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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023099259
(43)【公開日】2023-07-12
(54)【発明の名称】オフセット支持車輪
(51)【国際特許分類】
   B60B 33/08 20060101AFI20230705BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20230705BHJP
   B61B 13/10 20060101ALI20230705BHJP
   F16L 55/40 20060101ALI20230705BHJP
【FI】
B60B33/08 A
G02B23/24 A
G02B23/24 B
B61B13/10
F16L55/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021215475
(22)【出願日】2021-12-30
(71)【出願人】
【識別番号】390000804
【氏名又は名称】白山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138519
【弁理士】
【氏名又は名称】奥谷 雅子
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 茂男
【テーマコード(参考)】
2H040
【Fターム(参考)】
2H040AA02
2H040DA55
2H040GA02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】流体圧で移動できるように軽量、すなわち簡単な構造で、いくつものエルボを通過可能であり、かつ、配管内の障害物を踏破する能力も高い、管内移動装置を提供すること
【解決手段】球体状の車輪10と、車輪10の中心を貫通する車軸16であって、車輪10が車軸16の中心軸回りに回転する車軸16とを備えるオフセット支持車輪1であって、車輪10は、車軸16方向に、略半球状の第1半球部12と、第1半球部12と反対側に位置する略半球状の第2半球部14と、第1半球部12と第2半球部14との間に位置する中心部材18とを備え、テザー100が、中心部材18の車軸16からオフセットした位置で、オフセット支持車輪1の進行方向に拘束される、オフセット支持車輪1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
球体状の車輪と、
前記車輪の中心を貫通する車軸であって、前記車輪が当該車軸の中心軸回りに回転する車軸とを備えるオフセット支持車輪であって;
前記車輪は、前記車軸方向に、略半球状の第1半球部と、前記第1半球部と反対側に位置する略半球状の第2半球部と、前記第1半球部と前記第2半球部との間に位置する中心部材とを備え、
テザーが、前記中心部材の前記車軸からオフセットした位置で、前記オフセット支持車輪の進行方向に拘束される、
オフセット支持車輪。
【請求項2】
前記中心部材は、前記第1半球部と前記第2半球部と滑らかな球面を形成する、外形を有する;
請求項1に記載のオフセット支持車輪。
【請求項3】
前記中心部材は、前記第1半球部および前記第2半球部の略半球状の半径より小さな外形を有する;
請求項1に記載のオフセット支持車輪。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載のオフセット支持車輪である第1オフセット支持車輪と;
第2オフセット支持車輪であって、
球体状の車輪と;
前記車輪の中心を貫通する車軸であって、前記車輪が当該車軸の中心軸回りに回転する車軸とを備え;
前記車輪は、前記車軸方向に、略半球状の第1半球部と、前記第1半球部と反対側に位置する略半球状の第2半球部と、前記第1半球部と前記第2半球部との間に位置する中心部材とを備える、第2オフセット支持車輪と;
前記第1オフセット支持車輪と前記第2オフセット支持車輪とを連結する弾性ロッドであって、前記第1オフセット支持車輪の中心部材と前記第2オフセット支持車輪の中心部材とを、それぞれにおいて前記車軸からオフセットした位置で連結する弾性ロッドとを備える;
連結オフセット支持車輪。
【請求項5】
前記第2オフセット支持車輪の中心部材に配管状態モニタ用機器を有し;
前記テザーは、前記配管状態モニタ用機器との信号のための通信線および前記配管状態モニタ用機器へ電力を供給する電力線を含む;
請求項4に記載の連結オフセット支持車輪。
【請求項6】
第3オフセット支持車輪であって、
球体状の車輪と;
前記車輪の中心を貫通する車軸であって、前記車輪が当該車軸の中心軸回りに回転する車軸とを備え;
前記車輪は、前記車軸方向に、略半球状の第1半球部と、前記第1半球部と反対側に位置する略半球状の第2半球部と、前記第1半球部と前記第2半球部との間に位置する中心部材とを備える、第3オフセット車輪とを備え;
前記弾性ロッドが、前記第1オフセット支持車輪と前記第2オフセット支持車輪との間で、前記第3オフセット支持車輪の前記中心部材の外周上で固定される;
請求項4または請求項5に記載の連結オフセット支持車輪。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管内を移動する車輪に関し、特に、配管の曲がりを通過しやすい車輪に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス、水道などのライフラインや工場プラント内で使用される配管の点検・保守のために、配管内を走行する移動装置が使用される。移動装置は、外部電源から電力を供給する電力線、移動装置の動作信号を伝達する信号線、先端カメラやセンサからの情報を外部に伝送する信号線、あるいは、流体チューブなどを束ねたテザー(誘導線)を牽引する。
【0003】
しかし、配管内移動装置がいくつものエルボ(屈曲部)を通過すると、テザーがそのエルボと擦れて摩擦力が生成されてしまう。そしてこのテザーが受ける摩擦力はオイラーのベルト理論から、エルボの屈曲角の総和に対し指数関数的に増加する。そのためエルボを何回か通過すると著しく大きな抵抗力となって配管内移動装置の推進を妨害する。
【0004】
配管内で牽引されるテザーの牽引抵抗を減らすために、放射状に車輪を付ける配管内移動装置が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1のように車輪が放射状に配置されていると、テザーがどのような姿勢であってもいずれかの車輪が配管内壁に接触し、抵抗を少なくして走行が可能となる。しかし、このような装置とするためには、全方向に車輪を多数配置し、最低でも3個以上配置する必要がある。その結果、配管内移動装置が重くなり、また車輪の直径は配管の少なくとも1/2以下とする必要があり、配管内の障害物を踏破する能力が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-84728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された発明では、検索部材で配管内移動装置を引き出すことを前提としており、予め検索部材を配管内に引いておく必要がある。しかし、検索部材を引いておくことができない配管において、管内を流体圧で移動させる管内移動装置で点検・保守を行うという要求も多いのが実情である。
【0007】
そこで、本発明は流体圧で移動できるように軽量、すなわち簡単な構造で、いくつものエルボを通過可能であり、かつ、配管内の障害物を踏破する能力も高い、管内移動装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係るオフセット支持車輪は、例えば図1および図2に示すように、球体状の車輪10と、車輪10の中心を貫通する車軸16であって、車輪10が車軸16の中心軸回りに回転する車軸16とを備えるオフセット支持車輪1であって、車輪10は、車軸16方向に、略半球状の第1半球部12と、第1半球部12と反対側に位置する略半球状の第2半球部14と、第1半球部12と第2半球部14との間に位置する中心部材18とを備え、テザー100が、中心部材18の車軸16からオフセットした位置で、オフセット支持車輪1の進行方向に拘束される。
【0009】
このように構成すると、テザーを牽引するオフセット支持車輪は、車軸からオフセットした位置でテザーを牽引するので、直管部ではテザーの重みによりテザーの位置が下方となり、車輪の中心部材側(直径が最も大きくなる側)が配管内面に接して中心軸回りに回転するので滑らかな車輪の回転で移動可能となる。また、エルボ部では、テザーを牽引する力によりテザーの位置がエルボの内側に位置することになる。そのため、車輪の中心部材側(直径が最も大きくなる側)がエルボ内面に接して車軸周りに回転するので滑らかな車輪の回転でエルボを通過可能である。しかも、オフセット支持車輪は、球体状の車輪の車軸に対しオフセットした位置でテザーを牽引するという簡単な構造で、軽量に製作可能で、さらに車輪が全体として球体状であるので、管径に対し大きな球体状とすることが可能で、配管内の障害物を踏破する能力も高くなる。また、この球体状の車輪が流体圧を受けることにより、容易に推力が生成される。
【0010】
本発明の第2の態様に係るオフセット支持車輪2は、例えば図3に示すように、中心部材28は、第1半球部12と第2半球部14と滑らかな球面を形成する、外形を有する。このように構成すると、中心部材が、第1半球部と第2半球部と滑らかな球面を形成する外形を有するので、車輪がほぼ球体となり、オフセット支持車輪はどのような角度に傾斜してもテザーの位置を下方にするように回転しやすい。
【0011】
本発明の第3の態様に係るオフセット支持車輪1は、例えば図1に示すように、中心部材18は、第1半球部12および第2半球部14の略半球状の半径より小さな外形を有する。このように構成して、中心部材が小さな寸法を有して溝状部分を形成するような形状であっても、車輪全体としては、球体状を形成するので、オフセット支持車輪はどのような角度に傾斜してもテザーの位置を下方にするように回転しやすい。
【0012】
本発明の第4の態様に係る連結オフセット支持車輪3は、例えば図4および図5に示すように、第1ないし第3何れかの態様のオフセット支持車輪である第1オフセット支持車輪4と、第2オフセット支持車輪5であって、球体状の車輪50と、車輪50の中心を貫通する車軸16であって、車輪50が当該車軸16の中心軸回りに回転する車軸16とを備え、車輪50は、車軸16方向に、略半球状の第1半球部12と、第1半球部12と反対側に位置する略半球状の第2半球部14と、第1半球部12と第2半球部14との間に位置する中心部材58とを備える、第2オフセット支持車輪5と、第1オフセット支持車輪4と第2オフセット支持車輪5とを連結する弾性ロッド110であって、第1オフセット支持車輪4の中心部材48と第2オフセット支持車輪5の中心部材58とを、それぞれにおいて車軸16からオフセットした位置で連結する弾性ロッド110とを備える。
【0013】
このように構成すると、第1オフセット支持車輪と第2オフセット支持車輪とが弾性ロッドで連結されるので、エルボを通過する際に弾性ロッドが曲げられ、直線に戻ろうとする力が第1オフセット支持車輪と第2オフセット支持車輪に作用する。すなわち、第1オフセット支持車輪と第2オフセット支持車輪とには、配管内壁から球体状の車輪の中心に向けて反力が作用する。一方、弾性ロッドは車輪の中心(車軸)からはオフセットした位置に連結されているので、反力と弾性ロッドからの力が同一線上になるように、すなわち、弾性ロッドが連結された位置がエルボの屈曲中心点に近い側の配管内壁となるように、オフセット支持車輪は姿勢を変える。そのため、車輪の中心部材側(直径が最も大きくなる側)がエルボ内面に接して車軸周りに回転するので滑らかな車輪の回転でエルボを通過可能である。
【0014】
本発明の第5の態様に係る連結オフセット支持車輪3は、例えば図4および図5に示すように、第1オフセット支持車輪40の中心部材48に配管状態モニタ用機器120を有し、テザー100は、配管状態モニタ用機器120との信号のための通信線および配管状態モニタ用機器120へ電力を供給する電力線を含む。このように構成すると、配管内を移動しやすい連結オフセット支持車輪に配管状態モニタ用機器が備えられ、テザーにて外部との信号通信および外部からの電力供給を行えるので、管内点検を行いやすい。
【0015】
本発明の第6の態様に係る連結オフセット支持車輪6は、例えば図7(A)に示すように、第3オフセット支持車輪7であって、球体状の車輪70と、車輪70の中心を貫通する車軸16であって、車輪70が当該車軸16の中心軸回りに回転する車軸16とを備え、車輪70は、車軸16方向に、略半球状の第1半球部12と、第1半球部12と反対側に位置する略半球状の第2半球部14と、第1半球部12と前記第2半球部14との間に位置する中心部材78とを備える、第3オフセット車輪7とを備え、弾性ロッド110が、第1オフセット支持車輪4と第2オフセット支持車輪5との間で、第3オフセット支持車輪7の中心部材78の外周上で固定される。
【0016】
このように構成すると、弾性ロッドが第3オフセット支持車輪の外周上で固定され、その両端は第1オフセット支持車輪と第2オフセット支持車輪とに連結されるので、弾性ロッドの直線に戻ろうとするばね力が第1オフセット支持車輪と第2オフセット支持車輪とに作用し、第3オフセット支持車輪には逆向きの力が作用する。そのため、エルボを通過する際には、それらの力により、第3オフセット支持車輪がエルボの曲がりの外側に押し付けられるように、連結オフセット支持車輪は姿勢を変える。そのため、車輪の中心部材側(直径が最も大きくなる側)がエルボ内面に接して車軸周りに回転するので滑らかな車輪の回転でエルボを通過可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、オフセット支持車輪は、球体状の車輪と、車輪の中心を貫通する車軸であって、車輪が車軸の中心軸回りに回転する車軸とを備えるオフセット支持車輪であって、車輪は、車軸方向に略半球状の第1半球部と、第1半球部と反対側に位置する略半球状の第2半球部と、第1半球部と第2半球部との間に位置する中心部材とを備え、テザーが、中心部材の車軸からオフセットした位置で、オフセット支持車輪の進行方向に拘束されるので、車輪の中心部材側が配管内面に接して車軸周りに回転し、滑らかな車輪の回転で移動可能となる。また、連結オフセット支持車輪では、弾性ロッドのばね力により、車輪の中心部材側がエルボ内面に接して車軸周りに回転するので滑らかな車輪の回転でエルボを通過可能である。よって、簡単な構造で、いくつものエルボを通過可能であり、かつ、配管内の障害物を踏破する能力も高い管内移動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明によるオフセット支持車輪の一実施形態の斜視図である。
図2図2は、図1に示すオフセット支持車輪の側面図である。
図3図3は、図1に示すオフセット支持車輪の変形例の斜視図である。
図4図4は、本発明による連結オフセット支持車輪の一実施形態の斜視図であって、2つの車輪を有する例である。
図5図5は、図4に示す連結オフセット支持車輪の側面図である。
図6図6は、図4に示す連結オフセット支持車輪がエルボを通過する際の動作の説明図である。
図7図7は、本発明による連結オフセット支持車輪の一実施形態の斜視図であって、3つの車輪を有する例のオフセット支持車輪がエルボを通過する際の動作の説明図である。
図8図8は、図7に示す連結オフセット支持車輪がレデューサを通過する際の動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において、互いに同一または相当する装置には同一符号を付し、重複した説明は省略する。先ず、図1を参照して、本発明によるオフセット支持車輪1について説明する。オフセット支持車輪1は、配管内を流体圧で移動する管内移動装置として使用可能な車輪である。オフセット支持車輪1は、球体状の車輪10と、車輪10の中心を貫通する車軸16を備える。車輪10は車軸16回りに回転可能である。車輪10は、略半球状の第1半球部12と、第略半球状の第2半球部14と、第1半球部12と第2半球部14との間に位置する中心部材18とを備える。第1半球部12と第2半球部14とは、通常は面対称な形状とされるが、これには限られない。少なくとも第1半球部12と第2半球部14とは、車軸16回りに回転可能である。中心部材18は車軸16回りに回転可能であっても、車軸16と固定されていてもよい。中心部材18には、貫通する車軸と直交方向に貫通孔19が、車軸16からオフセットした位置に形成される。貫通孔19にはテザー100が挿入され、その挿入方向の移動を拘束される。テザー100は、貫通孔19に固定されても、長手軸回りに回転可能とされてもよい。貫通孔19ではなく、テザー100が挿入されて拘束されるが貫通していない穴であってもよい。
【0020】
第1半球部12と第2半球部14とは、略半球状である。ここで、略半球状とは、中心角で180°の半球に対し、中心角が180°未満である場合を含み、例えば、中心角は90°、120°、150°、170°、あるいはこれらの間の角であってもよい。第1半球部12と第2半球部14とが中心部材18を挟んで対称に配置されることにより、車輪10は球体状となる。ここで、「球体状」とは完全な球体であってもよいし、完全な球体ではなく、図1に示されるように、略半球状の第1半球部12と第2半球部14に挟まれた中心部材18が小さな外周を有し、溝を形成するような形状をも含む。なお、中心部材18の外周は、円形には限られず、多角形でもよく、あるいは、外周が連続した面を有さず、例えば複数の棒部材で形成されてもよい。棒部材で形成される場合には、貫通孔19が形成されず、棒部材でテザー100を拘束してもよい。
【0021】
車輪10は、オフセット支持車輪1が管内移動装置として使用される配管の内径より僅かに小さな外径とされることにより、配管内に挿入され、片側から流体圧を掛けられることにより配管内を移動する。また配管内に溶接部の突起などの障害物があっても通過可能である。すなわち、球体状であるので、ほぼ配管内径と同じ外径を有していてもよい。
【0022】
図2の側面図でより明確に示されるように、オフセット支持車輪1では、テザー100が中心部材18の車軸16からオフセットした位置とされる。すなわち、車輪10の回転中心からオフセットした位置となる。オフセットされているので車輪10がテザー100を牽引しながらエルボを通過しようとすると、テザー100を牽引する力が車輪10のオフセットした位置に作用し、車輪10はテザー100を拘束する位置が配管に接する箇所に近くなる。そのため、車輪10の中心部材18側、すなわち、直径が最も大きくなる側で第1半球部12と第2半球部14が配管に接して車軸16回りに回転するので滑らかな車輪の回転で移動できる。また、エルボを通過する際には、テザー100のけん引力によって車輪10は、車軸16が接している配管内面に直交するように斜めに傾斜することになる。その際に、車輪10が球体状であるので、どのような角度にでも容易に傾斜することができる。そのために、車輪10の中心部材18側で第1半球部12と第2半球部14は、車軸16回りに回転しながら配管内面上を転がり進行することになる。すなわち、滑らかに進行することができる。この動作は、次のエルボが曲がりの方向が異なっていても同様である。すなわち、複数の向きの違うエルボがあっても、同様に滑らかに進行することができる。
【0023】
このように、オフセット支持車輪1によれば、簡単な構造で、すなわち軽量となり、配管内にブロワ等で空気を流すことにより、あるいはポンプ等で液体を流すことにより、配管内でオフセット支持車輪1を容易に進行させることができる。また、いくつものエルボを通過可能である。さらに、車輪10、すなわちオフセット支持車輪1は、ほぼ配管内径と同じ外径を有していてもよいので、大径とすることができ、配管内の障害物を踏破する能力も高い。なお、オフセット量は、配管の内径、車輪10の外径、エルボの曲率半径等により適宜設定される。
【0024】
図3にオフセット支持車輪1の変形例としてのオフセット支持車輪2の斜視図を示す。オフセット支持車輪2では、中心部材28が第1半球部12と第2半球部14と滑らかな球面を形成する、外形を有する。滑らかな球面では、第1半球部12と中心部材28、中心部材28と第2半球部14の境に多少の段差や溝があっても、全体的に滑らかであればよい。このように構成すると、車輪20、すなわちオフセット支持車輪2は、車軸16が接している配管内面に直交するように、より傾斜しやすくなる。オフセット支持車輪2では、中心部材28が配管内面に接して車軸16回りに回転しながら配管内面上を転がり進行することになる。
【0025】
次に、図4および図5を参照して、本発明によるテザー先端に取り付けられる連結オフセット支持車輪3について説明する。連結オフセット支持車輪3は、2つの車輪を有する例で、オフセット支持車輪1またはオフセット支持車輪2と同様な構造を有する第1オフセット支持車輪4と、第2オフセット支持車輪5とが弾性ロッド110で連結されている。第2オフセット支持車輪5は、球体状の車輪50と、車輪50の中心を貫通する車軸16を備える。車輪50は車軸16回りに回転可能である。車輪50は、略半球状の第1半球部12と、略半球状の第2半球部14と、第1半球部12と第2半球部14との間に位置する中心部材58とを備える。第1半球部12と第2半球部14とは、オフセット支持車輪1のものと同様である。中心部材58は車軸16回りに回転可能であっても、車軸16と固定されていてもよい。
【0026】
第1オフセット支持車輪4は、オフセット支持車輪1と同様に車輪40を有する。車輪40の中心部材48には、テザー100がオフセットされた位置で拘束される。また、中心部材48には、カメラ、センサ等の配管状態モニタ用機器120が設けられる。ここでは、カメラである配管状態モニタ用機器120の近くに、配管状態モニタ用機器120で撮像する位置を照らす照明122が設けられる。図4では、2つの照明122が配管状態モニタ用機器120の両側に設けられるが、照明122の数や位置は、これには限られない。配管状態モニタ用機器120は、静止画を撮像するカメラであっても、連結オフセット支持車輪3が移動しながら動画を撮像するカメラであってもよい。照明122は、LEDその他の公知の照明でよい。このように配管状態モニタ用機器120を設置することにより、配管内面を容易に検査することができる。この態様では、前方の車輪後部X(図5)に、透明半球内に鋼球(図5)を入れた装置を取り付けると、その半球内の鋼球の位置を配管状態モニタ用機器120でモニタすることで、配管の上下も分かり、管内検査の状態が分かりやすくすることも可能である。なお、センサ等、配管状態モニタ用機器120によっては、照明122が不要な場合もある。
【0027】
配管状態モニタ用機器120や照明122に電力を供給する電力線、配管状態モニタ用機器120や照明122の動作信号を伝達する信号線、配管状態モニタ用機器120からの情報を外部に伝送する信号線は、テザー100としてまとめられる。
【0028】
第1オフセット支持車輪4と第2オフセット支持車輪5とを連結する弾性ロッド110は、テザー100がオフセットする方向と同一方向で、車軸16からオフセットした位置で中心部材48、58に固定される。図5に示されるように、テザー100より大きなオフセット量で固定されてもよいし、逆に小さなオフセット量で固定されてもよい。
【0029】
図6を参照して、テザー先端に取り付けられる連結オフセット支持車輪3がエルボを通過するときの動作を説明する。図6(A)は直管部(配管)200を進行する連結オフセット支持車輪3の平面図である。弾性ロッド110は真直ぐになり、テザー100を牽引するためにオフセット支持車輪4およびオフセット支持車輪5はテザー100を拘束する位置が下方となり、すなわち直管部200に接する箇所に近くなる。よって、車輪40、50の中心部材48、58側で第1半球部12と第2半球部14が直管部200に接して車軸16回りに回転して進行しやすい状態となる。
【0030】
図6(B1)は、エルボ(配管)210を通過する連結オフセット支持車輪3の正面図である。エルボ210を通過する際には、流体圧によってオフセット支持車輪4、5がエルボに押し付けられ、弾性ロッド110が曲げられる。その反力が弾性ロッド110から車輪40、50に作用する。また、車輪40、50には、エルボ210内壁からの力も作用する。図6(B2)は、進行方向から見た車輪40、50に作用する力を説明する図である。車輪40、50は球体状であり、エルボ210からの力FPは中心方向に作用する。弾性ロッド110からの力FRはオフセットした連結点から作用するので、中心からずれる。弾性ロッド110からの力FRが中心からずれると、回転モーメントを生じる、そこで、図6(C2)に示すように、弾性ロッド110からの力FRがエルボ210からの力FPと同一線上になるように回転する。すなわち、弾性ロッド110が連結された位置がエルボ210に接する箇所に近くなる。そこで、エルボ210で車輪40、50は、車軸16が接しているエルボ210内面に直交するように斜めに傾斜することになる。そのために、図6(C1)に示すように、車輪40、50の中心部材48、58側で第1半球部12と第2半球部14がエルボ210内面に接し、車軸16回りに回転しながらエルボ210内面上を転がり進行することになる。すなわち、滑らかに進行することができる。
【0031】
続いて、図7を参照して、3つの車輪を有する連結オフセット支持車輪の例として、連結オフセット支持車輪6について説明する。図7(A)は、連結オフセット支持車輪6の構造を示す概略正面図である。連結オフセット支持車輪6では、連結オフセット支持車輪3として説明した2つの車輪40、50を連結する弾性ロッド110が第3オフセット支持車輪7の車輪70の中心部材78の周囲に巻き付いたように取り付けてもよい。車輪70は、車輪10と同様に第1半球部12と第2半球部14を車軸16回りに備え、その間に中心部材78を備える。中心部材78は、第1半球部12と第2半球部14の接する位置の外径より小さな外径を有し、第1半球部12と第2半球部14に溝部が形成される。中心部材78の外周に、弾性ロッド110が巻かれ、巻き付いている1箇所で中心部材78の外周に固定される。すなわち、中心部材78の車軸16からオフセットした位置で固定される。中心部材78の外周は円環であっても、他の形状であってもよく、弾性ロッド110を巻き付けることができれば、複数の棒部材で形成されるなど、連続面を有していなくてもよい。連結オフセット支持車輪6では、弾性ロッド110のばね力により、両側の車輪40、50を図7(A)の下向きに、中央の車輪70を上向きに動かそうとする力が生ずる。そのため、弾性ロッド110が連結された位置が配管に接する箇所に近くなる。よって、車輪40、50、70の中心部材48、58、78側で第1半球部12と第2半球部14が配管に接し、車軸16回りに回転して進行しやすい状態となる。
【0032】
図7(B)は、連結オフセット支持車輪6がエルボを通過する際の様子を説明する正面図である。ここでは、エルボは図7(A)における紙面垂直方向、すなわち水平方向に曲がっている。エルボに入ると弾性ロッド110により、両側の車輪40、50は曲がりの外側に押され、中央の車輪70は曲がりの内側に押される。
【0033】
図7(C)は、図7(B)の状態の連結オフセット支持車輪6の平面図であり、車輪40、50、70に作用する力を説明するための図である。エルボ(配管)内面から車輪40、50、70に作用する力は、各車輪40、50、70が球体状であるので、それらの中心方向を向き、車輪40、50には紙面下向き、車輪70には紙面上向きに働いている。一方、弾性ロッド110から作用する力は、各中心部材48、58、78でオフセットした位置で連結され、すなわち、オフセットした位置に作用し、その方向は車輪40、50には紙面上向き、車輪70には紙面下向きに働く。そこで、配管内面から作用する力と弾性ロッド110から作用する力とによりモーメントを生ずる。すると、連結オフセット支持車輪6は進行方向軸回りに回転し、図7(D)に示すような姿勢となる。図7(D)は、図7(B)と同様に見た正面図である。すなわち、連結オフセット支持車輪6は、配管内面から受ける反力と弾性ロッド110から作用する力とが同一直線状になって、両側の車輪40、50の中心部材側がエルボの曲がりの内側に押し付けられ、中央の車輪70の中心部材側がエルボの曲がりの外側に押し付けられる。つまり、各車輪40、50、70は、車軸16が接している配管内面に直交するような位置となる。よって、図7(D)に示すように、車輪40、50、70の第1半球部12と第2半球部14のそれぞれ中心部材側がエルボ内面に接して、車軸16回りに回転しながらエルボ内面上を転がり進行することになる。すなわち、滑らかに進行することができる。
【0034】
次に図8を参照して、連結オフセット支持車輪6の他の利点である、レデューサを通過しやすい点について説明する。連結オフセット支持車輪6では、弾性ロッド110のばね力により、両側の車輪40、50と中央の車輪70とは広がろうとする状態であるので、小径から大径へと広がるレデューサ内においても、各車輪40、50、70は、レデューサ(配管)内面にしっかりと接触し、中心部材48、58、78側で第1半球部12と第2半球部14とがレデューサ内面に接し、車軸16回りに回転しながらレデューサ内面上を転がり進行することになる。すなわち、滑らかに進行することができる。また、逆に大径から小径へと狭まるレデューサ内においても、弾性ロッド110が中心部材78での巻き付きが増えるように変形することで、同様にレデューサ(配管)内面にしっかりと接触し、中心部材48、58、78側で第1半球部12と第2半球部14とがレデューサ内面に接し、車軸16回りに回転しながらレデューサ内面上を転がり進行することになる。
【0035】
連結オフセット支持車輪6では、3つの車輪40、50、70を備えるので、例えば垂直配管内に置いても3点で指示され、姿勢が安定する。そのため、配管状態モニタ用機器120で配管内を点検するのにも都合が良い。なお、配管状態モニタ用機器は、テザー100が連結される車輪40に設置するのがよい。なお、オフセット支持車輪は、4つ以上の車輪を備えてもよい。また、上記の説明では、弾性ロッド110が第3オフセット支持車輪7の車輪70の中心部材78の外周に一回巻き付いているものとして説明した。これは、弾性ロッド110として、曲げられることにより塑性変形してしまう恐れのあるピアノ線等を用いる場合に、一回あるいは複数回巻き付けることにより弾性効果によるばね力を確実に得られるためである。しかし、必ずしも巻き付いている必要はなく、3つの車輪40、50、70を図7に示すような位置関係に配置できればよく、例えば細い蜜巻きコイルばねや超弾性効果を有する形状記憶合金ワイヤを弾性ロッド110に使用すれば、弾性ロッド110を中心部材78の外周に固定するだけでよい。
【0036】
これまで説明したように、本発明のオフセット支持車輪によれば、テザーを牽引しつつ、簡単な構造で、いくつものエルボを通過可能であり、かつ、配管内の障害物を踏破する能力も高く、空気流や流体流で管内を移動させる点検・保守のための管内移動装置として適する。
【符号の説明】
【0037】
1、2 オフセット支持車輪
3、6 連結オフセット支持車輪
4 第1オフセット支持車輪
5 第2オフセット支持車輪
7 第3オフセット支持車輪
10、20、40、50、70 車輪
12 第1半球部
14 第2半球部
16 車軸
18、28、48、58、78 中心部材
100 テザー
110 弾性ロッド
200 直管部
210 エルボ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8