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▶ 何乃繊維株式会社の特許一覧

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  • 特開-エアフィルター 図1
  • 特開-エアフィルター 図2
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  • 特開-エアフィルター 図5
  • 特開-エアフィルター 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023099248
(43)【公開日】2023-07-12
(54)【発明の名称】エアフィルター
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/16 20060101AFI20230705BHJP
【FI】
B01D39/16 E
B01D39/16 A
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212350
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】521410810
【氏名又は名称】何乃繊維株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085257
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 有
(72)【発明者】
【氏名】高橋光弘
【テーマコード(参考)】
4D019
【Fターム(参考)】
4D019AA01
4D019BA13
4D019BB03
4D019BB10
4D019CA02
4D019CA03
(57)【要約】
【課題】 圧力損失が小さく塵の捕集効果が高い空気清浄機などに用いられるエアフィルターを提供する。
【解決手段】
溶融ポリマーをノズルから不織布シート2に向けて噴出することでナノファイバー層3が形成され、このナノファイバー層3の上に不織布シート4を重ねることで積層シート1となる。このシート1を渦巻き状にロールすることでエアフィルター5が形成される。エアフィルター5の一端面は空気の流入面6、他端面は流出面7となる。エアフィルター5の流入面6から入った空気はナノファイバーに沿って流れるリップフロー現象が生じ、圧力損失が小さくなる。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布シート表面にナノファイバー層が形成された積層シートをロールまたは重ねてなるエアフィルターであって、前記ナノファイバー層の積層方向と直交する方向の一端をフィルターへの空気の流入面とし、他端を空気の流出面としたことを特徴とするエアフィルター。
【請求項2】
請求項1に記載のエアフィルターにおいて、前記積層シートをロールまたは重ねた後に、ナノファイバー層の積層方向と平行な方向に沿って切断することで得られるエアフィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力損失が小さく塵の捕集効果が高い空気清浄機などに用いられるエアフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
空気清浄機などに用いられるエアフィルターとしてHEPA(High Efficiency Particulate Air Filter)が知られている。このHEPAフィルターはJIS規格で、定格風量で粒径0.3μmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率を有し、初期圧力損失が245Pa以下のものを指す。
【0003】
特許文献1には半導体、液晶、バイオ・食品工業関係のクリーンルーム若しくはクリーンベンチなどの空気浄化施設用途のエアフィルターとして、100nm~1μmの極細のセルロースナノファイバーを用いることで、エアフィルター用濾材中の単位体積あたりの繊維の本数が著しく増加し、気体中の粒子を捕捉しやすくなり、高い捕集性能を得ることが可能となる。また、スリップフロー効果によって、単繊維の通気抵抗が極めて低くなることが開示されている。
【0004】
特許文献2には、抗菌機能や抗ウイルス効果を備えたナノファイバーを用いたマスクについて記載されている。具体的には繊維径が400nm以下になると(ファンデルワールス力(分子間力)が強くなり、これによって菌やウイルスが繊維に固着されることが開示されている。
【0005】
特許文献3には、エアーノズルから吹き出した溶融ポリマーを不織布シートに吹き付けて、不織布シートの表面にナノファイバー層を形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-177091号公報
【特許文献2】WO2015/145880
【特許文献3】特開2016-156114号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献には、エアフィルターとして、100nm~1μmの極細のセルロースナノファイバーを用いること、スリップフローによって圧力損失を少なくすることができること、繊維径が細くなるとファンデルワールス力によって微細粒子が繊維表面に捕捉されること、不織布シート表面にナノファイバー層を形成することが開示されている。
【0008】
しかしながら、上記の既知事項を全て集合しても現在のエアフィルターよりも圧力損失が小さく塵の捕集効果が高いエアフィルターを得ることはできない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解消するため、本発明に係るエアフィルターは、不織布シート表面にナノファイバー層が形成された積層シートをロールまたは重ねてなるエアフィルターであって、前記ナノファイバー層の積層方向と直交する方向の一端をフィルターへの空気の流入面とし、他端を空気の流出面とした。
【0010】
エアフィルターとしては、積層シートをロールまたは重ねた後にナノファイバー層の積層方向と平行な方向に切断したものでもよい。このようにすることで、量産に有利となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るエアフィルターは、繊維に沿って空気が流れるスリップフローを利用しているため、圧力損失が小さく、消費電力を削減することができる。
【0012】
本発明に係るエアフィルターは繊維径が細いためファンデルワールス力によって微粒子を捕集するため、コロナウイルスPM2.5 などの微細粒子も効率よく捕集できる。静電気を用いて塵を捕集している従来例は、捕集効果を発揮するのが数時間であるため捕集効率が悪い。
【0013】
従来のエアフィルターは目詰まりを起こしやすく、逆洗をかけてもエアフィルターに捕捉された微粒子を落としにくいが、本発明に係るエアフィルターはロールまたは重ねた状態から積層シートを元の平板状に戻し、この状態で不織布シート側から圧をかける逆洗を行うことで、容易に目詰まりを解消することができる。
【0014】
従来は使い捨てのエアフィルターが多く、環境汚染を引き起しているが、本発明に係るエアフィルターは水洗いにより再使用が可能で、環境汚染を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係るエアフィルターの材料となる積層シートの斜視図
図2】積層シートをロールして得られるエアフィルターの側面図
図3図2に示したエアフィルターの端面図
図4】本発明に係るエアフィルターの空気の流れを説明した図
図5】別実施例に係るエアフィルターの斜視図
図6】本発明に係るエアフィルター洗浄効果を従来と比較して説明した図
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明の実施例を説明する。
図1は本発明に係るエアフィルターの材料となる積層シートであり、積層シート1は通気性の不織布シート2の表面にナノファイバー層3が積層され、更にナノファイバー層3の上に別の不織布シート4が積層されている。
【0017】
積層シート1の製造方法は、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル、ナイロン6などのポリアミド、ポリエチレンなどのポリオレフィンなどポリマーを溶融し、この溶融ポリマーをノズルから不織布シート2に向けて噴出する。
【0018】
噴出の例としては、不織布シート2に向かって吹き出されたエアの中にノズルの先端を臨ませ、このノズル先端から気流中に溶融ポリマーを供給する。すると、供給された溶融ポリマーは直径400nm以下の繊維となって不織布シート2表面に吹き付けられ、ナノファイバー層3が形成される。
【0019】
この後、ナノファイバー層3の上に不織布シート4を重ねることで積層シート1となる。不織布シート4は必ずとも必要ではないが不織布シート4でナノファイバー層3をカバーすることで取り扱いが容易になる。
【0020】
図2及び図3に示すように、前記積層シート1を渦巻き状にロールすることで本発明に係るエアフィルター5が形成される。エアフィルター5の一端面は空気の流入面6、他端面は流出面7となる。
【0021】
エアフィルター5は積層シート1を渦巻き状にロールしているため、図4に示すように、積層シート1の長さ方向の繊維専有面積が厚み方向の繊維専有面積がよりも小さいため、エアフィルター5の流入面6から入った空気はナノファイバーに沿って流れるスリップフロー現象が生じ、圧力損失が小さくなる。
【0022】
エアフィルター5の長さを変えることで捕集効率を調整することができる。また、エアフィルター5を径方向、即ちナノファイバー層の積層方向と平行な方向に切断することで、1本のエアフィルター5を複数のエアフィルターに分割することができる。
【0023】
積層シート1を渦巻き状にロールする前に、オートクレーブ処理(高圧蒸気処理)することも可能である。オートクレーブ処理の条件は、例えば、121℃で20分とする。このオートクレーブ処理により、ナノファイバーのストレス(捻じれや偏り)が解消され、スリップフロー現象が助長され、菌及びウイルスなどの微細粒子の捕集効率が高まる。
【0024】
図5は別実施例に係るエアフィルターであり、この実施例ではロール状とせずに平面的に折り返すことでエアフィルター5としている。先の実施例では全体が筒状であったが、この実施例では矩形状のエアフィルター5となる。適応場所に合わせていずれかを選択することができる。
【0025】
図6は本発明に係るに係るエアフィルター5の逆洗方法を従来と比較した図である。従来にあっては微粒子が繊維の間に挟まった逆洗をかけても目詰まりは解消し難かったが、本発明にあっては、ファンデルワールス力により繊維の表面に保持されているので、逆洗をかけることで、簡単に微粒子を落とすことができる。
【0026】
また、水洗いの場合も同様にファンデルワールス力により繊維の表面に保持された微粒子が落ちやすいので、エアフィルターの再利用が図れる。
【符号の説明】
【0027】
1…積層シート、2、4…不織布シート、3…ナノファイバー層、5…エアフィルター、6…空気の流入面、7…空気の流出面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-01-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布シート表面にナノファイバー層が形成された積層シートをロールまたは重ねてなり、前記ナノファイバー層の積層方向と直交する方向の一端をフィルターへの空気の流入面とし、他面を空気の流出面としたエアフィルターであって、前記積層シートはロールまたは重ねる前にオートクレーブ処理されることでナノファイバーの捻じれや偏りが解消されていることを特徴とするエアフィルター。
【請求項2】
請求項1に記載のエアフィルターにおいて、前記積層シートの長さ方向の繊維専有面積が厚み方向の繊維専有面積よりも小さくエアフィルターの流入面から入った空気はナノファイバーに沿って流れるスリップフロー現象を生じ、また捕集効率を調整可能とすべくナノファイバー層の積層方向と平行な方向に切断可能とされていることを特徴とするエアフィルター。