(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023099352
(43)【公開日】2023-07-12
(54)【発明の名称】アブレーション電極及び電気解剖学的感知電極を有するバスケットカテーテル
(51)【国際特許分類】
A61B 5/287 20210101AFI20230705BHJP
A61B 18/14 20060101ALI20230705BHJP
A61B 5/33 20210101ALI20230705BHJP
A61B 5/263 20210101ALI20230705BHJP
A61B 5/268 20210101ALI20230705BHJP
【FI】
A61B5/287 200
A61B18/14
A61B5/33 100
A61B5/263
A61B5/268
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022211680
(22)【出願日】2022-12-28
(31)【優先権主張番号】17/566,272
(32)【優先日】2021-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・トーマス・ビークラー
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・トーマス・キース
(72)【発明者】
【氏名】ジャスティン・ジョージ・リヒター
(72)【発明者】
【氏名】ケビン・ジャスティン・ヘレラ
【テーマコード(参考)】
4C127
4C160
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127BB05
4C127LL08
4C160KK03
4C160KK04
4C160KK17
4C160MM38
(57)【要約】
【課題】カテーテルを提供すること。
【解決手段】カテーテルは、器官に挿入するためのシャフトと、シャフトに結合され、スプラインを備える拡張可能な遠位端アセンブリであって、スプラインのうちの少なくとも1つは、器官の組織に適合するように構成された可撓性基材を含む、拡張可能な遠位端アセンブリと、(a)可撓性基材に結合されるように、及び(b)組織と接触したときに、組織において感知された心電図信号を示す電気信号を生成するように、構成された感知電極であって、感知電極が、(i)可撓性基材の上に形成され、電気信号を伝導するように構成された金基材と、(ii)金基材の第1のセクションの上に形成され、組織と金基材との間を電気的に絶縁するように構成された第1のポリマー層と、(iii)金基材の第2の異なるセクションの上に形成され、組織と金基材との間で心電図信号を伝導するように構成された第2のポリマー層と、を備える、感知電極と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルであって、
患者の器官に挿入するためのシャフトと、
前記シャフトに結合され、複数のスプラインを備える拡張可能な遠位端アセンブリであって、前記スプラインのうちの少なくとも1つは、前記器官の組織に適合するように構成された可撓性基材を含む、拡張可能な遠位端アセンブリと、
(a)前記可撓性基材に結合されるように、及び(b)前記器官の組織と接触して配置されたときに、前記組織において感知された心電図(ECG)信号を示す電気信号を生成するように、構成された少なくとも1つの感知電極であって、前記感知電極が、
(i)前記可撓性基材上に形成され、前記電気信号を伝導するように構成された金基材と、
(ii)前記金基材の第1のセクションの上に形成され、前記組織と前記金基材との間を電気的に絶縁するように構成された第1のポリマー層と、
(iii)前記第1のセクションとは異なる、前記金基材の第2のセクションの上に形成され、前記組織と前記金基材との間で前記電気信号を伝導するように構成された第2のポリマー層と、を備える、少なくとも1つの感知電極と、を備える、カテーテル。
【請求項2】
前記第2のセクションが、前記第1のセクションにおける開口内に位置付けられている、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記器官が、心臓を含み、前記スプラインのうちの少なくとも1つの前記可撓性基材に結合された1つ又は2つ以上のアブレーション電極を備え、前記組織と接触して配置されたときに、前記アブレーション電極のうちの少なくとも1つが、前記組織内に損傷を生成するための1つ又は2つ以上のアブレーション信号を前記組織に印加するように構成されている、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記アブレーション電極が、前記スプライン上の第1の位置に位置付けられ、前記感知電極が、前記スプライン上の前記第1の位置とは異なる第2の位置に位置付けられている、請求項3に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記第1のセクション及び前記第2のセクションが、共通界面を有し、互いに重ならない、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記スプラインのうちの少なくとも1つが、前記スプラインの長手方向軸に沿った選択された位置で前記可撓性基材に結合された前記感知電極のうちの1つ又は2つ以上を備える、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記第1のポリマー層及び前記第2のポリマー層が、それぞれ、前記組織と接触して配置されるように意図された第1の外面及び第2の外面を有し、前記第2の外面が、前記第1の外面に対して陥凹している、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記第2のポリマー層が、円形形状を含み、前記第1のポリマー層が、前記第2のポリマー層の前記円形形状を取り囲むように成形されている、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項9】
前記第1のポリマー層が、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリエーテルブロックアミド(PEBA)を含み、前記第2のポリマー層が、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、又はポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)を含む、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項10】
前記可撓性基材が、ニッケル-チタン合金を含み、少なくとも前記感知電極が、前記ニッケル-チタン合金に結合されている、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項11】
カテーテルを製造するための方法であって、前記方法が、
器官の組織内の心電図(ECG)信号を感知するための少なくとも1つの感知電極を製造することであって、
金基材と前記組織との間を電気的に絶縁するために、前記金基材の第1のセクションの上に第1のポリマー層を形成することと、
前記組織と前記金基材との間で前記ECG信号を電気的に伝導するための第2のポリマー層を、前記第1のセクションとは異なる前記金基材の第2のセクションの上に形成することと、によって、製造することと、
前記感知電極を拡張可能な遠位端アセンブリのスプラインの可撓性基材に結合することであって、前記器官と接触して配置されたときに、前記スプラインが前記組織に適合する、結合することと、
前記拡張可能な遠位端アセンブリを、前記器官内への挿入のためのシャフトに結合することと、を含む、方法。
【請求項12】
前記第1のポリマー層を形成することが、前記第1のポリマー層を前記第1のセクション及び前記第2のセクションに適用することと、前記第1のポリマーを前記第2のセクションから除去することによって、前記金基材の前記第2のセクションを露出させることと、を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第2のポリマー層を形成することが、前記第2のポリマー層を前記露出された第2のセクションに適用することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記器官が心臓を含み、前記スプラインのうちの少なくとも1つの前記可撓性基材に、1つ又は2つ以上のアブレーション電極を結合することを含み、前記組織と接触して配置されたときに、前記アブレーション電極のうちの少なくとも1つが、前記組織内に損傷を生成するための1つ又は2つ以上のアブレーション信号を前記組織に印加するために使用される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記1つ又は2つ以上のアブレーション電極を結合することが、前記スプライン上の第1の位置に前記1つ又は2つ以上のアブレーション電極を位置付けることと、前記スプライン上の前記第1の位置とは異なる第2の位置に前記感知電極を位置付けることと、を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1のセクション及び前記第2のセクションが、共通の界面を有し、互いに重ならない、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記第1のポリマー層及び前記第2のポリマー層が、それぞれ、前記組織と接触して配置されるように意図されている第1の外面及び第2の外面を有し、前記第1のポリマー層及び前記第2のポリマー層を形成することが、前記第1の外面に対して陥凹している前記第2の外面を形成することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記第2のポリマー層が、円形形状を含み、前記第1のポリマー層を形成することが、前記第2のポリマー層の前記円形形状を取り囲むように前記第1のポリマー層を成形することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記第1のポリマー層が、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリエーテルブロックアミド(PEBA)を含み、前記第2のポリマー層が、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、又はポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記可撓性基材が、ニッケル-チタン合金を含み、前記感知電極を結合することが、少なくとも前記感知電極を前記ニッケル-チタン合金に結合することを含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、同日に提出された代理人整理番号BIO6612USNP2 1002-2555.1の「Basket catheter having ablation electrodes and temperature sensors」と題する米国特許出願に関連する。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、概して医療デバイスに関し、特に、アブレーション電極及び電気解剖学的感知電極を有する拡張可能なカテーテルの製造方法並びに拡張可能なカテーテルに関する。
【背景技術】
【0003】
アブレーション電極及び様々な種類の感知電極を有する拡張可能なカテーテルの製造方法並びに拡張可能なカテーテルが公開されている。
【0004】
例えば、米国特許出願公開第2020/0337765号は、標的神経線維(例えば、肝神経調節)又は他の組織を調節するためのシステム、デバイス、及び方法を記載している。システムは、隣接する肝血管系の蛇行した解剖学的構造又は隣接する肝血管系にアクセスするように構成され得る。このシステムは、一般的な肝動脈などの動脈又は他の血管を取り囲む(例えば、外膜又は血管周囲腔内の)神経を標的とするように構成され得る。
【0005】
以下の本開示の実施例の詳細な説明を図面と一緒に読むことで、本開示のより完全な理解が得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本開示の実施例による、カテーテルベースの位置追跡及びアブレーションシステムの概略描写図である。
【
図2】本開示の実施例による、拡張位置にあるバスケットカテーテルの遠位端アセンブリの概略描画図である。
【
図3】本開示の実施例による、製造された複数の感知電極の概略上面図、及び1つの感知電極の断面図である。
【
図4】本開示の実施例による、
図2及び
図3に示される感知電極のうちの1つを製造するためのプロセスフローを概略的に例示するブロック図である。
【
図5】本開示の実施例による、
図2~
図4に示されるアブレーション電極及び感知電極を有するバスケットカテーテルを製造するための方法を概略的に例示するフロー図である。
【
図6】本開示の実施例による、アブレーション電極及び1つ又は2つ以上の熱電対を有するバスケットカテーテルを製造するための方法を概略的に例示するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
概説
以下に記載される本開示の実施例は、アブレーション電極、電気解剖学的(electro-anatomical、EA)感知電極、及び熱電対(thermocouple、TC)などの温度センサを有する、バスケットカテーテルなどの拡張可能なカテーテルを製造するための改善された技術を提供する。
【0008】
いくつかの実施例では、アブレーションカテーテルは、患者の心臓に挿入するためのシャフトと、拡張可能な遠位端、本実施例では、本明細書でバスケットとも称されるバスケット形状の遠位端アセンブリとを備える。バスケットは、シャフトに結合され、脈管構造を移動して心臓に出入りするときに折り畳み位置にあり、例えば、心電図(electrocardiogram、ECG)信号を感知するため、及び/又は心臓の組織にアブレーション信号を印加するために、1つ又は2つ以上の拡張位置に拡張されるように構成されている。
【0009】
バスケットは、本明細書ではスプラインとも称される複数のアームを備える。いくつかの実施例では、スプラインのうちの少なくとも1つ、及び典型的には全ては、(i)組織内のECG信号を感知する、及び/又は(ii)前述のアブレーション電極を介して高周波(radiofrequency、RF)アブレーション信号(例えば、パルス)を組織に印加するように、心臓の組織に接触して配置されるときに、心臓の組織に適合するように構成された可撓性基材を備える。
【0010】
いくつかの実施例では、アブレーション電極のうちの少なくとも1つ、及び典型的には各々は、熱電対(TC)などの温度感知デバイスを収容するように構成された、スロットを含む。所与のTCを包含する所与のアブレーション電極が組織と接触して配置されるとき、所与のTCは、組織の感知された温度を示す熱信号を生成するように構成されている。TCは、アブレーション電極がアブレーション信号を組織に印加している間、及び/又はアブレーション電極が組織と接触しているがアブレーション信号が組織に印加されていないときに、組織温度を感知するように構成されていることに留意されたい。
【0011】
いくつかの実施例では、心臓の組織と接触して配置されるとき、本明細書では簡潔にするために感知電極とも称されるEA感知電極の各々は、組織内で感知されたECG信号を示す電気信号を生成するように構成されている。各スプラインは、スプラインの長手方向軸に沿った選択された位置で可撓性基材に結合されている1つ又は2つ以上の感知電極を備え得る。
【0012】
いくつかの実施例では、各感知電極は、金基材を備え、その表面は、互いに重ならないが、共通界面を有する、少なくとも第1及び第2のセクションを含む。
【0013】
いくつかの実施例では、金基材の第1のセクションの上に形成される第1のポリマー層は、組織と金基材との間を電気的に絶縁するように構成されている。金基材の第2のセクションの上に形成される第2のポリマー層は、組織と金基材との間でECG又は電気信号を伝導するように構成されている。
【0014】
いくつかの実施例では、複数の感知電極が一緒に製造され、次いで、それぞれのスプラインに結合されるように意図された1つ又は2つ以上の感知電極に分離され得る。
【0015】
いくつかの実施例では、金基材は、スプラインの可撓性基材に結合されるように意図された第1の表面と、第1及び第2のセクションを有する第2の表面とを含む。
【0016】
いくつかの実施例では、製造プロセスフローにおいて、(i)第1のポリマー層が、金基材の表面全体に適用され、(ii)第1のポリマー層が、金基材の第2の表面を露出させるために第2のセクションから除去され(例えば、第1のポリマー層を切断するレーザを使用して)、(iii)第2のポリマー層が、金基材の第2の表面の第2のセクションに適用される。
【0017】
いくつかの実施例では、第2のポリマーの第2の外面は、組織と接触して配置されたときに第2の外面を損傷から保護するように、第1のポリマーの第1の外面に対して陥凹している。
【0018】
他の実施例では、組織と接触して配置されることが意図されている第1及び第2のポリマー層の外面は、典型的には、互いに同一平面になる。例えば、これらの実施例は、同様の厚さの第1のポリマー層及び第2のポリマー層を有することによって得られる。
【0019】
代替の実施例では、第2のポリマー層の外面は、組織と第2のポリマー層の外面との間に十分な接触力を有することによって組織から金基材にECG信号を伝導するように、第1のポリマー層の外面に対して組織に向かってわずかに突出し得る(例えば、約5μm未満)。例えば、これらの実施例は、第2のポリマー層の厚さを第1のポリマー層の厚さよりわずかに大きくすることによって得られる。
【0020】
いくつかの実施例では、バスケットカテーテルのスプラインのうちの少なくとも1つ、典型的には各スプラインは、組織と接触して配置されるように意図された表面上に、(i)第1の位置において、1つ又は2つ以上のアブレーション電極及びアブレーション電極のスロット内に収容された温度センサ、並びに(ii)第1の位置とは異なる第2の位置において、1つ又は2つ以上の感知電極、を有し得る。
【0021】
開示される技術は、問題の組織の電気解剖学的マッピング及びアブレーションの両方を行うために、バスケットカテーテルなどの拡張可能なカテーテルの機能性を改善する。更に、開示される技術は、2つの異なるカテーテル(感知及びアブレーション)を患者の心臓に挿入する必要性を低減し、したがって、医療処置の持続時間を低減し、感知及びアブレーション処置を行うために2つの異なるカテーテルを使用することに関連付けられたコストを低減する。
【0022】
システムの説明
図1は、本開示の実施例による、カテーテルベースの位置追跡及びアブレーションシステム20の概略描写図である。いくつかの実施例では、システム20は、本実施例ではバスケット形状を有する拡張可能な心臓カテーテルであるカテーテル22と、制御コンソール24と、を備える。本明細書に記載の実施例では、カテーテル22は、問題の組織における電気解剖学的(EA)情報を感知すること、及び心臓26の組織にアブレーション信号を印加することなどであるが、これらに限定されない、任意の好適な治療及び/又は診断目的のために使用され得る。本開示の文脈において、情報という用語は、カテーテル遠位端の空間的場所、及びカテーテル22の電極によって感知される心電図(ECG)信号を指す。
【0023】
いくつかの実施例では、コンソール24は、カテーテル22から信号を受信するための、及び本明細書に記載のシステム20の他の構成要素を制御するための好適なフロントエンド及びインターフェース回路を備えた、典型的には汎用コンピュータであるプロセッサ42を備える。プロセッサ42は、システムによって使用される機能を実行するようにソフトウェアでプログラムされてもよく、かつ、プロセッサ42は、ソフトウェア用のデータをメモリ50内に記憶するように構成されている。本ソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して電子的形態でコンソール24にダウンロードされてもよい、又は光学的記憶媒体、磁気的記憶媒体、若しくは電子的記憶媒体などの、非一時的な有形媒体で提供されてもよい。代替的に、プロセッサ42の機能の一部又は全部は、特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit、ASIC)又は任意の好適な種類のプログラム可能なデジタルハードウェア構成要素を使用して、実行されてもよい。
【0024】
これより、挿入
図25を参照する。いくつかの実施例では、カテーテル22は、複数のスプラインを有する遠位端アセンブリ40(以下の
図2に詳細に示す)と、心臓26内の組織のアブレーションを行うために遠位端アセンブリ40を標的位置に挿入するためのシャフト23と、を備える。電気生理学的(Electrophysiology、EP)マッピング及び/又はアブレーション処置中に、医師30は、テーブル29に横たわる患者28の脈管系を通して、カテーテル22を挿入する。医師30は、プロセッサ42のインターフェース回路に接続されたカテーテル22の近位端付近のマニピュレータ32を使用して、遠位端アセンブリ40を心臓26内の標的位置に移動させる。
【0025】
いくつかの実施例では、カテーテル22は、例えば、遠位端アセンブリ40に極めて近接してカテーテル22の遠位端に結合される、位置追跡システムの位置センサ39を備える。本実施例では、位置センサ39は磁気位置センサを備えるが、他の実施例では、任意の他の好適な種類の位置センサ(例えば、磁気系以外のもの)が使用されてもよい。
【0026】
ここで、再び
図1の全体図を参照する。いくつかの実施例では、心臓26内での遠位端アセンブリ40の誘導中、プロセッサ42は、例えば、心臓26内での遠位端アセンブリ40の位置を測定するために、外部磁場発生器36からの磁場に応答して、磁気位置センサ39から信号を受信する。いくつかの実施例では、コンソール24が、磁場発生器36を駆動するように構成された駆動回路34を備える。磁場発生器36は、例えば、テーブル29の下など、患者28の外部の周知の位置に配置される。
【0027】
いくつかの実施例では、プロセッサ42は、例えば、コンソール24のディスプレイ46上に、心臓26の画像44上に重ねられた遠位端アセンブリ40の追跡された位置を表示するように構成されている。
【0028】
外部磁場を使用するこの位置感知方法は、様々な医療用途において、例えば、Biosense Webster Inc.(Irvine,Calif.)により製造されているCARTO(商標)システムに実装されており、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号、及び同第6,332,089号、国際公開第96/05768号、並びに米国特許出願公開第2002/0065455(A1)号、同第2003/0120150(A1)号、及び同第2004/0068178(A1)号に詳細に説明されている。
【0029】
アブレーション電極、感知電極及び温度センサを有する遠位端アセンブリ
図2は、本開示の実施例による、拡張位置にあるカテーテル22の遠位端アセンブリ40の概略描画図である。いくつかの実施例では、医師30は、以下で説明するように、マニピュレータ32を使用して遠位端アセンブリ40を折り畳み、かつ拡張し得る。
【0030】
いくつかの実施例では、遠位端アセンブリ40は、シャフト23と遠位端アセンブリ40の頂点89との間に結合された拡張可能なバスケットカテーテルを備える。頂点89は、典型的には(必ずしもそうとは限らないが)シャフト23の軸71に直交するカテーテル22の最遠位部分であることに留意されたい。
【0031】
本実施例では、遠位端アセンブリ40は、複数のスプライン55を備える。各スプライン55は、ニッケル-チタン合金(例えば、ニチノール)などの可撓性基材56、又は多層可撓性プリント回路基板などの任意の他の1つ又は2つ以上の好適な材料から作製されるか、又はそれを含む。スプライン55は、問題の組織と接触して配置されるときに、問題の組織に適合するように十分に可撓性でなければならないことに留意されたい。
【0032】
いくつかの実施例では、遠位端アセンブリ40は、1つ又は2つ以上のアブレーション電極66を備え、本実施例では、1つ又は2つ以上のアブレーション電極66は、少なくとも所与のスプライン55上に、典型的には、遠位端アセンブリ40の各スプライン55上に組み付けられる。
【0033】
ここで、本開示の実施例による、アブレーション電極66の一実装形態を示す挿入
図60を再び参照する。
【0034】
いくつかの実施例では、アブレーション電極66は、アブレーション電極66の軸73に沿って形成され、内部を通る貫通孔(through hole、TH)70を含み、その結果、スプライン55は、
図2の全体図に示されるように、TH70を通り抜けることができる。
【0035】
いくつかの実施例では、アブレーション電極66は、TH70の内面72に形成されたスロット67を含み、熱電対(TC)68などの温度センサ、又は温度センサ以外の任意の好適なデバイスを収容するように構成されている。スロット67は、TH70の任意の内面72上に形成され得、スロット67の好ましい場所は、電極66の、心臓26の問題の組織に面するように意図される側にある。
【0036】
ここで、アブレーション電極66の断面
図AAを参照する。いくつかの実施例では、内面72は、TC68が、TH70のエリアに突出することなくスロット67内に嵌合し、充填するように成形され、TH70は、スプライン55にぴったりと外嵌するように構成されている。
【0037】
いくつかの実施例では、アブレーション電極66が、アブレーションされることが意図される心臓26の所与の組織と接触して配置されると、TC68は、所与の組織の温度を示す熱信号を生成するように構成されている。そのような実施例では、スプライン55は、(i)コンソール24内で生成され、アブレーション電極66を介して所与の組織に印加されるアブレーション信号を伝導し、(ii)所与の組織の温度を分析するために、TC68からプロセッサ42に熱信号を伝導するように構成されている。TC68は、プロセッサ42によって制御され、(i)アブレーション信号を所与の組織に印加している間、及び(ii)アブレーション信号が所与の組織に印加されていないときに、熱信号を生成するように構成されていることに留意されたい。
【0038】
ここで、再び
図2の全体図を参照する。いくつかの実施例では、医師30がカテーテル22の遠位端アセンブリ40を心臓26内の標的位置に移動させるときには、遠位端アセンブリ40は折り畳み位置にあり、全てのスプライン55は真っすぐである。遠位端アセンブリ40が心臓26内の標的位置に位置付けられると、医師30は、典型的には、
図2の実施例に示すように、スプライン55が曲がった状態で遠位端アセンブリ40が拡張位置にあるように、(例えば、頂点89をシャフト23に向かって引っ張ることによって、又はシャフト23の遠位端69を頂点89に向かって押すことによって、又は任意の他の技術を使用することによって)シャフト23の遠位端69と頂点89との間の距離を縮める。本実施例では、医師30は、頂点89とシャフト23の遠位端69との間の距離、したがって遠位端アセンブリ40の拡張量を制御するためにマニピュレータ32(上記の
図1に示す)を使用し得る。あるいは、スプライン55は、それらの自然な形状が、シース(図示せず)に入れられたときに折り畳まれることを可能にするほぼ球形のバスケットであるように形状設定され得る。
【0039】
いくつかの実施例では、遠位端アセンブリ40は、スプライン55に結合され(又はスプライン55上に形成若しくは配設され)、典型的には、隣接するアブレーション電極66の間に、又はアブレーション電極66と、スプライン55に結合された別の要素(例えば、頂点89及び/又はシャフト23)との間に位置付けられた、感知電極77などの様々な種類の診断電極を備える。各位置において、スプライン55は、1つ又は2つ以上の感知電極77を有し得ることに留意されたい。
【0040】
いくつかの実施例では、感知電極77のうちの少なくとも1つ、典型的には全てが、スプライン66に結合されるように構成されている。心臓26の組織と接触して配置されると、各感知電極77は、組織から感知された心電図(ECG)信号を示す電気信号を生成するように構成されている。
【0041】
いくつかの実施例では、プロセッサ42は、問題の組織(及び心臓26の他のセクション)のEAマップを生成するように構成されている。EAマップに基づいて、医師30(及び/又はプロセッサ42)は、アブレーション信号を組織に印加するための1つ又は2つ以上の場所を決定し得る。原則として、アブレーション電極を挿入する前又は挿入している間にEPマッピングを実行するために、感知電極77などの感知電極を有する追加のカテーテルを心臓26に挿入することが可能であることに留意されたい。しかしながら、追加のカテーテルの挿入は、(i)アブレーション処置を長引かせる、(ii)2つのカテーテルの挿入に起因する安全事象のリスクを増加させる、及び(iii)感知電極及びアブレーション電極の両方を有する単一カテーテルの代わりに2つのカテーテルを使用することに関連付けられるコストを増加させる、可能性がある。
【0042】
ここで、選択された位置で各スプライン55に結合された2対の感知電極77を示す挿入
図74及び挿入
図74aを参照する。挿入
図74の例では、2つの感知電極77が隣接するアブレーション電極66の間に位置付けられており、挿入
図74aの例では、2つの感知電極77がアブレーション電極66と頂点89との間に位置付けられている。
【0043】
他の実施例では、任意の他の好適な数の感知電極77が、スプライン55に沿った各好適な場所に実装され得る。例えば、アブレーション電極66と頂点89との間の1つの感知電極77、及び2つの隣接するアブレーション電極66の間に実装される2つ又は3つ以上の感知電極77である。
【0044】
いくつかの実施例では、各感知電極77は、円形形状及び約0.15mmの直径を含む。代替実施例では、各感知電極77のサイズ及び形状は、各スプライン内、又はスプライン間の位置に基づいて変化してもよい。例えば、第1の感知電極77は、約0.14mmの幅を有する正方形形状を有してもよく、第2の感知電極77は、約0.15mmの直径を有する円形形状を有してもよく、第3の感知電極77は、約0.18mmの直径を有する円形形状を有してもよい。
【0045】
本明細書で使用される際、任意の数値又は数値範囲に対する「約」又は「ほぼ」という用語は、構成要素の一部又は構成要素集合を、本明細書に記載のその意図された目的に沿って機能させるのに適した寸法の許容誤差を示すものである。
【0046】
いくつかの実施例では、各感知電極77は、導電性セクションと電気絶縁性セクションとを含む。感知電極77及びそれらの製造プロセスは、それぞれ
図3及び
図4において以下に詳細に説明される。
【0047】
遠位端アセンブリ40のこの特定の構成は、本開示の実施例によって対処される特定の問題を例示するため、並びにそのようなカテーテル法及び組織感知及びアブレーションシステムの性能を向上させる際のこれらの実施例の適用を実証するために、例として示されている。しかしながら、本開示の実施例は、この特定の種類の例示的な遠位端アセンブリに決して限定されず、本明細書で説明される原理は、組織感知、組織アブレーション、それらの組み合わせ、及び患者28の他の器官に適用される他の医療用途において使用される他の種類の遠位端アセンブリ及び/又はカテーテルに同様に適用され得る。
【0048】
アブレーション電極66、TC68、及び感知電極77を遠位端アセンブリ40上で組み合わせることによって、医師30は、遠位端アセンブリ40を空洞(例えば、心臓26の右心房又は左心房)に挿入し、電気解剖学的マッピングを行い、その後、カテーテルを後退させることなく、及び/又は追加のカテーテルを挿入することなく、組織アブレーションを行い得ることに留意されたい。換言すれば、EA感知、温度感知、及び組織アブレーションは、
図2に示されるような遠位端アセンブリ40を有する1つのカテーテルを使用して実行される。
【0049】
加えて、又は代替的に、感知電極77は、任意の他の好適な技術を使用して、遠位端40内に実装され得る。例えば、米国特許出願第16/723,971号及び同第17/489,895号(米国特許出願第16/723,971号の一部継続出願である)に詳細に記載されている微小電極を使用する。いくつかの実施例では、遠位端アセンブリ40は、アブレーション電極66及びTC68と共にこれらの微小電極を備えてもよい。
【0050】
図3は、本開示の実施例による、製造された複数の感知電極77の概略上面図、及び1つの感知電極77の断面
図BBである。
【0051】
いくつかの実施例では、複数の感知電極77は、1つのバッチで、例えば、アレイ65で製造される。その後、感知電極77は、ダイシングされ、単一の感知センサ77に、又は例えば、上記の
図2の挿入
図74及び挿入
図74aに示されるように、複数の(例えば、一対の)感知センサ77のより小さいアレイに分離される。感知電極77の製造プロセスは、製作コストを低減するように設計されており、以下の
図4でより詳細に説明される。
【0052】
ここで、選択された感知電極77の断面
図BBを参照する。いくつかの実施例では、各感知電極77は、スプライン55の可撓性基材56上に形成され、それぞれの感知電極77によって生成された電気信号を伝導するように構成されている、金基材75を備える。
【0053】
いくつかの実施例では、感知電極77は、金基材75の第1のセクションの上に形成され、問題の組織と金基材75との間を電気的に絶縁するように構成された、第1のポリマー層76を備える。いくつかの実施例では、第1のポリマー層76は、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリエーテルブロックアミド(PEBA)などであるがこれらに限定されない、電気絶縁ポリマーを含み得る。
【0054】
いくつかの実施例では、感知電極77は、金基材75の第2のセクションの上に形成され、問題の組織と金基材75との間で電気信号を伝導するように構成された第2のポリマー層78を備える。第2のポリマー層78は、第1のポリマー層76の2つのセクションの間に位置付けられ、すなわち、第2のセクションは、第1のセクションとは異なる位置を含む。
【0055】
いくつかの実施例では、第2のポリマー層78は、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)、又は任意の他の好適な種類の導電性ポリマーなどであるがこれらに限定されない、導電性ポリマーを含む。他の実施例では、層78は、電気化学的に成長させた酸化イリジウム、電気化学的に成長させた窒化チタン(TiN)、又は任意の他の好適な種類の導電性合金などの、非ポリマー材料を含み得る。いくつかの実施例では、層78は、電極77のインピーダンスを低減するように構成され、かつ、上記の
図2で説明したように、本実施例では、約0.15mmの直径である幅80を含む。
【0056】
いくつかの実施例では、ポリマー層78の外面は、ポリマー層76の外面に対して陥凹している。そのような実施例では、組織と接触して配置されるとき、ポリマー層76の外面は、シースの内部との直接接触を防止するが組織との接触を可能にし、これにより、浸食などの、ポリマー層78の表面への損傷を防止する。
【0057】
他の実施例では、ポリマー層76及び78の外面が、互いに同一平面になり、その結果、感知電極77が問題の組織と接触して配置されるとき、ポリマー層76及び78の両方が、問題の組織としっかりと接触する。
【0058】
代替の実施例では、ポリマー層78によるECG信号の感知を改善するように、ポリマー層78の外面は、ポリマー層76の外面に対してわずかに(例えば、約5μm未満)突出する。
【0059】
遠位端アセンブリに結合されるように意図された感知電極の製造
図4は、本開示の実施例による、上記の
図2及び
図3に示される感知電極77のうちの1つを製造するためのプロセスフローを概略的に例示するブロック図である。
【0060】
ステップ1において、ポリマー層76が、ポリマースリーブを収縮させて共形表面を提供することなどによって、金基材75の表面の上に形成される。ポリマー層76の外面は、組織と接触して配置されるように意図されており、ポリマー層76は、金基材75と問題の組織との間を電気的に絶縁するように構成されていることに留意されたい。
【0061】
ステップ2において、レーザ切断システム(図示せず)が適用されて、ポリマー層76を切断し、選択された場所に開口79を形成し、そこに、例えば上記の
図3の断面
図BBで説明したように、金基材75の第2のセクションが露出される。概念を明確にするために、ポリマー層76は、開口79を取り囲むセクション76a、76b及び76cを含む。ポリマー層76のセクション76a、76b及び76cは全て同じ層から作製され、同じサイズ及び形状を有することに留意されたい。
【0062】
いくつかの実施例では、セクション76a、76b及び76c、並びに開口79は、上記の
図3に示されるアレイ65の一部を表す。したがって、
図4の断面図は、典型的には、
図4のXYZ座標系のXY平面において続き、典型的には、ポリマー層76の追加のセクション及び追加の開口79を含む。
【0063】
他の実施例では、開口79は、任意の他の好適なパターニング及び/又は材料除去プロセスを使用して形成されてもよい。
【0064】
ステップ3において、ポリマー層78が、開口79(例えば、ポリマー層76の、セクション76aと76bとの間、及びセクション76bと76cとの間)内に適用され、金基材75の露出表面の上に配設される。ポリマー層78は、カテーテルをコーティング液内に配置し、次いでカテーテル上の電極とコーティング液内に配置された対向電極との間に電流を流すことによって、電気化学的に成長させられる。この方法でコーティングすることにより、ポリマー層78を所望の表面上にのみ選択的に成長させることが可能になる。
【0065】
いくつかの実施例では、ポリマー層78の外面は、問題の組織と接触して配置されるように意図されており、ポリマー層78は、問題の組織と金基材75との間でECG信号を伝導するように構成されている。
【0066】
上記の
図3に示される実施例によれば、
図4のプロセスフローのステップ1~3は、金基材75上に1バッチで複数の感知電極77を製造するように設計されていることに留意されたい。
図4のプロセスフローを完結するステップ4において、感知電極77は、ポリマー層76及び金基材75をダイシングし、その後、隣接する感知電極77間を分離することによって製造される。ステップ4の例では、ポリマー層76のセクション76bは、金基材75と共に、
図4のXYZ座標系のZ軸に沿って切断又はダイシングされる。
【0067】
いくつかの実施例では、プロセスフローは、1つ又は2つ以上の感知電極77をダイシング及び分離した後に追加のステップを含み得る。例えば、そのようなプロセスは、各感知電極77を遠位端アセンブリ40のそれぞれのスプライン55に結合するために必要とされる1つ又は2つ以上の表面を研磨及び調製することを含み得る。
【0068】
代替の実施例では、ステップ3は、ステップ4の後であり、かつ(i)感知電極77及びアブレーション電極66をそれぞれのスプライン55に組み付けることと、(ii)遠位端アセンブリ40のポリマーをガス放出するために遠位端アセンブリ40に硬化ステップを適用することと、(iii)ポリマー層78を電気化学的に成長させるために、開口79の金基材75の表面を調製することと、の後に実行されてもよい。残留物、特に非導電性残留物は、ポリマー層78の電気化学的成長を妨げることがあるので、ポリマー層78の電気化学的コーティングのために、開口79の金基材75の表面は清浄でなければならないことに留意されたい。更に、遠位端アセンブリ40の1つ又は2つ以上の硬化ステップは、ポリマーをガス放出することで感知電極77の表面を汚染することがあり、それは、導電性を低下させ、したがって、感知電極77の感度を低下させることがある。
【0069】
アブレーション電極、熱電対及び感知電極を有するカテーテルの製造
図5は、本開示の実施例による、上記の
図2~
図4に示されるアブレーション電極66及び感知電極77を有するカテーテル22及び遠位端アセンブリ40を製造する方法を概略的に例示するフロー図である。
【0070】
本方法は、電気絶縁層(electrically insulating layer、EIL)形成ステップ100で始まり、上記の
図4のステップ1において詳細に説明したように、金基材75の表面にポリマー層76を適用する。
【0071】
EILパターニングステップ102において、上記の
図4のステップ2において詳細に説明したように、ポリマー層76のセクションを除去し、金基材75の表面を露出させるための開口79を生成するために、レーザ切断システムが使用される。
【0072】
ダイシング及び分離ステップ104において、ポリマー層76のセクション76b及び金基材75は、ダイシングされるか、又は別様にZ軸に沿って切断され、上記の
図4のステップ3において詳細に説明したように、各感知電極77が製造される。
【0073】
カテーテルアセンブリステップ106において、感知電極77及びアブレーション電極66がスプライン55に結合される。更に、スプライン55は、遠位端アセンブリ40を製造するために組み立てられ、その後、(i)遠位端アセンブリ40は、シャフト23に結合され、(ii)少なくとも遠位端アセンブリ40(及び任意選択的にシャフト23)は、カテーテル22からポリマーをガス放出するために1つ又は2つ以上の硬化プロセスを受ける。
【0074】
本方法を完結する導電層(ECL)形成ステップ108において、ポリマー層78が、開口79内に適用され、上記の
図4のステップ3において詳細に説明したように、セクション金基材75の露出表面の上に形成される。問題の組織とポリマー層78との間のしっかりした接触を可能にし、それによって、組織と金基材75との間でECG信号を伝導するように、ポリマー層78の外面は、典型的には、ポリマー層76の外面と同一平面になることに留意されたい。
【0075】
ポリマー層78の電気化学コーティングは、ポリマー層78のコーティングが、遠位端アセンブリ40及び/又はカテーテル22の硬化ステップ中にポリマーをガス放出することで汚染されないことを確実にするように、完成したデバイス(例えば、遠位端アセンブリ40又はカテーテル22)に対して実行されることに留意されたい。
【0076】
図5の方法は、概念を明確にするために簡略化されており、製造方法は、典型的には、位置センサ39を遠位端アセンブリ40に結合すること、及びカテーテル22の前述の硬化(硬化は、紫外線(ultraviolet、UV)硬化プロセス又は熱硬化プロセスなどであるがこれらに限定されない、任意の好適なプロセスを使用して実行される)などであるがこれらに限定されない、追加のステップを含む。UV硬化プロセスでは、接着剤を硬化させるために、デバイスの一部又は全部がUV光(単色又は広域スペクトルであってもよいが、典型的には約405nm以下の波長を含む)に曝露される。熱硬化プロセスでは、接着剤を硬化させるために、デバイスの一部又は全部がオーブン(典型的には、約40℃~95℃の温度であるが、最も一般的には約65℃の温度の)内に配置される。更に、様々な種類のコネクタが、例えば、コンソール24の構成要素と遠位端アセンブリ40との間で感知信号及びアブレーション信号を交換するために、カテーテル22の近位端に結合される。
【0077】
図6は、本開示の実施例による、アブレーション電極66及び1つ又は2つ以上のTC68を有するカテーテル22を製造するための方法を概略的に例示するすフロー図である。
【0078】
本方法は、アブレーション電極66を製造する、アブレーション電極製造ステップ200で始まり、上記の
図2において詳細に説明したように、アブレーション電極66のうちの少なくとも1つ、典型的には、全てが、スプラインを通すためのTH70と、TC68又は任意の他の温度センサを収容するためのスロット67とを有する。
【0079】
温度センサ結合ステップ202において、TC68は、上記の
図2において詳細に説明したように、アブレーション電極66のスロット67に結合される。
【0080】
本方法を完結するカテーテルアセンブリステップ204において、アブレーション電極66は、上記の
図2において詳細に説明したように、スプライン55に結合される。更に、スプライン55は、遠位端アセンブリ40を製造するために組み立てられ、その後、遠位端アセンブリ40は、カテーテル22の製造を完結するためにシャフト23に結合される。
【0081】
上記の
図5において詳細に説明されている、ポリマー層78の電気化学コーティングは、典型的には、ポリマー層78のコーティングが、遠位端アセンブリ40及び/又はカテーテル22の硬化ステップ中にポリマーをガス放出することで汚染されないことを確実にするように、完成したデバイス(例えば、遠位端アセンブリ40又はカテーテル22)に対して実行されることに留意されたい。
【0082】
図5及び
図6のこれらの特定のフロー図は、問題の組織における電気解剖学的信号を感知する際、及びアブレーションされることが意図される組織にアブレーション信号を印加する際の特定の問題を例示するために、例として提供されている。これらの問題は、本開示の実施例によって対処され、上記の
図1の感知及びアブレーションシステムの性能を向上させる際のこれらの実施例の適用を実証するように意図されている。しかしながら、本開示の実施例は、これらの特定の種類の方法及び/又はこの特定の種類の例示的なシステムに決して限定されるものではなく、本明細書に記載の原理は、他の種類の組織感知及び/又はアブレーションするシステムに同様に適用され得る。
【0083】
他の実施例では、
図5及び
図6の方法は、遠位端アセンブリ40上に全て組み込まれる、好適なアブレーション電極(1つ又は2つ以上のアブレーション電極66など)、温度センサ(1つ又は2つ以上のTC68など)、及び感知電極(1つ又は2つ以上の感知電極77など)の組み合わせを有する遠位端アセンブリ40を製造するための、単一の方法に併合されてもよい。
【0084】
本明細書に記載の実施例は、主に、バスケットカテーテル、又は他の種類の拡張可能なカテーテルを扱い、心臓アブレーションに使用される。本明細書に記載の方法及びシステムは、神経科、耳鼻咽喉科、及び腎臓部の除神経術などの他用途で使用することもできる。
【実施例0085】
カテーテル(22)であって、
患者(28)の器官(26)に挿入するためのシャフト(23)と、
シャフト(23)に結合され、複数のスプライン(55)を備える拡張可能な遠位端アセンブリ(40)であって、スプライン(55)のうちの少なくとも1つが、器官(26)の組織に適合するように構成された可撓性基材(56)を含む、拡張可能な遠位端アセンブリ(40)と、
(a)可撓性基材(56)に結合されるように、及び(b)器官(26)の組織と接触して配置されたときに、組織において感知された心電図(ECG)信号を示す感知又は電気信号を生成するように、構成された少なくとも1つの感知電極(77)であって、感知電極(77)が、(i)可撓性基材(56)上に形成され、感知信号を伝導するように構成された金基材(75)と、(ii)金基材(75)の第1のセクション(76a、76b、76c)の上に形成され、組織と金基材(75)との間を電気的に絶縁するように構成された第1のポリマー層(76)と、(iii)第1のセクション(76a、76b、76c)とは異なる、金基材(75)の第2のセクション(79)の上に形成され、組織と金基材(75)との間で電気信号を伝導するように構成された第2のポリマー層(78)と、を含む、少なくとも1つの感知電極(77)と、を備える、カテーテル(22)。