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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023099299
(43)【公開日】2023-07-12
(54)【発明の名称】タンタルキャパシタ
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/028 20060101AFI20230705BHJP
   H01G 9/052 20060101ALI20230705BHJP
   H01G 9/012 20060101ALI20230705BHJP
   H01G 9/042 20060101ALI20230705BHJP
   H01G 9/15 20060101ALI20230705BHJP
【FI】
H01G9/028 G
H01G9/052 500
H01G9/012 301
H01G9/042 500
H01G9/15
H01G9/028 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184604
(22)【出願日】2022-11-18
(31)【優先権主張番号】10-2021-0192931
(32)【優先日】2021-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホン、ジン ホ
(72)【発明者】
【氏名】ユー、ヨン ソク
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ヘー スン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ヨン ジュン
(57)【要約】
【課題】本発明の目的の一つは、等価直列抵抗の増加を効果的に抑えながらも、吸湿率を低減することで、信頼性に優れたタンタルキャパシタを提供することである。
【解決手段】本発明は、タンタル粉末を含むタンタル焼結体、上記タンタル焼結体上に配置され、非伝導性粒子である第1フィラーを含む伝導性高分子層及びタンタルワイヤーを含むタンタル本体を含み、上記第1フィラーは、BaTiO、Al、SiO、及びZrOのうちいずれか1種以上の金属酸化物を含むコア及び上記コアの表面に形成されたコーティング膜を含む、タンタルキャパシタを提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンタル粉末を含むタンタル焼結体、上記タンタル焼結体上に配置され、非伝導性粒子である第1フィラーを含む伝導性高分子層及びタンタルワイヤーを含むタンタル本体を含み、
前記第1フィラーは、BaTiO、Al、SiO、及びZrOのうちいずれか1種以上の金属酸化物を含むコア及び前記コアの表面に形成されたコーティング膜を含む、タンタルキャパシタ。
【請求項2】
前記コーティング膜は、PEDOT:PSS(poly(3,4-ethylenedioxythiophene):poly(styrenesulfonate))を含む、請求項1に記載のタンタルキャパシタ。
【請求項3】
前記第1フィラーの前記コアは、SiOである、請求項2に記載のタンタルキャパシタ。
【請求項4】
前記コーティング膜は、前記コアとカップリング剤によって結合された、請求項2に記載のタンタルキャパシタ。
【請求項5】
前記カップリング剤は、前記コアの表面と共有結合し、
前記コーティング膜中のPSSと結合する、請求項4に記載のタンタルキャパシタ。
【請求項6】
前記コーティング膜中のPEDOTは、前記コーティング膜中のPSSとイオン結合する、請求項5に記載のタンタルキャパシタ。
【請求項7】
前記伝導性高分子層は、PEDOT:PSS(poly(3,4-ethylenedioxythiophene):poly(styrenesulfonate))を含む、請求項6に記載のタンタルキャパシタ。
【請求項8】
前記伝導性高分子層は、伝導性粒子である第2フィラーをさらに含む、請求項7に記載のタンタルキャパシタ。
【請求項9】
前記第2フィラーは、グラフェン、炭素ナノチューブ、及びブラックカーボンのうちいずれか1種以上を含む、請求項8に記載のタンタルキャパシタ。
【請求項10】
前記第2フィラーは、表面にコーティングされた金属酸化物コーティング膜を含む、請求項9に記載のタンタルキャパシタ。
【請求項11】
前記タンタル本体は、
前記伝導性高分子層上に配置されたカーボン層と、
前記カーボン層上に配置された銀(Ag)層と、をさらに含み、
前記タンタルワイヤーは、前記タンタル焼結体、前記伝導性高分子層、前記カーボン層、及び前記銀(Ag)層のそれぞれの少なくとも一部を貫通する、請求項10に記載のタンタルキャパシタ。
【請求項12】
第1方向に対向する第5及び第6面、第2方向に対向する第3及び第4面、第3方向に対向する第1及び第2面を含み、前記タンタル本体を取り囲むように形成されたモールド部と、
前記モールド部の第2面に露出し、前記タンタルワイヤーと電気的に連結される陽極リードフレームと、
前記陽極リードフレームと離隔され、前記モールド部の第2面に露出する陰極リードフレームと、を含む、請求項11に記載のタンタルキャパシタ。
【請求項13】
タンタル粉末を含むタンタル焼結体、前記タンタル焼結体上に配置され、第1フィラーを含む伝導性高分子層及びタンタルワイヤーを含むタンタル本体を含み、
前記第1フィラーは、コア及び前記コアの表面に形成されたコーティング膜を含み、
前記コーティング膜は、PEDOT:PSS(poly(3,4-ethylenedioxythiophene):poly(styrenesulfonate))を含む、タンタルキャパシタ。
【請求項14】
前記第1フィラーの前記コアは、BaTiO、Al、SiO、及びZrOのうちいずれか1種以上の金属酸化物を含む、請求項13に記載のタンタルキャパシタ。
【請求項15】
前記伝導性高分子層の一断面を基準に、前記第1フィラーの断面積比は、0.41超過0.81未満である、請求項1に記載のタンタルキャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンタルキャパシタに関するもので、等価直列抵抗の増加を極力抑えながらも、吸湿量を低減して、信頼性を向上させたタンタルキャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
タンタル(tantalum:Ta)素材は、融点が高く、延性及び耐食性などに優れた機械的・物理的特徴により、電気・電子をはじめ、機械、化学工業、医療のみならず、宇宙、軍事などの産業全般に亘って広範囲に使用されている金属である。
【0003】
特に、タンタル素材は、全ての金属の中で、最も安定した陽極酸化皮膜を形成させることができるという特性から、現在でも小型キャパシタの陽極素材として広く用いられている。
【0004】
さらに、近年、タンタル素材は、電子及び情報通信などのIT産業の急速な発展により、その使用量が毎年急速に増加している。
【0005】
タンタルキャパシタ(Tantalum Capacitor)は、タンタルパウダー(Tantalum Powder)を焼結して固化したときに生じる隙間を用いる構造となっており、電極金属としてのタンタルの表面に、陽極酸化法により酸化タンタル(Ta)を形成し、これらを誘電体として、その上に固体電解質として二酸化マンガン(MnO)層又は伝導性高分子層を形成する。
【0006】
また、陰極電極の導出により、二酸化マンガン(MnO)層又は伝導性高分子層の上に、カーボン層及び金属層として銀(Ag)層を形成するようになる。
【0007】
タンタルキャパシタは、等価直列抵抗(Equivalent Series Resistance,ESR)が低く、リップル電流定格が高いという特徴を有する。
【0008】
これにより、アルミニウム電解キャパシタよりも格段に優れた温度依存性及び長いサービス寿命を有することができる。
【0009】
しかしながら、伝導性高分子層の場合、高い吸湿性質のために信頼性の評価に影響を与える可能性があり、高分子自体の性能を改善するためには、さらなる解決方法が必要となる。特に、伝導性高分子層中に非伝導性物質を含有することで、LC(Leakage Current)を発生させる電流の経路を効果的に遮断することができる。
【0010】
一方、伝導性高分子層中の非伝導性物質の含量が増加するにつれて、等価直列抵抗(ESR,Equivalent Series Resistance)の増加が問題となる。これを解決するために、非伝導性物質及び伝導性高分子からなるコア-シェル(Core-Shell)構造の粒子を複合材料として使用する方案が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的の一つは、等価直列抵抗の増加を効果的に抑えながらも、吸湿率を低減することで、信頼性に優れたタンタルキャパシタを提供することである。
【0012】
本発明の目的のもう一つは、高温又は高湿の環境において信頼性を向上させたタンタルキャパシタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施形態は、タンタル粉末を含むタンタル焼結体、上記タンタル焼結体上に配置され、非伝導性粒子である第1フィラーを含む伝導性高分子層及びタンタルワイヤーを含むタンタル本体を含み、上記第1フィラーは、BaTiO、Al、SiO及びZrOのうちいずれか1種以上の金属酸化物を含むコア及び上記コアの表面に形成されたコーティング膜を含む、タンタルキャパシタを提供する。
【0014】
本発明の他の実施形態は、タンタル粉末を含むタンタル焼結体、上記タンタル焼結体上に配置され、第1フィラーを含む伝導性高分子層及びタンタルワイヤーを含むタンタル本体を含み、上記第1フィラーは、コア及び上記コアの表面に形成されたコーティング膜を含み、上記コーティング膜はPEDOT:PSS(poly(3,4-ethylenedioxythiophene):poly(styrenesulfonate))を含む、タンタルキャパシタを提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果の一つとして、等価直列抵抗の増加を効果的に抑えながらも、吸湿率を低減することで、信頼性に優れたタンタルキャパシタを提供することができる。
【0016】
本発明の効果のもう一つとして、高温又は高湿の環境において信頼性を向上させたタンタルキャパシタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係るタンタルキャパシタの斜視図である。
図2】本発明に係るタンタルキャパシタ内のタンタル本体をI方向から見た断面図である。
図3図2のI-I'に沿った断面図である。
図4図3のA領域の拡大図である。
図5図4の第1フィラーのコア-シェル構造を概略的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(または強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上の同一の符号で示される要素は同一の要素である。
【0019】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。
【0020】
図面において、X方向は、第1方向、L方向、又は長さ方向、Y方向は、第2方向、W方向、又は幅方向、Z方向は、第3方向、T方向、又は厚さ方向と定義することができる。
【0021】
図1は、本発明に係るタンタルキャパシタの斜視図である。
【0022】
図1を参照すると、本実施形態のタンタルキャパシタ1000は、タンタル粉末を含み、一断面に露出するタンタルワイヤー150を有するタンタル本体100と、第1方向に対向する第5及び第6面5、6と、第2方向に対向する第3及び第4面3、4と、第3方向に対向する第1及び第2面1、2とを含み、上記タンタル本体100を取り囲むように形成されたモールド部200と、上記モールド部200の第2面2に露出し、上記タンタルワイヤー150と電気的に連結される陽極リードフレーム300と、上記陽極リードフレーム300と離隔され、上記モールド部200の第2面2に露出する陰極リードフレーム400とを含むことができる。
【0023】
タンタル本体100は、本体のX方向に露出するタンタルワイヤー150を有することができる。このとき、タンタルワイヤー150は、上記第1方向(X)にタンタル焼結体110の少なくとも一部を貫通することができる。タンタルワイヤー150は、上記タンタル粉末とバインダーが混合された粉末を圧縮する前に、その中心から偏心するように上記タンタル粉末とバインダーの混合物に挿入して装着することができる。すなわち、タンタル本体100は、バインダーを混合したタンタル粉末にタンタルワイヤー150を挿入装着して所望の大きさのタンタル素子を成形した後、上記タンタル素子を高温及び高真空(10-5torr以下)雰囲気で30分程度焼結させることで作製することができる。
【0024】
モールド部200は、タンタル本体100を覆い、陽極リードフレーム300の第1接続部320の一面と陰極リードフレーム400の第2接続部の一面とが露出するように形成されることができる。
【0025】
本発明に係るタンタルキャパシタのモールド部200は、タンタル本体100を取り囲むようにEMC(エポキシモールディングコンパウンド;epoxy molding compound)などの樹脂をトランスファーモールディング(transfer molding)することで形成されることができる。このようなモールド部200は、外部からタンタルワイヤー150及びタンタル本体100を保護する役割を果たす。
【0026】
陽極リードフレーム300は、ニッケル/鉄合金などの導電性金属からなることができ、第1接続部320、第1リード部330、及び第1曲げ部310を含み、上記第1曲げ部310は、上記第1接続部320を基準に上記タンタル本体110側に傾斜していることができる。上記陽極リードフレーム300の第1接続部320は、モールド部200の第2面2に露出することができる。
【0027】
上記第1接続部320は、モールド部200の下面に露出して、基板の実装時に端子の役割を行うことができる。このとき、上記第3接続部320は、タンタル本体100と離隔されていることができ、本発明に係るタンタルキャパシタ1000の陽極として機能することができる。
【0028】
陰極リードフレーム400は、ニッケル/鉄合金などの導電性金属からなることができ、一体となっている第2曲げ部、第2接続部、及び第2リード部を含むことができる。
【0029】
上記第2接続部は、陽極リードフレーム300の第1接続部320と第1方向(X)に互いに平行するように離隔して配置されることができる。上記陰極リードフレーム400の第2接続部は、モールド部200の第2面2に露出することができる。上記第2接続部は、モールド部200の下面に露出して、基板の実装時に端子の役割を行うことができる。このとき、上記第2接続部は、タンタル本体100と接して、本発明に係るタンタルキャパシタ1000の陰極として機能することができる。
【0030】
図2は、本発明に係るタンタルキャパシタ内のタンタル本体をI方向から見た断面図であり、図3は、図2のI-I'に沿った断面図である。
【0031】
図2を参照すると、本発明の一実施形態に係るタンタルキャパシタ1000のタンタル本体100は、金属粉末を含む成形体を焼結して形成されたタンタル焼結体110と、上記タンタル焼結体110の上部に配置された伝導性高分子層120と、伝導性高分子層120上に配置されたカーボン層130と、カーボン層130上に配置された銀(Ag)層140とを含むことができる。
【0032】
上記タンタルキャパシタは、上記タンタル焼結体110の内部に位置する挿入領域と上記タンタル焼結体110の外部に位置する非挿入領域を有するタンタルワイヤー150をさらに含むことができる。
【0033】
上記タンタル焼結体110は、金属粉末及びバインダーを含む成形体を焼結して形成されることができる。
【0034】
具体的には、金属粉末、バインダー、及び溶剤を一定の比率で混合攪拌し、混合パウダーを圧縮して直方体に成形した後、これを高温及び高振動下で焼結することによって作製されることができる。
【0035】
上記金属粉末は、本発明の一実施形態に係るタンタルキャパシタ1000のタンタル焼結体110に使用できるものであれば、特に制限されず、タンタル(Ta)粉末であることができる。しかしながら、これに制限されず、アルミニウム(Al)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、チタン(Ti)、及びジルコニウム(Zr)を含む群から選択された1種以上であることができ、それによって、タンタル焼結体の代わりに、アルミニウム焼結体、ニオブ焼結体などが使用されてもよい。
【0036】
上記バインダーは、特に制限されず、例えば、セルロース系バインダーであることができる。上記セルロース系バインダーとしては、ニトロセルロース(nitrocellulose)、メチルセルロース(methyl cellulose)、エチルセルロース(ethyl cellulose)、及びヒドロキシプロピルセルロース(hydroxy propyl cellulose)からなる群から選択された1種以上であることができる。また、上記タンタルワイヤー150は、混合パウダーを圧縮する前に、中心から偏心するように挿入装着されることができる。
【0037】
本発明の一実施形態によると、上記タンタル焼結体110には、絶縁層として誘電体酸化層が形成されることができる。すなわち、上記誘電体酸化層は、電気化学反応を用いた化成工程により、上記タンタル焼結体110の表面に酸化皮膜(Ta)を成長させて形成することができる。このとき、上記誘電体酸化層は、上記タンタル焼結体110を誘電体に変化させるようになる。そして、上記誘電体酸化層上に陰極の極性を有する伝導性高分子層120が塗布されて形成されることができる。
【0038】
伝導性高分子層120は、特に制限されず、例えば、伝導性高分子を含むことができる。
【0039】
具体的には、伝導性高分子の場合、EDOT(3,4-ethylenedioxythiophene)やピロールモノマー(Pyrrole Monomer)、又はポリピロール(Polypyrrole)を用いて化学重合又は電解重合の方法を用いて形成され、その後、絶縁層にフォーミングされたタンタル焼結体110の外部表面に伝導性高分子陰極を有する陰極層として形成されることができる。
【0040】
すなわち、上記伝導性高分子層120は、高分子スラリーを用いて形成されることができ、上記高分子スラリーは、ポリピロール(Polypyrrole)、ポリアニリン(Polyaniline)、又はEDOT(3,4-ethylenedioxythiophene)のうち少なくとも1種以上を含むことができる。また、伝導性高分子層120は、PEDOT:PSS(poly(3,4-ethylenedioxythiophene):poly(styrenesulfonate))を含んでもよい。PEDOT:PSSは、polystyrene sulfonate(PSS)を電荷均衡を合わせるテンプレート(template)を使用してEDOTを酸化重合する方法によって製造されることができる。
【0041】
本発明の一例によると、伝導性高分子層120は、第1及び第2フィラー121、122を含むことができ、第1及び第2フィラー121、122の少なくとも一つ以上は、コア-シェル(Core-shell)構造を有することができ、よって、コアの表面に形成されたコーティング膜を含むことができる。伝導性高分子層120に関する詳細な説明については、後述する。
【0042】
カーボン層130は、上記伝導性高分子層120上に積層され、カーボン粉末をエポキシ系の樹脂を含む有機溶媒に溶解して、カーボン粉末が溶解された溶液に上記タンタル焼結体110を含浸した後、有機溶媒を揮発させるために所定の温度で乾燥することで積層される。
【0043】
また、上記カーボン層130は、銀(Ag)イオンが追加することを防止する役割を果たすことができる。
【0044】
次いで、上記カーボン層130の上部面に銀(Ag)ペーストで形成された銀(Ag)層140を含むことができる。
【0045】
上記銀(Ag)層140は、導電性を向上させるために、カーボン層130の外側に積層されることができる。
【0046】
また、上記銀(Ag)層140は、陰極層が有する極性に対する導電性を向上させることで、極性伝達のための電気的連結を容易にすることができる。
【0047】
図4は、図3のA領域の拡大図であり、図5は、図4の第1フィラーのコア-シェル構造を概略的に示した断面図である。
【0048】
図4を参照すると、本発明の一例によるタンタルキャパシタ1000の場合、上述した伝導性高分子層120は、伝導性高分子層120の形成のための高分子スラリー中に第1及び第2フィラー121、122が分散された構造を有することができる。
【0049】
本発明の第1フィラー121の場合、非伝導性粒子を含むことができる。一例として、第1フィラー121はシリカ(SiO)を含むことができるが、これに制限されず、BaTiO、Al、及びZrOのうちいずれか1種以上の金属酸化物を含むことができる。従来のタンタルキャパシタは、伝導性高分子層が高吸湿性質を有するようになり、キャパシタの信頼性が低くなるという問題があった。本発明の場合、シリカなどの非伝導性粒子を含む第1フィラー121が伝導性高分子層120中に分散されることで、伝導性高分子層120の吸湿率を効果的に低減することができる。また、本発明の伝導性高分子層120が非伝導性の第1フィラー121を含むことで、漏れ電流(Leakage Current)の原因になる電流の流れを防止し、伝導性高分子層120の強度を高め、その結果、キャパシタ1000全体の特性を改善することができる。
【0050】
一方、伝導性高分子層120中に第1フィラー121が必要以上に多数配置される場合、吸湿率の低下という側面からは有利であるが、等価直列抵抗(ESR)が高くなるという問題が発生することがある。本発明に係るタンタルキャパシタ1000の場合、第1フィラー121の表面に伝導性高分子が結合されることで、非伝導性粒子の含量が増加してもESRの増加を抑制することができる。
【0051】
図5を参照すると、本発明のタンタルキャパシタ1000による第1フィラー121の構造が具体的に図示される。
【0052】
第1フィラー121は、コア1211及びコア1211を取り囲むコーティング膜1212を含むことができる。これにより、第1フィラー121は、コア-シェル構造を有することができる。図5の拡大図を参照すると、コーティング膜1212は、ポリヘテロ環(例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンなど)、ポリアセチレン、ポリ-p-フェニレン、ポリフェノラートなどの伝導性高分子を含むことができる。非制限的な一例として、伝導性高分子は、PEDOT:PSSであることができる。
【0053】
上記コア1211には、上述した第1フィラー121の材料が含まれることができる。すなわち、コア1211は、シリカ(SiO)を含むことができるが、これに制限されず、BaTiO、Al、及びZrOのうちいずれか1種以上の金属酸化物を含むことができる。
【0054】
図5において、コーティング膜1212は、PSS1212aとPEDOT1212bが結合された伝導性高分子を含むことができる。
【0055】
このとき、PSS1212aは、第1フィラーのコア1211の表面とカップリング剤及び縮合反応を用いて結合されることができ、結果的に、第1フィラーのコア1211は、カップリング剤の無機質材料と反応する作用基と共有結合され、PSS1212aはカップリング剤の有機質材料と反応する作用基と結合されていることができる。また、PEDOT1212bは、PSS1212aとイオン結合されていることができる。
【0056】
一例として、本発明の第1フィラー121のコア1211は、高分子であるコーティング膜1212及びカップリング剤を用いて結合されることができる。このとき、カップリング剤は、分子中に2つ以上の異なる反応基を有することができ、一方は、無機質材料と化学結合する反応基であり、もう一方は、有機質材料と化学結合する反応基であることができる。例えば、カップリング剤は、R-Si(OR')構造を有することができ、このとき、Siを中心に左側には官能基を表記し、右側には加水分解可能な基として、OR'と表記した。カップリング剤は、水、水とアルコールの混合物、又は様々な極性及び非極性溶媒で処理して加水分解されることができる。
【0057】
シリカを含む第1フィラー121のコア1211は、アルカリ水溶液処理反応によって表面にヒドロキシ基(-OH)が形成されることができる。コア1211とカップリング剤を混合する。このとき、コア1211の表面のヒドロキシ基(-OH)と、カップリング剤のヒドロキシ基(-OH)が縮合反応によって共有結合されることができる。PEDOT:PSS水溶性分散液と混合して脱水反応を行うことで、シリカ(コア、1211)の表面にPEDOT1212b:PSS1212aを含むコーティング膜1212が形成されたコア-シェル(Core-shell)構造の第1フィラーが製造されることができる。このとき、コア1211のヒドロキシ基とカップリング剤のヒドロキシ基が共有結合された状態であり、PSS1212a及びPEDOT1212bは、イオン結合された状態であることができる。
【0058】
このように作製された第1フィラー121は、伝導性高分子層120中に分散され、耐圧特性を向上させることができ、破壊電圧(BDV,Breakdown Voltage)特性を向上させ、LC(Leakage Current)を効果的に防止することができる。
【0059】
また、コア1211の表面に化学的に吸着されたコーティング膜1212により、従来水準のESRを維持しながらも、高温環境でESRの増加を効果的に抑制することができる。
【0060】
このようにPEDOT:PSSを含むコーティング膜1212が第1フィラー121のコア1211の表面に結合されていることで、非伝導性を有する第1フィラー121の含量が増加し、よって、等価直列抵抗(ESR)が顕著に増加することを抑制することができる。また、コーティング膜1212がPEDOT:PSSを含むことで、第1フィラー121が伝導性高分子層120の間に容易に分散されることができる。
【0061】
【表1】
【0062】
上記表1は、伝導性高分子層120中のシリカ(SiO)を含む第1フィラー121の比率による吸湿量及び等価直列抵抗(ESR)を示す表である。ここで、第1フィラー121の比率とは、一断面(cross-section)において高分子層120を占める第1フィラー121の面積比率を基準にしたものであり、第1フィラーの面積比率を測定する一例を説明する。先ず、タンタルキャパシタサンプルを準備し、陰極から内側に向かって1/3地点まで研磨工程を行ってタンタル本体の断面を露出させる。ここで、研磨工程は、レーザー研磨を用いることができる。上記断面において伝導性高分子層120はバンド形態であるが、総10個の測定ポイントを等間隔に選定することができ、各測定ポイントの5μm×5μmの領域に対してSEMイメージを分析する。この場合、SEMイメージを得るための条件は、15,000倍以上の倍率、加速電圧10Kvであった。このように得られたイメージを映像分析プログラム、例えば、ペイント(Paint)によってシリカが占める面積をピクセル個数として分析した。
【0063】
表1の実験結果から、吸湿量が10%以上であると、ESRは120mΩである場合に不適合(NG)なものと判定した。表1の実験結果から分かるように、シリカを含む第1フィラー121の含量が増加されるにつれて、伝導性高分子層120の吸湿量が減少する傾向にあり、断面積比が0.41を超えると、吸湿量が適切な水準と低くなることが確認できた。但し、断面積比が0.81水準と増加すると、ESRが120mΩ水準と大きく増加した。このように、本発明に係るタンタルキャパシタは、吸湿量を低減するとともに、ESRの増加は効果的に抑制することができるコア-シェル構造の第1フィラー121が伝導性高分子層120中に分散された構造を有し、吸湿量及びESR特性を考慮すると、第1フィラーの好ましい比率は、断面積比を基準に0.41超過0.81未満に設定することができる。
【0064】
一方、第1フィラー121が伝導性高分子層120に分散される前に、既にコア-シェル構造を有することができ、そのため、表面にPEDOT:PSSを含むコーティング膜1212が形成されていることができる。結果的に、第1フィラー121のコーティング膜1212と伝導性高分子層120が同じ物質を含むことで、第1フィラー121が伝導性高分子層120中に分散される場合に両者間の結合力を確保することができ、剥離不良を防止し、より容易な分散が可能になる。
【0065】
本発明のタンタルキャパシタ1000は、上述したように、コア-シェル構造を有する第1フィラー121、具体的には、表面のコーティング膜1212が伝導性高分子であるPEDOT:PSSを含む第1フィラー121が伝導性高分子層120中に分散されることで、吸湿率の低下、ESR増加の防止、及び信頼性の確保という効果をすべて達成することができる。一方、後述するように、本発明に係るタンタルキャパシタの伝導性高分子層120は、伝導性粒子を含む第2フィラー122をさらに含むことができる。
【0066】
一方、図4を参照すると、第2フィラー122が伝導性高分子層120中に分散されていることができる。
【0067】
本発明の伝導性高分子層120は、グラフェン、炭素ナノチューブ、及びブラックカーボンのうちいずれか1種以上の伝導性粒子を含む第2フィラー122をさらに含むことができる。伝導性高分子層120が伝導性粒子から構成される第2フィラー122を含むことで、上記タンタル焼結体110の中心部における伝導性高分子層120の厚さを容易に調整できるようになる。
【0068】
具体的には、上記タンタル焼結体110の上部に伝導性高分子層120を形成する過程で、上記グラフェン、炭素ナノチューブ、及びブラックカーボンのうちいずれか1種以上の伝導性粒子はコーヒーリング効果(Coffee Ring Effect)を誘発することができる。
【0069】
すなわち、上記グラフェン、炭素ナノチューブ及びブラックカーボンのうちいずれか1種以上の伝導性粒子を含んでいる高分子スラリーは、上記タンタル焼結体110の角部面から蒸発が始まり、先に蒸発した箇所の粒子密度が高くなり、該高くなった粒子密度及び高い固体含量によって周辺のスラリー及び粒子をさらに引っ張るようになり、上記タンタル焼結体110の角部に配置された伝導性高分子層120の厚さを増加させることができ、厚さの調整が容易になる。
【0070】
また、本発明の一実施形態によると、上記伝導性高分子層120がグラフェン、炭素ナノチューブ、及びブラックカーボンのうち異なる伝導性を有する粒子を選択的に選択することで、タンタルキャパシタの等価直列抵抗(ESR)を所望の水準に調節することができる。
【0071】
一方、第2フィラー122も第1フィラー121と同様に、表面にコーティング膜が形成されることができる。コーティング膜としては、金属酸化物が用いられることができる。
【0072】
一方、上記第1及び第2フィラー121、122の平均粒子径は、100nm以上1μm以下、好ましくは、40nm以上5μm以下であることができるが、これに制限されない。
【0073】
それ以外の特徴は、上述した本発明の一実施形態に係るタンタルキャパシタの説明と同一であるため、具体的な説明は省略する。
【0074】
本発明は、上述した実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定されるものとする。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で、当該技術分野における通常の知識を有する者により様々な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属すると言える。
【符号の説明】
【0075】
1000 タンタルキャパシタ
110 タンタル焼結体
120 伝導性高分子層
121、122 第1及び第2フィラー
1211 コア
1212 コーティング膜(シェル)
130 カーボン層
140 銀(Ag)層
150 タンタルワイヤー
200 モールド部
300 陽極リードフレーム
400 陰極リードフレーム
図1
図2
図3
図4
図5