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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023099323
(43)【公開日】2023-07-12
(54)【発明の名称】低損失高速電気光変調器用導波路
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/035 20060101AFI20230705BHJP
   G02B 6/12 20060101ALI20230705BHJP
   G02B 6/13 20060101ALI20230705BHJP
【FI】
G02F1/035
G02B6/12 363
G02B6/13
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022205109
(22)【出願日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】21218377
(32)【優先日】2021-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】521124319
【氏名又は名称】テラ クアンタム アーゲー
【氏名又は名称原語表記】TERRA QUANTUM AG
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】オフリムチュク・アンドレイ
(72)【発明者】
【氏名】レソヴィク・ゴルデイ
(72)【発明者】
【氏名】アラガシェフ・グリゴリー
【テーマコード(参考)】
2H147
2K102
【Fターム(参考)】
2H147AB11
2H147AC01
2H147AC12
2H147BA11
2H147CA01
2H147CB01
2H147DA08
2H147EA02A
2H147EA02B
2H147EA02C
2H147FB02
2H147FB03
2H147FC01
2H147FC09
2K102AA21
2K102BA02
2K102BB04
2K102BC04
2K102BD01
2K102CA21
2K102CA28
2K102DA04
2K102DD02
2K102DD10
2K102EA02
2K102EB16
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低電圧、低挿入損失の電気光変調器
【解決手段】導波路デバイスは、電気光学材料を含む基材と、電気光学材料に形成された導波路と、導波路の近傍に形成された複数の電極と、を備える。電気光学材料は、第1の屈折率を有する。導波路は、複数のトラックを備える。トラックは、第1の屈折率よりも小さい第2の屈折率を含み、導波路の方向を画定する共通の方向で互いに平行であり、導波路の方向に対して垂直な平面内に構成を形成する。この構成は、同一の辺長の少なくとも40個の正三角形を備え、正三角形のそれぞれの3つの角の全てが、導波路の方向に対して垂直な平面内の複数のトラックの異なるトラックとそれぞれ一致する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導波路デバイス(120)であって、
第1の屈折率を有する電気光学材料(104)を含む基材(102)と、
前記電気光学材料(104)内に形成された導波路(100)であって、複数のトラック(106)を備える導波路(100)と、
前記導波路(100)の近傍に形成された複数(300)の電極(302、304)と、を備え、
前記トラック(106)が、前記第1の屈折率よりも小さい第2の屈折率を含み、前記導波路(100)の方向(z)を画定する共通の方向(z)を有して互いに平行であり、前記導波路(100)の前記方向(z)に対して垂直な平面(114)内に構成(108)を形成し、
前記構成(108)が、同一の辺の長さの少なくとも40個の正三角形(116)を備え、前記正三角形(116)のそれぞれの3つの角の全てが、前記導波路(100)の前記方向(z)に対して垂直な平面(114)内の前記複数のトラック(106)の異なるトラック(106)とそれぞれ一致する、導波路デバイス。
【請求項2】
前記導波路(100)がコア(110)を備え、
前記コア(110)が、前記導波路(100)の前記方向(z)に対して垂直な前記平面(114)内の前記正三角形(116)を含む前記トラック(106)の前記構成(108)の第1の中断部(112)によって画定され、
前記コア(110)の中心(402)と前記複数(300)の電極(302、304)の最も近い電極(302)との間の最小距離(h)が、最大で60μm、特に最大で40μm、または最大で30μmまたは最大で20μmである、請求項1に記載の導波路デバイス(120)。
【請求項3】
前記導波路(100)が非対称クラッド厚(t、t’)を含み、それにより、最小厚さ(t’)を有する前記導波路(100)の部分が、前記コア(110)と前記複数(300)の電極(302、304)のうちの電極(302)との間、特に前記コア(110)と前記最も近い電極(302)との間に構成される、請求項2に記載の導波路デバイス(120)。
【請求項4】
前記複数(300)の電極(302、304)のうちの少なくとも1つの電極(302)が、第1の表面(208)上に構成され、前記第1の表面(208)が、前記基材(102)の表面(208)および/または前記電気光学材料(104)の表面(208)である、請求項1から3のいずれか一項に記載の導波路デバイス(120)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの電極(302)が、前記電気光学材料(104)と直接接触している、請求項4に記載の導波路デバイス(120)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの電極(302)が前記最に近い電極(302)を備える、請求項2または3と組み合わせた請求項4に記載の導波路デバイス(120)。
【請求項7】
前記複数(300)の電極(302、304)が、前記少なくとも1つの電極(302)とは異なる少なくとも1つの対向電極(304)をさらに備え、前記少なくとも1つの対向電極(304)が、前記第1の表面(208)上に構成される、請求項4に記載の導波路デバイス(120)。
【請求項8】
請求項1から3のいずれか一項に記載の導波路デバイス(120)を備える電気光変調器であって、特に前記電気光変調器が、位相シフタ、特にπ位相シフタである、電気光変調器。
【請求項9】
導波路デバイスを製造するための方法(230)であって、
第1の屈折率を有する電気光学材料(104)を含む基材(102)を提供すること(232)と、
前記電気光学材料(104)内に導波路(100)を形成すること(234)と、を含み、
前記導波路(100)を形成すること(234)が、
前記トラック(106)が前記導波路(100)の方向(z)を画定する共通の方向(z)を有して互いに平行であり、前記トラック(106)が前記導波路(100)の前記方向(z)に対して垂直な平面(114)内の構成(108)を含むように、前記導波路(100)の複数のトラック(106)を形成すること(236)であって、前記構成(108)が、同一の辺長の少なくとも40個の正三角形(116)を含み、前記正三角形(116)のそれぞれの3つの角が、全て、前記導波路(100)の前記方向(z)に対して垂直な前記平面(114)内の前記複数のトラック(106)の異なるトラック(106)とそれぞれ一致し、
前記複数のトラック(106)の各トラック(106)を形成すること(236)が、
前記電気光学材料(104)内にレーザビーム(202)を集束させて(238)、前記レーザビームの焦点(206)における屈折率を前記第1の屈折率から前記第1の屈折率よりも小さい第2の屈折率に低減することと、
前記電気光学材料(104)内に前記第2の屈折率を有する前記トラック(106)を形成するために前記導波路(100)の前記方向(z)に沿って前記レーザビーム(202)の前記焦点(206)を伝搬すること(240)と、を含む、方法。
【請求項10】
前記レーザビーム(202)を前記電気光学材料(104)に集束させること(238)が、前記導波路(100)の前記方向(z)に沿って、且つ前記レーザビームの方向に対して垂直に、前記焦点(206)における前記レーザビームの長手方向幅(w1)を生成することと、前記導波路(100)の前記方向(z)に対して垂直であり、且つ前記レーザビームの方向に対して垂直に、前記焦点(206)における前記レーザビームの横方向幅(w2)を生成することと、を含み、前記長手方向幅(w1)が前記横方向幅(w2)よりも大きい、請求項9に記載の方法(230)。
【請求項11】
前記集束(238)の前に、前記レーザビーム(202)を、前記導波路(100)の前記方向(z)に沿った第1の延伸部(e1)と、前記導波路(100)の前記方向(z)および前記レーザビームの方向(y)の双方に対して垂直な方向(x)に沿った第2の延伸部(e2)とを有する略平行なビーム(220)として提供することをさらに含み、前記第2の延伸部(e2)が前記第1の延伸部(e1)を超える、請求項9に記載の方法(230)。
【請求項12】
前記レーザビーム(202)を前記第1の延伸部(e1)および前記第2の延伸部(e2)を有する略平行なビーム(220)として提供する前に、
略円形断面(218)を有する略平行なビームとしてレーザビーム(202)を提供することと、
前記略円形断面(218)を有する略平行なビームを、前記第1の延伸部(e1)および前記第2の延伸部(e2)を有する前記略平行なビームに成形することと、をさらに含む、請求項11に記載の方法(230)。
【請求項13】
前記導波路(100)の近傍に複数(300)の電極(302、304)を形成することをさらに含む、請求項9から12のいずれか一項に記載の方法(230)。
【請求項14】
前記電気光学材料(104)に前記レーザビーム(202)を集束させること(238)が、第1の表面(208)を通って前記レーザビーム(202)を透過させることを含み、前記第1の表面(208)が、前記基材(102)の表面(208)および/または前記電気光学材料(104)の表面(208)であり、前記複数(300)の電極(302、304)を形成することが、前記複数(300)の電極(302、304)のうちの少なくとも1つの電極(302)を前記第1の表面(208)上に形成することをさらに含む、請求項13に記載の方法(230)。
【請求項15】
前記複数(300)の電極(302、304)を形成することが、前記複数(300)の電極(302、304)のうちの少なくとも1つの対向電極(304)を前記第1の表面(208)上に形成することをさらに含み、前記少なくとも1つの対向電極(304)が前記少なくとも1つの電極(302)とは異なる、請求項14に記載の方法(230)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光導波路デバイス、特に凹型クラッド導波路デバイスに関し、特に、電気光変調器を提供するように適合された電極を有する光導波路デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
低電圧、低挿入損失の電気光変調器(EOM)は、高速光スイッチングのための重要な要素である。定量的には、3dB以下の挿入損失が望ましい。GHz周波数範囲における電気光変調器のスイッチングのためには、20Vよりも低い制御電圧が有益であるが、これは、そのような高周波においてより大きな制御電圧を提供することがますます困難になるためである。既知の光-電子材料を使用して20V以下の制御電圧を達成するためには、数センチメートルの電気光学材料内の光路およびEOMの電極間の距離ならびに数十マイクロメートルの光路が同時に必要とされる。これらは、電気光変調器のための導波路アーキテクチャを使用して達成されることができる。LiNbO3膜で製造された平面導波路は、高速変調器における代表的な主要部である。しかしながら、そのような導波路は、典型的には3dB/cmを超える高い伝搬損失を有する。伝搬損失が0.5dB/cm未満の電気光学結晶(または結晶膜)で製造された導波路は、GHz周波数範囲における光スイッチング動作のための重要な要素を提供することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の技術的課題を考慮して、高速(≧1GHz)スイッチングを促進するために、0.5dB/cm未満の伝搬損失および最大20Vの制御電圧を有する導波路デバイスが必要とされている。特に、これらの動作パラメータは、電気光変調器、例えばπ位相シフタなどの位相シフタにおいて達成されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、請求項1に記載の導波路デバイスによって達成される。請求項8は、導波路デバイスを備える電気光変調器を提供する。請求項9は、上記の重要なパラメータを提供するのに適した導波路デバイスを製造する方法に関する。従属請求項は、好ましい実施形態に関する。
【0005】
第1の態様では、導波路デバイスは、電気光学材料を含む基材と、電気光学材料に形成された導波路と、導波路の近傍に形成された複数の電極と、を備える。電気光学材料は、第1の屈折率を有する。導波路は、複数のトラックを備える。トラックは、第1の屈折率よりも小さい第2の屈折率を含み、導波路の方向を画定する共通の方向で互いに平行であり、導波路の方向に対して垂直な平面内に構成を形成する。この構成は、同一の辺長の少なくとも40個の正三角形を備え、正三角形のそれぞれの3つの角の全てが、導波路の方向に対して垂直な平面内の複数のトラックの異なるトラックとそれぞれ一致する。
【0006】
本開示の文脈では、正三角形は、トラックの構成の基準として機能することができるが、導波路デバイスにいかなる物理的構造も追加するものではない。
【0007】
対応する導波路は、π位相シフタを提供するのに適した電気光変調器に典型的に適用される長さに対応する、それぞれ30mmの長さを有する導波路に対して0.15dB/cmまたは0.45dBの低い伝搬損失を提供することができる。低伝搬損失は、導波路のトラックの構成およびトラック製造方法の結果である。トラックの低屈折率とともに、この構成は、導波路用の埋め込みクラッドを提供する。導波路形状は、実施形態によれば20V未満とすることができる低い制御電圧を支持する。電極の特に有益な構成は、制御電圧をさらに低減することができる。
【0008】
正三角形の少なくとも30個、特に少なくとも40個、または特に少なくとも50個、または全てが格子を形成してもよく、格子の各正三角形の少なくとも1つの角は、格子の別の正三角形の角と一致する。格子の任意の三角形は、格子の三角形を介して、特に格子の三角形の辺を介して、格子の任意の他の三角形と相互接続されてもよい。格子の三角形の辺は、格子の三角形の角を接続してもよい。格子は、六角形であってもよく、および/または六角形格子の断面を形成してもよい。特に、格子の各正三角形の少なくとも2つの角は、それぞれ、格子の異なる正三角形の角と一致してもよい。特に、格子の各正三角形の3つの角は、全て、格子の異なる正三角形の角とそれぞれ一致してもよい。
【0009】
2つの異なる正三角形の任意の対は、最大で1つの同じトラックを共有することができる。正三角形の2つの異なる角の任意の対は、最大で1つの同じトラックを共有することができる。実施形態によれば、第1の正三角形の角が第1のトラック、第2のトラック、および第3のトラックと一致するとき、任意の他の正三角形の1つ以下の角が第1のトラック、第2のトラック、または第3のトラックと一致する。
【0010】
構成は、同じ辺の長さを有する正三角形の少なくとも50個または少なくとも60個を含んでもよい。
【0011】
同一の辺の長さは、少なくとも2μmまたは少なくとも3μmであってもよい。
【0012】
代替的または追加的に、同一の辺の長さは、最大8μm、特に最大7μmまたは最大6μmであってもよい。
【0013】
実施形態では、正三角形のそれぞれは、空間内でそれらの配向、特に導波路の方向に対して垂直な平面内でそれらの配向を共有する。
【0014】
実施形態によれば、構成内の正三角形のそれぞれは、構成内の任意の他の正三角形のシフト画像として解釈されてもよく、シフトは、導波路の方向に対して垂直な平面内の並進であってもよい。シフトされた画像は、導波路の方向に対して垂直な平面内で直線的に並進される非回転画像であってもよい。
【0015】
導波路の方向に対して垂直な平面内の構成は、導波路の方向に対して垂直な平面内のトラックの断面の中心を指すことができる。
【0016】
構成は、略六角形の外側境界を含むことができる。
【0017】
この構成は、少なくとも30個、特に少なくとも35個または少なくとも40個のトラックを備えることができ、好ましくはそれぞれが、導波路の方向に対して垂直な平面内の他のトラックによって形成された正六角形の中心に位置し、各正六角形は、同一の辺長を有する。
【0018】
実施形態によれば、導波路デバイスは、導波路の方向に沿って並進対称性を有することができる。
【0019】
実施形態によれば、導波路の方向に対して垂直な複数の平面、特に導波路の方向に対して垂直な全ての平面は、上述したまたは以下にさらに詳述する特徴の一部または全てを有する構成を形成する。
【0020】
トラックは、導波路デバイスの長さに沿って導波路の方向に対して垂直な任意の平面内に構成を形成することができる。
【0021】
電気光学材料は、RbTiOPOまたはKTiOPOなどの反転対称性のない非線形光学材料および/または結晶材料を含むことができるか、またはそれらとすることができる。
【0022】
そのような電気光学材料は、高い電気光学係数を提供することができ、これは、電気光学材料内に短い光路を有するπ位相シフタなどの電気光変調器を確立するために有益であり得る。電気光学材料内の短い光路は、伝搬損失を低減し、導波路デバイスのキャパシタンスを低減することができ、これは高いスイッチング速度を促進することができる。
【0023】
導波路は、シングルモード導波路として動作するように適合されることができる。導波路は、導波路の方向に対して垂直な平面内の少なくとも1つの方向に沿って200μm未満、特に100μm未満または50μm未満の延伸部を有してもよい。特に、導波路の延伸部は、導波路の方向に対して垂直な平面内の任意の方向に沿って200μm未満、特に100μm未満または50μm未満であってもよい。
【0024】
第1の屈折率は、導波路の方向に対して垂直な偏光を有する光に対する電気光学材料の屈折率であってもよい。第1の屈折率は、電気通信波長を有する電磁波、例えば真空中の波長が1.55μmまたは1.3μmの電磁波に対する電気光学材料の屈折率であってもよい。
【0025】
したがって、導波路デバイスを適用する電気光変調器は、通信用途に有益である電気通信波長で動作するように適合されることができる。
【0026】
第2の屈折率は、第1の屈折率よりも少なくとも0.3%、特に少なくとも0.4%、特に少なくとも0.5%または少なくとも0.6%小さくてもよい。
【0027】
第2の屈折率は、電気通信波長を有する電磁波のためのトラックの屈折率であってもよい。
【0028】
第2の屈折率は、導波路の方向に対して垂直な偏光を有する光のためのトラックの屈折率であってもよい。
【0029】
複数のトラックの各トラックは、導波路の方向に対して垂直な平面内の少なくとも1つの方向に沿って5μm未満、特に2μm未満または1μm未満の延伸部を有することができる。複数のトラックの各トラックは、導波路の方向に対して垂直な平面内の第2の方向に沿って少なくとも5μm、特に少なくとも6μmまたは少なくとも7μmの延伸部を有することができ、導波路の方向に対して垂直な平面内の第2の方向は、導波路の方向に対して垂直な平面内の少なくとも1つの方向に対して垂直である。複数のトラックの各トラックは、導波路の方向に対して垂直な平面内の第2の方向に沿って最大10μm、特に最大9μmまたは少なくとも最大8μmの延伸部を有することができる。
【0030】
複数のトラックは、導波路の外側境界の少なくとも一部を形成してもよい。
【0031】
導波路は、第1の端部を備えてもよく、導波路デバイスは、導波路の第1の端部に光学的に結合された第1の光ファイバを備えてもよい。導波路は、第2の端部を備えてもよく、導波路デバイスは、導波路の第2の端部に光学的に結合された第2の光ファイバを備えてもよい。
【0032】
複数の電極の少なくとも1つの電極または複数の電極の全ての電極は、銅または金などの貴金属を含むことができるか、または貴金属から構成されることができる。
【0033】
導波路は、コアを備えることができる。コアは、導波路の方向に対して垂直な平面内の正三角形を含むトラックの構成の第1の中断部によって画定されてもよい。
【0034】
コアの中心と複数の電極の最も近い電極との間の最小距離は、最大60μm、特に最大40μm、特に最大30μmまたは最大20μmであってもよい。
【0035】
コアの中心と最も近い電極との間の最短距離は、導波路デバイス、例えば、導波路デバイスを有するπ位相シフタなどの位相シフタを有する電気光変調器を確立するために必要な制御電圧を低減することができる。低減された制御電圧は、電気光変調器のスイッチング速度を改善することができる。
【0036】
第1の中断部は、トラックのない電気光学材料を含むことができる。
【0037】
コアの中心は、導波路の方向に対して垂直な平面内のコアの中心を指すことができる。
【0038】
最も近い電極は、導波路の方向に対して垂直な面においてコアの中心からの距離が最も小さい複数の電極のうちの電極とすることができる。
【0039】
コアは、少なくとも2つの側面、特に少なくとも3つの側面で導波路の方向に対して垂直な平面内の構成によって囲まれてもよい。辺は、方向に対応してもよく、方向のうちの任意の2つの間の角度は、90°の整数倍であってもよい。
【0040】
コアを囲むトラックの構成は、電磁波をコアに閉じ込め、吸収領域および/または金属領域などの散逸が増加した領域への電磁波の漏れに関連する伝搬損失を低減するのに適することができる。
【0041】
コアは、略六角形の外側境界を有することができる。
【0042】
クラッド厚は、導波路の方向に対して垂直な平面におけるトラックの構成の厚さとすることができる。特に、クラッド厚は、導波路のコアからトラックの構成の外側境界までの導波路の方向に対して垂直な平面内の距離を指すことができる。トラックの構成の外側境界は、導波路の方向に対して垂直な平面内の構成の全てのトラックを含む多角形、特に最小サイズの六角形などの最小サイズの多角形として定義されてもよい。
【0043】
クラッド厚は、最小クラッド厚を有する導波路の方向に対して垂直な平面内のトラックの構成の部分が、コアと複数の電極のうちの電極との間、特にコアと最も近い電極との間に構成されるように、非対称であってもよい。最小クラッド厚は、1つのトラックに対応することができる。最小クラッド厚を有する構成の部分は、トラックの構成の六角形対称性の中断部を含むことができるか、または中断部とすることができる。
【0044】
導波路の最小厚さおよび/またはコアと電極との間のトラックの構成の最小厚さは、2つの間の距離を低減することができる。距離が短くなると、大きな電界、したがって、電極に中程度の制御電圧が印加された、例えばπ位相シフタなどの位相シフタとしての導波路デバイスの動作を促進することができる。中程度の制御電圧は、導波路デバイスのスイッチング速度を改善することができる。
【0045】
最小クラッド厚は、30μm未満、特に25μm未満または20μm未満であってもよい。
【0046】
実施形態によれば、最小クラッド厚は、少なくとも10μm、特に少なくとも12μmまたは少なくとも15μmであってもよい。
【0047】
この厚さ範囲は、導波路および/またはそのコアと最も近い電極との間の短い距離を可能にする一方で、電極への電磁波の漏れに関連する損失を回避するために、導波路および/またはそのコアへの電磁波の十分な閉じ込めを提供することができる。
【0048】
最小クラッド厚はゼロであってもよく、および/またはトラックの構成は、最小クラッド厚を有する構成の部分に存在しなくてもよい。
【0049】
トラックおよび複数の電極の構成は、導波路の方向に対して垂直な平面内でコアをともに囲むことができる。特に、トラックおよび最も近い電極の構成は、導波路の方向に対して垂直な平面内でコアをともに囲むことができる。例えば、コアの中心から始まる導波路の方向に対して垂直な平面内の任意のハーフラインは、複数の電極、特に最も近い電極のトラックまたは電極の構成と交差することができる。
【0050】
導波路クラッドが存在しないこと、および/または最小厚さを有する部分におけるトラックの構成は、導波路および/またはそのコアと最も近い電極との間の距離、したがって制御電圧をさらに低減することができる。しかしながら、そのような実施形態では、導波路および/またはそのコアから電極への電磁波の漏れに起因する伝搬損失が増加する可能性がある。
【0051】
複数の電極のうちの少なくとも1つの電極は、第1の表面上に構成されてもよく、第1の表面は、基材の表面および/または電気光学材料の表面であってもよい。
【0052】
基材および/または電気光学材料の表面上に電極を構成することは、利用可能な技術を使用して容易且つ経済的に実装されることができるデバイス設計を提供することができる。
【0053】
あるいは、複数の電極のうちの少なくとも1つの電極は、基材および/または電気光学材料に少なくとも部分的に埋め込まれてもよい。そのような実施形態では、少なくとも1つの電極は、第1の表面の下方に少なくとも部分的に構成されてもよく、第1の表面は、基材の表面および/または電気光学材料の表面である。
【0054】
複数の電極のうちの第1の電極および複数の電極のうちの第2の電極は、導波路の両側に構成されてもよい。
【0055】
第1の電極の少なくとも一部、および/または第2の電極の少なくとも一部は、導波路の外形および/またはコアと同心であってもよい。
【0056】
少なくとも1つの電極を基材および/または電気光学材料に埋め込むことは、電極を導波路またはそのコアに近付けることができ、したがって、場合によっては電極のより複雑で潜在的により高価な製造を犠牲にするが、制御電圧をさらに低減することができる。
【0057】
コアの中心と第1の表面との間の最小距離は、最大60μm、特に最大40μm、特に最大30μm、特に最大20μmまたは最大15μmとすることができる。
【0058】
最小厚さを有する導波路の部分を有する実施形態では、最小厚さを有する導波路の部分は、導波路のコアと第1の表面との間に部分的にまたは完全に構成されてもよい。
【0059】
少なくとも1つの電極は、少なくとも10mm、特に少なくとも15mm、少なくとも20mm、または少なくとも25mmの導波路の方向に沿った延伸部を有することができる。
【0060】
対応する延伸部は、導波路デバイスの電気光変調器としての、例えばπ位相シフタなどの位相シフタとしての適用を促進することができる。
【0061】
少なくとも1つの電極は、電気光学材料と直接接触していてもよい。
【0062】
直接接触は、電極と導波路および/またはそのコアとの間の距離を最小にすることができ、それによって導波路デバイスを適用する電気光変調器の制御電圧を最小にすることができる。
【0063】
少なくとも1つの電極は、最も近い電極を含んでもよい。
【0064】
複数の電極は、少なくとも1つの電極とは異なる少なくとも1つの対向電極をさらに含んでもよく、少なくとも1つの対向電極は、第1の表面上に構成される。
【0065】
第1の表面上に対向電極も構成することは、既知の技術を使用して容易且つ経済的に実装されることができる装置設計を提供することができる。
【0066】
少なくとも1つの対向電極は、電気光学材料と直接接触していてもよい。
【0067】
少なくとも1つの対向電極は、少なくとも10mm、特に少なくとも15mm、少なくとも20mm、または少なくとも25mmの導波路の方向に沿った延伸部を有することができる。
【0068】
少なくとも1つの対向電極は、少なくとも1つの電極と平行に構成されてもよい。
【0069】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの対向電極と少なくとも1つの電極との間の最小距離は、300μmを超えず、特に150μmを超えず、特に100μmまたは80μmを超えない。
【0070】
少なくとも1つの対向電極は、少なくとも2つの対向電極を含んでもよい。
【0071】
少なくとも2つの対向電極は、第1の表面上の少なくとも1つの電極の両側に構成されてもよい。代替的または追加的に、少なくとも2つの対向電極は、第1の表面上の少なくとも1つの電極の近傍に、特に導波路の少なくとも1つの電極および/またはコアと交差する鏡面に関して対称的に構成されてもよい。
【0072】
少なくとも2つの対向電極は、互いに平行に構成されてもよい。
【0073】
少なくとも2つの対向電極は、少なくとも1つの電極と平行に構成されてもよい。
【0074】
少なくとも2つの対向電極のいずれかと少なくとも1つの電極との間の最小距離は、300μmを超えてはならず、特に150μmを超えてはならず、特に100μmまたは80μmを超えてはならない。
【0075】
第1の表面は、平面であってもよい。少なくとも1つの電極の表面および少なくとも1つの対向電極の表面は、互いに同一平面上にあってもよく、特に第1の表面と同一平面上にあってもよい。
【0076】
第2の態様では、電気光変調器は、上述したような導波路デバイスを備える。特に、電気光変調器は、位相シフタ、特にπ位相シフタとすることができる。
【0077】
電気光変調器は、少なくとも1GHzの周波数で動作するように適合されることができる。
【0078】
電気光変調器は、少なくとも1つの電極と少なくとも1つの対向電極との間の制御電圧が最大20Vで動作するように適合されることができる。
【0079】
電気光変調器は、少なくとも1つの電極に接続された第1のリードと、少なくとも1つの対向電極に接続された第2のリードとを備えることができ、第1のリードおよび第2のリードは、少なくとも1つの電極および少なくとも1つの対向電極を、制御電圧を提供するように適合された電圧源に接続するように適合されることができる。
【0080】
第3の態様では、導波路デバイスを製造するための方法は、第1の屈折率を有する電気光学材料を含む基材を提供することと、電気光学材料内に導波路を形成することと、を含む。導波路を形成することは、トラックが導波路の方向を画定する共通の方向で互いに平行であり、トラックが導波路の方向に対して垂直な平面内の構成を含むように、導波路の複数のトラックを形成することを含む。この構成は、同じ辺の長さの正三角形を少なくとも40個備える。正三角形のそれぞれの3つの角の全てが、導波路の方向に対して垂直な平面内の複数のトラックのうちの異なるトラックとそれぞれ一致する。複数のトラックの各トラックの形成は、レーザビームの焦点における屈折率を第1の屈折率から第1の屈折率よりも小さい第2の屈折率に恒久的に減少させるためにレーザビームを電気光学材料内に集束させることと、導波路の方向に沿ってレーザビームの焦点を伝搬させて、電気光学材料内に第2の屈折率を有するトラックを形成することと、を含む。
【0081】
本開示の方法は、埋め込みクラッド導波路とも呼ばれる、屈折率が低減されたトラックを有する導波路をレーザ書き込みするための技術を提供することができる。埋め込みクラッド導波路は、低い伝搬損失を提供することができる。正三角形を有するトラックの構成は、伝搬損失をさらに低減することができる。
【0082】
本方法は、レーザを使用してレーザビームを生成することをさらに含むことができる。レーザは、パルスレーザ、特に1ps未満、特に0.5ps未満のパルス持続時間を有するレーザビームを提供するパルスレーザであってもよい。レーザは、例えば最大11μm、特に最大1100nmの波長のレーザビームを提供する赤外線レーザであってもよい。
【0083】
パルスレーザの繰り返し率は、少なくとも1kHzであってもよい。パルスレーザの繰り返し率は、200kHz以下であってもよい。
【0084】
レーザビームの焦点を伝搬することは、特にレーザの位置を固定したまま基材を並進させることを含むことができる。基材を並進させることは、並進ステージ、特に少なくとも部分的に自動化された並進ステージを使用することができる。代替的または追加的に、レーザビームの焦点を伝搬することは、レーザビームの位置を並進させることを含んでもよい。
【0085】
導波路デバイス、基材、電気光学材料、複数のトラック、および導波路の方向に対して垂直な平面内の構成は、導波路デバイスの文脈において上述したものに対応する特徴によって特徴付けられることができる。
【0086】
レーザビームの偏光は、直線であり、導波路の方向に対して垂直であってもよい。
【0087】
焦点は、レーザビームの方向に対して垂直な平面、特に焦点面を指すことができる。
【0088】
焦点において、レーザビームの幅は、レーザビームの方向に対して垂直な少なくとも1つの方向に沿って最小であってもよい。
【0089】
電気光学材料内にレーザビームを集束させることは、導波路の方向に沿って、レーザビームの方向に対して垂直な焦点内にレーザビームの長手方向幅を生成することと、導波路の方向に対して垂直で、レーザビームの方向に対して垂直な焦点内にレーザビームの横方向幅を生成することと、を含むことができ、長手方向幅は、横方向幅よりも大きい。
【0090】
長手方向幅および横方向幅は、それぞれ、レーザビームの方向に対して垂直なレーザビームの幅を指すことができる。
【0091】
長手方向幅および横方向幅は、それぞれ、焦点、特にレーザビームの方向に対して垂直な焦点面におけるレーザビームの幅を指すことができる。
【0092】
長手方向幅は、導波路の方向に沿ったレーザビームの幅を指すことができる。横方向幅は、導波路の方向に対して垂直なレーザビームの幅を指すことができる。レーザビームは、焦点において非円形または非対称断面を有することができる。
【0093】
特に、レーザビームは、焦点において楕円形断面を有することができる。楕円形断面の長軸は、導波路の方向と平行であってもよい。楕円形断面の短軸は、導波路の方向に対して垂直であってもよい。
【0094】
焦点におけるレーザビームの非円形断面または非対称断面は、形成されたトラックの粗さの低減、および導波路の伝搬損失のさらなる低減をもたらすことができる。
【0095】
長手方向幅および/または横方向幅は、それぞれ、レーザビームの焦点における、レーザビームの方向に対して垂直な延伸部を指すことができる。
【0096】
方法は、集束の前に、レーザビームを、導波路の方向に沿った第1の延伸部と、導波路の方向およびレーザビームの方向の双方に対して垂直な方向に沿った第2の延伸部とを有する略平行なビームとして提供することをさらに含むことができ、第2の延伸部は、第1の延伸部を超える。
【0097】
第1の延伸部および第2の延伸部を有する略平行なビームは、集束によって横方向幅を超える長手方向幅を有する焦点においてレーザビームに容易に変換されることができる。
【0098】
代替的または追加的に、本方法は、横方向幅よりも大きい長手方向幅を生成するために、シリンドリカルレンズまたはミラーおよび/または楕円レンズまたはミラーおよび/または傾斜レンズなどの異方性集束素子をレーザビームに導入することを含んでもよい。そのような実施形態では、本方法は、焦点に加えて第2の焦点を生成することを含むことができる。
【0099】
そのような実施形態では、レーザビームは、導波路の方向に沿った第2の焦点における第2の長手方向幅と、導波路の方向およびレーザビームの方向の双方に対して垂直な方向に沿った第2の焦点における第2の横方向幅とを有することができ、第2の横方向幅は、第2の長手方向幅よりも大きい。
【0100】
本方法は、レーザビームを第1の延伸部および第2の延伸部と略平行なビームとして提供することの前に、レーザビームを略円形断面を有する略平行なビームとして提供することと、略円形断面を有する略平行なビームを、第1の延伸部および第2の延伸部を有する略平行なビームに成形することと、をさらに含むことができる。
【0101】
略平行なビームは、楕円に略対応する断面を含むことができる。第1の延伸部は、楕円の短軸に対応することができ、第2の延伸部は、楕円の長軸に対応することができる。
【0102】
略円形断面を有する略平行なビームを、第1の延伸部および第2の延伸部を有する略平行なビームに成形することは、スリットなどのコリメータを略平行なビームに導入することを含むことができる。コリメータは、略平行なビームの方向に対して垂直な1つの方向に沿って略平行なビームに導入されてもよい。
【0103】
スリットなどのコリメータは、少なくとも0.2mmの幅を有することができる。スリットなどのコリメータは、最大1.5mmの幅を有することができる。
【0104】
本方法は、導波路の近傍に複数の電極を形成することをさらに含むことができる。
【0105】
複数の電極は、導波路デバイスの文脈において上述したものに対応する特徴によって特徴付けられることができる。
【0106】
電気光学材料にレーザビームを集束させることは、レーザビームを第1の表面に透過させることを含んでもよく、第1の表面は、基材の表面および/または電気光学材料の表面である。
【0107】
複数の電極を形成することは、第1の表面上に複数の電極のうちの少なくとも1つの電極を形成することをさらに含むことができる。
【0108】
第1の表面は、導波路デバイスの文脈において上述した特徴に対応する特徴によって特徴付けられることができる。
【0109】
導波路の複数のトラックを形成することは、第1の表面の近くに構成された複数のトラックのトラックの前に、第1の表面からさらに離れて構成された複数のトラックのトラックを形成することを含むことができる。
【0110】
特に、第1の表面からの距離が異なる複数のトラックの任意の対のトラックについて、導波路の複数のトラックを形成することは、第1の表面からの距離がより小さい対のトラックの前に、第1の表面からの距離がより大きい対のトラックを形成することを含むことができる。
【0111】
導波路の複数のトラックを形成することは、第1の表面に平行な平面内の導波路の中心からさらに離れて位置する複数のトラックのトラックの前に、第1の表面に平行な平面内の導波路の中心により近くに位置する複数のトラックのトラックを形成することを含むことができる。
【0112】
特に、第1の表面に平行な平面内の導波路の中心からの距離が異なる複数のトラックの任意の対について、導波路の複数のトラックを形成することは、第1の表面に平行な平面内の導波路の中心からの距離がより大きい対のトラックの前に、第1の表面に平行な平面内の導波路の中心からの距離がより小さい対のトラックを形成することを含むことができる。
【0113】
複数の電極を形成することは、第1の表面上に複数の電極のうちの少なくとも1つの対向電極を形成することをさらに含むことができ、少なくとも1つの対向電極は、少なくとも1つの電極とは異なる。
【0114】
少なくとも1つの対向電極は、導波路デバイスに関して上述したものに対応する特徴によって特徴付けられることができる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
本開示の技術およびそれに関連する利点は、添付の図面にかかる例示的な実施形態の説明から最もよく明らかになるであろう。
図1a】電気光学材料内のトラックの構成を有する導波路を示している。
図1b図1aのものと同様の電気光学材料内のトラックの構成を有する導波路を示している。
図1c図1a、図1bと同様の電気光学材料におけるトラックの構成を有する導波路を示している。
図2a】並進方向に沿って見た、実施形態にかかる電気光学材料内のトラックの構成を有する導波路を製造するための装置を示している。
図2b】並進方向に対して垂直な方向から見た、実施形態にかかる電気光学材料内のトラックの構成を有する導波路を製造するための装置を示している。
図2c】並進方向に沿って見た、別の実施形態にかかる電気光学材料内のトラックの構成を有する導波路を製造するための装置を示している。
図2d】並進の方向に対して垂直な方向から見た、図2cの他の実施形態にかかる電気光学材料内のトラックの構成を有する導波路を製造するための装置を示している。
図2e図2a、図2b、図2c、および図2dの平面216eに沿った導波路を製造するための装置の切断図を示している。
図2f図2a、図2b、図2c、および図2dの平面216fに沿った導波路を製造するための装置の切断図を示している。
図2g図2a、図2b、図2c、および図2dの平面216gに沿った導波路を製造するための装置の切断図を示している。
図2h図2cおよび図2dの平面216hに沿った導波路を製造するための装置の切断図を示している。
図2i】実施形態にかかる導波路を製造するための方法を示している。
図3】異なる実施形態にかかる導波路の製造方法を示す図である。
図4】実施形態にかかる導波路デバイスを示している。
図5a】制御電圧を印加することによって導波路デバイス内に誘起される電界を示している。
図5b】制御電圧を印加することによって導波路デバイス内に誘起される最小電界および最大電界を示している。
図6】制御電圧を印加することによって導波路デバイスのコア内に誘起される屈折率の変調を示している。
図7】π位相シフタとして動作するのに適した導波路デバイスの長さを示している。
図8a】別の実施形態にかかる導波路デバイスを示している。
図8b図8aの導波路デバイスのコア内を伝搬する電磁波の電界を示している。
図9a】別の実施形態にかかる導波路デバイスを示している。
図9b図9aの導波路デバイスのコア内を伝搬する電磁波の電界を示している。
図10】導波路デバイスにおける伝搬損失を示している。
図11】別の実施形態にかかる導波路デバイスを示している。
図12】異なる実施形態にかかる導波路デバイスを示している。
【発明を実施するための形態】
【0116】
図1aは、導波路デバイス120の概略図である。導波路デバイス120は、基材102の上および中に形成される。それは、導波路100および複数300の電極302、304を備える。導波路100は、基材102に含まれるチタン酸ルビジウム(RTP、RbTiOPO4)などの電気光学材料104に形成される。
【0117】
基材102は、完全にRTP104から構成されてもよく、または例えば光もしくはプラズモン導波のための、または電子機能を確立するための追加の構造を備えてもよい。この目的のために、追加の構造は、線形誘電体、半導体、および/または金属構造からなる部分を備えることができる。RTPの代わりに、またはそれに加えて、リン酸チタニルカリウム(KTP、KTiOPO4)などの他の電気光学材料104が基材102に適用されることができる。
【0118】
複数300の電極302と対向電極304との間に制御電圧を印加することは、導波路100のコア110の屈折率を変調し、導波路デバイス120を電気光変調器として動作させることを可能にする。導波路100および電極302、304は、導波路デバイス120の長さLを画定する距離Lに沿って重なっている。光は、光ファイバ(図示せず)を導波路デバイス120の第1の端部100aおよび第2の端部100bに結合することによって、導波路デバイス120の内外に結合されることができる。
【0119】
図1aの詳細図は、導波路100に対して垂直な面における導波路デバイス120の導波路100の断面を示している。導波路100は、導波路100に対して垂直な任意の平面において同様の断面を有することができる。特に、導波路100は、導波路デバイス120の長さLに沿って導波路に対して垂直な任意の平面内に同様の断面を有することができる。断面は、例えば、導波路デバイス120が湾曲する場合、または基材102の追加の構造が導波路デバイス120の近傍に形成される場合、導波路デバイス120の長さLに沿って僅かに逸脱することができる。
【0120】
導波路100は、電気光学材料104内のトラック106の構成108によって形成される。トラック106は、RTP104の屈折率よりも低い屈折率を有する変更されたRTPを含む。それらの構成108は、同一のサイズおよび向きを有する正三角形の角と交差する隣接トラック106に関して特徴付けられることができる。したがって、構成108および/またはトラック106は、六角形格子の部分を形成することができるが、いくつかの実施形態では、完全な六角形格子から逸脱する。導波路の中央領域110において、トラックの構成108は、トラック116が存在しない中断部112を有し、中央領域110は、略変更されていないRTP104からなる。
【0121】
中央領域110は、トラック106よりも高い屈折率を有するため、導波路100は、x-y平面114内の中央領域110に電磁波を閉じ込めるのに適している。したがって、中央領域は、導波路100のコア110として作用する。導波路100は、埋め込みクラッド導波路100と呼ばれる場合がある。埋め込みクラッド導波路100は、x-y平面114に対して垂直な導波路100の方向zに沿って電磁波を誘起する。導波路100の方向zに沿って、導波路100は、その長さに沿って並進対称性を有し、場合によっては、例えば導波路100の湾曲または屈曲に起因する僅かな変更を除いて、一定の断面構造を有する。
【0122】
埋め込みクラッド導波路は、Y.Jia,C.Cheng,J.R.Vazquez de Aldana,G.R.Castillo,B.del R.Rabes,Y.Tan,D.Jaque,およびF.Chen,「Monolithic crystalline cladding microstructures for efficient light guiding and beam manipulation in passive and active regimes」,Sci.Rep.4,5988(2014)ならびにW.Nie,R.He,C.Cheng,U.Rocha,J.Rodriguez Vazquez de Aldana,D.Jaque,およびF.Chen,「Optical lattice-like cladding waveguides by direct laser writing:fabrication,luminescence,and lasing」,Opt.Lett.41,2169-72(2016)に記載されているように、立方晶YAG:Nd(1064nmにおいて0.7dB/cmの伝搬損失)および斜方晶YAP:Nd(1064nmにおいて0.52dB/cmの伝搬損失)などのガーネット型構造を有する材料で以前から実装されている。これらの埋め込みクラッド導波路は、低い伝搬損失を提供する。しかしながら、電気光変調器などの導波路デバイスでは、電気光学係数が大きい電気光学材料、したがってRTPまたはKTPなどの反転対称性のない結晶材料の導波路が望ましい。
【0123】
図1bおよび図1cは、トラック106の構成108をより詳細に示している。構成108は、導波路の方向zに沿ってコア110内を伝搬する電磁波の伝搬損失に強い影響を及ぼすことができる。この説明にかかる導波路100は、最小化された伝搬損失を有し、これは、図示されたトラック106の構成108を使用して達成される。構成108は、それぞれ同一のサイズまたは辺の長さの正三角形116によって示されてもよい。これらの正三角形116は、例示および参照のために導入されており、図1aの導波路100にいかなる物理的構造も追加するものではない。
【0124】
正三角形116のいずれかは、その角のそれぞれが、導波路の方向zに対して垂直なx-y平面114内の異なるトラック106の断面内に位置するように構成される。任意の対の2つの異なる正三角形は、同じトラック106の最大で1つの断面を共有する。換言すれば、第1の正三角形116の角が第2の正三角形116の角と同じトラック106の同じ断面に位置する場合、第1の正三角形106の他の2つの角は、第2の正三角形の他の2つの角が位置するトラックの断面とは異なるトラックの断面に位置する。
【0125】
図1bおよび図1cはまた、正三角形106の格子118a、118b、118c、118dを使用する構成108の代替的な特徴を示している。(上記の制限を除いて)構成108の任意の位置においてそれぞれ識別されることができる上述した個々の正三角形116とは対照的に、格子118a、118b、118c、118dは、複数の相互に関連する正三角形116を含む。
【0126】
第1の定義によれば、格子118a、118b、118c、118dの任意の正三角形116は、格子118a、118b、118c、118dの隣接する三角形116と少なくとも1つの角を共有する。例えば、格子118a、118b、118c、118dは、3、6、52、および11個のそのような正三角形116を含む。
【0127】
あるいは、格子118a、118b、118c、118dは、格子118a、118b、118c、118dの任意の正三角形116が、格子118a、118b、118c、118dの隣接する三角形と少なくとも2つの角を共有するように画定されてもよい。この定義によれば、例えば、格子118a、118b、118c、118dは、1個、4個、52個、および9個の正三角形116を含む。
【0128】
格子118a、118b、118c、118dはまた、格子118a、118b、118c、118dの任意の正三角形116が、その全ての角を格子118a、118b、118c、118dの隣接する三角形と共有するように画定されてもよい。この定義によれば、例えば、格子118c、118dは、35個および3個の正三角形116を含む。図1bの構成108の部分118a、118bは、そのような正三角形116を含まず、したがって、この定義にかかる格子ではない。
【0129】
正三角形116を有する構成108は、少なくとも局所的および/またはほぼ六角形の構成に対応する。換言すれば、構成108は、少なくとも局所的におよび/またはほぼ六角形の対称性を示す。特に、格子118a、118b、118c、118dとして説明されることができる正三角形116の任意のセットは、六角形格子の断面を形成し、正確な局所六角形対称性を示す。したがって、正三角形116の格子118a、118b、118c、118dのそれぞれは、六角形格子の断面に対応し、局所的な六角形対称性を有する。しかしながら、これは、格子118a、118b、118c、118dに対応するトラック106には必ずしも当てはまらない。正三角形116の角がトラック106の断面内に位置する限り、トラック106は、対称性を低減する形状を有してもよく、および/またはトラック106の中心は、正三角形116の角からオフセットされてもよい。
【0130】
正三角形116を有する構成108は、導波路の方向zに沿って伝搬する電磁波の閉じ込めを最適化し、伝搬損失を最小にする。これは、トラック106の変更されたRTPの屈折率と変更されていないRTP104との間の相対差が僅か0.006~0.009であるため、埋め込みクラッド導波路100にとって特に重要である。正三角形116を有する構成118は、少なくとも局所的および/またはほぼ六角形であるため、トラック106の最適化された(ほぼ最密)充填密度を提供する。したがって、構成108は、最も強い可能な閉じ込めおよび最も低い可能な伝搬損失を達成するために、制限された屈折率差を最大限に利用することを可能にする。
【0131】
図2a、図2b、図2c、図2d、図2e、図2f、図2g、図2h、および図2iは、導波路100を製造するための装置および方法を示している。装置は、レーザを有するレーザシステム200を備える。レーザ装置200は、5kHzの繰り返し率で180fsのパルス持続時間、250から400nJの範囲のパルスエネルギーおよび4.5mmの直径を有する1030nmの波長で略平行なレーザビーム202を放射する。レーザビーム202は、開口数0.65の顕微鏡対物レンズ204を使用して、表面208を通してKTP104の基材102内に集束される。そのような条件下では、トラックのための変更されたRTPは、変更されていないRTPの屈折率に対して0.006~0.009だけ減少した屈折率を有するレーザビーム202の焦点206内に形成される。レーザビーム202の方向yに沿った焦点206の延伸部は、8~12μmの範囲内にある。したがって、変更されたRTPの領域、および最終的には図1a、図1b、および図1cのトラック106のこの方向yに沿った延伸部もまた、8~12μmの範囲内にある。
【0132】
基材102は、トラック106を書き込むために電気光学材料104内で焦点206を伝搬するための並進方向212、zを有する並進ステージ210上に構成される。図2aおよび図2cは、並進方向212、zに沿って見た装置を示し、図2bおよび図2dは、並進方向212、zに対して垂直な方向に沿って見た装置を示している。並進ステージ210の並進方向212、zは、生成される導波路100の方向zに対応する。
【0133】
この幾何学的形状は、変更RTPの屈折率の最も強い減少を与えることがわかっているため、レーザビーム202の偏光は、並進方向212、zに対して垂直である。
【0134】
図2aおよび図2cに示すように、並進ステージ210の方向212、zに対して垂直な方向xに沿って、レーザビーム202は、焦点206の横方向幅w2に集束される。
【0135】
図2bおよび図2dに示すように、並進ステージ210の方向212、zに平行な方向zに沿って、レーザビーム202は、焦点206において長手方向幅w1に集束される。長手方向幅w1および横方向幅w2は、それぞれ、並進ステージおよび導波路の方向212に沿った焦点206内のレーザビーム202の幅およびそれに対して垂直な幅を指し、双方ともレーザビーム202の方向に対して垂直(横方向)である。長手方向幅w1は、横方向幅w2よりも大きい。
【0136】
図2aおよび図2bに示すように、より大きい長手方向幅w1を達成するために、1mmの幅を有する分光スリット214が、レーザシステム200によって放射される略平行なレーザビーム202に導入されることができる。分光スリット214は、レーザビーム202の方向yに対して垂直な1つの方向212、zに沿った略平行なレーザビーム202の低減した延伸部をもたらす。その結果、顕微鏡対物レンズ204を使用してレーザビーム202を集束させると、この方向212、zに沿ってより大きな長手方向幅w1をもたらす。
【0137】
分光スリット214の代替として、シリンドリカルレンズ222などの異方性集束素子222がレーザビーム、特に略平行なレーザビーム202に導入されて、垂直方向yに沿った横方向幅w2を超える方向212、zに沿った長手方向幅w1を生成することができる。
【0138】
対応する実施形態が図2cおよび図2dに示されている。そのような実施形態では、焦点206は、横方向(並進方向212、または導波路100の方向に対して、それぞれ)に沿ったレーザビーム202の幅w2が最小であるレーザビーム202の方向に沿った位置において、レーザビーム202の方向に対して垂直な平面216gを指す。したがって、焦点において、レーザビーム202は、横方向xに沿ってビームウエストw2を呈する。さらに、第2の焦点206’は、レーザビーム202の方向に対して垂直な平面216hに対応して、並進方向212に沿ったレーザビーム202のウエストの位置ビームに形成される。第2の焦点206’では、焦点206とは反対に、ビーム幅の順序が反転され、すなわち、レーザビーム202の横方向幅は、長手方向幅を超える。横方向幅と比較して焦点内の長手方向幅が大きいことは、より滑らかなトラックの形成および形成された導波路の伝搬損失の低減をもたらし、したがって望ましい。したがって、焦点206は、第2の焦点206’ではなく導波路を形成するために使用される。シリンドリカルレンズなどの異方性集束素子による集束に関する詳細については、例えば、A.G.Okhrimchuk「Femtosecond Fabrication of Waveguides in Ion-Doped Laser Crystals」,DOI:10.5772/12885,in:「Coherence and Ultrashort Pulse Laser Emission」,Nov.2010を参照されたい。
【0139】
楕円形断面を有するレーザビームを使用したYAG:Ndへのトラックの書き込みは、以前にS.S.FedotovおよびA.G.Okhrimchuk,「Smooth Writing In YAG Single Crystal with Beam Waist of an Elliptical Cross-Section」,Frontiers in Optics/Laser Science,p.JTh4B.40(OSA,2020)において実証されている。しかしながら、そのような技術が電気光学材料に適用されることができるかどうか、および/または三角形の構成を生成するために適用されることができるかどうかの問題は、これまでのところ困難なままである。
【0140】
図2eは、図2a、図2b、図2c、および図2dの平面216eに沿った導波路100を製造するための装置の断面を示している。この平面216eにおいて、レーザビーム202は、略円形断面218を有する。
【0141】
図2fは、図2a、図2b、図2c、および図2dの平面216fに沿った導波路100を製造するための装置の断面を示している。この平面216fにおいて、レーザビーム202は、楕円に対応する断面220を有する。並進方向212、zに対して垂直な方向xに沿った延伸部e2は、並進方向212、zに沿った延伸部e1を超える。
【0142】
図2gは、図2a、図2b、図2c、および図2dの平面216gに沿った導波路100を製造するための装置の断面を示している。この平面216gは、レーザビームの焦点206に対応する。この平面216g、206において、レーザビーム202は、並進ステージ210の方向212、zに沿った長手方向幅w1と、並進ステージ210の方向212、zに対して垂直な方向xに沿った横方向幅w2とを有する。並進ステージ210の方向212、zに沿った長手方向幅w1は、並進ステージ210の方向212、zに対して垂直な方向xに沿った横方向幅w2を超える。
【0143】
図2hは、図2cおよび図2dの平面216hに沿った導波路100を製造するための装置の断面を示している。この平面216hは、レーザビームの第2の焦点に対応する。この平面216h、206’において、レーザビーム202は、並進ステージ210の方向212、zに沿った長手方向幅と、並進ステージ210の方向212、zに対して垂直な方向xに沿った横方向幅とを有する。並進ステージ210の方向212、zに沿った長手方向幅は、並進ステージ210の方向212、zに対して垂直な方向xに沿った横方向幅よりも小さい。
【0144】
図2iのフロー図は、導波路デバイスを形成するための方法230の本質的なプロセスステップを要約している。本方法は、第1の屈折率を有する電気光学材料104を含む基材102を提供すること232から始まり、電気光学材料104内に導波路100を形成すること234に進む。導波路100を形成すること234は、導波路100の複数のトラック106を形成すること236を含む。トラック106のいずれかを形成すること236は、焦点206内の屈折率を低減するためにレーザビーム202を電気光学材料104に集束させること238を含む。トラック106のいずれかを形成すること236は、トラック106を形成するために、導波路100の方向zに沿ってレーザビーム202の焦点206を伝搬すること240をさらに含む。
【0145】
図3は、導波路を製造するための方法の好ましい実施形態を示している。図3の数字106’は、図2aから図2iの文脈において説明した方法を使用してトラック106が書き込まれる順序を与える。より小さい番号のトラック106’が最初に書き込まれ、より大きい番号のトラック106’が後で書き込まれる。表面208からさらに離れて位置するトラックは、表面208の近くに位置するトラックの前に書き込まれる。このようにして、基材102に既に書き込まれたトラック106によるレーザビーム202の反射および散乱が最小化される。トラック106、106’のセットが表面208から同じ距離を有するとき、導波路の中心110のより近くに位置するセットのトラック106、106’が最初に書き込まれる。
【0146】
図4は、基材102の電気光学材料104内の導波路100を有する導波路デバイスを示している。導波路100は、図1a、図1b、図1c、図2aから図2iおよび/または図3の文脈において説明したものと同様であってもよい。さらに、基材102の表面208には、複数300の電極302、304が形成されている。距離hは、導波路100のコア110の中心402を、幅wを有する最も近い電極302から分離する。2つの対向電極304は、表面208上の電極302の近傍に距離gで対称に構成されている。導波路100の方向zに沿って、導波路100および複数300の電極302、304は、それらのそれぞれの長さに沿って並進対称性を有し、例えば導波路デバイスの湾曲または曲げによる僅かな変更を除いて、同一の断面を有する。
【0147】
電極302と対向電極304との間に制御電圧が印加され、導波路デバイスを動作させる。制御電圧を印加することは、コア110の位置に電界を誘起し、コア110の屈折率を変更する。したがって、導波路デバイスは、コア110に閉じ込められ、導波路の方向zに沿って伝搬する電磁波を変調するための電気光変調器として機能する。
【0148】
変調の程度は、電極302、304に制御電圧を印加することによって誘起されるコア100の位置における電界の大きさに依存する。より短い長さを有する導波路デバイスを使用して、π位相シフトなどの電磁波の予め選択された変更を達成することを可能にするため、変調のより大きな程度が望ましい。導波路デバイスの長さが短いほど、予め選択された変更が実行されている間に電磁波が導波路100内を伝搬するときに電磁波が被る伝搬損失を低減する。
【0149】
一般に、コア110と最も近い電極300との間の距離hがより短い導波路デバイスを提供することは、コア100の位置における電界および変調の程度を向上させる。トラック106の構成108によって形成された導波路100の厚さtが各方向において略同じ(等方性)である図4の実施形態では、コア110の中心402と最も近い電極300との間の最小距離hは、導波路100の厚さtによって決定される。図示の実施形態によれば、最小の最小距離hは、厚さtとコア110の半径との合計によって与えられる。
【0150】
図5aは、電極302と対向電極304との間に制御電圧を印加することによって誘起される電界500を示している。コアの位置110において、電界500は、それぞれ表面208および/または電極208と基材102(または電気光学材料104)との間の界面に対してほぼ垂直に向けられる。したがって、コアの位置110における電界500は、そのy成分Eyによって特徴付けられることができる。y成分Eyは、電極302と基材102との界面において最大であり、電極302までの距離dが長くなるにつれて減少する。
【0151】
図5bは、電極302の異なる幅wについてのコアの領域110における電界の最大y成分max(Ey)および最小y成分min(Ey)を示している。最大y成分max(Ey)と最小y成分min(Ey)との間の小さい偏差は、コア110内に閉じ込められた電磁波の均一な変調を容易にするために望ましい。図5bは、導波路デバイスについて偏差が一般に小さく、約60から100μmの電極302の幅wを使用してさらに最小化されることができることを示している。
【0152】
図6は、電極302と対向電極304との間に37Vの制御電圧を印加することによって得られた、表面208に対して垂直な方向yに沿った偏光を有する光に対する屈折率の変化Δnyyを示している。電極302の幅wが50μmであり、電極302と対向電極304との間の距離gが10μmである導波路デバイスについて、屈折率の変化Δnyyを求めた。
【0153】
屈折率の変化を使用して、導波路デバイスをπ位相シフタとして動作させるのに適した導波路デバイスの長さLが計算される。図7は、電極302の異なる幅wについて対応する長さLを示し、電極302と対向電極304との間の距離gは30μmであり、コア110の中心402と最も近い電極302との間の距離hは50μmである。70μmなど、約50から100μmの電極の最適化された幅wの場合、30mmの導波路デバイスの長さLは、π位相シフタを確立するのに十分である。短い長さは、π位相シフトを受けるのに伴ってコア110における電磁波の伝搬の光路長を低減するため、電気光変調器の伝搬損失を最小にする。
【0154】
π位相シフタなどの電気光変調器用の導波路デバイスの長さLは、それぞれ、コア110の位置において電界500を増加させることによって、または電界500とコアに閉じ込められた電磁波との間の重なりを増加させることによってさらに低減されることができる。
【0155】
図8aは、導波路100の中心402と最も近い電極302との間の低減された距離hを有する導波路デバイスの実施形態を示している。低減された距離hは、異方性厚さを有する、すなわち、異なる方向に沿って異なる厚さt、t’を有するトラック106の構成108を形成することによって達成される。厚さt、t’は、コア110と最も近い電極302との間の領域において最小である。したがって、導波路100の最小厚さt’は、図4の実施形態のような等方性厚さtではなく、コア110の中心402と最も近い電極302との間の最小距離hを決定付ける。導波路100の最小厚さt’は、図4の実施形態の等方性厚さtよりも小さい。これは、電極302と対向電極304との間に制御電圧を印加することにより、コア110の位置に誘起される電界を増強する。したがって、π位相シフタなどの電気光変調器は、導波路デバイスの長さLおよび/または制御電圧を低減して実装されることができる。したがって、電気光変調器の伝搬損失が低減され、および/または電気光変調器のスイッチング周波数が増大される。例えば、図8aの実施形態にかかる導波路デバイスは、30mmの長さを有して形成され、13.5Vの制御電圧が印加されると、π位相シフタの形態の電気光変調器として動作可能である。したがって、図8aの実施形態にかかる導波路デバイスは、低損失で高速な電気光変調器を提供する。
【0156】
図8bは、図8aの実施形態に対応する導波路デバイスについて、導波路100内を伝搬する電磁波の等電界線600を示している。この実施形態では、トラック106の構成108の最小厚さt’は、単一のトラックに対応する。この幾何学的形状では、等電界線600は、コア110に限定され、電極302との重なりは無視できる。その結果、図8a、図8bの実施形態にかかるトラック106の構成108は、距離hおよび長さLが最小化されながら、低伝搬損失の機能導波路を提供する。
【0157】
図9aおよび図9bは、導波路100の最小厚さt’をさらに低減し、その結果、コア110と最も近い電極302との間の最小距離hをさらに低減した実施形態を示している。この実施形態では、最小厚さt’は、略ゼロであり、コア110と最も近い電極302との間の領域にトラックはない。コア110の中心402と電極302との間の距離は最小化され、コア402の半径に略対応する。したがって、電極302と対向電極304との間に制御電圧を印加することにより誘起されるコア110の位置における電界500がさらに増強され、コア110を伝搬する電磁波の変調が増強される。
【0158】
しかしながら、コア110と最も近い電極302との間の領域にトラック106が存在しないと、コア110から電極302への電磁波の漏れをもたらす。これは、そのような実施形態の電磁波の等電界線600を示す図9bに示されている。電磁波と電極302との重なりは、電極302における電磁波の吸収および伝搬損失の増加をもたらす。
【0159】
要約すると、図9aおよび図9bの実施形態は、場合によっては電磁場のより強い歪みおよびより大きな伝搬損失を犠牲にするが、増強された電界500およびコア110の位置における屈折率の変調を提供することができる。
【0160】
図10のグラフは、1つのトラック116(図8a、図8bの実施形態)に対応する最小厚さt’および略ゼロの最小厚さt’(図9a、図9bの実施形態)を有する導波路デバイスの伝搬損失700a、700b、702a、702b、704a、704bを示している。
【0161】
詳細には、個々のデータセット700a、700b、702a、702b、704a、704は、以下の特性を有するデバイスの伝搬損失を示している:
700a:1つのトラック116の最小厚さt’、銅電極、制御電圧37V;
700b:1つのトラック116の最小厚さt’、銅電極、制御電圧0V;
702a:1つのトラック116の最小厚さt’、金電極、制御電圧37V;
702b:1つのトラック116の最小厚さt’、金電極、制御電圧0V;
704a:最小厚さt’=0、銅電極、制御電圧37V;
704b:最小厚さt’=0、銅電極、制御電圧0V。
【0162】
図10は、14μmのコアの中心402と最も近い電極302との間の最適化された距離hに対して、(図8a、図8bの実施形態)1つのトラック116に対応する最小厚さt’を有するデバイスが、0.15dB/cm(銅電極)または0.2dB/cm(金電極)という低い伝搬損失を提供することを示している。したがって、長さLが3cmの対応する導波路デバイスは、0.45dB(銅電極)または0.6dB(金電極)の全伝搬損失を有する。対照的に、略ゼロ(図9a、図9bの実施形態)の最小厚さt’を有するデバイスの場合、伝搬損失は、約0.65dB/cmである。
【0163】
図11および図12は、代替的な実施形態にかかる導波路デバイスを示している。図11および図12に示す実施形態の導波路100は、図1a、図1b、および図1cの実施形態の文脈において説明した導波路と同様であり、図2aから図2iおよび図3の文脈において説明した装置および方法を使用して製造される。導波路デバイスのそれぞれはまた、複数300の電極302、304を備える。
【0164】
しかしながら、図11および図12の実施形態にかかる導波路デバイスは、電極300、302、304の幾何学的構成が互いに異なり、上述した実施形態とは異なる。特に、図11および図12の実施形態の電極302および対向電極304は、表面208の下方に少なくとも部分的に構成される。換言すれば、表面208は、表面208に対して垂直な方向yに沿った位置であって、電極302および電極304の少なくとも一部の上方に位置している。
【0165】
図11の実施形態では、電極302および対向電極304は、導波路100の両側に位置する。電極300、302、304は、導波路100に平行であり、表面208に対して垂直な平面y,zにおいて略平坦である。そのような電極は、図2aから図2iおよび図3の文脈において説明したように、まず基材102の電気光学材料104内に導波路100を形成することによって製造される。その後、エッチングまたはレーザ切断ステップが実行されて、基材102の一部を選択的に除去し、形成される電極300、302、304の形状を有する空隙構造を生成する。エッチングまたはレーザ切断ステップは、フォトリソグラフィエッチングステップ、特に異方性エッチングステップ、またはマスクレスレーザ切断ステップ、またはこれら2つの組み合わせを使用することができる。その後、構造化空隙は、例えば真空チャンバ内の気相から堆積されたチタン、タンタル、金もしくは銅またはそれらの組み合わせなどの導電性材料によって充填される。
【0166】
図12の実施形態は、図11の実施形態と同様であるが、湾曲電極300、302、304を有する。湾曲電極300、302、304は、電極302と対向電極304との間に印加される制御電圧によって誘起される電界と、コア110を伝搬する電磁波との重なりをさらに改善する。湾曲電極300、302、304は、少なくとも1つのフォトリソグラフィエッチングステップを使用して、特に異方性エッチングステップと等方性エッチングステップとの組み合わせ、および/またはマスクレスレーザ切断ステップを使用して製造される。上述した電極300、302、304と比較して、図12の実施形態の電極300、302、304のより複雑な形状は、図12の導波路デバイスの製造をより困難且つ高価にする可能性がある。
【0167】
説明および図面は、本開示およびそれに関連する多数の利点を説明するのに役立つにすぎず、いかなる限定も意味すると解釈されるべきではない。本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲から決定されるべきである。
【符号の説明】
【0168】
100 導波路
100a,100b 導波路の第1の端部、導波路の第2の端部
102 基材
104 電気光学材料
106,106’ トラック
108 導波路の方向に対して垂直な平面内の構成
110 中央領域、導波路のコア
112 トラックの構成の第1の中断部
114 導波路の方向に対して垂直な平面(xy平面)
116 正三角形
118a-d 正三角形の格子
120 導波路デバイス
z 導波路の方向
t,t’ 導波路の厚さ
200 レーザを有するレーザ装置
202 レーザビーム
204 顕微鏡対物レンズ
206 焦点
206’ 第2の焦点
208 第1の表面
210 並進ステージ
212 並進方向
214 スリット
216e,216f,216g,216h 基準面
218 略円形断面
220 楕円に対応する断面
222 異方性集束素子、シリンドリカルレンズ
e1 第1の延伸部
e2 第2の延伸部
230 導波路デバイスの製造方法
232 基材を提供する
234 導波路を形成する
236 複数のトラックを形成する
238 レーザビームを電気光学材料内に集束させる
240 レーザビームの焦点を伝搬する
w1 焦点におけるレーザビームの(並進ステージの並進方向に対する)長手方向幅
w2 焦点におけるレーザビームの(並進ステージの並進方向に対する)横方向幅
300 複数の電極
302 電極
304 対向電極
402 コアの中心
g 電極と対向電極との間の距離
h コア中心と最も近い電極との間の距離
w 電極の幅
500 電界
d 第1の表面からの距離
L 導波路の方向に沿った電極の延伸部
600 等電界線
700a,700b 伝搬損失
702a,702b 伝搬損失
704a,704b 伝搬損失
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図2f
図2g
図2h
図2i
図3
図4
図5a
図5b
図6
図7
図8a
図8b
図9a
図9b
図10
図11
図12
【外国語明細書】
図1a】
図1b】
図1c】
図2a】
図2b】
図2c】
図2d】
図2e】
図2f】
図2g】
図2h】
図2i】
図3
図4
図5a】
図5b】
図6
図7
図8a】
図8b】
図9a】
図9b】
図10
図11
図12