに基づいて支間中央のたわみの最大値zb,Mを演算する場合を例に挙げて説明したが、このような演算方法にこの発明を限定するものではない。例えば、差分曲線のカーブフィットなどにより演算した差分の最大値の推定値z^C,Mに係数Gb(Lb)/GC(Lb)を乗算して、橋梁Bのたわみの最大値の推定値z^b,Mを演算することもできる。
【0134】
(8) この第4実施形態では、車両VFの進行方向後側の超電導磁石Mにガイドウェイ変位測定装置2Dを配置し、車両VLの進行方向前側の超電導磁石Mにガイドウェイ変位測定装置2Eを配置する場合を例に挙げて説明したが、車両VFの進行方向前側の超電導磁石Mにガイドウェイ変位測定装置2Dを配置し、車両VLの進行方向後側の超電導磁石Mにガイドウェイ変位測定装置2Eを配置する場合についても、この発明を適用することができる。さらに、この第4実施形態では、車両VF,VLのガイドウェイ変位測定装置2D,2Eによってガイドウェイ変位を測定する場合を例に挙げて説明したが、ガイドウェイWに沿って走行しながらガイドウェイ変位を測定するガイドウェイ検測車のガイドウェイ変位測定装置2D,2Eの測定結果に基づいて、橋梁Bのたわみを測定する場合についても、この発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0135】
1 たわみ測定システム
2A~2C 軌道変位測定装置(通路変位測定装置)
2D,2E ガイドウェイ変位測定装置(通路変位測定装置)
2a ジャイロ
2b 加速度センサ
2c,2d レーザ変位計
3 通信装置
4 たわみ測定装置
4c 差分演算部
4d たわみ演算部
4f たわみ測定プログラム記憶部
R 軌道(通路)
1,R2 レール
B 橋梁
1
T 列車(移動体)
V 車両
F 車両(先頭車両(前方))
M 車両(中間車両)
L 車両(後尾車両(後方))
1 台車(第一台車)
2 台車(第二台車)
D 測定データ
1~D5 軌道変位データ
6 走行距離データ
u 上り方面(上り方向)
d 下り方面(下り方向)
W ガイドウェイ(通路)
1 走行路
2 側壁
0,P1 荷重
1,…,PN 荷重
a,a-Δ 荷重位置
1,…,aN 荷重位置
m,f(x),zm,l(x) 走行面の変位(軌道変位)
f,m(a) 前方荷重位置変位(軌道変位)
l,m(a) 公報荷重位置変位(軌道変位)
m,l(x)-zm,f(x),zf,m(a)-zl,m(a) 差分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14