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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023099270
(43)【公開日】2023-07-12
(54)【発明の名称】高速焼鈍装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/265 20060101AFI20230705BHJP
   H01L 21/268 20060101ALI20230705BHJP
【FI】
H01L21/265 602C
H01L21/268 Z
H01L21/268 T
H01L21/268 G
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050133
(22)【出願日】2022-03-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-10
(31)【優先権主張番号】110149586
(32)【優先日】2021-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】519404230
【氏名又は名称】日揚科技股▲分▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】521488440
【氏名又は名称】明遠精密科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】寇崇善
(57)【要約】
【課題】炭化ケイ素ウェーハの焼戻し処理に適用することが可能な高速焼鈍装置を提供する。
【解決手段】高速焼鈍装置は、周波数変換マイクロ波パワー源システムと、共振チャンバー加熱システムと、検知制御システムと、を備える。周波数変換マイクロ波パワー源システムは、ソリッドステートパワーアンプを使用し、熱処理時に、周波数を高速に周波数掃引する柔軟性を有して、焼鈍すべき材料の温度の変化による負荷効果によって共振周波数が変化することを補償する。エネルギーの使用効率の向上と、マイクロ波のエネルギーが均一な領域を充分に提供することのために、TM010の共振チャンバーの構成を採用して、4インチから8インチの炭化ケイ素ウェーハに対して焼鈍処理を行うことができる。検知制御システムは、ソフトウェアとハードウェアを結合して、インスタントフィードバックを有する自動システムを構成して、装置全体の柔軟性、安定性、及び信頼性が更に向上する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソリッドステート周波数変換マイクロ波パワー源により、第1の周波数を有するマイクロ波を提供する周波数変換マイクロ波パワー源システムと、
ウェーハ受け台座およびアンテナを有する共振チャンバーを備える共振チャンバー加熱システムと、
方向カプラーと、動力計と、光学温度測定装置と、気圧制御システムと、コンピューターと、を備える検知制御システムと、
を備え、
焼鈍すべき材料は、前記ウェーハ受け台座に置かれており、
前記周波数変換マイクロ波パワー源システムからの前記マイクロ波が前記アンテナを経由して前記共振チャンバーに入力されて、前記共振チャンバーで共振モードを励起することにより、前記焼鈍すべき材料に対して焼鈍処理を行い、
前記気圧制御システムは、前記共振チャンバーの気圧値の検知及び制御を行い、
前記方向カプラーは、前記周波数変換マイクロ波パワー源システムからの前記マイクロ波の前進信号と、前記共振チャンバー加熱システムからの反射信号と、を検出し、
前記動力計は、前記前進信号および前記反射信号によってパワー変化を取得し、
前記光学温度測定装置は、前記焼鈍すべき材料の温度値を検知し、
前記コンピューターは、前記温度値および前記パワー変化に応じて調整命令を生成し、
前記周波数変換マイクロ波パワー源システムは、前記調整命令によって周波数掃引モードを行い、これにより、最小マイクロ波反射を有する好適な工作マイクロ波周波数を即時に選択して、前記第1の周波数を取り換えて、前記焼鈍すべき材料の温度変化による前記共振チャンバーの共振周波数の変化を補償することを特徴とする、
高速焼鈍装置。
【請求項2】
前記周波数変換マイクロ波パワー源システムは、前記ソリッドステート周波数変換マイクロ波パワー源と、インピーダンスマッチャーと、を備え、
前記インピーダンスマッチャーは前記アンテナと連接し、
前記ソリッドステート周波数変換マイクロ波パワー源は、マイクロ波信号生成器と、ソリッドステートパワーアンプと、を備え、
前記マイクロ波信号生成器は、ローパワーを有するマイクロ波信号を生成して、前記ソリッドステートパワーアンプに送って、ハイパワーを有する前記マイクロ波を生成することを特徴とする、請求項1に記載の高速焼鈍装置。
【請求項3】
前記ソリッドステート周波数変換マイクロ波パワー源と、前記インピーダンスマッチャーとから、FM高速マッチングメカニズムを構成して、前記マイクロ波の反射を高速に減少し、
前記インピーダンスマッチャーは、固定のインピーダンスを有し、
前記ソリッドステート周波数変換マイクロ波パワー源は、前記検知制御システムの前記調整命令によって、前記周波数掃引モードに入ることにより、最小マイクロ波反射を有する好適な工作マイクロ波周波数を即時に選択して、前記マイクロ波の第2の周波数として、前記焼鈍すべき材料の温度変化による前記共振チャンバーの共振周波数の変化を補償することを特徴とする、請求項2に記載の高速焼鈍装置。
【請求項4】
前記気圧制御システムは、前記共振チャンバーに設けられている圧力検出ユニットを備え、
前記圧力検出ユニットは、前記共振チャンバーの前記気圧値を検知するためのものであり、
前記気圧制御システムは、更に、前記共振チャンバーとそれぞれ連接する、排気ユニットと、ガス入力ユニットと、を備え、これにより、前記共振チャンバーの前記気圧値を予定の気圧に保持することを特徴とする、請求項1に記載の高速焼鈍装置。
【請求項5】
更に、前記コンピューターと電気的に接続するモニターを備え、前記モニターにより、前記検知制御システムの検知結果が即時に表示されることを特徴とする、請求項1に記載の高速焼鈍装置。
【請求項6】
前記共振チャンバー加熱システムの前記共振チャンバーは、上円盤、中空円筒及び下円盤から構成されるチャンバーを備え、
前記上円盤と前記下円盤は、それぞれ、前記中空円筒の両側に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の高速焼鈍装置。
【請求項7】
前記共振チャンバーの前記アンテナは、金属ボールと、前記金属ボールと連接する金属棒と、から構成され、
前記金属棒は、前記上円盤に設けられており、前記周波数変換マイクロ波パワー源システムのインピーダンスマッチャーと連接することにより、前記マイクロ波が前記アンテナを経由して前記共振チャンバーに入力することを特徴とする、請求項6に記載の高速焼鈍装置。
【請求項8】
前記上円盤と前記下円盤とは、それぞれ、放物線円盤であることを特徴とする、請求項7に記載の高速焼鈍装置。
【請求項9】
前記上円盤と前記下円盤との内側の面には、赤外線反射層がそれぞれ塗布されていることを特徴とする、請求項7に記載の高速焼鈍装置。
【請求項10】
前記ウェーハ受け台座は、前記共振チャンバーの中央に位置し、
前記中央は、マイクロ波のエネルギーが最も強い領域であることを特徴とする、請求項1に記載の高速焼鈍装置。
【請求項11】
前記ウェーハ受け台座は、前記共振チャンバーに回転可能に設けられていることにより、前記焼鈍すべき材料の焼鈍の均一性を増加することを特徴とする、請求項1に記載の高速焼鈍装置。
【請求項12】
前記ウェーハ受け台座は、ベースと、上蓋と、を備え、
前記焼鈍すべき材料は、前記ベースと前記上蓋とから構成されるチャンバー内に置かれることを特徴とする、請求項11に記載の高速焼鈍装置。
【請求項13】
前記ウェーハ受け台座は、前記マイクロ波の一部を吸収して熱エネルギーを生成することにより、前記焼鈍すべき材料に伝導して加熱し、前記ウェーハ受け台座は、前記マイクロ波の他の部分が貫通することを許可することにより、前記ウェーハ受け台座の前記チャンバーにおける前記焼鈍すべき材料を直接に加熱することを特徴とする、請求項12に記載の高速焼鈍装置。
【請求項14】
前記共振チャンバーの前記ウェーハ受け台座は、マイクロ波吸収材料から構成され、50%を超える前記マイクロ波が前記焼鈍すべき材料を貫通することを許可することにより、前記焼鈍すべき材料を加熱することを特徴とする、請求項13に記載の高速焼鈍装置。
【請求項15】
前記マイクロ波吸収材料は、気孔率が20%~30%の範囲に入る、多孔性焼結炭化ケイ素、又は多孔性黒鉛であることを特徴とする、請求項14に記載の高速焼鈍装置。
【請求項16】
前記マイクロ波の前記第1の周波数は、433.05~434.79MHz、又は902~928MHzの範囲に入り、前記周波数掃引モードの周波数掃引範囲は±10MHzであり、前記共振チャンバーは単一TM010共振モードの構成であり、前記共振チャンバーの空いたチャンバーの品質係数(Q)は6,000を超えることを特徴とする、請求項1に記載の高速焼鈍装置。
【請求項17】
前記マイクロ波の前記第1の周波数は434MHzであり、前記共振チャンバーの直径は500mmであることを特徴とする、請求項1に記載の高速焼鈍装置。
【請求項18】
前記マイクロ波の前記第1の周波数は500MHzであることを特徴とする、請求項1に記載の高速焼鈍装置。
【請求項19】
前記焼鈍すべき材料は炭化ケイ素であることを特徴とする、請求項1に記載の高速焼鈍装置。
【請求項20】
前記焼鈍すべき材料は、炭化ケイ素ウェーハであることを特徴とする、請求項1に記載の高速焼鈍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、特に、高速焼鈍装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭化ケイ素(SiC)は、ワイドバンドギャップ、高破壊電界、高熱伝導率、及び優れた化学的不活性を有するため、高温、ハイパワー波、及び高周波デバイスの製造に重要な半導体材料になる。なお、イオン注入は、SiC半導体素子を製造する不可欠な技術である。そして焼鈍(annealing)は、イオンを注入した後、格子損傷の除去、及び注入されたイオンの活性化の必要なステップである。炭化ケイ素の場合には、1,500 °Cよりも高い温度で、イオンを注入した後の焼鈍を行うことが必要である。
【0003】
従来の焼鈍は、抵抗加熱または低周波誘導加熱のセラミック炉で行うことが一般的である。しかし、セラミック炉の加熱/冷却速度は遅い(20 °C/min)ため、1,500 °Cを超える温度で、炭化ケイ素に対して焼鈍を行うことが難しい。炭化ケイ素が1,400 °Cを超える温度で長時間に暴露したと、基板表面での構成物質の昇華と再堆積(一般的にステップバンチング(step bunching)と称し)が発生して、炭化ケイ素ウェーハの表面粗さが増加する。これは、最大焼鈍温度を制限する。このような焼鈍温度に対する制限により、注入されたイオンを十分に活性化することができなくなって、その結果、接触領域とチャネル領域との抵抗が高くなる。同時に、表面粗さが大きすぎると、炭化ケイ素素子の性能に悪影響が与えられ、そのうちの一つは、逆転層の移動性(inversion layer mobility)が降下して、炭化ケイ素のMOSFETの導通抵抗がより高くなる。最近、上記の問題を抑制するための幾つかのキャッピング技術(capping technology)が提案された。しかし、これらの技術によれば、依然として最高温度に制限があり、そして複雑な処理ステップが必要である。一方、高温で炭化ケイ素が長時間に暴露したと、炭素の豊富な表面が形成され、最終的には黒鉛表面が形成される。従来の焼鈍の別の不良な影響は、注入されたホウ素イオンが外拡散および内拡散を発生する。
【0004】
従来の焼鈍は、上記の問題に加えて、操作上の欠点もある。第1の問題は熱効率にある。炉本体の主な放熱は放射であり、放射量は温度の4乗に比例して増加する。このため、加熱の領域を広くすると、加熱に必要なエネルギー効率が著しく降下する。抵抗加熱炉の場合には、二管構造を採用することが一般的であり、加熱器を汚染することを回避することができる。このため、加熱しようとする領域がもっと広くなる。一方、二管構造を採用するため、被加熱材料が熱源から離れる。このため、加熱器の温度が被加熱材料の温度よりも高いように設定することが必要であるが、そうすると、効率が大幅に降下する要因になる。このため、加熱システムの熱容量が非常に大きくなって、温度の上昇または降下の時間が長くなる。これにより、生産量が減少し、被加熱材料の表面粗さが増加する。
【0005】
従来の焼鈍の第2の問題は、加熱炉の材料の無駄に関する。加熱炉に使用する1,500℃以上の温度を耐えることができる材料は、高融点で高純度の材料が必要である。従来、炭化ケイ素の焼鈍炉に使用可能な材料は、黒鉛および炭化ケイ素の焼結体である。しかし、このような材料は高価なため、炉本体が大きい場合には、交換にはかなりの費用がかかる。そして温度が高いほど、炉本体の寿命が短いため、交換コストは、一般的なシリコンウェーハを焼鈍する技術よりも遥かに高い。
【0006】
従来の焼鈍技術の加熱速度が遅すぎて、炭化ケイ素ウェーハの表面が劣化するという問題を解決するために、高速焼鈍技術の開発が必要となる。ハロゲンランプやレーザーの技術で高速熱処理が可能であるが、まだまだ問題がある。例えば、達成可能な最高の焼鈍温度、表面溶融、高い残留欠陥密度、及びインプラントの再分布などの問題がある。それに対して、マイクロ波による加熱は、炭化ケイ素の高速焼鈍の有効な方法となる。
【0007】
炭化ケイ素は、マイクロ波のエネルギー(300MHz~300GHz)を有効に吸収することができる。適当に設計された焼鈍システムを利用して、マイクロ波により、炭化ケイ素ウェーハを高速に加熱および冷却することができ、そして焼鈍時間を良く制御することもできる。マイクロ波は、選択的に加熱できる特点を有する。これは、マイクロ波が半導体ウェーハに吸収され、周囲の環境に吸収されないためである。このため、焼鈍の加熱速度は極めて速い。そして、高速焼鈍の過程中に、炭化ケイ素ウェーハの周囲の環境の温度上昇は限られるため、マイクロ波源をオフしたと、炭化ケイ素ウェーハの冷却速度は極めて速い。従来の焼鈍技術に比べると、マイクロ波により炭化ケイ素の焼鈍を行う場合には、結果として、加熱速度が600 °C/sを超え、温度が2,000 °Cに達する。1,850 °Cで35秒間のマイクロ波により焼鈍を行ったと、その表面粗さは2nmである。これに比べると、従来の焼鈍技術により、1,500 °Cで15分間に焼鈍を行ったと、表面粗さは6nmである。そして、薄層抵抗および注入元素再分布の深さの面では、マイクロ波による焼鈍が優れた結果を見せる(SIDDARTH G. SUNDARESAN, etc;Journal of ELECTRONIC MATERIALS,Vol.36,No.4,2007)。
【0008】
共振チャンバーカップリングは、マイクロ波による加熱の過程中に、よく使用される方法である。マイクロ波加熱炉は、固定周波数の単一モード共振チャンバー、又はマルチモード共振チャンバーの構成で稼働することが一般的である。単一モード共振チャンバーで生成する電磁界の強度は、マルチモード共振チャンバーよりも高いため、高速加熱に適用することができる。単一モード共振チャンバーにより、10°C/秒~100°C/秒のような速い加熱速度を実現することができるが、マルチモード共振チャンバーによる加熱速度はより遅い。しかし、従来技術によれば、加熱速度が更に100℃/秒よりも遥かに速くすると、幾つかの技術的なハードルがある。まず、熱処理の過程中に、加熱される物質の物理的特性が温度の変化に従って変化すると、共振チャンバーの共振周波数は変化する。固定周波数のRF/マイクロ波源を使用すると、共振チャンバーとの不一致が発生する。そうすると、入力電磁波の反射は大幅に増加して、加熱効率に悪影響を与える。次に、共振チャンバーの共振周波数を機械的に調整することはできるが、変化に対する応答時間が遅くなり、加熱速度が遅くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の主な目的は、炭化ケイ素ウェーハの焼戻し処理に適用することが可能な高速焼鈍装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の従来技術の欠点を克服するために、本発明は、周波数変換マイクロ波源を使用して、高速で選択的に加熱する技術および装置を提案し、前記技術および装置によれば、炭化ケイ素ウェーハの焼鈍プロセスの加熱速度を速くすることができ、加熱温度を上げることもできる。
【0011】
本発明では、固定周波数マグネトロンの代わりに、周波数変換ソリッドステート電子素子を使用して、マイクロ波パワー源とする。周波数可変パワー源は、最高工作マイクロ波周波数の選択を許可し、そして熱処理の過程中に、掃引周波数が柔軟性を有し、焼鈍すべき材料の温度の変化による共振周波数の変化を補償して、最高のエネルギー効率を実現する。従来の営業用システムに使用される行進波管(TWT)周波数変換源に比べて、本発明で採用するソリッドステートマイクロ波パワー源は、製造コストが降下し、体積が小さくなり、高電圧システムを必要せず、電子的制御が容易になる。
【0012】
本発明に係る検知制御システムは、方向カプラー及び動力計を利用して、前進波および反射波を検知し、そしてコンピューターに接続されている赤外線高温計により、マイクロ波による加熱の全部の過程の検知、調整および制御を行う。高速熱処理は、極めて短い時間で完成することが必要なため、手動での調整および制御が難しい。このため、本発明に係る検知制御システムは、ハードウェア及びソフトウェアと結合して、即時にフィードバックする機能を有する自動化システムを構成する。これにより、装置全体の柔軟性、安定性および信頼性が向上する。
【0013】
本発明に係る高速焼鈍装置によると、ソリッドステート周波数変換マイクロ波パワー源により、第1の周波数を有するマイクロ波を提供する周波数変換マイクロ波パワー源システムと、ウェーハ受け台座およびアンテナを有する共振チャンバーを備える共振チャンバー加熱システムと、方向カプラーと、動力計と、光学温度測定装置と、気圧制御システムと、コンピューターと、を備える検知制御システムと、を備え、焼鈍すべき材料は、前記ウェーハ受け台座に置かれており、前記周波数変換マイクロ波パワー源システムからの前記マイクロ波が前記アンテナを経由して前記共振チャンバーに入力されて、前記共振チャンバーで共振モードを励起することにより、前記焼鈍すべき材料に対して焼鈍処理を行い、前記気圧制御システムは、前記共振チャンバーの気圧値の検知及び制御を行い、前記方向カプラーは、前記周波数変換マイクロ波パワー源システムからの前記マイクロ波の前進信号と、前記共振チャンバー加熱システムからの反射信号と、を検出し、前記動力計は、前記前進信号および前記反射信号によってパワー変化を取得し、前記光学温度測定装置は、前記焼鈍すべき材料の温度値を検知し、前記コンピューターは、前記温度値および前記パワー変化に応じて調整命令を生成し、前記周波数変換マイクロ波パワー源システムは、前記調整命令によって周波数掃引モードを行い、これにより、最小マイクロ波反射を有する好適な工作マイクロ波周波数を即時に選択して、前記第1の周波数を取り換えて、前記焼鈍すべき材料の温度変化による前記共振チャンバーの共振周波数の変化を補償することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る高速焼鈍装置によると、前記周波数変換マイクロ波パワー源システムは、前記ソリッドステート周波数変換マイクロ波パワー源と、インピーダンスマッチャーと、を備え、前記インピーダンスマッチャーは前記アンテナと連接し、前記ソリッドステート周波数変換マイクロ波パワー源は、マイクロ波信号生成器と、ソリッドステートパワーアンプと、を備え、前記マイクロ波信号生成器は、ローパワーを有するマイクロ波信号を生成して、前記ソリッドステートパワーアンプに送って、ハイパワーを有する前記マイクロ波を生成することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る高速焼鈍装置によると、前記ソリッドステート周波数変換マイクロ波パワー源と、前記インピーダンスマッチャーとから、FM高速マッチングメカニズムを構成して、前記マイクロ波の反射を高速に減少し、前記インピーダンスマッチャーは、固定のインピーダンスを有し、前記ソリッドステート周波数変換マイクロ波パワー源は、前記検知制御システムの前記調整命令によって、前記周波数掃引モードに入ることにより、最小マイクロ波反射を有する好適な工作マイクロ波周波数を即時に選択して、前記マイクロ波の第2の周波数として、前記焼鈍すべき材料の温度変化による前記共振チャンバーの共振周波数の変化を補償することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る高速焼鈍装置によると、前記気圧制御システムは、前記共振チャンバーに設けられている圧力検出ユニットを備え、前記圧力検出ユニットは、前記共振チャンバーの前記気圧値を検知するためのものであり、前記気圧制御システムは、更に、前記共振チャンバーとそれぞれ連接する、排気ユニットと、ガス入力ユニットと、を備え、これにより、前記共振チャンバーの前記気圧値を予定の気圧に保持することを特徴とする。
【0017】
本発明に係る高速焼鈍装置によると、更に、前記コンピューターと電気的に接続するモニターを備え、前記モニターにより、前記検知制御システムの検知結果が即時に表示されることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る高速焼鈍装置によると、インピーダンスマッチャーは、ハイパワーの焼鈍プロセスを行う前に、インピーダンス素子が調整されて反射マイクロ波が極めて小さく、マッチ条件を満足する。ハイパワーの焼鈍プロセスを行っているときに、焼鈍すべき材料の物理的特性は、温度の上昇により変化して、マイクロ波共振チャンバーの共振周波数を変化して、マイクロ波の反射量が増加する。このとき、検知制御システムは、調整命令をソリッドステート周波数変換マイクロ波パワー源に送って、高速周波数掃引モードに調整して、最小反射の動作周波数を取得し、共振チャンバー加熱システムのインピーダンスと整合することを特徴とする。
【0019】
本発明に係る高速焼鈍装置によると、前記共振チャンバー加熱システムの前記共振チャンバーは、上円盤、中空円筒及び下円盤から構成されるチャンバーを備え、前記上円盤と前記下円盤は、それぞれ、前記中空円筒の両側に設けられていることを特徴とする。
【0020】
本発明に係る高速焼鈍装置によると、前記共振チャンバーの前記アンテナは、金属ボールと、前記金属ボールと連接する金属棒と、から構成され、前記金属棒は、前記上円盤に設けられており、前記周波数変換マイクロ波パワー源システムのインピーダンスマッチャーと連接することにより、前記マイクロ波が前記アンテナを経由して前記共振チャンバーに入力することを特徴とする。
【0021】
本発明に係る高速焼鈍装置によると、前記上円盤と前記下円盤とは、それぞれ、放物線円盤であることを特徴とする。
【0022】
本発明に係る高速焼鈍装置によると、前記上円盤と前記下円盤との内側の面には、赤外線反射層がそれぞれ塗布されていることを特徴とする。
【0023】
本発明に係る高速焼鈍装置によると、前記ウェーハ受け台座は、前記共振チャンバーの中央に位置し、前記中央は、マイクロ波のエネルギーが最も強い領域であることを特徴とする。
【0024】
本発明に係る高速焼鈍装置によると、前記ウェーハ受け台座は、前記共振チャンバーに回転可能に設けられていることにより、前記焼鈍すべき材料の焼鈍の均一性を増加することを特徴とする。
【0025】
本発明に係る高速焼鈍装置によると、前記ウェーハ受け台座は、ベースと、上蓋と、を備え、前記焼鈍すべき材料は、前記ベースと前記上蓋とから構成されるチャンバー内に置かれることを特徴とする。
【0026】
本発明に係る高速焼鈍装置によると、前記ウェーハ受け台座は、前記マイクロ波の一部を吸収して熱エネルギーを生成することにより、前記焼鈍すべき材料に伝導して加熱し、前記ウェーハ受け台座は、前記マイクロ波の他の部分が貫通することを許可することにより、前記ウェーハ受け台座の前記チャンバーにおける前記焼鈍すべき材料を直接に加熱することを特徴とする。
【0027】
本発明に係る高速焼鈍装置によると、前記共振チャンバーの前記ウェーハ受け台座は、マイクロ波吸収材料から構成され、50%を超える前記マイクロ波が前記焼鈍すべき材料を貫通することを許可することにより、前記焼鈍すべき材料を加熱することを特徴とする。
【0028】
本発明に係る高速焼鈍装置によると、前記マイクロ波吸収材料は、気孔率が20%~30%の範囲に入る、多孔性焼結炭化ケイ素、又は多孔性黒鉛であることを特徴とする。
【0029】
本発明に係る高速焼鈍装置によると、前記マイクロ波の前記第1の周波数は、433.05~434.79MHz、又は902~928MHzの範囲に入り、前記周波数掃引モードの周波数掃引範囲は±10MHzであり、前記共振チャンバーは単一TM010共振モードの構成であり、前記共振チャンバーの空いたチャンバーの品質係数(Q)は6,000を超えることを特徴とする。
【0030】
本発明に係る高速焼鈍装置によると、前記マイクロ波の前記第1の周波数は434MHzであり、前記共振チャンバーの直径は500mmであることを特徴とする。
【0031】
本発明に係る高速焼鈍装置によると、前記マイクロ波の前記第1の周波数は500MHzであることを特徴とする。
【0032】
本発明に係る高速焼鈍装置によると、前記焼鈍すべき材料は炭化ケイ素であることを特徴とする。
【0033】
前記焼鈍すべき材料は、炭化ケイ素ウェーハであることを特徴とする、請求項1に記載の高速焼鈍装置。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係る高速焼鈍装置によれば、次のような効果がある。
(1)434MHzのマイクロ波共振チャンバーにより、炭化ケイ素ウェーハに対して高速焼鈍を行う場合には、単一共振TM010モードを採用すると、電磁界が均一で充分な領域を取得して、4インチから8インチのウェーハを処理することができる。円筒形共振チャンバーは、上下が放物線で構成される内面を備える。これにより、炭化ケイ素ウェーハの高温での大量の放射ロスが発生するという問題を解決することができ、1,500℃度~2,000度℃までに加熱することができる。
(2)固定周波数マグネトロンの代わりに、周波数変換ソリッドステート電子素子を使用して、マイクロ波パワー源とする。これにより、熱処理の過程中に、掃引周波数が柔軟性を有し、最高工作マイクロ波周波数の選択が許可され、焼鈍すべき材料の温度の変化によるマイクロ波共振チャンバーの共振周波数の変化を補償することができる。同時に、これはインピーダンスマッチャーと高速マッチモードを構成して、高速焼鈍の要求に満足することができる。
(3)共振チャンバーのウェーハ受け台座は、炭化ケイ素ウェーハを固定する他、マイクロ波による熱エネルギーの一部を吸収して、炭化ケイ素ウェーハに均一に伝導することができ、炭化ケイ素ウェーハの内部熱応力による破裂を防止することができる。同時に、殆どのマイクロ波が炭化ケイ素ウェーハを貫通することを許可することにより加熱すると共に、炭化ケイ素ウェーハのエッジの過熱を防止することができる。
(4)検知制御システムは、ソフトウェアおよびハードウェアと結合して、即時にフィードバック可能な自動化システムを構成することにより、装置全体は、柔軟性、安定性および信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明に係る高速焼鈍装置を示す模式図である。
図2】本発明に係る高速焼鈍装置の回路を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本発明の実施の形態の図面における各部材の比率は、説明を容易に理解するために示され、実際の比率ではない。また、図に示すアセンブリの寸法の比率は、各部品とその構造を説明するためのものであり、もちろん、本発明はこれに限定されない。一方、理解を便利にするために、下記の実施の形態における同じ部品については、同じ符号を付して説明する。
【0037】
さらに、明細書全体および特許請求の範囲で使用される用語は、特に明記しない限り、通常、この分野、本明細書に開示される内容、および特別な内容で使用される各用語の通常の意味を有する。本発明を説明するために使用されるいくつかの用語は、当業者に本発明の説明に関する追加のガイダンスを提供するために、本明細書の以下または他の場所で説明される。
【0038】
この記事での「第1」、「第2」、「第3」、「第4」などの使用については、順序や順次を具体的に示すものではなく、本発明を制限するためにも使用されていない。これは、同じ専門用語で説明するコンポーネントまたは操作を区別するだけために使用される。
次に、この記事で「含む」、「備える」、「有する」、「含有する」などの用語が使用されている場合、それらはすべてオープンな用語である。つまり、これらは、含むがこれに限定されないことを意味する。
【0039】
本発明は、マイクロ波を使用する高速焼鈍装置を提案し、焼鈍すべき材料を極めて高い温度に高速で選択的に加熱することができ、炭化ケイ素ウェーハの焼鈍プロセスの高速加熱および高温加熱の要求に満足することができる。本発明に係る高速焼鈍装置は、三つの主な部分に分けられる。これらは、周波数変換マイクロ波パワー源システム、共振チャンバー加熱システム、及び検知制御システム(すなわち、検知および制御システム)である。マイクロ波は、ソリッドステート周波数変換マイクロ波パワー源から生成されて、インピーダンスマッチャーを通過して、共振チャンバー加熱システムと結合して、標的物(すなわち、焼鈍すべき材料)に対して加熱を行う。検知制御システムは、マイクロ波による加熱の過程の調整、検知および制御を行う。
【0040】
図1及び図2を参照する。図1は本発明に係る高速焼鈍装置の構成を示す模式図であり、図2は本発明に係る高速焼鈍装置の回路のブロック図である。本発明に係る高速焼鈍装置100は、周波数変換マイクロ波パワー源システム10と、共振チャンバー加熱システム30と、検知制御システム50と、を備える。本発明に係る周波数変換マイクロ波パワー源システム10は、ソリッドステート周波数変換マイクロ波パワー源12を利用して、第1の周波数を有するマイクロ波を提供する。本発明で使用されるマイクロ波周波数(すなわち、第1の周波数)は、434MHzを例にしたが、これに限定されない。
【0041】
共振チャンバー加熱システム30は、ウェーハ受け台座32及びアンテナ34を有する共振チャンバー36を備える。焼鈍すべき材料200は、共振チャンバー36のウェーハ受け台座32のチャンバー33に置かれる。周波数変換マイクロ波パワー源システム10からのマイクロ波は、共振チャンバー加熱システム30のアンテナ34を経由して、共振チャンバー36に入って、共振チャンバー36において、共振モードを励起して、焼鈍すべき材料200に対して焼鈍処理を行う。上記の焼鈍すべき材料200は、例えば炭化ケイ素であり、且つ例えば炭化ケイ素ウェーハである。しかし、本発明では、焼鈍すべき材料が炭化ケイ素材料を例にして説明し、特に、炭化ケイ素ウェーハを例にしたが、本発明はこれに限定されない。焼鈍処理を行うことが可能な材料であれば、高速加熱を行うことが必要かどうかにも係わらず、全てが本発明に適用することができる。
【0042】
検知制御システム50は、周波数変換マイクロ波パワー源システム10からのマイクロ波の前進信号、及び共振チャンバー加熱システム30からの反射信号を検出することにより、前進信号および反射信号の変化に応じて、調整命令を即時に生成する。周波数変換マイクロ波パワー源システム10は、この調整命令によって周波数掃引モードに入って、最低マイクロ波反射である最高工作マイクロ波周波数を見つかって、この最低マイクロ波反射である最高工作マイクロ波周波数を即時に選択して、第2の周波数として、本来の第1の周波数を取り替わることにより、焼鈍すべき材料200からの共振周波数の変化を補償して、反射波を最小にする。
【0043】
詳細的には、本発明に係る高速焼鈍装置100において、周波数変換マイクロ波パワー源システム10は、ソリッドステート周波数変換マイクロ波パワー源12と、インピーダンスマッチャー(Match Box)18と、を備える。インピーダンスマッチャー18は、上記のアンテナ34(すなわち、カップリングアンテナ)と連接する。ソリッドステート周波数変換マイクロ波パワー源12は、マイクロ波信号生成器(Signal Generator)14と、ソリッドステートパワーアンプ(Solid State Power Amplifier;SSPA)16と、を備える。マイクロ波信号生成器14は、ローパワーのマイクロ波信号を生成するためのものである。ソリッドステートパワーアンプ16は、このローパワーのマイクロ波信号を拡大して、ハイパワーのマイクロ波を生成する。周波数変換マイクロ波パワー源システム10は、インピーダンスマッチャー18によってインピーダンス整合を行うことにより、マイクロ波の反射を減少し、エネルギーの使用効率を増加し、マイクロ波パワー源の安全を確保する。本発明は、産業用途に属し、使用可能な周波数がISM周波数帯域(Industrial Scientific Medical Band)に属する。ITU無線規則によると、マイクロ波の範囲に属するのは、433.05~434.79MHz、902~928MHz、2400~2483.5MHz…などである。マイクロ波の周波数が高いほど、共振チャンバーの寸法が小さく、そしてエネルギー均一区が小さくなる。本発明の目標は、8インチのウェーハを処理することが可能であることにあるため、TM010単一モード共振を採用する。共振チャンバーの設計は、直径が約500mmである。この寸法では、周波数が2400MHzよりも高いマイクロ波が、均一な焼鈍処理領域を十分に提供することが困難であり、且つその他の共振モードを励起しやすい。このため、単一モード操作の利点が喪失し、且つマイクロ波のエネルギー分布の均一性を維持しにくい。このため、本発明で使用されるマイクロ波の中心周波数は、約433.05~434.79MHz又は902~928MHzの範囲に入ることが好ましく、434MHzであることが更に好ましい。周波数掃引モードの周波数掃引範囲は約±10MHzである。すなわち、周波数掃引範囲は、例えば、本来のマイクロ波の第1の周波数を10MHzに増減する。この周波数掃引範囲は、例だけであり、もちろん、実際の必要によって、周波数掃引範囲の数値を増減することができる。本発明に適用される出力パワーは、プロセスの必要によって変更することができ、特別の範囲に限定されない。
【0044】
しかし、本発明に適用されるマイクロ波の周波数(すなわち、第1の周波数)は、上記の範囲に限定されず、例えば、本発明は、約2400~2483.5 MHzのマイクロ波周波数を使用することもでき、更に、ITU無線規則の規定に属しない周波数を使用してもよい。例えば、使用許可を申請することが必要な500MHz、又はその他の周波数を使用する。ただし、共振チャンバーの設計や加工可能サイズは、それに応じて変更することが好ましく、一般の知識を有する者は、本発明に開示する内容に応じて変更方法を知るはずであり、詳細な説明を省略した。
【0045】
インピーダンス整合は、高速加熱を実現することに対して、極めて重要である。焼鈍すべき材料200は、温度の上昇により、物理的特性が変化して、共振チャンバーの共振周波数を変化して、マイクロ波の反射が減少して加熱性能が降下する。このため、高速に応答してマイクロ波の反射を減少して、本来の加熱効率を維持することが必要である。本発明で採用されるソリッドステート周波数変換マイクロ波パワー源12とインピーダンスマッチャー18から構成されるFM高速マッチング(fast matching)メカニズムを利用すると、上記の要求を達成することができる。すなわち、まず、プロセスにおける共振チャンバー36の共振周波数およびインピーダンスの変化を測定して記録し、そしてインピーダンス整合を達成したときのキャパシタンス(C)及びインダクタンス(L)の範囲に対応すると、この範囲内に適当の数値を選択して、キャパシタンス(C)及びインダクタンス(L)のインピーダンスを固定して変更しない。焼鈍プロセスにおいて、共振チャンバー36の共振周波数およびインピーダンスが変化すると、本発明では、ソリッドステート周波数変換マイクロ波パワー源12の動作周波数を変更して、上記の固定式インピーダンス整合回路に合わせると、高速マッチの応答を達成することができる。すなわち、インピーダンスマッチャー18は、固定インピーダンスを有し、ソリッドステート周波数変換マイクロ波パワー源12は、検知制御システム50がマイクロ波の反射によって生成した調整命令により、マイクロ波信号に対して周波数掃引モードを行う。最高のマイクロ波周波数を見つかることにより、マイクロ波の反射を降下する目標を達成する。換言すると、インピーダンスマッチャー18は、ハイパワーの焼鈍プロセスを行う前に、インピーダンスマッチャー18のインピーダンス素子が調整されて、反射されるマイクロ波が極めて小さく、マッチ条件を達成することができる。ハイパワーの焼鈍プロセスを行っているときに、焼鈍すべき材料200の物理的特性は、温度の上昇により変化して、共振チャンバー36の共振周波数が変化されて、マイクロ波の反射量が増加する。このとき、検知制御システム50は、調整命令を送り出して、ソリッドステート周波数変換マイクロ波パワー源12を高速周波数掃引モードに調整して、最小の反射を得ることが可能な動作周波数を取得して、共振チャンバー加熱システム30とのインピーダンス整合を達成する。普通の知識を持っている人は、本発明で開示した内容によって、負荷インピーダンス変化範囲の検知方法、及びそれに対応する固定マッチ回路の採用を明確に知っているので、説明を省略した。
【0046】
本発明に係る高速焼鈍装置100の共振チャンバー加熱システム30において、共振チャンバー加熱システム30の共振チャンバー36は、上円盤36a、中空円筒36b及び下円盤36cから構成されるチャンバーを備える。前記チャンバーはステンレスで構成される。上円盤36aと下円盤36cとは、例えば放物線円盤である。これにより、高温な炭化ケイ素ウェーハから放射された赤外線を焼鈍すべき材料200へ有効に反射することができる。上円盤36aと下円盤36cとは、それぞれ、中空円筒36bの両側に設けられている。共振チャンバー36のアンテナ34は、例えば、直径が約20mmである金属ボール34bと、金属ボール34bと連接する直径が約10mmである金属棒34aと、から構成される。金属棒34aは、上円盤36aの頂部の中央に連接されており、且つ周波数変換マイクロ波パワー源システム10のインピーダンスマッチャー18と連接する。これにより、アンテナ34を経由して、マイクロ波を共振チャンバー36に導入すると共に、共振チャンバー36で上記の共振モードを励起する。焼鈍すべき材料200の出し入れを行うために、共振チャンバー36の上円盤36a及び下円盤36cのうちの一つは、例えば、中空円筒36bに脱着可能に連接されている。これにより、上方または下方から、焼鈍すべき材料200の出し入れを行うことができる。ただし、本発明はこれに限定されない。もちろん、本発明は、中空円筒36bに取出口を増設することにより、側辺から焼鈍すべき材料200の出し入れを行ってもよい。換言すると、本発明は、これに限定されず、焼鈍すべき材料200の出し入れを行うことが可能な技術的手段であれば、全てが本願の請求範囲に属する。
【0047】
エネルギーの使用効率、及び適当なマイクロ波エネルギー均一領域を増加するために、本発明は、434MHzのマイクロ波源を採用してマイクロ波を生成することが好ましい。共振チャンバー36は、単一TM010共振モードを発生可能な構成であることが好ましい。共振チャンバー36の空いたチャンバーの品質係数(Q)は6,000を超えるため、マイクロ波の強度は極めて高い。焼鈍すべき材料200は炭化ケイ素ウェーハを例にし、共振チャンバー36は、直径が約500mmであり、多種の寸法(4インチ、6インチ及び8インチ)の炭化ケイ素ウェーハに対して焼鈍処理を行うことができる。炭化ケイ素ウェーハは、共振チャンバー36の中央にあるウェーハ受け台座32内に置かれ、且つマイクロ波の強度が最も高い領域に位置する。ウェーハ受け台座32が、例えば、共振チャンバー36に回転可能に設けられており、これにより、焼鈍すべき材料200を焼鈍するときの加熱の均一性を増加する。ウェーハ受け台座32は、例えばシャフト35に設けられており、且つシャフト35は、例えばモータ(図示せず)に駆動されて回転する。ただし、本発明に係るウェーハ受け台座32は、これに限定されず、何れかの周知の技術的手段により回転してもよい。そして、本発明は、直径が500mmである共振チャンバー36を例にしたが、これに限定されない。すなわち、本発明に係る共振チャンバー36は、実際の必要を見て、他の適当の直径や長度を採用してもよい。
【0048】
炭化ケイ素ウェーハは、極めて高い温度の状態で、放射放熱が支配的である(温度の4乗に比例する)。同時に、ウェーハは平面構造なため、放射面積が大きく、これにより、加熱効率を向上させ、加熱温度に到達するためには、放射損失を大幅に減らす必要があります。本実施例では、共振チャンバー36の上下面が、光学研磨された放物線の構成(上円盤36a及び下円盤36c)を採用し、赤外線反射層37がそれぞれ塗布されていることにより、赤外線の反射率が増加する反射鏡となって、放射ロスの最小化を実現する。上記の赤外線反射層37は、例えば金属であり高反射率を有する材料を採用する。一方、共振チャンバー36の中空円筒36bの内面に、赤外線反射層37を塗布してもいいし、塗布しなくてもよい。加熱待機の炭化ケイ素ウェーハは、共振チャンバー36内に位置し、且つ適正なマイクロ波吸収材料で作製されたウェーハ受け台座32内に置かれることが好ましい。ウェーハ受け台座32は、共振チャンバー36の中央に位置することが好ましい。共振チャンバー36の中央は、マイクロ波のエネルギーが最も多い領域である。
【0049】
ウェーハ受け台座32の機能は、炭化ケイ素ウェーハ(すなわち、焼鈍すべき材料200)を固定する他、マイクロ波を吸収して生成する熱エネルギーを炭化ケイ素ウェーハに均一に分布することができ、炭化ケイ素ウェーハの内部の熱応力による破裂を防止することができる。例えば、共振チャンバー36のウェーハ受け台座32は、ベース32aと、上蓋32bと、を備える。上蓋32bは、例えば、ベース32aを脱着可能にカバーすることにより、チャンバー33を形成する。焼鈍すべき材料200は、ベース32a及び上蓋32bで構成されるチャンバー33に脱着可能に位置決められている。一方、本発明に係るウェーハ受け台座32のベース32a及び/又はチャンバー33は、特定の形状に限定されない。例えば、焼鈍すべき材料200がウェーハである場合には、ウェーハ受け台座32のベース32a及び/又はチャンバー33の投影形状は、例えば円形を呈する。一方、上蓋32bはベース32aのチャンバー33をことにより、チャンバー33における焼鈍すべき材料200を完全にカバーすることが好ましいが、本発明はこれに限定されない。すなわち、上蓋32bは、ベース32aのチャンバー33の一部をカバーし、且つ残り部分の焼鈍すべき材料200の表面が露出してもよい。
【0050】
本発明では、共振チャンバー36のウェーハ受け台座32は、例えばマイクロ波の一部を吸収して熱エネルギーを生成して、焼鈍すべき材料200に伝導して加熱し、且つウェーハ受け台座32は、マイクロ波の残り部分を貫通することを許可ことにより、ウェーハ受け台座32のチャンバー33に置かれた炭化ケイ素ウェーハが直接に加熱して反応される。共振チャンバー36のウェーハ受け台座32は、マイクロ波吸収材料で構成されることが好ましく、50%を超えるマイクロ波が貫通することを許可することが好ましく、炭化ケイ素ウェーハを加熱する。焼結された気孔率が20%~30%である炭化ケイ素は、ウェーハ受け台座の好適な材料であり、これは、434MHzのマイクロ波が炭化ケイ素吸収されるが、マイクロ波の貫通深さは20mmを超えるため、焼結により作製された多孔性の炭化ケイ素に対して、貫通深さはもっと深く、上記のウェーハ受け台座32の機能を達成することができ、そして多数回の加熱および冷却を行っても破裂せず、寿命は長い。一方、ウェーハ受け台座32は黒鉛を採用してもよい。
【0051】
また、炭化ケイ素ウェーハの厚さは極めて薄いため、マイクロ波に直接に暴露すると、そのエッジは、高電界強度の分布が生成しやすく、過熱になり、更に、先端放電が発生する。このため、ウェーハ受け台座32は、焼鈍待機の炭化ケイ素ウェーハのエッジをカバーすることが好ましい。これにより、炭化ケイ素ウェーハのエッジの過熱を防止することができる。
【0052】
本発明では、検知制御システム50は、更に、共振チャンバー加熱システム30に設けられている気圧制御システム38を備える。気圧制御システム38は、共振チャンバー36の圧力および入力ガス流量の検知及び制御を行って、共振チャンバー36の気圧値を、例えば予定の気圧に保持する。この予定の気圧は、約0.1atm~10atmであり、プロセスを見て設定される。気圧制御システム38は、共振チャンバー36に設けられている圧力検出ユニット46を備える。圧力検出ユニット46は、共振チャンバー36の気圧値を検知するためのものであり、例えば真空計(Vacuum gauge)である。気圧制御システム38は、更に、例えば、排気ユニット40と、圧力制御ユニット41と、ガス入力ユニット42と、を備える。排気ユニット40及びガス入力ユニット42は、それぞれ、共振チャンバー36と連接する。圧力制御ユニット41は、コントローラーであり、圧力検出ユニット46に検出された気圧値を受信することにより、排気ユニット40及び/又はガス入力ユニット42の動作を制御して、共振チャンバー36の気圧値を、上記の予定の気圧に保持する。
【0053】
詳細的には、本実施例では、窒素やアルゴンなどのガスは、ガス入力ユニット42を経由して、設定された流量で共振チャンバー36に流入して、共振チャンバー36の排気ユニット40と連接する排気口を経由して排出される。上記のガスがガス入力ユニット42を経由して共振チャンバー36に流入する前に、まず、排気ユニット40により共振チャンバー36のエア抜きを行って、共振チャンバー36が上記の予定の気圧になるまで、ガス入力ユニット42を経由して、窒素やアルゴンなどのガスを共振チャンバー36に流入する。これにより、共振チャンバー36内は、設定された純ガス雰囲気を実現する。ガス入力ユニット42は、例えば上記ガスのガス源であり、このガス源は、例えば、第1の制御閥(符号なし)を介して共振チャンバー36と連接する。排気ユニット40は、例えば真空ポンプであり、この真空ポンプは、例えば、第2の制御閥(符号なし)を介して共振チャンバー36と連接する。
【0054】
本発明では、窒素やアルゴンなどのガスを、上記の供給流量で、ガス入力ユニット42を経由して共振チャンバー36に流入すると共に、排気ユニット40と結合して、排気ユニット40から、ある排気流量で、共振チャンバー36におけるガスを排出する。上記の排気流量は供給流量に対応することにより、共振チャンバー36の気圧値を、上記の予定の気圧に保持する。ただし、本発明は、上記に挙げられた、気圧値を維持する技術的手段に限定されず、共振チャンバー36の気圧値を上記の予定の気圧に保持することができる全ての技術的手段は、本発明に適用することができる。本発明は、例えば、圧力制御ユニット41を省略して、下記のコンピューター56により、圧力検出ユニット46に検出された気圧値を受信して、ガス入力ユニット42の供給流量、及び排気ユニット40の排気流量を制御してもよい。
【0055】
本発明に係る高速焼鈍装置100において、検知制御システム50は、更に、方向カプラー(Directional Coupler)52と、動力計(Power Meter)54と、を備える。方向カプラー52は、入力および反射のマイクロ波信号を検出して、検出された信号を動力計54に送って、マイクロ波の共振チャンバー36及び焼鈍すべき材料200とのカップリングを検知するためのものである。詳細的には、方向カプラー52は、ソリッドステートパワーアンプ16とインピーダンスマッチャー18との間に設けられており、入力および反射のマイクロ波信号を検出する。すなわち、方向カプラー52は、周波数変換マイクロ波パワー源システム10からのマイクロ波の前進信号、及び共振チャンバー加熱システム30からの反射信号を検出するためのものである。次に、方向カプラー52は、検出された信号を動力計54に送って、マイクロ波の共振チャンバー36及び焼鈍すべき材料200とのカップリングの変化(例えばパワー変化)を即時に検出するためのものである。これにより、コンピューター56は、このパワー変化のデータを受信して、上記のパワー変化のデータによって、調整命令を即時に生成して、周波数変換マイクロ波パワー源システム10の動作を制御する。
【0056】
検知制御システム50は、更に、光学温度測定装置(Optical Pyrometer)58を備える。光学温度測定装置58は、焼鈍すべき材料200の温度値を即時に検出するためのものであり、例えば赤外線高温温度計である。そしてコンピューター56は、更に、光学温度測定装置58に電気的に接続されていることにより、光学温度測定装置58に検知された温度値と上記のパワー変化とによって、調整命令を生成して、マイクロ波の入力のエネルギーを制御する。これにより、必要の加熱温度や冷却温度に達するように制御することができる。本発明では、黒体放射源を使用して検知された炭化ケイ素材料の放射率(Emissivity)は0.74であり、この放射率値を光学温度測定装置58に入力すると、本発明に開示した技術の全ての温度を測定することができる。一方、検知制御システム50は、更に、例えば、コンピューター56に電気的に接続されているモニター60を備える。モニター60により、検知制御システム50の各コンポーネントの検知結果を即時に表示することができ、例えば、全てのマイクロ波と温度とのデータは、コンピューターに入力されて記録および処理を行って、モニター60に立即に表示することができる。
【0057】
本発明に係る高速焼鈍装置によれば、次のような効果がある。
(1)434MHzのマイクロ波共振チャンバーにより、炭化ケイ素ウェーハに対して高速焼鈍を行う場合には、単一共振TM010モードを採用すると、電磁界が均一で充分な領域を取得して、4インチから8インチのウェーハを処理することができる。円筒形共振チャンバーは、上下が放物線で構成される内面を備える。これにより、炭化ケイ素ウェーハの高温での大量の放射ロスが発生するという問題を解決することができ、1,500℃度~2,000度℃までに加熱することができる。
(2)固定周波数マグネトロンの代わりに、周波数変換ソリッドステート電子素子を使用して、マイクロ波パワー源とする。これにより、熱処理の過程中に、掃引周波数が柔軟性を有し、最高工作マイクロ波周波数の選択が許可され、焼鈍すべき材料の温度の変化によるマイクロ波共振チャンバーの共振周波数の変化を補償することができる。同時に、これはインピーダンスマッチャーと高速マッチモードを構成して、高速焼鈍の要求に満足することができる。
(3)共振チャンバーのウェーハ受け台座は、炭化ケイ素ウェーハを固定する他、マイクロ波による熱エネルギーの一部を吸収して、炭化ケイ素ウェーハに均一に伝導することができ、炭化ケイ素ウェーハの内部熱応力による破裂を防止することができる。同時に、殆どのマイクロ波が炭化ケイ素ウェーハを貫通することを許可することにより加熱すると共に、炭化ケイ素ウェーハのエッジの過熱を防止することができる。
(4)検知制御システムは、ソフトウェアおよびハードウェアと結合して、即時にフィードバック可能な自動化システムを構成することにより、装置全体は、柔軟性、安定性および信頼性が向上する。
【符号の説明】
【0058】
10 周波数変換マイクロ波パワー源システム
12 ソリッドステート周波数変換マイクロ波パワー源
14 マイクロ波信号生成器
16 ソリッドステートパワーアンプ
18 インピーダンスマッチャー
30 共振チャンバー加熱システム
32 ウェーハ受け台座
32a ベース
32b 上蓋
33 チャンバー
34 アンテナ
34a 金属棒
34b 金属ボール
35 シャフト
36 共振チャンバー
36a 上円盤
36b 中空円筒
36c 下円盤
37 赤外線反射層
38 気圧制御システム
40 排気ユニット
41 圧力制御ユニット
42 ガス入力ユニット
46 圧力検出ユニット
50 検知制御システム
52 方向カプラー
54 動力計
56 コンピューター
58 光学温度測定装置
60 モニター
100 高速焼鈍装置
200 焼鈍すべき材料
図1
図2