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特開2023-99074毛髪化粧料及びそれを用いた毛髪処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023099074
(43)【公開日】2023-07-11
(54)【発明の名称】毛髪化粧料及びそれを用いた毛髪処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/894 20060101AFI20230704BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20230704BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20230704BHJP
   A61K 8/40 20060101ALI20230704BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALN20230704BHJP
【FI】
A61K8/894
A61K8/34
A61Q5/00
A61K8/40
A61Q5/12
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072086
(22)【出願日】2023-04-26
(62)【分割の表示】P 2018206973の分割
【原出願日】2018-11-02
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
2.テトロニック
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 直人
(74)【代理人】
【識別番号】100137512
【弁理士】
【氏名又は名称】奥原 康司
(72)【発明者】
【氏名】倉島 巧
(72)【発明者】
【氏名】鐺 桃香
(57)【要約】      (修正有)
【課題】5質量%以上の水と高級アルコールを含む乳化型基剤において、毛髪に所望形状、なめらかさ及び撥水性を付与し、その効果持続性に優れる毛髪化粧料を提供する。
【解決手段】(A)主鎖にポリシロキサン構造及びポリオキシアルキレン構造を含み、トリアルコキシシラン基又はシラノール基を有する側鎖を持つコポリマー;(B)(b-1)カチオン性界面活性剤の1種又は2種以上を2.0質量%以下含有する界面活性剤;(C)高級アルコール;及び(D)5質量%以上の水を含むことを特徴とする毛髪化粧料及びそれを用いた毛髪処理方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)主鎖にポリシロキサン構造及びポリオキシアルキレン構造を含み、トリアルコキシシラン基又はシラノール基を有する側鎖を持つコポリマー;
(B)(b-1)カチオン性界面活性剤の1種又は2種以上を2.0質量%以下含有する界面活性剤;
(C)高級アルコール;及び
(D)5質量%以上の水
を含むことを特徴とする毛髪化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は毛髪化粧料に関する。より詳しくは、クリーム状の毛髪化粧料であって、毛髪に所望形状、なめらかさ、撥水性等を付与するとともに当該効果を長期間にわたって持続させることができ、なおかつ使用性にも優れた毛髪化粧料及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シャンプーやリンス等の洗髪用化粧料、ヘアスタイリング剤やヘアトリートメント等の毛髪仕上げ用化粧料にはシリコーン等の各種ヘアケア成分が配合されている。これらのヘアケア成分は、毛髪のダメージ部分に吸着して修復し、毛髪を被覆して櫛通りを改善する。
【0003】
しかし、従来の毛髪化粧料にヘアケア成分として配合されていたポリマーでは、使用直後は毛髪の櫛通りなどを修復できても、洗髪によって洗い流され易く、効果を長時間持続させる点あるいは使用感触の点で不十分なものが多かった。
【0004】
特許文献1には、すすぎ時の使用性などに着目し、カチオン性界面活性剤を用いたゲル基剤に高重合アミノシリコーン等を配合することにより、すすぎ時のやわらかさを改善した毛髪化粧料が開示されている。しかし、当該化粧料の使用直後は毛髪のやわらかさが得られるが、翌日以降の洗髪によって効果が低下する傾向があった。
【0005】
特許文献2には、反応性のアルコキシシラン基を有するビニルモノマー、アルキル基等を有する親油性ビニルモノマー、及びアクリル酸系の親水性モノマーをカチオン性乳化剤で乳化重合して得られるカチオン性ポリマーエマルションを配合した毛髪化粧料が開示されている。このカチオン性ポリマーは、アルコキシシラン基が加水分解されてシラノール基となり、脱水縮合反応を経て架橋構造を形成して強固な皮膜を形成するとされている。しかし、このポリマーの主鎖はポリビニル構造のビニルポリマーであって、樹脂感が強く、毛髪が硬くごわついた感触になり使用性が十分ではなかった。
【0006】
特許文献3には、末端にアルコキシ-(アミノメチル)-シリル基を有するシリコーンポリマーを配合した組成物を使用するヘアトリートメント方法が記載されている。ここで使用されるシリコーンポリマーは、毛髪の形状を長く維持するとともに良好な美容的性質を発揮するとされている。しかしながら、このヘアトリートメントに使用する組成物は非水系であって、水の配合量は5%未満に制限されており、5%以上の水が存在すると所望の効果が得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5655127号公報
【特許文献2】特許第4805482号公報
【特許文献3】特表2016-525534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
よって本発明における課題は、5質量%以上の水及び高級アルコールを含む乳化型毛髪化粧料であって、当該化粧料を毛髪に塗布した後に適宜加熱処理をすることによって、ダメージを受けた毛髪の疎水性や櫛通り、なめらかさを回復させることができ、その効果を長期間保持することのできる効果持続性に優れる毛髪化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、主鎖にポリシロキサン構造及びポリオキシアルキレン構造を含み、トリアルコキシシラン基又はシラノール基を有する側鎖を持つコポリマーを用い、それを所定量のカチオン性界面活性剤と組み合わせて配合することで、効果持続性に優れ、高い撥水効果と滑らかな使用性を発揮する毛髪化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(A)主鎖にポリシロキサン構造及びポリオキシアルキレン構造を含み、トリアルコキシシラン基又はシラノール基を有する側鎖を持つコポリマー;
(B)(b-1)カチオン性界面活性剤の1種又は2種以上を2.0質量%以下含有する界面活性剤;
(C)高級アルコール;及び
(D)5質量%以上の水
を含むことを特徴とする毛髪化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る毛髪化粧料は、主鎖にポリシロキサン構造及びポリオキシアルキレン構造を含み、トリアルコキシシラン基又はシラノール基を有する側鎖を持つコポリマーを用い、それを所定量のカチオン性界面活性剤と組み合わせて、水と高級アルコールを含む乳化型の化粧料としたことにより、毛髪表面に疎水性(撥水性)を付与し、速乾性でさらさらした感触にし、毛髪をまとまりやすくし、耐熱性、耐薬品性及び耐汚染物質(花粉など)を向上させるとともに使用性に優れ、これらの効果を長期間持続させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の毛髪化粧料に配合される各成分について詳述する。
(A)主鎖にポリシロキサン構造及びポリオキシアルキレン構造を含み、トリアルコキシシラン基又はシラノール基を有する側鎖を持つコポリマー
本発明の毛髪化粧料に配合されるポリマー成分(A成分)は、ポリマーの主鎖にポリシロキサン構造及びポリオキシアルキレン構造を含み、かつトリアルコキシシラン基又はシラノール基を有する側鎖を持つコポリマー(以下「架橋型シリコーンPOAコポリマー」と略称する)である。
【0013】
前記架橋型シリコーンPOAコポリマーは、主鎖に存在するポリオキシアルキレン構造の親水性に基づいて毛髪への吸着性に優れ、主鎖に存在するポリシロキサン構造が毛髪表面に疎水性(撥水性)を付与し、側鎖に存在するトリアルコキシシラン基又はシラノール基が比較的低温で架橋して皮膜を強固にするため、効果の持続性に優れる。
【0014】
本発明の架橋型シリコーンPOAコポリマーの主鎖を構成するポリシロキサン構造は、ポリジアルキルシロキサン、好ましくはポリジメチルシロキサンからなり、前記アルキル基(好ましくはメチル基)の一部がフェニル基で置換されていてもよい。
【0015】
本発明の架橋型シリコーンPOAコポリマーの主鎖を構成するポリオキシアルキレン構造は、繰り返し単位として、オキシエチレン基(EO)、オキシプロピレン基(PO)、及びオキシブチレン基(BO)からなる群から選択される少なくとも1つを含むものが好ましい。
【0016】
本発明における架橋型シリコーンPOAコポリマーは、有機基からなる側鎖を更に有するのが好ましい。側鎖となる有機基としては、アミノ基、水酸基、カルボキシル基等で任意に置換されていてもよい炭化水素基(好ましくはアルキル基、例えば、炭素数1~30程度の直鎖状または分岐状のアルキル基、あるいはフェニル基など)が例示される。炭化水素基はアミノ基を有するのが好ましく、当該アミノ基の水素原子はアルキル基等で更に置換されていてもよい。
【0017】
本発明の架橋型シリコーンPOAコポリマーは、その主鎖に窒素原子を更に含むのが好ましく、前記の側鎖が当該窒素原子に結合しているのが好ましい。
【0018】
架橋型シリコーンPOAコポリマーの更に具体的な例としては、ポリシリコーン-29(INCI名)が挙げられる。ポリシリコーン-29は、末端にグリシドプロピル基を有するジメチルシロキサン重合体とPEG-13ジグリシジルエーテル、ジエチルアミノプロピルアミン及びアミノプロピルトリイソプロポキシシランとの反応によって得られる複合シリコーン化合物と定義される。
【0019】
本発明における架橋型シリコーンPOAコポリマーとしては市販品を用いてもよい。例えば、Momentive Performance Materials社から「Silsoft CLX-E」という商品名で販売されているヘアコンディショニング剤に含まれるコポリマーが特に好ましく用いられる。このコポリマーは「ポリシリコーン-29」に属する化合物である。当該コポリマーは、主鎖にポリシロキサン構造とポリオキシアルキレン構造と窒素原子を含み、トリアルコキシシラン基を有する側鎖及び有機基からなる側鎖を持ち、ポリシロキサン構造がポリジメチルシロキサン、ポリオキシアルキレン構造がポリオキシエチレン及びポリオキシイソプロピレンを含み、側鎖が主鎖の窒素原子に結合した構造を有する。「Silsoft CLX-E」は、前記コポリマーとジプロピレングリコールと水を含む商品である。
【0020】
本発明の毛髪化粧料における架橋型シリコーンPOAコポリマー(A成分)の配合量は、0.1~5.0質量%の範囲とするのが好ましく、より好ましくは0.3~3.0質量%、さらに好ましくは0.5~2.0質量%である。架橋型シリコーンPOAコポリマーの配合量が0.1質量%未満であると意図した効果が得られず、5.0質量%を超えて配合すると使用性が低下する場合がある。
【0021】
(B)界面活性剤
本発明の毛髪化粧料に配合される界面活性剤(B成分)は、(b-1)カチオン性界面活性剤の1種又は2種以上を含有する。
【0022】
(b-1)カチオン性界面活性剤
本発明に使用するカチオン性界面活性剤としては、化粧料に配合可能なものであれば特に限定されない。中でも、下記一般式(I)で表される第四級アンモニウム塩が好ましい。
【0023】
【化1】
[式中、Rは炭素数6~35の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、炭素数1~3の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、Xはハロゲンイオン又は有機アニオンである。]
【0024】
より具体的には、炭素原子数6~35の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であるRは、例えば、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基、ヘントリアコンチル基、ドトリアコンチル基、トリトリアコンチル基、テトラトリアコンチル基、ペンタトリアコンチル基、ミリストレイル基、パルミトレイル基、オレイル基、リノイル基、リノレイル基、リシノレイル基、イソステアリル基等が挙げられる。R、R及びRは、上述のように、同一又は異なって水素原子又は炭素原子数1~3の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基である。また、Xは、塩素、ヨウ素、臭素等のハロゲンイオン、又は、メトサルフェート、エトサルフェート、メトホスフェート、エトホスフェート等の有機アニオンが挙げられる。
【0025】
本発明において特に好適なカチオン性界面活性剤としては、Rの炭素原子数が22でR、R及びRが共にメチル基でありXが塩素であるベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド(=ベヘントリモニウムクロリド)、Rの炭素原子数が18でR、R及びRが共にメチル基でありXが塩素であるステアリルトリメチルアンモニウムクロライド(=ステアルトリモニウムクロリド)、Rの炭素原子数が16でR、R及びRが共にメチル基でありXが塩素であるセチルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0026】
本発明にかかる毛髪化粧料には、上記カチオン性界面活性剤を1種または2種以上組み合わせて配合することが可能である。
【0027】
本発明の毛髪化粧料における(b-1)カチオン性界面活性剤の配合量は、化粧料全量に対して2.0質量%以下である。配合量が2.0質量%を超えると、なめらかさや撥水性といった性能の持続効果が低下する場合がある。配合量範囲の下限値は特に限定されないが、優位な持続効果を発揮するために0.1質量%以上とするのが好ましい。すなわち、カチオン性界面活性剤の配合量範囲は、0.1~2.0質量%とするのが好ましく、より好ましくは0.2~1.5質量%である。
【0028】
また、本発明の毛髪化粧料においては、前記架橋型シリコーンPOAコポリマー(A成分)のカチオン性界面活性剤(b-1成分)に対する質量比率[(A)/(b-1)]を0.3以上とするのが好ましく、0.4以上とするのが更に好ましい。この比率の上限値は特に限定されないが、通常は20以下、好ましくは10以下である。
【0029】
本発明の毛髪化粧料における界面活性剤(B成分)は、(b-1)カチオン性界面活性剤に加えて、(b-2)非イオン性界面活性剤及び/又は(b-3)両性界面活性剤を含んでもよい。
【0030】
(b-2)非イオン性界面活性剤
本発明の毛髪化粧料に配合される非イオン性界面活性剤は、特に限定されないが、POEアルキルエーテル類、POE・POPアルキルエーテル類、POEグリセリルエーテル脂肪酸エステル類、並びにPOEヒマシ油またはPOE硬化ヒマシ油およびその誘導体の中から選ばれる1種または2種以上が好ましく用いられる。
【0031】
上記POEアルキルエーテル類、POE・POPアルキルエーテル類として、下記式(II)および/または下記式(III)で表される化合物の中から選ばれる1種または2種以上が好ましく用いられる。
【0032】
【化2】
【0033】
【化3】
【0034】
[式(II)及び(III)において、Rは炭素原子数12~24のアルキル基またはアルケニル基を表し、mは5~30の数を表し、nは0~5の数を表す。]
【0035】
POEアルキルエーテル類、POE・POPアルキルエーテル類としては、例えばPOEラウリルエーテル、POEセチルエーテル、POEステアリルエーテル、POEオレイルエーテル、POEベヘニルエーテル、POEデシルテトラデシルエーテル、POEモノブチルエーテル、POE2-デシルテトラデシルエーテル、POE水添ラノリン、POEグリセリンエーテル、POE・POPラウリルエーテル、POE・POPセチルエーテル、POE・POPステアリルエーテル、POE・POPオレイルエーテル、POE・POPベヘニルエーテル、POE・POPデシルテトラデシルエーテル、POE・POPモノブチルエーテル、POE・POP2-デシルテトラデシルエーテル、POE・POP水添ラノリン、POE・POPグリセリンエーテル等が挙げられる。
【0036】
POEグリセリルエーテル脂肪酸エステル類としては、例えばPOEグリセリルエーテルモノステアリン酸エステル、POEグリセリルエーテルモノイソステアリン酸エステル、POEグリセリルエーテルトリイソステリン酸エステル等が挙げられる。
【0037】
POEヒマシ油またはPOE硬化ヒマシ油およびその誘導体としては、例えばPOEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油、POE硬化ヒマシ油モノイソステアレート、POE硬化ヒマシ油トリイソステアレート、POE硬化ヒマシ油モノピログルタミン酸モノイソステアリン酸ジエステル、POE硬化ヒマシ油マレイン酸等が挙げられる。
【0038】
本発明では上記以外の非イオン性界面活性剤も任意に用いることができ、例えば、POEソルビタンモノオレエート、POEソルビタンテトラオレエート等のPOEソルビタン脂肪酸エステル類;POEソルビットモノラウレート、POEソルビットモノオレエート、POEソルビットペンタオレエート、POEソルビットモノステアレート等のPOEソルビット脂肪酸エステル類;POEモノオレエート、ジステアリン酸エチレングリコール等のPOE脂肪酸エステル類;POEオクチルフェニルエーテル、POEノニルフェニルエーテル、POEジノニルフェニルエーテル等のPOEアルキルフェニルエーテル類;プルロニック等のプルロニック類;テトロニック等のテトラPOE・テトラPOPエチレンジアミン縮合物類;POEソルビットミツロウ等のPOEミツロウ・ラノリン誘導体;ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、脂肪酸イソプロパノールアミド等のアルカノールアミド;POEプロピレングリコール脂肪酸エステル、POEアルキルアミン、POE脂肪酸アミド、ショ糖脂肪酸エステル、POEノニルフェニルホルムアルデヒド縮合物、アルキルエトキシジメチルアミンオキシド、トリオレイルリン酸などが挙げられる。
【0039】
本発明においては、特に限定されないが、HLBが10~15の非イオン性界面活性剤が好ましく用いられる。2種以上の非イオン性界面活性剤を配合する場合は、配合される全非イオン性界面活性剤のHLBを配合量に応じて加重平均した値が10~15となるようにするのが好ましく、より好ましくは11~14、特に好ましくは12~13とする。
【0040】
(b-3)両性界面活性剤
本発明で使用する両性界面活性剤は特に限定されないが、例えば以下に示すものが好ましい例として挙げられる。
【0041】
下記式(IV)で表されるアミドベタイン型両性界面活性剤。市販品として「レボン2000」(三洋化成(株)製)、「アノンB DF」(日本油脂(株)製)などが入手可能である。
【化4】
【0042】
下記式(V)で表されるアミドスルホベタイン型両性界面活性剤。市販品として「ロンザイン-CS」(ロンザ社製)、「ミラタインCBS」(ミラノール社製)、「ソフダゾリンLHL-SF」(旭化成ケミカルズ(株)製)などが挙げられる。
【化5】
【0043】
下記式(VI)で表されるベタイン型両性界面活性剤。市販品として「アノンBL」(日本油脂(株)製)、「デハイントンAB-30」(ヘンケル社製)などが挙げられる。
【化6】
【0044】
下記式(VII)で表されるスルホベタイン型両性界面活性剤。市販品として「ロンザイン12CS」(ロンザ社製)などが挙げられる。
【化7】
【0045】
下記式(VIII)で表されるイミダゾリニウム型両性界面活性剤。市販品として「オバゾリン662-N」(東邦化学(株)製)、「アノンGLM」(日本油脂(株)製)などが挙げられる。
【化8】
【0046】
上記式(IV)~(VIII)において、Rは平均炭素原子数9~21のアルキル基またはアルケニル基であり、好ましくは平均炭素原子数11~17のアルキル基またはアルケニル基、より好ましくは平均炭素原子数11~13のアルキル基またはアルケニル基である。Rは平均炭素原子数10~18のアルキル基またはアルケニル基を表す。pは2~4の整数、qは0~3の整数、sは1または2の整数を表す。
【0047】
本発明で好ましく用いられる両性界面活性剤としては、例えば、アルキル(C12,14)オキシヒドロキシプロピルアルギニンHCl(INCI名)、市販品としてアミセーフ(登録商標)LMA-60(味の素株式会社製)等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0048】
発明の毛髪化粧料における非イオン性界面活性剤(b-2成分)または両性界面活性剤(b-3成分)を配合する場合の配合量は、特に限定されないが、通常は、0.1~3.0質量%であり、より好ましくは0.3~1.5質量%である。
【0049】
本発明の毛髪化粧料では、(B)界面活性剤としてアニオン性界面活性剤のみを用いると所望の効果が得られない場合がある。従って、本発明の毛髪化粧料においては、アニオン性界面活性剤を単独で配合することは避けるのが好ましく、他のカチオン性、非イオン性又は両性界面活性剤と組み合わせて配合する場合でも、その配合量は本発明の効果を阻害しない範囲とするのが好ましい。
【0050】
(C)高級アルコール
本発明に配合される高級アルコール(C成分)は、化粧品や医薬品等に通常使用されるものを用いることができる。例えば、直鎖アルコール(例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール、硬化ナタネ油アルコール等);分岐鎖アルコール(例えば、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、2-デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等)等が挙げられる。
【0051】
本発明においては、炭素数14~22の直鎖アルコールの使用が好ましく、特にステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール等の炭素数16~22の直鎖アルコールを好適に用いることができる。
【0052】
本発明にかかる毛髪化粧料には、高級アルコールを単独または2種以上組み合わせて配合することが可能である。本発明の毛髪化粧料における(C)高級アルコールの配合量は、0.1~20質量%の範囲で配合することができ、より好ましくは1.0~10質量%である。配合量が0.1質量%に満たないと、すすぎ時の感触が悪くなる傾向がある。
【0053】
本発明の毛髪化粧料においては、前記(C)高級アルコールの前記(b-1)カチオン性界面活性剤に対する比率[(C)/(b-1)]を、モル比率で3.0以上、若しくは配合量比率で2.0以上とするのが好ましい。このような比率に調整することにより特に使用性および効果持続性に優れた毛髪化粧料となる。
【0054】
(D)水
本発明の毛髪化粧料は、前記(A)~(C)成分を配合した乳化物の形態とするのが好ましい。乳化物は、油中水型、水中油型、あるいは多重乳化型であってもよく、従って、本発明の毛髪化粧料は水(D成分)を必須成分として含有する。
本発明の毛髪化粧料に配合される水は、特に限定されないが、化粧料の5質量%以上とするのが好ましく、通常は50~90質量%程度である。
【0055】
本発明の毛髪化粧料には、前記の必須成分(A)~(D)に加えて、通常化粧品や医薬品等に用いられる他の成分を、本発明の効果を損なわない範囲内で任意に添加することができる。このような成分として、例えば油分、粉末成分、天然高分子、合成高分子、増粘剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料等が挙げられる。本発明の毛髪化粧料のpHは、好ましくは4~8、より好ましくは5~7に調整する。
【0056】
本発明の毛髪化粧料は、乳化化粧料に従来から汎用されている製造方法を用いて製造することができ、クリーム、乳液、ジェル等の形態で提供するのに適している。
【0057】
本発明の毛髪化粧料は、毛髪に塗布して洗い流す「リンスオフ」タイプの化粧料としても、毛髪に塗布してから洗い流さない「リーブオン」タイプの化粧料としても使用できる。
即ち、本発明は、本発明の毛髪化粧料の適量を毛髪に塗布して、任意に洗い流し、次いで毛髪を加熱処理することを含む毛髪処理方法を提供する。本発明の毛髪処理方法を実施することにより、持続効果に優れたヘアスタイリング及びヘアトリートメントを施すことができる。
【0058】
加熱処理温度は、40℃以上230℃以下、好ましくは、60℃以上180℃以下、さらに好ましくは80℃以上150℃以下である。40℃未満では効果の持続効果が不十分になる。230℃を超えると、熱によって毛髪を傷めてしまう場合がある。
【実施例0059】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明は実施例により限定されるものではない。なお、配合量は特記しない限り質量%で示す。
【0060】
まず、下記の表1及び表2に示す処方で各例の毛髪化粧料を常法にて調製した。
次いで、各例の毛髪化粧料(0.3g)を、15cm(0.5g)のダメージ毛髪ストランドに塗布し、水で洗い流した後、ヘアアイロンを用いて150℃で加熱処理した。
各例の毛髪化粧料で前記処理をした毛髪ストランドについて、なめらかさ及び撥水性(接触角)を下記の方法/基準で評価した。
さらに、各毛髪ストランドを、コンディショニング成分無配合の10%SLES溶液シャンプーを用いて5回洗浄した後、なめらかさ及び撥水性(接触角)を再度測定した。
【0061】
評価方法及び評価基準
<なめらかさ>
各例の毛髪化粧料で処理した毛髪ストランドを、訓練した研究員が手で触り、下記の評価基準で判定した。
(評価基準)
A:毛髪にごわつきやべたつきがなく、非常になめらかな手触りである。
B:毛髪にごわつきやべたつきがなく、なめらかな手触りである。
C:毛髪にややごわつきやべたつきがあるが、なめらかな手触りである。
D:毛髪にごわつきやべたつきがあり、なめらかな手触りでない。
【0062】
<撥水性(接触角)>
毛髪ストランドの表面に2μlの水を滴下し、水滴をマイクロスコープで撮影した。撮影した画像から、毛髪上の水滴の左右の角度を測定し、それらの平均値を1回の測定値とした。同じ測定を3回繰り返し、その平均値を接触角の値とした。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
表1に示すように、(A)架橋型シリコーンPOAコポリマー、(b-1)2質量%以下のカチオン性界面活性剤を組み合わせて、(C)高級アルコール及び(D)水を含むクリーム状化粧料に配合した実施例1~4の毛髪化粧料では、シャンプーで5回洗浄した後でも、なめらかさ、接触角(撥水性)が良好に維持されていた。
【0066】
一方、表2に示した結果では、(b-1)カチオン性界面活性剤を2質量%を超えて(2.4質量%)配合した比較例1は、加熱処理直後ではなめらかさ及び撥水性が良好であったが、洗浄5回後には低下が見られた。(B)界面活性剤としてアニオン性界面活性剤のみを配合した比較例2では、処理直後から十分な特性が得られず、洗浄5回後には未処理の毛髪(比較例4)と同等であった。また、(A)架橋型シリコーンPOAコポリマーの代わりに従来から毛髪化粧料に汎用されているアミノ変性シリコーン等を配合した比較例3は、5回洗浄後になめらかさ及び撥水性が著しく低下した。
【0067】
前記実施例1の毛髪化粧料を使用し、毛髪化粧料を塗布した後の洗い流しの有無、洗い流さない場合の加熱温度/加熱手段の相違による特性変化を試験した。結果を表3に示す。
【0068】
【表3】
【0069】
毛髪化粧料の塗布後の洗い流し工程の有無は、加熱処理後の毛髪特性に大きな影響を与えなかった(試験例1及び2)。また、加熱温度を80℃から150℃の間で変化させ、加熱手段を変えても、同等の持続効果が得られた(試験例2~4)。しかしながら、室温(約25℃)で処理した試験例5では、5回洗浄後の特性低下が著しく、持続効果が劣ることが確認された。
【0070】
本発明は以下の態様を含む。
[第1項](A)主鎖にポリシロキサン構造及びポリオキシアルキレン構造を含み、トリアルコキシシラン基又はシラノール基を有する側鎖を持つコポリマー;
(B)(b-1)カチオン性界面活性剤の1種又は2種以上を2.0質量%以下含有する界面活性剤;
(C)高級アルコール;及び
(D)5質量%以上の水
を含むことを特徴とする毛髪化粧料。
[第2項](A)主鎖にポリシロキサン構造及びポリオキシアルキレン構造を含み、トリアルコキシシラン基又はシラノール基を有する側鎖を持つコポリマーと(b-1)カチオン性界面活性剤の質量比率[(A)/(b-1)]が0.3以上である、第1項に記載の毛髪化粧料。
[第3項](C)高級アルコールと(b-1)カチオン性界面活性剤との比率[(C)/(b-1)]が、質量比率で2.0以上若しくはモル比率で3.0以上である、第1項又は第2項に記載の毛髪化粧料。
[第4項](A)主鎖にポリシロキサン構造及びポリオキシアルキレン構造を含み、トリアルコキシシラン基又はシラノール基を有する側鎖を持つコポリマーを構成するポリシロキサン構造がポリジメチルシロキサンからなり、前記メチル基の一部がフェニル基で置換されていてもよいものである、第1項から第3項のいずれか一項に記載の毛髪化粧料。
[第5項](A)主鎖にポリシロキサン構造及びポリオキシアルキレン構造を含み、トリアルコキシシラン基又はシラノール基を有する側鎖を持つコポリマーを構成するポリオキシアルキレン構造が、繰り返し単位として、オキシエチレン基(EO)、オキシプロピレン基(PO)、及びオキシブチレン基(BO)からなる群から選択される少なくとも1つを含むものである、第1項から第4項のいずれか一項に記載の毛髪化粧料。
[第6項](A)主鎖にポリシロキサン構造及びポリオキシアルキレン構造を含み、トリアルコキシシラン基又はシラノール基を有する側鎖を持つコポリマーが、アミノ基を有する有機基からなる側鎖を更に有する、第1項から第5項のいずれか一項に記載の毛髪化粧料。
[第7項](B)界面活性剤が、(b-1)カチオン性界面活性剤に加えて、(b-2)非イオン性界面活性剤及び(b-3)両性界面活性剤から選択される少なくとも1種を更に含有する、第1項から第6項のいずれか一項に記載の毛髪化粧料。
[第8項]前記毛髪化粧料がクリーム状である第1項から第7項のいずれか一項に記載の毛髪化粧料。
[第9項]第1項から第8項のいずれか一項に記載の毛髪化粧料を毛髪に塗布し、40℃以上230℃以下で加熱処理を行うことを含む、毛髪処理方法。