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  • 特開-車椅子見守りシステムおよび方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023099262
(43)【公開日】2023-07-12
(54)【発明の名称】車椅子見守りシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20230705BHJP
   A61G 5/10 20060101ALI20230705BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20230705BHJP
   G08B 21/02 20060101ALI20230705BHJP
   G16Y 20/10 20200101ALI20230705BHJP
   G16Y 20/40 20200101ALI20230705BHJP
   G16Y 40/10 20200101ALI20230705BHJP
   G16Y 40/30 20200101ALI20230705BHJP
【FI】
G06Q50/10
A61G5/10
G08B25/04 K
G08B21/02
G16Y20/10
G16Y20/40
G16Y40/10
G16Y40/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021215606
(22)【出願日】2021-12-30
(71)【出願人】
【識別番号】512065591
【氏名又は名称】株式会社フューチャー・ブレイン
(72)【発明者】
【氏名】萬屋 菊洋
【テーマコード(参考)】
5C086
5C087
5L049
【Fターム(参考)】
5C086AA22
5C086BA07
5C086BA22
5C086CA21
5C086CA22
5C086DA07
5C086FA06
5C086FA11
5C087AA02
5C087AA03
5C087AA11
5C087AA37
5C087AA44
5C087DD03
5C087DD24
5C087DD29
5C087DD30
5C087DD49
5C087EE06
5C087EE18
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF04
5C087GG08
5C087GG66
5C087GG70
5C087GG84
5L049CC11
(57)【要約】
【課題】 本発明は、車椅子利用者による日常活動や移動時の安全を喚起し、監視・見守りを行う安否確認、見守りシステムおよび方法を提供する。
【解決手段】 本発明の監視システムは、車椅子利用者側の利用者通信端末装置と監視者側の監視者通信端末装置とが通信手段を介してクラウドサーバに接続されている監視システムであって、前記クラウドネットワーク上には、前記車椅子利用者に対する車椅子の行動条件が予めプログラムされて格納されており、前記行動条件が前記車椅子の行動情報に照らして外れたり、外れるおそれがある場合、前記利用者通信端末装置および前記監視者通信端末装置に対しアラート信号または行動指針信号が送信されることを主たる特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車椅子利用者側の利用者通信端末装置と監視者側の監視者通信端末装置とが通信手段を介してクラウドサーバに接続されている監視システムであって、
前記クラウドネットワーク上には、前記車椅子利用者に対する車椅子の行動条件が予めプログラムされて格納されており、
前記行動条件が前記車椅子の行動情報に照らして外れたり、外れるおそれがある場合、前記利用者通信端末装置および前記監視者通信端末装置に対しアラート信号または行動指針信号が送信されることを特徴とする監視システム。
【請求項2】
前記車椅子は、位置情報センサおよび異常信号検知センサにより前記行動情報を取得することを特徴とする請求項1記載の監視システム。
【請求項3】
前記異常信号検知センサは、ジャイロセンサ、コンパスセンサ、加速度センサのいずれかまたはそれらの組合せからなり、
前記異常信号検知センサにより異常信号が検知されると前記監視者通信端末へアラート信号が送信されることを特徴とする請求項2記載の監視システム。
【請求項4】
前記車椅子行動条件は、前記車椅子利用者の特性を考慮した行動範囲、走行経路、走行時間、利用者の行動スケジュールおよび健康管理プログラムのいずれかまたはそれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項1ないし請求項3記載の監視システム。
【請求項5】
前記利用者通信端末装置は、非常ボタンを備えており、
前記車椅子利用者の操作により前記監視者通信端末装置にアラート信号が送信されることを特徴とする請求項1記載の監視システム。
【請求項6】
前記通信手段は、LTE-M(Long Term Evolution for Machine-type Communication)通信方式に準拠した通信手段であることを特徴とする請求項1記載の監視システム。
【請求項7】
車椅子利用者側の利用者通信端末装置と監視者側の監視者通信端末装置とが通信手段を介してクラウドサーバに接続されている監視システムを利用した車椅子見守り方法であって、
車椅子の行動条件を予め設定し、クラウドサーバ内の行動条件プログラムに登録するステップと、
車椅子の利用者通信端末装置で取得した車椅子位置情報を前記行動条件プログラムへ発信するステップと、
前記クラウドサーバに登録された行動条件と前記位置情報とを比較するステップと、
前記位置情報が前記行動条件から外れた場合、前記利用者端末装置および監視者端末装置へアラート信号または行動指針信号が発信されるステップとを備えることを特徴とする車椅子見守り方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子利用者による日常活動や移動時の安全を喚起し、監視・見守りを行う安否確認、見守りシステムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高齢者や障害者の移動手段として車椅子は重要な役割を果たしている。高齢化社会の進行により車椅子の利用は増加傾向にあり、それに伴う事故、障害、徘徊などの車椅子利用に伴う日常生活の異常事態を早期に検知し、処置し、対応することは社会的課題として重要となってきている。車椅子の利用が拡大し、リハビリや健康管理にも適用されたり、自動ナビゲーションや自動走行により利用者の行動範囲が自由で広範なものとなるにつれ車椅子利用者の見守りは、喫緊の課題なってきている。異常事態が生じた場合またはその恐れや可能性があることを検知し、高齢者や障害者など(以下、「車椅子利用者」)に注意を喚起し、安否確認を行い、異常事態の早期対応の必要性は、車椅子利用者だけでなく、介護人、関係者、親族、施設管理者などの見守りを行ったり、付添を行う者(以下、「監視者」)にとっても、切望されている。
【0003】
更に、常に付添や介護を行う監視者にとって、できるだけかかりきりになる時間を削減し、省人・省力化を図ることが求められ、車椅子利用者にとっても監視者の負担を軽減し、できるだけ自由に行動範囲や活動範囲を広げることを望んでいる。このような車椅子の異常防止や事故防止技術は、従来より種々開示されている。例えば、特許文献1では、車椅子の対物センサーにより障害物を検知し、衝突防止や事故防止を行う技術が開示されている。また、特許文献2では、速度センサーを用いて車椅子の速度制御や事故防止を行う方法を開示している。これらの技術は、車椅子に取り付けたセンサーにより車椅子の走行異常を検知し、速度制御や事故防止を行うのみであり、車椅子側の制御であり、利用者の行動見守りには不十分である。
【0004】
更に、特許文献3では、利用者の着座情報や生体情報を検知し、病院、介護センター、関係者へ通信するシステムが開示されている。この技術によれば車椅子に装着したマットセンサーを利用して着座状況や生体情報を取得し、監視者へ通知しうるものの、一方的通知のみであり車椅子利用者の行動見守りや事故予防の観点からは満足できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開1994-190007号公報
【特許文献2】特開2001-79041号公報
【特許文献3】特開2003-79584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、車椅子などの利用者側および監視者側の双方にとって必要となる事故予防、異常検知、行動状況確認などの課題に鑑みてなされたもので、以下の課題解決を行うものである。
(1)車椅子利用者および監視者の操作、業務を極力簡易化して利用者の状況確認、注意喚起、異常事態対応ができること。
(2)車椅子利用者の行動の自由および行動範囲の拡大、監視者の見守り、介護の省力化、省人化を促進する見守りシステムおよび見守り方法の提供を行う。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するための手段として本発明の監視システムは、車椅子利用者側の利用者通信端末装置と監視者側の監視者通信端末装置とが通信手段を介してクラウドサーバに接続されている監視システムであって、前記クラウドネットワーク上には、前記車椅子利用者に対する車椅子の行動条件が予めプログラムされて格納されており、前記行動条件が前記車椅子の行動情報に照らして外れたり、外れるおそれがある場合、前記利用者通信端末装置および前記監視者通信端末装置に対しアラート信号または行動指針信号が送信されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明における監視システムは、前記車椅子が、位置情報センサおよび異常信号検知センサにより前記行動情報を取得するように構成することもできる。
【0009】
また、本発明における監視システムは、前記異常信号検知センサは、ジャイロセンサ、コンパスセンサ、加速度センサのいずれかまたはそれらの組合せからなり、前記異常信号検知センサにより異常信号が検知されると前記監視者通信端末へアラート信号が送信されるように構成することもできる。
【0010】
また、本発明における監視システムは、前記車椅子行動条件が、前記車椅子利用者の特性を考慮した行動範囲、走行経路、走行時間、利用者の行動スケジュールおよび健康管理プログラムのいずれかまたはそれらの組み合わせを含むように構成することもできる。
【0011】
また、本発明における監視システムは、前記利用者通信端末装置が、非常ボタンを備えており、前記車椅子利用者の操作により前記監視者通信端末装置にアラート信号が送信されるように構成することもできる。
【0012】
また、本発明における監視システムは、前記通信手段は、LTE-M(Long Term Evolution for Machine-type Communication)通信方式に準拠した通信手段であるように構成することもできる。
【0013】
また、上述のいずれかの監視システムを利用して車椅子利用者の見守り方法を提供することもできる。なお、上記した課題を解決する手段は、可能な限り組合せて使用することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、車椅子利用者側の通信端末と監視側の通信端末とはクラウドサーバーを介してネットワークが形成されており、車椅子による利用者の行動が予めプログラムされた所定の行動条件から外れたり、外れる恐れが生じた場合、アラート信号がプログラムにより自動的に発信されると共に、修正や行動指針が示される。また、利用者側の異常検知センサにより車椅子の事故、故障、利用者の異変など異常事態が検知されると、監視者側に異常信号が発信される構成となっている。そのため、本発明を適用することにより、見守り者が常時付き添っていなくても車椅子利用者に対し、注意喚起、事故検知・予防および利用者異常事態の検知や予防が可能となり、見守り人の省力化、省人化ができる。更に、行動条件に健康管理プログラムを組み込むことで、利用者のリハビリおよび健康管理や監視を効果的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態における通信ネットワークの一例を示す説明図である。
図2】本発明の実施形態に係るによる見守り確認の流れを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。なお、説明において、実施例に記載されているいずれの図面も本発明の説明用に概略的な模式図として描かれており、必然的かつ当然に具備されている手段や構成は省略されている。また、寸法や形状も厳密なものではない。従って、構成要素の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に記載がない限り発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0017】
本発明において、車椅子とは、主に高齢者や障害者を利用者として手動または電動の車椅子を想定しているが、道路交通法上に定義する車椅子に限らず、見守りや監視、介護またはリハビリを必要とする利用者が使用するシニアカー、リハビリ用手漕ぎ・足漕ぎ車椅子、電動カート、自転車、三輪車などに適用することも可能である。
【0018】
図1は、本発明の実施形態における通信ネットワークの一例を示す説明図である。車椅子利用者側の利用者通信端末(または端末装置)1と監視者側の監視者通信端末(または端末装置)2とは、通信ネットワーク3を介してクラウドサーバ4に接続されている。この通信ネットワーク3は、電話回線、WiFiなどのインターネット通信回線などいずれの無線通線回線であればかまわないが、IoT(Internet of Things)用に適しているLPWA(Low Power Wide Area)ネットワーク、特にLTE-M(Long Term Evolution for Machine-type Communication)と称される通信方式を利用するのが望ましい。
【0019】
LTE-M通信方式においては、ハンドオーバー機能により移動中であっても通信が途絶えることがなく、移動通信に適していること、常時交信する必要がなく異常時などの必要時のみの通信であるため極めて少ないデータ通信容量で十分であること、極めて省電力で設計可能なこと、ファームウェアを通信によりアップデート(遠隔アップデート)可能であること、などの利点を有している。また、IoT用として必要時のみの交信や間欠的に数分毎に利用者端末装置側からクラウド側へ接続される構成であるため、極めて安価な通信コストで利用することができる。そのため、本発明の車椅子利用者用端末としては、好適であり、安価に、小型、長時間利用の可能な端末装置が構成可能である。
【0020】
利用者通信端末装置1は、手すりなどの車椅子利用者が操作しやすい車椅子の位置に設置されている。この利用者端末装置1は、磁石などで着脱容易であり、利用者が車椅子より離れる場合は、取り外して携帯できるよう構成されている。
【0021】
利用者通信端末装置1は、送受信部5、出力部6を備えている。送受信部5では、通信ネットワーク手段3を介して監視者通信端末装置2およびクラウドサーバ4と交信するように、通信方式に適合した変調・復調回路(モデム)、通信アンテナなどで構成されている。出力部6では、受信した指示、命令信号を音声信号、光信号として出力し、スピーカ7またはランプ8で出力表示する。
【0022】
また、利用者通信端末装置1には、行動検知センサ9が含まれている。この行動検知センサ9は、位置情報GPSセンサおよびジャイロセンサ、コンパスセンサ、加速度センサのいずれかまたはそれらの組合せによる異常検知センサにより構成されている。GPSセンサでは、車椅子利用者の位置情報を取得し、発信する。また、ジャイロセンサ、コンパスセンサおよび・または加速度センサは、車椅子や利用者の動き検知として利用し、転倒、衝突などの事故検知用の異常検知センサとして働く。これらの行動検知センサ9またはそれらセンサの一部が車椅子本体に備えられている場合は、利用者端末装置1では、これらの車椅子本体に設置された行動検知センサからの各種センサ信号を受信し、行動検知信号を発信するようにしても良い。
【0023】
更に、この利用者端末装置1には、非常ボタン10が備えられており、万一の場合や非常事態が生じた場合など車椅子利用者が非常ボタンを押圧するだけで、異常検知センサ信号として異常事態を発信することができるよう構成されている。また、監視者側から安全確認を要求し、利用者側で異常事態でない旨を確認するための安全確認ボタン11も備えられている。
【0024】
一方、監視者側の監視者通信端末装置2は、主に入力部12、送受信部13,表示部14などで構成されている。監視者は、車椅子利用者の介護人、付添人、親族、病院や介護施設の管理者などであり、監視者端末装置2は、これら監視者が車椅子利用者を見守るために利用者の行動基準、行動条件、生活スケジュールなどを設定し、指示、命令を車椅子利用者に対して発信する。
【0025】
車椅子利用者の行動基準とは、例えば、利用者の認知度、介護度、障害の程度、リハビリ状況、体力など利用者の特性を考慮した車椅子利用時の基本的制約であり、利用者に応じた利用できる車椅子の適正(車椅子の利用可・不可・条件付利用、手動または電動車椅子、常時付添者の必要性等)、異常発生時や徘徊・失踪時における病院、消防署、親族への連絡網などである。また、行動条件とは、車椅子を利用して行動する種々の条件であり、例えば、車椅子での利用可能となる条件である地域範囲、走行経路、交通手段、気象条件、利用時期、利用時間、リハビリ項目などである。また、生活スケジュールとは、利用者の日常的行動パターンや所定のスケジュールであり、例えば、食事時間、薬飲用時間、リハビリタイム、就寝時刻などである。
【0026】
監視者は、監視者通信端末装置2の入力部12より、上述の利用者の特性に適合する行動基準、行動条件、生活スケジュール、リハビリ項目などを予め入力し、送信部12および通信ネットワーク3を介してクラウドサーバ4内の行動条件プログラム16へ入力する。この行動条件プログラム16では、予め入力され、設定されている利用者の車椅子利用に関する利用条件に応じて通信ネットワーク3を介して利用者端末装置1へ指示、命令を発信する。車椅子端末装置1は、GPSセンサを保持しており、定期的に車椅子利用者の位置情報が発信されており、行動条件プログラム16においては、車椅子利用者が、設定された移動範囲、走行経路などの行動条件から外れた場合、または外れるおそれがある場合、自動的に予め設定された注意信号(アラート)または音声信号による行動指針(ガイド)が発令され、スピーカ7またはランプ8の表示手段により音声信号や光注意信号として発信されるようにプログラムされている。
【0027】
この行動条件プログラム16は、それぞれの車椅子利用者の認知度、介護度、障害やリハビリの程度などの特性に応じて、地域範囲、走行経路、交通手段、気象条件、利用時期、利用時間、日常的行動パターンや所定のスケジュール、リハビリ・健康管理項目などに対し、それぞれの条件を設定すると共に条件を外れた場合の監視見守り指示を予め設定しプログラムしておく。
【0028】
このような行動条件プログラムの地域範囲、走行経路の設定にあたっては、監督者端末装置2の表示部14のディスプレイ15上に示された地図上に車椅子行動可能地域や走行経路を確定することで条件入力とし、クラウド上の行動条件プログラム16に登録する。車椅子側では、GPS位置情報が取得されており、走行経路設定にあたっては、車椅子利用者に対し音声案内による走行ナビ(行動指針)を発信するように構成することもできる。
【0029】
行動条件プログラム16では、車椅子利用者端末装置1より発信されたGPS位置情報と登録された地図上の制限条件と照合し、地域範囲や走行経路を外れた場合または外れるおそれがある場合は、警告信号(アラート)や行先案内などのナビガイド(行動指針)が設定されたプログラムにより利用者端末装置1および監視者端末装置2に向けて発信される。この注意警告信号は、利用者端末装置1や監視者端末装置では、音声アラートと共にランプ点滅などで注意を喚起する。
【0030】
行動条件プログラム16の交通手段では、車椅子により利用可能なバス、タクシー、電車などの条件付けを行う。気象条件では、天候による利用制限と併せ、天気予報を定期的に知らせるプログラムも可能である。また、利用期間や利用時間は、所定の利用可能日時や時間を設定する。更に、日常的行動パターンやスケジュールとしては、前述のような食事、薬飲用時刻、通院予定時刻などを設定し、所定の時刻までに帰宅または所定の場所へ行くようにアラート信号または音声ナビガイドを発信する。このような気象条件情報やスケジュール情報は、予め予測が可能であるため、行動条件の合致や不一致を検知する前に帰宅時間などを考慮して行動条件を外れる恐れがあるものとしてアラート信号やナビガイド(行動指針)を発信するように構成する。
【0031】
このアラート信号は、音声信号および光点滅信号であるが、音声信号としては、具体的に指示命令信号を音声化して出力するようにメッセージを登録しておく。例えば、行動範囲条件から外れた場合は、「地域範囲外です!」、「走行経路逸脱です!」等、気象条件に関しては、「悪天候(風雨、雷)が近づいています!」、スケジュールとしては、「食事(おくすり、リハビリ、帰宅)の時間です!」等の音声注意信号に併せて、「早く帰りましょう!」、「引き返しましょう!」、「ナビに従って移動して下さい!」など行動指示や経路変更などのナビゲーション指示を行うように構成するのが望ましい。このような音声アラート信号の各種パターンは、行動条件設定プログラムにおいて種々の考えられる種々の条件を組み合わせて構成する。
【0032】
いずれの場合も車椅子利用者が行動条件を外れた場合、または行動条件を外れるおそれがある場合、それぞれの条件に適応してプログラムされた注意喚起アラート信号が利用者端末装置1および監視者端末装置2へ発信される。アラート信号を受信した利用者は、指示に従い条件に合致するように走行経路を変更したり、所定場所へ向かうように修正する。更に、行動条件が外れた状態が継続する場合は、条件に合致するまで継続してアラート信号を利用者端末装置1へ発信し続ける。時間を経てもなお条件から外れている場合は、自動プログラムにより利用者端末装置1に付属する非常ボタン10で知らせるように音声信号を発信する。非常ボタンが押圧されると監視者側では、監視者端末装置2に示された非常アラート信号を認識し、利用者の障害度合いや特性に合わせて救援者を派遣したり、近くの交番やサポートセンターから救助に向かう手段を講じる。
【0033】
行動条件プログラム16は、車椅子利用者用の特性に合わせて車椅子による行動条件を予め予測できる範囲で設定しておく。このような行動条件の多くは、利用者の日常の生活ルーティーンやスケジュールと利用当日の気象情報、交通情報などを勘案して監視者により設定し、行動条件プログラム16に登録される。このような行動条件プログラム16は、登録すべき条件をプログラムテーブル(監視カルテ)としてリストアップされている。車椅子利用者は、設定された行動範囲であれば監視者の付添者なしに自由に行動することができる。本発明においては、監視者側からの行動条件を外れたとしても注意喚起(アラート)信号や行動指針を音声信号や光信号などにより利用者に働きかけ警告するが、直接車椅子の誘導や移動を強制的に制御するものではない。
【0034】
付添者なしに車椅子移動を行う場合、行動条件が制限されていたとしても種々の異常事態が生じることが考えられる。そのため、利用者端末装置1内にはジャイロセンサ、コンパスセンサおよび・または加速度センサなどが異常検知センサ用に行動検知センサ9として設けられている。これらの各種センサは、車椅子や利用者の転倒、衝突などの事故検知用として働き、センサにより異常が検知された場合は、自動的に監視者端末装置2側へ異常アラート信号が発信される。行動検知センサ9からの異常(事故)検知信号が発信されると、行動条件プログラム16より事故かどうかを確認するために安全確認ボタン11を押すように音声信号で問い合わせる。しかし、この安全確認ボタン11による確認信号の取得は利用者の意識認知状態の確認であり、この安全確認ボタン押圧確認の有無に関係なく、監視者側では、救援手段を講じる。利用者により非常ボタン10または安全確認ボタン11の押圧、異常検知センサによる異常(事故)検知信号の発信における通信回線は、通常の間欠的通信でなく、常時接続により信号を発信続けるように構成する。
【0035】
更に、本発明においては、行動条件プログラムとして健康管理プログラムを備えるように構成することもできる。この健康管理プログラムは、車椅子利用者のリハビリや健康管理項目を設定し、車椅子の移動に伴う運動量を計測する。このような機能は、高齢者、リハビリ中の障害者だけでなく健常者やアスリートが車椅子の手漕ぎ、足漕ぎ機能を用いて健康管理や体力増強を行うのに適用できる。車椅子側の端末装置内の行動検知センサ9により取得したGPSナビデータを利用して、走行距離の算定、蓄積、記録を行い、予め取得した車椅子利用者の特性と照合して、カロリー計算、筋肉量、脂肪量の推定などの健康管理データを健康管理プログラムにおいて記録し、健康管理やスポーツ機能の向上に役立てるようにすることができる。
【0036】
図2は、本発明による車椅子見守り方法のナビゲーションに関する主な流れを示すフローチャートである。車椅子見守りにおいて位置情報を把握し、ナビゲーションを行うことは最も重要な要素である。監視者側では監視者通信端末装置2のディスプレイ15に表示された地図により利用者の特性を考慮して車椅子行動条件を設定し(ステップ1、以下S1の様に記載する)、クラウドサーバ4内の行動条件プログラム16に予め登録しておく(S2)。この行動条件は、居所や施設などから利用者が車椅子により行動しうる範囲を確定するもので、利用者の特性(介護度、認知度、体力等)を考慮して入力設定する。行動条件のうち行動地域範囲条件としては、住居、施設などの居所を中心として半径数キロメートルとして設定したり、地域・番地を入力する方法で設定したりするほか、走行経路を予め確定し、車椅子側へ音声出力によりナビゲーションを行うこともできる。
【0037】
この行動条件設定ステップ(S1)では、行動地域範囲条件に追加して交通手段、気象条件、利用時期、利用時間、生活スケジュールも併せ設定し、クラウドサーバ4内の行動条件プログラム16に登録し、記録する(S2)。
【0038】
車椅子側からは利用者通信端末装置1に具備されたGPSセンサにより定期的に位置情報が取得され(S3)、位置情報が端末装置1よりクラウド内の行動条件プログラム16へ送信される(S4)。行動条件プログラム16においては、常時車椅子の位置情報と登録された行動条件とが比較され、行動条件に合致しているかどうかの合否判定を行う(S5)。合否判定ステップ(S5)において行動条件に合致した場合は、そのまま監視継続を行う。また、行動条件から外れた場合は、アラート信号(第1アラート信号)を発信する(S6)。
【0039】
この行動条件合致の合否判定は、位置情報による行動範囲のみならず登録されたその他の行動条件も勘案して合否の判定が行われる。例えば、気象条件としては、悪天候が予測される場合は行動条件を否として、アラート信号を発信する。また、登録された利用時間、生活スケジュールの条件を逸脱している場合も行動条件を制限すると共に逸脱した条件に応じた音声アラート信号を発信する。このアラート信号は、前述の通りアラート内容に加えて帰宅、経路変更などの指示、命令も音声信号により発信される。また、位置情報による行動範囲条件に合致している場合においてもその他の条件に合致しない場合は、その都度設定された条件に逸脱している旨のアラート信号が発信される(S6)。
【0040】
発信された第1アラート信号は、利用者通信端末装置1で受信される(S7)と共に、監視者通信端末装置2でも同様に受信される(S8)。車椅子利用者が、アラート信号を認識し、指示、命令に従って行動条件に合致する行動を取った場合、定期的に発信されている車椅子位置情報が修正された位置情報がクラウド内の行動条件プログラム16へ向けて発信される(S9)。プログラム16では行動条件が修正され条件に合致しているかどうかの判断を行う(S10)。この修正条件有無の判定(S10)において、修正有り(Yes)の場合は、行動条件に合致しているものであり、継続して監視・見守りを行う。
【0041】
第1アラート発信にもかかわらず修正条件有無の判定で修正無し(No)の場合は、依然として行動条件から外れているものであり、このような場合は、暫く様子を見ながら適切な時間をおいて次のアラート信号(第2アラート信号)を継続して発信する(S11)。この第2アラート信号は、第1アラート信号と同様、利用者通信端末装置1で受信され(S12)、また監視者通信端末装置2でも同様に受信される(S14)。車椅子利用者が、第2アラート信号を認識し、指示、命令に従って行動条件に合致する行動を取った場合、修正された位置情報が発信され(S13)、再度プログラム16内で行動条件に合致しているかどうかの判断を行う(S15)。修正有り(Yes)の場合は、行動条件に合致しているものであり、そのまま継続して監視・見守りを行う。
【0042】
しかし、第2アラートにもかかわらず依然として修正されない(No)場合、非常事態の可能性があるものと考えられるため行動条件プログラム16に登録された非常時問い合わせメッセージが発令される(S16)と共に繰り返し光点滅を継続させて非常事態信号を発信し続ける。この非常事態確認メッセージおよび非常事態信号は、利用者側の端末装置1で受信され(S17)、かつ監視者の通信端末2でも同時に受信される(S18)。非常時問い合わせメッセージは、「問題なければ安全確認ボタンを押して下さい!」または「問題なければ走行経路指示に従って下さい!」などで通信端末1の安全確認ボタン11を押圧するように指示する(S16)。
【0043】
このような非常時問い合わせメッセージを受けた車椅子利用者は、問題なければ安全確認ボタン11を押圧し、問題のないことが行動条件プログラムにおいて確認される(S19)。この問い合わせメッセージ要求に対し利用者側より安全確認ボタン11の押圧があり、問題ないことが確認できれば、再度監視、見守りが継続される。この安全確認ボタン11が押圧されなくても、車椅子利用者が所定の走行経路や指示に従って経路変更などを行った場合は、非常事態でないことが確認できるため、この安全確認ボタン11は、必ずしも必須というものではない。
【0044】
もし、安全確認ボタン11が押圧されず、経路変更など利用者からの反応が無い場合、監視者側では、異常事態と判断し、利用者の障害度合いや特性を考慮して救援者や付添人を派遣したり、近くの交番やサポートセンターから救助に向かう手段を講じる(S20)。
【0045】
これらの一連の行動条件プログラムは、車椅子利用時は常時作動しており、車椅子作動と同時にスタートし、車椅子利用終了と共に終了する。この行動条件プログラムは、車椅子利用者の行動範囲や走行経路の案内のほか、気象情報、利用時間、利用者の日常スケジュールが予めプログラムされており、行動条件を制限するのに用いられるだけでなく、定期的に利用者通信端末装置1へそれらの情報が伝達されるように利用される。
【0046】
また、利用者通信端末装置1には、ジャイロセンサ、コンパスセンサ、加速度センサのいずれかまたはそれらの組合せによる車椅子異常検知センサが備えられており、これらのセンサは、車椅子の衝突、転倒を検知する。事故などにより車椅子が衝突、転倒して異常検知センサが働くと、直ちに行動条件プログラム16へ異常検知信号が伝達され、監視者通信端末装置2へ異常事態アラートが通知されると共に、利用者通信端末装置1へは、「大丈夫であれば安全確認ボタン11を押して下さい!」などのメッセージが発信される。監視者側では、異常事態と判断し、利用者の障害度合いや特性を考慮して救援者や付添人を派遣したり、近くの交番やサポートセンターへ連絡する手段を講じる。
【0047】
本発明において監視者とは、主に車椅子利用者の介護人、付添人、親族、病院や介護施設の管理者などが考えられるが、異常事態のアラート通知先を地域警察、消防、セキュリティ会社、見守りコミュニティなどで監視者端末装置を備えて地域社会全体として車椅子利用者を見守り用に構成しても良い。
【0048】
上述の実施形態においては、車椅子利用者の見守りシステムおよび見守り方法を主としてクラウド側のソフト処理として説明したが、これらの処理ステップや機能を利用者通信端末装置1や監視者通信端末装置2側に組み込んで実行したり、またはそれぞれで分担して実行させても良い。
【0049】
また、本発明におけるクラウドサーバ4内の行動条件プログラム16から発信される種々の車椅子行動条件および利用者側の端末装置1から発信される応答は、常時双方向の通信環境を必要とするものでなく、定期的、間欠的通信により交信が可能であり、交信情報としても指示、命令情報および音声情報であり、極めて少ない通信容量であるためLTE-Mなどの通信コストを低減した通信回線による通信ネットワークを利用して小型、軽量の通信端末装置で構成することができる。勿論、最も市場で利用されている汎用性に優れた携帯通信端末であるスマートフォンにおいては本発明の多くの機能を備えているため、スマートフォンに本発明の行動条件プログラムと通信できるソフトウェアプログラムを組み込んで利用者通信端末装置として利用することもできる。
【0050】
本発明においては、車椅子利用者の特性に応じて車椅子行動条件を予め設定し、利用者の行動範囲、走行経路、スケジュール、気象状況などを監視し、その行動条件から外れた場合、アラート信号を発生する。また、車椅子による移動の際に衝突、転倒などの異常事態が生じた場合は、自動的に異常事態が監視者へ通知される。更に、車椅子利用者に何らかの異常事態が生じた場合は、非常ボタン押圧により異常事態が監視者へ通知される。このような見守りシステムおよび見守り方法適用することで、監視者である付添者、看護者が常時付き添っていなくても車椅子利用者に対する注意喚起が可能となり、事故検知・予防および利用者異常事態の検知や予防が可能となるため見守り人の省力化、省人化を図ることができる。更に、健康管理プログラムを組み込むことで、高齢者、リハビリ中の障害者だけでなく健常者やアスリートなどでも車椅子による健康管理や監視を効果的に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上説明の通り、増加する車椅子の利用にあたって本発明を適用することにより、車椅子利用者に対して行動範囲や行動経路の案内および各種情報提供を自動的、定期的に行い、車椅子利用者の事故検知、予防を行うことを可能とし、見守り者の省力化、省人化を行うことが可能となり、産業上の利用可能性が高いものである。
【符号の説明】
【0052】
1 利用者通信端末装置、2 監視者通信端末装置、3 通信手段、4 クラウドサーバ、5 送受信部、6 出力部、7 スピーカ、8 ランプ、9 行動検知センサ、10 非常ボタン、11 安全確認ボタン、12 入力部、13 送受信部、14 表示部、15 ディスプレイ、16 行動条件プログラム
図1
図2