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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023099092
(43)【公開日】2023-07-11
(54)【発明の名称】カーゴ積載細胞外小胞
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/078 20100101AFI20230704BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230704BHJP
   A61K 35/18 20150101ALI20230704BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230704BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230704BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230704BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230704BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20230704BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230704BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20230704BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20230704BHJP
   C12N 15/87 20060101ALN20230704BHJP
   C12N 9/16 20060101ALN20230704BHJP
   C12N 15/63 20060101ALN20230704BHJP
【FI】
C12N5/078 ZNA
C12N5/10
A61K35/18
A61P35/00
A61P29/00
A61P37/02
A61P9/00
A61P1/00
A61P35/02
C12N15/113 Z
C12N15/09 110
C12N15/87 Z
C12N9/16 Z
C12N15/63 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023073005
(22)【出願日】2023-04-27
(62)【分割の表示】P 2021541011の分割
【原出願日】2018-12-06
(31)【優先権主張番号】62/734,303
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 発行者名/ネイチャー・リサーチ(Nature Research) 刊行物名/ネイチャー・コミュニケーションズ(NATURE COMMUNICATIONS)、2018年、9:2359 発行日/ 平成30(2018)年6月15日 にて発表
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521116532
【氏名又は名称】シティー・ユニバーシティー・オブ・ホンコン
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100188374
【弁理士】
【氏名又は名称】一宮 維幸
(72)【発明者】
【氏名】シー,ジアハイ
(72)【発明者】
【氏名】ル,ティ・グエット・ミン
(72)【発明者】
【氏名】ワカス,ムハンマド
(57)【要約】      (修正有)
【課題】治療又は診断目的のための安定な細胞外小胞を提供する。
【解決手段】赤血球に由来する細胞外小胞、特に、排他的ではないが、カーゴを含有する赤血球に由来する細胞外小胞に関する。カーゴは、小分子、タンパク質、核酸又はCRISPR-Cas9遺伝子編集システムの成分を含み得る。赤血球に由来する細胞外小胞は、医学的障害、例えば遺伝的障害、炎症性疾患、がん、自己免疫障害、心血管疾患又は胃腸疾患の処置において使用され得る。電気穿孔によって赤血球に由来する細胞外小胞へとカーゴを積載する方法も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤血球に由来し、外因性カーゴを含有する、細胞外小胞。
【請求項2】
カーゴが、核酸、ペプチド、タンパク質又は小分子である、請求項1に記載の細胞外小胞。
【請求項3】
カーゴが、アンチセンスオリゴヌクレオチド、メッセンジャーRNA、長鎖RNA、siRNA、miRNA、gRNA又はプラスミドからなる群から選択される核酸である、請求項1又は請求項2に記載の細胞外小胞。
【請求項4】
核酸が、1つ又は複数の修飾、天然には生じないエレメント又は天然には生じない核酸を含む、請求項3に記載の細胞外小胞。
【請求項5】
1つ又は複数の修飾、天然には生じないエレメント又は天然には生じない核酸が、2’-O-メチル類似体、3’ホスホロチオエートヌクレオチド間連結又は他のロックド核酸(LNA)、ARCAキャップ、化学修飾核酸又はヌクレオチド、又はキャッピング等の3’若しくは5’修飾から選択される、請求項4に記載の細胞外小胞。
【請求項6】
天然には生じないヌクレオチドが、2’位の糖修飾、2’-O-メチル化、2’-フルオロ修飾、2’NH修飾、5位のピリミジン修飾、8位のプリン修飾、環外アミンにおける修飾、4-チオウリジンの置換、5-ブロモの置換、又は5-ヨード-ウラシル、又は骨格修飾から選択される、請求項5に記載の細胞外小胞。
【請求項7】
カーゴが、CRISPR/Cas9遺伝子編集システムの1つ又は複数の成分を含む、請求項1に記載の細胞外小胞。
【請求項8】
カーゴが、ヌクレアーゼ、又はヌクレアーゼをコードするmRNA若しくはプラスミドである、請求項7に記載の細胞外小胞。
【請求項9】
カーゴが、gRNAを含む、請求項7に記載の細胞外小胞。
【請求項10】
アンチセンス核酸を含む、請求項1に記載の細胞外小胞。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の1つ又は複数の細胞外小胞を含む組成物。
【請求項12】
処置の方法での使用のための、請求項1~11のいずれか一項に記載の細胞外小胞又は組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の細胞外小胞を、処置を必要とする患者に投与するステップを含む、処置の方法。
【請求項14】
疾患又は障害の処置のための医薬の製造における、請求項1~11のいずれか一項に記載の細胞外小胞又は組成物の使用。
【請求項15】
疾患又は障害の処置のための医薬の製造における、請求項1~11のいずれか一項に記載の細胞外小胞又は組成物の使用。
【請求項16】
処置の方法が、請求項1~9のいずれか一項に記載の細胞外小胞又は組成物の、遺伝的障害、炎症性疾患、がん、自己免疫障害、心血管疾患又は胃腸疾患を有する対象への投与
を含む、請求項10~12のいずれか一項に記載の使用のための細胞外小胞又は組成物、処置の方法又は使用。
【請求項17】
対象ががんを有し、がんが任意選択で白血病、リンパ腫、骨髄腫、乳がん、肺がん、肝臓がん、結腸直腸がん、上咽頭がん、腎臓がん又は神経膠腫から選択される、請求項13に記載の使用のための細胞外小胞又は組成物、処置の方法又は使用。
【請求項18】
a.赤血球の試料を提供すること、ここで前記試料は白血球を含まない;
b.赤血球の試料を小胞誘導剤と接触させること;
c.赤血球から細胞外小胞を分離すること;及び
d.細胞外小胞を回収すること;
e.任意選択で、外因性カーゴの存在下で細胞外小胞を電気穿孔すること
を含む、方法。
【請求項19】
外因性カーゴの存在下で赤血球に由来する細胞外小胞を電気穿孔することを含む、方法。
【請求項20】
請求項18又は請求項10に記載の方法によって得られた細胞外小胞を含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、全ての目的のために、その内容及び要素が参照により本明細書に組み込まれる、2018年9月21日に出願された米国特許仮出願第62/734303号の優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、細胞外小胞、特に、排他的ではないが、カーゴを含有する細胞外小胞に関する。
【背景技術】
【0003】
低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、メッセンジャーRNA(mRNA)、長鎖非コードRNA及びCRISPR-Cas9ゲノム編集ガイドRNA(gRNA)を含むRNA治療は、高い特異性及び柔軟性で病的なヒトゲノムを標的とするプログラム可能な治療のための新興の治療法である。ウイルス(例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス)、脂質トランスフェクション試薬、及び脂質ナノ粒子を含む、RNA薬送達のための一般的な媒体は、通常、免疫原性及び/又は細胞傷害性である。したがって、白血病細胞及び固形腫瘍細胞を含む、ほとんどの一次組織及びがん細胞にRNA薬を送達するための安全で有効な戦略は、依然として捉えにくいままである。
【0004】
細胞外小胞(EV)は、患者にRNAを送達するために適用されてきた。EVは、細胞間コミュニケーションのために体内の全ての型の細胞によって分泌される。EVは、多胞体に由来する小胞(10~100nm)であるエキソソーム、生細胞の細胞膜に由来するマイクロベシクル(100~1000nm)、及びアポトーシス細胞の細胞膜に由来するアポトーシス小体(500~5000nm)からなる。EVベースの薬物送達方法が望まれるが、EV産生には限界がある。高純度及び均質なEVを産生するため、厳密な精製方法、例えば、スクロース密度勾配超遠心分離又はサイズ排除クロマトグラフィーが必要であるが、それらは時間がかかり、スケーラブルではない。さらに、収率が非常に低いため、十分なEVを得るために10億個の細胞が必要であり、そのような数の初代細胞は通常入手できない。初代細胞の不死化は、RNA薬と一緒に発癌性DNA及びレトロトランスポゾンエレメントを移行させるリスクがある。実際、全ての有核細胞は、ある程度の遺伝子水平伝播のリスクを示し、それは、どの細胞がすでに危険なDNAを持ち、どれが持たないかを先験的に予測できないためである。したがって、有害事象を減らして患者へ核酸物質を送達するための有効な手法の必要性が残っている。
【0005】
さらに、EVベースの治療をより特異的にするため、レトロウイルス又はレンチウイルスを使用してトランスフェクト又は形質導入されるプラスミドからドナー細胞においてペプチド又は抗体を発現させ、続いて抗生物質ベース又は蛍光ベースの選択により、EVを操作し、特定の標的細胞に特異的に結合するペプチド又は抗体を持たせることができる。これらの方法は、高発現されたプラスミドがEVに組み込まれ、最終的に標的細胞へと移行されやすいため、遺伝子水平伝播の高いリスクを提起する。プラスミドの遺伝子エレメントは、発癌をもたらし得る。安定な細胞株にEVを産生させる場合、変異DNA、RNA及びタンパク質を含む豊富な発癌性因子がEVに詰め込まれ、腫瘍発生のリスクを標的細胞に送達する。一方、リボソームの欠如により、赤血球ではプラスミドが転写できないため、遺伝子操作方法は赤血球に適用できない。それは、トランスフェクト又は形質導入が難しい幹細胞及び初代細胞にも適用できない。
【0006】
近年、EVの表面のホスファチジルセリン(PS)に結合するラクトアドへリンのC1C2ドメインに融合した抗体によってEVをコーティングする新しい方法がある。この方法は、いかなる遺伝的改変もなく、抗体とのEVのコンジュゲーションを可能にする。しかしながら、C1C2は、疎水性タンパク質であり、したがって、哺乳動物細胞では面倒な精製方法及びウシ血清アルブミンを含有する緩衝液中での保存を必要とする。さらに、C1C2融合抗体とのEVのコンジュゲーションは、一時的なC1C2とPSの間の親和性結合に基づく。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、治療又は診断目的のための安定なEVの強い必要性が残っている。本発明は、上記の検討に照らして考案された。
【課題を解決するための手段】
【0008】
細胞外小胞(EV)は、それらの天然の生物的適合性、高い送達効率、低い毒性、及び低い免疫原性特性により、新興の薬物送達媒体である。EVは、通常、それらのドナー細胞の遺伝的改変によって操作されるが、遺伝子操作方法は初代細胞では非効率的であり、最終的に臨床適用に安全ではない遺伝子水平伝播のリスクを示す。小分子、タンパク質及び核酸を含む薬物のEV媒介送達は、ほとんどのin vivoでの送達のハードルを克服するEVの天然の生物的適合性のため、魅力的なプラットフォームである。EVは、通常、非毒性であり、非免疫原性である。それらは多くの細胞型によって容易に取り込まれるが、それらが細網内皮系のマクロファージ及び単球による食作用を避けるのに役立つCD47などのいくつかの抗食作用マーカーを持つ。さらに、EVは、内皮結合を通って、及び血液脳関門を横切ってさえも血管外遊出することができ、したがって、それらは非常に多才な薬物担体である。3 臨床的価値のうち、EVによる送達は、腫瘍細胞が多くの化学化合物を除外するために使用することが多いP-糖タンパク質の過剰発現によって生じる多剤耐性メカニズムによって妨害されない。
【0009】
したがって、この開示は、カーゴを含有する修飾された細胞外小胞並びにそのような積載細胞外小胞を作製及び使用する方法に関する。
最も一般的には、本開示は、本明細書では「積載細胞外小胞」と呼ばれるカーゴを含有する細胞外小胞を提供する。カーゴは、好ましくは外因性物質であり、それは天然では細胞外小胞に生じないが、細胞外小胞に導入されていることを意味する。
【0010】
本開示は、特に赤血球に由来する細胞外小胞に関する。そのような小胞は、それらが赤血球の特徴、例えば色素沈着若しくはヘモグロビンの存在、又は赤血球の表面マーカー特徴、例えばCD235aを維持するため、他の細胞に由来する細胞外小胞とは異なる。小胞を囲む膜は、1つ又は複数の赤血球表面マーカー、例えばCD235aの存在によって特徴付けられ得る。
【0011】
カーゴは、核酸、ペプチド、タンパク質又は小分子であり得る。例えば、カーゴは、アンチセンスオリゴヌクレオチド、メッセンジャーRNA、長鎖RNA、siRNA、miRNA、gRNA又はプラスミドからなる群から選択される核酸であり得る。いくつかの場合では、核酸は1つ又は複数の修飾、天然には生じないエレメント又は天然には生じない核酸を含む。1つ又は複数の修飾、天然には生じないエレメント又は天然には生じない核酸は、2’-O-メチル類似体、3’ホスホロチオエートヌクレオチド間連結又は他のロックド核酸(LNA)、ARCAキャップ、化学修飾核酸若しくはヌクレオチド、又はキャッピング等の3’若しくは5’修飾から選択され得る。天然には生じないヌクレオチドは、2’位の糖修飾、2’-O-メチル化、2’-フルオロ修飾、2’NH修飾、5位のピリミジン修飾、8位のプリン修飾、環外アミンにおける修飾、4-チオウリジンの
置換、5-ブロモの置換、又は5-ヨード-ウラシル、又は骨格修飾から選択され得る。
【0012】
特に好ましい態様では、カーゴは、遺伝子編集システム、例えばCRISPR/Cas9遺伝子編集システムの1つ又は複数の成分を含む。カーゴは、ヌクレアーゼ、又はヌクレアーゼをコードするmRNA若しくはプラスミドであり得る。カーゴは、gRNAを含み得る。
【0013】
他の好ましい態様では、カーゴは、アンチセンス核酸又はオリゴヌクレオチドを含む。カーゴは、標的細胞又は目的の細胞における核酸と相補的な配列を含み得る。例えば、miRNA又はmRNA。いくつかの実施形態では、核酸は、発癌性miRNA、例えばmiR125bと相補的である。
【0014】
本明細書では、カーゴを積載した1つ又は複数の細胞外小胞を含む組成物も開示する。いくつかの組成物では、積載細胞外小胞は、同じカーゴを積載される。他の組成物では、積載細胞外小胞は、2つ以上のカーゴ分子を積載される。各細胞外小胞は、1つより多くの異なるカーゴを含有し得る。いくつかの場合では、組成物中の細胞外小胞の一部の割合は1つのカーゴを含有し、組成物中の細胞外小胞の別の割合は異なるカーゴを含有する。いくつかの場合では、その割合は重複し、組成物中のいくつかの細胞外小胞は、少なくとも2つの異なるカーゴ分子を積載される。好ましくは、組成物中の細胞外小胞の少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は実質的に全てがカーゴを封入する。
【0015】
組成物は、処置の方法、特に医学的処置の方法において有用であり得る。方法は、処置を必要とする個体への組成物の投与を含み得る。
疾患又は障害の処置の医薬の製造における細胞外小胞又は細胞外小胞を含む組成物の使用も記載する。
【0016】
本明細書に記載の細胞外小胞は、遺伝的障害、炎症性疾患、がん、自己免疫障害、心血管疾患又は胃腸疾患を有する対象の処置に有用である。がんは、白血病、リンパ腫、骨髄腫、乳がん、肺がん、肝臓がん、結腸直腸がん、上咽頭がん、腎臓がん又は神経膠腫であり得る。
【0017】
赤血球の試料を提供又は取得すること、ここで前記試料は白血球を含まない;赤血球の試料を小胞誘導剤と接触させること;赤血球から細胞外小胞を分離すること;及び細胞外小胞を回収することを含む方法も記載する。本方法は、外因性カーゴの存在下で細胞外小胞を電気穿孔するステップを含み得る。そのようなステップは、細胞外小胞がカーゴを封入するか又は取り込むことを誘導し得る。本方法は、全血液試料、又は赤血球を含有する試料を処置し、白血球又は血小板などの赤血球ではない細胞を試料から除去するステップを含み得る。例えば、遠心分離及び/又は濾過による。
【0018】
別の方法は、外因性カーゴの存在下で赤血球に由来する細胞外小胞を電気穿孔するステップを含む。この方法で、細胞外小胞は、カーゴを封入するか又は取り込むことを誘導され得る。
【0019】
本開示は、本明細書に開示する方法によって得られた細胞外小胞及び積載細胞外小胞も企図する。そのような細胞外小胞は治療用途に好適である。
好ましい態様では、カーゴは、細胞外小胞が形成された後、細胞外小胞に積載される。好ましくは、カーゴは、その小胞の形成中には細胞外小胞へと積載されない。カーゴは、そこから細胞外小胞が形成された細胞に存在することができない。
【0020】
本明細書では、医薬に使用される細胞外小胞及び細胞外小胞を含有する組成物も開示する。そのような組成物及び細胞外小胞は、処置を必要とする対象に有効量で投与され得る。対象は、遺伝的障害、炎症性疾患、がん、自己免疫障害、心血管疾患又は胃腸疾患の処置を必要とし得る又はこれらの疾患を有し得る。がんは、任意選択で、白血病、リンパ腫、骨髄腫、乳がん、肺がん、肝臓がん、結腸直腸がん、上咽頭がん、腎臓がん又は神経膠芽腫から選択される。
【0021】
さらなる態様では、がん細胞を本発明による細胞外小胞又は組成物と接触させるステップを含む、がん細胞の成長又は増殖を阻害する方法を提供する。本明細書では、細胞を細胞外小胞と接触させるステップを含むin vitroでの方法も開示する。
【0022】
本明細書では、積載細胞外小胞を産生する方法、並びにそのような方法によって得られた細胞外小胞も開示する。最も一般的に、そのような方法は、細胞外小胞をカーゴと接触させるステップ及び電気穿孔し、カーゴを細胞外小胞で封入するステップを含む。積載細胞外小胞を産生する方法は、細胞外小胞を精製するステップ、単離するステップ又は洗浄するステップをさらに含み得る。細胞外小胞を精製するステップ、単離するステップ又は洗浄するステップは、細胞外小胞の分画遠心法を含み得る。分画遠心法は、スクロース勾配、又は凍結スクロースクッションでの遠心分離を含み得る。
【0023】
本明細書に開示する方法は、細胞を積載RBC-EVと接触させるステップを含み、該方法は、接触細胞の少なくとも60%が積荷でトランスフェクトされることをもたらす。
別の態様では、本明細書は、治療用途に好適な細胞外小胞を調製する方法であって、赤血球から細胞外小胞を単離するステップを含む方法を開示する。
【0024】
本発明は、そのような組合せがはっきりと容認できない又は明確に避けられる以外では記載される態様と好ましい特徴の組合せを含む。
本発明の一態様では、標的細胞へのRNA送達の方法であって、a)赤血球(RBC)から細胞外小胞(EV)を精製するステップ;b)RNAをEVに電気穿孔し、RNA積載EVを形成するステップ;及びc)RNA積載EVを標的細胞に適用するステップを含む方法を提供する。
【0025】
RBCからのEV(マイクロベシクル及びエキソソームを含む)を使用する利点は、RBCが最も豊富にある血液細胞であり、それ故に大量のEVがいずれの血液バンクでも入手可能なRBCユニットから取得及び精製することができることである。好ましくは、RBCはヒトに由来する。それらは、合成トランスフェクション試薬とは異なり、非毒性でもある。RBC EVは、通常がん細胞又は幹細胞からのEVに豊富である発癌性DNA/RNA又は増殖因子を含有せず、それ故にRBC EVはレシピエント細胞にいずれの形質転換リスクも示さない。
【0026】
一実施形態では、RBCは哺乳動物、好ましくはヒトに由来し、イオノフォア、特にカルシウムイオノフォアで処置される。EVは、スクロースクッションの超遠心分離を使用して精製される。用語「スクロースクッション」は、遠心分離中にそれ自体で確立するスクロース勾配を指す。
【0027】
一実施形態では、スクロース勾配は、約40%~約70%、約50%~約60%、又は約60%のスクロースの溶液を使用することによって調製される。別の実施形態では、電気穿孔したEVは、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、mRNA及びプラスミドを含む。好ましくは、ASOは、配列番号1を含む、又は配列番号1からなる。
【0028】
さらなる実施形態では、標的細胞は、がん細胞を含む、又はがん細胞である。別の実施
形態では、標的細胞は、白血病細胞、特に急性骨髄性白血病(AML)細胞、乳がん細胞、又はAML細胞と乳がん細胞の組合せを含む。
【0029】
別の実施形態では、EVは、上記のように標的細胞におけるmiR-125bのノックダウンのためのmiR-125bをアンタゴナイズするASOを電気穿孔した。好ましくは、miR-125bをアンタゴナイズするASOは、配列番号1を含む、又は配列番号1からなる。
【0030】
別の実施形態では、標的細胞の増殖が抑制される。
さらなる実施形態では、EVは、小さい化学物質、例えばデキストランを電気穿孔される。別の実施形態では、方法は、アポトーシス関連遺伝子発現を調節し、それにより標的細胞においてアポトーシスを誘導するRNA積載EVを標的細胞に投与するステップを含む。本発明の第二の態様では、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を標的細胞に送達し、遺伝子発現を抑制する方法であって、a)赤血球(RBC)から細胞外小胞(EV)を精製するステップ;b)RNAをEVに電気穿孔し、RNA積載EVを形成するステップ;及びc)RNA積載EVを標的細胞に適用するステップを含む方法を提供する。
【0031】
一実施形態では、上記のように、RBCは哺乳動物、好ましくはヒトに由来し、イオノフォア、特にカルシウムイオノフォアで処置される。一実施形態では、RNAは、miR-125bをアンタゴナイズするASOであり、標的細胞における発癌性miR-125bを阻害する。好ましくは、miR-125bをアンタゴナイズするASOは、配列番号1を含む、又は配列番号1からなる。
【0032】
別の実施形態では、標的細胞は、がん細胞を含む、又はがん細胞である。別の実施形態では、標的細胞は、白血病細胞、特にAML細胞、乳がん細胞、又はAML細胞と乳がん細胞の組合せを含む。
【0033】
本発明の第3の態様では、CRISPRゲノム編集システムのための標的細胞へのRNA送達の方法であって、a)RBCが好ましくはヒトに由来し、イオノフォア、特にカルシウムイオノフォアで処置される、赤血球(RBC)からの細胞外小胞(EV)を精製するステップ;b)Cas9 mRNA及び/又はgRNAであり得るRNAをEVに電気穿孔し、RNA積載EVを形成するステップ;及びc)RNA積載EVを標的細胞に適用するステップを含む方法を提供する。CRISPRは、研究及び医薬における広範な適用のためのゲノムDNAの強く正確な修飾を可能にする方法である。システムは、直接ゲノムDNAを標的化するように設計され得る。
【0034】
一実施形態では、EVに、Cas9 mRNA及びgRNAを電気穿孔する。好ましくは、Cas9 mRNAは、配列番号2を含む、又は配列番号2からなる。さらに、gRNAは、配列番号3を含む、又は配列番号3からなるeGFP gRNAである。
【0035】
別の実施形態では、EVに、Cas9及びgRNAプラスミドを電気穿孔する。別の実施形態では、標的細胞は、がん細胞を含む、又はがん細胞である。
さらなる実施形態では、標的細胞は、白血病細胞を含む、又は白血病細胞である。特定の実施形態では、標的細胞は、白血病細胞、特にAML細胞、乳がん細胞、又はAML細胞と乳がん細胞の組合せを含む。本発明の第4の態様では、標的細胞へのRNAの送達によってがんを処置する方法であって、a)好ましくは哺乳動物、特にヒトに由来し、イオノフォア、特にカルシウムイオノフォアで処置される、赤血球(RBC)から細胞外小胞(EV)を精製するステップ;b)RNAをEVに電気穿孔し、RNA積載EVを形成するステップ;及びc)標的細胞ががん細胞を含み、RNA積載EVを標的細胞に適用し、それにより標的細胞の増殖を阻害するステップを含む方法を提供する。
【0036】
一実施形態では、標的細胞は、白血病細胞、乳がん細胞、又は白血病細胞と乳がん細胞の組合せを含む。別の実施形態では、標的細胞は、急性骨髄性白血病細胞を含む。
別の実施形態では、ステップc)は、局所又は全身投与により、標的細胞を有する対象にRNA積載EVを投与するステップを含む。局所投与は、作用部位へ直接のRNA積載EVの送達を指し、限定はされないが、腫瘍内投与を含む。全身投与は、循環系によるRNA積載EVの送達を指し、限定はされないが、静脈内注射を含む。
【0037】
さらなる実施形態では、標的細胞の増殖は、ステップc)の後に抑制される。
本発明の原理を例示する実施形態及び実験は、ここで、以下の添付の図面を参照して議論する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1-1】RBCからのEVの特徴付け及び白血病細胞によるRBCEVの取り込み。a)Nanosightナノ粒子アナライザーを使用して決定した、3人のドナーからのRBCEVの平均濃度(100,000×希釈)±SEM(グレー)及びそれらのサイズ分布。b)RBCEVの代表的な透過型電子顕微鏡画像を示す図である。スケールバー:100nm。c)細胞溶解物及びRBCからのEVにおけるGAPDH(ローディングコントロール)と比較したEVマーカーALIX及びTSG101;並びRBCマーカーヘモグロビンA(HBA)のウェスタンブロット解析。d)白血病MOLM13細胞、NOMO1細胞、RBC、及びRBCEVにおいて、GAPDHと比較した、それぞれRBCEV及び小胞体のマーカーとしてストマチン(STOM)及びカルネキシン(CANX)のウェスタンブロット解析。e)未処置又は8.25×1011個のRBCEVと24時間インキュベートした白血病MOLM13細胞において、GAPDHと比較したHBAのウェスタンブロット解析。f)12.4×1011個のPKH26標識EVと24時間インキュベートしたMOLM13-GFP細胞の代表的な免疫蛍光画像。スケールバー、20μm。g)24時間、ヘパリンあり又はなしで12.4×1011個の非標識又はPKH26標識EVとインキュベートしたMOLM13細胞におけるPKH26のFACS解析。PKH26標識後の最後の洗浄の上清を使用して、バックグラウンドを決定した。PKH26陽性細胞のパーセンテージをゲートの上に示す。h)各条件下でのPKH26陽性細胞の平均パーセンテージ(平均±SEM、n=3回細胞継代)。P値(***P<0.001)は、スチューデントの片側t検定を使用して決定した。図1c~eでは、タンパク質マーカーの分子量(kDa)を右側に示す。各実験は2~3回の細胞継代で2~3回繰り返した。
図1-2】RBCからのEVの特徴付け及び白血病細胞によるRBCEVの取り込み。a)Nanosightナノ粒子アナライザーを使用して決定した、3人のドナーからのRBCEVの平均濃度(100,000×希釈)±SEM(グレー)及びそれらのサイズ分布。b)RBCEVの代表的な透過型電子顕微鏡画像を示す図である。スケールバー:100nm。c)細胞溶解物及びRBCからのEVにおけるGAPDH(ローディングコントロール)と比較したEVマーカーALIX及びTSG101;並びRBCマーカーヘモグロビンA(HBA)のウェスタンブロット解析。d)白血病MOLM13細胞、NOMO1細胞、RBC、及びRBCEVにおいて、GAPDHと比較した、それぞれRBCEV及び小胞体のマーカーとしてストマチン(STOM)及びカルネキシン(CANX)のウェスタンブロット解析。e)未処置又は8.25×1011個のRBCEVと24時間インキュベートした白血病MOLM13細胞において、GAPDHと比較したHBAのウェスタンブロット解析。f)12.4×1011個のPKH26標識EVと24時間インキュベートしたMOLM13-GFP細胞の代表的な免疫蛍光画像。スケールバー、20μm。g)24時間、ヘパリンあり又はなしで12.4×1011個の非標識又はPKH26標識EVとインキュベートしたMOLM13細胞におけるPKH26のFACS解析。PKH26標識後の最後の洗浄の上清を使用して、バックグラウンドを決定した。PKH26陽性細胞のパーセンテージをゲートの上に示す。h)各条件下でのPKH26陽性細胞の平均パーセンテージ(平均±SEM、n=3回細胞継代)。P値(***P<0.001)は、スチューデントの片側t検定を使用して決定した。図1c~eでは、タンパク質マーカーの分子量(kDa)を右側に示す。各実験は2~3回の細胞継代で2~3回繰り返した。
図1-3】RBCからのEVの特徴付け及び白血病細胞によるRBCEVの取り込み。a)Nanosightナノ粒子アナライザーを使用して決定した、3人のドナーからのRBCEVの平均濃度(100,000×希釈)±SEM(グレー)及びそれらのサイズ分布。b)RBCEVの代表的な透過型電子顕微鏡画像を示す図である。スケールバー:100nm。c)細胞溶解物及びRBCからのEVにおけるGAPDH(ローディングコントロール)と比較したEVマーカーALIX及びTSG101;並びRBCマーカーヘモグロビンA(HBA)のウェスタンブロット解析。d)白血病MOLM13細胞、NOMO1細胞、RBC、及びRBCEVにおいて、GAPDHと比較した、それぞれRBCEV及び小胞体のマーカーとしてストマチン(STOM)及びカルネキシン(CANX)のウェスタンブロット解析。e)未処置又は8.25×1011個のRBCEVと24時間インキュベートした白血病MOLM13細胞において、GAPDHと比較したHBAのウェスタンブロット解析。f)12.4×1011個のPKH26標識EVと24時間インキュベートしたMOLM13-GFP細胞の代表的な免疫蛍光画像。スケールバー、20μm。g)24時間、ヘパリンあり又はなしで12.4×1011個の非標識又はPKH26標識EVとインキュベートしたMOLM13細胞におけるPKH26のFACS解析。PKH26標識後の最後の洗浄の上清を使用して、バックグラウンドを決定した。PKH26陽性細胞のパーセンテージをゲートの上に示す。h)各条件下でのPKH26陽性細胞の平均パーセンテージ(平均±SEM、n=3回細胞継代)。P値(***P<0.001)は、スチューデントの片側t検定を使用して決定した。図1c~eでは、タンパク質マーカーの分子量(kDa)を右側に示す。各実験は2~3回の細胞継代で2~3回繰り返した。
図2-1】ASOのRBCEVへの電気穿孔及び白血球細胞への送達。a)RBCEVによるASO送達の実験スキーム。b)それぞれ、n=3回繰り返して、Nanosightアナライザー及びSynergy蛍光マイクロプレートリーダーを使用して決定した、EV(200×希釈)の平均濃度及びFAM標識スクランブル陰性コントロールASO(FAM-NC-ASO)を電気穿孔したRBCEVのスクロース勾配分離の12画分の非電気穿孔EV(UE-EV)と比較したFAM蛍光強度の平均倍率変化。c SYBR Gold染色(上)、及びn=3回独立して反復した、電気穿孔RBCEVに未結合又は結合のNC-ASOの平均パーセンテージ(下)を使用して可視化した、10%未変性ゲル内の未処置のNC-ASO(200pmol)と比較した、8.25×1011個の非電気穿孔又は電気穿孔RBCEVからの未結合のNC-ASO(未標識)の分離。d)Lipofectamine TM3000(Lipo)、INTERFERin(登録商標)(Inte)又は12.4×1011個のRBCEVを使用して400pmolのFAM-NC-ASOをトランスフェクトしたMOLM13細胞における、FAM蛍光対前方散乱光面積(FSC-A)のFACS解析。FAM陽性細胞のパーセンテージは、ゲートの上に示す。e)n=3回繰り返して、図2dのようにFAM ASOを含有するRBCEVをトランスフェクトした又はそれで処置した生存MOLM13細胞中のFAM+細胞の平均パーセンテージ。f)n=4回繰り返して、未標識のNC ASOを含有するRBCEVをトランスフェクトした又はそれで処置したMOLM13細胞中でヨウ化プロピジウム染色によって決定した死細胞のパーセンテージ。全てのグラフは、平均±SEMを表す。スチューデントの片側t検定の結果は、非電気穿孔コントロール(c)又は未処置コントロール(e、f)と比較してn.s.有意ではないとして示した;**P<0.01;***P<0.001及び****P<0.0001。
図2-2】ASOのRBCEVへの電気穿孔及び白血球細胞への送達。a)RBCEVによるASO送達の実験スキーム。b)それぞれ、n=3回繰り返して、Nanosightアナライザー及びSynergy蛍光マイクロプレートリーダーを使用して決定した、EV(200×希釈)の平均濃度及びFAM標識スクランブル陰性コントロールASO(FAM-NC-ASO)を電気穿孔したRBCEVのスクロース勾配分離の12画分の非電気穿孔EV(UE-EV)と比較したFAM蛍光強度の平均倍率変化。c SYBR Gold染色(上)、及びn=3回独立して反復した、電気穿孔RBCEVに未結合又は結合のNC-ASOの平均パーセンテージ(下)を使用して可視化した、10%未変性ゲル内の未処置のNC-ASO(200pmol)と比較した、8.25×1011個の非電気穿孔又は電気穿孔RBCEVからの未結合のNC-ASO(未標識)の分離。d)Lipofectamine TM3000(Lipo)、INTERFERin(登録商標)(Inte)又は12.4×1011個のRBCEVを使用して400pmolのFAM-NC-ASOをトランスフェクトしたMOLM13細胞における、FAM蛍光対前方散乱光面積(FSC-A)のFACS解析。FAM陽性細胞のパーセンテージは、ゲートの上に示す。e)n=3回繰り返して、図2dのようにFAM ASOを含有するRBCEVをトランスフェクトした又はそれで処置した生存MOLM13細胞中のFAM+細胞の平均パーセンテージ。f)n=4回繰り返して、未標識のNC ASOを含有するRBCEVをトランスフェクトした又はそれで処置したMOLM13細胞中でヨウ化プロピジウム染色によって決定した死細胞のパーセンテージ。全てのグラフは、平均±SEMを表す。スチューデントの片側t検定の結果は、非電気穿孔コントロール(c)又は未処置コントロール(e、f)と比較してn.s.有意ではないとして示した;**P<0.01;***P<0.001及び****P<0.0001。
図2-3】ASOのRBCEVへの電気穿孔及び白血球細胞への送達。a)RBCEVによるASO送達の実験スキーム。b)それぞれ、n=3回繰り返して、Nanosightアナライザー及びSynergy蛍光マイクロプレートリーダーを使用して決定した、EV(200×希釈)の平均濃度及びFAM標識スクランブル陰性コントロールASO(FAM-NC-ASO)を電気穿孔したRBCEVのスクロース勾配分離の12画分の非電気穿孔EV(UE-EV)と比較したFAM蛍光強度の平均倍率変化。c SYBR Gold染色(上)、及びn=3回独立して反復した、電気穿孔RBCEVに未結合又は結合のNC-ASOの平均パーセンテージ(下)を使用して可視化した、10%未変性ゲル内の未処置のNC-ASO(200pmol)と比較した、8.25×1011個の非電気穿孔又は電気穿孔RBCEVからの未結合のNC-ASO(未標識)の分離。d)Lipofectamine TM3000(Lipo)、INTERFERin(登録商標)(Inte)又は12.4×1011個のRBCEVを使用して400pmolのFAM-NC-ASOをトランスフェクトしたMOLM13細胞における、FAM蛍光対前方散乱光面積(FSC-A)のFACS解析。FAM陽性細胞のパーセンテージは、ゲートの上に示す。e)n=3回繰り返して、図2dのようにFAM ASOを含有するRBCEVをトランスフェクトした又はそれで処置した生存MOLM13細胞中のFAM+細胞の平均パーセンテージ。f)n=4回繰り返して、未標識のNC ASOを含有するRBCEVをトランスフェクトした又はそれで処置したMOLM13細胞中でヨウ化プロピジウム染色によって決定した死細胞のパーセンテージ。全てのグラフは、平均±SEMを表す。スチューデントの片側t検定の結果は、非電気穿孔コントロール(c)又は未処置コントロール(e、f)と比較してn.s.有意ではないとして示した;**P<0.01;***P<0.001及び****P<0.0001。
図3-1】RBCEVはASOを、miR-125b阻害のため白血病及び乳がん細胞に送達する。a)RBCEVを使用してがん細胞へとASOを送達する実験スキーム。b)30分間RNaseIfによって処置した後、6.2×1011個の非電気穿孔又は125b-ASO電気穿孔RBCEVと関連する抗miR-125b ASO(125b-ASO)のパーセンテージ。c)72時間NC-ASO又は125b-ASOを電気穿孔していない12.4×1011個のRBCEV(UE-EV)又は電気穿孔した12.4×1011個のRBCEVによって処置したMOLM13細胞における125b-ASOのコピー数。d)125b-ASO単独、16.8×1011個の非電気穿孔RBCEV(UE-EV)、16.8×1011個のNCASO積載RBCEV、又は4.2~16.8×1011個の125b-ASO積載RBCEVとインキュベートした、MOLM13細胞におけるmiR-125bの発現倍率変化。miR-125b発現は、Taqman qRT-PCRを使用して決定され、U6b RNAでノーマライズし、未処置コントロールと比較した平均倍率変化として表した。e)SYBR Green qRT-PCRを使用して決定し、GAPDHでノーマライズし、未処置コントロールと比較した平均倍率変化として表した、図3dのように処置したMOLM13細胞におけるBAK1の発現倍率変化。fは、細胞数を使用して決定した、12.4×1011個の非電気穿孔又はNC/125b-ASO-電気穿孔EVで処置したMOLM13細胞の増殖。gは、クリスタルバイオレット染色によって決定した、図3fのように処置した乳がんCA1a細胞(%)の生存率。全てのパネルでは、実験は、3又は4回の細胞継代により、3又は4回繰り返した。棒グラフは平均±SEMを示す。P値は、未処置コントロールと比較して、一元配置分散分析(d、e)又はスチューデントの片側t検定(b、f、g)を使用して算出した。P<0.05、**P<0.01。
図3-2】RBCEVはASOを、miR-125b阻害のため白血病及び乳がん細胞に送達する。a)RBCEVを使用してがん細胞へとASOを送達する実験スキーム。b)30分間RNaseIfによって処置した後、6.2×1011個の非電気穿孔又は125b-ASO電気穿孔RBCEVと関連する抗miR-125b ASO(125b-ASO)のパーセンテージ。c)72時間NC-ASO又は125b-ASOを電気穿孔していない12.4×1011個のRBCEV(UE-EV)又は電気穿孔した12.4×1011個のRBCEVによって処置したMOLM13細胞における125b-ASOのコピー数。d)125b-ASO単独、16.8×1011個の非電気穿孔RBCEV(UE-EV)、16.8×1011個のNCASO積載RBCEV、又は4.2~16.8×1011個の125b-ASO積載RBCEVとインキュベートした、MOLM13細胞におけるmiR-125bの発現倍率変化。miR-125b発現は、Taqman qRT-PCRを使用して決定され、U6b RNAでノーマライズし、未処置コントロールと比較した平均倍率変化として表した。e)SYBR Green qRT-PCRを使用して決定し、GAPDHでノーマライズし、未処置コントロールと比較した平均倍率変化として表した、図3dのように処置したMOLM13細胞におけるBAK1の発現倍率変化。fは、細胞数を使用して決定した、12.4×1011個の非電気穿孔又はNC/125b-ASO-電気穿孔EVで処置したMOLM13細胞の増殖。gは、クリスタルバイオレット染色によって決定した、図3fのように処置した乳がんCA1a細胞(%)の生存率。全てのパネルでは、実験は、3又は4回の細胞継代により、3又は4回繰り返した。棒グラフは平均±SEMを示す。P値は、未処置コントロールと比較して、一元配置分散分析(d、e)又はスチューデントの片側t検定(b、f、g)を使用して算出した。P<0.05、**P<0.01。
図3-3】RBCEVはASOを、miR-125b阻害のため白血病及び乳がん細胞に送達する。a)RBCEVを使用してがん細胞へとASOを送達する実験スキーム。b)30分間RNaseIfによって処置した後、6.2×1011個の非電気穿孔又は125b-ASO電気穿孔RBCEVと関連する抗miR-125b ASO(125b-ASO)のパーセンテージ。c)72時間NC-ASO又は125b-ASOを電気穿孔していない12.4×1011個のRBCEV(UE-EV)又は電気穿孔した12.4×1011個のRBCEVによって処置したMOLM13細胞における125b-ASOのコピー数。d)125b-ASO単独、16.8×1011個の非電気穿孔RBCEV(UE-EV)、16.8×1011個のNCASO積載RBCEV、又は4.2~16.8×1011個の125b-ASO積載RBCEVとインキュベートした、MOLM13細胞におけるmiR-125bの発現倍率変化。miR-125b発現は、Taqman qRT-PCRを使用して決定され、U6b RNAでノーマライズし、未処置コントロールと比較した平均倍率変化として表した。e)SYBR Green qRT-PCRを使用して決定し、GAPDHでノーマライズし、未処置コントロールと比較した平均倍率変化として表した、図3dのように処置したMOLM13細胞におけるBAK1の発現倍率変化。fは、細胞数を使用して決定した、12.4×1011個の非電気穿孔又はNC/125b-ASO-電気穿孔EVで処置したMOLM13細胞の増殖。gは、クリスタルバイオレット染色によって決定した、図3fのように処置した乳がんCA1a細胞(%)の生存率。全てのパネルでは、実験は、3又は4回の細胞継代により、3又は4回繰り返した。棒グラフは平均±SEMを示す。P値は、未処置コントロールと比較して、一元配置分散分析(d、e)又はスチューデントの片側t検定(b、f、g)を使用して算出した。P<0.05、**P<0.01。
図4-1】RBCEVは、in vivoで乳がん細胞によって取り込まれる。a)in vivoでのEV取り込みアッセイのスキーム。b)in vivo画像化システム(IVIS)を使用して決定し、平均±SEM(n=3匹のマウス)として表した、16.5×1011個のPKH26標識RBCEVの腫瘍内注射の24~72時間後の腫瘍におけるPKH26蛍光の総発光効率。c)IVISを使用して捕捉した、処置の72時間後の、右脇腹に未処置の腫瘍を、左脇腹にPKH26標識EVを注射した腫瘍を担持するマウスの画像。PKH26はシュードカラー発光で示す。d)cのマウスから切除した腫瘍の画像。e)DAPI染色した核及びEVを取り込んだ細胞からのPKH26シグナルによる、腫瘍切片の代表的な共焦点顕微鏡画像。スケールバーは、20μmである。
図4-2】RBCEVは、in vivoで乳がん細胞によって取り込まれる。a)in vivoでのEV取り込みアッセイのスキーム。b)in vivo画像化システム(IVIS)を使用して決定し、平均±SEM(n=3匹のマウス)として表した、16.5×1011個のPKH26標識RBCEVの腫瘍内注射の24~72時間後の腫瘍におけるPKH26蛍光の総発光効率。c)IVISを使用して捕捉した、処置の72時間後の、右脇腹に未処置の腫瘍を、左脇腹にPKH26標識EVを注射した腫瘍を担持するマウスの画像。PKH26はシュードカラー発光で示す。d)cのマウスから切除した腫瘍の画像。e)DAPI染色した核及びEVを取り込んだ細胞からのPKH26シグナルによる、腫瘍切片の代表的な共焦点顕微鏡画像。スケールバーは、20μmである。
図5-1】ASO積載RBCEVによる処置は、miR-125bノックダウンによって腫瘍増殖を抑制する。a)乳がん異種移植片を担持するヌードマウスへのASO送達のスキーム。b)IVISを使用して決定した(平均±SEM)、NC/125b-ASOを含有する8.25×1011個のRBCEV(E-EV、n=8匹のマウス)又は400pmolのNC/125b-ASO(n=6匹のマウス)の腫瘍内注射で3日毎に処置した腫瘍の平均生物発光光子束。c)マウスの平均重量(平均±SEM)。d)0~42日目の代表的な画像。生物発光は、シュードカラーの発光で示す。e)44日目の腫瘍の代表的な写真。f)44日目に回収した腫瘍及び肺の代表的なH&E染色画像。スケールバー、50μm。g)Taqman qRT-PCRを使用して決定した(平均±SEM)、処置の44日後の腫瘍における、U6b RNA及びNC条件と比較したmiR-125b倍率変化。P値は片側Mann-Whitney検定を使用して決定した、b、g;**P<0.01;***P<0.001;n.s.有意でない。全実験は3回の独立した反復で実施した(3バッチのマウス)。
図5-2】ASO積載RBCEVによる処置は、miR-125bノックダウンによって腫瘍増殖を抑制する。a)乳がん異種移植片を担持するヌードマウスへのASO送達のスキーム。b)IVISを使用して決定した(平均±SEM)、NC/125b-ASOを含有する8.25×1011個のRBCEV(E-EV、n=8匹のマウス)又は400pmolのNC/125b-ASO(n=6匹のマウス)の腫瘍内注射で3日毎に処置した腫瘍の平均生物発光光子束。c)マウスの平均重量(平均±SEM)。d)0~42日目の代表的な画像。生物発光は、シュードカラーの発光で示す。e)44日目の腫瘍の代表的な写真。f)44日目に回収した腫瘍及び肺の代表的なH&E染色画像。スケールバー、50μm。g)Taqman qRT-PCRを使用して決定した(平均±SEM)、処置の44日後の腫瘍における、U6b RNA及びNC条件と比較したmiR-125b倍率変化。P値は片側Mann-Whitney検定を使用して決定した、b、g;**P<0.01;***P<0.001;n.s.有意でない。全実験は3回の独立した反復で実施した(3バッチのマウス)。
図5-3】ASO積載RBCEVによる処置は、miR-125bノックダウンによって腫瘍増殖を抑制する。a)乳がん異種移植片を担持するヌードマウスへのASO送達のスキーム。b)IVISを使用して決定した(平均±SEM)、NC/125b-ASOを含有する8.25×1011個のRBCEV(E-EV、n=8匹のマウス)又は400pmolのNC/125b-ASO(n=6匹のマウス)の腫瘍内注射で3日毎に処置した腫瘍の平均生物発光光子束。c)マウスの平均重量(平均±SEM)。d)0~42日目の代表的な画像。生物発光は、シュードカラーの発光で示す。e)44日目の腫瘍の代表的な写真。f)44日目に回収した腫瘍及び肺の代表的なH&E染色画像。スケールバー、50μm。g)Taqman qRT-PCRを使用して決定した(平均±SEM)、処置の44日後の腫瘍における、U6b RNA及びNC条件と比較したmiR-125b倍率変化。P値は片側Mann-Whitney検定を使用して決定した、b、g;**P<0.01;***P<0.001;n.s.有意でない。全実験は3回の独立した反復で実施した(3バッチのマウス)。
図6-1】NSGマウスにおける全身投与時のRBCEVの体内分布。a)i.v.注射後のRBCEV循環時間の決定のための実験スキーム。b)3.3×1012個のPKH26標識RBCEVのi.v.注射の直後(0時間)又は3、6、12時間後のNSGマウスの血液からの全EVに結合したビーズのPKH26蛍光のFACS解析。PKH26陽性ビーズのパーセンテージは、ゲートの上に示し、平均は棒グラフに示す(平均±SEM;2回の繰り返しでn=3又は4匹のマウス)。c)NSGマウスにおけるRBCEVの体内分布の決定のための実験スキーム。d)3.3×1012個のDiR標識RBCEV又は標識EVの最後の洗浄からの上清の2回のi.p.注射(24時間間隔)の24時間後の臓器の代表的な画像。画像はIVISを使用して捕捉した。DiR蛍光は、シュードカラーの発光で示す。e DiR標識RBCEVを注射したマウスの臓器における平均DiR発光(平均±SEM;2回の繰り返しでn=4匹のマウス)。f)NSGマウスにおける骨髄へのvivotrack-680(VVT)標識RBCEV分布の決定のための実験スキーム。g)3.3×1012個のVVT標識RBCEV又はEV洗浄上清(Sup)の2回のi.p.注射(24時間間隔)の24時間後のマウスからの骨髄細胞のVVT蛍光(APC-Cy5.5)対FSC-AのFACS解析。h)VVT陽性細胞の平均パーセンテージ(平均±SEM、2回の繰り返しでn=4匹のマウス)。**P<0.01、片側Mann-Whitney検定。
図6-2】NSGマウスにおける全身投与時のRBCEVの体内分布。a)i.v.注射後のRBCEV循環時間の決定のための実験スキーム。b)3.3×1012個のPKH26標識RBCEVのi.v.注射の直後(0時間)又は3、6、12時間後のNSGマウスの血液からの全EVに結合したビーズのPKH26蛍光のFACS解析。PKH26陽性ビーズのパーセンテージは、ゲートの上に示し、平均は棒グラフに示す(平均±SEM;2回の繰り返しでn=3又は4匹のマウス)。c)NSGマウスにおけるRBCEVの体内分布の決定のための実験スキーム。d)3.3×1012個のDiR標識RBCEV又は標識EVの最後の洗浄からの上清の2回のi.p.注射(24時間間隔)の24時間後の臓器の代表的な画像。画像はIVISを使用して捕捉した。DiR蛍光は、シュードカラーの発光で示す。e DiR標識RBCEVを注射したマウスの臓器における平均DiR発光(平均±SEM;2回の繰り返しでn=4匹のマウス)。f)NSGマウスにおける骨髄へのvivotrack-680(VVT)標識RBCEV分布の決定のための実験スキーム。g)3.3×1012個のVVT標識RBCEV又はEV洗浄上清(Sup)の2回のi.p.注射(24時間間隔)の24時間後のマウスからの骨髄細胞のVVT蛍光(APC-Cy5.5)対FSC-AのFACS解析。h)VVT陽性細胞の平均パーセンテージ(平均±SEM、2回の繰り返しでn=4匹のマウス)。**P<0.01、片側Mann-Whitney検定。
図7-1】RBCEVにおけるmiR-125b ASOの全身送達は、AML異種移植マウスにおける白血病の進行を抑制する。a)NSGマウスにおけるAML異種移植及びASO送達の実験スキーム。b)IVISを使用して決定した(平均±SEM)、処置開始(0日目)前のシグナルと比較したNC-ASO(n=7匹のマウス)又は125b-ASO(n=6匹のマウス)を含有する3.3×1012個のRBCEVによる処置の0~9日後のマウスの全身生物発光の平均倍率変化。c)IVISを使用して捕捉した、0日目&9日目の白血病マウスの代表的な画像。生物発光はシュードカラーで示す。d)マウスの平均体重(平均±SEM)。e)白血病マウスの骨髄におけるGFP細胞のFACS解析:GFPの代表的なドットプロット(FITCチャネル)対サイズ散乱面積(SSC-A)及びGFP陽性細胞の平均パーセンテージ(平均±SEM、n=3匹のマウス/群)。f)NC/125b-ASO積載RBCEVによって処置した非移植マウス及びAMLマウスからの脾臓及び肝臓の代表的なH&E染色画像。矢印は、正常な細胞よりも大きな核を有する浸潤する白血病細胞のクラスターを示す。スケールバー、50μm。g Taqman qRT-PCRを使用して決定し、脾臓においてNCと比較した平均倍率変化±SEMとして表す、脾臓(n=5匹のマウス)及び肝臓(n=3匹のマウス)においてU6B RNAでノーマライズしたmiR-125b発現倍率変化。片側Mann-Whitney検定を使用して決定したP<0.05;**P<0.01(b、e、g)。全実験は、2回の独立した反復で実施した。
図7-2】RBCEVにおけるmiR-125b ASOの全身送達は、AML異種移植マウスにおける白血病の進行を抑制する。a)NSGマウスにおけるAML異種移植及びASO送達の実験スキーム。b)IVISを使用して決定した(平均±SEM)、処置開始(0日目)前のシグナルと比較したNC-ASO(n=7匹のマウス)又は125b-ASO(n=6匹のマウス)を含有する3.3×1012個のRBCEVによる処置の0~9日後のマウスの全身生物発光の平均倍率変化。c)IVISを使用して捕捉した、0日目&9日目の白血病マウスの代表的な画像。生物発光はシュードカラーで示す。d)マウスの平均体重(平均±SEM)。e)白血病マウスの骨髄におけるGFP細胞のFACS解析:GFPの代表的なドットプロット(FITCチャネル)対サイズ散乱面積(SSC-A)及びGFP陽性細胞の平均パーセンテージ(平均±SEM、n=3匹のマウス/群)。f)NC/125b-ASO積載RBCEVによって処置した非移植マウス及びAMLマウスからの脾臓及び肝臓の代表的なH&E染色画像。矢印は、正常な細胞よりも大きな核を有する浸潤する白血病細胞のクラスターを示す。スケールバー、50μm。g Taqman qRT-PCRを使用して決定し、脾臓においてNCと比較した平均倍率変化±SEMとして表す、脾臓(n=5匹のマウス)及び肝臓(n=3匹のマウス)においてU6B RNAでノーマライズしたmiR-125b発現倍率変化。片側Mann-Whitney検定を使用して決定したP<0.05;**P<0.01(b、e、g)。全実験は、2回の独立した反復で実施した。
図8-1】RBCEVは、ゲノム編集のため、白血病細胞にCas9mRNA及びgRNAを送達する。a)Cas9mRNA及びgRNA送達のスキーム。b 非電気穿孔のCas9レベルと比較した(第2の条件)、未処置の、6pmolのCas9 mRNAとインキュベート又は6pmolのCas9 mRNAを電気穿孔した、及びRNaseIfで処置した、6.2×1011個のRBCEVにおけるCas9 mRNAの平均レベル。c)3pmol条件と比較して、12.4×1011個の非電気穿孔RBCEV(UE-EV)又は処置の24時間後に3、6、又は12pmolのCas9 mRNAを電気穿孔したRBCEV(E-EV)とインキュベートしたMOLM13細胞におけるGAPDH mRNAと比較したCas9 mRNAのレベル。d)12.4×1011個のUE-EV又は6pmolのCas9 mRNAを電気穿孔したEVと48時間インキュベートしたMOLM13細胞の代表的な画像。MOLM13細胞はまた、比較のため、6pmolのCas9 mRNA(Cas9 E)を直接電気穿孔した。細胞は、HA-Cas9タンパク質(緑)及び核DNA(Hoechst、青)を染色した。スケールバー、20μm。e)dに示すようにHA-Cas9タンパク質が陽性に染色されたMOML13細胞の平均パーセンテージ。f)未処置の、12.4×1011個の非電気穿孔RBCEV又は6pmolのCas9 mRNA積載RBCEVで処置した、MOLM13細胞におけるCas9及びα-チューブリン(TUB)のウェスタンブロット解析。各バンドの下はその平均強度であり、ImageJを使用して定量した。g 48時間、12.4×1011個のUE-EV又は6pmolのCas9 mRNA及びmir-125b標的化gRNAを積載したEVで処置したMOLM13細胞において、それぞれU6b RNA及び18s RNAでノーマライズした、未処置の条件と比較したmiR-125b及びBAK1発現倍率変化。h)gのように処置したMOLM13細胞からのmir-125b標的化gRNAの野生型(WT)mir-125b(枠は成熟配列を示す)及び変異DNA配列のアライメント。赤、挿入又は欠失。緑、ミスマッチ。PAM、プロトスペーサー隣接モチーフ。全ての棒グラフは平均±SEMを示す(n=3又は4回の細胞継代の3又は4回反復)。P<0.05;***P<0.001;****P<0.0001:片側スチューデントのt検定。
図8-2】RBCEVは、ゲノム編集のため、白血病細胞にCas9mRNA及びgRNAを送達する。a)Cas9mRNA及びgRNA送達のスキーム。b 非電気穿孔のCas9レベルと比較した(第2の条件)、未処置の、6pmolのCas9 mRNAとインキュベート又は6pmolのCas9 mRNAを電気穿孔した、及びRNaseIfで処置した、6.2×1011個のRBCEVにおけるCas9 mRNAの平均レベル。c)3pmol条件と比較して、12.4×1011個の非電気穿孔RBCEV(UE-EV)又は処置の24時間後に3、6、又は12pmolのCas9 mRNAを電気穿孔したRBCEV(E-EV)とインキュベートしたMOLM13細胞におけるGAPDH mRNAと比較したCas9 mRNAのレベル。d)12.4×1011個のUE-EV又は6pmolのCas9 mRNAを電気穿孔したEVと48時間インキュベートしたMOLM13細胞の代表的な画像。MOLM13細胞はまた、比較のため、6pmolのCas9 mRNA(Cas9 E)を直接電気穿孔した。細胞は、HA-Cas9タンパク質(緑)及び核DNA(Hoechst、青)を染色した。スケールバー、20μm。e)dに示すようにHA-Cas9タンパク質が陽性に染色されたMOML13細胞の平均パーセンテージ。f)未処置の、12.4×1011個の非電気穿孔RBCEV又は6pmolのCas9 mRNA積載RBCEVで処置した、MOLM13細胞におけるCas9及びα-チューブリン(TUB)のウェスタンブロット解析。各バンドの下はその平均強度であり、ImageJを使用して定量した。g 48時間、12.4×1011個のUE-EV又は6pmolのCas9 mRNA及びmir-125b標的化gRNAを積載したEVで処置したMOLM13細胞において、それぞれU6b RNA及び18s RNAでノーマライズした、未処置の条件と比較したmiR-125b及びBAK1発現倍率変化。h)gのように処置したMOLM13細胞からのmir-125b標的化gRNAの野生型(WT)mir-125b(枠は成熟配列を示す)及び変異DNA配列のアライメント。赤、挿入又は欠失。緑、ミスマッチ。PAM、プロトスペーサー隣接モチーフ。全ての棒グラフは平均±SEMを示す(n=3又は4回の細胞継代の3又は4回反復)。P<0.05;***P<0.001;****P<0.0001:片側スチューデントのt検定。
図8-3】RBCEVは、ゲノム編集のため、白血病細胞にCas9mRNA及びgRNAを送達する。a)Cas9mRNA及びgRNA送達のスキーム。b 非電気穿孔のCas9レベルと比較した(第2の条件)、未処置の、6pmolのCas9 mRNAとインキュベート又は6pmolのCas9 mRNAを電気穿孔した、及びRNaseIfで処置した、6.2×1011個のRBCEVにおけるCas9 mRNAの平均レベル。c)3pmol条件と比較して、12.4×1011個の非電気穿孔RBCEV(UE-EV)又は処置の24時間後に3、6、又は12pmolのCas9 mRNAを電気穿孔したRBCEV(E-EV)とインキュベートしたMOLM13細胞におけるGAPDH mRNAと比較したCas9 mRNAのレベル。d)12.4×1011個のUE-EV又は6pmolのCas9 mRNAを電気穿孔したEVと48時間インキュベートしたMOLM13細胞の代表的な画像。MOLM13細胞はまた、比較のため、6pmolのCas9 mRNA(Cas9 E)を直接電気穿孔した。細胞は、HA-Cas9タンパク質(緑)及び核DNA(Hoechst、青)を染色した。スケールバー、20μm。e)dに示すようにHA-Cas9タンパク質が陽性に染色されたMOML13細胞の平均パーセンテージ。f)未処置の、12.4×1011個の非電気穿孔RBCEV又は6pmolのCas9 mRNA積載RBCEVで処置した、MOLM13細胞におけるCas9及びα-チューブリン(TUB)のウェスタンブロット解析。各バンドの下はその平均強度であり、ImageJを使用して定量した。g 48時間、12.4×1011個のUE-EV又は6pmolのCas9 mRNA及びmir-125b標的化gRNAを積載したEVで処置したMOLM13細胞において、それぞれU6b RNA及び18s RNAでノーマライズした、未処置の条件と比較したmiR-125b及びBAK1発現倍率変化。h)gのように処置したMOLM13細胞からのmir-125b標的化gRNAの野生型(WT)mir-125b(枠は成熟配列を示す)及び変異DNA配列のアライメント。赤、挿入又は欠失。緑、ミスマッチ。PAM、プロトスペーサー隣接モチーフ。全ての棒グラフは平均±SEMを示す(n=3又は4回の細胞継代の3又は4回反復)。P<0.05;***P<0.001;****P<0.0001:片側スチューデントのt検定。
図9-1】ヒト赤血球(RBC)からの細胞外小胞(EV)の精製及び特徴付け。a)精製方法:イオノフォア処置したヒト赤血球から培養上清を回収し、複数回低速遠心分離にかけ、細胞及び残渣を除去した。EVを、100,000×gで1回は60%スクロースクッションを含む3回の超遠心分離によって精製した。3人のドナーからのRBCEVのb)多分散性指数及びc)ゼータ電位を、Zetasizer Nanoを使用して決定した(平均±SEM)。
図9-2】ヒト赤血球(RBC)からの細胞外小胞(EV)の精製及び特徴付け。a)精製方法:イオノフォア処置したヒト赤血球から培養上清を回収し、複数回低速遠心分離にかけ、細胞及び残渣を除去した。EVを、100,000×gで1回は60%スクロースクッションを含む3回の超遠心分離によって精製した。3人のドナーからのRBCEVのb)多分散性指数及びc)ゼータ電位を、Zetasizer Nanoを使用して決定した(平均±SEM)。
図10-1】複数回の凍結融解サイクル後のRBCEVの形態像及びサイズ分布。a)1~3回の凍結融解サイクル後の同じバッチからのRBCEVの代表的な透過型電子顕微鏡画像。画像は、42000×(左)及び86000×(右)で捕捉した。スケールバー、200nm。b)3人のドナーからのRBCEV(100,000×希釈)の平均濃度±SEM(グレー)及び1~3回の凍結融解サイクル後にNanosightアナライザーを使用して決定したそれらのサイズ分布。
図10-2】複数回の凍結融解サイクル後のRBCEVの形態像及びサイズ分布。a)1~3回の凍結融解サイクル後の同じバッチからのRBCEVの代表的な透過型電子顕微鏡画像。画像は、42000×(左)及び86000×(右)で捕捉した。スケールバー、200nm。b)3人のドナーからのRBCEV(100,000×希釈)の平均濃度±SEM(グレー)及び1~3回の凍結融解サイクル後にNanosightアナライザーを使用して決定したそれらのサイズ分布。
図11】RBCEVは、白血病MOLM13細胞によって取り込まれる。a)EV取り込みアッセイの概略図:RBCEVをPKH26(赤い蛍光の膜色素)で標識し、超遠心分離を使用して3回洗浄し、終夜ラテックスビーズ又は24時間MOLM13細胞とインキュベートした。b)12.4×1011個の非標識又はPKH26標識RBCEVとインキュベートしたラテックスビーズのFACS解析。ビーズは、前方散乱面積(FSC-A)及びサイズ散乱面積(SSC-A)に基づいてゲートをかけた。PKH26蛍光(PEチャネル)は、FSC-Aに対してプロットした。PKH26陽性ビーズのパーセンテージは、ゲートの上に示した。c)12.4×1011個の非標識又はPKH26標識RBCEVとインキュベートしたMOLM13細胞のFACS解析。細胞は、FSC-A対SSC-A(生存集団)及びFSC幅対FSC高(単一細胞)に基づいてゲートをかけた。PKH26陽性細胞のパーセンテージはゲートの上に示す。
図12】異なる電圧でのデキストランのRBCEVへの電気穿孔。a)EV電気穿孔の概略図:8.25×1011個のRBCEVを4μgのAlexa Fluor(登録商標)647(AF647)標識デキストランと混合し、50~250Vの異なる電圧で、OptiMEM中で電気穿孔した。EVは、終夜ラテックスビーズとインキュベートし、FACSを使用して解析した。b)デキストランAF647、電気穿孔したデキストランAF647、電気穿孔したEV(E-EV)又は非電気穿孔EV(UE-EV)とインキュベートしたビーズのAF647蛍光(APCチャネル)及びFSC-AのFACS解析。AF647陽性ビーズのパーセンテージは、ゲートの上に示す。
図13】電気穿孔したRBCEVの特徴付け。a)RBCEVのトップダウンスクロース密度勾配分離のスキーム。bは、各スクロース画分(200×希釈)の非電気穿孔(UE-EV)又はFAM-ASO電気穿孔RBCEV(E-EV)の濃度を、Nanosightアナライザーを使用して決定し、スクロースの密度を屈折計を使用して決定した。c)Nanosight粒子アナライザーを使用して決定した、画分6のEVのサイズ分布。
図14】電気穿孔したRBCEVの特徴付け。a)10%未変性ゲル内の、電気穿孔したRBCEVからの非封入FAM-ASOのFAM蛍光。b)Synergy TMマイクロプレートリーダーを使用して決定した(平均±SEM)、1~72時間、37℃で、50%FBSを含有するOptiMEM中での電気穿孔あり又はなし(E又はUE)のRBCEVとインキュベートしたFAM-ASOの平均蛍光強度。P値は、スチューデントの片側t検定を使用して決定した(n=3回の独立した反復)。c)125b-ASO濃度対Ct値の標準曲線は、Taqman qRT-PCRを使用して決定した。
図15】RBCEVは、デキストランを白血病MOLM13細胞に送達する。a)デキストラン送達の概略図:8.25~16.5×1011個のRBCEVを4μgのデキストランAF647と混合し、250Vで電気穿孔した。電気穿孔したEVを、24時間、MOLM13細胞とインキュベートした。b)未処置の、又は8.25~16.5×1011個のデキストラン-AF647電気穿孔EV(E-EV)又は16.5×1011個の非電気穿孔(UE-EV)とインキュベートしたMOLM13細胞におけるデキストランAF647蛍光のFACS解析。
図16-1】RBCEVはアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を白血病NOMO1細胞に送達する。a)未処置の、又は12.4×1011個のPKH26標識EVとインキュベートしたNOMO1細胞におけるPKH26(PEチャネル)のFACS解析。b)PKH26標識EVで処置したNOMO1細胞の代表的な共焦点顕微鏡画像を示す図である。スケールバー、20μm。c)未処置の、又はFAM-ASOと、又は12.4×1011個の非電気穿孔EV(UE-EV)と、又はFAM-ASO電気穿孔EV(E-EV)とインキュベートしたNOMO1細胞のFAM蛍光(FITCチャネル)のFACS解析。
図16-2】RBCEVはアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を白血病NOMO1細胞に送達する。a)未処置の、又は12.4×1011個のPKH26標識EVとインキュベートしたNOMO1細胞におけるPKH26(PEチャネル)のFACS解析。b)PKH26標識EVで処置したNOMO1細胞の代表的な共焦点顕微鏡画像を示す図である。スケールバー、20μm。c)未処置の、又はFAM-ASOと、又は12.4×1011個の非電気穿孔EV(UE-EV)と、又はFAM-ASO電気穿孔EV(E-EV)とインキュベートしたNOMO1細胞のFAM蛍光(FITCチャネル)のFACS解析。
図17】経時的な白血病細胞によるASOの取り込み。未処置の、又は400pmolのFAM-ASO単独と、又は12×1011個のFAM-ASO電気穿孔RBCEVと、5日間インキュベートしたMOLM13細胞におけるFAM蛍光(FITCチャネル)のFACS解析。FAM陽性細胞のパーセンテージをゲートの上に示す。
図18】RBCEVはデキストランのMOLM13細胞への送達においてLipofectamine TM3000及びINTERERin(登録商標)よりも高い効率及び低い毒性を与える。a)未処置の、非電気穿孔RBCEV(UE-EV)と、デキストランAF647(Dex-647)単独と、Dex-647積載Lipofectamine TM3000(Lipo3000)と、Dex-647積載INTERFERin(登録商標)と、又は12.4×1011個のDex-647電気穿孔RBC EV(E-EV)と24時間インキュベートしたMOLM13細胞におけるAF647蛍光のFACS解析。b)(a)のように処置したMOLM13細胞におけるヨウ化プロピジウム(PI)染色を使用して決定した死細胞のパーセンテージ。棒グラフは2~3回反復の平均±SEMを示す。
図19-1】白血病及び乳がん細胞におけるEV送達したASOによるmiR-125ファミリーのノックダウン。a)未処置の、16.8×1011個の非電気穿孔RBCEV(UE-EV)と、16.8×1011個のNC-ASO電気穿孔RBCEV(E-EV)又は125b-ASO電気穿孔RBCEVと、指定した用量で72時間インキュベートしたMOLM13細胞におけるU6b RNAと比較したmiR-125aの発現倍率変化。b)指定した用量の125b-ASO電気穿孔RBCEVで処置したNOMO1細胞におけるU6b RNAと比較したmiR-125a及び125bの発現倍率変化。c)指定した用量の125b-ASO電気穿孔RBCEVで処置したCA1a細胞におけるU6b RNAと比較したmiR-125a及び125bの発現倍率変化。全てのパネルでは、miR-125a、125b及びU6b発現は、3又は4回の細胞継代でTaqman qRT-PCRを使用して決定した(平均±SEM)。一元配置分散分析結果が各グラフに示される。
図19-2】白血病及び乳がん細胞におけるEV送達したASOによるmiR-125ファミリーのノックダウン。a)未処置の、16.8×1011個の非電気穿孔RBCEV(UE-EV)と、16.8×1011個のNC-ASO電気穿孔RBCEV(E-EV)又は125b-ASO電気穿孔RBCEVと、指定した用量で72時間インキュベートしたMOLM13細胞におけるU6b RNAと比較したmiR-125aの発現倍率変化。b)指定した用量の125b-ASO電気穿孔RBCEVで処置したNOMO1細胞におけるU6b RNAと比較したmiR-125a及び125bの発現倍率変化。c)指定した用量の125b-ASO電気穿孔RBCEVで処置したCA1a細胞におけるU6b RNAと比較したmiR-125a及び125bの発現倍率変化。全てのパネルでは、miR-125a、125b及びU6b発現は、3又は4回の細胞継代でTaqman qRT-PCRを使用して決定した(平均±SEM)。一元配置分散分析結果が各グラフに示される。
図20-1】ヌードマウスにおける全身投与によるRBCEVの分布。a)実験の概略図:小さいCA1a腫瘍(直径7mm)を有するヌードマウスに、16.5×1011個のPKH26標識又はDiR標識RBCEVをi.p.注射した。b)生きたマウスの代表的な画像。c)処置の24時間後のDiR標識RBCEV又はEV洗浄の上清を注射したヌードマウスからの臓器の代表的なex vi。DiR蛍光はシュードカラー発光(光子/s)として示される。d)PKH26標識RBCEVを注射したヌードマウスからのPKH26蛍光(赤)及び核のDAPI染色(青)を有する臓器の凍結切片。スケールバー、10μm。
図20-2】ヌードマウスにおける全身投与によるRBCEVの分布。a)実験の概略図:小さいCA1a腫瘍(直径7mm)を有するヌードマウスに、16.5×1011個のPKH26標識又はDiR標識RBCEVをi.p.注射した。b)生きたマウスの代表的な画像。c)処置の24時間後のDiR標識RBCEV又はEV洗浄の上清を注射したヌードマウスからの臓器の代表的なex vi。DiR蛍光はシュードカラー発光(光子/s)として示される。d)PKH26標識RBCEVを注射したヌードマウスからのPKH26蛍光(赤)及び核のDAPI染色(青)を有する臓器の凍結切片。スケールバー、10μm。
図21】RBCEV処置は臓器に影響しない。未処置の及び腹腔内にPKH26-RBCEVを注射したマウス(図20のように)からのH&Eで染色した組織切片の代表的な写真を示す。スケールバー、100μm。同じ形態が他の試料で観察された(3匹のマウス/群)。
図22-1】RBCEVはCas9 mRNA及びgRNAを送達する。a)ヒトゲノムのmiR-125遺伝子座の配列及びこれらの遺伝子座を標的化するgRNAの設計。配列は、DNAMAN配列解析ソフトウェアを使用してそれらの類似性によって色付けした(黒:全て同一;青:半分同一)。ガイド鎖は、miR-125ファミリーの成熟miR-125a又は125bへとプロセスされる主鎖である。ガイドRNAは、変異が成熟miR-125sのシード配列に生じ得るように設計された(矢印の頭)。b)非電気穿孔EV(UE-EV)で、又はCas9 mRNA及びmir-125b標的化gRNAを電気穿孔したEVで、48時間処置したMOLM13細胞におけるmiR-125aの発現(平均±SEM;n=3回の細胞継代)。P<0.05、スチューデントの片側t検定。c)UE-EVと、又はCas9プラスミド及びeGFP標的化gRNAプラスミドを電気穿孔したEVとインキュベートした293T-eGFP細胞におけるGFPのFACS解析。GFP陰性細胞は、矢印によって示される。d)UE-EVで、又はCas9 mRNA及び抗eGFP gRNAを積載したEVで7日間処置したNOMO1-eGFP細胞におけるGFP発現のFACS解析。
図22-2】RBCEVはCas9 mRNA及びgRNAを送達する。a)ヒトゲノムのmiR-125遺伝子座の配列及びこれらの遺伝子座を標的化するgRNAの設計。配列は、DNAMAN配列解析ソフトウェアを使用してそれらの類似性によって色付けした(黒:全て同一;青:半分同一)。ガイド鎖は、miR-125ファミリーの成熟miR-125a又は125bへとプロセスされる主鎖である。ガイドRNAは、変異が成熟miR-125sのシード配列に生じ得るように設計された(矢印の頭)。b)非電気穿孔EV(UE-EV)で、又はCas9 mRNA及びmir-125b標的化gRNAを電気穿孔したEVで、48時間処置したMOLM13細胞におけるmiR-125aの発現(平均±SEM;n=3回の細胞継代)。P<0.05、スチューデントの片側t検定。c)UE-EVと、又はCas9プラスミド及びeGFP標的化gRNAプラスミドを電気穿孔したEVとインキュベートした293T-eGFP細胞におけるGFPのFACS解析。GFP陰性細胞は、矢印によって示される。d)UE-EVで、又はCas9 mRNA及び抗eGFP gRNAを積載したEVで7日間処置したNOMO1-eGFP細胞におけるGFP発現のFACS解析。
図23】追加の内部コントロールによる補足qPCRデータ。a)miRCURY-LNA qRTPCRを使用して決定した、未処置の、16.8×1011個の非電気穿孔RBC EV(UE-EV)と、16.8×1011個のNC-ASO電気穿孔RBC EV(E-EV)又は4.2~16.8×1011個の125b-ASO電気穿孔RBCEVと72時間インキュベートしたMOLM13細胞におけるmiR-103aと比較したmiR-125bの発現倍率変化(平均±SEM、n=3回の細胞継代)。一元配置分散分析結果をグラフに示す。b)3pmol条件と比較して、処置の24時間後に、12.4×1011個の非電気穿孔RBCEV(UE-EV)又は3、6、又は12pmolのCas9 mRNAを電気穿孔した12.4×1011個のRBCEV(E-EV)とインキュベートしたMOLM13細胞におけるACTB及び18S RNAと比較したCas9 mRNAのレベル(平均±SEM;n=3回の細胞継代)。
図24】骨髄細胞のFACS解析のためのゲート戦略。図7のように125b-ASOを含有する3.3×1012個のRBCEVで処置したNSGマウスの骨髄におけるGFP細胞のFACS解析を示す図である。単球はFSC-A及びSSC-Aに基づいてゲートし、残渣、死細胞及びRBC(低FSC-A)を除外した。単一細胞に、FSC幅対FSC高に基づいて単球からさらにゲートをかけ、ダブレット及び凝集体を除外した。生細胞は、Cytox blue陰性(PB450チャネル)に基づき、単一細胞集団からゲートをかけた。続いて、GFP陽性細胞は、未処置の陰性コントロールにおいて無視できるGFPシグナルを示す集団としてFITCチャネルでゲートをかけた。同じゲートは同じバッチの全ての試料に適用した。
図25】未変性ゲル電気泳動のフル画像。a)非標識NC-ASO(22bp)の分離:200pmolの非標識NC-ASO(レーン1)、8.25×1011個の非電気穿孔RBCEV(レーン2)、200pmolのNC-ASOと8.25×1011個の非電気穿孔RBCEVの混合(レーン3)、200pmolのNC-ASOと電気穿孔後の8.25×1011個のRBCEVの混合(レーン4)を10%未変性ゲルに積載し、Gel DocTM EZ DocumentationシステムでSYBR Gold染色を使用して可視化した。b)FAM標識NC-ASO(22bp)の分離:200pmolのFAM NC-ASO(レーン1)、8.25×1011個の非電気穿孔RBCEV(レーン2)、200pmolのFAM NC-ASOと8.25×1011個の非電気穿孔RBCEVの混合(レーン3)、200pmolのFAM NC-ASOと電気穿孔後の8.25×1011個のRBCEVの混合(レーン4)を10%未変性ゲルに積載し、Gel DocTM EZ Documentationシステムを使用して、FAM蛍光によって可視化した。
図26-1】ウェスタンブロットのフル画像。a)RBCからの細胞溶解物(レーン1)及びEV(レーン2)におけるGAPDH(ローディングコントロール)と比較したALIX、TSG101及びHBAのウェスタンブロット解析。b)未処置(レーン1)の又は8.25×1011個の非電気穿孔RBCEVと(レーン2)又は8.25×1011個の電気穿孔RBCEV(レーン3)と24時間インキュベートした、MOLM13細胞におけるHBA及びGAPDHのウェスタンブロット解析。c)白血病MOLM13細胞(レーン1)、NOMO1細胞(レーン2)、RBC(レーン3)及びRBCEV(レーン4)におけるストマチン(STOM)、カルネキシン(CANX)、及びGAPDHのウェスタンブロット解析。d)未処置の(レーン1)、非電気穿孔RBCEV(レーン2)又はCas9 mRNA積載RBCEV(レーン3)で処置したMOLM13細胞におけるCas9及びTUBのウェスタンブロット解析。全てのパネルでは、ブロットを水平に切り取り、同時に複数の抗体とハイブリダイズさせた。タンパク質ラダー(L)を、試料の両側に積載し、分子量を決定した。
図26-2】ウェスタンブロットのフル画像。a)RBCからの細胞溶解物(レーン1)及びEV(レーン2)におけるGAPDH(ローディングコントロール)と比較したALIX、TSG101及びHBAのウェスタンブロット解析。b)未処置(レーン1)の又は8.25×1011個の非電気穿孔RBCEVと(レーン2)又は8.25×1011個の電気穿孔RBCEV(レーン3)と24時間インキュベートした、MOLM13細胞におけるHBA及びGAPDHのウェスタンブロット解析。c)白血病MOLM13細胞(レーン1)、NOMO1細胞(レーン2)、RBC(レーン3)及びRBCEV(レーン4)におけるストマチン(STOM)、カルネキシン(CANX)、及びGAPDHのウェスタンブロット解析。d)未処置の(レーン1)、非電気穿孔RBCEV(レーン2)又はCas9 mRNA積載RBCEV(レーン3)で処置したMOLM13細胞におけるCas9及びTUBのウェスタンブロット解析。全てのパネルでは、ブロットを水平に切り取り、同時に複数の抗体とハイブリダイズさせた。タンパク質ラダー(L)を、試料の両側に積載し、分子量を決定した。
図27】ヌードマウスにおける全身投与によるRBCEVの分布。RBCEVをi.v.注射したNOD scid gamma(NSG)マウスからの臓器のEx vivo画像。i.v.注射による体内分布を示す。
図28】リンパ腫B95-8細胞によるBodipy標識RBCEVの取り込み。a)B95-8細胞+フロースルー、及びb)B95-8細胞+Bodipy EV。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の態様及び実施形態を、ここで添付の図面を参照して議論する。さらなる態様及び実施形態が、当業者には明らかであろう。この本文中で述べた全ての文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0040】
細胞外小胞
用語「細胞外小胞」は、本明細書で使用する場合、細胞から細胞外環境へと放出された小さい粒子様構造を指す。
【0041】
細胞外小胞(EV)は、直径が50nmと1000nmの間の細胞膜又はエンドソーム膜の実質的に球状の断片である。細胞外小胞は、病理学条件と生理学条件の両方の元で様々な細胞型から放出される。細胞外小胞は膜を有する。膜は、二重層膜であり得る(すなわち、脂質二重層)。膜は、細胞膜から生じ得る。したがって、細胞外小胞の膜は、それが由来する細胞と類似の組成を有し得る。本明細書に開示するいくつかの態様では、細胞外小胞は実質的に透明である。
【0042】
用語、細胞外小胞は、エキソソーム、マイクロベシクル、膜微小粒子、エクトソーム、水泡及びアポトーシス小体を包含する。細胞外小胞は、外への出芽及び分裂によって産生され得る。この産生は、天然のプロセス又は化学的に誘導若しくは増強されたプロセスであり得る。本明細書に開示するいくつかの態様では、細胞外小胞は、化学誘導によって産生されたマイクロベシクルである。
【0043】
細胞外小胞は、それらのサイズ及び形成の起源に基づいて、エキソソーム、マイクロベシクル又はアポトーシス体として分類され得る。マイクロベシクルは、本明細書に開示する本発明による細胞外小胞の特に好ましいクラスである。好ましくは、本発明の細胞外小胞は、細胞膜から放出され、エンドソーム系から生じない。
【0044】
本明細書に開示する細胞外小胞は、様々な細胞、例えば赤血球、白血球、がん細胞、幹細胞、樹状細胞、マクロファージ等に由来し得る。好ましい例では、細胞外小胞は、赤血球に由来する。
【0045】
マイクロベシクル又は微小粒子は、細胞膜の直接外への出芽及び分裂によって生じる。マイクロベシクルは、典型的には、エキソソームより大きく、100~500nmの範囲の直径を有する。いくつかの場合では、マイクロベシクルの組成物は、50~1000nm、101~1000nm、101~750nm、101~500nm、又は100~300nm、又は101~300nmの範囲の直径を有するマイクロベシクルを含む。好ましくは、直径は100~300nmである。
【0046】
例えば、本明細書に開示する細胞外小胞組成物は、実質的にサイズが均一であり得る。それらは、平均直径約100nm、約110nm、約120nm、約130nm、約140nm、約150nm、約160nm、約170nm、約180nm、約190nm又は約200nmの平均直径を有し得る。いくつかの場合では、平均直径は約140nmであり、0.05と0.09の間、0.06と0.08の間、又はおよそ0.07の多分散性指数(PDI)である。
【0047】
エキソソームは、およそ30~およそ100nmの範囲である。それらは、リンパ球、樹状細胞、細胞傷害性T細胞、マスト細胞、神経、オリゴデンドロサイト、シュワン細胞、及び腸上皮細胞を含む、様々な培養細胞で観察される。エキソソームは、多胞体(mutivesicular bodies)という、細胞質の大きな嚢内に位置する、エンドソームのネットワークから生じる。これらの嚢は、細胞外環境へと放出される前に、細胞膜へと融合する。
【0048】
アポトーシス体又は小疱は、最大の細胞外小胞であり、1~5μmの範囲である。有核細胞は、核クロマチンの濃縮に始まり、膜小疱形成及び最終的なアポトーシス体を含むEVの放出のいくつかの段階を通してアポトーシスを受ける。
【0049】
好ましくは、細胞外小胞は、ヒト細胞、又はヒト起源の細胞に由来する。本発明の細胞外小胞は、小胞誘導剤と接触した細胞から誘導され得る。小胞誘導剤は、カルシウムイオノフォア、リゾフォスファチジン酸(LPA)、又はフォルボール-12-ミリスチン酸-13-アセテート(PMA)であり得る。
【0050】
赤血球細胞外小胞(RBC-EV)
本明細書に開示する特定の態様では、細胞外小胞は赤血球に由来する。赤血球は、多くの理由によりEVの良い供給源である。赤血球は無核であるため、RBC-EVは、他の供給源からのEVよりも少ない核酸を含有する。RBC-EVは、内因性DNAを含有しない。RBC-EVは、miRNA又は他のRNAを含有し得る。RBC-EVは、発癌性物質、例えば発癌性DNA又はDNA変異を含まない。
【0051】
RBC-EVは、ヘモグロビン及び/又はストマチン及び/又はフロチリン-2を含み得る。それらの色は、赤であり得る。典型的には、RBC-EVは、透過型電子顕微鏡下でドーム状(凹んだ)表面、又は「カップ形」を示す。RBC-EVは、細胞表面CD235aを持つことによって特徴付けられ得る。本発明によるRBC-EVは、直径約100~約300nmであり得る。いくつかの場合では、RBC-EVの組成物は、50~1000nm、50~750nm、50~500nm、50~300nm、101~1000nm、101~750nm、101~500nm、又は100~300nm、又は101~300nmの範囲の直径を有するRBC-EVを含む。好ましくは、直径は100~300nmである。RBC-EVの集団は、異なる範囲の直径を有するRBC-EVを含み、RBC-EV試料内のRBC-EVの平均直径は、50~1000nm、50~750nm、50~500nm、50~300nm、101~1000nm、101~750nm、101~500nm、又は100~300nm、又は101~300nmの範囲であり得る。好ましくは、平均直径は100~300nmの間である。
【0052】
好ましくは、RBC-EVは、ヒト又は動物血液試料又は初代細胞に由来する赤血球又は固定化赤血球株に由来する。血液細胞は、処置される患者にマッチさせた型であってよく、したがって血液細胞は、A型、B型、AB型、O型、又はOh型血液であり得る。好ましくは、血液はO型である。血液は、Rh陽性又はRh陰性であり得る。いくつかの場合では、血液はO型及び/又はRh陰性、例えばO-型である。血液は、疾患又は障害がない、例えばHIV、鎌状赤血球貧血、マラリアがないことが確認され得る。しかしながら、任意の血液型が使用され得る。いくつかの場合では、RBC-EVは自己及び処置される患者から得られた血液試料に由来する。いくつかの場合では、RBC-EVは同種であり、処置される患者から得られた血液試料に由来しない。
【0053】
RBC-EVは、赤血球の試料から単離され得る。赤血球からEVを得るためのプロトコールは当技術分野、例えば、Daneshら、(2014年)Blood.2014 Jan 30;123(5):687~696頁で公知である。EVを得るために有用な方法は、赤血球を含む試料を提供する又は得るステップ、赤血球を誘導して細胞外小胞を産生するステップ、及び細胞外小胞を単離するステップを含み得る。試料は、全血液試料であり得る。好ましくは、赤血球以外の細胞は試料から除去され、試料の細胞成分は赤血球である。好ましくは、赤血球試料は完全に、又は実質的に白血球を含まない。
【0054】
試料の赤血球は、濃縮され、又は全血液試料の他の成分、例えば白血球から分けられ得る。赤血球は、遠心分離によって濃縮され得る。試料は、白血球除去にかけられ得る。
赤血球を含む試料は、実質的に赤血球のみを含み得る。細胞外小胞は、赤血球を小胞誘導剤と接触させることによって赤血球から誘導され得る。小胞誘導剤は、カルシウムイオノフォア、リゾフォスファチジン酸(LPA)、又はフォルボール-12-ミリスチン酸
-13-アセテート(PMA)であり得る。
【0055】
RBC-EVは、遠心分離(超遠心分離あり又はなし)、沈殿、濾過プロセス、例えばタンジェント流濾過、又はサイズ排除クロマトグラフィーによって単離され得る。この方法で、RBC-EVは、RBC及び混合物の他の成分から分離され得る。
【0056】
細胞外小胞は:赤血球の試料を得るステップ;赤血球を小胞誘導剤と接触させるステップ;及び誘導された細胞外小胞を単離するステップを含む方法によって赤血球から得ることができる。
【0057】
赤血球は、低速遠心分離により、及び白血球除去フィルターを使用して、白血球及び血漿を含有する全血液試料から分離され得る。いくつかの場合では、赤血球試料は、他の細胞型、例えば白血球を含有しない。言い換えると、赤血球試料は、実質的に赤血球からなる。赤血球試料は、血漿、血清、緩衝液又は他の担体をさらに含み得る。赤血球は、小胞誘導剤と接触させる前に、緩衝液、例えばPBSで希釈され得る。小胞誘導剤は、カルシウムイオノフォア、リゾフォスファチジン酸(LPA)又はフォルボール-12-ミリスチン酸-13-アセテート(PMA)であり得る。小胞誘導剤は、約10nMのカルシウムイオノフォアであり得る。赤血球は、終夜、又は少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間、少なくとも8時間、少なくとも9時間、少なくとも10時間、少なくとも11時間、少なくとも12時間、又は12時間以上、小胞誘導剤と接触させ得る。混合物は、低速遠心分離にかけ、RBC、細胞残渣、又は他の非RBC-EV物を除去することができ、及び/又は上清を約0.45μmシリンジフィルターに通す。RBC-EVは、超遠心分離、例えばおよそ100,000×gの遠心分離によって濃縮され得る。RBC-EVは、少なくとも10分間、少なくとも20分間、少なくとも30分間、少なくとも40分間、少なくとも50分間、又は少なくとも1時間、超遠心分離によって濃縮され得る。濃縮されたRBC-EVは、冷PBSに懸濁され得る。それらは、60%スクロースクッションに重層され得る。スクロースクッションは、凍結した60%スクロースを含み得る。スクロースクッションに重層したRBC-EVは、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間、少なくとも8時間、少なくとも9時間、少なくとも10時間、少なくとも11時間、少なくとも12時間、少なくとも13時間、少なくとも14時間、少なくとも15時間、少なくとも16時間、少なくとも17時間、少なくとも18時間以上、100,000×gで超遠心分離にかけられ得る。好ましくは、スクロースクッションに重層したRBC-EVは、約16時間、100,000×gで超遠心分離にかけられ得る。次いで、スクロースクッション上の赤い層が回収され、それによりRBC-EVが得られる。得られたRBC-EVは、さらなるプロセシング、例えば洗浄、及び場合により積載にかけられ得る。
【0058】
赤血球からの細胞外小胞の精製
本明細書に開示する特定の態様では、細胞外小胞は赤血球に由来する。赤血球は、多くの理由によりEVの良い供給源である。赤血球は無核であるため、RBC-EVは、他の供給源からのEVよりも少ない核酸を含有する。RBC-EVは、内因性DNAを含有しない。RBC-EVは、miRNA又は他のRNAを含有し得る。RBC-EVは、発癌性物質、例えば発癌性DNA又はDNA変異を含まない。
【0059】
RBC-EVは、ヘモグロビン及び/又はストマチン及び/又はフロチリン-2を含み得る。それらの色は、赤であり得る。典型的には、RBC-EVは、透過型電子顕微鏡下でドーム状(凹んだ)表面、又は「カップ形」を示す。RBC-EVは、細胞表面CD235aを持つことによって特徴付けられ得る。本発明によるRBC-EVは、直径約100~約300nmであり得る。いくつかの場合では、RBC-EVの組成物は、50~1000nm、50~750nm、50~500nm、50~300nm、101~1000nm、101~750nm、101~500nm、又は100~300nm、又は101~300nmの範囲の直径を有するRBC-EVを含む。好ましくは、直径は100~300nmである。RBC-EVの集団は、異なる範囲の直径を有するRBC-EVを含み、RBC-EV試料内のRBC-EVの平均直径は、50~1000nm、50~750nm、50~500nm、50~300nm、101~1000nm、101~750nm、101~500nm、又は100~300nm、又は101~300nmの範囲であり得る。好ましくは、平均直径は100~300nmの間である。
【0060】
好ましくは、RBC-EVは、ヒト又は動物血液試料又は初代細胞に由来する赤血球又は固定化赤血球株に由来する。血液細胞は、処置される患者にマッチさせた型であってよく、したがって血液細胞は、A型、B型、AB型、O型、又はOh型血液であり得る。好ましくは、血液はO型である。血液は、Rh陽性又はRh陰性であり得る。いくつかの場合では、血液はO型及び/又はRh陰性、例えばO-型である。血液は、疾患又は障害がない、例えばHIV、鎌状赤血球貧血、マラリアがないことが確認され得る。しかしながら、任意の血液型が使用され得る。いくつかの場合では、RBC-EVは自己及び処置される患者から得られた血液試料に由来する。いくつかの場合では、RBC-EVは同種であり、処置される患者から得られた血液試料に由来しない。
【0061】
RBC-EVは、赤血球の試料から単離され得る。赤血球からEVを得るためのプロトコールは当技術分野、例えば、Daneshら、(2014年)Blood.2014 Jan 30;123(5):687~696頁で公知である。EVを得るために有用な方法は、赤血球を含む試料を提供する又は得るステップ、赤血球を誘導して細胞外小胞を産生するステップ、及び細胞外小胞を単離するステップを含み得る。試料は、全血液試料であり得る。好ましくは、赤血球以外の細胞は試料から除去され、試料の細胞成分は赤血球である。
【0062】
試料の赤血球は、濃縮され、又は全血液試料の他の成分、例えば白血球から分けられ得る。赤血球は、遠心分離によって濃縮され得る。試料は、白血球除去にかけられ得る。
赤血球を含む試料は、実質的に赤血球のみを含み得る。細胞外小胞は、赤血球を小胞誘導剤と接触させることによって赤血球から誘導され得る。小胞誘導剤は、カルシウムイオノフォア、リゾフォスファチジン酸(LPA)、又はフォルボール-12-ミリスチン酸-13-アセテート(PMA)であり得る。
【0063】
RBC-EVは、遠心分離(超遠心分離あり又はなし)、沈殿、濾過プロセス、例えばタンジェント流濾過、又はサイズ排除クロマトグラフィーによって単離され得る。この方法で、RBC-EVは、RBC及び混合物の他の成分から分離され得る。
【0064】
細胞外小胞は:赤血球の試料を得るステップ;赤血球を小胞誘導剤と接触させるステップ;及び誘導された細胞外小胞を単離するステップを含む方法によって赤血球から得ることができる。
【0065】
赤血球は、低速遠心分離により、及び白血球除去フィルターを使用して、白血球及び血漿を含有する全血液試料から分離され得る。いくつかの場合では、赤血球試料は、他の細胞型、例えば白血球を含有しない。言い換えると、赤血球試料は、実質的に赤血球からなる。赤血球は、小胞誘導剤と接触させる前に、緩衝液、例えばPBSで希釈され得る。小胞誘導剤は、カルシウムイオノフォア、リゾフォスファチジン酸(LPA)又はフォルボール-12-ミリスチン酸-13-アセテート(PMA)であり得る。小胞誘導剤は、約10nMのカルシウムイオノフォアであり得る。赤血球は、終夜、又は少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間、少なくとも8時間、少なくとも9時間、少なくとも10時間、少なくとも11時間、少なくとも12時間、又は12時間以上、小胞誘導剤と接触させ得る。混合物は、低速遠心分離にかけ、RBC、細胞残渣、又は他の非RBC-EV物を除去することができ、及び/又は上清を約0.45μmシリンジフィルターに通す。RBC-EVは、超遠心分離、例えばおよそ100,000×gの遠心分離によって濃縮され得る。RBC-EVは、少なくとも10分間、少なくとも20分間、少なくとも30分間、少なくとも40分間、少なくとも50分間、又は少なくとも1時間、超遠心分離によって濃縮され得る。濃縮されたRBC-EVは、冷PBSに懸濁され得る。それらは、60%スクロースクッションに重層され得る。スクロースクッションは、凍結した60%スクロースを含み得る。スクロースクッションに重層したRBC-EVは、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間、少なくとも8時間、少なくとも9時間、少なくとも10時間、少なくとも11時間、少なくとも12時間、少なくとも13時間、少なくとも14時間、少なくとも15時間、少なくとも16時間、少なくとも17時間、少なくとも18時間以上、100,000×gで超遠心分離にかけられ得る。好ましくは、スクロースクッションに重層したRBC-EVは、約16時間、100,000×gで超遠心分離にかけられ得る。次いで、スクロースクッション上の赤い層が回収され、それによりRBC-EVが得られる。得られたRBC-EVは、さらなるプロセシング、例えば洗浄、タグ付け、及び場合により積載にかけられ得る。
【0066】
カーゴ
本明細書に開示する細胞外小胞は、カーゴを積載、又は含有し得る。カーゴは、積み荷(load)とも呼ばれ、核酸、ペプチド、タンパク質、小分子、糖又は脂質であり得る。カーゴは、天然には生じない又は合成の分子であり得る。カーゴは、治療分子、例えば治療オリゴヌクレオチド、ペプチド、小分子、糖又は脂質であり得る。いくつかの場合では、カーゴは治療分子、例えば検出可能部分又は可視化剤でない。カーゴは、その標的細胞に送達された後に標的細胞において治療効果を発揮し得る。例えば、カーゴは、標的細胞で発現される核酸であり得る。それは、特定の遺伝子又は目的のタンパク質の発現を阻害又は増強するために作用し得る。例えば、タンパク質又は核酸を使用して、遺伝子サイレンシング又は修飾のために標的遺伝子を編集することができる。
【0067】
好ましくは、カーゴは外因性分子であり、「非内因性物質」と呼ばれることもある。言い換えると、カーゴは、細胞外小胞、又はそれが由来する細胞で天然には生じない分子である。そのようなカーゴは、好ましくは、細胞によって積載又は産生されるよりも、小胞が形成された後に細胞外小胞へと積載され、それによりそれは細胞外小胞内にも含有される。
【0068】
いくつかの場合では、カーゴは核酸であり得る。カーゴは、RNA又はDNAであり得る。核酸は、一本鎖又は二本鎖であり得る。カーゴは、RNAであり得る。RNAは、治療用RNAであり得る。RNAは、化学合成又はin vitroでの転写によって産生される低分子干渉RNA(siRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、ガイドRNA(gRNA)、環状RNA、マイクロRNA(miRNA)、piwiRNA(piRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、又は長鎖非コードRNA(lncRNA)であり得る。いくつかの場合では、カーゴは、例えば内因性核酸配列、例えば転写因子、miRNA又は他の内因性mRNAに相補的な配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0069】
カーゴは、目的の分子をコードし得る。例えば、カーゴは、Cas9又は別のヌクレアーゼをコードするmRNAであり得る。
細胞では、アンチセンス核酸は相当するmRNAにハイブリダイズして、二本鎖分子を形成する。細胞が二本鎖であるmRNAを翻訳しないため、アンチセンス核酸は、mRNAの翻訳を干渉する。遺伝子のin vitroでの翻訳を阻害するアンチセンス法の使用は、当技術分野で周知である(例えば、Marcus-Sakura,Anal.Biochem.1988年,172:289を参照)。さらに、DNAに直接結合するアンチセンス分子が使用され得る。アンチセンス核酸は一本鎖又は二本鎖核酸であり得る。アンチセンス核酸の非限定的な例は、siRNA(それらの誘導体又は前駆体、例えばヌクレオチド類似体を含む)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、saRNA(小型活性化RNA)及び小型核小体RNA(snoRNA)又は特定のそれらの誘導体又は前駆体を含む。アンチセンス核酸分子は、RNA干渉(RNAi)を刺激し得る。
【0070】
したがって、アンチセンス核酸カーゴは、標的遺伝子の転写を干渉し、標的mRNAの翻訳を干渉し、及び/又は標的mRNAの分解を促進し得る。いくつかの場合では、アンチセンス核酸は標的遺伝子の発現の減少を誘導することができる。
【0071】
本明細書で提供する「siRNA」、「低分子干渉RNA」、「小型RNA」、又は「RNAi」は、二本鎖RNAを形成する核酸を指し、その二本鎖RNAは、遺伝子又は標的遺伝子と同じ細胞で発現される場合、遺伝子又は標的遺伝子の発現を低減又は阻害する能力を有する。ハイブリダイズして二本鎖分子を形成する核酸の相補性部分は、典型的には実質的又は完全な同一性を有する。一実施形態では、siRNA又はRNAiは、標的遺伝子と実質的又は完全な同一性を有する核酸であり、二本鎖siRNAを形成する。実施形態では、siRNAは、相補的な細胞のmRNAと干渉し、それにより相補的なmRNAの発現を干渉することによって遺伝子発現を阻害する。典型的には、核酸は、少なくとも約15~50ヌクレオチド長である(例えば、二本鎖siRNAの各相補性配列は15~50ヌクレオチド長であり、二本鎖siRNAは約15~50塩基対長である)。いくつかの実施形態では、長さは20~30塩基ヌクレオチド、好ましくは約20~25又は約24~29ヌクレオチド長、例えば20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30ヌクレオチド長である。
【0072】
RNAi及びsiRNAは、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Danaら、Int J Biomed Sci.2017年;13(2):48~57頁に記載される。アンチセンス核酸分子は、標的核酸配列に相補的な二本鎖RNA(dsRNA)又は部分的二本鎖RNA、例えばFHR-4を含有し得る。二本鎖RNA分子は、分子内の第1のRNA部分と第2のRNA部分の間の相補性対合によって形成される。RNA配列(すなわち、一部)の長さは、通常30ヌクレオチド長より短い(例えば、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10又はそれより少ないヌクレオチド)。いくつかの実施形態では、RNA配列の長さは18~24ヌクレオチド長である。いくつかのsiRNA分子では、RNA分子の相補性の第1及び第2の部分は、ヘアピン構造の「ステム」を形成する。2つの部分は連結配列によって結合され、ヘアピン構造の「ループ」を形成し得る。連結配列は、長さが様々であってよく、例えば5、6、7、8、9、10、11、12、又は13ヌクレオチド長であり得る。好適な連結配列は、当技術分野で公知である。
【0073】
本発明の方法での使用のための好適なsiRNA分子は、当技術分野で公知のスキームによって設計することができ、例えば、Elbashireら、Nature、2001年 411:494~8頁;Amarzguiouiら、Biochem.Biophys.Res.Commun.2004年 316(4):1050~8頁;及びReynoldsら、Nat.Biotech.2004年、22(3):326~30頁を参照
されたい。siRNA分子を作製する詳細は、いくつかの供給業者、例えばAmbion、Dharmacon、GenScript、Invitrogen及びOligoEngineのウェブサイトで見出すことができる。任意の可能なsiRNA候補の配列は、一般に、BLASTアライメントプログラムを使用して、他の核酸配列又は核酸配列の多型への任意の可能なマッチを調べることができる(国立医学図書館のインターネットウェブサイトを参照)。典型的には、多くのsiRNAが生成及びスクリーニングされ、有効な薬物候補が得られ、米国特許第7,078,196号を参照されたい。siRNAは、ベクターから発現され、及び/又は化学的若しくは合成的に産生され得る。合成RNAiは、市販の供給源、例えばInvitrogen(Carlsbad、Calif)から得ることができる。RNAiベクターは、市販の供給源、例えばInvitrogenからも得ることができる。
【0074】
核酸分子は、miRNAであり得る。用語「miRNA」は、その明白な通常の意味に従って使用され、転写後に遺伝子発現を制御することができる小さい非コードRNA分子を指す。一実施形態では、miRNAは、標的遺伝子と実質的又は完全な同一性を有する核酸である。いくつかの実施形態では、miRNAは相補的な細胞のmRNAと干渉し、それにより相補的なmRNAの発現を干渉することによって遺伝子発現を阻害する。典型的には、miRNAは、少なくとも約15~50ヌクレオチド長である(例えば、miRNAの各相補性配列は15~50ヌクレオチド長であり、miRNAは約15~50塩基対長である)。いくつかの場合では、核酸は合成又は組換え体である。
【0075】
本明細書に開示する核酸は、1つ又は複数の修飾、又は天然には生じないエレメント若しくは核酸を含み得る。好ましい態様では、核酸は、2’-O-メチル類似体を含む。いくつかの場合では、核酸は、3’ホスホロチオエートヌクレオチド間連結又は他のロックド核酸(LNA)を含む。いくつかの場合では、核酸は、ARCAキャップを含む。他の化学修飾核酸又はヌクレオチド、例えば、2’位の糖修飾、2’-O-メチル化、2’-フルオロ修飾、2’NH修飾、5位のピリミジン修飾、8位のプリン修飾、環外アミンにおける修飾、4-チオウリジンの置換、5-ブロモの置換、又は5-ヨード-ウラシル、骨格修飾、メチル化、異常な塩基対の組合せ、例えばイソシチジン及びイソグアニジン等を使用することができる。修飾は、キャッピング等の3’及び5’修飾も含み得る。例えば、核酸は、PEG化され得る。
【0076】
本発明の方法で有用な核酸は、発癌性miRNA(oncomiRとしても公知)又は転写因子を標的化するアンチセンスオリゴヌクレオチド、mRNA、siRNA又はgRNAを含む。カーゴは、リボザイム又はアプタマーであり得る。いくつかの場合では、核酸はプラスミドである。
【0077】
核酸分子は、アプタマーであり得る。本明細書で使用する場合、用語「アプタマー」は、タンパク質、ペプチド、及び小分子に(例えば、高い親和性及び特異性で)結合する、オリゴヌクレオチド(例えば、短鎖オリゴヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチド)を指す。典型的には、アプタマーは、相補性塩基対を形成するそれらの傾向により、二次又は三次構造を規定し、したがって、多様で複雑な分子構造へと折りたたむことができることが多い。三次元構造は、アプタマー結合親和性及び特異性に必須であり、特異的な三次元の相互作用はアプタマー-標的複合体の形成を駆動する。アプタマーは、指数関数的な濃縮(例えば、Ellington AD、Szostak JW、Nature 1990年、346*:818~822頁;Tuerk C,Gold L.Science 1990年、249:505~510頁に記載のSELEX)によるリガンドの全身進化のプロセスにより、又はSOMAmer(slow off-rate modified aptamers)(Gold Lら(2010年)Aptamer-based multiplexed proteomic technology for biomarker discovery.PLoS ONE 5(12):e15004)の開発により、無作為配列の非常に大きなライブラリーからin vitroで選択され得る。
【0078】
本明細書に記載の特定の態様では、カーゴは、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)である。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、miRNA又はmRNAに相補性であり得る。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的mRNA配列と配列が相補性である少なくとも一部を含む。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的配列に結合し、それにより阻害し得る。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的配列の翻訳プロセスを阻害し得る。miRNAは、がんと関連するmiRNA(Oncomir)であり得る。miRNAは、miR-125bであり得る。ASOは、配列5’-UCACAAGUUAGGGUCUCAGGGA-3’を含み得る、又はからなり得る。
【0079】
いくつかの態様では、カーゴは、遺伝子編集システムの1つ又は複数の成分である。例えば、CRISPR/Cas9遺伝子編集システム。例えば、カーゴは、特定の標的配列を認識する核酸を含み得る。カーゴは、gRNAであり得る。そのようなgRNAは、CRISPR/Cas9遺伝子編集において有用であり得る。カーゴは、Cas9 mRNA又はCas9をコードするプラスミドであり得る。他の遺伝子編集分子は、カーゴ、例えばzincフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)又は転写活性化因子用エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)として使用され得る。カーゴは、標的細胞において特定の核酸配列を標的化するように操作された配列を含み得る。遺伝子編集分子は、特異的にmiRNAを標的化し得る。例えば、遺伝子編集分子は、miR-125bを標的化するgRNAであり得る。gRNAは、配列5’-CCUCACAAGUUAGGGUCUCA-3’を含み得る、又はからなり得る。
【0080】
いくつかの実施形態では、方法は、部位特異的ヌクレアーゼ(SSN)を使用する標的遺伝子編集を用いる。SSNを使用する遺伝子編集は、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Eid and Mahfouz,Exp Mol Med.2016年10月;48(10):e265に概説される。部位特異的二本鎖切断(DSB)を創出することができる酵素は、操作され、目的の標的核酸配列にDSBを導入することができる。DSBは、しばしばヌクレオチドの挿入又は欠失によって切断の2つの末端が再結合される、誤りがちな非相同末端結合(NHEJ)によって修復され得る。あるいは、DSBは、切断部位に相同な末端を有するDNA鋳型がDSBの部位に供給及び導入される、高度相同組換え修復(HDR)によって修復され得る。
【0081】
操作され、標的核酸配列特異的DSBを生成することができるSSNは、ZFN、TALEN及びクラスター化規則的間隔回文反復配列/CRISPR関連9(CRISPR/Cas9)システムを含む。
【0082】
ZFNシステムは、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれるUmovら、Nat Rev Genet.(2010年)11(9):636~46頁に概説される。ZFNは、プログラム化可能なZinc Finger DNA結合ドメイン及びDNA切断ドメイン(例えば、FokIエンドヌクレアーゼドメイン)を含む。DNA結合ドメインは、標的核酸配列に結合することができるZinc Fingerアレイをスクリーニングすることによって同定され得る。
【0083】
TALENシステムは、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれるMahfouzら、Plant Biotechnol J.(2014年)12(8):1006~14頁に概説される。TALENは、プログラム化可能なDNA結合TALEドメイン及びDNA切断ドメイン(例えば、FokIエンドヌクレアーゼドメイン)を含む。TALEは、反復可変二残基(RVD)である各反復の12位及び13位における2つの残基以外は同一である、33~39アミノ酸の反復からなる反復ドメインを含む。各RVDは、以下の関係に従って標的DNA配列におけるヌクレオチドへの反復の結合を決定する:「HD」はCに結合し、「NI」はAに結合し、「NG」はTに結合し、「NN」又は「NK」はGに結合する(Moscou and Bogdanove、Science(2009年)326(5959):1501頁)。
【0084】
CRISPRは、クラスター化規則的間隔短鎖回文反復配列(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)の略語である。用語は、これらの配列の起源及び機能が分かっていない場合、及びそれらが原核生物起源であると考えられる場合、まず使用される。CRISPRは、回文配列リピート(ヌクレオチドの配列が両方向で同じである)において短い反復の塩基配列を含有するDNAのセグメントである。各反復は、ウイルス又はプラスミドからの外来DNAの事前の挿入からのスペーサーDNAの短いセグメントが続く。Cas(CRISPR関連)遺伝子の小さいクラスターは、CRISPR配列の隣に位置する。スペーサー配列を持つRNAは、Cas(CRISPR関連)タンパク質が外来病原性DNAを認識及び切断するのを助ける。他のRNAガイドCasタンパク質は外来RNAを切断する。CRISPR/Casシステムの簡単なバージョン、CRISPR/Cas9は、改変されゲノムを編集する。Cas9ヌクレアーゼ及び全身ガイドRNA(gRNA)を細胞に送達することにより、細胞のゲノムは所望の位置で切断され、既存の遺伝子の除去及び/又は新しい遺伝子の追加を可能にする。CRISPR/Casシステムは2つのクラスに分けられる。クラス1システムは、複数のCasタンパク質の複合体を使用し、外来核酸を分解する。クラス2システムは、同じ目的のために単一の大きなCasタンパク質を使用する。クラス1は、I型、III型、及びIV型に分けられる;クラス2は、II型、V型、及びVI型に分けられる。CRISPRゲノム編集はII型CRISPRシステムを使用する。
【0085】
いくつかの態様では、EVは、CRISPR関連カーゴを積載される。言い換えると、EVは、遺伝子編集、例えば治療遺伝子編集を含む方法で有用である。いくつかの場合では、EVはin vitro遺伝子編集に有用である。
【0086】
カーゴはガイドRNAであり得る。ガイドRNAは、CRISPR RNA(crRNA)及びトランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)を含み得る。crRNAは、活性型複合体を形成するtracrRNAに結合する領域と一緒に宿主DNAの正確な部分に位置するガイドRNAを含有する。tracrRNAはcrRNAに結合し、活性型複合体を形成する。gRNAは、tracrRNAとcrRNAの両方を結合させ、それにより活性型複合体をコードする。gRNAは、複数のcrRNA及びtracrRNAを含み得る。gRNAは、目的の配列又は遺伝子に結合するように設計され得る。gRNAは、切断のための遺伝子を標的化し得る。場合により、DNA修復鋳型の任意選択の部分が含まれる。修復鋳型は、非相同末端結合(NHEJ)又は相同修復(HDR)のいずれかで利用され得る。
【0087】
カーゴは、ヌクレアーゼ、例えばCas9ヌクレアーゼであり得る。ヌクレアーゼは、その活性化形態がDNAを修飾することができるタンパク質である。ヌクレアーゼバリアントは、一本鎖ニック、二本鎖切断、DNA結合又は他の異なる機能が可能である。ヌクレアーゼは、DNA部位を認識し、部位特異的DNA編集を可能にする。
【0088】
gRNA及びヌクレアーゼは、プラスミドにコードされ得る。言い換えると、EVカーゴは、gRNAとヌクレアーゼの両方をコードするプラスミドを含み得る。いくつかの場合では、EVはgRNAを含有し、別のEVはヌクレアーゼを含有又はコードする。いく
つかの場合では、EVは、gRNAをコードするプラスミド、及びヌクレアーゼをコードするプラスミドを含有する。したがって、いくつかの態様では、組成物はEVを含んで提供され、EVの部分はCas9などのヌクレアーゼを含み又はコードし、EVの部分はgRNAを含む又はコードする。いくつかの場合では、gRNAを含む又はコードするEVを含有する組成物及びヌクレアーゼをコードする又は含有するEVを含有する組成物は、同時投与される。いくつかの場合では、組成物はEVを含み、EVはgRNAとヌクレアーゼの両方をコードするオリゴヌクレオチドを含有する。
【0089】
CRISPR/Cas9及び関連システム、例えばCRISPR/Cpfl、CRISPR/C2c1、CRISPR/C2c2及びCRISPR/C2c3は、その全体が参照により本明細書に組み込まれるNakadeら、Bioengineered(2017年)8(3):265~273頁に概説される。これらのシステムは、エンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9、Cpf1等)及び一本鎖ガイドRNA(sgRNA)分子を含む。sgRNAは操作され、目的の核酸配列にエンドヌクレアーゼ活性を標的化することができる。
【0090】
いくつかの場合では、核酸は、1つ又は複数の脱分化因子、例えば、「Yamanaka因子」、Oct4、Sox2、Klf4及びMycをコードする1つ又は複数の核酸をコード又は標的化する。
【0091】
いくつかの場合では、カーゴはペプチド又はタンパク質である。それは組換えペプチド又はタンパク質であり得る。好適なペプチド又はタンパク質は、酵素、例えば遺伝子編集酵素、例えばCas9、ZFN、又はTALENを含む。
【0092】
好適な小分子は、細胞傷害性試薬及びキナーゼ阻害剤を含む。小分子は、蛍光プローブ及び/又は金属を含み得る。例えば、カーゴは、超常磁性粒子、例えば酸化鉄粒子を含み得る。カーゴは、超小型超常磁性酸化鉄粒子、例えば酸化鉄ナノ粒子であり得る。
【0093】
いくつかの場合では、カーゴは検出可能部分、例えば蛍光デキストランである。カーゴは、放射活性に標識され得る。
カーゴは、電気穿孔によって細胞外小胞に積載され得る。電気穿孔、又は電気透過(electropermeabilization)は、細胞膜の透過性を増加させるために電界が細胞に適用される微生物学技術であり、化学物質、薬物、又はDNAを細胞に導入することを可能にする。言い換えると、細胞外小胞は、電気穿孔によってカーゴを封入するように誘導又は強制され得る。したがって、本明細書に開示する方法は、カーゴ分子の存在下で細胞外小胞を電気穿孔するステップ、又は細胞外小胞及びカーゴ分子の混合物を電気穿孔するステップを含み得る。
【0094】
本明細書に開示する他の方法では、カーゴは、超音波処理、超音波、リポフェクション、又は低張性透析によって細胞外小胞へと積載される。
積載方法
細胞外小胞へカーゴを積載するのに好適な方法は、細胞外小胞の膜の透過性の一次的又は半永久的な増加を必要とし得る。好適な方法は、電気穿孔、超音波処理、超音波、リポフェクション又は低張性透析を含む。本明細書に開示する好ましい方法では、RBC-EVはカーゴと接触され、混合物を形成し、混合物は細胞外小胞の膜の透過性を増加するように処置される。混合物は、処置の前に冷却される。それは、1つ又は複数の緩衝液、例えばPBSをさらに含み得る。
【0095】
好ましい方法では、カーゴは、電気穿孔によって細胞外小胞に積載される。電気穿孔、又は電気透過は、細胞膜の透過性を増加させるために電界が細胞に適用される微生物学技
術であり、化学物質、薬物、又はDNAを細胞に導入することを可能にする。言い換えると、細胞外小胞は、電気穿孔によってカーゴを封入するように誘導又は強制され得る。電気穿孔は、電気穿孔キュベット内で懸濁した細胞の1~2ミリメートルの距離に数千ボルトを通過させることによって作用する(1.0~1.5kV、250~750V/cm)。一般に、電気穿孔法は、いくつかの異なるフェーズの複数ステップのプロセスである。まず、短い電気パルスが適用される。典型的なパラメーターは、膜に300~400mVを<1msである。この電位の適用により、周辺溶液からのイオンの移動によって蓄電器のように、膜が荷電される。臨界場に達すると、脂質形態における脂質局在再配置が起こる。生じる構造は、それが導電性ではないため「プレ孔」であると考えられるが、導電性孔の創出を急速にもたらす。そのようなプレ孔の存在の証拠は、多くは孔の「ちらつき」から来ており、導電性と絶縁状態の間の移行を示す。これらのプレ孔は小さい(約3Å)疎水性欠陥であることが示される。この理論が正しい場合、次いで導電性状態への移行は、脂質頭が折りたたまれ、親水性界面を創出する孔の端における再配置によって説明することができる。最後に、これらの導電性孔は治すことができ、二重層再シール形成又は拡大し、場合によりそれを断裂する。生じる結末は、致命的な欠陥サイズを超えるかどうかにより、次に印加電場、局所的な機械的ストレス及び二重層端エネルギーによる。in vivoでの電気穿孔の成功は、電圧、反復、パルス、及び期間に大きく依存する。本明細書に開示する方法は、赤血球由来細胞外小胞を、約25と300Vの間で、又は約50と250Vの間で電気穿孔にかけるステップを含み得る。
【0096】
あるいは、カーゴは、超音波処理によって細胞外小胞へと積載され得る。超音波処理は、様々な目的、例えば植物、微細藻類及び海藻から複数の化合物の抽出のために、試料中の粒子を攪拌する音エネルギー適用の作用である。超音波周波数(>20kHz)が通常使用され、超音波処理(ultrasonication)又は超音波処理(ultra-sonication)としても知られているプロセスに至る。超音波処理は、口語でソニケーターとして知られている超音波浴又は超音波プローブを使用して適用され得る。
【0097】
別の方法では、カーゴは、超音波によって積載される。超音波は、細胞膜を破壊し、それにより細胞に分子を積載することが示されている。20kHz~最高数ギガヘルツの周波数の音波が、RBC-EVに適用され得る。
【0098】
さらに別の方法では、カーゴは、リポフェクションによってRBC-EVに積載され得る。リポフェクション(又はリポソームトランスフェクション)は、それらが両方ともリン脂質二重層でできているため、細胞膜と容易にマージすることができる小胞である、リポソームによって細胞に遺伝物質を注入するために使用する技術である。
【0099】
組成物
本明細書では細胞外小胞を含む組成物を開示する。
組成物は、mlあたり10~1014個の間の粒子を含み得る。組成物は、mlあたり少なくとも10個の粒子、mlあたり少なくとも10個の粒子、mlあたり少なくとも10個の粒子、mlあたり少なくとも10個の粒子、mlあたり少なくとも10個の粒子、mlあたり少なくとも1010個の粒子、mlあたり少なくとも1011個の粒子、mlあたり少なくとも1012個の粒子、mlあたり少なくとも1013個の粒子又はmlあたり少なくとも1014個の粒子を含み得る。
【0100】
組成物は、実質的に相同な大きさを有する細胞外小胞を含み得る。例えば、細胞外小胞は、100~500nmの範囲の直径を有し得る。いくつかの場合では、マイクロベシクルの組成物は、50~1000nm、101~1000nm、101~750nm、101~500nm、又は100~300nm、又は101~300nmの範囲の直径を有するマイクロベシクルを含む。好ましくは、直径は、100~300nmである。いくつかの組成物では、マイクロベシクルの平均直径は、100~300nm、好ましくは150~250nm、好ましくは約200nmである。
【0101】
いくつかの組成物では、細胞外小胞はカーゴを含有する。そのような組成物中でカーゴは、組成物中の実質的に全ての細胞外小胞へと封入されることが望ましいが、本明細書に開示する組成物は、細胞外小胞の少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも97%がカーゴを含有する、細胞外小胞を含み得る。好ましくは、細胞外小胞の少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも97%がカーゴを含有する。いくつかの場合では、組成物中の異なる細胞外小胞は異なるカーゴを含有する。いくつかの場合では、細胞外小胞は、同じ、又は実質的に同じカーゴ分子を含有する。
【0102】
組成物は、医薬組成物であり得る。組成物は、1つ又は複数の細胞外小胞、及び任意選択により薬学的に許容される担体を含み得る。医薬組成物は、投与の特定の経路による投与のために製剤化され得る。例えば、医薬組成物は、静脈内、腫瘍内、腹腔内、皮内、皮下、鼻腔内又は他の投与経路のために製剤化され得る。
【0103】
組成物は緩衝溶液を含み得る。組成物は、保存化合物を含み得る。組成物は、薬学的に許容される担体を含み得る。
処置の方法及び細胞外小胞の使用
本明細書に開示する細胞外小胞は、処置の方法に有用である。特に、方法は、標的遺伝子と関連する障害を患う対象を処置するために有用であり、方法は、有効量の修飾した細胞外小胞を前記対象に投与するステップを含み、修飾した細胞外小胞はその表面に結合する分子を含み、標的細胞において標的遺伝子と相互作用するための非内因性物質を封入する。非内因性物質は、前記処置のための核酸であり得る。
【0104】
本明細書に開示する細胞外小胞は、遺伝的障害、炎症性疾患、がん、自己免疫障害、心血管疾患又は胃腸疾患の処置のために特に有用である。いくつかの場合では、障害は、サラセミア、鎌状赤血球貧血、又は遺伝的代謝障害から選択される遺伝的障害である。いくつかの場合では、細胞外小胞は、肝臓、骨髄、肺、脾臓、脳、膵臓、胃又は腸の障害の処置に有用である。
【0105】
特定の態様では、細胞外小胞は、がんの処置に有用である。本明細書に開示する細胞外小胞は、がん細胞の成長又は増殖を阻害するために有用であり得る。がんは、液体又は血液のがん、例えば白血病、リンパ腫又は骨髄腫であり得る。他の場合では、がんは、固形がん、例えば乳がん、肺がん、肝臓がん、結腸直腸がん、上咽頭がん、腎臓がん又は神経膠腫であり得る。いくつかの場合では、がんは、肝臓、骨髄、肺、脾臓、脳、膵臓、胃又は腸に局在する。
【0106】
障害に応じて標的細胞が処置される。例えば、標的細胞は、乳がん細胞、結腸直腸がん細胞、肺がん細胞、腎臓がん細胞等であり得る。カーゴは、標的遺伝子の発現を阻害又は増強する、また特定の遺伝子をサイレンスにする遺伝子編集を実施するための核酸であり得る。
【0107】
本明細書に記載の細胞外小胞及び組成物は、限定はされないが、全身、腫瘍内、腹腔内、非経口、静脈内、動脈内、皮内、皮下、筋肉内、経口及び鼻腔内を含む、多くの経路によって投与、又は投与のために製剤化され得る。好ましくは、細胞外小胞は、腫瘍内、腹腔内又は静脈内から選択される経路によって投与される。医薬及び組成物は、液体又は固体形態で製剤化され得る。液体製剤は、ヒト又は動物の体の選択された領域への注射による投与のために製剤化され得る。
【0108】
細胞外小胞は、治療用カーゴを含み得る。治療カーゴは、標的細胞において標的遺伝子と相互作用するための非内因性物質であり得る。
投与は、好ましくは、「治療有効量」であり、これは個体に利益を示すのに十分である。投与される実際の量、並びに投与の速さ及び時間経過は、処置される疾患の性質及び重症度による。処置の処方、例えば投与量等の決定は、一般開業医及び他の医師の責任の範囲内であり、典型的には、処置される障害、個々の患者の状態、送達の部位、投与の方法及び医師には公知の他の因子を考慮する。上述の技術及びプロトコールの例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、20th Edition、2000年、pub.Lippincott、Williams & Wilkinsに見出される。
【0109】
細胞外小胞は、単独で、又は処置される状態に応じて同時若しくは順に他の処置と組み合わせて投与され得る。
本明細書に記載のようにカーゴを積載された細胞外小胞は、カーゴを標的細胞に送達するために使用され得る。いくつかの場合では、方法は、in vitroでの方法である。特に好ましいin vitroでの方法では、カーゴは標識する分子又はプラスミドである。
【0110】
処置される対象は、任意の動物又はヒトであり得る。対象は、好ましくは哺乳動物であり、より好ましくはヒトである。対象は、非ヒト哺乳動物であり得るが、より好ましくはヒトである。対象は男性又は女性であり得る。対象は患者であり得る。治療使用は、ヒト又は動物(家畜への使用)であり得る。
【0111】
タンパク質発現
細胞における本発明によるペプチド、例えばペプチド、ポリペプチド又はタンパク質カーゴを産生するために好適な分子生物学技術は、当技術分野で周知であり、例えばSambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,New York:Cold Spring Harbor Press、1989年に記載されるものである。
【0112】
ペプチドは、ヌクレオチド配列から発現され得る。ヌクレオチド配列は、細胞に存在するベクター内に含有され得る、又は細胞のゲノムに組み込まれ得る。
本明細書で使用する場合、「ベクター」は、外来遺伝物質を細胞へと移行させる媒体として使用されるオリゴヌクレオチド分子(DNA又はRNA)である。ベクターは、細胞における外来遺伝物質の発現のための発現ベクターであり得る。そのようなベクターは、発現される遺伝子配列をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結したプロモーター配列を含み得る。ベクターは、終結コドン及び発現エンハンサーも含み得る。本技術分野で公知の任意の好適なベクター、プロモーター、エンハンサー、及び終結コドンは、本発明によるベクターから植物アスパラギン酸プロテアーゼを発現させるために使用され得る。好適なベクターは、プラスミド、バイナリーベクター、ウイルスベクター及び人工染色体(例えば酵母人工染色体)を含む。
【0113】
この明細書では、用語「作動可能に連結した」は、選択されたヌクレオチド配列と制御ヌクレオチド配列(例えば、プロモーター及び/又はエンハンサー)が共有結合され、このような方法で制御配列の影響又は調節下でヌクレオチド配列の発現を起こす(それにより発現カセットを形成する)ような状況を含み得る。したがって、制御配列は、制御配列がヌクレオチド配列の転写に作用することができる場合、選択されたヌクレオチド配列に
作動可能に連結される。適当な場合、生じる転写物は、次いで所望のタンパク質又はポリペプチドに翻訳され得る。
【0114】
ポリペプチドの発現に好適な任意の細胞は、本発明に従ってペプチドを産生するために使用され得る。細胞は、原核生物又は真核生物であり得る。好ましくは、細胞は、真核生物細胞、例えば、酵母細胞、植物細胞、昆虫細胞又は哺乳動物細胞である。いくつかの場合では、細胞は、いくつかの原核生物細胞が真核生物と同じ翻訳後修飾が可能ではないため、原核生物細胞ではない。
【0115】
さらに、非常に高い発現レベルが真核生物において可能であり、タンパク質は、アポトーシスタグを使用して真核生物から容易に精製され得る。特定のプラスミドも利用され、タンパク質の培地への分泌を増強する。
【0116】
目的のペプチドを産生する方法は、ペプチドを発現するように改変された真核細胞の培養又は発酵を含み得る。培養又は発酵は、栄養、空気/酸素及び/又は成長因子を適切に供給したバイオリアクター内で実施され得る。分泌されたタンパク質は、細胞から培養培地/発酵ブロスを分け、タンパク質成分を抽出し、個々のタンパク質を分離して分泌されたアスパラギン酸プロテアーゼを単離することによって回収され得る。培養、発酵及び分離技術は、当業者に周知である。
【0117】
バイオリアクターは、細胞が培養され得る1つ又は複数のベッセルを含む。バイオリアクター内での培養は、リアクターへの反応物質の連続フロー、及びリアクターからの培養細胞の連続フローによって連続的に起こり得る。あるいは、培養はバッチで起こり得る。バイオリアクターは、最適な条件が培養される細胞に提供されるように、周辺条件、例えばpH、酸素、ベッセルへの又はベッセルからの流速、及びベッセル内での攪拌をモニター及び調節する。
【0118】
目的のペプチドを発現する細胞の培養後、ペプチドは好ましくは単離される。当技術分野で公知の細胞培養からのタンパク質を分離するための任意の好適な方法が使用され得る。培養から目的のタンパク質を単離するため、まず、目的のタンパク質を含有する培地から培養細胞を分離する必要があり得る。目的のタンパク質が細胞から分泌される場合、遠心分離により分泌されたタンパク質を含有する培養培地から細胞が分離され得る。目的のタンパク質を細胞内、例えば細胞の液胞内で回収する場合、遠心分離の前に、例えば超音波処置、急速凍結融解又は浸透圧溶解を使用して細胞を破壊する必要がある。遠心分離は、培養細胞、又は培養細胞の細胞残渣、並びに培養培地及び目的のタンパク質を含有する上清を含有するペレットを産生する。
【0119】
次いで、他のタンパク質及び非タンパク質成分を含有し得る上清又は培養培地から目的のタンパク質を単離することが望ましい。上清又は培養培地からタンパク質成分を分離する共通の手法は、沈殿による。異なる溶解性のタンパク質は、異なる濃度の沈殿剤、例えば硫酸アンモニウムで沈殿される。例えば、低濃度の沈殿剤では、水溶性タンパク質が抽出される。したがって、異なる漸増濃度の沈殿剤を添加することにより、異なる溶解性のタンパク質が区別され得る。続いて透析が使用され、分離されたタンパク質から硫酸アンモニウムが除去され得る。
【0120】
異なるタンパク質を区別する他の方法、例えばイオン交換クロマトグラフィー及びサイズクロマトグラフィーが、当技術分野で公知である。これらは、沈殿の代替として使用することができ、又は沈殿に続いて実施することができる。
【0121】
目的のタンパク質が培養から単離されると、タンパク質を濃縮する必要があり得る。目
的のタンパク質を濃縮する多くの方法、例えば限外濾過法又は凍結乾燥法が当技術分野で公知である。
【0122】
それらの特異的形態又は開示した機能を実施する手段、又は開示した結果を得るための方法若しくはプロセスの面から表された、前述の説明、又は以下の特許請求の範囲、又は添付の図面に開示した特徴は、必要に応じて、別々に又はそのような特徴の任意の組合せで、それらの多様な形態で本発明を実現するために利用され得る。
【0123】
本発明は上記の例示的な実施形態と併せて記載されるが、この開示を与えられた場合、多くの同等の改変及びバリエーションが当業者には明らかであろう。したがって、上に記載した本発明の例示的な実施形態は、例であり、限定ではないと考えられる。記載した実施形態への様々な変更が、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく実施され得る。
【0124】
いずれの疑念も避けるため、本明細書に提供する任意の理論的な説明が読み手の理解を改善する目的のために提供される。本発明者らは、これらのいずれの理論的な説明に縛られることを望まない。
【0125】
本明細書で使用するいずれの節の見出しも、構成目的のためだけであり、記載される主題を制限すると解釈されない。
特許請求の範囲を含む、この明細書を通して、他に文脈を必要としない限り、用語「含む(comprise)」及び「含む(include)」、並びにバリエーション、例えば「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、及び「含む(including)」は、言及した整数若しくはステップ、又は整数若しくはステップの群の包括を伴うが、任意の他の整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群の除外ではないと理解されるであろう。
【0126】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈がはっきりと他に示さない限り、複数の参照を含むことに注意しなければならない。範囲は、「約」1つの特定の値から及び/又は「約」別の特定の値までとして本明細書で表され得る。そのような範囲が表される場合、別の実施形態は、1つの特定の値から及び/又は他の特定の値までを含む。同様に、先行する「約」の使用により、値がおよそとして表される場合、特定の値は別の実施形態を形成すると理解されるであろう。用語「約」は、数値に関して、任意選択であり、例えば+/-10%を意味する。
【実施例0127】
実施例1:赤血球細胞外小胞を使用するRNA薬送達及びその方法
RBCEVの精製及び特徴付け
本発明者らは、低コストでRBCからラージスケール量のEVを精製する新しい戦略を考案した。RBCを健康なドナーのO型の血液から得て、終夜カルシウムイオノフォアで処置した。RBCEVの精製は、60%スクロースクッションを使用するタンパク質夾雑物の除去を含む連続遠心分離ステップによって最適化され、Nanosight粒子アナライザー及びZetasizerを使用して決定した、平均直径約140nm及び多分散性指数約0.07を有するEVの相同集団をもたらした(図1a及び図9a、b)。約200mlの血液から単離された、RBCの各単位は、5~10×1013個のEVをもたらした。これらのEVを、平均-11.5mVのZeta電位で負にチャージした(図9c)。EVの形態は、小さいエキソソーム様粒子と大きいマイクロベシクル様粒子の両方の混合物により、透過型電子顕微鏡(TEM)下で異種性であることが分かった(図1b)。精製したRBCEVは、EVマーカー(ALIX及びTSG101)及び主要なRBCタンパク質であるヘモグロビンAが豊富である(図1c)。さらに、RBCEVは、RBCEVのマーカーであるストマチン(STOM)も豊富だったが、多くの細胞型で共通するがRBCには存在しない小胞体マーカーであるカルネキシン(CANX)を完全に欠損した(図1d)。これらのデータは、RBCEVの同一性及び純度を説明し;他の型の血液のEVからの夾雑物はなかった。さらに、RBCEVは、複数回の凍結融解サイクル後も安定であった。TEMとNanosight粒子解析の両方を使用することによって決定したように1~3回の凍結融解サイクル後、凝集又はEVの形態、濃度、又はサイズ分布のいずれの顕著な変化もなかった(図10a,b)。
【0128】
RBCEVを使用する白血病細胞へのASOの送達
RBCEVは、観察できるほどの毒性が無く、高効率で白血病細胞によって取り込まれた。RBCEVとのインキュベーションの24時間後、白血病MOLM13細胞のウェスタンブロット解析は、ヘモグロビンAの明確な取り込みを示し、それは未処置の細胞では存在しなかった(図1e)。MOLM13細胞は、免疫染色とFACSの両方で観察された、蛍光標識EVとのインキュベーションの24時間後に約99%が蛍光陽性になった(図1f、g及び図11)。この取り込みは、ヘパリンがRBCEVと一緒に細胞に添加された場合、60~70%まで減少し、RBCEV取り込みがヘパリン硫酸プロテオグリカンに依存することを示す(図1g、h)。本発明者らは、Alexa Fluor(登録商標)647標識デキストランによるRBCEVの電気穿孔を最適化し、250Vの電圧で最高93.6%の蛍光のEVを得た(図12)。続いて、本発明者らは、ヌクレオチドごとに2’-O-メチル修飾を有するFAM標識スクランブル陰性コントロールASO(FAM-NC-ASO)によりRBCEVを電気穿孔した(図2a)。非電気穿孔RBCEVと電気穿孔RBCEVの密度を比較するため、本発明者らは、3.3×1012個のRBCEVを10~60%のスクロース勾配の上に重層し、150,000×gで16時間、超遠心分離を使用してEVを分離した(図13a)。非電気穿孔RBCEVと電気穿孔RBCEVの両方を、先の報告と一致する約1.12~1.16g/cmの密度を有する20%と40%のスクロース層の中間層で5~7の画分に濃縮した(図13b)。画分6の非電気穿孔及び電気穿孔RBCEVは、同じサイズ分布を示した(図13c)。しかしながら、画分5~7では、電気穿孔RBCEVの濃度は非電気穿孔RBCEVよりも低かった(図13b)。電気穿孔RBCEVの勾配の底には赤いペレットが見出され(非電気穿孔では見出されなかった)、いくつかの電気穿孔EVが凝集体を形成したことを示している。FAM蛍光は、FAM標識ASOを電気穿孔したRBCEVの画分5~7で豊富であり、RBCEVがFAM ASOをうまく積載されたことを示している(図2b)。画分1の未結合のFAM ASOは、EVが豊富な画分よりも高いFAM強度を放射し、FAM ASOの一部のみがRBCEVに積載されたことを示している(図2b)。
【0129】
電気穿孔RBCEVへのRNA積載の推定を改善するため、本発明者らは、10%未変性ゲルを使用して、電気穿孔RBCEVから未結合のASOを分離し、全部で200pmolのASOと比較して、約76%のASOが8.25×1011個のASOを電気穿孔したRBCEV試料からゲルへと移動したことを見出した(図2c)。したがって、約24%のASOが電気穿孔によってRBCEVに積載された。同様の積載効率が、FAM ASOによって電気穿孔したRBCEVにおけるFAM蛍光に基づいて観察された(図14a)。未結合のASOが、電気穿孔RBCEVを含む全ての試料中で単一のバンドとして現れ、FAMシグナルはウェル中で検出されなかったことに注目すべきである。したがって、以前に観察されたCy3又はCy5標識オリゴヌクレオチドの凝集とは異なり、電気穿孔はASOのいずれの凝集も起こさなかった。血清様条件下のRBCEV内でのRNAの安定性を試験するため、本発明者らは、FAM-ASO電気穿孔RBCEV又はFAM ASOとRBCEVの非電気穿孔混合物を、様々なヌクレアーゼを含有する50%FBSと37℃で72時間インキュベートした。電気穿孔したFAM ASOの蛍光シグナルは、非電気穿孔のFAM ASOよりも著しく低い率まで減退した(図14b)。このデータは、FAM ASOが、RBCEVへの組み込みの後、細胞外ヌクレアーゼ媒介分解から保護されたことを示した。
【0130】
本発明者らは、最適な用量である5×10個の細胞を約12×1011個のRBCEVで処置した24時間後、白血病MOLM13細胞におけるFAM標識ASO及びAlexa Fluor(登録商標)647標識Dextranの70~80%の取り込みを観察した(図2d及び図15)。FAM ASOの取り込みは約88%であり、別の白血病細胞株、NOMO1における蛍光標識RBCEVの約85%の取り込みに相当する(図16a~c)。FAM蛍光は、非封入(未結合)FAM ASOとのインキュベーションの24時間後に約0.4%のMOLM13細胞及びNOMO1細胞で観察された(図2d、e及び図16c)。4日間にわたり、このシグナルは、2.1%のMOLM13細胞に増加し、非封入FAM ASOが、ジムノティック送達により、MOLM13細胞のとても小さい集団によってゆっくりと取り込まれたことを示している(図17)。4日後、FAM陽性MOLM13細胞のパーセンテージは、さらなるFAM ASO処置によっても増加しなかった。しかしながら、同じ期間で、RBCEVによるFAM ASOの送達は、インキュベーションの2日後の75%のFAM陽性細胞から4日後の100%まで、MOLM13細胞においてずっと早い速度で起こった(図17)。これらのデータは、白血病細胞及びほとんどの血液細胞はトランスフェクトが非常に難しい細胞型であると考えられるため、RBCEVが優れた送達効率を提供することを示した。Lipofectamine TM及びINTERFERin(登録商標)を含む、市販のトランスフェクション試薬は、トランスフェクションの24時間後に、MOLM13細胞において約3%のデキストランの取り込み及び33~46%のASOの取り込みのみをもたらした(図2d、e及び図18a)。さらに、RBCEVは細胞にいずれの毒性も引き起こさなかった。これは、Lipofectamine TM3000及びINTERFERin(登録商標)によって引き起こされる細胞死の約20~30%の増加とは対照的である(図2f及び図18b)。したがって、RBCEVによるRNA送達は、現在のトランスフェクション媒体と比較して、白血病細胞においてより高い効率とより低い毒性を示す。
【0131】
125b-ASO積載RBCEVを使用するmiR-125bの阻害
本発明者らは、白血病細胞、前立腺がん、及び乳がんにおいて周知の発癌性microRNAであるmiR-125bをアンタゴナイズするASOの送達におけるRBCEVの治療可能性をさらに調べた。特に、miR-125bは、難治性がん、例えば、その両方とも処置が困難である急性骨髄性白血病及び化学療法抵抗性の乳腺腫瘍のoncomiRである。本発明者らは、miR-125bが、p53腫瘍抑制因子ネットワークにおいて、複数の遺伝子を抑制することによってがん細胞の生存を促進することを示した。これらの研究は、miR-125bが、がん処置の潜在的薬物標的であることを示した。しかしながら、miR-125bを標的とする有効な治療はまだ開発されていない。ここで、本発明者らは、抗miR-125b ASO(125b-ASO)をRBCEVへと電気穿孔し、次いでEVにおける125b-ASOの積載及びMOLM13細胞へのASOの送達を定量した(図3a)。RNaseIfによる6.2×1011個の電気穿孔RBCEVの処置は、配列特異的Taqman qRTPCRを使用して定量し、未処置のASOと比較して約80%の125b-ASOの分解をもたらしたが、RBCEVとの非電気穿孔混合物中の同じ量のASOは完全に分解された(図3b)。このデータは、およそ20%のASO(約24×1012個のコピー)が電気穿孔によってRBCEVへと積載され、したがって、RNaseから保護されたことを示す。125b-ASOのコピー数を定量するため、本発明者らは、Taqman qRT-PCRを使用するASO増幅の標準曲線を作成した(図14c)。この曲線に基づき、本発明者らは、12×1011個の125b-ASO積載RBCEVとのインキュベーションの72時間後、MOML13細胞において約21×10コピーの125b-ASOを見出した(図3c)。
【0132】
125b-ASOの取り込みにより、miR-125bのレベルは、Taqman q
RTPCRを使用して定量したU6b RNAと比較して、用量依存的な方法で、MOLM13細胞において80~95%まで抑制された(図3d)。この結果は、内部コントロールとしてmiR-103aによるmiRCURY-LNA qRTPCRを使用して確認された(図23a)。miR-125bの相同体である、miR-125aも、用量依存的な方法で50~80%まで抑制された(図19a)。同じ効果が、NOMO1細胞で観察された(図19b)。miR-125ファミリーの阻害は、本発明者らが以前に同定したmiR-125ファミリーの標的である、BAK1の著しい増加をもたらした(図3e)。ASO単独では、miR-125b又はBAK1発現にいずれの効果も持たなかった(図3d、e)。125b-ASO-積載RBCEVによる処置も、インキュベーションの3~4日後にMOLM13細胞の増殖を著しく弱めた(図3f)。別のがんタイプでのmiR-125bの機能を試験するため、本発明者らは、同じ処置をヒト乳がんMCF10CA1a(CA1a)細胞に適用した。本発明者らは、125b-ASO-積載RBCEVによる処置後、miR-125a/bの著しいノックダウン及びCA1a細胞の生存の低下を見出した(図19c及び図3g)。
【0133】
乳がんモデルにおけるRBCEVのin vivo分布
本発明者らは、非常に侵襲性及び転移性であることが公知の乳がんCA1細胞の異種移植モデルを使用して、in vivoでのRBCEVの取り込み及び分布を試験した。ルシフェラーゼ発現CA1a細胞を、メスのヌードマウスの左右の脇腹に皮下に移植した(図4a)。1週間後(腫瘍が直径7mmに達したとき)、本発明者らは、PKH26標識RBCEVを左の腫瘍に注射した。in vivo画像化システム(IVIS)を使用して観察し、蛍光シグナルは腫瘍で濃縮され、経時的に徐々に減退した(図4b)。72時間後、PKH26シグナルは腫瘍において依然として検出可能であったが、身体の他の部分では検出できなかった(図4c、d)。腫瘍切片の高解像度画像により、腫瘍における細胞によるPKH26標識RBCEVの内部移行を確認した(図4e)。対照的に、本発明者らが、脇腹に腫瘍を担持するヌードマウスへとPKH26又はDiR標識EVを腹腔内(i.p.)に注射した場合、PKH26又はDiR蛍光は体内に広く分散した(図20a、b)。DiRシグナルは、肝臓、脾臓、胃、腸、腎臓、及び肺で高かった(図20b、c)。PKH26-EVをi.p.注射したマウスからの組織の凍結切片において、本発明者らは、i.p.注射後に腫瘍におけるいくらかのRBCEV取り込みを見出したが、腫瘍内注射よりもずっと少なかった(図20d)。本発明者らは、これらの注射後、いずれの炎症も形態の変化及び肝臓及び他の臓器の細胞内含量の変化も観察しなかった(図21)。したがって、局所注射はRBCEVを腫瘍へとより効果的に送達するが、全身投与はヌードマウスにおいていずれの著しい細胞毒性も無く複数の臓器へとRBCEVを分散した。
【0134】
in vivoでのRBCEVの体内分布は、RBCEVをi.v.注射したNOD scidガンマ(NSG)マウスでも試験した(図27)。RBCEVの体内分布、すなわちi.p.注射による体内分布(図20)及びi.v.注射による体内分布(図27)に基づき、それらは、肝臓、骨髄、肺、脾臓、胃及び腸において疾患を処置することができる。
【0135】
125b-ASO積載RBCEVの腫瘍内注射は乳がんを抑制する
in vivoでのRBCEVプラットフォームの潜在的有用性の評価後、本発明者らはそれを使用して、in vivoでの乳腺腫瘍形成におけるその役割が試験されていないmiR-125bを標的化した。本発明者らは、3日毎に腫瘍内注射によって、125b-ASO積載RBCEVをルシフェラーゼ標識CA1a腫瘍へと送達した(図5a)。乳腺腫瘍増殖は、処置の30~42日後のNC-ASO積載RBCEVと比較した腫瘍の生物発光の減少から観察されるように、125b-ASO積載RBCEVによって著しく弱められた(図5b、d)。RBCEV無しでの125b-ASOの注射は、NC-AS
O処置と比較して腫瘍増殖にいずれの著しい変化ももたらさなかった。コントロールと125b-ASO積載RBCEV処置マウスの間の全体的な重量の著しい違いはなく、125b-ASO積載RBCEVが全体的な体重の減少及び毒性を生じることなく特異的に腫瘍の縮小を誘導したことを示す(図5c)。回収した場合、125b-ASO-積載RBCEV処置した腫瘍は、コントロールより小さかった(図5e)。腫瘍切片のヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色は、125b-ASO積載RBCEV処置した腫瘍が侵襲性も低く、転移性も低いことが肺で観察されたことを示した(図5f)。驚くべきことに、miR-125bは、125b-ASO-積載RBCEV処置した腫瘍において約95%まで減少した(図5g)。これらのデータは、RBCEVが、in vivoで乳がん細胞によって貪欲に取り込まれ、RBCEVが治療ASOを送達し、oncomiRを効果的にアンタゴナイズし、いずれの観察できるような副反応なく腫瘍形成を抑制できることを示した。
【0136】
125b-ASO-積載RBCEVの全身注射は、AMLの進行を抑制した
本発明者らは、RBCEVが、in vitroでのmiR-125b機能の有効な阻害のため、AML細胞へと125b-ASOを容易に送達する強固な媒体であることを示した。in vivoでの125b-ASO積載RBCEVの機能的有効性を試験するため、本発明者らはNSGマウスにおいてAMLの異種移植モデルを確立することを考えた。第1に、本発明者らは、EVの全身投与後のこれらのマウスの循環におけるRBCEVの分布を決定した(図6a)。3.3×1012個のPKH26標識RBCEV(以降、1用量として表す)の静脈内(i.v.)注射直後に、本発明者らは、40%より多くの循環するPKH26陽性のEVを見出した(図6b)。PKH26陽性EVのパーセンテージは、6時間かけて低下し、12時間後には34.5%残った。循環するヒトRBCEVの減少は、いくらかのEVが経時的にマウス組織によって取り込まれたことを示した。RBCEVがi.p.注射によってNSGマウスの様々な臓器に分配され得ることを確認するため、本発明者らは、2用量のDiR-標識RBCEVを24時間間隔でi.p.により投与した。2回目の投与の24時間後、本発明者らは、蛍光IVISを使用して、明るいDiRシグナルを肝臓、脾臓、胃、及び腸において見出した(図6c~e)。内部臓器へのRBCEVの強固な送達は、i.p.投与したRBCEVが、白血病が通常発生する肝臓及び脾臓において白血病細胞を効果的に処置できることを示した。高密度な骨によるDiRシグナルの遮断及び長い励起/放射波長(DiRは750/780nm)の顕微鏡フィルター又はサイトメーターフィルターが利用できないことにより、本発明者らは、切除した骨又は骨髄液からDiRを検出できなかった。骨髄は白血病細胞が戻る主要な区画であるため、本発明者らは、FACSによって検出可能な近赤外光膜色素であるVivo-Track-680(VVT)で標識したRBCEVを使用して骨髄細胞によるRBCEVの取り込みを決定することを試みた(図6f)。実際、VVT蛍光は、FACS解析を使用して、VVT標識RBCEVをi.p.注射したNSGマウスから約40%の骨髄細胞で検出された(図6g、h)。したがって、RBCEVは骨髄細胞によって強く取り込まれ、in vivoでの白血病処置のための治療分子を送達できた。
【0137】
続いて、本発明者らは、ルシフェラーゼ-GFP標識MOLM13細胞を、ブスルファン条件付けNSGマウスの尾静脈に注射することによってAML異種移植を生成した(図7a)。1週間後、白血病性生物発光シグナルが見えるようになると、本発明者らは、マウスを1用量の125b-ASO積載RBCEVで1日おきに処置した。白血病は非常に急速に発生したため、本発明者らは、コントロール群が麻痺及び死滅する前の9日間のみマウスを処置できた(通常、細胞接種後18~20日)。9日目に、コントロール群と比較して、125b-ASO積載RBCEVで処置したマウスにおける白血病性生物発光は著しく減少した(図7b)。コントロールマウスは非常に弱くなったが、125b-ASO-EV処置したマウスは依然として活動的であった。白血病性生物発光シグナルはマウスの体全体に広がり、125b-ASO-積載RBCEV処置群と比較して、コントロー
ルマウスの骨髄、肝臓、及び脾臓に多く蓄積した(図7c)。本発明者らは、本発明者らの研究所の倫理委員会によって規定された制約により、マウスの全体的な生存への処置の効果を評価することができなかった。8日目に死亡した2匹のコントロールマウスを除き、全てのマウスが9日目に屠殺された。GFP+白血病細胞は、コントロールの骨髄における63~70%の細胞を占めるが、体重が変わらないにもかかわらず処置したマウスでは27~46%に減少した(図7d、e)。H&E染色は、コントロール群の肝臓及び脾臓の白血病細胞の広範な浸潤を明らかにしたが、125b-ASO積載RBCEV処置群では見出された白血病細胞は少なかった(図7f)。さらに、qPCR解析は、脾臓及び肝臓においてmiR-125bの著しいノックダウンを示した(図7g)。これらのデータは、RBCEVによって送達された125b-ASOが白血病細胞によって取り込まれ、このモデルにおいて白血病の進行を効果的に抑制したことを示した。したがって、ASO積載RBCEVの全身投与を使用するRNA阻害は、白血病処置の新しい手法を提示し得る。
Cas9 mRNA及びgRNA積載RBCEVによって媒介されるゲノム編集
さらに、本発明者らは、CRISPR-Cas9によるgRNA媒介ゲノム編集のRBCEVプラットフォームを評価した(図8a)。RBCEVを使用するmRNA送達の可能性を試験するため、本発明者らは、HA-タグ付けしたCas9 mRNA(4,521ヌクレオチド)をRBCEVへと電気穿孔し、それらを使用してMOLM13細胞を処置した。本発明者らは、まず、qPCRを使用してRBCEVにおけるCas9 mRNAの積載を定量した。電気穿孔したCas9 mRNAは、RNaseIf媒介分解からRBCEVによって保護されたが、非電気穿孔のCas9 mRNAは完全に分解された(図8b)。特に、約18%のCas9 mRNAがRBCEVに積載及び保護された。本発明者らは、Cas9 mRNAを電気穿孔したRBCEVとの細胞のインキュベーションの24時間後、MOLM13細胞において豊富なCas9 mRNAを検出したが、非電気穿孔のRBCEVによって処置した細胞は検出可能なCas9 mRNAを示さなかった(図8c及び図23b)。Cas9タンパク質は、処置の48時間後に約50%のMOLM13細胞の核において効果的に発現され、抗HAタグ抗体による免疫染色を使用して検出された(図8d、e)。ウェスタンブロット解析により、抗Cas9抗体を使用してCas9タンパク質の発現を確認した(図8f)。
【0138】
続いて、本発明者らは、miRNAのシード配列における潜在的な変異部位を有するヒトmir-125b-2遺伝子座を標的化するgRNAを設計した(図22a)。このgRNAは、配列類似性により、miR-125ファミリーの他の遺伝子座に結合し得る。Cas9 mRNA及び125b-gRNAを積載したRBCEVによるMOLM13細胞の処置は、処置の2日後にmiR-125bの発現の約98%の低下及びmiR-125aの90%の低下をもたらした(図8g及び図22b)。結果として、BAK1は、およそ3倍に上方制御された(図8g)。シークエンシングデータは、各変異クローンにおけるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列から3~8ヌクレオチド離れた切断部位を確認した(図8h)。成熟miR-125配列を破壊する異なるサイズの挿入及び欠失が切断部位に見出された(図8h)。速く、高効率のmiR-125a/bの抑制は、おそらくmiR-125a/bの短い半減期、さらにゲノム編集による。これらのデータは、RBCEVが、機能性CRISPR-Cas9ゲノム編集システムを白血病細胞へと効果的に送達できることを示す。
【0139】
RBCEVがDNAプラスミドも送達できるか試験するため、本発明者らは、Cas9及びGFP gRNAを発現する2つのプラスミドをRBCEVへと電気穿孔し、1週間293T-eGFP細胞を処置した。EGFPノックアウトは、約10%の細胞でのみ観察され(図22c)、DNAプラスミドのサイズが大きいことによるようである。RBCEVは、Cas9 mRNAと抗eGFP gRNAの組合せも、6:50のモル比で電気穿孔した。Cas9 mRNA/gRNA積載RBCEVは、約32%のNOMO1-
eGFP細胞におけるeGFPの完全な欠損をもたらした(図22d)。したがって、RBCEVを使用して、大きなDNAプラスミドの低効率及びRNAの高効率でも、ゲノム編集のためのRNA及びDNAを送達することができる。
【0140】
リンパ腫の処置におけるRBCEV
リンパ腫B95-8細胞によるBodipy標識RBCEVの取り込みは、本発明者らによって研究され(補足図20)、B95-8細胞によるBodipy標識RBCEVの著しい取り込みを示し、したがって、RBCEVはリンパ腫の処置において使用され得ることを示す。
【0141】
考察
まとめると、データは、短鎖RNA、例えばASO及びgRNA、並びに長鎖RNA、例えばCas9 mRNAを含む治療用RNAの多用途送達システムとしてのRBCEVの使用を実証する。ASO及びCRISPR-Cas9は、治療目的の、新薬の開発に繋がらないような標的、例えばoncomiR及び転写因子を含む、目的の任意の遺伝子を標的化するように設計及びプログラムされ得る。以前には、いくつかの研究グループが、RNA送達にEVを使用する利点を実証したが、それらのEVは、全ての対象から容易に得ることができない線維芽細胞及び樹状細胞から生成された。全血漿からのEVはより豊富であり、得るのが簡単であるが、これらのEVは有核細胞を含む多くの細胞型に由来し、遺伝子水平伝播のリスクを依然として持つ。
【0142】
RBCEVプラットフォームは、臨床適用により好適ないくつかの特徴を有する。第1に、単位血液は、それぞれ同種血輸血及び自己血輸血のため、既存の血液バンクから及び患者自身の血液からさえも容易に利用可能である。多くのRBC(約1012個の細胞/L)が各単位血液で利用可能である。したがって、培養で細胞を増やす必要がなく、in
vitroでの変異のいずれの自然増加のリスクもなく、cGMP-条件付き培地又はサプリメントも必要ない。第2に、ラージスケール量(1013~1014個)のEVが、カルシウムイオノフォアによる処置後、RBCから精製され、したがってEVを得るためのスケーラブルな戦略を提供し得る。第3に、遺伝子水平伝播の潜在的なリスクを持つ有核細胞型からのEVとは違い、また予測できないものにより不均一である血漿EVとは違い、除核したRBCはDNAを均一に欠くため、RBCEVは安全である。がんの同種処置のため、がん細胞及び免疫細胞が大量のがん促進EVをがん患者の循環へと放出することが公知であるため、RBCEVは血漿EVより安全である。
【0143】
さらに、全身のトランスフェクション試薬とは違い、RBCEVは非毒性である。液体及び固形がんの本発明者らのin vitro及びin vivoデータによって示したように、RNAはRBCEVで安定であり、レシピエント細胞で完全に機能性である。RBCEVは、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ナノ粒子、及びほとんどの全身のトランスフェクション試薬とは違い、血液型のマッチングにより非免疫原性であるようである。また、本発明者らは、RBCEVが、2つの一般に使用されるトランスフェクション試薬よりも高効率で細胞にRNAを送達することも示した。本発明者らは、短鎖RNAだけでなく、RBCEV中の長鎖mRNAも送達することができる。RBCEVは、立体的な遮断を介してだけでなく、CRISPR-Cas9ゲノム編集を介しても、特定のoncomiR遺伝子を標的化するためにうまく使用されたが、これまでに示されていない。O型Rh-の血液からのRBCEVが、一般的な処置に理想的である。最後に、RBCEVが、それらの完全性及び有効性に影響することなく何サイクルも凍結及び融解され得るという事実は、それらが将来安定な医薬品に開発され得ることを示す。がん標的化ペプチド又は抗体でコートしたRBCEVのさらなる開発は、治療用RNAをがん細胞に特異的に送達し、正常な組織における有害事象を減らすことができる可能性がある。
【0144】
本発明者らによって得られた実験データは、RBCEVが肝臓、骨髄、肺、脾臓、胃及び腸において疾患を処置するために使用され得ることを示す。さらに、RBCEVは、肺がん、肝臓がん、結腸直腸がん、上咽頭がん、神経膠腫、白血病(図1~3、7、8)、乳がん(図3g、図3~5、補足図11b)、腎臓がん(293T細胞、図14c)、及びリンパ腫(図28)を含む、がんの処置で使用され得る。
【0145】
方法
細胞培養
急性骨髄性白血病MOLM13細胞及びNOMO1細胞は、微生物細胞培養のDSMZコレクション(Braunschweig、Germany)から得た。乳がんMCF10CA1a(CA1a)細胞は、Karmanosがん研究所(Wayne State University、USA)から購入した。HEK-293T細胞は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC、USA)から得た。ルシフェラーゼ標識を有するMCF10CA1a細胞は、本発明者らの先の研究で生成した。ATCC HEK-293T細胞から生成した293T-eGFP細胞は、Dr.Albert Cheng(Jackson Lab、USA)から贈られた。eGFPを安定に発現するMOLM13細胞及びNOMO1細胞は、Lipofectamine TM2000を使用してパッケージングプラスミド(Addgeneからのプラスミド、USA)をコトランスフェクトし、フローサイトメトリーを使用してソートしたHEK293T細胞で生成したpCAG-eGFPレンチウイルスの感染によって生成した。白血病細胞及び乳がん細胞株は、10%牛胎仔血清(Biosera、USA)及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン(ThermoFisher Scientific、USA)を含むそれぞれRPMI1640又はDMEM(ThermoFisher Scientific)中で維持した。実験に使用した全ての細胞は、PCRを使用してマイコプラズマの夾雑が陰性であることを試験した。簡潔に言うと、80~100%コンフルエントな培養から100μlの上清を回収し、95℃で5分間加熱した。マイコプラズマDNAは、Taqポリメラーゼ(Xia lab、Xiamen Universityからの贈り物)及びマイコプラズマ特異的プライマー混合物(以下に提供した配列)を使用して、35サイクル:94℃15秒、56℃15秒、72℃30秒;で増幅し、1%アガロースゲルを使用して可視化した。平行して、マイコプラズマも、製造業者のプロトコールに従ってMycofluorマイコプラズマ検出キット(ThermoFisher Scientific)を使用して試験した。MOLM13細胞、NOMO1細胞、CA1a細胞、及び293T細胞は、それらの元々の業者によって確証された。本発明者らも、これらの細胞株の同一性及びGuangzhou IGE Biotechnology(China)による確認サービスによって提供された、ATCC基準に記載の16遺伝子座の複合短鎖タンデムリピート解析を使用してそれらの蛍光/ルシフェラーゼ誘導体を確認した。
【0146】
RBCからのEV精製
O型の血液試料は、インフォームドコンセントを行った香港の健康なドナーから、赤十字社によって得た。ヒト血液試料による全ての実験は、香港城市大学ヒト対象倫理委員会のガイドライン及び認可に従って実施した。RBCは、遠心分離及び白血球除去フィルター(Terumo、Japan)を使用して血漿及び白血球から分離した。単離したRBCは、PBSで希釈し、10mMのカルシウムイオノフォア(Sigma Aldrich)で終夜処置した。EVを精製するため、RBC及び細胞残渣は、600×gで20分間、1600×gで15分間、3260×gで15分間、及び10,000×gで30分間、4℃での遠心分離によって除去された。上清を0.45μmのシリンジフィルターに通した。EVは、TY70Tiローター(Beckman Coulter、USA)を用いる、100,000×gで70分間、4℃での超遠心分離を使用して濃縮した。EVは、冷PBSに再懸濁した。標識のため、半分のEVを20μMのPKH26(Sigma Aldrich、USA)又は1μMのDiR(ThermoFisher Scientific)又は42.62μMのVivo-Track-680(Perkin Elmer)と混合した。標識又は非標識EVを、2mlの凍結60%スクロースクッション上に重層し、SW41Tiローター(Beckman Coulter)を使用して、100,000×gで16時間、4℃でブレーキ速度を落として遠心分離した。EVの赤い層(スクロース上)を回収し、SW41Tiローター(Beckman Coulter)で、100,000×gで70分間、4℃での超遠心分離を使用して、冷PBSで1回(非標識EV)又は2回(標識EV)洗浄した。全ての超遠心分離実験は、Beckman XE-90超遠心(Beckman Coulter)によって実施した。精製したRBCEVは、-80℃で保存した。
【0147】
EV特徴付け
EVの濃度及びサイズ分布は、Nanosight Tracking Analysis NS300システム(Malvem、UK)を使用して定量した。ゼータ電位及び多分散性指数は、Zetasizer Nano(Malvem、UK)を使用して決定した。EVの透過型電子顕微鏡解析では、EVは、等量の4%パラホルムアルデヒドを添加することによって銅グリッド(200メッシュ、ホルムバール炭素膜でコートした)に固定した。PBSによる洗浄後、4%の酢酸ウラニルをEVの化学染色のために添加し、Tecnai12 Bio TVVIN透過型電子顕微鏡(FEI/Philips、USA)を使用して画像を捕捉した。
【0148】
オリゴヌクレオチド配列及び修飾
抗miR-125b ASO(5’-UCACAAGUUAGGGUCUCAGGGA-3’)及び陰性コントロールASO(5’-CAGUACUUUUGUGUAGUACAA-3’)は、Shanghai Genepharma(Shanghai、China)により又はIntegrated DNA Technology(Singapore)により各リボヌクレオチドに2’-O-メチル修飾で合成した。抗miR125b gRNA(5’-CCUCACAAGUUAGGGUCUCA-Synthego Scaffold-3’)及び抗GFP gRNA:(5’-GGGCACGGGCAGCUUGCCGG-Synthego Scaffold-3’)は、Synthego(USA)によって最初の3つの5’末端及び3’末端のRNA残基における2’-O-メチル類似体及び3’ホスホロチオエートヌクレオチド間連結で合成した。
【0149】
EV電気穿孔
RBCEVの電気穿孔は、Gene Pulser Xcell electroporator(BioRad)を使用して、0.4cmキュベットでの、100μFの固定静電容量の指数プログラムを実施した。最適化のため、8.25~16.5×1011個のRBCEVをOptiMEM(ThermoFisher Scientific)中で希釈し、Alexa Fluor(登録商標)647(AF647、ThermoFisher Scientific)とコンジュゲートした4μgのデキストランと混合して総容積200μlにした。100μlのEV混合物のアリコットを各キュベットに添加し、氷上で10分間インキュベートした。電気穿孔は、異なる電圧:50~250Vで試験した。ASO送達のため、約4~16×1011個のRBCEVに、400pmolのスクランブル陰性コントロール(NC)又は抗miR125b ASOを250Vで電気穿孔した。ゲノム編集のため、12.4×1011個のRBCEV(又はMOLM13細胞)に、6pmolのCleanCap TM Cas9 mRNA(Trilink)及び50pmolの抗GFP gRNA又は80pmolの抗mir-125b gRNAを400Vで電気穿孔した。電気穿孔中に形成されたRBCEVの凝集は、強いピペッティングによって溶かした。電気穿孔効率を定量するため、8.25×1011個のデキストラン-AF647電気穿孔EVを5μgのラテックスビーズ(ThermoFish
er Scientific)と終夜インキュベートし、フローサイトメトリーを使用してAF647を解析した。
【0150】
電気穿孔RBCEVにおけるRNA積載効率及び安定性
未結合のASOの量を定量するため、200pmolの非標識又はFAM標識NCASOを8.25×1011個のRBCEVあり又はなしで、電気穿孔あり又はなしで、10% Tris酢酸EDTA(TBE)未変性ゲルに積載し、150Vで30分間分離し、室温で30分間SYBR-Gold染色(ThermoFisher Scientific)又はFAM蛍光を使用して、それぞれ、Gel DocTM EZ Documentationシステム(Bio Rad、USA)により可視化した。実験は独立して3回繰り返した。ASOのSYBR Goldバンドは、imageJ(NIH、USA)を使用して定量し、バックグラウンドでノーマライズした。ゲルのフル画像は、図25に示す。電気穿孔EVにおけるASOの安定性を決定するため、6.2×1011個のRBCEV及び200pmolのFAM ASO非電気穿孔又は電気穿孔混合物を、37℃で1~72時間、OptiMEM中の50%FBSとインキュベートした。混合物は、透明な底の96ウェル黒プレート(Perkin Elmer、USA)に添加し、SynergyTM H1マイクロプレートリーダー(BioTek、USA)を使用してFAM蛍光を解析した。ASO電気穿孔の効率を定量するため、200pmolの125b-ASOを電気穿孔した6.2×1011個のRBCEV、又は同じ量の非電気穿孔EV及び125b-ASOを100ユニットのRNaseIf(New England Biolabs、USA)と37℃で30分間インキュベートした。RNaseは、70℃で10分間インキュベートすることにより熱不活性化した。Trizol-LS(ThermoFisher Scientific)を各試料に添加し、抽出したRNAを以下に記載のように逆転写した。同様に、1μgのCas9 mRNAを電気穿孔した6.2×1011個のRBCEV、又は同じ量の非電気穿孔Cas9 mRNAを25ユニットのRNaseIfと37℃で5分間インキュベートし、RNA抽出及びCas9 mRNAのqRT-PCRにかけた。
【0151】
トップダウンスクロース密度勾配を使用するEV分離
全部で3.7×1012個のFAM ASO積載EVを1mlの10%HEPES/スクロース溶液と混合した。11mlの直線勾配のスクロース(60~10%)を、12.5mlのオープントップSW41超遠心チューブ(Beckman Coulter)に積載した。EV懸濁液をスクロース層の上に重層し、150,000×gで16時間、4℃にて超遠心分離した。スクロース勾配から全部で12画分を黒ウェルプレートに回収し、Synergy(商標)H1マイクロプレートリーダーを使用して解析した。各画分におけるEVの濃度は上記のようにNanoSightを使用して決定した。各画分のスクロースの密度は、屈折計を使用して測定した(VastOcean、China)。
【0152】
in vitroでのRBCEVによるがん細胞の処置
本発明者らは、Nanosight粒子アナライザーを使用する精製のバッチごとにRBCEVの品質管理を実施した。異常に低濃度又は変な凝集を示す試料は廃棄した。培養中細胞は、夾雑の徴候又は形態及び増殖の変化を通常通り調べた。EV取り込みを試験するため、50,000個のMOLM13細胞、CA1a細胞又はNOMO1細胞を、200μlの約4~16×1011個の非電気穿孔又は電気穿孔EV及び24ウェルのウェルにつき300μlの増殖培地と24時間インキュベートした。未処置のコントロールは、200μlの未処置のOptiMEMと同じ培地中で保存した。長いインキュベーション時間を必要とするアッセイのため、24時間後に培地を新しい増殖培地と置き換えた。比較のため、MOLM13細胞に4μg デキストラン-AF647又は800nMのFAM標識NC-ASOを、Lipofectamine TM3000(ThermoFisher Scientific)又はINTERFERin(登録商標)(PolyPlus Transfection、France)で、製造業者のプロトコールに従ってトランスフェクトした。取り込みにおけるヘパリンの効果を試験するため、MOLM13細胞を20μg/mlのヘパリンナトリウム塩(Aladdin、China)で10分間前処置し、次いで20μg/mlのヘパリンナトリウム塩の存在又は不在下で12.4×1011個の非標識又はPKH26標識RBCEVと終夜インキュベートした。RBCEV及びデキストラン又はFAM ASOの取り込みは、フローサイトメトリー又は免疫染色を使用して解析した。
【0153】
フローサイトメトリー解析
FACS緩衝液(0.5%の牛胎仔血清を含有するPBS)中のラテックスビーズ又は細胞のフローサイトメトリーは、CytoFLEX-Sサイトメーター(Beckman
Coulter)又はSH800Zサイトメーター(Sony Biotechnology、USA)を使用して実施し、Flowjo V7又はV10(Flowjo、USA)を使用して解析した。GFP陽性MOLM13細胞又はNOMO1細胞は、滅菌条件下でSony SH800Zセルソーターを使用して選択した。ビーズ又は細胞は、図11&24に示すように、最初にFSC-A及びSSC-Aに基づいてゲートをかけ、残渣及び死細胞(低FSC-A)を除外した。細胞は、FSC-幅対FSC-高さに基づいてさらにゲートをかけ、ダブレット及び凝集体を除外した。白血病NSGマウスの骨髄からのGFP+細胞の解析では、生細胞もCytox blue陰性(PB450チャネル)に基づいて単一細胞集団からゲートをかけた。続いて、図11、24の例によって示すように非染色/未処置の陰性コントロールでは無視できるシグナルを示す集団として、蛍光陽性ビーズ又は細胞を適切な蛍光チャネル:FAM及びGFPはFITC、PKH26及びPIはPE、AF647はAPC、及びVVTはAPCCy5.5でゲートにかけた。
【0154】
ウェスタンブロット解析
全細胞溶解物は、プロテアーゼインヒビター(Biotool)を補足したRIPA緩衝液とインキュベートすることによってEV又は細胞(24ウェルプレートの3ウェルからの細胞を各条件のために合わせた)から抽出した。全部で30又は35μgのタンパク質溶解物を、10%ポリアクリルアミドゲルで分離し、ニトロセルロース膜(GE Healthcare)に移行させた。PM5100 ExcelBand(商標)3-color high range protein ladder(SmoBio、Taiwan)を試料の両側に積載した。ラダーに基づいて膜を水平に2~4枚に切り、0.1% Tween-20(TBST)を含有するTris緩衝生理食塩水中5%の脱脂乳で、室温で1時間ブロックし、一次抗体と4℃で終夜インキュベートした:マウス抗Alix(クローン3A9、カタログ番号SC-53538、Santa Cruz、1:500希釈)、マウス抗Tsg101(クローンC-2、カタログ番号SC-7964、Santa Cruz、1:500希釈)、ウサギ抗ヘモグロビンα(クローンH-80、SC-21005、Santa Cruz、1:1000希釈)、マウス抗カルネキシン(クローンAF18、SC-23954、Santa Cruz、1:500希釈)、マウス抗ストマチン(クローンE-5、SC-376869、Santa Cruz、1:1000希釈)、ウサギ抗GAPDH(クローンFL-335、カタログ番号SC-25778、Santa Cruz、1:1000希釈)、マウス抗Cas9抗体(クローン7A9、カタログ番号844301、BioLegend、1:250希釈)、及びマウス抗チューブリン(クローンDM1A、カタログ番号Ab7291、Abcam、1:1000希釈)。ブロットはTBSTで3回洗浄し、次いでHRPコンジュゲート抗マウス及び抗ウサギ二次抗体(カタログ番号715-035-150及び711-035-152、Jackson ImmunoResearch、1:10000希釈)と室温で1時間インキュベートした。ブロットは、Azure Biosystemsゲルドキュメンテーションシステムを使用して画像化した。ブロットのフル画像は図26に示す。バンドの強度はImage Jを使用して定量及びバックグラウンドを引いた。
【0155】
RNA抽出及びqRT-PCR
全RNAは、Trizol(ThermoFisher)を使用して製造業者のマニュアルに従って細胞又は組織から抽出した。RNA試料は、Nanodrop解析(ThermoFisher)及び1%アガロースゲルを使用して定量及び識別した。十分な濃度(>30ng/μl)、純度(A260/280>1.7)及び完全性(明確な28及び18s rRNAのバンド)を有するものは、高能力のcDNA逆転写キット(ThermoFisher)を使用して製造業者のプロトコールに従ってcDNAに変換した。miR-125a及びmiR-125bのレベルは、Taqman(登録商標)miRNAアッセイ(ThermoFisher)を使用して定量し、U6b snRNAの発現でノーマライズし、又はmiRCURY(商標)LNA(商標)Universal RT
microRNA PCR(Qiagen、Germany)を使用して、miR-103aの発現でノーマライズした。抗miR-125b ASOは、Taqman(登録商標)miRNAアッセイ(ID番号007655_mat)を使用して定量し、U6b snRNAの発現でノーマライズし、又はそのコピー数をASO threshold cycle(Ct)値対0.001~1000pMの段階希釈のASOの濃度の標準曲線に基づいて算出した。mRNAのqRT-PCR解析は、SsofastTM Evagreen(SYBR Green)qPCRマスターミックス(Bio-Rad)を使用して実施し、GAPDH、又は18s rRNA、又はACTBの発現でノーマライズした。全てのqPCR反応は、CFX96 Touch(商標)Real-Time PCR検出システム(Bio-Rad)を使用することによって実施した。
【0156】
mir-125b遺伝子のシークエンシング
mir-125b標的化gRNA及びCas9 mRNA積載RBCEVによって生成されたゲノム編集イベントを同定するため、DNAは、Trizol、続いてフェノールクロロホルム及びエタノール沈殿を使用して、EV処置したMOLM13細胞から抽出した。一次hsa-mir-125b-2配列(383ヌクレオチド)は、遺伝子特異的プライマー(配列は以下に示す)の対及びQ5(登録商標)Hot Startハイフィデリティーマスターミックス(New England Biolabs)を使用して、30サイクル:98℃10秒、64℃30秒、72℃45秒、及び72℃2分間の最終伸長で増幅した。PCR産物は、シークエンシングタグを持つ同じプライマーを使用して再増幅した。ハイスルーシークエンシングは、HiSeq対合末端プラットフォーム(illumina、USA)を使用してNovoGene Sequencing company(Hong Kong)によって実施された。
【0157】
プライマー配列
GAPDHフォワード:GGAGCGAGATCCCTCCAAAAT
GAPDHリバース:GGCTGTTGTCATACTTCTCATGG
18s RNAフォワード:GTAACCCGTTGAACCCCATT
18s RNAリバース:CCATCCAATCGGTAGTAGCG
BAK1フォワード:TGGTCACCTTACCTCTGCAA
BAK1リバース:TCATAGCGTCGGTTGATGTC
SP-Cas9フォワード:AAGGGACAGAAGAACAGCCG SP-
Cas9リバース:ATATCCCGCCCATTCTGCAG
mir-125bフォワード:AATGGTCGTCGTGATTACTCA
mir-125bリバース:TTTTGGGGATGGGTCATGGT
ACTBフォワード:TCCCTGGAGAAGAGCTACGA
ACTBリバース:AGGAAGGAAGGGTGGAAGAG
マイコプラズマ-1フォワード:CGCCTGAGTAGTACGTTCGC
マイコプラズマ-2フォワード:CGCCTGAGTAGTACGTACGC
マイコプラズマ-3フォワード:TGCCTGAGTAGTACATTCGC
マイコプラズマ-4フォワード:TGCCTGGGTAGTACATTCGC
マイコプラズマ-5フォワード:CGCCTGGGTAGTACATTCGC
マイコプラズマ-6フォワード:CGCCTGAGTAGTATGCTCGC
マイコプラズマ-1リバース:GCGGTGTGTACAAGACCCGA
マイコプラズマ-2リバース:GCGGTGTGTACAAAACCCGA
マイコプラズマ-3リバース:GCGGTGTGTACAAACCCCGA
全てのプライマーは、Beijing Genomics Institute(China)によって合成された。
【0158】
細胞生存率の定量
フローサイトメトリー解析のため、白血病細胞はヨウ化プロピジウム(PI)によって室温で15分間染色し、FACS緩衝液によって洗浄し、上記のようにCytoFLEX-Sサイトメーターを使用して解析した。プレートアッセイのため、24ウェルプレートのウェルにつき50,000個のCA1a細胞を播種し、ASO電気穿孔RBCEVで処置した。3日後、細胞をPBSで1回洗浄し、0.5%のクリスタルバイオレット染色溶液(Sigma Aldrich)とインキュベートした。次いで、プレートを水道水流で3回洗浄し、風乾した。その後、500μlの50%酢酸を各ウェルに添加し、吸光度をBiotekマイクロプレートリーダーを使用して570nmで測定した。
【0159】
動物実験
全てのマウス実験を、香港城市大学の動物倫理委員会及び香港SARの保健省によって認可され、Animals(Control of Experiments)Ordinance(Cap.340)及びPrevention of Cruelty to
Animals Ordinance(Cap.169)を含む政府法案に準拠する、実験プロトコールに従って実施した。ヌードマウス(NU/J002019株)及びNSGマウス(NOD.CgPrkdc<scid>112rg<tm1 Wjl>/SzJ005557)は、Jackson Laboratory(USA)から購入し、本発明者らの施設で飼育した。類似の年齢のマウスは、それらの耳タグ又は尾に油性マーカーを使用して番号を標識し、親、体重、サイズ、又は性別のいずれのバイアスもなくコントロール及び処置群に無作為化した(雌のマウスにおいてのみ実施した乳がん実験を除く)。ほとんどの画像化及び組織病理学実験は、データの回収を実施した研究者が処置を実施した者とは異なるように、盲検様式で行った。データは、それらの処置群によってではなく、マウスの数に基づいて記録した。妊娠した、又は実験中の麻酔により偶発的に死亡したマウスは除外した。他の技術的な問題、例えば注射の失敗による擬陽性又は陰性も除外した。
【0160】
in vivoでのEV取り込み及び体内分布の決定
50μlのPBS中、全部で5×10個のCA1a細胞を、等容積の冷Matrigel(Coming)と混合し、6週齢の雌のヌードマウスの左右の脇腹の皮下に注射した。1週間後、腫瘍が直径7mmに達すると、各マウスに16.5×1011個のPKH26標識RBCEVを左脇腹の腫瘍内に注射した。続いてマウスに、アルファルファフリーの食事(LabDiet、USA)を与え、消化器系の自己蛍光を低減させた。IVIS Lumina IIIシステム(Caliper Life Sciences、USA)を使用してPKH26蛍光を毎日測定した。3日目に、マウスを屠殺し、腫瘍を切除し、PKH26を画像化した。腫瘍の凍結切片をDAPIによって染色し、LSM-880 NLO共焦点レーザー走査顕微鏡(Zeiss、Germany)下で観察した。同様に、CA1a腫瘍(7mm)担持マウスに、16.5×1011個のPKH26又はDiR標識RBCEV又はEV標識後最後の洗浄の上清をi.p.注射した。DiR EVを注射したマウスの画像は、IVIS Lumina IIIを使用して処置の24時間後に捕捉した。腫瘍、肝臓、心臓、肺、脾臓、腎臓、胃、及び腸も、IVIS画像化及び組織病理学解析のためDiR/PKH26-EVをi.p.注射したマウスから得た。
【0161】
NSGマウスにおけるRBCEVの体内分布を決定するため、3.3×1012個のDiR標識RBCEV又は最後のEV洗浄の上清を、6~8週齢のNSGマウス(Jackson Lab)に24時間間隔で2回注射した。その後、マウスを屠殺し、IVIS Lumina IIIシステムを使用するDiR蛍光画像化のため臓器を回収した。全身及び組織蛍光画像は、Living Image(登録商標)ソフトウェア(Caliper Life Sciences)を使用して獲得及び解析した。バックグラウンド及び自己蛍光は、未処置又は上清陰性コントロールを使用して決定し、Image-Math機能を使用して画像から引いた。
【0162】
骨髄における細胞によるRBCEVの取り込みを決定するため、3.3×1012個のVVT標識RBCEV又は最後のEV洗浄の上清を、6~8週齢のNSGマウスに24時間間隔で2回注射した(4匹のマウス/群)。2回目の注射の24時間後、マウスを屠殺し、シリンジ及びG25針により粉砕した骨にFACS緩衝液を流すことによってそれらの骨髄を回収した。細胞は70μmストレイナーを通して濾過し、1500rpmで5分間遠心分離し、FACS緩衝液中に再懸濁し、上記のようにSony SH800Zサイトメーターを使用してVVT蛍光(APC-Cy5.5チャネル)を解析した。
【0163】
循環におけるRBCEVの安定性
全部で3.3×1012個のPKH26標識EVを、6週齢のNSGマウス(Jackson Lab)の尾静脈へとi.v.注射した。マウスは、注射後すぐに、又は3、6、及び12時間後に屠殺した。血液を心臓からEDTAチューブへと回収し、800×gで5分間遠心分離した。上清を10mlの冷PBSで希釈し、10,000×gで15分間遠心分離し、0.45μmのフィルターを通過させて残渣を除去した。その後、EVを、100,000×gで90分間、4℃にて超遠心分離した。精製したEVを175μlのPBS中に再懸濁し、37℃で30分間、2.5μgのラテックスビーズとインキュベートし、続いて4℃で終夜インキュベートした。EV結合ラテックスビーズを1mlのFACS緩衝液で、4000×gで10分間洗浄し、PKH26蛍光をCytoFLEX-Sサイトメーター(Beckman)を使用して解析した。
【0164】
乳腺腫瘍へのASOのin vivo送達
全部で5×10個のルシフェラーゼ標識CA1a細胞を等容積のマトリゲルと混合し、6週齢の雌のヌードマウスの脇腹に注射した。24時間後、8.25×1012個のNC/125b-ASO積載(n=8匹のマウス)又は400pmolの未結合のNC/125b-ASO(n=6匹のマウス)を各マウスの腫瘍細胞が注射された同じ部位の脇腹の皮下に注射した。ASO電気穿孔EVの腫瘍内注射は、42日目まで3日毎に繰り返した。全身の生物発光画像を、150mg/kgのD-ルシフェリン(Caliper Life Sciences)のi.p.注射後、IVIS Lumina IIIシステムを使用して6日毎に撮影した。全ての生物発光画像を獲得し、盲検によりLiving Image(登録商標)4.5ソフトウェアを使用して解析した(Caliper Life Sciences)。44日目に、マウスを屠殺し、腫瘍を切除した。各腫瘍の半分を、品質管理(上記のように)に適合しなかったわずかな腫瘍からのRNA試料を除いて、RNA抽出及びmiR-125bのqRT-PCRのためTrizol中でホモジナイズした。腫瘍の他の半分及び肺を下記のように組織病理学解析のために固定した。
【0165】
白血病移植マウスへのASOのin vivo送達
7~8週齢のNSGマウスに、20mg/kgのブスルファン(Santa Cruz
)をi.p.注射した。24時間後、5×10個のルシフェラーゼ及びGFP標識MOLM13細胞を、ブスルファン条件付けマウスの尾静脈へと注射した。1週間後、IVIS Lumina IIIを使用して、生体発光を測定した。白血病細胞の移植が成功したマウス(骨髄における生体発光シグナルによって示される)は、9日間1日おきに3.3×1012個のASO積載EVのi.p.によって処置した(全部で5回投与)。全身の生物発光画像を、150mg/kgのD-ルシフェリンのi.p.注射後、盲検でIVIS Lumina IIIシステムを使用して3日毎に撮影した(Caliper Life Sciences)。処置の9日後、マウスを屠殺した。骨髄を回収し、FACSを使用してGFP陽性細胞を解析した。簡単に言えば、シリンジ及びG25針により粉砕した骨にFACS緩衝液を流すことによって、屠殺したマウスの大腿骨又は脛骨から細胞を回収した。細胞は70μmストレイナーを通して濾過し、1500rpmで5分間遠心分離し、0.5mlのRBC溶解緩衝液中(KHCOで緩衝し、最終pH7.2~7.6に達した水中0.8% NHCl及び0.1mM EDTA)に再懸濁し、氷上で5分間インキュベートした。緩衝液は、10%FBSを含有する5mlのDMEMで中和した。細胞を再び遠心分離し、PBSで1回洗浄し、200μlのFACS緩衝液中に再懸濁した。0.5μlのCytox blue(ThermoFisher Scientific)を、死細胞の同定のために添加した。脾臓及び肝臓を、それぞれRNA抽出及び組織病理学解析のためにTrizol又はホルマリン中に回収した。RNA試料は、品質管理(上記のように)に適合しなかったものを除いて、miR-125bのqRT-PCRのために使用した。
【0166】
組織病理学
マウスからの腫瘍及び他の組織を、10%緩衝ホルマリン(ThermoFisher
Scientific)中で終夜室温にて固定し、続いて70、95、及び100%アルコール中、37℃で脱水し、3槽のキシレン(ThermoFisher Scientific)で透徹し、それぞれ37℃及び62℃で各1時間及び30分、3槽のパラフィンワックス(ThermoFisher Scientific)中で浸透させた。パラフィンブロックを、ミクロトーム(MICROMモデル:HM330)を使用して5μmで切断した。切片を、染色の前に37℃のインキュベーターで乾燥した。切片を、2槽のキシレンで脱脂し、次いで2槽の無水アルコール及び1槽の70%アルコールにそれぞれ10分間浸漬した。切片を、水中で再水和し、Gill’sヘマトキシリン(Surgipath)で15分間染色した。水による洗浄後、染色した切片を0.3%の酸性アルコール中で識別し、水中で再び洗浄し、2%炭酸水素ナトリウム溶液中で青くした。顕微鏡試験は、きれいな細胞質及びバックグラウンドで明確な核染色を調べるために必須である。次いで切片を、0.5%のエオシンにより2分間染色した。水中で手早く洗浄して過剰なエオシン(Merck)を除去した後、切片を95%及び無水アルコール中で脱水した。次いで切片をキシレン中で透徹し、合成封入剤(Shandon)で封入した。
【0167】
免疫染色
MOLM13細胞を4%パラホルムアルデヒド(Sigma Aldrich)で固定し、400rpmで3分間サイトスピンを使用してガラススライドに接着させた。細胞を、5%正常ロバ血清(Jackson ImmunoResearch)でブロックし、0.2% TritonX-100で透過処理し、マウス抗HA抗体(クローンF-7、カタログ番号7392、Cell Signaling Technology、1:250希釈)と4℃で終夜インキュベートし、PBSで3回洗浄し、Alexa Fluor(登録商標)488ロバ抗マウス二次抗体(Jackson ImmunoResearch)と室温で1時間インキュベートした。最終的に、細胞をHoechst(Sigma Aldrich)で5分間室温にて染色し、PBSで3回洗浄した。EV取り込み実験では(図1f)、細胞はHoechstでのみ染色し、いずれの抗体でも染色しなかった。画像は、Nikon Eclipse Ni-E正立蛍光顕微鏡を使用して捕捉した。画像は、ImageJを使用して解析した。Cas9-HA陽性核の数を数え、同じ画像のHoechst陽性核の数によってノーマライズした。Cas9-HA陽性細胞の平均パーセンテージは、各処置の3つの試料から算出した。
【0168】
統計解析
Microsoft Excelを使用して算出したスチューデントのt検定を使用して、処置した試料とコントロールの間の有意差を計算した;試験型は、片側分布及び二試料等分散性を設定した。GraphPad Prism6を使用して算出したMann-whitney検定(片側)を用いて、データが正常な分布に従わない有意差を計算した。GraphPad Prism6を使用して算出した一元配置分散分析を、複数の処置群を含むデータの解析に使用した。<0.05の全てのP値は有意差とみなされた。全てのグラフで、データは、平均±平均の標準誤差(SEM)として表される。定量のため、各実験は通常、3人のドナーからのRBCEV又はこれらの細胞継代からの細胞で3回繰り返した。マウスの実験は、3~8匹のマウスの群で実施した。最小の試料サイズの3は、効果量d=5;α errプローブ=0.05及びパワー=0.95の2つの独立した群の平均差を比較する片側t検定のためGPower解析を使用して決定した。
参考文献
本発明をより完全に記載及び開示し、本発明が関係する技術を言及するため、多くの論文を上記に引用した。これらの参考文献の完全な引用は以下に示す。これらの参考文献のそれぞれの全体が本明細書に組み込まれる
【0169】
【表1】
【0170】
標準的な分子生物学技術に関しては、Sambrook,J.,Russel,D.W.Molecular Cloning,A Laboratory Manual.3ed. 2001年,Cold Spring Harbor,New York:Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図4-1】
図4-2】
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図6-1】
図6-2】
図7-1】
図7-2】
図8-1】
図8-2】
図8-3】
図9-1】
図9-2】
図10-1】
図10-2】
図11
図12
図13
図14
図15
図16-1】
図16-2】
図17
図18
図19-1】
図19-2】
図20-1】
図20-2】
図21
図22-1】
図22-2】
図23
図24
図25
図26-1】
図26-2】
図27
図28
【手続補正書】
【提出日】2023-05-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0170
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0170】
標準的な分子生物学技術に関しては、Sambrook,J.,Russel,D.W.Molecular Cloning,A Laboratory Manual.3ed. 2001年,Cold Spring Harbor,New York:Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい。
発明の態様
[態様1]赤血球に由来し、外因性カーゴを含有する、細胞外小胞。
[態様2]カーゴが、核酸、ペプチド、タンパク質又は小分子である、態様1に記載の細胞外小胞。
[態様3]カーゴが、アンチセンスオリゴヌクレオチド、メッセンジャーRNA、長鎖RNA、siRNA、miRNA、gRNA又はプラスミドからなる群から選択される核酸である、態様1又は態様2に記載の細胞外小胞。
[態様4]核酸が、1つ又は複数の修飾、天然には生じないエレメント又は天然には生じない核酸を含む、態様3に記載の細胞外小胞。
[態様5]1つ又は複数の修飾、天然には生じないエレメント又は天然には生じない核酸が、2’-O-メチル類似体、3’ホスホロチオエートヌクレオチド間連結又は他のロックド核酸(LNA)、ARCAキャップ、化学修飾核酸又はヌクレオチド、又はキャッピング等の3’若しくは5’修飾から選択される、態様4に記載の細胞外小胞。
[態様6]天然には生じないヌクレオチドが、2’位の糖修飾、2’-O-メチル化、2’-フルオロ修飾、2’NH修飾、5位のピリミジン修飾、8位のプリン修飾、環外アミンにおける修飾、4-チオウリジンの置換、5-ブロモの置換、又は5-ヨード-ウラシル、又は骨格修飾から選択される、態様5に記載の細胞外小胞。
[態様7]カーゴが、CRISPR/Cas9遺伝子編集システムの1つ又は複数の成分を含む、態様1に記載の細胞外小胞。
[態様8]カーゴが、ヌクレアーゼ、又はヌクレアーゼをコードするmRNA若しくはプラスミドである、態様7に記載の細胞外小胞。
[態様9]カーゴが、gRNAを含む、態様7に記載の細胞外小胞。
[態様10]アンチセンス核酸を含む、態様1に記載の細胞外小胞。
[態様11]態様1~10のいずれかに記載の1つ又は複数の細胞外小胞を含む組成物。
[態様12]処置の方法での使用のための、態様1~11のいずれかに記載の細胞外小胞又は組成物。
[態様13]態様1に記載の細胞外小胞を、処置を必要とする患者に投与するステップを含む、処置の方法。
[態様14]疾患又は障害の処置のための医薬の製造における、態様1~11のいずれかに記載の細胞外小胞又は組成物の使用。
[態様15]疾患又は障害の処置のための医薬の製造における、態様1~11のいずれかに記載の細胞外小胞又は組成物の使用。
[態様16]処置の方法が、態様1~9のいずれかに記載の細胞外小胞又は組成物の、遺伝的障害、炎症性疾患、がん、自己免疫障害、心血管疾患又は胃腸疾患を有する対象への投与を含む、態様10~12のいずれかに記載の使用のための細胞外小胞又は組成物、処置の方法又は使用。
[態様17]対象ががんを有し、がんが任意選択で白血病、リンパ腫、骨髄腫、乳がん、肺がん、肝臓がん、結腸直腸がん、上咽頭がん、腎臓がん又は神経膠腫から選択される、態様13に記載の使用のための細胞外小胞又は組成物、処置の方法又は使用。
[態様18]a.赤血球の試料を提供すること、ここで前記試料は白血球を含まない;
b.赤血球の試料を小胞誘導剤と接触させること;
c.赤血球から細胞外小胞を分離すること;及び
d.細胞外小胞を回収すること;
e.任意選択で、外因性カーゴの存在下で細胞外小胞を電気穿孔すること
を含む、方法。
[態様19]外因性カーゴの存在下で赤血球に由来する細胞外小胞を電気穿孔することを含む、方法。
[態様20]態様18又は態様10に記載の方法によって得られた細胞外小胞を含む組成物。
【外国語明細書】