(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023099115
(43)【公開日】2023-07-11
(54)【発明の名称】薬物充填マイクロビーズ組成物、塞栓組成物および関連の方法
(51)【国際特許分類】
A61K 9/16 20060101AFI20230704BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20230704BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20230704BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20230704BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20230704BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20230704BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230704BHJP
A61K 47/61 20170101ALI20230704BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230704BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
A61K9/16
A61K47/34
A61K47/36
A61K47/32
A61K47/42
A61K47/46
A61K47/02
A61K47/61
A61P35/00
A61K31/704
【審査請求】有
【請求項の数】41
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023074092
(22)【出願日】2023-04-28
(62)【分割の表示】P 2020533787の分割
【原出願日】2018-12-18
(31)【優先権主張番号】62/607,080
(32)【優先日】2017-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】591018693
【氏名又は名称】シー・アール・バード・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】C R BARD INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】1 Becton Drive Franklin Lakes NEW JERSEY 07417 UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100163784
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 健志
(72)【発明者】
【氏名】ドゥー,ヒープ
(72)【発明者】
【氏名】ランドール,マイケル
(57)【要約】 (修正有)
【課題】化学塞栓術のためのマイクロビーズ、マイクロビーズを調製する方法、およびマイクロビーズを使用する塞栓療法を提供する。
【解決手段】薬物充填マイクロビーズ組成物は、水膨潤性ポリマー材料のマイクロビーズ、および担体と担体に化学結合した治療剤との複合体を含む。複合体はポリマー材料に埋め込まれる。治療剤は、水膨潤性ポリマー材料に化学結合しない。薬物充填マイクロビーズ組成物は、薬物充填マイクロビーズ組成物の全重量に対して、1重量%未満の含水量を有する。薬物充填マイクロビーズ組成物は、再水和されて、塞栓療法における使用のための塞栓組成物を形成し得る。薬物充填マイクロビーズ組成物および塞栓組成物を調製する方法は、治療剤を水膨潤性ポリマー材料に充填して、マイクロビーズを形成し、次いでマイクロビーズから水を除去するステップを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水膨潤性ポリマー材料を含むマイクロビーズ;および
担体と該担体に化学結合した治療剤とを含む複合体、
を含む薬物充填マイクロビーズ組成物であって、
該複合体が、該ポリマー材料内に埋め込まれ、
該薬物充填マイクロビーズ組成物が、薬物充填マイクロビーズ組成物の全重量に対して1重量%未満の含水量を有する、
上記組成物。
【請求項2】
水膨潤性ポリマー材料が、ポリ(4-ヒドロキシブチレート)、メタクリレート化ヒアルロン酸、キトサン-アルギネート、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)コポリマー、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)-アルギネート、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)-ペプチド、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)-α-アクリロイルオキシ-β,β-ジメチル-γ-ブチロラクトン-親水性ジェファーミン、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)-ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート-ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、前述のいずれかの誘導体、または前述のいずれかの組み合わせから選択される生分解性ポリマー材料である、請求項1に記載の薬物充填マイクロビーズ組成物。
【請求項3】
治療剤が、ドキソルビシン、ソラフェニブ、バンデタニブ、ニボルマブ、イピリムマブ、レゴラフェニブ、イリノテカン、エピルビシン、ピラルビシン、5-フルオロウラシル、シスプラチン、フロクスウリジン、マイトマイシンC、前述のいずれかの誘導体、前述のいずれかのプロドラッグ、前述のいずれかの治療上許容される塩、または前述のいずれかの組み合わせから選択される、請求項1または2に記載の薬物充填マイクロビーズ組成物。
【請求項4】
治療剤が水膨潤性ポリマー材料と化学結合しない、前記請求項のいずれか1項に記載の薬物充填マイクロビーズ組成物。
【請求項5】
水膨潤性ポリマー材料が、粒子コアをカプセル化するポリマーマトリックスシェルを含み、
複合体が該粒子コア内に配置される、
前記請求項のいずれか1項に記載の薬物充填マイクロビーズ組成物。
【請求項6】
担体が、薬物充填マイクロビーズの水膨潤性ポリマー材料の相互貫入ネットワーク内に埋め込まれる、前記請求項のいずれか1項に記載の薬物充填マイクロビーズ組成物。
【請求項7】
担体が、リポソーム、ポリマーミセル、プルロニック、ポリカプロラクトン-b-メトキシ-PEG、ポリ(アスパラギン酸)-b-PEG、ポリ(ベンジル-L-グルタメート)-b-PEG、ポリ(D,L-ラクチド)-b-メトキシ-PEG、ポリ(β-ベンジル-L-アスパレート)-b-PEG)、またはデキストラン硫酸ナトリウムから選択される、前記請求項のいずれか1項に記載の薬物充填マイクロビーズ組成物。
【請求項8】
担体がデキストラン硫酸ナトリウムを含む、請求項6に記載の薬物充填マイクロビーズ組成物。
【請求項9】
デキストラン硫酸ナトリウムが約40kDa~約500kDaの分子量を有する、請求項8に記載の薬物充填マイクロビーズ組成物。
【請求項10】
担体がリポソームを含む、請求項7に記載の薬物充填マイクロビーズ組成物。
【請求項11】
担体がポリマーミセルを含む、請求項7に記載の薬物充填マイクロビーズ組成物。
【請求項12】
担体がプルロニックを含む、請求項7に記載の薬物充填マイクロビーズ組成物。
【請求項13】
担体がポリカプロラクトン-b-メトキシ-PEGを含む、請求項7に記載の薬物充填マイクロビーズ組成物。
【請求項14】
担体がポリ(アスパラギン酸)-b-PEGを含む、請求項7に記載の薬物充填マイクロビーズ組成物。
【請求項15】
担体がポリ(ベンジル-L-グルタメート)-b-PEGを含む、請求項7に記載の薬物充填マイクロビーズ組成物。
【請求項16】
担体がポリ(D,L-ラクチド)-b-メトキシ-PEGを含む、請求項7に記載の薬物充填マイクロビーズ組成物。
【請求項17】
担体がポリ(β-ベンジル-L-アスパレート)-b-PEG)を含む、請求項7に記載の薬物充填マイクロビーズ組成物。
【請求項18】
薬物充填マイクロビーズが実質的に球状である、前記請求項のいずれか1項に記載の薬物充填マイクロビーズ組成物。
【請求項19】
薬物充填マイクロビーズが約40μm~約800μmの直径を有する、前記請求項のいずれか1項に記載の薬物充填マイクロビーズ組成物。
【請求項20】
薬物充填マイクロビーズ組成物の個々のマイクロビーズが、個々のマイクロビーズの全重量に対して、
約30重量%~約70重量%の水膨潤性ポリマー材料と、
約1重量%~約25重量%の治療剤と、
約1重量%~約40重量%の担体と
1重量%未満の水と
を含む、前記請求項のいずれか1項に記載の薬物充填マイクロビーズ組成物。
【請求項21】
薬物充填マイクロビーズ組成物を調製する方法であって、
担体および治療剤を水性溶媒に溶解して、担体と治療剤との複合体を含む初期混合物を形成するステップと、
初期混合物と、該水性溶媒におけるよりも該治療剤の可溶性が低い第1の溶媒組成物とを組み合わせて、第2の混合物を形成するステップと、
第2の混合物を急速に撹拌して、該第2の混合物中に複合体の粒子を形成するステップと、
複合体の粒子と、水膨潤性ポリマー材料のヒドロゲルとを組み合わせて、ヒドロゲル混合物を形成するステップと、
ヒドロゲル混合物と第2の溶媒組成物とを組み合わせて、合成混合物を形成するステップと、
合成混合物を急速に撹拌して、該合成混合物中に薬物充填マイクロビーズを形成するステップと、
薬物充填マイクロビーズを合成混合物から回収するステップと、
薬物充填マイクロビーズから水を除去して、薬物充填マイクロビーズ組成物における薬物
充填マイクロビーズの全重量に対して1重量%未満の含水量を有する薬物充填マイクロビーズ組成物を形成するステップと
を含む、上記方法。
【請求項22】
複合体の粒子とヒドロゲル溶液とを組み合わせる前に、第2の混合物を濾過して、複合体の粒子を回収するステップをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
水の除去が、薬物充填マイクロビーズを凍結乾燥するステップを含む、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
水の除去が、薬物充填マイクロビーズを凍結乾燥するステップと、
凍結乾燥した薬物充填マイクロビーズを、空気、温度変化、真空、またはこれらの任意の組み合わせによって乾燥するステップと
を含む、請求項21または22に記載の方法。
【請求項25】
薬物充填マイクロビーズが、合成混合物からの回収時の平均合成体積、および水の除去後の平均最終体積を有し、
該平均最終体積が、該平均合成体積の約10%~約75%である、
請求項21~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
薬物充填マイクロビーズ組成物を調製する方法であって、
担体および治療剤を水性溶媒に溶解して、担体と治療剤との複合体を含む初期混合物を形成するステップと、
初期混合物と、水膨潤性ポリマー材料のヒドロゲル溶液とを組み合わせてヒドロゲル混合物を形成するステップと、
ヒドロゲル混合物と溶媒組成物とを組み合わせて合成混合物を形成するステップと、
合成混合物を急速に撹拌して、該合成混合物中に薬物充填マイクロビーズを形成するステップと、
薬物充填マイクロビーズを合成混合物から回収するステップと、
薬物充填マイクロビーズを乾燥して、薬物充填マイクロビーズ組成物における薬物充填マイクロビーズの全重量に対して1重量%未満の含水量を有する薬物充填マイクロビーズ組成物を形成するステップと
を含む、上記方法。
【請求項27】
水の除去が、薬物充填マイクロビーズを凍結乾燥するステップを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
水の除去が、薬物充填マイクロビーズを凍結乾燥するステップと、
凍結乾燥した薬物充填マイクロビーズを、空気、熱、真空、またはこれらの任意の組み合わせで乾燥するステップと
を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
薬物充填マイクロビーズが、合成混合物からの回収時の平均合成体積、および水の除去後の平均最終体積を有し、
該平均最終体積が、該平均合成体積の約10%~約75%である、
請求項26~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
請求項1~20のいずれか1項に記載の薬物充填マイクロビーズ組成物、請求項21~25のいずれか1項に記載の方法によって製造される薬物充填マイクロビーズ組成物、または請求項26~29のいずれか1項に記載の方法によって製造される薬物充填マイクロ
ビーズ組成物と、
薬物充填マイクロビーズ組成物の薬物充填マイクロビーズを膨潤させるのに十分な量の水溶液であって、それによって膨潤後の薬物充填マイクロビーズが、薬物充填マイクロビーズの全重量に対して50重量%~95重量%の含水量を含む、前記水溶液と
を含む、塞栓組成物。
【請求項31】
水溶液が生理緩衝食塩溶液である、請求項30に記載の塞栓組成物。
【請求項32】
塞栓組成物の膨潤した個々の薬物充填マイクロビーズが、膨潤した個々の薬物充填マイクロビーズの全重量に対して
約3重量%~約10重量%の水膨潤性ポリマー材料と、
約0.1重量%~約2.5重量%の治療剤と、
約0.1重量%~約4.0重量%の担体と、
約50重量%~約96重量%の水と
を含む、請求項30または31に記載の塞栓組成物。
【請求項33】
塞栓組成物を調製する方法であって、
請求項1~20のいずれか1項に記載の薬物充填マイクロビーズ組成物、または請求項21~25のいずれか1項に記載の方法によって製造される薬物充填マイクロビーズ組成物、または請求項26~29のいずれか1項に記載の方法によって製造される薬物充填マイクロビーズ組成物を、薬物充填マイクロビーズ組成物の薬物充填マイクロビーズを膨潤させるのに十分な量の水溶液であって、それによって膨潤後の薬物充填マイクロビーズが薬物充填マイクロビーズの全重量に対して50重量%~95重量%の含水量を含む、前記水溶液に添加して、注射可能な状態の溶液を形成するステップと、
該注射可能な状態の溶液を注射装置に充填するステップと
を含む、上記方法。
【請求項34】
注射可能な状態の溶液を注射装置に充填する前に、薬物充填マイクロビーズを約5分~約60分の再水和時間膨潤させるステップをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
水溶液が生理緩衝食塩溶液である、請求項33または34に記載の方法。
【請求項36】
疾患を治療する方法であって、
請求項30~32のいずれか1項に記載の塞栓組成物を、塞栓療法を必要とする対象の静脈内に供給するステップ
を含む、上記方法。
【請求項37】
塞栓組成物が静脈内に供給された後、薬物充填マイクロビーズの少なくとも一部が、対象の脈管構造を通って塞栓部位に流れ、塞栓部位の血流を制限し、
該薬物充填マイクロビーズが、塞栓組成物が供給される前のマイクロビーズ内に埋め込まれた治療剤の初期量に基づき少なくとも90重量%の治療剤を、塞栓部位の組織に放出期間にわたって放出する、
請求項36に記載の方法。
【請求項38】
塞栓部位の組織への放出が、放出の初期バーストを含み、この間初期量に対して少なくとも10重量%の治療剤が放出される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
薬物充填マイクロビーズが、放出期間にわたって組織への治療剤の持続的放出を提供する、請求項37または38に記載の方法。
【請求項40】
放出期間が少なくとも14日間である、請求項37~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
放出期間が少なくとも28日間である、請求項37または38に記載の方法。
【請求項42】
疾患が癌である、請求項36~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
癌が肝細胞癌、肝癌、前立腺癌または乳癌である、請求項42に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
[0001]本出願は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる2017年12月18日に出願された米国仮特許出願第62/607,080号の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
[0002]本開示は、化学塞栓術のためのマイクロビーズ、マイクロビーズを調製する方法、およびマイクロビーズを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]塞栓療法は、介入放射線医によって行われる低侵襲手術である。典型的な治療は、例えば、腕または脚の小切開を介して脈管構造に侵入し、任意で蛍光透視法などの画像技術によって補助される、ガイドワイヤーおよびカテーテルの使用によって治療部位に到達することを含み得る。治療部位の塞栓剤は、血管を閉鎖し、治療部位から下流の腫瘍への血流を遮断し、腫瘍の壊死および/または収縮をもたらす。
【0004】
[0004]塞栓療法のための塞栓剤の選択は、所望の臨床結果、および塞栓剤の固有の特性に依存する。臨床的に使用する塞栓剤は、一般に欠点がある。第1に、塞栓剤は、予め充填された薬物なしで提供され、医師は、手術のかなり前、典型的には手術の少なくとも24時間前に薬物を塞栓剤に充填するように薬局に注文しなければならないことを意味する。第2に、塞栓剤は、埋め込みからわずか数日後、典型的には埋め込みから約3日以内に標的治療部位への薬物の放出を停止させる、最適以下の薬物動態放出プロファイルを有する。
【0005】
[0005]したがって、塞栓剤の調製において高い効率を可能にし、また、塞栓部位への治療剤の持続的な長期送達を提供する塞栓剤および塞栓療法が継続的に必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
[0006]したがって、本開示の実施形態は、薬物充填マイクロビーズ組成物、薬物充填マイクロビーズ組成物を調製する方法、薬物充填マイクロビーズ組成物から調製される塞栓組成物、塞栓組成物を調製する方法および塞栓組成物で疾患を治療する方法を含む。
【0007】
[0007]実施形態によれば、薬物充填マイクロビーズ組成物は、水膨潤性ポリマー材料からなるマイクロビーズ、および担体と担体に化学結合した治療剤とを含む複合体を含み得る。薬物充填マイクロビーズ組成物において、複合体は、ポリマー材料内に埋め込まれる。薬物充填マイクロビーズ組成物は、薬物充填マイクロビーズ組成物の全重量に対して1重量%未満の含水量を有する。
【0008】
[0008]実施形態によれば、薬物充填マイクロビーズ組成物を調製する方法は、担体および治療剤を水性溶媒に溶解して、担体と治療剤との複合体を含む初期混合物を形成するステップを含み得る。方法は、初期混合物と、水性溶媒中より治療剤の可溶性が低い第1の溶媒組成物とを組み合わせて、第2の混合物を形成するステップと、第2の混合物を急速に撹拌して、第2の混合物中に複合体の粒子を形成するステップとをさらに含み得る。方法は、複合体の粒子と水膨潤性ポリマー材料のヒドロゲルとを組み合わせて、ヒドロゲル混合物を形成するステップと;ヒドロゲル混合物と第2の溶媒組成物とを組み合わせて、合成混合物を形成するステップと、合成混合物を急速に撹拌して、合成混合物中に薬物充填マイクロビーズを形成するステップと;薬物充填マイクロビーズを合成混合物から回収するステップとをさらに含み得る。方法は、水を薬物充填マイクロビーズから除去して、
薬物充填マイクロビーズ組成物中の薬物充填マイクロビーズの全重量に対して1重量%未満の含水量を有する薬物充填マイクロビーズ組成物を形成するステップをさらに含み得る。
【0009】
[0009]実施形態によれば、薬物充填マイクロビーズ組成物を調製する方法は、担体および治療剤を水性溶媒に溶解して、担体と治療剤との複合体を含む初期混合物を形成するステップと;初期混合物と水膨潤性ポリマー材料のヒドロゲル溶液とを組み合わせて、ヒドロゲル混合物を形成するステップと;ヒドロゲル混合物と溶媒組成物とを組み合わせて、合成混合物を形成するステップと;合成混合物を急速に撹拌して、合成混合物中に薬物充填マイクロビーズを形成するステップと;薬物充填マイクロビーズを合成混合物から回収するステップとを含み得る。方法は、薬物充填マイクロビーズを乾燥して、薬物充填マイクロビーズ組成物中の薬物充填マイクロビーズの全重量に対して1重量%未満の含水量を有する薬物充填マイクロビーズ組成物を形成するステップをさらに含み得る。
【0010】
[0010]実施形態によれば、塞栓組成物は、本開示の任意の実施形態による薬物充填マイクロビーズ組成物を、薬物充填マイクロビーズ組成物の薬物充填マイクロビーズを膨潤させるのに十分な量の水溶液と組み合わせて含み得る。塞栓組成物において、膨潤後の薬物充填マイクロビーズは、薬物充填マイクロビーズの全重量に対して50重量%~95重量%の含水量を含む。
【0011】
[0011]実施形態によれば、塞栓組成物を調製する方法は、本開示の任意の実施形態による薬物充填マイクロビーズ組成物、または本開示の任意の実施形態による薬物充填マイクロビーズ組成物を調製する方法によって製造される薬物充填マイクロビーズ組成物を、薬物充填マイクロビーズ組成物の薬物充填マイクロビーズを膨潤させるのに十分な量の水溶液に添加して、すぐに注射できる状態の溶液を形成するステップを含み得る。このような方法によって製造される塞栓溶液において、膨潤後の薬物充填マイクロビーズは、薬物充填マイクロビーズの全重量に対して50重量%~95重量%の含水量を有する。方法は、すぐに注射できる状態の溶液を注射装置に充填するステップをさらに含み得る。
【0012】
[0012]実施形態によれば、疾患を治療する方法は、本開示の任意の実施形態による塞栓組成物を、塞栓療法を必要とする対象の静脈内に供給するステップを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】[0013](A)本開示の1つまたは複数の実施形態による塞栓組成物中の薬物充填マイクロビーズ;(B)ドキソルビシンが充填された生体適合性スルホン酸修飾ポリ(ビニルアルコール)(PVA)のマイクロビーズを含有する比較塞栓組成物;ならびに(C)酢酸ビニルおよびアクリル酸メチルの重合によって形成され、ドキソルビシンが充填された、アクリル酸ナトリウムアルコールコポリマーのマイクロビーズを含有する比較塞栓組成物のインビボ薬物放出対時間を示すグラフである。
【0014】
[0014]本明細書に記載される実施形態の追加の特徴および利点は、後続の詳細な説明に記載され、部分的には該説明から当業者に容易に明らかになるか、または後続の詳細な説明、特許請求の範囲、および添付の図面を含む本明細書に記載の実施形態を実施することによって認識される。
【0015】
[0015]前述の全般的な説明と以下の詳細な説明の両方は、様々な実施形態を記載し、特許請求された主題の性質および特徴を理解するための概要または枠組みを提供することを意図していることが理解されるべきである。添付の図面は、様々な実施形態のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。図面は本明細書に記載される様々な実施形態を例示し、説明と共に、特許請求される主題の原理および
動作を説明するのに役立つ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[0016]本開示の実施形態は、薬物充填マイクロビーズ組成物、薬物充填マイクロビーズ組成物を調製する方法、薬物充填マイクロビーズ組成物から調製される塞栓組成物、塞栓組成物を調製する方法、および塞栓組成物を用いて疾患を治療する方法に関する。薬物充填マイクロビーズ組成物は、治療剤が予め充填されたマイクロビーズを含む。塞栓組成物に含まれ、塞栓療法の一部として対象に供給された場合、塞栓組成物は、埋め込み後少なくとも7日間、少なくとも14日間、少なくとも21日間または少なくとも30日間の標的治療部位への薬物の連続放出を提供し得る。
【0017】
[0017]薬物充填マイクロビーズ組成物は、治療剤または治療剤と担体との複合体が充填されたマイクロビーズを含み得る。マイクロビーズは、ヒドロゲルを形成できるポリマー材料などの水膨潤性ポリマー材料のビーズまたはマイクロビーズであり得る。
【0018】
[0018]薬物充填マイクロビーズ組成物のマイクロビーズにおいて、治療剤または治療剤の複合体は、水膨潤性ポリマー材料内に埋め込まれ得る。別段記載された場合を除き、用語「埋め込まれた」は、水膨潤性ポリマー材料またはその一部が治療剤もしくは治療剤を含む複合体を全体的に取り囲むか、またはそこに治療剤もしくは治療剤を含む複合体が埋め込まれる実施形態を広く含む。いくつかの実施形態において、例えば、「埋め込まれた」は、治療剤または複合体を保持するコアをカプセル化する水溶性ポリマー材料のシェルを含み得る。他の実施形態において、「埋め込まれた」は、治療剤または複合体が、外部シェル内にコアを有する場合も、有さない場合もある水膨潤性ポリマー材料のマトリックス、ネットワークまたは多孔構造内に物理的に配置される構造を含み得る。治療剤自体は、水膨潤性ポリマー材料に全く化学結合しないか、または水膨潤性ポリマー材料のポリマー骨格に直接化学結合しない。薬物充填マイクロビーズ組成物は、薬物充填マイクロビーズ組成物の全重量に対して1重量%未満の含水量を有し得る。
【0019】
[0019]様々な実施形態において、薬物充填マイクロビーズ組成物の水膨潤性ポリマー材料は、例えば、キトサンもしくは多糖などの天然ヒドロゲルポリマー、またはポリアクリレート、ポリアミド、ポリエステル、多糖、ポリ(メチルメタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール)などの合成ヒドロゲルポリマーを含み得る。いくつかの実施形態において、水膨潤性ポリマー材料は生分解性であり得る。水膨潤性ポリマー材料の具体例としては、ポリ(4-ヒドロキシブチレート)、メタクリレート化ヒアルロン酸(D-グルクロン酸およびN-アセチル-D-グルコサミンからなる二糖のポリマーであるヒアルロン酸)、キトサン-アルギネート、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)コポリマー、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)-アルギネート、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)-ペプチド、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)-α-アクリロイルオキシ-β,β-ジメチル-γ-ブチロラクトン-親水性ジェファーミンまたはポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)-ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート-ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)を含むが、これらに限定されない。薬物充填マイクロビーズ組成物の水膨潤性ポリマー材料は、前述の材料のいずれかの誘導体を含み得るか、または前述の材料またはその誘導体のいずれかの組み合わせを含み得る。例えば、薬物充填マイクロビーズ組成物は、複数の水膨潤性ポリマー材料の組み合わせを含み得、個々のマイクロビーズは各々単一種のポリマーで作られており、薬物充填マイクロビーズ組成物は、複数のポリマー種のマイクロビーズを含む。代替的に、薬物充填マイクロビーズ組成物は、複数の水膨潤性ポリマー材料の組み合わせを含み得、組成物の個々のマイクロビーズは、複数種のポリマーからなる。
【0020】
[0020]薬物充填マイクロビーズ組成物は、治療剤を含む。いくつかの実施形態において
、治療剤は、親水性治療剤、または水溶性であるか、もしくは水溶液中で少なくともある程度可溶性であるかのいずれかの治療剤であり得る。いくつかの実施形態において、治療剤は、癌などの疾患の治療に対して少なくともある程度効果がある化学療法剤であり得る。いくつかの実施形態において、治療剤は、肝細胞癌、肝癌、前立腺癌または乳癌などの癌の治療に対して少なくともある程度効果がある化学療法剤であり得る。治療剤は、正もしくは負電荷または親和性を有する1つまたは複数の化学部分または原子中心を有し得る。具体的な治療剤の例としては、ドキソルビシン、ソラフェニブ、バンデタニブ、ニボルマブ、イピリムマブ、レゴラフェニブ、イリノテカン、エピルビシン、ピラルビシン、5-フルオロウラシル、シスプラチン、フロクスウリジン、マイトマイシンC、前述のいずれかの誘導体、前述のいずれかのプロドラッグ、前述のいずれかの治療上許容される塩もしくは結晶形態、または前述のいずれかの組み合わせを含むが、これらに限定されない。好適な治療剤のさらなる例としては、ピラルビシン、ミトキサントロン、テポテカン、パクリタキセル、カルボプラチン、ペメトレキセド、ペントスタチン(penistatin)、ペルツズマブ、トラツズマブおよびドセタキセルを含むが、これらに限定されない。
【0021】
[0021]薬物充填マイクロビーズ組成物の個々のマイクロビーズは、1つの治療剤または複数の治療剤を含み得る。まとめると、薬物充填マイクロビーズ組成物のマイクロビーズは、1つの特定の治療剤または特定の治療剤の組み合わせが充填されたあるマイクロビーズ、および別の特定の治療剤または特定の治療剤の組み合わせが充填された他のマイクロビーズを含み得る。
【0022】
[0022]いくつかの実施形態において、薬物充填マイクロビーズ組成物の治療剤は、水膨潤性ポリマー材料のマイクロビーズ内に埋め込まれ得るが、水膨潤性ポリマー材料に化学結合しない。いくつかの実施形態において、薬物充填マイクロビーズ組成物の治療剤は、水膨潤性ポリマー材料のマイクロビーズ内に埋め込まれ得、水膨潤性ポリマー材料のポリマー骨格に直接化学結合し得ないが、水膨潤性ポリマー材料の官能基に化学結合し得る。本明細書で使用する「化学結合しない」は、治療剤と水膨潤性ポリマーとの間の共有化学結合の欠如を指すが、治療剤と水膨潤性ポリマー材料との間のイオン性相互作用またはファンデルワールス相互作用などの非共有分子間相互作用の存在を排除しない。
【0023】
[0023]いくつかの実施形態において、薬物充填マイクロビーズ組成物は、担体と治療剤との複合体を含む。複合体において、治療剤は、担体に化学結合し得るか、またはカプセル化もしくはファンデルワールス相互作用などの非共有手段によって担体と会合し得る。複合体は、水膨潤性ポリマー材料内に埋め込まれ得る。複合体がマイクロビーズ内に埋め込まれる場合、担体は、水膨潤性ポリマー材料と化学結合し得るが、治療剤は、水膨潤性ポリマー材料と化学結合しない。理論に拘束されることは意図しないが、治療剤が担体と結合または会合するが、水膨潤性ポリマー材料と化学結合しない場合、薬物充填マイクロビーズ組成物のマイクロビーズは、薬物充填中、水分子を薬物分子に置き換えたことによる収縮の影響を受けにくいと考えられる。したがって、薬物充填マイクロビーズの最終的な粒径分布は、治療剤が充填される前に適当なマイクロビーズ粒径を選択することによってより容易に制御できる。
【0024】
[0024]薬物充填マイクロビーズ組成物が担体と治療剤との複合体を含む場合、担体は、治療剤と複合体を形成し得るか、またはこれをカプセル化し得る任意の薬学的に許容される化合物であり得る。いくつかの実施形態において、担体は、荷電した化学基または双極子モーメントを有する化学基を有し得、これは、反対の電荷または反対の双極子モーメントを有する治療剤の対応する化学基と相互作用する。担体がポリマー材料である場合、担体は、水膨潤性ポリマー材料とは異なる材料であり得る。好適な担体の非限定的例としては、多糖、リポソーム、ポリマーミセル、プルロニック(登録商標)、ポリカプロラクトン-b-メトキシ-PEG、ポリ(アスパラギン酸)-b-PEG、ポリ(ベンジル-L
-グルタメート)-b-PEG、ポリ(D,L-ラクチド)-b-メトキシ-PEG、ポリ(β-ベンジル-L-アスパレート)-b-PEG)が挙げられる。多糖の非限定的例としては、デキストラン、およびデキストラン硫酸ナトリウムなどの硫酸デキストランが挙げられる。1つの例示的な実施形態において、担体は、約40kDa(キロダルトン)~約500kDa、約50kDa~約300kDa、約100kDa~約300kDaまたは約100kDa~約200kDaの重量平均分子量を有するデキストラン硫酸ナトリウムを含み得る。
【0025】
[0025]実施形態による薬物充填マイクロビーズ組成物は、薬物充填マイクロビーズ組成物中のマイクロビーズの全重量に対して、1重量%未満、0.1重量%未満、0.05重量%(500ppm)未満、0.02重量%(200ppm)未満、0.01重量%(100ppm)未満、0.005重量%(50ppm)未満、0.002重量%(20ppm)未満、または0.001重量%(10ppm)未満の水など非常に低い含水量を有し得る。理論に拘束されることは意図しないが、非常に低い含水量の薬物充填マイクロビーズ組成物は、薬物充填マイクロビーズ組成物のシェルフライフを延長し、その長期安定性を高めると考えられる。さらに、薬物充填マイクロビーズ組成物の全重量に対して1重量%を有意に超える(例えば、2%、3%、5%または10%などの)含水量は治療剤の分解もしくは加水分解、水膨潤性ポリマーの不安定性もしくは分離またはこれらの組み合わせを数日またはさらには数時間以内にもたらし得、これにより薬物充填マイクロビーズ組成物は再水和された場合でも塞栓手技に使用できないと考えられる。1重量%を有意に超える含水量を有する組成物のシェルフライフおよび長期安定性は、薬物充填マイクロビーズ組成物の製造から、塞栓手技における組成物の使用までの期間にわたって治療剤のバイアビリティを確保するのに十分な長さではないと考えられる。水膨潤性ポリマー材料の選択は、凍結乾燥もしくは他の乾燥技術または乾燥技術の組み合わせによって、治療剤の分解を防止するのに十分な量で薬物充填マイクロビーズから除去される水の能力と相関し得ると考えられる。
【0026】
[0026]前述したように、非常に低い含水量の薬物充填マイクロビーズ組成物は、薬物充填マイクロビーズ組成物を調製する方法に関して以後詳細に記載される乾燥技術によって得られ得る。この関連で、薬物充填マイクロビーズ組成物は、埋め込まれた治療剤または治療剤と担体との埋め込まれた複合体を含有するマイクロビーズの乾燥組成物またはほぼ脱水された組成物であり得る。薬物充填マイクロビーズ組成物は、粉末様コンシステンシーを有し得る。したがって、薬物充填マイクロビーズ組成物は、以後より詳細に記載されるように、薬物充填マイクロビーズ組成物のマイクロビーズを再水和して、塞栓組成物を形成することによって、治療される対象への注射に好適になり得る。それにも関わらず、薬物充填マイクロビーズ組成物は、医師が、塞栓手技での使用のための組成物を調製するために、水または生理緩衝食塩溶液などの水溶液のみを薬物充填マイクロビーズ組成物に添加する必要があるような形態で提供され得る。
【0027】
[0027]薬物充填マイクロビーズ組成物のマイクロビーズは、ヒドロゲル型水膨潤性ポリマー材料から形成された微粒子に共通する任意の形状を有し得る。例えば、微粒子は、球状もしくは実質的に球状であり得るか、または縦軸を中心に卵形もしくは楕円形の断面、および縦軸に垂直な軸を中心に円形の断面を有する卵形の形状を有し得る。
【0028】
[0028]薬物充填マイクロビーズ組成物は、薬物充填マイクロビーズ組成物および個々のマイクロビーズ中に存在する特定の治療剤の意図された使用に基づき、所望の治療効果または活性を有するように選択される組成物中のマイクロビーズ1単位体積当たりの治療剤の量を含み得る。
【0029】
[0029]薬物充填マイクロビーズ組成物の個々のマイクロビーズ中の治療剤の量は、例え
ば、充填時間、充填温度または充填溶液中の治療剤の濃度など、薬物充填中に、当該の特定の技術を介して調整され得る。薬物充填マイクロビーズ組成物の個々のマイクロビーズ中の治療剤の量はまた、マイクロビーズ自体を合成するための当該合成技術を介して、例えば、ポリマー分子量、ヒドロゲル架橋の程度、ポリマー密度または水膨潤性ポリマー材料のポリマー多孔度の調整を介して調整され得る。例えば、ドキソルビシンが治療剤である場合、薬物充填マイクロビーズに充填する薬物の量は、水膨潤性ポリマー材料のポリマー骨格中の負電荷の数に対して調整され得る。同様に、ソラフェニブが治療剤である場合、ソラフェニブは、マイクロビーズ構造内に埋め込まれ得るポリマーミセルまたはリポソーム内に埋め込まれ得る。薬物充填マイクロビーズ組成物の個々のマイクロビーズ中の治療剤の量はまた、担体の選択を介して調整され得る。
【0030】
[0030]例示的な実施形態において、薬物充填マイクロビーズ組成物の個々の薬物充填マイクロビーズは、水膨潤性ポリマー材料、治療剤、担体および水を含む。薬物充填マイクロビーズ組成物の個々の薬物充填マイクロビーズは、個々の薬物充填マイクロビーズの全重量に対して、約30重量%~約70重量%、約35重量%~約65重量%、約40重量%~約60重量%、約45重量%~約55重量%または約50重量%~約70重量%の水膨潤性ポリマー材料を含み得る。例示的な実施形態において、薬物充填マイクロビーズ組成物の個々の薬物充填マイクロビーズは、個々の薬物充填マイクロビーズの全重量に対して、約1重量%~約25重量%、約1重量%~約20重量%、約1重量%~約15重量%、約2重量%~約25重量%、約5重量%~約25重量%または約10重量%~約25重量%の治療剤を含み得る。例示的な実施形態において、薬物充填マイクロビーズ組成物の個々の薬物充填マイクロビーズは、個々の薬物充填マイクロビーズの全重量に対して、約1重量%~約40重量%、約1重量%~約30重量%、約1重量%~約25重量%、約1重量%~約20重量%、約5重量%~約40重量%、約10重量%~約40重量%または約20重量%~約40重量%の担体を含み得る。例示的な実施形態において、実施形態による薬物充填マイクロビーズ組成物の個々の薬物充填マイクロビーズは、薬物充填マイクロビーズ組成物中の個々の薬物充填マイクロビーズの全重量に対して、1重量%未満、0.5重量%未満、0.1重量%未満、0.05重量%(500ppm)未満、0.02重量%(200ppm)未満、0.01重量%(100ppm)未満、0.005重量%(50ppm)未満、0.002重量%(20ppm)未満または0.001重量%(10ppm)未満の水など、非常に低い含水量を有し得る。
【0031】
[0031]様々な実施形態による薬物充填マイクロビーズ組成物を記載してきたが、以下に薬物充填マイクロビーズ組成物を調製する方法を記載する。
[0032]いくつかの実施形態において、前述したように薬物充填マイクロビーズ組成物を調製する方法は、担体および治療剤を水性溶媒に溶解して、初期混合物を形成するステップを含み得る。初期混合物中、複合体は、担体分子と治療剤分子との間に形成され得る。例えば、治療剤としてのドキソルビシンと担体としての硫酸デキストランとの混合物は、ドキソルビシンと硫酸デキストランとの複合体を形成し得る。
【0032】
[0033]次いで、複合体を含む初期混合物は、第1の溶媒組成物と組み合わせられて、第2の混合物を形成し得る。第1の溶媒組成物は、溶媒または溶媒の混合物を含み、その組み合わせにおいて、水性溶媒中より治療剤の可溶性は低い。第2の混合物は、二相性または多相性の混合物であり得る。次いで、第2の混合物は急速にかき混ぜられるか、または撹拌される。急速なかき混ぜまたは撹拌によって、第2の混合物中で複合体の粒子が形成される。第2の混合物は、例えば、約150rpm~約2000rpmの撹拌速度で撹拌され得る。撹拌は連続であり得、マイクロビーズを形成するのに十分な時間行われ得る。例えば、撹拌は、約1時間~約12時間の撹拌時間連続して行われ得る。第2の混合物が二相性である場合、粒子は、治療剤の可溶性が低いか、または可溶性が最も低い第2の混合物の相中に形成され得る。任意で、複合体の粒子は、例えば、濾過などの任意の好適な
技術によって、第2の混合物から単離され得る。
【0033】
[0034]次いで、依然第2の混合物中に存在するか、または任意で第2の混合物から単離された後のいずれかの複合体の粒子は、水膨潤性ポリマー材料のヒドロゲルと組み合わせられて、ヒドロゲル混合物を形成し得る。次いで、ヒドロゲル混合物は、第2の溶媒組成物と組み合わせられて、合成混合物を形成する。第2の溶媒組成物は、溶媒または溶媒の混合物を含み、その組み合わせにおいて、水性溶媒中より治療剤および/またはヒドロゲルの可溶性は低い。
【0034】
[0035]合成混合物は急速にかき混ぜられるか、または撹拌されて、合成混合物中に薬物充填マイクロビーズを形成する。合成混合物は、例えば、約150rpm~約2000rpmの撹拌速度で撹拌され得る。撹拌は連続であり得、マイクロビーズを形成するのに十分な時間行われ得る。例えば、撹拌は、約1時間~約12時間の撹拌時間連続して行われ得る。水膨潤性ポリマーが治療剤の複合体の周りで硬化した場合、または治療剤の複合体が水膨潤性ポリマーのポリマーマトリックスに吸収された場合のいずれかに、薬物充填マイクロビーズが形成され得る。次いで、薬物充填マイクロビーズは、例えば、濾過などの任意の好適な分離技術によって合成混合物から回収される。
【0035】
[0036]前述の手順によって調製される薬物充填マイクロビーズは、ポリマーマトリックスシェルが粒子コアをカプセル化し、複合体が粒子コアに配置されるコアシェル構造を示し得る。コアシェル構造において、治療剤は、水膨潤性ポリマー材料と化学結合せず、担体は、水膨潤性ポリマー材料と化学結合し得る。
【0036】
[0037]他の実施形態において、前述したように薬物充填マイクロビーズ組成物を調製する方法は、担体および治療剤を水性溶媒に溶解して、初期混合物を形成するステップを含み得る。初期混合物中、複合体は、担体分子と治療剤分子との間に形成され得る。例えば、治療剤としてのドキソルビシンと担体としての硫酸デキストランとの混合物は、ドキソルビシンと硫酸デキストランとの複合体を形成し得る。その後、最初に中間ステップとして複合体の粒子を形成せずに、初期混合物は水膨潤性ポリマー材料のヒドロゲル溶液と組み合わせられて、ヒドロゲル混合物を形成し得る。
【0037】
[0038]次いで、ヒドロゲル混合物は第2の溶媒組成物と組み合わせられて、合成混合物を形成する。第2の溶媒組成物は、溶媒または溶媒の混合物を含み、その組み合わせにおいて、水性溶媒中より治療剤および/またはヒドロゲルの可溶性は低い。合成混合物は急速に撹拌されて、合成混合物中の薬物充填マイクロビーズを形成する。水膨潤性ポリマーが治療剤の複合体の存在下で硬化した場合、または治療剤の複合体が水膨潤性ポリマーのポリマーマトリックスに吸収された場合のいずれかに、薬物充填マイクロビーズが形成され得る。次いで、薬物充填マイクロビーズは、例えば、濾過などの任意の好適な分離技術によって合成混合物から回収される。前述の手順によって調製される薬物充填マイクロビーズは、水膨潤性ポリマー材料がポリマーマトリックスを有し、治療剤と担体との複合体がポリマーマトリックスの多孔構造内に配置される相互貫入ネットワーク構造を示し得る。相互貫入ネットワーク構造において、治療剤は担体と化学結合し得、治療剤と担体との複合体は、水膨潤性ポリマーの分子内に配置され得る。
【0038】
[0039]薬物充填マイクロビーズが、治療剤と担体との複合体の粒子を形成する中間ステップありで調製されるのか、または中間ステップなしで調製されるのかにかかわらず、薬物充填マイクロビーズ組成物を調製する前述の方法は、水を薬物充填マイクロビーズから除去して、薬物充填マイクロビーズ組成物の全重量に対して1重量%未満の含水量を有する、薬物充填マイクロビーズ組成物を形成するステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、水の除去は、凍結乾燥(lyophilization、freeze drying)、次いで、任意で温度変化(加熱または冷却)、流動空気、真空またはこれらの組み合わせを含む追加の乾燥ステップを含み得る。薬物充填マイクロビーズは、合成混合物からの回収時の平均合成体積、および水の除去後の平均最終体積を有し得る。平均最終体積は、平均合成体積の約10%~約75%の範囲、例えば、平均合成体積の約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%または約75%などであり得る。
【0039】
[0040]薬物充填マイクロビーズの凍結乾燥は、粒子状物質の乾燥に一般に用いられる任意の手順によって行われ得る。例えば、薬物充填マイクロビーズは半打栓ガラスバイアルに入れられ得、次いで、凍結乾燥機内の冷却及び温度制御された棚に置かれる。棚温度が下げられ、試料は一定の規定温度まで凍結させる。完全に凍結させた後、乾燥機内の圧力は規定圧力に下げられて、第1乾燥を開始し得る。第1乾燥中、棚温度は一定の低温で制御され、水蒸気は、昇華によって凍結塊から漸進的に除去される。第2乾燥は、棚温度を上げ、チャンバー圧力をさらに下げることによって開始され得るので、半乾燥塊に吸収された水は、残留含水量が所望のレベルに低下するまで除去され得る。
【0040】
[0041]薬物充填マイクロビーズの凍結乾燥はまた、凍結薬物充填マイクロビーズ上で非常に乾燥した空気を急速に循環させることによる大気圧凍結乾燥によって行われ得る。循環乾燥ガスは、凍結マイクロビーズからの熱移動と物質移動を改善する。大気噴霧乾燥方法は、乾燥ケーキの形成を回避しながら、自由流動粉末として小径のマイクロビーズの形成を促進し得る。次いで、自由流動粉末は、塞栓組成物を調製する場合、薬物充填マイクロビーズ組成物の再水和を促進し得る。
【0041】
[0042]前述の、または前述の方法によって調製される薬物充填マイクロビーズ組成物の薬物充填マイクロビーズは、その使用、貯蔵、輸送または塞栓組成物を形成するためのその後の再水和に有利な物理的特性または機械的特性を示し得る。
【0042】
[0043]例えば、本開示の実施形態による薬物充填マイクロビーズ組成物および塞栓組成物において、マイクロビーズ中の治療剤は、水膨潤性ポリマーと化学結合しないことが前述された。理論に拘束されることは意図しないが、治療剤がマイクロビーズ中に充填される前であるか、または治療剤がマイクロビーズから溶出された後であるかどうかに関わらず、治療剤と水膨潤性ポリマーとの間での直接的な化学結合の欠如によって、治療剤が充填された場合と治療剤が充填されなかった場合で、水膨潤性ポリマーのマイクロビーズの膨潤径が実質的に同一になると考えられる。
【0043】
[0044]対照的に、本開示の実施形態によらない、あるヒドロゲルポリマーマイクロビーズは、薬物充填なしの膨潤した状態において、元の直径を有し、これは、薬物がマイクロビーズのポリマーマトリックスに充填されたとき5%または10%程度収縮することが観察された。理論に拘束されることは意図しないが、薬物分子のマイクロビーズへの添加が薬物とマイクロビーズポリマーとの間に化学結合を生じさせ、次いでマイクロビーズポリマーを膨潤させるマイクロビーズポリマー中に存在し得る水の量を制限するため、このような収縮が起こると考えられる。
【0044】
[0045]臨床診療において、このようなマイクロビーズ組成物が、患者への注射のために調製される場合、若干量の薬物が、調製過程でマイクロビーズから溶出するため、本開示の実施形態によらない、あるヒドロゲルポリマーマイクロビーズにおいて観察された収縮は逆転する。収縮の逆転は、薬物が除去または溶出されているにもかかわらず、マイクロビーズ直径が増大することとして示される。このような直径は、マイクロビーズを注射するのに用いられるマイクロカテーテルを詰まらせるのに十分な大きさになり得る。観察されたマイクロカテーテルの詰まりの問題は、治療剤が、水膨潤性ポリマー材料と化学結合しない、本開示の実施形態による薬物充填マイクロビーズ組成物および塞栓組成物によっ
て回避されると考えられる。
【0045】
[0046]さらなる例証として、薬物充填マイクロビーズ組成物の機械的特性は、水膨潤性ポリマー材料の特性または合成方法を調整することによって仕立てられ得る。例えば、薬物充填マイクロビーズの圧縮強度は、マイクロビーズを調製するために用いられる架橋剤を変更することによって、またはポリマー合成分野の技術者によって知られ理解されるポリマー合成技術を介して水膨潤性ポリマー材料の密度もしくは分子量を変更することによって調整され得る。いくつかの実施形態において、薬物充填マイクロビーズ組成物の薬物充填マイクロビーズは、薬物充填マイクロビーズがその初期直径の50%まで圧縮された後、その直径の85%超を回復するように選択される物理的特性および機械的特性を有し得る。
【0046】
[0047]前述の、または前述の方法によって調製される薬物充填マイクロビーズ組成物の薬物充填マイクロビーズは、薬物充填マイクロビーズ組成物を再水和して、塞栓治療に使用できる状態にある塞栓組成物を形成するための説明書と共に医師に提供され得る。したがって、本開示の実施形態は、塞栓組成物および塞栓組成物を調製する方法を含む。
【0047】
[0048]塞栓組成物は、本開示の任意の実施形態による薬物充填マイクロビーズ組成物または本開示の具現化された方法によって調製される薬物充填マイクロビーズ組成物を含み得る。塞栓組成物は、薬物充填マイクロビーズ組成物の薬物充填マイクロビーズを膨潤させるのに十分な量の水溶液をさらに含み得る。特に、水溶液の量によって、膨潤後の薬物充填マイクロビーズは、薬物充填マイクロビーズの全重量に対して、約50重量%~約99重量%、約60重量%~約95重量%、約70重量%~約95重量%、約80重量%~約95重量%、約90重量%~約95重量%、約80重量%~約99重量%、約90重量%~約99重量%または約95重量%~約99重量%の含水量を有し得る。水溶液は、例えば、生理緩衝食塩溶液などの任意の薬学的に許容される溶液であり得る。
【0048】
[0049]例示的な実施形態において、塞栓組成物の膨潤した個々の薬物充填マイクロビーズは、水膨潤性ポリマー材料、治療剤、担体および水を含む。塞栓組成物の膨潤した個々の薬物充填マイクロビーズは、膨潤した個々の薬物充填マイクロビーズの全重量に対して、約3重量%~約10重量%、約3重量%~約7重量%、約3.5重量%~約6.5重量%、約4重量%~約6重量%、約4.5重量%~約5.5重量%または約5重量%~約7重量%の水膨潤性ポリマー材料を含み得る。例示的な実施形態において、塞栓組成物の膨潤した個々の薬物充填マイクロビーズは、膨潤した個々の薬物充填マイクロビーズの全重量に対して、約0.1重量%~約2.5重量%、約0.1重量%~約2重量%、約0.1重量%~約1.5重量%、約0.2重量%~約2.5重量%、約0.5重量%~約2.5重量%または約1重量%~約2.5重量%の治療剤を含み得る。例示的な実施形態において、塞栓組成物の膨潤した個々の薬物充填マイクロビーズは、膨潤した個々の薬物充填マイクロビーズの全重量に対して、約0.1重量%~約4重量%、約0.1重量%~約3重量%、約0.1重量%~約2.5重量%、約0.1重量%~約2重量%、約0.5重量%~約4重量%、約1重量%~約4重量%または約2重量%~約4重量%の担体を含み得る。例示的な実施形態において、実施形態による塞栓組成物の膨潤した個々の薬物充填マイクロビーズは、個々の薬物充填マイクロビーズの全重量に対して、約50重量%~約99重量%、約50重量%~約97重量%、約50重量%~約96重量%、約60重量%~約95重量%、約70重量%~約95重量%、約80重量%~約95重量%、約90重量%~約95重量%、約80重量%~約99重量%、約90重量%~約99重量%または約95重量%~約99重量%の含水量を有し得る。
【0049】
[0050]塞栓組成物の膨潤したマイクロビーズは、動的光散乱法(DLS)によって測定したとき、約5μm~約1200μmの平均直径を有し得る。非球状マイクロビーズにつ
いては、個々の粒子の直径は、マイクロビーズ表面上の第1の点からマイクロビーズの質量中心を通って第1の点に対向するマイクロビーズ表面上の第2の点までに得られる最も広い測定値であると解釈される。微粒子の特定の粒径分布は、塞栓組成物が用いられることが意図される特定の治療に好適であるように選択され得るか、または仕立てられ得る。塞栓組成物のマイクロビーズの平均直径は、治療剤がマイクロビーズに充填される前またはその後、任意の好適な粒径選択方法によって選択され得る。いくつかの実施形態において、塞栓組成物の膨潤したマイクロビーズは、例えば、約40μm~約800μm、約40μm~約100μm、約40μm~約75μm、約75μm~約100μm、約100μm~約200μm、約200μm~約300μm、約300μm~約400μm、約400μm~約500μm、約600μm~約700μmまたは前述の範囲のいずれかの任意のサブセットの平均直径を有し得る。いくつかの実施形態において、膨潤したマイクロビーズは、例えば、40μm±20μm、40μm±10μm、40μm±5μmまたは40μm±1μmなどの狭い粒径分布の平均直径を有し得る。
【0050】
[0051]塞栓組成物を調製する方法は、本開示の任意の実施形態による薬物充填マイクロビーズ組成物、または本開示の具現化された方法によって調製される薬物充填マイクロビーズ組成物を、薬物充填マイクロビーズ組成物の薬物充填マイクロビーズを膨潤させるのに十分な量の水溶液であって、それによって膨潤後の薬物充填マイクロビーズが、薬物充填マイクロビーズの全重量に対して、50重量%~99重量%、50重量%~90重量%、50重量%~75重量%、60重量%~99重量%、75重量%~99重量%、75重量%~95重量%、75重量%~90重量%または85重量%~99重量%の含水量を含む、前記水溶液に添加して、すぐに注射できる状態の溶液を形成するステップを含み得る。水溶液は、例えば、生理緩衝食塩溶液などの任意の薬学的に許容される溶液であり得る。方法は、すぐに注射できる状態の溶液を、例えば、シリンジなどの注射装置に充填するステップをさらに含み得る。方法は、すぐに注射できる状態の溶液を注射装置に充填する前に薬物充填マイクロビーズを約5分~約60分の再水和時間膨潤させるステップをさらに含み得る。いくつかの例において、塞栓組成物は、マイクロビーズ1ml当たり約25mgの治療剤からマイクロビーズ1ml当たり約150mgの治療剤を含有し得る。
【0051】
[0052]本開示の実施形態による薬物充填マイクロビーズ組成物から調製された塞栓組成物は、癌などの疾患を治療することが意図される塞栓治療または塞栓療法に組み込まれ得る。いくつかの実施形態において、治療剤は、肝細胞癌、肝癌、前立腺癌または乳癌などの癌の治療に対して少なくともある程度効果がある化学療法剤であり得る。したがって、本開示の実施形態は、疾患を治療する方法を含む。疾患を治療する方法は、本明細書において前述した任意の実施形態による薬物充填マイクロビーズ組成物から調製された、本明細書において前述した任意の実施形態による塞栓組成物を、塞栓療法を必要とする対象の静脈内に供給するステップを含み得る。
【0052】
[0053]疾患を治療する方法において、塞栓組成物が静脈内に供給された後、薬物充填マイクロビーズの少なくとも一部が、対象の脈管構造を通って塞栓部位に流れ、塞栓部位の血流を制限する。その後、薬物充填マイクロビーズは、塞栓組成物が供給される前のマイクロビーズ内に埋め込まれた治療剤の初期量に基づき少なくとも90重量%の治療剤を、塞栓部位の組織に放出期間にわたって放出し得る。いくつかの実施形態において、塞栓部位の組織への放出は、薬物放出の初期バーストを含み得、この間、薬物充填マイクロビーズ中に最初に存在する治療剤の少なくとも10重量%が、塞栓部位の周辺組織に放出される。初期バーストは、薬物充填マイクロビーズが塞栓部位に到達してから1分、5分、10分、30分、60分、120分、180分、240分、300分、360分、12時間、18時間または24時間以内に起こり得る。いくつかの実施形態において、薬物充填マイクロビーズは、放出期間にわたって組織への治療剤の持続的放出を提供する。放出期間は、少なくとも5日、少なくとも10日、少なくとも14日、少なくとも28日または少なくとも42日などの長期の放出期間であり得る。放出期間の終了は、薬物充填マイクロビーズが、完全に分解された時点、または組織への治療剤の溶出を停止した時点のいずれかから決定される。
【0053】
[0054]理論に拘束されることは意図しないが、塞栓組成物の薬物充填マイクロビーズからの治療剤の放出機構は、イオン交換法と酵素法を含む二重機構に基づくものであり得ると考えられる。例えば、大量の水が存在する、塞栓部位への治療剤の送達の初期段階では、治療剤は、イオン交換法によって薬物充填マイクロビーズから放出され得ると考えられる。容器の閉鎖によって水が不足する、その後の段階では、薬物充填マイクロビーズは、例えば、マイクロビーズから治療剤を放出するために、リゾチームなどの酵素法によって分解され得る。埋め込み後21日目などの最終段階では、水膨潤性ポリマー材料のほとんどが、塞栓部位を取り囲む組織によって再吸収されると考えられる。この段階で、水膨潤性ポリマー材料は、もはや、治療剤または治療剤と担体との複合体をカプセル化するマトリックスを有さないため、治療剤は塞栓部位に完全に溶出され得る。それにより、本開示の実施形態による塞栓組成物は腫瘍応答および無病生存率を増加できると考えられる。さらに、本開示の実施形態による塞栓組成物は、薬剤師または技術者に治療剤を未充填マイクロビーズに添加するよう要求する必要性を排除することによって、医師の手技時間を短縮するなど経済的価値を提供する。
【実施例0054】
[0055]以下の実施例は、例示によってのみ提供される。前述の説明を考慮して、当業者は、以下の実施例が本開示またはその多くの実施形態の範囲を制限することが意図されないことを理解するであろう。
【0055】
実施例1
[0056]本実施例の薬物充填マイクロビーズ組成物は、ポリマーマイクロビーズ、およびドキソルビシンに化学結合した硫酸デキストランを含む複合体を含む。複合体を、水膨潤性ポリマー材料のシェル内に画定されるマイクロビーズのコア内にカプセル化する。マイクロビーズは、10μm~2000μmの範囲の粒径を有する。薬物充填マイクロビーズ組成物は、マイクロビーズ1ml当たり約25mgのドキソルビシンからマイクロビーズ1ml当たり約150mgのドキソルビシンを含有する。
【0056】
[0057]薬物充填マイクロビーズ組成物を調製するために、デキストラン硫酸ナトリウム(分子量範囲40kDa~500kDa)およびドキソルビシンを水溶液に溶解することによって製造されるデキストラン-ドキソルビシン複合体を調製する。次いで、高速撹拌しながら、デキストラン-ドキソルビシン溶液を溶媒混合物に添加して、ドキソルビシン充填デキストラン粒子を生成する。ドキソルビシン充填粒子をポリマー材料のヒドロゲル溶液に添加し、水/油法によってマイクロビーズコア内にカプセル化する。水/油法では、ドキソルビシン充填デキストラン粒子は水性溶媒中に存在し、ここに追加の溶媒を添加して、二相性混合物を形成する。二相性混合物は、ドキソルビシン充填デキストラン粒子が最初にヒドロゲルと共に存在する水相、および油相を含む。二相性混合物を急速混合して、ドキソルビシン充填デキストラン粒子を二相性混合物の油相内のヒドロゲルポリマーのマイクロビーズに組み込む。
【0057】
[0058]薬物充填マイクロビーズは、二相性混合物からの回収後、相当量の水を含有しており、膨潤した状態にある。パッケージング用の薬物充填マイクロビーズ組成物を調製するために、マイクロビーズに凍結乾燥を施して、水を除去する。凍結乾燥法は、薬物充填直後にマイクロビーズ中に存在する水全体の90重量%超、95重量%超、98重量%超、99重量%超、99.9重量%超または99.99重量%超を除去する。凍結乾燥したマイクロビーズに、さらなる空気および/または真空乾燥を施してもよい。それにより、薬物充填マイクロビーズ組成物は、薬物充填マイクロビーズ組成物の全重量に対して、1重量%未満、0.1重量%未満、0.05重量%(500ppm)未満、0.02重量%(200ppm)未満、0.01重量%(100ppm)未満、0.005重量%(50ppm)未満、0.002重量%(20ppm)未満または0.001重量%(10ppm)未満の水を含有する。
【0058】
実施例2
[0059]本実施例の薬物充填マイクロビーズ組成物はまた、ポリマーマイクロビーズ、およびドキソルビシンに化学結合した硫酸デキストランを含む複合体を含む。複合体を、水膨潤性ポリマー材料のシェル内に画定されるマイクロビーズのコア内にカプセル化する。マイクロビーズは、10μm~2000μmの範囲の粒径を有する。薬物充填マイクロビーズ組成物は、マイクロビーズ1ml当たり約25mgのドキソルビシンからマイクロビーズ1ml当たり約150mgのドキソルビシンを含有する。
【0059】
[0060]薬物充填マイクロビーズ組成物を調製するために、デキストラン硫酸ナトリウム(分子量範囲40kDa~500kDa)およびドキソルビシンを水溶液に溶解することによって製造されるデキストラン-ドキソルビシン複合体を調製する。中間ステップとしてドキソルビシン充填デキストラン粒子を生成する実施例1とは異なり、デキストラン-ドキソルビシン溶液をポリマー材料のヒドロゲル溶液と直接組み合わせて、合成混合物を形成する。勢いよく混合した後、薬物充填マイクロビーズが形成され、そこでマイクロビーズは、水膨潤性ポリマー材料とデキストランとの相互貫入ネットワーク内に埋め込まれ、ドキソルビシンは、水膨潤性ポリマー材料に化学結合せずに、デキストランと複合体を形成する。薬物充填マイクロビーズを合成混合物から回収する。
【0060】
[0061]薬物充填マイクロビーズは、合成混合物からの回収後、相当量の水を含有しており、膨潤した状態にある。パッケージング用の薬物充填マイクロビーズ組成物を調製するために、マイクロビーズに凍結乾燥を施して、水を除去する。凍結乾燥法は、薬物充填直後にマイクロビーズ中に存在する水全体の90重量%超、95重量%超、98重量%超、99重量%超、99.9重量%超または99.99重量%超を除去する。凍結乾燥したマイクロビーズに、さらなる空気および/または真空乾燥を施してもよい。それにより、薬物充填マイクロビーズ組成物は、薬物充填マイクロビーズ組成物の全重量に対して、1重量%未満、0.1重量%未満、0.05重量%(500ppm)未満、0.02重量%(200ppm)未満、0.01重量%(100ppm)未満、0.005重量%(50ppm)未満、0.002重量%(20ppm)未満または0.001重量%(10ppm)未満の水を含有する。
【0061】
実施例3
[0062]薬物充填マイクロビーズ組成物を実施例1または実施例2に従って調製する。次いで、薬物充填マイクロビーズ組成物を生理緩衝食塩溶液と5分~40分の再水和時間混合して、マイクロビーズを膨潤させて、塞栓組成物(A)を形成する。次いで、膨潤したマイクロビーズを含有する溶液を患者に注射する。
【0062】
[0063]実施例1または実施例2に従って調製した薬物充填マイクロビーズ組成物のインビトロドキソルビシン放出率と、非分解性ポリマー材料のビーズから調製した他のマイクロビーズ組成物のインビトロドキソルビシン放出率とを比較するために、2つの比較試料を調製し、患者に注射する。第1の比較試料(B)は、水溶液中のドキソルビシンを未充填マイクロビーズに添加し、注射まで約24時間待機させることによってドキソルビシンが充填された生体適合性スルホン酸修飾ポリ(ビニルアルコール)のマイクロビーズを含有する。第2の比較試料(C)は、酢酸ビニルおよびアクリル酸メチルの重合によって形成され、水溶液中のドキソルビシンを未充填マイクロビーズに添加し、注射まで約24時
間待機させることによってドキソルビシンが充填されたアクリル酸ナトリウムアルコールコポリマーのマイクロビーズを含有する。
【0063】
[0064]注射後30日までの注射からの3つの試料のドキソルビシン放出率の比較を図に示す。実施例1または実施例2の薬物充填マイクロビーズ組成物から調製した塞栓組成物(A)は、最初の2日にわたってドキソルビシン放出の初期バーストを示し、この間、ドキソルビシン全含有量の約30%が患者の組織に放出される。ドキソルビシンの放出は14日目まで続き、この時点で、マイクロビーズのドキソルビシン全含有量の約70%が放出され、さらにマイクロビーズのドキソルビシン全含有量の約90%~100%が30日目までに放出された。
【0064】
[0065]対照的に、第1の試料(B)は、そのドキソルビシンの約20%をすぐに放出し、そのドキソルビシン含有量の約25%を2日目までに放出した。しかし、2日目以降、これ以上のドキソルビシンは放出されない。同様に、第2の比較試料(C)は、そのドキソルビシンの約15%をすぐに放出し、初回放出後、任意の追加のドキソルビシンを放出しない。
【0065】
[0066]別段定義しない限り、本明細書で使用するすべての技術および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書の説明において使用する専門用語は、特定の実施形態のみを記載するためのものであって、限定することは意図されない。文脈が別段明確に示さない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する、単数形「1つの(a、an)」および「その(the)」は、同様に複数形を含むことが意図される。
【0066】
[0067]別段明示されない限り、本明細書および特許請求の範囲で用いられる成分の量、分子量などの特性、反応条件などを表すすべての数値は、用語「約」によっていずれの場合にも修飾されると理解されるべきである。したがって、別段明示されない限り、本明細書および特許請求の範囲に記載される数値的特性は、本発明の実施形態において得られると思われる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。本発明の広い範囲に記載される数値範囲およびパラメーターが近似であるにもかかわらず、具体的な実施例に記載された数値は、可能な限り正確に報告される。当業者は、いかなる数値も、値を画定するために用いられる測定技術に起因する一定の誤差を本質的に含有することを理解するであろう。
【0067】
[0068]「好ましくは」、「一般に」および「典型的に」のような用語は、特許請求の範囲を限定するため、または特定の特徴が、特許請求される本発明の構造または機能に必須、必要不可欠またはさらには重要であることを意味するために本明細書中で利用されないことが留意される。むしろ、これらの用語は、本発明の特定の実施形態において利用される場合も、または利用されない場合もある代替または追加の特徴を強調するためだけに意図される。
【0068】
[0069]本発明の記載および定義の目的のために、用語「実質的に」は、任意の定量的比較、値、測定または他の表現に起因し得る不確実性の固有の程度を表すために本明細書において用いられることが留意される。用語「実質的に」はまた、本明細書において、定量的表現が、論争中の主題の基本的機能に変化をもたらさずに、記載の基準から変動し得る程度を表すためにも用いられる。このようなものとして、任意の定量的比較、値、測定値または他の表現に起因し得る不確実性の固有の程度を表すために用いられ、理論上、正確な一致または挙動を示すことが期待されるが、実際は正確ではないものとして具現化され得る要素または特徴の構成を指す。
【0069】
[0070]特許請求された主題の精神および範囲から逸脱せずに、本明細書に記載される実
施形態に様々な変更および変形が行われ得ることが、当業者に明らかであろう。したがって、このような変更および変形が、添付の特許請求の範囲およびその等価物の範囲内に含まれる限り、本明細書は、本明細書に記載される様々な実施形態の変更および変形を包含することが意図される。
担体が、薬物充填マイクロビーズの水膨潤性ポリマー材料の相互貫入ネットワーク内に埋め込まれる、請求項1~3のいずれか1項に記載の薬物充填マイクロビーズ組成物。
担体が、リポソーム、ポリマーミセル、プルロニック、ポリカプロラクトン-b-メトキシ-PEG、ポリ(アスパラギン酸)-b-PEG、ポリ(ベンジル-L-グルタメート)-b-PEG、ポリ(D,L-ラクチド)-b-メトキシ-PEG、ポリ(β-ベンジル-L-アスパレート)-b-PEG)、またはデキストラン硫酸ナトリウムから選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の薬物充填マイクロビーズ組成物。
注射可能な状態の溶液を注射装置に充填する前に、薬物充填マイクロビーズを約5分~約60分の再水和時間膨潤させるステップをさらに含む、請求項31に記載の方法。
[0070]特許請求された主題の精神および範囲から逸脱せずに、本明細書に記載される実施形態に様々な変更および変形が行われ得ることが、当業者に明らかであろう。したがって、このような変更および変形が、添付の特許請求の範囲およびその等価物の範囲内に含まれる限り、本明細書は、本明細書に記載される様々な実施形態の変更および変形を包含することが意図される。
ある態様において、本発明は以下であってもよい。
[態様1]水膨潤性ポリマー材料を含むマイクロビーズ;および
担体と該担体に化学結合した治療剤とを含む複合体、
を含む薬物充填マイクロビーズ組成物であって、
該複合体が、該ポリマー材料内に埋め込まれ、
該薬物充填マイクロビーズ組成物が、薬物充填マイクロビーズ組成物の全重量に対して1重量%未満の含水量を有する、
上記組成物。
[態様2]水膨潤性ポリマー材料が、ポリ(4-ヒドロキシブチレート)、メタクリレート化ヒアルロン酸、キトサン-アルギネート、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)コポリマー、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)-アルギネート、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)-ペプチド、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)-α-アクリロイルオキシ-β,β-ジメチル-γ-ブチロラクトン-親水性ジェファーミン、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)-ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート-ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、前述のいずれかの誘導体、または前述のいずれかの組み合わせから選択される生分解性ポリマー材料である、態様1に記載の薬物充填マイクロビーズ組成物。
[態様3]治療剤が、ドキソルビシン、ソラフェニブ、バンデタニブ、ニボルマブ、イピリムマブ、レゴラフェニブ、イリノテカン、エピルビシン、ピラルビシン、5-フルオロウラシル、シスプラチン、フロクスウリジン、マイトマイシンC、前述のいずれかの誘導体、前述のいずれかのプロドラッグ、前述のいずれかの治療上許容される塩、または前述のいずれかの組み合わせから選択される、態様1または2に記載の薬物充填マイクロビーズ組成物。
[態様4]治療剤が水膨潤性ポリマー材料と化学結合しない、前記態様のいずれか1に記載の薬物充填マイクロビーズ組成物。
[態様5]水膨潤性ポリマー材料が、粒子コアをカプセル化するポリマーマトリックスシェルを含み、
複合体が該粒子コア内に配置される、
前記態様のいずれか1に記載の薬物充填マイクロビーズ組成物。
[態様6]担体が、薬物充填マイクロビーズの水膨潤性ポリマー材料の相互貫入ネットワーク内に埋め込まれる、前記態様のいずれか1に記載の薬物充填マイクロビーズ組成物。
[態様7]担体が、リポソーム、ポリマーミセル、プルロニック、ポリカプロラクトン-b-メトキシ-PEG、ポリ(アスパラギン酸)-b-PEG、ポリ(ベンジル-L-グルタメート)-b-PEG、ポリ(D,L-ラクチド)-b-メトキシ-PEG、ポリ(β-ベンジル-L-アスパレート)-b-PEG)、またはデキストラン硫酸ナトリウムから選択される、前記態様のいずれか1に記載の薬物充填マイクロビーズ組成物。
[態様8]担体がデキストラン硫酸ナトリウムを含む、態様6に記載の薬物充填マイクロビーズ組成物。
[態様9]デキストラン硫酸ナトリウムが約40kDa~約500kDaの分子量を有する、態様8に記載の薬物充填マイクロビーズ組成物。
[態様10]担体がリポソームを含む、態様7に記載の薬物充填マイクロビーズ組成物。
[態様11]担体がポリマーミセルを含む、態様7に記載の薬物充填マイクロビーズ組成物。
[態様12]担体がプルロニックを含む、態様7に記載の薬物充填マイクロビーズ組成物。
[態様13]担体がポリカプロラクトン-b-メトキシ-PEGを含む、態様7に記載の薬物充填マイクロビーズ組成物。
[態様14]担体がポリ(アスパラギン酸)-b-PEGを含む、態様7に記載の薬物充填マイクロビーズ組成物。
[態様15]担体がポリ(ベンジル-L-グルタメート)-b-PEGを含む、態様7に記載の薬物充填マイクロビーズ組成物。
[態様16]担体がポリ(D,L-ラクチド)-b-メトキシ-PEGを含む、態様7に記載の薬物充填マイクロビーズ組成物。
[態様17]担体がポリ(β-ベンジル-L-アスパレート)-b-PEG)を含む、態様7に記載の薬物充填マイクロビーズ組成物。
[態様18]薬物充填マイクロビーズが実質的に球状である、前記態様のいずれか1に記載の薬物充填マイクロビーズ組成物。
[態様19]薬物充填マイクロビーズが約40μm~約800μmの直径を有する、前記態様のいずれか1に記載の薬物充填マイクロビーズ組成物。
[態様20]薬物充填マイクロビーズ組成物の個々のマイクロビーズが、個々のマイクロビーズの全重量に対して、
約30重量%~約70重量%の水膨潤性ポリマー材料と、
約1重量%~約25重量%の治療剤と、
約1重量%~約40重量%の担体と
1重量%未満の水と
を含む、前記態様のいずれか1に記載の薬物充填マイクロビーズ組成物。
[態様21]薬物充填マイクロビーズ組成物を調製する方法であって、
担体および治療剤を水性溶媒に溶解して、担体と治療剤との複合体を含む初期混合物を形成するステップと、
初期混合物と、該水性溶媒におけるよりも該治療剤の可溶性が低い第1の溶媒組成物とを組み合わせて、第2の混合物を形成するステップと、
第2の混合物を急速に撹拌して、該第2の混合物中に複合体の粒子を形成するステップと、
複合体の粒子と、水膨潤性ポリマー材料のヒドロゲルとを組み合わせて、ヒドロゲル混合物を形成するステップと、
ヒドロゲル混合物と第2の溶媒組成物とを組み合わせて、合成混合物を形成するステップと、
合成混合物を急速に撹拌して、該合成混合物中に薬物充填マイクロビーズを形成するステップと、
薬物充填マイクロビーズを合成混合物から回収するステップと、
薬物充填マイクロビーズから水を除去して、薬物充填マイクロビーズ組成物における薬物充填マイクロビーズの全重量に対して1重量%未満の含水量を有する薬物充填マイクロビーズ組成物を形成するステップと
を含む、上記方法。
[態様22]複合体の粒子とヒドロゲル溶液とを組み合わせる前に、第2の混合物を濾過して、複合体の粒子を回収するステップをさらに含む、態様21に記載の方法。
[態様23]水の除去が、薬物充填マイクロビーズを凍結乾燥するステップを含む、態様21または22に記載の方法。
[態様24]水の除去が、薬物充填マイクロビーズを凍結乾燥するステップと、
凍結乾燥した薬物充填マイクロビーズを、空気、温度変化、真空、またはこれらの任意の組み合わせによって乾燥するステップと
を含む、態様21または22に記載の方法。
[態様25]薬物充填マイクロビーズが、合成混合物からの回収時の平均合成体積、および水の除去後の平均最終体積を有し、
該平均最終体積が、該平均合成体積の約10%~約75%である、
態様21~24のいずれか1に記載の方法。
[態様26]薬物充填マイクロビーズ組成物を調製する方法であって、
担体および治療剤を水性溶媒に溶解して、担体と治療剤との複合体を含む初期混合物を形成するステップと、
初期混合物と、水膨潤性ポリマー材料のヒドロゲル溶液とを組み合わせてヒドロゲル混合物を形成するステップと、
ヒドロゲル混合物と溶媒組成物とを組み合わせて合成混合物を形成するステップと、
合成混合物を急速に撹拌して、該合成混合物中に薬物充填マイクロビーズを形成するステップと、
薬物充填マイクロビーズを合成混合物から回収するステップと、
薬物充填マイクロビーズを乾燥して、薬物充填マイクロビーズ組成物における薬物充填マイクロビーズの全重量に対して1重量%未満の含水量を有する薬物充填マイクロビーズ組成物を形成するステップと
を含む、上記方法。
[態様27]水の除去が、薬物充填マイクロビーズを凍結乾燥するステップを含む、態様26に記載の方法。
[態様28]水の除去が、薬物充填マイクロビーズを凍結乾燥するステップと、
凍結乾燥した薬物充填マイクロビーズを、空気、熱、真空、またはこれらの任意の組み合わせで乾燥するステップと
を含む、態様26に記載の方法。
[態様29]薬物充填マイクロビーズが、合成混合物からの回収時の平均合成体積、および水の除去後の平均最終体積を有し、
該平均最終体積が、該平均合成体積の約10%~約75%である、
態様26~28のいずれか1に記載の方法。
[態様30]態様1~20のいずれか1に記載の薬物充填マイクロビーズ組成物、態様21~25のいずれか1に記載の方法によって製造される薬物充填マイクロビーズ組成物、または態様26~29のいずれか1に記載の方法によって製造される薬物充填マイクロビーズ組成物と、
薬物充填マイクロビーズ組成物の薬物充填マイクロビーズを膨潤させるのに十分な量の水溶液であって、それによって膨潤後の薬物充填マイクロビーズが、薬物充填マイクロビーズの全重量に対して50重量%~95重量%の含水量を含む、前記水溶液と
を含む、塞栓組成物。
[態様31]水溶液が生理緩衝食塩溶液である、態様30に記載の塞栓組成物。
[態様32]塞栓組成物の膨潤した個々の薬物充填マイクロビーズが、膨潤した個々の薬物充填マイクロビーズの全重量に対して
約3重量%~約10重量%の水膨潤性ポリマー材料と、
約0.1重量%~約2.5重量%の治療剤と、
約0.1重量%~約4.0重量%の担体と、
約50重量%~約96重量%の水と
を含む、態様30または31に記載の塞栓組成物。
[態様33]塞栓組成物を調製する方法であって、
態様1~20のいずれか1に記載の薬物充填マイクロビーズ組成物、または態様21~25のいずれか1に記載の方法によって製造される薬物充填マイクロビーズ組成物、または態様26~29のいずれか1に記載の方法によって製造される薬物充填マイクロビーズ組成物を、薬物充填マイクロビーズ組成物の薬物充填マイクロビーズを膨潤させるのに十分な量の水溶液であって、それによって膨潤後の薬物充填マイクロビーズが薬物充填マイクロビーズの全重量に対して50重量%~95重量%の含水量を含む、前記水溶液に添加して、注射可能な状態の溶液を形成するステップと、
該注射可能な状態の溶液を注射装置に充填するステップと
を含む、上記方法。
[態様34]注射可能な状態の溶液を注射装置に充填する前に、薬物充填マイクロビーズを約5分~約60分の再水和時間膨潤させるステップをさらに含む、態様33に記載の方法。
[態様35]水溶液が生理緩衝食塩溶液である、態様33または34に記載の方法。
[態様36]疾患を治療する方法であって、
態様30~32のいずれか1に記載の塞栓組成物を、塞栓療法を必要とする対象の静脈内に供給するステップ
を含む、上記方法。
[態様37]塞栓組成物が静脈内に供給された後、薬物充填マイクロビーズの少なくとも一部が、対象の脈管構造を通って塞栓部位に流れ、塞栓部位の血流を制限し、
該薬物充填マイクロビーズが、塞栓組成物が供給される前のマイクロビーズ内に埋め込まれた治療剤の初期量に基づき少なくとも90重量%の治療剤を、塞栓部位の組織に放出期間にわたって放出する、
態様36に記載の方法。
[態様38]塞栓部位の組織への放出が、放出の初期バーストを含み、この間初期量に対して少なくとも10重量%の治療剤が放出される、態様37に記載の方法。
[態様39]薬物充填マイクロビーズが、放出期間にわたって組織への治療剤の持続的放出を提供する、態様37または38に記載の方法。
[態様40]放出期間が少なくとも14日間である、態様37~39のいずれか1に記載の方法。
[態様41]放出期間が少なくとも28日間である、態様37または38に記載の方法。
[態様42]疾患が癌である、態様36~41のいずれか1に記載の方法。
[態様43]癌が肝細胞癌、肝癌、前立腺癌または乳癌である、態様42に記載の方法。