(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023099302
(43)【公開日】2023-07-12
(54)【発明の名称】表盤上に装飾を作る方法
(51)【国際特許分類】
G04B 19/10 20060101AFI20230705BHJP
C25D 7/00 20060101ALI20230705BHJP
C25D 5/02 20060101ALI20230705BHJP
C23C 28/02 20060101ALI20230705BHJP
G04B 19/12 20060101ALI20230705BHJP
G04B 19/06 20060101ALI20230705BHJP
【FI】
G04B19/10 Z
C25D7/00 B
C25D5/02 B
C23C28/02
G04B19/10 E
G04B19/12 Z
G04B19/06 G
G04B19/06 P
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022188967
(22)【出願日】2022-11-28
(31)【優先権主張番号】21218285.1
(32)【優先日】2021-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】22161663.4
(32)【優先日】2022-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】519195497
【氏名又は名称】ルバテル・エ・ワイエルマン・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ジョヴァンニ・ポリ
(72)【発明者】
【氏名】ジョナス・グローブ
(72)【発明者】
【氏名】フレデリク・ジャンルノー
【テーマコード(参考)】
4K024
4K044
【Fターム(参考)】
4K024AA03
4K024AA09
4K024AA10
4K024AA11
4K024AA12
4K024AB02
4K024AB15
4K024BA01
4K024BA02
4K024BA09
4K024BB03
4K024FA05
4K024GA02
4K024GA16
4K044AA02
4K044AA06
4K044AB02
4K044BA06
4K044BA08
4K044BB03
4K044BC09
4K044CA13
4K044CA14
4K044CA18
(57)【要約】
【課題】 単純な工程を用いて美的に優れた計時器のための表盤上に装飾を作る。
【解決手段】 本発明は、計時器のための表盤(1)上に装飾(6)を作る方法に関し、(a)表盤(1)を用意するステップと、(b)表面処理を行い、選択的に構造化し、装飾層(2)を堆積させるステップと、(c)表盤に第1の保護層(3)を堆積させるステップと、(d)型を形成し穴を形成するステップと、(e)凹部(4)を材料で充填して装飾を形成するステップと、(f)第1の保護層を除去するステップと、(g)第2の保護層(7)を堆積させて覆うステップと、(h)切断し研磨するステップと、(i)選択的な表面処理を行うステップと、(j)第2の保護層を除去するステップと、を備える。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計時器のための表盤(1)上に装飾(6)を作る方法であって、
(a)前面(10)と裏面(11)がある表盤(1)を用意するステップと、
(b)前記前面(10)に対して表面処理を行い、前記前面を選択的に構造化し、そして、前記前面(10)上に少なくとも1つの装飾層(2)を堆積させるステップと、
(c)前記少なくとも1つの装飾層が設けられた前記表盤の全周に第1の保護層(3)を堆積させるステップと、
(d)前記第1の保護層(3)及び前記装飾層(2)に少なくとも1つの凹部(4)を機械加工によって形成して将来の装飾のための型を形成し、少なくとも1つの接着点(5)を形成するために前記表盤(1)に穴を形成するステップと、
(e)前記表盤(1)に対して電気めっきによって前記少なくとも1つの凹部(4)を材料で充填して、装飾(6)を形成するステップと、
(f)前記第1の保護層(3)を除去するステップと、
(g)前記表盤(1)の前記前面(10)上に第2の保護層(7)を堆積させて、前記表盤の前記前面及び前記装飾(6)を覆うステップと、
(h)前記表盤(1)を所望の寸法構成となるように切断し、前記第2の保護層(7)及び前記装飾(6)を所定の高さにわたって研磨するステップと、
(i)前記装飾(6)の先端に対して選択的な表面処理を行うステップと、
(j)前記第2の保護層(7)を除去するステップと、を備える
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記表盤(1)は、銅合金、鉄合金、金合金、及び銀合金から選択される材料によって作られる
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
装飾層(2)は、銀、金、銅、ニッケル、ロジウム、及びルテニウムから選択される材料によって作られる
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の保護層及び前記第2の保護層は、樹脂ベースの材料によって作られる
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記樹脂は、アクリル樹脂、ニトロセルロース樹脂、アルキド樹脂、及びポリウレタン樹脂から選択される
ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの凹部を充填する前記材料は、銀、金、銅、ニッケル、ロジウム、及びルテニウムから選択される
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記金属層(2、3)は、好ましくはチタンを含む、接着層(2)を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の保護層及び前記第2の保護層は、溶剤を用いて除去する
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの凹部(4)のエッチングは、前記金属層(2、3)及び前記第1の保護層をエッチングすることを可能にするレーザーエッチング法によって行われる
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ステップ(b)において、前記面の表面処理は、前記表盤の前記前面に対して、研磨、パミシング、及び/又はサンディングを行うことを伴う
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ステップ(b)において、前記前面の表面処理は、ショットブラスト、サンバースト、エンジンターニング、エッチング、フライス、スネーリング、又はサーキュラーグレイン化の操作である
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計時器のための表盤上に装飾を作る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、計時器用コンポーネントの面上に装飾パターンを堆積させる方法を改良することを目的とする。
【0003】
計時器の表盤には、通常、装飾用の装飾がある。例えば、このような装飾は、計時器の針の位置から時間を判断しやすくするための時円を表すものであることができる。また、これらの装飾は、表盤に美的魅力を与えるためにも用いられる。
【0004】
典型的には、このような装飾は、順次的な、結合の工程、そして場合に応じてマスキング及び/又はスタンピングの工程によって、表盤上に取り付けられる。このような方法は、装飾のコストに加えて、装飾が厚くなればなるほど要求される位置精度の要求が高くなるために、製造コストが増加する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、計時器のための表盤上に装飾を作る方法に関し、
(a)前面と裏面がある表盤を用意するステップと、
(b)前記前面に対して表面処理を行うステップと、
(c)前記少なくとも1つの装飾層が設けられた前記表盤の全周に第1の保護層を堆積させるステップと、
(d)前記第1の保護層及び前記装飾層に少なくとも1つの凹部を機械加工によって形成して将来の装飾のための型を形成し、少なくとも1つの接着点を形成するために前記表盤に穴を形成するステップと、
(e)前記表盤に対して電気めっきによって前記少なくとも1つの凹部を材料で充填して、装飾を形成するステップと、
(f)前記第1の保護層を除去するステップと、
(g)前記表盤の前記前面上に第2の保護層を堆積させて、前記表盤の前記前面及び前記装飾を覆うステップと、
(h)前記表盤を所望の寸法構成となるように切断し、前記第2の保護層及び前記装飾を所定の高さにわたって研磨するステップと、
(i)前記装飾の先端に対して選択的な表面処理を行うステップと、
(j)前記第2の保護層を除去するステップと、を備える。
本発明の他の有利な変異形態においては、以下の特徴を有する。
- 前記表盤は、銅合金、鉄合金、金合金、及び銀合金から選択される材料によって作られる。
- 前記装飾層は、銀、金、銅、ニッケル、ロジウム、及びルテニウムから選択される材料によって作られる。
- 前記第1の保護層及び前記第2の保護層は、樹脂ベースの材料によって作られる。
- 前記樹脂は、アクリル樹脂、ニトロセルロース樹脂、アルキド樹脂、及びポリウレタン樹脂から選択される。
- 前記少なくとも1つの凹部を充填する前記材料は、銀、金、銅、ニッケル、ロジウム、及びルテニウムから選択される。
- 前記第1の保護層及び前記第2の保護層は、溶剤又はプラズマを用いて除去する。
- 前記少なくとも1つの凹部のエッチングは、前記金属層及び前記第1の保護層をエッチングすることを可能にするレーザーエッチング法によって行われる。
- 前記ステップ(b)において、前記面の表面処理は、前記表盤の前記前面に対して、研磨、パミシング(pumicing)、及び/又は乾式又は湿式のサンディングを行うことを伴う。
- 前記ステップ(b)において、前記前面の表面処理は、ショットブラスト、サンバースト、エンジンターニング、エッチング、フライス、スネーリング、又はサーキュラーグレイン化の操作、又は装飾パターンを得るための任意の他の操作である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明に係る装飾方法の好ましい実施形態の順次的なステップの1つを示している。
【
図2】本発明に係る装飾方法の好ましい実施形態の順次的なステップの1つを示している。
【
図3】本発明に係る装飾方法の好ましい実施形態の順次的なステップの1つを示している。
【
図4】本発明に係る装飾方法の好ましい実施形態の順次的なステップの1つを示している。
【
図5】本発明に係る装飾方法の好ましい実施形態の順次的なステップの1つを示している。
【
図6】本発明に係る装飾方法の好ましい実施形態の順次的なステップの1つを示している。
【
図7】本発明に係る装飾方法の好ましい実施形態の順次的なステップの1つを示している。
【
図8】本発明に係る装飾方法の好ましい実施形態の順次的なステップの1つを示している。
【
図9】本発明に係る装飾方法の好ましい実施形態の順次的なステップの1つを示している。
【
図10】本発明に係る装飾方法の好ましい実施形態の順次的なステップの1つを示している。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1~10を参照することによって、本発明に係る方法をよく理解することができる。
図1に示している第1のステップ(a)において、本発明に係る方法は、装飾を受けるように意図されている前面10、及び裏面11がある表盤1を用意することを伴う。
【0008】
好ましくは、本発明によると、表盤は、銅合金、鉄合金、金合金、及び銀合金から選択される材料によって作られる。
【0009】
当然、導電材料によって作られた表盤を用いる代わりに、導電層で被覆した任意の材料によって作られた表盤を用いることもできる。例えば、セラミックス製の表盤に銀の層を被覆したものを考えることができる。
【0010】
図2に示しているように、本方法の第2のステップ(b)は、まず、前面10に表面処理処理を行い、そして、前面10に対して選択的にパターン形成してその表面状態を局所的に変え、最後に、その上に表盤全体にわたって少なくとも1つの装飾層2を堆積させることを伴う。
【0011】
前面10の表面処理は、表盤の前面に対して、研磨、パミシング、及び/又はドライサンディング又はウェットサンディングを行うことを伴う。また、プラズマ処理やレーザー処理も可能である。
【0012】
表盤の前面のパターン形成は、伝統的な時計装飾の作業である。したがって、パターン形成は、ショットブラスト、サンバースト、エンジンターニング、エッチング、フライス、スネーリング、サーキュラーグレイン化、装飾パターンを与えるための任意の他の操作、又は装飾パターンを得ることを可能にする任意の他の操作によって行う。このステップは、表盤を装飾することと、装飾層を堆積させるために表盤の面の接着性を高めることの両方を意図している。
【0013】
装飾層2は、銀、金、銅、ニッケル、ロジウム、ルテニウム、及び湿式プロセス(化学的堆積又は電解的堆積)又は乾式プロセス(スパッタリング、PVD)によって得ることができる任意の他の被覆から選択される材料によって作られる。
【0014】
場合によっては、装飾層2と表盤1の間の界面の機械的安定性を改善させるために、装飾層2と表盤1の間に中間的接着層を堆積させることができる。例えば、チタンは、一般的には、ほとんどの典型的な基材に対して十分な接着性を有する。この層は非常に薄いことができる。すなわち、一般的には、接着性を相当に向上させるために数nmであることで十分である。
【0015】
表盤の面上に堆積した金属層は、接着性が良く、形成された装飾の接着を促進する。層が作られている材料は、チタン、ニッケル、金、又は他の材料及び/又は複数の層の組み合わせであることができる。
【0016】
好ましくは、装飾層は、物理気相成長法(PVD)によって作られるが、電気めっき、化学気相成長法(CVD)、原子層堆積法(ALD)のような他のタイプの堆積法も可能である。
【0017】
図3に示しているように、本方法の第3のステップ(c)は、スプレー、浸漬又はスピンコーティングによって表盤全体をポリマー層3で覆い、そして、熱又はUV照射を用いて樹脂3を硬化させることを伴う。当然、この層の厚みは、所望の装飾の大きさに応じて異なる。好ましくは、層の厚みは、0.02mm~0.40mmの範囲内である。
【0018】
樹脂3は、アクリル樹脂、ニトロセルロース系樹脂、アルキド樹脂及びポリウレタン樹脂から選択される。
【0019】
代わりに、表盤1を完全に樹脂3で覆い、そして、硬化させ、樹脂層の頂部を機械加工して樹脂層の上部を完全に平坦にすることができる。
【0020】
図4に示しているように、本方法の第4のステップ(d)は、保護層及び装飾層にて機械加工して少なくとも1つの凹部4を形成して、将来の装飾のための型を形成することを伴う。このステップにおいて、次のステップにおいてガルバニック成長のための少なくとも1つの接着点5を形成するために、表盤の数カ所に穴あけ加工を行う。
【0021】
好ましいことに、将来の装飾の形状を容易に制御し、表盤1の面に対して実質的に垂直な壁とともに凹部4を形成し、多くの部品を迅速にエッチングし、エッチングされた領域の表面状態を細かく制御するために、前記少なくとも1つの凹部4を、レーザー法、又はポジ型又はネガ型のフォトレジストを用いたフォトリソグラフィーによって形成する。
【0022】
図5に示しているように、本方法の第5のステップ(e)は、導電性の表盤1の前面10上に電気めっきによって材料を堆積させて、少なくとも1つの装飾6を単一のステップによって形成することを伴う。表盤1を前記少なくとも1つの接着点5を介してガルバニック槽内に浸漬し、このことによって、表盤1をカソードとして用いることも可能になる。
【0023】
前記少なくとも1つの凹部4を充填して表盤1上に装飾6を形成するために用いられる材料は、銀、金、銅、ニッケル、ロジウム、及びルテニウムから選択される。
【0024】
装飾6を形成するために用いられる材料は、所望の美的結果に応じて、装飾層のために用いられる材料とは異なることができる。
【0025】
図6に示しているように、本方法の第6のステップ(f)は、溶解、スカーリング(scouring)又はプラズマによって第1の樹脂層3から表盤1を遊離することを伴う。好ましくは、堆積した樹脂に適合する有機溶媒を用いて、第1の保護層を除去する。
【0026】
図7に示しているように、本方法の第7のステップ(g)は、スプレーによって表盤1の前面10を第2の保護樹脂層7で覆い、そして、熱又は紫外線照射によって樹脂7を硬化させることを伴う。この第2の樹脂層の厚みは、ステップ(e)において形成された装飾6の高さと少なくとも同等であり、好ましくは、装飾6の高さよりも大きい。
【0027】
第2の保護層を形成する樹脂7は、アクリル樹脂、ニトロセルロース系樹脂、アルキド樹脂、及びポリウレタン樹脂から選択される。
【0028】
図8に示しているように、本方法の第8のステップ(h)は、まず、表盤1を機械加工して所望の寸法構成及び形にし、そして、保護樹脂層7及び装飾6を研磨して所定の高さにすることを伴う。
【0029】
図9に示しているように、本方法の第9のステップ(i)は、装飾6の頂部に対して選択的な表面処理を行うことを伴う。
【0030】
選択的表面処理は、物理的気相成長法(PVD)、化学的気相成長法(CVD)、原子層堆積法(ALD)、又は湿式プロセス(ガルバニック処理)によって金属層8を堆積させることを伴う。
【0031】
図10に示しているように、本方法の最後の第10のステップ(j)は、第2の保護層を除去し、装飾6がある表盤1を解放することを伴う。
【0032】
部品の取り扱いを容易にするため、及び/又は製品の仕様を満たすために、このプロセスにおける様々なステップにおいて表盤に足部を溶接することができる。これらの足部は、被覆2を作るため又は電鋳によって装飾6を形成するための接点として用いることができる。電鋳によって装飾6を形成する場合、このような足部をボア5の代わりに用いる。
【0033】
したがって、本発明に係る方法のおかげで、機械加工、フォトリソグラフィー及び電気めっきの利点を、単一の電気めっきステップで、非常に高い構造精度で、表盤上の装飾を電鋳することに適用することができることがわかる。
【0034】
当然、本発明は、図示している例に限定されず、当業者にとって明らかな様々な代替的形態や改変が可能である。
【0035】
また、本発明に係る方法の好ましい実施形態又は代替的実施形態は、本発明の例示的な実施形態として提供されているにすぎず、これに限定されない。したがって、他の材料、又は他の材料除去方法やパターン形成方法を考えることができる。
【符号の説明】
【0036】
1 表盤
2 装飾層
3 第1の保護層
4 凹部
5 接着点
6 装飾
7 第2の保護層
8 金属層
10 前面
11 裏面
【外国語明細書】