(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023099304
(43)【公開日】2023-07-12
(54)【発明の名称】ポジ型感光性樹脂組成物及びそれから作製される硬化膜
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20230705BHJP
G03F 7/075 20060101ALI20230705BHJP
G03F 7/023 20060101ALI20230705BHJP
C08F 299/02 20060101ALI20230705BHJP
C08F 290/14 20060101ALI20230705BHJP
C08G 77/04 20060101ALI20230705BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/075 521
G03F7/023
C08F299/02
C08F290/14
C08G77/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022193186
(22)【出願日】2022-12-02
(31)【優先権主張番号】10-2021-0193255
(32)【優先日】2021-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】509266480
【氏名又は名称】ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ・コリア・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】弁理士法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ、チュンファ
(72)【発明者】
【氏名】ナ、チョンホ
(72)【発明者】
【氏名】フー、グン
【テーマコード(参考)】
2H225
4J127
4J246
【Fターム(参考)】
2H225AC36
2H225AC54
2H225AC58
2H225AE13P
2H225AF01P
2H225AM10P
2H225AM85P
2H225AN39P
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2H225BA01P
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2H225CA22
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2H225CB06
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2H225CC21
4J127AA03
4J127AA04
4J127BB041
4J127BB081
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4J246AA03
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4J246HA15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ポジ型感光性樹脂組成物及びそれから作製される硬化膜を提供する
【解決手段】本発明は、ポジ型感光性樹脂組成物に及びそれから作製される硬化膜に関する。ポジ型感光性樹脂組成物は、特定構造の酸変性エポキシアクリレート樹脂を含有することにより、優れた膜保持率及び感度を有しながらも、可撓性に優れた硬化膜を提供することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポジ型感光性樹脂組成物であって、
(A)シロキサンコポリマーと;
(B)下記式1で表される構造単位を含む樹脂と;
(C)光活性化合物と;
(D)溶媒と;
を含有するポジ型感光性樹脂組成物:
[式1]
【化1】
(式1において、
Xは、置換若しくは無置換C
1~6脂肪族構造であり、
Y
1及びY
2は、それぞれ独立して、置換若しくは無置換C
1~6アルキレン基又は置換若しくは無置換C
4~10シクロアルキレン基であり、
Zは、水素、置換若しくは無置換C
1~6アルキル基、又は下記式1aで表される置換基であり、
[式1a]
【化2】
式1aにおいて、
Y
3は、置換若しくは無置換C
1~6アルキレン基又は置換若しくは無置換C
4~10シクロアルキレン基であり;
R
1は、水素であるか下記式1bで表される置換基であり、
R
2~R
4は、それぞれ独立して、水素、置換若しくは無置換C
1~10アルキル基、又は置換若しくは無置換C
6~15アリール基であり、
[式1b]
【化3】
式1bにおいて、
Y
4は、置換若しくは無置換C
1~6アルキレン基又は置換若しくは無置換C
4~10シクロアルキレン基である)。
【請求項2】
前記シロキサンコポリマーがジメチルスルホキシド中で11以下の酸解離定数(pKa)を有する、請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記シロキサンコポリマー(A)が3,000~20,000Daの重量平均分子量を有する、請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記シロキサンコポリマー(A)が、下記式2で表される2種以上のシラン化合物に由来する構造単位を含む、請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
[式2]
(R5)pSi(OR6)4-p
(式2において、
pは、0~3の整数であり;
R5は、それぞれ独立して、C1~12アルキル基、C2~10アルケニル基、C6~15アリール基、3~12員のヘテロアルキル基、4~10員ヘテロアルケニル基、又は6~15員ヘテロアリール基であり、
R6は、それぞれ独立して、水素、C1~5アルキル基、C2~6アシル基、又はC6~15アリール基であり、
前記ヘテロアルキル、前記ヘテロアルケニル、及び前記ヘテロアリール基は、それぞれ独立して、O、N、及びSからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を有する)。
【請求項5】
前記シロキサンコポリマー(A)が、pが2である前記式2のシラン化合物に由来する前記構造単位を、Si原子のモル数に対して5~40モル%の量で含む、請求項4に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項6】
固形分基準で前記シロキサンコポリマー(A)100重量部に対して前記樹脂(B)を2~40重量部の量で含む、請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項7】
式1において、
Xが、置換若しくは無置換C1~6アルキレン基であり、
Y1及びY2が、それぞれ独立して、C1~3アルキレン基であり、
Zが式1aで表される置換基であり、式中のY3がC1~3アルキレン基であり、R1が式1bで表される置換基であり、式中のY4がC4~7シクロアルキレン基であり、R2~R4が全て水素である、請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項8】
(E)二重結合を含む光重合性化合物;及び(F)エポキシ化合物;のうちの少なくとも1つを更に含む、請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項9】
前記ポジ型感光性樹脂組成物の総重量を基準として、
15重量%~35重量%の前記シロキサンコポリマー(A);
0.1~15重量%の前記樹脂(B);
0.1~20重量%の前記光活性化合物(C);
0.1~10重量%の前記光重合性化合物(E);
0.1~20重量%の前記エポキシ化合物(F);及び
残部の溶媒(D);
を含有する、請求項8に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物から作製される硬化膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジ型感光性樹脂組成物に及びそれから作製される硬化膜に関する。具体的には、本発明は、優れた膜保持率及び感度を有しながらも可撓性を有する硬化膜(絶縁膜)を形成することができるポジ型感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどに採用される硬化膜(絶縁膜)の作製において、比較的少ない工程で特定のパターンを形成することができるポジ型感光性樹脂組成物が用いられている。
【0003】
しかしながら、従来のポジ型感光性樹脂組成物から作製された硬化膜は、ネガ型感光性樹脂組成物から作製された硬化膜よりも感度が低いという問題を有していた。すなわち、感光性樹脂組成物から硬化膜を形成し、露光及び現像工程を経て特定形状の微細なパターンを有する絶縁膜を形成する場合、ポジ型感光性樹脂組成物から形成された硬化膜は低い感度を有しており、微細なパターンを得ることが困難である。
【0004】
ポジ型感光性樹脂組成物の感度を上げるために、様々な光活性化合物が試みられてきた(特許文献1を参照)。しかしながら、そのようなポジ型感光性樹脂組成物から作製される硬化膜は、現像工程中での膜厚減少が大きく、膜保持率や解像度を必要なレベルまで得るには限界が生じる。
【0005】
その一方で、近年、可撓性を有する液晶ディスプレイや有機ELディスプレイの開発に関心が集まっており、これらのディスプレイを構成する材料の可撓性を高めることが求められている。したがって、上記材料の一つである硬化膜の可撓性を向上させることができるポジ型感光性樹脂組成物の開発が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国特許出願公開第2017-0062273号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
当該技術分野において上述した従来技術の課題を解決するために、本発明者らは様々な研究を行った。その結果、特定の構造の酸変性エポキシアクリレート樹脂をポジ型感光性樹脂組成物に導入すると、優れた感度及び膜保持率のみならず優れた可撓性も有する硬化膜が得られることを発見した。
【0008】
したがって、本発明の目的は、改良されたポジ型感光性樹脂組成物、及びそれから作製される優れた感度、膜保持率、及び可撓性を有する硬化膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、(A)シロキサンコポリマーと;(B)下記式1で表される構造単位を含む樹脂と;(C)光活性化合物と;(D)溶媒と;を含有するポジ型感光性樹脂組成物を提供する:
[式1]
【化1】
(式1において、
Xは、置換若しくは無置換C
1~6脂肪族構造であり、
Y
1及びY
2は、それぞれ独立して、置換若しくは無置換C
1~6アルキレン基又は置換若しくは無置換C
4~10シクロアルキレン基であり、
Zは、水素、置換若しくは無置換C
1~6アルキル基、又は下記式1aで表される置換基であり、
[式1a]
【化2】
式1aにおいて、
Y
3は、置換若しくは無置換C
1~6アルキレン基又は置換若しくは無置換C
4~10シクロアルキレン基であり、
R
1は、水素であるか下記式1bで表される置換基であり、
R
2~R
4は、それぞれ独立して、水素、置換若しくは無置換C
1~10アルキル基、又は置換若しくは無置換C
6~15アリール基であり、
[式1b]
【化3】
式(1b)において、
Y
4は、置換若しくは無置換C
1~6アルキレン基又は置換若しくは無置換C
4~10シクロアルキレン基である)。
【0010】
加えて、本発明は、ポジ型感光性樹脂組成物から形成される硬化膜を提供する。
【0011】
発明の有利な効果
本発明は、特定構造(化1)を有する酸変性エポキシアクリレート樹脂をポジ型感光性樹脂組成物に導入することにより、可撓性に優れた硬化膜を提供することができる。加えて、本発明は、ポジ型感光性樹脂組成物に二重結合を含む光重合性化合物を導入することにより、感度、膜保持率、及び解像度に優れた硬化膜を提供することができる。
【0012】
したがって、本発明によるポジ型感光性樹脂組成物は、可撓性を有する液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどに採用される絶縁膜の形成に有利に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】試験実施例2で硬化膜をポリイミドフィルムにそれぞれ接着し、可撓性を評価した後の割れを目視観察した画像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、本発明がより詳細に説明される。しかしながら、本発明は、以降で説明されているものに限定されない。むしろ、本発明の主旨が変更されない限り、それは、様々な形態へ修正することができる。
【0015】
更に、実施形態の説明を通じて、「含む」という用語は、別段の指示がない限り、他の要素が含まれ得ることを意味する。加えて、本明細書で使用される成分の量や反応条件などに関する全ての数字及び表現は、別途明記しない限り、用語「約」で修飾されていると理解することができる。
【0016】
ポジ型感光性樹脂組成物
本発明は、ポジ型感光性樹脂組成物(以降「感光性樹脂組成物」という)に関する。感光性樹脂組成物は、(A)シロキサンコポリマーと;(B)式1で表される構造単位を含む樹脂と;(C)光活性化合物と;(D)溶媒と;を含み、以降で詳細に説明する。
【0017】
(A)シロキサンコポリマー
本発明による感光性樹脂組成物は、シロキサンコポリマー(又はポリシロキサン)(A)を含む。
【0018】
シロキサンコポリマーは、シラン化合物の加水分解物及び/又はその縮合物に由来する構造を含む。そのような場合、シラン化合物は、一官能性から四官能性のシラン化合物のいずれであってもよい。
【0019】
その結果、シロキサンコポリマーは、以下のQ、T、D、及びM型から選択される少なくとも1つのタイプのシロキサン構造単位を含み得る:
- Q型シロキサン構造単位:例えば、4つの加水分解性基を有する四官能性シラン化合物又はシラン化合物の加水分解生成物に由来し得る、ケイ素原子と4つの隣接する酸素原子とを含むシロキサン構造単位。
- T型シロキサン構造単位:例えば、3つの加水分解性基を有する三官能性シラン化合物又はシラン化合物の加水分解生成物に由来し得る、ケイ素原子と3つの隣接する酸素原子とを含むシロキサン構造単位。
- D型シロキサン構造単位:例えば、2つの加水分解性基を有する二官能性シラン化合物又はシラン化合物の加水分解生成物に由来し得る、ケイ素原子と2つの隣接する酸素原子とを含むシロキサン構造単位(すなわち直鎖シロキサン構造単位)。
- M型シロキサン構造単位:例えば、1つの加水分解性基を有する単官能性シラン化合物又はシラン化合物の加水分解生成物に由来し得る、ケイ素原子と1つの隣接する酸素原子とを含むシロキサン構造単位。
【0020】
具体的には、シロキサンコポリマーは、下記式2で表される2つのタイプのシラン化合物から誘導される構造単位を含む。例えば、シロキサンコポリマーは、下記式2で表される2つのタイプのシラン化合物の加水分解物及び/又はその縮合物であってよい。
[式2]
(R5)pSi(OR6)4-p
(式2において、
pは、0~3の整数であり;
R5は、それぞれ独立して、C1~12アルキル基、C2~10アルケニル基、C6~15アリール基、3~12員のヘテロアルキル基、4~10員ヘテロアルケニル基、又は6~15員ヘテロアリール基であり;R6は、それぞれ独立して、水素、C1~5アルキル基、C2~6アシル基、又はC6~15アリール基であり、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、及びヘテロアリール基は、それぞれ独立してN、O、及びSからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を有する)。
【0021】
式2において、化合物は、pが0である四官能性シラン化合物、pが1である三官能性シラン化合物、pが2である二官能性シラン化合物、又はpが3である単官能性シラン化合物であり得る。
【0022】
シラン化合物は、具体的には、四官能性シラン化合物として、テトラアセトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、テトラベンジルオキシシラン、又はテトラプロポキシシラン;三官能性シラン化合物として、メチルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、d3-メチルトリメトキシシラン、ノナフルオロブチルエチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、p-ヒドロキシフェニルトリメトキシシラン、1-(p-ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2-(p-ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、4-ヒドロキシ-5-(p-ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)ペンチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]プロピルトリメトキシシラン、[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]プロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、及び3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸;二官能性シラン化合物として、ジメチルジアセトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジフェノキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン、3-アミノプロピルジエトキシメチルシラン、3-クロロプロピルジメトキシメチルシラン、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、シクロヘキシルジメトキシメチルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、又はジメトキシジ-p-トリルシラン;並びに単官能性シラン化合物として、トリメチルシラン、トリブチルシラン、トリメチルメトキシシラン、トリブチルエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、又は(3-グリシドキシプロピル)ジメチルエトキシシランであってよい。
【0023】
四官能性シラン化合物の中で、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、及びテトラブトキシシランが好ましく;三官能性シラン化合物の中で、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、及びブチルトリメトキシシランが好ましく;二官能性シラン化合物の中で、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジフェノキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、及びジメチルジエトキシシランが好ましい。
【0024】
上記式2のシラン化合物の加水分解物又はその縮合物を得るための条件は特に限定されない。例えば、式2で表されるシラン化合物は、任意選択的には溶媒で希釈されてもよく、水及び酸触媒(例えば塩酸、酢酸、硝酸など)又は塩基触媒(例えばアンモニア、トリエチルアミン、シクロヘキシルアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなど)がこれに添加され、続いて混合物が撹拌されることで、目的の加水分解物又はその縮合物が得られる。
【0025】
上の式2のシラン化合物の加水分解重合により得られるシロキサンポリマー(すなわち縮合物)の重量平均分子量は、3,000~20,000、5,000~17,000、6,500~16,000、又は7,000~15,000であってもよい。重量平均分子量が上記範囲内である場合には、硬化膜の感度及び溶解性並びに現像液への溶解速度を優れたものとすることができる。
【0026】
溶媒、酸触媒、及び塩基触媒の種類及び量は特に限定されない。
【0027】
加水分解重合反応は、20℃以下の低温で行うことができる。代わりに、反応は、加熱又は還流によって促進され得る。更に、加水分解重合反応の時間は、シラン化合物の種類、濃度、反応温度などに応じて適宜調整することができる。
【0028】
シロキサンコポリマーは、直鎖シロキサン構造単位(すなわち、D型シロキサン構造単位)を含み得る。この直鎖シロキサン構造単位は、二官能性シラン化合物、例えば上記の式2によって表される化合物(式中、pは2である)に由来し得る。具体的には、シロキサンコポリマーは、pが2である上記式2のシラン化合物から誘導された構造単位を、Si原子のモル数に対して5~40モル%、好ましくは5~30モル%、より好ましくは10~30モル%の量で含み得る。上記の含有量範囲内で、特定のレベルの硬度を維持する一方で、硬化膜は可撓性を有し得ることが可能であり、それによって外部応力への割れ抵抗及び可撓性を更に高めることができる。
【0029】
シロキサンコポリマーは、pが1である式2で表されるシラン化合物に由来する構造単位(すなわちT型のシロキサン構造単位)を含み得る。具体的には、シロキサンコポリマーは、pが1である上記式2のシラン化合物から誘導された構造単位を、Si原子のモル数に対して40~85モル%、好ましくは50~80モル%、より好ましくは60~70モル%の量で含み得る。上記含有量範囲内では、硬化膜上に形成されるパターンの精度を高めることができる。
【0030】
シロキサンコポリマーは、硬化膜の硬度、感度、及び膜保持率の観点から、アリール基を有するシラン化合物に由来する構造単位を含み得る。具体的には、シロキサンコポリマーは、アリール基を有するシラン化合物に由来する構造単位を、Si原子のモル数に対して30~70モル%、好ましくは35~50モル%、より好ましくは40~45モル%の量で含み得る。上記の含有量範囲内では、シロキサンコポリマーと光活性化合物(例えば1,2-キノンジアジド化合物)との相溶性が優れており、これにより硬化膜の透明性を向上させながらも硬化膜の感度の過度の低下を防ぐことができる。アリール基を有するシラン化合物に由来する構造単位は、例えば、R5がアリール基である上の式2のシラン化合物、好ましくはpが1でありR5がアリール基である上の式2のシラン化合物、より好ましくはpが1でありR5がフェニル基である上の式2のシラン化合物に由来する構造単位(すなわち、T-フェニル型のシロキサン構造単位)であってよい。
【0031】
シロキサンコポリマーは、pが0である上記式2で表されるシラン化合物に由来する構造単位(すなわちQ型のシロキサン構造単位)を含み得る。具体的には、シロキサンコポリマーは、pが0である上記式2で表されるシラン化合物に由来する構造単位を、Si原子のモル数に対して10~40モル%、好ましくは15~35モル%、より好ましくは20~30モル%の量で含み得る。上記の含有量範囲内では、硬化膜の感度及び現像性を高めることができる。
【0032】
用語「Si原子のモル数に対するモル%」は、本明細書で用いるところでは、シロキサンポリマーを構成する構造単位の全てに含まれるSi原子の総モル数に対する、特定の構造単位中に含まれるSi原子のモル数のパーセント割合を指す。
【0033】
シロキサンコポリマー中のシロキサン構造単位のモル含有量(モル%)は、Si-NMR、1H-NMR、13C-NMR、IR、TOF-MS、元素分析、灰の測定等の組み合わせによって測定され得る。例えば、フェニル基を有するシロキサン単位のモル含有量を測定するために、Si-NMR分析が全シロキサンコポリマーに関して行われ、それに続いてフェニル結合Siピーク面積及びフェニル非結合Siピーク面積の分析が行われる。次いで、モル量は、それらの間のピーク面積比からコンピューター計算することができる。
【0034】
シロキサンコポリマーは、ジメチルスルホキシド中で11以下の酸解離定数(pKa)を有し得る。具体的には、シロキサンコポリマーは、ジメチルスルホキシド中で、1~11、1.5~10、2~9、3~8.5、4~8.0、5~7.7、又は6~7.6の酸解離定数を有することができる。シロキサンコポリマーの酸解離定数が上記範囲内である場合に、硬化膜の現像性を高めながらも硬化膜に形成されるパターンの精度を高めることができる。
【0035】
シロキサンコポリマーの量は、残部の溶媒量を除いた感光性樹脂組成物の総重量を基準として50重量%~95重量%、60重量%~90重量%、65重量%~85重量%、又は70重量%~80重量%であってよい。更に、これは、溶媒を含む感光性樹脂組成物の総重量を基準として15~35重量%、16~32重量%、17~30重量%、18~28重量%、又は19~25重量%であってもよい。上記含有量範囲内では、現像性が適切に制御され、硬化膜の膜保持率及びパターン解像度を向上させることができる。
【0036】
シロキサンコポリマーは、予備硬化した場合、1.5重量%の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)の水溶液において、50Å/秒以上、好ましくは500Å/秒以上、より好ましくは1,500Å/秒以上の溶解速度を有し得る。上記範囲内では、現像液への高い現像性により優れた解像度を得ることができる。それと同時に、溶解速度の上限は、特に限定されない。しかし、それは100,000Å/秒以下、50,000Å/秒以下、又は10,000Å/秒以下であってよい。
【0037】
(B)酸変性エポキシアクリレート樹脂
本発明による感光性樹脂組成物は、酸変性エポキシアクリレート樹脂として、下記式1で表される構造単位を含む樹脂(B)を含む。下記式1で表される構造単位を含む樹脂は、硬化膜の可撓性を高めるのに役立つ。式1で表される構造単位を含む樹脂により硬化膜の可撓性が増加するため、本発明は、可撓性に優れた硬化膜を提供することができる。
[式1]
【化4】
(式1において、
Xは、置換若しくは無置換C
1~6脂肪族構造であり、
Y
1及びY
2は、それぞれ独立して、置換若しくは無置換C
1~6アルキレン基又は置換若しくは無置換C
4~10シクロアルキレン基であり、
Zは、水素、置換若しくは無置換C
1~6アルキル基、又は下記式1aで表される置換基であり、
[式1a]
【化5】
式1aにおいて、
Y
3は、置換若しくは無置換C
1~6アルキレン基又は置換若しくは無置換C
4~10シクロアルキレン基であり、
R
1は、水素であるか下記式1bで表される置換基であり、
R
2~R
4は、それぞれ独立して、水素、置換若しくは無置換C
1~10アルキル基、又は置換若しくは無置換C
6~15アリール基であり、
[式1b]
【化6】
式1bにおいて、
Y
4は、置換若しくは無置換C
1~6アルキレン基又は置換若しくは無置換C
4~10シクロアルキレン基である)。
【0038】
脂肪族構造、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルキル基、及びアリール基が置換されている場合(各官能基の炭素に結合している水素が置換されている場合)、結合し得る置換基は、C1~5アルキル基、C1~5アルコキシ基、C3~10シクロアルキル基、C6~10アリール基、及び6~10員ヘテロアリール基からなる群から選択される少なくとも1つであってよい。
【0039】
具体的には、硬化膜の可撓性とパターン解像性を考慮して、式1において、Xは置換若しくは無置換C1~6アルキレン基であり、Y1及びY2は、それぞれ独立して、C1~3アルキレン基であり、Zは式1aで表される置換基であり、式1aにおいて、Y3はC1~3アルキレン基であり、R1は式1bで表される置換基であり、R2~R4は全て水素であり、式1bにおいて、Y4はC4~7シクロアルキレン基であってよい。
【0040】
より具体的には、式1で表される構造単位は、下記式1-1及び1-2で表される構造単位からなる群から選択される少なくとも1つであってよい。
[式1-1]
【化7】
[式1-2]
【化8】
【0041】
式1で表される構造単位を含む樹脂の重量平均分子量は、2,000~18,000、好ましくは5,000~15,000、より好ましくは7,000~13,000である。上記範囲内である場合に、感光性樹脂組成物の被覆性を確保しながらも硬化膜の可撓性を高めることができる。
【0042】
式1で表される構造単位を含む樹脂の含有量は、固形分基準でシロキサンコポリマー(A)100重量部に対して2~40重量部、5~38重量部、10~35重量部、15~32重量部、20~30重量部、又は25~28重量部であってよい。更に、これは、溶媒を含む感光性樹脂組成物の総重量を基準として0.1~15重量%、0.2~10重量%、0.3~8重量%、0.4~7重量%、又は0.5~6重量%であってよい。上記範囲内では、感光性樹脂組成物の被覆性に優れている一方で、硬化膜の可撓性及びパターン解像性を高めることができる。
【0043】
(C)光活性化合物
本発明による感光性樹脂組成物は、光活性剤(PAC)として光活性化合物(C)を含有する。具体的には、活性化合物は、可視光、紫外線、深紫外線等によって架橋させることができる化合物(モノマー)の重合を開始する役割を果たす。
【0044】
光活性化合物は、1,2-キノンジアジドに基づく化合物であってもよい。具体的には、1,2-キノンジアジドに基づく化合物は、フェノール化合物と1,2-ベンゾキノンジアジド-4-スルホン酸若しくは1,2-ベンゾキノンジアジド-5-スルホン酸とのエステル化合物;フェノール化合物と1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸若しくは1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸とのエステル化合物;ヒドロキシル基がアミノ基で置換されているフェノール化合物と1,2-ベンゾキノンジアジド-4-スルホン酸若しくは1,2-ベンゾキノンジアジド-5-スルホン酸とのスルホンアミド化合物;又はヒドロキシル基がアミノ基で置換されているフェノール化合物と1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸若しくは1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸とのスルホンアミド化合物であってよい。上記の化合物は、単独で又はそれらの2つ以上の組み合わせで使用され得る。
【0045】
フェノール化合物は、具体的には、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,3’,4-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(p-ヒドロキシフェニル)メタン、トリ(p-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1-トリ(p-ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3-トリス(2,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルプロパン、4,4’-[1-[4-[1-[4-ヒドロキシフェニル]-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、ビス(2,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインデン-5,6,7,5’,6’,7’-ヘキサノール、2,2,4-トリメチル-7,2’,4’-トリヒドロキシフラバン、及びビス[4-ヒドロキシ-3-(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-5-ジメチルフェニル]メタンからなる群から選択される少なくとも1つであってよい。
【0046】
より具体的には、1,2-キノンジアジドに基づく化合物は、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノンと1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸とのエステル化合物、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノンと1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸とのエステル化合物、4,4’-[1-[4-[1-[4-ヒドロキシフェニル]-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノールと1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸とのエステル化合物、4,4’-[1-[4-[1-[4-ヒドロキシフェニル]-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノールと1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸とのエステル化合物、又はビス[4-ヒドロキシ-3-(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-5-ジメチルフェニル]メタンと1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸とのエステル化合物であってよい。
【0047】
好ましくは、1,2-キノンジアジドに基づく化合物は、1,2-キノンジアジド4-スルホン酸エステル、1,2-キノンジアジド5-スルホン酸エステル、及び1,2-キノンジアジド6-スルホン酸エステルからなる群から選択される少なくとも1つであってよい。1,2-キノンジアジドに基づく化合物が上で例示したいずれかの化合物である場合に、硬化膜の透明性が更に向上し得る。
【0048】
光活性化合物の含有量は、固形分基準でシロキサンコポリマー(A)100重量部に対して2~50重量部、3~45重量部、5~40重量部、7~35重量部、9~30重量部、又は11~20重量部であってよい。更に、これは、溶媒を含む感光性樹脂組成物の総重量を基準として0.1~20重量%、0.5~15重量%、1~10重量%、1.5~5重量%、又は2~3重量%であってよい。上記含有量範囲内では、硬化膜の粗い表面などの欠陥や、現像時に底部に出現するスカムのようなパターン形状を防止することができる。
【0049】
(D)溶媒
本発明による感光性樹脂組成物は、溶媒(D)を含む。溶媒(D)は、感光性樹脂組成物に含まれる各成分を溶解又は分散させる役割を果たす。
【0050】
具体的には、溶媒は、アルコール、エーテル、グリコールエーテル、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールアルキルエーテルプロピオネート、芳香族炭化水素、ケトン、又はエステルなどの有機溶媒であってよい。
【0051】
より具体的には、溶媒は、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、エチルアセトアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、γ-ブチロラクトン、エチル2-ヒドロキシプロピオネート、エチル2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオネート、エチルエトキシアセテート、エチルヒドロキシアセテート、メチル2-ヒドロキシ-3-メチルブタノエート、メチル2-メトキシプロピオネート、メチル3-メトキシプロピオネート、エチル3-メトキシプロピオネート、エチル3-エトキシプロピオネート、メチル3-エトキシプロピオネート、メチルピルベート、エチルピルベート、エチルアセテート、ブチルアセテート、エチルラクテート、ブチルラクテート、N,N-ジメチルホルムアミド、又はN,N-ジメチルアセトアミド、又はN-メチルピロリドンであってよい。上記の化合物は、単独で又はそれらの2つ以上の組み合わせで使用され得る。
【0052】
上記の中でも、溶媒として好ましいものは、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2-メトキシプロピオン酸メチル、γ-ブチロラクトン、又は4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンとすることができる。
【0053】
溶媒の含有量は、感光性樹脂組成物に含まれる各成分の含有量を除いた残部とすることができる。具体的には、溶媒の含有量は、溶媒を含む感光性樹脂組成物の総重量を基準として、10~90重量%、30~85重量%、40~80重量%、又は50~70重量%であってよい。
【0054】
(E)光重合性化合物
本発明による感光性樹脂組成物は、二重結合を有する光重合性化合物(E)を更に含み得る。この光重合性化合物は、少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有する単官能性エステル化合物又は多官能性エステル化合物であり得る。具体的には、硬化膜の耐薬品性の観点から、少なくとも2つの官能基を有する多官能化合物であってもよい。
【0055】
具体的には、二重結合を含む光重合性化合物は、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとコハク酸とのモノエステル、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートとコハク酸とのモノエステル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート-ヘキサメチレンジイソシアネート(ペンタエリスリトールトリアクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物)、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエポキシアクリレート、及びエチレングリコールモノメチルエーテルアクリレートからなる群から選択される少なくとも1つであってよい。
【0056】
光重合性化合物としては以下のものが挙げられる:(i)単官能性(メタ)アクリレート、例えば、Aronix M-101、M-111、及びM-114(東亞合成株式会社製)、KAYARAD T4-110S及びT4-120S(日本化薬株式会社製)、並びにV-158及びV-2311(大阪有機化学工業株式会社製);(ii)二官能(メタ)アクリレート、例えば、Aronix M-210、M-240、及びM-6200(東亞合成株式会社製)、KAYARAD HDDA、HX-220、及びR-604(日本化薬株式会社製)、並びにV-260、V-312、及びV-335HP(大阪有機化学工業株式会社製);並びに(iii)トリ-及びそれより多い官能性の(メタ)アクリレート、例えば、Aronix M-309、M-400、M-403、M-405、M-450、M-7100、M-8030、M-8060、及びTO-1382(東亞合成株式会社製)、KAYARAD TMPTA、DPHA、DPHA-40H、DPCA-20、DPCA-30、DPCA-60、及びDPCA-120(日本化薬株式会社製)、並びにV-295、V-300、V-360、V-GPT、V-3PA、V-400、及びV-802(大阪有機化学工業株式会社製)。
【0057】
光重合性化合物の含有量は、固形分基準でシロキサンコポリマー(A)100重量部に対して0.1~20重量部、0.5~15重量部、1~12重量部、1.5~8重量部、2~7重量部、又は2.2~6.5重量部であってよい。更に、これは、溶媒を含む感光性樹脂組成物の総重量を基準として0.1~10重量%、0.2~8重量%、0.3~5重量%、0.4~4重量%、又は0.5~2重量%であってよい。上記範囲内では、これは現像性の点で優れており、ポストベーク中に十分な流動性を有し(すなわち、流れが適切に起こり)、その結果所望のテーパー角を有するパターンを形成することができる。
【0058】
(F)エポキシ化合物
本発明による感光性樹脂組成物は、エポキシ化合物(F)を更に含み得る。エポキシ化合物は、シロキサンコポリマー(A)の内部密度を高めるように機能し、硬化膜の耐薬品性を向上させることができる。エポキシ化合物は、少なくとも1つのエポキシ基を含有する不飽和モノマーのホモオリゴマー又はヘテロオリゴマーであり得る。
【0059】
少なくとも1つのエポキシ基を含む不飽和モノマーは、具体的には、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、4,5-エポキシペンチル(メタ)アクリレート、5,6-エポキシヘキシル(メタ)アクリレート、6,7-エポキシヘプチル(メタ)アクリレート、2,3-エポキシシクロペンチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、α-エチルグリシジルアクリレート、α-n-プロピルグリシジルアクリレート、α-n-ブチルグリシジルアクリレート、N-(4-(2,3-エポキシプロポキシ)-3,5-ジメチルベンジル)アクリルアミド、N-(4-(2,3-エポキシプロポキシ)-3,5-ジメチルフェニルプロピル)アクリルアミド、アリルグリシジルエーテル、2-メチルアリルグリシジルエーテル、o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル、又はこれらの混合物であってよい。好ましくは、メタクリル酸グリシジルを使用することができる。
【0060】
エポキシ化合物は、一般的に知られている任意の方法で合成することができる。
【0061】
エポキシ化合物は、下記の構造単位を更に含み得る。
【0062】
具体的には、追加の構造単位は、スチレン;アルキル置換基を含有するスチレン、例えばメチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、トリエチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、ヘプチルスチレン、及びオクチルスチレン;ハロゲンを含有するスチレン、例えばフルオロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、及びヨードスチレン;アルコキシ置換基を含有するスチレン、例えばメトキシスチレン、エトキシスチレン、及びプロポキシスチレン;p-ヒドロキシ-α-メチルスチレン;アセチルスチレン;芳香環を含有するエチレン性不飽和化合物、例えばジビニルベンゼン、ビニルフェノール、o-ビニルベンジルメチルエーテル、m-ビニルベンジルメチルエーテル、p-ビニルベンジルメチルエーテル;不飽和カルボン酸エステル、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-クロロプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、メチルα-ヒドロキシメチルアクリレート、エチルα-ヒドロキシメチルアクリレート、プロピルα-ヒドロキシメチルアクリレート、ブチルα-ヒドロキシメチルアクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、p-ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、p-ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、及びジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート;N-ビニル基を含有する第三級アミン、例えばN-ビニルピロリドン、N-ビニルカルバゾール、及びN-ビニルモルホリン;不飽和エーテル、例えばビニルメチルエーテル及びビニルエチルエーテル;不飽和イミド、例えばN-フェニルマレイミド、N-(4-クロロフェニル)マレイミド、N-(4-ヒドロキシフェニル)マレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等の化合物に由来する構造単位であってよい。
【0063】
上記化合物に由来する追加の構造単位は、エポキシ化合物中に単独で含まれていてもよく、或いはそれらの2種以上の組み合わせで含まれていてもよい。上記の中でも、重合性の観点からはスチレン化合物に由来する追加の構造単位が好ましい。
【0064】
それと同時に、硬化膜の耐薬品性の観点からは、エポキシ化合物は、上記化合物の中でもカルボキシル基を有する化合物に由来する構造単位を含まないことが好ましい場合がある。
【0065】
エポキシ化合物は、エポキシ化合物を構成する構造単位の総モル数を基準として0~70モル%、好ましくは10~60モル%の量で上記の追加の構造単位を含み得る。上記含有量範囲内では、硬化膜の硬度を必要なレベルで確保することができる。
【0066】
エポキシ化合物の重量平均分子量は、100~30,000、好ましくは1,000~15,000、より好ましくは5,000~10,000とすることができる。上記範囲内では、硬化膜は均一な厚さで高い硬度を有することができ、これは段差の平坦化に適している場合がある。
【0067】
エポキシ化合物の含有量は、固形分基準でシロキサンコポリマー(A)100重量部に対して0.1~50重量部、2~45重量部、3~40重量部、10~38重量部、15~35重量部、又は25~30重量部であってよい。更に、溶媒を含む感光性樹脂組成物の総重量を基準として0.1~20重量%、0.5~15重量%、1~10重量%、2~8重量%、又は5~7重量%であってよい。上記含有量範囲内では、硬化膜の感度及び耐薬品性を向上させることができる。
【0068】
(G)界面活性剤
本発明による感光性樹脂組成物は、界面活性剤(G)を更に含み得る。界面活性剤は、感光性樹脂組成物の被覆性を向上させる働きを有し、フッ素系界面活性剤、ケイ素系界面活性剤、又は非イオン系界面活性剤であってもよい。
【0069】
界面活性剤は、具体的には、フッ素及びケイ素をベースとする界面活性剤、例えばDow Corning Toray Co.,Ltd.によって供給されるFZ-2122、BM CHEMIE Co.,Ltd.によって供給されるBM-1000及びBM-1100、大日本インキ化学工業株式会社によって供給されるMegapack F-142D、F-172、F-173、及びF-183、住友スリーエム株式会社によって供給されるFlorad FC-135、FC-170C、FC-430、及びFC-431、旭硝子株式会社によって供給されるSufron S-112、S-113、S-131、S-141、S-145、S-382、SC-101、SC-102、SC-103、SC-104、SC-105、及びSC-106、Shinakida Kasei Co., Ltd.によって供給されるEftop EF301、EF303、及びEF352、Toray Silicon Co.,Ltd.によって供給されるSH-28PA、SH-190、SH-193、SZ-6032、SF-8428、DC-57、及びDC-190;非イオン性界面活性剤、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどを含めたポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどを含めたポリオキシエチレンアリールエーテル;並びにポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジステアレートなどを含めたポリオキシエチレンジアルキルエステル;又はオルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業株式会社製)、(メタ)アクリレートをベースとするコポリマーPolyflow57番及び95番(Kyoei Yuji Chemical Co.,Ltd.製)であってよい。上記の化合物は、単独で又はそれらの2つ以上の組み合わせで使用され得る。
【0070】
界面活性剤の含有量は、固形分基準でシロキサンコポリマー(A)100重量部に対して0.001~5重量部、0.005~4重量部、0.01~3重量部、0.05~2.5重量部、0.1~2重量部、又は0.2~1重量部であってよい。更に、溶媒を含む感光性樹脂組成物の総重量を基準として0.0001~3重量%、0.001~2.5重量%、0.01~2重量%、0.05~1重量%、又は0.07~0.5重量%であってよい。上記含有量範囲内では、感光性樹脂組成物は優れた被覆性を有し得る。
【0071】
本発明による感光性樹脂組成物は、その物理的特性に影響を及ぼさない範囲内で、一般的に知られている接着助剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤などを更に含んでいてもよい。
【0072】
硬化膜
本発明は、上記感光性樹脂組成物から形成される硬化膜を提供する。
【0073】
本発明による硬化膜は、一般的に知られている方法、例えば感光性樹脂組成物を基板上にコーティングしてから硬化する方法によって形成することができる。具体的には、感光性樹脂組成物は基板上にコーティングされ、溶媒を除去するために60~130℃の温度でプリベークされ;次いで望まれるパターンを有するフォトマスクを使用して露光され;現像液(例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)溶液)を使用して現像されることで、上にパターンが形成されたプリベーク膜が形成される。その後、必要に応じて、パターンを有するプリベーク膜が150~300℃の温度で10分間~5時間ポストベークされることで、望みの硬化膜が作製される。
【0074】
露光は、200~500nmの波長域において365nmの波長をベースとして10~200mJ/cm2の露光量で行われ得る。更に、露光のために使用される光源としては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ハロゲン化金属ランプ、アルゴンガスレーザーなどを使用することができる。必要に応じて、X線や電子線等も使用され得る。
【0075】
感光性樹脂組成物を基板上にコーティングする方法は、スピンコーティング、スリットコーティング、ロールコーティング、スクリーン印刷、アプリケーターなどであってよい。この方法により、望みの厚さ、例えば2~25μmの厚さのコーティング膜を作製することができる。
【0076】
本発明は、上記感光性樹脂組成物から硬化膜を作製(形成)するため、高い感度と膜保持率と共に優れた耐熱性、透明性、誘電率、耐薬品性、及び可撓性(耐割れ性)を有する硬化膜を提供することができる。
【0077】
したがって、本発明による硬化膜は、電気、電子、又は光学などの分野に有利に利用することができる。特に、本発明による硬化膜は、繰り返しの曲げ後であっても割れの発生を抑えることができる優れた可撓性を有しているため、これは、可撓性を有する液晶ディスプレイや有機ELディスプレイの材料(例えば画素定義膜)として有利に使用することができる。
【実施例0078】
本発明の形態
以降で、以下の実施例を参照しながら、本発明を更に詳しく説明する。しかし、以下の実施例は、本発明の範囲を限定することなしに本発明を更に説明することが意図されている。
【0079】
下記の合成例では、重量平均分子量を、ポリスチレン標準を基準としてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC、溶離液:テトラヒドロフラン)により決定する。
【0080】
更に、合成実施例でみられる酸解離定数(pKa)は、電位差自動滴定装置(AT-710M;京都電子工業株式会社製)、滴定試薬としての0.1mol/Lの水酸化ナトリウム/エタノール溶液、及び滴定溶媒としてのジメチルスルホキシドを用いた電位差滴定により計算された値である。
【0081】
[合成実施例1]シロキサンコポリマー(A-1)の製造
還流冷却器を備えた反応器に、総重量に対して20重量部の蒸留水及び5重量部のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)と共に、58.9重量部のフェニルトリメトキシシラン、19.5重量部のメチルトリメトキシシラン、及び21.6重量部のテトラエトキシシランを入れ、続いて0.1重量部のシュウ酸触媒の存在下で混合物を7時間還流及び激しく撹拌した。その後、混合物を冷却し、固形分が40%になるようにPGMEAで希釈し、これをGPCで分析した。その結果、ポリスチレン標準を基準として5,000~15,000Daの重量平均分子量を有するシロキサンコポリマー(A-1)が製造された。そのようにして製造したシロキサンコポリマー(A-1)の酸解離定数は7.5であった。
【0082】
[合成実施例2]シロキサンコポリマー(A-2)の製造
還流冷却器を備えた反応器に、総重量に対して20重量部の蒸留水及び5重量部のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)と共に、50.2重量部のフェニルトリメトキシシラン、16.6重量部のメチルトリメトキシシラン、14.8重量部のジメチルジメトキシシラン、及び18.4重量部のテトラエトキシシランを入れ、続いて0.1重量部のシュウ酸触媒の存在下で混合物を7時間還流及び激しく撹拌した。その後、混合物を冷却し、固形分が53%になるようにPGMEAで希釈し、これをGPCで分析した。その結果、ポリスチレン標準に対して5,000~15,000Daの重量平均分子量を有するシロキサンコポリマー(A-2)が製造された。そのようにして製造したシロキサンコポリマー(A-2)の酸解離定数は7.6であった。
【0083】
[合成実施例3]シロキサンコポリマー(A-3)の製造
還流冷却器を備えた反応器に、総重量に対して11重量部の蒸留水及び30重量部のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)と共に、23.6重量部のフェニルトリメトキシシラン、7.8重量部のメチルトリメトキシシラン、及び68.6重量部のジフェニルジメトキシシランを入れ、続いて0.5重量部の硫酸触媒の存在下で混合物を4時間還流及び激しく撹拌した。その後、混合物を冷却し、固形分が40%になるようにPGMEAで希釈し、これをGPCで分析した。その結果、ポリスチレン標準を基準として500~5,000Daの重量平均分子量を有するシロキサンコポリマー(A-3)が製造された。そのようにして製造したシロキサンコポリマー(A-3)の酸解離定数は11.5であった。
【0084】
[合成実施例4]アクリルポリマー(H)の製造
冷却管及び攪拌機を備えたフラスコに溶媒として200重量部のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を入れ、溶媒をゆっくりと撹拌しながら溶媒の温度を70℃に上げた。これに17.7重量部のメタクリル酸、20.7重量部のグリシジルメタクリレート、20.4重量部のスチレン、29.4重量部のメチルメタクリレート、及び11.8重量部のメタクリレートを添加し、続いてラジカル重合開始剤としての3重量部の2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)を5時間かけて滴下して重合反応を行い、それにより固形分が32重量%のアクリルコポリマーを製造した。このようにして製造したアクリルコポリマーに対してGPC分析を行ったところ、ポリスチレン標準を基準とした重量平均分子量は10,000Daであることが確認された。
【0085】
[実施例1]感光性樹脂組成物の調製
固形分基準で26.6重量部の合成例1で合成したシロキサンコポリマー(A-1)と、73.4重量部の合成例2で合成したシロキサンコポリマー(A-2)とが混合された混合物100重量部を、11.68重量部の式1で表される構造単位を含む樹脂(B)、13.16重量部の光活性化合物(C)、29.83重量部のエポキシ化合物(F)、及び0.39重量部の界面活性剤(G)と均一に混合した。これを、中でプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)(D-1)とガンマブチロラクトン(GBL)(D-2)とが重量比93:7で混合されている溶媒(D)に、固形分が17重量%になるように溶解した。その後、これを1~2時間撹拌し、孔径0.2μmのメンブレンフィルターを通して濾過することで、17重量%の固形分を有する感光性樹脂組成物を得た。
【0086】
[実施例2~10]感光性樹脂組成物の調製
表1及び表2に示されている組成に変更した以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を調製した。
【0087】
[比較例1~3]感光性樹脂組成物の調製
表1及び表2に示されている組成に変更した以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を調製した。その際、比較例3では、合成実施例1で合成したシロキサンコポリマー(A-1)、合成実施例2で合成したシロキサンコポリマー(A-2)、及び/又は合成実施例4で合成したアクリルコポリマー(H)が混合されている混合物100重量部に対して他の成分が混合された。
【0088】
【0089】
【0090】
[試験実施例1]感度の評価
【0091】
実施例及び比較例において調製した感光性樹脂組成物をスピンコーティングによってガラス基板上にそれぞれコートした。続いて、これを110℃に保ったホットプレート上で90秒間プリベークすることで乾燥膜を形成した。このようにして形成した乾燥膜を、1~30μmの範囲の大きさの正方形の穴のパターンを有するマスクを通して、200nm~450nmの波長の光を発するアライナー(モデル名:MA6)を用いて、365nmの波長を基準として0~200mJ/cm2の露光量で一定時間、マスクと基板との間のギャップを25μmとして露光した。次に、これを23℃で60秒間、パドルノズルを介して2.38重量%の水酸化テトラメチルアンモニウムの水性現像剤で現像した。次に、これを、200nm~450nmの波長の光を発するアライナー(モデル名:MA6)を用いて、365nmを基準として200mJ/cm2の露光量で一定時間露光し(ブリーチング工程)、その後、250℃の対流式オーブンで30分間加熱して厚さ2μmの硬化膜を作製した。
【0092】
10μmサイズのマスクを介して形成されたホールパターンについて、10μmの限界寸法(CD、単位:μm)を達成するために必要な露光エネルギー量を測定し、感度を評価した。結果を下の表3に示す。
【0093】
感度の測定値(mJ/cm2)が小さいほど優れている。150mJ/cm2以下が好ましい。
【0094】
[試験実施例2]可撓性の評価
実施例及び比較例で調製した感光性樹脂組成物を、ポリイミド膜でコーティングされているガラス基板上にスピンコーティングによりそれぞれコーティングした。次いで、これを110℃に保ったホットプレート上で90秒間プリベークすることで乾燥膜を形成した。このようにして形成した乾燥膜を、23℃で60秒間、パドルノズルを通して2.38重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水性現像液で現像した。次に、これを、200nm~450nmの波長の光を発するアライナー(モデル名:MA6)を用いて、365nmを基準として200mJ/cm2の露光量で一定時間露光し(ブリーチング工程)、その後、250℃の対流式オーブンで30分間加熱して厚さ2μmの硬化膜を作製した。その後、ガラス基板から硬化膜とポリイミド膜を剥がし、曲げ試験機(モデル名:foldy-10-1U)を用いて動的曲げ試験を行った。具体的には、曲げ方向に曲率半径1Rで20万回曲げた後、硬化膜の割れを確認した。割れが観察されなかった場合に「○」と評価した。割れが観察された場合には「×」と評価した。結果を下の表3及び
図1に示す。
【0095】
割れが観察されなかった場合に、可撓性に優れていると評価した。
【0096】
[試験実施例3]膜保持率の評価
実施例及び比較例において調製した感光性樹脂組成物をスピンコーティングによってガラス基板上にそれぞれコーティングした。次いで、これを110℃に保ったホットプレート上で90秒間プリベークすることで乾燥膜を形成した。次に、これを23℃で60秒間、パドルノズルを介して2.38重量%の水酸化テトラメチルアンモニウムの水性現像剤で現像した。次に、これを、200nm~450nmの波長の光を発するアライナー(モデル名:MA6)を用いて、365nmを基準として200mJ/cm2の露光量で一定時間露光し(ブリーチング工程)、その後、250℃の対流式オーブンで30分間加熱して厚さ2μmの硬化膜を作製した。
【0097】
硬化膜を形成する過程で、プリベーク後に得られた膜厚とポストベーク後に得られた膜厚を膜厚評価装置(SNU Precision)で測定し、硬化膜の膜保持率を以下の式により計算した。結果を下の表3に示す。
[式]
膜保持率(%)=(ポストベーク後の膜厚/プリベーク後の膜厚)×100
【0098】
膜保持率(%)の測定値が大きいほど優れている。これは好ましくは80%以上である。
【0099】
【0100】
表3及び
図1を参照すると、式1で表される構造単位を含む樹脂(B)を用いた実施例の感光性樹脂組成物から硬化膜を形成した場合、感度及び膜保持率だけでなく可撓性も優れていた。対照的に、樹脂(B)を用いない比較例の感光性樹脂組成物から硬化膜を形成した場合、可撓性が大幅に低下した。