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特開2023-9929ポリエーテルポリオールおよび/またはポリエーテルモノオールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009929
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】ポリエーテルポリオールおよび/またはポリエーテルモノオールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/26 20060101AFI20230113BHJP
   C08G 65/10 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
C08G65/26
C08G65/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021113605
(22)【出願日】2021-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】315019414
【氏名又は名称】三井化学SKCポリウレタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】吉村 厚樹
(72)【発明者】
【氏名】丸岡 勇介
(72)【発明者】
【氏名】山本 忠
【テーマコード(参考)】
4J005
【Fターム(参考)】
4J005AA04
4J005AA12
4J005BB01
4J005BB02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】粘度が低いポリエーテルポリ(モノ)オールを製造するポリエーテルポリ(モノ)オールの製造方法を提供する。
【解決手段】ポリエーテルポリ(モノ)オールの製造方法は、複合金属シアン化物錯体触媒の存在下で、活性水素基を有する開始剤に、アルキレンオキシドを開環付加重合させて、ポリエーテルポリ(モノ)オールを製造するポリエーテルポリ(モノ)オールの製造方法である。ポリエーテルポリ(モノ)オールの当量分子量が、2000g/モル以上である。ポリエーテルポリ(モノ)オールの製造方法は、下記式(1)~下記式(3)を満足する。
反応倍率=ポリエーテルポリ(モノ)オールの当量分子量/開始剤の当量分子量(1)
X=アルキレンオキシドの供給時間/反応倍率(2)
X≧ポリエーテルポリ(モノ)オールの当量分子量/3000(3)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合金属シアン化物錯体触媒の存在下で、
活性水素基を有する開始剤に、アルキレンオキシドを開環付加重合させて、ポリエーテルポリ(モノ)オールを製造するポリエーテルポリ(モノ)オールの製造方法であって、
前記ポリエーテルポリ(モノ)オールの当量分子量が、2000g/モル以上であり、
下記式(1)~下記式(3)を満足する、ポリエーテルポリ(モノ)オールの製造方法。
反応倍率=ポリエーテルポリ(モノ)オールの当量分子量/開始剤の当量分子量 (1)
X=アルキレンオキシドの供給時間/反応倍率 (2)
X≧ポリエーテルポリ(モノ)オールの当量分子量/3000 (3)
【請求項2】
前記ポリエーテルポリ(モノ)オールの当量分子量が、5000g/モル以上12500g/モル以下である、請求項1に記載のポリエーテルポリ(モノ)オールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエーテルポリオールおよび/またはポリエーテルモノオールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエーテルポリ(モノ)オールは、ポリイソシアネートと反応させて、ポリウレタン樹脂を得るための、ポリウレタン原料として広く知られている。
【0003】
このようなポリエーテルポリ(モノ)オールは、例えば、活性水素基を有する開始剤に、アルキレンオキシドを開環付加重合させることにより製造できる。
【0004】
このような製造方法として、例えば、複合金属シアン化物(DMC)触媒の存在下において、1以上のH官能性スターター化合物および1以上のアルキレンオキシドから、8000~20000g/モルの当量分子量を有するポリエーテルポリオールを製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、この方法では、15時間~23時間かけて、反応器にアルキレンオキシドを供給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2014-518302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、取り扱い性の観点から、ポリエーテルポリ(モノ)オールの粘度をより低くすることが要求される。
【0007】
本発明は、粘度が低いポリエーテルポリ(モノ)オールを製造するポリエーテルポリ(モノ)オールの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明[1]は、複合金属シアン化物錯体触媒の存在下で、活性水素基を有する開始剤に、アルキレンオキシドを開環付加重合させて、ポリエーテルポリ(モノ)オールを製造するポリエーテルポリ(モノ)オールの製造方法であって、前記ポリエーテルポリ(モノ)オールの当量分子量が、2000g/モル以上であり、下記式(1)~下記式(3)を満足する、ポリエーテルポリ(モノ)オールの製造方法である。
反応倍率=ポリエーテルポリ(モノ)オールの当量分子量/開始剤の当量分子量 (1)
X=アルキレンオキシドの供給時間/反応倍率 (2)
X≧ポリエーテルポリ(モノ)オールの当量分子量/3000 (3)
【0009】
本発明[2]は、前記ポリエーテルポリ(モノ)オールの当量分子量が、5000g/モル以上12500g/モル以下である、上記[1]に記載のポリエーテルポリ(モノ)オールの製造方法を含んでいる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリエーテルポリ(モノ)オールの製造方法では、反応倍率、アルキレンオキシドの供給時間、および、ポリエーテルポリ(モノ)オールの当量分子量が、所定の関係を満足する。そのため、粘度が低いポリエーテルポリ(モノ)オールを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、Xとポリエーテルポリ(モノ)オールの粘度との関係を示した説明図である。
図2図2は、Xとポリエーテルポリ(モノ)オールの当量分子量との関係を示した説明図である。
図3図3は、各実施例および各比較例における、Xと、ポリエーテルポリ(モノ)オールの当量分子量との関係を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のポリエーテルポリ(モノ)オールの製造方法は、複合金属シアン化物錯体触媒の存在下で、活性水素基を有する開始剤に、アルキレンオキシドを、所定の反応条件で、開環付加重合させて、所定の当量分子量を有するポリエーテルポリ(モノ)オールを製造する方法である。
【0013】
<複合金属シアン化物錯体触媒>
複合金属シアン化物錯体触媒(以下、DMC触媒と称する場合がある。)は、公知のものを用いることができる。複合金属シアン化物錯体触媒の具体例および製造方法は、国際公開パンフレットWO2013/157486号の明細書に記載されている。
【0014】
<開始剤>
開始剤は、1以上の活性水素基を有する。活性水素基としては、例えば、水酸基、チオール基、および、アミノ基が挙げられ、好ましくは、水酸基が挙げられる。つまり、開始剤は、好ましくは、1以上の水酸基を有する開始剤である。
【0015】
1以上の水酸基を有する開始剤としては、低分子量水酸基含有化合物、および、高分子量水酸基含有化合物が挙げられる。
【0016】
低分子量水酸基含有化合物は、当量分子量20g/モル以上、また、200g/モル未満、好ましくは、150g/モル未満の化合物である。低分子量水酸基含有化合物としては、例えば、1価アルコール、2価アルコール、3価アルコール、4価アルコール、5価アルコール、6価アルコール、7価アルコール、および、8価アルコールが挙げられる。
【0017】
1価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-メチル-2-プロパノール、2-エチルヘキサノール、フェノールが挙げられる。2価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2-プロピレングリコール)、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ヘプタメチレングリコール、および、オクタメチレングリコールが挙げられる。3価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、および、トリイソプロパノールアミンが挙げられる。4価アルコールとしては、例えば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)、および、ジグリセリンが挙げられる。5価アルコールとしては、例えば、キシリトールが挙げられる。6価アルコールとしては、例えば、ソルビトール、マンニトール、アリトール、イジトール、ダルシトール、アルトリトール、イノシトール、および、ジペンタエリスリトールが挙げられる。7価アルコールとしては、例えば、ペルセイトールが挙げられる。8価アルコールとしては、例えば、ショ糖が挙げられる。
【0018】
高分子量水酸基含有化合物は、当量分子量200g/モル以上、好ましくは、500g/モル以上、また、5000g/モル以下の化合物である。高分子量水酸基含有化合物としては、例えば、ポリエーテルポリ(モノ)オール(ポリエーテルポリオールおよび/またはポリエーテルモノオール)、ポリエステルポリ(モノ)オール(ポリエステルポリオールおよび/またはポリエステルモノオール)、および、ポリカーボネートポリ(モノ)オール(ポリカーボネートポリオールおよび/またはポリカーボネートモノオール)が挙げられ、好ましくは、ポリエーテルポリ(モノ)オールが挙げられる。
【0019】
ポリエーテルポリ(モノ)オールとしては、例えば、ポリオキシアルキレン(C2~C3)モノオール、ポリオキシアルキレン(C2~C3)ポリオール、ポリテトラメチレンエーテルモノオール、および、ポリテトラメチレンエーテルポリオールが挙げられ、好ましくは、ポリオキシアルキレン(C2~C3)モノオール、および、ポリオキシアルキレン(C2~C3)ポリオールが挙げられる。ポリオキシアルキレン(C2~C3)モノオールおよびポリオキシアルキレン(C2~C3)ポリオールは、アルキレンの炭素数が、2以上3以下のポリオキシアルキレンモノオールおよびポリオキシアルキレンポリオールである。ポリオキシアルキレン(C2~C3)モノオールとしては、例えば、ポリオキシエチレンモノオール、および、ポリオキシプロピレンモノオールが挙げられる。ポリオキシアルキレン(C2~C3)ポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレングリコール(ポリエチレングリコール)、および、ポリオキシプロピレングリコール(ポリプロピレングリコール)が挙げられ、好ましくは、ポリオキシプロピレングリコールが挙げられる。
【0020】
また、開始剤としてのポリエーテルポリ(モノ)オールは、公知の方法により製造される。
【0021】
1以上の水酸基を有する開始剤としては、好ましくは、高分子量水酸基含有化合物、より好ましくは、ポリエーテルポリ(モノ)オールが挙げられる。
【0022】
1以上の水酸基を有する開始剤の水酸基価は、例えば、11mgKOH/g以上、また、例えば、2800mgKOH/g以下である。上記したように、1以上の水酸基を有する開始剤として、好ましくは、高分子量水酸基含有化合物が選択されるため、1以上の水酸基を有する開始剤の水酸基価は、好ましくは、11mgKOH/g以上、より好ましくは、18mgKOH/g以上、また、例えば、好ましくは、280mgKOH/g以下、より好ましくは、112mgKOH/g以下である。
【0023】
なお、1以上の水酸基を有する開始剤の水酸基価は、JIS K 1557-1(2007年)のA法またはB法に準拠するアセチル化法やフタル化法などから求めることができる(以下同様)。
【0024】
開始剤の官能基数は、例えば、1以上、好ましくは、2以上、また、例えば、8以下、好ましくは、3以下である。
【0025】
開始剤の当量分子量は、例えば、20g/モル以上、また、例えば、5000g/モル以下である。上記したように、開始剤として、好ましくは、高分子量水酸基含有化合物が選択されるため、開始剤の当量分子量は、好ましくは、200g/モル以上、より好ましくは、500g/モル以上、また、好ましくは、5000g/モル以下、より好ましくは、3000g/モル以下である。
【0026】
また、開始剤の当量分子量は、下記式(4)により求めることができる。
【0027】
開始剤の当量分子量=56100/開始剤の水酸基価 (4)
【0028】
また、開始剤の当量分子量は、詳しくは詳述するが、下記式(1)を満足する。
【0029】
開始剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0030】
<アルキレンオキシド>
アルキレンオキシドとしては、例えば、炭素数2以上20以下のアルキレンオキシドが挙げられる。炭素数2以上20以下のアルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド(1,2-プロピレンオキシド)、ブチレンオキシド、ペンチレンオキシド、ヘキシレンオキシド、ヘプチレンオキシド、オクチレンオキシド、ノニレンオキシド、スチレンオキシド、および、デシレンオキシドが挙げられる。
【0031】
アルキレンオキシドとしては、好ましくは、炭素数2以上6以下のアルキレンオキシド、より好ましくは、エチレンオキシド、および、プロピレンオキシド(1,2-プロピレンオキシド)が挙げられる。
【0032】
アルキレンオキシドは、単独使用または2種類以上併用することができ、好ましくは、プロピレンオキシドの単独使用、および、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの併用が挙げられる。
<ポリエーテルポリ(モノ)オール>
ポリエーテルポリ(モノ)オールは、この製造方法により得られる反応生成物である。ポリエーテルポリ(モノ)オールは、ポリエーテルポリオールおよび/またはポリエーテルモノオールと定義され、好ましくは、ポリエーテルポリオールである。
【0033】
ポリエーテルポリ(モノ)オールの水酸基価は、例えば、1mgKOH/g以上、好ましくは、5mgKOH/g以上、また、例えば、50mgKOH/g以下、好ましくは、30mgKOH/g以下である。
【0034】
ポリエーテルポリ(モノ)オールの官能基数は、開始剤の官能基数に応じた官能基数である。詳しくは、官能基数1の開始剤を用いた場合には、官能基数1のポリエーテルモノオールが得られ、官能基数2の開始剤を用いた場合には、官能基数2のポリエーテルジオールが得られ、官能基数3の開始剤を用いた場合には、官能基数3のポリエーテルトリオールが得られる。具体的には、ポリエーテルポリ(モノ)オールの官能基数は、例えば、1以上、好ましくは、2以上、また、例えば、8以下、好ましくは、3以下である。
【0035】
ポリエーテルポリ(モノ)オールの当量分子量は、2000g/モル以上である。
【0036】
本発明のポリエーテルポリ(モノ)オールの製造方法では、2000g/モル以上の比較的高分子量のポリエーテルポリ(モノ)オールを製造する。比較的高分子量のポリエーテルポリ(モノ)オールは、粘度が高くなりやすいが、本発明のポリエーテルポリ(モノ)オールの製造方法では、比較的高分子量であっても、低粘度のポリエーテルポリ(モノ)オールを製造することができる。
【0037】
また、ポリエーテルポリ(モノ)オールの当量分子量は、好ましくは、ポリエーテルポリ(モノ)オールの高分子量化の観点から、5000g/モル以上、また、例えば、12500g/モル以下である。
【0038】
なお、ポリエーテルポリ(モノ)オールの当量分子量は、詳しくは後述するが、下記式(1)および下記式(3)を満足する。
【0039】
また、ポリエーテルポリ(モノ)オールの当量分子量は、下記式(5)により求めることができる。
【0040】
ポリエーテルポリ(モノ)オールの当量分子量=56100/ポリエーテルポリ(モノ)オールの水酸基価 (5)
【0041】
<製造方法および反応条件>
ポリエーテルポリ(モノ)オールの製造方法は、複合金属シアン化物錯体触媒と開始剤とを含む反応液に、アルキレンオキシドの一部を仕込む第1工程と、開始剤と複合金属シアン化物錯体触媒とを含む反応液に、アルキレンオキシドの残部を供給する第2工程とを備える。
【0042】
[第1工程]
第1工程では、まず、反応器に、複合金属シアン化物錯体触媒と開始剤とを配合し、複合金属シアン化物錯体触媒と開始剤とを含む反応液を調製する。次いで、窒素雰囲気下で攪拌しながら、反応液を加熱する。
【0043】
複合金属シアン化物錯体触媒の配合割合は、ポリエーテルポリ(モノ)オールの当量分子量に応じて、適宜設定される。
【0044】
詳しくは、反応終了後に、ポリエーテルポリ(モノ)オール100gに対して、例えば、1ppm以上、好ましくは、30ppm以上、また、例えば、500ppm以下、好ましくは、200ppm以下となるように、複合金属シアン化物錯体触媒を配合する。
【0045】
加熱条件として、加熱温度は、例えば、70℃以上、好ましくは、90℃以上、また、例えば、150℃以下、好ましくは、120℃以下である。加熱時間は、例えば、10分以上、好ましくは、20分以上、また、例えば、120分以下、好ましくは、60分以下である。
【0046】
次いで、反応液に、アルキレンオキシドの一部を仕込む。詳しくは、アルキレンオキシドを、開始剤100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、5質量部以上、また、例えば、80質量部以下、好ましくは、20質量部以下の割合で仕込む。
【0047】
これにより、複合金属シアン化物錯体触媒が活性化する。複合金属シアン化物錯体触媒の活性化は、反応液の発熱、および、反応器内の圧力の低下によって、確認することができる。
【0048】
[第2工程]
第2工程では、第1工程後(複合金属シアン化物錯体触媒の活性化後)に、反応液に、アルキレンオキシドの残部を供給する。詳しくは、アルキレンオキシドを、開始剤100質量部に対して、例えば、50質量部以上、好ましくは、100質量部以上、また、例えば、2000質量部以下、好ましくは、1000質量部以下の割合で供給する。
【0049】
また、供給時間は、例えば、2時間以上、好ましくは、6時間以上、より好ましくは、9時間以上、また、例えば、80時間以下、好ましくは、50時間以下、より好ましくは、25時間以下である。
【0050】
また、反応温度は、例えば、100℃以上、また、例えば、150℃以下、好ましくは、130℃以下である。
【0051】
以上により、開始剤にアルキレンオキシドを開環付加重合させることができる。これにより、ポリエーテルポリ(モノ)オールが得られる。
【0052】
なお、反応終了後、未反応のアルキレンオキシドを、蒸留や抽出などの公知の方法により、除去することもできる。
【0053】
また、上記の反応において、反応倍率、アルキレンオキシドの供給時間、および、ポリエーテルポリ(モノ)オールの当量分子量が、所定の関係を満足する。
【0054】
反応倍率は、開始剤に対する、反応生成物(ポリエーテルポリ(モノ)オール)の当量分子量の倍率であって、下記式(1)で示される。
反応倍率=ポリエーテルポリ(モノ)オールの当量分子量/開始剤の当量分子量 (1)
【0055】
アルキレンオキシドの供給時間は、上記した第2工程における供給時間である。詳しくは、アルキレンオキシドの供給時間は、複合金属シアン化物錯体触媒が活性化した時点を始点とする供給時間である。
【0056】
ポリエーテルポリ(モノ)オールの当量分子量は、上記したポリエーテルポリ(モノ)オール(反応生成物)の当量分子量である。
【0057】
そして、反応倍率、アルキレンオキシドの供給時間、および、ポリエーテルポリ(モノ)オールの当量分子量は、下記式(2)および下記式(3)を満足する。
X=アルキレンオキシドの供給時間/反応倍率 (2)
X≧ポリエーテルポリ(モノ)オールの当量分子量/3000 (3)
【0058】
上記式(2)において、Xは、アルキレンオキシドの供給時間と反応倍率との関係を見積もるパラメータである。詳しくは、反応倍率が大きくなれば、アルキレンオキシドの供給時間を大きくする必要がある。
【0059】
反応倍率、アルキレンオキシドの供給時間、および、ポリエーテルポリ(モノ)オールの当量分子量が、上記式(1)~上記式(3)を満足すれば、粘度が低いポリエーテルポリ(モノ)オールを製造することができる。
【0060】
<作用効果>
ポリエーテルポリ(モノ)オールの製造方法では、反応倍率、アルキレンオキシドの供給時間、および、ポリエーテルポリ(モノ)オールの当量分子量が、所定の関係(上記式(1)~上記式(3))を満足する。そのため、粘度が低いポリエーテルポリ(モノ)オールを製造することができる。
【0061】
Xとポリエーテルポリ(モノ)オールの粘度との関係について、図1を参照して説明する。
【0062】
図1は、互いに相異なる当量分子量を有する3つのポリエーテルポリ(モノ)オール(ポリエーテルポリ(モノ)オールA~ポリエーテルポリ(モノ)オールC)について、Xと粘度との関係を示したグラフである。
【0063】
なお、図1において、ポリエーテルポリ(モノ)オールA~ポリエーテルポリ(モノ)オールCの当量分子量は、ポリエーテルポリ(モノ)オールA、ポリエーテルポリ(モノ)オールB、および、ポリエーテルポリ(モノ)オールCの順に、大きくなる。
【0064】
各ポリエーテルポリ(モノ)オールにおいて、ポリエーテルポリ(モノ)オールの粘度は、所定のX値(XA、XBおよびXC参照)までは、Xの増加に伴って、指数関数的に減少する傾向がある。そして、所定のX値(XA、XBおよびXC)を超えると、粘度は、緩やかに減少、または、一定となる傾向がある。
【0065】
また、ポリエーテルポリ(モノ)オールの当量分子量が、大きくなると、所定のX値が大きくなる傾向がある。
【0066】
そして、上記式(1)~上記式(3)は、上記した傾向を示したものである。詳しくは、図2が参照されるように、上記式(3)(X≧ポリエーテルポリ(モノ)オールの当量分子量/3000)は、上記の所定のX値の変化量に対するポリエーテルポリ(モノ)オールの当量分子量の変化量を示したものである。X値およびポリエーテルポリ(モノ)オールの当量分子量が、図2の斜線の領域にあれば、粘度が低いポリエーテルポリ(モノ)オールを製造することができる。一方、X値およびポリエーテルポリ(モノ)オールの当量分子量が、上記領域の範囲外(例えば、図2のa点)であれば、ポリエーテルポリ(モノ)オールの当量分子量に対して、X値が小さいため、ポリエーテルポリ(モノ)オールの粘度を低くできない(詳しくは、図1のa点)。
【0067】
上記したように、ポリエーテルポリ(モノ)オールの粘度は、Xの増加に伴って減少し、最終的には、一定値となる。そして、粘度の減少割合のメリット(粘度減少)が、Xの増加のデメリット(製造効率低下)を上回るポイントを最適粘度とする。詳しくは、ポリエーテルポリ(モノ)オールの最適粘度は、図1に示すように、所定のX値(XA、XBおよびXC)における粘度(PA、PBおよびPC)である。
【0068】
また、ポリエーテルポリ(モノ)オールの最適粘度は、Xの増加量に対する粘度の減少量が、1割以下となった時点の粘度を最適粘度として見積もることができる。例えば、Xの増加量が0.3以上のときに、粘度の減少量が、1割以下となった時点の粘度を最適粘度として見積もることができる。
【0069】
ポリエーテルポリ(モノ)オールの最適粘度は、アルキレンオキシドの種類、ポリエーテルポリ(モノ)オールの当量分子量、および、ポリエーテルポリ(モノ)オールの官能基数に応じて、決定される。詳しくは、ポリエーテルポリ(モノ)オールの当量分子量が大きくなると、ポリエーテルポリ(モノ)オールの最適粘度は大きくなる。また、ポリエーテルポリ(モノ)オールの官能基数が大きくなると、ポリエーテルポリ(モノ)オールの最適粘度が大きくなる。
【0070】
なお、粘度の測定方法は、後述する実施例で詳述する。
【0071】
<変形例>
変形例において、一実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、変形例は、特記する以外、一と同様の作用効果を奏することができる。さらに、一実施形態およびこれらの変形例を適宜組み合わせることができる。
【0072】
上記した説明では、開始剤と複合金属シアン化物錯体触媒とを含む反応液に、アルキレンオキシドの一部を仕込み、複合金属シアン化物錯体触媒の活性化させた後(第1工程)、アルキレンオキシドの残部を供給する(第2工程)。一方、第1工程を実施せず、第2工程のみを実施することもできる。つまり、第2工程において、反応液に、アルキレンオキシドの全部を供給することもできる。このような場合におけるアルキレンオキシドの供給時間は、複合金属シアン化物錯体触媒が活性化した時点を始点とする供給時間である。
【0073】
第1工程および第2工程において、必要により、反応液に公知の溶剤を配合することもできる。つまり、この製造方法は、無溶剤の下、または溶剤の下で、実施する。好ましくは、この製造方法は、無溶剤の下で実施する。
【0074】
また、本発明のポリエーテルポリ(モノ)オールの製造方法では、ポリエーテルポリ(モノ)オールの当量分子量は、2000g/モル以上であるが、ポリエーテルポリ(モノ)オールの当量分子量が、2000g/モル未満であっても、上記式(1)~上記式(3)を満足すれば、粘度が低いポリエーテルポリ(モノ)オールを製造することができる。
【実施例0075】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0076】
1.成分の詳細
各実施例、および、各比較例で用いた成分の、商品名および略語について、詳述する。
PH-DMC:複合金属シアン化物錯体触媒(DMC触媒)、Pharmicell Co.,Ltd.製
PO:プロピレンオキシド(1,2-プロピレンオキシド)
EO:エチレンオキシド
D-400:商品名「アクトコールD-400」、ポリオキシプロピレングリコール、水酸基価280mgKOH/g、当量分子量200g/モル、三井化学SKCポリウレタン株式会社製
D-2000:商品名「アクトコールD-2000」、ポリオキシプロピレングリコール、水酸基価56.1mgKOH/g、当量分子量1000g/モル、三井化学SKCポリウレタン株式会社製
T-3000:商品名「アクトコールT-3000」、ポリオキシプロピレントリオール、水酸基価56.1mgKOH/g、当量分子量1000g/モル、三井化学SKCポリウレタン株式会社製
ML-3000:商品名「アクトコールML-3000」、ポリオキシプロピレンモノオール、水酸基価18.7mgKOH/g、当量分子量3000g/モル、三井化学SKCポリウレタン株式会社製
DL-6000:商品名「アクトコールDL-6000」、ポリオキシプロピレングリコール、水酸基価18.7mgKOH/g、当量分子量3000g/モル、三井化学SKCポリウレタン株式会社製
【0077】
2.ポリエーテルポリ(モノ)オールの製造
実施例1
<第1工程>
反応器に、開始剤としてのD-2000 500gと、PH-DMC135mgとを配合し、開始剤およびPH-DMCを含む反応液を調製した。次いで、減圧による脱気および窒素置換を実施し、反応器内の酸素を除去した。
【0078】
次いで、攪拌翼により300rpmの速度で、反応液を攪拌しながら、加熱し、反応液の温度を100℃に昇温させた。
【0079】
次いで、反応液に、PO 50gを10分かけて仕込んだ。反応液の温度を100℃に保ったまま、反応液を攪拌し、30分後に、反応液の急激な発熱および圧力低下が生じた。これにより、PH-DMCの活性化を確認した。そのときの反応液の温度は、120℃であった。
【0080】
<第2工程>
反応液の温度を120℃に保ったまま、PO 2450gを12時間(供給時間)かけて連続的に供給した。供給後、反応液の温度を120℃に保ったまま、反応液の攪拌を続けて、熟成した。次いで、減圧処理により、微量の未反応のPOを、除去した。これにより、ポリエーテルポリ(モノ)オール(具体的には、ポリエーテルジオール)を製造した。ポリエーテルポリ(モノ)オールの製造量は3000gであった。
【0081】
実施例2~実施例18、および、比較例1~比較例7
実施例1と同様の手順で、ポリエーテルポリ(モノ)オールを製造した。但し、表1に基づいて、アルキレンオキシド、開始剤、反応条件、および、PH-DMCの量を変更した。
【0082】
なお、実施例14~実施例16および比較例6では、アルキレンオキシドとして、PO 1610g、および、EO 790gを用いた。
【0083】
3.評価
<水酸基価>
各実施例および各比較例のポリエーテルポリ(モノ)オール(反応生成物)の水酸基価を、JIS K 1557-1(2007年)のB法に準拠するフタル化法により求めた。また、得られた水酸基価から、ポリエーテルポリ(モノ)オール(反応生成物)の当量分子量を算出した。その結果を表1に示す。
【0084】
<粘度>
各実施例および各比較例のポリエーテルポリ(モノ)オール(反応生成物)の粘度を、JIS K 1557-5(2007年)に準拠するコーン・プレート回転粘度計を用いる方法により求めた。その結果を表1に示す。また、Xの増加量に対する粘度の減少量が、1割以下となった時点で、粘度が、最適粘度に達したと判断した。その結果を表1に示す。
【0085】
4.考察
各実施例および各比較例における、Xと、ポリエーテルポリ(モノ)オールの当量分子量との関係を図3に示す。
【0086】
このとき、ポリエーテルポリ(モノ)オールの粘度を十分に小さくできるXと、ポリエーテルポリ(モノ)オールの当量分子量との範囲(図3の斜線部分)は、図3の関係式(X≧ポリエーテルポリ(モノ)オールの当量分子量/3000)により定められることがわかった。
【0087】
【表1】
図1
図2
図3