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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023099238
(43)【公開日】2023-07-12
(54)【発明の名称】計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20230705BHJP
   G01P 3/36 20060101ALI20230705BHJP
【FI】
G01B11/00 G
G01P3/36 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020092170
(22)【出願日】2020-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【弁理士】
【氏名又は名称】梶谷 美道
(74)【代理人】
【識別番号】100125922
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 章子
(74)【代理人】
【識別番号】100188813
【弁理士】
【氏名又は名称】川喜田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100184985
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 成康
(74)【代理人】
【識別番号】100218981
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】高木 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】稲田 安寿
(72)【発明者】
【氏名】高山 了一
(72)【発明者】
【氏名】久田 和也
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA06
2F065FF52
2F065FF55
2F065GG25
2F065HH05
2F065JJ01
2F065JJ02
2F065JJ03
2F065JJ18
2F065JJ24
2F065JJ25
2F065JJ26
2F065LL18
2F065LL46
2F065LL62
2F065MM16
(57)【要約】
【課題】物体の計測データを効率的に取得できる計測装置を提供する。
【解決手段】計測装置は、光偏向器と、周波数が時間的に変化する光を出射する発光素子と、前記光の光路上に配置され、前記光を、参照光および照射光に分離するスプリッタと、光検出器と、を含む光スキャナと、前記発光素子、前記光偏向器、および前記光検出器を制御し、前記光検出器から出力された信号を処理する処理回路と、を備え、前記処理回路は、前記光スキャナにラインビームを出射させると共に、前記ラインビームの出射方向を、前記ラインビームが延びる方向に交差する方向に沿って変化させ、前記光検出器に、前記ラインビームで物体が照射されることによって生じた反射光と前記参照光との干渉光を検出させ、前記信号に基づいて、前記物体の計測データを生成して出力する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光偏向器と、
周波数が時間的に変化する光を出射する発光素子と、
前記光の光路上に配置され、前記光を、参照光および照射光に分離するスプリッタと、
光検出器と、
を含む光スキャナと、
前記発光素子、前記光偏向器、および前記光検出器を制御し、前記光検出器から出力された信号を処理する処理回路と、
を備え、
前記処理回路は、
前記光スキャナにラインビームを出射させると共に、前記ラインビームの出射方向を、前記ラインビームが延びる方向に交差する方向に沿って変化させ、
前記光検出器に、前記ラインビームで物体が照射されることによって生じた反射光と前記参照光との干渉光を検出させ、
前記信号に基づいて、前記物体の計測データを生成して出力する、
計測装置。
【請求項2】
前記光検出器は、単一の光検出素子である、
請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記光検出器は、前記ラインビームが延びる方向に配列された複数の光検出素子を含む、
請求項1に記載の計測装置。
【請求項4】
前記光スキャナは、
前記ラインビームが延びる方向を第1の方向にし、前記ラインビームの出射方向を、前記第1の方向に交差する第2の方向に沿って変化させる第1のモードと、
前記ラインビームが延びる方向を前記第2の方向にし、前記ラインビームの出射方向を、前記第1の方向に沿って変化させる第2のモードと、
を切り替えることが可能である、
請求項1に記載の計測装置。
【請求項5】
前記光スキャナは、
前記ラインビームが延びる方向を第1の方向にし、前記ラインビームの出射方向を、前記第1の方向に交差する第2の方向に沿って変化させる第1のモードと、
前記ラインビームよりも前記第1の方向の広がりが小さい光ビームの出射方向を、前記第1の方向および前記第2の方向に沿って変化させる第2のモードと、
を切り替えることが可能である、
請求項1に記載の計測装置。
【請求項6】
前記光スキャナは、
前記ラインビームが延びる方向を第1の方向にし、前記ラインビームの出射方向を、前記第1の方向に交差する第2の方向に沿って変化させる第1のモードと、
前記ラインビームよりも前記第2の方向の広がりが大きいフラッシュ光を出射させる第2のモードと、
を切り替えることが可能である、
請求項1に記載の計測装置。
【請求項7】
前記処理回路は、
前記光スキャナに、前記第1のモードによる計測動作を実行させ、
前記第1のモードにより取得された計測データを基に、前記第2のモードによる計測動作への切り替えが必要か否かを判定し、
前記第2のモードによる計測動作への切り替えが必要と判定されたことを受けて、前記光スキャナに、前記第2のモードによる計測動作を実行させる、
請求項4または5に記載の計測装置。
【請求項8】
前記処理回路は、
前記光スキャナに、前記第2のモードによる計測動作を実行させ、
前記第2のモードにより取得された計測データを基に、前記第1のモードによる計測動作への切り替えが必要か否かを判定し、
前記第1のモードによる計測動作への切り替えが必要と判定されたことを受けて、前記光スキャナに、前記第1のモードによる計測動作を実行させる、
請求項6に記載の計測装置。
【請求項9】
さらに、他のセンサを備え、
前記処理回路は、
前記他のセンサからの信号に基づき、前記第1のモードによる計測動作と、前記第2のモードによる計測動作のうちの1つを選択し、
前記光スキャナに、選択されたモードによる計測動作を実行させる、
請求項4から6のいずれかに記載の計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物体を光で照射し、当該物体からの反射光を検出することにより、当該物体の距離に関するデータを取得するLiDAR(Light Detection and Ranging)技術が存在する。LiDAR技術を用いた計測装置の典型例は、発光装置、光検出器、および処理回路を備える。発光装置は、光の方向を変化させる光偏向器を含む。光検出器は、物体からの反射光を検出することにより、反射光の強度に応じた信号を出力する。処理回路は、光検出器から出力された信号に基づいて、例えばTOF(Time Of Flight)技術によって物体の距離に関するデータを取得する。特許文献1から3は、光の方向を変化させることが可能な構成の例を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2013/168266号
【特許文献2】特開2013-016591号公報
【特許文献3】国際公開第2014/110017号
【非特許文献1】Christopher V. Poulton, et al., “Frequency-modulated Coutinuous-wave LIDAR Module in Silicon Photonics”, OFC2016, W4E.3, (2016).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、物体の計測データを効率的に取得できる計測装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る計測装置は、光偏向器と、周波数が時間的に変化する光を出射する発光素子と、前記光の光路上に配置され、前記光を、参照光および照射光に分離するスプリッタと、光検出器と、を含む光スキャナと、前記発光素子、前記光偏向器、および前記光検出器を制御し、前記光検出器から出力された信号を処理する処理回路と、を備え、前記処理回路は、前記光スキャナにラインビームを出射させると共に、前記ラインビームの出射方向を、前記ラインビームが延びる方向に交差する方向に沿って変化させ、前記光検出器に、前記ラインビームで物体が照射されることによって生じた反射光と前記参照光との干渉光を検出させ、前記信号に基づいて、前記物体の計測データを生成して出力する。
【0006】
本開示の包括的または具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能な記録ディスク等の記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意の組み合わせで実現されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、例えばCD-ROM(Compact Disc‐Read Only Memory)等の不揮発性の記録媒体を含み得る。装置は、1つ以上の装置で構成されてもよい。装置が2つ以上の装置で構成される場合、当該2つ以上の装置は、1つの機器内に配置されてもよく、分離した2つ以上の機器内に分かれて配置されてもよい。本明細書および特許請求の範囲では、「装置」とは、1つの装置を意味し得るだけでなく、複数の装置からなるシステムも意味し得る。
【発明の効果】
【0007】
本開示の技術によれば、物体の計測データを効率的に取得できる計測装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A図1Aは、本開示の例示的な実施形態における計測装置を模式的に示す図である。
図1B図1Bは、本開示の例示的な実施形態における計測装置を模式的に示す図である。
図2図2は、処理回路が実行するFMCW処理の動作のフローチャートである。
図3図3は、前面に計測装置が搭載された車両の例を模式的に示す斜視図である。
図4A図4Aは、道路を走行中の車両から見た前方の対象シーンに向けて複数の照射ラインビームを出射する第1の例を模式的に示す図である。
図4B図4Bは、図4Aに示す第1の例における、ビート信号の強度と、ビート信号の周波数から算出された距離との関係を模式的に示す図である。
図5A図5Aは、道路を走行中の車両から見た前方の対象シーンに向けて複数の照射ラインビームを出射する第2の例を模式的に示す図である。
図5B図5Bは、図5Aに示す第2の例における、ビート信号の強度と、ビート信号の周波数から算出された距離との関係を模式的に示す図である。
図6A図6Aは、道路を走行中の車両から見た前方の対象シーンに向けて複数の照射ラインビームを出射する第3の例を模式的に示す図である。
図6B図6Bは、図6Aに示す第3の例における、ビート信号の強度と、ビート信号の周波数から算出された距離との関係を模式的に示す図である。
図7A図7Aは、道路を走行中の車両から見た前方の対象シーンに向けて照射フラッシュ光を出射する例を模式的に示す図である。
図7B図7Bは、図7Aに示す例における、ビート信号の強度と、ビート信号の周波数から算出された距離との関係を模式的に示す図である。
図8図8は、本実施形態における複数の物体の測距動作および車両の制御動作を示すフローチャートである。
図9図9は、第1の変形例による計測装置を模式的に示す図である。
図10図10は、第2の変形例による計測装置を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下で説明される実施形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、およびステップの順序は、一例であり、本開示の技術を限定する趣旨ではない。以下の実施形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。さらに、各図において、実質的に同一または類似の構成要素には同一の符号が付されている。重複する説明は省略または簡略化されることがある。
【0010】
本開示の具体的な実施形態を説明する前に、本開示の基礎となった知見を説明する。
【0011】
特許文献1は、MEMS(Microelectro Mechanical System)の機械駆動によってミラーを回転させることにより、出射光の方向を変化させる構成を開示している。当該ミラーは、MEMSミラーと呼ばれている。
【0012】
特許文献2は、内部を光が導波する光導波層、および光導波層の上面および下面に形成された第1分布ブラッグ反射鏡を備える導波路と、導波路内に光を入射させるための光入射口と、光入射口から入射して導波路内を導波する光を出射させるために導波路の表面に形成された光出射口とを備える光偏向素子を開示している。
【0013】
特許文献3は、2次元的に配列された複数のナノフォトニックアンテナ素子を有する光フェーズドアレイを開示している。それぞれのアンテナ素子は可変光遅延線(すなわち、位相シフタ)に光学的に結合される。この光フェーズドアレイでは、コヒーレント光ビームが導波路によってそれぞれのアンテナ素子に誘導され、位相シフタによって光ビームの位相がシフトされる。これにより、遠視野放射パターンの振幅分布を変化させることができる。
【0014】
特許文献1から3に開示されている発光装置は、ビーム径が相対的に小さい光ビームで対象シーンを2次元的にスキャンする。対象シーン内に複数の物体が存在する場合、従来の計測装置において、処理回路は、発光装置に、複数の物体を光ビームで個別に照射させ、光検出器に、光ビームによる個別の照射によって生じる反射光を検出させて反射光の強度に応じた信号を出力させる。処理回路は、当該信号をTOF技術によって処理することにより、複数の物体の距離に関するデータを取得する。光ビームで複数の物体を個別に照射して得られた信号をTOF技術によって処理する場合、複数の物体の距離に関するデータを取得するには、多くの時間を要する。
【0015】
TOF技術では、物体の距離に関するデータの取得において、距離に関して広いダイナミックレンジと高い分解能とを両立することが重要である。TOF技術では、太陽光などの外乱が、光感度の観点から問題になり得る。TOF技術では、物体の速度が、1スキャンごとの物体までの距離の変化から算出される。このため、LiDAR技術を自動運転に適用する場合、高速に移動する物体の速度を検出するのに遅れが生じ得る。
【0016】
近年、距離に関して広いダイナミックレンジと高い分解能を両立し、外乱の影響を受けにくく、高速に移動する物体の速度を検出できるFMCW(Frequency Modulated Continuos Wave)-LiDAR技術が開発されている。非特許文献1は、FMCW-LiDAR技術の例を開示している。FMCW-LiDAR技術では、発光装置から出射される光の周波数が時間的に変化するように発光装置が制御される。発光装置から出射された当該光は、照射光と参照光とに分離される。照射光で物体が照射されることによって生じた物体光は、光検出器に入射する。参照光は、物体を介さずに光検出器に入射する。物体光は参照光よりも遅れて光検出器に入射するので、物体光および参照光は、光検出器への入射時に異なる周波数を有する。光検出器は、物体光と参照光とが重畳されて干渉した干渉光を検出し、干渉光の強度を示す信号を出力する。当該信号はビート信号と呼ばれる。ビート信号の周波数は、物体光の周波数と、参照光の周波数との差分に相当する。当該差分は、物体までの距離に依存する。
【0017】
FMCW-LiDAR技術において、距離が異なる複数の物体から反射された物体光は、複数の周波数成分を有する。したがって、単一の光検出素子を含む光検出器からビート信号が出力された場合でも、当該ビート信号から複数の周波数成分を分離することにより、複数の物体の距離に関するデータを取得することができる。広がりの程度がある程度大きく、かつ、エネルギー密度がある程度高い1方向に延びるラインビームであれば、複数の物体を一度に照射するのに適している。
【0018】
本開示による計測装置では、ラインビームで物体を照射して得られた信号を処理することにより、物体の計測データを効率的に取得することができる。以下に、本開示による計測装置を簡単に説明する。
【0019】
第1の項目に係る計測装置は、光偏向器と、周波数が時間的に変化する光を出射する発光素子と、前記光の光路上に配置され、前記光を、参照光および照射光に分離するスプリッタと、光検出器と、を含む光スキャナと、前記発光素子、前記光偏向器、および前記光検出器を制御し、前記光検出器から出力された信号を処理する処理回路と、を備える。前記処理回路は、前記光スキャナにラインビームを出射させると共に、前記ラインビームの出射方向を、前記ラインビームが延びる方向に交差する方向に沿って変化させ、前記光検出器に、前記ラインビームで物体が照射されることによって生じた反射光と前記参照光との干渉光を検出させ、前記信号に基づいて、前記物体の計測データを生成して出力する。
【0020】
この計測装置では、ラインビームで物体を照射することによって得られる反射光と、参照光との干渉光を検出することにより、物体の計測データを効率的に取得することができる。
【0021】
第2の項目に係る計測装置は、第1の項目に係る計測装置において、前記光検出器が、単一の光検出素子である。
【0022】
この計測装置では、単一の光検出器によって物体の大まかな位置を知ることができる。
【0023】
第3の項目に係る計測装置は、第1の項目に係る計測装置において、前記光検出器が、前記ラインビームが延びる方向に配列された複数の光検出素子を含む。
【0024】
この計測装置では、ラインビームが延びる方向における物体の位置を知ることができる。
【0025】
第4の項目に係る計測装置は、第1の項目に係る計測装置において、前記光スキャナが、前記ラインビームが延びる方向を第1の方向にし、前記ラインビームの出射方向を、前記第1の方向に交差する第2の方向に沿って変化させる第1のモードと、前記ラインビームが延びる方向を前記第2の方向にし、前記ラインビームの出射方向を、前記第1の方向に沿って変化させる第2のモードと、を切り替えることが可能である。
【0026】
この計測装置では、ラインビームでのスキャンにおいて、ラインビームの延びる方向とラインビームを変化させる方向とを相互に切り替えることができる。
【0027】
第5の項目に係る計測装置は、第1の項目に係る計測装置において、前記光スキャナが、前記ラインビームが延びる方向を第1の方向にし、前記ラインビームの出射方向を、前記第1の方向に交差する第2の方向に沿って変化させる第1のモードと、前記ラインビームよりも前記第1の方向の広がりが小さい光ビームの出射方向を、前記第1の方向および前記第2の方向に沿って変化させる第2のモードと、を切り替えることが可能である。
【0028】
この計測装置では、ラインビームでのスキャンと、光ビームでのスキャンとを切り替えることができる。
【0029】
第6の項目に係る計測装置は、第1の項目に係る計測装置において、前記光スキャナが、前記ラインビームが延びる方向を第1の方向にし、前記ラインビームの出射方向を、前記第1の方向に交差する第2の方向に沿って変化させる第1のモードと、前記ラインビームよりも前記第2の方向の広がりが大きいフラッシュ光を出射させる第2のモードと、を切り替えることが可能である。
【0030】
この計測装置では、ラインビームでのスキャンと、フラッシュ光でのスキャンとを切り替えることができる。
【0031】
第7の項目に係る計測装置は、第4または第5の項目に係る計測装置において、前記処理回路が、前記光スキャナに、前記第1のモードによる計測動作を実行させ、前記第1のモードにより取得された計測データを基に、前記第2のモードによる計測動作への切り替えが必要か否かを判定し、前記第2のモードによる計測動作への切り替えが必要と判定されたことを受けて、前記光スキャナに、前記第2のモードによる計測動作を実行させる。
【0032】
この計測装置では、ラインビームでのスキャンによって取得された計測データに基づいて、必要に応じて、他のラインビームでのスキャンまたは光ビームでのスキャンを実行することができる。
【0033】
第8の項目に係る計測装置は、第6の項目に係る計測装置において、前記処理回路が、前記光スキャナに、前記第2のモードによる計測動作を実行させ、前記第2のモードにより取得された計測データを基に、前記第1のモードによる計測動作への切り替えが必要か否かを判定し、前記第1のモードによる計測動作への切り替えが必要と判定されたことを受けて、前記光スキャナに、前記第1のモードによる計測動作を実行させる。
【0034】
この計測装置では、フラッシュ光でのスキャンによって取得された計測データに基づいて、必要に応じて、ラインビームでのスキャンを実行することができる。
【0035】
第9の項目に係る計測装置は、第4から第6の項目のいずれかに係る計測装置において、さらに、他のセンサを備える。前記処理回路は、前記他のセンサからの信号に基づき、前記第1のモードによる計測動作と、前記第2のモードによる計測動作のうちの1つを選択し、前記光スキャナに、選択されたモードによる計測動作を実行させる。
【0036】
この計測装置では、他のセンサからの信号に基づいて、必要に応じて選択されたモードによる計測動作を実行することができる。
【0037】
本開示において、回路、ユニット、装置、部材または部の全部または一部、またはブロック図における機能ブロックの全部または一部は、例えば、半導体装置、半導体集積回路(IC)、またはLSI(large scale integration)を含む1つまたは複数の電子回路によって実行され得る。LSIまたはICは、1つのチップに集積されてもよいし、複数のチップを組み合わせて構成されてもよい。例えば、記憶素子以外の機能ブロックは、1つのチップに集積されてもよい。ここでは、LSIまたはICと呼んでいるが、集積の度合いによって呼び方が変わり、システムLSI、VLSI(very large scale integration)、もしくはULSI(ultra large scale integration)と呼ばれるものであってもよい。LSIの製造後にプログラムされる、Field Programmable Gate Array(FPGA)、またはLSI内部の接合関係の再構成またはLSI内部の回路区画のセットアップができるreconfigurable logic deviceも同じ目的で使うことができる。
【0038】
さらに、回路、ユニット、装置、部材または部の全部または一部の機能または動作は、ソフトウェア処理によって実行することが可能である。この場合、ソフトウェアは1つまたは複数のROM、光学ディスク、ハードディスクドライブなどの非一時的記録媒体に記録され、ソフトウェアが処理装置(processor)によって実行されたときに、そのソフトウェアで特定された機能が処理装置(processor)および周辺装置によって実行される。システムまたは装置は、ソフトウェアが記録されている1つまたは複数の非一時的記録媒体、処理装置(processor)、および必要とされるハードウェアデバイス、例えばインターフェースを備えていてもよい。
【0039】
本開示において、「光」とは、可視光(波長が約400nm~約700nm)だけでなく、紫外線(波長が約10nm~約400nm)および赤外線(波長が約700nm~約1mm)を含む電磁波を意味する。
【0040】
以下、本開示のより具体的な実施形態を説明する。
【0041】
(実施形態)
まず、図1Aおよび図1Bを参照して、本開示の例示的な実施形態による計測装置を説明する。図1Aおよび図1Bは、本開示の例示的な実施形態による計測装置100を模式的に示す図である。計測装置100は、測距装置であり、光を物体に照射して反射光を検出することにより、物体までの距離を計測する。計測装置100は光の出射方向を変化させることができる。図1Aは、計測装置100が光をある方向に出射している状態を示している。図1Bは、計測装置100が光を他の方向に出射している状態を示している。
【0042】
以下の説明において、図1Aおよび図1Bに示す互いに直交するX軸、Y軸、およびZ軸からなる座標系を用いる。X軸の矢印の方向を「+X方向」と称し、その反対の方向を「-X方向」と称する。Y軸およびZ軸についても同様である。これらの軸および方向は、便宜上用いられるにすぎず、現実に使用される計測装置100の配置または姿勢を限定することを意図するわけではない。
【0043】
本実施形態による計測装置100は、不図示の物体を光で照射することによって生じた反射光を検出する。計測装置100は、反射光の検出によって得られた信号を処理することにより、物体の距離および/または速度に関するデータを取得する。当該データを、「計測データ」とも称する。本実施形態による計測装置100は、発光装置10と、光学系20と、光検出器30と、処理回路40とを備える。発光装置10と、光学系20と、光検出器30とを含む構成を、「光スキャナ50」と称する。光スキャナ50は、空間に向けて光を出射し、物体からの反射光を検出する。光学系20は、ビームスプリッタ22、第1レンズ24、第2レンズ24、およびミラー26を含む。本明細書では、処理回路を「FMCW処理回路」とも称する。本明細書において、「FMCW処理回路」とは、後述するFMCW処理を行う電子回路を意味する。
【0044】
図1Aおよび図1Bに示す例において、発光装置10、ビームスプリッタ22、第1レンズ24、およびミラー26は、+Y方向に沿ってこの順に配置されている。発光装置10の光出射面は、XZ平面に平行である。ビームスプリッタ22の反射面は、XY平面に垂直であり、かつ+Z方向から見たときY軸に対して時計回りに45°傾いている。第1レンズ24の光軸は、Y軸に平行である。ミラー26の反射面は、XZ平面に平行である。光検出器30、第2レンズ24、およびビームスプリッタ22は、+X方向に沿ってこの順に配置されている。光検出器30の光検出面は、YZ平面に平行である。図1Aおよび図1Bに示す構成要素の傾きなどの配置関係は、用途に応じて適宜調整され得る。
【0045】
発光装置10は、光10Lを出射する。発光装置10は、例えば単一周波数の連続波レーザ光を出射するレーザダイオードなどの発光素子を含み得る。単一周波数の連続波レーザ光の代わりに、光周波数コムを有するパルス波レーザ光であってもよい。光周波数コムとは、複数の離散的な等間隔の線から形成された櫛状の周波数スペクトルである。
【0046】
発光装置10から出射される光10Lの周波数は、用途に応じて選択され得る。複数の物体の各々までの距離を赤外線によって計測する場合、光10Lの周波数は、例えば120THz(波長2.5μm)以上428THz(波長700nm)以下であり得る。光10Lの周波数は、可視域の周波数、すなわち、428THz(波長700nm)以上749THz(波長400nm)以下であってもよい。光10Lの周波数は、120THz(波長2.5μm)以下であってもよい。
【0047】
発光装置10は、周波数可変の発光素子を含む。光10Lの周波数は、例えば、発光装置10に含まれる発光素子に注入する電流、または発光素子の温度に応じて変化し得る。本実施形態では、FMCW-LiDAR技術を用いるので、光10Lの周波数が時間的に変化するように、発光装置10が処理回路40によって制御される。
【0048】
発光装置10は、光10Lの形状を変化させることが可能であり得る。光10Lは、例えば、広範囲に拡がるフラッシュ光、1方向に延びたビーム形状を有するラインビーム、またはビーム径が相対的に小さい光ビームであり得る。本明細書では、「光ビーム」の用語を、ビーム径が相対的に小さい光ビームを表すものとして使用し、ラインビームおよびフラッシュ光とは区別して用いる。発光装置10は、フラッシュ光を出射する発光素子、ラインビームを出射する発光素子、および光ビームを出射する発光素子を含み、用途に応じて適切な発光素子から光10Lを出射させてもよい。
【0049】
フラッシュ光の広がりは、ラインビームの広がりよりも大きく、ラインビームの広がりは、光ビームの広がりよりも大きい。フラッシュ光は、ラインビームが延びる方向に交差する方向において、ラインビームよりも大きい広がりを有する。光ビームは、ラインビームが延びる方向において、ラインビームよりも小さい広がりを有する。光ビームのエネルギー密度は、ラインビームのエネルギー密度よりも高く、ラインビームのエネルギー密度は、フラッシュ光のエネルギー密度よりも高い。広がりの程度が相対的に大きいフラッシュ光は、複数の物体を一度に照射するのに適している。エネルギー密度が相対的に高い光ビームは、遠距離の物体を照射するのに適している。ラインビームは、光ビームおよびフラッシュ光の両方の利点を有する。
【0050】
発光装置10は、発光素子から出射された光10Lを偏向させる光偏向器を備える。光偏向器は、光10Lの方向のうち、X方向に平行な成分、およびZ方向に平行な成分の少なくとも一方を変化させる。光偏向器は、例えばMEMSミラーのような機械駆動によって光10Lの方向を変化させてもよい。あるいは、光偏向器は、屈折率のような光学パラメータの変化によって機械駆動を用いずに光10Lの方向を変化させてもよい。光偏向器は、例えば、第1反射層と、第1反射層よりも反射率が高い第2反射層と、それらの間に位置する光導波層とを備え得る。光導波層を伝搬する光は、第1反射層を介して外部に出射される。光導波層の屈折率を変化させることにより、第1反射層を介して外部に出射される光の方向を変化させることができる。図1Aに示す例と、図1Bに示す例とでは、発光装置10から出射される光10Lの方向が異なる。図1Aおよび図1Bに示す例では、光10Lの方向は、それぞれ、+Z方向から見たときXY平面内でY軸に対して時計回りおよび反時計回りに傾斜している。
【0051】
光学系20に含まれるビームスプリッタ22は、光10Lの光路上に位置する。ビームスプリッタ22は、例えば、接合された2つの直角プリズムを含むキューブ型ビームスプリッタであり得る。一方の直角プリズムは、その斜面に光学薄膜を有する。キューブ型ビームスプリッタの例として、偏光無依存ビームスプリッタキューブが挙げられる。あるいは、ビームスプリッタ22は、例えば、表面に光学薄膜が設けられた平板ガラスを有するプレート型ビームスプリッタであり得る。
【0052】
ビームスプリッタ22は、発光装置10から出射された光10Lを第1の光10Lと第2の光10Lとに分離する。第1の光10Lは、光10Lのうち、ビームスプリッタ22を透過した成分である。第2の光10Lは、光10Lのうち、ビームスプリッタ22で反射された成分である。第1の光10Lおよび第2の光10Lの方向は、発光装置10から出射された光10Lの方向に応じて変化する。ビームスプリッタ22において、第1の光10Lと第2の光10Lとの強度の比率は、例えば50:50であり得る。第1の光10Lと第2の光10Lとの強度の比率は、物体での光の反射率に応じて変更してもよい。ビームスプリッタ22の大きさおよび位置は、光10Lの方向が変化する角度範囲をすべてカバーするように設計される。
【0053】
光学系20に含まれる第1レンズ24、第2レンズ24、およびミラー26は、第1の光10Lの光路上に位置する。第1レンズ24および第2レンズ24は、例えば、集光レンズであり得る。本実施形態では、第1レンズ24の焦点は2つの箇所に存在する。一方の焦点は発光装置10の光出射面内に存在する。この焦点を「第1焦点F」と称する。他方の焦点は第2レンズ24のビームスプリッタ22側の焦点に一致する。この焦点を「第2焦点F」と称する。第1焦点Fおよび第2焦点Fは、ビームスプリッタ22に対して鏡面対称である。ミラー26は、+Y方向に沿って伝搬する光を-Y方向に向けて反射する。ミラー26は、例えば金属、または誘電体多層膜から形成され得る。
【0054】
光10Lは、発光装置10の光出射面内における第1焦点Fから出射される。ビームスプリッタ22によって光10Lから分離された第1の光10Lは、第1レンズ24を透過して+Y方向に沿って伝搬し、ミラー26によって反射される。ミラー26によって反射された第1の光10Lは、-Y方向に沿って伝搬し、第1レンズ24を再び透過し、ビームスプリッタ22で反射される。ビームスプリッタ22で反射された第1の光10Lは、第2焦点Fを通って第2レンズ24を通過し、-X方向に沿って伝搬し光検出器30に入射する。ビームスプリッタ22によって光10Lから分離された第2の光10Lは、物体に向かって伝搬する。第2の光10Lで物体が照射されることによって生じた第3の光10Lは、第2の光10Lとは逆の方向に伝搬し、ビームスプリッタ22を通過する。ビームスプリッタ22を通過した第3の光10Lは、第2焦点Fを通って第2レンズ24を通過し、-X方向に沿って伝搬し光検出器30に入射する。第1の光10Lおよび第3の光10Lは重畳されて干渉し、第4の光10Lとして光検出器30に入射する。
【0055】
光学系20は、光10Lを第1の光10Lおよび第2の光10Lに分離し、第1の光10Lおよび第3の光10Lが干渉した第4の光10Lを光検出器30に入射させることが可能であれば、図1Aおよび図1Bに示す構成に限定されない。例えば、光学系20は、光ファイバを含み得る。
【0056】
光検出器30は、第4の光10Lを検出し、第4の光10Lの強度に応じた信号を出力する。図1Aおよび図1Bに示すように、第4の光10Lが光検出器30に入射する位置は、光10Lの方向に応じて変化する。光検出器30は、1つ以上の光検出素子を含む。光検出器30は、例えば、2次元的に配列された複数の光検出素子を有するイメージセンサを含み得る。あるいは、光検出器30は、1次元的に配列された複数の光検出素子を有するラインセンサを含んでいてもよいし、単一の光検出素子を含んでいてもよい。光検出素子は、例えば、Siアバランシェフォトディテクタであり得る。
【0057】
光検出器30が、2次元的に配列された複数の光検出素子を有するイメージセンサを含む場合、第2レンズ24は、入射した干渉光10LのY方向およびZ方向における位置を維持したまま-X方向に沿って干渉光10Lをイメージセンサに入射させる。光検出器30が、Y方向に沿って配列された複数の光検出素子を有するラインセンサを含む場合、第2レンズ24は、入射した干渉光10LのY方向における位置を維持したまま、XZ平面において干渉光10Lを当該ラインセンサに集束させる。同様に、光検出器30が、Z方向に沿って配列された複数の光検出素子を有するラインセンサを含む場合、第2レンズ24は、入射した干渉光10LのZ方向における位置を維持したまま、XY平面において干渉光10Lを当該ラインセンサに集束させる。
【0058】
第2レンズ24は、1つのレンズから構成されていてもよいし、複数のレンズから構成されていてもよい。例えば、光検出器30がY方向に沿って延びるラインセンサを含む場合、第2レンズ24は、干渉光10Lの光路上に、Z方向に延びる第1シリンドリカルレンズと、Y方方向に延びる第2シリンドリカルレンズとを含み得る。第1シリンドリカルレンズは、干渉光10LのY方向における位置を維持させる。第2シリンドリカルレンズは、第1シリンドリカルレンズを通過した干渉光10LをXZ平面においてラインセンサに集束させる。光検出器30がZ方向に沿って延びるラインセンサを含む場合についても同様である。
【0059】
光検出器30が単一の光検出素子を含む場合、第2レンズ24を取り除き、光検出器30は、第2焦点Fがその光検出面内に位置するように配置される。干渉光10Lは、光10Lの出射方向によらず第2焦点Fに入射する。
【0060】
第3の光10Lは、計測装置100と物体との往復に要した時間だけ、第1の光10Lよりも遅れて光検出器30に入射する。その結果、第3の光10Lの周波数は、第1の光10Lの周波数とは異なる。異なる周波数に起因して、第4の光10Lにおいてビートが発生する。光検出器30から出力される上記の信号は、ビート信号である。本明細書では、第1の光を「参照光」と称し、第2の光を「照射光」と称し、第3の光を「物体光」と称し、第4の光を「干渉光」と称する。
【0061】
処理回路40は、発光装置10および光検出器30を制御し、光検出器30から出力された信号を処理する。発光装置10の制御は、例えば、発光装置10から出射される光の周波数、形状、方向、および出射タイミング、ならびに発光装置10の位置の制御であり得る。光検出器30の制御は、例えば、検出タイミング、および光検出器30の位置の制御であり得る。
【0062】
以下に、図2を参照して、処理回路40のFMCW処理の動作を説明する。図2は、処理回路40が実行するFMCW処理の動作のフローチャートである。処理回路40は、以下のステップS101からステップS103の動作を実行する。
【0063】
<ステップS101>
ステップS101において、処理回路40は、発光装置10に、周波数f(t)が時間的に変化する光10Lを出射させる。参照光10Lの光路長が十分に短いとすると、光検出器30によって検出されるタイミングt=tでの参照光10Lの周波数fは、当該タイミングでの光10Lの周波数f(t)に等しいと考えることができる。照射光10Lが物体に向けて出射され、物体で反射されて物体光10Lとして戻ってくるまで時間をΔtとすると、物体光10Lの周波数fоは、f(t)-[df(t)/dt]t=t0Δtによって表される。[df(t)/dt]t=t0は、時間t=tでの周波数f(t)の時間変化率を表す。処理回路40は、発光装置10の位置を例えばアクチュエータによって調整してもよい。この調整により、第1焦点Fと発光装置10の光出射面とのずれを補償することができる。
【0064】
<ステップS102>
ステップS102において、処理回路40は、光検出器30に、干渉光10Lを検出させることによってビート信号を出力させる。ビート信号の周波数は、参照光10Lの周波数fと、物体光10Lの周波数fоとの周波数差Δf=f-fо=[df(t)/dt]t=t0Δtによって表される。処理回路40は、光検出器30の位置を例えばアクチュエータによって調整してもよい。この調整により、光検出器30が前述したように単一の光検出素子を含む場合、第2焦点Fと光検出器30の光検出面とのずれを補償することができる。その結果、ビート信号の強度を向上させることができる。
【0065】
<ステップS103>
ステップS103において、処理回路40は、ビート信号を処理することにより、物体の距離および/または速度に関するデータを生成して出力する。当該データは、例えば、ディスプレイに表示されてもよいし、スピーカから音声として出力されてよい。計測装置100から物体までの距離をd、空気中での光速をcとすると、Δt=2d/cである。参照光10Lの周波数fと、物体光10Lの周波数fоとの周波数差Δf=(2d/c)[df(t)/dt]t=t0から、物体の距離dに関するデータを生成することができる。例えば[df(t)/dt]t=t0=125THz/s、距離dが5mm以上50m以下である場合、周波数差Δfは、4.17kHz以上4.17MHzである。この周波数差Δfは、例えば、スペクトルアナライザまたはオシロスコープにより、例えば数Hzオーダーから数十MHzオーダーの分解能で正確に計測することができる。したがって、本実施形態による計測装置100によれば、物体の距離に関するデータの取得において、距離に関して広いダイナミックレンジと高い分解能とを両立することができる。物体が動いている場合、ドップラー効果によって周波数差Δfがシフトすることにより、物体の速度に関するデータを生成することができる。
【0066】
(ラインビームによる複数の物体の測距)
次に、FMCW-LiDAR技術を用いたラインビームによる複数の物体の測距を説明する。本実施形態における処理回路40は、光スキャナ50に、空間をスキャンするラインビームを出射させる。具体的には、処理回路40は、発光装置10に、ラインビーム10Lを出射させ、ラインビーム10Lの出射方向を、ラインビーム10Lが延びる方向に交差する方向に沿って規則的または不規則に変化させる。光偏向器は、ラインビーム10Lの出射方向をこのように変化させることが可能である。また、光偏向器は、ラインビーム10Lが延びる方向を第1の方向にし、ラインビーム10Lの出射方向を、第1の方向に交差する第2の方向に沿って変化させる第1のモードと、ラインビーム10Lが延びる方向を第2の方向にし、ラインビーム10Lの出射方向を、第1の方向に沿って変化させる第2のモードと、を切り替えることが可能である。
【0067】
発光装置10から出射されたラインビーム10LがX方向に延び、その出射方向がZ方向に沿って変化する場合、ラインビーム10Lからビームスプリッタ22によって分離された照射ラインビーム10Lは、主にY方向に延び、その出射方向はZ方向に沿って変化する。照射ラインビーム10Lは、ラインビーム10Lが延びる方向とは異なる方向に延びる。発光装置10から出射されたラインビーム10LがZ方向に延び、その出射方向がX方向に沿って変化する場合、ラインビーム10Lからビームスプリッタ22によって分離された照射ラインビーム10LはZ方向に延び、その出射方向はY方向に沿って変化する。照射ラインビーム10Lは、ラインビーム10Lが延びる方向と同じ方向に延びる。
【0068】
処理回路40は、光検出器30に、照射ラインビーム10Lで複数の物体が照射されることによってそれぞれ生じた複数の物体光ビーム10Lと参照光10Lとの干渉光10Lを検出させてビート信号を出力させる。複数の物体光ビーム10L同士が干渉することによってもビート信号が発生し得るが、この影響は少ない。照射ラインビーム10Lのエネルギー密度は、距離が離れるにつれて減少する。一方、参照光10Lは、発光装置10の近くに位置する光検出器30に、高いエネルギー密度を維持したまま入射する。ビート信号は2つの光の電界成分の乗算に相当する。したがって、複数の物体光ビーム10L同士のビート信号は非常に小さくなり無視できる。結果として、光検出器30から出力される信号のほとんどは、複数の物体光ビーム10Lと参照光10Lとのビート信号である。
【0069】
処理回路40は、ビート信号から、複数の物体の距離および/または速度に関するデータを一度に生成して出力することができる。干渉光10Lを検出する光検出器30は、イメージセンサ含む必要はなく、照射ラインビーム10Lと同じ方向に延びるラインセンサ、または単一の光検出素子を含み得る。この場合、光検出素子の数が少なくてよいので、最大フレームレートが30fps程度のイメージセンサと比較して、複数の物体の距離および/または速度に関するデータを生成する時間を大幅に短縮できる。
【0070】
(対象シーンのスキャン)
次に、図3から図6Bを参照して、本実施形態における、ラインビームで対象シーンをスキャンする例を説明する。
【0071】
図3は、前面に計測装置100が搭載された車両200の例を模式的に示す斜視図である。図3に示す例では、車両200の進行方向がX方向に平行であり、車高方向がY方向に平行であり、道路を横切る方向がZ方向に平行である。車高方向は、路面に垂直な方向であり、かつ、路面から離れる方向である。図3に示す例において、車両200における計測装置100は、車高方向に延びる照射ラインビーム10Lを車両200の前方にある対象シーンに向けて出射する。照射ラインビーム10Lの出射方向は、両矢印によって表されるように、道路を横切る方向に沿って変化する。計測装置100の車両200への搭載位置は、その前面に限らず、その上面、側面、または後面でもよい。当該搭載位置は、対象シーンがどこにあるかに応じて適切に決定される。
【0072】
図4Aは、道路を走行中の車両200から見た前方の対象シーンに向けて複数の照射ラインビーム10Lを出射する第1の例を模式的に示す図である。対象シーンは、太い実線の長方形によって囲まれている。対象シーンにおいて、道路には先行車が走っており、道路脇の歩道には歩行者がいる。歩道には3本の街路樹がある。対象シーン内の複数の物体は、距離が近い順から、歩行者、3本の街路樹、および先行車である。歩行者、左端、中央、および右端の街路樹、ならびに先行車までの距離は、それぞれ、dからdである。図4Aに示すように、車両200から前方を見た場合、路面は、車高方向に向かうほど緩やかに変化する。路面は連続的に変化するのに対して、路面上の人または車などの物体は、路面に対して非連続的に変化する。したがって、照射ラインビーム10Lで物体を照射することにより、当該物体を検出することが可能である。
【0073】
図4Aに示す例では、Y方向に延びる照射ラインビーム10Lの出射方向がZ方向に沿って変化する。図4Aに示す破線の楕円は、4つの異なる方向に出射されたY方向に延びる第1照射ラインビーム10L2aから第4照射ラインビーム10L2dの照射スポットを表す。照射ラインビーム10Lの照射スポット内の上部、中部、および下部における距離は、その出射方向がZ方向に沿って変化してもそれほど大きく変化しない。したがって、鉛直方向に延びる照射ラインビーム10Lで対象シーンを水平方向にスキャンする場合、水平方向における距離の分解能が高いという利点がある。
【0074】
図4Aに示す例において、第1照射ラインビーム10L2aの照射スポットは、左端の街路樹を含む。第2照射ラインビーム10L2bの照射スポットは、中央の街路樹を含む。第3照射ラインビーム10L2cの照射スポットは、歩行者および右端の街路樹を含む。第4照射ラインビーム10L2dの照射スポットは、先行車を含む。第1照射ラインビーム10L2aから第4照射ラインビーム10L2dをこの順または反対の順に対象シーンに向けて出射してもよいし、例えば、第3照射ラインビーム10L2c、第2照射ラインビーム10L2b、第4照射ラインビーム10L2d、および第1照射ラインビーム10L2aのように不規則な順に出射してもよい。図4Aに示す例では、単一の光検出素子を含む光検出器30が、前述したように干渉光10Lを検出する。
【0075】
図4Bは、図4Aに示す第1の例における、ビート信号の強度と、ビート信号の周波数から算出された距離との関係を模式的に示す図である。図4Bの4つの図は、第1照射ラインビーム10L2aから第4照射ラインビーム10L2dによって生じるビート信号を示している。第1照射ラインビーム10L2a、第2照射ラインビーム10L2b、および第4照射ラインビーム10L2dにより、それぞれ、距離d、距離d、および距離dの単一のピークが現れる。これに対して、第3照射ラインビーム10L2cにより、距離dおよび距離dの2つのピークが現れる。本実施形態による計測装置100は、1つの照射ラインビーム10Lで複数の物体を照射することにより、当該複数の物体までの距離を一度に計測することができる。本実施形態による計測装置100によれば、第1照射ラインビーム10L2aから第4照射ラインビーム10L2dの既知の出射角から、単一の光検出素子によって複数の物体の大まかな位置を短時間で知ることができる。
【0076】
図5Aは、道路を走行中の車両200から見た前方の対象シーンに向けて複数の照射ラインビーム10Lを出射する第2の例を模式的に示す図である。第2の例が第1の例とは異なる点は、Y方向に延びるラインセンサを含む光検出器30が、前述したように干渉光10Lを検出することである。干渉光10Lは、当該ラインセンサに含まれる複数の光検出素子に入射する。図5Aに示す各照射ラインビーム内の5つの点線の楕円は、ラインセンサに含まれるY方向に配列された光検出素子40aから光検出素子40eに対応する箇所を表す。
【0077】
図5Bは、図5Aに示す第2の例における、ビート信号の強度と、ビート信号の周波数から算出された距離との関係を模式的に示す図である。図5Bは、第3照射ラインビーム10L2cによって各光検出素子から出力されるビート信号を示している。図5Bに示す例において、光検出素子40aから光検出素子40cは距離dのビート信号を出力し、光検出素子40dおよび光検出素子40eは距離dのビート信号を出力する。光検出素子40aから光検出素子40cによって右端の街路樹のより正確な位置を知ることができ、光検出素子40dおよび光検出素子40eによって歩行者のより正確な位置を知ることができる。本実施形態による計測装置100によれば、ラインセンサにより、複数の物体の3次元的な位置をより正確に知ることができる。
【0078】
本実施形態による計測装置100は、単一の光検出素子およびラインセンサの両方を含む光検出器30を備えていてもよい。この計測装置100では、干渉光10Lの光路を変化させることにより、用途に応じて単一の光検出素子とラインセンサとを相互に切り替えて干渉光10Lを検出することができる。処理回路40は、複数の物体のおおまかな位置を知る場合、単一の光検出素子に干渉光10Lを検出させ、複数の物体の3次元的な位置をより正確に知る場合、ラインセンサに干渉光10Lを検出させる。あるいは、単一の光検出素子を含まず、ラインセンサを含む光検出器30でも、用途に応じて干渉光10Lを検出することが可能である。処理回路40は、複数の物体のおおまかな位置を知る場合、ラインセンサに含まれる複数の光検出素子からそれぞれ出力された複数のビート信号を平均化し、複数の物体の3次元的な位置をより正確に知る場合、当該複数のビート信号をそのまま用いる。
【0079】
図6Aは、道路を走行中の車両200から見た前方の対象シーンに向けて複数の照射ラインビーム10Lを出射する第3の例を模式的に示す図である。第3の例が第1の例とは異なる点は、Y方向に延びる第1照射ラインビーム10L2aから第4照射ラインビーム10L2dに加えて、Z方向に延びる第5照射ラインビーム10L2eから第8照射ラインビーム10L2hを対象シーンに向けて出射することである。水平方向に延びる照射ラインビーム10Lで対象シーンを鉛直方向にスキャンする場合、対象シーン内の下側では、近距離であることから、高い強度のビート信号が得られるという利点がある。第3の例では、第1の例と同様に、単一の光検出素子を含む光検出器30が、前述したように干渉光10Lを検出する。
【0080】
第5照射ラインビーム10L2eの照射スポットは、右端の街路樹の上部および先行車の上部を主に含む。第6照射ラインビーム10L2fの照射スポットは、左端の街路樹の上部、中央の街路樹の上部、右端の街路樹の中央部、および先行車の下部を主に含む。第7照射ラインビーム10L2gの照射スポットは、左端の街路樹の中央部、中央の街路樹の下部、および右端の街路樹の下部を主に含む。第8照射ラインビーム10L2hの照射スポットは、左端の街路樹の下部および歩行者を主に含む。
【0081】
図6Bは、図6Aに示す第3の例における、ビート信号の強度と、ビート信号の周波数から算出された距離との関係を模式的に示す図である。図6Bの上の4つの図は、図4Bの4つの図と同じであり、図6Bの下の4つの図は、第5照射ラインビーム10L2eから第8照射ラインビーム10L2hによって生じるビート信号を示している。第5照射ラインビーム10L2eにより距離dおよび距離dの2つのピークが現れる。第6照射ラインビーム10L2fにより距離dから距離dの4つのピークが現れる。第7照射ラインビーム10L2gにより距離dから距離dの3つのピークが現れる。第8照射ラインビーム10L2hにより距離dおよび距離dの2つのピークが現れる。
【0082】
距離dのピークは、第3照射ラインビーム10L2cおよび第8照射ラインビーム10L2hによって現れる。したがって、距離dの歩行者は、第3照射ラインビーム10L2cと第8照射ラインビーム10L2hとが重なる位置にいることがわかる。同様に、距離dの左端の街路樹は、第1照射ラインビーム10L2aと、第6照射ラインビーム10L2f、第7照射ラインビーム10L2g、および第8照射ラインビーム10L2hの各々とが重なる位置に存在することがわかる。距離dの中央の街路樹は、第2照射ラインビーム10L2bと、第6照射ラインビーム10L2fおよび第7照射ラインビーム10L2gの各々とが重なる位置に存在することがわかる。距離dの右端の街路樹は、第3照射ラインビーム10L2cと、第5照射ラインビーム10L2e、第6照射ラインビーム10L2f、および第7照射ラインビーム10L2gの各々とが重なる位置に存在することがわかる。距離dの先行車は、第4照射ラインビーム10L2dと、第5照射ラインビーム10L2eおよび第6照射ラインビーム10L2fの各々とが重なる位置に存在することがわかる。
【0083】
図4Aに示す第1の例では、物体が、照射ラインビーム10Lの照射スポット内のどの位置に存在するかまでは知ることができなかった。これに対して、図6Aに示す第3の例では、対象シーンを、Y方向に延びる照射ラインビームでZ方向にスキャンし、かつ、Z方向に延びる照射ラインビームでY方向にスキャンすることにより、物体の3次元的な位置をより正確に知ることができる。本実施形態による計測装置100によれば、第1照射ラインビーム10L2aから第8照射ラインビーム10L2hの既知の出射角から、単一の光検出素子であっても物体の3次元的な位置をより正確に知ることができる。
【0084】
次に、図7Aおよび図7Bを参照して、本実施形態における、フラッシュ光で対象シーンを照射する例を説明する。
【0085】
図7Aは、道路を走行中の車両200から見た前方の対象シーンに向けて照射フラッシュ光10Lを出射する例を模式的に示す図である。図7Aに示す破線の楕円は、照射フラッシュ光10Lの照射スポットを表す。図7Aに示す例では、光検出器30は、単一の光検出素子により、前述したように干渉光10Lを検出する。
【0086】
図7Bは、図7Aに示す例における、ビート信号の強度と、ビート信号の周波数から算出された距離との関係を模式的に示す図である。図7Bに示す例では、照射フラッシュ光により、距離dから距離dの5つのピークが現れる。本実施形態による計測装置100によれば、複数の物体をフラッシュ光で照射することにより、複数の物体までの距離を一度に計測することができる。
【0087】
次に、図8を参照して、図6Aに示す照射ラインビーム10Lおよび図7Aに示す照射フラッシュ光10Lから得られた結果に基づいた、本実施形態における複数の物体の測距動作および車両200の制御動作の例を説明する。図8は、本実施形態における複数の物体の測距動作および車両200の制御動作を示すフローチャートである。本実施形態における処理回路40は、以下のステップS201からステップS207の動作を実行する。以下の説明において、光検出器30は、単一の光検出素子を含む。
【0088】
<ステップS201>
処理回路40は、図7Aに示すように、発光装置10に、対象シーンに向けて照射フラッシュ光を出射させ、光検出器30に、単一の光検出素子により、照射フラッシュ光によって生じた複数の物体光ビーム10Lおよび参照光10Lの干渉光10Lを検出させて信号を出力させる。処理回路40は、図7Bに示すように、当該信号に基づいて、対象シーン内の複数の物体の距離に関するデータを生成して出力する。
【0089】
<ステップS202>
処理回路40は、ステップS201における物体の測距の結果に基づいて、車両200の近距離に物体が存在するか否かを判定する。このステップにおける近距離は、例えば、0.5m以上20m以下の範囲であり得る。物体が近距離に存在する、すなわちyesの場合、処理回路40は、ステップS203の動作を実行する。物体が近距離に存在しない、すなわちnoの場合、処理回路40は、ステップS204の動作を実行する。
【0090】
<ステップS203>
処理回路40は、車両200の制御回路に、衝突回避の信号を送信する。物体が対象シーンのどこに存在するかはわからなくても、停止などの衝突回避の行動により、車両200が物体に衝突することを防ぐことができる。
【0091】
<ステップS204>
処理回路40は、図6Aに示すように、発光装置10に、Y方向に延びる照射ラインビームで対象シーンをZ方向にスキャンさせ、光検出器30に、単一の光検出素子により、照射ラインビーム10Lによって生じた物体光ビーム10Lおよび参照光10Lの干渉光10Lを検出させて信号を出力させる。処理回路40は、図6Bの上の4つの図に示すように、当該信号に基づいて、対象シーン内の物体の距離に関するデータを生成して出力する。
【0092】
<ステップS205>
処理回路40は、ステップS204における物体の測距の結果に基づいて、車両200の近距離に物体が存在するか否かを判定する。このステップにおける近距離は、例えば、20m以上40m以下の範囲であり得る。物体が近距離に存在する、すなわちyesの場合、処理回路40は、ステップS206の動作を実行する。物体が近距離に存在しない、すなわちnoの場合、処理回路40は、ステップS207の動作を実行する。
【0093】
<ステップS206>
処理回路40は、車両200の制御回路に、衝突回避の信号を送信する。物体の対象シーン内での大まかな位置がわかれば、当該大まかな位置から左右に遠ざかるまたは停止するなどの衝突回避の行動により、車両200が物体に衝突することを防ぐことができる。
【0094】
<ステップS207>
処理回路40は、図6Aに示すように、発光装置10に、Z方向に延びる照射ラインビーム10Lで対象シーンをY方向にスキャンさせ、光検出器30に、単一の光検出素子により、照射ラインビーム10Lによって生じた物体光ビーム10Lおよび参照光10Lの干渉光10Lを検出させて信号を出力させる。処理回路40は、図6Bの下の図に示すように、当該信号に基づいて、対象シーン内の物体の距離に関するデータを生成して出力する。ステップS204およびステップS207において物体を測距した結果により、物体の3次元的な位置をより正確に知ることができる。
【0095】
ステップS207の代わりに、処理回路40は、発光装置10に、照射ラインビーム10Lよりも広がりの程度が小さい照射光ビームで対象シーンをY方向およびZ方向にスキャンさせ、光検出器30に、単一の光検出素子により、照射光ビームによって生じた物体光ビーム10Lおよび参照光10Lの干渉光10Lを検出させて信号を出力させてもよい。処理回路40は、当該信号に基づいて、対象シーン内の物体の距離に関するデータを生成して出力する。照射光ビームの既知の出射角から、物体の3次元的な位置をより正確に知ることができる。
【0096】
ステップS204およびステップS207における処理回路40の動作をまとめると以下のようになる。処理回路40は、光スキャナ50に照射ラインビーム10Lを出射させると共に、照射ラインビーム10Lの出射方向を、照射ラインビーム10Lが延びる方向に交差する方向に沿って変化させる。処理回路40は、光検出器30に、照射ラインビーム10Lで物体が照射されることによって生じた物体光10Lと参照光10Lとの干渉光10Lを検出させ、光検出器30から出力された信号に基づいて、物体の計測データを生成して出力する。
【0097】
ステップS202およびステップS205においてnoが選択された場合における処理回路40の動作をまとめると以下のようになる。処理回路40は、光スキャナ50に、あるモードによる計測動作を実行させ、当該モードによって取得された計測データを基に、他のモードによる計測動作への切り替えが必要か否かを判定する。その後、処理回路40は、当該他のモードによる計測動作への切り替えが必要と判定されたことを受けて、光スキャナ50に、当該他のモードによる計測動作を実行させる。
【0098】
ステップS202の場合、上記のあるモードは、例えば、照射フラッシュ光でのスキャンであり得る。上記の他のモードは、第1の方向に延びる照射ラインビームでの第2の方向に沿ったスキャンであり得る。ステップS205の場合、上記のあるモードは、例えば、第1の方向に延びる照射ラインビームでの第2の方向に沿ったスキャンであり得る。上記の他のモードは、例えば、第2の方向に延びる照射ラインビームでの第1の方向に沿ったスキャン、または照射光ビームでの第1方向および第2方向に沿ったスキャンであり得る。 光検出器30が、Y方向に延びるラインセンサを含む場合、ステップS201において、照射フラッシュ光10Lによって物体のY方向における位置を知ることができる。したがって、ステップS203において、車両200の衝突回避の行動をより正確に実行することができる。さらに、ステップS204において、図5Aに示すように、照射ラインビーム10Lによって物体の3次元的な位置をより正確に知ることができる。したがって、ステップS206において、車両200の衝突回避の行動をより正確に実行することができ、かつ、ステップS207の動作を省略することができる。
【0099】
以上のように、本実施形態による計測装置100は、光の広がりの程度、およびスキャン方向の異なる複数種類の計測動作が可能である。また、状況に応じて光の広がりの程度、およびスキャン方向を切り替えることにより、物体の計測データを効率的に取得できる。
【0100】
特に、本実施形態による計測装置100は、ラインビームを用いた計測動作が可能であるため、計測動作の高速化しつつ、複数物体の大まかな位置の区別が可能なFMCW-LiDARを実現することができる。
【0101】
また、本実施形態により計測装置100によれば、照射範囲の比較的広い光を用いて計測動作を実行し、所定条件を満たす物体をいち早く発見することにより、後段のシステムに素早く情報を提供することができる。さらに、光の広がりの程度、およびスキャン方向を切替えて次の計測動作を行うことにより、より詳細な物体の計測データを得ることができる。一例として、処理回路40は、ステップS204における照射ラインビーム10Lを用いた計測動作の前に、ステップS201における照射フラッシュ光10Lを用いて、照射ラインビーム10Lを用いた計測動作と同じ計測動作を実行し、その計測動作の結果に基づいて、ステップS204における計測動作を実行するか否かを決定する。照射フラッシュ光10Lを用いた計測動作により、車両200の衝突回避の行動を迅速に実行することができる。
【0102】
(第1の変形例)
次に、図9を参照して、本実施形態による計測装置100の第1の変形例を説明する。図9は、第1の変形例による計測装置300を模式的に示す図である。本変形例による計測装置300では、本実施形態による計測装置100と比べて、光スキャナ50の構成が異なる。具体的には、本変形例による計測装置300は、周波数可変である発光素子10と、光偏向器10と、ビームスプリッタ22とを備える。ビームスプリッタ22は、発光素子10と、光偏向器10との間の光路に配置されている。
【0103】
ビームスプリッタ22は、発光素子10からの光10Lを、参照光10Lと照射光10Lとに分離する。ビームスプリッタ22によって分離された照射光10Lは、例えばMEMSミラーを含む光偏向器10によって偏向され、空間に向けて出射される。物体で反射して戻った物体光10Lは、再び光偏向器10によって偏向される。光検出器30は、参照光10Lと物体光10Lとの干渉光Lを検出する。
【0104】
(第2の変形例)
次に、図10を参照して、本実施形態による計測装置100の第2の変形例を説明する。図10は、第2の変形例による計測装置400を模式的に示す図である。本変形例による計測装置400は、前述した計測装置100または計測装置300と、他のセンサ150とを備える。前述した実施形態においては、計測装置の計測動作モードを切り替える際、光スキャナ50に、先ずあるモードによる計測動作を実行させ、当該モードによって取得された計測データを基に、他のモードによる計測動作への切り替えが必要か否かを判定していた。本変形例では、計測装置の計測動作モードを切り替える際、他のセンサ150から取得した信号を基に、モードの切り替えが必要か否かを判定する。
【0105】
計測装置400の処理回路40は、他のセンサからの信号に基づき、用意された複数の計測動作モードのうちの何れかを選択する。そして、光スキャナ50に、選択されたモードによる計測動作を実行させる。
【0106】
他のセンサ150は、例えば、イメージセンサを含む物体認識システムであり得る。計測装置400は、物体認識システムの認識結果を基に、計測動作モードの切り替えを行う。認識結果は、物体のサイズ、位置、および種類のうちの少なくとも1つの情報を含んでもよい。
【0107】
(応用例)
本実施形態における計測装置100は、例えば、物体の測距システムに用いられ得る。そのような測距システムは、例えば自動車、UAV(Unmanned Aerial Vehicle、所謂ドローン)、またはAGV(Automated Guided Vehicle)などの移動体に搭載され、衝突回避技術の1つとして使用され得る。本実施形態における計測装置100を用いた測距システムでは、物体の距離分布を、距離に関して広いダイナミックレンジ、かつ高い分解能でスキャンおよび検出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本開示の実施形態における光デバイスは、例えば、自動車、UAV、もしくはAGVなどの車両に搭載される測距システムの用途に利用できる。
【符号の説明】
【0109】
10 発光装置
10L 光
10L 第1の光、参照光
10L 第2の光、照射光
10L 第3の光、物体光
10L 第4の光、干渉光
20 光学系
22 ビームスプリッタ
24 第1レンズ
24 第2レンズ
26 ミラー
30 光検出器
40 処理回路
50 光スキャナ
100、300、400 計測装置
200 車両
150 他のセンサ
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10