(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023099108
(43)【公開日】2023-07-11
(54)【発明の名称】口唇化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/40 20060101AFI20230704BHJP
A61K 8/895 20060101ALI20230704BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20230704BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20230704BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20230704BHJP
A61K 8/29 20060101ALI20230704BHJP
A61K 8/27 20060101ALI20230704BHJP
A61Q 1/04 20060101ALI20230704BHJP
A61Q 1/06 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
A61K8/40
A61K8/895
A61K8/41
A61K8/37
A61K8/81
A61K8/29
A61K8/27
A61Q1/04
A61Q1/06
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073735
(22)【出願日】2023-04-27
(62)【分割の表示】P 2018523279の分割
【原出願日】2016-11-18
(31)【優先権主張番号】P 2016120999
(32)【優先日】2016-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 直人
(74)【代理人】
【識別番号】100137512
【弁理士】
【氏名又は名称】奥原 康司
(72)【発明者】
【氏名】大橋 しほ花
(72)【発明者】
【氏名】蛭間 有喜子
(72)【発明者】
【氏名】松田 崇志
(72)【発明者】
【氏名】松井 隆
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、白くならず透明感に優れた口唇化粧料であって、なおかつUVAからUVBに渡る広い波長領域で顕著な紫外線防御能を有する口唇化粧料を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、(A)(A1)オクトクリレン、ジメチコジエチルベンザルマロネート及びジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルからなる群から選択される少なくとも1種、及び(A2)メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、を含む紫外線吸収剤を5質量%以上;(B)高粘度油分を30質量%以上かつ70質量%以下;及び(C)低粘度油分を20質量%以上かつ40質量%以下含有し、(D)酸化チタン及び酸化亜鉛の合計配合量が0.5質量%以下であり、(E)SPFが20以上かつ臨界波長が370nm以上であることを特徴とする口唇化粧料に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(A1)オクトクリレン、ジメチコジエチルベンザルマロネート及びジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルからなる群から選択される少なくとも1種、及び(A2)メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、を含む紫外線吸収剤を5質量%以上;
(B)高粘度油分を30質量%以上かつ70質量%以下;及び
(C)低粘度油分を20質量%以上かつ40質量%以下含有し、
(D)酸化チタン及び酸化亜鉛の合計配合量が0.5質量%以下であり、
(E)SPFが20以上かつ臨界波長が370nm以上であることを特徴とする口唇化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は口唇化粧料に関する。より詳細には、UVAからUVBに渡る広い波長領域で高い紫外線防御能を発揮し、なおかつ塗布時に白くならず透明性に優れた口唇化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線の害から皮膚を守ることはスキンケア、ボディケアにおける重要な課題の一つであり、紫外線が皮膚に与える悪影響を最小限に抑えるために種々のUVケア化粧料が開発されている。日焼けや炎症等を引き起こすことが知られている中波長紫外線(UVB:波長290~320nm)のみならず、長波長紫外線(UVA:320~400nm)の皮膚への影響(光老化等)が知られるようになり、広い波長領域に渡って紫外線から皮膚を防御する化粧料が種々提案されている。
【0003】
唇は角層が極めて薄く、皮脂腺も殆どなく、天然保湿因子(NMF成分)も少ない部位であるため、唇の水分量は他の皮膚に比べて少なく、水分蒸散速度が速いので、非常に荒れやすく、メラニン量も少ないので紫外線の影響を受けやすいとされている。従って、口唇を紫外線等の外的刺激から保護することは重要な意義を持ち、口紅やリップクリーム等の口唇化粧料の一部に紫外線吸収剤や紫外線散乱剤が配合されるようになっている。
【0004】
ここで、前記したような特徴を持つ唇における経皮吸収は他の部位における経皮吸収に比べて安全性に特に注意する必要があり、その配合成分は経口経路で体内に取り込まれる可能性もあるため、更なる安全性の確保が必要とされる。一方、口紅等の口唇化粧料にはメーキャップ化粧料としても機能も求められ、塗布した際に白くならないことが必要である。
【0005】
特許文献1には、紫外線吸収剤である(A)パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシルと(B)ベンゾフェノン誘導体とを、(C)油分及び(D)粘度調整成分と組み合わせて配合し、30℃における粘度を10000mPa・s以上とすることにより、紫外線吸収能(SPF)が相乗的に向上することに基づき、紫外線吸収剤の配合量を抑制しても従来に比較して高い紫外線防御効果(SPF)を示す油性化粧料が得られると記載されている。
【0006】
しかし、SPF(Sun Protection Factor)は主にUVB領域の紫外線に対する防御能を表す値であり、UVA領域での紫外線防御能については言及されていない。即ち、特許文献1に記載された紫外線吸収剤の組み合わせではSPFの相乗的向上は確認されているが、UVA領域での紫外線防御能はUVB領域に匹敵するほど高くはないと推測される。さらに、実施例に配合されているワックス量では白濁した化粧料となっている可能性が高い。
【0007】
UVA領域における紫外線防御能を向上させるためには、UVA領域に吸収を持つ物質を紫外線吸収剤として配合することや酸化チタンや酸化亜鉛などの無機顔料を紫外線散乱剤として配合するのが一般的である。なかでも紫外線散乱剤は、その表面において紫外線を物理的に散乱及び吸収することにより紫外線防御効果を示すが、皮膚に塗布した際の不自然な白さが問題になることがあった。
【0008】
特許文献2には、(a)紫外線吸収剤の1種又は2種以上を3~15質量%、(b)平均粒子径が35~80nmの酸化亜鉛を10~22質量%、及び任意に(c)白色顔料を0~0.5質量%含む紫外線防御化粧料が開示されている。この化粧料は、粒径の大きな酸化亜鉛を所定量配合して白色顔料の配合量を抑制することにより、不自然に白くならずSPFが30以上、臨界波長が370nm以上というブロードスペクトラム(Broad Spectrum)を達成した化粧料である。しかしながら、この化粧料は通常の皮膚への適用を意図したものであり、口唇化粧料に求められる透明感に欠けると推測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2013-199452号公報
【特許文献2】特開2014-040377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
よって本発明における課題は、白くならず透明感に優れた口唇化粧料であって、なおかつUVAからUVBに渡る広い波長領域で顕著な紫外線防御能を有する口唇化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、特定の紫外線吸収剤を組み合わせて配合し、粘度の異なる油分を所定比率で配合することにより、白さの原因となり得る酸化亜鉛及び酸化チタンの配合量を抑制してもSPFが20以上、臨界波長が370nm以上というブロードスペクトラムを達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、
(A)(A1)オクトクリレン、ジメチコジエチルベンザルマロネート及びジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルからなる群から選択される少なくとも1種、及び(A2)メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、を含む紫外線吸収剤を5質量%以上;
(B)高粘度油分を30質量%以上かつ70質量%以下;及び
(C)低粘度油分を20質量%以上かつ40質量%以下含有し、
(D)酸化チタン及び酸化亜鉛の合計配合量が0.5質量%以下であり、
(E)SPFが20以上かつ臨界波長が370nm以上であることを特徴とする口唇化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の口唇化粧料は、上記(A1)及び(A2)という特定の紫外線吸収剤の組み合わせ、(B)高粘度油分及び(C)低粘度油分を所定量配合することにより、紫外線散乱作用を有する酸化チタン及び酸化亜鉛の配合量を抑制できる。よって、UVAからUVBの広い波長領域に渡って優れた紫外線防御能を有する(「ブロードスペクトラム」が達成できる)のみならず、透明性に優れ、塗布した唇が白くなることがない。その結果、口紅によるメーキャップ効果を阻害することなく、口唇を紫外線から良好に保護することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の口唇化粧料は、(A)紫外線吸収剤を含有し、当該紫外線吸収剤は、(A1)オクトクリレン、ジメチコジエチルベンザルマロネート及びジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルからなる群から選択される少なくとも1種、及び(A2)メトキシケイ皮酸エチルヘキシルを含んでいる。
【0015】
オクトクリレン(2-シアノ-3,3-ジフェニルプロパ-2-エン酸2-エチルヘキシルエステルとも呼ばれる)は、常温で液状のジフェニル化合物である。
ジメチコジエチルベンザルマロネート(ポリシリコーン-15とも呼ばれる)は、常温で液状のシリコーン変性化合物である。
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルは、常温で固形の紫外線吸収剤である。
【0016】
本発明の口唇化粧料は、前記オクトクリレン、ジメチコジエチルベンザルマロネート及びジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルからなる群から選択される少なくとも1種(「A1成分」とも称する)を必須成分として含有する。A1成分を配合しないと、UVBからUVAに渡る広い波長領域で十分な紫外線防御効果が得られない。
【0017】
また、本発明の口唇化粧料は、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル(「A2成分」とも称する)を含有する。
メトキシケイ皮酸エチルヘキシルは常温で液状の紫外線吸収剤であり、化粧料等に汎用されている。
【0018】
本発明の口唇化粧料における紫外線吸収剤(「A成分」とも称する)は、前記A1成分及びA2成分に加えて、化粧料に配合可能な他の紫外線吸収剤を含んでいてもよい。
他の紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、オキシベンゾン-3、オキシベンゾン-5、オキシベンゾン-6等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、パラアミノ安息香酸グリセリル等の安息香酸系紫外線吸収剤、サリチル酸エチルヘキシル等のサリチル酸系紫外線吸収剤、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン等のベンゾイルメタン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤などが例示できる。
【0019】
本発明の口唇化粧料における紫外線吸収剤(A成分)の配合量は5質量%以上、好ましくは5.5質量%以上、より好ましくは6質量%である。配合量が5質量%に満たないと十分な紫外線防御能が得られない。配合量の上限値は特に限定されないが、通常は20質量%以下、好ましくは18質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。
【0020】
本発明の口唇化粧料は、高粘度油分(「B成分」とも称する)及び低粘度油分(「C成分」とも称する)を含有する。
本発明における(B)高粘度油分とは、30℃においてB型粘度計で測定した粘度が2,000mPa・s以上の油分を意味し、(C)低粘度油分とは30℃においてB型粘度計で測定した粘度が2,000mPa・s未満の油分を意味する。
【0021】
本発明で用いられる(B)高粘度油分は、一般的な粘度計で粘度が測定可能な流動性を有する高粘度液状油分を意味し、常温で固形又は一般的な粘度計で粘度が測定不能な硬度を有する油分(以下、本明細書では「ワックス」と称する)は含まない。
【0022】
本発明における(B)高粘度油分としては、リンゴ酸ジイソステアリル、テトライソステアリン酸スクロース、トリイソステアリン、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)等の高粘度エステル油、水添ポリイソブテン(水添イソポリブテン)の高粘度炭化水素油、ジメチコン等の高粘度シリコーン油などが例示されるが、これらに限定されない。これらの中でも、リンゴ酸ジイソステアリル、テトライソステアリン酸スクロース、トリイソステアリン、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、水添ポリイソブテンが好ましく用いられる。
【0023】
本発明で用いられる(C)低粘度油分としては、セバシン酸ジイソプロピル、トリエチルヘキサノイン、ミリスチン酸イソプロピル、コハク酸ジエチルヘキシル等の低粘度エステル油、ミネラルオイル、水添ポリデセン等の低粘度炭化水素油、ジメチコンの低粘度シリコーン油が例示されるが、これらに限定されない。中でも、セバシン酸ジイソプロピル、トリエチルヘキサノイン、ミリスチン酸イソプロピル、コハク酸ジエチルヘキシルが好ましい。
【0024】
なお、本発明の(A)成分に該当する紫外線吸収剤は、その粘度が上記所定範囲であっても、(C)低粘度油分又は(B)高粘度油分には含まれない。
【0025】
本発明の口唇化粧料における(B)高粘度油分の配合量は30質量%以上、好ましくは32質量%以上、より好ましくは35質量%以上である。配合量の上限値は特に限定されないが、通常は70質量%以下、好ましくは68質量%以下、より好ましくは65質量%以下である。
【0026】
本発明の口唇化粧料における(C)低粘度油分の配合量は20質量%以上、好ましくは22質量%以上、より好ましくは25質量%である。配合量の上限値は特に限定されないが、通常は40質量%以下、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
【0027】
本発明の口唇化粧料にあっては、(B)高粘度油分と(C)低粘度油分との配合量比率[(B)/(C)]を、1~5の範囲にするのが好ましく、1~4の範囲にするのが特に好ましい。
【0028】
本発明の口唇化粧料は、前記A~C成分を所定量で配合することにより優れた紫外線吸収能を発揮する。従って、化粧料において紫外線散乱剤として汎用されている酸化チタン及び酸化亜鉛の配合量を抑制することができ、当該粉末によって不自然な白さが生ずることがない。
【0029】
本発明における酸化チタン及び酸化亜鉛は、白色顔料として使用される顔料級の粉末のみならず、平均粒径の小さな微粒子酸化チタン及び微粒子酸化亜鉛も包含する。
本発明の口唇化粧料における酸化チタン及び酸化亜鉛(「D成分」とも称する)の合計配合量は0.5質量%以下、好ましくは0.3質量%以下、より好ましくは0.1質量%である。また、本発明の口唇化粧料は、酸化チタン及び酸化亜鉛を全く含まない態様も包含する。
【0030】
本発明の口唇化粧料は、上記の構成とすることによって、紫外線散乱剤である酸化チタン及び酸化亜鉛の配合量を抑制しても、SPFが20以上かつ臨界波長が370nm以上という特性を有する。即ち、UVAからUVBの広い波長領域に渡って、バランス良く紫外線を防御することが可能である。
【0031】
ここで、本発明における「SPF(Sun Protection Factor)」の値は、特記しない限り、SPF測定装置「SPF MASTER」(登録商標)を用いて測定した値である。
【0032】
臨界波長(Critical Wavelength)とは、2011年6月に公表された米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration (FDA))のファイナル・ルールで導入された指標であり、臨界波長(λc)は下記式で定義される値である。
【数1】
【0033】
簡潔に述べれば、所定のプレートに紫外線防御化粧料を塗布し、4MEDの光を照射した後に吸光スペクトルを測定する。吸光スペクトルにおける290nm~400nmの吸光度の積分値を100%とした場合に、290nmから1nm毎に積分した値が90%になる波長が臨界波長(λc)と定義される。前記ファイナル・ルールでは、この臨界波長(λc)が370nm以上となる製品についてのみ、「ブロードスペクトラム(Broad Spectrum)」と表示して販売することが許される。
【0034】
本発明の口唇化粧料は、前記A~D成分に加えて、リップスティックや口紅(ペースト状、液状)等の口唇化粧料に通常配合され得る他の任意成分を、本発明の効果を阻害しない範囲で含んでいてもよい。
【0035】
特に、本発明の口唇化粧料を固形スティック状又は固形ペースト状とする場合には、ワックス(上記の定義に従う)又は油分増粘剤(ゲル化剤)を配合するのが好ましい。
【0036】
本発明で配合され得るワックスとしては、固体油脂、ロウ類、炭化水素、高級アルコールが挙げられる。例えば、モクロウ、カカオ脂、硬化ヒマシ油等の固体油脂;カルナウバロウ、ミツロウ、キャンデリラロウ、ホホバロウ等のロウ類:ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、セレシン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素ワックス;ベヘニルアルコール、セタノール、バチルアルコール等の高級アルコール;シリコンワックス等が例示される。これらの中でも、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素ワックスを含めることにより、スティック状とする際の固化力(又は成形性)及び白さの防止性が向上するので特に好ましい。
【0037】
本発明の口唇化粧料におけるワックスの配合量は、通常は化粧料全量に対して、好ましくは4~13質量%、より好ましくは7~10質量%である。
【0038】
本発明で配合され得る油分増粘剤(ゲル化剤)としては、デキストリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、有機変性粘土鉱物等が例示できる。デキストリン脂肪酸エステルには、例えば、ミリスチン酸デキストリン、パルミチン酸デキストリン、(パルミチン酸/2-エチルヘキサン酸)デキストリン等が含まれる。グリセリン脂肪酸エステルには、例えば、ベヘン酸グリセリル、オクタステアリン酸グリセリル、エイコ酸グリセリル等が含まれる。
固形ペースト状の化粧料における油分増粘剤の配合量は、2.5質量%~15質量%、好ましくは3.0質量%~12質量%、4.0質量%~10質量%である。
【0039】
他の任意成分としては、水溶性高分子、油溶性高分子、低級アルコール、高級アルコール、界面活性剤、酸化チタン及び酸化亜鉛以外の粉末成分(顔料を含む)、色剤、薬剤等が挙げられるが、これらの例示に限定されるものではない。
【0040】
水溶性高分子としては、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(以下、「AMPS」と略記する)のホモポリマー、あるいはコポリマーが挙げられる。コポリマーは、ビニルピロリドン、アクリル酸アミド、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸ヒドロキシエチル等のコモノマーとからなるコポリマーである。すなわち、AMPSホモポリマー、ビニルピロリドン/AMPS共重合体、ジメチルアクリルアミド/AMPS共重合体、アクリル酸アミド/AMPS共重合体、アクリル酸ナトリウム/AMPS共重合体等が例示される。
【0041】
さらには、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸ナトリウム/アクリル酸アルキル/メタクリル酸ナトリウム/メタクリル酸アルキル共重合体、カラギーナン、ペクチン、マンナン、カードラン、コンドロイチン硫酸、デンプン、グリコーゲン、アラビアガム、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガントガム、キサンタンガム、ムコイチン硫酸、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、グアガム、デキストラン、ケラト硫酸、ローカストビーンガム、サクシノグルカン、キチン、キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天等が例示される。
【0042】
油溶性高分子としては、トリメチルシロキシケイ酸、アルキル変性シリコーン、ポリアミド変性シリコーン、ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、ポリメチルシルセスキオキサン等が例示される。
【0043】
界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、又は両性の界面活性剤が挙げられ、シリコーン系又は炭化水素系の界面活性剤が含まれる。
【0044】
酸化チタン及び酸化亜鉛以外の粉末成分としては、硫酸バリウム、酸化鉄、タルク、マイカ、セリサイト、カオリン、雲母チタン、紺青、酸化クロム、水酸化クロム、シリカ、酸化セリウム等の着色顔料、体質顔料などが挙げられる。また、ナイロンやアクリル系のポリマー球状粉末、シリカ粉末、シリコーン粉末等も必要に応じて配合可能である。
【0045】
本発明の口唇化粧料は、無水又は水を少量(例えば1.5質量%以下)含む油性化粧料の形態とするのが好ましい。具体的な剤型としては、固形(スティック、ペースト)状、クリーム状、ジェル状といった剤型が可能であり、特に固形スティック状又は固形ペースト状の口唇化粧料とするのが好ましい。
【実施例0046】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳述するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。配合量は特記しない限り、その成分が配合される系全量に対する質量%で示す。
【0047】
下記の表1~表4に掲げる処方で口唇化粧料の試料を調製した。次いで、調製した各例の試料について、SPF値及び臨界波長を測定した。
さらに、各試料について、「固化力」、「ツヤ、フィット感」及び「塗布の白さ」について以下の基準で評価した。
【0048】
(1)固化力
固形スティック化粧料、ペースト状化粧料に用いられる常法に従って固化したときの固化力を評価した。
A:問題なく固化出来た。
B:固化は可能であるが崩れ易かった。
C:固化不能であった。
【0049】
(2)ツヤ、フィット感
専門パネルによる実使用試験を行った。
A:ツヤ、フィット感に優れていた。
B:ツヤ、フィット感が劣っていた。
【0050】
(3)塗布の白さ
各試料を唇に適用した際の白さを専門パネルにより評価した。
A:唇が白くならない。
B:唇が不自然に白くなった。
以上の評価結果も表1~表4に併せて示す。
【0051】
【0052】
【0053】
固形スティック状の口紅に関する表1及び表2に示した結果から明らかなように、紫外線吸収剤としてA1成分とA2成分の組み合わせを含み、高粘度油分及び低粘度油分を所定量で含む実施例1~8では高いSPFと370nm以上の臨界波長が達成され、固化力、ツヤ及びフィット感、並びに塗布した外観が白くならないという全ての評価項目で優良な結果が得られた。これらに対して、A1成分を含まない比較例1~4及び6では、SPFが20に達せず、臨界波長も370nmを超えることはなかった。高粘度油分の配合量が30質量%に満たない比較例5では、スティック状に成形(固化)することができなかった。さらに、低粘度油分の配合量が40質量%を超え、高粘度油分(ワックス以外)と低粘度油分の配合量比率((B)/(C))が1未満となる比較例7、低粘度油分の配合量が20質量%に満たず、配合量比率((B)/(C))が5を超える比較例8は、ツヤ感、フィット感が劣るものとなった。
【0054】
【0055】
同じく固形スティック状口紅に関する表3に示した結果では、全ての評価項目において優れていた実施例9~11の試料におけるワックスを、全て炭化水素ワックス以外のワックスに置換した参考例1~3では、スティック固化力が低下し、塗布した際の外観の白さが若干目立つようになった。なお、外観の白さに関しては、ワックスの配合量が13質量%を超えていることも寄与していると考えられる(参考例2及び参考例3)。従って、スティック状の化粧料とする場合は、炭化水素系ワックスを選択して配合量を13質量%以下とするのが好ましい。
【0056】
【0057】
固形ペースト状の口紅化粧料に関する表4に示した結果では、全ての評価項目において優れていた実施例13~15の試料におけるワックス又は油分増粘剤の種類又は配合量を変化させたところ、13質量%を超えるワックスを配合した参考例4では白さが若干目立つようになり、油分増粘剤の配合量を2質量%とした参考例5では固化力が若干不足し、外観の白さも目立つようになった。即ち、固形ペースト状の口紅化粧料とする場合には、油分増粘剤の配合量を2.5質量%以上とするのが好ましい。
【0058】
以下に、本発明によるメーキャップ化粧料の他の処方例を挙げる。下記のメーキャップ化粧料においても鮮やかな蛍光発色及び透明感が得られた。
処方例1:リップグロス
配合成分 配合量(質量%)
1.トリエチルヘキサノイン 10.0
2.水添イソポリブテン 5.0
3.リンゴ酸ジイソステアリル 56.5
4.パルミチン酸デキストリン 10.0
5.セバシン酸ジイソプロピル 10.0
6.ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 1.0
7.メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 5.0
8.酸化鉄 0.1
9.赤色202 0.1
10.トコフェロール 適量
11.香料 適量
12.ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 残余
【0059】
本発明は、以下の態様を包含する。
(第1項)(A)(A1)オクトクリレン、ジメチコジエチルベンザルマロネート及びジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルからなる群から選択される少なくとも1種、及び(A2)メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、を含む紫外線吸収剤を5質量%以上;
(B)高粘度油分を30質量%以上かつ70質量%以下;及び
(C)低粘度油分を20質量%以上かつ40質量%以下含有し、
(D)酸化チタン及び酸化亜鉛の合計配合量が0.5質量%以下であり、
(E)SPFが20以上かつ臨界波長が370nm以上であることを特徴とする口唇化粧料。
(第2項)(B)高粘度油分が、リンゴ酸ジイソステアリル、テトライソステアリン酸スクロース、トリイソステアリン、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、及び水添ポリイソブテンからなる群から選択される少なくとも1種を含む、第1項に記載の口唇化粧料。
(第3項)(C)低粘度油分が、セバシン酸ジイソプロピル、トリエチルヘキサノイン、ミリスチン酸イソプロピル、及びコハク酸ジエチルヘキシルからなる群から選択される少なくとも1種を含む、第1項又は第2項に記載の口唇化粧料。
(第4項)(B)高粘度油分と(C)低粘度油分との配合量比率「(B)/(C)」が、1~5の範囲内である、第1項から第3項のいずれか一項に記載の口唇化粧料。
(第5項)少なくとも1種のワックスを更に含み、固形スティック状である、第1項から第4項のいずれか一項に記載の口唇化粧料。
(第6項)前記ワックスの配合量が4~13質量%である、第5項に記載の口唇化粧料。
(第7項)前記ワックスが、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、及びマイクロクリスタリンワックスからなる群から選択される少なくとも1種の炭化水素ワックスを含む、第5項又は第6項に記載の口唇化粧料。
(第8項)少なくとも1種の油分増粘剤を更に含み、固形ペースト状である、第1項から第4項のいずれか一項に記載の口唇化粧料。
(第9項)前記油分増粘剤の配合量が2.5~15質量%である、第8項に記載の口唇化粧料。
(第10項)前記油分増粘剤が、デキストリン脂肪酸エステルを含む、第8項又は第9項に記載の口唇化粧料。