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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009921
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】水栓
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/05 20060101AFI20230113BHJP
【FI】
E03C1/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021113588
(22)【出願日】2021-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000242378
【氏名又は名称】株式会社KVK
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】植村 勇士
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大介
【テーマコード(参考)】
2D060
【Fターム(参考)】
2D060BA05
2D060BC30
2D060CA04
2D060CB03
2D060CD00
(57)【要約】
【課題】第1センサによる物体の検知に基づいて吐出される第1流体と、第2センサによる物体の検知に基づいて吐出される第2流体とが意図せずに共に吐出され続けることを抑制する。
【解決手段】水栓10は、吐出口13を有する水栓本体11と、物体を検知する原水センサ31及び浄水センサ32とを備え、原水センサ31による検知に基づいて原水を吐出口13から吐出し、浄水センサ32による検知に基づいて浄水を吐出口13から吐出する。水栓10は、判定部35と報知部36とを備えている。判定部35は、原水センサ31から出力される原水検知信号Sd1及び浄水センサ32から出力される浄水検知信号Sd2に基づいて原水と浄水の同時吐出判定を行う。報知部36は、判定部35の判定結果に基づいて同時吐出状態を報知する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出口を有する水栓本体と、物体を検知する第1センサ及び第2センサとを備え、
前記第1センサによる物体の検知に基づいて第1流体を前記吐出口から吐出し、
前記第2センサによる物体の検知に基づいて第2流体を前記吐出口から吐出する水栓であって、
前記第1センサから出力される検知信号及び前記第2センサから出力される検知信号に基づいて、前記第1流体及び前記第2流体が共に吐出されているか否かを判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に基づいて、前記第1流体及び前記第2流体が共に吐出されていることを報知する報知部とを備えることを特徴とする水栓。
【請求項2】
前記第1流体は、給水源から供給される原水であり、
前記第2流体は、前記原水を処理してなる浄水である請求項1に記載の水栓。
【請求項3】
前記第1センサを構成する素子及び前記第2センサを構成する素子は、共通の基板に実装されている請求項1又は請求項2に記載の水栓。
【請求項4】
前記報知部は、前記第1流体及び前記第2流体のいずれか一方の流体の吐出中に、同他方の流体を吐出させるための前記第1センサ又は前記第2センサによる物体の検知が行われた場合に、前記第1流体及び前記第2流体が共に吐出されていることを報知する請求項1~3のいずれか一項に記載の水栓。
【請求項5】
前記吐出口に接続されるとともに前記第1流体が流れる第1流路と、
前記吐出口に接続されるとともに前記第2流体が流れる第2流路と、
前記第1流路に設けられる第1電磁弁と、
前記第2流路に設けられる第2電磁弁と、
前記第1センサから出力される検知信号に基づいて前記第1電磁弁の開閉動作を制御するとともに、前記第2センサから出力される検知信号に基づいて前記第2電磁弁の開閉動作を制御する弁制御部とを備え、
前記判定部は、前記弁制御部から前記第1電磁弁に出力される制御信号、及び前記弁制御部から前記第2電磁弁に出力される制御信号に基づいて、前記第1流体及び前記第2流体が共に吐出されているか否かを判定する請求項1~4のいずれか一項に記載の水栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体を検知する第1センサ及び第2センサを備える水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の給湯給水装置は、吐出口に接続される浄水回路及び混合水回路と、吐出口の近傍に設けた設定器とを備えている。浄水回路は、浄水が流れる流路であり、浄水回路には、第1の電磁弁と浄水装置が設けられている。混合水回路は、湯と水を混合した混合水が流れる流路であり、混合水回路には、第2の電磁弁が設けられている。特許文献1の給湯給水装置は、使用者の操作により設定器から出力される信号に基づいて、第1の電磁弁及び第2の電磁弁が開閉制御されることにより、浄水及び混合水を選択的に吐出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3-67934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、人体検知センサによる人体検知に基づいて吐水を自動的に行う水栓が用いられている。特許文献1の給湯給水装置の設定器に人体検知センサを適用する場合、浄水の吐出を操作するための浄水センサと、混合水の吐出を操作するための混合水センサとを設けることが考えられる。この場合、使用者の誤操作によって、浄水センサ及び混合水センサが同時に人体検知したり、浄水の吐出中に混合水センサによる人体検知が行われたりすることにより、意図せずに浄水及び混合水が共に吐出されてしまう状況が生じ得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する水栓は、吐出口を有する水栓本体と、物体を検知する第1センサ及び第2センサとを備え、前記第1センサによる物体の検知に基づいて第1流体を前記吐出口から吐出し、前記第2センサによる物体の検知に基づいて第2流体を前記吐出口から吐出する水栓であって、前記第1センサから出力される検知信号及び前記第2センサから出力される検知信号に基づいて、前記第1流体及び前記第2流体が共に吐出されているか否かを判定する判定部と、前記判定部の判定結果に基づいて、前記第1流体及び前記第2流体が共に吐出されていることを報知する報知部とを備える。
【0006】
上記構成によれば、第1流体及び第2流体が共に吐出される同時吐出状態となったとき、報知部による報知に基づいて、使用者は、同時吐出状態であることを容易に把握できる。これにより、使用者は、同時吐出状態を解消するための操作を速やかに行うことができ、第1流体及び第2流体が意図せずに共に吐出され続けることを抑制できる。
【0007】
上記水栓において、前記第1流体は、給水源から供給される原水であり、前記第2流体は、前記原水を処理してなる浄水であることが好ましい。
上記水栓において、前記第1センサを構成する素子及び前記第2センサを構成する素子は、共通の基板に実装されていることが好ましい。
【0008】
上記水栓において、前記報知部は、前記第1流体及び前記第2流体のいずれか一方の流体の吐出中に、同他方の流体を吐出させるための前記第1センサ又は前記第2センサによる物体の検知が行われた場合に、前記第1流体及び前記第2流体が共に吐出されていることを報知することが好ましい。
【0009】
上記水栓において、前記吐出口に接続されるとともに前記第1流体が流れる第1流路と、前記吐出口に接続されるとともに前記第2流体が流れる第2流路と、前記第1流路に設けられる第1電磁弁と、前記第2流路に設けられる第2電磁弁と、前記第1センサから出力される検知信号に基づいて前記第1電磁弁の開閉動作を制御するとともに、前記第2センサから出力される検知信号に基づいて前記第2電磁弁の開閉動作を制御する弁制御部とを備え、前記判定部は、前記弁制御部から前記第1電磁弁に出力される制御信号、及び前記弁制御部から前記第2電磁弁に出力される制御信号に基づいて、前記第1流体及び前記第2流体が共に吐出されているか否かを判定することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第1センサによる物体の検知に基づいて吐出される第1流体と、第2センサによる物体の検知に基づいて吐出される第2流体とが意図せずに共に吐出され続けることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】水栓のブロック図である。
図2】判定部における論理演算の説明図である。
図3】正常操作時の水栓の動作を示すタイミングチャートである。
図4】誤操作時の水栓の動作を示すタイミングチャートである。
図5】変更例における判定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を説明する。本実施形態の水栓は、キッチンキャビネットのカウンタに設置される水栓であり、原水と浄水とを選択的に吐出可能に構成されている。
図1に示すように、水栓10は、キッチンキャビネットのカウンタである壁部Wの上に配置される水栓本体11と、原水及び浄水が流れる配管部20と、配管部20を流れる原水及び浄水を制御する制御部30とを備えている。
【0013】
(水栓本体)
水栓本体11は、管状の部材であり、壁部Wから斜め上方に延びるとともに先端部分が水平方向に屈曲した形状をなしている。水栓本体11の基端部には、壁部Wに固定される固定部12が設けられている。水栓本体11の先端下部には、下方に向かって原水及び浄水を吐出する吐出口13が設けられている。水栓本体11の内部には、後述する配管部20を構成する原水路23及び浄水路24の各下流側の部分が配置されている。
【0014】
(配管部)
配管部20は、給水源から供給される原水が流れる給水管21と、分岐管22によって給水管21から二分岐する原水路23及び浄水路24とを備えている。原水路23は、水栓本体11の吐出口13に原水を供給するための流路であり、その下流端が水栓本体11の吐出口13に接続されている。原水路23には、原水路23を開閉する原水電磁弁25が設けられている。
【0015】
浄水路24は、水栓本体11の吐出口13に浄水を供給するための流路であり、その下流端が水栓本体11の吐出口13に接続されている。浄水路24には、浄水路24を開閉する浄水電磁弁26が設けられている。浄水路24における浄水電磁弁26の下流側には、浄水器27が設けられている。
【0016】
浄水路24を流れる原水が浄水器27を通過することにより浄化されて浄水となる。浄水路24における浄水器27よりも下流側は、浄水器27により浄化された浄水が流れる。浄水器27は特に限定されるものではなく、活性炭素繊維、逆浸透膜を利用した浄水器などの水栓に適用される公知の浄水器を用いることができる。
【0017】
(制御部)
制御部30は、人体などの物体を非接触で検知する原水センサ31及び浄水センサ32と、原水電磁弁25及び浄水電磁弁26の開閉動作を制御する弁制御部33とを備えている。
【0018】
原水センサ31は、水栓本体11の先端部に配置され、水栓本体11の先端部を基準とする第1検知範囲に物体が位置した場合に原水検知信号Sd1を弁制御部33へ出力する。浄水センサ32は、水栓本体11の先端部に配置され、水栓本体11の先端部を基準とする第2検知範囲に物体が位置した場合に浄水検知信号Sd2を弁制御部33へ出力する。
【0019】
第1検知範囲と第2検知範囲は、互いに重ならない範囲において任意に設定できる。例えば、第1検知範囲及び第2検知範囲の一方は、水栓本体11の先端部の上方側の範囲であり、同他方は、水栓本体11の先端部の前方側の範囲である。また、原水センサ31による物体の検知及び原水検知信号Sd1の出力と、浄水センサ32による物体の検知及び浄水検知信号Sd2の出力は、それぞれ独立して実行される。
【0020】
原水センサ31及び浄水センサ32は特に限定されるものではなく、赤外線センサ、光センサ、超音波センサなどの水栓に適用される公知の非接触式センサを用いることができる。原水センサ31及び浄水センサ32の種類は、同じであってもよいし、それぞれ異なっていてもよい。
【0021】
原水センサ31及び浄水センサ32はそれぞれ、物体を検知するための素子31a,32aを備えている。例えば、赤外線センサである場合、人体などの物体が放出する赤外線に反応する受光素子を備えている。素子31a,32aは、水栓本体11に配置される共通の基板34に実装されている。
【0022】
弁制御部33は、原水電磁弁25の開閉を制御するための原水制御信号Sc1を原水電磁弁25へ出力する。弁制御部33は、原水センサ31から出力される原水検知信号Sd1に基づいて、原水制御信号Sc1を、開信号と閉信号との間で切り替えることにより、原水電磁弁25の開閉を制御する。原水制御信号Sc1の切り替えは、原水検知信号Sd1が出力されるごとに実行される。したがって、弁制御部33は、原水検知信号Sd1が出力されるごとに、開状態から閉状態又は閉状態から開状態に変更する方式、所謂、セットリセット方式により原水電磁弁25の開閉を制御する。
【0023】
同様に、弁制御部33は、浄水電磁弁26の開閉を制御するための浄水制御信号Sc2を浄水電磁弁26へ出力する。弁制御部33は、浄水センサ32から出力される浄水検知信号Sd2に基づいて、浄水制御信号Sc2を、開信号と閉信号との間で切り替えることにより、浄水電磁弁26の開閉を制御する。浄水制御信号Sc2の切り替えは、浄水検知信号Sd2が出力されるごとに実行される。したがって、弁制御部33は、浄水検知信号Sd2が出力されるごとに、開状態から閉状態、又は閉状態から開状態に変更する方式により浄水電磁弁26の開閉を制御する。
【0024】
また、制御部30は、浄水及び原水が共に吐出されているか否かを判定する判定部35と、浄水及び原水が共に吐出されていることを報知する報知部36を備えている。以下では、浄水及び原水が共に吐出されているか否かの判定を同時吐出判定と記載し、浄水及び原水が共に吐出されている状態を同時吐出状態と記載する。
【0025】
弁制御部33は、原水制御信号Sc1を原水電磁弁25及び判定部35に出力するとともに、浄水制御信号Sc2を浄水電磁弁26及び判定部35に出力する。判定部35は、入力された原水制御信号Sc1及び浄水制御信号Sc2を用いて論理演算を行い、その結果に基づいて同時吐出判定を行う。同時吐出判定が肯定である場合、判定部35は、報知信号Saを報知部36へ出力する。
【0026】
図2に示すように、本実施形態における論理演算は、原水制御信号Sc1及び浄水制御信号Sc2の両方について、開信号を「1」とし、閉信号を「0」とした論理積である。この場合、原水制御信号Sc1及び浄水制御信号Sc2が共に開信号「1」である場合にのみ論理積「1」となり、その他の場合には論理積「0」となる。判定部35は、論理積「1」である場合に、同時吐出状態であると判定し、論理積「0」である場合に、同時吐出状態でないと判定する。
【0027】
判定部35における同時吐出判定は、原水制御信号Sc1が切り替わったタイミング及び浄水制御信号Sc2が切り替わったタイミングのそれぞれにおいて実行される。また、報知信号Saを出力した後、判定部35は、同時吐出判定が否定となるまでの間、報知信号Saを出力し続ける。
【0028】
図1に示すように、報知部36は、基板34に実装されている発音部品である。報知部36は、判定部35から出力された報知信号Saに基づいて警告音を発生させる。また、報知部36は、報知信号Saが出力されている間、警告音を発生させ続ける。報知部36による警告音の種類は特に限定されるものではなく、電子音であってもよいし、音声であってもよい。
【0029】
なお、図1においては、理解を容易にするために、原水センサ31、浄水センサ32、報知部36、及び基板34を水栓本体11の外側に図示したが、実際には、これらの各構成は水栓本体11の内側に位置している。原水センサ31、浄水センサ32、及び報知部36と、弁制御部33及び判定部35との間の信号線についても同様である。
【0030】
本実施形態においては、原水路23、原水電磁弁25、及び原水センサ31がそれぞれ、第1流路、第1電磁弁、及び第1センサに該当し、浄水路24、浄水電磁弁26、及び浄水センサ32がそれぞれ、第2流路、第2電磁弁、及び第2センサに該当する。
【0031】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図3は、原水を吐出させるための操作及び浄水を吐出させるための操作がそれぞれ正常に実行された場合のタイミングチャートの一例を示している。以下では、原水及び浄水のいずれも吐出されていない状態を吐出停止状態と記載する。図3に示すように、時刻t1より前の吐出停止状態においては、原水制御信号Sc1及び浄水制御信号Sc2はいずれも閉信号「0」である。
【0032】
図3に示すように、時刻t1において、原水を吐出させるために使用者が原水センサ31に自身の手などの物体を検知させる操作を行うと、原水センサ31による検知に基づいて、原水検知信号Sd1が出力される。弁制御部33は、原水検知信号Sd1の入力に基づいて原水制御信号Sc1を閉信号「0」から開信号「1」に切り替える。これにより、原水電磁弁25が開状態となり、原水路23を流れる原水が吐出口13から吐出される。
【0033】
時刻t2において、原水の吐出を停止させるために使用者が原水センサ31に物体を検知させる操作を行うと、原水センサ31による検知に基づいて、原水検知信号Sd1が出力される。弁制御部33は、原水検知信号Sd1の入力に基づいて原水制御信号Sc1を開信号「1」から閉信号「0」に切り替える。これにより、原水電磁弁25が閉状態となり、吐出口13からの原水の吐出が停止されて吐出停止状態に戻る。
【0034】
時刻t3において、浄水を吐出させるために使用者が浄水センサ32に物体を検知させる操作を行うと、浄水センサ32による検知に基づいて、浄水検知信号Sd2が出力される。弁制御部33は、浄水検知信号Sd2の入力に基づいて浄水制御信号Sc2を閉信号「0」から開信号「1」に切り替える。これにより、浄水電磁弁26が開状態となり、浄水路24を流れる浄水が吐出口13から吐出される。
【0035】
時刻t4において、浄水の吐出を停止させるために使用者が浄水センサ32に物体を検知させる操作を行うと、浄水センサ32による検知に基づいて、浄水検知信号Sd2が出力される。弁制御部33は、浄水検知信号Sd2の入力に基づいて浄水制御信号Sc2を開信号「1」から閉信号「0」に切り替える。これにより、浄水電磁弁26が閉状態となり、吐出口13からの浄水の吐出が停止されて吐出停止状態に戻る。
【0036】
また、時刻t1における原水制御信号Sc1が閉信号「0」から開信号「1」に切り替わったタイミング、時刻t2における原水制御信号Sc1が開信号「1」から開信号「0」に切り替わったタイミング、時刻t3における浄水制御信号Sc2が閉信号「0」から開信号「1」に切り替わったタイミング、時刻t4における浄水制御信号Sc2が開信号「1」から開信号「0」に切り替わったタイミングにおいて、判定部35による同時吐出判定が実行される。上記のいずれのタイミングにおいても、原水制御信号Sc1及び浄水制御信号Sc2の少なくとも一方は閉信号「0」であることから、判定部35は、同時吐出状態でないと判定する(図2参照。)。したがって、判定部35から報知部36へ報知信号Saは出力されず、報知部36による報知は行われない。
【0037】
図4は、原水及び浄水が同時に吐出するように操作された場合のタイミングチャートの一例を示している。例えば、浄水を吐出させるために使用者が浄水センサ32に自身の手を検知させる操作を行ったとき、又はその前後の動作において、原水センサ31の第1検知範囲にも手が入り込み、原水センサ31による検知がなされてしまう場合がある。この場合、浄水を吐出させる開閉制御と原水と吐出させる開閉制御とが並行して行われることにより、使用者の意図に反して原水及び浄水が同時に吐出される。
【0038】
図4に示すように、時刻t5において、浄水を吐出させるために使用者が浄水センサ32に物体を検知させる操作を行う。このときの水栓10の動作は、図3における時刻t3における動作と同様であり、浄水が吐出口13から吐出される。また、判定部35は、同時吐出状態でないと判定し、報知部36による報知は行われない。
【0039】
浄水の吐出中における時刻t6において、意図せずに使用者の手が原水センサ31の第1検知範囲に入り込むと、原水センサ31による検知に基づいて、原水検知信号Sd1が出力される。弁制御部33は、原水検知信号Sd1の入力に基づいて原水制御信号Sc1を閉信号「0」から開信号「1」に切り替える。これにより、原水電磁弁25が開状態となり、原水路23を流れる原水が吐出口13から吐出される。その結果、原水及び浄水が同時に吐出される。
【0040】
時刻t6における原水制御信号Sc1が閉信号「0」から開信号「1」に切り替わったタイミングにおいて、判定部35による同時吐出判定が実行される。この場合、原水制御信号Sc1が開信号「1」であり、浄水制御信号Sc2が開信号「1」であることから、判定部35は、同時吐出状態であると判定し、報知信号Saを報知部36へ出力する。報知部36は、報知信号Saの入力に基づいて警告音を発生させることにより、同時吐出状態であることを使用者に報知する。
【0041】
時刻t7において、誤って吐出されている原水を停止するために使用者が原水センサ31に物体を検知させる操作を行うと、原水センサ31による検知に基づいて、原水検知信号Sd1が出力される。弁制御部33は、原水検知信号Sd1の入力に基づいて原水制御信号Sc1を開信号「1」から開信号「0」に切り替える。これにより、原水電磁弁25が閉状態となり、吐出口13からの原水の吐出が停止されて、浄水のみが吐出される状態になる。
【0042】
時刻t7における原水制御信号Sc1が開信号「1」から開信号「0」に切り替わったタイミングにおいて、判定部35による同時吐出判定が実行される。この場合、原水制御信号Sc1が閉信号「0」であり、浄水制御信号Sc2が開信号「1」であることから、判定部35は、同時吐出状態でないと判定し、報知信号Saの出力を停止する。報知信号Saの出力が停止されることにより、報知部36による報知が停止する。
【0043】
次に、本実施形態の効果について記載する。
(1)水栓10は、吐出口13を有する水栓本体11と、物体を検知する原水センサ31及び浄水センサ32とを備え、原水センサ31による検知に基づいて原水を吐出口13から吐出し、浄水センサ32による検知に基づいて浄水を吐出口13から吐出する。水栓10は、判定部35と報知部36とを備えている。判定部35は、原水センサ31から出力される原水検知信号Sd1及び浄水センサ32から出力される浄水検知信号Sd2に基づいて原水と浄水の同時吐出判定を行う。報知部36は、判定部35の判定結果に基づいて同時吐出状態を報知する。
【0044】
上記構成によれば、原水と浄水の同時吐出状態となったとき、報知部36による報知に基づいて、使用者は、同時吐出状態であることを容易に把握できる。これにより、使用者は、同時吐出状態を解消するための操作を速やかに行うことができ、原水及び浄水が意図せずに共に吐出され続けることを抑制できる。
【0045】
(2)判定部35による同時吐出判定の対象となる流体は、原水と浄水である。
この場合、原水及び浄水の同時吐出が生じると、原水のみを利用する場合の利点及び浄水のみを利用する場合の利点が大きく損なわれてしまう。つまり、浄水を使用する場合には、原水が混合されることにより、より清浄な水を利用したという要求を満たすことができなくなる。原水を使用する場合には、浄水が吐出されることにより、浄水器27を消耗してしまい、浄水器27の早期劣化の原因になる。このように、原水と浄水の組み合わせの場合には、同時吐出によるデメリットが多くなるため、同時吐出状態であることを使用者に報知することの有用性が高くなる。
【0046】
(3)原水センサ31を構成する素子31a及び浄水センサ32を構成する素子32aは、共通の基板34に実装されている。
この場合には、素子31a,32aが近接することにより、原水センサ31が物体を検知する第1検知範囲と、浄水センサ32が物体を検知する第2検知範囲とが近くに設定される。そのため、原水センサ31及び浄水センサ32の一方のセンサに検知させるように手を移動させた場合に、他方のセンサにも検知されてしまう誤操作が生じやすく、原水と浄水の同時吐出状態になりやすい。したがって、同時吐出状態を報知して、使用者に把握させることが特に有効である。
【0047】
(4)報知部36は、原水及び浄水のいずれか一方の流体の吐出中に、同他方の流体を吐出させるための原水センサ31又は浄水センサ32による物体の検知が行われた場合に、同時吐出状態を報知する。上記構成によれば、原水の吐出中又は浄水の吐出中に同時吐出状態になった場合にも、使用者は、同時吐出状態であることを容易に把握できる。
【0048】
(5)水栓10は、吐出口13に接続されるとともに原水が流れる原水路23と、吐出口13に接続されるとともに浄水が流れる浄水路24と、原水路23に設けられる原水電磁弁25と、浄水路24に設けられる浄水電磁弁26と、弁制御部33とを備えている。弁制御部33は、原水センサ31から出力される原水検知信号Sd1に基づいて原水電磁弁25の開閉動作を制御するとともに、浄水センサ32から出力される浄水検知信号Sd2に基づいて浄水電磁弁26の開閉動作を制御する。判定部35は、弁制御部33から原水電磁弁25に出力される原水制御信号Sc1、及び弁制御部33から浄水電磁弁26に出力される浄水制御信号Sc2に基づいて同時吐出判定を行う。
【0049】
上記構成によれば、原水検知信号Sd1及び浄水検知信号Sd2を直接的に用いることなく同時吐出判定を行っている。これにより、原水センサ31及び浄水センサ32による検知に基づいて原水電磁弁25及び浄水電磁弁26を開閉動作させる際の開閉制御の設計の自由度が高くなる。例えば、原水検知信号Sd1及び浄水検知信号Sd2を直接的に用いることなく同時吐出判定を行う場合、原水電磁弁25を開状態とするための原水検知信号Sd1と、原水電磁弁25を閉状態とするための原水検知信号Sd1とを区別する必要がない。
【0050】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・原水センサ31を構成する素子31a及び浄水センサ32を構成する素子32aを、それぞれ異なる基板に実装してもよい。また、素子31a,32aは、水栓本体11の表面などの基板以外の構成に取り付けられていてもよい。
【0051】
・報知部36による報知の内容は、音を用いた報知に限定されるものではなく、利用者が同時吐出状態であることを把握できるものであればよい。例えば、光を用いて報知する構成であってもよいし、吐出口13からの吐出状態の変化によって報知する構成であってもよいし、それらの組み合わせであってもよい。光を用いて報知する場合、上記実施形態における発音部品を発光部品に変更し、発光部品から発生する光に基づいて、同時吐出状態であることを報知する。
【0052】
吐出状態の変化によって報知する場合の例としては、原水及び浄水のいずれか一方の流体の吐出中に同時吐出状態となった場合に、吐出口13からの原水及び浄水の両方の吐出を停止させることにより、同時吐出状態であることを利用者に把握させる構成が挙げられる。この場合、判定部35による同時吐出判定が肯定である場合に、判定部35から弁制御部33へ報知信号Saを出力し、弁制御部33から出力される原水制御信号Sc1及び浄水制御信号Sc2を共に閉信号に切り替える構成とする。この場合の報知部36は、弁制御部33になる。
【0053】
・判定部35における同時吐出判定を実行するタイミングは、上記実施形態のタイミングに限定されるものではなく、任意に設定できる。例えば、予め設定された所定周期で繰り返し同時吐出判定を実行してもよい。
【0054】
・判定部35において、同時吐出判定を行うための論理演算は、論理積に限定されるものではなく、否定論理積、論理和、否定論理和などの他の論理演算を用いてもよい。
・判定部35における同時吐出判定は、論理演算に限定されない。例えば、図5のフローチャートに示すように、原水制御信号Sc1が開信号であるか否かの判定と、浄水制御信号Sc2が開信号であるか否かの判定を個別に行うことに基づいて同時吐出判定を行ってもよい。
【0055】
図5のフローチャートに示す同時吐出判定処理では、ステップS1として、原水制御信号Sc1が開信号であるか否かを判定する。ステップS1の判定が肯定である場合、ステップS2として、浄水制御信号Sc2が開信号であるか否かを判定する。ステップS2の判定が肯定である場合、ステップS3にて、同時吐出状態であると判定する。ステップS1の判定が否定である場合、及びステップS2の判定が否定である場合、ステップS4にて、同時吐出状態でないと判定する。
【0056】
・判定部35における同時吐出判定は、原水制御信号Sc1及び浄水制御信号Sc2のみを用いた構成に限定されない。例えば、原水検知信号Sd1及び浄水検知信号Sd2を用いて同時吐出判定を行ってもよい。具体例としては、原水検知信号Sd1及び浄水検知信号Sd2を用いた論理演算により同時吐出判定を行う構成、原水制御信号Sc1及び浄水制御信号Sc2が閉信号である状態において、予め設定された特定時間以内に、原水検知信号Sd1及び浄水検知信号Sd2の両方が出力された場合に同時吐出状態と判定する構成が挙げられる。
【0057】
また、原水制御信号Sc1及び浄水制御信号Sc2と原水検知信号Sd1及び浄水検知信号Sd2とを組み合わせて同時吐出判定を行ってもよい。例えば、原水制御信号Sc1が開信号であり、浄水制御信号Sc2が閉信号である状態において、浄水検知信号Sd2が出力された場合に同時吐出状態であると判定する。
【0058】
・弁制御部33による原水電磁弁25の開閉制御は、セットリセット方式に限定されない。例えば、原水センサ31により物体が検知されている期間のみ、原水電磁弁25が開状態となるように制御してもよい。また、原水検知信号Sd1に基づいて原水電磁弁25が開状態に変更されてから一定時間経過後、原水電磁弁25が閉状態に変更されて、原水の吐出が自動的に停止するように制御してもよい。弁制御部33による浄水電磁弁26の開閉制御についても同様である。
【0059】
・報知部36による同時吐出状態が報知されている間は、非報知時における通常の開閉制御と異なる開閉制御を行ってもよい。例えば、同時吐出状態が報知されている間は、原水センサ31による物体の検知、及び浄水センサ32による物体の検知のいずれがなされた場合であっても、原水及び浄水の両方の吐出を停止させるように原水電磁弁25及び浄水電磁弁26を制御する。
【0060】
・水栓10は、吐出口13から吐出される原水及び浄水に関するパラメータを調整するための構成を備えていてもよい。上記パラメータとしては、例えば、流量、流速、温度が挙げられる。例えば、流量を調節するハンドルを水栓本体11に設けて、ハンドルの操作量に応じて原水制御信号Sc1が開信号であるときの原水電磁弁25の開度、及び浄水制御信号Sc2が開信号であるときの浄水電磁弁26の開度を変更する構成とする。
【0061】
・判定部による同時吐出判定の対象となる第1流体及び第2流体の組み合わせは、原水と浄水の組み合わせに限定されるものではなく、択一的に用いることが想定される流体の組み合わせであればよい。その他の組み合わせとしては、例えば、原水と、原水の温度を所定温度に調節してなる温調水との組み合わせ、及び原水と、原水を電気分解してなる電解水との組み合わせが挙げられる。
【0062】
・原水センサ31及び浄水センサ32の一方又は両方は、静電容量方式センサ、電磁誘導方式センサなどの接触式センサであってもよい。
・水栓本体11の形状は、上記実施形態の形状に限定されるものではなく、グースネック形状などの水栓に適用される公知の形状を採用できる。
【0063】
・水栓10の設置場所は、キッチンキャビネットのカウンタに限定されるものではなく、洗面台、手洗い台などの水栓が適用される公知の場所であってもよい。
【符号の説明】
【0064】
10…水栓、11…水栓本体、13…吐出口、23…原水路(第1流路)、24…浄水路(第2流路)、25…原水電磁弁(第1電磁弁)、26…浄水電磁弁(第2電磁弁)、31…原水センサ(第1センサ)、31a,32a…素子、32…浄水センサ(第2センサ)、33…弁制御部、34…基板、35…判定部、36…報知部。
図1
図2
図3
図4
図5