(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023099243
(43)【公開日】2023-07-12
(54)【発明の名称】溶接トランス
(51)【国際特許分類】
H01F 30/10 20060101AFI20230705BHJP
B23K 11/24 20060101ALI20230705BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20230705BHJP
【FI】
H01F30/10 P
B23K11/24 356
H01F30/10 C
H01F27/28 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020096994
(22)【出願日】2020-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大山 英俊
【テーマコード(参考)】
5E043
【Fターム(参考)】
5E043BA01
(57)【要約】
【課題】1次側コイルと2次側コイルとの間の絶縁耐圧の低下を抑制できる溶接トランスを提供する。
【解決手段】溶接トランス100は、複数の1次側単位コイル11が積層された1次側コイル10と複数の2次側単位コイル21が積層された2次側コイル20と磁性体コア40とを備えている。1次側及び2次側単位コイル11,21は、複数のコーナー部13,23を有する本体部12,22と、本体部12,22の両端から互いに間隔をあけて延びる第1端子部14,24及び第2端子部15,25と、をそれぞれ有している。複数のコーナー部13,23のそれぞれの内周面には、外周側に向かう凹部13a,23aが設けられている。1次側単位コイル11と2次側単位コイル21とが互いに絶縁された状態で交互に積層されている。
【選択図】
図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の導体からなる1次側単位コイルが複数積層された1次側コイルと、
板状の導体からなる2次側単位コイルが複数積層された2次側コイルと、
前記1次側コイル及び前記2次側コイルの内側に配置された磁性体コアと、を少なくとも備え、
前記1次側単位コイル及び前記2次側単位コイルは、
複数のコーナー部を有する略環状の本体部と、
前記本体部の両端から引き出されて、互いに間隔をあけて並列して同じ方向に延びる第1端子部及び第2端子部と、をそれぞれ有しており、
前記複数のコーナー部のそれぞれの内周面には、外周側に向かって凹む凹部が設けられており、
前記1次側単位コイルと前記2次側単位コイルとが、互いに絶縁された状態で交互に積層されていることを特徴とする溶接トランス。
【請求項2】
請求項1に記載の溶接トランスにおいて、
前記1次側コイルは、4枚の前記1次側単位コイルが直列接続されて単位回路を構成し、
前記2次側コイルは、2枚の前記2次側単位コイルが並列接続された並列接続構造を2組有し、2組の並列接続構造が直列接続されて単位回路を構成していることを特徴とする溶接トランス。
【請求項3】
請求項2に記載の溶接トランスにおいて、
前記1次側コイルは、前記単位回路毎に5つの外部端子を有し、前記5つの外部端子のうち、外部電源に接続される2つの外部端子の組み合わせを変更することで、前記単位回路内での前記1次側コイルのターン数が変更され、
前記2次側コイルは、3つの外部端子を有し、出力側に接続される2つの外部端子の組み合わせを変更することで、前記単位回路内での前記2次側コイルのターン数が変更されることを特徴とする溶接トランス。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の溶接トランスにおいて、
複数の前記1次側単位コイル及び前記2次側単位コイルのそれぞれの表面が絶縁シートで覆われていることを特徴とする溶接トランス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、溶接トランスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、溶接トランスにおいて、漏れインダクタンスを低減するために、1次側コイルと2次側コイルを交互に積層する構成が知られている(特許文献1,2,4参照)。
【0003】
また、金属板材からなる1ターンのコイル(以下、単位コイルと呼ぶことがある)を複数積層して1次側コイル及び2次側コイルをそれぞれ構成し、溶接トランスに適用する技術が広く知られている。この場合、1次側コイルと2次側コイルとの間で絶縁耐圧を確保するために、複数の単位コイルの間にそれぞれ絶縁シートを挟んで、1次側コイル及び2次側コイルをそれぞれ構成する構成が知られている(特許文献3,4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-200458号公報
【特許文献2】特開2000-223320号公報
【特許文献3】特開2005-277269号公報
【特許文献4】特開2002-175922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献3,4に開示されるように、1次側コイルの単位コイルと2次側コイルの単位コイルとを交互に積層することで、漏れインダクタンスを大きく低減させることができる。
【0006】
しかし、このような構成において、1次側コイルの単位コイルと2次側コイルの単位コイルとの間に、単に絶縁シートを設けただけでは、1次側コイルと2次側コイルとの間の絶縁耐圧が低下してしまうおそれがあることが、本願発明者等の検討により明らかとなった。
【0007】
本開示はかかる点に鑑みてなされたもので、その目的は、1次側コイルと2次側コイルとの間の絶縁耐圧の低下を抑制できる溶接トランスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本開示に係る溶接トランスは、板状の導体からなる1次側単位コイルが複数積層された1次側コイルと、板状の導体からなる2次側単位コイルが複数積層された2次側コイルと、前記1次側コイル及び前記2次側コイルの内側に配置された磁性体コアと、を少なくとも備え、前記1次側単位コイル及び前記2次側単位コイルは、複数のコーナー部を有する略環状の本体部と、前記本体部の両端から引き出されて、互いに間隔をあけて並列して同じ方向に延びる第1端子部及び第2端子部と、をそれぞれ有しており、前記複数のコーナー部のそれぞれの内周面には、外周側に向かって凹む凹部が設けられており、前記1次側単位コイルと前記2次側単位コイルとが、互いに絶縁された状態で交互に積層されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、1次側コイルと2次側コイルとの間の絶縁耐圧の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る溶接トランスを1次側外部端子から見た斜視図である。
【
図2】溶接トランスを2次側外部端子から見た斜視図である。
【
図6】
図3における左上に示す破線で囲まれた部分を分解した模式図である。
【
図8】
図3における右下に示す破線で囲まれた部分を分解した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0012】
(実施形態1)
[溶接トランスの構成]
図1は、実施形態に係る溶接トランスを1次側外部端子から見た斜視図を、
図2は、2次側外部端子から見た斜視図をそれぞれ示す。
図3は、溶接トランスの要部の分解斜視図を、
図4は、磁性体コアの分解斜視図をそれぞれ示す。
【0013】
なお、
図1~4において、
図1に示す固定具50の押さえ板51が設けられた側を上または上側と、その反対側である支持板52が設けられた側を下または下側と呼ぶことがある。
【0014】
図1,2に示すように、溶接トランス100は、1次側コイル10と2次側コイル20と磁性体コア40と固定具50とを有している。溶接トランス100は、例えば、溶接用インバータ電源(図示せず)の電圧変換部として用いられる。
【0015】
図1,3に示すように、1次側コイル10は、互いに直列接続された4枚の1次側単位コイル11毎に単位回路として構成されている。また、この単位回路は、5つの外部端子を有している。
図1に示す例では、1次側コイル10には2つの単位回路が含まれているが、特にこれに限定されない。1次側コイル10に含まれる単位回路の数は、1つでもよいし、3つ以上でもよい。溶接トランス100に求められる仕様に応じて適宜変更されうる。なお、1次側単位コイル11は、銅板からなる1ターンのコイルである。これについては後で詳述する。また、4枚の1次側単位コイル11の接続態様についても後で述べる。
【0016】
1次側コイル10は、外部電源、例えば、外部商用電源に接続される、いわゆる高圧側コイルである。5つの1次側外部端子10a~10eのうち、外部電源に接続される2つの端子の組み合わせを変更することで、単位回路内での1次側コイル10のターン数が変更される。例えば、1次側外部端子10aと1次側外部端子10eを外部電源に接続する場合、単位回路内での1次側コイル10のターン数は4ターンとなる。一方、1次側外部端子10aと1次側外部端子10bを外部電源に接続する場合、単位回路内での1次側コイル10のターン数は1ターンとなる。溶接トランス100に求められる仕様に応じて、外部電源に接続される2つの端子の組み合わせ、ひいては、単位回路内での1次側コイル10のターン数を変更することができる。
【0017】
2次側コイル20は、4枚の2次側単位コイル21毎に単位回路として構成されている。また、この単位回路は、3つの2次側外部端子20a~20cを有している。2次側外部端子20a~20cには、他の回路との接続用配線が接続される外部接続用穴20a1~20c1がそれぞれ設けられている。
【0018】
2次側コイル20に含まれる単位回路の数は、基本的に1次側コイル10に含まれる単位回路の数と同じである。なお、1次側単位コイル11と同様に、2次側単位コイル21も銅板からなる1ターンのコイルである。これについては後で詳述する。また、4枚の2次側単位コイル21の接続態様についても後で述べる。
【0019】
2次側コイル20は、インバータ電源の内部バスバー配線(図示せず)や半導体電力変換器等の内部回路(図示せず)に接続される、いわゆる低圧側コイルである。2次側外部端子20a~20cのうち、出力側であるインバータ電源の内部バスバー配線または内部回路に接続される2つの端子の組み合わせを変更することで、単位回路内での2次側コイル20のターン数が変更される。例えば、2次側外部端子20aと2次側外部端子20cを出力側に接続する場合、単位回路内での2次側コイル20のターン数は4ターンとなる。一方、2次側外部端子20aと2次側外部端子20bを出力側に接続する場合、単位回路内での1次側コイル10のターン数は2ターンとなる。2次側外部端子20cと2次側外部端子20bを出力側に接続する場合も同様に、単位回路内での1次側コイル10のターン数は2ターンとなる。つまり、2次側外部端子20bは中間タップ端子に相当する。溶接トランス100に求められる仕様に応じて、出力側に接続される2つの端子の組み合わせ、ひいては、単位回路内での2次側コイル20のターン数を変更することができる。
【0020】
図4に示すように、磁性体コア40は、2つのE字型コア41,42を組み合わせて構成される。なお、実際には、4つの磁性体コア40を並列に並べて用いている。ただし、これに特に限定されず、溶接トランス100のサイズ、特に、1次側コイル10及び2次側コイル20のサイズに応じて、用いられる磁性体コア40の数は適宜変更されうる。
【0021】
E字型コア41は、フェライト等の磁性体からなり、3つの凸部41a~41cとその間に設けられた溝部41d,41eとを有している。E字型コア42は、フェライト等の磁性体からなり、3つの凸部42a~42cとその間に設けられた溝部42d,42eとを有している。凸部41b,42bが1次側コイル10及び2次側コイル20の内側に配置される。また、溝部41d,42dと溝部41e,42eに、1次側コイル10及び2次側コイル20の本体部12,22(
図5A,5B及び
図7参照)の対向する2辺がそれぞれ収容される。
【0022】
なお、
図3において、磁性体コア40を図示していないが、1次側コイル10及び2次側コイル20の内側に、これらの内周面に沿うように、筒形の絶縁シート31を配置することで、磁性体コア40と1次側コイル10及び2次側コイル20との間の絶縁が確保される。
【0023】
固定具50は、押さえ板51と支持板52とを有している。支持板52に磁性体コア40が組み込まれた1次側コイル10と2次側コイル20の積層体が載置され、上から押さえ板51で当該積層体を押さえて、ねじ止め等の方法で支持板52に押さえ板51を接続する。このようにすることで、磁性体コア40が組み込まれた1次側コイル10と2次側コイル20の積層体が保持固定される。
【0024】
[1次側及び2次側単位コイルの構成]
図5Aは、第1単位コイルの平面図を、
図5Bは、第2単位コイルの平面図をそれぞれ示す。
図6は、
図3における左上に示す破線で囲まれた部分を分解した模式図を示す。
図7は、2次側単位コイルの平面図を示し、
図8は、
図3における右下に示す破線で囲まれた部分を分解した模式図を示す。
【0025】
図3に示すように、1次側単位コイル11には、第1単位コイル111と第2単位コイル112とが含まれている。また、
図6に示すように、第1単位コイル111は、さらに複数の同形状の銅板111a(例えば3枚)を1組として形成される。銅板111aのそれぞれの厚さは、0.4mm~1.0mm程度である。また、重ね合わされた3枚の銅板111aの間には、絶縁シート32がそれぞれ挟み込まれている。
図6に示す3枚の銅板111aと2枚の絶縁シート32の積層体を絶縁シート33で包み込み、さらに絶縁シート30で包み込んで、
図3に示す第1単位コイル111が構成される。
【0026】
また、図示しないが、第2単位コイル112も、複数の同形状の銅板(例えば3枚)を1組として形成される。銅板のそれぞれの厚さも、銅板111aの厚さと同様である。重ね合わされた3枚の銅板の間には、絶縁シート32がそれぞれ挟み込まれ、この積層体をさらに絶縁シート33で包み込み、さらに絶縁シート30で包み込んで、
図3に示す第2単位コイル112が構成される。
【0027】
なお、第1単位コイル111及び第2単位コイル112にそれぞれ含まれる銅板の枚数は、
図6に示す例に特に限定されず、1次側コイル10に許容される電気抵抗や1次側コイル10のターン数等に応じて、適宜変更されうる。
【0028】
また、第1単位コイル111と第2単位コイル112は、例えば、銅板を打ち抜き加工することで得られる。また、平角状の銅線をエッジワイス方向に曲げ加工して、第1単位コイル111及び第2単位コイル112を形成してもよい。ただし、この場合、後で述べる凹部13aや端子穴14a,15aは、別の加工を施して形成される。
【0029】
また、
図5A及び
図5Bに示すように、第1単位コイル111及び第2単位コイル112は、本体部12と第1端子部14と第2端子部15とをそれぞれ有している。
【0030】
本体部12は、略四角環状であり、4つのコーナー部13を有している。また、4つのコーナー部13の内周面には、外周側に向かって凹む凹部13aが、それぞれ形成されている。平面視で、凹部13aの外形は略円形状であり、凹部13aの曲率半径Rが、4つのコーナー部13で同じになるように凹部13aが形成される。言い換えると、凹部13aが形成されていない場合のコーナー部13の内周側頂部から等距離Rの範囲で本体部12が除去されるように凹部13aが形成されている。なお、第1単位コイル111及び第2単位コイル112のそれぞれで、凹部13aは、曲率半径Rが同じになるように形成されている。また、第1単位コイル111及び第2単位コイル112において、それぞれの本体部12の外形及びサイズは、互いに略同じになるように設定されている。
【0031】
第1端子部14及び第2端子部15は、本体部12の両端から引き出されて、互いに間隔をあけて並列して同じ方向に、この場合は、本体部12の両端を挟んで、本体部12と反対側に延びている。
【0032】
図5A,5Bに示すように、第1端子部14及び第2端子部15の配置が、第1単位コイル111と第2単位コイル112とで異なっている。
【0033】
図5Aに示すように、第1単位コイル111の第2端子部15は、本体部12の一辺の端部から延長して延びた部分である。また、第1端子部14は、第2端子部15と交差する方向に延びる本体部12の別の一辺の端部から、第2端子部15と間隔をあけて並列して延びている。
【0034】
一方、
図5Bに示すように、第2単位コイル112では、本体部12の両端は、第1端子部14及び第2端子部15の延在方向と交差する本体部12の一辺に互いに間隔をあけてそれぞれ設けられている。本体部12の一端から第1端子部14が、他端から第2端子部15が、それぞれ並列して延びている。
【0035】
第1単位コイル111と第2単位コイル112とをそれぞれの本体部12が重なるように配置した場合、平面視で、第1単位コイル111の第1端子部14は、第2単位コイル112の第2端子部15と重なる位置に設けられている。さらに言うと、第1単位コイル111の第1端子部14に設けられた端子穴14aと第2単位コイル112の第2端子部15に設けられた端子穴15aとが重なるように、第1単位コイル111の第1端子部14は、第2単位コイル112の第2端子部15の配置がそれぞれ設定されている。
【0036】
また、2枚の第2単位コイル112を、互いに表裏を反転させてそれぞれの本体部12が重なるように配置した場合、平面視で、一方の第2単位コイル112の第1端子部14は、他方の第2単位コイル112の第1端子部14と重なる位置に設けられている。さらに言うと、一方の第2単位コイル112の第1端子部14に設けられた端子穴14aと他方の第2単位コイル112の第1端子部14に設けられた端子穴14aとが重なるように、第2単位コイル112の第1端子部14の配置が設定されている。
【0037】
図7及び
図8に示す2次側単位コイル21は、第1単位コイル111及び第2単位コイル112と同様に、複数の同形状の銅板21a(例えば2枚)を1組として形成される。銅板21aのそれぞれの厚さは、0.4mm~1.0mm程度である。また、重ね合わされた2枚の銅板21aの間には、絶縁シート32が挟み込まれている。
図8に示す2枚の銅板111aと1枚の絶縁シート32の積層体をさらに絶縁シート33で包み込んで、
図3に示す2次側単位コイル21が構成される。
【0038】
なお、2次側単位コイル21に含まれる銅板21aの枚数は、
図8に示す例に特に限定されず、2次側コイル20に許容される電気抵抗や2次側コイル20のターン数等に応じて、適宜変更されうる。また、2次側単位コイル21は、第1単位コイル111や第2単位コイル112と同様の前述した方法で製造される。また、
図3に示す2次側単位コイル21は、
図7に示す平面形状のコイルを2枚積層して構成されている。ただし、特にこれに限定されず、2次側コイル20に許容される電気抵抗や電流の範囲に応じて適宜変更されうる。例えば、
図7に示す平面形状のコイルが1枚のみで2次側単位コイル21が構成されていてもよい。また、このことが、1次側単位コイル11にも当てはまることが言うまでもない。例えば、
図5Aに示す平面形状のコイルが2枚積層されて第1単位コイル111が構成されていてもよい。
図5Bに示す平面形状のコイルが2枚積層されて第2単位コイル112が構成されていてもよい。
【0039】
また、
図7に示すように、2次側単位コイル21は、第1単位コイル111及び第2単位コイル112と同様に、本体部22と第1端子部24と第2端子部25とをそれぞれ有している。
【0040】
本体部22の形状や4つのコーナー部23の内周面に凹部23aが設けられていることも、第1単位コイル111及び第2単位コイル112と同様である。また、凹部23aの曲率半径Rが、4つのコーナー部23で同じになるように、言い換えると、凹部23aが形成されていない場合のコーナー部23の内周側頂部から等距離Rの範囲で本体部22が除去されるように凹部23aが形成されていることも、第1単位コイル111及び第2単位コイル112と同様である。なお、2次側単位コイル21の凹部23aは、曲率半径Rが第1単位コイル111及び第2単位コイル112の凹部13aの曲率半径Rと同じになるように形成されている。また、2次側単位コイル21において、本体部22の外形及びサイズは、第1単位コイル111及び第2単位コイル112と略同じになるように設定されている。
【0041】
第1端子部24及び第2端子部25は、本体部22の両端から引き出されて、並列して互いに同じ方向に、この場合は、本体部22の両端を挟んで、本体部22と反対側に延びている。
【0042】
図7に示すように、2次側単位コイル21の第2端子部25は、本体部22の一辺の端部から延長して延びた部分である。また、第1端子部24は、第2端子部25と交差する方向に延びる本体部22の別の一辺の端部から、第2端子部25と間隔をあけて並列して延びている。
【0043】
2枚の2次側単位コイル21を、互いに表裏を反転させてそれぞれの本体部22が重なるように配置した場合、平面視で、一方の2次側単位コイル21の第2端子部25は、他方の2次側単位コイル21の第1端子部24と重なる位置に設けられている。さらに言うと、一方の2次側単位コイル21の第2端子部25に設けられた端子穴25aと他方の2次側単位コイル21の第1端子部24に設けられた端子穴24aとが重なるように、2次側単位コイル21の第1端子部24及び第2端子部25の配置がそれぞれ設定されている。
【0044】
[1次側及び2次側コイルの構成]
図3に示すように、1次側単位コイル11は、絶縁シート30で覆われている。また、前述した1次側単位コイル11及び2次側単位コイル21が有する複数の銅板のそれぞれの間に、絶縁シート32が挟み込まれている。1または複数の絶縁シート32と複数の銅板との積層体が、絶縁シート33で覆われている。この場合、図示しないが、絶縁シート33は、1枚の絶縁紙に複数個所の切り込みを入れて形成されている。切り込みの数や位置や長さは、1次側単位コイル11及び2次側単位コイル21のそれぞれの形状に対応しており、当該切り込み部分で絶縁シート33を折り曲げて、1次側単位コイル11及び2次側単位コイル21をそれぞれ包むようにする。このようにすることで、第1端子部14,24及び第2端子部15,25を除いて、1次側単位コイルのそれぞれの表面を完全に絶縁シート33と絶縁シート30とで覆うことができる。また、2次側単位コイル21のそれぞれの表面を完全に絶縁シート33で覆うことができる。
【0045】
また、1次側単位コイル11を覆う絶縁シート30には、折り返し部30aが設けられており、絶縁シート33に覆われた2次側単位コイル21の一部が、折り返し部30aに包み込まれる。ただし、折り返し部30aを設けることは必須ではなく、省略してもよい。
【0046】
また、
図3から明らかなように、1次側単位コイル11と2次側単位コイル21とが、絶縁シート30により互いに絶縁された状態で交互に積層されている。
【0047】
1次側コイル10を構成する第1単位コイル111と第2単位コイル112は、以下に示すように配置されている。
【0048】
上から順に、1枚目及び4枚目に第1単位コイル111が、2層目及び3層目に第2単位コイル112がそれぞれ配置されている。また、4枚目に配置された第1単位コイル111は、1枚目に配置された第1単位コイル111に対して裏向きに配置され、3枚目に配置された第1単位コイル111は、2枚目に配置された第1単位コイル111に対して裏向きに配置されている。
【0049】
第1単位コイル111と第2単位コイル112とをこのように配置することで、まず、4枚目の第1単位コイル111の第1端子部14と3枚目の第2単位コイル112の第2端子部15とを上面視で重ね合わせて、それぞれに設けられた端子穴14a,15aが重なるようにできる。図示しないねじ等を当該2つの端子穴14a,15aに通して締結することにより、1次側外部端子10bを形成することができる。同様に、3枚目の第2単位コイル112の第1端子部14と2枚目の第2単位コイル112の第1端子部14とを上面視で重ね合わせて、1次側外部端子10cを形成することができる。2枚目の第2単位コイル112の第2端子部15と1枚目の第1単位コイル111の第1端子部14とを上面視で重ね合わせて、1次側外部端子10dを形成することができる。なお、4枚目の第1単位コイル111の第2端子部15が1次側外部端子10aを構成し、1枚目の第1単位コイル111の第2端子部15が1次側外部端子10eを構成する。
【0050】
このようにすることで、第1単位コイル111と第2単位コイル112の2種類のみで、4枚の1次側単位コイル11が直列接続された構造を容易に形成することができる。
【0051】
また、2次側コイル20を構成する2次側単位コイル21は、以下に示すように配置されている。
【0052】
上から順に、1枚目及び2枚目に配置された2次側単位コイル21は、表裏が同じ向きになるように配置されている。3枚目及び4枚目に配置された2次側単位コイル21は、表裏が同じ向きになるように配置されている。一方、2枚目及び3枚目に配置された2次側単位コイル21は、表裏が反転して配置されている。
【0053】
4枚の2次側単位コイル21をこのように配置することで、まず、4枚目の2次側単位コイル21の第2端子部25と3枚目の2次側単位コイル21の第2端子部25とを上面視で重ね合わせて、それぞれに設けられた端子穴25aが重なるようにできる。ボルト61を当該2つの端子穴25aと2次側外部端子20aに設けられた貫通穴(図示せず)とに通して締結することにより、
図2に示すように、3枚目及び4枚目の2次側単位コイル21の第2端子部25と2次側外部端子20aとを接続することができる。
【0054】
同様に、4枚目の2次側単位コイル21の第1端子部24と3枚目の2次側単位コイル21の第1端子部24とを上面視で重ね合わせ、ボルト61、ワッシャ62及びナット63を用いて、3枚目及び4枚目の2次側単位コイル21の第1端子部24と2次側外部端子20bとを接続することができる。また、このようにすることで、3枚目の2次側単位コイル21と4枚目の2次側単位コイル21とが並列接続された並列接続構造26が構成される。
【0055】
また、3枚目及び4枚目の2次側単位コイル21の第1端子部24に対して、2枚目及び1枚目の2次側単位コイル21の第1端子部24が上面視で重ね合わせられ、それぞれに設けられた端子穴24aが重なるようにできる。よって、ボルト61、ワッシャ62及びナット63を用いて、
図2に示すように、1~4枚目の2次側単位コイル21の第1端子部24と2次側外部端子20bとを接続することができる。
【0056】
2枚目の2次側単位コイル21の第2端子部25と1枚目の2次側単位コイル21の第2端子部25とを上面視で重ね合わせて、それぞれに設けられた端子穴25aが重なるようにできる。ボルト61を当該2つの端子穴25aと2次側外部端子20cに設けられた貫通穴(図示せず)とに通して締結することにより、
図2に示すように、1枚目及び2枚目の2次側単位コイル21の第2端子部25と2次側外部端子20cとを接続することができる。
【0057】
また、このようにすることで、1枚目の2次側単位コイル21と2枚目の2次側単位コイル21とが並列接続された並列接続構造26が構成される。また、2組の並列接続構造26が直列接続される。
【0058】
[効果等]
以上説明したように、本実施形態に係る溶接トランス100は、銅板からなる1次側単位コイル11が複数積層された1次側コイル10と、銅板からなる2次側単位コイル21が複数積層された2次側コイル20と、1次側コイル10及び2次側コイル20の内側に凸部41b,42bが配置された磁性体コア40と、を少なくとも備えている。
【0059】
1次側単位コイル11は、複数のコーナー部13を有する略環状の本体部12と、本体部12の両端から引き出されて、互いに間隔をあけて並列して同じ方向に延びる第1端子部14及び第2端子部15と、をそれぞれ有している。複数のコーナー部13のそれぞれの内周面には、外周側に向かって凹む凹部13aが設けられている。
【0060】
2次側単位コイル21は、複数のコーナー部23を有する略環状の本体部22と、本体部22の両端から引き出されて、互いに間隔をあけて並列して同じ方向に延びる第1端子部24及び第2端子部25と、をそれぞれ有している。複数のコーナー部23のそれぞれの内周面には、外周側に向かって凹む凹部23aが設けられている。
【0061】
また、1次側単位コイル11と2次側単位コイル21とが、互いに絶縁された状態で交互に積層されている。
【0062】
溶接トランス100をこのように構成することで、1次側コイル10と2次側コイル20との間の絶縁耐圧の低下を抑制できる。このことについてさらに説明する。
【0063】
凹部13a,23aが設けられていない場合、1次側単位コイル11及び2次側単位コイル21のそれぞれのコーナー部13,23において、内周面は、輪郭が直角になるか、または曲率半径が小さく、輪郭が直角に近い曲面となる。この場合、1次側単位コイル11と2次側単位コイル21との間に、単に絶縁シート30,33を設けただけでは、コーナー部13,23において、内周面、特にその頂部に絶縁シート30,33を密着させることが難しくなる。そうすると、積層方向に隣り合う1次側単位コイル11及び2次側単位コイル21において、コーナー部13,23で絶縁耐圧が低下してしまう。ひいては、1次側コイル10と2次側コイル20との間の絶縁耐圧が低下してしまうおそれがあった。
【0064】
一方、本実施形態によれば、1次側単位コイル11及び2次側単位コイル21のそれぞれのコーナー部13,23において、内周面に外周側に向かって凹む凹部13a,23aを設けることにより、コーナー部13,23の内周面に絶縁シート30,33を容易に密着させることができる。
【0065】
このことにより、積層方向に隣り合う1次側単位コイル11と2次側単位コイル21との間で確実に絶縁を確保でき、ひいては、1次側コイル10と2次側コイル20との間の絶縁耐圧が低下するのを抑制できる。
【0066】
また、第1端子部14,24及び第2端子部15,25を除いて、1次側単位コイル11及び2次側単位コイル21の表面が、それぞれ絶縁シート30,33に包み込まれている。このようにすることで、積層方向に隣り合う1次側単位コイル11と2次側単位コイル21とが互いに絶縁されるとともに、1次側単位コイル11と2次側単位コイル21とを絶縁するための距離を短くできる。このことにより、1次側コイル10と2次側コイル20とを確実に絶縁できるとともに、溶接トランス100を小型化できる。なお、特許文献1に開示されたように、複数の切り込みを有する絶縁シート30、33を用いることで、1次側単位コイル11及び2次側単位コイル21のそれぞれの表面を確実に包み込んで覆うことができる。
【0067】
また、本実施形態によれば、コイルの表面のみに電流が集中する、いわゆる表皮効果の影響を低減することができる。
【0068】
コイルに発生する表皮効果の影響が大きくなると、コイルの温度上昇が大きくなり、これに応じて溶接トランス100での電力損失も大きくなってしまう。
【0069】
一方、本実施形態によれば、第1単位コイル111に含まれる複数の銅板111aのそれぞれが、絶縁シート32で覆われている。第2単位コイル112に含まれる複数の銅板のそれぞれが、絶縁シート32で覆われている。さらに2次側単位コイル21に含まれる複数の銅板21aのそれぞれが、絶縁シート32で覆われている。
【0070】
このようにすることで、表皮効果を抑制でき、コイルの温度上昇、ひいては溶接トランス100での電力損失の増大を抑制できる。
【0071】
また、本実施形態によれば、1次側コイル10を銅板からなる1次側単位コイル11が複数積層された構造とし、2次側コイル20を銅板からなる2次側単位コイル21が複数積層された構造としとしている。さらに、1次側単位コイル11と2次側単位コイル21とが、互いに絶縁された状態で交互に積層されている。
【0072】
このようにすることで、溶接トランス100における漏れインダクタンスを低減でき、溶接トランス100における電圧変換効率の低下を抑制できる。
【0073】
1次側コイル10は、4枚の1次側単位コイル11が直列接続されて単位回路を構成している。また、2次側コイル20は、2枚の2次側単位コイル21が並列接続された並列接続構造26を2組有し、2組の並列接続構造26が直列接続されて単位回路を構成している。
【0074】
また、1次側コイル10は、5つの1次側外部端子10a~10eを有し、2次側コイル20は、3つの2次側外部端子20a~20cを有している。
【0075】
1次側コイル10をこのように構成することで、溶接トランス100に求められる仕様に応じて、外部電源に接続される5つの1次側外部端子10a~10eのうちの2つの端子の組み合わせを変更して、単位回路内での1次側コイル10のターン数を変更することができる。また、2次側コイル20をこのように構成することで、溶接トランス100に求められる仕様に応じて、出力側に接続される3つの2次側外部端子20a~20cのうちの2つの端子の組み合わせを変更して、単位回路内での2次側コイル20のターン数を変更することができる。
【0076】
1次側単位コイル11は、第1単位コイル111及び第2単位コイル112の2種類の単位コイルで構成されている。
【0077】
第1単位コイル111と第2単位コイル112とをそれぞれの本体部12が重なるように配置した場合、平面視で、第1単位コイル111の第1端子部14は、第2単位コイル112の第2端子部15と重なる位置に設けられている。
【0078】
また、2枚の第2単位コイル112を、互いに表裏を反転させてそれぞれの本体部12が重なるように配置した場合、平面視で、一方の第2単位コイル112の第1端子部14は、他方の第2単位コイル112の第1端子部14と重なる位置に設けられている。
【0079】
このようにすることで、まず、4枚の1次側単位コイル11が直列接続された構造の1次側コイル10を低コストで製造することができる。例えば、特許文献2,3にも、4枚の単位コイルが直列接続された構造が開示されている。しかし、これらの場合、それぞれの単位コイルで端子部の位置が異なるため、4種類の単位コイルを準備する必要があった。
【0080】
一方、本実施形態によれば、特許文献2,3に開示された構成に比べて、1次側単位コイル11の種類を少なくできる。また、第1単位コイル111及び第2単位コイル112のそれぞれにおいて、第1端子部14及び第2端子部15を前述のように設けることで、異なるコイル間での配置調整が容易となり、1次側コイル10の組立が簡素化される。
【0081】
また、2枚の2次側単位コイル21を、互いに表裏を反転させてそれぞれの本体部22が重なるように配置した場合、平面視で、一方の2次側単位コイル21の第2端子部25は、他方の2次側単位コイル21の第1端子部24と重なる位置に設けられる。
【0082】
このようにすることで、2次側単位コイル21を1種類にできるとともに、異なるコイル間での配置調整が容易となり、2組の並列接続構造26が直接接続されてなる2次側コイル20の組立が簡素化される。
【0083】
なお、本実施形態において、1次側単位コイル11及び2次側単位コイル21がそれぞれ銅板からなる場合を例に取って説明したが、1次側コイル10及び2次側コイル20に許容される電気抵抗の範囲によっては、銅以外の材料を用いてもよい。つまり、1次側単位コイル11及び2次側単位コイル21がそれぞれ板状の導体であればよい。
【0084】
また、前述した表皮効果は、コイルに流れる電流が高周波電流であるか大電流であるか、あるいはその両方を満たす場合に顕著に発生する。
【0085】
アーク溶接等に用いられる溶接用インバータ電源では、インバータ周波数が数十kHz~数百kHz、例えば、40kHz~150kHz程度で、出力電流が数十A(アンペア)~数百A(アンペア)程度であることが多い。また、溶接用インバータ電源の小型化、高効率化の要望も大きくなっている。
【0086】
本実施形態の溶接トランス100は、表皮効果を低減し、かつ、1次側コイル10及び2次側コイル20を小型化できるため、このような溶接用インバータ電源に好適である。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本開示の溶接トランスは、高周波電流を出力する溶接用電源に適用する上で好適である。
【符号の説明】
【0088】
10 1次側コイル
10a~10d 1次側外部端子
11 1次側単位コイル
12 本体部
13 コーナー部
13a 凹部
14 第1端子部
15 第2端子部
20 2次側コイル
20a~20c 2次側外部端子
21 2次側単位コイル
22 本体部
23 コーナー部
23a 凹部
24 第1端子部
25 第2端子部
26 並列接続構造
30,31,32,33 絶縁シート
40 磁性体コア
41,42 E字型コア
50 固定具
51 押さえ板
52 支持板
61 ボルト
62 ワッシャ
63 ナット
100 溶接トランス
111 第1単位コイル
112 第2単位コイル