(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009911
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】振動測定装置および風力発電用CMS装置
(51)【国際特許分類】
G01H 17/00 20060101AFI20230113BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20230113BHJP
G01M 13/04 20190101ALI20230113BHJP
F03D 17/00 20160101ALI20230113BHJP
F03D 80/30 20160101ALI20230113BHJP
【FI】
G01H17/00 A
G01M99/00 A
G01M13/04
F03D17/00
F03D80/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021113574
(22)【出願日】2021-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】500433225
【氏名又は名称】学校法人中部大学
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 和男
(72)【発明者】
【氏名】小川 泰輝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 洋介
【テーマコード(参考)】
2G024
2G064
3H178
【Fターム(参考)】
2G024AC01
2G024AD07
2G024BA11
2G024CA13
2G024FA04
2G024FA11
2G064AA11
2G064AA17
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB22
2G064BA02
2G064BD02
2G064DD02
3H178AA03
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB43
3H178BB56
3H178CC25
3H178DD52X
(57)【要約】
【課題】加速度センサおよび加速度センサ取付具を備え、落雷による高電圧サージに伴う放電の発生を抑制し、加速度センサの故障を抑制できる振動測定装置、およびそれを用いた風力発電用CMS装置を提供する。
【解決手段】振動測定装置100は、加速度センサ10と、加速度センサ取付具21と、絶縁性部材としてのスペーサ32と、熱収縮チューブ31とを備える。加速度センサ10は素子11を含む。加速度センサ取付具21は加速度センサ10の測定対象1側に配置される。スペーサ32は、加速度センサ10と加速度センサ取付具21との間に、両者に接するように挟まれる。熱収縮チューブ31はセンサ外縁10aおよび取付具外縁21aを覆う。熱収縮チューブ31は、平面視において加速度センサ10と加速度センサ取付具21との外側に突出する領域を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の振動を測定可能な素子を含む加速度センサと、
前記加速度センサの前記測定対象が配置されるべき位置側に配置される加速度センサ取付具と、
前記加速度センサと前記測定対象が配置されるべき位置との間に挟まれる絶縁性部材と、
1対のケーブル線と、シールド線と、前記1対のケーブル線およびシールド線を束ねて外側から囲む外被とを含む加速度センサケーブルとを備える、振動測定装置。
【請求項2】
前記絶縁性部材は、前記加速度センサと前記加速度センサ取付具とが重なる方向から平面視したときに前記加速度センサと前記加速度センサ取付具との外側に突出する領域を含む、請求項1に記載の振動測定装置。
【請求項3】
前記絶縁性部材は単一の絶縁性のスペーサであり、
前記加速度センサおよび前記加速度センサ取付具は、絶縁性の固定部材により互いに結合され、
前記固定部材と、前記加速度センサおよび前記加速度センサ取付具との隙間には充填剤が配置される、請求項1または2に記載の振動測定装置。
【請求項4】
前記加速度センサの外縁および前記加速度センサ取付具の外縁を覆う、単一の絶縁性のチューブとを備え、
前記チューブは、前記加速度センサと前記加速度センサ取付具とが重なる方向から平面視したときに前記加速度センサと前記加速度センサ取付具との外径を覆う領域を含む、請求項1に記載の振動測定装置。
【請求項5】
前記加速度センサ取付具は導電性である、請求項1~4のいずれか1項に記載の振動測定装置。
【請求項6】
前記加速度センサ取付具は、前記加速度センサと前記測定対象との間を電気的に絶縁可能であり、
前記絶縁性部材と前記加速度センサ取付具との隙間には、接着剤およびグリスのいずれかが配置される、請求項1~4のいずれか1項に記載の振動測定装置。
【請求項7】
前記加速度センサ取付具は前記加速度センサの前記測定対象側に接続され、
前記加速度センサ取付具は、前記加速度センサと前記測定対象との間を電気的に絶縁可能な前記絶縁性部材であり、
前記加速度センサ取付具の外縁は、平面視における前記加速度センサの外縁の外側に突出する部分を有し、前記突出する部分は前記加速度センサ取付具が前記加速度センサと接続する接続面に沿った方向に対して交差する方向に延在する、請求項1に記載の振動測定装置。
【請求項8】
前記加速度センサ取付具の外縁は波形状を有する、請求項7に記載の振動測定装置。
【請求項9】
前記加速度センサ取付具は、前記加速度センサの前記測定対象側に配置され前記接続面に沿う方向に拡がる第1部分と、前記第1部分から屈曲して前記第1部分から離れるように延びる第2部分とを含み、
前記第1部分と前記第2部分とにより、前記加速度センサは前記加速度センサ取付具に囲まれる、請求項7に記載の振動測定装置。
【請求項10】
前記第2部分と前記加速度センサとの隙間には隙間充填剤が配置され、
前記隙間充填剤は空気よりも絶縁耐力が高い、請求項9に記載の振動測定装置。
【請求項11】
前記加速度センサ取付具に含まれる前記絶縁性部材により前記測定対象と前記加速度センサとの間が電気的に絶縁され、
前記シールド線は、前記絶縁性部材の前記加速度センサ側に電気的に接続される、請求項1に記載の振動測定装置。
【請求項12】
前記シールド線は導電性コネクタと電気的に接続され、
前記導電性コネクタにより、前記シールド線は、前記絶縁性部材の前記加速度センサ側に電気的に接続される、請求項11に記載の振動測定装置。
【請求項13】
前記加速度センサ取付具は金属部と、前記絶縁性部材としての非金属部とを含む、請求項11または12に記載の振動測定装置。
【請求項14】
前記絶縁性部材は前記金属部の表面にコーティングされた絶縁被膜である、請求項13に記載の振動測定装置。
【請求項15】
前記絶縁性部材は樹脂およびセラミックスのいずれかにより形成される、請求項13または14に記載の振動測定装置。
【請求項16】
前記絶縁性部材は前記測定対象と接する、請求項13~15のいずれか1項に記載の振動測定装置。
【請求項17】
前記金属部と前記絶縁性部材とは接着剤により接合される、請求項13に記載の振動測定装置。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1項に記載の振動測定装置を用いた、風力発電用CMS装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、振動測定装置およびそれを用いた風力発電用CMS装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
風車等の測定対象の振動を測定する振動測定装置は、加速度センサと、加速度センサを取り付けるための加速度センサ取付具とを備えている。たとえば特開平7-198740号公報(特許文献1)には、測定対象に固定された状態で加速度センサを支持する加速度センサ取付具が開示されている。当該加速度センサ取付具は、測定対象のベース歪みの加速度センサへの伝達を抑制する。またたとえば実開昭58-14132号公報(特許文献2)には、測定対象と加速度センサとを溶着用ガラスで結合することにより高温下での振動計測ができる、電気絶縁性の加速度センサ取付具の改良に関する開示がなされている。さらに、たとえば実公平5-24025号公報(特許文献3)には、測定対象と加速度センサとの間に絶縁膜を有するユニットベースが配置された振動測定装置が開示されている。当該振動測定装置は、絶縁膜を有するユニットベースにより、後述のグラウンドループが防止され、測定値へのノイズの混入が抑制される。
【0003】
これらの振動測定装置は、落雷等の高電圧サージが加われば、その影響により故障し、振動データが取得できなくなる問題がある。高電圧サージにより加速度センサに過電圧が印加され過電流が流れるためである。これを抑制する観点から、たとえば特開2009-289551号公報(特許文献4)には、雷・静電気・電磁波・磁気等の全ての周波数帯域のノイズが回避できる放電ノイズ吸収素子およびこれを利用したノイズ回避ボックスが紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-198740号公報
【特許文献2】実開昭58-14132号公報
【特許文献3】実公平5-24025号公報
【特許文献4】特開2009-289551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加速度センサおよび加速度センサ取付具とを備える振動測定装置において、落雷などによる高電圧サージに伴う放電の発生を抑制すれば、加速度センサの故障を抑制できる。ところが上記の特開平7-198740号公報、実開昭58-14132号公報および実公平5-24025号公報のいずれも、落雷などによる高電圧サージ、およびそれに伴う放電について検討されていない。また特開2009-289551号公報においては加速度センサと加速度センサ取付具とを備える振動測定装置における落雷による高電圧サージおよび放電について検討されていない。
【0006】
本開示は上記の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、加速度センサおよび加速度センサ取付具を備え、落雷などによる高電圧サージに伴う放電の発生を抑制し、加速度センサの故障を抑制できる振動測定装置、およびそれを用いた風力発電用CMS装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に従った振動測定装置は、加速度センサと、加速度センサ取付具と、絶縁性部材と、加速度センサケーブルとを備える。加速度センサは測定対象の振動を測定可能な素子を含む。加速度センサ取付具は加速度センサの測定対象が配置されるべき位置側に配置される。絶縁性部材は、加速度センサと測定対象が配置されるべき位置との間に挟まれる。加速度センサケーブルは、1対のケーブル線と、シールド線と、1対のケーブル線およびシールド線を束ねて外側から囲む外被とを含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、加速度センサおよび加速度センサ取付具を備え、落雷による高電圧サージに伴う放電の発生を抑制し、加速度センサの故障を抑制できる振動測定装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る振動測定装置の構成を示す模式図である。
【
図2】加速度センサと加速度センサ取付具と、これらを結合するスタッドとの個々の態様を示す模式図である。
【
図3】加速度センサと加速度センサ取付具とをスタッドで結合する工程を示す模式図である。
【
図4】
図1中の点線で囲まれた領域Aにおける加速度センサ取付具と測定対象との接合態様の第1例を示す拡大模式図である。
【
図5】
図1中の点線で囲まれた領域Aにおける加速度センサ取付具と測定対象との接合態様の第2例を示す拡大模式図である。
【
図6】
図1の加速度センサ取付具の材質を変更させたときの、加速度センサ取付具の周波数応答特性の変化を示すグラフである。
【
図7】スペーサのばね定数を決定するために準備される構成の模式図である。
【
図8】
図7の構成を用いて絶縁板の厚みを変更させたときの絶縁板の周波数応答特性の変化を示すグラフである。
【
図9】比較例における振動測定装置に起こるグラウンドループを説明するための模式図である。
【
図10】グラウンドループを抑制するための比較例の第1例に係る振動測定装置の構成を示す模式図である。
【
図11】
図10の比較例の第1例に係る振動測定装置へのサージ電圧の発生による放電を説明するための模式図である。
【
図12】グラウンドループを抑制するための比較例の第2例に係る振動測定装置の構成を示す模式図である。
【
図13】実施の形態2に係る振動測定装置の構成を示す模式図である。
【
図14】実施の形態3に係る振動測定装置の構成を示す模式図である。
【
図15】実施の形態4に係る振動測定装置の構成を示す模式図である。
【
図16】実施の形態5に係る振動測定装置の構成を示す模式図である。
【
図17】実施の形態6に係る振動測定装置の構成を示す模式図である。
【
図18】実施の形態7に係る振動測定装置の構成を示す模式図である。
【
図19】実施の形態8に係る振動測定装置の構成を示す模式図である。
【
図20】実施の形態9に係る振動測定装置の構成を示す模式図である。
【
図21】実施の形態10に係る振動測定装置の構成を示す模式図である。
【
図22】実施の形態11に係る振動測定装置の構成を示す模式図である。
【
図23】実施の形態12に係る振動測定装置の構成を示す模式図である。
【
図24】
図22および
図23における接地端子と加速度センサ取付具との接続態様の第1例を示す模式図である。
【
図25】
図22および
図23における接地端子と加速度センサ取付具との接続態様の第2例を示す模式図である。
【
図26】実施の形態13に係る振動測定装置の構成を示す模式図である。
【
図27】実施の形態14に係る振動測定装置の構成を示す模式図である。
【
図28】実施の形態15に係る振動測定装置の構成を示す模式図である。
【
図29】各実施の形態に係る振動測定装置を用いた風力発電装置の構成を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施の形態について図に基づいて説明する。
【0011】
(実施の形態1)
(振動測定装置の構成)
まず
図1~
図5を用いて、本実施の形態の振動測定装置について説明する。
図1は、実施の形態1に係る振動測定装置の構成を示す模式図である。なお
図1およびこれ以降の各模式図では、装置を上下方向に沿って切断した断面形状を模式的に示している。
図1を参照して、本実施の形態に係る振動測定装置100は、加速度センサ10と、加速度センサ取付具21と、熱収縮チューブ31と、スペーサ32と、加速度センサケーブル40と、スタッド50とを主に備えている。
【0012】
加速度センサ10は、その筐体である加速度センサ筐体10Bの内部に、測定対象1の振動を測定可能な素子11を含んでいる。具体的には、たとえば導電性材料からなる加速度センサ筐体10Bの内部に空洞12が形成され、空洞12内に素子11が配置されてもよい。空洞12は空隙であることに限定されず、絶縁樹脂材料などで充填されていてもよい。測定対象1としては風車などが挙げられる。ここでは測定対象1は導電性とする。加速度センサ取付具21は、加速度センサ10の測定対象1側、すなわち
図1における下側に配置されている。つまり測定対象1と加速度センサ10との間に挟まれるように加速度センサ取付具21が配置されている。
【0013】
加速度センサ取付具21は、たとえばその筐体が金属などの導電性の材質により形成されている。このため加速度センサ取付具21は、これを挟む
図1の加速度センサ10と測定対象1と直接接触した場合には、これらの間を導電可能である。
【0014】
加速度センサ10と加速度センサ取付具21との間に挟まれ、加速度センサ10と加速度センサ取付具21との双方に接するように、絶縁性部材としてのスペーサ32が配置されている。ただし加速度センサ取付具21と測定対象1との間に挟まれ、加速度センサ取付具21と測定対象1との双方に接するようにスペーサ32が配置されてもよい。加速度センサ10と加速度センサ取付具21とは、スペーサ32を介して、絶縁性の固定部材としてのスタッド50により互いに結合されている。このスタッド50は、加速度センサ10と加速度センサ取付具21との間のスペーサ32を貫通するように配置される。このため加速度センサ10、加速度センサ取付具21にはその一部が欠落されスタッド50が収納可能な欠落部が形成されてもよく、両者間のスペーサ32にはこれを貫通しスタッド50が貫通可能な貫通孔が形成されてもよい。当該欠落部と貫通孔とが繋がることで形成された単一の空間内にスタッド50が配置され、加速度センサ10、スペーサ32および加速度センサ取付具21を互いに結合する。スタッド50と、これが結合する加速度センサ10および加速度センサ取付具21との隙間には、充填剤62が配置されてもよい。ただし当該充填剤62は配置されなくてもよい。充填剤62は、空気よりも絶縁耐力が高い材質からなっている。これによりスタッド50およびその周囲における絶縁耐力が高められる。
【0015】
図2は、加速度センサと加速度センサ取付具と、これらを結合するスタッドとの個々の態様を示す模式図である。
図2においては、加速度センサ10およびスタッド50は、
図1と同じ方向から見た態様を示しており、加速度センサ取付具21は、
図1の上側から平面視した態様を示している。
図2を参照して、加速度センサ10(加速度センサ筐体10B)は、
図1では概略的に正面から見た矩形状として示しているが、実際にはたとえば雄ねじが形成されたボルトのような形状であってもよい。加速度センサ10は、
図2の最下端の円形状の面の中央部に貫通孔10hが形成されている。加速度センサ取付具21は、平面視においてたとえば正方形状であり、
図2の紙面奥行き方向についてある厚みを有する直方体状である。つまり加速度センサ取付具21は後述するような板状であってもよい。加速度センサ取付具21は、平面視における中央部に貫通孔21hが形成されている。図示されないが、貫通孔10h,21hの内壁には雌ねじが形成されている。スタッド50は、円柱に近い形状を有し、その外側面には雄ねじが形成されている。
【0016】
図3は、加速度センサと加速度センサ取付具とをスタッドで結合する工程を示す模式図である。
図3を参照して、貫通孔10hと貫通孔21hとが連続するように、加速度センサ10と加速度センサ取付具21とが平面視にて重なるように配置される。貫通孔10h,21h内にはスタッド50が挿入される。スタッド50に形成された雄ねじと、貫通孔10h,21hに形成された雌ねじとが締結される。これにより加速度センサ筐体10B、スタッド50および加速度センサ取付具21が互いに結合される。なおこのとき、周波数応答特性を安定させるために、締結トルクはトルクレンチにより、たとえば2.7Nm以上6.8Nm以下となるように調節される。
【0017】
再度
図1を参照して、熱収縮チューブ31(チューブ)は、加速度センサ筐体10Bの外縁(外表面)であるセンサ外縁10aと、加速度センサ取付具21の外縁(外表面)である取付具外縁21aとの双方を跨ぐように覆う、単一の円筒形の被覆材である。センサ外縁10aと取付具外縁21aとは、
図1の上方から見た平面視にてほぼ重なるように(加速度センサ10と加速度センサ取付具21との平面視での形状およびサイズがほぼ等しいように)形成されていることが好ましい。熱収縮チューブ31は、絶縁性の材料で形成されており、センサ外縁10a上および取付具外縁21a上に、接着剤61により接着されている。具体的には、熱収縮チューブ31は、たとえばポリオレフィン、シリコーンゴム、ポリ塩化ビニルのいずれかが用いられることが好ましい。なお熱収縮チューブ31に代えて、熱収縮性をほとんど有さない材質からなるチューブが用いられてもよい。
【0018】
熱収縮チューブ31は、たとえば
図1のように加速度センサ10および加速度センサ取付具21を筒状に包み込むように配置されてもよい。これにより、熱収縮チューブ31は、加速度センサ10と加速度センサ取付具21とが重なる方向(たとえば
図1の上側)からこれらを平面視したときに加速度センサ10と加速度センサ取付具21の外側に突出する領域を含む。つまり熱収縮チューブ31は、上記のような平面視においてセンサ外縁10aおよび取付具外縁21aよりも外側に突出する領域を含む。なお熱収縮チューブ31の代わりに絶縁性を有するテープが用いられ、このテープが
図1の熱収縮チューブ31と同様にセンサ外縁10aおよび取付具外縁21aを包み込むように覆い接着されてもよい。熱収縮チューブ31がセンサ外縁10aおよび取付具外縁21aの表面上に接着剤61で覆うように接着されるため、センサ外縁10aおよび取付具外縁21aと熱収縮チューブ31との間は接着剤61で埋められ、隙間がほとんど形成されない。このように隙間がほとんど形成されないことにより、加速度センサ10および加速度センサ取付具21と熱収縮チューブ31との間の絶縁耐力が高められる。
【0019】
図1では、熱収縮チューブ31は、センサ外縁10aの上下方向の中央から、取付具外縁21aの上下方向の中央まで延びている。しかし熱収縮チューブ31は
図1よりも上下方向に長く形成されてもよく、たとえばセンサ外縁10aの上端より上下方向寸法が25%以内の位置から、取付具外縁21aの下端より上下方向寸法が25%以内の位置まで延びてもよい。あるいは熱収縮チューブ31は、たとえばセンサ外縁10aの上端より上下方向寸法が20%以内の位置から、取付具外縁21aの下端より上下方向寸法が20%以内の位置まで延びてもよい。さらに熱収縮チューブ31は、センサ外縁10a、スペーサ32の外縁および取付具外縁21aの全体を覆う筒状に形成されてもよい。
【0020】
図1の上側からの平面視における加速度センサ10および加速度センサ取付具21に重なるように、スペーサ32が配置されている。スペーサ32は、たとえば絶縁性の材料で形成された板状の部材である。ここで板状の部材とは、
図1の左右方向および奥行方向の(主表面の)寸法が、
図1の上下方向の厚みの寸法の2倍以上であり、
図1の上下方向の厚みがその全体においてほぼ同一(加工誤差以上の差異はない)である形状の部材をいうこととする。つまり板状とは、
図1の上下方向に沿う断面がたとえば矩形状である直方体状あるいは円柱状(円板形状)をいうこととする。スペーサ32は、
図1の加速度センサ筐体10Bの最下面と加速度センサ取付具21の最上面との双方に接するように、両者の間に挟まれるように配置されている。なおスペーサ32は、平面視における中央部に貫通孔(空洞)が形成されてもよいし、このような貫通孔(空洞)が形成されない中実の部材であってもよい。
【0021】
加速度センサケーブル40は、第1ケーブル線41と、第2ケーブル線42と、シールド線43と、これらの各線を束ねて外側から囲む外被44とを含んでいる。なお図中では区別をしやすくするために第1ケーブル線41は鎖線で、第2ケーブル線42は点線で示している。しかし実際にはこれらも実線で示すシールド線43と同様に連続するように延びている。第1ケーブル線41および第2ケーブル線42は、加速度センサ10に接触するように設けられた絶縁性コネクタ59を介して、加速度センサ10に含まれる素子11に接続されている。これら2本のケーブル線により、素子11を電源に接続したり素子11に電圧を印加したりすることが可能である。シールド線43は、一方の端部が加速度センサ筐体10Bに接続されず加速度センサ筐体10Bに対して電気的に絶縁されている。シールド線43は、一方の端部が絶縁性コネクタ59に接続され、一方の端部と反対側の他方の端部が接地点G2に接続されている。測定対象1は接地点G1に接続されている。これにより測定対象1および加速度センサ筐体10Bは接地点G1の接地電位となる。なお第1ケーブル線41、第2ケーブル線42は、素子11と接続される側と反対側の端部が図示されないデータ収集装置に接続されてもよい。またシールド線43は、一方の端部と反対側が、上記データ収集装置を経由して、接地点G2に電気的に接続されていてもよい。
【0022】
図4は、
図1中の点線で囲まれた領域Aにおける加速度センサ取付具と測定対象との接合態様の第1例を示す拡大模式図である。
図5は、
図1中の点線で囲まれた領域Aにおける加速度センサ取付具と測定対象との接合態様の第2例を示す拡大模式図である。
図4を参照して、加速度センサ取付具21と測定対象1とは、一般公知の絶縁性の接着剤61により接合されてもよい。あるいは
図5を参照して、加速度センサ取付具21と測定対象1とは、絶縁性のスタッド50により接合されてもよい。加速度センサ取付具と測定対象1との接合部には
図4および
図5のいずれが適用されてもよい。このことは以降の各実施の形態においても同様である。
【0023】
(スペーサ32について)
スペーサ32は、吸水率が低く経年劣化しにくい絶縁材料により形成されることが好ましい。スペーサ32の絶縁耐力は10kV/mm以上であることが好ましい。
【0024】
図6は、
図1の加速度センサ取付具の材質を変更させたときの、加速度センサの周波数応答特性の変化を示すグラフである。
図6の横軸は加速度センサ取付具21に印加される振動の周波数であり、
図6の縦軸は加速度センサ出力信号のゲインを示す。
図6を参照して、加速度センサ取付具21が金属(導電物)のような高ヤング率の材料(たとえばSUS304)であれば、周波数が高くなってもゲインはあまり上昇しておらず、少なくとも8000Hz以下の周波数帯域ではゲインが極端に高くなるいわゆる共振が起こる周波数は存在しない。このことから加速度センサ取付具21が金属(導電物)のような高ヤング率の材料からなる場合には周波数応答特性は良好である。これに対し、加速度センサ取付具21が樹脂材料(絶縁物)のような比較的低ヤング率の材料、たとえばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)で形成される場合には、周波数が上がるにつれてゲインが上昇し、周波数が約7500Hzのところで共振が起こっている。このことから、振動のセンシングをする素子11と測定対象1との間に樹脂材料(絶縁物)のような比較的低ヤング率の材料が挟まれれば高周波数帯域の周波数応答特性が悪くなる。
【0025】
しかし、スペーサ32が樹脂(絶縁物)のような低ヤング率の材料であったとしても、最適なスペーサ32のばね定数を、2.0×10
9N/m以上とすれば、高周波数帯域の高周波応答特性を良好とすることができる。これについて以下に説明する。スペーサ32のばね定数の数値範囲は以下のように決定される。
図7は、スペーサのばね定数を決定するために準備される構成の模式図である。
図7を参照して、ここでの加速度センサ10および加速度センサ取付具21は、
図1の加速度センサ10および加速度センサ取付具21と同様である。加速度センサ取付具21は加速度センサ10の加振台2側(下側)に配置される。加振台2は
図1の測定対象1に相当する。絶縁板39は
図1のスペーサ32に相当する。ただし絶縁板39は加速度センサ10と加速度センサ取付具21との間ではなく、加速度センサ取付具21と加振台2との間(加速度センサ取付具21の下側)に配置される。なお加速度センサケーブル40、接地点G1,G2は図示省略されている。絶縁板39はPEEKにより形成され、そのヤング率は3.6GPaである。いずれも板状(直方体状)であり面積は400mm
2で、厚みが互いに異なる以下の表1に示す3種類の絶縁板39が用いられ、それぞれの絶縁板39を用いたときの周波数応答特性が調べられた。
【0026】
【0027】
図8は、
図7の構成を用いて絶縁板の厚みを変更させたときの絶縁板の周波数応答特性の変化を示すグラフである。
図8の横軸は絶縁板39に印加される振動の周波数であり、
図8の縦軸は出力信号の実効値を示す。
図8を参照して、厚みが2mmまたは10mmの絶縁板39を用いた場合は、それぞれ約7300Hz、約6300Hzの周波数において共振する。一般に共振点がみられる周波数範囲は振動測定に適さない。このため厚みが2mmまたは10mmの絶縁板39は高周波帯域の振動測定用途には使えない。一方、厚みが1mmの絶縁板39は、8000Hz以下の周波数帯域には共振点が発生しないため、高周波数帯域の振動測定用として用いることができる。このことから、厚みが薄い、つまりばね定数が高い絶縁板39は共振点が高くなる。表1より、厚みが1mmの絶縁板39のばね定数は1.44×10
9N/mであればよい。ただしばね定数の大きさは上方に少し余裕を持たせることがより好ましい。この観点から、上記のように、スペーサ32のばね定数は2.0×10
9N/m以上であることが好ましい。
【0028】
スペーサ32は、高いヤング率、すなわちヤング率が2.5GPa以上である樹脂材料であってもよい。ここでの樹脂材料は、炭素繊維およびガラス繊維の少なくともいずれかを含有してもよい。あるいはスペーサ32は、シリコン、アルミニウムおよびアルカリ土類金属の少なくともいずれかを含み、高いヤング率、すなわちヤング率が100GPa以上であるセラミックス材料からなってもよい。またスペーサ32の
図1上下方向の厚みは2mm未満であることが好ましい。
【0029】
(比較例およびその課題)
図9は、比較例における振動測定装置に起こるグラウンドループを説明するための模式図である。
図9を参照して、比較例の振動測定装置は、加速度センサ10と、シールド線43とを備えている。また当該振動測定装置はデータ収集装置70を備えていてもよい。
図9においては、加速度センサ10と測定対象1との間には絶縁性の部材が介在されない。
図9においては、測定対象1に接続された接地点G1と、データ収集装置70に接続された接地点G2との地電位が異なる場合に、接地点G1と接地点G2との間に図中矢印で示す電流が流れ、振動測定装置が測定する信号に当該電流のノイズが乗ってしまうことがある。このノイズの電流は
図9の接地点G1と接地点G2との間を含む回路を循環する。このような現象はグラウンドループGLと呼ばれる。振動測定装置が測定する信号にノイズが乗れば、測定により得られるデータの信頼性が低下する。
【0030】
図10は、グラウンドループを抑制するための比較例の第1例に係る振動測定装置の構成を示す模式図である。
図10を参照して、比較例の第1例に係る振動測定装置900は、
図1の振動測定装置100と比較して、次の各点において異なる。振動測定装置900は、加速度センサ10と加速度センサ取付具21との間に絶縁性のスペーサ32は挟まれていない。また
図10では、センサ外縁10aと取付具外縁21aとを覆う熱収縮チューブ31も設けられていない。
【0031】
ただし
図10では、
図1と同様に、加速度センサ10の測定対象1と反対側に絶縁性コネクタ59が取り付けられている。素子11に接続された第1ケーブル線41および第2ケーブル線42は、絶縁性コネクタ59内および外被44内を通っている。シールド線43は、一方の端部が絶縁性コネクタ59に接続されており、導電性の加速度センサ10の筐体には接続されていない。このため振動測定装置900においては、加速度センサ10とシールド線43とが電気的に接続されない。このことから
図10では、たとえ接地点G1と接地点G2との地電位が異なっても、
図9のようなグラウンドループGLは発生しない。
【0032】
図11は、
図10の比較例の第1例に係る振動測定装置へのサージ電圧の発生による放電を説明するための模式図である。
図11を参照して、
図10の測定対象1に、落雷などに起因するサージ電圧SVと呼ばれる高電圧が印加した場合、測定対象1と電気的に接続された加速度センサ筐体10Bにも高電圧が加わる。このため、加速度センサ10内の素子11と、これを収納する空洞12が形成された加速度センサ筐体10Bとの間に高電圧が加わり放電DCGが発生する。この放電DCGにより、素子11が焼損または破損し、加速度センサ10が故障する場合がある。
【0033】
図12は、グラウンドループを抑制するための比較例の第2例に係る振動測定装置の構成を示す模式図である。
図12を参照して、比較例の第2例に係る振動測定装置900は、
図1の振動測定装置100と比較して、次の各点において異なる。振動測定装置900は、加速度センサ10の測定対象1側に、加速度センサ取付具21の代わりに、加速度センサ取付具22を有している。加速度センサ取付具22は、たとえばその筐体が絶縁性の材質により形成されている。このため通常は加速度センサ10と測定対象1とは電気的に絶縁されている。しかし
図12の測定対象1にサージ電圧が印加された場合には、当該高電圧は加速度センサ取付具22から加速度センサ10に伝わり、
図11と同様に放電DCGおよびそれに伴う加速度センサ10の故障が起こる可能性がある。これは
図12の測定対象1から加速度センサ10までの、
図12左右側面を上下方向に延びる沿面距離が比較的短いために空気中で放電が発生してしまうためである。絶縁性の加速度センサ取付具22を挟んでいても、これを介して測定対象1から加速度センサ10にサージ電圧が伝わる場合がある。このような落雷時などの放電に起因する素子11、加速度センサ10の故障を抑制することが課題となっていた。なお、そもそも振動の信号を検知しやすくする観点から、加速度センサ取付具は絶縁性よりも導電性であることが好ましい。
【0034】
(作用効果)
以上の課題に鑑み、本実施の形態に係る振動測定装置100は、加速度センサ10と、加速度センサ取付具21と、絶縁性部材としてのスペーサ32と、加速度センサケーブル40とを備える。加速度センサ10は、測定対象の振動を測定可能な素子11を含む。加速度センサ取付具21は、加速度センサ10の測定対象1が配置されるべき位置側(
図1の下側)に配置される。スペーサ32は、加速度センサ10と、測定対象1が配置されるべき位置との間に挟まれる。加速度センサケーブル40は、1対のケーブル線(第1ケーブル線41および第2ケーブル線42)と、シールド線43と、第1ケーブル線41、第2ケーブル線42およびシールド線43を束ねて外側から囲む外被44とを含む。
【0035】
絶縁性部材としてのスペーサ32の配置により、たとえ加速度センサ取付具21の筐体が金属などの導電性の材質により形成されていても、加速度センサ10と測定対象1との絶縁が確保できる。このことは通常時、測定対象1へのサージ電圧の印加時のいずれにおいても成り立つ。このためスペーサ32を有さない場合に比べて振動測定装置100の絶縁耐力が向上し、加速度センサ10が故障しにくくなる。またスペーサ32により、加速度センサ取付具21を導電性とすることができるため、振動測定装置100の振動測定の精度の低下を抑制できる。
【0036】
上記振動測定装置100において、単一の絶縁性の熱収縮チューブ31は、加速度センサ10のセンサ外縁10aおよび加速度センサ取付具21の取付具外縁21aを覆う。熱収縮チューブ31は、加速度センサ10と加速度センサ取付具21とが重なる方向から平面視したときに加速度センサ10と加速度センサ取付具21との外側に突出する(外径を覆う)領域を含む。
【0037】
異なる観点から見ると、本実施の形態に係る振動測定装置100は、加速度センサ10と、加速度センサ取付具21と、絶縁性部材としてのスペーサ32と、単一の絶縁性のチューブ(熱収縮チューブ31)とを備える。加速度センサ10は測定対象1の振動を測定可能な素子11を含む。加速度センサ取付具21は加速度センサ10の測定対象1側に配置される。スペーサ32は、加速度センサ10と加速度センサ取付具21との間に挟まれ、加速度センサ10と加速度センサ取付具21との双方に接する。単一の絶縁性の熱収縮チューブ31は、加速度センサ10のセンサ外縁10aおよび加速度センサ取付具21の取付具外縁21aを覆う。熱収縮チューブ31は、加速度センサ10と加速度センサ取付具21とが重なる方向から平面視したときに加速度センサ10と加速度センサ取付具21との外側に突出する(外径を覆う)領域を含む。
【0038】
次に、熱収縮チューブ31が加速度センサ10と加速度センサ取付具21との外径(センサ外縁10aおよび取付具外縁21a)を覆うことにより、
図1の上下方向に沿面距離を長くすることができる。センサ外縁10aおよび取付具外縁21aが熱収縮チューブ31で覆われない構成では、加速度センサ取付具21と加速度センサ筐体10Bとはスペーサ32で絶縁が確保されている。つまり沿面距離はスペーサ32の厚みとなる。しかし
図1において、加速度センサ10と加速度センサ取付具21との間の沿面距離は、図中矢印に示す沿面距離63となる。具体的には、沿面距離63は、加速度センサ10から加速度センサ取付具21まで、その最も外側の縁に沿って移動したときの距離に相当する。つまり加速度センサ10と加速度センサ取付具21との間に、たとえば熱収縮チューブ31が存在する場合には、沿面距離63は、熱収縮チューブ31の表面上を伝うことにより計測される。このため熱収縮チューブ31を有さない場合に比べて、測定対象1にサージ電圧が印加された際に、素子11への高電圧の印加、高電流の発生および加速度センサ10への放電の発生を抑制できる。沿面距離63が長くなればセンサ外縁10aなどを経由する沿面放電が抑制できるためである。これにより、素子11および加速度センサ10の故障を抑制できる。
【0039】
その他、本実施の形態では、絶縁性部材としてのスペーサ32の材料に応じてその寸法を制御することでばね定数を制御できる。これにより、スペーサ32は高周波数帯域にて良好な周波数応答特性を有するものとできる。このためスペーサ32を備える振動測定装置100の振動測定の精度の低下を抑制できる。
【0040】
本実施の形態によれば、加速度センサ10の故障が防止される。このため振動測定装置での計測トラブルの発生の頻度が低下し、振動測定装置を監視する装置の信頼性が向上する。この作用効果は以下に述べる各実施の形態においても基本的に同様である。
【0041】
(実施の形態2)
(振動測定装置の構成)
図13は、実施の形態2に係る振動測定装置の構成を示す模式図である。なお、
図13は
図1に対応する。ただし実施の形態2~10では、
図1中の加速度センサケーブル40、接地点G1,G2については実際には
図1と同様に存在するが、その図示が省略される。
【0042】
図13を参照して、本実施の形態に係る振動測定装置100は、基本的には
図1に示した振動測定装置100と同様の構成を備えるため同一内容の説明を繰り返さない。ただし本実施の形態の振動測定装置100は、熱収縮チューブ31を有さない。また本実施の形態の振動測定装置100は、絶縁性部材として、スペーサ32の代わりに、アダプタ33が配置されている。アダプタ33は、たとえば加速度センサ10と加速度センサ取付具21とが重なる方向(たとえば
図13の上側)からこれらを平面視したときに円形を有し、
図13の上下方向の厚みがその全体においてほぼ同一(加工誤差以上の差異はない)である。ただしアダプタ33の平面形状は円形に限らず、たとえば楕円形、長方形、正方形の平面形状であってもよい。加速度センサ取付具21と測定対象1との間に挟まれ、加速度センサ取付具21と測定対象1との双方に接するようにアダプタ33が配置されてもよい。
【0043】
アダプタ33は、加速度センサ10と加速度センサ取付具21とが重なる方向(たとえば
図1の上側)からこれらを平面視したときに加速度センサ10と加速度センサ取付具21との外側に突出する領域を含む。つまりアダプタ33は、上記のような平面視においてセンサ外縁10aおよび取付具外縁21aよりも外側に突出する領域を含む。アダプタ33がセンサ外縁10aおよび取付具外縁21aに対して平面視での外側に突出する部分が、このような突出する部分を有さない場合に比べて、加速度センサ10と加速度センサ取付具21との間の沿面距離63を長くする。加速度センサ10と加速度センサ取付具21との間の沿面距離63は、アダプタ33の外縁がセンサ外縁10aに対して水平方向に突出する長さの2倍の値と、アダプタ33の
図13の上下方向の厚みの値との和にほぼ等しい。
【0044】
アダプタ33がセンサ外縁10aおよび取付具外縁21aに対して平面視での外側に突出する部分の水平方向長さは、当該水平方向長さにより得られる加速度センサ10と加速度センサ取付具21との(アダプタ33を経由する)沿面距離63と同じ厚みを有する標準状態の空気の、絶縁破壊耐圧が100kV以上となる長さとする。ここで標準状態の空気とは、温度が23℃で湿度が50%の空気である。より具体的には、アダプタ33は、その水平方向(
図13の左右方向)の径(最大寸法)が、加速度センサ10の筐体、および加速度センサ取付具21の水平方向の寸法のたとえば2倍以上3倍以下であることが好ましい。
【0045】
アダプタ33のばね定数は実施の形態1の絶縁板39のばね定数と同等であることが好ましい。つまりアダプタ33のばね定数はたとえば2.0×109N/m以上であることが好ましい。
【0046】
またアダプタ33は、上記のように加速度センサ10のセンサ外縁10aなどに対して外側に突出する板状の部材の一方(
図13の上側)の表面および他方(
図13の下側)の表面上に、加速度センサ10および加速度センサ取付具21のそれぞれと嵌合するためのアダプタ突起33aを含んでいる。アダプタ突起33aはアダプタ33の上記板状部材と同一の材料(つまり絶縁性の材料)により形成されることが好ましい。加速度センサ10および加速度センサ取付具21のそれぞれの筐体の表面には、アダプタ突起33aと嵌合するための凹部が形成されている。当該凹部内にアダプタ突起33aが挿入されることにより、アダプタ突起33aが加速度センサ10および加速度センサ取付具21に固定される。このためアダプタ33の全体が加速度センサ10および加速度センサ取付具21に固定される。アダプタ突起33aの平面視における形状(
図13の上下方向から見た形状)は円形、楕円形、長方形、正方形のいずれであってもよい。
図13の上下方向(加速度センサ10と加速度センサ取付具21とを結ぶ方向)について、アダプタ突起33aはスペーサ34よりも厚くてもよいが、薄くてもよいし、スペーサ34と同じ厚みであってもよい。加速度センサ10と加速度センサ取付具21とは、アダプタ突起33aを含むアダプタ33により、互いに結合されている。
【0047】
(作用効果)
上記振動測定装置100において、絶縁性部材(アダプタ33)は、加速度センサ10と加速度センサ取付具21とが重なる方向から平面視したときに加速度センサ10と加速度センサ取付具21との外側に突出する領域を含む。
【0048】
異なる観点から見ると、本実施の形態に係る振動測定装置100は、加速度センサ10と、加速度センサ取付具21と、絶縁性部材(アダプタ33)とを備える。加速度センサ10は測定対象1の振動を測定可能な素子11を含む。加速度センサ取付具21は加速度センサ10の測定対象1側に配置される。絶縁性部材(アダプタ33)は、加速度センサ10と加速度センサ取付具21との間に挟まれ、加速度センサ10と加速度センサ取付具21との双方に接する。絶縁性部材(アダプタ33)は、加速度センサ10と加速度センサ取付具21とが重なる方向から平面視したときに加速度センサ10と加速度センサ取付具21との外側に突出する領域を含む。平面視にて加速度センサ10などよりも外側に突出するアダプタ33によっても実施の形態1の熱収縮チューブ31と同様に、沿面距離63を長くすることができ、これにより測定対象1へのサージ電圧の印加時の素子11および加速度センサ10の故障が抑制できる。他の作用効果は実施の形態1と同様であるため説明を繰り返さない。
【0049】
(実施の形態3)
(振動測定装置の構成)
図14は、実施の形態3に係る振動測定装置の構成を示す模式図である。なお、
図14は
図1、
図13に対応する。
図14を参照して、本実施の形態に係る振動測定装置100は、基本的には
図1、
図13に示した振動測定装置100と同様の構成を備えるため同一内容の説明を繰り返さない。ただし本実施の形態の振動測定装置100は熱収縮チューブ31を有さない。また本実施の形態の振動測定装置100は、絶縁性部材として、スペーサ32、アダプタ33の代わりに、単一の絶縁性のスペーサ34が配置されている。スペーサ34の配置位置はスペーサ32、アダプタ33と同様である。スペーサ34の材質等は、実施の形態1のスペーサ32と同様であってもよい。ただしスペーサ34は、アダプタ33と同様に、加速度センサ10と加速度センサ取付具21とが重なる方向(たとえば
図1の上側)からこれらを平面視したときに加速度センサ10と加速度センサ取付具21との外側に突出する領域を含む。この点においてスペーサ34は、加速度センサ10および加速度センサ取付具21と平面視における面積がほぼ等しい(センサ外縁10aなどに対して平面視にて外側に突出しない)スペーサ32と異なっている。スペーサ34の加速度センサ10などに対して外側に突出する領域により、本実施の形態でも実施の形態2と同様に、沿面距離63を長くできる。スペーサ34のばね定数は実施の形態1の絶縁板39、実施の形態2のアダプタ33と同等であることが好ましい。このためスペーサ34が加速度センサ10および加速度センサ取付具21に対して平面視での外側に突出する長さ、およびその
図14上下方向の厚みは、アダプタ33の当該突出する長さおよび厚みとほぼ等しくてもよい。
【0050】
(作用効果)
上記振動測定装置100において、絶縁性部材は単一の絶縁性のスペーサ34であってもよい。加速度センサ10および加速度センサ取付具21は、絶縁性の固定部材(スタッド50)により互いに結合され、スタッド50と、加速度センサ10および加速度センサ取付具21との隙間には充填剤62が配置されてもよい。この構成によっても、平面視にて加速度センサ10などよりも外側に突出するスペーサ34により、沿面距離63を長くすることができ、測定対象1へのサージ電圧の印加時の素子11および加速度センサ10の故障が抑制できる。
【0051】
(実施の形態4)
(振動測定装置の構成)
図15は、実施の形態4に係る振動測定装置の構成を示す模式図である。なお、
図15は
図14に対応する。
図15を参照して、本実施の形態に係る振動測定装置100は、基本的には
図14に示した振動測定装置100と同様の構成を備えるため同一内容の説明を繰り返さない。
図15の振動測定装置100は、絶縁性部材として、2枚のスペーサ34と、1枚のスペーサ35との合計3枚が配置されている。上側のスペーサ34と下側のスペーサ34との間にスペーサ35が挟まれ、下側から上側へ、スペーサ34、スペーサ35、スペーサ34の順に積層されたものが、加速度センサ10と加速度センサ取付具21との間に挟まれている。スペーサ35の材質は、スペーサ34の材質と同一であってもよい。これら3つのスペーサが積層されたものを1まとめと考えれば、当該1まとめのスペーサは、最上部にて加速度センサ10に接し、最下部にて加速度センサ取付具21に接することにより、加速度センサ10と加速度センサ取付具21との双方に接するといえる。
【0052】
スペーサ35はスペーサ34と同一材料により形成されるが、スペーサ34よりも水平方向(
図15の左右方向)の寸法が短い。スペーサ34の水平方向寸法は、スペーサ35の水平方向寸法の0.5倍以上0.8倍以下であってもよいし、その中でも0.6倍以上0.7倍以下であることが好ましい。これにより、スペーサ35のスペーサ外縁35aは、スペーサ34のスペーサ外縁34aよりも内側、すなわち平面視における加速度センサ10の中央から放射状に延びる径方向について当該中央に近い位置に配置される。ただしスペーサ35もスペーサ34と同様に、スペーサ外縁35aはセンサ外縁10aおよび取付具外縁21aの平面視における外側(径方向についてスペーサ外縁34aよりも加速度センサ10の中央から離れた位置)に配置される。なお3枚のスペーサ34,35が積層されたものがまとめて、スタッド50により、加速度センサ10および加速度センサ取付具21に結合、固定されている。
【0053】
図15においては下方から上方へ、スペーサ34、スペーサ35、スペーサ34の順に積層されるが、これに限らず、たとえば2枚のスペーサ35と1枚のスペーサ34とが、スペーサ35、スペーサ34、スペーサ35の順に積層されてもよい。あるいは2枚のスペーサ34と2枚のスペーサ35とが交互に積層されてもよく、最下層にスペーサ34,35のいずれが配置されるように積層されてもよい。スペーサ34,35の配置される枚数およびその順序は任意である。
【0054】
(作用効果)
本実施の形態に係る振動測定装置100は、加速度センサ10と、加速度センサ取付具21と、絶縁性部材としての1つ以上のスペーサ34および1つ以上のスペーサ35とを備える。スペーサ34,35は、加速度センサ10と加速度センサ取付具21とが重なる方向から平面視したときに加速度センサ10と加速度センサ取付具21との外側に突出する領域を含む。スペーサ35はスペーサ34よりも、加速度センサ10と加速度センサ取付具21とを結ぶ方向(
図15の上下方向)に交差する方向(
図15の左右方向)についての寸法が小さい。スペーサ34,35は互いに積層されて1まとめとなったものが、加速度センサ10と加速度センサ取付具21との間に挟まれ、加速度センサ10と加速度センサ取付具21との双方に接する。これにより、たとえば
図15の2つのスペーサ外縁34aおよび1つのスペーサ外縁35aによる、
図15の左右方向に凹凸形状を有するような沿面距離63が得られる。つまりスペーサ外縁34aとスペーサ外縁35aとが水平方向寸法の差の分を有するため、その分だけ、スペーサ外縁34aとスペーサ外縁35aとの積層構造の外縁における、加速度センサ10から加速度センサ取付具21までの沿面距離63が長くなる。これにより測定対象1へのサージ電圧の印加時の素子11および加速度センサ10の故障が抑制できる。他の作用効果は実施の形態1と同様であるため説明を繰り返さない。
【0055】
(実施の形態5)
(振動測定装置の構成)
図16は、実施の形態5に係る振動測定装置の構成を示す模式図である。なお
図16は
図1に対応する。
図16を参照して、本実施の形態に係る振動測定装置100は、基本的には
図1に示した振動測定装置100と同様の構成を備えるため同一内容の説明を繰り返さない。
図16の振動測定装置100は、筐体が導電性材料からなる加速度センサ取付具21の代わりに、筐体が絶縁性材料からなる加速度センサ取付具22が配置されている。加速度センサ取付具22の筐体を構成する絶縁材料は、吸水率が低く経年劣化しにくい材料であることが好ましい。また加速度センサ取付具22の絶縁耐力は10kV/mm以上であることが好ましい。具体的には、加速度センサ取付具22の筐体を構成する絶縁材料は、実施の形態1でのスペーサ32を構成する絶縁材料と同一であってもよい。本実施の形態では、加速度センサ取付具22が絶縁性の筐体を有するため、絶縁性部材としてのスペーサ32,34およびアダプタ33のいずれも配置されていない。
【0056】
図16では、スタッド50と、これが結合する加速度センサ10および加速度センサ取付具22との隙間には充填剤が配置されない。これは加速度センサ取付具22が絶縁性であることから、充填剤を設けなくてもスタッド50およびその周囲における高い絶縁耐力が確保できるためである。ただし
図16でも
図1と同様に、スタッド50と、これが結合する加速度センサ10および加速度センサ取付具22との隙間に充填剤62が配置されてもよい。
【0057】
なお本実施の形態の加速度センサ取付具22は、上記のように筐体(の全体)が絶縁性材料からなってもよい。ただし本実施の形態の加速度センサ取付具22は、たとえば後述の
図26のように、導電性材料の筐体の本体を有し、当該本体の表面に絶縁材料の薄膜がコーティング(塗布)されてもよい。いずれにせよ、加速度センサ取付具22は、加速度センサ10と測定対象1との間を電気的に絶縁可能である。
【0058】
(作用効果)
本実施の形態に係る振動測定装置100は、加速度センサ10と、加速度センサ取付具22と、単一の絶縁性のチューブ(熱収縮チューブ31)とを備える。加速度センサ10は測定対象1の振動を測定可能な素子11を含む。加速度センサ取付具22は加速度センサ10の測定対象1側に配置される。単一の絶縁性の熱収縮チューブ31は、加速度センサ10のセンサ外縁10aおよび加速度センサ取付具22の取付具外縁22aを覆う。熱収縮チューブ31は、加速度センサ10と加速度センサ取付具22とが重なる方向から平面視したときに加速度センサ10と加速度センサ取付具22との外側に突出する領域を含む。加速度センサ取付具22は、加速度センサ10と測定対象1との間を電気的に絶縁可能である。
【0059】
まず、加速度センサ取付具22が加速度センサ10と測定対象1との間を電気的に絶縁可能であるため、たとえば導電性の加速度センサ取付具21が配置される場合に比べて振動測定装置100の絶縁耐力が向上する。このため加速度センサ10が故障しにくくなる。
【0060】
また、熱収縮チューブ31が加速度センサ10(センサ外縁10a)と加速度センサ取付具22(取付具外縁22a)との外側に突出することにより、実施の形態1と同様に、外側に突出しない場合と比べて、加速度センサ10と測定対象1との間の沿面距離63を長くすることができる。つまり加速度センサ取付具22が絶縁性であることによる加速度センサ10と測定対象1との間の絶縁耐力が、上記沿面距離63の延長によりさらに補強される。
【0061】
なお本実施の形態では加速度センサ取付具が絶縁性であるため、実施の形態1とは異なり、沿面距離63は加速度センサ10から測定対象1までとされる。ただし沿面距離63が長くなることによる作用効果は、実施の形態1と同様である。つまり絶縁性を有する加速度センサ取付具22と、加速度センサ10などの外側に突出するため沿面距離63を長くする熱収縮チューブ31とにより、振動測定装置100の絶縁耐力が高められる。
【0062】
なお実施の形態1(
図6)で述べたように、一般に絶縁性の加速度センサ取付具を用いた場合には、導電性(金属製)の加速度センサ取付具を用いた場合に比べて、特に高周波数帯域において周波数応答特性が悪くなる。このため本実施の形態の構成を有する振動測定装置100は、特におよそ7000Hz以下の周波数、すなわち低周波数帯域から中周波数帯域までの測定に用いられることが好ましい。
【0063】
(実施の形態6)
(振動測定装置の構成)
図17は、実施の形態6に係る振動測定装置の構成を示す模式図である。なお
図17は
図14に対応する。
図17を参照して、本実施の形態に係る振動測定装置100は、基本的には
図14に示した振動測定装置100と同様の構成を備えるため同一内容の説明を繰り返さない。
図17の振動測定装置100は、筐体が導電性材料からなる加速度センサ取付具21の代わりに、筐体が絶縁性材料からなる加速度センサ取付具22が配置されている。またスペーサ34とその測定対象1側(下側)の加速度センサ取付具22との隙間には、接着剤およびグリスのいずれかである絶縁性塗布剤64が塗布されている。絶縁性塗布剤64が塗布されることにより、スペーサ34と加速度センサ取付具22との隙間が埋められている。
【0064】
(作用効果)
上記振動測定装置100において、加速度センサ取付具22は、加速度センサ10と測定対象1との間を電気的に絶縁可能であってもよい。絶縁性部材としてのスペーサ34と加速度センサ取付具22との隙間には、接着剤およびグリスのいずれかとしての絶縁性塗布剤64が配置されてもよい。このようにすれば、実施の形態5(
図16)と同様に、加速度センサ取付具22が絶縁性であることによる加速度センサ10と測定対象1との間の絶縁耐力が、スペーサ34の加速度センサ10などからの外側への突出による沿面距離63の延長によりさらに補強される。
【0065】
(実施の形態7)
(振動測定装置の構成)
図18は、実施の形態7に係る振動測定装置の構成を示す模式図である。なお
図18は
図1、
図16など他の実施の形態における振動測定装置の構成図に相当する。
図18を参照して、本実施の形態に係る振動測定装置100は、基本的には
図1、
図16など他の実施の形態における振動測定装置100と同様の構成を備えるため同一内容の説明を繰り返さない。
図18の振動測定装置100は、熱収縮チューブ31を有さない。
図18の振動測定装置100は、加速度センサ取付具22の外縁である取付具外縁22aが、平面視における加速度センサの外縁(センサ外縁10a)の外側に突出する部分を有している。
図18の断面図において、取付具外縁22aが外側に突出する部分は、加速度センサ取付具22が加速度センサ10と接続する接続面に沿った
図18の左右方向に対して交差する方向に延びている。つまり取付具外縁22aは、上記交差する方向として、左右方向に対してある角度を有する方向(左右方向およびそれとほぼ等しい方向を除く方向)に延びている。この点において本実施の形態は、取付具外縁22a,21aは平面視にてセンサ外縁10aとほぼ重なるように配置される上記の他の各実施の形態と異なる。
【0066】
図18の取付具外縁22aは波形状を有している。つまり取付具外縁22aの断面形状が、平面視での加速度センサ10の中央から放射状に延びる径方向(
図18の左右方向)に見たときに、加速度センサ10の中央に近い内側と、加速度センサ10の中央から離れた外側とを往復する形状となっている。取付具外縁22aは、加速度センサ10側から測定対象1側に向かうにつれて、平面視での加速度センサ10の内側と外側とを交互に複数回往復する。
図18では、取付具外縁22aの最も内側は、センサ外縁10aと平面的に重なる位置であり、取付具外縁22aの最も外側はセンサ外縁10aよりも平面視での外側である。また
図18の断面形状においては、取付具外縁22aは直線状であり上記の内側と外側とを往復するように屈曲している。これにより取付具外縁22aは、平面視におけるセンサ外縁10aの外側に突出する部分を有している。しかしこのような態様に限らず、たとえば取付具外縁22aの最も内側はセンサ外縁10aよりも内側にあっても外側にあってもよい。取付具外縁22aの最も外側は
図18に示す取付具外縁22aの最も外側の位置よりも内側にあっても外側にあってもよい。また
図18の取付具外縁22aは直線状に屈曲しているが、取付具外縁22aは曲線を描くように湾曲した断面形状であってもよい。なお取付具外縁22aの最も外側が、センサ外縁10aと平面的に重なる位置またはそれより内側にあってもよい。この場合には取付具外縁22aはセンサ外縁10aの外側に突出する部分を有さなくなるが、外縁22aが複数回往復する波形状を有する限り問題はない。
【0067】
図18において、取付具外縁22aは全体にて3波長分の波形状を有する。ただし当該波形状の波長数は任意であり、その波形状の合計長が
図18の沿面距離63と同程度以上(すなわち3波長分以上の長さ)であることが好ましい。
【0068】
(作用効果)
上記振動測定装置100において、加速度センサ取付具22は加速度センサ10の測定対象1側に配置される。加速度センサ取付具22は、加速度センサ10と測定対象1との間を電気的に絶縁可能な絶縁性部材である。取付具外縁22aは、平面視におけるセンサ外縁10aの外側に突出する部分を有する。当該突出する部分は、加速度センサ取付具22が加速度センサ10と接続する接続面に沿った方向に対して交差する方向に延在する。
【0069】
異なる観点から見ると、本実施の形態に係る振動測定装置100は、加速度センサ10と、加速度センサ取付具22とを備える。加速度センサ10は測定対象1の振動を測定可能な素子11を含む。加速度センサ取付具22は加速度センサ10の測定対象1側に配置される。加速度センサ取付具22は、加速度センサ10と測定対象1との間を電気的に絶縁可能である。取付具外縁22aは、平面視におけるセンサ外縁10aの外側に突出する部分を有する。このため実施の形態5(
図16)と同様に、加速度センサ取付具22が絶縁性であることによる加速度センサ10と測定対象1との間の絶縁耐力が、取付具外縁22aがセンサ外縁10aの外側に突出する部分を有することによる沿面距離63の延長によりさらに補強される。
【0070】
上記振動測定装置100においては、加速度センサ取付具22の外縁(取付具外縁22a)は波形状を有してもよい。これにより、たとえば取付具外縁22aが
図18の上下方向に沿って延びは形状を有さない場合に比べて、取付具外縁22aに沿う沿面距離63を長くできる。このため実施の形態5(
図16)と同様に、加速度センサ取付具22が絶縁性であることによる加速度センサ10と測定対象1との間の絶縁耐力が、取付具外縁22aが波形状であることによる沿面距離63の延長によりさらに補強される。なお取付具外縁22aが平面視でのセンサ外縁10aの外側に突出することによっても、そのような構成を有さない場合に比べて沿面距離63がさらに延長される。
【0071】
(実施の形態8)
(振動測定装置の構成)
図19は、実施の形態8に係る振動測定装置の構成を示す模式図である。
図19を参照して、本実施の形態に係る振動測定装置100における、たとえば
図18と同様の構成についてはその説明を繰り返さない。
図19の振動測定装置100は、絶縁性の加速度センサ取付具22の外縁は、平面視にて加速度センサ10の外側に突出する部分を有する。
【0072】
加速度センサ取付具22は、第1部分22bと、第2部分22cとを含んでいる。第1部分22bは、加速度センサ10の測定対象1側(
図19の下側)に配置される。つまり第1部分22bは、たとえば
図18の振動測定装置100の加速度センサ取付具22と同様に、加速度センサ10と測定対象1との間に配置される部分である。第1部分22bは、加速度センサ10と加速度センサ取付具22との接触する接触面に沿う方向、すなわち
図19の左右方向に拡がっている。このため第1部分22bには、加速度センサ10と平面視にて重なる部分の外側(
図19での加速度センサ10の左側および右側の領域)に配置される部分も含まれる。第2部分22cは、第1部分22bと連続しており、特に
図19に示す断面形状において第1部分22bから屈曲しており、第1部分22bから離れるように第1部分22bの上側を延びる部分である。第2部分22cは
図19の断面形状において第1部分22bの左右側の両端部にて直角に屈曲し、そこから上側に延びる部分である。第2部分22cは加速度センサ10と図の左右方向に間隔をあけて(加速度センサ10の中心から放射状(径方向)に間隔をあけて)、配置されている。第2部分22cは第1部分22bとの境界である屈曲部から、たとえば加速度センサ10の最上部と同じ上下方向位置まで、上下方向に(加速度センサ10に沿って)延びている。つまり第2部分22cは、加速度センサ10と加速度センサ取付具22との接続面に沿った方向(第1方向)に対して交差する方向に延在している。ただし第2部分22cは加速度センサ10の最上部よりも上側(第1部分22bと反対側)の位置まで延びてもよい。互いに直角方向に延び、互いに連続している第1部分22bおよび第2部分22cにより、加速度センサ10は加速度センサ取付具22に囲まれている。言い換えれば、加速度センサ取付具22は、加速度センサ10を外側から覆う形状となっている。
【0073】
加速度センサ取付具22の第1部分22b(第2部分22cと平面視にて重なる部分を含む)が加速度センサ10と接触する接触面に沿う
図19の左右方向の寸法は、加速度センサ10の上記接触面に沿う左右方向の寸法の2倍以上であることが好ましく、3倍以上であることがより好ましい。
【0074】
(作用効果)
本実施の形態に係る振動測定装置100は、実施の形態7と同様に、取付具外縁22aが、平面視におけるセンサ外縁10aの外側に突出する部分を有する。加速度センサ取付具22は、加速度センサ10の測定対象1側に配置され加速度センサ10と加速度センサ取付具22との接触する接触面に沿う方向に拡がる第1部分22bと、第1部分22bから屈曲して第1部分22bから離れるように延びる第2部分22cとを含む。第1部分22bと第2部分22cとにより、加速度センサ10は加速度センサ取付具22に囲まれる。第1部分22bは平面視での加速度センサ10の外側の領域まで延び、そこからさらに第2部分22cが延びることにより、加速度センサ取付具22の外縁22aなどに沿う沿面距離63を大幅に長くすることができる。沿面距離63は、加速度センサ10から、加速度センサ10よりも外側に第1部分22bが延びる寸法と、そこから第2部分22cが上下方向に延びる寸法(および第1部分22bの上下方向の厚みの寸法)との和の値以上となるためである。このため実施の形態5(
図16)と同様に、加速度センサ取付具22が絶縁性であることによる加速度センサ10と測定対象1との間の絶縁耐力が、第2部分22cを有することによる沿面距離63の延長によりさらに補強される。
【0075】
(実施の形態9)
(振動測定装置の構成)
図20は、実施の形態9に係る振動測定装置の構成を示す模式図である。
図20を参照して、本実施の形態に係る振動測定装置100は基本的に
図19と同様であるため、
図19と同様の構成についてはその説明を繰り返さない。
図20の振動測定装置100は、互いに間隔を隔てられた加速度センサ取付具22の第2部分22cと、加速度センサ10との隙間に、これを充填するための隙間充填剤65が配置されている。隙間充填剤65は空気よりも絶縁耐力が高い材料が用いられることが好ましい。具体的には、隙間充填剤65として、高いヤング率を有するモルタル、修理材(修理用のパテ)、および接着剤のいずれかが用いられてもよい。なお隙間充填剤65の絶縁耐力は3.0kV/mm以上であることが好ましい。隙間充填剤65のヤング率は2.5GPa以上であることが好ましい。
【0076】
(作用効果)
図20の振動測定装置100は、
図19の振動測定装置100に対して、隙間充填剤65を有する点において異なっている。たとえば
図19の構成によれば、加速度センサ取付具22の周波数応答特性が低下する可能性がある。しかし
図20のように隙間充填剤65を配置することにより、隙間充填剤65を含む加速度センサ取付具22の周波数応答特性を良好とすることができる。
【0077】
(実施の形態10)
図21は、実施の形態10に係る振動測定装置の構成を示す模式図である。
図21を参照して、本実施の形態に係る振動測定装置100は基本的に
図19と同様であるため、
図19と同様の構成についてはその説明を繰り返さない。
図21の振動測定装置100は、
図19の振動測定装置100の加速度センサ取付具22が第2部分22cを有さず第1部分22bのみからなるものと同様の構成を有している。具体的には、
図21の加速度センサ取付具22は、平面視にて加速度センサ10の外側に突出する部分を有する。加速度センサ取付具22は、その全体が、加速度センサ10と加速度センサ取付具22との接触する接触面に沿う方向、すなわち
図19の左右方向に拡がっている。加速度センサ取付具22の、加速度センサ10と加速度センサ取付具22との接触する接触面に沿う方向の寸法W1は、加速度センサ10の上記接触面に沿う方向の寸法W2の3倍以上である。なお寸法W1は寸法W2の5倍以上であることがより好ましい。
【0078】
(作用効果)
本実施の形態によれば、平面視にて加速度センサ取付具22が加速度センサ10よりも大きくなる。加速度センサ取付具22は、加速度センサ10と平面視にて重なる領域と、その外側の領域との双方に配置される。これにより、たとえば加速度センサ取付具22が加速度センサ10と同じ寸法W2を有する場合に比べて、加速度センサ取付具22がその直下の測定対象1と接触する面積が広くなる。したがって本実施の形態によれば、
図21に示すように、寸法W1と寸法W2との差に相当する分が、加速度センサ10から測定対象1までの沿面距離63の一部として加わる。このため本実施の形態によれば、たとえば加速度センサ取付具22が加速度センサ10と同じ寸法W2を有する場合に比べて、沿面距離63を長くすることができる。この結果、このため実施の形態5(
図16)と同様に、加速度センサ取付具22が絶縁性であることによる加速度センサ10と測定対象1との間の絶縁耐力が、沿面距離63の延長によりさらに補強される。
【0079】
(実施の形態11)
図22は、実施の形態11に係る振動測定装置の構成を示す模式図である。なお、
図22は
図1に対応する。ただし実施の形態11~14では、加速度センサケーブル40の一部が図示される。接地点G1,G2については
図1と同様に存在するが、その図示が省略される。
【0080】
図22を参照して、本実施の形態に係る振動測定装置100は、基本的に
図1に示した振動測定装置100と同様の構成を備えるため同一内容の説明を繰り返さない。ただし本実施の形態の振動測定装置100は、熱収縮チューブ31およびスペーサ32を有さず、加速度センサケーブル40は、加速度センサ10と電気的に接続されている。具体的には、加速度センサケーブル40に含まれるシールド線43は、その一方の端部が接地端子81に接続されている。ここでの一方の端部は
図22の下側つまり加速度センサ10の加速度センサ取付具21側である。接地端子81は加速度センサ取付具21と接触し加速度センサ取付具21と電気的に接続可能なように設置される。なお接地端子81は測定対象1と接触し、測定対象1と導電可能となるように設置されてもよい。つまりシールド線43は測定対象1と導電可能となるように設置されてもよい。
図22では接地端子81は加速度センサ取付具21と測定対象1との双方に接触し、これら双方と導電可能なように示されており、このような構成であってもよい。
【0081】
振動測定装置100には電流が流れ得る2つの経路である、第1経路および第2経路が形成されている。第1経路は加速度センサケーブル40の外被44に覆われる複数のケーブル線の束から、シールド線43が接地端子81まで延びる経路である。つまり第1経路はシールド線43により構成される。第2経路は加速度センサケーブル40の第1ケーブル線41および第2ケーブル線42から、加速度センサ10の素子11および、導電性の加速度センサ筐体10Bを経由して、加速度センサ取付具21まで延びる経路である。第1経路と第2経路とは、
図22の左右方向に並ぶように並列に配置されている。
【0082】
(作用効果)
本実施の形態に係る振動測定装置100は、加速度センサ10と、加速度センサ取付具21と、加速度センサケーブル40とを備える。加速度センサ10は測定対象1の振動を測定可能な素子11を含む。加速度センサ取付具22は加速度センサ10の測定対象1が配置されるべき位置側に配置される。加速度センサケーブル40は、1対のケーブル線(第1ケーブル線41および第2ケーブル線42)と、シールド線43と、第1ケーブル線41、第2ケーブル線42およびシールド線43を束ねて外側から囲む外被44とを含む。シールド線43が延びる第1経路は、加速度センサケーブル40から加速度センサ10を経由して加速度センサ取付具21までの第2経路と並列に配置される。加速度センサ取付具21に電気的に接続可能に、第1経路には接地端子81が接続される。シールド線43は加速度センサ10に接続されずに、(たとえば接地端子81を介して)加速度センサ取付具21に接続される。
【0083】
第1経路は、シールド線43が、加速度センサ10の加速度センサ取付具21と反対側(
図22の上側)から、加速度センサ取付具21と電気的に接続された接地端子81までを結ぶ経路である。第2経路は第1ケーブル線41および第2ケーブル線42およびこれに接続された素子11から、加速度センサ筐体10Bを通り、加速度センサ取付具21まで達する経路である。
図22中の測定対象1にサージ電圧が印加された際に、第1経路の接地端子81を介して、加速度センサ取付具21(測定対象1)とシールド線43とが電気的に接続される。このため、サージ電圧の高電圧および高電流はすぐに接地電位まで低下する。また測定対象1にサージ電圧が印加された際に、第1経路と並列である第2経路には電流はほとんど流れない。第2経路に電流がほとんど流れないのは、第1ケーブル線41などが接続される素子11と加速度センサ筐体10Bとの間には空洞12が存在し連続しないためである。つまり第2経路は、空洞12の存在によりその全体が電気的に接続されていない。このため第2経路は第1経路に比べて電気抵抗が非常に大きい。したがってサージ電圧は第2経路よりも優先的に第1経路を通るため、上記のようにサージ電圧を即座に電位低下させることができる。加速度センサ10(第2経路の素子11)には高電圧が印加されないため、加速度センサ10(第2経路の素子11)の故障を抑制できる。
【0084】
(実施の形態12)
図23は、実施の形態12に係る振動測定装置の構成を示す模式図である。なお、
図23は
図22に対応する。
図23を参照して、本実施の形態に係る振動測定装置100は、基本的に
図22に示した振動測定装置100と同様の構成を備えるため同一内容の説明を繰り返さない。ただし
図23の振動測定装置100においては、シールド線43により形成される第1経路の、接地端子81に接続される一方の端部と、その反対側(加速度センサ取付具21の加速度センサ10側)である他方の端部との間に、サージ保護機器82が接続されている。サージ保護機器82は、SPD(Surge protective device)である。つまり本実施の形態の振動測定装置100は、SPDを備える。
【0085】
図24は、
図22および
図23における接地端子と加速度センサ取付具との接続態様の第1例を示す模式図である。
図24を参照して、実施の形態11および実施の形態12での接地端子81は、ねじを締結することにより加速度センサ取付具21に固定されてもよい。具体的には、たとえば加速度センサ取付具21の導電性の筐体に雌ねじを形成し、当該雌ねじに接地端子81を取り付け、その上から雄ねじが締結される。これにより接地端子81が加速度センサ取付具21の導電性の筐体に接触固定される。このような固定態様であってもよい。
【0086】
図25は、
図22および
図23における接地端子と加速度センサ取付具との接続態様の第2例を示す模式図である。ここで、加速度センサ10と加速度センサ取付具21とを固定するスタッド50が接地端子81を貫通するように、接地端子81に雌ねじが形成され、スタッド50に形成された雄ねじと締結される態様であってもよい。すなわち
図25においてはスタッド50が、加速度センサ10と加速度センサ取付具21と接地端子81とを互いに結合する。
【0087】
なお
図24~
図25のいずれの例においても、接地端子81と、加速度センサ取付具21および加速度センサ10のいずれかとが、テープなどにより固定されてもよい。
【0088】
(作用効果)
本実施の形態に係る振動測定装置100は、実施の形態11と同様の構成上の特徴を有する。当該振動測定装置100においては、シールド線43は、一方の端部が接地端子81に接続され、第1経路における一方の端部の反対側である他方の端部と、当該一方の端部との間に、サージ保護機器82が接続されてもよい。
【0089】
仮に
図4のように加速度センサ取付具21と測定対象1とが絶縁性の接着剤61により接合される場合、測定対象1と加速度センサ取付具21とは電気的に絶縁される。この場合、通常時(測定対象1にサージ電圧が印加されない状態)では
図9のグラウンドループGLは起こらない。通常時はサージ保護機器82が電流を通さないため、シールド線43の第1経路には電流が流れない。また加速度センサケーブル40から加速度センサ10(素子11)、加速度センサ取付具21を通る第2経路は、空洞12により不連続になっていることから電流は流れず、測定対象1と加速度センサ取付具21(加速度センサ筐体10B)との間も絶縁されているため電流は流れない。
【0090】
ところが、測定対象1にサージ電圧が印加されたときは、サージ保護機器82が導体のように動作する。このためシールド線43の第1経路は、加速度センサ取付具21(接地端子81)から加速度センサケーブル40に接続される加速度センサ10まで電気的に接続される。このため加速度センサ取付具21(およびこれと共通に接地端子81と接触する測定対象1)と、加速度センサ10との間の電位差がなくなり、接地端子81により、サージ電圧の高電圧および高電流はすぐに接地電位まで低下する。一方、実施の形態11(
図22)と同様の理由により、測定対象1にサージ電圧が印加された際に、第1経路と並列である第2経路には電流はほとんど流れない。以上により実施の形態11と同様に、サージ電圧は第2経路よりも優先的に第1経路を通るため、高電圧は加速度センサ10(第2経路の素子11)には印加されず、加速度センサ10(第2経路の素子11)の故障を抑制できる。
【0091】
以上のように本実施の形態では、サージ電圧が測定対象1に印加されない通常時にはサージ保護機器82が設置されているため、グラウンドループGL(
図9参照)は起こらずノイズの電流は生じない。しかしサージ電圧が測定対象1に印加されたときにサージ保護機器82により測定対象1と、シールド線43とが電気的に接続される。これにより高電圧が加速度センサ10の内部の素子11に加わり高電流が素子11に流れることを抑制できる。
【0092】
(実施の形態13)
図26は、実施の形態13に係る振動測定装置の構成を示す模式図である。
図26を参照して、本実施の形態に係る振動測定装置100は基本的に
図22と同様の構成を備えるため同一内容の説明を繰り返さない。ただし本実施の形態の振動測定装置100は、
図22とは異なり、加速度センサ取付具21の代わりに加速度センサ取付具22が設けられている。本実施の形態の振動測定装置100は、加速度センサ10に接触するように導電性コネクタ83が接続されている。
【0093】
導電性コネクタ83は、加速度センサ筐体10Bの加速度センサ取付具22と反対側である
図26の上側の面(最上面)上に、加速度センサ筐体10Bと接触するように取り付けられている。ただし導電性コネクタ83は加速度センサ筐体10Bの最上面以外の面に接触するように設置されてもよい。導電性コネクタ83は金属材料により形成されており、加速度センサ筐体10Bと接触することにより、加速度センサ10と導電性コネクタ83とが導通している。後の実施の形態で述べるように、シールド線43は、加速度センサ筐体10Bに限らず、絶縁性部材(ここでは非金属部22e)の加速度センサ10側(
図26の上側)に電気的に接続されればよい。
【0094】
シールド線43は導電性コネクタ83に接続されている。また
図26では、加速度センサ取付具22が、絶縁性部材を含んでいる。絶縁性部材により測定対象1と加速度センサ10との間が電気的に絶縁されている。具体的には、本実施の形態の加速度センサ取付具22は、本体を構成する金属部22dと、絶縁性部材である非金属部22eとを含んでいる。金属部22dは加速度センサ取付具22の中心をなす部材であり、加速度センサ取付具22の全体と同様に、たとえば直方体状(板状)を有している。金属部22dは金属などからなる導電性であってもよい。非金属部22eは、金属部22dの外側の表面上に配置される。つまり非金属部22eは金属部22dの表面上に塗布または形成されている。非金属部22eは、たとえば金属部22dの表面の全体に、アルマイト処理、または絶縁コーティング処理等により形成されてもよいが、金属部22dの表面の一部のみに上記処理により形成等されてもよい。たとえば測定対象1と加速度センサ取付具22(の金属部22d)との間に、測定対象1と加速度センサ取付具22(の金属部22d)との双方に接触するように、
図26の金属部22dの最下面のみに非金属部22eが配置されてもよい。あるいは非金属部22eは、たとえば金属部22dの加速度センサ10側の面(
図26の最上面)の全体の上のみに配置されてもよい。非金属部22eの存在により、加速度センサ取付具22は絶縁性を有する。
【0095】
(作用効果)
上記振動測定装置100において、加速度センサ取付具22に含まれる絶縁性部材としての非金属部22eにより測定対象1と加速度センサ10との間が電気的に絶縁される。シールド線43は、絶縁性部材の加速度センサ10側に電気的に接続されてもよい。
【0096】
異なる観点から見ると、本実施の形態に係る振動測定装置100は、加速度センサ10と、加速度センサ取付具21と、加速度センサケーブル40とを備える。加速度センサ10は測定対象1の振動を測定可能な素子11を含む。加速度センサ取付具22は加速度センサ10の測定対象1側に配置される。加速度センサケーブル40は加速度センサ10と電気的に接続される。加速度センサケーブル40はシールド線43を含む。加速度センサ10に接触するように導電性コネクタ83が接続される。シールド線43は導電性コネクタ83に接続される。測定対象1と加速度センサ10との間に絶縁被膜(非金属部22e)が挟まれている。
【0097】
非金属部22eにより、測定対象1と加速度センサ10とは電気的に絶縁される。この場合、通常時(測定対象1にサージ電圧が印加されない状態)では
図9のグラウンドループGLは起こらない。ところが、測定対象1にサージ電圧が印加されたときは、たとえば非金属部22eを沿面放電することにより、測定対象1と、加速度センサ10に接触する導電性コネクタ83に接続されたシールド線43とが導通される。シールド線43による第1経路と並列である、素子11を含む第2経路には電流はほとんど流れない。これは実施の形態11,12と同様に第2経路は第1経路よりも高電気抵抗であるためである。以上により実施の形態11と同様に、サージ電圧は第2経路よりも優先的に第1経路を通るため、高電圧は加速度センサ10(第2経路の素子11)には印加されず、加速度センサ10(第2経路の素子11)の故障を抑制できる。以上により、本実施の形態は基本的に実施の形態12と同様の作用効果を奏する。
【0098】
上記振動測定装置100において、シールド線43は導電性コネクタ83と電気的に接続され、導電性コネクタ83により、シールド線43は、たとえば加速度センサ10に電気的に接続されてもよい。導電性コネクタ83を用いれば、絶縁性コネクタ59(
図10参照)を用いた場合と異なり、導電性コネクタ83を介してシールド線43を加速度センサ10と導電可能である。これにより上記の第1経路が容易に形成できる。
【0099】
上記振動測定装置100において、加速度センサ取付具22は金属部22dと、絶縁性部材としての非金属部22eとを含んでもよい。金属部22dの表面に非金属部22eを設けることにより、加速度センサ取付具22は、金属部22dが導電性を有することによる振動測定の精度の確保と、非金属部22eが絶縁性部材であることによる加速度センサ10と測定対象1との絶縁性の確保による振動測定装置100の絶縁耐力の向上(加速度センサ10の故障抑制)との双方の効果が得られる。絶縁性部材(非金属部22e)は金属部22dの表面にコーティングされた絶縁被膜であってもよい。絶縁性部材(非金属部22e)は樹脂およびセラミックスのいずれかにより形成されてもよい。
図26のように非金属部22eは測定対象1と接触してもよい。
【0100】
(実施の形態14)
図27は、実施の形態14に係る振動測定装置の構成を示す模式図である。
図27を参照して、本実施の形態に係る振動測定装置100は基本的に
図26と同様の構成を備えるため同一内容の説明を繰り返さない。ただし本実施の形態では加速度センサ取付具22が、金属部22dと、絶縁性部材としての非金属部22fとを含んでいる。非金属部22fはたとえば平面視において矩形状を有し、
図27の上下方向に示す厚みを有する板状の部材である。非金属部22fは樹脂またはセラミックス材料などの絶縁性を有する部材が板状に加工されたものである。
図27に示すように、非金属部22fの最上面と、金属部22dの最下面とは、接着剤61により接合されていてもよい。あるいは図示されないが、非金属部22fの最上面と、金属部22dの最下面とが、たとえばレーザーにより接合されてもよい。
【0101】
つまり本実施の形態では、実施の形態13のコーティング膜として金属部22dの最下面に形成された非金属部22eの代わりに、板状部材としての非金属部22fが配置されている。このような構成としても、基本的に実施の形態13と同様の作用効果を奏する。
【0102】
(実施の形態15)
図28は、実施の形態15に係る振動測定装置の構成を示す模式図である。
図28を参照して、本実施の形態に係る振動測定装置100は基本的に
図22と同様の構成を備えるため同一内容の説明を繰り返さない。ただし本実施の形態では、
図22とは異なり、加速度センサ取付具21の代わりに加速度センサ取付具22が設けられている。加速度センサ取付具22は、実施の形態14の
図27と同様に、金属部22dと、その最下面にたとえば接着剤61で接合された非金属部22fとを含んでいる。ただし図示されないが、加速度センサ取付具22は、実施の形態13の
図26と同様に、金属部22dと、その表面にコーティングされた絶縁被膜としての非金属部22eとからなってもよい。
【0103】
また
図28は、
図26、
図27との対比により、シールド線43の接続位置において異なっている。
図26、
図27ではシールド線43は導電性コネクタ83により、加速度センサ10の最上面に接続されている。これに対し
図28ではシールド線43は、加速度センサ取付具22の金属部22dの側面上に接続された接地端子81に接続されている。
【0104】
図26,
図27のようにシールド線43は、加速度センサ10に接続されてもよい。あるいは
図28のようにシールド線43は、非金属部22f(絶縁性部材)の直上に接合された金属部22dに接続されてもよい。いずれにせよ、シールド線43は、絶縁性部材の加速度センサ10側(
図26~
図28の上側)に電気的に接続されていることが好ましい。
【0105】
(実施の形態16)
以上の各実施の形態に述べた振動測定装置100を用いた風力発電装置について、以下に説明する。
【0106】
<風力発電装置の構成>
図29は、各実施の形態に係る振動測定装置を用いた風力発電装置の構成を概略的に示した図である。
図29を参照して、風力発電装置1000は、主軸120と、ブレード130と、増速機140と、発電機150と、主軸受160を備える。風力発電装置1000はセンサ10C~10Kと、データ収集装置70とを備える。センサ10C~10Kは、上記各実施の形態に係る振動測定装置100に含まれる加速度センサ10として設けられる。データ収集装置70は、風力発電用CMS装置として設けられる。増速機140、発電機150、主軸受160、センサ10C~10Kおよびデータ収集装置70は、ナセル190に格納され、ナセル190は、タワー101によって支持される。
【0107】
主軸120は、ナセル190内に進入して増速機140の入力軸に接続され、主軸受160によって回転自在に支持される。そして、主軸120は、風力を受けたブレード130により発生する回転トルクを増速機140の入力軸へ伝達する。ブレード130は、主軸120の先端に設けられ、風力を回転トルクに変換して主軸120に伝達する。
【0108】
主軸受160は、ナセル190内において固設され、主軸120を回転自在に支持する。主軸受160は、転がり軸受によって構成され、たとえば、自動調芯ころ軸受や円すいころ軸受、円筒ころ軸受、玉軸受等によって構成される。なお、これらの軸受は、単列のものでも複列のものでもよい。
【0109】
センサ10C~10Kは、ナセル190の内部の各機器に固設される。具体的には、センサ10Jは、主軸受160の上面に固設され、主軸受160の状態を監視する。センサ10K,10C,10Dは、増速機140の上面に固設され、増速機140の状態を監視する。センサ10E,10Fは、発電機150の上面に固設され、発電機150の状態を監視する。センサ10Gは主軸受160に固設され、ミスアライメントとナセルの異常振動を監視する。センサ10Iは主軸受160に固設され、アンバランスとナセルの異常振動を監視する。
【0110】
増速機140は、主軸120と発電機150との間に設けられ、主軸120の回転速度を増速して発電機150へ出力する。一例として、増速機140は、遊星ギヤや中間軸、高速軸等を含む歯車増速機構によって構成される。なお、特に図示しないが、この増速機140内にも、複数の軸を回転自在に支持する複数の軸受が設けられている。発電機150は、増速機140の出力軸に接続され、増速機140から受ける回転トルクによって発電する。発電機150は、たとえば、誘導発電機によって構成される。なお、この発電機150内にも、ロータを回転自在に支持する軸受が設けられている。
【0111】
データ収集装置70は、ナセル190の内部に設けられ、センサ10C~10Kが検出した各機器の振動、音、AE(Acoustic emission)等のデータを受ける。なお、図示はしていないが、センサ10C~10Kとデータ収集装置70とは、有線ケーブルで接続されている。
【0112】
以上に述べた各実施の形態(に含まれる各例)に記載した特徴を、技術的に矛盾のない範囲で適宜組み合わせるように適用してもよい。
【0113】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0114】
1 測定対象、10 加速度センサ、10a センサ外縁、10h,21h 貫通孔、10B 加速度センサ筐体、11 素子、12 空洞、21,22 加速度センサ取付具、21a,22a 取付具外縁、22b 第1部分、22c 第2部分、22d 金属部、22e,22f 非金属部、31 熱収縮チューブ、32,34 スペーサ、33 アダプタ、33a アダプタ突起、34a,35a スペーサ外縁、36,39 絶縁板、40 加速度センサケーブル、41 第1ケーブル線、42 第2ケーブル線、43 シールド線、44 外被、50 スタッド、61 接着剤、62 充填剤、63 沿面距離、64 絶縁性塗布剤、65 隙間充填剤、70 データ収集装置、81 接地端子、82 サージ保護機器、83 導電性コネクタ、100,900 振動測定装置、101 タワー、120 主軸、130 ブレード、140 増速機、150 発電機、160 主軸受、190 ナセル、1000 風力発電装置、DCG 放電、G1,G2 接地点、GL グラウンドループ、SV サージ電圧。