(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023099357
(43)【公開日】2023-07-12
(54)【発明の名称】マルチ形態カテーテル
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20230705BHJP
【FI】
A61B18/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022211726
(22)【出願日】2022-12-28
(31)【優先権主張番号】17/566,415
(32)【優先日】2021-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・トーマス・ビークラー
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・トーマス・キース
(72)【発明者】
【氏名】ジャスティン・ジョージ・リヒター
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK04
4C160KK17
4C160KK39
4C160KL03
4C160MM38
4C160NN01
(57)【要約】
【課題】カテーテル装置を提供すること。
【解決手段】1つの例示的なモードでは、カテーテル装置は、遠位端を含む細長い偏向可能な要素と、遠位部分を含み、偏向可能な要素を通って後退させられるように構成された可撓性プラーと、複数の弾性スプラインを含む拡張可能アセンブリであって、各弾性スプラインが、その上に配設された少なくとも1つの電極を含み、弾性スプラインが、プラーの遠位部分の周りに円周方向に配設されており、スプラインの第1の端部が、偏向可能な要素の遠位端と結合されており、かつ、スプラインの第2の端部が、プラーの遠位部分と結合されており、スプラインが、拡張可能アセンブリの弛緩形態において半径方向外向きに曲がり、プラーが後退させられ、拡張可能アセンブリを弛緩形態から拡張形態に拡張するときに更に半径方向外向きに曲がるように構成されている、拡張可能アセンブリと、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテル装置であって、
遠位端を含む細長い偏向可能な要素、
遠位部分を含み、前記偏向可能な要素を通って後退させられるように構成された可撓性プラー、及び、
複数の弾性スプラインを備える拡張可能アセンブリであって、各弾性スプラインが、その上に配設された少なくとも1つの電極を含み、前記弾性スプラインが、前記プラーの前記遠位部分の周りに円周方向に配設されており、前記スプラインの第1の端部が、前記偏向可能な要素の前記遠位端と結合されており、かつ、前記スプラインの第2の端部が、前記プラーの前記遠位部分と結合されており、前記スプラインが、前記拡張可能アセンブリの弛緩形態において半径方向外向きに曲がり、前記プラーが後退させられ、前記拡張可能アセンブリを前記弛緩形態から拡張形態に拡張するときに更に半径方向外向きに曲がるように構成されている、拡張可能アセンブリ、を備える、カテーテル装置。
【請求項2】
前記遠位端の伸長の方向に平行な方向で測定された前記拡張形態の範囲が、30~35ミリメートルの範囲内である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記遠位端の伸長の方向に平行な方向で測定された前記弛緩形態の範囲が、35~45ミリメートルの範囲内である、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記拡張形態における前記アセンブリの最大幅が、28~33ミリメートルの範囲内である、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記弛緩形態における前記アセンブリの最大幅が、25~30ミリメートルの範囲内である、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記スプラインが、前記拡張可能アセンブリがシース内に引っ張られ、これにより前記スプラインに半径方向の圧縮力を加えると、前記拡張可能アセンブリの前記弛緩形態を平坦化し、折り畳み形態に変形させるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記遠位端の伸長の方向に平行な方向で測定された前記折り畳み形態の範囲が、35~45ミリメートルの範囲内である、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記プラーが、延伸可能であり、前記スプラインが平坦化されるにつれて延伸するように構成されている、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記プラーが、少なくとも0.5パーセントだけ延伸可能である、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記プラーが、約1パーセントだけ延伸可能である、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記プラーが、延伸可能な織物チューブを含む、請求項8に記載の装置。
【請求項12】
前記拡張可能アセンブリの前記弛緩形態が、洋ナシ形表面を画定する、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記洋ナシ形表面が、前記偏向可能な要素の前記遠位端から離れて進行する方向に、凸形領域と、それに続く凹形領域とを備える、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記凹形領域が、前記洋ナシ形表面の表面積の少なくとも10パーセントである、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
各弾性スプラインが、ニッケルチタンの細長い要素を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
各弾性スプラインが、前記ニッケルチタンの細長い要素を少なくとも部分的に覆うポリマーチューブを含む、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記スプラインが、前記プラーが約0.5センチメートルだけ後退させられ、前記拡張可能アセンブリを前記弛緩形態から前記拡張形態に拡張するときに更に半径方向外向きに曲がるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療用デバイスに関し、特に、ただし限定することなく、カテーテルデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
心房細動などの心不整脈は、心組織の領域から隣接組織に電気信号が異常に伝導する場合に発生し、これにより、正常な心周期が乱されて非同期的リズムを引き起こす。望ましくない信号の重大な発生源は、左心房の肺静脈沿いの組織領域内及び上肺静脈内に位置する。この状況下で、不要な信号が肺静脈内で生成されるか、あるいは他の発生源から肺静脈を通じて伝導された後、それらの信号が心房の中へと伝えられ、そこで不整脈を惹起するか若しくは存続させ得る。
【0003】
不整脈を治療するための処置としては、不整脈の原因となる信号の発生源を外科的に妨害すること、及びそのような信号の伝導路を妨害することがある。心内膜の電気特性及び心容積をマッピングし、エネルギーの印加により心組織を選択的に焼灼することによって、心臓の1つの部位から別の部位への望ましくない電気信号の伝搬を中断させるかあるいは修正することが場合によっては可能となる。アブレーション過程では、非伝導病巣の形成によって望ましからざる電路を壊す。
【0004】
マッピングの後にアブレーションを行うこの2工程の処置において、通常、1つ又は2つ以上の電気センサを備えるカテーテルを心臓の中に前進させ、多数の点でデータを取得することによって、心臓内の各点における電気活動を感知し、測定している。次いで、これらのデータを利用して、一般に同じカテーテル又は異なるカテーテルを使用してアブレーションが行われる標的エリアを選択する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
本開示は、添付の図面と併せて、以下の詳細な説明から理解されよう。
【
図1】本開示の例示的なモードに従って構築され、動作する、弛緩形態のカテーテルの概略図である。
【
図2】拡張形態にある、
図1のカテーテルの概略図である。
【
図3A】弛緩形態にある、
図1のカテーテルのより詳細な概略図である。
【
図3B】特定の寸法が提供された、
図1のティアドロップ型カテーテルの平面図である。
【
図3C】バスケットの遠位端が近位方向に引っ張られて、バスケットが回転楕円体形状をとるようにされている、
図1のカテーテルの平面図である。
【
図4】シース内に後退させられている、
図1のカテーテルの概略図である。
【
図5】
図4のシース内の
図1のカテーテルの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
概要
異なるカテーテル遠位端形状は、他のものよりも良好に異なるタスクを行い得る。例えば、より円錐形のカテーテル遠位端アセンブリは、肺静脈などの心臓の円錐形領域においてより有用であり得、一方、他の領域では、より球形のカテーテル遠位端アセンブリは、より広い円周方向アブレーションのためにより大きい直径を提供し得る。1つの解決策は、異なるタスクのために異なるカテーテルを心腔内に挿入することである。しかしながら、異なるカテーテルを使用することは、処置を複雑にし得、その結果、医療問題をもたらし得る遅延をもたらし得る。
【0007】
1つの解決策は、異なるタスクのうちのいくつかによって提示される課題に適応するように形状を変化させることができる、バスケットカテーテルなどのカテーテルを提供することである。バスケットの形状を変化させる一般的な方法は、カテーテルシャフト及び偏向可能な要素を通して供給され、バスケットの遠位端に接続される、チューブ、例えば、ポリマーチューブを使用することである。バスケットの近位端は、偏向可能な要素の遠位端に接続される。シャフトを通してチューブを前進及び後退させることにより、バスケットの形状が変化する。しかしながら、チューブはバスケットを過度に剛性にし、その結果、バスケットが心臓組織に押し付けられた場合、バスケットは組織に対して十分に変形せず、カテーテルの電極はマッピング及び/又はアブレーション目的のために組織に十分に接触しない。加えて、剛性のカテーテルは、患者に外傷リスクを引き起こす可能性がある。
【0008】
したがって、本開示のいくつかの例示的なモードは、バスケットを形成する弾性スプライン又はスパインを有する拡張可能アセンブリを含むカテーテルを提供することによって、上記の問題の少なくともいくつかを解決する。弾性スプラインは、拡張可能アセンブリが弛緩形態にあるとき、外向きに曲がる。可撓性プラーは、カテーテルの近位端から拡張可能アセンブリの遠位端まで延在し、ここで、プラーは、スプラインの遠位端と結合されている。プラーを(例えば、拡張可能アセンブリのサイズ及び構成に応じて、約0.5センチメートルだけ)後退させて、スプラインを更に半径方向外向きに曲げさせ、拡張可能アセンブリを弛緩形態から拡張形態に拡張させることができる。本明細書で使用される場合、「スプライン」又は「スパイン」という用語は、様々な断面を有する細長い構造部材を意味し、そのような「スプライン」又は「スパイン」という用語は互換的に使用され得る。
【0009】
いくつかの開示されたモードでは、拡張可能アセンブリの弛緩形態は、洋ナシ形表面を画定する。いくつかの開示されたモードでは、洋ナシ形表面は、偏向可能な要素の遠位端から離れて進行する方向に、凸形領域と、それに続く凹形領域とを備える。洋ナシ形状は、心腔のより狭い及び/又は円錐形の領域、例えば、単発肺静脈隔離に適している。拡張形態は、より広い円周方向アブレーションにより適したより球形の形状を有する。異なる量だけプラーを後退させることは、拡張可能アセンブリの2つを上回る形態をもたらし得る。
【0010】
カテーテルは、可撓性プラーを使用して拡張可能アセンブリの形状を調節するので、アセンブリは、非常に可撓性であり、組織に対して押圧されるときに変形することができ、その結果、マッピング及び/又はアブレーション(不可逆電気穿孔IRE(irreversible electroporation)など)のためにアセンブリの電極と組織との間に十分な接触がある。
【0011】
スプラインは、拡張可能アセンブリがシース内に引っ張られ、これによりスプラインに半径方向の圧縮力を加えると、拡張可能アセンブリを平坦化し、弛緩形態から折り畳み形態に変形させる。プラーは、任意選択的に延伸可能であり、スプラインがアセンブリの折り畳み形態で平坦化されるときに延伸する。いくつかの開示されたモードでは、プラーは、延伸可能な織物チューブを含む。例えば、カテーテルが約1メートルの長さであり、アセンブリの長さが弛緩形態と圧縮形態との間で1センチメートルだけ増加する場合、プラーは約1%だけ延伸する必要がある。
【0012】
各弾性スプラインは、ニッケルチタンの細長い要素、ばね焼き戻しステンレス鋼要素、又はベリリウム銅(beryllium copper、BeCu)要素などの、ばね合金の要素を含み得る。弾性スプラインは、任意選択的に、ばね合金の要素を少なくとも部分的に覆うポリマーチューブを含む。次いで、1つ又は2つ以上の電極が、各スプラインのポリマーチューブ上又はポリマーチューブの周りに取り付けられ得る。
【0013】
システム概要
ここで、本開示の実施例に従って構築され、動作する、弛緩形態のカテーテル10の概略図である
図1を参照する。カテーテル10は、遠位端14を含む細長い偏向可能な要素12を含む。カテーテル10は、細長い偏向可能な要素12の遠位端14に接続されたカプラ16を含み得る。カテーテル10は、遠位部分20を含み、偏向可能な要素12を通って後退させられるように構成された可撓性プラー18を含む。カテーテル10は、細長い偏向可能な要素12内のプラー18を矢印32によって示される方向に後退させるように構成されたハンドル又はマニピュレータ(図示せず)を含んでもよい。
【0014】
カテーテル10は、複数の弾性スプライン24(簡略化のために2つだけラベル付けされている)を備える拡張可能なアセンブリ22を含む。各弾性スプライン24は、その上に配設された少なくとも1つの電極26を含む。
図1の実施例では、拡張可能アセンブリ22は、各スプライン24上に3つの電極26が配設された10個のスプライン24を含む。拡張可能アセンブリ22は、任意の好適な数のスプライン24(例えば、4つ又はそれ以上のスプライン24)及びスプライン24毎に任意の好適な数の電極26(例えば、1つ又は2つ以上の電極26)を含み得る。スプライン24及び電極26は、
図3Aを参照してより詳細に説明される。
【0015】
弾性スプライン24は、プラー18の遠位部分20の周り及びカテーテル10の長手方向軸25の周りに円周方向に配設され、スプライン24の第1の端部28(簡略化のために一部のみラベル付けされている)は、偏向可能な要素の遠位端と結合されており(例えば、カプラ16を介して)、スプライン24の第2の端部30(簡略化のために一部のみラベル付けされている)は、プラー18の遠位部分と結合されている。スプライン24の端部28は、例えば、接着剤又は圧力嵌めを使用して、カプラ16の外側又はカプラ16の内側に結合され得る。スプライン24の端部30は、例えば、接着剤を使用して、若しくは、接着剤又は圧力嵌めを使用するカプラ(図示せず)を介して、一緒に接続され得る。
【0016】
スプライン24は、拡張可能アセンブリ22の弛緩形態34において、(プラー18の遠位部分20から)半径方向外向きに曲がるように構成されている。拡張可能アセンブリ22の弛緩形態34は、概して、
図3Aを参照してより詳細に説明される洋ナシ形表面を描く。いくつかの例示的なモードでは、弛緩形態34は、任意の好適な形状を有してもよい。本明細書及び特許請求の範囲で使用される「弛緩形態」という用語は、外力(拡張可能アセンブリ22の外部の)が、拡張可能アセンブリ22に加えられていないときに、拡張可能アセンブリ22がとる形態として定義される。外力が拡張可能アセンブリ22に加えられると(例えば、細長い偏向可能な要素12内のプラー18を後退させることによって、又はシース内に拡張可能アセンブリ22を後退させることによって、又は心腔の組織に対して拡張可能アセンブリ22を押圧することによって)、スプライン24は概して変形する。外力が除去されると、拡張可能アセンブリ22は、拡張可能アセンブリ22の弛緩形態34に戻り、スプライン24は、プラー18の遠位部分20から半径方向外向きに曲がる。スプライン24は、プラー18が細長い偏向可能な要素12内で後退させられ(矢印32)、拡張可能アセンブリ22を弛緩形態34から
図2に示される拡張形態36に拡張するときに、更に半径方向外向きに曲がるように構成されている。
図1はまた、ガイドワイヤ38の遠位端を示す。ガイドワイヤ38の残りの部分は、プラー18及び細長い偏向可能な要素12の管腔内に配置されている。ガイドワイヤ38は、カテーテル10を生体の身体部分に位置付けるのを助けるために使用され得る。
【0017】
ここで、拡張可能アセンブリ22の拡張形態36における
図1のカテーテル10の概略図である
図2を参照する。先に述べたように、スプライン24は、プラー18が細長い偏向可能な要素12内に後退させられ、拡張可能アセンブリ22を弛緩形態34から拡張形態36に拡張するときに、長手方向軸25の周りで(プラー18の遠位部分20から)更に半径方向外向きに曲がるように構成されている。拡張可能アセンブリ22の拡張形態36は、拡張可能アセンブリ22の弛緩形態34(
図1)よりも大きな幅を有するより球形の形状を有し、より広い円周方向アブレーションにより適している。異なる量だけプラー18を後退させることは、拡張可能アセンブリ22の2つを上回る形態をもたらし得る。いくつかの例示的なモードでは、スプライン24は、プラー18が約0.5センチメートルだけ後退させられ、拡張可能アセンブリ22を弛緩形態34(
図1)から拡張形態36に拡張するときに、更に半径方向外向きに曲がるように構成されている。拡張可能アセンブリ22の拡張形態36は、任意の好適な寸法(例えば、長さ及び幅、最大直径)を有し得る。いくつかの例示的なモードでは、遠位端14の伸長の方向40に平行な方向で測定された拡張可能アセンブリ22の拡張形態36の範囲(例えば、長さL1)は、30~35ミリメートルの範囲内である。いくつかの例示的なモードでは、拡張形態36における拡張可能アセンブリ22の最大幅(例えば、幅W1)は、28~33ミリメートルの範囲内である。
【0018】
ここで、弛緩形態34にある
図1のカテーテル10のより詳細な概略図である、
図3Aを参照する。いくつかの例示的なモードでは、拡張可能アセンブリ22の弛緩形態34は、長手方向軸25の周りに洋ナシ形表面42を画定する。洋ナシ形表面42は、偏向可能な要素12の遠位端14から離れて進行する方向に、凸形領域R1と、それに続く凹形領域R2とを備える。凸形領域R1と凹形領域R2との相対的なサイズは、任意の好適な値をとり得る。いくつかの例示的なモードでは、凹形領域R2は、洋ナシ形表面42の表面積の少なくとも10パーセントである。
【0019】
ここで
図3Bを参照すると、
図3Bは、特定の寸法が定義された
図3Aのバスケットアセンブリ22を図示する。具体的には、バスケット22は、長手方向軸25に沿って遠位端22Bまで延在する近位端22Aを有する。バスケット22は、長手方向軸25の周りに角度をなして配設された複数のスパイン24を有する。各スパイン24は、その上に配設された複数の電極を有する。注目すべきは、バスケットアセンブリ22のティアドロップ形状であり、ここで、バスケットの直径Dmaxは、対向するスパインの直径方向外面が、ここではT1及びT2で示される長手方向軸25に平行な軸25A及び25に対して接線方向である場所として決定され得る。中心Cにおいて軸25に垂直な、T1とT2とを結ぶ線は、バスケットアセンブリ22の最大直径を定義する。ティアドロップ形状のため、バスケット22の遠位端22BからDmaxの中心Cまでの第1の距離LL1は、近位端22AからDmaxの中心までの第2の距離LL2よりも大きいことを見ることができる。第1の長さLL1は、バスケット22の弛緩構成において第2の長さLL2の2倍の大きさを有してもよい。
【0020】
プラー18が近位に(操作者に向かって)引っ張られるとき、バスケットアセンブリ22は、ティアドロップ形状から
図3Cに示される回転楕円体形状に移動する。
図3Cでは、遠位端22Bから最大直径Dmaxの中心Cまでの第1の長さLL1は、中心Cから近位端22Aまでの第2の長さLL2にほぼ等しいことを見ることができる。
【0021】
スプライン24は、任意の好適な材料又は複数の材料から形成され得る。いくつかの例示的なモードでは、各スプライン24は、カプラ16に接続された端部28から他のスプライン24に接続された端部30まで延在するばね合金の細長い要素44を含む。いくつかの例示的なモードでは、ばね合金の細長い要素44は、ニッケルチタン(例えば、Nitinol(登録商標))の細長い要素、又はばね焼き戻しステンレス鋼の細長い要素、又はベリリウム銅(BeCu)の細長い要素を含む。スプラインは、拡張可能アセンブリ22に好適な弾性及び可撓性の両方を提供する、任意の好適な寸法を有し得る。一実施例では、スプラインは、約0.004インチ厚及び約0.022インチ幅である。スプラインは、任意の好適な断面、例えば、正方形、丸みを帯びた縁を伴う正方形、又は湾曲を有し得る。各スプライン24は、ばね合金(例えば、ニッケルチタン)の細長い要素44を少なくとも部分的に覆うポリマーチューブ48(例えば、ポリエーテルブロックアミド(PEBAX(登録商標)、ポリウレタン、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン熱可塑性エラストマー(styrene-ethylene-butylene-styrene thermoplastic elastomer、SEBS)、及び/又はポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)など)から形成される)を含むことができる。スプライン24のうちの1つの断面が、挿入
図46に示されている。挿入
図50は、拡張可能アセンブリ22の遠位端の断面図を示す。挿入
図50は、プラー18に接続されているスプライン24のばね合金の細長い要素44を示す。挿入
図50はまた、プラー18の管腔内のガイドワイヤ38を示す。
【0022】
いくつかの例示的なモードでは、電極26はポリマーチューブ48の上に取り付けられる。それぞれのワイヤ(図示せず)は、各それぞれの電極26の内面に接続される。それぞれのワイヤは、ポリマーチューブ48内のそれぞれの穴(図示せず)を通り、ポリマーチューブ48の管腔を通ってカプラ16又は細長い偏向可能な要素12に供給される。その後、異なる電極26からのワイヤは、細長い偏向可能な要素12を通ってカテーテル10の近位端まで通過することができる。電極26は、任意の好適な材料、例えば、金又はステンレス鋼から形成され得、任意の好適な形状を有し得る。いくつかの例示的なモードでは、電極26は、拡張可能アセンブリ22の外側に面するより多くのバルクを有するようにバイアスされる。
【0023】
拡張可能アセンブリ22の弛緩形態34は、任意の好適な寸法(例えば、長さ及び幅、最大直径)を有し得る。いくつかの例示的なモードでは、遠位端14の伸長の方向40に平行な方向で測定された拡張可能アセンブリ22の弛緩形態34の範囲(例えば、長さL2)は、35~45ミリメートルの範囲内である。いくつかの例示的なモードでは、弛緩形態34における拡張可能アセンブリ22の最大幅(例えば、W2)は、25~30ミリメートルの範囲内である。
【0024】
ここで、
図4及び
図5を参照する。
図4は、シース52内に後退させられている、
図1のカテーテル10の概略図である。
図5は、
図4のシース52内に後退させられた
図1のカテーテル10の概略断面図である。スプライン24は、拡張可能アセンブリ22がシース52内に引っ張られ(矢印56)、これによりスプライン24に半径方向圧縮力を加えると、拡張可能アセンブリ22の弛緩形態34を平坦化し、拡張可能アセンブリ22の折り畳み形態54に変形させるように構成されている。いくつかの例示的なモードでは、遠位端14の伸長の方向40に平行な方向で測定された折り畳み形態54の範囲(例えば、長さL3)は、35~45ミリメートルの範囲内である。
【0025】
いくつかの例示的なモードでは、プラー18は延伸可能であり、スプライン24が平坦化されるときに延伸するように構成されている。いくつかの開示されたモードでは、プラー18は、延伸可能な織物チューブを含む。延伸可能な織物チューブは、編組ポリマーチューブから形成されてもよく、例えば、編組に使用されるLCPフィラメント又は織糸を有するPEBAXの基材、及び編組の上にキャストされたPEBAXフィルムを含む。好適なポリマーチューブは、Putnam Plastics Corporation Dayville,CT 06241,United States、及びMicroLumen high performance medical tubing,Oldsmar,FL 34677 USAから市販されている。
【0026】
いくつかの開示されたモードでは、プラー18は、延伸可能なワイヤであってもよい。いくつかの例示的なモードでは、プラー18は、約1パーセントだけ延伸可能である。例えば、カテーテル10が、約1メートルの長さであり、アセンブリの長さが、弛緩形態34と圧縮形態54との間で1センチメートルだけ増加する場合、プラー18は約1%だけ延伸する必要がある。いくつかの例示的なモードでは、プラーは、少なくとも0.5パーセントだけ延伸可能である。
【0027】
本明細書で使用される際、任意の数値又は数値範囲に対する「約」又は「ほぼ」という用語は、構成要素の一部又は構成要素集合を、本明細書に記載のその意図された目的に沿って機能させるのに適した寸法の許容誤差を示すものである。より具体的には、「約」又は「ほぼ」は、列挙された値の±20%の値の範囲を指してもよく、例えば「約90%」は、72%~108%の値の範囲を指してもよい。
【実施例0028】
実施例1:カテーテル装置(10)であって、遠位端(14)を含む細長い偏向可能な要素(12)、遠位部分(20)を含み、偏向可能な要素を通って後退させられるように構成された可撓性プラー(18)、及び複数の弾性スプライン(24)を備える拡張可能アセンブリ(22)であって、各弾性スプラインが、その上に配設された少なくとも1つの電極(26)を含み、弾性スプラインが、プラーの遠位部分の周りに円周方向に配設されており、スプラインの第1の端部(28)が、偏向可能な要素の遠位端に結合されており、かつ、スプラインの第2の端部(30)が、プラーの遠位部分に結合されており、スプラインが、拡張可能アセンブリの弛緩形態において半径方向外向きに曲がり、プラーが後退させられ、拡張可能アセンブリを弛緩形態(34)から拡張形態(36)に拡張するときに更に半径方向外向きに曲がるように構成されている、拡張可能アセンブリ(22)、を備える、カテーテル装置(10)。
【0029】
実施例2:遠位端の伸長の方向(40)に平行な方向で測定された拡張形態の範囲(L1)が、30~35ミリメートルの範囲内である、実施例1に記載の装置。
【0030】
実施例3:遠位端の伸長の方向に平行な方向で測定された弛緩形態の範囲(L2)が、35~45ミリメートルの範囲内である、実施例1又は2に記載の装置。
【0031】
実施例4:拡張形態におけるアセンブリの最大幅(W1)が、28~33ミリメートルの範囲内である、実施例1~3のいずれかに記載の装置。
【0032】
実施例5:弛緩形態におけるアセンブリの最大幅(W2)が、25~30ミリメートルの範囲内である、実施例1~4のいずれかに記載の装置。
【0033】
実施例6:スプラインが、拡張可能アセンブリがシース(52)内に引っ張られ、これによりスプラインに半径方向の圧縮力を加えると、拡張可能アセンブリの弛緩形態を平坦化し、折り畳み形態(54)に変形させるように構成されている、実施例1~5のいずれかに記載の装置。
【0034】
実施例7:遠位端の伸長の方向に平行な方向で測定された折り畳み形態の範囲(L3)が、35~45ミリメートルの範囲内である、実施例6に記載の装置。
【0035】
実施例8:プラーが、延伸可能であり、スプラインが平坦化されるにつれて延伸するように構成されている、実施例6又は7に記載の装置。
【0036】
実施例9:プラーが、少なくとも0.5パーセントだけ延伸可能である、実施例1~8のいずれかに記載の装置。
【0037】
実施例10:プラーが、約1パーセントだけ延伸可能である、実施例1~8のいずれかに記載の装置。
【0038】
実施例11:プラーが、延伸可能な織物チューブを含む、実施例1~8のいずれかに記載の装置。
【0039】
実施例12:拡張可能アセンブリの弛緩形態が、洋ナシ形表面(42)を画定する、実施例1~11のいずれかに記載の装置。
【0040】
実施例13:洋ナシ形表面が、偏向可能な要素の遠位端から離れて進行する方向に、凸形領域(R1)と、それに続く凹形領域(R2)とを備える、実施例12に記載の装置。
【0041】
実施例14:凹形領域が、洋ナシ形表面の表面積の少なくとも10パーセントである、実施例13に記載の装置。
【0042】
実施例15:各弾性スプラインが、ニッケルチタンの細長い要素(44)を含む、実施例1~14のいずれかに記載の装置。
【0043】
実施例16:各弾性スプラインが、ニッケルチタンの細長い要素を少なくとも部分的に覆うポリマーチューブ(48)を含む、実施例15に記載の装置。
【0044】
実施例17:スプラインが、プラーが約0.5センチメートルだけ後退させられ、拡張可能アセンブリを弛緩形態から拡張形態に拡張するときに更に半径方向外向きに曲がるように構成されている、実施例1~16のいずれかに記載の装置。
【0045】
実施例18:長手方向軸の周りに半径方向に配設された複数のスパインを含んで長手方向軸に沿って近位端から遠位端まで延在するバスケットアセンブリを画定するバスケットカテーテルであって、バスケットアセンブリが、長手方向軸上に配置された中心に直交して測定されるときに最大径を有するティアドロップ形状を画定し、バスケットアセンブリが、バスケットアセンブリの遠位端から最大直径の中心までの第1の長さと、長手方向軸に沿って最大直径の中心からバスケットアセンブリの近位端まで測定された第2の長さとを有し、第1の長さは第2の長さよりも大きい、バスケットカテーテル。
【0046】
実施例19:第1の長さが、第2の長さのほぼ2倍である、実施例18に記載のバスケットカテーテル。
【0047】
実施例20:複数の電極が、各スパイン上に配設されている、実施例19に記載のバスケットカテーテル。
【0048】
本開示の様々な特徴が、明確性のために別個の実施例の文脈において記載されているが、これらはまた、単一の実施例に組み合わされて提供されてもよい。逆に、簡潔にするために単一の実施例の文脈において記載されている本開示の様々な特徴が、別々に又は任意の好適な部分的組み合わせで提供されてもよい。
【0049】
上述の実施例は、例として引用されており、本開示は、上記の明細書に具体的に図示及び記載されたものに限定されない。むしろ本開示の範囲は、上記の明細書で説明される様々な特徴の組み合わせ及びその部分的組み合わせの両方、並びに上述の説明を読むことで当業者に想到されるであろう、従来技術において開示されていないそれらの変形例及び修正例を含むものである。
【0050】
〔実施の態様〕
(1) カテーテル装置であって、
遠位端を含む細長い偏向可能な要素、
遠位部分を含み、前記偏向可能な要素を通って後退させられるように構成された可撓性プラー、及び、
複数の弾性スプラインを備える拡張可能アセンブリであって、各弾性スプラインが、その上に配設された少なくとも1つの電極を含み、前記弾性スプラインが、前記プラーの前記遠位部分の周りに円周方向に配設されており、前記スプラインの第1の端部が、前記偏向可能な要素の前記遠位端と結合されており、かつ、前記スプラインの第2の端部が、前記プラーの前記遠位部分と結合されており、前記スプラインが、前記拡張可能アセンブリの弛緩形態において半径方向外向きに曲がり、前記プラーが後退させられ、前記拡張可能アセンブリを前記弛緩形態から拡張形態に拡張するときに更に半径方向外向きに曲がるように構成されている、拡張可能アセンブリ、を備える、カテーテル装置。
(2) 前記遠位端の伸長の方向に平行な方向で測定された前記拡張形態の範囲が、30~35ミリメートルの範囲内である、実施態様1に記載の装置。
(3) 前記遠位端の伸長の方向に平行な方向で測定された前記弛緩形態の範囲が、35~45ミリメートルの範囲内である、実施態様1に記載の装置。
(4) 前記拡張形態における前記アセンブリの最大幅が、28~33ミリメートルの範囲内である、実施態様1に記載の装置。
(5) 前記弛緩形態における前記アセンブリの最大幅が、25~30ミリメートルの範囲内である、実施態様1に記載の装置。
【0051】
(6) 前記スプラインが、前記拡張可能アセンブリがシース内に引っ張られ、これにより前記スプラインに半径方向の圧縮力を加えると、前記拡張可能アセンブリの前記弛緩形態を平坦化し、折り畳み形態に変形させるように構成されている、実施態様1に記載の装置。
(7) 前記遠位端の伸長の方向に平行な方向で測定された前記折り畳み形態の範囲が、35~45ミリメートルの範囲内である、実施態様6に記載の装置。
(8) 前記プラーが、延伸可能であり、前記スプラインが平坦化されるにつれて延伸するように構成されている、実施態様6に記載の装置。
(9) 前記プラーが、少なくとも0.5パーセントだけ延伸可能である、実施態様8に記載の装置。
(10) 前記プラーが、約1パーセントだけ延伸可能である、実施態様8に記載の装置。
【0052】
(11) 前記プラーが、延伸可能な織物チューブを含む、実施態様8に記載の装置。
(12) 前記拡張可能アセンブリの前記弛緩形態が、洋ナシ形表面を画定する、実施態様1に記載の装置。
(13) 前記洋ナシ形表面が、前記偏向可能な要素の前記遠位端から離れて進行する方向に、凸形領域と、それに続く凹形領域とを備える、実施態様12に記載の装置。
(14) 前記凹形領域が、前記洋ナシ形表面の表面積の少なくとも10パーセントである、実施態様13に記載の装置。
(15) 各弾性スプラインが、ニッケルチタンの細長い要素を含む、実施態様1に記載の装置。
【0053】
(16) 各弾性スプラインが、前記ニッケルチタンの細長い要素を少なくとも部分的に覆うポリマーチューブを含む、実施態様15に記載の装置。
(17) 前記スプラインが、前記プラーが約0.5センチメートルだけ後退させられ、前記拡張可能アセンブリを前記弛緩形態から前記拡張形態に拡張するときに更に半径方向外向きに曲がるように構成されている、実施態様1に記載の装置。